法制審議会 少年法・刑事法 (少年年齢・犯罪者処遇関係)部会 第9回会議 議事録 第1 日 時  平成30年9月20日(木)    自 午後3時30分                          至 午後5時41分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  1 少年法における「少年」の年齢を18歳未満とすること及び非行少年を含む犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事法の整備の在り方について         2 その他 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○羽柴幹事 ただいまから法制審議会少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会の第9回会議を開催いたします。 ○井上部会長 本日も御多用中のところお集まりいただきましてありがとうございます。   議事に入る前に,前回の当部会の会議以降,委員及び幹事の異動がございましたので,御紹介させていただきます。   村田斉志氏,山下史雄氏が委員を退任されまして,新たに白川靖浩氏,手嶋あさみ氏が委員に任命されました。 ○白川委員 この夏の異動で警察庁生活安全局長になりました白川でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○手嶋委員 10日付けで村田の後任として最高裁判所事務総局家庭局長を拝命いたしました手嶋でございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○井上部会長 また,滝澤依子氏,松坂規生氏が幹事を退任されまして,新たに猪原誠司氏,村上尚久氏が幹事に任命されました。 ○猪原幹事 警察庁刑事企画課長の猪原と申します。よろしくお願いいたします。 ○村上幹事 警察庁少年課長の村上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○井上部会長 次に,関係官として法務省矯正局長に出席していただいているところですけれども,法務省における異動に伴いまして,新しく矯正局長になられました名執雅子氏に関係官として当部会に出席していただきたいと考えておりますが,よろしいでしょうか。               (一同異議なし)   それでは,名執さん,よろしくお願いします。 ○名執関係官 1年ぶりで関係官として出席させていただくことになりました,名執と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○井上部会長 なお,本日,奥村委員,澤村幹事,戸苅幹事におかれましては所用のため欠席されています。   まず,初めに,事務当局から,本日の審議で用いる資料について説明をお願いします。 ○羽柴幹事 本日は,当部会の前回会議における配布資料19「分科会における検討結果(考えられる制度・施策の概要案)」及び参考資料「犯罪者に対する処遇を一層充実させるための刑事の実体法及び手続法の整備-分科会における検討結果-」を机上に置いております。 また,部会第5回会議においてお配りした配布資料14「論点表」についても,参考のために机上に置いております。 ○井上部会長 それでは,審議に入ります。   まず最初に本日の進行についてですけれども,当部会の前回会議では第1から第3までの各分科会における検討結果を御報告いただき,包括的な意見交換を行った後に,第1分科会が担当する論点まで意見交換を行いました。本日はそれに引き続きまして,第2分科会及び第3分科会それぞれが担当する論点について,順に意見交換を行うことにしたいと思います。   まず,第2分科会が担当する論点について,配布資料19に沿って意見交換を行うことといたします。「宣告猶予制度」から始めていきたいと思いますが,この大きな項目のうちいずれの点からでも結構ですけれども,御意見がおありの方は,どの点について御発言いただくかを明らかにしていただき,挙手の上,御発言をお願いします。 ○山﨑委員 第2分科会全体,更には全分科会に関する今後の議論全体に関わる意見にもなりますけれども,意見を述べさせていただきます。   今後のこの部会では,各分科会から検討結果として報告された犯罪処遇策について検討していくわけですけれども,今回の諮問においては,仮に少年法の適用年齢を18歳未満へと引き下げた場合に生じる刑事政策的な懸念への対応というものが大きな課題になっていると認識しております。   そこで,この年齢引下げを行った上で考えられる各諸制度,諸施策に関してですが,これが現在有効に機能している少年法下での18歳及び19歳の処遇と比較してどれだけの有効性を持つものかということについては,現行法の処遇と検討されている策において想定される処遇とを具体的に比較しながら考えることが重要だろうと考えています。この点についてはこの間,羽間委員からも繰り返し指摘していただいているところですが,例えば,現在18歳及び19歳で少年院送致になっている者,あるいは保護観察になっている者,そういった人たちがそれぞれ果たしてどのように処遇されるようになるのかなど,具体的な対象者を念頭に置きながら,それぞれの制度,施策案について検討する必要があると考えています。   この点に関して,当部会の第5回会議で配布されました資料15がございます。こちらに18歳及び19歳と20歳及び21歳の処分結果が記載されておりますので,ここからどのようなことが想定されるのかということを部会全体でもある程度認識を共通にした上で議論を進めていく必要があるのではないかと思っております。そこで,この資料15について,資料を見ながら意見を述べます。 ○井上部会長 遮って申し訳ないのですけれども,全体については,一渡り一巡した後でまとめて御意見を伺おうと思っているところです。 ○山﨑委員 第2分科会の検討にも関わることなのですが。 ○井上部会長 前回,第1分科会の担当論点について各論点ごとに中身について御議論いただいたものですから,第2分科会と第3分科会の担当論点についても同じ方法で議論をした上で,全体についての視点や今後の議論の仕方等に関する御意見を出していただいた方が,よろしいのではないかと思います。今は,第2分科会の中の宣告猶予制度について御意見を頂くということにしましたし,宣告猶予制度の問題とほかの問題が関連する場合には,そのような視点から後に議論をすることとなろうかと思いますので,まずは,第2分科会,第3分科会の担当する項目について一通り議論を伺った上で,今の御議論をしていただきたいと思うのですが,それでいかがでしょうか。 ○山﨑委員 前回の第1分科会の議論のときに,そこが十分に私も発言できなかったのですが,結局,各論点を考える上では,現状ではどういう処遇を行われている少年がそこに当たり得るであろうということをある程度想定しないと各制度の有効性というのが議論ができないのではないかと思っていますので,そういう視点で簡単に述べさせていただいて。 ○井上部会長 それでは,まずは,宣告猶予制度について,そういう観点から具体的に御意見を頂くことにして,その上で,全体について御意見を頂くところで,同じような観点から,より対象を広げて御意見を開陳していただくということではいかがでしょうか。そうしませんと,最初に議論が拡散してしまい,議論を進めていくことが困難になるのではないかと思うところです。 ○山﨑委員 宣告猶予に関してということですと,なかなか議論設定が難しいので,そうしましたら,罰金の保護観察付き執行猶予に関する論点の最初で述べさせていただくということで考えます。 ○井上部会長 それでは,次の論点のところでお願いします。 ○山﨑委員 分かりました。 ○井上部会長 今御発言いただいていたところは中途になってしまいましたので,次の論点のところか,あるいは全体のところで,もう一度最初から繰り返していただいて結構です。 ○山﨑委員 関連するところで述べるようにいたします。 ○井上部会長 それでは,宣告猶予制度について御意見がございましたら,挙手をお願いいたします。 ○青木委員 まず,どの部分についての議論なのかということを述べるようにというお話でしたので,そういうことで言いますと,「考えられる制度の概要」と書かれているところではない部分についてということになろうかと思いますが,この宣告猶予制度の「考えられる制度の概要」というところに書かれている宣告猶予制度に関しては,分科会の議論などを伺っておりましても,現在の実際の裁判手続との関係で,余りそぐわないのではないかと,あるいはその必要性も相当性もないのではないかという議論がなされたように思います。そういう側面がないわけではないと思っておりますが,ここに考えられる制度の概要として書かれている宣告猶予制度そのものではないにせよ,宣告猶予制度的なものというのは十分に検討の余地があるのだろうと思っておりますが,それは置いておきまして,年齢引下げをされた場合の18歳及び19歳という者に関して,この宣告猶予制度的なものを考える必要があるのではないかという意見を申し上げたいと思います。   と申しますのは,今,議論の全体の仕組みというか構造としては,この後出てきます「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」ですとか,あるいは「若年者に対する新たな処分」,それから,もちろん第1分科会で検討した自由刑のところを含めて,18歳及び19歳についての処遇の充実をいかに今より落とさないで済むようにするかというような議論がなされていると思うのですけれども,若年者に対する新たな処分については,今出されている制度の概要としては,「訴追を必要としないため公訴を提起しないこととされたものについて」という整理になっています。そうしますと,起訴された場合というのはこの新たな処分には掛かってこないわけですね。そうなりますと,起訴された場合,罰金になる場合も含めてですけれども,今18歳及び19歳にとって非常に重要な役割を果たしている家庭裁判所の調査官の調査というのがどこにも入ってこないことになるわけなのです。それは,今の処遇との関係で言うと,非常に大きな問題だろうと思います。そういう仕組みをどこかに入れようとすると,やはり今の20歳以上の刑事手続そのままではなかなか難しいところもあると思いますので,この宣告猶予制度的な制度を用いて,例えばその部分に関しては手続を二分して,まず有罪宣告をして,その後,家庭裁判所の調査官かどうかは別としまして,今の家庭裁判所の調査官の調査に匹敵するようなきちんとした調査をした上で処分を決めるというような制度設計というのをする必要があるのではないかと思います。   仮に罰金ということで考えたとしましても,この後の議論にもなるのでしょうけれども,今考えられている罰金の保護観察付き執行猶予というものについて,どこにどういう調査を絡ませるかと,保護観察というところに主眼があるのだとすれば,やはりその調査を踏まえて,どのような処遇が適切かということを考えた上で保護観察に付さなければ意味がないわけなので,そういうことも含めて,判決の宣告猶予というよりは刑の宣告猶予になるのでしょうけれども,そういう仕組みを検討する必要があるのではないかと思います。もちろん年齢引下げをしないということであれば,その問題はなくなりますので,純粋に一般の成人についてこういう制度が必要かという議論になるのだろうと思いますが,18歳及び19歳については少し区別して必要性を考えることが必要なのではないかと思います。 ○大沢委員 この宣告猶予制度について,どの論点でということであれば,「補足説明」のところにある「7 その他(制度の採否に関わる事項を含む。)」というところに関係することになると思います。この宣告猶予制度は18歳及び19歳に限定されたものではない制度だと思うのですけれども,ただ,これを考えていくときには,今,青木委員がおっしゃったように,少年法の適用年齢を引き下げた場合に,成人扱いとなる18歳及び19歳の再犯防止に有効な仕組みとなり得るのかというところが,やはり論点になるのではないかと思います。   その場合,従来は少年院送致を含む保護処分となっていた人たち,つまり更生のために何らかの働き掛けを受けてきた層の中で,比較的軽い犯罪のケースでは,実際,成人になると実刑で刑務所に服役するほどではないという人がいるのだと思うのですけれども,そういう人たちへの働き掛けということでいくと,もしこの宣告猶予制度がないと,保護観察付きの執行猶予か罰金の保護観察付き執行猶予か,あるいは,起訴に至らなかった人については若年者に対する新たな処分,あるいは第3分科会で御議論があった検察官が働き掛けを行う制度ということになるのだと思うのですが,こういった諸制度で全てカバーができるのであれば,あえてこの宣告猶予制度を設ける必要性というのは乏しいのではないかと感じました。ただ,逆に,もし賄い切れない層が残ってしまうということであれば,この社会内処遇によってその改善更生を図る選択肢として,言わば諸制度の隙間を埋める選択肢として,なお検討の余地というのが残るのかなと思いました。   私は法律の専門家ではないので,そういう観点から申しますと,この宣告猶予制度を見させていただくと,公判請求されるから罰金刑よりは重いのだろうなという感じはするのですけれども,一方で,何もなく猶予の期間を経過すると今度は免訴になるので,そうすると罰金よりも軽いのかなとも感じて,要するに,正直,若干分かりづらいというところがあります。ですから,もしこの宣告猶予制度を考えて,残していくということであれば,それぞれの他の制度との位置付けというのがはっきり一般の国民にも分かるような,そういう位置付けができれば,残せるのかなと感じた次第です。 ○山下幹事 私も,今の補足説明の「7」に関連して意見を述べたいと思います。   以前の部会でも意見を述べたのですけれども,今回の宣告猶予の案として出されているものは,かつての刑法改正のときの部会案を元にしたもので,このままこれを現在立法化するということについては,いろいろ抵抗もあろうかと思いますし,いろいろな議論があるのですが,ただ,補足説明の「7(2)」のところにもありますけれども,より簡易な制度ということが書いてあります。   今回,第3分科会で検討されている検察官による起訴猶予等に伴う再犯防止措置と比較したときに,検察官が有罪か無罪かを判断した上で,保護観察官の下での指導・監督というようなやり方で働き掛けをするという制度と比較すると,社会内処遇である保護観察をするには,やはり裁判所を通して裁判所による有罪,無罪の判断をした上での社会内処遇につなげる制度,そして,最終的には免訴になって前科にならないという制度というものはそれなりに有用性があると考えられるので,この制度については,今のままではないにしても,何らかこれに代わる,裁判所を通したダイバージョンの制度として,新たな制度というものは構築すべきではないかと,その点について,もう少しこの部会で議論はすべきでないかと考えております。 ○井上部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はございませんでしょうか。   どなたからも御発言のお申出がないようですので,宣告猶予制度については本日のところはこのくらいにさせていただきます。   次は,「罰金の保護観察付き執行猶予の活用」についてですが,この点についても,この項目のいずれの点からでも結構ですし,一まとめにしてでも結構ですが,どういう点について御発言をされるのかということを明らかにしていただき,挙手の上,御発言をお願いします。 ○山﨑委員 先ほど少し触れました第5回会議で配布されました資料15に基づいて,この罰金の保護観察付き執行猶予の対象となる方がどういう層であろうかという点についてですけれども,「第1 18歳及び19歳の少年の処分の状況」の「2」に書いてあります家庭裁判所での終局人員の方を見ますと,重い処分からいけば,検察官送致,少年院送致で約1割,保護観察で約3割ということになっています。   これに対して「第2 20歳及び21歳の方の検察官における処分結果」の「2」になりますけれども,重い方から見ますと,公判請求が約3割ということになって,略式命令請求がその次,約15%ということになっておりますので,比較的重い処分を受けてきた18歳及び19歳が,検察官の処分としては,ほぼ公判請求の対象となっていく,現行で保護観察処分となっている18歳及び19歳について,その相当部分が公判請求の対象になって,残りの一部が略式命令手続の対象になると,こういった分布になるであろうと考えられます。もちろん,これ自体,厳密な想定というわけではなくて,数字の比較ということになりますけれども,こういった観点で罰金の手続に関して保護観察付き執行猶予がどれぐらい有効なのか,そこで付される保護観察と,現行の保護処分としての保護観察なり少年院送致との比較をしっかりしながら議論をすべきだろうと思っております。 ○太田委員 罰金の保護観察付き執行猶予の活用に関しまして,これまでの量刑相場との関係をどのようにされていくのかという点に関連しまして,突然ではありますけれども,最高裁判所の方に質問させていただければと思います。   一般論ではありますけれども,現行の刑の量定に当たりましては,裁判所が過去の量刑相場ないしは量刑の傾向というものを参考にされているのだろうと思います。特に,罰金刑となるような事案につきましては大量かつ定型的に処理されている事案が多くありますので,量刑相場の影響がより大きいのではないかと思われますけれども,他方で,この部会で議論されていますように,罰金刑につきまして保護観察付き執行猶予が活用されていくということにする場合に,それでは罰金の量刑についてはどのように運営されていくのかということにつきまして,最高裁判所としてどのように整理されているのかということについて御意見をお伺いしたいと思います。   つまり,幾つかの可能性があるかと思うのです。すなわち,これまでほとんど罰金については実刑ばかりが選択されてきたわけでありますが,今後はその処遇の必要性という観点から,結果としては,執行猶予ですので,量刑相場をより下げるという形にはなるけれども,その上で適切な事案については保護観察を付ける,そういう趣旨として捉えていけばいいのか。それとも,罰金刑の保護観察付き執行猶予を活用するとしましても,現行において罰金刑の単純執行猶予となっているような事案はほとんどないわけでありますけれども,罰金刑の単純執行猶予となっているような事案についてだけ保護観察の必要性について検討し保護観察付き執行猶予を活用するという整理なのか。あるいは,かなり思い切って,自由刑とは違って,罰金刑については,実際に納付する実刑と執行猶予とでは,刑の重さというのは変わらないのだというような形で整理し,量刑相場は変わらないのだとした上で,保護観察付き執行猶予を活用していくのだと説明するのか。以上のいずれかがあるように思うのですけれども,現時点ですぐにお答えいただくことは難しいかもしれませんので,まだ考えたことはないということであれば,今後の検討の上でも,今後の課題としてはどこかの時点で,この点についてどのように整理されているのかということについて教えていただければと考えております。 ○井上部会長 太田委員は,どうお考えなのですか。 ○太田委員 私は,罰金の執行猶予というのが,罰金の実刑よりも量刑上軽いとすれば,処遇のために量刑を下げるという発想はこれまでの考え方ではあり得ないだろうと思います。私は,罰金に保護観察を付けるというのは持論としてありますけれども,執行猶予をかませるということは考えていなかった関係で,逆に罰金の執行猶予にするというのは,少なくともこれまでの量刑の考え方を少し変えなければいけないことになる,その覚悟といいますか,そういうことがあればできるのだろうなとは思うのです。ただし,罰金の額が低い場合,例えば5万円とか10万円とかそういう場合に,執行猶予にするというのは非常に刑として軽くなりますので,果たしてこういったものが実際に運用としてできるのかどうかということはやや疑問で,高額な罰金の場合には,それを執行猶予にした上で何か指導的なものをしていくということはあり得るだろうと思うのですけれども,現行の罰金が平均額として20万円前後ぐらいであるということを考えると,この罰金の保護観察付き執行猶予というのは今のままでは適用事例がないとすれば,今後も恐らくほとんど出てこないのではないかと,それで,どういう方向で考えるのかを考えた上で議論すべきだと思っているということです。 ○井上部会長 裁判所としてどうお考えなのかといきなり聴かれても,お困りになると思うのですが,今の時点で何かコメントされることはありますか。 ○福島幹事 最高裁判所としてどう整理するのだという御質問なのですけれども,以前にもどこかで申し上げたかもしれませんが,個々の事案でどういう裁判をするのかというのは,事件の内容に応じて各裁判体が判断する事項であり,最高裁判所は,今後はこう整理して,こういう裁判をしていくのだといったことを述べる立場にないということは,一つ,前提として御理解いただきたいと思います。   それから,これもどこかで申し上げたと思うのですが,やはり裁判というのは当事者の主張立証に基づいて判断していくものですので,仮に当事者の方々の主張立証に何か変化があれば,裁判も変化していく可能性があるということは,一般論としては言えるのかなと思います。もっとも,では,それがどういう方向でどのようになっていくのかということを最高裁判所として述べるというのは,先ほど申し上げた理由から難しいところであり,量刑の傾向は,正に一件一件の事例の判断の積み重ねによって形成されていく性質のものであるということは,御理解いただければと思います。 ○羽間委員 前回の部会でも申し上げましたとおり,罰金の保護観察付き執行猶予を検討する際には,これまで保護処分を受けていた18歳及び19歳について,漏れることなく対応できるような制度設計になっているのか,今後この制度の活用によってどの程度の若年者が対象になることが予定されているのかという観点からの検討が必要でございまして,この層についてだけ制度の狭間となってしまって十分な処遇がなされないというようなことがないようにしなければならない。その観点で第2分科会の議事録を読ませていただくと,二つの観点から検討すべき課題があるのではないかと感じております。   一つ目は,罰金の保護観察付き執行猶予の処遇効果の点でございます。これまでにも申し上げてきたところですが,保護観察を実効性のあるものとする上では,遵守事項に違反した場合の適切な措置が設けられているということが不可欠でございます。この点について,既に第2分科会でも御指摘があったとおり,罰金の保護観察付き執行猶予の場合は,保護観察を受け続けるよりは,むしろ罰金を払って終わりにしたいと考える若年者も相当数いるのではないかと思われます。また,保護観察を開始してからのことを想定してみても,遵守事項違反の際に採る措置が,執行猶予の取消しによって罰金を支払わせるだけということになります。これでは遵守事項に違反したという再犯リスクが最も高まった際に,処遇を転換させることなく処遇を終わらせてしまうということになるため,この点でも処遇効果に疑問が残ります。なお,処遇効果の点については,第2分科会の中で罰金額との関係でも御意見が述べられているようでございますが,罰金額の多寡と本人の問題性の大きさとは必ずしも相関するわけではなく,問題性が大きくとも,犯罪行為の重さ等の観点から,罰金額が少額であるため保護観察の実効性を持たせられないという事案は少なからずあるものと思われますので,罰金の保護観察付き執行猶予における処遇の実効性の点についても,なお大きな検討課題として残っているのではないかと思います。   二つ目は,罰金となることが予定される者で,何らかの処遇が必要であるもののうち,どの程度が罰金の保護観察付き執行猶予となるのか,逆に言いますと,どの程度が罰金の保護観察付き執行猶予とならずに漏れるのか,その漏れた層への対応はどうするのかという点でございます。この点については,第2分科会におきまして,罰金の保護観察付き執行猶予の活用が考えられる典型例として,粗暴癖が原因となっている傷害事件などで,被疑者が自身の粗暴性に気付いていて,暴力防止プログラムを実施すれば再犯リスクが低減することが期待される場合で,かつ当該事案における罰金額等の点で相応の心理的強制力があると認められる事案が挙げられていましたが,罰金となる事案の中にそういった事案がどれぐらいあるのか,それ以外の事案もたくさんあるでしょうが,その対応はどうするのかということが課題であろうと思います。加えて,裁判の手続が略式手続となれば,保護観察が適当な事案を適切に選別ができないのではないかとも考えられる一方で,これまで略式手続で対応していた事案について公判請求するとなれば,その手続的な負担や,検察官が求刑したとおりに保護観察付き執行猶予とならないおそれも高くなることなどから,かえって活用されないのではないかとも思われます。これらの点につきましては引き続き検討課題とさせていただき,冒頭に申し上げたとおり,これまで保護処分を受けていたような18歳,19歳について,罰金となるような層への対応の在り方として,罰金の保護観察付き執行猶予のみで対応することが適切なのかということについて,引き続き議論をさせていただければと思っております。 ○山下幹事 私の方からは,「考えられる施策の概要」の「①」で,それに係る「補足説明」の「2 概要」の「(1)」について意見を述べます。   今回,この罰金の保護観察付き執行猶予の活用については,もちろんこれは現行法には一応ある制度ですけれども,これをやるために,現在はほとんど罰金は略式手続でやっているわけですが,公判請求した上でこれを行うというような制度設計となっています。ただ,よく考えてみると,略式手続の場合でも現在,例えば最大20日間の勾留をした上で,その勾留の最後の満期日に罰金の請求をする略式手続による起訴をして,処理をしているわけでして,公判請求にしたとしても,やはり20日間の勾留の起訴時の段階において,検察官はここにあるような,これを保護観察付きの罰金にするかどうかということを決めて起訴するということになりますと,結局20日間しかないわけですし,その間に保護観察を付けるべき事案かどうかについての調査というものをやる時間的な余裕がないことについては,略式手続の場合も公判請求の場合も変わらないと考えられるので,公判請求にしたからこの制度をうまく活用できるというわけでもないと考えられます。しかも,公判請求することによって身体拘束は更に継続し,保釈が認められない限り出られないわけなので,罰金相当事案でそこまでやる必要があるのかということもございますし,保釈金が払えるかどうかというか,罰金事案なのに保釈金を要求されてしまうとか,いろいろ考えますと,公判請求をして罰金の保護観察付き執行猶予を使うということも,必ずしも,現在の略式手続を使っている罰金の場合と比べて,それほど活用できるようになるだけの,そういう時間的な余裕とか,いろいろな資源の活用等が困難ということを考えますと,非常にこの制度は使いづらいものになっていると考えられます。ですから,現在のこの制度設計では,余り使われないことになってしまう,結局,現在の略式手続による罰金で,単なる普通の単純な罰金ということになってしまって,余り活用されないのではないか,つまり,現行法上もあって使われていないのが,正にそのために使われていないわけなので,根本的にその辺りを考え直さないと,多少これを公判請求で運用するように直した程度では,この制度は活用することは困難であるのではないかと考えられるところであります。 ○井上部会長 ほかに御意見はございますでしょうか。   お申出がないようですので,次に移りたいと思います。   第2分科会の担当する論点の中で最後の論点が「若年者に対する新たな処分」についてということでございますけれども,この点について,どの小項目からでも結構ですので,どの点についての御意見かを明示した上で,挙手の上,御意見がある方は御発言をお願いします。 ○山﨑委員 この新たな処分を検討する上でも,どういった対象者が想定されるかという点が重要だと考えております。この点,先ほども見ました資料15を見ますと,18歳及び19歳で家庭裁判所の終局人員を見た場合に,審判不開始が38.5%,不処分が20.3%ということで,合わせて6割弱がこの二つの処分ということになっております。これに対して,20歳及び21歳の検察官における処分状況を見ますと,軽微な方から言いますと,起訴猶予が47.5%ということになっております。これから比較しますと,18歳及び19歳が少年法の対象から外れた場合には,現行で審判不開始になっているものの大部分及び不処分となっているものの相当部分,約半数程度でしょうか,こういったものが検察官による起訴猶予の対象になると考えられますので,こういった極めて軽微な事案の対象者を想定するということを踏まえて,そこで可能な措置というものがどういうものなのか,特に現行の不処分,審判不開始ということになりますと,そもそもほとんどが観護措置すらとられずに在宅で早期に手続から解放されている,もちろんその間に調査官などの働き掛けはありますけれども,そういったこととの比較で,どこまでの措置が許容されるかという点も考える必要があるのではないかと考えています。 ○羽間委員 新たな処分の「3 処分」に関して,新たな処分に施設収容処分を設けることの必要性については,これまでの部会でも申し上げてきたところですが,他の方の御意見,御発言なども踏まえて,更に意見を申し上げたいと思っております。   その前提として,1点,確認の趣旨で最高裁判所の方に質問をさせていただきます。新たな処分の処分内容として施設収容処分を設けるか否かについて,これまでの部会において次のような御意見が出ていたものと承知しています。すなわち,家庭裁判所の調査,審判の専門性が発揮される前提として,調査や処分を受ける側が意欲を持って受けるための動機付けや緊張感,調査,審判についての有効性や実効性を考える必要があるというような観点から,調査,審判を行った上での処分について,調査等の結果をいかせるだけの選択肢がきちんとあることが非常に重要であるという御意見,あるいは同様の御趣旨から,保護観察しか処分の選択肢がないというところで保護観察を選択するということになると,処分を受ける側の感銘力の点でも,処分をする側にとっての適切な処分選択の点でも,非常にやりづらいのではないかという御意見でございます。このような御意見は,家庭裁判所の実務の観点から見て違和感はないのかということについて,最高裁判所に御意見を伺いたいと存じます。 ○手嶋委員 今,羽間委員から御指摘のありましたこれまでの御意見につきましては,裁判所としても特に違和感はないものでございます。保護観察処分しか選択肢がないということになりますと,行く先がある程度見えているというところもございますし,そういう意味では,一般論として申しますと,保護観察処分だけしか選択肢がないよりは,具体的にいろいろな結論があり得るという中で,きちんと審理をして具体的に検討した上で処分の内容を選択できる方が,審理過程にある処分を受ける対象者にとっても,感銘力のあるものになると思いますし,裁判所としても,感銘力のある審判ができ,対象者の更生に対する姿勢や意欲を引き出すことができるのではないかと考えるところでございます。 ○羽間委員 今の御回答を踏まえまして,新たな処分の処分内容として選択される施設収容処分の必要性について,意見を申し上げたいと思います。   第2分科会や第3分科会での議論を見ていきますと,現在起訴猶予とされている事例の中には,犯した罪はそれなりに重いものの,その後の諸事情を考慮して起訴猶予と判断されている事例があるということが分かりました。他方,起訴猶予事例について,必ずしも要保護性,つまり犯罪に至った資質,環境等の問題点の解消がなされたことが起訴猶予の理由となっているのではないという印象を受けました。今後,少年法の適用対象年齢が仮に引き下がったとして,必ずしも要保護性の改善がなされていない事例が,諸事情によって起訴されずに新たな処分の対象となってくるのだとした場合,新たな処分に施設収容処分が設けられていないと,大きく二つの問題が出てくるのではないかと考えられます。   第1点目は,先ほど御発言いただきました家庭裁判所における調査や審理における問題です。犯した罪がそれなりに重く,かつ問題性が非常に高いということで,社会内処遇によって対応するのは難しいだろうと思われる事案であっても,社会内処遇か不処分しか選択できないというのでは,やはり審判や調査を行う側からしてもやりづらいのではないかと思うところです。また,社会内処遇か不処分かを選択するだけであれば,そもそも対象者の問題性についてそれほど深く調査をしなくても判断できてしまうということが一般的には多いのではないかと思われますので,調査や審理そのものが現行と比べて見劣りするものになってしまい,その結果,十分に問題性に気付けなくなってしまうというおそれも考えられるのではないかと思います。   もう1点は,そのこととも関連いたしますが,家庭裁判所の審判の感銘力や家庭裁判所調査官の調査,これが十分になされるということは,その後の社会内処遇の適切な実施や効果にも大きく影響を与えるところでございますので,先ほど述べた審判,調査の有効性や実効性の観点は,その後の社会内処遇の充実という点でも極めて重要です。また,これも従前の部会で申し上げましたが,例えば保護観察を受ける意欲が全くないということが明らかで,周囲の環境からの影響による改善も見込めない者などについては社会内処遇で効果を期し難いのではないかと思います。こうした事例では,犯した罪がそれなりに重いということであれば,当初は施設内において落ち着いた環境の中で処遇を行い,社会内処遇を受ける下地ができた後に社会内処遇に移行するという選択肢が採られてもよいのではないかと思います。   こうした観点から,新たな処分について,処分の選択肢として施設収容処分を設けることについての必要性は高いのではないかと思いますので,その点を改めて申し上げさせていただきたいと思います。 ○手嶋委員 重ねての発言で恐縮でございます。今の羽間委員の御発言を伺っておりまして,思いましたところなのですけれども,今日からの参加でこれまでの議論を十分理解していないところがあるかもしれませんが,先ほど,施設収容処分というメニューも一つあり得る中での感銘力というところを申し上げたところですけれども,これまでの御議論の中では行為責任の制約というところの指摘があったと承知をしております。その行為責任の制約の下でそうした施設収容処分というものが可能なのかどうなのか,どのようなものが可能なのかというところについては,やはり十分御議論を頂くことが必要ではないかと私としても考えております。 ○太田委員 先ほどの羽間委員の最後の部分の問題意識と全く同じでございます。すなわち,若年者に対する新たな処分を保護観察のみとして,施設収容を伴うような処分を設けないということになると,例えば保護観察において,もはや社会内処遇によって自立更生が期待できないほどの遵守事項違反があったという場合にも不良措置がないということになるわけです。   そうしますと,以前の部会でも確認しましたとおり,制度論としてはともかく,保護観察官あるいは保護司といった保護観察の担い手からすれば,例えば対象者が面接に現れないとか,若しくは言うことを全く聞かないということになっても,後は説得を試みるしかなく,場合によっては説得にも,会うことさえできないなどということもあり得るかもしれませんけれども,そういうことしかできないということになれば,極めて対処しづらい困った状況になるのではないかということを懸念しております。かつて保護処分の1号観察におきましても,同様の問題から現場では非常に処遇がやりづらかったということがありましたけれども,今度の問題はその比ではないように思われます。こうした不良措置のない保護観察というものも,理論的にはもちろんないわけではありませんけれども,結局それでは現行の少年法の制度と比べて実効性の点で大きく見劣りのするものとなってしまい,今話がありましたように,家庭裁判所での調査・審判を含めまして,これだけ複雑に作り込んだ制度の割に,この程度の実効性のある処分しかできないということでよいのかという問題も出てこようかと思います。   この新たな処分を導入するという以上は,保護観察における遵守事項違反の際の施設収容処分ということもセットで考える必要があり,そうしますと,結果的には元々施設収容処分というものも処分の選択肢に設けるということになるかもしれませんけれども,そのように設けざるを得ないのではないかと考えます。もし行為責任の上限から施設収容処分は難しいということになれば,この制度そのものの導入が難しいということになるのではないかと思います。   そこで,また突然で申し訳ございませんけれども,保護局にお伺いしたいのが,かつて施設送致申請のなかった時代の1号観察の経験からして,こうした不良措置のないような保護観察ができた場合にどのような問題が想定されるのかということについて,今の段階で可能な範囲で結構でございますので,御意見をお聴かせいただければと思います。 ○今福幹事 ただいま御指摘のありました施設送致申請は,平成19年の少年法等改正で導入された制度であります。その導入の必要性や,導入を求める保護司の方々の声,あるいは,それが導入されてからどういう効果があったかなどについては,以前にこの部会において御説明を申し上げたと記憶しております。そのときに申し上げた点も踏まえまして,ただいま御質問を頂いた点にお答えいたします。不良措置のない保護観察について,どういう問題が想定されるかということについては,こちらの部会で御議論いただきたいと思います。そのことを前提に,保護観察の実務の観点から一般論として申し上げますと,先ほど,太田委員から御指摘いただいたような様々な問題点が生じ得るのではないかということについて,特に違和感はないと感じております。 ○田鎖幹事 私は主に,今の処分の点に関して述べたいと思うのですけれども,制度全体にも関わりますが,そもそも,先ほど手嶋委員からも御発言がありましたけれども,現時点において制度の概要で考えられている対象者というものが,「訴追を必要としないため公訴を提起しないこととされたもの」という前提になっております。それ以前に,山﨑委員からも統計を引いた上で指摘がありましたように,この処分で想定される対象者というのは相当程度,軽微な事案を犯した者と,現状の少年法の下であれば審判不開始,あるいは不処分に相当するような対象者がほとんどであり,そのぐらい軽微な事案と想定されると思います。このようにかなり軽微な事案を犯して,かつ訴追は必要としない,刑事処分は求めないと判断された者に対して,施設収容処分というものが,行為責任の見地から果たして認められるのか,想定される対象者のイメージと照らし合わせて慎重に議論しなければいけない,私自身はそういうことは許されないのではないかと考えます。のみならず,そのような対象者であるということを考えますと,制度概要の手続の点におきましても,例えばそもそも収容鑑別の是非,その期間の在り方,それから,概要の中では,処遇の見直しのために収容鑑別類似のことができるかということもありますけれども,こうしたことについても極めて慎重に考えなければいけないのではないかと思います。   もう1点,制度の全体の位置付けというような観点で申し上げますと,今述べたように,相当軽微な事案を対象として,このようにかなり詳細な複雑な手続を整備して処分を課そうとしており,場合によっては施設収容というものも実効性の観点からは積極的に必要とするという御意見も出ている,そのような状況で,一方では訴追が必要であるとして実際に公訴提起された場合,仮に少年法の適用年齢が18歳未満に引き下げられた場合ですけれども,そうすると,その場合にこれらの若年者に対してあり得るのは,先ほども議論になりました罰金の保護観察付き執行猶予がどれだけ活用できるかという問題,それから,刑の執行猶予において保護観察というものをどれだけ付け,そして運用しやすくすることができるかといったことが中心になるわけなのですけれども,罰金については,先ほども御意見がありましたように,そもそもどれだけ活用されるのか,あと実効性という観点でも度々,疑問であるという御意見が繰り返し出されているということ,それから,執行猶予に保護観察が付されるかどうか,これは全く裁判所の裁量によって判断されるわけですし,現状においても,分科会の御議論を伺っておりますと,例えば21歳以下の被告人だけをとっても,一般成人よりは高くても,それでも12%程度というような数字が出ていると思います。   そういうことを考えると,軽い部分について非常に細かな規定を置いて,手厚いというか,ある意味,介入的な処分が可能なような制度設計をして,一方でそれより重い部分についてなかなか手当てが十分にできない,漏れが相当出てくるというようなことでありますと,制度の全体的な設計として非常にバランスが悪いのではないか,そういうことも含めて,そもそも対象者をどうするのか,それは年齢引下げの是非というものに帰結すると思いますけれども,そのような観点からの検討が必要ではないかと考えます。 ○廣瀬委員 山﨑委員,田鎖幹事がおっしゃったことですけれども,この資料15を見てそのように断定されるのは,私はいかがなものかと思うのです。起訴猶予となる事案の行為責任については,前から申し上げているように,いろいろな幅があるわけです。また,分科会では法定刑が短期3年以上という非常に重い罪に関する事例調査の資料しか出てきていません。それでも,見ていくと,実刑になり得る程度の行為責任で,起訴猶予,あるいは,起訴をしないという判断がなされて新たな処分の対象になるであろうという事例は十分考えられるという気がします。現在,少年院送致になっている窃盗,傷害,恐喝,詐欺などの一般的な犯罪についても調査し,資料を出していただければ,その中にもそういう事例が相当数あることが明らかになると思います。これは私も刑事裁判官を30年やってきましたので,その実務感覚も含めてそう思うわけです。羽間委員も先ほど,そういう事例はあるということをおっしゃいましたが,私もそう感じるわけです。   ですから,行為責任の枠があるので施設収容処分は設けられないのだという議論について,今出されている資料だけを基に議論を続けて結論を出すのは適切ではないと思います。是非ここは事務当局において,いろいろ御苦労はあるかと思いますが,もう少し対象範囲を広げた調査をして,客観的な資料を出していただきたいと思います。そうしないと,私は実務感覚で起訴猶予となる事案の中には,行為責任の枠内で施設収容処分を設けることができる事案が「ある」と思うのですが,先ほどのように,「ない」という御意見,評価もあり,議論が前に進んでいかないのではないかと思うわけです。ただ,以前にも申し上げましたけれども,刑事訴訟法第248条の起訴猶予の基準に法定刑は入っていないわけです。実際に罪名などの観点で統計を見ても,いろいろな罪名で起訴猶予になっているケースがあるわけですから,「起訴をしないと判断された事例の中に施設収容処分が相当な事例はないのだ」などという断定はできないと思います。   このような相応の重さの行為をして問題性が大きい対象者たちに対しては,先ほどから出ている御意見やこれまでの議論の中でも出てきている御意見のように,社会内処遇だけでは行うことができない密度の濃い集中的な処遇を施設内で行うことが再犯防止や改善更生のために有効である,特に若年者,18歳及び19歳については非常に有効であることについては,異論がないと思います。そうすると,そういった層への措置をもう少しきちんと詰めていく必要があると思います。   施設収容期間の問題もあると思いますが,第2分科会でいろいろな資料を出していただいて,3,4か月程度の施設内処遇で処遇効果が認められた少年が相当数いることが明らかになったわけです。そうすると,今と全く同じレベルにはできないかもしれませんけれども,社会内処遇では困難なそれなりに密度の高い処遇,集中的な処遇を確保することを,かなり実効的にできると思います。その辺りの前提をきちんとクリアにして,その上で議論をより深めていきたいと思います。そうしないと水掛け論になってしまうと思います。   また,起訴されずに家庭裁判所に送致される事案の中には軽いものも相当あるだろうと思いますが,そのような事案の選別や処分の選択は,家庭裁判所が行為責任の観点からきちんと判断するわけですし,手続的にも不服申立てを認めるという制度設計にし,抗告審の判断も仰げるようにしておけば,適正な判断が担保されると思います。   このように,私としては,行為責任の観点からも処遇期間の確保の観点からも,施設収容処分が相当な事案はある程度あるのではないかと思っています。そこで,施設収容処分を選択肢として是非とも設けるべきだと思います。   なお,第2分科会の議事録を拝見すると,組織や施設,人員の観点などからの問題点も指摘されています。しかし,この点については,全く新たに施設を作り,職員を配置するということになるのであれば理解できなくはないですが,全く同じではないにしても,現在利用されている少年院の施設,あるいは法務教官など,施設も人材もあるわけでありますから,それをうまく活用することを考えれば,それほど大きな負担とか障害にはならないのではないかと思います。 ○大沢委員 この新たな処分については,手続の中の調査の部分と,今いろいろ議論がある処分について,2点ほど意見を申し上げさせていただきたいと思います。   この新たな処分は,手続としては起訴猶予となった18歳及び19歳の事件が,形としては全部家庭裁判所に行って,それで,場合によっては少年審判類似の手続が行われるということなのだと思います。家庭裁判所や家庭裁判所調査官というのは非常にノウハウを持っていますので,そういった人的資源をこうした18歳及び19歳の処遇に関わらせるというのは非常に意味があるのではないかと思いました。また,この中で試験観察のところにも書いてありますけれども,こうしたものを活用すれば,たとえ最終的に処分なしという結論になるにしても,何らかの働き掛けが担保できるということで,これも非常に理解できることだと思いました。   ただ,一方で,その前段階として,これは検察官が捜査をするわけですけれども,前回の部会で太田委員の御指摘にもありましたけれども,検察官も当然,更生可能性も考慮して判断して起訴猶予を判断しているのではないかと思います。その過程では当然,被疑者の環境なども調べておるでしょうし,今後その捜査過程で,より被疑者の特性を把握するために,例えば少年鑑別所の調査というのを積極的に活用するとか,そうしたことも考えられるのではないかと思います。ですから,捜査段階で調べたことをいかして,それを補完する形で,その後で家庭裁判所が調べていく,そういう方向に行っていただければなと思いました。ですから,例えば,また家庭裁判所が一から調べ直すとかそういうのでは全くなくて,そういう検察の捜査で分かったこと,そうしたこともいかす形でスムーズに連携していければいいのかなと感じました。   それから,もう一つの,施設収容処分が今,議論になっていますけれども,私は今,18歳及び19歳で少年院送致となっている人の中で,犯した行為というのはそれほど重くはないのだけれども,ただ,その人自身に問題性があって,要保護性の観点から少年院に収容されているという人は多分いるのだと思います。年齢を引き下げた場合に,この層で起訴猶予となる人というのもいるのではないかと思いました。また,どういったものがあるのかというのは,資料としてなかなかイメージがしにくかったのですけれども,専門家の方などにいろいろ伺ったら,この法制審の前に「若年者に対する刑事法制の在り方に関する勉強会」というのがあって,その報告書の資料の中に少年院送致された年長少年の事例が幾つか出ていました。   その中に窃盗という分類があって,非行事実が窃盗のみで,かつ被害金額が合計1万円未満というケースがありました。これは要するに,少年院に行っているのですけれども,幾つかケースが出ていましたけれども,例えば,万引きで保護観察を受けて,その後,オートバイを盗んで,そのときは不処分になって,本件で何人かの人と共謀して日用品を4点ぐらい,それでも1000円はいかないようなものを万引きしてしまった19歳の人が少年院に入っているというのがありました。恐らくこういう人が今度は成人となった場合に,この日用品4点の万引きを共謀してやったということになると思うのですけれども,多分この行為からいくと起訴するほどではないのではないかという議論になるのではないかというように,法律の専門家でない私なんかは感覚的に思うわけです。ですけれども,こういう人は悪い仲間とつるんでいるかもしれないし,やはり一定程度,悪い環境から引き離す,そういう必要性が出てくるということもあるのではないかと思いました。ですから,このようなケースの人について,施設収容処分を設けないとなると,基本的には社会内処遇の保護観察で対応することになると思うのですけれども,それで実効性が十分担保できるかということなのだと思います。   この第2分科会の御議論をよく読ませていただくと,行為責任というものの枠があって,法理論的な部分から施設収容処分を設けるということが非常に難しいという面もあるということは,読んでいて理解しているつもりではあります。ですから,もしこの施設収容処分を設けないとなると,あとは,例えば社会内処遇のメニューをできるだけ充実していくという方向になるのだと思うのですけれども,私なんかが考えると,例えば,特別遵守事項というのを非常に充実させていって,更生保護施設に宿泊を義務付けるとか,夜間の外出は駄目ですよということを特別遵守事項に書くとか,そういったことが素人考えだと想像できるのですけれども,当然,更生保護施設は矯正施設ではありませんので,そう簡単に代替施設になるとは,なかなかそういうのは難しいという面もあると思いますけれども,このように,もし施設収容処分を作らなかったときに,社会内処遇の充実で十分カバーできるのかどうかというところが,今後考えていく上でポイントになるのかなと今は思っています。   最後に,先ほど窃盗のケースを言ったのですけれども,やはり我々がイメージしやすいので,こういう層はどうなのかなというのを考えるときに,統計的に懲役何年以下の人が何人という数字だけだと,なかなかイメージがしづらいのですけれども,先ほどの調査は確か審判書を分析して,それで具体的な事例を抽出して書いてくれた事例だったと思うのですけれども,トータルの数とか統計ではなくてよいのですけれども,こんなケースはこうなっていますよというような少し具体的な事案を抽出することができれば,これを出していただければ,多分,一般の方も含めて,少し理解が進むのではないかと思うので,なかなか難しいかもしれませんけれども,そういう資料を作っていただけたら有り難いなというのは要望として言っておきます。 ○山下幹事 制度設計全体と処分の問題について意見を述べます。   先ほどから,施設収容処分が必要だという議論が相当続いていますけれども,そもそもこの新たな処分の制度は,当初の頃,若干議論がありましたが,これが保護処分ではない,しかし刑事処分でもない,中間的な処分であるというような意見も出ました。まず,その理論的な性格を明確にしないといけないと思うのです。成人になるから保護処分はできないということは分かるのですが,刑事処分でもないというのは理論的にはおかしいのであって,刑事処分でしかないと思うのですけれども,今のような言い方をしてしまいますと,刑事処分でもないわけですから,そうすると,施設収容といってもどこに入れるのか,刑務所に入れることはできないわけなので,そういう第三の施設を作るのか,そういうことも議論しなければいけないと思うのですが,やはりそれは理論的に見て,どちらでもない,すなわち,保護処分でも刑事処分でもないという処分というのはあり得ない。それは刑事処分でしかないと思うので,そこをまず,きっちり明確にする必要があると思います。   今回のこの制度設計は,現在の少年法の手続をほとんどそのまま持ち込んでいるわけでありまして,それは保護処分をするための手続として定められた少年法の手続をそのまま持ってきていますけれども,これが刑事処分であるとしたら,それは無理といいますか,保護処分ではなく刑事処分をするための手続に保護処分をするための手続を持ち込むというのは理論的に見ておかしい,破綻していると思われるわけであります。そして,刑事処分である以上,今回もずっと,行為責任で上限を画するという観点から,やはりこれは施設収容処分は無理であるということが言われてきていたわけですけれども,これが刑事処分であるとしたら,それはやはりどこまで行っても行為責任によって上限を画する以上は,万引きのような事例などについて,これを施設収容処分にするというのは困難であるとしか言いようがないわけでありまして,やはりこれは今回,現在の18歳及び19歳に対して行われている保護処分に関する手続を,そのまま持ち込もうとしているところに無理があるわけでありまして,それは無理がある以上はやるべきではない。先ほど,太田委員からも,施設収容処分ができないのであればこういう制度は無理であるという御意見もありましたが,この制度はどう見ても,保護処分に関する手続を刑事処分に関する手続として使おうとしているところに無理があるのであって,その中で施設収容処分が必要だという議論は,それは現在の保護処分,現在の少年法の手続をイメージしているからそうなっているわけですけれども,それは無理なので,こういう手続を作ることについて,今回の提案というのは,そういう意味で理論的に見てかなり問題が多いと思わざるを得ないところであります。なので,もう一度これは根本的に見直さないといけない,この制度をこのまま使うことは困難ではないかと私は思っております。 ○田鎖幹事 皆様方の御意見を伺った上で,もう一回,対象者と,それを前提とした上での処分のことについて簡潔に述べさせていただきたいのですが,私も第2分科会の議論をほぼ毎回,傍聴させていただきましたけれども,そこで対象者について議論しているときというのは,やはりこの「訴追を必要としないため公訴を提起しないこととされたもの」というのは,犯罪の軽重という点で,かなり,ある程度もう明らかになると,そういう前提で議論がなされていたと思います。犯罪の軽重によって,まず一義的にほぼ対象というのは絞り込まれて,個別に見ると様々な事情はあるかもしれないけれども,かなり軽いところに絞り込まれるという前提であったと思います。   それと,今の部会で様々に御意見が出ている,そういう御意見の前提とする場合の「訴追を必要としないため公訴を提起しないこととされたもの」というものの間に,どうしてもそごがあるので,処分の考え方についてもかなり違いが出てきてしまっているのではないかと考えました。この点というのは実は,第2分科会で想定しているような起訴猶予相当,訴追を必要としないというものと,第3分科会で議論をしていたものとも,またどうも一致していないのではないかというような点もありましたので,やはり対象をどう考えるかというのはかなり詰めて議論をするべきだろうと思われます。   ですので,軽い類型に限らず,こうした処分の対象にすべき場合があって,もっと対象を広げるべきである,すなわち要保護性という言い方が出てきておりますけれども,特別予防的な観点から,成人であっても公訴提起によらずに新たな処分による方が望ましいのだと,そういったものを広くこの処分の対象にしていくのだと,そういうことでありますと,この制度概要の「3 処分」のところの考え方というものもまた,幅を持ってきますので,全く違ったものになるだろうと思われます。ただ,分科会の御議論を伺った限りでは,やはり成人である以上は刑事処分相当の重さの行為をした者については,訴追をしないと社会的にもなかなか許容されないのではないか,そういったような御意見もあったように記憶しております。   もっとも,そこの点について,どれだけ時間を掛けて深い議論,検討がなされたかというと,そうでもないのではないかと,そういう意味では,先ほど山下幹事からも,そもそものこの制度の理論的な根拠というものについての検討というのがまだ足りないのかなというような感想を持ちました。ですので,対象者,そしてその制度の根拠,そういったことも含めて検討すべきであろうと考えます。 ○井上部会長 刑事訴訟法から見ると,第248条で「訴追を必要としない」という判断をする場合の考慮要因というのは大きく分けて三つあるわけで,その一つが犯罪の軽重ですけれども,あとの二つ,つまり,犯人の性格,年齢,境遇と,もう一つは犯罪後の情況ですが,それらの要因も考慮して「訴追を必要としない」と判断される場合というのは想定されていなかったのでしょうか。 ○青木委員 関連して質問したいのですが。質問をするタイミングを逃してしまって,遅くなってしまったのですけれども,今のに関連して,この制度概要とその説明についての用語の使い方についての質問なのですけれども,対象者のところには,訴追を必要としないため公訴を提起しないこととされたものという言葉が使われていまして,起訴猶予にされたものという言葉は使われていないのですよね。説明の中には,起訴猶予にされたものという言葉も出てくるのですけれども,それは,訴追を必要としないため公訴を提起しないこととされたというのと起訴猶予というのを,そもそも区別して使っておられるのか,たまたまそうなってしまったのか,そこら辺はどうなのでしょうかというのを,まずお聞きしたかったのですが。 ○保坂幹事 起訴猶予処分といわれているものの条文には,「訴追を必要としないときは,公訴を提起しないことができる」とあり,その処分のことをいわゆる起訴猶予処分といっているわけで,そのことを指してここに書いています。制度概要において「処分」と書いていないのは,これは分科会でも御議論がございましたが,検察官が先に処分をするのか,それとも,これはいずれにしても基本的に全件が家庭裁判所の方に回るということですが,その手続をどうするかによるところがあるだろうと考えまして,あえて「処分」というのはここには記載していないという趣旨です。 ○青木委員 それに関連して,そうしますと,説明の中には起訴猶予とされたものという言葉が出てくるところもあるのですけれども,それは必ずしもそうではなくて,訴追を必要としないため公訴を提起しないこととされたものと本来は書くべきだったということになるのでしょうか。要するに,起訴猶予処分というのは,あるかないかはまだ言っていない前提という理解ですか。要するに,起訴猶予になってしまったら被疑者ではなくなると思うのですよね。基本的に処分があれば。処分というのか。要するに,起訴猶予といっても不起訴であり,その時点で被疑者の地位はなくなりますよね。そういう前提の仕組みなのか,被疑者の地位が継続したまま家庭裁判所の審判に行くという仕組みなのか,それは区別をして決めたことなのか,それも含めて議論しましょうということなのか,それはどちらなのでしょうか。 ○保坂幹事 分科会での議論では,被疑者の地位がなくなるかどうかというより,家庭裁判所に回っていく手続を,通告という形にするのか送致とするのかということが考えられるという話であり,その関係で「処分」ということは書いていないということだと思います。ただ,いずれにしても検察官がいわゆる起訴猶予,すなわち,訴追を必要としないという判断を経ているということは前提となりますので,そのような限りで記載しているという趣旨だと考えています。 ○青木委員 そうしますと,確認なのですが,一応,検察官としては起訴猶予にしたということなのでしょうか。 ○井上部会長 起訴猶予という判断をしたということだと思います。 ○青木委員 判断をしただけで,処分はしていないということでしょうか。 ○井上部会長 今,現状ではそこで不起訴の処分,すなわち,起訴猶予を含めて起訴しないという不起訴の処分をするということですね。そこで終わるから「処分」なのであって,先ほどの事務当局の説明だと,検察官のところでそういう処分をすることも考えられるが,そうしない場合には,家庭裁判所に送って家庭裁判所で処置を決めてもらう,したがって,そこが「処分」になるということだと思います。そうすると,検察官の方は処分しているわけではなく,送っているという措置をとっているわけであり,どちらの考え方もあるので,「処分」という言葉は使わなかったと,そういう御説明ですね。 ○青木委員 そうすると,訴追を必要としないとされたものは,必要としないとされるまでの間は被疑者であることは間違いないのでしょうが,その後はどういう身分になるのですか。 ○井上部会長 被疑者というのは,そういう身分なのですかね。 ○青木委員 対象者の身分というのが,例えば,弁護人をどうするかとかそういう問題と絡んでくると思うのですよね。 ○井上部会長 それは,被疑者と呼ぶかどうかは別として,弁護人の援助を受けることが継続して必要と考えられるならば,そのように手当てをすればよいというだけの話ではないでしょうか。必ずしも「被疑者」という概念に固定的なものではないのではないですか。議論が少し迷路に入っているように思われますので,もう少し議論を広げていきたいと思います。 ○川出委員 話が戻りますが,先ほど部会長から御指摘があった点に関連して,新たな処分の対象者について,第2分科会での議論の経緯を申し上げたいと思います。   元々,この新たな処分という構想が出てきたのは,少年法の適用年齢が引き下げられた場合に,これまでであれば,家庭裁判所での保護的措置や保護処分を受けていた18歳,19歳の者が,行った犯罪が軽微であるがゆえに,起訴されることもなく,刑罰を含めて何らの処分ないし処遇も受けないままに終わってしまうのを避けようという考えによるもので,分科会では,その対象者として,犯罪が軽微であるがゆえに起訴猶予になる者を想定して議論をしました。そのため,行為責任の枠内での処分という観点からは,処遇のために有効な期間を伴う施設収容処分を設けることは難しいのではないかという意見が強かったわけです。しかし,この制度の枠組みとしては,起訴猶予処分になった事件は全て新たな処分のルートに乗ることになっていますので,そこを捉えて,起訴猶予処分がなされる事件の中には,行為責任が軽いものばかりではなくて,行為責任としては重いけれども,それとは異なる理由で起訴猶予になっているものもあるのではないか,そうすると,行為責任の観点から施設収容処分が正当化される事案もあり得るのではないかという御指摘が,部会においてなされました。それを受けて,分科会では,事務当局から,参考となる事例についての資料,具体的には,「平成28年に起訴猶予処分となった20歳及び21歳の被疑者の事件(法定刑の短期が3年以上の懲役禁錮に当たるもの)」,それから,「平成28年に少年院を仮退院した者(少年院送致決定時18歳以上の者)のうち,在院期間が140日以下であるもの」を出していただきました。それを参考に,仮に,少年法の適用年齢が引き下げられたとして,18歳,19歳の者が,そこで紹介された事案における犯罪を行ったとしたら,行為責任としては処遇のために有効な期間を伴う施設収容処分が正当化でき,かつ,起訴猶予になるという場合があるのかということを検討しました。   その結果,そうした事例がゼロではないだろうということは,分科会の中で合意が得られたと思います。しかし,それ以上に,それがどの程度あるのか,言葉を換えていいますと,新たな処分として施設収容処分を設ける必要性を基礎づける程度のボリュームがあるのかどうか,それから,仮にそういう事例が一定数あるとして,行為責任としては重いけれども起訴猶予とされた事情ないし理由に照らして,その事件について施設収容処分を課すことが相当なのかどうかというところまでは,残念ながら時間切れで議論ができませんでした。ですから,その点については,この部会の場で,どのような事案で施設収容処分が正当化できるのかということを踏まえて,更に検討していただければと思います。 ○山﨑委員 今の川出委員に補足してといいますか,その相当性の判断の中で,どのような施設でどのような処遇をするかという点も問題になるという点が出ておりまして,先ほど廣瀬委員から,現状のスタッフや施設なども使えるのではないかというお話がありましたけれども,やはり保護原理でなく,少年ではないので,少年院ではない施設になりますから,健全育成の目的での性格の矯正という全面的な介入はできなくなるということですと,これまで短期の少年院処遇で効果が上がったとしても,そういう処遇はできない以上は,より長期の処遇をしないと,やはり効果が上がらないという可能性が高いのではないか。そのようなことを想定して,新たな施設,刑務所と違う施設になるのでしょうか,そうしたものを作るのか,どういう人員を配置するのかという点についても,現実的な必要があるのかという点も含めて,分科会では議論になっていたかと思います。今後,先ほどのような事例を検討する際にも,実際にどういう処遇をどこでするのかという点も併せて課題になると思います。 ○井上部会長 この程度でよろしいですか。   それでは,本日の第2分科会が担当する論点についての意見交換はこのくらいにさせていただきたいと思います。   次に,第3分科会が担当する論点について,配布資料19に沿って順次,意見交換を行いたいと思います。   初めに,「起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方」についてですが,どの点からでも結構ですので,どの点についての御発言かを明示していただいて,御発言を願いたいと思います。 ○青木委員 まず,意見といえば意見なのですけれども,起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方というところで,一応,今のところ検討している対象者というのは18歳及び19歳も含めてなのか,それとも,それはもう外して検討される前提なのか,そこを確認したいと思うのですが。 ○羽柴幹事 第3分科会における議論の中で,その点について結論を出した,あるいは認識が共有されたというところに至ったものではございません。 ○青木委員 そうしたら,まず,意見を申し上げます。この問題を考えるについても,ほかの問題を考えるについてもそうだと思うのですけれども,18歳及び19歳については今の手続なり処遇はうまくいっているという前提で,仮に少年法の適用年齢が下がってしまった場合に,その処遇を果たして維持できるような制度が作れるのだろうかという問題だと思うのです。それ以外については,またそれとは違う形で,今もし不足の部分があるのであれば,それに対する有効な措置があり得るのかどうかというので,観点が違うと思います。   そういう意味で言いますと,起訴猶予等に伴う再犯防止措置の在り方に関しては,起訴猶予という前提で考えた場合に,やはり18歳及び19歳に関して言えば,家庭裁判所の調査官が関与するというのが非常に重要だと思いますので,起訴猶予になるような対象者との関係では家庭裁判所の調査官が関与できるような形の制度設計の方が望ましいと思いますので,仮に引き下げるとした場合には,ここで対処するのではなくて,若年者に対する新たな処分についてもいろいろ問題はあると思いますけれども,いずれにしても家庭裁判所が関与する形の制度設計をするべきだろうと思います。まず,その点だけ申し上げておきます。 ○山下幹事 私の方からは,この「考えられる制度の概要」の「1」の「保護観察官による指導・監督に付する措置」というところです。これは,主体は検察官になっているのですが,そもそも検察官に,保護観察官による指導・監督に付する措置をとる権限があるかどうかということがございます。「補足説明」には,検察官の起訴権限に基づいてできるという考え方が示されたりもしていますけれども,保護観察官による指導・監督というのは,かなりこれは重いといいますか,それなりの不利益処分でありまして,そういうものを検察官が行う権限が果たしてあるのか。起訴権限を越えているというか,単なる起訴権限ではない,もちろんそこで得られた知見を起訴,不起訴の判断に使うというのはあると思うのですけれども,保護観察官による指導・監督に服させるというのはかなり重い不利益処分を被疑者に課すわけなので,そのような権限が起訴権限に基づいてあるとは理論的に考えにくいと思います。そして,この制度については保護観察ではないという前提で議論がされていると思うのですけれども,保護観察官による指導・監督をするのが保護観察ではないというのも理論的に見て非常に問題があると思います。やはりこの制度設計においては,保護観察官による指導・監督に付するという点が非常にいびつなものになっていて,それをできる,しかも,これはかなり長期間にわたって保護観察的なことをするという制度ですので,そのようなものが検察官の権限としてできるということは,もちろん法律に書けばできるということもあるのかもしれませんが,少なくとも現行法上の起訴権限の範囲として,これができるとは考えにくいので,やはりそこの制度設計にかなり問題があるのではないかと考えます。 ○山﨑委員 今の発言にも関係するのですけれども,この審議会の過去の議論においても,同様に起訴猶予に伴って保護観察官を用いての処遇というのが議論されてずっと否定をされてきた経緯があると認識しております。それに対して,今回,どのような必要性あるいは相当性,許容性をもって,これまでの考えの方と違う態度をとるのかという点は,十分検討していただきたいということを,以前の部会でも申し上げました。その後の第3分科会を私もほとんど傍聴させていただきましたけれども,その辺についての十分な議論がなされていないのではないかと感じておりまして,もしその点について結論が出ているのでしたら,教えていただきたいと思います。 ○保坂幹事 第3分科会においては,過去に否定されたことを直接取り上げた議論はしておりませんが,否定されたという理由になり得ることとして,この制度は適切ではないという立場からの種々の指摘があり,それに対する反論なり説明なりをするという意味での議論はかなり濃密に行ったと事務当局としても理解をしています。その基本的な内容というのは配布資料19の「補足説明」において,双方から見た場合の考え方が並んで記載されているのではないかと認識しております。 ○田鎖幹事 今御説明していただいた点と,山下幹事の御発言と関連するのですけれども,今,保坂幹事からは,十分にかなり議論をしたという御説明でした。しかし,なぜ検察官においてできるのかという理由は,それは訴追裁量権の行使として検察官の権限の範囲内でできるのだという御説明で,では,なぜ訴追裁量権の行使としてそれができるのかということについては,これは時間切れだったのか,その他の論点もたくさんあったという関係なのか,よく分からないですけれども,私の認識としては,その点は必ずしも議論で明らかにはならなかったと考えております。重要な問題ですので,部会の場で是非,御検討いただきたいと考えます。 ○青木委員 今,田鎖幹事が言われたことの続きなのですけれども,「補足説明」を読みますと,基本的には訴追裁量権の範囲内で行うものであるという前提になっているかと思います。ただ,訴追裁量権というのは結局,訴追するかどうかという裁量ということだと思いますので,そういう意味で,もちろん行状観察をするとか,行為後の事情ということは考慮できるのでしょうけれども,それすなわち指導・監督ということにはならないでしょうし,ずっと第3分科会の議論をお聞きしたり,あるいは議事録を読んでいましても,これは何らかの義務付けをするものではないというような説明がされていると思うのです。ここにも書かれていますけれども,新たな法的義務を課したり,権利を制約したりするものではないという前提でこれが成り立つのだという整理でされていると思うのですけれども,そうだとすると,指導・監督ではなくて,本来の在るべき姿としては,被疑者に対して,改善更生したいのであればこういう仕組みがありますよということを示唆して,心からそれをやってみたいと思わせて,それで観察するというなら分かりますけれども,それを保護観察官を使って指導・監督をするというところに結び付くという理由が,やはりよく分からないのです。なので,そこについてももし御説明いただけるのであれば,是非御説明いただきたいと思います。 ○井上部会長 説明してもらうというより,ここで議論をするべき問題なのではないですか。 ○青木委員 そういう意味で,そこは結び付かないと考えておりますというのが意見でございます。 ○井上部会長 分かりました。   ほかにこの点について更に御発言がなければ,次に移りたいと思います。   よろしいですか。   それでは,次に,「保護観察・社会復帰支援施策の充実,社会内処遇における新たな措置の導入及び施設内処遇と社会内処遇との連携の在り方」について意見交換を行いたいと思います。いずれの点からでも結構ですので,御発言のある方は,どの点について発言するということを明らかにした上で御発言願いたいと思います。 ○山下幹事 それでは,「第1」の「2(2)」と「3」に関して意見を述べたいと思います。「考えられる制度・施策の概要」の「2(2)」では,更生保護法第51条第2項各号に定める特別遵守事項の類型に加えるということで,いわゆる宿泊を義務付けられた施設から無断で外出をしないということ,それから「3」では,更生保護施設における宿泊の義務付けということで,これらへの宿泊を義務付ける。この「2(2)」と「3」のところをワンセットで見ると,結局施設から出られないということなので,これは社会内処遇というよりも,かなり施設内処遇に近いものになっているかと思います。本来この更生保護法第51条第2項第5号は,元々そこではいわゆる自立更生促進センターを念頭に,そういう施設に入れることを前提で考えられた制度で,実際にはそれが余りうまくいっていないために保護観察付執行猶予者については使われていないわけなのですけれども,今回のこの提案によりますと,民間の更生保護施設を使って,宿泊を義務付けた上で外出をさせないというふうに運用されてしまいますと,これはもう社会内処遇ではない,施設内処遇に限りなく近づくということになると思いますので,やはりこれは少し行き過ぎではないかと思われます。   また,更生保護施設にそれを期待するのもかなり困難,取り分け,夜間に外出をさせないというようなことについては,この補足説明にもありますけれども,施設に必ず人が常駐してそういうことをさせるということ自体がいろいろ問題があるというか,難しいのではないかというようなこともありますし,民間の更生保護施設にそういうことをさせるということはかなり無理があるのではないかということで,いずれにせよ,実際の運用においても問題があると思いますし,やはり法的にも,これは単なる社会内処遇を越えた施設内処遇に近いものになってしまうので,これはやはり行き過ぎではないかと,そういう意味で少し問題があると考えます。 ○大沢委員 今の点についてなのですけれども,確かに行き過ぎというお考えもあるとは思うのですけれども,やはり一番大事なのは,そういった対象者の人が本当に更生する上で何が有効かということなのではないかと思います。ですから,例えばそういう人が,そのまま家に帰して,家の環境がすごく悪くて,また非行の道に走ってしまうかもしれないとか,確実にこれはまた悪いグループに取り込まれてしまうかもしれないというのが見えているようなケースでは,取りあえず更生保護施設に少し泊まって規則正しい生活をしていくというようなことも,やはり選択肢としてそれほどおかしいことではないのかなと思います。ですから,もちろんいろいろな法的な理屈はあると思うのですけれども,やはり実際に目の前の人たちが確実に更生につながるということに何が必要かということはやはり考えていった方がいいのではないかと私は思います。 ○山下幹事 「第5」の「保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用の在り方等」の「2」,保護観察所の長が仮釈放者又は保護観察付執行猶予者について処遇を見直す場合に,いわゆる収容ですね,少年鑑別所の長に対して鑑別を求めるということで,「3」では10日間の収容で鑑別を行うという規定が提案されています。   ただ,これはやはり収容ですので,身体拘束を伴う不利益な処分であるということですので,全ての場合にこれが駄目とは言いませんけれども,例えば,処遇を見直すけれども,やはり結局いろいろ調べた上で,いわゆる保護観察を取り消して刑務所に収容するとかではなくて,逆に,執行猶予の取消しを回避するという方向で,つまり有利な方向でこれを使うのであれば,それはぎりぎり許容することができるかもしれないのですが,10日間収容した上で,やはり執行猶予を取り消して刑務所に収容するというような方向で使うということは,やはり非常に問題が多い,10日間の収容をした上で不利益に使うということは問題が多いので,これは非常に限定的に,本人にとって有利に働く場合に限って,有利に使うということで限定した形にするのであればともかく,このままの状態では,不利益に使われる場合においても10日間収容してそれを使うというのは,非常に重大な不利益な効果をもたらしますので,やはり問題が多いと考えます。 ○山﨑委員 今の御発言との関連で,ここは第2分科会の論点に関わるところですので,関連して意見を申し述べさせていただきたいのですが,配布資料19の27ページの「(4)」の「イ」になりますが,「若年者に対する新たな処分」に関して,「保護観察の処遇の見直しのための措置」がございます。ここは,先ほどの第3分科会のところと横並びのような形で案が記載されておりますけれども,まず,やはり新たな処分で保護観察の処分を受けた人と,仮釈放や保護観察付執行猶予者の人では,置かれている立場が当然異なりますので,その点を十分考慮した制度設計が必要であろうと思われます。すなわち,仮釈放や執行猶予が取り消されて収容される可能性があるかどうかという点が,ほかの措置との兼ね合いにもなってきますけれども,そこを考慮する必要があるだろうということ,さらに,そもそも,先ほどから出ていますように,起訴猶予になるような軽微な事案が大半だと思われますので,それとの兼ね合いでどこまで許容されるのかという点も検討しなければいけないと思っております。そういうことを考えると,仮に新たな処分の保護観察について見直しのための収容鑑別を設けるのであっても,その場合にはやはり保護観察の遵守事項違反というのが少なくとも要件にされるべきであろうと考えておりますし,更に分科会でも述べましたけれども,回数の制限について,余り何回もということは想定しないかもしれませんが,複数回やりますと施設収容処分に近づくという問題もありますので,そういった点も検討の課題かと思います。 ○武委員 49ページに「刑の執行等の初期段階における被害者等心情等伝達制度」についてということが書かれているのですが,今までだと,仮釈放だとか刑の終わりの近くにならないと言えなかったということがあるので,ようやく初期段階からということを考えてもらえたことがとても嬉しいです。私たちは遺族なのですけれども,遺族にとっても,初期段階から思っていることを伝えたり意見を言ったりするということがとても大事ですし,加害者本人にとっても,やはりそれを早い段階から,自分が何をしたのか,どんな思いで被害者側はいるのか,そういうことを知ることが,更生に近づく出発点だと私は思っているので,このことは本当に嬉しいと思っています。   でも,少し心配なことがあります。私たちは保護観察官の被害者担当の方とか教官の方とかに話をすることがあるのですが,遺族の人の話を初めて聞いたとおっしゃるのです。それほど大変だったというのを,初めて直接遺族から聴いて,考えさせられたとおっしゃることが多いです。だから,実際に担当の方でも遺族の方と余り接していない人が多いわけです。担当者が数年で代わるということもあると思います。ということは,理解がしにくいのだと思うのです。私たちは機会を与えてもらって,出掛けて行った場所で話をするのですが,その機会はまだまだ少ないです。だから,私はもっと,保護観察官の担当の方,地方更生保護委員会の方など,そういう方たちにもっと被害者の声を聴いていただきたいのです。多分,私が想像するのですが,被害者に何かを聴くと怖いというか,どうしていいか分からないとまず思うと思うのです。要求は果てしないです,確かに。私たち,死亡事件ですので,とにかく満足がないのです。言いたいこともたくさんあります。でも,それを怖がらないでほしいです。その現状をやはり聴いていただきたいです。それほど感情的なことばかり言うわけではないので,しっかり,もっと関わっていただきたいと思います。加害者の矯正教育に関わる方たちも被害者遺族の話を初めて聴いたと言うのです。それには私たちはびっくりしています。いつも私はどこでも言うのですが,被害者を怖がらずに,被害者が満足するにはどうするかをまず考えるのではなくて,まず一回話を聴こうというところから始めていただきたいです。そうするときっと,もう少し理解が出来ると思うし,それが加害者にいかせると思います。   少し宣伝になるのですが,私たちは10月にいつも「WiLL」という集会をしていまして,今年も10月7日にします。本日,お知らせを配っていただきました。遺族の集まりというと,すごく行きにくいなとか,ああ,すごく重たい話ばかりするのではないかとか,そうのように思われるかもしれないです。確かに重たい話もしますし,感情的に話す方もいます。でも,私たちは割と,一生懸命考えながら一生懸命話をしていますので,できたら怖がらずに足を運んでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。「WiLL」は,専門家はいない中で,自分たち被害当事者と学生とで作っています。そして,今年20回目を迎えます。20年続けてきました。まだまだ知らない人もたくさんいます。だから,どうぞ専門家の方,加害者に関わる方も来ていただきたいと思います。 ○田鎖幹事 先ほどの山下幹事の御発言と,それから山﨑委員が言われたことの関連なのですが,若干補足させていただくと,第3分科会で「第5」の「保護観察における少年鑑別所の調査機能の活用の在り方等」のところで,保護観察の処遇を見直す場合というのはどういう場合かということについては,このままではもう保護観察の継続が困難であって,仮釈放者であれば仮釈放の取消し,保護観察付執行猶予者であれば執行猶予の取消しが考えられるような,その程度深刻な事態になった場合に,その処遇を見直して社会内の処遇が継続できるようにするためと,そういう位置付けで一致したと理解しております。   処遇を見直すというのはそのような趣旨で書き込んでいると,この制度概要をまとめるときにも事務当局の方から御説明を受けておりました。ただ,その後,第2分科会の方の,先ほど山﨑委員が御指摘になったところに,若年者に対する新たな処分のところで同じような表現が出てきまして,もう少し広い意味で使われているようにも読めるし,そこは場面が違うというところで,それぞれの文脈に即して読めばおのずと明らかになるのかなとも考えたのですけれども,第3分科会ではそのような場面設定で議論をしたという意味では,山下幹事の御懸念に答えるような形での議論の取りまとめがなされたと私は理解しております。 ○武委員 私たちの現状というのは,例えば,加害者から謝罪がない,損害賠償を払わない,そして再犯している加害者たちもいる,そういう現状を私たちは本当に目の当たりにしているのですが,それによって被害者がどれだけ大変な思いをするか。とても生きにくいです。自分たちの持っている力を出して生きたいのですが,その力が出せなくて生きにくい,そんな私たちの現状を知ってもらいたいです。 ○井上部会長 これらの論点について,ほかに御意見のお申出がなければ,本日の意見交換はこの程度にさせていただきたいと思います。   以上で第3分科会の担当する論点まで一渡り御意見を伺ったということになります。当部会の進め方については,処遇を一層充実するための刑事法の整備について先に検討を行い,その内容を踏まえて,少年法における「少年」の年齢を18歳未満に引き下げるか否かに関する検討を行うこととしており,このような了解に基づいて議論してきたところですが,現時点では,各論点に関する制度概要案について,分科会の検討結果を踏まえ,1巡目の意見交換を行っただけの段階ですので,次回会議以降,これを踏まえた2巡目の意見交換を行って,更に議論を深め,各制度の具体的内容や相互の関連などについてより立ち入って検討を加えることが適当ではないかと考えます。   そのような前提で,本日の残りの時間は,最終的な全体の在り方を見据えつつ,2巡目の意見交換に向けた方向性や視点,最初に山﨑委員から御発言があったのはここに関連すると思うのですが,そのような全体の方向性あるいは視点ということも含めて,包括的な意見交換を行っていただければと思いますが,このような進め方でよろしいでしょうか。 ○山﨑委員 確認なのですけれども,各分科会から検討結果として上がったものの2巡目の検討というものと,あと,少年法の「少年」の年齢を引き下げることの是非という問題と,どのような順番で議論をされる御予定なのでしょうか。 ○井上部会長 私の言い方が不明確だったかもしれませんが,これまでは,少年法の適用年齢の問題に最初から踏み込むのではなく,まずは処遇を一層充実するための刑事法の整備について検討を行うという了解の下に,部会で議論をし,更に各分科会で考えられる制度概要案について検討を行って,御報告いただいた。その御報告を受け,それについて1巡目の議論を行った,まだそういう段階ですので,更に2巡目の議論を行い,その議論の状況を見定めながら,それを踏まえて「少年」の年齢を18歳未満に引き下げるかどうかについての検討を適切な時期に行うというのが,適切なのではないかと私としては考えますので,そういうことでよろしいかということです。 ○山下幹事 この三つの分科会の検討した結果については,A案,B案とか,いろいろな複数の両論併記となっているのですけれども,今日みたいな議論の仕方をしていては,いつまで経ってもそれは決まらないので,それをどのようにどこで収束させるのか,また,今の少年年齢引下げの問題の前にある程度,ほぼこの三つの分科会でやったところを,結論というか,ある程度決めてからそこへ移るのか,その辺がよく見えないというか,特に前回とか今回の議論のような,散発的というか,そのような議論の仕方では,いつまで経ってもこの両論併記が決まらないと思うので,それをどのように収束させた上で,少年法の年齢引下げの議論に入っていくのか,その辺のお考えをもう少しお聞きしたいのですけれども。 ○井上部会長 まだ分科会での検討の結果を報告いただいたばかりで,この部会の委員・幹事全員が各分科会に属し,その議論に加わってきたわけではないですし,中身の議論は飽くまでこの部会でやるという了解でしたので,まず報告を伺った上で,疑問点を明らかにし,各論点に対する粗々の意見交換を行い,それを整理して,次のステップとして,より突っ込んだ議論をしていく。そこでようやく議論の行方が見えてくる。そういう進め方を,これまでの他の部会でもやってきたところでもあり,有効な進め方ではないかと思います。言いっ放しのように見えたかもしれませんが,こういう段階も重要であり,2巡目では,論点をより整理し,実質的な争点を中心にメリハリをつけて意見交換すれば,きっと中身のある議論になるのではないかと,私としては考えています。 ○山下幹事 分かりました。 ○伊藤委員 第2分科会の宣告猶予制度と,若年者に対する新たな処分,第3分科会の検察官が働き掛けを行う制度の導入,この三つの制度に関連して発言させていただきます。先ほど山下幹事は,検察官が働き掛けを行う制度よりも裁判所が有罪,無罪の判断をした上で社会内処遇を行う制度の方が望ましいので,そのような形で利用するためのものとして宣告猶予制度を構築すべきではないかという趣旨の御意見をおっしゃったように思うのですけれども,検察官が起訴するかどうか迷っている事件を取りあえず起訴して有罪の宣告をしてしまうということが本当によいのかどうか,もう少し考えた方がよいように思います。   それから,青木委員がおっしゃったことは,検察官が働き掛けを行う制度の対象となるような者については,むしろ若年者に対する新たな処分の方に流したらよいのではないかと。 ○青木委員 18歳及び19歳に関してですか。 ○伊藤委員 検察官が働き掛けを行う制度の対象となる者のうち,18歳及び19歳の者については,若年者に対する新たな処分のところで考えたらどうかという御趣旨だと理解しました。それは一つの御意見のように思います。他方,青木委員は,18歳及び19歳については宣告猶予もなお使う余地があるのではないかということもおっしゃいました。18歳及び19歳の者に限定したところで,起訴した場合には,執行猶予の制度がありますので,執行猶予の制度と宣告猶予の制度をどのように使い分けるのかということを明らかにしていただかないと,裁判所の立場としては,運用ができないように思います。18歳及び19歳に限定して構わないのですけれども,起訴をされた人のうち,こういう人については執行猶予が相当だけれども,こういう人については宣告猶予が相当なのだというところについて,少し具体的な御意見をお聞かせ願えればと思います。 ○青木委員 今の時点で考えていることを申し上げますと,要するに,若年者に対する新たな処分という形で一つ,18歳及び19歳に対する手当てを考えたわけですね。それと同じ並びで,18歳及び19歳については,手続に関しても今までとはかなり違う仕組みの制度を作るべきなのではというか,そうしないと,正に今までと同じような処遇を維持するというのは無理なのではないかという問題意識です。ですから,今の裁判の仕組みの中に18歳及び19歳だけというよりは,裁判の仕組み自体をかなり変えた形の手続を,かなりといってもそれほど大幅には変えられないと思いますけれども,手続をきちんと想定して,それに見合った形でやるとしたら,宣告猶予というのもその中の一つに入るのではないかという問題意識です。   それで,先ほどどこまで言ったか分からないのですけれども,基本的に今の全体の枠組みが起訴しない場合と起訴した場合とでかなり違う形になっているわけです。今のは訴追を必要としないものについては保護処分と刑罰との間のような処分があって,場合によっては少年院のような処遇を行う新たな施設で処遇ができるという制度で,そういう言わば18歳及び19歳については,その中間的な処分ができるという立て付けになっている。ところが,起訴されてしまうと,それがないわけですし,起訴されないときには家庭裁判所調査官の調査があって,その調査に伴っていろいろ実際に効果がある,教育的な効果も含めて,起訴されない人にはそういう手当てがあるけれども,起訴されてしまうと,それがないと,その落差が非常に大きいので,もし引き下げるのであれば,その落差を埋める手立てが必要なのではないかという問題意識ですというところだけ,申し上げておきます。 ○井上部会長 それは先ほどおっしゃったことですね。 ○青木委員 はい。 ○井上部会長 それでは,先ほどのような了解で審議,検討を進めるということでよろしいでしょうか。               (一同異議なし)  それでは,本日の残りの時間は,今のような横断的な,あるいは全体的な視点ないし方向性の議論をしていただければということで,全体的な視点の御意見があれば,伺いたいと思います。 ○山﨑委員 何度か申し上げている,現行の18歳,19歳の処分と20歳,21歳の処分の対比という観点からなのですけれども,今,青木委員からもありましたように,起訴猶予相当の事案について新たな処分を考えるのに比べて,起訴された場合の18歳,19歳に対する手当てというのが現段階では不十分ではないかという気がしています。   先ほどから触れています資料15でいうと,少年院送致あるいは保護観察になっている少年というのが全体の4割いるわけです。この子たちの相当程度は少年鑑別所にも入って観護措置がとられている。つまり,観護措置で3,4週間の収容鑑別を受け,その中で濃密な調査を受けた上で,施設収容になるか在宅処分になるかという中での審判を受けて処分が決まり,その上で少年院に行った対象者については少年院で手厚い働き掛けが行われる。さらに,保護観察になった少年についても,それまでの調査鑑別の結果を踏まえて,保護者への働き掛けも含めて,手厚い処遇がされるということになっているわけで,私たち弁護士の付添人が付くのもおおむねこの層であり,このような対象者の18歳,19歳というのは,やはりそれなりに手当てをする必要性が高いであろうと考えられます。それに対比して,審判不開始,不処分になっている少年というのは,例外もあるでしょうけれども,もう少し働き掛けの必要は類型的に低いのではないかと思われます。その辺を踏まえた上で,制度のバランスをやはり考える必要があるだろうと思っています。   そういった点からしますと,青木委員が言ったことと共通するのですけれども,訴追された場合の18歳,19歳について,今検討されているような対応でどれほど効果があるのか。一つは自由刑の収容処分を考えたときに,様々それに対する改善をしたとしても,そもそもそこに入る人というのは極めて僅かでしょうし,少年院教育との差というものが存在する。実刑でなくても,執行猶予になった者に対してどこまで実際に保護観察が付くのかという問題もある。しかも,その保護観察になったとしても,調査を踏まえたものではありませんので,少年の保護観察処分のような処遇の効果というのが果たして上がり得るだろうかという問題もあります。さらには,先ほど申し上げた保護者に対する働き掛けというのも少年院や保護観察のようにできなくなると,こういった辺りが全体として,制度をどの程度実効性あるものと評価するか,できるかという点をしっかり検討する必要があるのではないかと思っています。 ○武委員 教えていただきたいのですけれども,18歳,19歳で起訴になる事件というのは,私はやはり犯罪の種類が重いと思うのです。というのが,私たちの会の人の加害者の18歳,19歳は,重大犯罪を起こしています。だから,その扱いと,18歳,19歳の軽微な犯罪の扱いの差があるのは,私たちは当然だと思うのですが,それはおかしいのでしょうか。それと,18歳,19歳で割と大きな罪を犯す少年というのは,前にも何らかの事件を起こしていることが多いです。いきなり18歳,19歳ですごく目立つような事件を起こす少年は,自分たちの犯罪を見ているだけかもしれないのですが,少ないと思えてならないです。年齢が引き下がったときに,大人と同じように扱われた場合,それは少年たちのためにいけないのではないかという印象がないのです。私は区別をすることが大事だと思っています。それが抑止力になると思う方が強いからです。だから,そこを教えていただきたいです。 ○井上部会長 御質問の趣旨は,年齢を引き下げた場合に起訴の対象となる18歳,19歳というのは,武委員がおっしゃったような非常に重大な罪を犯した人が中心なのか,それとも,それほど重大ではない罪を犯した者も含む,かなり幅広い層を想定しているのか,こういう御質問だと思います。 ○加藤幹事 問題意識とされているところに関し,事務当局として可能な限りで,説明させていただきます。   現在18歳,19歳で起訴されるのは重大犯罪の少年が中心であるという御認識は,当たっていると思います。現在は全ての少年事件が一旦,家庭裁判所に送致されて,そこで刑事処分相当とされたものだけが検察官に送致されて起訴をされるということになっています。その刑事処分相当の判断の中には事案の重大性が考慮されているであろうと考えられますし,更に一定の重大犯罪については,いわゆる原則逆送制度によって原則として検察官送致が行われることもあり,重大犯罪が検察官に送致されやすいというのは,これはそのとおりだと思われます。   これが18歳,19歳の者が成人となった場合にどうなるかということでありますが,ここは今,御検討いただいている制度次第になりますけれども,ここでの御議論では,重い罪を犯した層の18歳,19歳の者は,基本的には成人として扱うことが前提となっていますので,仮にそのような制度になるとしますと,その層は家庭裁判所に送致されないことになると考えられます。そうなりますと,起訴,不起訴の判断を検察官が行うことになりますので,家庭裁判所に一旦送致されて保護処分になる分というのがなくなって,今まで逆送されていたものに加えて,従来は保護処分となっていたものの中にも起訴されるものが出てくるということになります。そういう意味で,理論値としては幅が広くなると言えるのではないかと思われます。 ○井上部会長 ほかに,全体的な視点からの御意見,更に付け加えての御発言がなければ,本日の審議はこのぐらいにさせていただきたいと思うのですけれども,よろしいでしょうか。   それでは,本日の審議は,これで終了させていただきます。   今後の予定につきまして事務当局から説明をお願いします。 ○羽柴幹事 次回第10回会議は10月11日木曜日の午後3時30分からです。場所はこの建物の1階にあります東京保護観察所の会議室を予定しております。 ○井上部会長 引き続き,よろしくお願いします。   なお,本日の会議の議事につきましては,特に公表に適さない内容に当たるものはなかったと考えられますので,発言者名を明らかにした議事録を作成し,公表することとさせていただきたいと思いますけれども,よろしいでしょうか。                 (一同異議なし)   それでは,そのようにさせていただきます。   本日はどうもありがとうございました。 -了-