法制審議会 会社法制 (企業統治等関係)部会 第14回会議 議事録 第1 日 時  平成30年 7月 4日(水)   自 午後 1時29分                          至 午後 4時38分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  会社法制(企業統治等関係)の見直しについて 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○神田部会長 それでは,皆様方おそろいのようでございますので,若干早いかもしれませんけれども,始めさせていただきたいと思います。法制審議会会社法制(企業統治等関係)部会の第14回目の会議を開会いたします。   皆様方には,本日も大変お忙しいところをお集まりいただきまして,誠にありがとうございます。   それでは,まず,いつものように,事務当局から新任委員の御紹介をお願いいたします。 ○竹林幹事 先日,御異動により辞任されました稲垣委員の後任として,本日より日髙様に委員として御参加いただくこととなりました。どうぞよろしくお願い申し上げます。   よろしければ,日髙様より一言,簡単に御挨拶を頂ければと存じます。 ○日髙委員 ありがとうございます。   豊田通商で専務をしております日髙といいます。本日は,経済同友会から推薦され,新メンバーとして参加させていただいております。少しでも力になれますよう頑張りますので,どうぞよろしくお願いいたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。よろしくお願いいたします。   続きまして,参考人の御紹介をお願いいたします。 ○竹林幹事 本日は,株主総会資料の電子提供制度の審議の関係で,行森様,田中様,森様,前田様,吉田様の5名に参考人として御参加いただいております。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○神田部会長 どうも本日は,お忙しいところ,ありがとうございます。よろしくお願い申し上げます。   それでは,本日の会議の配布資料の確認をお願いします。事務当局からお願いします。 ○竹林幹事 本日は,お手元に議事次第,配布資料目録,部会資料23,参考資料45から47まで,委員等名簿を配布させていただいておりますので,御確認ください。   本日は,岡田幹事が御欠席でございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。   それでは,本日の審議に入らせていただきたいと思います。   本日でございますけれども,お手元の議事次第に記載のとおり,会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案の作成に向けた個別論点の更なる検討ということで御審議をお願いいたします。   お手元の部会資料23は,第1,第2,第3というふうになっているかと思いますが,第1の部分について,まず事務当局に説明をしていただき,その後,参考人の皆様方からプレゼンテーションをしていただきたいと思います。   それでは,まず,事務当局の説明をお願いいたします。 ○邉関係官 それでは,部会資料23の「第1 株主総会資料の電子提供制度」について御説明いたします。本日の資料につきましても,適宜要約をして御説明させていただきたいと思います。   1では,振替株式の株主による書面交付請求の仕組みを,概要として,A案又はB案のようなものとすることについて,どのように考えるかを論点として掲げております。   A案は,株主が銘柄ごとに書面交付請求をすることを認める案であり,B案は,これを認めずに,株主は保有する全ての銘柄についてのみ書面交付請求をすることができるものとする案です。   A案においては,過去の総株主通知により名簿株主となっている株主については,株主名簿管理人に対して直接書面交付請求をすることも,振替口座を開設した口座管理機関を経由して書面交付請求をすることもできるものとしております。一方で,それ以外の株主,すなわち振替口座上の株主であるにすぎない者は,振替口座を開設した口座管理機関を経由すれば書面交付請求をすることができるものとしております。   また,先日の当部会における議論において,書面交付請求は株主総会ごとにされるものではないということを前提にしていることから,書面交付請求をした株主が累積していくのではないかという懸念があり,その懸念に対応するべく,書面交付請求に一定の有効期間を定めるべきであるという御指摘なども頂いております。   そこで,A案においては,書面交付請求を受けた日から3年以内に終了する事業年度のうち,最終のものに関する定時株主総会が終結した場合には,株式会社は当該株主に対し,1か月以上の期間を定めて,その期間内に当該書面交付請求を撤回するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができるものとし,当該株主がその期間内に確答を発しないときは,当該書面交付請求を撤回したものとみなすものとしております。   続いて,B案においては,全ての振替株式の株主は口座管理機関に申出をしなければならないものとしております。銘柄ごとに書面交付請求することを認めていない関係から,B案の方がA案に比べても,書面交付請求をした株主が累積していくのではないかという懸念がより強く妥当すると思われます。しかしながら,書面交付請求に一定の有効期間を設ける場合には,書面交付請求をし,実際に書面を受け取ることを想定していた株主にとって不意打ちとならないように,書面交付請求がなかったものと取り扱われることとなる前に,事前の通知等による適切な手続保障が必要であると考えられますが,B案においては,発行会社がそのような通知等をする主体として規律を設けることが難しいと思われます。振替機関や口座管理機関において当該通知等を行うものとすることについても,それに要する実務上の負担等を慎重に検討する必要があると考えられます。そこで,B案においては,A案の②や③に相当する規律は設けないものとしております。   なお,当部会においては,個々の発行会社が電子化を推進させるインセンティブを与えることを可能とするような仕組みが望ましいという指摘がされておりますが,A案の方が,B案に比べると,株主による書面交付請求の撤回を促すために,発行会社が努力することを期待することができると考えられます。   また,当部会においては,口座管理機関が書面交付請求の受付等に要するコストについて,発行会社も適切に負担すべきであるという指摘もされておりますが,A案においては,口座管理機関が書面交付請求の取次ぎを銘柄ごとに行うこととなりますので,A案の方が,B案に比べると,発行会社との間でコスト負担の取決めをすることが容易になるとも考えられます。   続いて,5ページ目,2では,EDINETを使用する場合の特例として,①及び②に掲げるような規律を設けるものとすることを提案しております。   補足説明に記載のとおり,①において,「提出の手続」をEDINETを使用して行った場合の特例としており,株式会社は当該有価証券報告書の提出の手続をEDINETを使用して行えば足りることから,中断に関する救済規定は要しないことを想定しております。また,「電子提供措置をとることを要しない」としておりますので,電子提供措置がとられているかどうかの調査をする義務もないことを想定しております。   (注)においては,この特例の適用がある場合における株主総会の招集の通知に,EDINETのホームアドレス以外に記載すべき事項として,どのようなものが考えられるかを論点として掲げています。   なお,当部会においては,投資家等の一般国民は,インターネットを通じてEDINETを使用して提出された有価証券報告書等の記載内容にアクセスすることが現在認められているが,これに法的な裏付けはなく,実際は行政上のサービスとして実施されているにすぎないのではないかという指摘がされております。このような特例を定める場合には,EDINETへの公衆からのインターネットを通じたアクセスについての法的な位置付けを明確にする必要があると思われます。   御説明は以上となります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,続きまして,参考人としてお越しいただいております皆様方にプレゼンテーションをしていただきたいと思います。   まず,証券保管振替機構の行森参考人と田中参考人,よろしくお願いいたします。 ○行森参考人 ただいま御紹介にあずかりました証券保管振替機構の株主通知業務部の行森でございます。本日はよろしくお願いいたします。   私どもは,昨年10月に参考人として出席させていただきまして,振替制度を利用して株主の書面交付請求を発行者に通知する方法といたしまして,配当金参考案と共通番号参考案の2案を御説明させていただきました。本日は,ただいま御説明のありました資料23の内容を事前に拝見させていただいておりますので,この内容に基づくと,前回の説明がどのように変わるのか,あるいは変わらないのかといった点について,御説明をさせていただきます。   資料45を御覧ください。表紙の下に記載しておりますとおり,前回の資料をベースに,資料23の内容による影響を青字で追記した形となってございます。   表紙をおめくりいただきまして,2ページを御覧ください。   こちらは,配当金の振込先指定の情報の授受を参考に記載してございます配当金参考案というものでございます。   フローにつきましては,10月に御説明を致しておりますので,ごく簡単な説明にとどめたいと思います。   この配当金参考案では,加入者は口座管理機関に対して,銘柄ごとに書面交付請求の取次ぎを依頼しまして,それを受けた口座管理機関が保振機構に,そして,保振機構が更に株主名簿管理人に対して,請求の都度,通知するというシンプルなものでございます。   左下に,資料23の内容の影響について記載してございます。こちらのA案では,書面交付請求の期限を設けますので,1点目,名簿株主から株主名簿管理人に対する書面交付請求を可能とすると。また,2点目といたしまして,発行者から株主に対する撤回に係る催告を行うことを可能とするといった点が新たに加わっておりますが,いずれもこちらは,振替機関及び口座管理機関が関与しないために,このフローには影響がないと考えてございます。   次,3ページ目になりまして,この案に係る留意点でございます。   1点目と2点目は,特に影響はございません。   3点目につきましては,加入者が複数の口座管理機関に口座を持っている場合に,口座管理機関は名寄せ後の状況を知り得ませんので,加入者が自分の書面交付請求の状況を確認する場合には,口座管理機関ではなく,株主名簿管理人に問い合わせる必要があるということを記載してございます。これに,今回のA案による影響といたしまして,株主名簿管理人への直接請求も窓口として加わりますので,なおさら口座管理機関側では,状況を把握することは難しくなるということを追記してございます。   4点目は,かなり実務的な留意点になります。株式等振替制度では,複数の口座管理機関に口座を持つ加入者の情報につきましては,名寄せをした上で,保振機構と株主名簿管理人の間で情報を授受しています。ただ,複数の口座のうちの一つにつきまして,例えば,代理人を選任するといった変更を行いますと,名寄せ基準上は他の口座と同一とは判定されなくなりまして,名寄せが解除されます。そこで,この留意点が出てくるわけですけれども,株主名簿管理人に対して,書面交付請求のデータを通知した後に名寄せ解除が発生した場合,株主名簿管理人の側では,名寄せが解除されて,二つの株主の情報に分かれたということは分かるんですけれども,そのどちらの株主情報が書面交付請求を引き継ぐのかということは判断できないということになります。   また,名寄せ解除の理由の大半が,代理人の選任や変更といったものでございますので,名寄せ基準では別物と判定することになりますが,実質は同一の株主でございますので,分かれたグループの両方とも交付請求があったものとして取り扱うなどの取決めが必要ではないかということを前回御説明させていただいております。   これに,今回のA案による影響を囲みで追加しておりますが,A案では,株主名簿管理人に直接請求が可能となります。その株主名簿管理人は,名寄せ後の株主で管理をしておりますので,名寄せ後の株主による請求ということになります。その請求後,振替制度上でその株主の名寄せの解除が行われた場合に,どちらが引き継ぐのかといった概念自体がないのではないかと思いますし,名寄せ解除後のいずれもが引き継ぐといった取扱いになろうかと思います。そうなりますと,振替制度で口座管理機関を通じて請求されたものにつきましても,名寄せ解除後は,いずれもが請求を引き継ぐという同様の取扱いにして,平仄をとるのが望ましいと考えます。   こちらは,非常に細かい実務的な話で,内容が十分にお伝えできていないかもしれないのですけれども,今後整理が必要な実務的な課題があるということを,ここでは御認識いただければと思います。   続きまして,4ページの共通番号参考案の説明にまいります。   こちらは,加入者が口座管理機関に請求の取次ぎを依頼いたしまして,口座管理機関が保振機構に取り次ぐというところまでは,先ほどの案と一緒でございます。ただ,この請求は,銘柄ごとではなく,加入者単位で行うということになります。   一方,保振機構から発行者への請求の取次ぎにつきましては,この案では,保振機構から発行者に対して,能動的には致しません。発行者から必要な際に,保振機構に対して,銘柄ごとに照会を頂き,その結果を受領するということになります。この場合の結果と申しますのは,⑤に記載の内容となります。照会を受けた銘柄の直近の基準日の株主,つまり総株主通知の対象株主のうち,照会日時点で書面交付請求を行っている株主に通知するということになります。   ここで,照会日時点というふうに記載してございますけれども,資料23におきましては,これが基準日時点とされております。元々の想定スキームとは,その点が異なっておりますけれども,大きな影響はないと考えておりまして,その旨を枠囲みの影響欄に追記してございます。   次の5ページが,共通番号参考案の留意点でございます。   資料23によりますと,スキームへの変更点がほとんどありませんので,留意点も変更はございません。右下の影響欄に記載いたしましたのは,この案で,仮に,書面交付請求権の有効期限を設けるとした場合に,その経過状況等を誰が株主に伝えるのかということにつきまして,念のために記載しております。私ども保振機構は,株主と直接的な関係を持っておりませんので,過去の株主に対して,直接通知を行うということは考えてございません。   6ページは,ただいま説明いたしました二つの案の特徴について比較した表でございます。   表はシンプルですので,御覧いただければ内容はお分かりになると思いますので,説明は省略をさせていただきますが,一番下にありますシステムの対応コストにつきましては,今回追記したものでございまして,ただ,その詳細な仕様が現時点では固まっておりませんので,はっきりしたことは申し上げられないのですけれども,どちらの案を採りましても,システム的なコストは,大きな差異はないというふうに見込んでございます。   7ページにまいりまして,最後に,両案に共通の論点を挙げてございます。   こちらも変更はございませんが,1点目が,振替制度を利用する場合には,口座管理機関の合意が必要ということ,2点目が,システム対応や事務対応に要する新たなコスト負担に関する関係当事者間の合意が必要ということを記載してございます。   3点目につきましては,私どもの事情でございますけれども,現在,サービスの向上を図るために,2020年秋の稼動を目標に,システムの大規模なリプレイスに取り組んでおります。このシステムリプレースを安全・確実に完遂することが,私どもにとりまして,現状,最大の経営課題となってございますので,仮に,振替制度を利用するとなった場合におきましても,その対応への着手が新システムの安定稼動の後となる見込みでございます。これら3点,いずれも現時点で,前回と変わりはないと考えております。   私どもからの資料説明は以上でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,続きまして,大和証券の森参考人と前田参考人,プレゼンテーションをよろしくお願いいたします。 ○森参考人 ただいま御紹介いただきました大和証券の森でございます。本日は,意見陳述の機会を設けていただきまして,誠にありがとうございます。   日本証券業協会では,株主総会資料の電子提供制度に関する検討を行うため,本年2月に株主総会資料の電子提供制度に係る検討ワーキンググループというのを設置しております。本日は,部会資料23に記載されました株主による書面交付請求の方法として示された仕組みにつきまして,このワーキンググループを通じて,口座機関である証券会社の意見を取りまとめましたので,その内容について御説明をさせていただきたいと思います。   それでは,日本証券業協会作成の参考資料46の1ページを御覧ください。   こちらには,ワーキングメンバーから出されました意見の概要をまとめてございます。A案,すなわち配当金参考案ベースと,B案,共通番号参考案ベースについて,様々な意見が出されましたけれども,関係者が協力することで電子化を促進でき,かつ,書面交付請求が少なくなると考えられるA案を支持するという意見が多く見られました。   それでは,次のページ以降で,検討の項目ごとに,もう少し詳細に御説明をさせていただきます。   2ページを御覧ください。   まず,一つ目,検討の観点の1点目としまして,電子化の促進の観点でございます。B案では,一銘柄でも書面交付請求をする株主は,保有する全銘柄について書面交付請求をするものだとみなす運用をするため,株主が本当に必要な銘柄以外についても書面が提供されることになります。したがいまして,ワーキングメンバーからは,本当に株主が要求した銘柄のみを書面にて送付するA案の方が好ましいという意見が出されてございます。   2点目は,投資家の利便性,分かりやすさの観点でございます。この観点からは,銘柄ごとに書面交付請求をできるようにした方が良いというA案を支持する意見と,銘柄単位で請求するA案は株主の負担が大きいのではないかということで,B案を支持する意見が出されております。   なお,後ほど4点目で述べますけれども,銘柄単位で請求することを可能とするA案におきましても,実務上の工夫によりまして,株主に過度な負担を掛けないという方法もあるのではないかという意見もございました。   3点目は,発行会社との関係の観点でございます。B案では,口座管理機関と発行会社との対応関係が不明確な部分がありますけれども,A案の方が,株主と発行会社との関係が直接的で単純化されるという意見が出されております。   4点目は,口座管理機関における業務の観点でございます。B案では,口座管理機関からすると,お客様ごとの管理となるため,システムや手続がシンプルとなるという意見や,銘柄ごととなると件数が過大になるという指摘がある一方で,A案であっても実務上の工夫によって,複数銘柄や全銘柄の請求の対応も可能であるという意見がございました。   3ページ目を御覧ください。   5点目と6点目は,口座管理機関における有効期限管理通知ですとか発行会社における催告などの観点でございます。これらに関しましては,口座管理機関は書面交付請求の状況を確認することができないという意見ですとか,書面交付請求の有効期限の管理を行うことができないという意見が出されております。   以上のような意見がワーキンググループのメンバーから寄せられておりますが,日本証券業協会のワーキンググループの意見としましては,A案の方が好ましいという結論となっております。   簡単ではございますが,以上です。ありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,続きまして,三井住友信託銀行の吉田参考人,プレゼンテーションをよろしくお願いいたします。 ○吉田参考人 御紹介にあずかりました三井住友信託銀行証券代行部の吉田と申します。今年度,信託協会の会長会社を務めております。本日は,御発言の機会を頂戴いたしまして,誠にありがとうございます。   本日につきましては,御提示がありましたA案及びB案双方におけます事務のフローの想定,あとは,今回着目されております書面交付請求に関しまして,一定の有効期間を定めるという取扱いについて,株主名簿管理人の立場からの考えを述べさせていただければと存じます。   参考資料47でございますけれども,こちらの1ページ目を御覧いただければと存じます。   最初のスライドでございますけれども,A案の場合における口座管理機関経由の書面交付請求のフローをお示ししてございます。本案では,招集通知の送付を希望する銘柄ごとに請求を実施すると,こういった形になってまいります。加えまして,下の方,概要の2点目に記載をさせていただいておるところでございますけれども,株主名簿に記載がされていない,いわゆる期中株主につきましては,発行会社,すなわち株主名簿管理人の方では把握ができないと,こういった形でございますので,口座管理機関に対してのみ請求をすることができると,こういった形になっていようかと存じます。   仮に,期中株主が株主名簿管理人に対して請求を行ってきた場合につきましては,株主名簿管理人としては,一旦手続をお断りさせていただきまして,口座管理機関で手続を行うよう促していくと。こういったフローになるのかなというふうに想定をしておるところでございまして,株主につきましては,口座管理機関で手続をして,振替機関を経由して発行会社に請求がされると,こういったフローになってこようかなと考えておるところでございます。   A案におきましては,こういった取扱いが明確になりましたことで,株主名簿管理人としてもフローが検討可能になったのかなと,こういった形で認識をしておるところでございまして,半ば繰り返しという形になってまいりますけれども,口座管理機関,振替機関側と株主名簿管理人側,双方におきまして,こういった書面交付請求の対応が可能な状態となって初めて実現するスキームかなと,こういった形で考えているところでございます。   また,加えまして,検討点ということで記載をさせていただいておりますけれども,株主名簿管理人に対して書面交付請求が直接された場合の本人確認方法につきまして,こちらにつきましても,部会資料の方にも記載がされている部分でございますけれども,発行会社の意見も踏まえつつ,整理していくことが望まれようかなというふうに考えておりますので,実務者レベルでの協議の機会,こういったものを持ってまいりたいと考えているところでございます。   それでは,2ページ目のスライドにお進みいただければと存じます。   A案の二つ目のスライドでございますけれども,こちらにつきましては,株主に対する催告を実施する際のフローをお示ししてございます。銘柄ごとの取扱いとなりますので,株主名簿管理人が書面交付請求がされた時期を管理しまして,催告撤回の対象者,こちらを特定することで対応するということになろうかと考えております。   こちらのスライドの左半分につきましては,特段のコメント等は記載していないわけでございますけれども,催告及び撤回に関する場面につきましては,口座管理機関,振替機関というのが直接的にフローに関与せずとも,完結することが可能なのかなというふうに想定をしているところでございます。   また,仮に,株主が口座管理機関に対して,自発的に書面交付請求の中止の手続を行った場合につきましては,振替機関を経由して株主名簿管理人に連絡がなされると。こういった形でもって,随時可能なものというふうに考えているところでございます。   加えまして,こちらにつきましても,検討点を記載させていただいておりまして,ただいま申し上げました書面交付請求の時期ですとか,催告撤回の対象者,こちらを管理するために,株主名簿管理人の方では,システム改修等の必要があるという形でございます。したがいまして,時間ですとか費用の観点で,相当程度の負荷が生じてくるということかなと考えているところでございます。   それでは,次のスライドの方にお進みいただければと存じます。   続きまして,B案のフローにつきましてお示しをしているところでございます。こちらにつきましては,これまでも御議論があった内容でございますので,詳細については割愛をさせていただきますけれども,スライドの中央の部分,株主名簿管理人は議決権の基準日が到来した会社について,都度,振替機関に対して対象者のリクエストを行うと。こういった形になりますため,1人の株主さんが保有する銘柄の中に決算期の異なる会社があった場合につきましては,書面交付請求があった旨を発行会社に連絡するタイミングというのは,ずれるという形になろうかなというふうに考えているところでございます。   こちらのスライドにつきましては,この程度とさせていただきまして,4ページ目にお進みいただければと存じます。   4ページ目のスライドにつきまして,B案では特に,書面交付請求の有効期間についての規律というものは,特段設けられてはいないわけなんですけれども,株主名簿管理人単体での立場としては,やはり実務的に見ても,B案において,有効期間の定めを設けることは困難なのかなというふうに思料しているところでございますので,参考までに記載をさせていただいているところでございます。   こちらは,部会資料5ページの記載のとおりではございますけれども,有効期間が全ての銘柄で同一だというふうにいたしますと,先ほど触れました決算期のタイミングですとか,その株主さんが株式を購入したタイミングのずれによりまして,書面交付を受けられる期間というのが極端に短くなるといったことが想定されますし,また,催告をする主体についても,問題が生じようかなというふうに考えているところでございます。   また,A案と同様に,個別銘柄ごとに催告を行うということも考えられるのかもしれませんけれども,株主名簿管理人から振替機関に対して,撤回した旨を通知するですとか,銘柄ごとに管理するといったものは想定されていないのかなというふうに認識しているところでございます。   いずれにしましても,B案を踏まえた実務を想定する場合におきましては,株主名簿管理人と振替機関,口座管理機関での情報のやり取りの仕方を,改めて検討する必要があるのかなというふうに考えているところでございます。   また,株主が口座管理機関に対して,書面交付請求の取りやめを申し出ていたとしても,会社が把握することができるのは,対象者のリクエストのタイミングの時点だけという形になりますので,タイムラグが生じるという形になります結果,不要な催告を発出してしまうという可能性もあると,こういったフローになろうかと考えているところでございます。   以上のとおりでございまして,現行の業務を念頭に置きますと,書面交付請求の有効期間を定めるという場合において,A案が前提になろうかなというふうに考えているところでございますけれども,説明いたしましたような検討点につきましては,引き続き検討・整理の上,実施の運びになることが必要かなというふうに考えているところでございます。   私からは以上でございます。ありがとうございました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,審議に移りたいと思います。本日も,幾つかに区切って議論をお願いしたいと思います。   部会資料23の第1は,1と2がありますので,まず第1の1,振替株式の株主による書面交付請求について,委員,幹事の皆様方から御質問,御意見をお出しいただければと存じます。   なお,言うまでもなく,参考人の皆様によるプレゼンテーションについての御質問等を併せてお出しいただくということもしていただければと思います。   どなたからでも結構でございます。いかがでしょうか。古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。   1の書面交付請求につきましては,前の回にも申し上げましたが,書面からデジタル情報へという制度全体の方向性と,書面交付請求権を残す範囲とのバランスについて,十分に考える必要があると考えております。デジタル・ディバイドの保護に重きを置き過ぎますと,電子化推進というそもそもの目的の障害になるおそれがありますし,それぞれの会社においては,電子と書面という二重管理が必要となるわけですので,そのための煩雑な事務がいつまでも残ることになりかねないということです。   この関連で,部会資料の補足説明の5ページ目の下の方に,「なお」で始まるパラグラフがありますが,そこに,「インターネットを利用することができるけれども,インターネットを利用することに負担感を感じることを理由として,書面の交付を希望する者であっても,広い意味ではデジタル・ディバイドであるとの指摘もあった」とあります。こういう御指摘もあったとは思いますが,デジタル・ディバイドの定義をここまで広げた上で制度設計を考えるべきかについては,疑問を感じるところです。   経団連といたしましては,定款による書面交付請求権の排除を認めていただきたいという考えに変わりはございません。また,書面交付請求の方法につきましては,可能な限りデジタル化のメリットを享受できるような制度を追求すべきであると考えております。   以上,総論的に申し上げた上で,A案かB案かと問われますと,私どもは,やはりA案の方がベターであるとの意見です。   B案には,書面交付請求の催告に関するルールが盛り込まれていませんので,書面交付請求をした株主が累積していく問題を解消することが非常に困難ではないかと思います。その意味で,B案は選択し難いと思います。ただ,A案につきましても,②にありますように,3年経たないと催告できないとするのは,累積の観点からは,長過ぎるのではないかと思います。   前回,毎年株主が書面交付を請求することを要件としてはどうかと申し上げました。それでは株主の側に負担が大き過ぎるという御意見があったことは承知しておりますが,書面交付請求に対応するための会社における業務の負担とのバランスも是非考慮していただきたいと思います。   株主に毎年書面交付を要求するかどうか,意思表示を求める代わりに,例えば,返信手段を用意した上で,毎年会社から催告することができるとすることも,一つの案としてあるのではないかと思います。3年とするのか,1年とするのか,2年とするのか,そういったことも含めて,書面交付請求の有効期間についても,引き続き御検討いただければと思います。   この関連で,実務の観点から申し上げますと,例えば,毎年の定時株主総会の招集の際に,同封する議決権行使書面に書面交付請求に関する催告への回答欄を設けておくなりして,これを利用して,株主の意思を確認するといったことも考えられると思います。これは,かなり効率的ではないかと思うのですけれども,ただ,こうしたことを可能にするためには,部会資料のA案にあります催告のタイミングについての「定時株主総会が終結したとき」という要件,それから,催告に「1か月以上の期間を定めて」という要件は,このままでは使えませんので,緩和していただく必要があると思います。   招集通知発送のタイミングで議決権行使書面を利用して催告するというのは,あくまで一つの例ですが,この書面交付請求の部分は,極めて実務と密接な関係がありますので,今,参考人の方々からもいろいろ御説明ありましたけれども,実務のイメージを持って,是非効率的なものとなるよう御検討いただきたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○竹林幹事 古本委員から御指摘等いただいた点も含めて,また検討したいと考えておりますけれども,1点,少し補足して御説明させていただければと思いますのが,もしかしたら御理解は頂いているのかもしれませんけれども,現在のA案の②,③,特に③というのが法律上意味を有する規定であるということでございます。確答が返ってこなければ撤回したものとみなすということでございまして,会社が,例えば,招集通知に返信用の封筒も付けておいて,任意の撤回をお願いし,撤回いただければ,それはそれで問題はないと思っております。A案には,株主の方から応答がなかったときに撤回したものとみなせるというメリットがあると考えております。 ○古本委員 ありがとうございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。よろしゅうございますでしょうか。小林委員,どうぞ。 ○小林委員 どうもありがとうございます。   私ども日本商工会議所としては,株主総会資料を電子的な方法で提供する考え方には,基本的に賛成です。ただ,株主数の少ない比較的規模の小さな会社を含め,全ての上場会社に電子化を義務付けることは現時点で必ずしも賛成ではないことを,まず前提として述べさせていただきます。   今回,書面交付請求について,前回よりも具体化された提案がなされました。しかしながら,商工会議所としましては,元々,各社が書面交付請求権を定款によって認めないことを,できれば認めていただきたいということを申し上げております。その立場から考えますと,個社ごとに送付を判断できるA案と整合すると考えております。   従前より商工会議所として,株主の書面請求権が累積しない仕組みが必要と申し上げてきました。今,古本委員からも御説明がありましたが,今回,A案で②の仕組みが入れられて,一定サイクルで確認できたとしても,この内容では,実務としてやりにくい点がございますので,もう少し検討していただければと存じます。   私どもが検討したところでは,株主ごとに3年間の時期を把握して管理することになると,3パターンの株主を管理することになります。その結果,実際にどのように催告等するかを分別管理する方法がきちんと整理されていないと,かなり煩雑な仕組みになるのではないかと考えております。例えば,2年ごとや事業年度ごとに,一定の時期を区切って,一斉に催告することがよいと考えます。先ほど御指摘があったように,最初に,誰が書面を必要とし,誰が必要ないかという仕分けをし,書面を送付することになると思います。このような場合は,通常,株主総会の参考書類などと一緒に封入して送るだろうと考えます。ここで,次の事業年度からは,必要であれば,これを送り返してください,ないしはチェック欄にチェックを入れてくださいというような,そういう書類を送ることで,個別に分別管理しなくても運用できるのではないでしょうか。   毎年が難しければ,例えば,3事業年度ごとに一斉に送る運用で御説明します。株式を取得したばかりで書面が必要だといった方が,取得直後に催告の紙が来ると手間かもしれませんが,一度,受け取ってしまえば,3年後まではその紙は来ないということになります。また,書面が必要だと思えば,紙を送り返すなど,書面交付請求をすればよいわけです。したがって,株主総会の参考書類などを送るときに,分別管理する手続が必要なくなるので,とても効率的だと考えております。先ほどの御指摘もあったように,必ずしも株主総会が終結したときだけではなくて,会社の判断で最初に一斉に送付し,それを基準として一定サイクルで一斉に送付可能になる仕組みも良いと思います。仕組みについては,もう少し中身を詰めていただけると有り難いと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。梅野幹事,どうぞ。 ○梅野幹事 ありがとうございます。   書面交付請求については,従前はB案のように,銘柄ごとに交付請求することを認めない形もあり得るのかと思っていたのですが,今回の部会資料を拝見しまして,個々の会社が電子化を推進するというインセンティブを持てる点,書面交付請求の累積を解決する方策が具体化されている点,さらに,発行会社との間でコストの取決めをすることが容易になるという点で,A案の方向を更に検討するということでよいと思いました。   ただし,A案の②,③の撤回とみなす手続については,民法上,何らかの催告をして,催告された側が不作為の場合には,現状維持というのが原則だと思いますが,これが違う形で転換されている点,もちろんそのような効果をもたらすためにそのような規定ぶりにしているわけですけれども,その点をどう考えるのかという論点があると思います。また,実務上,会社や株主の側から見て,若干分かりにくさが残る,あるいは煩瑣であるといった観点もあるのかと思いました。   より具体的に申し上げますと,通知をするに際しては,株主にとって,自分が通知の対象になっているということが明らかになるように通知をすることが望ましいと思います。そうすると,先ほど小林委員の方から分別管理という言葉が出ましたけれども,催告書面を送付する株主と,そうではない株主と分けるという必要が生じますが,これが名簿管理人の立場から見て,大した手間ではないということであればいいのですけれども,事務手続として,大変な面が残りはしないかと思います。また,会社の裁量とはいえ,毎年毎年,こういう形で催告を送るということも,かなり大変であろうと思われます。さらに,株主の立場から見ると,例えば,複数銘柄を所有している株主には,購入した年が違えば,別の会社から,毎年毎年,催告を受けるようなこととなって,全体として,ごちゃごちゃとした形になりかねない懸念があるように思いました。   そこで,小林委員の御指摘とも一致するのですけれども,私は第2回の会議で,定期的あるいは何年かに一度,書面交付請求をしている株主の意思を確認して,もう書面を受け取る必要がないという株主,あるいは回答がない株主については,書面交付請求の対象から外していくといった形で,書面交付請求の数を減らしていくことも考えられるのではないかと申し上げました。現在行われているワールドカップでも,オリンピックでもいいのですけれども,そういう3年とか4年といった期間を区切って,その年ごとに全社が一斉に催告をするといった形も,この②,③とは違う形で考えられるのではないかと思いました。   まとめて一斉にその年に来るわけですから,その方が株主としても分かりやすい。あるいは,そのような一斉催告をやる年には,証券取引所かどうか分かりませんけれども,周知徹底もできますし,あるいは,電子化によるメリットがこれだけありますよというような形の宣伝等もすることができると思います。このように,実務上,関係者にとってより分かりやすい形で進めることができると思った次第です。   そのほか,これも御指摘がありましたけれども,通知をする際に,例えば,アクセス通知,あるいは議決権行使書を送付する際に,一緒に催告をすることができた方が望ましいと思います。A案の②に,「定時株主総会が終結したときは」とありますが,必ずしも今の文言で,できないわけではないと思いますが,そういったことが許されるということを明らかにしていただけるとよいかと思いました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,前田委員,沖委員の順で。前田委員,どうぞ。 ○前田委員 どうもありがとうございます。   今回,せっかく電子化の措置を進めるのですから,書面交付請求をした株主が累積するという問題にどう対処するかが重要な考慮要素であり,この累積の問題にできる限りの対応策を盛り込めるような仕組みが望ましいのだと思います。   そして,累積の問題への対処として,3年ごとに会社が催告するという方法は優れていると思いますし,また,小林委員,梅野幹事のお話にありましたようなやり方も検討に値すると思いますが,いずれにせよ,累積の問題に対応しやすいという点で,私もA案を基礎にするのが良いのではないかというように思います。   ただ,A案で,口座管理機関を経由して請求するルートと並べて,直接株主名簿管理人に対して請求することができるルートまで設けるのがいいのかは,なお検討すべきではないかと思います。どちらのルートを採りましても,請求者が基準日時点で株式を有していなければ,その者を請求者から除外する措置が必要になりますけれども,ただ,株主名簿管理人への直接請求のルートですと,例えば,半年近くも前に株式を譲渡してしまったような者まで,名簿上の株主として請求してくる可能性があります。そのときに,株主名簿管理人の方で,その後の総株主通知と照合してその者を除外する措置を採るよりは,むしろ口座管理機関,振替機関のところで,基準日時点で株式を有していない者を一括して除外する措置を採る方が,全体としての事務処理は簡明ではないかとも思われるところです。   さらに,直接請求のルートですと,補足説明で指摘されるような本人確認の問題も出てまいります。これらのことを考慮しますと,直接請求のルートは認めない方がいいようにも思うのですけれども,ただ,ここは口座管理機関の側に過度の負担が掛からないようにはしなければならないのだろうと思います。   結論として,基本はA案が優れていると思うのですけれども,直接請求のルートを設けないA案というのも,選択肢としては,なお検討していいのではないかと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。   質問と意見を述べさせていただきます。   まず,証券保管振替機構様の方に質問させていただきます。   昨年10月の部会でお尋ねしたときには,書面交付請求権の銘柄ごとの行使,これは口座管理機関ごとであれば可能というような御説明であったと理解しております。この理解を前提としますと,今回A案を採って,銘柄ごとの書面交付請求を可能とした場合,口座管理機関が異なる複数の口座管理機関に同一銘柄の株式を持っていた場合には,それぞれ口座管理機関ごとに書面交付請求の行使をする必要があるということと,あと,仮に,口座管理機関で行使の有無が異なっていた場合の後の調整というのは,これは振替機関を通して行うことになるのでしょうか。それとも,株主名簿管理人の方で集約する際に,何らかのルールで統一するということになるのか,その点はいかがでございましょうか。 ○行森参考人 同じ銘柄を複数の口座管理機関に持っている場合は,どちらかの口座管理機関に届け出ていただければ,それを受け付けたものを,その銘柄の申請として処理することができると思います。もしそれが,Aの口座管理機関とBの口座管理機関に来たようなものが異なった形で,異なるというか,欲しいという申請ですから,異なることはないんですかね。配当金は取り方がいろいろあるんですけれども。   いずれにしろ,後から来たものを最新のものとして採用するというのが,この配当金参考案方式のベースの考え方ですので,同じような対応になるかと思います。 ○田中参考人 当社では,口座管理機関からの請求を名寄せ後のものとしてTAにつなぎますので,それは後から,例えば,撤回が来たら,名寄せ後のものとしてTAに通知しますので,TAさんの方では日付を見れば,どちらが最新のものかというのは分かるということになります。 ○沖委員 分かりました。ありがとうございました。   それでは,意見を申し上げます。銘柄ごとに書面交付請求を認めるA案に賛成ですので,A案を基本に仕組みを考えていただければと思います。書面交付請求を銘柄ごとに行使可能とすることが,株主の発行会社に対する権利であることと整合的でありますし,全銘柄についてのみ行使可能とすることから生ずる大きな無駄を避けることもできます。   また,これによって,各発行会社を書面交付請求の当事者と位置付けることができますので,御提案いただいているような撤回の確答の催告の制度を設けることも可能となりますし,口座管理機関の負担を制限し,費用の分担を容易にする観点からも合理的であると思われます。   御提案いただいているような撤回の催告の制度も是非必要なところですので,よろしく検討をお願いいたします。   この場合,3年以内に終了する事業年度のうち,最終のものに関する定時株主総会が終結したときとされている要件につきましては,先ほど来,古本委員や梅野幹事からも御提案がありましたように,その有効期間内の最後の定時総会のための電子提供措置事項を記載した書面の送付,これは書面交付請求権を行使した株主を対象とするものですが,その送付に併せて,催告の書面を送ることができるというようにした方が良いのではないかと考えます。   また,その後も,1年ごとに,定時総会ごとに撤回の催告を送れるような制度が望ましいと考えます。つまり,最初の有効期間が3年としても,その後の有効期間は1年でもよいのではないでしょうか。   また,先ほど梅野幹事から御指摘がありましたが,撤回の催告をして,確答がない場合に撤回したものとみなすというこの制度については,意思表示に関する規律の在り方としては,民法の無権代理の場合の追認の催告で,催告に回答がない場合は拒絶したものとみなすとなっておりますように,拒絶したものとみなすことが自然ではないかということや,あるいは株主の側で,撤回するかという催告が来たときに,それに回答しない場合の効果について,誤解が生ずるおそれもないわけではないように思います。   それで,代替案も考えてみたんですが,なかなか難しいとは思います。例えば,書面交付請求権に3年間の有効期間を設けて,株主又は会社が特に通知をしない場合には1年間自動更新とし,以後も同様とすると。会社は有効期間の最後の定時株主総会の電子提供措置事項を記載した書面の送付に併せて,1年間の更新をするかどうか回答を求める通知をし,回答がない場合には更新する意思がないものとみなすというような形も考えられるかとは思いますけれども,どちらがいいのかよく分かりません。御提案の内容がいいか分かりませんので,それはよく検討していただければいいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○邉関係官 梅野幹事の御提案のところで,少し御確認させていただきたい点があるのですけれども,会社側が一斉に催告の通知をする案を御説明いただいたかと思うんですけれども,そこでイメージされているのは,電子提供制度を採用している会社の全てが同じタイミングでということまで御想定されているのでしょうか。 ○梅野幹事 そこまで申し上げているのではなく,例えば,2020年に定時株主総会を開催する会社,あるいは2020年度中に事業年度の最終日が到来する会社の中で,3年に1回の周期が2020年に当たる会社においては,全て催告通知を発することができるという形にしておくことを考えました。それを裁量とするのか,それとも全て義務的にするのかという,そこまでは考えが及んでいませんでしたが,そういう形で平仄をそろえ,何年かに1回,そういう手続をとることにしては,分かりやすいのではないかと,その程度の考えでございました。 ○邉関係官 つまり,2020年度に株主総会を開催する会社については,株主に対してそのような催告を送ることができる,若しくは送らなければならないということを法律で規定するといった御提案ということになりますでしょうか。 ○梅野幹事 法律でやるのか,そこの具体的な期限については,会社法施行規則で定めるのかという考え方はあると思いますけれども,考え方としては,そういう方向性を考えておりました。 ○邉関係官 なるほど。それは,会社が電子提供制度を採用した時期が,例えば,2019年12月31日であっても,というところまで御想定されているのでしょうか。 ○梅野幹事 そこは,そういう形でそろえた方が分かりやすいと考えています。例えば,3年に1回,4年に1回やるとすると,当然,その直前に株式を購入され,書面交付請求をされた方も対象になるわけです。期間が短いからといって調整をしていくと,制度の分かりやすさというのがなくなってしまうので,期間が短いという問題が生じるとはいうものの,まとめてしまった方がいいのではないかと思いました。   それと,このように考えた背景としては,書面交付請求をされている株主というのは,やはりデジタル・ディバイドという傾向があり,かつ,長期保有されているような方が多いのではないかということから,直前に買った方が直ちに催告を受けるという場合というのは,それほど多くはないのではないかといった実質的な考慮もございます。 ○邉関係官 ありがとうございました。   もう1点,催告の効果につきまして,現状維持が原則なのではないかという御指摘もございましたけれども,書面交付請求を過去にしていた方について,書面交付請求がなかったものにするような枠組みを何か設けたらいいのかという御意見を部会の皆様から多くいただいていると理解しております。部会の皆様においては,現状維持ではないような効果を何らかの意味で持たせるべきではないかという問題意識をお持ちであると理解しております。   そういった仕組みを実現するために,有効期限を原則として設けて,有効期限の到来の際に通知をして,更に延長を申し出た人については,その期限が延びるといったような仕組みも御提案されていたかと思います。そのような規律を採用する際には,有効期限の到来については,必ず会社側で通知しなければならないという規律にする必要があるかどうかを検討する必要があるようにも思われます。   今は,催告は,「することができる」ということを前提にしておりますので,会社は催告をしてもいいししなくてもいいということを前提にしております。恐らく通知の相手先の数ですとか,あと通知のタイミングというものは変わってくる可能性があるため,そういったことも含めて,こちらの方で整理していきたいと思っております。 ○神田部会長 ありがとうございました。   それでは,藤田委員,田中幹事の順で。藤田委員,どうぞ。 ○藤田委員 これまで,振替株式については,銘柄ごとの書面交付請求を認めないという前提で議論してきましたし,私も,第11回会議を除くと,それに対して強く異論は唱えてきませんでした。そこで,まず,若干釈明から始めたいのですが,元々は銘柄ごとに書面交付請求をすることができるとする必要はない,なぜなら,問題は電子化に対応することができるか否かという株主の属性だからという議論をしてきたと思います。つまり銘柄ごとに選択が違ってくる必然性が必ずしもないということを言ってきたわけですが,ただ,これは,銘柄ごとに選択肢を認める必要性は必ずしもないということであって,一括して扱わなければならない,銘柄ごとの選択を認めてはならないという強い主張ではなかったと理解しています。少なくとも私は,そういう趣旨では申し上げてこなかったつもりです。むしろ,銘柄ごとの選択を認めるとすることは,システム上面倒なのではないか,個別の銘柄ごとの扱いを異にすることが面倒なのではないかという認識で,それなら銘柄ごとの選択を認めないということでも許容することはできるという議論をしてきたのだと思います。   さらに,第11回会議で,私は,銘柄ごとに書面交付請求をすることができるという形にすれば,各発行会社が自分の株主の電子化に応じるようなインセンティブを与える工夫が可能になるというメリットがある,例えば,書面投票用紙を送った株主に対して何らかのリウォードを与えるような工夫をしている会社がありますけれども,銘柄ごとに交付請求を認めるという形にすれば,同じような方法を発行会社で採用することができるようになるという意味があるのではないかといったことを申し上げました。   今回,口座管理機関等からの報告を聞いて,A案についてシステム対応可能である,実務的にも対応することができるどころか,そちらの方がやりやすいという感触を頂いたとすると,A案でいいというふうになるわけです。今までの議論の方向と相当大きく変わったような感じがするかもしれませんが,今申し上げたようなことからは,必ずしも矛盾するわけではありません。したがって,A案を支持したいというふうに考えております。   その際に,一部の方から指摘のあった個別銘柄ごとに書面交付請求を管理しなければいけないのが,投資家側のコストだということ,複数投資していれば毎年何か書面が来るかもしれないといったことは,やむを得ない最低限の負担だと言わざるを得ないと思います。電子化に飽くまで対応しない,必ず書面で総会関係書類を下さいという形で,多くの銘柄に投資した者が,催告に応じて返事するということも一切負担したくないという権利を認めるのは,行き過ぎだと思います。1回書面交付請求すれば,全ての銘柄について何年かは一切アクションとらなくてもいいというのは,投資家から見れば楽には違いないですけれども,それが認められないから不当な負担を課しているとまで言うのは行き過ぎだと思います。   なお,A案を採る場合,第11回会議で申し上げましたとおり,会社側の自助努力で書面交付請求の数を減らすようなことを工夫もする余地があるので,実は期間制限というのを付けないと絶対いけないというわけではなく,3年の期間制限のないような形のA案というのもあり得るのではないかと思っています。ただ,書面交付請求の期間制限を認めないと,過去にした書面交付請求がいつまでもなくならないという危険が相当あると判断するのであれば,こういう期間制限を入れることもあり得るとは思いますから,反対はしません。   最後に事務局に,細かな質問ですが,②のところで,「定時株主総会が終結したときは」と書いてあるのですが,次のような形で催告するのはできないという趣旨でしょうか。つまり,書面交付請求に応じて会社は総会関係書類を3年目の総会に書類を送るわけですが,その際に「あなたの書面交付請求の効力は今年までですよ。今年は書類を送りますけれども,来年以降も同じように書類が欲しいのであれば,もう1回請求してください。」という趣旨の催告を入れて,返信のはがきを入れて送る。こういうことを禁じる趣旨でしょうか。終結後と書かれているのを文字通り読むと,駄目なような気もするのですが,この程度の柔軟性は認めてもいいと思います。これが駄目だということでしたら,どういう趣旨なのか――例えば,紛らわしいとか――,説明いただければと思います。 ○邉関係官 今,御指摘,御質問いただいた点ですけれども,この「終結したときは」というところは,終結したとき以降はいつでもという趣旨で書かせていただきました。終結した後ということになりますので,3年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会の招集の手続において,書面の交付と同時に催告をすることは難しいことにはなるのですけれども,ただ,4年目,つまり,その次の定時株主総会の招集の手続においてはすることができるということになるかと思います。   ここは,そもそも絶対に「定時株主総会が終結したときは」という文言でなければならないのかと問われれば,そこは検討の余地もあるところです。この文言を修正するのではなく,単に期間を3年ではなくて2年とする方がいいといったような考え方もあり得るかと思いますので,文言としての適切さと,3年や2年という期間の長さとのバランスの問題を考慮することになるのかなとも考えております。いずれにしましても,一定の期間経過後は,そういった書面の交付と同時に催告をすることも許容する趣旨でございます。文言につきましては,期間の点も含めて,今後検討していきたいと思っております。 ○神田部会長 よろしいでしょうか。   田中幹事,どうぞ。 ○田中幹事 非常に詳細な仕組みを構築,提案していただきまして,ありがとうございます。   私,前回の部会においては,書面交付請求は強行法規として保障すべきであり,また,累積への対応についても,各社が株主に対して書面交付請求の撤回を促進するような通知を行うという形で,各社の対応に任せればよいということを申し上げたわけですが,部会での審議で,やはり書面交付請求の累積は問題であるという意見が多かったこと,また,この問題に対応することができない場合,会社としては,定款による書面交付請求権自体の排除を検討せざるを得ない,といった議論になっていくということも考えまして,書面交付請求の累積の問題に対応するために,何らかの措置を設けるべきであると考えるに至りました。   その際,私,元々考えていたのは,累積に対応する方法としてもっとも簡明なのは,書面交付請求に効力期間を設けるということでありまして,簡単に言うと,B案の下で書面交付請求をすれば,その請求は3年間のみに限って効力があるものとし,その3年の期間中に基準日が到来する全ての定時株主総会において書面交付請求が有効であり,他方,3年が経過すると,その後の定時株主総会全てについて効力がなくなるということを考えておりました。つまり,3年の期間経過後は,書面交付請求は自動的に失効するという制度を考えておりました。   このような制度にしてもいいと思っていた理由としては,銘柄ごとに書面交付請求がなされ,その撤回も銘柄ごとになされるという制度に比べて,一度請求したら3年間,とにかく有効なんだという制度の方が,かえって株主にとっては,分かりやすさの観点から好ましいのではないかと考えたことがあります。また,株主に対する警告なく3年間で効力が切れてしまうと,不意打ちになるのではないかということに関しましては,各会社が株主総会の招集通知に,書面交付請求は3年間だけ有効なんですよという通知をする,これは,各株主に対する催告ということではなくて,招集通知に記載すべき情報提供事項のひとつとして,そういう記載を要求すればいいのではないかと考えておりました。   ただ,今回の御提案で,新たに,株主は銘柄ごとに書面交付請求することを前提にして,書面交付請求の効力も銘柄ごとに判断するという案が出てまいりまして,もしこの案でシステム上,問題なく対応することができるのであれば,この案の方が,各株主に対して,どの銘柄について書面交付請求を改めてしなければならないのかが分かると,そういう機会が確保されるという点で,より株主に対する手続保障になるとも考えられますので,この案で実務上,対応可能であるとなれば,私がこの案に反対する理由はございません。   ただ,もし実務上,各会社で株主ごとに書面交付請求の期間を管理して,その期間ごとに催告をするということが煩瑣であって,この制度では対応しかねるということであれば,各会社ごと,各株主ごとの対応を必要としない形,すなわち,B案を前提として,書面交付請求の効力は一律に3年で切れるという形にするという案もあり得るのではないかと考えております。   それ以外の点に関しましては,既に幾つか意見が出たところでありますが,現在のA案の②ですと,3年以内に終了する定時株主総会終結後に催告をするという形になっていますから,3年以内に終了する定時株主総会の招集通知によっては催告をすることができなくて,もう1回定時株主総会を経なければならないということになってくるかなと思っておりまして,ここは幾つか御意見がありましたように,3年以内に開催される最後の定時総会の招集通知で催告をすれば,その次の株主総会では,書面交付請求が撤回されたことになるような形で仕組みを作るということでいいのではないかと思います。   それから,先ほど議論がありました撤回という形にするのか,書面交付請求自体の期間に制限があるという形にする方がいいのかということですが,これは案外,表現だけの問題にとどまらない可能性があると思っております。まず,一つは,株主に対しては撤回するかどうかの催告だと言っておきながら,撤回しないと,つまり何も株主が返信をしないと自動的に撤回されたことになるという作りが,株主に対して不意打ちになるのではないかという問題です。それから,もう一つは,各会社が,こういう3年ごとの催告とは別に,毎定時株主総会の招集通知で,株主に書面交付請求の撤回を求めるということも予想されます。そのような各社の判断でなされる任意の撤回を求める通知と,この制度による撤回の催告とが,株主によって混同されるのではないかという心配もあります。   結局,制度の実質としては,書面交付請求に一定の効力期間を設けるということに違いはありません。ただ,その効力期間が終了する前に,会社から積極的なアクションをとって,株主に継続の機会を与えるということを要求するということです。そうした制度の実質が同じであれば,あとは表現の問題であり,とにかく株主に誤解を与えないようにするという観点から制度設計を考えるべきです。そのように考えますと,本制度については,書面交付請求の効力期間は3年で満了するものとし,その上で,会社は株主に対して,書面交付請求を更新するかどうかを問うものとしなければならないと,そのような形で制度を仕組む方が,恐らく株主にとっての分かりやすさの観点から,勝っていると思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   齊藤幹事,どうぞ。 ○齊藤幹事 ありがとうございます。   今議論になっている書面交付請求権の撤回ないし更新の制度につきまして,次のように考えることもできるのではないかと思います。   ②の部分は,各株主の意思確認ができてから3年間は書面の交付を保障するというアイデアに基づいて,つまり,効力と考えるのかどうかはともかくとして,株主の目から見て3年間は有効であるという仕組みを維持しようとされているとお見受けしました。   藤田委員の御意見にもありましたように,これを3年間有効な権利として作り込んでいきますと,このような制度になっていくように思われますが,それを権利としてどこまで保障するかは,政策的な判断を要求されるところでもございます。ですので,株主に3年間保障するというアイデアは一旦脇に置いて,各株主はいつでも交付請求はすることができる,しかしながら,会社の側で一斉に,3年ごとにそれをリセットする機会を与えるというような形で制度を作っていくと,各会社ごとに3年の始期はずれていくかもしれませんけれども,事務も分かりやすく,株主の意思も,それなりに尊重されている仕組みになるのではないかと思われます。   3年の途中で書面交付請求をした人は,3年間が経過する前の段階でリセットのタイミングが来て,意思確認の機会があるわけですけれども,意思確認の機会は与えられているので,それで十分ではないかと思います。   1年ごとでもいいのではないかという御意見がありましたが,1年ごとということになりますと,株主総会の時期も様々で,たくさんの銘柄に投資している人は,毎月はがきを送り返さなければいけない,かえって書面交付請求をするなという圧力が掛かっているような印象にもなるのではないか。それも含めてコストだというふうに言い切れるのかどうかというところがございまして,どうかなと思うところがございます。反面,一つのアイデアとしては,1年ごとであるとして,先ほどのやり取りの中でもございましたように,他の書類の送付と一緒に,意思確認の書面も送ることができるのだとすると,例えば,議決権行使書面の下の方に欄を作って,書面交付請求をされている株主の皆様,来年も必要ですかというところにチェックをして,必要な人は送り返してもらうということでございましたら,それほどコストは,株主の側も,いずれにしても議決権行使をするために送られてきている書類なのだから,議決権行使書面を送付するということぐらいは当然してくれるだろうということも考えることできますし,議決権行使書面の返送を促すということにもなるのではないかなと思います。そうすると,1年ごとでもいいかなというような感じもいたしました。 ○神田部会長 ありがとうございました。青委員,どうぞ。 ○青委員 書面交付請求の仕組みにつきましては,基本的には電子提供によることが原則であり,実態としても,電子提供が主流になって,書面交付の方は比較的量的には少なくなるという状況が,最終的に目指すべきところだと考えられます。その際,デジタル・ディバイドのため株主総会情報を電子的に受領できない方が,任意に,かつ,必要とする場合に書面の交付を選択することができるようにすべきということからいけば,一部の銘柄だけ必要な場合には,その銘柄だけの交付を求めることができる点で,B案よりもA案の方が優れていると思いますので,A案に賛成したいと考えております。   次に,A案の②か③かという点でございますが,やはり電子提供が原則で,必要な人について書面を送るという形が基本となるべきと考えられますし,今後,デジタル化が更に進展していくということが想定される中でございますので,特段の意思表示をしない場合には,一度だけ請求すれば永遠に書面が来るというよりは,都度,比較的短期間で,再度の意思確認をして,明確な意思表示があった場合に書面を送るという形にする方が,書面による提供を必要とする方かどうかという点をしっかり確認することができるという意味で,適切ではないかと考えております。   あと,いつの時点まで書面交付を請求することができるのかという点についてですが,B案の方では基準日までにということで明確に書かれていますが,A案の方では,「株式会社が基準日を定めたときは,当該基準日までにしなければならないことが想定されている」という形で4ページに書いていらっしゃるところ,A案にした場合には,必然的に基準日までにしなければならないということでもないかと思いますけれども,この点は実務上基準日までに請求をしていただくということ必要だということであれば,明確に基準日を期限とすることも一案として考えられるのではないかなと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。加藤幹事,どうぞ。 ○加藤幹事 ありがとうございます。   A案の②ですが,補足説明によりますと,A案でも基準日が設定された場合には,基準日までに書面交付請求をするということが想定されていると思います。   例えば,基準日が現在のように,3月決算の場合,3月31日であれば,事実上,3回分の定時総会について,書面交付請求の有効期限があるということになると思います。これに対して,例えば,会社が基準日を少し遅らせて5月の末にした場合,4月1日に書面交付請求をした株主については,4回分の定時株主総会について,書面交付請求が有効になると思います。そうすると,同じ定時株主総会の基準日を基準として書面交付請求の有効期限を決める場合に,請求の時期が少し異なるだけで,有効期限が定時総会3回分の株主と定時総会4回分の株主に分かれるのは,煩雑だと思います。このような事態が生じることを避けるという観点からは,齊藤幹事の御提案のように事業年度ベースで仕組みを構築した方が,簡潔なものができるのではないかと思いました。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   大分たくさん御意見いただきましたけれども,ほかにいかがでしょうか。   そうしますと,実務が動けばということではあるとは思いますけれども,A案を基本として,更に事務当局の方で,今日様々な御指摘を,特に②,③について頂きましたので,それを踏まえて検討していただくということになろうかと思います。よろしゅうございますでしょうか。   ありがとうございました。   それでは,2がありますので,部会資料2,EDINETを使用する場合の特例について,御質問,御意見がございましたら,お出しいただければと思います。いかがでしょうか。古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。   2の「EDINETを使用する場合の特例」のところでは,有価証券報告書の総会前提出の場合に限定して,こういった特例を適用しましょうと,こういう案になっているわけですけれども,やはり我々といたしましては,事業報告そのものをEDINET上で開示することができるようにしていただいて,そうした場合も電子提供措置の調査・中断の規定を適用しないという案を,是非御検討いただきたいと思います。   有報の総会前提出を行っている会社は,2016年12月期から2017年11月期の決算企業3,600社のうち,22社にすぎません。今後,有報の総会前提出に向けて,企業の背中を押そうという趣旨もあっての御提案だろうと思いますが,この特例をそうしたケースに限定してしまいますと,実用性に乏しい制度になるのではないかと思います。   電子提供制度を上場会社には一律に適用しようということであれば,私ども,上場企業としては,中断リスクのないサイトの用意を御検討いただきたいと思います。中断リスクがあるようでは,総会の有効性の問題が生じかねませんので,そういったリスクのないサイトをやはり御用意いただきたいと思います。その意味で,EDINETの開放をお願いしているということです。   もし,EDINETが使えないということであれば,TDnetを通じた開示については,調査・中断の規定を適用しないことを検討いただけないかと思います。以上でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。小林委員,どうぞ。 ○小林委員 ありがとうございます。   私どもも今の御意見と同様で,EDINETを使用する場合に,有価証券報告書の提出手続と同じタイミングにするのは反対です。元々の趣旨は,株主総会資料の電子提供の電子化であり,有価証券報告書の提出の目的とは異なるにもかかわらず,今回の提案は一緒に提出しようとするものとなっています。EDINETは全ての上場企業等が使いやすく,株主総会の参考資料等は,例えば,臨時報告書等の提出と同じタイミングで,アップロードできるようにしていただきと考えます。   現実的には,先ほども数字で御指摘がございました。実務的に作成している資料の作成順序からしても,現実的に同一タイミングでは非常に難しく,この御提案だと,非常に使い勝手が良くない制度だと思います。   今回の仕組みの中では,中断・調査から考えると,電子提供開始日から株主総会日の期間の10分の1とは,実際には2,3日です。もし,その期間にサーバーがダウンしたときに,それぞれの会社でアップロードしなければなりません。様々な事情でサーバーがダウンすることで中断した結果,株主総会を開催する条件を欠いてしまうことは,非常に深刻な問題であると思います。各社にそのようなリスクを背負わせない制度が必要であり,例えば,TDnetでもよいですし,また,法務省が別途御用意されるバックアップサーバーでもよいのですが,リスクを各企業に負わせないような対策を,別途考えていただきたいと存じます。   そうでなければ,例えば,全株主に株主総会資料のフルセットデリバリーを行うことで,電子提供が免責される仕組みも考えてほしいことは,商工会議所として従前より申し上げております。その考え方は,株主総会資料の電子化を行う考え方に反するかもしれません。しかしながら,株主総会の成立に対してのリスクがどうしても残るのであれば,今申し上げたような制度がない限り,電子化の仕組みそのものに賛成できなくなる懸念を持っており,意見として改めて申し上げたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。神作委員,どうぞ。 ○神作委員 ありがとうございます。   EDINETを使用する場合に,試案の第1の5,6,電子提供措置の中断と調査についての規律を適用しないという点に,私は賛成いたします。   また,有価証券報告書を定時株主総会の前に提出することが要件となっているということでございますけれども,有価証券報告書自体が,コーポレート・ガバナンスに関する情報,特に株主総会において議決権を行使するなど株主権の行使に当たって有用な情報をますます充実していく方向で議論が進んでいる中で,EDINETを用いて有価証券報告書を総会前に開示するということが行われれば,株主総会の様々な書類を単に電子化するにとどまらず,株主総会の実質的な深化と申しますか,株主総会をより充実させる方向に,今回の改正が役に立つという意味においても,是非私としては,EDINETを使用して株主総会関係情報を提供する場合には,有価証券報告書を開示していただくことを前提とするという考え方に立って改正を行っていただきますと大変有り難いと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。   2の論点につきましては,御提案の規律に賛成でありますので,併せて,公衆からのインターネットを通じた行政上のサービスであるEDINETのアクセスについての法的な位置付けにつきましても,会社法でできる範囲でお願いしたいと思います。   本文の(注)にあります,EDINETのホームアドレス以外に記載すべき事項としましては,株主総会招集通知に記載するEDINETのホームアドレス以外に,電子提供措置事項が,EDINETの提出書類である第何期の有価証券報告書の添付資料として掲載されているかという点,それから,その文書の標目を通知事項に入れるようにすべきであると考えます。現行のEDINETのウェブサイトの開示によりますと,株主総会招集通知が有価証券報告書の添付資料と,代替資料,添付資料の項目に掲載されておりますので,株主から見て分かりやすいように情報提供する必要があるというふうに考えております。   また,この添付書類の内容ですけれども,金商法や開示府令の規定を見ますと,会社法第438条第1項の書類,具体的には,計算書類や事業報告が添付書類と指定されているようでありまして,それ以外の議案や参考書類,連結決算書類は含まれていないように見えます。現行の開示の実務では,発行会社は株主総会招集通知全体を添付資料として掲載しているようですので,その中に電子提供措置事項が含まれております。しかし,新改正法が施行された後は,招集通知は簡略化されますので,電子提供措置事項がEDINETの掲載に利用されることを踏まえまして,添付内容,添付書類の内容についても整理した方が良いかもしれません。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。尾崎委員,どうぞ。 ○尾崎委員 どうもありがとうございます。   電子化が行き着くところとして,EDINETを利用するというのは,私も賛成です。この方向で考えていただければと思います。   ただ,補足説明に書かれておりますように,EDINETの法的位置付けというのでしょうか,これを,例えば,特則として会社法に置く場合に,EDINETという金商法の制度を表に,会社法の前面に出していいものなのかどうなのかというのが疑問としてあります。むしろ金融庁の方に聞かなければいけないのかもしれないのですが,先ほどもちょっと,例えば,法務省ネットみたいな発言が出てきたかと思うのですが,一般国民がアクセスしやすいという点では,EDINETであるとか,TDnetであるとか,様々な既存のネットワークを使う方が,コスト面でも非常によろしいかと思います。しかし,唯一危惧するのは,法的な側面というのでしょうか,これで果たして総会に必要な書類を提供したことになっているのだろうかという点での,発表媒体として,EDINETをどう会社法的に位置付ければいいのかと。   ですから,できるだけ早くにというか,可能な限り法的な位置付けを明確にする必要があると考えられる,となっていますが,この制度にいくためには,ここを明らかにしてほしいなというのが,私の個人的な意見です。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   今の点は,田原幹事,何かもしコメントとかあれば。 ○田原幹事 ありがとうございます。   御提案のとおりにしていただければというふうに思っておるわけでございます。その中で,法的な位置付けについて御指摘がございました。   金商法上,御指摘のとおり,有価証券報告書は,財務局等における公衆縦覧をもって有効ということにされておりますので,基本的に,それで投資家保護が図られているという立て付けになってございます。したがいまして,これを金商法の面で,なかなか見直すということについては,現時点では検討していないわけでございますけれども,これについて,そういった形で,インターネットで情報が提供されているということを会社法上,どう捉えていただいて,それについて位置付けを与えていただくということについては,特に大きな問題はない,あるいは,沖委員から御指摘があったように,不測の事態があったときに,追加的に何か措置を設けるということは,検討としてはあり得るのかと。   ただ,一般的には,システム更新などによる計画的な停止,これも長くて40時間ぐらいだと思いますけれども,そういうことを除きますと,運用は非常に安定していますし,バックアップサイトもございますので,基本的には原案のままでよろしいのではないかと,私どもとしては思っているところでございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○竹林幹事 いろいろ御意見をいただきまして,私どもとしても,EDINETを使った有価証券報告書の提出と併せてという,今のような御提案を入れたいとは考えているのですけれども,やはり,公衆がEDINETのホームページにアクセスをすることができるということが,どういうふうに法的に位置付けられるかについては,田原幹事から,金商法に位置付けるのは難しいという御意見も頂いたところなので,果たしてそのような,現在,根拠が必ずしも明確でないところで,会社法の特則として設けることができるかどうかというのは,今一度,慎重に検討しないといけないと考えているところでございます。   この点について,会社法の方で何か手当てを置いたらどうかという御提案も頂きましたけれども,そういう手当ては難しいと思いますが,その点も含めまして,改めて検討させていただきたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。柳澤委員,どうぞ。 ○柳澤委員 発言の機会を頂きまして,ありがとうございます。   EDINETを使用する場合の特例に関してですが,①と②に関連して,簡単に2点ほどコメントさせていただければと思います。   まず,①で記載された内容のとおり,電子提供措置事項を記載した有価証券報告書の提出の手続を電子提供措置開始日までにEDINETを使用して行った場合には,電子提供措置をとることを要しないとしている点に異論はございません。   なお,この特例を適用するに際しては,株主総会前に事業報告及び計算書類と有価証券報告書を一体的に開示する取組を望ましい方向で促進していくという観点が伴うものと認識しておりますので,電子提供措置事項が記載された有価証券報告書を株主総会前の早期のタイミングで提出する場合を適用対象とすることが妥当と考えております。   こうした趣旨から,EDINETを使用して開示を行った場合には,一定の規制に対して,政策的に緩和するとの考え方に立って,調査制度の適用除外として扱うといった補足的な整理や理由付けも可能ではないかと思います。   提出の時期に関しては,この特例が適用される場合であっても,議決権行使の議案精査期間を十分に確保するためには,株主総会前の早期のタイミングで開示されることが同様に欠かせない要件となってまいりますので,電子提供措置開始日については,投資顧問業協会の意見書でもお示ししているとおり,中間試案におけるA案,「株主総会の日の4週間前の日又は株主総会の招集の通知を発した日のいずれか早い日」を支持しております。   次に,②に関してですが,EDINETのホームアドレス以外に記載すべき事項として,EDINET上での具体的な検索方法に関して,追記しておくことが望ましいと考えております。EDINETにおいては,システム全体を効率的に運用する観点から,有価証券報告書の添付書類に係るウェブサイトのアドレスが付与されていませんので,個別の書類へのアクセスをより容易に行えるようにするためにも,検索方法の簡単な説明と併せて,検索に際して入力が必要な項目,例えば,証券コードや会社の名称,登録がされている場合には通称など,指定可能な検索条件に関して,株主総会の招集通知に記載しておくことが考えられると思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   青委員,どうぞ。 ○青委員 先ほど古本委員の方から,仮に,EDINETが使えないということになった場合に,TDnetでの掲載について,特別な法的な扱いをすべきではないかという御意見を頂戴いたしましたので,若干その点について申し上げさせていただきますと,現在私どもの方で,TDnetを使って,各上場会社様から株主総会の招集通知の御提出を頂いているというのは事実でございます。   ただし,提出の方法としてTDnetという,開示上の特別な手当てをしているシステムを使って御提出いただいているということでございますけれども,それらを掲載して一般の方の閲覧に供しているサイトは,弊社親会社の日本取引所グループのホームページを使っており,そこは一般的なウェブサイトと基本的には同じようなものであり,そこに格別な高い信頼性があるというところまで手当てできているかというと,一般的な企業様のホームページと同等のレベルのものではないかなというふうな認識を持っているところでございます。   また,仮に,システム障害が発生したような場合に,株主総会の招集手続の有効性に対する影響というのは,非常に重大ということになり得るところかと思いますので,そうした一般的なホームページの一つである弊社のウェブサイトを特別な扱いをされるということについては,十分慎重な検討が必要ではないかなというふうに考える次第でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますでしょうか。   それでは,この2につきましては,いろいろな御意見,御指摘を頂きましたので,更に検討を進めていただくということにさせていただければと思います。   それでは,ここで休憩を取らせていただきたいと思います。今3時10分ですので,15分間休憩を取らせていただき,3時25分に再開をさせていただきます。よろしくお願いします。           (休     憩) ○神田部会長 それでは,再開させていただきますけれども,よろしゅうございますでしょうか。   それでは,再開させていただきます。   部会資料23の第2についての御審議をお願いしたいと思います。まず,事務当局の説明をお願いいたします。 ○坂本関係官 それでは,「第2 株主提案権」について御説明いたします。   株主提案権につきましては,定款変更議案の数の数え方について,改めて御議論いただきたいと考えております。   先日の部会においては,定款変更議案の数の数え方についての具体的な判断基準として,例えば,いずれか一方の提案が他方の提案を論理的に前提とする関係にあり,分けて審議すべきでないと考えられる場合にのみ,関連性が認められるものとして,一つの議案として数えるものとする考え方や,そのような場合のみならず,株主が通知した提案の理由の内容も踏まえ,いずれか一方の提案が他方の提案と密接に関連すると合理的に認められる場合についても,関連性があるものとして,一の議案として数えるものとする考え方等について,どのように考えるかを御議論いただきました。   一つ目の考え方については,二つ目の考え方に比べて,解釈の余地が小さいため,明確性という観点から,一定の評価を示す意見もありましたが,一方の提案が他方の提案を論理的な前提としている場合のみならず,一方の提案が可決され,かつ,他方の提案が否決された場合において,整合性を欠くこととなるようなときについても,両提案の間に関連性を認めるべきであるという御指摘も頂きました。   他方で,二つ目の考え方につきましては,判断基準として不明確であり,会社が関連性の有無を判断することが難しいことなどを指摘する御意見もございましたが,一つ目のような考え方では関連性が認められる範囲が狭過ぎるとすると,二つ目の考え方のように考えるほかないのではないかというような御意見もあったところでございます。   そこで,以上のような具体的な判断基準についての御指摘等を踏まえ,考えられる定款変更議案の数の数え方について,A案及びB案として,二つの考え方を掲げております。   A案は,複数の事項をその内容とする定款変更議案については,当該複数の事項ごとに別個に可決又は否決されたとすれば,整合性を欠くこととなるおそれがあるときは,まとめて一の議案として,その数を数えるものとするという数え方でございます。いずれか一方の提案が可決され,かつ,他方の提案が否決された場合において,整合性を欠くこととなるおそれがあるときは,両提案の間に関連性を認め,両提案をまとめて一の議案として数えることを想定しております。   なお,A案の数え方には,更に提案の内容のみに着目して,整合性を欠くこととなるおそれがあるかどうかを判断するものとする考え方であるA-1案と,提案の内容のみならず,提案の理由の内容も踏まえて,整合性を欠くこととなるおそれがあるかどうかを判断するものとする考え方であるA-2案とがあり得ると考えております。   B案は,定款変更議案については,その内容において密接に関連する事項ごとに区分して,その数を数えるものとするという数え方でございます。株主が通知した提案の理由の内容も踏まえ,いずれか一方の提案が他方の提案とその内容において密接に関連すると合理的に認められる場合には,両提案の間に関連性を認め,両提案をまとめて一の議案として数えることを想定しております。   これらの考え方について御議論いただくに当たっては,具体的な定款変更の事例を前提として,それぞれの数え方による場合に,各事例における帰結にどのような差異を生ずることになるのかという点を踏まえて御議論いただくことが有益であると考えられますので,部会資料8ページの補足説明2では,具体的な定款変更の事例を三つ掲げた上で,各事例について,これらの考え方によった場合のあり得る結論について記載しております。こちらも御参考にしていただきつつ,どのような数え方が適切であるかについて御議論いただければと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,皆様方から御質問,御意見をお出しいただきたいと思います。いかがでございますでしょうか。古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。   「定款変更議案の数の数え方」につきましては,これまでの部会のときにも申し上げておりますが,A案,B案ということでいいますと,B案では,文言の解釈余地が広くなり過ぎて,判断基準として適切に機能するかどうか疑問があると思います。   また,A案の中に,今回はA-1案,A-2案と2案を提示していただいておりますが,実際の株主提案におきましては,提案理由が相当に不明確であったりして,提案の趣旨を理解するのがなかなか難しいという場合も少なくないと会員企業から聞いております。そうなりますと,A-2案であっても,ここに書いてあるようなクリアカットな例では分かりやすいかもしれませんが,実際に株主からの提案があった場合には,必ずしもうまく機能しない懸念があります。   そういうことからいたしますと,やや消去法的な結論になりますが,私どもとしては,部会資料にある三つの案の中では,A-1案が一番クリアで,望ましいと考えます。   ただ,現実的には,仮に,A-1案を採用したとしましても,総会前の多忙な時期に,提案された株主と議案の数について議論になるのではないかという懸念も残ります。濫用的な株主提案権の行使を十分に抑止するという目的からは,こういった議案の数え方ももちろん大事だというのは認識しておりますけれども,むしろ,業務執行事項に関する定款変更は提案できないとすることの方がはるかに有効であると思います。   経団連といたしましては,業務執行事項に関する定款変更議案の制限,これに加えまして,株主提案権の行使要件である,300個以上の議決権の撤廃ないし引上げ,これを強く要望しているということを改めて申し上げたいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。小林委員,どうぞ。 ○小林委員 どうもありがとうございます。   株主提案権の数え方につきまして,商工会議所内部でも検討いたしました。実務的な立場からは,できるだけ裁量の余地が小さい,解釈の幅が小さい内容であることが望ましいと考えています。   結果的に,株主との間での争いが起こりにくい基準にしていただきたいと思います。A-2案については,濫用的な提案の懸念のほか,今回の法務省提案の事例のように,理路整然とした株主提案が行われるとは,なかなか言えません。理由は非常に曖昧となる場合がございますので,そのような理由で分けると争いの原因になりかねない懸念がございます。したがって,A-2案を除いて,B案とA-1案で比較すれば,裁量の余地が少ないA-1案の方が望ましいと考えます。   数え方の議論の前提として,数が幾つかという議論も当然あります。元々,事務当局からの10個という御提案に対しては,商工会議所としては3個,せいぜい多くても5個という意見を申し上げております。そもそも,株主提案の数が多過ぎれば,数え方の基準があっても,余りワークしないのではないかと考えております。数そのものについても制限的に考えていただきたいと改めて申し上げます。 ○神田部会長 ありがとうございました。   それでは,沖委員,北村委員,田中幹事の順でお願いしたいと思います。沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。   A案とB案ですが,これはそれぞれ理由はあると思います。ただ,解釈基準として考えた場合に,B案におきましては,やはり,密接に関連するという密接性の判断のところで,提案株主と会社の間で価値観の対立に発展するおそれがあると思います。また,裁判で適用する解釈基準ということから見ましても,密接関連性というところがどうしても,やはり基準として,ちょっと難しいのではないかと思いますので,ここはA案ということにならざるを得ないのではないかと考えております。   そこで,A-1案とA-2案,つまり提案の理由を踏まえるかどうかということですけれども,これは,複数の事項が整合性,複数の事項について,一方だけで可決又は否決された場合に,整合性を欠くかという要件を判断するに当たって,やはり理由を踏まえないと,判断できない場合があると思われますので,そういう場合には,提案の理由を踏まえる必要があるということでは,A-2案になるということではないかと思います。   ただ,その場合の整合性というのは,提案で,株主が主観的な位置付けをしたことによる整合性でなくて,飽くまで論理としての整合性で判断するという意味で,提案の理由を踏まえるということになると思います。   そこで,A案についてですが,整合性を欠くおそれがあるという場合の,このおそれが必要かどうかというところが非常に問題だと思います。実際の株主提案の行使事例を見ておりますと,業務執行に様々な規制をする株主提案が出されています。その中には,役員の報酬であるとか,人事であるとか,実に様々なものが含まれております。そこでもし,整合性を欠くおそれがあるという,この基準を採用しますと,一旦業務執行への提案について,何か一つのものを提案すれば,その整合性からいって,ほかのものも提案しないといけないということになることが十分考えられます。そこで,おそれという基準を適用しますと,1個の議案として見る範囲が広範になり過ぎるおそれがあるのだと思います。   もう一つ,A案とB案の違いが,広い狭い,あるいは解釈の明確性以外に,もう一つ違いがありますのは,A案では整合性を要求するわけですけれども,整合性がある場合は,実は提案としては,複数ではなくて,1個として出さないといけない。議案としては,一方だけでは整合性がないということであれば,必ず両方出さなければならないというふうにも考えられるわけでありますけれども,そうすると,整合性を欠くおそれがあるという要件を適用しますと,提案する株主の側としても,整合性を欠くおそれがあるものは必ず提案として出さないといけないし,1個として出さないといけないということにもなってくるかと思います。   そうしますと,やはりおそれという要件は,過度に広過ぎるおそれがあるということになるかと思いますので,このおそれの部分は削除する方が適切ではないかと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○竹林幹事 沖委員から御指摘いただきました「おそれ」という文言について,何と申し上げたらいいか,なかなか難しいのですが,ここでは程度を問題としているわけではございませんで,可能性といたしまして,可決,否決のパターンが,可決・可決,否決・否決,可決・否決,否決・可決になるときに,どれか一つのパターンで整合性を欠くことになる,ほかのパターンだと整合性を欠かない,可決・可決,否決・否決だと欠かないのですけれども,そういう可能性がありますので,そういう組合せの中で,欠くこととなるおそれがあるという使い方をしておりまして,程度を問題としている趣旨ではございません。 ○神田部会長 ありがとうございました。北村委員,どうぞ。 ○北村委員 ありがとうございます。   提案の数の制限との関連で,複数の提案を一くくりにするという問題が出てきたのは,1人で多くの提案をするということが提案権の濫用である,あるいは,濫用といわなくても,不適切であるということが元々の発想だったと理解しております。そういう提案をする人たちが,仮に,B案が採用されたときに,どういう行動を採るかといいますと,恐らく,できるだけ複数の提案に関連性を持たせた提案理由を会社に通知してくるということになりそうです。   提案理由を株主総会参考書類に記載するのは,株主提案に説得力を持たせるためなのですけれども,提案議案数制限がある中で実質的に多くの提案をすることができるように提案理由を工夫するということが起こりますと,規制の本来の趣旨とは違う使われ方がされることになります。   部会資料23の8ページにあります③の例で,これはB案によりますと,一つの議案と数えるということです。こういうことであれば,③以外にも幾らでもこのような例ができそうで,法学部の学生に,どういう提案であれば一つにくくれるかを考えさせても面白いかなと思いましたけれども,やはりB案では広過ぎるという問題がありますし,当然,会社としては,複数の議案に関連があるかどうか,実質的に判断できないという問題が出てまいります。   そうすると,A案が適切だと思いますけれども,先ほど沖委員が指摘されたことと,私も認識は共通するわけでございますけれども,A-1案でありますと,例えば,8ページの②のような,提案理由を考慮すれば,明らかに2つの提案を両立させなければいけないような事案に対応しにくいということになります。一方で,先ほどから御指摘がありますように,提案理由まで考慮して複数の提案の整合性を判断することにしますと,B案を採用するのと同じような問題が出てくると思います。   したがって,私は,最終的にA-2案に賛成ではございますけれども,A-2案にある「提案の理由の内容も踏まえて」というところは,提案理由から見れば,客観的に明確に,整合性を欠く場合に限るべきだと思います。主観ではなくて,客観的に明確に,提案理由から見れば,二つを両立させないといけないという場合を一つと考える,こういう謙抑的なA-2案というのが私の考えでございます。 ○神田部会長 ありがとうございました。田中幹事,どうぞ。 ○田中幹事 今回の御提案で,それぞれの案がどのような関係にあるかが具体例によって明らかになったことで,大変有り難く思っております。その点に関し,その上で申し上げれば,今回の株主提案権の制限が,余りに多くの株主提案,あるいは名誉を毀損するような形の提案がなされることで,真剣な議案の検討も妨げられると。そういう事例が散発的ながら起きているという中で,株主総会の意思決定を適切に行えるようにするために,提案権を制限するということであって,株主提案権自体を,少なくとも真剣な株主提案権自体を制限するものではないというふうに考えてきました。   そういう点からすると,複数の定款条項であっても,変更提案であっても,それが密接に関係していて,ある目的を達成するために複数の定款条項の変更が必要になるという場合には,当然一緒に提案するということになるのではないかと。このような観点からしますと,B案でいいのではないかと考えております。   B案にしますと,今まで50個ぐらい定款変更議案を出してきたものを,全部1個にまとめるという形で提案してくるだろうということは,もちろんあるわけですけれども,やってくるということと,最終的にそれが受け入れられるかどうかは別でありまして,密接に関連しているがために,一緒に提案することが合理的であるという制約によって,おのずから制限が課されるであろうと考えております。   それから,B案ですと,どうしても不明確なケースが出てくるのではないかということも,そのとおりかと思いますが,しかし,今回の提案自体が,濫用的な株主権行使を制限するということであって,株主提案自体を使いにくくすることではないと理解しておりますので,不明確な部分がある場合は,裁判で争われるか,あるいは会社としては,法的な確実性の観点から,不明確な場合はそのまま提案を認めるという対応にならざるを得ないことも,またやむを得ないのではないかと考えております。   最近の株主提案の事例を見ますと,濫用的な提案があるということもさりながら,近年,株主提案について,かなりの賛成が集まるという事例が出てきていると,そういう現象があります。そして,そのような提案の相当数は,例えば,役員の個別報酬開示のような定款変更議案であります。このような状況にあって,会社法が株主提案権を制限するような改正を提案するということが,株主,株式市場に対して,どのように受け止められるかということも考える必要があると思っております。このタイミングは,もしかすると,最悪のタイミングになるおそれもあると考えております。   ここで,今回の改正は,一度に50個も100個も提案して,ほかの株主にとって迷惑を掛けるような提案を制約するのであって,機関投資家その他の株主の相当数の賛成がなされて,会社の経営に影響を与え得ると,そういうような株主提案を制限する意図は全くないのであるということを明確にする必要があると考えております。このようなことも含めて,私としてはB案に賛成したいと思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,三瓶委員,野村委員の順で。三瓶委員,どうぞ。 ○三瓶委員 ありがとうございます。   結論から申し上げると,私は,A案かなというふうに思っています。   まず,多くの方もおっしゃっていましたけれども,B案については,「密接に関連」というところについて,本当に決議における必要かつ十分な条件ということを備えているかどうか。これを判断するのが難しいであろうということから,まず落としています。   A-1案とA-2案なんですけれども,例えば,株主として提案権を行使するときに,しかも,今議論されている上限を設けたときに,どういうことをしたいのかというと,手元にある提案のうち,できるだけ多くの提案を上げたいというふうに思うわけですね。同時に,せっかく提案するからには,その決議は可決するように持って行きたいというふうに考えるのが通常だと思います。そこで,両方を達成しようとしたときに,提案の数が多ければ,一つの議案に複数盛り込むようなことが起こり得るということだと思います。   ここで,複数の提案内容がイコール的な理由でつながっているということが,A-2案であると思います。けれども,それは提案する側からすると,理由がつながっているのかもしれないんですけれども,提案株主ではない株主が議決権行使をする場面で考えたときには,必ずしも提案の理由の内容が整合的になっていないかもしれない。   例えば,今回,事例で①から③を挙げていただきましたけれども,その中の②というのが,A-1案とA-2案の判断が異なるケースだと思いますけれども,ここで,内容だけでいうと,事業目的に貸金業と不動産管理業を追加するというのが一つ,内容ですね。ただ,そこに理由として,D社というのが出てきます。このD社というのが,正にそういうことをなりわいとしているんでしょうけれども,提案する側からすると,この二つの業を加えることとD社というのが密接に関わっているんだけれども,議決権行使する側からすると,この貸金業と不動産管理業を追加するときに,D社にさせなくてもいい,又は,D社に何らかの固有の問題がある場合には,ここについては違うんだということで,ここは切り離して考えた方がいいかもしれません。なので,この株主提案議案について議決権行使をする側にとっては,それは必ずしも必要かつ十分ということにならない可能性があるということです。   それからすると,A-1案では,議案を二つ提出しなければいけないわけですけれども,そのときに,その二つの議案について,どれだけ関連性があって,両方とも可決してもらいたいかというのは,議案説明で明確に記載してもらうということが,多くの株主に諮って検討してもらうときの最も公平な手段ではないかと思います。   このような例が2018年にも1件ありました。それは会社提案の定款変更でしたけれども,全く異なることが二つ,同じ定款変更議案に入っていました。一方は賛成したくて,一方は反対であるときに,反対の部分の理由が非常に強かったので,我々は反対しました。しかし,これは正直言って,ある種のコンプロマイズをしたわけで,本当はそれぞれについて,賛否を明確に表明したいわけです。ですから,そういったことが起こり得るような議案の提出で,多くの株主に議決権行使の際に妥協させるというような要素を多く含むものは好ましくないというふうに考えます。   それと,ちょっとこれは脱線かもしれませんが,そもそもそういう意味では,今ここで議論しているのは,相互に関連するものは一つにまとめるか,まとめないかというような感じで議論されていますけれども,むしろ提案する側の方に,よくよく考えてもらうという意味では,独立して矛盾なく成立し得る事項というのは一つにまとめるべきではないという,そういった,議決権行使をする側からして,それぞれについて明確な賛否を表明しやすいようにという一つの目的というか,意義をどこかで伝えられるといいなと思っています。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,野村委員,前田委員,梅野幹事,中東幹事の順でお願いしたいと思います。野村委員,どうぞ。 ○野村委員 まず,結論的に申し上げますと,B案のくくり方も,田中幹事がおっしゃられたような形で,一定の合理性はあるとは思うんですけれども,やはりちょっと漠然とし過ぎている感もあるように思いますので,A案をベースにしながら,前回の会議,前々回だったでしょうか,藤田委員の方から示された提案の可能性というものを考えますと,やはり何らかの形で,A-2案のような形のくくり方が合理的なのではないかなというふうに感じている次第であります。   ただ,そのようになりますと,提案理由というのは確かに,先ほど来から出ていますように,漠然としていて,不明確であり,どういうことなのかよく分からないという場合がありますので,この場合については,そのリスクを提案者の方の側に負っていただかなければいけないと思います。そこで,A-2案のくくり方を採用する場合には,明確な理由が示されていない場合には,複数の議案として扱われるような形にすることが必要なのではないかなとは思っております。   ただ,それとの関係で,少し疑問に思うというか,ちょっと,私自身だけが分からないのかもしれないんですけれども,恐らく,このくくり方の問題というので,会社側の方が提案のくくり方が,最初,株主の側から示されたものが大き過ぎて,数の中に収まらないのではないかと思って,対応するときには一応,株主,提案者との間にコミュニケーションを取るんだとは思います。その結果,会社がやはり多いというふうに考えて,そのくくりを小さくし,上限を超えていますという扱いをするという選択肢をした場合は,当該提案者と会社との間のトラブルというものが生じてはいますけれども,提案が扱われませんでしたので,株主総会での決議はなされませんので,株主総会の決議の効力には跳ねてこないという可能性があるのではないかなとは思います。   それに対して,会社側の方が,その交渉の過程の中で,このくくりでしようがないという形で,ある程度理解を示した上で,提案を採用し,株主提案を数の中に収まっているという形で示し,それが株主総会で審議された結果,極めて例外かもしれませんけれども,可決されたということになった場合には,他の株主の方の側から,それを不満とする株主が,数え方がおかしいのではないかということで,上限を超えているということから,株主総会の決議を争ってくる可能性があるのではないかと思います。   この点で,会社側が同意をした上で,株主提案として招集通知に記載しているという行為がどう評価されるのかが,ちょっとよく分からないということと,それから,そのような形の紛争を惹起することが合理的なのかどうかということもちょっと,やや分かりにくいところがあるものですから,その辺りのところを御教示いただければ有り難いなと思います。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○竹林幹事 野村委員から御指摘いただいた点ですけれども,私どもは,数を超えた場合に無効にするのは難しくて,拒否事由にしていますと申し上げていますが,今御指摘いただいたような点も考慮しまして,超えていても,それは拒否することができるものを拒否しなかったという扱いにするので,総会の決議の無効等にはならないというような考え方を採っております。   ただ,拒否することはできるけれども,この人についてはたくさん採り,この人についてはぎりぎりしか採らないというような場合には,株主間の平等をどう考えるかという別の問題はあり得ると考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。前田委員,どうぞ。 ○前田委員 どうもありがとうございます。   既に議論がありますように,A案の基準が,確かに明確性の点では優れているとは思うのですけれども,A案の基準には当たらないけれども,提案内容を合理的に解釈すれば,まとめて一つと見るべき場合が,やはり残るのだと思います。   具体的には,事例③のようなケースで,先ほど北村委員の御指摘されたような,単なる作文としてではなくて,真剣に株主が,この提案理由を示して,こういう提案をしてきたときに,これを議案2個と数えてしまうのは,個数上限を最終的に幾つに設定するのかにも関わるとは思いますけれども,提案権行使を抑え過ぎることにならないかという懸念があります。   他方,B案は,基準として不明確だという御指摘はそのとおりであり,明文規定を置く意味も乏しくなってしまうと思います。そこで例えば,折衷案として,もし明文規定を置くのであれば,B案をベースに,A案の場合をその例示として定めておくということも考えられるのではないかと思います。   一方だけ可決されると整合性を欠くこととなる場合,その他の密接に関連する場合というような,文言はまた詰めて考える必要がありますけれども,A案よりは柔軟に,一つと解釈することができる場合を認める余地は残すような基準にしておいた方がいいのではないかというように思います。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。梅野幹事,どうぞ。 ○梅野幹事 ありがとうございます。   この点,以前御発言があったかと思いますが,この提案権に関する議案の数のくくり方の論点というのは,実際上は,提案権の個数をどう考えるかという点と,やはり密接に関連していると考えています。   日弁連としては,役員選任議案を除いて,10を超えることはできないという中間試案のB-2案に賛成しております。そういった観点からすると,また,濫用的行使を制限するという今回の目的に鑑みると,A-1案というのは少し狭過ぎるかと思う一方,B案かA-2案かというのは,なかなか悩ましい選択だといった議論をしてまいりました。   確かにB案というのは,判断基準として曖昧ではございますけれども,密接関連性といった要件を使われている場面というのは他でもあると思いますし,裁判例の集積等を待つという考え方もあり得ると思います。   逆に,A-2案であっても,整合性という規範的概念が入りますので,提案理由をどのような形で提示するかによって,やはり幅があり得るものだろうと思います。そういった意味では,B案と比較すれば,より明確性があるように見えるものの,実際には,なかなか難しい問題が,生じるのではないかと考えております。   結局のところ,提案権の個数をどうするかということも念頭に入れた上,決めていくというアプローチを採らざるを得ないのかと考えている次第でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。中東幹事,どうぞ。 ○中東幹事 私は三瓶委員がおっしゃったことに賛成でして,その点から若干補足させていただければと思います。   最終的には,梅野幹事がおっしゃいましたように,数の問題といってしまえば数の問題なので,そう強い意見ではございませんが,やはり議決権を行使する株主として意思決定をするのが株主総会ですので,そこではどう扱われるかという観点から考えるべきかと思います。   その点で,②の事例は,よく考えていただいたとは思うのですが,吸収合併そのものは,株主提案という形ではなされませんので,会社提案として扱い方を考えますと,全部で1つのもの,つまり吸収合併と,(a)の貸金業追加と(b)の不動産管理業の追加,これらは1つのものということが,はっきり分かると思います。もしも吸収合併が将来あることを予定して,株主がこういう事業目的を追加しておきたいということになると,合併そのものにイニシアチブを持てない株主が,目的の二つの追加を提案するという話になります。そうなりますと,議決権を行使する株主としては,合併があるかどうか分からないけれども,その合併に備えて目的を二つ追加しようという話になりますので,提案者の気持ちと議決権を行使する人の気持ちがずれてしまう可能性があると思います。   そういう意味で,三瓶委員がおっしゃったように,提案者が幾ら理由を言っても,複数の受け取り方があって,その提案者と総会で議決権行使する株主との間で違うということになると,やはりA-1案の方が明確であろうと考えています。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。大体よろしいでしょうか。   藤田委員,どうぞ。 ○藤田委員 ありがとうございます。   今回の提案のA案というのは,前回私が申し上げたことをかなり大幅に取り入れていただいておりますので,基本的にA案に賛成という立場での発言になります。まずB案は,さすがに余りにも曖昧で,基準にならないというのが最大の問題点だと思います。コーポレート・ガバナンスの強化に関する提案だと称して,いろいろな定款変更議案を出してきたときに,常にこれを一つとしてカウントしなければいけないかと言われると,ちょっと行き過ぎで,趣旨の違う提案を濫用的に一つの定款変更議案だと出してくることを防ぐための基準になっていないと思います。   次に,A案の中だと,沖委員あるいは小林委員の言われたように,理由を勘案しないと論理整合性を判断できないケースというのはあり得るから,およそ理由はカウントしてはいけないというふうなルールにはしにくいと思います。   そして,理由をカウントすると,曖昧だという批判が少なからずあったことについては,どのくらい,どういう形でカウントするかということ次第だと思います。まず株主側が議案ごとに区分して提案をしなければいけないというルールの下で,株主があえて一つの提案だと言ってきた場合に,理由を勘案すれば,ばらばらに決議すれば明らかに論理的,客観的に整合性を欠くといえない限り一つとはカウントしてもらえないという基準だと考えると,そこまで曖昧にならないような気もします。株主の主観的な希望として,是非とも複数のものを一体として賛成してほしい,つまみ食い的に取り入れてもらっては困ると幾ら思っていても,それだけだと一つではないという基準であれば,それほど曖昧にならないように思います。   提案理由が曖昧で分かりません,そんな提案が多いのですというふうな御意見がありましたが,提案理由が曖昧で分からなければ,一体として扱う必要ないだけだと思います。提案理由が論理的に独立に可決,否決することができるのであれば別提案という発想なので,曖昧な提案理由を幾ら書かれたって,一つとして扱う必要はないというだけだと思います。   A案が厳し過ぎるかということは,結局,最終的に,どのぐらいの制限,数の制限になるかに依存することだと思います。A案,B案の対立が利いてくるのは,飽くまで定款変更議案として出されるものの範囲で,それで,しかもそれが,3とか5とかいう制限の中ですと,相当深刻ですけれども,今,比較的有力と思われている10という提案上限数で議論するのであれば,A案を採ることが,B案を採った場合に比べて証券市場に悪いインパクトを与える提案になっているとまでは思わないと思います。   最後ちょっと,提案の数え方との関係で,やや違った点で御質問させていただきたいと思います。株主提案をする株主の側として,幾つかの内容を含んだ提案を一つのものとして出す際に,それがばらばらに決議しても論理不整合とまではいえない,したがって複数としてカウントしてくれていいけれども,一体として審議してほしい,一括してイエスかノーを決めてほしいという議案の提出の仕方というのは許されるのでしょうか。つまり今議論しているのは,飽くまで提案上限数との関係での議案のカウントの仕方に関するルールなので,今言ったような議案の提出を妨げるルールではないと理解しているのですけれども,この点はいかがでしょうか。 ○竹林幹事 今御質問いただいた点につきましては,条件付けをするような形にしていただければ,より明確だとは思いますけれども,否定されるものではないのではないかと考えております。 ○神田部会長 よろしいでしょうか。   ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら,この項目につきましては,いろいろ多様な御意見を頂きましたので,A案にもA-1案とA-2案があるし,その発展型みたいなものもあると思いますけれども,どちらかというと,A案の方が多かったとは思いますけれども,なおB案支持の御意見もありましたので,今日お出しいただきました御指摘を踏まえて,更に事務当局の方で検討を進めていただくことにしたいと思います。   それでは,次に進んでもよろしゅうございますでしょうか。   それでは,第3の部分ですね。10ページですけれども,取締役の報酬等について,事務当局からの御説明をお願いいたします。 ○邉関係官 それでは,10ページ目,「第3 取締役の報酬等」について御説明いたします。   第3の本文におきましては,先日の当部会における議論を踏まえ,上場会社に対象会社を限定して,募集事項として,募集株式と引換えに金銭の払込みを要しない旨を定めることなどを認める乙案のような見直しをするものとすることについて,どのように考えるかを論点として掲げています。また,(注)においては,乙案のような見直しをするものとした場合における資本金等の取扱いについての一案を記載しております。   資本金等の取扱いは,会計処理の内容を踏まえて検討することが重要であるとも思われますが,現時点において,確定的な会計基準は存在しません,そこで,本日は,例えば,企業会計基準第8号に準じた形で会計処理をすることになった場合に,会社法上,検討を要すべき点について御議論いただきたいと考えております。   例えば,事前交付型の場合には,計上した費用の額に対応して,資本金及び資本準備金を増額するものとすること,会計年度ごとに費用の計上に対応して,資本金及び資本準備金を増額するものとすること,費用の戻入れをする必要がある場合には,対応する金額をその他資本剰余金から減額するものとすることなどについて,会社法の観点から御意見等を伺いたいと考えております。   なお,その他資本剰余金の減額については,現行法において,例えば,新株発行が無効となり,出資された金額を株式会社が出資者に対して返還しなければならないときは,増加した資本金,資本準備金を減額するのではなく,その他資本剰余金を減額するものと解されていることを参考にしております。   御説明は以上となります。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,御質問,御意見をお出しいただければと思います。いかがでしょうか。古本委員,どうぞ。 ○古本委員 ありがとうございます。   第3の論点につきましては,現在の実務,相殺構成を採っておりますが,現在の実務に特段不都合はありませんので,このような新しい規律は不要であると,今までも申し上げてまいりましたし,その考えに変わりはございません。   これまでも,会社法では,払込期日までに出資が履行されなければ,株主となる権利を失うとするなど,資産の裏付けがない状態で株式が発行されて権利行使がなされるというようなことは認めていないものと理解しております。実務上のニーズが低いにもかかわらず,株式報酬等のためだけに特例的な措置を導入する必要が本当にあるのか,経団連の会員企業の中でも議論いたしましたけれども,皆疑問を持っているところです。   また,事前交付型について,条件未達成で株式の全部ないし一部を没収する場合に,費用の戻入れとして,「その他資本剰余金」の額を減額するという案が示されていますが,費用の戻入れをするということは,役務の提供がなく,株式発行の対価の裏付けがなかったということになるはずです。そうしたときに,「その他資本剰余金」が減少して,資本金や資本準備金は維持されるというのが本当に妥当なのか,違和感が残るところです。   繰り返しになりますが,実務上のニーズの低い制度をあえて導入した結果,仮に,何らかの弊害が生じることによって,株式の無償交付とは別の制度にまで影響が及ぶようなことも懸念されますので,経団連としては,現行制度を維持すべきと考えます。 ○神田部会長 ありがとうございました。   順番は梅野幹事,小林委員なのですけれども,関連すると思われますので,小林委員が先でもよろしいですか。小林委員,どうぞ。 ○小林委員 どうもありがとうございます。   株式報酬等については,金銭的な裏付けのない資本金の増加につながり,現行法の規定をあえて見直す必要はないのではないかということを,従前より商工会議所として申し上げてきております。理由として,特に中小企業において,思わぬ支配権の拡大・移転や経営の安定性が毀損される懸念,株式の公正な評価額の算定について困難となることが挙げられ,本制度には賛成いたしかねます。   今回,対象を上場会社のみに限る案が提案されました。特に中小企業に配慮いただきたいとは申し上げていますが,上場企業だから安心ということにはなりません。資本金が必ずしも大きくないような中小の上場企業においても,今申し上げたような懸念が拭えるとまで言えるのかは,疑問がございます。今回のような構成での無償発行による株式報酬,特に事前交付型については,慎重に考えていく必要があると思います。現時点で,あえて見直す必要はないのではないかということは,意見として申し上げたいと存じます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。梅野幹事,どうぞ。 ○梅野幹事 ありがとうございます。   今回の部会資料で御提案いただいている方向性につきましては,沖委員とともに,昨年になりますが,参考資料10を出させていただいておりまして,その12頁に,会計処理について,無償発行における資本金増加額等は,役務提供の時期及びその対価並びに交付される株式の価値と合致するように,適切な時期及び金額により計上するものとするという意見を述べさせていただきました。   そのような方向性に沿ったものと理解しておりますので,基本的な方向性としては賛成を致します。また,詳細にわたる議論を準備してきていませんが,実務においても,こういった形での取組を必要とするニーズもあると理解しております。   その上で,質問ですけれども,事前交付型,例えば,部会資料でいうと11ページの2,あるいは,13ページの(2)の部分ですけれども,事後交付型に関連して,5月23日の部会において,株式交付に関する契約を締結した日における株式の公正な評価額で算定し,再測定はしないことを検討していただきたい旨を述べました。これは,事後交付型においては,株価上昇があると,上昇した分がコスト増になるという形で,費用が確定できないという問題があるということを背景にしています。今回,事後交付型について御説明を頂いているのですが,会計基準の問題なのかもしれませんが,必ずしも十分理解していないので,質問させてください。   13ページの(2)には,事後交付型の場合について,ストック・オプション会計基準に規定するストック・オプションや,会社計算規則第55条第8項に規定する株式等交付請求権には該当しないものの,これらに準じた会計処理をするとございます。その上で,新株予約権に準ずる科目として計上し,株式が発行されたときに,当該科目に計上された帳簿価格を基準として,資本金等増加限度額を定めるとされています。   ここで,新株予約権に準ずる科目として計上する金額は,私が理解したところでは,ストック・オプション会計基準に準じて,付与日現在の公正な評価額として,結局のところ,株式報酬を付与した時点の株価と整理していただいたと考えております。要は,その時点で株価を基に確定することができるというような整理かと理解したのですが,そういった理解が正しいのかどうかという点をお伺いしたいというのが1点目です。   2点目ですけれども,ストック・オプション会計基準によると,6項の(1)だと思いますが,権利行使の条件変更を除き,新株予約権の計上金額を見直さないというような定めがございます。そうしますと,事後交付型の株式報酬についても,これに準じて,先ほど述べました新株予約権に準ずる科目に計上する金額は,株式報酬付与時に原則として確定して,その後は見直さないというふうに整理されているというように,理解したのですけれども,そういった理解で正しいかどうかという点について,もしコメントを頂ければと思った次第です。どうぞよろしくお願いします。 ○神田部会長 ありがとうございました。 ○邉関係官 御質問の点なんですが,私どもの部会資料で書いておりますとおり,今の企業会計基準第8号をベースに,それに準ずるものとして考えていけば,事後交付型の場合の公正価値のベースになるのは,付与時ということになろうかと思います。   ただ,そもそも会計処理がどういうものとなるのかが現時点においてはっきりしていないという点は留意しておく必要がございます。仮に,こういった無償発行のような規律を新たに設けて,それに見合った会計処理というものを考えていくときに,それが8号に準じたものになるかという点は,現時点において必ずしも明らかではなく,適切な会計処理というものがどのようなものとなるかについては,別途然るべき場で議論していただく必要があろうかと考えております。   ですので,本日は,取りあえず8号を参考にした場合にどうなるのかという形で御議論いただきたいというふうに思っておりますけれども,8号を参考にすれば,今御指摘いただいたような考え方ということになるのではないかなと思っております。 ○梅野幹事 そういった形でおまとめいただいて,大変有り難いと思います。ありがとうございます。 ○神田部会長 よろしゅうございますでしょうか。沖委員,どうぞ。 ○沖委員 ありがとうございます。   株式報酬につきましては,中間試案の乙案,これを,その後の当部会における審議によりまして議論されております上場株式に限った案ということを前提に意見を申し上げます。   今回の部会資料で,ストック・オプション等に関する会計基準を参考に,事前交付型の株式報酬についてお示しの費用計上と資本金,資本準備金の計上方法は適切と思われますので,賛成いたします。   あと,先ほど梅野幹事から質問があり,法務省の方からお答えいただいた点ですけれども,事後交付型の場合の費用の計上,あるいは新株予約権に準じた金額の計上ですけれども,これを付与日の株式の公正評価額を基準に,一応考えられるのではないかという点も正当と思いますので,その方向で御検討いただければというふうに希望しております。   事後交付型の場合も,これに準じて考えますと,費用計上や資本計上の基準となる公正評価額が付与時の株価ということになりますので,発行時までの株価の変動により見直さないという扱いをすることになるかと思われます。   このような考え方が,もし正しいとすれば,現物出資方式による譲渡制限付株式の費用計上につきまして,現行法下での会計処理としては,発行時の株価に基づいてされていると思いますが,これと異なった扱いになり,費用の追加計上が不要になるというニーズも出てくるのではないかと思います。御検討をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○神田部会長 ありがとうございました。   それでは,坂本幹事,神作委員,松井幹事の順で。坂本幹事,どうぞ。 ○坂本幹事 ありがとうございます。   これまで,この点については,経済産業省の方から,コーポレート・ガバナンスの強化という大きな方向性の中で,役員に適切なインセンティブを付与するという意味で,株式報酬というのは有効な手段であるということで,こういった株式報酬というものの意義を踏まえて,無償発行について,正面から会社法の中で位置付けていくということについては,今後に向けて,こういった有効な手段の積極的な活用を促すものであり,そういった環境整備につながるということで賛同してきておりました。   他方で,部会の中で,濫用のおそれがあるということもございまして,今回のように上場企業に限って認めるということで,乙案でお示しいただいているのは合理的な案だと思いますので,賛成を致します。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。神作委員,どうぞ。 ○神作委員 ありがとうございます。   金銭の払込みを要しない取締役の報酬等として,株を交付するということを認めた場合に,会計処理はどのようになりますか,特に資本金及び資本準備金は増加するのでしょうかという御質問をさせていただいておりました。その点について御検討いただき,誠にありがとうございます。   1点御質問と,それから,それに関連する御意見を申し上げさせていただきます。資料で前提となっている募集株式の発行であるという前提で発言いたします。取締役から提供を受ける役務に対応する金額が,資本金又は資本準備金として計上されるという御提案です。特にお尋ねしたい点が,資料の10ページ一番下の行③のところでございますけれども,費用の戻入れをする必要がある場合についてでございます。   この場合には,補足説明等の方,あるいは資料の11ページの冒頭にございますように,その他資本剰余金から減額するということとなっておりますけれども,13ページの解説を読みますと,これはゼロあるいはマイナスになることはないという前提でしょうか。マイナスになることもあるという前提だとすると,今の会社法の考え方とは大分違うのではないかというふうに思いますが,その他資本剰余金がマイナスになるというときの扱いというのは,自己株式の処分等と同様に,その他利益剰余金から減額するということとなるのでしょうか。その点について御確認させていただきたいというのが第1点です。   それから,第2点は,これは意見にわたる部分ですけれども,募集株式の発行として,資本金又は資本準備金に計上したのであれば,それを減額するときには,むしろ債権者保護手続を踏むというのが,会社法の考え方ではないかと思いますけれども,そのような考え方は最初から排除されているように思われます。その点については,どのように理解されているのでしょうか。むしろ,資本金及び資本準備金を減額するのであれば,減資の手続あるいは資本準備金の減資の手続にのっとって行うというのが,会社法の考え方と整合するように思われます。   後半の部分は私の意見の部分でございますけれども,前半の部分について御教示いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。 ○邉関係官 この部会資料で書かせていただいている補足説明ですけれども,まず,その他資本剰余金が,少なくとも会計基準の第1号では,期中には負になることを許容しているという理解がベースになっております。   私どもの方でむしろ皆様方の御見解を伺いたいと思っている点が,会社法上その他資本剰余金が負になってはいけないのかどうかという点でございます。文献等を見ますと,例えば,新株発行が無効の場合に,その他資本剰余金を減額した場合には,その時点で振替えをする必要はないのではないかといったような見解も見られます。   補足説明は,場合によっては,期中を超えて負になることもあり得るのではないかという考え方があり得ることも想定しておりますが,本日は,このような点も含めて,御意見を頂戴したいと考えております。 ○神田部会長 ありがとうございました。   そんなところで,よろしゅうございますか。 ○神作委員 ありがとうございます。 ○神田部会長 それでは,松井幹事,どうぞ。 ○松井幹事 ありがとうございます。   今議論されておりました点につきまして,会計処理として,資本金や資本準備金を毎年の見積りが変動していく中で,増やしたり減らしたりということを毎年やっていくという形を採るよりは,やはり,その他資本剰余金の額の調整という形で,最終的に事前交付した株式がどうなるのかが確定するまでやっていくという方が安定的ではないかというふうに,個人的には思っております。   その際に,期をまたいで,その他資本剰余金の残高が負の値になるということが許され得るかどうかということについて,会社法は特に何か立場を持っていないのではないかとは思うんですけれども,これは会計処理の側で,こういった考え方というのが難しいというふうに言われるかどうかというだけのことではないかと思っております。   これ,本件は乙案として,上場会社の株式についてのみ,A案のような規律を認めるという割り切りをしていて,この点について,特に問題があるとは思いません。この処理が新設されるということについては,非常に良いことではないかと思います。   先ほど,裏付けのない資本の増加というようなことも言われましたけれども,実際のところは,本当はまだサービスを受けていないものについて,株式を計上するということが,恐らく問題なわけでありまして,相殺構成を採ったら問題が解決するといった類いのものではないと思いますので,発行に対応して資本金は増やさずに,費用と見合いで増やしていくというやり方は,正しい方向ではないかというふうに考えます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。尾崎委員,どうぞ。 ○尾崎委員 その他資本剰余金は負になってはいけないのか。恐らく答えは,私の感覚では,いけなくはないと思っております。ただ,会社計算規則などで,零をボトムラインにしているから,期末においては,調整することができるその他利益剰余金で対応しているのだと,私は理解しています。   ただ,それが本当に会計学的に,そうしなければいけないのかという点では,恐らく,どこにも書かれていなかったような気がします。剰余金区分原則があるからといって,そこまでやらなければいけない話ではなくて,むしろ区分原則からするなら,その他資本剰余金で対応した方が,よほど筋が通っているのではないかと思います。ですから,これは明らかに会計マターではなくて,法律事項として,法務省令で十分対応することができるのではないかと思っております。   まだ確認は十分しておりませんが,ここに書かれているのは,私,シミュレーションとしては完璧だろうと思っておりまして,これでいくなら,これしか,今のところ,参考にする会計基準は恐らくないのだろうなと思っておりますので,大変口幅ったい言い方ですが,よくできているなと思っております。   ただ,この問題というのは,私,最初から株式報酬に反対している立場でございまして,一つは,濫用については,なるほどそうかもしれないのですが,上場会社においても,小林委員の方から時々主張されますように,会社に怪しげな運用をされる危険性というのはあり得ると思います。この点は,濫用だという形で対応すればいいのだといえば,いいのかもしれませんが,やはり議決権株式であるときは,議決権株式を取締役に渡してしまって,そこが支配のゆがみになりはしないだろうかということです。   遡って,今,松井委員の方からも御発言があったように,まだサービスいただいていない,将来のサービスを現在価値で渡して,そして,報酬を渡す,これ自体は,私は構わないことだと思っておりまして,私も賛成する立場なのですが,ただ,それが今すぐにでも行使することができる議決権株式であるというところがどうなのかと危惧しています。これは,現物出資方式を採ったりとか,あるいは相殺方式を採ったとしても,実際上は,実は危ない部分が相当あるのではないかという感じがしておりますが,随分前の回に申し上げたように,理論的には,いわゆる役務出資というのでしょうか,そういうふうなことも詰める必要があるのかなと思っています。   株式報酬は,報酬規制の問題であるとともに,やはり株式の発行規制の問題も兼ねている要素があり,そして,その議決権の裏付けとして,議決権ですが,議決権の裏付けとして,一体何が必要であるのかという根本的な話をしなければならない,私なんかはそういう問題提起がされていると感じております。そこのところは,まだまだ勉強させていただきたいと思っておりますが,さきほどの会計については,そういうふうな意見でございます。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。田中幹事,どうぞ。 ○田中幹事 ありがとうございます。   株式型報酬に関しましては,私,以前から,甲案として,株式そのものを交付するという形式を認めることが簡潔明瞭であって,現在の現物出資構成あるいは相殺構成よりも分かりやすいという観点から,甲案に賛成しております。   濫用の懸念につきましては,相殺構成あるいは現物出資構成の下でも存在する問題であり,現行法の規律の枠内で対応することができると考えております。ただし,これまでの部会で,そもそも企業側から,現在の構成で十分対応することができ,あえてこういう制度を設けなくても結構であるという御意見のまま変わらないということと,それから,このような株式無償交付ができることを法律が認めたときに,一種のアナウンスコメント効果が働いて,これまで起こってこなかったような濫用が起きるという可能性も,まったくないとはいえないと思います。   そういった点では,私は,いまでも甲案,乙案の中では,甲案に賛成であり,もし乙案だけということであれば,もちろん乙案にも賛成ということになるわけですが,実務が消極的である中で,それを押し切ってまで入れる必要はないのではないかとも考えております。   私自身が必要性を強調したいのは,むしろ(注)の部分でありまして,会計処理に関しては,株式を交付する無償交付型の株式報酬でなく,現在の現物出資又は相殺構成でも,会計処理が問題になるわけであります。もっと言えば,そのときこそ問題になるということがあります。例えば,現物出資構成ですと,一見,金銭請求権を現物出資したその時点で,全額資本金又は資本準備金として計上されるということになりそうであるのに対し,会計上のルールでは,役務の提供期間に対応して費用を計上し,それに見合った資本を計上するということになるはずです。これは現行の法令では,少なくとも省令によって,このような会計処理を明確化しないと,会計ルールの変更だけでできるか疑問なところであります。   そういった点で,この(注)の処理は,今回の甲案,乙案が実現するかどうかにかかわらず,是非法令で手当てしていただいて,会計処理の在り方について,合理的なルールを設けるようにしていただきたいと思います。   それから,先ほど来議論になっております,費用の戻入れをしたときの会計処理に関してですが,私としては,その他資本剰余金の額を減額するということがよろしいかと思います。先ほど神作委員から,私の解釈が間違っていなければ,資本金及び資本準備金を減少するということも考えられるのではないかという御指摘があったようにも思いますが,もしも減資をするということになりますと,債権者保護手続を要せず減資するとなれば,債権者を害するわけですし,また,あくまで会計上の処理だけのことであるにもかかわらず,債権者保護手続をとった上で減資することを求めるのは,実務に大きな負担を課すことになりますので,その他資本剰余金の額を減額するということで差し支えないかと思います。   その他資本剰余金の額がマイナスになってはいけないのかという問題については,これもこれまでの御意見ありましたように,会社法的には,その他資本剰余自体というよりは,それとその他利益剰余金を合わせた剰余金にのみ意味があります。それが分配可能額算定の基礎ですので。剰余金の内訳の部分については,余り会社法は明確なポリシーを持っていないといいますか,会社法学者は,余り大したことは言えないのではないかと思います。ですから,会計に関するルールの一つとして,主として投資家に対する分かりやすさという観点から決めていただければいいのではないかと思います。少なくとも法的には,その他資本剰余金の額がマイナスになることも差し支えないと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。大体よろしゅうございますでしょうか。   それでは,この項目につきましては,いろいろ御意見いただきましたので,御指摘を踏まえて先に進むということにさせていただきたいと思います。   今日はまだ,本来皆様方から頂いているお時間からすると,少し早いかとは思いますけれども,この程度とさせていただきたいと思います。   それでは,次回の日程等につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○竹林幹事 次回でございますけれども,日時は8月1日水曜日午後1時30分から午後5時30分までを予定させていただいております。場所は,法務省1階の東京保護観察所会議室となります。   次回におきましても,今回と同様に,会社法制の見直しに関する要綱案の作成に向けた個別論点の更なる検討として,別論点につきまして,御審議をお願いしたいと考えております。 ○神田部会長 どうもありがとうございました。   それでは,今日の会議はこれで閉会とさせていただきます。本日も大変熱心な御審議を頂きまして,誠にありがとうございました。 ―了―