法制審議会 特別養子制度部会 第3回会議 議事録 第1 日 時  平成30年9月4日(火)    自 午後 1時30分                         至 午後 5時25分 第2 場 所  東京高等検察庁第二会議室 第3 議 題  特別養子制度の見直しに当たっての検討課題(二読) 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは,予定しておりました時刻になりましたので,法制審議会特別養子制度部会の第3回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中,また天候の悪い中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   議事に先立ちまして,前回会議以降,幹事に人事異動がございました。内閣法制局参事官の岡田幸人幹事が御退任され,新たに衣斐瑞穂幹事が御就任されました。なお,衣斐幹事は本日,御都合により御欠席をされております。   続きまして,配布資料につきまして,説明を事務当局の方にお願いいたします。 ○倉重関係官 それでは,配布資料の確認を致します。   まず,本日の御審議の資料として部会資料3を配布しております。参考資料としましては,前回会議において御質問がありました,民法における悪意の遺棄及び虐待の意味について整理した表をお配りしております。また,部会資料3の第2に関する御審議において利用していただくため,同資料10ページ掲載の制度の対比表を抜粋したものをお配りしております。さらに,本日御欠席の磯谷委員から意見書が提出されましたので,配布しております。内容につきましては,後ほど部会資料の説明をする際に関連部分の要旨を併せてお伝えすることといたします。同時に,幡野幹事から年齢要件に関してフランス法に関する資料が,それから,床谷委員から手続に関してドイツ法に関する資料が提出されてございます。それぞれに関する御審議を頂く冒頭のところで,先生方に内容について御説明いただこうと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは早速,本日の議事に入りたいと思います。   本日の議事は,「特別養子制度の見直しに当たっての検討課題」についてということでございますけれども,前回会議における審議を踏まえまして,全体的な論点につきまして二読の検討を行う,二度目の検討を行おうというものでございます。配布しております部会資料に基づきまして御議論を頂戴したいと思っておりますが,部会資料のうち第1の部分,これが年齢要件に関する検討というものになります。そして,第2,特別養子縁組成立の審判手続の見直しという部分が7ページから始まりまして,第3が16ページでございます。そして,最後の,第4が20ページということになりますが,これら第2,第3,第4は,実親の同意を中心に特別養子縁組成立手続の在り方というのを検討するという部分になっております。   そこで,本日はこの第1から第4までのうち,まず第1につきまして90分程度,審議を行い,そこで休憩を取り,その後,後半で第2から第4まで併せて御議論を頂くということにしたいと思っております。   なお,審議に先立ちまして,今後のスケジュールにつきまして少し御説明をしていただいた方がよいかと思いますので,事務当局の方におかれましては,部会の今後のスケジュールについて,もしお決まりのところがあれば,御説明を頂ければと思います。 ○山口幹事 それでは,スケジュールについて事務当局の考えを申し述べます。   事務当局としましては,これまでの審議を通じて特別養子制度の利用を促進する方策をとることが喫緊の課題であることを再認識したところでございます。これまでの御議論により,論点の所在も明らかになってまいりましたので,今後は仮の取りまとめ,すなわち中間試案の取りまとめに向けて御審議をお願いしたいと考えております。   次回,第4回会議では中間試案の取りまとめに向けた検討をお願いし,第5回会議で中間試案を取りまとめていただき,その後,これについてパブリックコメントを募集することを予定しております。第6回会議では,パブリックコメントはまだ募集中だと思われますので,ヒアリングを実施してはいかがかと考えております。ヒアリングの対象者としましては,かねて養子となる者の上限年齢との関係で心理学の知見を得ておいた方がよいとの御指摘があったことを踏まえまして,心理学の専門家にお願いすることが考えられます。また,実際に養親として特別養子縁組を経験された方からもお話を伺ってはいかがかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ただいま,事務当局の方から今後のスケジュールについての御説明がありましたけれども,何か御質問,御意見等はございますでしょうか。 ○藤林委員 ヒアリングの件なのですけれども,養親さんからヒアリングも必要だと思うのですけれども,適切な方がいらっしゃるかどうかはまだ十分把握しておりませんけれども,子どもの立場で,過去,特別養子縁組ができなかった方の意見も聴いていただくと,とても参考になるのではないかと思っております。私は直接,その方とはコンタクトはないのですけれども,ある方を介して,そういう意見を持っていらっしゃるという方を存じ上げておりますので,もし可能性があれば,こういった場でヒアリングが可能かどうかというのを打診してみたいと思っておりますけれども,いかがでしょうか。 ○大村部会長 当事者の方々の率直なところの御意見を聴くというのは有益なことかと思いますが,実際に来ていただくことが可能な方がいるかどうかという問題もありますので,事務当局の方で御検討いただく,その際,藤林委員にも御相談させていただくということでよろしいでしょうか。ありがとうございます。   ほかに,いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。それでは,スケジュールにつきましては,直前に御説明があった方向で進めさせていただくということにさせていただきます。   では,本日の審議そのものに入りたいと思いますが,第1の部分から参ります。「第1 養子となる者の年齢要件の見直し」についてという点でございますけれども,この点につきまして,まず,事務当局から資料の説明をお願いいたします。 ○吉野関係官 関係官の吉野でございます。それでは御説明いたします。   お手元の部会資料3を御覧ください。初めにこの資料の全体について御説明いたしますと,先ほど部会長からも御紹介がございましたが,今回の部会資料は四つの項目による構成としております。すなわち第1として,これから御審議いただく予定の「養子となる者の年齢要件の見直し」,第2といたしまして「特別養子縁組成立の審判手続の見直し」,これは7ページ以下でございます。第3として「実親による同意の撤回を制限する方策」,そして第4として「特別養子縁組の成立についての実親の同意を要しないことをあらかじめ確定する方策」という構成としております。もっとも,先ほど部会長からも御指摘がございましたとおり,第2から第4については相互に関連性が高い項目であると考えているところでございます。   それでは,第1について御説明いたします。部会資料のうち1ページから6ページにかけて記載しております第1が年齢要件の見直しについて記載したものでございます。前回の部会におきましては,特別養子縁組における養子となる者の上限年齢について様々な御意見を頂いたところですが,上限年齢について検討するに当たりましては,特別養子制度の趣旨・目的や,その位置付けを踏まえたものでなければならないと考えられます。そこで,今回の部会資料におきましては,1ページ目の第1の2におきまして「特別養子制度の趣旨・目的について」,2ページ目の第1の3におきまして「特別養子制度の位置付け」,これは主に普通養子制度との関係につきまして,前回の部会における議論を踏まえ,整理を致したものでございます。   まず,特別養子制度の趣旨・目的につきましては,従前,特別養子制度は,養親子間に実親子間と同様の実質的親子関係を形成させることを目的とするものと理解されてきましたけれども,前回部会での議論を踏まえまして,部会資料2(2)のアからエに記載のとおり四つの考え方に整理を致しました。そして,これら四つの考え方について事務当局が考察した内容につきましては3ページの4(1)に記載をさせていただいております。このアからエの考え方につきましては必ずしも択一的なものというものではなく,これらの考え方から直ちに具体的な上限年齢が定まるということにもなりませんが,上限年齢の方向性を検討する上で重要と考えられます。   次に,特別養子制度の位置付けにつきましては,前回部会におきましても,普通養子縁組ではなく特別養子縁組をすることが適切な子とはどのような子かという問題について議論がございましたが,前回部会におきましてはこの点について明確なコンセンサスは得られなかったように思われます。もっとも上限年齢を引き上げることとしますと,特別な類型である特別養子縁組をすることができる子の範囲を拡大することになるため,その必要性を裏付ける立法事実につきましては丁寧に検討する必要がございます。   具体的には,3ページの最後から4ページにかけてでございますが,事務当局として考察した内容を記載しております。普通養子縁組ではなく特別養子縁組をすることが適切な子とはどのような子かにつきまして,①として,育成(養育)を要する子であり,かつ,②実親との関係を終了させてまでして養親との安定的な関係を築くことを要する子ではないかと提案をさせていただいております。   最後に,4ページの5には派生する二つの論点についても記載しております。養親となる者の年齢要件,それから養親と養子との年齢差要件についてでございまして,前回の部会資料からの抜粋でございます。この辺りにつきましても御意見を頂けますと有り難く存じます。   また,本日御欠席の磯谷委員から書面にて御意見を頂いておりますので,概要を御紹介いたします。まず,部会資料第1の2(2)のアからエの考え方につきまして,磯谷委員は,アを維持しつつ実親子間と同様の実質的親子関係をやや広く解するべきではないか,その上で上限年齢について検討するべきではないかとの御意見です。   その根拠といたしまして,磯谷委員は第1に,特別養子縁組の制度趣旨を抜本的に見直すのであれば,普通養子縁組とのすみ分けあるいは統合を考えることが不可欠だと思われるが,今回は時間的にそこまで検討するのは難しいと思われること,第2に,現状では真実告知が推奨されていることや,家族関係そのものが多様化し,実親子のモデルそのものも揺れ動いていると思われることなどを考慮すると,実親子間と同様の実質的親子関係といっても,従来よりも広めに捉えることが適当ではないかと考えられるということを挙げておられます。他方,エにつきましては慎重に考えるべきだとの御意見を頂いております。   また,上限年齢を検討する際には発達心理学等の知見を踏まえる必要があること,及びその際の磯谷委員の関心事についても御意見を頂いております。詳細につきましては,机上配布させていただいております磯谷委員からの資料を御覧ください。   第1についての事務当局の説明は以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。養子となる者の年齢を上げるに当たって,何を根拠とするかということで,ここには制度の趣旨・目的,あるいは制度の位置付けということが挙げられ,あり得る幾つかの考え方が書かれているかと思います。御説明にもありましたように,ここに挙げられているものは必ずしも択一的なものというわけではございません。また,このどれかに与するとしても,そこから一義的に年齢の線が出てくるというものでもございませんけれども,出てきた年齢については,それぞれの考え方から一定の説明が付かないと,立法としては望ましくないだろうということで,このようなものを出していただいたと理解をしております。   この年齢について,意見の一致を得るのはなかなか難しいことではありますけれども,ここに挙がっているようなことと関連付けて,あるいは別の要素を挙げられて,更に委員,幹事から御意見を伺うことができればと思いますが,いかがでございましょうか。 ○棚村委員 前回欠席をしましたので,前回の議論が十分消化できているか分からないのですが,おまとめいただいた特別養子縁組の目的という分類の仕方も非常に参考にはなると思うのです。先ほど部会長の方からも御説明があったように,こういうふうに目的に応じて一応目安として分けるということではいいかと思うのですが,私自身はほかの国との比較の中でいくと,やはり実子型,あるいは日本でいうと,わらの上の養子型と,要するに,小さいときから本当に実の子と同じように早い段階から育てるというタイプはかなり見られるわけです。それから,虐待とか遺棄とかということで親が適切に育てられない,そういう困難な子どもたちへの対応をする,虐待型とか,あるいは被虐待児童型とか,主としてそういう形で使われる場合もあります。もう一つは,再婚とかそういうことに伴って連れ子型という形で,比較的低年齢の子で現状でも使いたいという人はいらっしゃると思うのです。それから,親族,例えば,いろいろな事情があって育てられないのだけれども,親族だったら任せられるということで,親族型というのもあると思います。そして,娘が子宮を取ってしまったためにおばあちゃんが代わりに産むとか,そういう生殖補助医療ですね,代理出産みたいなものとか,そういう生殖医療型みたいなもので特別養子縁組は利用される,転用される,それがいいかどうかというのは別として生殖医療型もあります。   それから,国際養子という形で,国内に供給源とか適切な子どもがいなくて相当待たされるとかそういうようなことで,国際型というのですか,国際養子みたいな形で特別養子が使われる場面もございます。海外との比較でいくと,やはり国内養子が減ってくると国際養子という流れも出てきますし,それから,赤ちゃん養子というのが,例えば中絶なんかが比較的認められるようになって婚外子の差別も減ってくるということになると,赤ちゃん養子から,やはり遺棄とか虐待とかに対する対応型というのも出てくるわけです。   それぞれの国の事情とか状況というのはやはり大分違うと思うのですけれども,日本の場合,児相とかそういうところの厚労省の調査の結果,それから,最高裁から出していただいた特別養子の審判のときの年齢とかを考えても,かなりやはり実子型というか,わらの上の養子型というのは使われているわけです。実子型が使いづらくなると困るのではないか。他方で,今こうやって虐待型とか連れ子,親族型とか,生殖補助医療型とか,グローバル化していったときの,そういう国際養子みたいな形で出てくる子どもたちも含めて考えると,特別養子の利用目的や利用形態も少し多様化しているのではないか。   つまり,整理していただいたアとかイとかウとかエで私自身は非常に参考にはなったのですけれども,やはり一番,年齢を考えるときに,過去の実績とか形成された親子関係まで,それを追認したりするために特別養子を使うかどうかという問題と,現に多く利用されている実子型,わらの上の養子型みたいなのはかなりあって,国際養子なんかでもかなり小さな子どもがターゲットになってやる場合に,特別養子の制度目的や利用がしづらいような要件設定とかも非常に困るように思います。それから,特別養子の目的が現実の養育を離れて広がりすぎることで,特に普通養子との関連の中で,やはり普通養子というのがセカンダリーになったり,普通養子自体が,ある意味では二次的,三次的な位置付けにおかれることに問題はないのかという心配もあります。やはり安定的な家庭での養育,家庭的な養育を確保するというのが重要な養子制度の目的であり,あるいは後見制度とか関連する制度の目的とも一致するとすれば,一番大きな基本的な目的というのは安定的,継続的な家庭養育,これを確保するということの中で,少し議論をしていくということが有用かなと考えています。   ア,イ,ウ,エという整理も非常に有り難いのですけれども,大きな違いを見ていると,エはかなり広く捉えていて,そして,ある意味では既に行われている養育関係とかそういうものに対してもきちんと法的な基礎を与えていこうということになるので,多分これを採っていくと,自動的に年齢要件もかなり上がるようなイメージがあると思うのです。それで,磯谷委員から紹介があったように,実親子と同様の親子関係ということで,実子型とか,わらの上の養子型を考えると,かなり低くするというイメージになってしまいます。私は,現在の段階ですけれども,社会的な状況とかいろいろなニーズが変わってくれば,当然今も多様な利用の仕方がされているわけで,今の多様な利用の仕方を全くおかしいということであれば,もちろんほかの制度を用意しなければいけないわけです。しかし,現状の利用のされ方を踏まえた上で,やはり理念とか原形みたいなものというのはある程度認めつつ,それをどこまで広げられていくのが,今回の時間的な制約とかいろいろな中でいったい何ができるかと,そういう議論をすべきではないかというイメージを持っております。   それで,磯谷先生がかなり端的に言ってくださって,6歳という今のものを念頭に置きながら,それを広げるような議論をすべきだということについては,立法当時の議論はそうであったし,あっせんの形式も児童相談所がやるのだと,そういうスタートする前のときのイメージでした。それから30年も経って,今現実に特別養子が利用されている現状ですね,それが利用しづらいし,利用をもっと促進するということで,広げることにむしろ賛成はするのですけれども,ただ,特別養子って一体何なのだと,親子関係を断絶させて,なおかつ新しい養親との親子関係を作るというときに,親子関係も多様化をしているので,私自身はウについてはかなり魅力的な感じを持ちました。ただ,そういう意味で,各国のいろいろな養子法の沿革とか,あるいは流れを見ていますと,多様化しているもののどこにターゲットを当てるか,しかも里親制度とかそういう制度から養子縁組に移行するために,あるいはうまく移行させるために,特別養子というか断絶型の養子が使われている国と,そうではなくて,日本はまだ周辺の制度を割合と充実させる必要があると思うので,私自身少し,前提としてですけれども,実子型とか,わらの上の養子型という原形として考えているものと,それから,遺棄とか虐待とかそういうことが増えてきていますので,被虐待児対応型と,それから,親族という比較的近いところで行われるものとか,連れ子養子型とか,生殖補助医療型とか,国際養子に対応するものとか,そういうものが現状,使われているものについて,それがかえって使いづらいとか,何かやりにくくなるような改正というのは,要件の設定でも少し問題があるのではないか,むしろ,今の利用されている現状を前提とした上で,少しそれを広げていくというような改正提案がよいのではないか。   それで,それを限りなく広げたいのですけれども,残念ながら虐待とか遺棄型というのですか,それから,イギリスとかアメリカなんかでももう指摘されているのは,純然たる赤ちゃんというのは国際養子みたいなのでとっていって,むしろ虐待とか遺棄とか,そういう子どもたちに対して家庭的な養育を与えなければいけないと,そういう中で,アメリカも5万件,養子縁組が里親さんからされているのですけれども,待機しているのが10万人いるわけですから,結局,半分ぐらいはまだ家庭的養育としての養子縁組には達していないという状況です。イギリスとかも見ますと,年長者でかなり問題があって対応が困難な子どもたちに対しては専門的な経験とか支援を含めたり,補助を出したり,いろいろなことをしなければいけないということにもなりますので,今の日本の養子制度の利用の現状は,かなり赤ちゃん養子というか,低年齢の子どもたちを実の子どもと同じように育てたいというニーズがかなりありますので,それをどれくらい虐待型とか,それから,連れ子とか親族型とか生殖補助医療型とか多様化しているものにどこまで特別養子という制度を使うことを認めていくかと,そういう議論の中で,年齢要件の設定というのですか,そういうものをしてはどうかと考えました。   少し長くなりました。すみません。 ○大村部会長 ありがとうございました。類型的,多元的に考えて,それぞれに応じて少し広げていくことを考えるべきだというのが御発言の基本的なスタンスだと思って伺いました。   今,非常に幅広な御意見を伺いましたけれども,具体的な話に入る前に,厚生労働省の方から御報告があると伺っておりますので,まず,それを伺いまして,それから,今少し外国法の話も出ましたけれども,先ほど事務当局の方から御説明もありましたように,本日は幡野幹事と床谷委員からそれぞれ資料を出していただいております。床谷委員の方は手続に関わるものですので,後で御説明いただくことにいたしまして,幡野幹事のものは年齢要件に関わるものですので,厚生労働省の方から御説明を頂いた後,幡野幹事にこれの御説明を頂き,更に議論をするということにさせていただきたいと思います。   それでは,成松幹事,お願いいたします。 ○成松幹事 厚労省の家庭福祉課長でございます。   特別養子縁組に関しては,この部会で御議論を2回していただいているところでございますが,厚生労働省におきましても去る8月3日に社会保障審議会児童部会社会的養育専門委員会を開催させていただいて,その中でほかの議題と併せて,この部会における2回にわたる検討状況を報告させていただきました。その際出てきた意見を御紹介させていただければと思いますが,その中で,やはり12歳や15歳を超える子どもについて,親が欲しいという気持ちに対して応じられないことがあっていいのかという御意見もございました。あるいはその一方で,成長した後,実親の方がよかったと思うケースもあり得ることを考慮して検討を進めていくべきという御意見がありました。個別の委員の意見ですので,これが専門委員会全体の意見というわけではございませんが,そういった意見があったことをこの場で御紹介させていただきたいと思います。また引き続き,この部会の検討状況を我が省の社会的養育専門委員会にも御報告させていただきまして,その場で出た意見については適時,この部会でも御報告をしたいと思ってございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。厚労省の方の部会でもやはり多様な御意見が出ているという状況だと伺いました。また引き続き,何かありましたら御報告を頂ければと思います。   続きまして,幡野幹事,お願いできますか。 ○幡野幹事 事務当局の方から,フランス法について検討の素材を御準備いただきたいという御依頼がありましたので,お手元にある資料のを作成いたしました。時間の都合上,要点をかいつまんで御紹介したいと思います。フランス法の完全養子縁組における養子の年齢要件に関する問題について,フランス法の状況というものを調査いたしました。   フランスでは完全養子縁組,日本の特別養子縁組に類似する制度ですけれども,その制度における養子の年齢要件は,原則として15歳未満となっております。例外的な要件はありますけれども,時間の都合上,省略いたしまして,このようなフランス法が今般の法制審の議論にとって参考になる点が幾つかあるであろうと思い,以下では三つの点について御紹介をしたいと思います。   まず一つ目は,フランスでは1966年の法律で養子の年齢要件が15歳に引き上げられておりますが,この法律で年齢要件を引き上げた背景について,御紹介したいと思います。二つ目ですけれども,現在,完全養子縁組と単純養子縁組,日本の普通養子縁組に対応するものですけれども,それらが統計的に見てどのような利用のされ方をしているかについて紹介したいと思います。2007年のデータですので10年少し前のものになりますが,詳細な統計的な調査がなされておりますので,そちらを御紹介したいと思います。三つ目としては,前回の法制審の議論でも,年齢の高い子どもとの養子縁組をする際に,先ほど棚村先生がおっしゃった虐待型に当たるようなケース,例えば両親が親権を失ったような場合にどうするのかという問題がございました。それに対応するのが,フランスでは国家の被後見子という形で受け入れられた子どもです。とりわけ年齢が高い子が,国家の被後見子として受け入れられたケースにおいて,養子縁組をする際にどのような問題が生じているのかといった点について御紹介をしたいと思います。   まず,1966年の法律でなぜ年齢を引き上げたかという点ですけれども,それ以前の1939年の時点で,完全養子縁組という制度ではなく,養子に嫡出子と同一の血族関係を発生させる養子準正という制度がありました。これが66年より導入された完全養子縁組と類似の効果を発生させていたのですけれども,39年の時点の年齢要件は5歳未満でした。それが1958年には7歳未満に引き上げられ,66年の法律により15歳未満という形で大幅に緩和しております。また,66年法律では,これまでの制度を整理して,完全養子縁組と単純養子縁組という二つの類型に再編をしております。なぜ15歳に引き上げたのかというと,養子対象者を拡大するためであったという指摘があります。当時から現在までずっとそうですけれども,フランスでは養子候補者の供給が少なく,養親候補者の需要の方がはるかに多いという状態が続いております。66年法律の社会学的な分析を行った著書で,15歳という要件は,15歳に限定するというよりも,むしろ養親候補者に対して,一定年齢に達した子にも嫡出性を与えることを奨励するということが目指されたということが述べられております。とりわけ,育ての親の下で小さい頃から預けられていて,遅れて養子縁組をするような場合にも,完全養子縁組が利用され得るということが指摘されております。   次の段落の話というのは細かい話になりますので,パスを致します。「もっとも」という段落が,2ページの下の方にあります。同じく社会学的な調査によると,養親側はもうこの当時から,できる限り子が小さい時点で養子縁組をしたいという強い要請があるということも指摘されております。また,当時の学説では年齢の引上げに批判的な学説もあり,15歳まで養子の年齢を引き上げてしまうことに対して,それが養子の利益にかなうのか,あるいは養子縁組の意義が失われることになりはしないかという懸念が表明されておりました。   次に,完全養子縁組と普通養子縁組,あるいは単純養子縁組の利用実態について御紹介したいと思います。近時の文献を見ますと,単純養子縁組については一般的に次のような使われ方がなされているという指摘があります。まず,多くの養子は成年である。そして,しばしば養親と血族関係又は姻族関係がある。今日では配偶者の子を養子とする場合が多い。単純養子縁組は家族内部のものであり,時として相続目的の場合もある。このようなことが言われております。   これに対して,完全養子縁組に関する指摘としては次のようなものがあります。養子はほとんど未成年者である。9割の場合は事前に養親との関係はない。以上については日本とほぼ同様ですけれども,フランスでは国際的な養子縁組が増加しており,経済的な格差がある国との間での養子縁組には縁組の強要あるいは取引といった濫用的なケースに対する対処というものも問題になっております。   2007年に養子縁組に関する詳細な統計的調査が行われております。その調査を参照すると,より細かな状況というのが分かってきます。同年,フランスでは5,315組の完全養子縁組が認められております。これに対して単純養子縁組は9,412組認められております。2007年の人口としては日本の大体半分ぐらい,6,200万人弱がフランスの人口ですが,このような数の縁組が認められております。この調査では,これらの縁組を国際養子縁組,国内養子縁組,家族内養子縁組という三つの類型に分けております。   国際養子縁組とは,養子が外国で生まれており,養子と養親に事前に家族関係がないもの,親族関係がないものです。国内養子縁組とは,養子が国内で生まれており,養子と養親に事前に家族関係がないものです。家族内養子縁組というのは,養子と養親に家族関係があるものです。このような分類によると,完全養子縁組の72%が国際養子縁組,21%が国内養子縁組,7%が家族内養子縁組という内訳になります。これに対して,普通養子縁組においては1.7%が国際養子縁組,3.4%が国内養子縁組,94.9%が家族内養子縁組という内訳になります。   本日の課題との関係で重要なのは,家族内での完全養子縁組と,完全養子縁組としての国内養子縁組の類型になります。家族内で完全養子縁組をする子は平均して5歳3か月で将来の養親に預けられております。養子縁組の申立てがなされるのは平均して9歳10か月です。そして,平均して10歳2か月で養子縁組が裁判所に認められております。84%の場合,養親は1人であり,そして,ほぼ9割のケースで養子は養親の配偶者の子です。これに対して,国内養子縁組の類型では平均して1歳で養親の家庭で養育が始められ,養子縁組の判決は平均して2歳8か月で下されております。養子の86%は国家の被後見子です。97%の養子が婚姻した夫婦との養子縁組が認められております。   以上の統計的データからすると,年齢の高い子について完全養子縁組が用いられるのは配偶者の子を養子とする類型であるといえます。フランスではこの場合,特別の類型を設けておりますけれども,この点に関する話は細かい話になりますので省略を致します。簡単に申しますと,フランスではこのような配偶者の子との間の完全養子縁組の場合も,実親との関係が切断されてしまう関係上,完全養子縁組が認められることに対して一定の制約を設けているという話がこの段落の後半部分です。   国家の被後見子についても年齢の高い場合というのがあり得ますけれども,その場合に完全養子縁組が実現しているのかという問題が更にあります。2008年に養子制度の改正の方向性について,大統領及び首相から諮問を受けたジャン・マリー・コロンバニ氏が報告書を提出しております。コロンバニの報告書では,国家の被後見子の類型について,国家の被後見子の総数に比べて試験養育に進む子の数が少ないことを問題として提起しております。例えば,2005年の時点で総数2,504人の国家の被後見子がいるのに対し,その年に試験養育が始まったのは841件です。統計上,年とともに国家の被後見子の数は減少しておりますけれども,試験養育が始められる件数もそれに比例して減少しております。   コロンバニは,試験養育に進む数の少なさの原因は,被後見子の年齢,障害の存在,兄弟姉妹の存在という三つの類型での試験養育の少なさに起因しているとしております。2010年の時点で試験養育に進めない国家の被後見子の46%がこの三つの類型のいずれかであったという報告もあります。これに対して地方自治体のレベルで対策を行っている場合もあり,例えば,養子候補者と養親候補者のマッチングに対するサポート,あるいは日本でいう心理カウンセラーへの相談に対する援助をするなどの努力がなされているようです。   コロンバニの報告書では,とりわけ年齢が高い子との養子縁組をする際に単純養子縁組を進めることを提案しております。関係者に対するアンケートによると,単純養子縁組は離縁が可能である点と完全養子縁組より劣ったものであるという印象がある点が当事者の利用を妨げていると言われております。しかし,単純養子縁組は年齢が高い子のうち一部については有用ではないかと報告書では述べられております。有用性の論拠としてイギリス法が紹介されておりまして,単純養子縁組が認められる際に実親との面接の方法や頻度というものを定めることが可能であるということが紹介されております。ただし,単純養子縁組についてイギリス法のような立法化をするところまでは踏み込んでおらず,フランスの法制度の中で単純養子縁組を勧めるにとどめております。   以下の部分で,本報告の結論についても述べておりますけれども,時間の都合上,省略いたします。検討の素材として,以上の点について御報告差し上げます。 ○大村部会長 ありがとうございます。フランス法は,御報告がございましたけれども,未成年者につきまして,日本の普通養子,特別養子に当たるような単純養子,完全養子という二本立ての制度を持っているということで,その使い分けがどうなっているのか,年齢についてどう考えているのかということが分かるとここでの議論の参考になるのではないかということで,事務当局の方から幡野幹事にお願いをして概要を説明していただいたということでございます。幾つかこの会議で議論していることと関わる点もございましたので,これを御参考に,また御意見を頂戴できればと思います。   ほかの委員,幹事の方々,いかがでございましょうか。 ○水野委員 フランス法を安易に参照することについて,当初から危惧を申しておりますのは,前提となっている育児支援の手厚さが全然違うためです。フランスのような手厚い育児支援がない日本の状況で,フランスと同じことがいえるかということを,注意しながら参照しないといけません。フランスの場合,親が任意に支援を受けない場合,育成扶助という親権制限判決がおりて,強制的に支援しますが,その判決が年間約10万件で,年間約20万人の子どもたちが育成扶助下で生きていますから,人口比でいうと,日本では約40万人の子どもたちが,そういう支援体制下で生きているという状況になります。もちろん日本の場合には,支援ははるかに少ないですから,フランスとパラレルには議論できないだろうと思っております。本日のフランス法の紹介を伺いまして,とても興味深かったのは,4ページのコロンバニの報告書です。コロンバニ報告書が記載している国家の被後見子の場合が,ここで我々が議論している被養護児童の特別養子に当たるかと思うのですが,国家の被後見子,つまり,実親との関係を切らなくてはならないような子どもたちが総数2,504人で,そして試験養育が始まったのが841件とされています。これは相当,数が少ないと思われます。日本は500件ぐらいですから,人口のことを考えれば,倍以上といえるのはいえるかもしれませんけれども,フランスのように手厚く養育支援をしていても1,000件には到達していないのは,やはりこういう養子はそれだけ難しいということを,意味しているように思います。   幡野幹事から御紹介がありましたように,フランスは何しろ養親希望者がものすごく大勢いて,それでも試験養育を始めること自体がこれだけ難しいということを,よく考えないといけないと思います。日本の場合にはフランスのような数の養親希望者はおりませんし,里親すらなかなか集まらなくて,現場では里親になられる方が足りないために,必ずしも里親の質も担保できていなくて,児童相談所で指導に困難を生じているような例もあると伺っております。   そういうことを考えますと,日本の特別養子を,ともかく増やした方が子どもたちのためになるのかは,そのこと自体,相当疑問があります。特に高年齢の子どもたちの特別養子を増やすニーズがどれくらいあるのでしょうか。幡野幹事の御報告を伺いますと,国家の被後見子の養子年齢は,やはり2歳未満の子が多いということでございますし,それを大きな子どもたちまで増やすということについて,やはりますます心配になってしまいます。   それから,試験養育に入るに当たって,障害の存在とか,あるいは年齢とか,兄弟姉妹の存在とかが障害になっていると書かれてありましたけれども,日本の場合,例えば実親について,特別養親の希望者に試験養育に出す場合に,どの程度の情報を与えておられるのでしょうか。私は日本の実務にあまり詳しくありませんので,お教えいただければ有難く存じます。実親の固有名詞の情報は与えないとしても,例えば実親に障害があるとか,あるいは薬物中毒でその影響があり得るというような情報を,どの程度養親に与えて試験養育を始めるのが,実務の前提でしょうか。  特別養子縁組をどう動かしていくのかということと,子の年齢を上げるかどうかということは,実質的にはかなり密接に絡んでいるように思います。もし年齢を上げて活発に使おうということになりますと,すぐに年の行った子も試験養育に出すということになるのか,それとももっと慎重に,ずっと小さいときから事実上,里親として育ててきたのだけれども,養子縁組の決心をしたときに6歳を超えていたというような事例を念頭に置いて考えるのか,それによっても議論の仕方というのが随分違うと思うのです。特別養子を活用しようということで年齢を上げて,すぐ高年齢の子を試験養育に出すことを考えるのだとすると,試験養育の運営の仕方がどういうものであるかということまで,できれば配慮して考えたいと思います。   ともかく特別養親になりたいというのであれば,生まれた自分の子どもを受けとるように,一切の事前情報を得ずとも,その子を全面的に受け入れる覚悟で,その子を育ててほしいというアプローチだとすると,養親に大きな負荷が掛かりすぎるように思います。その辺りの実務の運営と,年齢の問題を考えるための前提状況というのは相当密接に関係していると思いますので,まず,年齢を上げて,かつ試験養育を年齢の高い子から始めることまで考えておられるのか,それから,そのときに特別養親にどのような情報を与え,どのような覚悟の下にこれを始めるというお考えでいらっしゃるのか,その辺りについて少し情報を与えていただけないでしょうか。 ○大村部会長 今のような御質問がありましたけれども,どなたにお伺いするのがよろしいでしょうか。 ○藤林委員 特別養子縁組を前提として,例えば,養親縁組里親さんに子どもを児童相談所で委託する段階で,実親さんの情報をどの程度提供しているのか,これについて児童相談所運営指針にどう書いているのか記憶がないので,全国共通かどうかは今すぐには答えられないのですけれども,少なくとも私のところでは結構,情報を与えています。妊娠中に薬物を使っていた可能性があるとか,もっと言えば,たばこを吸っていた,お酒を飲んでいたということも当然,情報は提供していますし,実親さんの遺伝負因とか,又は障害の有無であるとか,又は,何か遺伝関係の病気があるのかどうかといったこともお教えいたします。まれにですけれども,近親姦で妊娠した子どもさんの場合も,そういったことも情報提供し,近親姦で生まれた子どもが将来何らかの難病を発症する可能性についても正確に教えていくというふうなことを,情報提供した上で,選ばれるかどうかというのをやっておりますけれども,これが全国共通かどうかというのは把握しておりません。   それから,今の水野委員の,年齢を上げることによってどういった方を主に対象としているのかという質問に対して答えたいと思うのですけれども,棚村委員の類型の中で,例えば虐待型といわれるもの,又は幡野幹事の被後見子の部分でもそうなのですけれども,私のイメージの中では,例えば10歳,12歳で虐待を受けて実親さんから分離して里親さんに託されて,そこからケアを行って特別養子縁組に至るというパターンというのは,なかなか非常にまれではないかと思っています。   例えば,架空のケースでもないのですけれども,実母は亡くなっていて父子家庭で,子どもは7歳から性的虐待を受けていて,やっと12歳で分離して保護された,こういう子どもが親権喪失となって,この子どもに対して普通養子縁組ではなくて特別養子縁組が必要だと判断したとしても,この子どもの持っている被虐待の影響というのは非常に重大なものですから,そういった数年間にわたる性的虐待を受けてきた子どもさんの特別養子縁組になる養親さんというのはなかなか見付からないとは思います。それは多分,フランスでもアメリカでも同じで,そういった年齢の子どもが親権喪失され,養子縁組を待っているウエイティングチャイルドとしてたくさんいらっしゃると思うのですけれども,そういった子どもさんは日本にもいらっしゃるわけなのですが,当面そういった子どもに特別養子縁組を,主には想定はしていない。運よくそういった子どもさんを引き受けてくれる養親さんがいらっしゃれば,それに越したことはありません。けれども,ニーズからいきますと,事務当局に準備いただきました資料の2ページのイとエですね,要するに,やはり未成年者が安定的な家庭環境で養育される,これは非常に重要なことで,しかも,それは里親制度ではどうしても18歳,20歳でいわゆる養育関係が終わってしまうわけですけれども,養子縁組制度ということで,その後も生涯にわたって家族関係,親子関係が維持できるといったことが子ども時代から保障されているということが,子どもの育ちに非常に大きな意味を与えるのではないかと思います。   ところが,エですね,今現在はそのように子どもにパーマネントな養育,家族関係,親子関係を提供したいと思っても,年齢の問題があって,そういった法的に安定した親子関係を保障できないままに現在,里親さんが養育していらっしゃる方というのは,これは何百,何千という単位であるわけです。そういった子どもたちは,先ほど言った12歳で性的虐待を受けたという子どもさんとはまた異なる,もっと,乳幼児の頃に虐待を受けた,ネグレクトを受けた,又は親御さんがいろいろな事情があって乳児院,里親に預けた,しかし,そのままほとんど交流のないまま家庭復帰がほぼ不可能に近い状態になった,そういった子どもさんたちです。   そういった子どもさんたちを里親さんの多くは養育しているけれども,現状は多分,年間20人か30人ぐらいの方が普通養子縁組として,法的に安定した家族関係を形成しているわけですけれども,それ以外の方はどうなのかというと,形成しないまま措置解除となって,法的な親子関係を持たないまま子どもたちは成人している。この子どもたちと里親さんとの中には,やはり実親との法的関係が残っていることが妨げになって普通養子縁組を組めない方もいらっしゃるのではないかと思っています。そう考えると,こういった,特別養子縁組が必要だけれども普通養子縁組では足りない,特別養子縁組が必要だけれども,そのチャンスがないまま,今現在12歳,15歳,17歳といった子どもさんは一定数いらっしゃるのではないかと思っております。   その意味で,エの部分というのは,転化と書いていますけれども,本来もっと小さい頃に,5歳とか7歳とかその辺かもしれませんけれども,特別養子縁組が成立しておればよかった方々が,救済措置というか,年齢引上げを待っている方がいらっしゃるのではないかと思っていまして,その意味で前回,前々回と,そういった方々の法的な親子関係を保障するという意味で年齢の引上げを言ってきたところです。   磯谷委員の懸念である,これを認めてしまうと特別養子縁組の成立が遅れてしまうのではないかというふうな懸念も確かにないこともないのですけれども,ある意味で,特別養子縁組制度が整備されていけば,より早い段階で成立していくケースも増えていって,結局,十何年も法的に安定した関係がないまま里親委託が続いているようなケースはだんだん減っていくのではないかと私は思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか,御関係の発言はございますでしょうか。 ○窪田委員 何点かあります。一つは今,藤林委員からお話があった点でもありますし,これは前々回からも出ている問題なのではないかと思うのですが,普通養子縁組では駄目で,特別養子でなければいけない場合についてです。今の最後の例は,特別養子をするチャンスもあった,しかし,しないままずっと期間が経過して,現在ではもう代諾ということも不要であって,本人の同意さえあれば普通養子縁組が組めるという場合です。しかし,普通養子縁組ではなくて特別養子縁組だったら組むけれども,というニーズについては,あるかもしれないと言われたら,ないとはいえないとは思うのですが,それを法的に保護しなければいけないということが明確にされているのかなというのが少し気になっております。   それともう一つ,何歳にするかという議論はものすごく難しいと思いますので,事務当局の方ではアからエまで出してもらいましたけれども,アからエを一生懸命見ていても多分,8歳だとか12歳だとか19歳だとかは出てこないのだろうと思います。ただ,幾つかやはりステップを追いながら詰めていくしかないのだろうなと思いますけれども,少なくとも15歳を基準とするということについては,もう少し明確にしておいた方がいいのではないかというふうに思います。これは,上限を15歳にせよという意味ではなくて,15歳を超えるというのはやはり無理ではないかということについて,少しだけ意見を述べさせていただきたいと思います。   今回の法制審議会では,未成年の養子縁組制度について,普通養子まで含めて全部を見直すというのもあり得たと思うのですが,しかし,あくまで特別養子に検討対象を絞るということになっています。したがって,普通養子縁組を現行の制度を前提として議論をするということにならざるを得ないと思うのですが,現行の制度としての普通養子縁組で本人の意思に基づいて養子縁組を組めるという制度が一方であるというときに,特別養子に関しては本人の同意はないとか,本人の意思というのは関係なしに18歳まで養子縁組を組めるというのは,やはり制度的にはあり得ないのではないかと,私の頭が単に固いだけなのかもしれませんが,そのように思っています。   その上で問題になるのは,特別養子に関して養親子関係を形成するということの意思については本人の意思を尊重するということで構わないのですが,特別養子に関して,それに伴う効果として実親関係が切れるという効果に関しても,それを踏まえた上で本人の意思を要求するということになると,実親子関係を切るという判断を本人に求めるということになります。もちろん,そういうことを気にしないという人もいるのかもしれませんが,私自身はそれを本人に問うこと自体が,制度設計としてはやってはいけないことなのではないのかという気がしています。   例えば,児童虐待のときの親権制限,親権喪失,親権停止に関して,子どもの申立権を認めるのかという議論はありましたが,あれはまだ申立権の議論でしたので,場合によってはもうよんどころない状況の中で子どもがそういうふうな救いを求めるという場合にも対応するという説明が付くと思うのですが,ここで本人の同意を要求するとなった場合には,常に要求するという形になります。やはりそれは制度設計としては避けるべきではないかと思いますし,普通養子縁組という制度がある中で,そうしたものを並行して作らなければいけないということについての積極的な理由というのは明らかではないのではないかという気がします。   その意味では,やはり少なくとも15歳が上限になるということは前提として議論していった方がいいように思いますし,先ほど幡野幹事からもフランスにおける制度の御説明がありましたけれども,それを参考にしてみたとしても,やはりそういうふうな理解というのは十分にあり得るのかなと思いました。 ○藤林委員 この件について,私はもう3回目で,意見を言っているわけなのですけれども,この3ページのところに書いてある,養子となる者による同意又は意思に反しないことを要件にする必要があり,養子となる者に実親との法的関係を終了させるか否かという困難な決断を迫ることとなって,これは相当でないという,この考え方が今一歩,私の中にはしっくりこないというか,ぴんとこないというところがあります。   前回も言いましたけれども,現在でも特別養子縁組の離縁については本人の同意を要件としていない,成立には同意を要件とする,ここはどうなのかなというふうな気もしますけれども,それは離縁と成立とは違うのだというふうなことであれば,同意を要件とするというのもあり得るのかと思うのですけれども,一方で,同じ15歳,16歳,17歳の子どもさんの中で,その方々が親になった場合,自分の子どもを他者に託して特別養子縁組が成立する場合には,それは15歳,16歳,17歳の方の同意が必要になってきます。これもかなり困難な選択だと思うのです。でも,その選択を普通,裁判所でやっているわけなので,15歳,16歳,17歳の方が親となって特別養子縁組が成立するに当たっての同意をすることが,これは相当であるというふうな解釈になっているのかなと考えると,今度はその方々が子どもであって,親との法的な関係が終了することに対して同意を要件とすることは相当でないというのは,理屈上どうなのかなというふうなことも思うのですけれども,その辺はいかがなものでしょうか。 ○窪田委員 何点かあるのですが,まず,現行制度で同意が要求されていないのは当たり前で,これだけ小さい子どもが,6歳未満という状況であれば,同意なんか要求していないのが当たり前だということになります。それと,養子となることについての親の同意というのは,別にこれは未成年の場合に限らずに,基本的には30歳だろうが40歳だろうが必要なものです。むしろ未成年の場合であったとしても,通常の場合であったら婚姻による成年擬制とかという形で,基本的に大人としての扱いを受けるということです。ここで問題となっているのは15歳から,20歳,30歳でも特別養子になるという選択を認めるのであれば別ですけれども,多分18歳が上限で考えられていると思いますが,そうすると15歳から18歳の成年擬制ということもない状態の下での同意ということになりますから,これを求めるのは,私自身はやはり適当ではないと考えております。 ○棚村委員 議論もいろいろあると思いますし,窪田委員も言われたように,年齢をどこで区切るというのは,出発点の6歳未満というのも,やはり実の親子と同じようなというところで出てきたものだったと思うのです。それで,私は先ほど,いろいろな使われ方も今はされているし,将来も考えると,端的に言うと就学,要するに小学校ぐらいまでの年齢の12歳未満というところを原則にしてはどうかと現段階では考えております。ただ,その理由というのは,やはり6歳未満で8歳未満まで引き続き監護されているのだったら広げるという現行の年齢要件は,少し狭すぎるのではないか,かといって低年齢の子どもの方が愛着関係とか,あるいは親子関係の構築というのは割合と容易だというお話も承っていますし,それから,長期間委託されて施設に収容された方たちは,大分傷ついたり,いろいろな問題も抱えているので,難しいということもあります。そういう意味で言うと,12歳未満というのを柱にしながら,つまり,特に窪田委員もおっしゃっていた,特別養子と普通養子というものがあって,普通養子の特別類型ということである以上,なぜ親子を断絶させるのかということも踏まえて言うと,そこら辺りを基本に考えてよいと思います。   ただ,先ほど,藤林委員もおっしゃったように,小さい頃からずっと監護されたり育てられている,養育されているということも起こりますし,アメリカなんかの例を見ますと,2014年の統計ですけれども,里親家庭から,里親委託率も高いのですけれども,養子縁組されたお子さんたちの年齢については,1歳未満が2%,1歳から5歳未満が55%,6歳から10歳までが26%,11歳から15歳までが13%,16歳以上になるともう3%しかありませんでした。どういう事情があるのか詳しくは分かりませんけれども,この年齢分布で,先ほど言われたような形のアメリカの事情がいろいろあるわけですけれども,そういうようなことを考えてみますと,そういう意味では,低年齢の子どもたちの間でやはり養子縁組というか,特別養子というか,断絶型の養子が利用されているのが現状ですし,イギリスも確認しましたら,赤ちゃん養子よりは,最近は年長の子どもたちの問題が深刻になっているのですけれども,もっと早い段階で里親ケアから養子縁組することのプロジェクトみたいなのが進んでいたりしますから,日本も里親委託率が少なかったり,家庭的な養護が十分でないということを踏まえた上でも,やはり12歳ぐらいを原則にしながら,引き続き監護養育されていたのであれば15歳未満までを上限にするという提案をしたいと思います。先ほど,窪田委員のおっしゃることに全く賛成で,15歳というのは,民法がやはり遺言ができるとか,養子縁組についても自分で判断できるとかという,一応判断能力みたいなものを認めている状況ですので,その子どもたちに同意を必要とするとか,あるいはそれを特別養子の対象にするとかというのは,なかなか法律の構成としても難しいと思います。だから,最大限延ばせるとしても,私もやはり15歳は,限度ではないかと考え,12歳未満,それで例外的に15歳未満ということが現状に適合し,かつ改革としても,かなり広げることになり妥当ではないかと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。棚村委員から具体的な御提案も出ておりますので,御意見を伺いたいと思いますが。 ○藤林委員 この件についてはこれで最後にしたいと思うのですけれども,前回も確かお願いしたと思うのですけれども,諸外国において,例えば15歳以上の子どもが完全養子,特別養子縁組になる場合に,それは子どもの同意が要件となっているのかどうか,そこをお調べいただきたい。幡野幹事の資料を見ていると,本人の同意が必要となると冒頭に書いてあったり,床谷委員の資料を見ても,養子となる子の申立てによると書いているところによると,本人,子どもの同意が要件となっているのかなと思うのですが,その辺は少しお調べいただきたいということと,もう一つは,そうはいっても確かに判断が難しい場合もあると思います。実親さんとの交流がほぼ,全然ないケースばかりではないので,やはり中には,養親さんは是非とも特別養子縁組をあなたと組みたいと思うけれども,子どもは子どもなりに,会ったことのない実親さんとの関係を続けたいというふうな方もあるかもしれないので,そういった子どもが適切な判断ができることをサポートするようなアドボケイトのような制度がほかの国ではどのように準備されているのか,されていないのか,その点もお調べいただいて御提示いただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。今御質問のあった点につきまして,この席上で簡単にもし御回答が頂けるようであれば,お願いいたします。 ○山口幹事 まず事務当局から御説明いたしますと,今日はお手元に配っていないのですけれども,前回,国際比較のA3判の表をお配りしたかと思いまして,藤林委員のお手元になかったら申し訳ないのですが,その3ページ目に子の同意について比較表を設けております。これを見ますと,例えばドイツでは子の同意が必要であるですとか,それから,フランスの場合も13歳以上の場合には同意が必要であるとか,そういうような記載をしております。   それから,2点目,アドボケートの話なのですけれども,なかなかこれは,今まだ全然ない制度でございますので,これをここから導入というと本当に大改造になってしまいますので,事務当局としましては,なかなか厳しい御提案かなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   岩崎委員,今の点についてですか。 ○岩﨑委員 窪田先生のおっしゃることもよく分かるのですけれども,15歳以上になれば普通養子に自ら同意ができるということは,15歳の子どもには自ら自分の生き方を選択する能力と権限があるということを認めたからこそ,普通養子の同意が取れるということであると私は思うのですけれども,そうすると,逆に特別養子を選ぶことも同列に考えることは本当にできないのでしょうか。制度設計としてそうするべきではないというところが,私には,どういう影響があるのかというのがよく分からないのですけれども。ただ,確かに15歳という年齢は現実的にはなかなか難しい年齢で,17,18,19,20と,あと残された年齢から比べると,この辺りの子どもの成長は,本当に目に見えてすさまじく大人になっていきますので,その最初の15歳というのは,まだ何となく怒りを体中にため込んで,その怒りゆえの判断をする可能性も確かにあります。逆に15歳以上になったらいいとか悪いとかというよりは,逆に言えば,15歳で切るのではなくて,18歳,場合によっては未成年の間,本人の意思を確認することができるのであれば,特別養子を選ぶこともできるという枠組を作ってもらえると,15歳の子どもがそういうことをするかということではなくて,18になれば相当な考えをもってやることができるケースもはねられなくて済むという,その辺の微妙なニュアンスを分かっていただけたら有り難いなと思うところではあります。制度設計として15歳の子どもにそれをさせるのは,先生,何が問題になるのでしょうか。 ○窪田委員 まず確認しておきたいと思うのですけれども,私自身が申し上げているのは,普通養子縁組に関して15歳で本人の縁組ができるということを前提とするのであれば,特別養子に関しても,あるときは本人の同意があったり,あるときはなかったりでは無理で,常に本人の同意を要求するという制度設計にならざるを得ないだろうということです。岩﨑委員からおっしゃられたように,本人が積極的に望むという場合があることは確かなのだろうと思うのですが,特別養子に関して,15歳以上の子に関して必ず同意を得なければいけないという形になりますと,そのときの同意の中には,分解して考えると,養子縁組による養親子関係を作るという部分についての同意と,実親子関係を切るということについての同意と,二つあるのだろうと思います。普通養子縁組の場合には実親子関係に手を付けずに,養子縁組の養親子関係を作るということだけの意思決定ですから,さほど深刻ではないというか,まだそれを本人の意思に基づいて形成していくということは十分認められると思うのですが,実親関係を切るということに関して,常にその意思を求めるということは,やはり適切ではないだろうと思います。私自身は,あった場合にはいいでしょうという話ではなくて,その意思確認を求めるということ自体が制度設計として適当ではないということを申し上げている次第です。 ○浜田幹事 先ほど来,窪田先生が最初に御提案なさった,15歳より上には行かないだろうというところを,理由付けについても全て完全に同意するものだということで,意見を申し述べたいのが一つです。   これは,今,藤林委員,岩﨑委員から出ていることと,どちらから見るかの問題だけだろうと思うので,平行線に結局終わりそうな気はするのですけれども,そういうきっちりとした自分の判断でいろいろな意思決定ができる子どもがいるということを否定はしないにしても,先ほど来出ていますように,全ての子に同意を聴いてくるということになると,そういう能力がない子どもについてそういう選択を迫られる,どうしようかと聴かれてしまう,そのこと自体の不適切さというのを指摘したいところであります。要するに,自分で判断できる子は判断すればいいということはあり得るのですけれども,それと対極のところには,判断ができないのだけれども判断を求められてしまうというふうな子どもがやはり一定数,いるのではないか,そうすると,制度として表現するときには,すべからく同意をとってこなくてはいけないとか,すべからく意見を聴かなくてはいけないということについては,それはやはり適切ではないというふうな言い方になるのであろうと思います。ですので,賛同の意見として申し上げます。 ○水野委員 先ほどの藤林委員のお話では,年齢の上の子ということは考えておられない,やはり幼いときから預かっていることが前提だとおっしゃいました。そうすると,実質的には現行法の年齢でいいのではないでしょうか。ただ,現行法が実親との対決を養親に直接任せてしまったために,その設計ミスのせいで,子どもが大きくなるまでしかるべき時期に養子手続がとれなかったという方だけ,経過措置で救出することにして,別に一般的に年齢を上げる必要はないのではないかと思います。   そして,子どもの意思を聴くという論点ですけれども,これは慎重に考えなくてはなりません。両親間で親権奪い合いのトラブルになったときに,子どもにどちらの親がいいかを訊ねてはならないと精神医学的には強く言われています。それは,本来選べないことを選ばせる,擬似選択という精神的な拷問になってしまうからです。前回,岩﨑委員から,実親について美しい物語を聞かせて育てるのだというお話を伺いました。実親のイメージがそれだけその子のアイデンティティーにとって大事なものであるからだと思います。それなのに,そこで実親との関係を切るのだけれど,あなたはそれでいいねと聴くこと自体が相当に残酷な選択を迫ること,残酷な問いを子どもに発することではないでしょうか。実親との関係を切るのであれば,そういう問いを発しないで済むような年齢だけで特別養子を組むべきではないでしょうか。私は,15歳よりももっとずっと低くていいのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○平川委員 一つ質問なのですけれども,実親との関係の終了の関係で,15歳以上は同意が要るという話でありますけれども,15歳未満の子どもに関しては本人の同意なく,特別養子縁組の場合は実親との関係が切れてしまうということに対しての問題点というのは,これまで議論はあったのでしょうか。逆に言えば,本人の同意なく実親との関係が切れてしまっているということに対しての問題点というのは,制度上,今まで議論としてあったのかどうか,それをお聞きしたいと思います。 ○山口幹事 事務当局からお答えいたしますと,現行法ですと6歳で,例外的にも8歳というふうな小さな子が対象になっておりますので,なかなかその子の意思というのが考えにくいといいますか,法律的な意味での意思があるのかどうかという考えでいきますと難しいというところで,それで今までは子どもの同意の要件というのが課されていなかったということだろうと理解しております。 ○平川委員 もしも年齢要件を上げるとなると,15歳以上が適切か,適切ではないかというのはいろいろ個人差がありますけれども,場合によっては15歳未満の子どもについても適切な判断能力があり,その子については同意なく親子関係が終了してしまうということに関して,それをどう考えるかという考え方もあるのかなと思いました。これは一つ,感想です。   もう一つ,特別養子と普通養子の関係で言いますと,愛着形成であるとか家庭環境の提供,それから,養親との親密さ関係というのは変わらないのですけれども,一方で違いは,戸籍上の記載の表現であるとか,今言った実親との関係,それから関係性の強化,要するに,離縁が両方できますけれども,簡単にできないであるとか,少しは緩いというふうな関係性が,違いがあるのかと思いますけれども,そういった意味で,先ほど言った愛着形成であるとか,実子的な親子関係を形成するという観点から言いますと,子どもの年齢が小さいときに実質的な親子関係がきちんと形成されてきたかどうか,という観点で6歳になっております。この6歳もいいかどうか,いろいろ議論はありますけれども,6歳若しくはその前から家庭的な環境で育てられてきた子どもであるかどうか,若しくは,それがずっと続いてきて,結果として子どもが16歳や17歳になったときに特別養子になろうというふうな実態もあるのではないかと思いますけれども,そういう実態もあるのであれば,それをどうやって選択肢として担保していくのかというのが一つの考え方としてあるのかなと思います。そういった場合,15歳の問題であるとか,15歳未満の問題に対しての子どもの意思表明や,子どもの判断能力を勘案して,どういうふうな子どもの権利や意思表示を押さえて考えていけばいいのかというの整理をしていかないと駄目なのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほど事務当局から御説明がありましたけれども,従前は6歳でしたので,子どもの意思ということは捨象されていたわけですが,15歳になれば話は別ですし,12歳となっても,委員御指摘のとおり,子どもの意思を聴く必要はないのかという問題は出てくるのだろうと思いますので,それはここで議論すべき必要があることだろうと思います。もう一つは,小さい頃から養育されていたのだけれども,一定年齢を過ぎてしまったという場合にどうするのか,このような場合についてもここで例外的な措置をどこまで認めるのかということを議論しているところかと思いますけれども,そうやって原則とされている年齢を過ぎて,一定の年齢に達したときに,その年齢に達した子どもの同意というのをどう扱うのかという問題も出てくるという御指摘もあったと思っております。 ○床谷委員 先ほど棚村委員が12歳基本ということを強くおっしゃられましたので,私も,これまで1回目,2回目で既に申し上げていることですけれども,私自身の基本的な考え方としては,原則が15歳未満で,例外的に18歳未満のときの申立てというところに今,置いています。   今回の事務当局の整理のア,イ,ウ,エの考え方の中で,ア,イというのは基本的な原則的な年齢で,エというのが今でいうただし書,例外的なものということになると考えますと,15歳未満までをイのパターンで,その間に監護状態に入っていれば,18歳までに申立てをすれば認められてもよいのではないかというのが私の考えです。   子どもの意思との関係なのですが,窪田委員が非常に強く主張しておられますけれども,先ほど事務当局も説明がありましたように,外国法は子どもの年齢は大体13歳から14歳ぐらいになると子どもの意思を問わないといけないという形になっています。先ほどの幡野幹事の詳しい説明もありましたけれども,フランスの年齢も15から13に下がってきて,韓国も13歳,ドイツは14歳ですけれども,大体その辺りが子どもの意思能力がはっきりする年齢として,その年齢については本人に同意がなければ縁組は認められない,これは断絶型の場合に限らない場合もありますけれども,少なくとも断絶型の場合には,それを確認すると。   断絶型の場合,国家宣言型といわれて,契約型ではないということの趣旨なのですけれども,契約の場合は当事者の意思によって効果が発生するという形をとっているのに対して,ヨーロッパの法律が国家宣言型に変わったのは,基本的には当事者の意思を一つの要素としながらも,最終的には子どもの利益,福祉のために国家が判断をして親子関係をスイッチするという,そういう判断ができる制度として養子縁組を組み替えたと,そういうところがあろうかと思います。従来契約型であったフランスやドイツですので,そこを徐々に改正しながら国家宣言型に変わってきておりますし,英米のように最初からそういう目的で作っているものは,最初からそういう形になっておりますけれども,そこでは子どもの意思というのは一応確認,同意はするけれども,最終的にはそれがよいという国の判断があって,それが子どもの福祉に必要だという判断があって,しかし,子どもの意思が強くそれに反するのであれば否定すると,しかし,そうでなければ,同意があるのであれば認めると,そういう構造になっているというのが私の理解です。   そうは言いましても子どもが親を捨てる判断をすることになるのではないかというのが窪田委員などの考え方だと思うのですけれども,途中で発言がありましたように,人によって,実親との関係をもう切りたいという関係,よろしくない関係になってしまっているお子さんもいるので,そのお子さんが年齢でそういうことができない,そういう保護が受けられないと限定してしまうのは,やはり問題があるのではないかと,極めて例外的な扱いにしろ,未成年の間はそうした保護が受けられるようにすべきではないかというのが私の基本的な考え方です。   ですから,身分行為ができる15歳というのは一つの基準ですけれども,13歳とか14歳というのは,それよりも更に下げているのは,やはり子どもの意思に対する国際的な評価,尊重の流れだと思いますので,年齢要件も含めて,同意の年齢も含めてですけれども,その規定も必要だろうと思いますが,対象の子どもの年齢としては,最初に申し上げたようなことを私としては考えております。 ○棚村委員 これは研究会でも出たことなのですけれども,藤林委員や岩﨑委員の,同意というときに,当然,児童の権利条約の12条から出てきた意見表明権,これを,要するに,窪田委員も多分そうだと思うのですけれども,ビートーパワー(veto power)ということで,それがなければ拒否できると,あるいは自分が全部決められる,そういうことかどうかという問題だと思うのです。子の意思・心情をどう配慮するかというので各国は,相当に苦労しています。   アメリカへ行ったときもそうですけれども,例えば13歳とか14歳以上の同意がコントローリングだというときは,それがないと駄目だとか,そういうふうに理解をしたときに,それが国家の立場や裁判所の立場から,本当に子の利益になるのか疑わしいというケースもでできます。例えば,極端なことを言うと,子ども自身の判断や意思が誤った情報や説明のための不適切な判断をしているとか,この間の最高裁の3月15日のも,少し微妙ですけれども,13歳の子どもが引渡しを拒否して執行を免れているのだけれども,それもやはりきちんとした情報が与えられていないとかと,その判断がいいかどうかというのはまた別として,それぐらい,子どもの意思を誰がどういうふうに確認するかというのは非常に苦労しています。この間,香港に行ったときも,子どもの意思というので裁判官が聴いたのは,法的な判断の専門の人たちが裁判所で子どもの意向を聴くのは子どもをむしろ拷問に掛けたり強制しているのと同じだというので,福祉とか心理関係の人たちからは非常に批判をされていました。   そこで今,アメリカとかよその国で起こっているのは,年齢,それからケースの内容,そういうものによって,どういう段階で誰がどんなふうに聴くべきか,もし裁判官が確認するとすれば,それにふさわしいガイドラインなりトレーニングを受けなければ駄目だときわめて慎重な取組が発展していました。つまり,判事として単に上から目線で子どもに対して権力を背景にその意向を聴いたというのは非常に問題だし,それから,子どもの手続代理人とか,子どもがそういう手続の中でどういう状況に置かれて,自分のことをどういうふうに届けてくれるのかという,そういう制度も作っていかないという議論でした。裁判所での意見聴取では,自己紹介の方法,目的や趣旨の説明,年齢や理解力・判断力に応じた対応,実際の問いかけ方,話したくないときの対応,話した結果が誰にどう伝わるか,不利益の有無,結果のフィードバック,締めくくりの言葉など実に細かいガイドラインが検討されていて驚きました。結局,子どもの意思だとか同意だとか,尊重しろという話と,それをどう決定に反映させるかという制度設計の中で,そこで窪田委員のおっしゃっているのは,どんなにふさわしい状況でも,子どもが駄目だ,嫌だと言ったら,理由も何も関係なく全てが潰れてしまったり,全てが決まってしまうということで,それほど責任や決定権を全て子どもに負わせていいのか,特に親を切るという場面で,そういうことをやっていいのかということだと思います。   アメリカでもやはりそうでした。つまり,手続が流れていく中で,この子はやはり家庭では無理だという段階があるわけですよね。そうすると,フランスでいう国家被後見子みたいな,そういう段階を追った,水野委員が元々支持していたのはそういう,親が育てられない子,本当にどうかという段階と,新しい両親とやはり親子関係を作らせるべきかという,そういうものがきめ細やかに分かれていて,なおかつその子どもの意思なり子どもの心情なりをきちんとケアしたり,確認できるような手続的な制度的な保障があるところで子どもの意思を尊重しろというのは分かるのです。ただ,年齢が上がったからと,実親をきる決定権を子ども自身に与えてしまって,今の枠組みの中で,いいのだろうか,選ばせていいのだろうか。   これはやはり子どもの監護とか面会交流ですら,子どもが嫌がっているという主張はものすごくたくさんあります。そのときに我々調停委員とか家庭裁判所が何をやるかというと,それは,元々の親子関係がどういうふうな関係であるのか,つまり,父親がかなり濫用的に,子どもとの関係が悪いのに面会を求めたり,親権を主張しているのかどうかとか,DVとか暴力とかがあるとすれば,どういう状況でどんなことがあったとか,逆に言うと,子どもの意思をやはり尊重しろとはいっても,表面的に表れている子どもの意思とか拒否とかというものと,その背景にあるものとかをほかの国々は非常に,児童の権利条約12条に当たっても吟味,精査し,ガイドラインを作ったり,手続的にもいろいろなものを組み込んでいく努力をしているところです。   その中では,確かに養子縁組のこれまでの手続の中でも,子どもの意思の尊重とか,15歳以上は聴くけれども,それ以下は聴かなくていいということについては批判の対象になってきました。我々もそれに近いことを言っていたこともありますけれども,具体的な制度設計の中で,子どもの意思をどういうふうに手続の中で考慮したり反映するかという問題と,それに決定権を持たせるかというのは,私はやはりかなり決定的に違うのではないかということで,窪田委員に賛成をした次第です。 ○久保野幹事 子どもの意思を関与させることについての絡みで,その前に,年齢につきましては,前回も私は大幅に引き上げることには反対であり,基本的には引き上げる必要性について,なお疑問を持っているという意見を申し上げまして,それは理由も同じですので,意見だけ,繰り返させていただきます。   なお,藤林委員が先ほど御紹介くださった具体的な例を伺いまして,改めて,先ほども少し話が出ましたが,経過規定のような形で,従来の実務上は特別養子につながらなかった子どもについて,例外的に認めるということの必要性については,あるのではないかと感じましたけれども,原則を動かすことについてはなお疑問を感じているということです。それとは別に,子どもの意思との関係の議論で,実親に養育をさせるという原則を採りつつ,それを放棄するのが子どもの利益になるのはどういう場合かということを議論しているわけですが,先ほど,子どもの意思との関係で,国家が結局,親自身と切った方がよいということを判断,宣言するのであって,子どもの意思で判断させるわけではないというお話があったのですけれども,どのような場合であれば実親に養育をさせる原則を放棄するかということについては,かなり価値判断の対立がある問題だと思っておりまして,諸外国の議論の流れなどもそういう価値判断の対立可能性を良く示しているように思います。実親に養育をさせる原則を放棄するべき場合というのは,実親がどのような状況であるときか,ですとか,あるいは,どこまで実親に対して児童福祉なり何らかの形で支援をした上で,奏功しなかったときに初めて特別養子を考えるべきかといったことについて,明確な基準がある程度,実務運用ではなく,ある程度法的なレベルで議論を経て明確化されている上で,子どもの意思というか,子どもに確認させるといいますか,を最終的に問うのと,そのような基準が今言ったような意味で明確化していない状態で,子どもに特別養子にどうかと意思表示をさせるのでは,随分意味合いが違うと思います。そういう意味で,外国で子どもの意思を問うていることと同じように捉えることができないのではないかという意味でも,15歳以上という問題は,単に原則を考える,理念だけではない問題もあるのでは,今のようなことを考慮しつつ,意思表示については考える必要があり,日本の状況では先ほど申し上げたような基準が明確化されているとはいえないと思いますので,なおさら子どもの意思を問うような状況を招くことには問題があると思います。その意味では,もし15歳未満でも問うていかなくてはいけないということであれば,それはやはり,今の状況では避けた方がいいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。いろいろな立場からの御意見が出ております。藤林委員からは,多数のケースは子どもの小さいときに縁組が行われるということであるけれども,様々な例外的なケースがあるので,基本的には年齢制限は設けない方がよろしいというお立場だと理解しました。 ○藤林委員 床谷委員と同じで,基本は15歳に置くにしても,経過措置というか,そういったチャンスを得られないままに15,16,17になっている子どもさんのことを考えると,15歳から17歳の子どもにもチャンスは与えるべきでないかと思います。   ついでにもう1点,いいですか。 ○大村部会長 短くお願いします。 ○藤林委員 短く言います。棚村委員の言われることは本当にもっともと思っていまして,やはり子どもの意見表明権の保障というのは,単に子どもに意見を聴いて,はい,そうですと言えばそれで終わるというふうな,そんな単純なものではなくて,先ほど少し言いましたように,アドボケイトの制度なり,子どもが自分自身の将来に向けてしっかり判断して,それを吟味して,それを意見表明できる仕組みも同時に必要かなとは思っているところですが,先ほど事務当局の方から,それを作っていると大変だと言われてしまったのですけれども,これはやはりどこかで,今回するのか,また別の機会になるのか分からないのですけれども,子どもの意見表明権を保障していく仕組みというのは,やはり同時に考えていくべきではないかと思っております。これだけ言いたかったので。 ○大村部会長 ありがとうございます。いろいろな御意見を頂きましたけれども,そうすると,今の藤林委員の御意見も含めて,原則の年齢として設定されるべき年齢は15歳よりも下だというところでは一応,皆さん意見は一致していると考えてよろしいでしょうか。現状がいいという御意見ももちろんあるわけですけれども,この意見に賛成される方々も,上げると決まったときにどうするかということになれば,18歳ではなく15歳,あるいはそれより低い年齢がよいとお考えになるものと思います。そうすると,これに反対という意見は,特に見当たらないように思います。仮に15歳とした場合に,その上に例外を設けるべきではないかというのが床谷委員や藤林委員の御意見であり,12歳にして,15歳までを例外にすべきではないかというのが棚村委員の御意見である。この二つが年齢引き上げに関する具体的な御意見として出ている。他方,水野委員と久保野幹事は,現状を維持して,救済については実体法の変更ではなくて,経過的なものを何か考えたらどうかという御意見だったかと思います。   水野委員,久保野幹事は,例えば,現在の年齢を原則にしておいて,救済のために少し年齢を上げるというようなことは考えられない,ということですか。   ○久保野幹事 今のは8歳の方を動かすかということについてですか。 ○大村部会長 はい。 ○久保野幹事 それが案として残らないのは何となくバランスが悪いかなという感覚は持っていまして,すごく変な言い方で申し訳ないですけれども,その可能性は考えてみることは必要であり,案としておよそ落とすということには少しちゅうちょを覚えます。 ○水野委員 もし,とんでもない頑固な者がいたので,それは案のうちには含めないということでしたら,妥協しますので,実体法の中に書き込んでいただいて結構です。 ○大村部会長 原則15歳,例外18歳というセット,原則12歳,例外15歳というセット,それから,もう少し下に年齢を設定するというセット,要件を設けるときにそのぐらいの範囲で,現在救済されていない事例を救っていこう。こうした数字が出ているけれども,まだ収束には至らないというのが現在の状況かと思っております。   今日は,ほかの議題もありますので,更に検討したいと思いますけれども,御意見を伺うと,なかなかこれは収束の見通しが立ちにくいので,やはり少し実態に関わるデータ,たとえば,こんなケースがありますかとか,心理学者の御意見とか,幾つか新たな検討材料を加えていただいて,それで,どのあたりが制度として望ましいのかということについて意見を詰めていただくということになろうかと思います。今日のところはそのぐらいでよろしゅうございましょうか。何かこの機会にご発言があれば伺います。 ○窪田委員 この法制審議会の管掌事項に当たるかどうか分からないのですが,やはり今までの議論の中でも,普通養子では駄目で特別養子が必要な理由ということで,それなりにいろいろな形での説明がされてきたとは思うのですが,恐らくその議論というのは同時に,現在の普通養子縁組を前提としたとしても,ある問題なのではないかと思います。例えば,普通養子の場合であっても,養子縁組をしていますので,実親の方にはもう親権はなくなっているはずなのですが,それにもかかわらずがんがん介入してくる,そうした介入に対してどういうふうに子どもを守ってあげられるのかとかという問題は一般論としてあると思います。先ほど,この法制審議会は特別養子に関するものだからというような言い方をして,それとの関係では手のひらを返すような形の発言になるかもしれないのですが,普通養子縁組に関してもこういう問題があるということは,少なくともやはり指摘をするというところまで踏まえて,その点を認識した上でこの作業をやっているのだということについては,全員でうまく共有できるかどうか分からないのですが,やはりその検討は少ししておく必要があるのではないかと思いましたので,希望として申し上げたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。普通養子と特別養子とでどこが違うのか,制度上の違いは民法に書かれておりますので,明らかなわけですけれども,何が不都合なのかということを考えた場合に,実親からの干渉を断ち切るのが難しいという指摘がされることがあります。しかし,事実の問題としては,法律上の親子関係が切れているとしても,実親が干渉するという可能性はあるわけなので,これに対応する必要があるということですね。 ○窪田委員 正しく実親関係を切ったとした特別養子縁組でも,実親が子どもがどこにいるか分かっていれば,やはり同じように干渉してくるだろうという問題があると思いますので,実は特別養子か普通養子かという問題とは切り離して考えなければならない問題ではないかと思います。あと,もう一つ申し上げると,これもそれこそ管轄の事項ではないということになるのかもしれませんが,普通養子縁組に関しての離縁の問題というのは,やはり少なくとも再検討の余地はあるという程度のことは,やはりかなりいろいろなところで出てきていたことなのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。特別養子を使いやすくしてほしいという御要望にこたえつつ,それについてこの席上で挙がっている様々な御懸念を考慮すると,一定のところに線が引かれるところになる。その線をどこに引くのかはこの先,更に詰めていくということになろうかと思いますけれども,他方で,普通養子がより使いやすい制度になれば,普通養子はこれまでよりも重要な選択肢になるだろう。では,何が普通養子の利用を妨げているのか,妨げになっているものを法的に解消できるのならば,それを解消することが目指されるべきではないか。こういう御指摘だったかと思います。少なくともここで指摘しておくべきことがらはもあるだろうし,もしかしたら,今回できることもあるかもしれない。そうしたことを検討したらどうかということですね。どこかで線を引くということについて,いろいろ御不満も残るかと思いますけれども,それと併せて,普通養子についてしかるべき措置をとるということを将来に向けて考える。これをセットで考えたらいかがかということだと伺いました。 ○岩﨑委員 今日,電車の中で,今私たちが現場の中で普通養子しかできない子どもはどんな子どもかというのを挙げてみました。親族間養子は当然,普通養子でいいと私は思っています。その反対側として,先ほどどなたか挙げられましたけれども,代理出産の,いわゆる娘夫婦の胚を母親である人が出産をして生まれた子どもを特別養子で娘夫婦の子どもにしたというような,これは親族間養子だと私は思うのですけれども,何をもって特別養子がよかったのかというのは少し,私は分からないまま,特別養子がされています。連れ子養子も基本的には普通養子です。私はそれでいいと実際問題,思っていますが,ただ,非嫡出の子どもを連れた母子の場合で,結婚する相手の男性がその子どもを養子縁組をしたいときに,できれば特別養子にしたいというケースが,裁判官の判断によって幾つか認められていると聞いています。養親となる者が単身である場合には,単身者が母であれ父であれ,これはもう普通養子しか今,私たちはできません。6歳以上の子どもが全て普通養子でしかできません。外国籍の夫婦が日本で養子縁組をし,自国へ帰国後,改めて自国法によって養子縁組をする場合,普通養子で連れて帰るケースはかなりあると聞いています。それから,外国籍の父や母の母国法に特別養子と同種類の養子法がないために,普通養子でしかないという場合があります。それから,戸籍上父ではあるけれども血縁の父でない者の特別養子の同意に全然,反対するのなら反対もいいのですけれども,関わらないような場合に,やむなく普通養子でこれをせざるを得ない,どうしても戸籍上の父が,母から出たその子どもの特別養子に対して同意をしてくれない,あるいは同意をすること自体を拒否されてしまって,どうしようもなくて普通養子で成立しているケースがかなりの数,これはあります。   そういうふうに,普通養子でしか今,日本で養子縁組ができない子どもがいて,その中に,やはり特別養子で認められるべき子どもが含まれているのではないかと思うところが私の中にはあって,もう少しそこの救済策がないだろうかというところです。6歳以上のところは,12歳でも15歳未満でも,それは決められたら,そうするしかないのですけれども,取りあえず上げていただけることはとても有り難いと思っています。   多分,私の事例でいつも言いますように,捨て子のケースが,やはり戸籍上の記載を見ると,とても寂しいものがありますので,それがたまたま6歳未満で特別養子が認められるべき子どもが,私,今回ヒアリングにお連れすることになっている子どもの場合は,7回,うちの愛の手にのっけて,やっと最後の方で決まったときが既に子どもが6歳をすぎていた,その代諾を私が後見になってやっているのですけれども,その戸籍を改めて今ずっと眺めていて,もうその子どもは年齢が17歳になっていますので,もし15歳未満から同居していて18歳まで認められるという一番長い例外が認められたとしても,この法律が多分,施行するまでに彼女は二十を超えているので,逆に何もない。   こういうふうになってしまっている子どもがいる場合に,大人になってしまった普通養子が,是非今の親と特別養子に切り替えたいというようなことの申立ては一切考えられないことですかね。一回どこかで資料の中で書いてあったことがあるように記憶があって,私はいろいろな意味で,特別養子と普通養子,普通養子を何もあれしているのではなくて,やはりこの子が結婚するとき,この戸籍を夫になる人に見せることの大変さ,事実を先に話すか,話さないかもあるのですけれども,この戸籍を持ってこれから先,生きていかなければならない日本の社会の中にあって,6歳という,あるいは12歳という,15歳未満という年齢を超えてからでも,出てくるいろいろな問題について何らかの救済策を同時に考えていただけることがあれば,とてもうれしく思っております。よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。岩﨑委員がおっしゃってくださったように,年齢を引き上げたとしても,様々な事情によって特別養子縁組の要件を満たさないということで普通養子縁組をするというケースが残ることになろうと思います。窪田委員がおっしゃったのは,そうなった場合に,その人たちが親子としてやっていくのに支障の少ない制度の方向性というのも併せて示しておくという必要があるのではないかということだったかと思いますので,それも併せて可能な範囲で検討できればいいのではないかと思います。   ほかに,いかがでございましょうか,第1の点につきまして。 ○倉重関係官 場合によっては,休憩後にお答えいただいてもと思うのですけれども,18歳を例外要件とされた床谷委員と,15歳を検討の上限として指摘いただいた窪田委員にお聴きしたいのですが,現行法の養子となる者の年齢要件は請求時,申立時の年齢とされているのですが,そのこととの関係で見直しの必要がないかという点について,少しだけ教えていただければと思います。   すなわち,仮に18歳で請求した場合の手続について養子縁組成立を認めるのであれば,今後,成年年齢が18歳になった以降の話ですが,成人になった者についても審判で身分関係を変動させるというようなものを認めることになってしまうという問題,それから,窪田委員の御発言を前提にしますと,養子縁組成立時では15歳を超えている者について同意をどのように扱うかという問題が出てくるかと思いますので,上限として出された年齢は,申立時のものであるということを維持することができるのかどうかという点について,御意見をお聴かせいただければと思います。進行との関係もございますので,後半の冒頭でも構いません。司会にお任せいたします。 ○大村部会長 短くお願いできれば。 ○窪田委員 私自身は15歳というのは論理的な上限として,もうこれが限界でしょうということで申し上げただけで,それを例外的な場合,申立てとの関係で超えたらどうなるのかということに関しては,何も考えていなかったということで御容赦ください。 ○大村部会長 床谷委員,もしあれば,後でも結構ですが。 ○床谷委員 私は先ほど申し上げましたように,例外として18歳未満申立てということで,これはドイツ法でも成年養子は普通,単純養子なのですけれども,例外的に幾つかのパターンで成年者の未成年養子と同じような,断絶型といいますか,完全養子型ができる要素の一つとして,申立時未成年というのがあるので,それに少し発想としては影響を受けておりますけれども,手続の長さもありますけれども,慌てて未成年までにぎりぎりで,規定の年齢ぎりぎりで申し立てるということで,超えてしまう場合は当然あると思いますので,やはり年齢は申立て時と考えています。 ○倉重関係官 かしこまりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。そのほか,よろしいでしょうか。   それでは,少し予定の時間を過ぎましたけれども,ここで休憩しまして,35分に再開したいと思います。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,時間になりましたので,再開をさせていただきたいと思います。   休憩の前まで,第1の「養子となる者の年齢要件の見直し」につきまして御意見を頂きました。様々な御意見を頂きましたが,それを踏まえまして,更に検討をしたいと思います。   休憩後は,最初に申しましたように,第2の「特別養子縁組の成立の審判手続の見直し」というところから始まりまして,第4まで,手続に関わることですので,一括して検討をしたいと思います。   まず最初に,事務当局の方から御説明を。 ○浜田幹事 1点だけよろしいですか。 ○大村部会長 前半の部分についてですね。どうぞ。 ○浜田幹事 進行を阻害して大変申し訳ありません。浜田です。   この間,日弁連でも,この年齢要件も含めた全体についていろいろ議論をさせていただいているのですけれども,これは日弁連としてまとまった意見ではないので,私の責任で申し上げるものですけれども,日弁連の中でも年齢を現状の要件から大きく引き上げるということについては懐疑的な意見の方が極めて多い。端的に申しますならば,磯谷委員のペーパーにありますとおり,6歳を維持するのか,せいぜいもう少し上げるのか,上げるとしてどの程度上げるのか。ここからは本当に確定的ではないので,なかなか数字として申し上げるのがいいのかどうか分かりませんが,引き続き私の責任で申し上げますと,例えば8歳とかそのぐらいのところが考えられるところではないかと,あとは本当に心理学的な見地等からも踏まえて決めるべきだよねというふうなところが今,日弁連での大勢の意見となってきておることを御紹介申し上げておきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。御意見として承りました。   それでは,資料につきまして御説明を頂きたいと思います。 ○倉重関係官 関係官の倉重でございます。それでは,部会資料3のうち第2から第4までについて説明申し上げます。   まず,第2についてでございます。これは,特別養子制度の成立手続の見直しについて,今後の検討の方向性を整理したものとなります。部会資料3の10ページの対比表,本日は抜き刷りで参考資料としてお配りしておりますが,こちらを御覧ください。①から④まで整理しておりますが,まず①は,現行の手続の基本的な構造を変更することなく,利害関係参加と中間決定の利用範囲を拡大することで問題の解決を図ろうとするものです。   この案では,養親となる者が審判手続を申し立てた後で,必要な事案では児童相談所長が利害関係参加することとなります。その上で,裁判所において要保護性要件及び同意不要要件について十分な心証が得られましたら,それらの点について中間決定をすることができることとします。そして,中間決定より後は,実親の関与なく,養親において,養子との間のマッチングの適否に関する必要性の要件について審理をしていくことになります。もっとも,要保護性要件等が縁組成立時点において要求されるという点を変更するものではございませんので,この案では,中間決定より後の手続においても実親は中間決定後の事情変更を主張することができることになりますし,縁組成立の審判に抗告することもできます。これらの点で,養親となる者の負担を軽減することや,実親との対立構造を避けるというニーズに対して,必ずしも十分こたえるものにはなっていないという難点がございます。しかし,児童相談所長の利害関係参加を認めることで,一定程度,現在言われている問題点を緩和することができるものと思われます。   次に,②についてですが,こちらは前回部会資料で提案していた方策を採用した場合の手続のイメージですので,内容の説明は省略いたします。この案では,養親となる者が申し立てる縁組成立の手続本体において,常に要保護性要件について審理することになります。そのため,この案でもニーズへの対応が必ずしも十分ではないという難点がございます。しかし,児童相談所長の利害関係参加を認める①案と併用することで,一定程度緩和することができるものと思われます。   ③は,②の案をベースとしつつ,実体法において特別養子縁組成立の要件から要保護性要件を削除するものです。これによって,実親の同意が撤回することができなくなっていたり,同意が不要であることがあらかじめ確定している事案では,実親は縁組成立の審判手続本体に関与することができないことになります。この案については,養子縁組の成立と実親子関係の終了という法律効果が実親の同意と必要性要件の充足だけで生じることとすることが許されるのかといった疑問が残ることになります。   最後に,④は特別養子縁組成立の手続を二つに分けるという二段階手続を採用するものです。この案では,児童相談所長又は養親となる者が申し立てる1段階目の手続で,要保護性要件並びに同意又は同意不要要件について審理を行い,これが認められた子については養子適格者であるという審判がされます。その上で,養親となる者が申し立てる2段階目の手続において,当該養子となる者と養親となる者との間の縁組が必要性の要件を満たすものであるかを検討することになります。この案は,要保護性要件と同意又は同意不要要件が1段階目の審判時に満たされていれば足りるということを前提としています。そうしますと,まず,このような実体法上の要件を変更することが可能であるかを検討する必要がございます。また,1段階目の審判により何らかの実体法上の効果が生じることとする必要がありますが,その場合にはどのような実体法上の効果を持たせることができるのかを検討する必要がございます。   簡単でございますが,第2の説明は以上になります。   続きまして,第3についてですが,これは実親による同意の撤回を制限する方策に関するものです。まず,1から3までにつきましては,いずれも前回部会で御審議いただきました,本方策で定められた方式によらない同意を許容するか,一元説,二元説というような名前で前回,議論したところでございます。それから,審判手続中にされた同意について撤回を許す期間を設けるか否か,最後に,審判前の同意について白地同意を許容するかという各点に関して,事務当局において提案をさせていただくものです。また,4につきましては,審判前の同意に関して,同意の相手方となる公的機関について,前回審議において指摘された公証人,児童相談所,家庭裁判所の各機関について,それぞれ視点を整理したものです。これらについて御意見を賜れれば幸いでございます。   最後に,第4の特別養子縁組の成立について実親の同意を要しないことをあらかじめ確定する方策につきましてですが,これは第2の検討においてこの方策を採用することになった場合に問題になるものでございます。それらを踏まえまして,本日はまず,第2の検討の方向性に関する御審議を中心にお願いしたいと考えております。よろしくお願いいたします。   この点に関しまして,磯谷委員からの意見書の内容を簡単にお伝えしたいと思います。磯谷委員からの御指摘ですが,まず,第2の検討の方向性の部分につきまして,③案又は④案が望ましいものと思われ,それらの課題をいかに解消又は軽減できるかを検討すべきであるといった御意見でございます。④案につきまして,第1段階で養子適格が認められた場合には,少なくとも2年経過するまでの間,実親の親権は制限され,職務代行者を選任することとしてはどうか,1段階目の審判後,2段階目の審判による縁組成立までが2年というのは長すぎ,1年程度とした上で,期間内に申立てすることを要するということにしてはどうかといった御意見でございます。   次に,審判手続における実親の同意の撤回を制限する方策につきまして,審判で行われた場合には撤回を許す期間は不要であるという御意見であり,仮に設ける場合でも,ほかの手続の異議申立期間を参考にして,2週間程度設ければ十分であるとの御意見でございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   この手続の問題につきましては,ドイツ法の事情につきまして床谷委員から文書を頂いておりますので,併せて床谷委員の方から御説明を頂ければと思います。 ○床谷委員 お手元に少し,簡単なメモとしてまとめさせていただきました。私は主にこれまでドイツ法を比較対象として養子制度を考えてきたわけですけれども,実体法を中心に研究してきた関係で,手続については余り十分な知識はございません。手続法は難しいなということを改めて感じたということを自白せざるを得ませんが,ドイツ法は一体どういうふうに手続を組んでいるのだろうかということで,見直してみたわけですけれども,立法時の解説書では,日本とか当時の西ドイツのように,1回の審判等で親子関係の断絶と新しい関係を作るというものはむしろ少数で,段階的に別々の手続で行うところが多いというふうにまとめられていました。   アメリカの標準養子法とかフランスの例とか,あるいはイタリアの例などが段階別ということの例として挙げられているわけですが,ドイツは一元的なものだろうと,1段階であるということだと思うのですが,ドイツ法の場合は養子制度の改正の際に,基本的にはあっせん前置ということで,あっせん機関が必ず関わるという形にしています。そのあっせん機関も主に少年局ないし青少年局と訳されている機関の中に,なおかつ養子あっせんに必要な人員をそろえた部署が設けられて,そこが主にあっせんを行う,そのほか民間のあっせん団体もありますけれども,そういうところがあっせんを行って,養子縁組の申立てに必要な事前の準備作業などを行うということになります。   民法の手続の開始,養子縁組の手続については,飽くまで養親となるべき者が申立てをするという形になっておりまして,家庭裁判所が,ドイツ法が求めている未成年養子,完全養子型の未成年養子に必要な要件の充足ということを審査,審理を致します。子どもとか父母とか,あるいは配偶者の同意のあるか否かというようなこと,それから,養子となる者の福祉に資するといった点,更に養親となる者と養子となる者との間に適切な親子関係が成立することといった要件があるわけですが,そういったものの判断を裁判所が責任を持って行って,養子決定をするという仕組みになっています。   家事事件非訟事件手続法では,これは飽くまで裁判官が職権で調査をするとなっておりますけれども,養子となる者と養親となる者との間の適正,適合性とか適格性といったことについては,あっせんをした団体が関わっておりますので,そこの専門家による意見,以前は鑑定意見という表現をしておりましたけれども,そういうものが提出されて,それを判断の材料として裁判官が判断をするということになっています。例外的にあっせん機関が関与していないケースについては少年局に対して裁判所の方から意見聴取をするということで,少年局は養子縁組事件については常に当事者として関わるというふうに家事事件手続法上は位置付けられています。したがって,具体的な同意等の要件については,その負担は少年局がカバーをすることになるのではないかと私は見ました。これは,今日の資料を見ると,少年局,こういった児童保護機関が養子縁組手続に当事者に準じた立場で参加をするという形に近いのではないかと判断を致しました。   養子法の,ドイツ法でも父母の同意については細かく規定がありますが,同意が不要なケースということについて,明らかに同意が要らないということとして,行為能力がない,意思表示できないというような場合とか,長期に行方不明であるといったような場合とか,あるいは棄児のように親が不明であるといったような場合については,民法の規定で不要であるという形に書かれている。   これとは別の形で,一定の要件がある場合には同意が不要である,日本式にいうとただし書に当たる部分ですけれども,子どもに対する親としての義務を著しく違反しているといったようなこととか,一定期間,子どもに対する無関心であるとか,そういった帰責性がある場合だけではなくて,これは精神的な病気等による養育が実質的に不能であるといったような場合も含まれておりますけれども,そうした場合で,かつ養子縁組が成立しないということによって子どもが不相当な不利益を受けた状態が続くと,そういった要件の下で,裁判所の決定で,親の同意を補充する,これはドイツ語ではエアゼッツェンというのですが,それを埋め合わせるという意味合いなのですが,日本的には代行するようなイメージで語られたりします。つまり,裁判所の決定で親の同意は不要であるということを決定すると,そういう決定を一つするという,そういう形になっています。   これは私も意外だったのですが,この同意不要という裁判所の決定の申立てについては養子となる子ども自身が申立人になっておりまして,14歳未満の場合には法定代理人,ドイツ法の場合には未成年者は基本的に完全養子型ですので,この形になるわけですが,14歳未満の場合には法定代理人をつけて,その人がやる,14歳以上については本人が申立てをする,つまり,親の同意がないことで養子縁組ができないということの不利益を甘受しないために,養子となる者にこのような申立ての手続を踏ませるという形になっているというところがありました。   親の同意が不要であるという決定については,テキストを見ると,これは最終的な養子決定とは独立した決定であるとして行われると解説がされております。それ独自で抗告の対象になるという記述もありました。そうしますと,これはどういう位置付けなのかということで考えましたのですが,これは中間決定,中間の判断,裁判であるというようなコメントが教科書には書かれてありました。その限りでは,ドイツ法の立場は一元,段階的なものではないと整理されているのですけれども,この部分については一部,抜き出して決定をするということもあるということで,部分的に段階が分かれているという印象を今回初めて私も持ったということです。   ここから受けたイメージなのですが,今日の資料の10ページで考えられる制度が近いものとしてイメージしたのは,第1案の参加型であり,かつ第3案の,これは養子縁組が子どもの不利益を脱却させるために必要だという,子どもの福祉にかなうというのが判断基準ですので,一番,③案に近いように思われたということです。ついでながら,これを見て,今回の資料3の中でも,やはり①と③の組合せというのが日本でも有力な移行タイプになるのではないかと思った次第です。   その下の,③案の具体的な規律のイメージのところについては,付け足しですが,事務当局にまとめていただいたもののうち,「子の利益のため特に必要がある場合において」ということで,その後に同意のある場合と同意が不要な場合というように書かれているのは,少し規準としては逆転しているような印象がありましたので,明確に子どもの利益のために必要があるということをもっと強調するような規定ぶりにするためには,初めにこれを持って行くのがふさわしいのではないかと考えたので,少し付け足しで書かせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。ドイツの手続について御説明を頂いた上で,現在の日本の立法論として考えたときに,案として挙がっているもののどれがそれに近い考え方になるかということにつきまして,御説明と御意見を頂いたと理解いたしました。   この四つのものに関して,それぞれ特質につきまして先ほど事務当局の方から御説明があったところでございますけれども,それらの点も含めまして,皆様の方から御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。 ○山口幹事 事務当局の方から,床谷委員に教えていただければと思うのですが,③の要保護性要件廃止案というのが,先ほどこちらから御説明申しましたように,実体的にこんなことが許されるのだろうかというところが疑問にありまして,すなわち,やはり必要性要件というのが要保護性要件と切り離して純粋に検討できるような要件なのであろうかというところに疑問がありまして,床谷委員としては,もうこれは必要性要件,養親とのマッチングのみでやっても実体法上,特に問題ないのではないかということなのでございましょうか。 ○床谷委員 私の③のイメージは,必要性要件の中に要保護性要件が組み込まれるというふうな理解です。要保護性のあるお子さんをこの特別養子縁組によって適正な家庭に置く必要があると,こういう理解なので,あえて分けて規定しなくてもよいのではないかということです。 ○山口幹事 大変よく分かりました。ありがとうございました。 ○大村部会長 ほかに,いかがでしょうか。 ○棚村委員 今,床谷委員が,③のところは少し,要保護性要件をどうするかという問題があるかと思うのですが,利害関係参加型という形で中間決定ということで,要保護性,それから同意の有無に関して,実親の方の負担とか情報収集能力とか,そういうことを考慮すると,養親候補者に負担を掛けるのがやはり問題である,特に同意なんかを得られないというようなことで手続が駄目になってしまうのではないかということで申立てができないというようなことも緩和できるということで,私としては元々,中間審判とか中間決定ということで,前提となるような要件で処理ができるのであれば,児相長等の利害関係参加を得た上で,手続が円滑に,役割分担もしながら,できるということなので支持してきました。   それで,①案は是非支持したいと思っています。ただ,①案に関して言うと,中間決定後の事情変更が出てくるとか,争われたときに手続が大分長くなるのではないかという懸念も示されていると思うのですけれども,ほかのところでもやはり実親をどの程度関与させるかどうかということなので,それを認めるか認めないか,重大な利害関係があるのではないかということになれば,やはり争う機会というのは出てくることが出ると思うのです。同意だけを喪失させるという審判を抜き出すような形であっても,やはり争う余地というのは出てくる可能性があるので,それ自体は余り大きな違いはないのではないかと考えています。   それから,要保護要件の問題が実は非常に悩ましくて,各国の養子法の実体法の要件を見ると,子どもの最善の利益とか,子どもの福祉とか,そういうことが必ず入っています。それともう一つの問題は,やはり実親の監護が不適当だとか,あるいは困難であるということで,特に子の利益に必要だというので,要保護性と必要性という要件が並べられて,これが現状ではどういう関係なのかということの評価になると思うのです。   この要保護性要件の使われ方は前から,私自身は審判書を見ていると,問題になる事案によってなのですが,例えば親族養子とか,あるいは連れ子養子みたいなものは,特に子の利益のために必要だというところで切るとか,問題にされるということはあるのですが,最近の傾向を見ると,かなり実親の状態と子どもの状態,養親候補者となる環境,それから現実の監護がどの程度実績が積まれているかということ,今,現在の養育関係を失わせるとどんな悪影響が予想反れるかなど結構総合判断するようなパッケージでもって活用されている事案もあります。つまり,実親の不適切養育の要件と,子の利益,養親候補者との関係性の要件とは,最終的にはこれが子どものために本当になっているのかどうかという辺りのところの総合判断をする要件になっているので,同意要件とか同意不要要件が満たされるようなケースは,要保護要件というのを,特にオーバーラップしているのではないかということについては,若干疑問があるのです。   つまり,実親が育てられないとか,遺棄とか虐待に近いような状態があるということで,実の親が十分監護ができていないという要件と,それから,新しい養親子関係の中で,むしろ子どもの利益が本当に守られていくと,その二つの要件がやはり何らかの形で,本当に切り離せるのか,実体上もですね,それが非常に疑問なところがあって,ただ子の利益だけということを入れてしまうと,特別養子制度というのは,実の親の関係を断絶させたり切る,そして新しい関係を作る,この二つの要素がやはりどういう関係でこの制度全体の理念なり目的として位置付けられるべきかということと関係しているように思うので,今の段階では,要保護要件の現実に果たしている機能ということを考えると,場所は前の方にむしろ持って行った方がいいのかなという感じは持っているのですけれども,実親の監護状態とかそういうものが不適切だとか困難だというところの要保護性ですかね,その部分での必要性要件をなくしてしまうと,特別養子って何のために認められるのかと,ただ子の利益になればいいということだと,誰もが主張できるような,少し不安感があって,特別養子でないと実現できないと,実親による養育がやはりなかなか難しいのだと,それから,関心をきちんと持って子どもを育てる見通しも立っていないのだということを,どこかの要件で,やはり何らかの確認するところは必要ではないかと少し思っています。それが,親権喪失とかの規定との関係性ということもあるので,①案は是非支持したいなということで,③案については少し迷っている状態です。   ほかの手続で,特に二段階手続論については,完全にきれいに分けられるかという問題と,それから,特に養親の,申立権者を誰にするかというときに,養親候補者というものが新しい身分関係を取得するということと実親との関係が切れるというのが,かなり一体として密接な関連性があるので,同意だけを抜き出していってしまうとか,あらかじめ喪失させる審判を作るとか,それから,完全な二段階手続論で手続を真っ二つに分けてしまうということについては,やはりちゅうちょを覚えるところであります。   すみません,繰り返しになりました。 ○大村部会長 ありがとうございました。床谷委員と棚村委員から御意見を頂きましたけれども,両委員とも手続は,ここでいうところの2段階でない方がよろしいというのが基本的なお考えで,その後,実体要件をどうするかという点についてはお考えが分かれていると伺いました。   ほか,手続の組み方につきまして,何かありますか。 ○水野委員 私は二段階手続論の擁護をしたいと思います。フランス法や英米法はこちらになっています。これまで特別養子制度が使われにくかった理由の一つは,実親との養親との対決構造だったことにあるのだろうと思います。養親希望者は実親を直接対決する相手方にして提訴をしなくてはならず,同意を取ってこなくてはなりません。手続の途中で一旦同意をした実親がそれを撤回することもあります。そういうリスクを全て養親候補者が受けなくてはならないところに困難があったように思います。   先ほど久保野幹事がおっしゃったように,いかに実親を支援するかということが重要で,本当はそれこそが不可欠な手続きなのだと思います。その実親支援の一番最後の段階で,この子は実親との関係は切った方がいいという判断があって,そして特別養子が動き出すのでしょう。そうすると,そこはやはり児相長が申し立てて,第1段階目をはっきりさせ,そして,その上で2段階目で養親につなぐという手続にした方が筋だろうと思います。   真ん中の養子の適格の判断ですが,児相長が,親権を喪失させて,職務後見人になって,養子縁組の手続のほうに動き始めるとし,後半の段階では実親の関与を外しておく,その代わり,その第1段階に至るまでの手続きの間で,十分に実親の権利養護と実親の支援をすることで対応するのが良いと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。効果として児相長の後見に服するという効果を付与する,国家後見という制度を創出するという発想ですね。 ○水野委員 はい。 ○杉山幹事 私自身は元々,二段階手続論が出てきたときは少し懐疑的に考えておりました。一番の理由は,今すんなりと1段階で行くケースについて2段階にしてしまうと,1段階目の審判が確定するまで即時抗告等で争わせて,その後,2段階目の申立てをすることになり,かなり時間が掛かるのではないかという点でした。当初は,事務当局案では①の利害関係参加案でうまくいくのであれば,現行の運用を少し変えるだけでよく,事情変更の問題はあるけれども,そのほかの問題,例えば実親の同意が揺れるケースでは同意撤回の時期を別途設けて対処すればいいのではないかと思っておりました。ただ,いろいろお話を聴いてみますと,やはりある程度,この子は養子に出すことができるのだということ,つまり養子適格者であるということが分からないと,なかなか養親候補者を見付けることができないという,実務上のニーズを完全に無視することもできないのではないかと思うようになってまいりました。①案ですと最初に養親候補者がいなければならない点で,そのニーズにはこたえられないわけです。   そうであれば①と③ぐらいの組合せでいいとも思っておりましたが,③ですと,やはり実体法上の要件を変えることができるのかという問題がありましす。では,④をどう考えたらいいかでありますいろいろ乗り越えなければならない問題はあるけれども,うまく乗り越えることができるのであれば,採用できるのではないかという気がしております。乗り越えなければならない問題の一つは,第1段階の,この子は養子適格者であるという審判,前回も言いましたが,その主文とか効果がどんなものであるのかは問題で,特別養子縁組成立の要件の一部だけ満たすというよう決定は違和感を感じるので,一段階目の決定を作るのであれば民法上の要件を変える必要性があると思います。あと,基準時の問題,①の要保護性要件,②の同意,同意不要要件については,特別養子縁組の成立時ではなくて,その前の段階で備わっていれば足りるということになるので,そのように民法の要件を変更していいのかという問題を議論しなければならないと思います。   事務当局案では1段階目が確定した後に2段階目を申し立てるということでありますが,ここは1段階と2段階,並行審理は認めないと,手続が遅くなるという問題が生じるので,並行審理を認めて,1段階目の審判が確定することが2段階目の審判の確定要件とするなどの方向性を検討したらいいと思っています。   ただ,よく分からなかったのが,③の案でも④の案でもそうなのですが,2段階目の審理は基本的に実親の関与は一切排除することになっており,それはそれでいいように思うわけでありますが,現行の民法817条の10では,特別養子縁組の離縁の際に実親には申立権があるわけで,それが適当かどうかはともかく,実親に養子に出した子と養親との関係を監視する権限が残っているように見えます。仮に残っているのだとすると,そしてそれが適当であるならば,2段階目で実親の関与を一切排除するのには少しちゅうちょを覚えるところです。④でもできなくはないと思うのですけれども,様々な問題があって,そこを乗り越えることができるのかを検討していただければと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○高田委員 私も,これまでのお話をお聞きし,現行の手続に幾つかの問題点があるということを自覚しております。それを乗り越える案として④は非常に魅力的であり,もし可能であれば,④が達成するであろうメリットを生かす方法を考えるべきだと考えております。ただ,手続法上及び実体法上,幾つかの問題点があるということは今,杉山幹事のおっしゃったとおりだろうと思います。ほぼ杉山幹事が網羅されましたが,より根源的にはやはり実体法の問題ではないかと思いますので,まず,その点について,実体法の関係者のお教えをお伺いできればというのが率直なところでございます。   すなわち,山口幹事,それから杉山幹事もおっしゃいましたように,また,先ほどの棚村委員の御発言にも関係しますが,①要件,②要件と必要性要件が分離できると,必要性要件とは分離して①要件,②要件を確定することに実体法上意義があるということを前提としているように思われます。これをどう考えるかということだろうと思います。実体法に弱い私などが漫然と考えますと,実体法要件の一部のみを先行して確定したにすぎないのではないかという疑いを残すわけでありまして,その辺りをどう考えるかということかと存じます。   それに関連しまして,これは山口幹事がおっしゃいましたように,①要件,②要件の基準時をずらす結果,必要性要件と②要件を総合判断することはもはやできなくなる,総合判断はできるのですかね,①要件,②要件だけを先行して,少なくとも養子適格の判断の基準時までに決定するということでありますから,実体要件の基準時がずれるということをどう考えるかと,3番目に,この後の議論でありますけれども,白地同意を認めることが不可欠だろうと思います。実質的にはこの手続を開始することの同意ということになるのかもしれませんが,これらの点で実体法を大きく変えることになるように思われますが,その点についてどう考えるかについて,前提としての御意見を伺えればと思います。   もう一つ気になっておりますのは,これも素人の考えでありますが,現行法でありますと,養親候補者が申し立てて,それは駄目でしたで終わるわけですけれども,二段階手続によりますと,児相長が申し立てられても,結果として養親候補者が見付かりませんでしたという終わり方があることを想定するわけです。その段階で要保護性要件だけが確定しているという状態なわけです。2年後にもし不成立のままですと,実親との関係が,括弧付きですが戻ってくると,こういう規律が子どもにとって本当にいいのかどうかということについても知見がございませんので,是非その辺りについて事情を御存じの方の御意見といいますか,情報を頂ければ幸いに存じます。 ○大村部会長 ありがとうございます。1段階目の手続をここで書かれているように組むことに伴って,動かさなければならない実体法上の要件があるけれども,それは動かせるのかという御質問と,このような手続を組むことによって,1段階目はやったけれども2段階目はうまくいかないという事態が生ずるのだけれども,その後始末は本当に大丈夫なのかと御質問,この2つの御質問があったかと思いますけれども,いかがでしょうか。 ○窪田委員 少し議論を基本のところからかき回すようなことになってしまうのかもしれませんが,私自身は①案から③案を除いて④案まで,要保護性要件と必要性要件を分けて議論するという形になっているのですが,これがそもそも現行法の考え方なのかというと,私自身はそう思っていなかったところがあり,実は床谷委員がおっしゃったようなイメージの方に近いものでした。現行法の817条の7は,「著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において」と確かに言っています。そして,「子の利益のため特に必要があると認められるとき」というのですが,これは別に二つ要件を挙げたというよりは,「子の利益のため特に必要があると認められる」という場合の前提として絞りを掛けているものがこれであったということなのではないかと思います。その意味では,子の利益のために特に必要があるというのが本体であって,ただし,その前提としての要保護性という形で語られているところを,さらに条件として外してしまっていいのか,どうなのかというのは問題としてはあるのですが,この二つはそもそもセットになっていたのではないかと思います。   例えば,4番目の二段階手続案というのを見るとよく分かるのですが,養子適格となった後,必要性要件だけ議論するというのですが,これを考えてみると,養子候補者のAさんという人がいるときに,このAさんがやはり特別養子にならなければ駄目だよね,その必要性があるよねと別に言わなくてもいいですよね。もうこの子にとっての特別養子の適格性というのがあるのだったら,この人が適当だということで十分だということだし,マッチングという形で今まで言ってきたのはそういうものだと思いますので,むしろここで必要性要件というのを書くことが,分かりにくくしているのかなという気もするのです。   必要性要件を前の方に移すと,多分,高田委員から出てきた疑問で,現行法で書かれている要件が二つに分かれてしまって,時間的な問題はどうなるのかという問題はそもそも出てこないのではないかと思います。つまり,817条の7は確かに必要性があるときにこれを成立させるということで,最後までは規定しているのですが,ここでのポイントとなっている必要性があるというのは,この養親についての話ではなくて,この子についての話をしているのではないかと思いますので,2段階に分けるのだったら,むしろマッチングの問題ということで,別の形での多分,たとえば適合性とか,そうした形で示されるものを挙げればよいのではないかという気がして伺っておりました。   その意味では,恐らく③の要保護性要件廃止案というのも,必要性要件というところだけを書いて,要保護性を更に書き込むのか,書き込まないのかというだけの違いなのかなという,書き込まないという考え方を採れば違うものになりますし,書き込むのだというと,実は大して違わないということになると思いますので,その点はうまく議論を分けた方がいいのかもしれないと思って,伺っておりました。 ○大村部会長 ありがとうございました。高田委員からの御指摘のうちの前段についてお考えを頂いたと思いますが,後段については何かありますか。 ○窪田委員 特にございません。 ○岩﨑委員 実は,再々言っておりますけれども,大阪の場合に,特に親が行方不明等で面会もなく,引き取られるめどもない子どものときに,それを要保護要件として同意のないまま申し立ててきました。それの審判書の中に,明らかに確かにこの子どもは親が出産後,ほとんど親らしいこともせず,面会もなく,そして要保護要件があるということが書かれてあって,その結果,今育てている,試験養育期間を終えた養親となる者と養子となる者との間にとてもいい親子関係が成立していて,その関係がこの子どもにとって必要要件であるので,これを認めるというような書き方の審判書が非常に多いので,必要性をそういうふうにとると,必要性が後ろに来ると見てもいいのではないかと思えるのです。この親子関係がそれほど望ましいものでなければ,やはりこの子にとってこの審判はいいのかということになりますけれども,明らかにいい親子関係が今は成立し,この子どもにとってこの親に育てられることがこの子の成長に必要であるというふうにとれば,必要要件ということが後ろに来るのではないかと。 ○窪田委員 今の例はよく分かったのですが,そういう形で必要性要件を置いてしまうと,そうでない場合の特別養子がかえって認められにくくなるのではないかという気がするのです。 ○岩﨑委員 でも,親子関係がよくなければ認められないでしょう。 ○窪田委員 いや,でも,いろいろなパターンがあるのではないでしょうか。 ○棚村委員 審判例を私が読んだ限りだと,最近は非常にあっさり,特に問題がないものは必要最小限の事項のみであっさりと書いてあるので,具体的な事情もよく分からないものがあります。ただ,争われたものはかなり綿密に事実認定をし,書き込まれているのですね。だけれども,そのときに,養親と子どもがいかにマッチングして適合しているかという話と,今まで実親がどれくらい面倒を見ないでほったらかしにしたかとか,虐待や不適切な養育をしてきたか,場合によっては金銭目的で介入もしようとしているとか,いろいろな細かい事情が実は出てきます。そういう審判書を読めば読むほど,これって両方をクリアに分けて,必要性と要保護性とかそういう話ではなくて,全く先ほどの話ですけれども,総合判断をするパッケージみたいなブランケット条項になっていることが少なくありません。そのときに,裁判所についての裁量の幅というのはかなり,確かに広くはあるのですけれども,どう使われているかというのを見ると,そういうクリアに分けて,それから,同意不要要件もそうなのですけれども,同じように,こういうふうに生まれて,こういう両親の間でこういう状況があって,そして新しい親との関わり方というのはかなり経済的にも恵まれ,仕事もこうで愛着関係も形成されてとか書かれているのですけれども,そして,最後に要件を満たしているかどうかのところで,争いがあるのは,同意されていなければ,免除要件,同意不要事由があると書かれていますけれども,その前提となっている事実というのは,実の親がいかに問題があったかということと,ほったらかしにしているかと,それから,本当に子どもに対する関心が全くないということと,それから,新しい監護養育関係が継続し,子どもの安定しているので,この心理的関係を覆すと,重大な不利益を子が被るという詳細な認定の後に,実の親の監護が不適当だとか何とかということと,そして,特に子の利益のために必要だとの要保護要件が判断評価されています。「特に」を入れるかどうかというのは,また少し別だと思うのですけれども,その二つの要件がクリアに実体法上,分けて,そして,今活用されているものの中に全て組み込んでということで言うと,多分,少し懸念があるのは,実親の権利を喪失すること,失うこと,断絶することと,新しい親子関係が作られることを,本当に,そういう意味では,別々に独立させて判断をし,やれるかどうかということに少し疑問があって,実体法上の要件をそういうような形で整理してしまっていいのかという疑問があります。そうでなければ,正直言って,整理をして要件を前に置いてしまえば,次の新しい親子関係とは,実親子関係を切る話とは,クリアに別なのだというよりは,むしろ,実の親が育てられないから,やはり新しい親が出てくるし,新しい親が出てきているから,実の親の監護と相対的に,何か絶対的にこの実親は駄目であるとか,絶対的にこの養親はすばらしいことを提供できるというか,どこかで相対的に比較をして,親の間でも,例えば監護が争われているときに,第三者ではなくて,基本的には父と母の間で,子どもの利益にとってどちらがふさわしいかというのをやるようなイメージがあるものですから,これを本当に手続を完全に分離してやることができるのかという問題と,それから,やはり高田委員もおっしゃっていたように,それを,実親は駄目だし,要保護性や同意の要件も問題ないとくくり出したときに,本当にふさわしい人に結び付くケースだけであればいいのですけれども,私が大体困難ケースで同意が問題になったケースで扱ったケースだと,やはり親が一生懸命やって育てて,養親さんがやってきたにもかかわらず,同意だけが確かに取れなかったというケースがあるわけです。   だから,その辺りのところが,本当に同意だけをくくり出したり何かをしてやったときに,藤林委員から聴きたいのですけれども,養親さんが実際に小さいときから育て始めていて,これに対して介入してきたり,同意をしなかったりというので,濫用的なものはよく目立つのですけれども,このお子さんはもう養子に出した方が絶対にいいのだということが最初から分かっていて,そして,親は決まらないのだけれども,探せもまだしていないのだけれども,そういう状態で同意権の喪失だけの手続を進めた方がいいケースというのは,どのくらいあるのでしょうか。 ○藤林委員 どのくらいあると言われると,答えにくいのですけれども。 ○棚村委員 結構あるのですか,そういうニーズが。 ○藤林委員 結構あると思うのです。多分,棚村委員が扱うケースはあっせん機関から行っているケースが多いのかなという勝手な想像なのですけれども,児童相談所が扱うケースというのは,親の同意が表明されない,また二転三転する,そんなケースも多くありまして,こういう同意が不安定な方の子どもを養子縁組を希望する養子縁組里親さんに福岡市はなかなかそこまで突っ込めない。もしこれが最終審判で確定しない場合には,その間の養親候補者の方の努力が水の泡になってしまうということを考えると,そういう可能性もあるけれども受託されますかということはなかなか言えないし,言ったとしても,今まで何例かしかありませんけれども,見付からなかったというふうな経験があります。他の自治体さんでは,行方不明ケースでもどんどん突っ込んでいかれるというふうなことも聞いているのですけれども,全国的には確実な同意がなければ,そもそも養子縁組前提の里親さんに委託するということは非常に少ないというのが現状ではないかなと。   反対に言えば,どちらかというと虐待ケースというよりは,乳児院なりに預けたまま,もう面会交流がなくて連絡が取れなくなってしまう,たまに出てくるけれども,また連絡が取れなくなってしまうというふうな方が多いので,それはもう今後のめどを考えていった場合に,第1段階で要保護性要件を認めていただいて,それから養子縁組里親さんを探すということで,現場としては非常にいいという感触は持っております。 ○棚村委員 ゼロ歳とか2歳ぐらいとか,かなり低年齢の子の場合には,割合と養親さんというのは希望者がすごく多いですから,里親さんであっても,いると思うのですよね。それを超えたような子どもたちになってくると,海外でも問題になっているのですけれども,専門的な経験とか知見とかケアが必要になってくるので,補助金を出したり,いろいろな形でないと,養子縁組,なかなかドリフトしている,里親家庭でも。だから,そういうイメージで何かやってしまうと,日本の場合には,それをきちんと受け皿になっているところがないので,むしろ赤ちゃん養子とか,本当にわらの上からの養子みたいなものを考えると,割となり手というか,養親さんというのはかなりあって,それを,実親の関心がないとか交流がないとか,いろいろな問題があるということを,どれくらいの段階で,例えば海外の例を見ると半年で切ってしまう場合もあるし,やはり1年半ぐらい様子を見るというところもあって,改善が見られないとかそういうときには養子に出すと,それまではやはり里親さんでやるというところが多いわけですよね。   それを今回の特別養子制度でいってしまうと,日本の場合に,本当にそういうニーズが,海外で今,苦しんでいるような,年齢も上げる,それから2段階に手続をしているというのは,ある意味では国家被後見子みたいな,そういうことで,パレンスパトリエ(国親)みたいな,国がやはり面倒見ますよと,里親でも必ず見付け出しますよと,その中で,特別養子みたいな断絶型の養子を希望されている人が半分ぐらいしか養子を手にできないというか,そういう現状が欧米諸国ではあるわけです。それを日本に持ってきて,特別養子を進めるのだということで二段階手続論を採用した場合に,見付からないような,なかなか難しいとか,少し年齢が行った子ども,これについてどういうふうな手当てがあるのかということと,それから,ニーズが本当にあるのかというのは,やはり少し数字で教えていただきたいと思います,それだけのニーズがあって,前倒しをしなければ何十名の,あるいは何百名の子が救われることになるか,という辺りのお話が聞ければ,是非と思ったのです。すみません。 ○藤林委員 棚村委員の言われることはよく分かっているわけなのですけれども,今,私が答えたのは,イメージとしてはゼロ,1歳,2歳,3歳ぐらいまでの子どもさんで,要保護性要件を満たして,それから探せば大体見付かるかなというふうなイメージを持っているわけなのです。けれども,これが,年齢要件も上限が上がっていったときに,6歳,7歳とか8歳,9歳になったときに,では,養親候補者が見付かるかというと,それは見付からない可能性もあると思うのですよ。   こういった児童相談所長が申し立てていく場合に,例えば私が7歳の子どもの要保護性要件をまず確定したいけれども,見付からなかった場合に,では,どうするのかという非常に中途半端な状態に置かれてしまうことを考えると,その場合には,この子どもにとって,しっかりとした,もし裁判で確定すれば養子縁組をするのだという意向を持った方にあらかじめ里親委託をして,この申立てを児童相談所が申し立てていくと私は考えます。それを全ての児童相談所長がそう考えるのかどうかというのは,そこは分からないところなので,でもまあ,どう言ったらいいのか分からないですけれども,児童相談所実務の中で,そういった中途半端な状態に子どもを置くべきでないという考え方が浸透していけば,運用でやっていけるのかなというイメージを持っています。お答えになったかどうか。 ○水野委員 先ほど棚村委員が,実親と養親と双方の比較問題で結論が出るのではないかと言われたのは,私の感覚ですと普通養子の許可審判の判断ならまだいえることのように思います。これは特別養子で,実親との関係を完全に切ってしまうという非常に強力なものをあえてということですから,やはり二段階手続論で,養親に実親と対決させるのはいかがなものかと思います。   先ほど,杉山幹事や高田委員からきちんとした御議論を頂いて,やはり民訴学者は違うと思ったのですが,伺っていて,杉山幹事が言われたような並行案という形で実際には動くかと思います。これが先ほどご紹介のあったフランス法のように,2,504人の国家被後見子にしておいて,そのうち841人だけが試験養育に行くという,そういう制度設計には恐らく日本ではなかなか行かないだろうと思います。実際には特別養親候補者が出てきた段階でこの手続が動き出すことになるのだろうと思いますから,養子適格を判断する第1段階の手続があったときには2段階目は当然動くということに,ほとんどのケースはなるのだろうと思っております。   先ほどの高田委員の後半の御質問,2段階目が駄目になってしまったときにどうなるのかという御質問ですけれども,第1段階の効果として児相長が後見人になるという制度設計ですと,現在でも,非常に困った親が子どもにずっと関与し続けるときに,児相長が子どもを守るために親権喪失を申し立てて児相長が後見人になるということは,児童福祉法の規定を根拠にして,動いております。恐らくそれと類似した形になっていくと思われ,つまり,現在の日本の法制の中で考えられないような事態ではないのだろうと思います。 ○高田委員 最後の点,確認ですが,2年間の間はそれなりの手当ては多分なされるのだろうと思うのですけれども,2年たって成立しなかった場合,2年以降の子についての懸念というのが私の懸念なのですが,そこは,駄目だったよねということで子どもには納得いただけるのでしょうか。 ○水野委員 子どもが納得するかどうかという点は,現行法でも児相長が親権喪失を申し立てて後見人になるようなケースでは,同じ問題はあるのだと思います。そのときに,親権を復活させる可能性は,もちろんあるかもしれませんし,ずっと後見人のまま成人するまで行くかもしれません。 ○高田委員 了解しました。ただ,申し上げたかったのは,第1段階を始める段階で,養子縁組の成立の見込みについて何か考慮する必要はないかということでして,これは最終的には実体的な問題かと思いますので,その辺りも御検討いただければと思います。 ○大村部会長 今までの議論なのですけれども,幾つかの点が指摘されていたかと思いますが,一つは実体法上の要件が実際にどうなっているのかということについて,認識が必ずしも一致していない。ここで必要性,要保護性と書かれているものは一体として運用されているのだとおっしゃる方が複数おられますけれども,そうだとした場合に,それを前段の手続で審理したとすると,後段に何が残るのかということが問題になる。窪田委員は,何か別のものを残し得るだろうというお考えでしょうか。 ○窪田委員 少しだけ補足させていただいてよろしいですか。先ほど適合性と申し上げましたけれども,現行法でも監護の状況というのは別個の条件として挙がっているわけですよね。それが正しく養親との適合性の問題だと思いますので,それを独立のものとして位置付けるというのは十分に可能なのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。その要件の整理の問題が一つと,直前に水野委員と高田委員の間でやり取りがあった,養子適格は認定されたのだけれども,その後の手続がうまく進まないという場合はどうなのかという問題があります。そういうことは結構あるのではないかという御危惧も棚村委員から示されたところかと思います。実際には,養親候補者を考えておくとか,あるいは手続を並行させるという御議論もあったわけですけれども,望ましいプラクティスはそうなのかもしれませんが,そうは行かないという場合も出るでしょうから,うまく行かないときに最終的にはどうするのかというのが高田委員の御懸念だったかと思います。   大分お待たせしましたが,岩﨑委員,どうぞお話しになってください。 ○岩﨑委員 いえ,発言なんかしたくないのですけれども,現場がどうなっているかというのがやはり分かっていただかないといけないですし,確かに厚労省を始め,特別養子制度の利用を促進しろという状況の中でこの話が出てきていますけれども,50年頑張ってきた私にしたら,それほど受け皿はたくさんあるわけでは決してない,いい受け皿は,確かにない。子どもが欲しい人は確かにたくさんいるかもしれませんけれども,その人たちが本当にどんな子どもを受けたとしても覚悟を持って最後まで親であり続けられる人がどれだけいて,我々が信頼して委託できるかという数になると,私は少ないと見ています。余りそういう否定的なことばかり言うので,関係者からは喜ばれてはいないのですけれども,それほど本当に日本の未来に,養子縁組がどんどん増えて,子どもたちがそこでばんばん育っていくという,そんな大きな夢を持っているわけではないのです。   ただ,今,水野委員もおっしゃるように,日本の制度の中で,一度施設に預けてしまうと面会にも来ない,引き取りのめども立たず,そのままになっている親がかなりたくさんいて,それに関して確かに,手厚い支援がされているかどうかということも非常に疑わしいところが,ないわけではないのです。   ただ,そういう親の子どもについては養子に出す,実の親に期待するより新しい養子縁組先を探す形で,この子どもたちの存在をまずアピールする。養子縁組を必要とする子どもを私たちが選び出さないと,探せないのですよ。だから,リストアップすることはとても大事なことで,そのリストアップするときに,どういう条件であれば,私たちはこの子どもを,親の同意が場合によってはなくても,あるいは親とよく話し合って親の同意がしっかり取れれば,できるだけ小さいうちから養子縁組先を探したいということを明確にするために,この制度をきちんと運営していかなければいけないのだと思っています。   そのときに,2段階にしてもらいたいのは,実の親の育てられない理由,それは私たちに分かっていることは全て育て親に話します。話しますけれども,審判書にそれが,今誰かおっしゃったように,養育できない親の状況や親になり切れなかった背景などの審判理由と,申立人はこんなふうにこの子をきちんと育てているので認めましょうというという理由が1枚の審判書になって表れてくることが,果たして子どもにとってどういう意味があるのだろうというところがあって,取りあえず二つの審判に分けてもらえないだろうか,それから,同意が途中で翻ることも,私たちにとっても,頑張っている養親になろうとする人たちにとっても非常に脅威なものですから,それをまず第1段階でしっかりと親に,「あなたはやはり手放すしかないのですね。こんな援助もこんな支援もあるけれどもどうなんですか?」ということが言えるのです。児相がその子を選び出して,そういう手続に持って行く中で,親の問題が明らかになり,親がどうしても育てられませんと言って,裁判所にそれを申し立て,そこで承認されれば,私たちは全力を挙げて探すわけです。   それで,2年というのがどこから出てきた数字なのか私はよく分かりませんけれども,2年は私の経験からすると短いです。先ほど,ゼロ歳の棄児に養親が見付かるまでに6年以上かかりました,そういうケースも現実にありますので,2年は少ししんどいなと思います。3年ならいいのか,4年ならいいのか,5年ならいいのかというところも非常に難しいところなのですが,ある程度の子どもの成長を見て,これ以上,この子に対して新しい育て親を見付けるのが難しいと児童相談所や我々関係する民間団体も含めて思ったとき,その子には,よりいい施設養護が用意されていくということになっていくのが現実の問題だと思うのです。   私たちにできることは,候補に挙がった子どもに,一生懸命その子どもを愛して育ててくださる人をどうして見付け出していくのかということと,見付からないときも諦めないで,少しずつ子どもは成長していきますので,今までできなかったことができることになったところに目を付けて申し込んでくださる人もいらっしゃいますから,どれだけ諦めずにこの子の親を探し切るかという双方の努力があって,こういう制度が,子どものために生きていくのだというのが現場の正直なところです。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○宇田川幹事 最高裁家庭局の宇田川でございます。裁判実務を担当する立場から,これまでに出ていない点も含めて,少し御指摘をさせていただければと考えております。   まず一つ目は,こちらの①から④を抜き出したペーパーに沿って少し申し上げますと,②の前回部会資料案の関係なのですけれども,こちらの方,実体法については改正しない形で,特別養子縁組成立の審判の要件の一つをあらかじめ,同意不要であるということを確定するという,そういう立て付けになっていると理解しておりますけれども,これまでの議論でも出ていましたように,飽くまでも同意があること,若しくは同意不要でよいということについての要件は成立時の要件として考えられますので,そうすると,あらかじめこの手続をやってしまうということによって,実際にこの特別養子縁組の審判の成立時期の見通しがない状態で,どこまで同意の不要という要件を満たしているかというところで,先の見通しを持って判断がどこまでできるのかというところに疑義があり,裁判官としても,その的確な判断ができないという可能性があるのではないかと考えています。   先ほどからも出ているところですけれども,音信不通である実親が突然現れて子の引取りを希望したりする可能性もあるというようなことがあって,そうすると,この時点で本当に意思を表示することができないという判断をしてよいのかどうかというところについて疑義が生じるところで,その後の手続がどういうふうになるのかという見通しがないまま本当に判断ができるのか,それが2年とか1年とかということでも,そのような先の見通しを持って判断できるのかどうかというところについて,疑義が生じるところだと考えております。   これは③の要保護性要件の廃止案についても,この同意の不要の確定審判については同じ位置付けだと考えていますので,そこについても同じ懸念が生じるところでございます。それから,これは第4のところの先取りにはなるのですけれども,親権喪失の審判と連動させて,同意不要とするという案も含まれると思いますけれども,親権喪失というのは飽くまで親権喪失であって,実親子関係の終了ではないですし,親権喪失の取消しの審判も予定されているというところで,同意不要を確定するということから,特別養子縁組成立による実親子関係の終了という効果につながるところとは違うところで,実際に親権喪失の要件と同意不要の要件というのが本当に重なり合っているのかどうかというところについては,その整理が必要で,そういった手続を設けることについても慎重な検討が必要なのではないかと考えているところでございます。   それから,実際に先ほどの音信不通とか行方不明の場合に,実際に出てきた場合に,それは取消しの制度を設ければいいではないかというようなことも御意見としてあるかもしれませんけれども,そうすると結局は後々,実親の方が争うという場面が出てきてしまい,今,実際に養親となる方が不安定な地位に置かれることを懸念されていることに,本当に対応できるのかというところについても少し疑問があるところで,そこも含めて,そういう制度とするということを前提で御議論をしていただければと考えております。   それから,二段階手続案について,非常に熱い議論をされているところで,ただ,なかなか難しいところがいろいろあるなと感じているところで,実際に実体法の要件をどのように解するかというところで,これも裁判官の立場から考えると,実際に時的要素をどう考えるのかとか,その要保護性要件を含めて具体的な要件としてどこまでを判断すべきなのかということについて,明確に立法趣旨のところから分かるようにしていただくということが,裁判所としては非常に,適正な運用を確保する上で必要になってくると考えておりますので,そういうことも含めて御議論いただければ幸いでございます。   長くなりましたけれども,以上です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほか,御発言いかがでしょうか。 ○村田委員 ④の二段階手続論で,いろいろ御議論があって,提案されたり御賛成される趣旨が半分分かったように思う半面,半分まだ分からないところがあって,どこから来る素朴な疑問かなと思うと,やはり1段目の養子適格を認める審判なりの判断というところは,実体法としてそういう記述をするのだと思うのですけれども,そこでいうところの実体法上の効果とは何なのだろうというのが分からないのですよ。実務家,実務家だけではないかもしれませんけれども,法律家としては,やはり効果があっての要件なので,どれだけの効果が発生するのだったら,この要件はどのぐらい重たいものとして見なければいけないかというところで判断するのですけれども,その後,養子適格が認められましたと,親権とも関係なく,扶養とも関係なく,ひょっとしたら2段目の手続の前提になるかもしれませんというだけの話のために,これだけいろいろなことを見ろと言われて,一体何を考えろというのかというのが正直,やはりイメージできないのですよね。だから,二段階手続論は実体法自体を変えるのだという形で,何とか名目が立つように工夫されているのは分かるのですけれども,結局,手続を分解しているだけではないかというか,実体法は何もいじっていないのではないかというのが率直な印象です。 ○大村部会長 今のところは,手続を組む際の言わば根幹の部分なのだろうと思いますけれども,いかがでしょうか,何か御発言があれば。 ○水野委員 村田委員のおっしゃるのは誠にそのとおりだろうと思います。つまり,本来ならば親権を剥奪するきちんとした親子関係の断絶手続,国家後見に引き取る判決があって,それにより養子適格者になった者たちについて養子縁組が動くという筋論であろうというのが,二段階手続論の背景にあるわけですが,今までの特別養子の実体法の書きぶりが全くそうではなかったというのも,これは明らかにそのとおりです。ただ,今までの特別養子縁組の書きぶりがそうであったがゆえに,特別養子縁組は非常にできが悪かったということも確かですので,本来的な筋に戻したいというのが二段階手続案です。ただ,これも繰り返しになりますが,育児支援が本当に足りない日本の現状を前提にしたときに,二段階手続案がきちんとした形で組めるか,それとも,何だかぬえのような形の案になるのか,そこのところまでは私も現在の段階では自信がありません。ともかく養親に実親と対決させたくない,それから,また非常に養育が難しいお子さんを特別養親という素人の私人に丸投げしてしまうということも,これも絶対にしたくないという二つの思いがあり,また,この特別養子法の改正自体にどの程度の立法事実的ニーズがあるのかにも疑問を持ちながら議論をしておりますので,歯切れが悪くなることをお許しいただければと思います。 ○大村部会長 水野委員がおっしゃっていることのうち,2段階で手続を組んでいる国は確かにあるわけですね,これは,先ほど床谷委員が御紹介されたように,二つに分けてその間にワンクッション設ける。それに伴う様々なメリットがあるので,それを水野委員はおっしゃっているのだろうと思います。他方,床谷委員が御指摘になったように,1段階でやっている国もあるわけですね。ドイツでは,1段階でやっているということだったのですけれども,水野委員がおっしゃっているような様々な手続的な不具合はドイツ法ではどのように受け止められているのか,そうした問題が生じないのだとすると,1段階手続の中でそうならない工夫がされていると考えることができるのでしょうか。 ○床谷委員 ドイツ法の場合は,養子縁組の同意が,親の同意があったことによって,親のゾルゲレヒトつまり配慮権は停止して,それで後見に移りますので,少年局がそれを,後見をするという役割をしているということと,それから,子どもを試験監護に移した時点で養育する人に扶養義務が発生するということで,扶養の規定も置かれているということから,子どもの処遇についての配慮が一応,行われていると,その上で少年局がそれを見守ると,そういう形にしてあると思います。 ○大村部会長 サポートの問題は,1段であれ2段であれ何らかの形で必要だと,そういうことなのですね。 ○水野委員 そうですね。 ○棚村委員 私も二段階手続論に魅力はもちろん感じますというか,海外の法制との比較でもそういうところが多いというのも存じ上げて,ただ,先ほどから出ているように,これを一つにしたことの意味というのが多分,無関心,無責任,親としてやはり非常に,責任をきちんと果たしていないという親であっても,要するに,先の見通しとか見込み,新しい受け皿に何かがあれば,もちろんそれは国家が引き受けるとか,暫定的なものについては十分にケアできるという制度的な枠組みがあれば,そういう一部分の効果というか,一部分だけを切り出して,養子適格認定ではないですけれども,遺棄状態の認定とかそういう制度があるような制度設計の国についてはよいと思います。しかし,日本のように,国家被後見子や国親などの公後見制度を持たないところでは,子どもについて空白状態みたいなのが生じないかというのを先ほどから心配していて,それであれば無関心,無責任であっても親であるという,要するに責任の所在は一応あるわけですよね。ただ,段階的にはそれを児童相談所とか公的な機関が関与して,何らかの形で一時保護なり何なりやらなければいけない,それで,できれば里親さんなり養親候補者なり,そういうものが見付かれば,できるだけ早くつなぐと,そういう形の中で役割分担がきちんとうまくいっていれば,私自身も二段階手続論みたいな形で,もしこの効果の一部なりを判断をすることで迅速に後の手続が進むという,そこのところが非常に疑問なものですから,ある面では,そういう実親であっても一応,子どもがどこに,誰に守られる責任の所在があるのかということを,やはりある程度きちんと段階的に連続性を保つことによって実現できないだろうかと考えている次第です。つまり,受け皿と,それから実親の権利はもうここで終わりになりますよというこということを同時にやることのメリットというのは,立法当時の日本の中ではしようがなかったのかなと考えていました。   そういう中で今,現状を少し考えると,養子可能状態とか,そういうようなことをやることによって守られる利益というのですかね,そういうものと,要するに,私が心配しているのは,実親に対する支援とか,水野委員がおっしゃっているように,実親を完全に排除すれば新しい受け皿やいいものが待っているという明るい状態でないところを非常に気にしているところです。もちろん,法律論としては,私は二段階手続論というのは分かりやすいし,役割分担もしっかりしているので,いいかもしれないのですけれども,先ほどから,どれくらいニーズがあって,うまくいくのだろうかということを少し心配をして,現行法も手続上も,問題がもし一番少ないものであれば,全てについていろいろ問題があると思うのですけれども,かなり最初の段階から,中間審判とか中間決定ということを使いながら,障害になっている部分だけを取り除いて,新しい受け皿なりの見通しもある程度確保するという提案に魅力を感じている次第です。ただ,この問題は,先ほどから少し藤林委員に聴いているのですけれども,養子可能状態みたいなものを宣告する,欧米と同じような形のニーズがあって,養親になるべき人なのか,里親がいいのかという,そういうことの受け皿をどちらにするかということの見通しを今,日本は実はかなり先に持っていながら,実親子を切る手続と,それから新しい親を見付ける手続というのを1個にしているわけです。ところが,将来そういうことをきちんと分けた上で,国がきちんと面倒を見られるような状況が,多分,来たらいいと思います,来るべきだと思うのですけれども,それだったら二段階手続論が一番いいと思うわけです。   今の日本の現状の中では残念ながら不十分な状況ですけれども,最悪の状態を避けるために,実親の支援の必要性,それから,実親排除論というのは,養親がいいのだというのは,ある面では,当たり前のことのようですけれども,では,実親は何だったのですかと,実親の権利とか立場というのは何ですかということをもう少し議論しないといけないと思います。先ほども,離縁の申立てだって,実親による監護が相当で,養親側の虐待とか不適切な養育みたいなものがあれば離縁は例外的に認めるという制度を置いているわけです。実親に必要な支援が行われて考えが変わるということがないのだという前提で議論するのもどうなのかとも思います。そうなると,やはり実親の権利とかそういうものについても,同意だとか要保護性の部分だけ切り離されて,ほかでは全体としては,子どもの幸せを考えるために,再チャレンジというか,何か復活する見込みがないような立て付けで本当にいいのだろうかということを,現状では危惧せざるをえません。 ○藤林委員 議論がだんだん高度になっていって,私はついていけないところもあるのですけれども,こういう二段階手続案がもし動き始めた場合に,児童相談所はどのようなことを行っていくのかということを考えた場合に,多分,子どもは養育里親さんに預けられ,この審判が進んでいくのを待っているだろうなと。又は,コンカレントフォスターケアといった養子縁組を前提とした里親さんに預けながら,先ほど水野委員が言われたみたいに,養親さんと実親さんが対立構造にないということで,実親さんの要保護性要件なり同意不要要件を児童相談所が一生懸命戦うので,そこの部分の負担はないということで養親候補者に養育を委託するというのもあるのではないかと。又は全然養親候補でない養育里親さんに預けるということもあるのではないかなと思います。   その意味で,この養子適格までの期間,子どもには十分な養育環境を提供しつつ,この養子適格の審判が出るまでのプロセスで,当然,児童相談所としては実親さんに対して,家庭復帰なり,又は場合によれば親族に,自分の祖父母に子どもを預けるのだというふうなプランでもいいと思うのですけれども,何らかのアクションを促していく,又は児童相談所として再統合プランを提示していくということも同時並行する。そうしながら,場合によれば実親さんが,審判のプロセスに入ったことで再統合プロセスに入っていく場合もあるかもしれませんので,それはそれでいいのではないかと思うのです。今はそういった枠組みがないので,我々が提示しても,なかなか本気になって努力されないまま中途半端な状態がずっと続いていっているというのが現状ではないかなと思うのです。実親さんも家庭復帰に対して努力するチャンスも与えつつ,でも,それが実際に努力はしない,又は成果が出てこない場合に,より早い段階で後段の手続に入っていければ,それは子どもにとって非常にメリットがあるのではないかと思います。   もう一つ思うのは,養子適格の審判が出たときに,これはもう親権の喪失でも停止でも何でもないので,では,現行法で子どもにとっての実親の立場は一体何なのかというところがよく分からない。この養子適格の審判と同時に親権停止なりが行われれば,児童相談所長として未成年後見人の申立てを行うなり,又は児童相談所長が親権代行者になるという形で子どもの権利擁護が明確になるのですけれども,養子適格になったときの実親さんは一体どういう立場にあるのかというは,よく分からないところが少し不安な感じがします。 ○大村部会長 浜田幹事から手が挙がっていますけれども,事務当局に今の点につきまして少しコメントをしていただいて,それから浜田幹事という順でお願いします。 ○倉重関係官 養子適格等の審判がされたときに,どのような実体法上の効果が生じるのかといった御質問でございます。こちらにつきましては,例えば資料の16ページにも書かせていただいたように,1段階目の審判,認容審判がされた場合には,実親がなお子の親権を行使することができるのか,相当かを検討する必要があると書かせていただいておりますように,一つ考えられることとしては,親権が停止するという効果があるのかなと,この養子適格型親権停止みたいなものが観念できるかなというのが一つでございました。   ただ,元々親権者がないという子どももおりますので,そういった子については1段階目の審判について,実体法上の効果が観念できなくなってしまうのではないかというようにも考えられるところでございます。それに対するお答えは,水野委員から,1段階目の審判がされた子については児相長が後見人になることとして,養子適格型未成年後見みたいなものを観念すればというようなアイデアも頂いているところではございますけれども,なかなか検討を要するところかなというのが率直なところでございます。 ○浜田幹事 結論的には同じことでございまして,我々弁護士の中でも議論している中でも,今日,磯谷委員のペーパーにもありますとおり,やはり今,事務当局からもありましたとおり,少なくとも親権停止をする効力というのを生じさせるべきであろうと考えております。弁護士の中で出てきておりますのは,その間に職務親権停止ということになると,未成年後見でしょうか,未成年後見人を選任するということがやはり望ましい姿であろうと我々としても思っているということで,御紹介でございます。 ○杉山幹事 すみません,1点だけ,少し前に高田委員などから指摘がされた,縁組成立の見込みがないのに1段階目の手続が進んで,2段階の審判が成立しない場合,どうなるかについてです。二段階手続の問題の一つだと思っておりましたけれども,2段階目の審判を目的として1段階目の審判があるはずなのでで,2段階目を一定期間内に申し立てなければならないとか,あるいは審判を成立させなければならないか,いずれか検討の余地があるとしても,2段階目の手続について一定期間内に申立て等がなされなかった場合は1段階目は効果が消滅するとせざるを得ないのでは思います。例えば,資料の15ページの代替案の③にあるような,成立手続廃止の決定のようなものを作るか,あるいは当然に効果がなくなるとすることが,濫用的に1段階目の申立てがなされることを防止する一つの方法かと思っております。ただ,その場合には年齢要件の充足をどう処理したらいいのか,すなわち,1段階目が成立して2段階が成立しないうちに所定の年齢を超えてしまった子について,もう一回1段階目の審理からやり直すことができるのかなどの問題も生じますので,問題提起だけでとどめさせていただきたいと思います。 ○大村部会長 今の点について,何かございませんか。 ○棚村委員 藤林委員からのお話で,やはり児相の実務としても,お子さんについて,やはり年齢が,例えば低い子であれば,里親さんの中でできるだけ適切な方に里親委託をしておいて,それで特別養子につなげていくということであれば,ある意味では見通しを持って,かつ,その方が本当に養親になってくれるかどうかは本人の御意思とかいろいろあると思いますけれども,少なくともそういうような形であっせんなりケアをしていくというのはよく分かるのです。   そうなると,ある面では,同意が得られないとか,同意したらいいのに,子どものためになるのにという,やはり受け皿だとか,ある程度のことを考えながら,実親との関係を適切に対応していくということだと,完全に2段階に手続を分けてしまわなくてもできませんでしょうかね。私,お話を聞きながら,児相の実務としては,要するに里親さんになったり,特別養子縁組なんかを希望されている方と何人かにお会いしたり,お話を聴いているのですけれども,相当な覚悟を持って関わっておられました。実親との関わりでも争ったり弁護士さんをつけたりしても,何とか今の手続の中でもやろうという人もいらっしゃいましたけれども,私が一番聞きたいのは,そういうような手続みたいなものを事前にとってくれないと,なかなか養親として決断できないとか,里親さんにもやはり不安感を覚えるという方たちがかなり多いのでしょうか。 ○藤林委員 我々の経験では,やはり実親さんの同意というか審判の見通しがない段階で,養子縁組を前提として里親になるというのはなかなか難しい。それは打診しても,いちかばちかやってみましょうという方はそうそういらっしゃらないというのが実務の感覚です。中には,とても覚悟があって,弁護士にお金を払ってでも戦い抜くのだという方もいらっしゃるかもしれませんけれども,養子縁組里親として登録を希望される方というのは大体一般の人ですから,そういう難しいことをクリアしなければ私は養親になれないということで,やはり二の足を踏んでしまうというのが一般の感覚と思います。飽くまで子どもを養育したいわけであって,裁判所で実親と対決したいというのは全然想像もしないし,とても大きな負担というふうなことを考えると,そこの部分を児童相談所として,やはり責任を持って明確にしていくのだというふうな保証は与えたいとは思います。 ○成松幹事 厚生労働省です。御参考までに我々が過去に集計したデータで申しますと,特別養子縁組を検討したものの成立に至らなかった事案において,養親希望者・養親候補者は見付かったが試験養育期間に至らなかった事案のうち,実親の同意が不明,又は実親が不同意であり縁組の成否が不確定のため断念した事案というのが,2年間で31件,これは児童相談所と民間のあっせん団体から聞いておりますけれども,2年間で31件と数字としてはあるということです。 ○大村部会長 ありがとうございました。   先ほど,久保野幹事が手を挙げていたように思います。どうぞ,別の件でも結構です。 ○久保野幹事 2段階そのものの話ではないのですけれども,②,③,④で左側に位置付けられている手続の意義等を考えるに当たって,同意不要の方につきましては先ほどから,親権喪失の制度との関係を詰めることが必要であり,有益だという議論がされていましたけれども,気になっておりますのが,今度,同意が得られた場合の考え方でございます。これについては冒頭の方の要検討事項の中で,白地同意についてどう考えるのかという御指摘があったところでしたけれども,資料の18ページのところで,要するに,最終的には裁判所が子どもの利益を判断して国家が宣言するわけなので,子どもの利益を保護する役割を実親の同意に担わせる必要はないのではないかという指摘がされているわけなのですけれども,これとの関係では,親だと整理しにくい部分が残るので,どうしても親権の話として考えてしまうのですけれども,子どもの利益を確保する責務を自分はもう担わずに,国家に担ってもらいますということがどれほど自由にできるかというと,辞任の制度によって認められるときだけだと思いますので,少なくとも親権の辞任の制度との関係を考える必要があるのではないかということだけ,今の時点では発言させていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか,いかがでしょうか。 ○高田委員 養親に実親と対立させるのはいかがかということでありますけれども,手続法上は必ずしも対立することにはなっていないわけでして,事件本人にすぎないわけであります。実務上対立せざるを得ないということでしたら,そこは実務の工夫で何とかならないかということでございますが,その点については今回,①の提案の段階で児相長の利害関係参加という提案が出されており,先ほど床谷委員から,ドイツ法では,当事者という言葉使いはされていますが,ドイツと日本で非訟事件手続法の当事者概念が若干食い違っておりまして,日本法ではその受け皿はとりあえず利害関係参加ということではないかと思いますから,ドイツ法並びということで,これを基に,いわゆる対立構造というのは,その限りでは相当程度緩和されるのではないかというのが第1点です。   もう1点は,先ほど村田委員からも出てまいりましたように,私も養子適格を確定する④の二段階手続案,及びそれ以外もそうですけれども,第1段階目での養子適格を確定する審判で,親権の停止という法律効果は出てくるのかもしれませんけれども,基本的には実体法上の効果が生じないとすれば,手続上の判断ではないか。15ページで④の代替案として手続開始決定というのが出ていますが,手続開始決定というのをどう捉えるかによりますけれども,これは正にむしろ手続法上の裁判ということでありまして,要するに,手続法で不服申立ての対象を作るとともに,その不服申立てをして尽きたときには確定させて,その部分についてはもう不可争とするという役割を果たすことがしばしばあり,例えば再審開始決定がそうです。そうだとしますと,代替案と並べてありますが,若干性質の違うものが並んでいるのかもしれないという印象は持っております。裏から言いますと,独立の不服申立てができる中間決定を必置するのと,④案は同じ機能を有しており,そうした観点から検討するのも価値があるのかもしれません。ただし,中間決定の対象自体が今,はっきりしない段階でありまして,何を確定するのかというのが現時点では私は十分理解しかねているところがあります。   現時点で理解ないしは共感しておりますのが窪田委員の御発言でありまして,私なりに理解しますと,必要性要件のうち,要は抽象的な必要性要件,何らかの形で特別養子を成立させる必要性があるという判断と,具体的なマッチングと申しますか,この養親との関係で養親子関係を成立させるという判断,この2段階というのはもしかするとあり得るのかもしれませんが,これは従来の実体法理解とどういう関係にあるのかということについては,お教えいただければという気がいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。今の高田委員がおっしゃった2段階というのは,ここで書かれている2段階というのとは別の話になりますか。 ○高田委員 同じなのかもしれませんが,実体法の要件をどう捉えるかという問題はなお残っているように,現時点では私は思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○倉重関係官 仮に①を採った場合についてなのですけれども,例えば中間決定に不服申立てを認めるというような形であり得るのかもしれないとは思いつつなのですが,要保護性要件と同意の要件の存在時期だけ前に出して,必要性についてだけ縁組成立のときに,なくてはいけないのだと,こういった実体法上の効果の発生の仕方というのがあり得るのかというのを実体法の先生にお聴きしたいと思います。   すなわち,一般的な財産法上の請求権の要件のように,過去の事実があって,それらがそろったときに効果が発生するという形ではなくて,成立の時点でこういう評価がなされなければいけないというタイプの要件組みがされているときに,一部の評価というのが効果発生よりも前の段階で備わっていれば,それでいいというような組み方ができるのかという点について,実体法の先生の御意見をお伺いしたいと思っております。 ○窪田委員 答えるのではなくて,質問で返すような形になってしまうのですが,今おっしゃっている必要性要件というのは,具体的に何を意味しているのでしょうか。 ○倉重関係官 申し訳ございません,私が必要性要件,要保護性要件というのをうまく捉え切れていなかったのですが,ここでいう要保護性要件というのは,その子の現在置かれている監護が十分ではなくて,特別養子縁組をすることが一般的に望ましいと思われること,ここで必要性要件と書いておりますのは,実はどちらかというとマッチング,すみません,口頭の御説明でも,当該養親と養子の監護状況がいいことみたいな言い方をしましたが,むしろマッチングに軸足を置いたような表現でございました。失礼いたしました。 ○窪田委員 そうだとすると,恐らく必要性要件,特別養子縁組が必要だというのは,むしろ前者,要保護性要件と並びで出てくるものではないかと思いますが,それが現行法の基準時と同じかどうかという問題を抜きにして,特別養子が必要かどうかという判断をする以上は,それは現在の状態でということで,その時点での判断で行うということかと思います。他方,マッチングに関しては,場合によっては試験養育とかも経なければいけないわけですから,より後の時点で,それが基準時になるということは,別に差し支えはないのではないかとは思います。ただ,817条の7に書いてあるのを,前半を要保護性要件で後半を必要性要件だというと,その二つの基準時が違うのはおかしいという話になると思うのですが,必要性要件というのは,そうではなくて飽くまでマッチングの要件なのだと,適合性の要件なのだと置き換えれば,そういう説明は可能なのではないかと思うのですが。 ○大村部会長 いろいろな御意見が出ましたけれども,ここで要保護性要件,必要性要件と言われているものについて,やはり再整理をしていただいて,現状の民法の条文との関係で設定されている要件がどういうもので,それぞれの案で提案されようとしている要件が現在の要件をどう変えるものであり,それをどういう言葉で表現するかということについて,共通の理解を持たないと,少し議論がしにくいところがあるように思いました。この点,次回までにまとめていただけるとよろしいかと思います。   そのほか,何か御発言ございませんか。手続の問題につきまして,今日のところで,御指摘いただけることがあれば,お願いいたします。 ○村田委員 今の倉重関係官が御質問されたことに,答えとして言うつもりはないのですけれども,一つの考え方として,やはり最後は特別養子縁組を成立させるための要件として実体法が規定しているのであれば,その要件が存在している必要がある基準時は,やはり最終的な判断をする基準時とされるところであって,ですので,一番後ろ側に行くのが通常の考え方かなと思うのですけれども,ただ,間に中間決定を挟むとなったときに,仕組み方は多分,二つあり得るのかなという気がしていて,一つは,やはり最後の時点が基準時だというのは動かさない,ですので,中間決定というのは飽くまでもその中間決定する時点での見通し的な取りあえずの判断をするだけなので,だから,それ自体を特に独立して争う必要もなくて,その代わり,ここに整理されているように,中間決定後の事情変更は争う余地が出てくるというのは,これは一つの自然な考え方だと思います。   もう一つの考え方は,中間決定時点で一部の要件だけ判断を確定させてしまうと,本当は一番後ろの時期での判断が必要なのだけれども,その時点でもその判断は変わらないものというふうに制度的に擬制できるような形の制度的な担保を置くと,例えば,後ろの最終的な判断との期間を短くすることによって,そこに可変要素が多分ないであろうという設計を制度的にしてしまうとか,そういう形は考えられなくはないのかなと。その場合,確定させるための中間決定はその段階だけで争えるものにして,そこでもう判断としては動かないものにすると,そういう分かれ道としては大きな二つなのかなというのが素朴な頭の整理かなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか,いかがでございましょうか。   今日は,①から④まで四つの案が出ていたわけですけれども,④の二段階手続案と①の利害関係参加案について,それぞれの観点から御議論があったと思います。①と④とで離れたところに書かれているのですけれども,先ほどの高田委員の御発言にもありましたように,考え方によっては意外に近いところに収束するという可能性もあるように思えます。両極の議論をしているような気もするのですけれども,収束に向かっているという可能性もあると思います。   予定していた時間まであと5分なのですけれども,手続について何か特別な御発言がなければ,これぐらいにさせていただきたいと思いますが,いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。   それでは,本日の審議はこの程度にさせていただきますけれども,次回の予定等につきまして,事務当局の方からお願いを致します。 ○山口幹事 次回は,日にちとしましては9月25日火曜日ということになっておりまして,時間は今日と同じ,午後1時30分からということでございます。また次回もよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 それでは,次回,9月25日ということですので,どうぞよろしくお願い申し上げます。   本日は熱心な御議論を頂きまして,ありがとうございました。これで閉会いたします。 -了-