法制審議会 特別養子制度部会 第7回会議 議事録 第1 日 時  平成30年11月27日(火)   自 午後 1時31分                          至 午後 5時25分 第2 場 所  法務省第一会議室 第3 議 題  要綱案の取りまとめに向けた検討 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは,定刻になりましたので,法制審議会特別養子制度部会第7回会議を開催いたします。   何回か続けて,以前から決まっていた長期海外出張のため欠席いたしまして,部会長代理の窪田委員を始め皆様には大変御迷惑をお掛けいたしました。これ以降はずっと続けて出席できますので,引き続きどうぞよろしくお願い申し上げます。   さて,本日ですけれども,まず配布資料につきまして,事務当局の方に御確認をいただきたいと思います。 ○倉重関係官 それでは,御説明いたします。   本日お配りしておりますのは,まず部会資料として7-1,7-2というものをお配りしております。   7-1につきましては,中間試案に対するパブリックコメント手続が終了いたしましたので,いよいよ要綱案の取りまとめに向けた御審議を頂くためのたたき台としてお示しするものでございます。   それから,部会資料7-2につきましては,その7-1「たたき台」についての補足説明ということになっております。逐項的に細かく説明をしたものというふうになっております。   それから,部会資料とは別に,参考資料として1と2をお配りしております。   まず,参考資料の1についてですが,こちらはパブリックコメント手続について寄せられた御意見を事務当局において取りまとめたものでございます。基本的には,事務当局到着順で項目ごとに編集して,御意見をそのままの形でお示しをしているというものになります。   それから,参考資料の2でございますが,こちらにつきましては,前回,事務当局の方に宿題として頂いておりました特別養子縁組に関する戸籍の取扱いについて,事務当局においてまとめさせていただいた資料でございます。こちらにつきまして,本日,個別に御説明をということはちょっと考えていないのですけれども,審議の途中で必要がございましたら,御質問等を頂けますと,お答えできる範囲でお答えしたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ただいま御説明がありましたように,本日は,お手元の資料7-1,7-2に基づきまして,要綱案の取りまとめに向けまして,最初のたたき台を御検討いただきたいと思っております。   7-1は,将来要綱案になるべきもののたたき台ということになります。7-2に補足説明がございますけれども,これももちろん御議論の対象になりますけれども,7-1の方に集約する形で御議論を頂くと有り難く存じます。   それから,先ほど御説明ございましたように,パブリックコメントの結果も出ておりますが,これらにつきましては7-1の説明の中に織り込んだ形で,事務当局の方から御紹介を頂こうと思っております。   早速ですが,7-1を御覧いただきますと,1ページが第1で「特別養子縁組の成立に係る規律の見直し」となっております。それから,5ページが,第2で「養子となる者の年齢要件等の見直し」となっております。   そこで,本日は,まず第1につきまして事務当局の方から御説明を頂き,3時ぐらいをめどに御意見を頂こうと思っております。休憩を挟みまして,第2につきまして御説明を頂いた上で,御議論を頂くということを予定しております。どうぞよろしくお願い申し上げます。   それでは,まず第1につきまして,事務当局の方で資料の御説明を頂きたいと思います。 ○倉重関係官 それでは,御説明申し上げます。   まず,第1の説明に入る前に,全体の並び順につきましてですけれども,部会資料7-2の補足説明で書かせていただきましたとおり,まず全体の条文の並び順,事務当局として今考えている限りでは,この「成立に係る規律」の方が「年齢」よりも前にくるということ,それからもう一つは,年齢の規律というのは,どうしても時点との関係で,どういう手続で成立させるかということが前提になるということから,第1の方にこの成立に係る規律を記載させていただき,第2の方に年齢に係る規律を記載させていただくというスタイルにしております。この辺の順序につきましても,もし御意見等ございましたらお寄せいただければと考えているところでございます。   それでは,早速第1の内容につきましてでございます。   まず,児童相談所長の参加についてですけれども,パブリックコメントの結果は,資料7-2の補足説明の1ページに,概要を枠囲みで示しております。本部会におけるこれまでの議論でも,大きな異論はなかったと認識しておりますし,パブリックコメントでも賛成が多数ということになっております。   そこで,資料7-1の要綱案のたたき台では,児童相談所長の参加を採用することといたしまして,1段階目の手続への参加を認めることとしております。もっとも,この点につきましては,2段階目の手続への参加も認めるべきではないかといった意見がパブリックコメント手続において寄せられておりますことから,この点についても,もし御意見がおありであれば御意見を賜りたいと考えているところでございます。   なお,児童相談所長の参加というのは,民法のほかの規定等の並びから考えても,児童福祉法において規律を設けることが適切でないかと考えられます。しかしながら,児童福祉法については法務省の所管外ということになりますため,直接要綱案に盛り込めるかという点ございますので,部会資料7-1のたたき台の本文では記載しておりませんで,2ページの冒頭に注記という形で記載するということにさせていただいております。   次に,実親の同意の撤回を制限する方策についてですが,パブリックコメントの結果につきましては,補足説明の2ページに概要を枠囲みで示しております。   中間試案における1番目,すなわち特別養子縁組成立の審判手続における同意につきましては,本部会におけるこれまでの議論でも大きな異論はなかったと認識しておりますし,パブリックコメントでも賛成が多数となっております。そこで,たたき台の第1の1(1)のエ,それから(2)のエにそれぞれこの規律を設けております。   他方で,中間試案における2番目,すなわち特別養子縁組成立審判手続前における同意の撤回制限につきましては,縁組成立手続に係る規律につきまして甲案,すなわち2段階手続を導入して,養親候補が定まる前でも児童相談所長による1段階目の手続の申立てを認める案を採用することといたしましたことから,1段階目の手続と別に,事前の同意の撤回制限の制度を設ける必要性が必ずしも十分にあるとは言えないと考えましたことから,このような制度は採用しないというふうな提案とさせていただいております。   それから,実親の同意について,撤回が制限される方式によるものに限るかどうかという点についてですけれども,児童福祉の実務を踏まえた上で,これを残す必要があるというようなパブリックコメントでの意見があったこと等も踏まえまして,撤回が制限されない同意についても有効と扱う,同意については制限をしないというような形としております。   最後に,縁組の成立に関する規律の見直しについてですけれども,既に申し上げましたとおり,甲案,すなわち2段階の手続を導入して,養親候補者が定まる前であっても,児童相談所長による1段階目の手続の申立てを認める案を採用することとしております。この点につきましては,本部会におけるこれまでの議論でも大きな異論はなかったと認識しておりますし,補足説明3ページの冒頭に枠囲みでお示ししたとおり,パブリックコメントにおきましても甲案を推す意見が多数となっておりました。   少し内容面に踏み込んで御説明いたしますと,まず特別養子縁組成立の実体法上の要件の見直しを行っております。この辺,詳しくは部会資料7-2,補足説明の9ページに図でお示ししているとおりでございます。このとおり,実体法上の要件を整理させていただいております。   次に,補足説明の12ページ,12行目以下に記載しているところですけれども,少しこの部会でも既に議論を頂いたところですが,1段階目の審判がされるより前に,適合性要件が欠けることが明らかである。この養親には適格性がないということが明らかであるということで,2段階目の手続の申立てが先に却下された場合の扱いですが,これにつきましては,2段階目の申立てが先に却下された場合には,1段階目の手続の申立ては不適合なものとして却下されるというような規律にしております。   たたき台においては,1段階目の審判を「縁組予定者とする処分の審判」と呼んでおりますが,1段階目の形成審判について,どのような審判をすることが適当なのか,どのような名称が適当なのかという点につきましても,更に御審議を賜りたいと思います。   また,たたき台では,家事事件手続法の規律について詳細に記載しておりますが,これはたたき台という性質に鑑みて,手続のイメージをお示しするため,現行の家事事件手続法の規律を参照に記載したものでございます。要綱案として,どこまでこの点について詳細に記載すべきかという点も含めて,御意見を賜りたいと存じます。   事務当局の説明は以上になります。 ○大村部会長 ありがとうございました。   第1の問題につきましては,基本的には中間試案の線に沿った御提案がされているものと理解しております。その上で,手続の細かな点につきまして,幾つかの補足の説明があったかと思います。   いずれの点につきましてでも結構ですので,御自由に御意見を頂ければと思います。 ○宇田川幹事 要綱案自体ではないのですけれども,これまで中間試案の前に余り議論されていなかった部分について,申し上げたいと思います。   具体的には,補足説明の13ページの8行目ぐらいから,1段階目の審判によって親権行使者がいなくなった場合に未成年後見人が選任されるというふうに説明がされています。親権行使の禁止の期間が6か月になっていますので,そういった短期間を想定しての未成年後見人の選任ということになるかと思うのですけれども,このような短期間に限定した未成年後見人の選任というのは,現在の裁判の運用でも余り例がないところで,この場合に未成年後見制度の適切な運用の確保ができるかというところに懸念を持っておりまして,これは(注1)でも,裁判所の意見を反映して記載していただいたところと認識をしております。   具体的な懸念をお話しする前に,確認させていただきたいのは,この場合,どういう児童について未成年後見人選任という事態になるのかというところです。(注2)を見ますと,一時保護中の場合ですとか,小規模住宅型児童養育事業を行う者又は里親に委託中の子は,児童相談所長が暫定的に親権を行使するなどという形になっていますので,それ以外の場合に未成年後見人の選任ということになると思うのですけれども,具体的にはどのような児童について未成年後見人選任ということになるのかというのを,もし事務当局の方でお考えがあれば御説明いただきたいですし,ほかの方でもこういうことが想定されるのではないかということがあれば,教えていただきたいと考えております。よろしくお願いします。 ○山口幹事 そうですね,正に,例えば児童相談所長が申立てをするという場合には,今,御指摘いただいた(注2)の方になってくるのかと思いますので,未成年後見人選任というのは必ずしもそういう場面ではないのかもしれないと思っております。ただ,そうではなくて,縁組を希望する御本人の方が申立てをされた場合で,しかもその場合は同時申立てというふうになりますが,1段階目の審判が先にされると,2段階目の審議は引き続き行いますよという状態でこの問題が出てくるのかなと,そういうふうに思っております。 ○宇田川幹事 そうしますと,児童相談所長が申し立てたときには,未成年後見人の選任は余り想定はされないのでしょうか。   実際には,これまでは里親等に委託されておらず,民間のあっせん団体が調整をしていたけれども,実親との関係で争いになりそうだという場合に,児相とあっせん団体は連携していることが通常と思うので,児相長が申立てをするということも考えられるのかとも思っていたのですけれども,そういったことは想定されないということなのでしょうか。 ○山口幹事 そのような場合にも,やはり未成年後見人の選任が必要なのかどうかという問題は起こってくると思います。しかも,今,御指摘のケースというのは,特にそれまで施設で預かっていたというわけではないと思いますので,児相長なり,ほかの施設長が親権を行使できるという場面ではないと思いますので,そうなってくると,では未成年後見人を選任する必要があるのかという問題になってくると思います。 ○宇田川幹事 ありがとうございます。   そうすると,今のような事例を念頭に考えた場合に,今度,未成年後見人の選任という場面で,こちらにも記載していただいていますけれども,一つは,誰が選任の申立てをするのかということが問題になり,児童福祉法33条の8では児相長の申立て義務も記載されていますけれども,そういう形で児相長が申立てをするということが,運用としてもそういう形になっていくのかということも議論が必要だと思います。   また,縁組希望者を未成年後見人として選任することが相当かということもあり,ここは中間試案の補足説明でも書いていただいたとおり,第2段階目の審判に対する子の即時抗告権との関係で,相当でないと考えられることもあり得ると思っているところです。   さらに,未成年後見人として縁組希望者が相当でないとなると,第三者,通常は弁護士などの専門職が念頭に置かれるわけですけれども,そのような場合に,地方などでは,なかなか専門職のなり手,給源が確保しにくいという問題もありまして,このような迅速な手続が要求される場面で,果たして専門職の未成年後見人を適切に選任できるのかという懸念があるというところです。   さらに,児童相談所の費用助成事業があるというふうにも認識しておりますけれども,費用の問題もあるように思われまして,そういうところの問題がある中で,親権の行使が禁止される場面においてどういう手当が必要なのかというところについて,本当に未成年後見人選任で対応できるのかということを含めて,議論が必要と考えております。   先ほど少し話に出ました,例えば民間あっせん団体の場合も,通常は児相と連携をしているということからすると,ほかの制度と同じように,児相長に暫定的な親権行使を認めるという方策も一つの方策としては考えられるところであり,そのような方策も含めて,どのような手当をするのが適当かということについて御議論いただければと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   想定されている制度を動かしていく上で,非常に大事なところかなと思いますけれども,事務当局の方で更に何かお答えがあればそれを伺って,皆さんの御意見を伺いたいと思いますが。 ○山口幹事 そうですね,まず事務当局の方から申し上げさせていただくとしますと,まず誰が申立権者になるのかという問題があろうかと思います。そこは,まず児童相談所長が申立てをされている件では,その児童相談所長にやはり申し立てていただくのが適切なのではないかと思っております。   それから,縁組希望者の方が申し立てているときにも,やはりまずはその方がイニシアティブをとらないと,ほかの方というのもなかなか想定しにくいのかなと思いますので,そうなると,やはり縁組希望者の方に申立てをしていただくのかなと思います。   先ほど宇田川幹事がおっしゃった,しかし,縁組希望者が未成年後見人になるとしますと,即時抗告の問題などが生じてくると思いますので,その場合には,自分を未成年後見人にしてくださいという申立てではなくて,適切な人を未成年後見人に選任してくださいと,そういう申立てになるのかなと思っております。   費用のところにつきましては,児童相談所長が申立てをされるときの費用の問題というのは,ちょっと私も今この場で,こうなりますという御回答ができないのですが,縁組希望者の方に申立てをしていただく場合には,やはりその御負担になるのかなと考えております。   今,私が申し上げていきましたところは,いずれもやはり結構ハードルがどれも高いのかなと考えているのが率直なところでして,そのために,(注1)のところの後半の方で記載しているのですけれども,1段階目の審判が確定しても後見は開始しないと。したがって,未成年後見人を選任する必要はないというような対処の仕方がないでしょうかということを考えております。ここは,正にこの部会の場で御議論を願いたいと思っております。   それからもう一つ,資料には記載していないことなんですけれども,では,後見を開始することが不可避であるとしても,後見を開始したら必ず未成年後見人の選任をしないといけないのかという問題もあろうかと思いまして,そういう後見は開始するけれども,未成年後見人の選任は--保留といいますか--しないでおくと,特に必要がない限りはしないでおくという選択肢があるのか,ないのかと,この辺りもお考えをお聞かせいただければと思っているところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今のようなお答えがありましたけれども,これはいろいろ御意見がおありなのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ○床谷委員 すみません。この点については以前,私,意見を申し上げたと思うんですけれども,この手続の中で,親権を行う者がなくなったときには,当然のこととして,児童相談所長が33条の2と同じように親権を行う者となるというような規定をつくることはできないんでしょうか。 ○山口幹事 その場合は,特に施設に入っているとか,入っていないとかも問わずということでしょうか。 ○床谷委員 後見人がいるとか,施設に入っていて既に親権を行っているとかという場合でない場合です。 ○山口幹事 すなわち,施設に入っていないけれども,児童相談…… ○床谷委員 そういう場合が出てきた場合には,当然に誰かがというときに,児童相談所長が手続なしにですね,法律上の効果としてそこに入るというような規定をつくることはできないんでしょうか。 ○山口幹事 今,直ちにそれはできませんというだけの論拠もありませんので,もしそれが可能であれば,一つ有力な方法かなと思います。 ○棚村委員 今,床谷先生が言ったのは一案かと思いますけれども,私もやはり,たとえ6か月という限定的な期間でも親権者が欠けたわけですから,やはり未成年後見人の選任は必要ないというよりは,空白期間をつくらない方がいいと考えます。   私は,事務当局の提案に賛成するのは,やはり申立人が児相長の場合もあれば,養子縁組を希望される養親となろうとする者もあれば,いろいろあると思います。やはり,一番大事なのは,適任者を適切な時期に選任しなければいけないというので,私も幾つか事件に少し関わったときに,この問題で一番心配なのは,急な病気とか大きなけがをして,何か手術や医療措置が必要とか,そういうようなことで御心配をされるケースがかなりあり,養親希望者の方も危惧されておられました。   それから,多分,児相長もそうだと思いますけれども,子どもに対して適切な未成年後見人が選任されることも重要であると考えます。児相長もある程度緊急対応ができるとしても,もちろん必要性のあるときにできるような形で規定を整備するということは大切でしょうが,余り一律に固定的に規定することがよいかも疑問に思います。むしろ,こういう緊急的な暫定的な状況の中での子どものために空白状態を作らないというので,余り固定的に何か制度を作るというよりは,今ある制度を柔軟に使って対応することがよいと思います。   それで,先ほどちょっと言われたので気になったのは,1段階目の審判が確定しても後見は開始しないというのですけれども,親権が制限をされていて,何というんですかね,欠けている状態なのに未成年後見人が必要ないと言えるのか,つまり事実状態に任すというのはやはり余り適当ではなくて,責任の所在をきちんと,あるいは権限を持てる人をどこかに決めておかなければいけないんですが,正に未成年後見という制度はそのためにあるわけですから,それは児相長が児福法に基づいて親権を,あるいは権限行使できる場合もあれば,そうでない養親希望者の場合もあれば,場合によっては専門職,もちろん地域によりその確保困難な場合もありますけれども,適当な方をやはり選任して,ある部分,あることについてはお願いせざるを得ないと考えます。   その辺り,余り固定的に,誰が,何をしなければいけないというよりは,6か月間,空白を置かないようにすることが,やはり子どものためにはなると思うので,法的な空白期間を作らないという意味では,ある意味では床谷先生がおっしゃるような手当も一つの案だと思いますけれども,私は現在,事務当局が考えられている未成年後見人の選任が,親権が制限されていなくなるわけですから,必要になってきたとき,やはりそれぞれが適切に,未成年後見人として,あるいは親権が欠けている部分を行使できるような状態に法的にはしておく必要があるのではないかということで考えております。 ○磯谷委員 児童相談所が関わっていない状況で甲案のような手続が採られて,親権を行使する者がいなくなった場合に,一つはですね,緊急な場合がある場合には一時保護を掛けて,その場合に,一時保護は委託ができますので,現在,例えば養親さん,養親候補者さんが預かっているという場合で,かつ児童福祉法27条1項3号の措置ではない場合であっても,一時保護を掛けることが考えられます。そうすると,親権を児相長が代行するということになります。   それからもう一つ,児福法の33条の8という条文で,未成年後見人の請求ができることに児相長はなっています。これは,親権を行う者がない児童等について,福祉のために必要があるという場合にはその方法があると。この場合には,2項のところで,そうなりますと児相長が暫定的に親権代行を行うということになっておりますので,要するに児相が関わっていないケースでも,誰かが急いで親権行使をしなければいけないという場合には,以上の二つの方法のいずれかで対応ができるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○浜田幹事 浜田です。   先ほど棚村委員からございましたけれども,子どもの利益のことを考えますと,適切な者が未成年後見人につくということは極めて重要であろうと思います。これは,第1段階目の審判が確定しているということは,要するに第2段階の途中も同じような状況が続くということでございまして,そのときに子どもの利益を適切に守ることができる者として,未成年後見人はやはり必須ではなかろうかと思います。   そのときに,もちろん児童相談所長さんが駄目だというふうに申し上げるものではございませんが,私どものような専門職も,こういう場面において,その役割を担う者として適格性があるものと考えております。   私が全国の弁護士会の状況を全部網羅しているわけではございませんが,24年の法改正以来,未成年後見を受任し得る者の名簿の整備も,全国各地の単位弁護士会でかなり進んできております。その中には,「名簿は作ったんだけれども,依頼がないんだよね」というふうな声もいろいろなところから聞いておるところでございますので,ちょっと責任は持てませんが,全国の単位会は一生懸命務めさせていただけるものと私は認識しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○藤林委員 私も全国の児童相談所を代表しているわけではないんですけれども,未成年後見人を立てなくても児相長が親権を代行できるというふうにはなっておりますけれども,やはり法改正もありまして,厚労省の未成年後見支援事業という補助制度もあるわけですから,ここは私も浜田委員と同じで,積極的に未成年後見人の申立てを児相長が行っていって,その空白の期間,専門職の未成年後見人が立つというのが望ましい姿ではないかなと思います。福岡市では未成年後見人を活用しておりまして,十分確保できると思っております。   もう一つ,児相長が申し立てない場合に,養親候補者の方が未成年後見人をどなたか第三者に依頼する場合,その費用の面は,厚労省の方にコメントを頂きたいんですけれども,確か今年度から,児相長が申し立てていない場合でも,場合によってはその補助事業が適用できるようになったのではないかと思うんですけれども,その辺,詳しい方があれば。 ○成松幹事 厚労省です。   藤林所長がおっしゃるように,児相長の申立てがこれまでこの補助事業では必須だったんですけれども,今年度から,それに限らず,必要な場合というのは補助の対象になり得るということで整理をさせていただいていますので,また,今回の法改正に伴って,何か必要があるようでしたら,またそこの部分もしっかり対応できるようにしていきたいと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   何人かの方々から御意見を頂きましたけれども,皆さんの共通の前提は,後見人なしというわけにはいかないであろうということで,その上でどうするかということにつきまして,幾つかの方向の御発言を頂いたかと思います。   後見人を選任することを前提にして,それなりの受皿はあるという御発言,それから緊急事態があれば,それには児童福祉法で一定の対応はできるという御発言もあったかと思います。   しかし,床谷委員のおっしゃるように,児童相談所長が親権を行使するとしてしまえば,こうした問題は一切解決するということにもなるわけで,そのような御意見が出ているというのが現在の状況かと思います。   床谷委員あるいは宇田川幹事,何か今の点につきまして,更に御発言があれば伺いますけれども,いかがでしょうか。 ○床谷委員 私もですね,間に手続を挟むということは一度考えたんですけれども,第一審判が出たときに児童相談所が参加しているか,していないかにかかわらず,直ちに一時保護をしてという,そういう間を挟むということも考えたのですが,結果的にそれで児童相談所長が親権を行うことになるのであれば,そういうものは要らないかなと思い返して,法定の親権を行う者という規定を置けばいいのかなと思いました。   ただ,一方で参加でやりながら,他方で親権を行う者というふうにやることが常に適切なのかどうかということとか,未成年後見人として適切な専門職の要請という意味では,児童相談所長さんもお忙しいですから,いろいろなそういう人材を要請するという意味では,浜田先生がおっしゃったようなことも理解はできます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○宇田川幹事 児相での対応も可能であるし,弁護士会においても,全国で専門職の未成年後見人を確保するという態勢がとれているのではないか,もしそれがとれていなければ,今後協力していただけるというお話かと思いましたし,厚労省からも費用の助成の制度の関係で心強い発言を頂いたところですけれども,もしこういう制度が入った場合には,そういった協力をしていただくことが不可欠になるというふうに捉えております。   ただ,1点だけ,未成年後見人選任ということになった場合に,児相長又は縁組希望者による申立てが必要になりますが,その申立てが的確にされるのかというところが問題となります。申立てが縁組希望者任せということになってしまうと,今,皆さんがおっしゃられたような空白の期間が生じてしまいかねないという懸念はあるところでございまして,そこについても,未成年後見人とした場合に克服できるのかということは,慎重に検討する必要があると思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   最後の御指摘の点について何かありますか。 ○倉重関係官 今の点についてなんですけれども,今の部会の御議論の結果を踏まえますと,児童相談所長が申し立てる場合,1段階目だけ申し立てる場合も,縁組予定者が1段階目と2段階目を併せて申し立てる場合も,未成年後見人は選任すべきだというような御結論であるというふうに認識しております。   そうであれば,例えば1段階目の審判の申立てをした場合には,ある意味,その辺の確定を条件として未成年後見人を選任するという申立ては,併せてしたものとみなす的な規定を置くようなことも考えられるかと思うのですけれども,そういった規定を設けるということについて,何か御意見があったらお聞かせいただきたいと思うんですが。 ○大村部会長 今の点について何かございましたらお願いいたします。 ○水野(紀)委員 すみません。私も後見事務に詳しくないのですが,みなし規定で申立てだけあって,しかし必要ないろいろな様々な準備がされないということになると,多分困るだろうと思います。かといって逆に,みなし規定を置くからには,後見申立てのときに現在要求されている準備が全部そろわないといけないということにもなりかねません。そうすると,みなし規定を作ると,そういう漏れをなくすというメリットもある反面,元々,本来適時に申し立てられるべき申立てが,多少付随的なことの関係で,手間暇掛かかって適時にされにくくなる面もあるかと思います。それらを考慮した上で,もう少し慎重にお考えいただいた方がいいのではないでしょうか。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今のような御指摘でございますけれども,ほかの方々はいかがでしょうか。 ○磯谷委員 民法841条は,親権喪失等がなされた場合に,「その父又は母は,遅滞なく未成年後見人の選任を家庭裁判所に請求しなければならない」と定めておりますので,この規定との均衡も考慮しなければならないように思いました。 ○水野(有)委員 最初のところとも関連して,今の磯谷委員の話とも関係するのですが,裁判所として,未成年後見人選任というお話を頂いて,多少,率直に言って違和感があったのは,短期間に限定して,未成年後見人を選任することがいいのか,悪いのかというところがなかなか難しいというところです。機動性を考えると,床谷委員の御提案が機動的で,親権行使者が即付くということになります。他方,未成年後見人は,いろいろ御準備していただいて申し立てなくてはいけないと思われ,児相が迅速に申し立てられればよいのですが,そうでない場合に,申立てが遅れてしまうと,結局は親権の空白の期間ができてしまうことになるという懸念がございますので,その辺りも,それが本当にその未成年のためになるのか,ならないのかも含めて御検討いただければと思います。 ○大村部会長 今の問題につきまして,ほかの委員,幹事の方々,何か御意見があれば伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○浜田幹事 浜田です。   今の御指摘に直接沿うものかどうかはちょっとわかりませんが,児童相談所長が申立人となって親権制限の審判を申し立てることがございます。その審判が確定しますと当然,未成年後見人の選任申立てが出てくる。   最近は,親権制限審判の申立ての審理中に,先んじて未成年後見人選任の申立てを出すだけ出させていただいて,親権制限審判の確定から未成年後見人の選任までの間を極力短くするような運用を家庭裁判所でやってくださっていると認識をしておりまして,そのような形も考慮いたしますと,今,御心配の間があいてしまうということは,さほど心配にならないかなというふうな印象を持っております。 ○大村部会長 何かありますか。 ○水野(有)委員 いえ,結構です。 ○棚村委員 私も,親権の停止とかそういう申立てをしたときには,親権者が欠けるときには後見人の選任申立て,それから保全をやった場合には本審判の申立てを必ずするように言われていたので,準備をして,ある程度その後にどういう事項について何が問題になるかというのは,多分裁判所との間で協議をさせてもらい,裁判所のほうからもこういうような形でやりたいと伝えられることもありました。たとえば,保全でやるのもちょっと時間掛かるから,本審判の申立てもやってほしいとか,それから後見人の選任についても候補者がいるかとかという,事前の打合せをしたこともあるので,実務上は,むしろ必要がないものをいきなり準備するというよりは,多分,段階に応じて,この手続が進めば当然こういうようなことが必要になってくるという形で,関係機関と相談しながらできるのではないかなというちょっと感じがあるものですから,多分手続に手間取って,空白状態ができてしまうということにないような運用というものも可能なのかなという感じはちょっとしております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   実際上,それほど大きな問題は生じないのではないかという見通しが,何人かの方から示されたわけですが,それを受けて,水野委員が最初におっしゃった手続をどうするのかということで,事実上そうなるのならば,その事実上の進行に委ねればいいというのと,それから,後見人の選任の方も含んで,最初からやるということにしても支障ないというのと,どちらの話になるのかというところが,ちょっとまだ検討を要するところかと思います。しかし,現状認識としては,なんとか動くのではないかという見通しが示されているということかと思いますが,いかがでしょうか。 ○倉重関係官 ちょっと折衷的なところでこのような案はということで,一応議論のために示させていただくんですけれども,例えば児童相談所長が第1段階目の手続を申し立てたときは,もう児童相談所長がおよそ親権を行使しているので,そこに委ねればいいだろうと。一方で,養子縁組希望者が申立てをした場合は,これは2段階目もセットで申し立てなければいけないということになっておりますし,また,2段階目,要するにその人が養親として全然適格性がない場合には2段階目を先に切ってしまって,1段階目も切れますという規律にしてございます。   そうしますと,問題なのは,縁組予定者が1段階目を申し立てて,かつ1段階目が先に確定した場合,すなわち2段階目はまだ審理中という場面が問題になり得るんだと思うんですけれども,この場合には,家事事件手続法の166条ですか,保全で監護者を指定することができるということになってございます。   それで,1段階目の審判をすることによって未成年後見人がいなくなるような状況,親権者がいなくなるような状況ができる場合には,その段階では養子縁組希望者は養親としての適格性は全くなくはないという判断がされていることが前提になりますので,その方を監護者にすると。そうすれば,一応法律上の監護者は存在しているという状況が作れるのかなと思いまして,全くの事実状態に任せているという状態ではない状態を作れるんだと考えているんですが,そのような扱いはいかがでしょうか。 ○手嶋委員 今の御説明に関して,もう一回確認なのですが,第1段階目の審判を児相長が申し立てた場合には,児相長が親権を暫定行使できる状態にあるという前提でよろしいのですか。 ○倉重関係官 1段階目の児相長が申し立てる場合というのは,児相長はもう既に保護しているような状況か,若しくは養子,里親に委託している状態かいずれかかなと思いまして,児福法上で親権が…… ○手嶋委員 カバーされるということでよろしいのですか。 ○倉重関係官 カバーされているのではないかと思われるんですが,その点もちょっと含めて確認を。 ○手嶋委員 すみません。 ○山口幹事 よろしいでしょうか。今の点は,今,倉重関係官からお話ししたところは,多分,宇田川幹事がおっしゃっていたところからすると,必ずしもそうではなくて,民間あっせん団体などが,言わば申立てを依頼するみたいな感じになるのかもしれませんが,そういう場合もあるというわけでしょうから,児相長申立ての場合に,全て施設長の親権でカバーできるというわけではない,それは事務当局としての認識でございます。 ○大村部会長 いかがでしょうか。   先ほどの事務当局,倉重関係官のお話は,最初から手続を作るというのではなくて,問題が生じるときには保全で対応が可能なのではないかということで,全く事実状態に委ねるというわけではないという御趣旨ですね。 ○倉重関係官 はい。 ○大村部会長 いかがでしょうか。 ○棚村委員 家事事件手続法166条の監護権の範囲がちょっとよく分からない--適用の範囲が分からないですけれども,これはあれでしょうかね。養親希望者というのは,まだ法的には親になっていないわけですね,縁組が成立していませんから。第三者ということで,その監護者としての指定ができるという前提で,家事事件手続法166条を読んでしまってよろしいのですか。   ちょっと争いがあるもんですから,766条の監護者の指定とかについては,要するに父母だとかそういうことに限定されるという考え方と,第三者,つまり,祖父母とか里親とかを指定をしていいという考え方があって,東京高裁の平成20年の1月30日では,それは認められないという判断が出て,最高裁の判断が出ていないんですけれども,今,下級審では分かれています,そういう意味で監護者の指定ができるというのは,大丈夫でしょうかね。要するに,養親希望者に監護権を与えるための規定として,これを本当に使えるでしょうか,今の実体法で争いがあるのに,手続法で認められるか…… ○倉重関係官 766条の解釈があるのは認識した上でなんですが,166条1項を見ますと,「申立人を養子となるべき者の監護者に選任し」というふうに文言がなっておりますものですから,その解釈上はなるのではないかと思っていたんですが,むしろ御教示いただければ,教えてもらって。 ○棚村委員 いやいや,多分,家事事件手続法はですね,恐らくいろいろなことに対応できる手続法の規定としては,それは可能性はあると思います。ただ,実体法上は監護者に指定されても,どこまでの権限や責任を負うのか明らかではない……,いや,私がとにかく気にしているのはですね,監護権というのがそもそもどういう内容の権利を実体法上持っているのかが定かではないのではないか。   そうすると,親権と監護権が分属したりしたときの割り振りみたいので争いがありますよね。そのときに,例えば医療同意とか,子どもにとって重要ないろいろなことが養親になろうとする者ができるのかどうかがちょっと気になるものですから,ちょっと質問しました。   監護者とか監護権とかいった場合も,はっきりとした権限とか責任の分配が実体法上はないので,その人がそういう地位についたとしても,権限がどこまで,何があるかが分からないので,ちょっと倉重さんの御提案だと大丈夫かなと感じました。つまり,家事事件手続法上,そういう地位とか,そういう立場になれるとか申立てができるというのはいいと思うのですけれども,実体法上はっきりしない権限だとすると,後で法的に争いにならないか。つまり,争いが生じたときに,実体法上明確な規定がないだけに,大丈夫かなと思ったわけです。つまり,後見とか,あるいは親権というんだとはっきりしていますから,どういう権限を親権者が持っているか,後見人が持っているかというのは明らかです。しかし,監護者というのが実体法上の権利義務関係で大丈夫なんだろうかなというのがちょっと心配で,御質問させていただきました。 ○倉重関係官 一番重要なのは,多分緊急の医療同意の問題なんだと思いますけれども,ちょっとそれが監護権に含まれるかどうかというところにつきまして,ちょっと十分に知識を持っていないところでございまして,そういう問題があることは非常によく分かります。 ○大村部会長 今の棚村委員の御指摘の点は,親権と監護権の関係に関わる,かなり根本的な問題ですので,ここで直ちに判断するというのは難しいかと思いますけれども,御指摘は,事務当局のような対応でもちろんカバーできるところはあるけれども,疑義が生じるところもあるということだったのかと思います。   それを踏まえて更に,特別な手続を設けないとしても,一定程度までは対応できるのではないかというという場合の,その一定程度の範囲をもう少し明らかにしてもらうということにさせていただきたいと思います。   そのほか,いかがでしょうか。 ○磯谷委員 このたたき台の第1の2も議論の今範囲に入っていますでしょうか。 ○大村部会長 第1の2ですか。 ○磯谷委員 たたき台の第1の2の「特別養子縁組の成立の審判」の方は,これは後で。 ○大村部会長 それも一緒で結構ですけれども,すみませんが,今の親権行使の制限につきまして,宇田川幹事からの問題提起に対して,皆さんから御意見を頂戴しましたけれども,この点にについて何か更に御発言があれば,それを伺ってからということで,よろしいでしょうか。 ○磯谷委員 はい。 ○久保野幹事 すみません。確認なんですけれども,2段階目の審判について,特別養子縁組成立の審判に対しては,養子となるべき者が即時抗告ができるというふうに今回,提案内容に入っていまして,説明の方にあったかと思いますけれども,養子となるべき者が意思能力を備えていない場合には,法定代理人がこれを行うということになっているのではないかと思いまして,今の議論との関係では,未成年後見人が選任されていれば未成年後見人がするということになって,それ以外の選択肢を採るとすると,宇田川幹事から冒頭に御指摘もありましたけれども,その点はちょっと考えなければいけないということになるという理解で,まずよろしいですか。 ○山口幹事 今の御指摘のとおりだと思います。 ○久保野幹事 その点との関連でいきますと,差し当たり,やはり未成年後見人を選任するというのが最も適切ではないかというふうに今のところは考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今の点も考慮に入れて考える必要があるかと思いますけれども,ほかに,親権行使の制限につきましては何か御発言ありますでしょうか。 ○窪田委員 余り考えが固まっているわけではないのですが,ただいまの議論を伺っている中で,第1段階の審判が確定した段階で,親権を行使する者がなくなるので未成年後見を開始すると,ここまではっきりしていて,未成年後見は開始するけれども,では未成年後見人を誰が申し立てるのかという話と,誰が未成年後見人になるのかという話が,混沌としながら議論がされていた状態なのかなと思うのですが,ただ,基本的には第1段階の審判が確定すると,親権を制限するというしくみを実体法上の規定として組み込むわけですよね。そうだとすると,その審判が確定した段階で改めて申立てをしないと,未成年後見人を選任することができないという,2段階の仕組みにする必要は必ずしもないのかなという感じながら伺っておりました。   その点については,恐らく床谷委員の問題提起と同じなんだろうと思うのですが,その上で,誰を未成年後見人にするのかという部分については別途の問題があって,基本的には児相の所長であるとか,あるいは職業後見人であるとかと,幾つかの選択肢はあるのだろうと思います。誰が申し立てるかという話とは切り離して,裁判所は第1段階の審判の確定に際して,未成年後見人を定めなければいけないといったような規定を置くことは考えられないのかなと思いながら伺っておりました。   そのような形で規定することができないのかなというのは,一つには,いろいろな方から出ているように,未成年後見人を選任することは適切だということはあるのですが,一方で,もう最初から6か月間程度という非常に限定的なものであるということを前提とした上で,誰が申し立てているかによって,未成年後見人が誰になるか,かわってくるというような仕組みではなくて,むしろ,その6か月間の非常に短期間の場面に対応した未成年後見人を選任するという仕組みをうまく作ることはできないのかなと,ちょっと感想めいたもので申し訳ないんですが,思いながら伺っておりました。 ○床谷委員 ちょっと確認なんですけれども,今,6か月間ということをおっしゃいましたけれども,これは第2段階の成立するまで,選ばれた人が親権を行うなり,後見人とするなりするわけですよね。第2段階が例えば1年続くということであれば1年半とか,その成立するまでの間,その人がずっと子どものために働くということでいいんですよね。その間の例えば先ほどあった親権,法定代理権が必要な場合とか,同意権が必要な場合とか,あるいは扶養義務とかそういうことも含めて,その人に掛かってくるという理解でよろしいですか。その半年というのがすごく強調されると,いや,そこは違うような気がしたものですから,確認です。 ○山口幹事 窪田委員の御指摘も,原則的にといいますかという御趣旨だと思いまして,2段階目の手続が引き続き続行されていれば,その間,親権行使は制限されると,それはそのとおりでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   窪田委員,床谷委員の御指摘のように,改めて申立てをしないでも済むということも含めて,少し御検討いただくということにしたい思いますけれども,いかがでしょうか,よろしいでしょうか。 ○手嶋委員 裁判所の実務としての懸念は,要するになるべく親権の間隙を作らないようにしなければいけない,それは全く認識共通なのですが,手続の流れを考えてみますと,仮に第1段階目の審判申立てにより未成年後見人の選任についても自動的に申立てをしたとみなされるとしても,裁判所が第1段階目の審判となるべく同じタイミングで未成年後見人を選任しなくてはいけないとなりますと,そもそも第1段階目の適否の判断を示す前の段階で適格性がある前提の動きを始めなくてはいけないということになってしまいます。   そういう意味では,先ほど浜田幹事の御指摘にあったように,単位弁護士会に例えば推薦依頼をすれば,1日,2日で御回答を頂けるというような態勢が整備されるのであれば,スムーズに動くかとも思うのですが,選任すべき専門職のイメージもばらばらであるとか,それから親族も含めて考えるとなりますと,どの時点から裁判所は動き始めるのか,第1段階の審判をする前においてどういう調査をするのか,専門職団体への候補者の推薦依頼等も含め,どの時点で誰にどういう働き掛けをするのか,どういう選任イメージにするかという辺りがうまくイメージができないものですから,その辺も含めて御議論いただきたいと思っております。しかるべき態勢が整備されていれば,裁判所の実務としても動き得るのではないかと思っております。その点も含めて御検討いただければと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今の問題につきまして,ほかに何か御発言ございますでしょうか。   それでは,これは実際に制度を動かす上では重要な問題ですので,頂いた御意見を整理して,対応について改めて御提案を頂くということにしたいと思います。では,磯谷委員。 ○磯谷委員 別の論点になりますけれども,たたき台の3ページの2の(1)のアのところですけれども,特別養子縁組の成立の審判の,恐らく要件を定めている部分なのかなと思います。「家庭裁判所は,養親となる者と特別養子縁組をすることが縁組予定者の利益のため特に必要があると認めるときは」というふうに記載をされております。ただ,この段階で,この「特に必要があると認めるとき」という表現といいますか,書きぶりが適当なのかどうかというところについてちょっと疑問があります。   と申しますのは,もう既に縁組予定者とする処分の審判というのが出ていて,そこで特別養子縁組を成立させることが,その子の利益のために特に必要があるという認定をしていると考えられますので,第2段階のところで問題になるのは,養親候補者さんと子どもとのマッチングの問題になると思われます。そうすると,特に必要があるというよりも,むしろマッチングとして適切,あるいは適当--ちょっと表現は私も分かりませんけれども,そういった形で記載する方がしっくりくるのではないかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○山口幹事 御指摘のとおりかと思いますので,検討させていただきたいと思います。ありがとうございます。 ○大村部会長 これは,現行法ベースで書き始めたので多分こういうことになっているのだろうと思いますので,実質を踏まえた形で表現し直すことができるかどうかというのを御検討いただくということでお願いをしたいと思います。 ○棚村委員 この要保護要件については,「特に」というのが付いているのですけれども,どこの国でも特別養子とか,養子縁組の成立許容基準みたいなものが大原則として入っているわけです。だから,もちろんこれ自体,2段階に分けたから必要ないという議論もあるかもしれませんけれども,2段階に分けようが,1段階にして包括的なものにしようが,やはり子どもの利益になるということが大原則になっているので,ちょっと子の利益要件を,現行の規定そのものなんですけれども,「特に」は取ってもいいかもしれませんけれども,子どもの利益のために必要であるということ自体は,特別養子の全ての手続について共通の指導原理ということで,どこの国でもあるので,2段階に分けたからこの部分では必要で,この部分で必要なくなるという感じではちょっと理解をしていなかったのでのですが,むしろこういう形で,どこかにきちんと明記されているというのが必要なんですけれども,多分今回の2段階手続になったということでも,全体を通して子どもの利益のために判断をしているというところは,多分1段階でも2段階でも同じではないかと思います。   その辺りのところが,ちょっと私も余り詳しくは考えていなかったんですけれども,現在の規定ぶりについてどこに置くかとか,「特に」は要るのか,要らないのかとか,そういう辺りはいいんですけれども,子どもの利益ということについては,やはりかなり共通する原理,あるいは指導理念というか,そういう理念として置いておいてもいいのではないかというのはちょっと私の意見ですけれども,すみません。 ○窪田委員 棚村委員のおっしゃることは,非常によく分かるのですが,恐らく磯谷委員から出た御指摘というのは,その前の部分で,「養親となる者と」これこれ「縁組予定者の利益のため特に必要があると認めるときは」と書いてあるものですから,特別養子縁組の成立のために特に必要があるかどうかというよりは,何か,この「養親となる者」との関係で書きぶりになっているということで御懸念があったんだろうと思います。ちょっとその点は検討していただいた方がよろしいように思います。 ○大村部会長 磯谷委員の御指摘は,今,窪田委員がおっしゃったようなことだろうと思いますけれども,他方で棚村委員がおっしゃっているのは,子の利益のために特に必要であるというのは,手続全体を貫く基本理念なのだから,それが全体に及んでいるんだということが維持できるということも必要ではないかということだったのかと思います。   何か一般的な形でそれを掲げるというようなことも考えられるかと思いました。 ○床谷委員 すみません。このたたき台の第1の1の(1)のアのところに,定義規定的に条文を最初に置きますよね。これが最初の条文にはあって,今,棚村委員がおっしゃっている2のところの(1)のアに出てくるやつは,別個の条文として必要という意味ですか。   この817条の2にかわる頭の規定のところに,その子の利益のために特に必要があるという,そこの部分に出ているけれども,それとは別に,改めて「縁組予定者の利益のため特に必要があると認めるときは」という条項が別の条文で必要であるというのが棚村先生の意見ですか。 ○棚村委員 元々,要保護要件というのは定められていて,問題になっていたのは,やはり監護が著しく困難とか不適切とかというのと一緒になっていたので,本来であったら,どこの国も,特別養子縁組は子どもの利益,子の最善の利益になる場合に成立させることができるとか,そういう条文になっているわけです。その辺り条文の整理をされていくときに,そういう基本的な原理を定める条文を作っていただくのであれば,それはそれでいいし,それからそうでなくて,こういう2段階の手続を創設するために作るのであるとしても,そのことがよく分かるようにしないと,1段目と2段目の手続で子どもの利益は必要がないんだという,そういう誤解を生まないような文案にしていただければという提案です。 ○大村部会長 床谷委員がおっしゃったのは,1の(1)のアというのが一般的な規定としてあるのならば,それによって基本原理は示されているのではないかと,そういう御趣旨ですね。それに対して棚村委員の方は,1の(1)のアと,それから先ほどの御指摘の2の(1)のアは,言わば現在の条文を書き分けた形になっているという,そういう御理解なのかと思いますので,ちょっとその辺りを整理していただくということかと思いますけれども,それでよろしいですかね。 ○棚村委員 はい。 ○大村部会長 床谷委員,いかがですか。 ○床谷委員 そこは整理していただければ結構かと思います。   念のために伺いますと,先ほど,ここのところの磯谷先生の御意見のところで,特別養子縁組を成立させることがというところにちょっと疑問を持たれたということでしょうか。 ○磯谷委員 私は,まず基本原理として,子の利益のために特に必要がある場合に特別養子縁組をするというところは全く変わらないのですけれども,このように2段階に分け,特に1段階目で,特別養子縁組を成立させることが,子どもの利益に特に必要だというところのまず認定が終わっているという状況を踏まえて,第2段階というのは,むしろ特定の養親と養子候補者との間のマッチングの問題だと考えると,そこの段階で「特に必要がある」という,ある意味ハードルの高い要件を持ってくる意味があるのか。   逆に言えば,では「特に」までの必要がないという場合にはやらないのかということにもなりかねませんので,ここは,例えばマッチングが適当であることを判断するような,そういうふうな要件立てにしてはどうかなというのが私の意見でございます。 ○大村部会長 今の点につきまして,よろしいですか。 ○床谷委員 分かりました。 ○高田委員 確認ですけれども,磯谷委員の御発言ですと,成立要件としては,もう特に必要があるという要件は要らないという,実体法上の整理が可能だということでしょうか。 ○磯谷委員 私の理解では,今回はこのプロセスで,結局,特別養子の成立について判断をしていく,その第1のプロセスの方で,当然ながら子どもの利益のために「特に必要がある」というところがまずは判断されるものだろうというところで,そこは,ですから,あんまり変わりはないのかなと理解しております。 ○大村部会長 磯谷委員の御指摘は,2の(1)のアのような書き方をしていると,特定の養親候補者が,特に他の人に比べて,この人になることが特別によいのだということが言えないといけないのだという誤解を生ずるのではないか,そういう御指摘ですね。 ○磯谷委員 そうです。 ○大村部会長 事務当局の方も必ずしもそう考えているわけではないので,実態に適した書き方を工夫したいとお答えになったと理解しておりますけれども,その上で整理をしていただくということにしたいと思いますが,よろしいでしょうか。   ありがとうございます。 ○山根委員 別でよろしいですか。 ○大村部会長 結構です。 ○山根委員 たたき台の2ページの真ん中辺りのエなんですが,実親の同意のところで,家庭裁判所に書面を提出して,覚悟の意思を明確な形とするということは理解できますが,その書面の提出が同意したということの証拠というふうになるということよりは,それまでの経緯というか,十分に実親がこの制度の理解をした上で書いたものであるというようなことを確認できるものであるべきだとも思いますんですが,書面提出までの経過が十分に充実したものであったというようなことについては,この文言にある「事実の調査を経た上で」という,この文言に書かれているという理解でよろしいんでしょうかという質問です。 ○山口幹事 正にそのとおりでございまして,ただ,何にもないのに紙だけぱーっと出して,それでもう撤回制限が掛かりますよというのではやはりまずいだろうということで,御指摘のとおり,「事実の調査を経た上で」というのを入れているところでございます。 ○山根委員 それは,口頭で確認を取るときも,同じ理解でよろしいんですよね。書面だけではないですよね,確認を取る。 ○山口幹事 そうですね。審問期日においてということで,そこには規律の文言上は「事実の調査を経た上で」審問期日においてというふうにはならないと思うんですが,審問期日においてはいろいろと事情をお聴きになるというふうに思いますので,そこは当然そうなんだろうという理解でおります。 ○木村幹事 すみません。今の議論との関係で質問させていただきたいのですけれども,まず,今のお話の内容について反対解釈すれば,単に書面で同意があったと場合については撤回ができることとなり,パブリックコメントなどを踏まえて中間試案とは異なる提案をされたという趣旨でよろしいでしょうか。 ○山口幹事 そのとおりでございます。 ○木村幹事 それとの関係で,部会資料の7-1の(1)の(イ)のaのところについて質問させていただきたいのですけれども,実親の同意について,「養親となる者を特定して,又は特定しないで」という文言があります。まず1点目の質問ですが,審判手続外で同意が行われた場合については,養親となる者を特定しない形での同意が可能であるという理解でよいのでしょうか。   というのは,そもそも,中間試案では,審判前の同意についても撤回制限を掛けることが検討されており,その際には養親を特定しない形での同意が前提になっている可能性が十分あり得るかと思っていたのですが,今回,その案は採用しない上で,かりに同意が審判前にされた場合,その場合についても養親を特定しない形での同意が可能なのかという質問です。 ○山口幹事 はっきりと,審判前の同意についての撤回制限というのを今,要綱案たたき台から落としておりますので,その点について態度を明確にしているというわけではないというのが,一番厳密なお答えの仕方かなと思います。   ただ,その上で,やはり従前の議論では,御指摘のとおり,審判前の手続の同意撤回制限のときには,それも白地同意をよしとしようというふうに考えてまいりましたので,私どもの考えにはそうあるんですが,では,この規律によって審判前の手続も,審判前の同意についても白地同意が許容されるという規律が含まれているかと言われると,そこまではちょっと申し上げられないのかなというふうに思っております。 ○木村幹事 もう一点伺いたいのが,児相長が第1段階を申し立てたときには,養親の人が特定されていない可能性があるので,白地同意を採る可能性は十分考えられると思うのですけれども,養親希望者の人が申し立てた場合については,申立人として養親希望者という存在がいるにもかかわらず,実親の方は特定をしない形で同意をすることが許容されているのか,申立人として養親希望者がいる場合については,実親は飽くまで特定された養親を前提に同意をしなければいけないのか,どこまでの趣旨がこの規定に含まれているのか,教えていただければと思います。 ○山口幹事 今のような場合でも,実親さんが養親を特定しないで同意しますというふうにおっしゃったときに,それを駄目ですということはないのかなと思いますので,そのような場合には白地同意として扱うということでよろしいのではないかと思っております。 ○木村幹事 それは,裁判所における手続の中で,どのように同意を取るか自体が,実親の希望や実親の意向によって変わり得るということでしょうか。 ○山口幹事 ということなんだろうと思います。ですので,同意しますというときに,その趣旨はどういうことですかと。この養親さんであれば同意しますが,そうでなければ同意しませんということなのか,この養親さんでもいいですし,ほかの方でもいいですという趣旨なのか,そこを確認しないといけないのかなというふうに思っております。 ○木村幹事 ありがとうございます。 ○大村部会長 よろしいですか。 ○木村幹事 はい。今回のパブリックコメントで,白地同意について疑問を呈されたような意見も少なかったのですが,諸外国,比較法的に見れば,白地同意を認めるということは,ある意味かなり思い切った改正になるとの捉え方もできそうです。また,必要とされる場合や状況に限定して白地同意を認めるという方針を採るのか,基本白地同意でもどちらでも構わないというデフォルトルールを作るかによっては,実務のやり方にも大きな影響が出るかもしれないと考えましたので,その点をお伺いしたかったのです。   それとの関係で,結局のところ,今回,第1段階と第2段階を分けるという手続を想定したうえで,第1段階においては,飽くまで養親予定者になる--何ですか,すみません,名前が。養親…… ○山口幹事 縁組希望者でしたっけ,縁組予定者でしたっけ。 ○木村幹事 縁組予定者ですね。つまり,第1段階では,実親との関係を判断して,縁組予定者審判を決めるということになっています。したがいまして,理論的に突き詰めると,第1段階では養親希望者がどういう人かということは全く考慮される必要がないこととなり,白地同意というのが当然許容できると理解できると思います。とは言いましても,第1段階と第2段階を分けるということによって,第1段階でおよそ養親希望者という存在自体が,単に申立人として登場してくるにすぎず,実際的な審理の中では,およそ何ら考慮されない者と完全に位置付けていいのかどうかという点にも関わると考えましたので,さきほどのような質問させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今のご発言は,先ほど事務当局の方から,どうなるのかということについて一定の説明がありましたけれども,それはより明確に示された方がいいのではないかという御指摘を含んでいますね。 ○木村幹事 はい,そうです。 ○大村部会長 そういうことも含めて,それは明らかにした方がいいのではないかということかと思いますけれども,その辺りについては,ほかの委員,幹事,何か御発言ありますか。 ○久保野幹事 すみません,久保野です。   今のに続けての質問ということになるんですけれども,縁組希望者の申立てによって1段階目の手続がされている中で,白地同意がなされたということがどういう意味を持つのかということをちょっと教えていただきたいのですけれども,申立人たる縁組希望者との間で成立までいけば,白地であることが実際に意味を持つことになることはないと思うんですけれども,縁組希望者が申し立てているけれども,その審理中に,適合性の意味での適格がないとなれば,確か第1段階も確定まで至らないという立て付けになっていってという中で,白地であるので,ほかの人との関係でも同意が採れているということが意味を持ってくるというのはどういう場面かというのを,ちょっとまず確認をさせてください。 ○山口幹事 今,御指摘ありましたように,縁組希望者が1段階目の手続を申立てをしますと,その場合には2段階目の手続も申し立てないといけませんというルールになっています。1段階目の審判が出る前に,2段階目の要件が充足されていないということが明らかになれば,2段階目の手続の申立てを却下し,1段階目の手続の申立ても却下すると,こういうことだろうと思います。   ただ,1段階目の審判を先に事情があって出しましたと,確定しましたということで。ただ,引き続き2段階目の審理を続けていますと,この場合には,そうですね,その続きで,1段階目の審判が確定して,2段階目の審理をしていて,2段階目の審理をやったけれども,やはりちょっとこの親さんとはうまくいかないねということで,その後になって2段階目の手続を却下すると。そうなりますと,1段階目の審判の効果というのは残っておりますので,最初に申し立てた方とは別の方が,1段階目の審判を利用して2段階目の手続を申し立てると。この場合には,白地同意の意味も出てくるのかなと思っております。 ○大村部会長 いいですか。 ○木村幹事 まずは一旦。 ○幡野幹事 先ほど木村幹事から,白地同意というのはその比較法的に見てまれであるという御発言があったのですが,フランスでは,取り分け年少者の場合,生まれてすぐの子どもから一定年齢の子までは,子どもの取引を防止するために,あえて白地同意を強制しております。そのような制度もありますので,一般的に白地同意が望ましくないとは必ずしも言えないという点を補足させていただきたいと思います。 ○手嶋委員 先ほどの山口幹事の御説明と関連して,1点確認なのですけれども,補足説明の17ページの(注1)に,予定される審判主文のイメージを記載していただいているのですが,特定の養親候補者が申し立てる場合の第1段階の審判の申立ては,多分この後に書いてある「事件本人を【養父となる者】及び【養母となる者】との間の特別養子縁組の縁組予定者とする。」という審判を求める申立てになるのだと思うのですが,白地同意がその過程でなされた場合は,これを特定しない形の主文の審判がされるというイメージでよろしいのでしょうか。 ○山口幹事 そのとおりでして,それが(注1)の1行目の終わりぐらいから書いている「事件本人を~縁組予定者とする。」という主文のイメージでございます。 ○手嶋委員 そうすると,同意の内容によって効力が規定される手続としてイメージされているという理解で正しいということですね。 ○山口幹事 そうですね。 ○手嶋委員 分かりました。 ○水野(有)委員 そのように考えると,多分,審問や調査の在り方がどうあるべきかというのがとても難しくなります。   木村幹事がおっしゃったように,具体的な事件では,やはり申立人のことを念頭に置くと思うので,そのときに,実務としては,申立人を想定した問い方しかしないというやり方も,論理的に言えばあり得ると思うのですが,このような白地同意を前提にした審判や主文が変わるということまで想定してしまうというのはイメージしにくいところがございます。   申立てにおいて,白地同意の申立てがないのに白地のところまで調査するのかとか,審問するのかとかといった審理のイメージが,少し分かりづらくなっています。ある意味,もう特定した人の申立てだと申立ての範囲も特定され,同意を確認するのも特定の人についてだけと言われたら分かりやすいのですが,同意のし方によって主文が変わるというのは,多少イメージしにくいというのを申し上げさせていただきます。 ○山口幹事 今の点,ちょっとよろしいでしょうか。   1段階目の審判は,マッチングの問題というよりは,その子どもを言わば実親から切り離すことが適切なのかどうかを審理するというのが1段階目の主眼でありますので,まだ特定の養親を念頭に置いてというのは,むしろ余り想定されていないのかなというふうに考えております。ですので,特定の方を念頭に置いた調査ということにはならないのではないかなというふうに思っているんですが,何か変でしょうか。 ○水野(有)委員 そうだとすると,申立て自体が養親候補者を特定しない申立てを想定されているのですか。 ○山口幹事 ええ,正にそうでして,1段階目の申立てというのは,基本的な手続としては,養親が誰であろうと,このお子さんは特別養子縁組を成立させた方がいいお子さんでしょうかということを審理の主眼に置くと。ただ,同意によって縛りが掛かってしまう場合には,主文もそうやって縛りを掛けないといけないでしょうねと,こういう発想で,むしろ白地同意的な,どの養親さんとの関係でもこの子は特別養子縁組をした方がいいという方が,むしろスタートなのかなというふうに思っております。 ○水野(有)委員 そうだとすると,従前同意とかその撤回とかが余り問題とならない事案では,特定の方を前提として審理が進んでいて,今回でもそういう問題がない方の場合は,従前の実務は余り変わるものではないという理解をしていたのですが,そういう意味では,従前の実務とは発想が変わっている部分もあるという御理解での御提案ということになるのですか。 ○山口幹事 何というんでしょうかね。余り問題がないケースは,恐らく同時的に並行して審理をするんだろうと思います。同時に並行して審理しているのを一つと見てしまいますと,もう従前の実務と何も変わるところはないのかなと思っております。   ただ,そこを分析的に見て,1段階目の審理ではこれをやっているよね,2段階目の審理ではこれをやっているよねって見ますと,やはり今の実務とは違っていまして,1段階目の手続は,子どもが養子縁組,特別養子縁組をするのに適しているのかどうかで,2段階目の方の手続は,この養親さんとこの子とのマッチングが適しているのかどうか,これを審理するということですので,そう分析的に見ると,やはり発想は変わっているのかなと思いますけれども,事象を見れば,それは現在の実務とやることは変わらないだろうというふうに思っております。 ○水野(有)委員 ありがとうございました。 ○杉山幹事 すみません。ごく基本的な質問なのですが,同意を取る段階で,養親となる者を特した場合に,第2段階までの審判で,マッチングの結果裁判所がこの人はやはり適当でないということで却下することも許されるか,あるいは裁判所の判断まで拘束するものなのでしょうか。   それとの関係で,もしこのような同意を事前に取っておきますと,第1段階もそうですが,特に第2段階の申立てをすることができる人が限定されてしまうことになり,ほかの養親となりたい人は申し立てることができなくなってしまうのでしょうか。つまり,同意の意味といいますか,効力について教えていただければと思います。 ○山口幹事 まず,2個目のお尋ねの点ですが,それはそのとおりでして,1段階目の手続のというか,同意をするときに養親を特定して同意をされたという場合には,ほかの養親との関係では1段階目の審判というのは使えないということになろうかと思います。   一つ目のお尋ねのところは,1段階目で養親を特定して同意をして,そうしますと,2段階目の手続では特定された養親との関係でしか審理する意味はないということになろうと思います。その特定された養親とのマッチングがうまくいかなければ却下となり,しかも1段階目の手続も利用できなくなってしまうと,そういうことかなというふうに思っております。 ○杉山幹事 ただ,同意に対象となっていないほかの人も,別の理由,例えば虐待などを理由として第一段階から申し立てることはできるということでしょうか。結局,同意があったということでは申し立てられないから,第一段階からほかの理由で申し立てることしかできないという理解でよろしいでしょうか。 ○山口幹事 はい。そうなんですが,ここはまた難しいところでして,そこまで1段階目で審理されているといいのですけれども,恐らく養親を特定した同意がされているケースでは,同意不要事由,虐待とかがあるとかということは審理せずに審判がされるということになるのかなというイメージでおりまして,そうなりますと,同意不要事由があるというふうに主張した方は,もう一回,1段階目からやらないといけないのかなというふうに思います。 ○杉山幹事 分かりました。 ○宇田川幹事 この同意のところに関連してなのですけれども,先ほど山口幹事からも御説明があったところで,今回,第1段階目では特定の縁組希望者を念頭に置かない形で養子の適格性を問題にするということで,同意というのも基本的には特定の縁組希望者を前提としない形で確認するのが基本というように,理解したのですけれども,現在の実務では,養親となる者が申し立てて,その養親となる者の情報も背景にして,家裁調査官が説明し,同意を取得していると思うのです。   今,事務当局の方で考えられているのは,同意の取得に当たっては,特に特定の養親候補者を前提とせずに,広く縁組とすることに同意されますかということを基本的には聴いていく,ただ,例外的に,実親の方がやはりこの方でないと駄目ですというような話になったときに初めて制限されるという,そういう理解になるのでしょうか。 ○山口幹事 すみません。そこは,ちょっと私の言い方がまずかったなというふうに思っておりまして,私が申し上げたかったのは,1段階目の手続の理念といいますか,その理念というのは,特定の養親を想定しないものなんですということを御説明したかったところです。   同意の取り方について御説明したつもりはありませんで,実際,では同意の取り方はどうなるのかと申しますと,非常に実際的なことを考えますと,これまでの部会の議論でも,養親候補者が全く見当も付いていないのに,手続が始まるということは余り想定できないのではないかというふうに言われていたところだと思いまして,そうなりますと,実務の実際は,恐らく白地で同意を取っておくというよりは,この養親さんどうでしょうかという形で取るのが,むしろ実際のところはそうなのかなと思います。ただ,1段階目の審判の理念系はどうかと言われると,養親を想定していないものであると,そういうことかなというふうに思います。   すみません。何か宇田川幹事は腑に落ちて……,私の説明はちょっとまだ下手なのかもしれません,すみません。 ○窪田委員 今,宇田川幹事から出たことと同じことになるのだろうと思うのですが,基本的には,事実の調査を経たりして,いろいろな説明をした上でという部分に関しては,特別養子縁組というものについて,やはり実親関係は切れるんだということをきちんと分かってもらった上で同意を得るということだったのだろうと思います。   私自身は,今回のこの部会資料の7-1を見たときに,「養親となる者を特定して,又は特定しないで」というのは,あってもなくてもいい文言なのかなと思いつつ,つまり同意については特別養子縁組の成立についての同意ということなのだろうと考えておりましたが,「又は特定しないで」ということで,白地同意についてもむしろ有効であり,それが本来2段階で分けるという趣旨からは,その理念からいってもそちらの方がデフォルトになるだろうということで理解をしておりました。   ただ,今までお話を伺っていると,養親となる者を特定した場合には,この人との関係では同意はあるけれども,ほかの人との関係では同意してないよということを認めることになるのですが,それは一体何なのかというのが,やはりよく分からない気がいたします。つまり,代諾で養子縁組をするというような形であれば,正しく相手が誰かということは非常に重要なわけですが。   特別養子縁組で,この1ページでいうと,(1)のアの(ア)ではなくて,つまり「虐待,悪意の遺棄その他子の利益を著しく害する事由がある」とまでは言えないけれども,しかし,(イ)で「子の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別な事情がある場合」という客観的な要件も認められる場合で,しかし,この人との関係では同意するけれども,ほかの人との関係では同意しないよというのをどう説明するのかというのが,やはりよく分からない気がして伺っておりました。あるいはもう皆さん共有されているのかもしれませんが,もう一度,その点について御説明を伺えたらという気がいたします。 ○山口幹事 よろしいでしょうか。   そこ,確かに,なぜ特定の養親を指定すればそこに拘束されるのかという問題はあろうかと思いますが,それは,ちょっとこの説明の仕方もよろしくないかもしれませんが,あえて申しますと,基本的には同意しないのであると。ただ,この養親との関係であれば同意しますというときには,やはり特定された養親以外の関係では同意がないというふうに見るんでしょうから,そう考えますと,特定の養親についてだけ同意した場合にはそれに拘束されるという説明もあり得るのかなというふうに思っております。 ○岩﨑委員 大分前から私は,申し立てること自体が養親でなければならないとする状況がずっと今まであって,児童相談所長の申立てについては問題なく了解されたんですが,私たちが言う2段階に分けてやっていただきたいというのは,実の親が子どもを育てられないという,その理由が何であれ育てられないという状況を,実の親を含めて,もう一度明確にしてもらうことが第1段階の審判の意味だと思います。私の同意をもってこの子どもを養子に出していただきたいという,本来はそういう母親がいるので--親がいるので私たち探すわけです。だから,どうして実の親の申立てが認められないのか,ずっと私は疑問に思って,ここ数回参加してきたんですけれども。   実の親が申し立てることができなければ,例えば児童相談所長がそこを引き受けて,児童相談所に相談に来た母親がこの子どもの養子縁組を相談しているが,それはきちんと特別養子であることを理解させていて,一応同意をしている,児童相談所でいいマッチングをしてもらいたいというようなケースを,児童相談所長と共に申し立てるとか,あるいは相談を受けたあっせん団体の長が,その母親と一緒に裁判所に行って,この子どもの特別養子縁組の同意が白地同意も含めて,第1段階の審判がおりると,この子にとって一番ふさわしい人を選んで措置し試験養育期間を経て,2段階目の申立て,当然特別養子は成立するというふうに考えたいんですけれども,やはりどうしても実の親そのものが申し立てるという形はあり得ないのでしょうか。 ○大村部会長 その話は,今の話の延長線上に出てくる話だということは分かりますが,取りあえず,特定の養親を想定した同意がされているときにどうするかという話を先に片付けさせてください。 ○岩﨑委員 はい,すみません。 ○棚村委員 私は窪田委員と近い感じで考えているんですけれども,まず家裁で,結局,白地同意をしている,誰でもいいからもう特別養子にはしますと,実親との関係は切れてもいいんですということを言った場合は,ほかの複数の候補者というか,当てがあったとしても,結局,その審判は有効に第1段階のものが生き続けてて,それで次に具体的な養親希望者との親子関係の成立の手続に移れるわけですね。   ところが,特定の方を,要するに養親候補者として挙げてしまうと,そこに拘束されてしまい,仮にその方が適当でないという事態が起こってしまうと,前の審判は生かされず効力を失うことになる。要するに,後の方には使えないとなるわけですね。これは少し工夫した方がいいんじゃないかと思います。せっかく縁組成立手続を2段階に分けたということは,養子になるにこの子はふさわしいというか,実親との関係は切れるんだと,こういう第1段階の審判をしたということが重要であって,特定の養親との関係でこうなるんだという,従来のもちろん同時にできるものはいいとしてですね,果たしてそれでいいのだろうかと思います。   そういう流れの中でいうと,この子は,養親候補者として,養子になるべきなんだという判断を第1段階でしているわけですよね。これが誰となるか,ならないかということよりは,むしろなった方が,養子にはなるにふさわしいという判断がなされているわけです。そこで,第2段階で,では具体的に養親となるべき人と親子関係がうまくいくかどうかというところが判断の対象になるわけです。   そうだとすれば,第1段階の審判で何が確定され判断されたのかということについて,もうちょっと工夫し考えてゆかないといけないのではないか。このままいくと,先ほど水野(有)委員もおっしゃっていたんですけれども,審問とか調査で同意をどう確認するかというのも,白地か,そうでないかということで随分大きく変わるような判断になってしまいます。何か白地にすればすごく楽に進んで,第2段階でもそれがまた使えるみたいな,非常に有利な話になってしまうわけです。   しかし,私たちがこの手続を2段階に分けるということのメリットは,実親との関係を切ってですね,同意だとか,そういう面倒になりそうなものはそこで取っておいて,養子になった方がいいんだという養子縁組の適格性みたいなことを確定させたはずです。それから,具体的な養親さんとうまくやっていけるかどうか,子どもの利益になるんだという二つの手続を構想して,分けたわけです。場合によっては,これは1段階,2段階というふうに分けたわけなので,白地にして,養親候補者が例えば確定していない段階でも探せるというメリットはあるわけですけれども,もう一方でいうと,どなたかいらっしゃったとしても,その方と結び付きがあり得る,それは可能性としてあるわけです。   そうだとすると,白地かどうかということで,こういうふうにきっちり効果まで分けてしまうと,前のものが白地でない限りは,そうでない場合,特定の方であればそれが生きてこないというか,もう一回やり直しということになりかねない,その辺りちょっと工夫ができないのかと思います。特に,連続性を考えながら2段階に分けたということを私自身は支持しましたので,うまく制度設計をしないと。何か,むしろ白地にして,それから家裁もそうですけれども,白地ということになれば,確認する内容が,とにかく誰でも何でもいいですから,とにかく私は養子縁組したいというので,窪田先生おっしゃったように,実親との関係が切れて,特別養子というのはこういう制度なんだと,それに同意されますよねということの確認なので,そういう意味では,特定の養親候補者の人がいるか,いないかで,そんなに第1段階は違わないのではないかと思うのですが。   ところが,効果としては,白地でないと,特定の方になるとなかなか次の手続がうまくいかなかったり,何かがあるとちょっと問題が起きるというのは,再検討していただけるのであれば,少し考えていただきたいと思います。 ○水野(有)委員 理念的にどうあるべきかの問題は,窪田委員,棚村委員の御意見があり,高田委員もうなずいていらっしゃいますが,家裁の現在の実務をまずお伝えした方がいいかと思いました。今ではもう特定の方が養親候補者として想定されており,かつ,調査のときに同意を逡巡されることもありまして,事の性質上,説得するのはもちろん適当ではないのですが,ただ,こういう人がいて,こういうふうに愛情も持って育ててくれるというのを,どこまで特定するかは別として,ある程度限定してお話をすることによって,現実に同意をされるということが率直に言ってございます。   そうなると,その同意を特定同意と見るのか,きちんとしたいい方がいるならという,ある程度抽象化して見るのかもとても難しく,実際あるものは白地同意でもなく,特定の同意でもなく,その中間のようなものなのです。では,それを,今おっしゃる白地同意で扱うのか,それとも特定の同意で扱うのかがとても難しいというのが実務でございます。現在の実務がそうだということを踏まえて,御議論いただきたいと思います。   本当は白地同意をシンプルに取れる方であれば,取った方がいろいろな意味でいいのだろうと,私も思ったのですが,ただ,そうなると,同意を取れる人の幅は少なくなるのかもしれないと思うと,それがいいのか,悪いのか,どっちなのかというのが率直な感想ですので,それを踏まえて,皆さん御議論いただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○磯谷委員 私も,元々今回の改正の話は,社会的養護の中で特別養子を使うという話から来た,そしてそれは多くの場合児童相談所が関わっているというふうなことからすると,白地のものが基本的にはむしろデフォルトになるべきだと思っているんですけれども,ただ反面,やはり今,水野判事がおっしゃったように,現実にはですね,特定の方だから同意ができるということがやはりあるだろうと思います。   特に,私が聞いたのは,地方において未成年の女の子がお子さんを授かったんだけれども,とても育てられない。そうすると,やはり地縁,血縁ではないですけれども,そういういろいろなコネで,この人だったら安心だからという形でみんな納得して,それで特別養子縁組に至ったというものを聞いたことがあります。そうすると,そういったニーズを受け止められるような制度にならないと,かえって結局,そういったところが特別養子から漏れていくことになりかねないなと思います。ということで,私としてもやはり,養親となる者を特定した同意というのは受け入れざるを得ないし,その場合には,それを前提にした手続にならざるを得ないとは思います。   ただ,やはり難しいところはあって,また別の方からの話だと,例えば特定の人というわけではないんだけれども,近い人は困るというふうな言い方をされるようなことがある。ただ,これも気持ちはよく分かるわけですよね。人によっては,妊娠そのものをなかったことにしてしまいたいという方もいらっしゃって,そういう場合,お子さんが近くに住んでいるということ自体がとても耐えられないという方もいらっしゃるようなのです。   しかし,実際に養子に出した後,養親子のご家庭も当然ながら転居の自由はあるわけで,実親さんの近くに来てしまうということも,それは避けることができないということを考えると,そこまで受け止めるのはなかなか難しかろうと。そうすると,やはりデフォルトは白地で,しかし,今の,先ほど申し上げたような,もう本当に特定の方との関係で形成されてきたお話という場合には,例外的にそういうものの同意という形を採ると。ちょっとどう定めるのか,私も知恵がありませんが,そういう仕組みにせざるを得ないのではないかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   様々な御意見を頂きましたけれども,根本的なところは,2段階の手続を今考えているわけなんですけれども,これをどのように位置付けるのかということについて,皆さんの間にやはり差があるように思います。あるいはどのようなケースを典型として考えるかということについて差があるということなのかもしれませんが。   いずれにしても,1段目と2段目が切り離された形で行われるものが含まれる一方で,一度に進むのも含まれる。それから,白地で構わないというケースもあるだろうし,どうしてもこの人でないと駄目だというケースもあるということだと思いますので,ハイブリッドな性質を持つということを共通の認識にしつつ,では,実際にどのような形で線を引くのが一番いいのかということを考えていくということか思って伺っておりました。   今,皆さんの中からは,白地が原則なのではないかという御発言がありましたけれども,木村幹事は,最初は,そうではないというところからスタートされたと思いますが…… ○木村幹事 はい,そうですね。理論的に白地同意が原則であるという考え方が一方ではありえますが,他方で,もう一つは,現行の特定養親希望者がいる形に児相の方が加わるという形を念頭に置いていたのであれば,児相長が申立てた場合においてのみ白地同意というパターンもあり得ると考えておりました。一番初めに質問させて頂いた時点では,白地同意をデフォルトルールとして認めて良いかどうかという点について,中間試案の段階で議論が十分されていたのかどうか,私自身が十分に整理して理解できておらず,個人的には,特定同意も当然可能であり,むしろ白地同意を例外的に児相長が申立てたときだけに認めるなどデフォルトと位置付けない考え方を前提にしておりました。しかし,今の委員や幹事の方々のお話を聴いていると,おそらくそうした理解は少数派のようだったようです。結局のところ,白地同意が原則ないしデフォルトという位置付けを出発点とすればよいのでしょうか。 ○大村部会長 そこはなかなか難しいですね。第1段の手続の中で白地でできないと困る,だから,白地でできるということが想定されているわけですけれども,しかし,特定されているという場合があるので,それをどう位置付けるのかということなかと思って伺いました。   実際上,どっちが主になるのかというのはちょっと分からないところもありますが,研究者の委員の方々は,白地がデフォルトだとおっしゃった方が多かったように思いますけれども,実務家の方々からは,いや,現在の実務を考えると必ずしもそうではないという御発言もあって,なかなか着地点を見定めるのは難しいところがありますが…… ○久保野幹事 ごめんなさい。ちょっと無理に入ったような手の挙げ方をしつつ,意見がしっかりあるわけではないんですけれども,白地同意をデフォルトと考えるかということとの関係で,ちょっと気になっている点について,発言を忘れてしまいそうなので,今させていただきたいんですけれども。   それは,補足の説明の方の14ページの4行目から書かれているところで,これは親権を行使できなくなるという効果の存続期間についての説明ですが,特定の養親との間での同意の形で第1段階の審判がされたけれども,6か月の間に養親,特定の方という方がお亡くなりになったりしたような場合,あるいは縁組が成立しないということになったときにも6か月間の効果が続くという御提案になっていまして,ここが特定の方を念頭に縁組予定者となるので,それとの関係で効果が生じるという見方をするのであれば,本当はここに書いてあるような効果を認めるのは難しいように思います。ここに書いてある説明を読みますと,6か月間停止することが,実質的には適当なのではないかという感覚もわかるように思いますが,ただ,その感覚というのは,この子どもというのはその利益が害されるような監護状態しか望めなくて,実親,親権者の下でもう育てていくのは現実的ではないから,とにかくその人と離しましょうということが一般的に判断されているからであるというような方向での価値判断というか,評価がされているような説明に読めるように思います。   そちらの考え方なんだとしますと,むしろやはりデフォルト白地論に近いといいますか,この第1段階というのは,特別養子との関係で必要なのでこのように設けているけれども,実質は親権喪失や親権停止のようなものをこの場面で設けているようなものだという性質付けに近付いていくようにも思いまして--ちょっとごめんなさい,今,議論している第1段階の性質論,あるいは同意が白地か,特定かによってどう違うのかということと,ここの効果の関連も詰めていきたいという意見です。すみません。 ○大村部会長 ありがとうございます。   いずれにしても,皆さんの意見を集約して,再度整理をしていただくことが必要かと思いますけれども,それに当たって,こういう点も考慮に入れる必要があろうという御指摘があれば是非頂きたいと思いますけれども,何かございますか。 ○木村幹事 白地同意がデフォルトルールであるとする捉え方が1段階と2段階を分ける上では,理論的に一つあり得る考え方であるのは十分理解した上で,2点指摘させて頂きたいと思います。まず,実親が子どもに対して,自分がこれから養育できないので特別養子に出しても構わないというふうな形での白地同意を出すのと,更にその一歩先を進んで,ある特定の親であれば,自分の子どもを養育先として預けても構わないという形で同意するというのは,子どもに対するメッセージというか,子どもの利益の見方としての立て付けが少し違う印象を持っております。白地同意をするということ自体は,すごく極端な見方をすると,実親からの自分は養育をしないということだけのメッセージとして受け取られかねないことを危惧しており,たしかに先ほど幡野先生でフランス法の理解がありましたけれども,他方で一部の諸外国では,やはり子どもにとっての利益から白地同意は望ましくないという理解もあるということです。2点目ですが,特定の養親希望者が申し立てた場合に,第1段階目はうまくいったけれども,第2段階目がうまくいかなかったときに,第1段階目で得られた同意を別の養子縁組にも幅広く何か活用するという点に,白地同意を許容する実質的意義を見出すことができます。しかし,飽くまで特定の養親希望者は自分の養子にしたいという希望に基づいて申し立てているにすぎず,なぜそれを幅広く活用しなければいけないのか,むしろ公益の代表者として児童相談所長をそういう役割を担うものと位置付け,特定の養親希望者についてはその人限りの同意の問題とする発想も十分あり得るのではないかと考えた次第です。 ○棚村委員 私が先ほど,白地同意とそうでない特定の場合との効果の違いみたいなことを言ったのは,アメリカなんかもそうなんですけれども,親権終了手続というのをやって,結局,実親が育てられない,そうすると里親さんとか,あるいは養子縁組も含めて,どういう選択肢があるかというのは,パーマネンシーケアみたいなことで考えればいいですけれども,もうその段階で保護が必要で,実親が養育できないというところを第1段階というか捉えるとすると,その段階の手続があるわけですね。その後に,具体的などういうケアが一番この子にとっていいかという養子縁組の手続に移る。そのときに,養親になろうとする人をある程度その決定に重要な利害関係をもつわけですし,現行法でも認められているわけですから,その者の申立てを支持したわけです,養親になろうとする者も養子にできるチャンスを持っていて,自分も受皿としてやる覚悟をもっているわけですから,そういう人をやはり最終的には手続に関与させるということは意味があるだろうと思いました。児相長も,もちろんそういう申立てをするんだったらいいとしたわけです。   ただ,手続を2段階に分けるとすれば,やはり理念としては,誰が育てるかという問題と,それからやはり実親さんの今のままではちょっとふさわしくないだろうなという2つがある。そうすると,私なんか主文として,正にほかの国がやっているように,事件本人が,特別養子かどうかは別ですけれども,実親との関係は切った上で,何らかの形で家庭的な養護みたいのが必要であるという手続や判断があり,一つ主文が第1段階であるとすると,特定の養親さんが候補者であるというのは,これまでの手続は確かにそうだったんですけれども,それを切り離した新しい手続を創設をしたんだという理解に基づくと,やはりそういう意味では,特定の養親さんが特別養子の対象者だというところまで限定したような主文でなくてもいいのかなと考えたわけです,ちょっと乱暴な言い方ですけどね。   もちろん,同時にやれれば何の問題もないのですけれども,同時にできなかったり,不具合が生じたときに,お子さんにとって空白状態が生ずるというのはすごくまずいと思ったので,結局,何が第1段階の審判で確定されたのか,第2では一体何が確定されるのかだということを,先ほどもずっと考えていたんですけれども,結局,特別養子にふさわしい子だということを確定したのと,それから実親さんとの関係は切れますよということではないのか。   もう一方では,新しい親との関係でいい関係が持てて,養子縁組が成立するにふさわしいという手続。そういう二つに分けるとすると,確定されるものが何かということを考えると,ある意味では白地的なものも含めて,特定の方がいらっしゃってもね,そこのところを確定するような審判というものも可能性はないのかなというと考えたわけです。要するに2段階を創設した理念とか目的というのはどこにあったのかというのを少し考えると,もちろん従来型の特定の方が申立てをして,ドイツ法で言うように,白地同意なんかはやはり認めないというような,一体としてやはり手続を考えておられるからそうだと思うのですね。   ところが,今回は2段階手続というので,我々が目指したのは,一体型ではなくて,恐らく二つに役割を少し分けようという発想だと思うので,もちろん木村先生言うみたいに,ある程度そういう中で,連続性とかそういう関係性というのは非常に重要だと思います。   しかし,1段階が一体何を確定しているのかということを明確にしないと,白地か,そうでないかで確定した内容が変わってくるとか,それから調査の仕方が変わってくるとか,審問の仕方も変わってくるということになると,非常に大変で,水野(有)先生がおっしゃったみたいに,実親の同意というのは確かにグレーで中間的なんだろうと思うのですよね。先ほど言われたように,もう誰でもいいですよと言う人もいれば,やはりある程度子どもがどこに,どんなふうに幸せになるかということにこだわる人もいて,その辺りで揺れ動いているんだと思うのですね。   ほとんど私が実際に見たのも,子どもを育てられないという罪悪感みたいなもので同意に逡巡している親が,特に母親ですけれども,そういう中で同意を取っていくというのは,少なくとも家庭裁判所がどういうふうに取るべきなのか,とても難しいということも理解できます。児相とか民間のあっせん団体とか,そういう人たちの取り方とはやはり随分違うと思うので,その辺りのところでも,やはり第1段階の審判で何を確定して主文で何を書くべきなのかというのをもう一回ちょっと考えていただいて,その書き方によって,随分やり方や審問の在り方でも変わってくるということになるのではないか。この点は,やはりいろいろと大きな問題になると思うので,その辺りをもう一回御検討いただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○手嶋委員 意見としてまとまっているわけではなく,違和感の開陳になってしまうかもしれないのですが,まず第1段階目の審判の要件立てのところで,たたき台の1(1)アを見ますと,「次に掲げる場合において,実方の血族との親族関係が終了する縁組を成立させることがその子の利益のため特に必要があると認めるとき」というふうになっておりますので,家庭裁判所としてはこれを判断するということになるのだろうと思うのですね。   そうすると,やはり特別養子縁組を成立させることが特に必要なのだということを認定判断しなくてはいけないということに建て付けとしてはなっておりまして,それを認定判断しながら,その効力が同意の範囲であるとか,申立ての範囲であるとか,何かそういうことによって左右されるというのが,違和感があります。   他方で,家裁の実務を考えますと,一般的に子に特別養子縁組の適格があるということを全ての事案において判断をするということになると,かなり重い判断になるところがあるのは間違いないようにも思っておりまして,その辺をどううまく実務上着地させるのかというところが非常に難しいという感想を持っているところであります。   ただ,養親候補者が申し立てる場合は,常にセットで動くのが基本なのだろうと思います。第1段階,第2段階と分けて今議論をしておりますが,養親候補者が申し立てる場合は,上訴も含めて,判断は常にすべて一緒にセットで動くことになりますと,そのときにどこまで普遍的な判断を要求するのかというのは考えどころかと思います。 ○大村部会長 今の点についてですか。 ○岩﨑委員 そもそも審判を2段階にしてもらいたいということには,2つの理由があります。今まで児童相談所は,実親からの養子に出したいという申し出によって,養親希望者に子どもを紹介して,その子どもを育てたいという決断を確認して,そして6か月間の試験養育期間を終えた後に,家庭裁判所に申し立ててきました。その後に,裁判所が改めて実親の同意を確認されます。その間に,実の親の事情が変わったり,要するに同意が翻ったりということがありました。現実の問題として,ここまで一生懸命親子関係を作ってきたのに,きちんと児相や私たちのところで取った同意がいわゆる法的な同意としては認められないということで,その後,親が同意を翻したことによって親子になれなかったケースが幾つかあるわけです現実に。それをまず防止したいということです。   もう一つは,実親の子どもを育てられなかった事情,それからどういう家庭にこの子がもらわれていったかということが一つの審判でなされるために,一つの審判書に両方が書かれて,それが双方に行く。そして,その上で,いわゆるその審判に対して不服があれば抗告ができるという,その最後の最後まで同意は翻すことができるということです。そういうやり方では,私たちは安心して子どもを託せないし,親子を作っていけない。   親子を作るという,本当に命がけの大変なところが,最後の最後に翻すことさえ許されている。そういうことではなく,まず,実親の方に育てられない状況があるというところで,きちんとその同意を確定してもらえる,そしてそのことは実親のところにしか情報は行かない。ここから改めて養親子関係をつくって,親子として一生きちんとこの人は育てていけるのかというところを審判してもらったことによって,この人たちが責任を持って育てていくことになる。その情報が行き交わないところで親子を作っていきたかったということがあって,この2段階方式を私などはずっと求めてきたのです。  裁判所の水野先生がおっしゃることは,要するにこの親子だから同意できるということではなくて,実親が育てられなかったという同意をきちんと確認してくださって,そして子どもが養子に行くということは,実親が法的に親でなくなるということを,もう一度確認をしてくださることが,ある意味では同じ問題をリピートさせることを私は防止することにもつながると思うのです。しっかりそこを裁判所で審問していただいて,ここで養子に出すということはこういうことなんですよということをしてもらったら,ここで育てるということに変わったっていいわけですし,もしそれが変わらなければ,二度と同じ悲しい思いのをしないことを,お母さんが自分で決断し,それを裁判所にきちんと審判してもらうことによって,リピーターになることを防止できる,そういう意味の効果もあるのではないかと思っているのです。   前に磯谷弁護士がおっしゃってくださったように,ここでもめると,本当に本来見ず知らずの養親と実親とが闘わなければならなくなって,養親たちがとてもつらい思いをしています。そんなことが2段階にすることによって防止できるということが,私たちの第一の希望だったので,そこをもう一度考えて戴いて,皆さんのご意見を言っていただきたいと思います。 ○大村部会長 岩﨑委員,今の御議論は,ここでの御議論との関係でいうと,どういう御話になるんですか。 ○岩﨑委員 例えば養親が申し立てないといけないのであれば,そしてそれがとんとんといくケースであれば,それも一つの方法だと思うんです。だけれども,確実にやっていただきたいことは,ここで,実親に子どもの親として養育できないという事実をしっかりと確認していただきたい。 ○大村部会長 つまり,白地同意一元でやってほしいということですか。 ○岩﨑委員 白地同意が基本だと思います。結果として,だから,この養親候補者だからオーケーではなくて。実親が育てられないという現実を,きちんともう一度認識してもらう審判だと思っているんです。相手が決まっているとか,決まっていないとかということではなくて。だから,決まっているケースもあるでしょうし,要するに親の面会がずっと施設でなかった子どもを児童相談所長が出してくるんだとしたら,その子の審判を先に裁判所にしてもらわないと,この子の親が現在いないということをきちんと決めてもらわないと,養子候補者に紹介できないわけですから,そんなことも含めて,一つ一つのケースを,この子には特別養親が必要なんですということを明確にする審判をしてさえくだされば,2段階で行うことの意味があるのだと思っているんです。 ○大村部会長 岩﨑委員は,行われた手続が覆るということはできるだけ少ない方がよろしい,これが中心的な主張の一つですよね。 ○岩﨑委員 はい,そうです。 ○大村部会長 同意についても,白地同意でいけると考えられるのならば,それはその方向で考えてほしいということをまずおっしゃっていて,それが実現しやすいものであるのならば,運用に委ねるということでも構わないし,制度化するということでも構わないと,こういう方向性を示しておられるという理解でいいでしょうか。 ○岩﨑委員 はい,そうですね。 ○大村部会長 そのように受け止めさせていただいて,今日のところは引き取らせていただきたいと思います。藤林委員何か,ありますか。短かめにお願いします。 ○藤林委員 短目と言われてしまうと困ってしまったんですけれども,児童相談所の実際の特別養子縁組成立に向けてのプロセスを考えますと,基本的には白地なんですよね。実親さんに対して,特別養子縁組に対して同意されますか,というところから入っていくわけなんです。そして,児童相談所の場合には養子縁組里親さんに委託するわけなので,その段階で,どういう方なのかというのは,全て教えるわけではありません。ある程度,情報を伝えた上で,同意で養子縁組里親に委託していき,その後,家庭裁判所に申立てに行くわけですから,理念は白地なんです。実際は特定の養親候補者に対する同意が得られた上で申し立てていくという観点からいくと,児童相談所も家庭裁判所も多分ワンセットで判断していくというのは,そうなのかなと思います。   ただ,その場合に,めったにないにしても,申し立てた後に,そこに不調であるとか,ミスマッチが生じた場合に,そこで2段階目で不適合となった場合に,全くまた振り出しに戻っていくのかとなると,私はその場合に,その間に時間がたってしまうので,子どもの3か月とか半年というのは非常に重要な時期ですから,ここで元に戻ってしまうのは,子どもの立場から考えるともったいない。やはり,理念系である第1段階の白地という,養子適格性の判断は残しておいていただいた上で,児童相談所なり養子縁組あっせん機関が適切な養親候補者を探すけれども,それは第1段階をクリアした,そこで認定されたところからスタートする方が,より時間的には短縮されて,それは子どもの利益にかなうのではないかなというのが私の意見です。 ○大村部会長 ありがとうございました。   棚村委員も先ほど,同趣旨の御指摘をされていたかと思いますけれども,その点も含めて,これはいろいろなバランスを採りながら,どこかに着地点を定める必要がある問題かと思います。今日のところは御意見を頂いたということで,事務当局の方で更に検討していただくということにしたいと思います。   それから,岩﨑委員から出ていた先ほどの申立権者の問題に対しては,必要ならばまた後で議論いただくことにして,3時頃を目途に休憩を申し上げていたところ,すでに3時45分になっております。   第1については,ほかにも御指摘があろうかと思います。ただ,今日の資料からもご想像いただけるように,第2についても,時間をかけて議論する必要があろうかと思います。   そこで,大変恐縮ですが,これから15分休憩させていただいて,4時から再開しまして,第2についての御意見を一定程度頂き,そして第1についてなお残っている問題があるということであれば御指摘を頂いて,それを引き取らせていただいて,事務当局の方で次回に向けて更に検討をするという形にさせていただきたいと思いますけれども,よろしゅうございますでしょうか。   それでは,すみませんが,そのような取扱いをさせていただきたいと思います。ということで,4時まで中断したいと思います。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開をさせていただきたいと思います。   第1につきましては,また後で時間があれば,時間の許す限り御意見を伺いたいと思いますが,差し当たり第2の方に移らせていただきたいと思います。   7-1で申しますと,5ページ,「第2 養子となる者の年齢要件等の見直し」ということですけれども,まず事務当局の方から御説明を頂きます。 ○満田関係官 それでは,関係官の満田の方から,「第2 養子となる者の年齢要件等の見直し」について説明をさせていただきます。   まず,パブリックコメントの結果の概要でございますけれども,資料7-2の5ページの下の方に概要を枠囲みで示しております。   数字だけ見ますと,丙案が多数となっております。もとより,パブリックコメントの手続は多数決のためのものではございませんので,単純に多数となった意見を採用すべきであるということにはなりません。また,丙案が多数と申しましても,団体と個人とを合わせて36件ということでございまして,この件数の持つ重みをどのように見るかという問題もあろうかと存じます。   さらに,この特別養子制度部会は,パブリックコメントの結果に拘束されるようなものでもございません。とはいえ,事務当局といたしましては,中間試案の補足説明において丙案についての問題点等を記載したにもかかわらず,パブリックコメントの結果がこのようなことになったことについては,謙虚に受け止める必要があるものと考えております。   そこででございますが,今回,御提示する案は丙案をベースとすることといたしまして,資料7-2の27ページ以下では,どのような考え方をたどれば丙案を導き出せるのか,また,丙案に立ったときに,普通養子制度との関係についてどのような説明を付けられるのか,事務当局なりに考えたところを記載しております。   皆様におかれましては,要綱案の取りまとめに向けて,丙案を採用することの当否でございますとか,丙案を採用するとした場合の説明の在り方などについて,改めて御意見を頂戴できればと存じております。   次に,中間試案においては,丙案の(1)の第2文には「15歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されているもの」に加えまして,亀甲括弧付きで,「又は15歳に達するまでの間に同請求がされなかったことについてやむを得ない事由があるもの」という案を提示しておりました。これにつきましては,これまでの本部会における議論を踏まえまして,主に明確性の面から,「15歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されているもの」を採用することとしてはどうかというのが事務当局としての考えでございます。   次に,丙案の(2)でございますけれども,養子縁組成立時に養子となる者が15歳に達している場合にはその子どもの同意が必要であるという規律となっておりました。この点につきましては,本部会における従前の議論を踏まえますと,実親との法的な親子関係の終了をさせることについて子どもに決断させるという場面をなるべく回避するということでございましたので,子どもの側が反対の意思を積極的に表示している場合に限り縁組を成立させないこととしてはいかがかというのが事務当局の考えでございます。   最後になりますけれども,養親子間の年齢差要件についてでございますが,この点につきましては,中間試案の補足説明において15歳差という例示をしてみたところでございますが,パブリックコメントでこれに積極的な反対はございませんでした。しかし,他方で,15歳差という案に積極的な支持もなく,対案もありませんでしたので,今回御提示する事務当局案におきましては年齢差要件を設けることとはいたしておりません。   事務当局からの説明は以上となります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   中間試案では,甲乙丙と3案併記ということで,パブリックコメントを行ったわけですけれども,今,御説明がありましたように,丙案を支持する意見が多かったという結果になっております。   これについても御説明ありましたけれども,パブリックコメントのみによって要綱案の内容を決めるというわけではありませんけれども,しかし,そういう意見が多いということもまた考慮すべき事実ではあります。   そこで,今回は,第二については,甲乙丙のうちの丙案を基にしまして,それに修正を加えた案を御提案いただいているということかと思います。第2の1と2について,それぞれ従前の丙案とどこが違うのかということにつきましても御説明を頂いたかと思います。   3案並立でありましたので,委員・幹事の中には甲案,乙案の方がいいという意見も当然おありかと思います。基本的に,ここに出てきているいるように,丙案をベースにした案について考えていくということについてどうかということが,まず一つ目の問題。仮にそのようにした場合に,具体的に内容をどうするのかということが次の問題ということになろうかと思います。   分けるのは難しいというお考えもあろうかと思いますけれども,差し当たり,前提問題,すなわち,甲乙丙のうちの丙案を中心に考えるということの当否というところから御意見を頂ければと思いますけれども,いかがでございましょうか。 ○磯谷委員 理論的なところは,また改めていろいろ御意見もあるでしょうけれども,やはり実際の実務的な面でこの丙案については大変懸念があると,これは以前も指摘をさせていただいたし,ほかからもあったと思いますけれども,端的に言えば,養子縁組を養親候補者の一存で引っ張ることができるというふうなところでございます。例えば,幼少期の頃から子どもを預かっていると,その場合,今であると早期に特別養子縁組の申立てをしなければならないわけですけれども,この案からしますと,基本的に18歳直前までこの申立てを引っ張ることができるということになろうかと思います。   特に,同意が実質的に不要だと思われる親が死亡しているケースや行方不明のケース,あるいはもう全く養育意思がないということが明らかなケースというのは,同意がひっくり返るというふうなリスクも見当たりませんので,そういうふうなケースについては,例えば子どもに対して,「いい子だったらいつか養子にしてあげる」というような形で引っ張られるおそれが否定できず,これは子どもにとってリスクの高いことだろうというふうに思います。   したがって,引き続きこの丙案でいくということには消極ではありますけれども,仮にその丙案ということになりましたら,やはりその辺りの懸念をどういうふうに払拭するのかというところが大変大きい課題になろうかと思います。率直に言って,今の段階で余り私自身は案がございませんけれども,そこは最初にちょっと御指摘をさせていただきたいと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでございましょうか。 ○浜田幹事 浜田です。   今,磯谷委員から御指摘のあった点は,私も完全に同じ懸念を有しているということをまずお示しをしたいのが一つ。   もう一つ,丙案で,申立てのときに18歳未満ということになりますと,ぎりぎり18歳直前に申立てがなされるということが現実的には想定をされるところでございます。   そういたしますと,現行法ならばさておき,近い将来,成人年齢が18歳になるということも鑑みますと,特別養子縁組の成立時には当該子どもが既に成人をしているということも,近い将来には生じることになるのかなと考えております。   このようなことを考えたときに,特別養子制度は子の養育のための制度だという従前の御説明との関係で,縁組成立時にはもう子どもが成人しているということをどのように説明すればいいのかは,是非教えていただければと考えております。 ○棚村委員 私は乙案を支持したのですけれども,丙案にしますと,1点やはりちょっと疑問があります。ここにも書いてあるように,成立のときには15歳に達しているときには,要するに同意がなければ駄目だということで,拒否権を持つわけです。ところが,第1の段階の審判のときに,養子の候補者にするという話のときにも,15歳に達していた場合には同意がないとできないという立て付けになるのでしょうか。その辺りちょっと,一番懸念していたのはそこだったものですから。   第2段階は,15歳になった子どもの意に反して養子縁組するということは,実際にはなかなか難しい思います。マッチングって,親子としての適合性の問題とも関わりますけれども,15歳に達した子の意に反してできないことはわかります。ところが,実親との関係を切っていくということで,15歳の子の扱いをどういうふうにするのか,意見聴取みたいなことをするのかどうか。それが必要的になるのであれば,当然そういうようなことの判断も,15歳の子どもには聴いたり,求めたりということになるのか,ちょっと教えていただきたいと思います。 ○大村部会長 今,御質問という形で御意見を頂いていると思いますけれども,事務当局の方から一つ一つ答えるというのではなくて,少し御意見を頂いてから,まとめてお答えを頂こうと思います。   ほかに御指摘があれば,どうぞ。 ○水野(紀)委員 今回,特別養子法を改正して,要保護児童のために幅広く使うというのは,やはり実親と切れるという効果を目指してということなのでしょうけれど,これまで申してまいりましたように,そこに構造的に無理があるように思います。西欧諸国の運用では,まず養子縁組の前提として,実親支援があるのです。実親との関係を切って養子に出すのは,実親支援が尽きたところで始まる話なのですけれども,日本では,それをいきなり素人の特別養親希望者がイニシアティブと責任を持って,この手続を動かすことになっています。   最初に議論になった未成年後見の関係も,そういう本来の形であれば全然考えなくてもいいことであったはずで,でもここでなにもかも考えなければならないことになっています。いきなり素人の特別養親希望者がイニシアティブと責任を持って始めるという,この手続が抱える危険は,いろいろあると思います。それらの危険を児相長の参加だけで本当に担保できるとは,私には思えません。   それで,年齢を上げる点で,特に心配なことを二つ申し上げます。最初に,心配なことは,現行法と違って,成長した年齢までできるということになりますと,6か月の試験養育期間は,年長の子どもはごまかせるのではないかという気がします。6か月間おとなしくしていて,そして素人の養親さんは,赤毛のアンのようなかわいい少女が来てくれたという幻想を抱いている。でも,実は彼女は虐待に伴う深い精神的な後遺症を抱えていて,6か月おとなしくしていたけれども,養子縁組が成立した途端に彼女の抱えている重い精神的疾患があからさまになって,地獄のような親子関係の状態になってしまう。でも,養親の側から離縁請求もできないというリスクです。そういうリスクが,心配です。   それからもう一つ,これは場面が違う話なのですけれども,実親との関係を切るという効果を濫用されることについてです。親になる覚悟のある人でないと申し立てできないことで断絶濫用を担保しようとしておられるように拝見したのですけれども,これでは防げないような濫用の危険もあると思います。具体的に言いますと,子どもの奪い合いのケースを心配しております。   明治民法以来の親権喪失の規定は,母法に倣って検察官提訴ということにしたのですが,日本の検察官は母法と違って民事では働きませんので,本来の喪失させなければいけないような虐待ケースには全く効きませんでした。では実際にどんな事案が大審院判例になっているかというと,母の親権を取り上げるために父親側の親族が訴えた,今様常盤御前判決なんていうケースが大審院判例になっています。こういうケースで,この法律が改正されると,また利用されないかというのが心配です。   本来でしたら,DVやモラルハラスメントのような被害がある家庭でしたら,同居中,婚姻中にも公的支援が入っていなければいけないはずですが,その段階の支援が日本は実にまったく足りていません。フランスでは年間約10万件の親権を制限する育成扶助判決があって,約20万人の子どもたちがその判決下でケースワーカーと判事に見守られているわけですが,それは人口基準でいえば,日本では大体40万人の子どもたちが親権制限下で公的支援を受けて暮らしているという数字です。でも日本では,親権喪失も停止もどちらも二桁がやっとです。   そういうふうに放置をされている家庭の中で,もういよいよ限界になったということで,妻が子どもを連れて逃げる。DVの後遺症やPTSDで,連れて逃げたお母さん自身も相当病んでいるというときに,加害者側の親族がこれで申し立てるというリスクです。そのお母さんに育児支援がきちんと入れば,十分に育児できるようなお母さんであったとしても,貧しさとPTSDの中で混乱しているお母さんが,いきなりこの特別養子を申し立てられて,申し立てた側はしっかりしているように見えるということだと,恐らく母親に自衛能力はろくにないでしょう。そういう濫用ケースが心配です。   このように子どもの奪い合いケースで,実際には実親の片方との関係を切るという形に使われないかというのが,二つ目の心配です。この二つの心配を抱えておりまして,これらの心配についてお答えを頂ければ有り難く思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○平川委員 この特別養子の法律の位置付けですが,基本的に実質的親子関係の形成を期待することが前提というふうに議論が進められていまして,その上で,それにふさわしい年齢要件というのがいろいろな議論の中で設定されてきたのではないかなと思っています。   ただ,パブコメを読んでみますと,同じ児童相談機関でも全く違う意見が出ているというのは,この特別養子縁組制度の本来的な在り方というのがうまく伝わっていない,若しくは認識に違いがあるのではないかということが考えられると思っています。   そういった意味で,今回出された案を進めるに当たっては,特別養子縁組制度の前提というのをもう少し議論しないと,この示された案で,あ,そうですよねということにはなかなかならないかなというのを思っているところです。   さらにまた,そうなってきますと,子どもの意思確認の関係ももう少し深く議論をする必要があるのではないかと思っています。やはり,状況によっては,子どもの意思確認は基本的に何ら問題はないという場合もありますし,一方で,子どもの意思を確認することは,やはり親子関係を切ることになるので,それを責めることは酷ではないかという議論,これはパブコメでは両論あったのかと思います。   本当に親と断絶することについて子どもの意思が固ければ,それはそれでいいんでしょうけれども,実は別な要因を子どもが考慮していたりすることもありえます。里親等の強い意向に流されてしている場合もあるかもしれません。やはり,それをどう考慮していくのかということも考えていく必要があるかと思いますし,その場合,子どもの意思確認をする場合は,児相の関与であるとか,児童心理士等の専門家の助言,アドバイスも含めた様々な形でのサポート,支援というのが当然重要になってくると思っているところであります。   その延長線上で,やはりほかの民法との関係で,15歳というのが一つのメルクマールというか,ラインが引かれているところでありますけれども,これは前から言っていますけれども,15歳に対してのいろいろな判断というか,意思確認というのは当然重要ですけれども,15歳未満--15歳に達しない方の子どもの意思というのもしっかりと,子どもの権利条約の観点からしても,その辺どうサポートしていくのかということが重要かと思っています。   それから,やはり実親と断絶するということによって,実親からの介入を防ぐことができるということは当然,そういうケースも多くあると思いますけれども,さらにまた,永続的な親子関係を担保するというふうな意見もパブコメにありました。里親や普通養子縁組の方は,そこでもやはり相当な覚悟を持って実質的な親子関係を作られている場合があると思います。   総括的なことを言うと,普通養子縁組の在り方も含めて考えていかないと,今回の大胆な案というのは,少し議論が不足しているのではないかなと思ったところです。 ○窪田委員 では,すみません,お先に。   今,平川委員から御指摘があった部分と重なるのかもしれませんが,私自身がやはり非常に気になるのは,今回の改正というのは何か特別養子という特別の制度があって,そこをぽんと変えればいいという話ではなくて,やはり民法の改正であるわけですから,そういうことを言うこと自体が場合によって反発を買うのかもしれませんが,やはり民法という仕組みの中で,一定の整合性を保ったものとして受けられるようなものでなければならないのではないのかと強く感じています。   その上で,甲案,乙案,丙案という形で,丙案が圧倒的に数でいったら多かった。多かったといっても,でも,その30幾つということで多数決で決まるような話ではないんだろうと思います。やはり丙案を支持する見解について,これまでの審議会での議論というのを踏まえても,15歳以上は自らが普通養子縁組を組めるというものに対して,18歳まで特別養子を認めるということの必要性というのは,やはり具体的にはきちんと明らかにされてきていないのではないのかなという気がします。   補足説の中には,そうはいうけれども,こういう選択肢もあっていいのではないかとありますが,それはこういう選択肢もあっていいのではないかというレベルのものであって,やはり普通養子縁組ではなくて,これでなければいけないというのは積極的には示されてこかったような気がします。   唯一あるとすると,あるいはパブリックコメントの中でも触れられているのですが,実親関係を切るという機能なのですね。パブコメの意見の中では,もう18歳という制限すら要らないのではないかというのもありましたけれども,それはもう正しく実親子関係を切るということに焦点を当てれば,そういうふうなことになるのかもしれないと思います。   ただ,現行制度の特別養子縁組というのは,実親関係を切ることに主眼があったわけではなくて,ごく小さい年齢を前提として,可能な限り実親子に近いものを作り出そうといったときに,二重の実親子関係にならないように,実親子関係を切るという反射的な効果を認めたものであると私自身は理解しています。   それとの関係でいうと,何かこの丙案をぽーんと出してくるというのは,非常に強く実親子関係を切るという仕組みを民法の中に導入するという側面が非常に強いのではないかという気がしています。   その点で,民法の中の仕組みというふうにして見たときに,この丙案というのをベースにしていいかどうかについては,ちょっと私自身としては強い違和感を持っているということを申し上げておきたいと思います。   その上で,部会長からは,この今回の提案があったものについての議論というのは分けてということだったんですが,それについても意見を申し上げてよろしいですか。   その意味で,私自身は丙案に対しては,出発点において必ずしも適当ではないというふうに考えていたんですが,そうだとしても,今回の案はやはりそれより更に悪いのではないかというのが正直な感想しています。   どこの部分かといいますと,今までの丙案の方ですと,養子となる者の同意がなければいけないというふうにしていたのに対して,反対の意思を表示しているときは駄目だというふうな仕組みになって,オプトアウトの仕組みを作っているわけですよね。これは,養子となる者に意思表示をさせるのはかわいそうだという意見を踏まえてのものということなのだろうと思いますし,私自身も,15歳以上であれば同意が必要であるし,その同意をさせるということ自体が酷であるという意味で,丙案に否定的な意見を述べてきました。しかし,だからといって,意思表示をさせないでやれば問題が解決するのかというと,やはりそうではないだろうと思います。   民法でいうと,正しく普通養子縁組に関していうと,15歳未満であれば代諾という仕組みがありますけれども,15歳以上であれば,法定代理人は法定代理権は持っていますけれども,もはや養子縁組に関しては関与できない,その子どもの意思だけで決まるというふうになっているにもかかわらず,特別養子縁組に関していうと,言わば拒否権みたいな形で,例外的に行使しない限りは18歳まで,パターナリスティックに認められというのは,やはり全体としての整合性がとれてないのではないかという気がいたします。   その意味で,丙案自身に対しても私自身消極的なんですが,今回示された案に関しては強く見直してもらいたいなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○宇田川幹事 ほかの委員,幹事からも出ているところと重なる部分もありますけれども,近い将来,成年年齢が引き下げられると,今回の要綱案のたたき台によれば,申立て時に18歳間近ということで,特別養子縁組成立時に成年に達しているという場合も生じ得るところでございます。   そのような場合に,これまでも議論されてきた特別養子縁組の制度趣旨に関し,実質的親子関係を形成して,安定的な家庭環境での養育を図るという制度趣旨がどういうふうになるのかというのは明確化していく必要があって,今の内容ですと,それが変容されているようにも受け取られるところです。   子の利益のための必要性の要件等の判断に当たっては,裁判所としても制度趣旨から考えるところがありますので,この制度趣旨について明確化していただくことが必要ではないかと考えております。   要件判断のところで,少し関連付けて申し上げますと,1段階目の審判のところで,「子の利益のため特に必要」という要件がありますけれども,中間試案の補足説明では,「ある子の養育のために養親子関係を唯一の親子関係とするとともに,離縁をすることもできないものとするほどに強固かつ永続的なものにして,それに基づく養育を安定的なものとする必要」と説明されています。   そうしますと,子が成年に達して就労もしており経済的に自立している場合というのは,それまで里子として長期間の養育の実績があったとしても,特別な必要性はないということになるようにも思われるのですけれども,そのような理解でよろしいのでしょうかというところが一つ問題としてあるかと思います。   そのほかに,虐待親との関係切断の要請とか,就労や婚姻に当たっての身元の安定といった要請は,先ほどの養育の安定といったような制度趣旨からすると,これだけでは特別の必要性を認める事情にはならないということになるのかというところも,改めて問題になるのではないかと考えておりまして,このような点も御議論いただければと考えています。   そのほかに,1段階目の審判と2段階目の審判が同時に申し立てられ,その直後に子が成年に達した場合に,1段階目の審判の要件として実親による監護が不適当とか困難という要件がありますけれども,これを成年に達した子についてどのように判断するのか,成年の子に対する監護ということをどのように捉えるのか,それもいつまで続くのかというところも含めてどのように判断すればいいのかというところが余り判然とせず,裁判所の判断も困難となる可能性があるのではないかというふうに捉えています。   さらに,2段階目の審判の「縁組予定者の利益のため特に必要」という要件について,中間試案の補足説明では,「具体的な養親との間の縁組が当該子の福祉の向上ないし利益の増進のために必要であること」,「すなわち両者の間に永続的な親子関係を創設することが必要であるといえるほどの適合性が認められること」と説明されていますけれども,実質的親子関係の形成という観点から,養親子間の年齢差についてもここの要件のところで判断することになるのかというところも分からないところで,ここも明らかにする必要があると思っております。   例えば,きょうだい間の特別養子縁組で養親子間の年齢差が最小2歳程度ということも生じ得るのですけれども,そのような場合に特別の必要性がないということになるのか,そうであるとすれば,どれくらいの年齢差が必要であるのかということも,議論が必要になってくるところと考えております。   さらに,もう一つ,今回,要綱案で,反対の意思を表示しているときは特別養子縁組を成立させることはできないとなっているところについても,結局,15歳以上の子から聴取する場合には,実方の親族関係の終了についても説明せざるを得ないところと思いますので,同意を要件とすることが酷だという御意見がありましたが,子の意思確認をするときには,結局,実質的に同じような状況になるのではないかと考えておりまして,実方の親族関係終了の判断を求めることが酷だという点は緩和されてはいないのではないかなというような懸念もあるところです。   長くなりましたけれども,以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○藤林委員 丙案賛成者が少ないので,一言言っておこうかなと思っているんですけれども,補足説明資料7-2の27ページにも書いてありますけれども,前回のヒアリングで遠藤先生も言われましたが,子どもにとって安全な養育環境って何かというと,それはやはり親であるとか,家庭環境が,安心・安全な場所,これがやはり一番大きなことではないかなと思うんですね。   そうすると,普通養子縁組でも,そこの家庭環境が安心・安全な環境になる場合も多くあると思うんですけれども,どうしても特別養子縁組でなければ,要するに法的な親子関係を終了させなければ安心・安全な環境になり得ないケースがあると私は思いますし,前回の当事者からのヒアリングの結果も,そういうことということで説明したわけです。   実親との親子関係を,法的な親子関係を終了させることが目的でなくて,そのことによって現在の養育環境が安心・安全なものになるということですから,元々の理念とは大きく変わらないと私は思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○山根委員 丙案にありますような大きな年齢の引上げは心配しています。パブコメ等では,年齢で制限をして子どもの幸せを奪うことはあってはならないとか,そういった意見も結構ありましたけれども,ただ,やはり本当に望ましいマッチングと,あと様々なその後のケアの在り方等々について,相当程度の制度設計というか,そうしたものがセットでないと,やはりうまくいかないのではないかというふうに心配をしています。そういったところの議論は,厚労省になるのかどうか分かりませんけれども,別途検討していって,同時並行でやっていくべきではないかと思っています。   大きく広げて様子を見ましょうということでやってみて,やはりうまくいかなかったということでは制度自体が問題視されてしまいますし,養子というものそのものが明るい受け止めをされなくなってしまうと思いますので,うまく進めていければと思います。   支援の形などをきちんと積極的に作っていくべきということで,その支援という中には実親の支援というのもありまして,やはり実親の支援をすることで実質親子で何とかやっていけるというケースもあると思いますし,やはり幅広い福祉政策の充実というのがないと,全体としてうまくいかないと思っています。   ということで,普通養子とセットの議論がなくて,ここを取り出して改正することになるので,今後の議論,幅広い議論の方に会としてある程度委ねるようなことができないのかなとも思います。ここで一気に大きく上げる決断をする前に,今後に方向性を示すとか,全体できちんと議論をしてまとめ上げるところへ,ここでは,さらにその後の議論に提議,提案をするというのかな,そういうやり方もあるのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○藤原委員 今,厚生労働省の方からも,しっかり取り組むべきだというふうな御意見をから頂きましたので,ちょっと発言をさせていただければと思いました。   厚生労働省として,どの案でなければいけないというふうに申し上げるという立場では必ずしもないと思っております。社会的養護,児童福祉を担当している立場から申し上げれば,特別養子縁組だけではなくて,そもそも家庭養育優先原則を徹底する中では,実親がしっかり子育てができるように支援をするということが大事であると。その上で,里親委託の推進ですとか,あるいは児童養護施設も従来型の施設ではなくて,市町村への支援の機能をしっかり付けていくとか,在宅の親子の支援をしっかりやっていけるような機能転換とか地域分散化とか,そういったところをしっかりやっていくという大きな政策の流れがある中で,特別養子縁組の利用促進というものが今,我々としても非常に重要な課題になっているというふうに認識をしております。   28年の児童福祉法改正のときに,養子縁組に対する相談,援助の業務を,都道府県の業務として明確に位置付けたということもありますし,今年の10月からは民間の養子縁組あっせん団体への規制法が本格的に施行されておりますので,こういった団体との連携とか,そういったことも予算措置をしながら,しっかり養子縁組に対しての支援の環境整備を進めていこうというふうにしているところでございます。   また,年齢が引き上がることによって,申立てまでの時間を無用に引っ張ってしまうのではないかという御懸念が提示されたかと思いますけれども,我々ももしこのような制度改正が,仮に何らかの形で年齢の拡大が実現をして施行されるということになった暁には,当然,養子縁組の申立ては,適時適切に,可能な限り早期にしていただけるよう,児童相談所にしっかり周知をする必要があるだろうと思っております。例えば児童相談所の運営指針とか,そういったところでもしっかり連携をして,円滑に特別養子制度の改正を進めて,運用を進めていくというふうな形でもお手伝いできることはたくさんあろうかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   たくさんの委員,幹事の方から御発言いただきましたが,元々,甲乙丙という3案併記でありましたので,それを一つにまとめるということになりますと,反対の意見がたくさん出てくるということは十分に考えられるところでして,伺った御意見の中でも明確に反対された方もいらっしゃると思いますし,かなり強く疑問を投ぜられた方もいらっしゃるかと思います。   仮に現在の案に立つとしても,弊害が生ずるのではないか。今,藤原委員の方から一定程度の対応はお考えいただけるという御発言がありましたけれども,それにしても様々な弊害があり得るのではないか,あるいは手続はこういう場合にどうなるのかというような疑念も出てきております。   この根本のところについて,なお意見交換をしていく必要があると思いますけれども,今までに出ている御懸念や,あるいは手続上の疑問等につきまして,事務当局の方で何かありましたらお答えを頂ければと思います。あるいは全体につき,今回,丙案をベースにして案を出しているということについて補足的な説明をしていただいて,それから個別の問題について御発言いただくということでも結構です。 ○山口幹事 それでは,頂いたむしろ御質問に答える形で御説明をしてまいりたいと思います。   まず,順番がいろいろ前後してしまうのですけれども,窪田委員から,(2)の方の規律はかえって民法との整合性がうまく説明ができないのではないかという御指摘がありまして,そこはそのとおりかというふうにも思いましたので,次回,ちょっと修正をしてまいりたいと思っております。   それから,棚村委員から御指摘がありましたのは,15歳になったときに意見聴取がどうなるのかということだったかと思います。これにつきましては,現在お示ししている案でも,15歳になりましたら,1段階目では「陳述を聴かなければならない」というふうに,資料7-1の2ページの(2)のウのところで,「陳述を聴かなければならない」というふうにしていまして,(ア)というのは子どものことですので,そういう形で「聴かなければならない」としておりまして,3ページの2の(2)のエでは,また15歳以上の場合には「陳述を聴かなければならない」というふうにしております。   ただ,同意につきましては,最終的な,2段階目の手続において,私たちの今のたたき台の案では,反対の意思があるかどうかは,2段階目の審判のときにあるかどうかを判断すると,そういう考えでおりました。   それで,次に,浜田委員から,請求時に18歳未満であるとすると,ぎりぎりに申し立てた事案では成立時に成人に達していることがあるのではないかと。それから,恐らく裏表の問題だと思うんですが,宇田川幹事からは,成人に達したときに監護の状況って,それは何を見ればいいのかということのお尋ねがあったかと思います。   ここにつきましては,確かに今まで伝統的に考えられていたところからしますと,成人になった後に監護というのはあるのだろうかということはあろうかと思いますけれども,考え方によりましては,養育という,あるいは監護というもの,これは18歳になったらもうぴたりとなくなってしまうものではなくて,例えば今現在,18歳になって大学生になるということがありますが,そういう子たちの実質を見たときに,果たして監護というものがなくなっているのかというと,必ずしもそうとは言えないだろうと。なぜそうなのかというと,やはり経済的に自立していない間というのは,まだ監護とか養育というのは観念できるのではないかと思っておりまして,そういう意味では,請求時18歳や,成人に達した後にもなお監護を要するという場合は,余り場面は多くないかもしれませんが,ゼロではないのかと思います。   他方で,宇田川幹事が御指摘のところは,確かに18歳に達した後に監護の状況がよろしくないというのはどういう場合なのかということで,これも恐らく場面としてよくあることではないんだろうと思います。例えば,今の例で申しますと,18歳に達して大学に進学している子が経済的に自立していないと,そういう子に対して経済的な支援を全くしなくなるのがイキなのかというようなところもありまして,そこは確かに難しいところはあるかと思いますが,これも今みたいな事例が本当に特別養子縁組の成立場面として,完全に全て否定できるのかというと,必ずしもそうでもないのかなというところがありますので,ここは非常にぎりぎりの場面として,場面がゼロではないということで考えていたところでございます。   それから,あと,宇田川幹事から御指摘のありました年齢差のところですが,ここは今回,要綱のたたき台に入れなかったのは,補足説明でも説明いたしましたとおりで,なかなかこれを明文で何歳差とするというところは,この部会でもコンセンサスは得にくいのかなと思いますし,パブリックコメントでも何歳がいいであるとか,あるいは中間試案の補足説明で例示した15歳というのがいいとか悪いとかというコメントも特になかったものですから,そういう意味では,なかなかここで明示していくのは難しいのかと思っております。   ただ,恐らく御指摘にあったのは,養親子適合性の中に年齢差というのが考慮要素として含まれるのかどうかというところかと思いまして,ここは,むしろ御議論いただいた方がいいところかなとも思っております。その上で,養親子適合性の要素なんだと,年齢差も一つの要素なんだと考えたときに,では何歳程度の年齢差が相当であるのかということもありまして,私どもとしましては,中間試案の補足説明で一例として15歳という提示したところなんですが,これが適切であるのかどうか,この辺りも御議論を頂いた方がよいのかと思っております。   差し当たり,以上とさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   現在の案でいいますと,15歳というところに一つ線が引かれていますけれども,しかし,それを超えることがあるので,15歳を超えた場合の扱いはどうなるのかということと,それから18歳を超えることもあるということになると,そこはどのように説明されるのかということ,この二つの点が非常に大きな問題かと思いますが,その点も含めて今,御説明があったかと思います。 ○床谷委員 すみません。今のことに対する説明というよりは質問も含めてなんですけれども,今回の第2の2のところの,前回「同意」としていたやつを,「反対の意思を表示しているときは」という形で,「拒否権」という形にしたと。私は,丙案を支持した立場ですので,これは批判,同意によって決定付けるということを回避するためのうまい策だなと思ったんですけれども,先ほど窪田委員は,むしろ後退しているというふうな評価をされました。   これは,恐らくイギリス法なんかがオーダーを出すときの判断基準で,子どもの意思というのを考慮事項の中に入れているけれども,明確な反対があるときは宣告できないという規定が確かあったと思うので,恐らくそれが参考にされているのかなというふうな,これを見たときにそう思ったんです。   イギリスの場合は,成年養子とか普通養子がないので,そのまま比較という形にはならないですし,基本的には要保護児童なので,子の福祉に対する全般的な考慮の中で,養子となる者の意思を一要素にしていると。ただ,嫌だというものは強いられないという形にしているのに対して,日本の場合は普通養子とか,意思主義的に構成しているところから,むしろ意思と,同意権というふうにした方がよいのではないかというのは,私は今でもそう思っています。そして,それが,子どもに親を捨てさせる決意をさせるという批判については,私は共有しておりませんので,そういう人もいれば,そうでない人もいるだろうということで,「同意」を「拒否権」に変える必要はないのではないかと思いました。   それから,引き延ばしの件ですけれども,これは実務をお聴きしたいのですが,例えば監護の状態に入ってから何年以内に申立てをしないといけないとか,あるいは児相が今回は関わりますので,何年かたてば児相が,監護状態開始から2年以内で様子を見て,これはいいと思えば申立てをするというような,そういうような規定を,これは民法というより児童福祉法なのかもしれませんけれども,そういうものを置くとか,あるいは今の6か月以上の期間,監護した状況を考慮しないといけないというところを,6か月以上2年以内とかというような形で,事実上そういう方向に向かわせるとか,あるいはフランス法がやっているように,申立てがされてから半年以内に宣告しないといけないと。縁組するか,しないかを決めないといけないというようにするとか,何か周りから攻めていっていて,成年になったらどうするのという疑問を少しでも軽くするということは考えられないでしょうか。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今,2点について御発言ありましたけれども,1点目は,そうすると,窪田先生と同意権という伺ってよろしいでしょうか。 ○床谷委員 窪田先生は丙案の立場でないので。 ○大村部会長 仮に丙案を採る場合にということですけれども。 ○窪田委員 それだけ確認していただければ。 ○大村部会長 もちろん,その前提で,仮にこの案を採るとした場合には,同意を求めた方がいいのではないかという点をおっしゃっているということですね。   2点目は,先ほど藤原委員の方から,言わばソフトロー的な規律を設けるといったお話がありましたけれども,それをもう少し進めるということを考えてはいかがかという御趣旨かと思います。 ○棚村委員 元々,私も,年齢要件を余り大幅に引き上げるということについて,まず海外と比較しても,年齢の高い子どもたちが,いわゆる特別養子に相当するもので,年長の子の養子縁組がどれくらい利用されているかというと,非常に少ないのが実情です。しかも,イギリスでもそうですし,アメリカでも,年長の子になればなるほどいろいろと心に傷を持ったり,すごく難しい問題や障がいを抱えた子も多くなり素人ではとても対応できないと言われています。だから,収養困難児に対する国家の補助とか,いろいろな専門性や経験も求められてくるというので,年齢を高く設定することの必要性や合理性が問われてきます。多分,日本の今の特別養子という制度は非常にいろいろな使い方がされていて,虐待児対応についてどこまで認めるかというのは別として,かなり年齢要件の大幅な引き上げの必要があるか疑問です。   最初の出発点の「わらの上からの養子」,実子型の養子から少し広がっていることは間違いないのですけれども,それをどこまで広げるかというのは,ある意味では虐待とかそういうものにどこまで対応するような形で,特別養子制度の目的を変えていくということをしない限りは,やはり大幅に年齢を上げるということは非常に危険ではないかというのが一つです。   それと,特別養子縁組のニーズとか,その必要性がどれくらいあるのかと,そういう年齢を上げる必要性,特に例外要件です。18歳未満,請求時にということになると,成年に達している子どもまで対象になるということになると,今回の改正が持っている意味というのは一体どこにあったのかということが,もう一回議論しなければいけない大きな改正になると考えます。   2点目は,窪田委員が研究会のときからもおっしゃっているように,我々は民法を研究していると,15歳という年齢はかなり微妙な年齢であることがわかります。ある意味で,15歳というのは,養子縁組の対象者というより,自分で判断できる自己決定ができる年齢とみられており,そういう15歳の人の判断を,やはり意思というのは考慮せざるを得ないので,諸外国では,親権でも監護の争いでもその意思は決定的と規定されていることが少なくありません。   ただ,同じように,15歳だからその意思を聴かなければならないというので,先ほど聴いた趣旨は,規定は置かれているんですけれども,規定したから,それによって左右されるという話なのか,一要素として聴いておくだけかという問題と,それから何をどう聞けばいいのかという問題というのは必ず一体になっているのですけれども,そこをやはりきちんと議論すべきではないかと思います。   前にも言ったように,新しい親と一緒になりたいという意思は大いに聴いて,多分ほとんど肯定的なことが多いと思われます。それを嫌だと言う場合には,よほど何かの事情がある。ところが,実の親というのは一緒に暮らしていない可能性もあれば,逆に言うと,大変ひどい何というか,仕打ちや経験もしていることもある。だけれども,私たちは虐待なんかのケースを扱っていても,親を子が慕うことが多く,子から親に対してノーということが難しい。DVだと,あの人と別れたい,あんな男とは一緒にいたくないと言う被害者の女性があって,さっぱりしていますよね,離婚したりすると,別れた元配偶者はすっきりしています。ところが,虐待のケースは,実の親を慕うのですよね,離れようとしないのです。   こういうような状況の中で,私は,低年齢の子はもちろんですけれども,判断させるとか,すること自体はなかなかないむずかしいですけれども,15歳とか微妙な年齢になって,自ら普通養子になれる子を対象に入れる必要があるのか,疑問に思います。先ほど平川委員も言ったんですけれども,意見表明権みたいなのを尊重するということはあるんですけれども,どこの国もですね,それをどういうふうに,誰が聴いて,どんなふうに反映させるかというのは,実は答えがない状態です。   私自身は,15歳という微妙な年齢なので,できれば,特別養子の今回の改正は,普通養子も含めてきちっとした位置付けとか議論が十分にされない時間の中でやっていますから,その限定付きですけれども,15歳というのはもうリミットとして最大限延ばしても,そこをやはり超えてしまうと,非常に難しい議論や制度設計の大きな変更になるというのはずっと考えてきました。   ですから,正直言って,8歳未満とか12歳とか13歳とかといってもですね,非常に無責任な言い方をしますが,説明は付くような付かないような,どこで線を引いてもですね。これは,6歳未満とする現行の年齢規定のときも,就学年齢前ぐらいなところに引いておいて,一応制度を動かしたら上げる可能性があると言っていたので,養子の年齢要件を引き上げる可能性というものが,まさか18歳まで考えていた人は少なかったのではないかと考えます。   これは多分,藤林委員なんかも,私も18歳はいいのではないかと思ったのは,実は成人年齢がこんなに早く18歳に--憲法改正の国民投票の影響でそういうことになってしまったので--なると思っていませんでした。それで18歳というのを一つ目安にはして,私も広げられるとしたら,それはもう監護の実態があって,過去のことをどうのこうのではなくて,もう法的な面だけで,ある意味で特別養子という形で,何かのメリットになれば,そこまで広げることは可能だと考えたことはありました。   ところが,18歳に成人年齢がもう2020年になるということになればですね,その趣旨は,子どもたちが,これから人口減少で,高齢社会が本格化するときに,もっと若い人たちが頑張ってほしいということなんですけれども,もう一方で,確かにケアが必要だったり,支援が必要な精神年齢未熟だとか,30歳まで成人年齢を上げろと,石原さん都知事当時なんか言っておられましたから,やはり今回の民法の改正としては,やはり15歳というのはある程度リミットとして置いておかないといけないと思います。それを引き上げたときに,15歳以上の者は意見を聴かなければならないと入れれば済む話ではなくて,15歳以上の人にはもっとしっかりと自分自身の選択をいろいろな形で責任も採ってもらわなければいけない時代は,またこれから先,来ると思います。   その上で,やはり15歳をどこかでリミットにしておかないと,限りなく。例えば,極端なことを言って,6歳を8歳未満に引き上げても,例外を18歳にしてしまえば,やはり15歳問題というのは出てくるんですけれども,15歳問題というのは,民法ではやはりきちんと議論しておかないといけないのではないでしょうか。つまり,15歳になったら,代諾なしに自分でできるとか,それから遺言もできるし,認知もできるとか,民法は身分行為の当事者としてみるわけで,そういう話って,正に民法がこの部分ではやはり大人として扱うということですね。   でも,大人として本当に扱えるんだろうかと,微妙な年齢のところにはなります。それで,何を決定するのか。先ほど床谷委員からもありましたけれども,拒否権を発動させることはよくないとか,積極的な同意ではなくて,消極的には同意するとかそういう話も,もっとやはり日本は議論しなければいけないと思います。だから,私はもう一回,ほかの先生と同じなんですけれども,15歳を以上に上げることの必要性と,それから妥当性,そして,養子縁組の対象とすることの相当性,それはやはりもう一回議論した上で決めるべきだと思います。   パブコメで,団体の数ではそんなに遜色がないのに,個人の数だとやたら多いですよね。これって,ほかのところでも個人でものすごくたくさん書かれる方がいらっしゃるんです。多数決で私はやることの危険性というのはもしかするとあって,そういう意味での,余り多数を占めているからこれでいくということにはちょっとにわかに賛成はません。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○藤林委員 確かに,15歳というのは微妙な年齢と思うんですけれども,でも,15歳を超えて16歳,17歳となっていくからこそ,将来のことを見据えて,自分が今までの過去,実親との関係があったり,なかったりするわけなんですが,それを振り返りつつ将来を見据えて,実親との法的な関係を終了するのが本当に自分にとって必要なのか,必要でないのかということが判断できる年齢と思うんですね。   なおかつ,18歳,私なんかが想定しているのは,前の年齢から里親さんに委託されているような子どもの場合なんですけれども,18歳になったらもう措置解除になってしまうわけです。   そうしますと,将来のことを見据えて,やはりこの15,16,17というのは大きな決断を迫られる年齢であり,そのときの選択肢として,先ほど言いましたように,実親子関係を終了させる特別養子縁組が選択できるということは非常に重要なことと思います。   確かに,英米の資料を見ても,10代の養子縁組の子どもの数は非常に少ないのは私も把握しておりますけれども,日本の場合は,この年齢の特別養子縁組がないために,里親,里親子という形で今まできた子どもさんがいっぱいいて,それは欧米の新たに保護されて,10代後半で特別養子縁組になるという場合と前提が違うので,一概に同列には扱えないと思っています。   2点目ですけれども,磯谷委員が言われたように,15歳又は16,17歳まで引っ張られてしまうという問題について,確かに今現在でも養親候補者に里親委託されたときに,それが6歳又は7歳,8歳まで引っ張られるケースというのは,日本女子大学の林先生の研究からもありましたけれども,これは,私は仕組みによって,何年も養子縁組里親さんに委託が続くということは改善できると思っています。   英語の文献なので私は十分読めていないんですけれども,多分,イギリスの法制度の中には,むやみに何年も中途半端な状態に置かれないようないろいろな仕組みというか,ルールが決められているわけです。機会があれば誰か日本語に訳してほしいわけなんですが,つまり,法制度を作っていく中で可能ではないかなと思います。今,厚労省の方からも,今後,児童相談所に対して児童相談所運営指針なり何なりの仕組みを作っていくことで可能ではないかなというふうな意見があったと思います。   児童相談所のケースでいいますと,多くは養育里親又は養子縁組里親に委託しているわけですから,何年も元々想定されていた養子縁組の申立てをされない,子どもの精神状態も親子関係も安定しているのにそこに踏み切れない場合には,それは子どもの最善の利益を考慮していないことになるわけですから,場合によれば里親委託を解除するということも考えられるわけですので,この問題は,児童相談所と養親候補者である養子縁組里親又は養育里親との関係性の中で変えていくことも可能ではないかなと思っています。   そのことをもって,10代後半の子どもの特別養子縁組の選択肢をなくすということは,私は適当ではないと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   甲乙丙,複数の案があったわけなんですが,今日のところは,15歳という線をどのように考えるのか,もちろん18歳は大きな問題であるのですけれども,15歳の方をまずどのように考えるのかということについて,より根本的な議論が必要なのではないかという御指摘が相次いでいるように思います。   窪田委員や棚村委員からは,現行法の立て付けが,15歳になったら親子関係について,子どもが自ら当事者になるということなので,そちらで考えるのが本筋ではないかという御発言があったかと思います。   床谷委員も,ドイツの制度と日本の制度との間に若干差があるといった御認識を示されたと思いますけれども,その辺りを少し詰めて考える必要があるのかと思って伺っておりました。   18歳の方につきましては,先ほど事務当局から御説明がありましたけれども,この点についても様々な御意見があろうと思います。しかし,今日はちょっと18歳の方について,意見を伺う余裕はなかなかないように思います。   この問題について,まだ御発言のない委員・幹事で,この際,御発言をという方がいらっしゃいましたら伺いますけれども,いかがでございましょうか。あるいは今日の段階で,この先のまとめに向けてこのことは特に指摘しておきたいということがあれば,お願いいたします。 ○窪田委員 ちょっともう小さいことなので,言わなくてもいいのかなと思ったのですが,やはりちょっと気になりますので,7-2の27ページのところで,この問題は,もう客観的に議論する手掛かりというのは必ずしも多くはないと思うんですが,そうした中で,恐らく事務当局としては,「総論」の3行目から,「前回会議における参考人のヒアリング」といったことをおっしゃられていると思うんですが,ただ,前回のヒアリングにおいては,養親になられた方のヒアリング,それから遠藤先生,心理学の専門家としてのヒアリングがあったのですが,養親となられた方のヒアリングの中では,あの方は普通養子縁組だったのですが,心配な点は戸籍の点だということで,ここに述べられているような実体的な話では必ずしもなかったのだろうと思います。だから駄目だということではないのかもしれませんが,特別養子を使うという積極的な素材にはならないのかと思います。   それから,遠藤先生も,子の安定的な養育にとって重要であるのは,子にとっての安心・安全な場所だというお話はされましたし,アタッチメントの重要性ということもおっしゃられたのですが,それは特別養子でないと実現できなくて,普通養子では駄目だというお話は必ずしもされていなかったのではないかと思いますので,この文脈で言及されるのは,必ずしも客観的に見て適切ではないかなと思いましたので,御検討ください。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今の御発言の中にもございましたし,あるいは何人かの委員・幹事からも御指摘がありましたけれども,未成年普通養子をどうするかという問題が非常に重要な問題としてあるわけです。今回は特別養子について考えるということで,それが(2)で出ていることになっている。そうであるがゆえに,議論がしにくいところは確かにあるのだろうと思います。   里親でなくて特別養子と選択肢が欲しいというお話が先ほどからございましたけれども,それも間に普通養子を挟むとどういうことになるのかということがあろうかと思います。しかし,限られた議論対象の中でどういう立法をするのかという観点から,できることを考えていくということになろうかと思います。   ほかに何か,ありますか。 ○藤林委員 もう時間がないので短目にお話ししたいと思うんですけれども,せっかく戸籍の説明も付けていただいているので,前回お話ししましたように,やはり普通養子縁組の一番大きな,幾つかの問題点の中の一つは,実親が実子の情報にアクセスできる,なおかつ住民票が取れるという,この問題はやはり非常に大きいのではないかな。   先ほど私言いましたように,安心・安全を確保するというのは,子どもだけでなくて,養親さんも,養親さんと子どもとの関係も守るということは非常に重要な部分です。この部分はやはり大きいのではないかなと思うんですけれども,もしできましたら,手短に戸籍の問題を事務当局から説明してもらえたらと思います。   要するに,そもそも実親は子どもの情報にどこまでアクセスできるのかできないのか,その反対に,養親はどこまでアクセスできるのかできないのかというところを,端的に説明いただければ。 ○大村部会長 今おっしゃったのは普通養子についてですか。 ○藤林委員 普通養子と特別養子の違いですね。普通養子の場合はどうなのか,特別養子の場合どうなのか。 ○倉重関係官 それでは,事務当局の方から,今回の参考資料2について御説明をさせていただきます,短目に。   既に,どういう戸籍が掲載されるかというところは御案内かと思いますが,簡単に申しますと,特別養子縁組が成立しますと,まずその養子となる者について単独の戸籍が編成されます。その後,養子となる者は,その養子となる者を筆頭とする単独の戸籍から養親さんの戸籍に入っていくと,こういうふうにな手続をさせていただいているところでございます。   なぜこのような手続を採っているかと申しますと,まず実親がどこの戸籍まで見れるかというところが,まず一つ考慮されているところでございます。直系尊属・卑属については,相互に戸籍を取ることができるということになっておりますが,実親につきましては養子縁組成立の瞬間から,その子との間で直系尊属・卑属の関係はなくなりますので,その子について単独で編成されている戸籍,中間的な戸籍の部分については,もはや見ることができないということになります。   この中間的な戸籍をなぜ作るかということですが,結局,実親の戸籍の中には,その子どもが出ていく先の戸籍としては,その子どもの出ていった先の単独の戸籍しか書かれないということになると。したがって,養親の戸籍までアクセスすることができないということは,この中間的な戸籍をつくることで担保されているということになるということでございます。   一方で,養親となる者,それから養子となる者は,どこまで戸籍を遡ることができるかといいますと,結局,自分の生まれたところまでは遡ることができるということになります。したがいまして,いわゆる出自を知る権利との関係で申しますと,生まれたところの戸籍までは遡ることができますので,自分の出自は知ることができるということになります。ただ,自分が生まれた戸籍,実親の戸籍から実親がさらにどこかの戸籍に出ていった場合については,そこについては追い掛けることができないと。なぜなら,既にその時点で実親は直系尊属ではなくなっているからと,こういったことになるということでございます。   ちょっと下手くそな説明でございましたけれども,以上でございます。 ○大村部会長 藤林委員の御希望に沿っているかどうか分かりませんけれども。 ○藤林委員 普通養子の場合との違いについて。 ○倉重関係官 失礼しました。普通養子縁組の場合は,今回配っておりませんが,直系尊属・卑属の関係は尊属するということになりますので,それは追い掛けていけると,こういうような結論になるということでございます。 ○藤林委員 住民票も見れるという意味。 ○倉重関係官 住民票につきましては,むしろちょっと今回お配りはしていないんですけれども,戸籍の附票の方で住所等は確認することができることになりますけれども,戸籍の附票につきましては4ページの住民基本台帳法第20条に書かれておりますが,戸籍の附票に記載されている者又はその直系尊属若しくは直系卑属がそれぞれ附票を取ることができるということになっておりますので,普通養子縁組の場合には子からも親からも取ることができると,このような結論になるということでございます。 ○大村部会長 今の関連の御発言ですね。 ○磯谷委員 今の関係で,一応念のため確認なんですけれども,今回の資料の2ページの(2)の下の(注)がございますけれども,要するに実親による請求では通常の方法では取れないけれども,戸籍法10条の2の第1項各号に掲げる場合には,これは請求できる。これは,例えば特別養子縁組の離縁の申立てをするというふうな目的,理由であれば,それは取れるというふうな理解でよろしいのか。   私の理解では,当然ながら請求者の述べる理由が最終的に真実かどうかは別で,少なくとも実親がそういう理由を掲げて請求をすればそれは取れるというふうに理解しているんですけれども,そういう理解でよろしいかどうか,確認したいと思います。 ○山口幹事 そこまで,確実なことは申し上げられないのですが,恐らく今,資料の3ページの10条の2というのを条文として掲げていますが,この1号として下線を引いております。正に「自己の権利を行使し」に当たるというふうに判断されるかどうかという問題かと思います。   ちょっと確実なことは申し上げられないのですが,そういうふうに該当するというふうに判断されるということもあり得るのかなと思っております。 ○磯谷委員 次回で結構です。 ○山口幹事 そうですね,次回にちょっと正確なところを用意してまいりたいと思います。 ○平川委員 内容ではないんですけれども,パブコメの扱いの説明で,この意見が多数だったから,それを考慮しなければならないという御説明があったと思います。私ほかの審議会にいろいろ出ているんですけれども,そういう行政府としてですね,そのような扱いについて初めて聴いたので,どうなのかなと思ったところですが,その辺どうなんでしょうか。 ○山口幹事 多数あったからそれに従わないといけないと言ったつもりではないんですけれども,ただ,多数になったということ自体は,それを逆に無視するのかということにもなりますので,そこはもう一度,事務当局としては頭を冷やしてですね,これまで考えてきたところを振り返ってみると,そういうことでありました。 ○平川委員 いや,すみません。そういう取扱いは全く聴いたことがないので,その説明の仕方が正しいのかどうなのかということも少し再検討していただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   パブリックコメントの点は,こういう結果が出たというのは確かですけれども,それをどのように考慮するかというのは,この場で御議論していただくことなのだろうと個人的には思っていますが,これまでの例などについても精査していただきたいと思います。   それから,その前に藤林委員から御指摘があった点にかかわりますが,実方から戸籍をたどられてしまうという問題については,いや,特別養子でもその危険は免れないのではないかというのが磯谷委員の御指摘だったかと思います。しかし,戸籍について問題があるということであるのならば,それは全体として考える必要があることで,特別養子であれば大丈夫なのか,あるいは特別養子であっても問題があるのかかということも含めて,戸籍について見直す必要があるのならば見直すということなのかと思って伺いました。   今日の御議論を伺いますと,現在出ている丙案を基にした案というのでは,なかなか容易にまとまるとは思えないという状況であると認識を致しました。様々な御議論があるということを踏まえて,何とか歩み寄ることができる案を作れるかどうかということを,事務当局にはおかれましては,更に御検討いただきまして,次回に引き続き御審議を頂きたいと思っております。   この第2につきまして,更に御発言があれば承りますけれども,いかがでしょうか。取りあえず,今日のところはよろしゅうございますか。   それでは,第1に戻って,先ほど岩﨑委員の方から申立権者の話がありましたけれども,そのほか,第1についてこういう点も検討しておく必要があるのではないかという御指摘を頂ければと思います。今日,議論することは難しいかと思いますけれども,問題を出していただきたいと思います。 ○久保野幹事 すみません。確認なんですけれども,この2段階目の成立の審判が成立しなかったときに,6か月経過したときの効果は,親権が行使できない状態が解消されて元に戻るということでよいかというのの確認です。 ○山口幹事 それはそのとおりでよろしいかと思います。 ○大村部会長 ほかにはいかがでしょうか。 ○杉山幹事 念のために確認したいのですが,1段階目と2段階目を養親候補者が同時に申し立てるときは,管轄としては同じなんですが,併合強制がされるわけではなくて,別々の裁判体で審理されるのが原則なのでしょうか,併合は任意になされるのか,どちらでしょうか。 ○山口幹事 併合は強制ではなくて,任意ということになろうかと思います。 ○高田委員 併合審理もあり得るということでしょうか,それとも同時進行ということでしょうか。 ○山口幹事 あり得るのかと思っております。 ○高田委員 併合審理の場合には審判資料は合体されるということになるんですね。 ○山口幹事 そうです。それでも対立が余りなくて,差し支えないという事例であれば,それもあり得るのかと思っております。 ○大村部会長 そのほかいかがでございましょう。 ○床谷委員 これも確認なんですけれども,ここで議論しているのは,民法の書き方をどう変えるかですよね。その場合に,この第1の1の(1)のイの「縁組希望者が上記アの請求をするときは」というのは,これは民法にはこれしか出ないんではないんですか。民法の規定の中には,養親希望者が請求をする場合を前提とした規定しか出ないということではないんですか。   児童相談所の関係のものは児童福祉法に規定するということは,この「するときは」というこういう条文ではなくて,これを当然の前提にした規定になる。つまり,同時に出すというのが民法ではあって,2段階になるのは児童相談所からのときだけという--2段階というか,第1,第2という,こういう順番になるやつは。 ○山口幹事 はい,そのとおりです。順番になるのは児相長申立てのときだけで,縁組希望者が申し立てるときは同時申立てと,こういうことになります。 ○床谷委員 民法に書くときは,これは民法に書くのと家事事件手続法に書くのとありますが,民法に書くとすると,常に同時に申立てをするという書き方になるんですか。 ○山口幹事 そういうことを想定していますが,実際ちょっと条文をどういう形にするか,まだ検討中でございます。 ○床谷委員 はい,分かりました。 ○大村部会長 事務当局から御説明ありましたけれども,児相長申立ての方の規律は児童福祉法の方に書かざるを得ないのではないかという前提で事務当局は考えているかと思いますけれども,今の床谷委員の御指摘は,そうだとすると,民法の方は児童福祉法に新たな規定を設けるということを前提にしない書き方でないといけないのではないかと御指摘ですね。   そうしたときに,児童相談所長の申立てで手続が動いていくという場合について,何か支障が生じることはないのかかという御疑問も含まれていたようにろう思います。そこも御検討を頂くという必要があろうかと思います。 ○棚村委員 ちょっと文言についてですけれども,今のところで「縁組希望者が」というのと,それから「縁組予定者」というのが出てくるんですが,ちょっと違うんですか。 ○山口幹事 希望者が親で,予定者が子どもという。 ○棚村委員 あ,予定者は子どもなんですね。 ○山口幹事 すみません,紛らわしくて。 ○棚村委員 分かりました。― ○大村部会長 ありがとうございます。   難しい問題かと思いますけれども,可能な範囲で,少なくとも紛れがないようにすることが必要かと思います。 ○久保野幹事 すみません。ばらばらに二度,失礼します。   次回までというふうに言っていただきましたので,ちょっとその点でなんですけれども,「親権者」という言葉と「親権を行う者」という言葉を,この御提案の中では別のものとして規定しているように思われまして,それと現行法との関係といったことについて,次回教えていただければと思います。すみません。私自身も整理できずにおりますので,質問だけさせていただきます。よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ちょっと厄介なことに関わる問題かと思いますけれども,可能な範囲でですね,少なくとも紛れがないようにすることが必要かなと思います。 ○棚村委員 先ほどの「養子となる者が」というので,年齢要件のときはこうなっていますよね。この辺りも少し,予定者と養子となる者とか,希望者とか,いろいろちょっと表現に混乱が生ずる可能性もあるので,そこを御検討いただければと思います。 ○幡野幹事 実親の同意についてですが,現行法では,特定のこの人であればという形で同意をしたけれども,思ったような養育の仕方とは違ったという場合には,恐らく撤回という形で,実親の側から意思表示をしてきたものと思われます。これに対し,今回の2段階の仕組みになりますと,撤回の期間も2週間と短いですし,即時抗告の期間もほぼ一緒であり,さらに錯誤に基づく取消しも予定されていないものと思われます。そうすると,その対処の仕方としては,そういうことがないような形で同意を取り付けるという方策にならざるを得ないかと思います。そういった問題もあるということを踏まえて,御検討いただければと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかいかがでしょうか。 ○木村幹事 棚村委員の質問に対して山口幹事がお答えになったことについて確認させて頂きたいのですが,15歳以上を基準とする丙案を仮に採ったとした場合に,反対の意思表示するときには特別養子縁組は成立させることができないということと,子どもに対する意見聴取との関係が,まだ整理して理解できておりません。意見聴取については,部会資料2ページのウの(ア)のところと3ページのエのところと両方に記載があるので,山口幹事も1段階目と2段階目とで意見聴取をするとお答えになりましたが,その後山口幹事が,拒否権については2段階目で扱うとお答えになりました。つまりそれは,民法上の規定として,15歳以上の子に拒否権があるということ自体は,審判の中の要件立てとしては2段階目の要件として位置付けるという理解で良いのでしょうか。 ○山口幹事 はい,そのつもりでして。ですので,極端な話し申しますと,1段階目は,子どもが嫌だというふうに言っても,縁組予定者とする処分を審判することができる。2段階目は,それはできないとういうふうに違いが分かれてくるのかなと思います。 ○木村幹事 はい,分かりました。ありがとうございます。 ○大村部会長 ほかにいかがでしょうか。   よろしいでしょうか。 ○窪田委員 すみません。あんまり自信ないのですが,今,木村幹事から御質問についてお答えがあった点,そうかなという気はするんですが,しかし,第1段階で嫌だと言っても切るというのは結構すごいなと思ったもんですから,ちょっと実質的な意味で少し御検討いただいた方がよろしいのかなと思いました。 ○大村部会長 ほかはいかがでしょうか。   それでは,繰り返しになりますけれども,時間の関係もあって,今日の段階では十分に皆さんの御意見を伺うことができませんでしたけれども,今日頂いた御意見を踏まえて,次回,改めて案を出していただきまして,引き続きそれについて御議論を頂くということにさせていただきたいと思います。   岩﨑委員の出された問題も含めて,今日,後に回した問題は,また次回以降,必要に応じて議論させていただくということにさせていただきたいと思います。   次回の日程等につきまして,事務当局の方からお願いをいたします。 ○山口幹事 次回は,来月12月25日の火曜日ということで,時間は今日と同じ午後1時30分からということになります。場所が,今日とまた変わりまして,法務省の地下1階の大会議室ということになります。ちょっとまた,今日と場所が大幅に変わりますので,御注意いただければと思います。 ○大村部会長 どうぞよろしくお願い申し上げます。   それでは,本日の会議はこれで終了したいと思います。   本日も熱心な御議論を頂きまして,ありがとうございました。 -了-