裁判員制度の施行状況等に関する検討会(第1回)議事録 第1 日 時   平成31年1月16日(水)午後3時58分から午後4時33分まで 第2 場 所   法務総合研究所第1教室 第3 出席者    (委 員)猪原誠司,大澤裕,大沢陽一郎,小木曽綾,島田一,菅野亮,武石恵美子,堀江慎司,山根香織,横田希代子,和氣みち子(敬称略)    (事務局)加藤俊治大臣官房審議官,濱克彦刑事局刑事課長,保坂和人刑事局刑事法制管理官,是木誠大臣官房参事官,宮崎香織刑事局参事官    (その他)戸苅左近最高裁判所事務総局刑事局第二課長 第4 議 題 1 座長の選出 2 会議の運営について   3 検討会の開催趣旨等の説明   4 その他 第5 配付資料   資料1:検討に至る経緯   資料2:「裁判員制度に関する検討会」取りまとめ報告書 資料3:裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第37号)の概要   資料4:裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律(平成27年法律第37号)に対する附帯決議(衆議院法務委員会・参議院法務委員会)   資料5:近年の裁判員裁判の実施状況(概要) 第6 議 事   1 刑事局長挨拶(加藤大臣官房審議官代読)   委員の皆様方におかれましては,御多用のところ,この検討会への御参加をお引き受けいただき,誠にありがとうございます。   裁判員制度につきましては,平成27年12月に施行された裁判員の参加する刑事裁判に関する法律の一部を改正する法律の附則において,政府は,同法の施行後3年を経過した場合において,施行状況等について検討を加え,必要があると認めるときは,所要の措置を講ずるものとされております。この検討会は,私ども刑事局がこの改正法附則に定められた検討作業を行うに当たり,意見交換を重ねていただき,その作業に必要な協力をお願いしたいと考えまして,開催することとしたものです。   御承知のように,裁判員制度は,広く国民が裁判の過程に参加し,その感覚が裁判の内容に反映されることにより,司法に対する国民の理解や支持が深まり,司法がより強固な国民的基盤を得ることができるようになるという意義を持つものであるとされております。そのような裁判員制度の在り方や実施状況等について,様々なお立場からの御意見を伺うことは,今般の検討に大変有意義なものであると考えております。委員の皆様方におかれましては,多様な観点から忌(き)憚(たん)のない御意見をいただきたいと存じております。   2 座長の選出   委員の互選により,大澤委員が座長に選出された。   3 座長挨拶 ○大澤座長 御推薦をいただきまして座長を仰せつかりました大澤でございます。議事に入ります前に,一言御挨拶をさせていただきます。   本検討会は,名前についておりますとおり,裁判員制度のこれまでの施行状況と,それを踏まえた今後の対応について意見交換する,それをミッションとしているものと認識しております。裁判員制度は,前回の法改正から3年というお話がございましたが,さらに御承知のように,本年5月で実施から10年を迎えるということでございます。制度としてしっかりと定着してきたことは間違いないと思われますけれども,幅広い見地からその実施状況を振り返り,今後の在り方を考えるということは,この制度が担う役割,機能を一層よりよく果たしていく上で大変重要なことだと考えております。そのような観点から,限られた時間ではございますけれども,できるだけ多くの方に御発言をいただいて,充実した議論ができるように努めてまいりたいと思っております。   先ほど,審議官が代読された刑事局長の御挨拶にもありましたが,本検討会は事務当局の検討作業に資するということを一つの目的に,幅広い見地から御意見をお出しいただいて議論を深める,そういう場だと認識しております。そのような趣旨にも照らして,事務当局の方にも積極的な議論への参加をお願いしたいと思っているところでございます。   慣れない座長ということで,いろいろと御迷惑をおかけするかもしれませんが,及ばずながら力を尽くしたいと思いますので,どうか皆様にも御協力をお願いいたします。   4 会議の運営について   協議の結果,議事の公開について,次の取扱いとすることとなった。   ・毎回の会合につき,発言者の氏名を明らかにする形で議事録を作成し,用いた資料とともに公表する。   ・報道機関(各社1人)に会場における議事の傍聴を認める。   ・第三者の名誉,プライバシー等の保護のために公開に適さない場合及び公開すると円滑な議論に差し支えが生じると考えられる場合には,議事の公開を停止して,報道機関の傍聴を制限し,あるいは,議事録に記載しない取扱いをすることがあり得る。 (報道関係者入室)   5 検討会の開催趣旨等の説明 ○大澤座長 検討会の開催趣旨等の説明を事務当局からお願いします。 ○宮崎参事官 それでは,事務当局から,本検討会の開催趣旨等について御説明申し上げます。   検討会の開催趣旨を御説明するに当たり,本検討会での検討に至る経緯から御説明いたします。資料1を御覧ください。   裁判員制度は,司法制度改革の一環として導入されたものです。平成11年7月に司法制度改革審議会が内閣に設置され,平成13年6月に意見を取りまとめており,その意見において,「国民的基盤の確立(国民の司法参加)」が挙げられ,刑事訴訟手続において,広く一般の国民が,裁判官とともに責任を分担しつつ協働し,裁判内容の決定に主体的,実質的に関与することができる新たな制度を導入することが提言されました。   同審議会意見を受け,平成13年12月,司法制度改革推進本部が設置され,同本部事務局において,「裁判員制度・刑事検討会」を設けて,裁判員制度の導入のための法律案の立案作業を行いました。そして,「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律案」が国会に提出され,同法律案は,国会の審議を経て,平成16年5月21日,可決され,5年後の平成21年5月21日から施行されています。なお,施行までの間,平成19年5月に,いわゆる部分判決制度の創設等を内容とする裁判員法の一部改正が行われました。   平成16年に成立した裁判員法の附則第9条においては,施行後3年を経過した場合に施行状況について検討を加え,必要があると認めるときは,所要の措置を講ずることとされていました。法務省では,この検討のため,平成21年9月に,「裁判員制度に関する検討会」を設け,意見交換を重ねていただきました。同検討会は,平成25年6月に検討結果を取りまとめており,本日,これを資料2としてお配りしております。   資料1の2ページ目にあるとおり,法務省では,同検討会の検討結果を踏まえた上で,更に所要の検討を行い,法制審議会での調査審議及び答申を経て,裁判員法の一部を改正する法律案を立案しました。この改正法は,国会の審議を経て,平成27年6月に成立し,同年12月に施行されました。この改正法における改正の概要は,【改正の概要】に記載のとおり,4点ありますが,これは後ほど説明いたします。   この平成27年の改正法においては,資料の枠囲みに記載してあるとおり,附則第3項において,「政府は,この法律の施行後3年を経過した場合において,新法の施行の状況等について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて,裁判員の参加する裁判の制度が我が国の司法制度の基盤としてより重要な役割を果たすものとなるよう,所要の措置を講ずるものとする。」とされています。   昨年12月で改正法の施行から3年を迎え,法務省としましては,この検討に当たり,法曹三者等の実務家,刑事法の研究者といった専門家の方々に御意見を伺うほか,法律の専門家でない方からの御意見も伺いたいと考え,本検討会を設けることとしました。   本検討会は,先ほど官房審議官代読によります刑事局長挨拶にもありましたように,事務当局と密接に意見交換を重ねながら,検討作業に必要な協力をしていただくものです。本検討会は,平成21年から開催された「裁判員制度に関する検討会」と同様に,法令に基づいて政府の機関として設置される審議会等といった性格のものではなく,会として統一した意思決定を行うことをお願いするものではありません。私どもといたしましては,御議論の内容を真摯に受け止め,検討作業にいかしてまいりたいと考えておりますので,皆様方におかれましては忌憚のない御意見を賜りますよう,御協力をお願い申し上げます。   また,本検討会においては,現行の裁判員制度の枠組み及びその運用に関わる事項を中心に,裁判員法の施行状況とそれを踏まえた対応の在り方などについて検討いただくこととなりますが,具体的にどのような事項を取り上げるかにつきましては,今後,皆様に御協議いただきたいと考えております。   次に,平成27年の裁判員法一部改正法につきまして,その改正概要を御説明いたします。資料3を御覧ください。   改正内容は4点ありまして,まず,1点目は,非常に長期にわたる事件の対象事件からの除外に関する規定が設けられました。具体的には,審判期間が著しく長期又は公判期日が著しく多数で,裁判員の選任等が困難な事案については,裁判官のみで審判を行うこととされたものです。   2点目は,災害時における辞退事由の追加で,重大な災害で被害を受け,生活再建のための用務を行う必要があることが,裁判員の辞退事由として明記されました。   3点目は,非常災害時における呼出しをしない措置として,著しく異常かつ激甚な非常災害で交通が途絶するなどした地域に住所を有する裁判員候補者は,呼出しをしないことができることが明記されました。   4点目は,裁判員等選任手続での被害者特定事項の保護の措置として,被害者特定事項の秘匿決定のあった事件の裁判員等選任手続において,裁判官,検察官,被告人,弁護人は,裁判員候補者に,氏名及び住所等被害者を特定させることとなる事項である被害者特定事項を正当な理由なく明らかにしてはならない。裁判員候補者又は裁判員候補者であった者は,裁判員等選任手続で知った被害者特定事項を公にしてはならないこととされました。   この平成27年の改正法では,先ほど御説明したとおり,附則第3項に3年後の検討条項が設けられたほか,衆議院法務委員会及び参議院法務委員会で附帯決議がなされています。資料4を御覧ください。   まず,衆議院法務委員会の附帯決議ですが,附則に基づく検討において対応を求めるものとしては,まず,第3項において,「三年経過後の検討の場を設けるに当たっては,国民の視点からの見直しの議論が行われるよう,裁判員経験者,犯罪被害者等の意見が反映されることとなるように,十分に配慮すること」とされ,また,第7項において,「三年経過後の検討に当たっては,死刑事件についての裁判員制度の在り方,性犯罪についての対象事件からの除外などの犯罪被害者等の保護の在り方,否認事件への裁判員参加の在り方,裁判員等の守秘義務の在り方等,当委員会において議論となった個別の論点については,引き続き裁判員制度の運用を注視し,十分な検討を行うこと」とされています。   次に,参議院法務委員会の附帯決議ですが,附則に基づく検討において対応を求めるものとしては,まず,第5項において,「三年経過後の検討の場を設けるに当たっては,国民の視点からの見直しの議論が行われることの重要性を踏まえ,裁判員経験者,犯罪被害者,法廷通訳人などの裁判員裁判関係者の意見が反映されるようにすること」とされ,第6項において,「当該検討に当たっては,国民の司法に対する理解・支持を更に深め,司法の国民的基盤をより強固なものとして確立する観点から,裁判員制度の対象の範囲,死刑事件についての裁判員制度の在り方,公判前整理手続の在り方等について着目し,十分な検討を行うこと」とされています。   今後,本検討会で具体的にどのような事項を取り上げるかを協議いただくに当たっては,これらの附帯決議も踏まえていただければと思います。   次に,近年の裁判員裁判の実施状況につきまして,概要を御紹介いたします。資料5を御覧ください。こちらは,最高裁判所が公表されている資料を基に,事務当局で作成したものです。   まず,「① 受理人員,判決人員数等」を御覧ください。裁判員裁判の対象事件は,死刑又は無期の懲役・禁錮に当たる罪と,故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪の事件ですが,年間の受理人員は,平成27年が1188人,平成28年が1003人,平成29年が1081人となっており,判決人員は,平成27年が1182人,平成28年が1104人,平成29年が966人となっています。例えば平成29年の判決人員につきまして,罪名別に見ますと,右のグラフにありますように,殺人,強盗致傷,傷害致死,現住建造物等放火,強制わいせつ致死傷,覚せい剤取締法違反,強姦致死傷といった順になっています。   次に,「② 選定された裁判員候補者数等」を御覧ください。裁判員になる場合,まず,年に1回作成される裁判員候補者名簿に登載され,その後,具体的な事件について裁判員候補者として選定され,さらに,裁判所での選任手続を経て,裁判員に選任されるという流れになります。この表の「選定された裁判員候補者数」とは,裁判員候補者名簿に登載された人数ではなく,具体的な事件について裁判員候補者として選定された人数で,平成29年では12万187人となっています。選任された裁判員数は,平成29年では5536人,選任された補充裁判員数は,平成29年では1896人となっています。   次に,「③ 平均審理期間等」を御覧ください。実審理期間とは,第1回公判から判決までの期間です。平成29年では,平均実審理期間は10.6日,平均開廷回数は4.9回となっております。   説明は以上です。 ○大澤座長 ただ今の説明について御意見あるいは御質問等,おありでしょうか。 ○島田委員 一つ質問させてください。この検討会を進めるに当たって,裁判員裁判の関係者の方の意見を十分に聴くことというふうに衆議院や参議院から附帯決議がなされておりますけれども,どのような形でそういう方たちの意見を聴くことを予定されているのでしょうか。 ○大澤座長 事務当局のお考えはどうですか。 ○宮崎参事官 方法といたしましては,ヒアリングの実施などが考えられるかと思います。具体的にどういった方をどうするかということは,今後,御協議いただこうと思っているところです。 ○大澤座長 よろしいでしょうか。 ○島田委員 はい,結構です。 ○大澤座長 ほかに御意見,御質問等ございますでしょうか。今日のところはこの程度ということでよろしいでしょうか。それでは,御説明に対する質疑はここまでということにいたします。   6 その他 ○大澤座長 次回以降の会合についてお諮りをしたいと思います。次回以降の予定について,事務当局の方で何かお考えがおありでしょうか。 ○宮崎参事官 事前に委員の皆様と調整させていただき,第2回会合を2月22日金曜日午前10時から,第3回会合を3月28日木曜日午後1時30分から開催する予定としております。   議事の内容につきましては,まず,最近の裁判員裁判の実施状況等について把握いただくことが今後の御議論に資するのではないかと思われますので,第2回会合においては,裁判員裁判の実施状況について最高裁から御説明いただくとともに,島田委員から,裁判員等選任手続等の運用における裁判所の取組について御紹介いただいてはいかがかと考えております。   そして,第3回会合においては,裁判員制度の運用における法曹三者の取組について,裁判官,弁護士,検察官の立場から,それぞれ島田委員,菅野委員,横田委員に御紹介していただいてはいかがかと考えております。 ○大澤座長 ただ今,第2回の会合と第3回の会合の日程と議事内容につきまして御説明がございましたが,事務当局の提案のとおりでよろしいでしょうか。 (一同了承) ○大澤座長 ありがとうございます。第4回以降の予定につきましては,次回以降,また改めて協議をさせていただくということにしたいと思います。   それでは,本日予定した議事は以上でございます。特にこの際,御発言等がなければ,これで閉じさせていただきたいと思いますが,よろしいですか。   それでは,本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-