法制審議会 特別養子制度部会 第8回会議 議事録 第1 日 時  平成30年12月25日(火)   自 午後 1時28分                          至 午後 5時14分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  要綱案の取りまとめに向けた検討 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは,定刻になりましたので,法制審議会特別養子制度部会の第8回会議を開催いたします。   最初に,事務当局の方から配布資料の御確認をお願いいたします。 ○倉重関係官 本日は,まずお手元に資料番号8として,「残る論点についての検討」という資料を配布させていただいております。   それから,本日,床谷委員から,「第8回審議事項に関連する比較法資料」という資料を提出いただきましたので,机上に配布しております。この内容につきましては,各論点の議論の中で,委員から説明について補足の説明があるということでございます。   以上でございます。 ○大村部会長 資料の方よろしいでしょうか。   それでは,本日の議事に入りたいと思います。   今御説明がございましたけれども,配布されております部会資料の8は,要綱案の取りまとめに向けて検討しておくべき,なお残されている論点を取り上げて検討したというものでございますので,これにつきまして御議論を頂きたいと思います。   順序としては,まず,部会資料8の「第1 特別養子縁組の成立に関する規律の見直し」のうち,実親の同意の性質について御議論を頂き,その後,第2の「養子となる者の上限年齢等について」という部分について御議論を頂くということにしたいと思います。この第1と第2に分けて御議論いただきまして,間に休憩を入れる予定ですけれども,進み方によっては,休憩前に第2に入るということもあるかもしれません。   ということで,早速第1の審議に入りたいと思いますので,まず事務当局の方から部会資料の説明をお願いしたいと思います。 ○倉重関係官 それでは,第1について御説明申し上げます。   第1は,実親の同意の性質を検討するものです。前回会議におきまして,実親の同意の性質について議論があったことを踏まえまして,養親となる者を特定してする特定同意,養親となる者を特定しないでする白地同意,養親となる者について一定の条件を付してする条件付同意について検討いたしました。この点につきましては,前回会議において,特定同意を前提に第1段階の審判をすることができることとしますと,このような審判がされた場合には,当初想定されていた養親候補者との間で特別養子縁組が成立しなかったときに,第1段階の審判が無駄になってしまうこと,また,ほかの養親候補者との間で特別養子縁組を検討するたびに,第1段階の審判を得なければならないこととなって,実親に特別養子縁組の同意というつらい決断を何度も強いることになりかねないことを指摘する御意見がございました。   そこで,本部会資料では,第1段階の手続における実親の同意は,白地同意でなければならないこととすることを提案しております。白地同意を原則とした場合には,実親の同意が取りづらくなるのではないかとの懸念があり得るところですが,この点につきましては,実親が特定同意にこだわるのは,実親と養親候補者との間に対立がない事案であると考えられますことから,このような場合には,第1段階の審判を先行させる必要がありませんので,手続の終盤で実親からの同意を得るという運用をすれば問題が生じないのではないかと考えられます。   また,特定同意につきましては,これを有効としますと,最初に述べたような弊害がありますほか,部会資料2ページの(2)アに記載しましたような面識のない夫婦について同意した場合でも,第1段階の審判がされるという弊害が生じますし,条件付同意につきましても,例えば養親候補者の条件該当性について紛争が生じかねないという問題が生じ得ますので,無効と扱うべきであるように考えられます。さらに,同意が要件とされていることの本質は,親としての法的地位を失う実親の利益を保護することにあると考えられますが,このような観点からは,養親候補者が誰であるかは問題にならないことを考慮しますと,白地同意のみを有効と扱うことは許容されるものと考えられます。   このような検討を踏まえまして,本部会資料では,第1段階の手続における同意は白地同意に限るという規律を提案しております。これまでの規律を変更することとなりますことから,この点につきまして御意見を賜りたく存じます。   以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   前回,手続につきましては,大筋では皆さんの合意を頂いたように思いますけれども,細部につきまして幾つかの問題が提起されておりまして,そのうちの一つがこの実親の同意をどうするのか,資料の言葉で言いますと,特定同意と白地同意の関係をどうするのかということであったかと思います。その点につきまして,一つの提案を頂いたと思っております。   この点につきましては,様々な御議論があろうと思いますので,御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。 ○棚村委員 前回,私の方で,第1段階の審判で一体何が確定されるのかというところで,白地同意との関係で,特定同意について整理をしていただいて,どうもありがとうございました。   ただ,ちょっと私が気になっているのは,水野委員もおっしゃっていたと思うのですけれども,養親になろうとする者が具体的にいらっしゃって,それで,そこで幸せに育つということについてももちろん同意はされるのだと思います。ただ,問題なのは,とにかく自分は育てられないから,縁も切れて,誰かのところにとにかく幸せに行ってくれればいいということの同意というのもあると思います。要するに,かなり具体的なものから,とにかく,どういう人でもいいけれども任せるので,幸せになってくれればいいという概括的な同意もあります。その辺り,中間でいろいろな条件を付けたり,こういう人がいいとかという希望みたいなものはあり得ると思います。ただ,法的にはそれがどこまで認められるのかという話とは,別のことではないかと思うのですけれども。   私が,一番気になっているのは,4のところで,白地同意でなければ駄目なんだという話と,特定同意で,こういう方が具体的にもういらっしゃって育てておられるというのは無効であるという点です。例えば,里親さんとしても実績もあって,その方でお願いしたいということについて,第1段階で無効だというのがよく分かりません。つまり,何を審判の対象として判断をすればいいかということですけれども,例えば,実親さんとしては,あっせんのときでもそうですし,こういう方がいいとか,こういう人が望ましいとかって御希望を述べられるということはあり得ると思います。でも,それを述べてはいけないというよりは,述べられた上で,法的に何を大事なものとして確定をしていくかというときに,一番大きなものが,とにかく自分は育てられないので,どなたかいればいいという大枠があって,さらに,具体的な方もイメージして同意をされた場合でも,とにかく幸せになってくれればいい,自分との縁は切れるというところが,やはり一番大事なところであって,それを何か条件を付けられたり,特定の方でなければ駄目だとか,子どもの行き先まで,全てそろわないと駄目だということには,ならないのではないかと感じているところです。   そうなると,結論的には構わないのですけれども,第1の審判で確定するのは,事件本人が縁組予定者であるということを確定すればよくて,誰と誰との間でとかどういう条件でというのは確定する必要がないので,結果的には,白地同意ということが原則になってくるかもしれないのですけれども,4のところでちょっと気になったのは,特定同意をされたらそれは無効だという話ではなくて,むしろそういうことは言われたけれども,聞き置いておいて,一番大枠のところで,とにかくしっかりと育ててもらえる人のところへ行ってもらえればいいというところを,法的には確認をさせていただいて,そして,結果的には白地同意ということが原則になってくるかもしれませんけれども,それについて,例えば,条件を付けられたら,条件については,やはり聞いてはおいたけれども,法的にはそれを確定するとか条件自体は審判の対象になりません,特に身分行為の場合は,条件を付けた上で,例えば,こういう条件だったら結婚するとかしないとかという意思決定をされても,それはやはり,身分行為というのは,なるかならないかとか,するかしないかということが一番大事な点だと思うので法的拘束力はない。例えば,資産があると思って結婚したら,実はなかったとか,そういう話というのはいっぱいあるわけで,そうすると,身分行為として一体何を確定をしていこうとしているのかということを中心に考えると,事件本人が縁組予定者であるということをしっかり決めていただいて,それに対しての同意というのは,私は特定同意というのもあり得るんだと思うのです。   ある具体的な方がいらっしゃったり,そういうような形で事実が積み重ねられているときに,その方がいらっしゃることで安心して同意しますというのを無効にする必要はないのではないのかというのは,ちょっと私の感じているところで,全体としては,私自身が意見をご配慮いただいた,懸念したところについては取り入れていただいたというような感じを持っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今の点について,事務当局の方,棚村委員の御懸念について,お答えを頂ければと思いますが。 ○山口幹事 ありがとうございます。   棚村委員がおっしゃっているのは,特定同意も有効にしたらどうかということなんでしょうか,それとも,特定同意を,この人となら同意しますよと言われた途端に,はい,無効とするのではなくて,そこからきちんと説明して,この親御さんがいいんですねと,それは分かりますけれども,第1段階の手続が終わってしまったら,それはあなたが特定した人以外の親御さんとの関係,養親との関係でも養子縁組は成立しますよと,きちんと説明しないといけないということをおっしゃっていたのか,どちらでございましょうか。 ○棚村委員 要するに,審判の対象として何が確定されたのかというときに,有効とか無効とかというより,御本人にきちっと,こういう段階ではこのことが確定をされますよということを説明された上で,それが無効であるとか有効であるというより,意思の内容を確認されるということでよろしいのかなと,イメージとしては思っています。 ○山口幹事 そうしますと,やはり棚村委員としても,そこで確認するべき同意は白地同意なのではないかということでございましょうか。 ○棚村委員 大枠としてはそうではないかと考えています。それを進んで,いろいろな条件を挙げられたり,いろいろなことを挙げたとしても,聞き置いたとしても,法的には取り上げず,本当にその子が特別養子の対象者になりますよということを確認すればよい,そのためには,実親の方が同意されて,自分の関係も終了して,特別養子という枠の中で幸せになれるということが重要だと思います。こういうことが最終的には確定されると。同意の内容も正にそれではないかという意味では同じかもしれませんが。ただ,ちょっと誤解が生じないか恐れるわけです。つまり,無効だとかという話になると,一体何に同意しているのかというと,水野委員もおっしゃっていたように,具体的な方がいることが多いような場合には,むしろそのことについては無効ですよみたいな話をされることによって,養子縁組に対する気持ちとか同意が大きく揺らがないか,ちょっと心配なんです。効力の問題よりも,むしろ特定同意みたいなことでされている方も結構いらっしゃると思うのです。でも,それは,大は小を兼ねるではないですけれども,次の手続のときにはそういうことが生かされるというような御説明でいいのかなと思うのですけれども。 ○山口幹事 今伺っていましたら,私どもも同じ考えでして,ただちょっと,やはり御指摘いただいて,資料の書き方がちょっとよくなかったなと思います。 ○棚村委員 そうです,資料の書き方の問題だとも考えます。 ○山口幹事 ありがとうございました。 ○窪田委員 棚村先生から出た御指摘,問題意識というのは非常によく分かるのですが,ちょっとだけ分からないのが,棚村先生の今の御説明ですと,条件付同意とか特定同意だったら,特定の部分が,あるいは条件付きの部分が無効になるということに結局なるのではないかなと思うのですが,普通,条件付き行為が無効になるという場合には,条件を付けた行為そのものが無効になると考えるのではないかと思いますし,条件を付けた特定の人であればオーケーだという場合に「特定の人」を抜いてしまって,抽象的に,私と子どもと実親関係が切れるということについての同意はその中に含まれているんだから,それだけ見れば有効だというのは,ちょっと一般論として言えるのかなというのがよく分からなかったのですが。 ○棚村委員 私が気にしていたのは,やはり実際に同意をされるときに,時期によっても揺れ動いておられることも結構あると思うのです,はっきり決めたりなんかしたときに。そのときに,児童相談所長とか縁組希望者自体が,この第1段階の審判を申し立てるということがあると思うのですけれども,多分,縁組希望者の場合には,どちらかというと,次の段階をかなり意識された上で取られる同意なんだと思います。   ただ,藤林先生とか岩﨑先生の話を伺っていると,児童相談所の場合には,もちろんそれが多いけれども,必ずしもそうではなくて,これから候補者を探すということも出てくるということになると,この辺り,ちょっと私は実際のイメージの中で少し考えてみた結果なんですけれども,基本的には身分行為の条件付同意とか特定同意というのは,それに対する確かに具体的な同意ということになるので,それが離れてくると,効力が非常に問題にはなるとは考えています。   ただ,今回の場合に,縁組希望者が申し立てた場合以外の児童相談所長というのが申し立てたときに,私が懸念をしているのは,先ほど説明の仕方でと言ったのは,つまり,児童相談所長というのは,前から言うように,養親の縁組希望者に対する支援みたいなことをしなければいけないと同時に,実親に対する支援みたいな,中間的な案として,多分担当者が異なれば構わないのではないかという考え方あると思うのですが。ただ,当事者から見たり,裁判所から見ても,やはり児童相談所というのはそういう複雑な立場に置かれるのではないかと思ったので,どっちかというと,私は,説明をしっかりとしていただいて,外から見ても,実はこれはこういう形で関わっているんだということで申し上げたので,ある意味では,身分行為の性質というのであれば,かなり具体的に特定した同意とそれから白地同意というのは違うものですし,条件付同意ももちろん違うものだと考えています。けれど,手続の中ではやはり,同意の内容についてそういう意味では説明をきちっとすることと,それから,ちょっとこの資料の取扱いについて,当事者がどういうふうに受け止めるかということに配慮した記載にすべきではないかということで,質問をさせていただいたものです。 ○大村部会長 今のお話を伺っていると,資料は白地同意を原則とするという考え方で書かれていますけれども,養親候補者が特定されている場合に,特定の人を養親としてほしいという実親の希望はどのような形で受け止められるのかということについて,御質問がなされているということかと思います。特定同意は認めないというだけでは済まない問題があるという御指摘だろうと思いますけれども,そこのところを少し補足していただいたほうがいいように思います。   実方と養方との間で激しい対立があるというわけではなくて,養親として特定の人を想定していて,それが実現するだろうというような場合には,どういうことになるのかということですが。 ○山口幹事 資料で申しますと,2ページ目の冒頭の辺りに書いているのですが,ちょっと分かりにくい記述だったかと思いますけれども,養親候補者と実親との間に対立が余り激しくないという場合には,養親候補者自らが申し立てるということも多いでしょうと。その場合には,2段階の手続,両方同時に申し立てないといけないとなっておりまして,そうしますと,並行して審理をしていって,第2段階の手続の審理が進んで,もう養親子の適合性もありだなという心証が得られた段階で,改めて,もうそれ何回目かかもしれませんけれども,改めて実親に同意をしていただくと。そのときには,形の上ではこの養親さんとなるでしょうけれども,そこでおっしゃっていただいている同意は,それは法的には白地同意なのであるということだと思います。   ただ,そこに誤解があってはいけませんので,棚村先生がおっしゃるように,今これがほぼ順調にいくと思われるので,そういう同意の仕方をしていただいていますが,万万が一というときには,これはほかの養親さん,適切と思われる方を,裁判所が適切と思う方との間での縁組を成立させることもできる,それも許すという同意なんですよということの説明は,やはり必要かなと思います。ありがとうございます。 ○水野(有)委員 実務の現状等をお話しさせていただきますと,部会資料では,問題のないケースでは,審理の終盤に同意を確認すればよいと整理されているのですが,もう御案内だと思いますが,現在の実務では,審理の比較的早期の段階で,家裁調査官が調査により同意を確認しております。そうでないと,なかなか養親候補者が安心して試験養育を続けることができないからです。   そうすると,審理の終盤に同意を確認するときには,その分,もう一回養親候補者を不安定な地位に置くことになります。今のお話ですと,まず特定同意を取って,試験養育して,白地同意を取るという審理を御想定されていると思ったのですが,少なくともそうだとすると,今までの実務の運用とは変わるということは,御理解いただいていますでしょうか。 ○山口幹事 はい。実務の運用が,今御教示いただいたとおりであるということは承知しておりますし,私の方としても,2回必ず取らないといけないと申し上げているわけではないですけれども,そこで,最初に今と同じように,初期段階で同意を取るというときに,その段階で白地同意であるということを理解した上で同意してくださるのであれば,2回取る必要はないかと思うんですけれども,そうでないということであれば,また時間を置いて同意いただくとかということも必要になってくるのかなと思います。 ○水野(有)委員 だから,審理は変えるとおっしゃっているということでよろしいのですね。従前は,最初に個別的な同意を取っていて,その後何か反対が出てくればもちろん意向の確認をしますが,何も問題なければ最終確認を全件でするということは,多分ないと思うのですけれども,そこは,変えざるを得ないとおっしゃっているのですか。 ○山口幹事 私も今の実務の流れは理解しているつもりなんですが。 ○水野(有)委員 おおむねはね。 ○山口幹事 はい。どういう説明をしておられるのかという辺りまでは,きちんと把握していませんで,そこでおっしゃるときというのは,もう,もちろん特定のお名前を示して,この方について…… ○水野(有)委員 そこまでは,もちろん申し上げないと思いますけれども。元々最初から積極的に実親の方から子を特別養子に出したいとおっしゃって,具体的にもう白地同意的な話になっているときは,細かい説明は多分しないと思います。他方,実親が逡巡したり悩んだりされているときには御説明をすることがあって,事案によっては固有名詞までは特定しないけれども,属性まで細かく御説明することもある。事案によって説明の度合いは違うというのが,率直に言って実務かと思います。   いずれにしても,当初のところで,少なくともその人に関してはという個別同意を取る事案から白地的な同意を取る事案まで,様々な事案があり,最後まで特に異議が出なければ,最終的なところで特に確認はしないという形だと思います。その実務を前提とすると,理論的な整合性をとるためには,従前の実務が変わってもやむを得ないというお考えなのですか。 ○山口幹事 はい,そのとおりです。 ○水野(有)委員 そうですか。そうなりますと,前から申し上げているとおり,従前では問題がなく成立していた事案が,問題なく成立はややしにくくなるということは,もう御理解いただいて,政策判断として従前の特別養子で成立していたものがより少なくなっても,それはそれでいたし方ないというお考えなのですか。 ○山口幹事 そこを御指摘いただくと正にそのとおりでして,特定同意も有効とした場合の問題点というのもあろうかと思っていまして,そことのバランスかと思っております。その問題点と申しますのは,これまでの部会でも議論に出ていたところですけれども,特定同意を得て1段階目の審判がされて,2段階目の手続で,特定された養親との養親子適合性がないと判断された場合には,1段階目の審判,言わば無駄になってしまうというところがありまして,その無駄を採るのか,御指摘のように最初の同意が取りにくくなるというところの問題の方が大きいと見るのか,そのバランスなんだろうなと思っております。 ○水野(有)委員 そのバランスは多分政策判断なので,裁判所が申し上げることではないとは思うのですが,ただ,論理的に言って,部会資料では同時審理・審判をする場合を念頭に問題がないとの書きぶりがされているのですけれども,同時審理・審判がされるのだったら,山口幹事御指摘の問題は元々生じないので,論理的に言ってどうなのかというのが,率直に言って思うのですけれども。審判が同時に出されることしか想定していないのであれば,先ほどおっしゃった,審判が別々となった場合のデメリットというのを考えることが,論理的にはあり得ないのかなと,これを読んで,裁判官としてというより,論理性という観点で思わなくもなかったところです。   ですから,そのようにお考えになるのでしたら,場合によっては,むしろ最初にきちっと正確に全て説明して白地同意を取るべきだとおっしゃれば,それはそれで論旨一貫するような気もするのですが,この記載のトーンが,どちらなのかが分かりづらいというのが,場合によっては,棚村委員と同じ疑問を違う方向から申し上げているのかもしれないんですけれども,疑問としてあります。従前の特別養子の良さをいかすのであれば,むしろシンプルに特定同意も有効と言っていただいたほうが,かつ,同時審判がもう原則だから,逆にそういう審判が別々にされた場合のデメリットを考える論理的な必要性はないと言っていただければいいかなと思います。ただ,理論的に,こういう作りで白地同意以外があり得るのか,あり得ないのかという論点は,もちろん残ろうかとは思いますが。 ○大村部会長 ありがとうございます。   水野委員,今の御発言の中で,現状では白地同意のようなものから特定同意まで,その間のものを含めていろいろなものがあるとのお話をされていたかと思いますけれども,それがどのように分布しているのかということも,この問題を考える上で重要かなと思いますけれども,何かその点についてありますか。   先ほどのお話だと,白地同意的なものも多いというようなニュアンスかと承ったのですけれども,その辺りはどうなんでしょうか。 ○水野(有)委員 統計をとったことがございませんが,何人かの裁判官に聞いたところ,やはり一人一人の扱う母数が少ないので,人によって印象が全く異なるというのが,実際上のところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございました。   今のところにつきまして,ほかに御意見があれば伺いたいと思いますが,いかがでございましょうか。 ○宇田川幹事 今の点とも関連するのですけれども,私も,どういう実務が想定されるかというのが分からなくて,白地同意が有効で特定同意は無効という規律だとすると,先ほど審理の終盤で改めて白地同意を取ればいいというようなお話もございましたけれども,審理の初期の段階で同意を取ったときに,それが特定の方でないと駄目だという特定同意であった場合に,同意の撤回制限とも絡んでくると思うのですけれども,それはやはり無効だという理解でよいのかという点,一度お答えいただいてもよろしいでしょうか。 ○山口幹事 今おっしゃったのは,最初に特定同意がされて,しばらくして撤回すると言ったときに,その同意に撤回制限がかかるのかということですよね。それ,ちょっと内部でしっかり検討したわけではないんですが,私個人の考え方として,やはりそれは撤回制限はかからないんだろうと思います。特定同意を無効とするからには,その同意には意味は余りないということでしょうから,今のところそのように考えております。 ○宇田川幹事 ありがとうございます。   その特定同意が無効ということなのですけれども,具体的に,例えば民法上どのような規律を設けることをお考えになっていらっしゃるのでしょうか。 ○山口幹事 この点について,特に条文の変更が必要とは考えておりませんで,と申しますのが,今の条文も,特に特定同意であるとか白地同意であるということが明確にされているわけではないと思いまして,そこは解釈なのかなと思っておりますので,そういう意味では,特に規定を変える必要はないのかと思っています。   このような発想の規律ぶりについてはずっと後の問題かと思っておりますが,今のところ考えているのは,そのようなところであります。 ○宇田川幹事 ありがとうございました。   また違う観点からの指摘もさせていただきたいと思っているのですけれども,白地同意を確認するとしても,同意が取りづらくなることはないと整理されているところですけれども,結局終盤の段階の説明であっても,やはりその養親候補者以外の者との養子適格をも認めることになるという旨の説明をすることが避けられず,事案によってはうまく心証も交えて説明できる場合もあるとは思うのですけれども,やはり実務上同意が取りづらくなる場合というのは否定し難いと考えておりますので,その点も含めて,また改めて御議論いただきたいと考えているところです。   それと,特定同意のところの関係で,先ほど,解釈で特定同意を無効とすることもあり得るのではないかというような趣旨にとれる発言もあったかと思うのですけれども,現行法上は特定同意は有効であると考えられています。特定同意が不相当であるということについて,部会資料2ページの(2)のアで,実親が面識のない著名人夫婦を特定して,特別養子縁組の成立に同意している場合という例が出ていますけれども,現行法上は,特定の養親候補者による申立てがされて,当該候補者との間の縁組についての同意を確認するということが実務上されているところですので,何かここに書いてあるような,実務上余り現行法でも想定されていないような,著名人夫婦を特定しての同意というのと,養親候補者が申立てをしている場合に,その養親候補者に限定した同意を得るというのとでは,また違った議論があると思っております。実際に申立てが養親候補者からされている場合には,結局その審判の対象としても,その養親候補者との間の縁組についての確認を求める,養子適格性を求めるということも申立ての趣旨として考えることはあり得て,そうだとすると,その申立てとの関係で,この特定の養親候補者に対する同意が有効か無効かという議論も出てくると思っております。結局,むしろ議論すべきなのは,養親候補者が1段階目の審判を申し立てたときに,自ら候補者として申し立てるという,そういった規律を設けるのかどうかという点であるようにも考えられると思いますので,その点も含めて御議論いただければ,非常に有り難いと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   養親候補者を特定した形のものが残らないと,やはり困るのではないかという指摘を,複数頂いておりますけれども,この点につきましてほかに何か御意見等ございましたらお願いいたします。 ○幡野幹事 この問題については比較法的な話を知りたいと思います。そこで,ドイツ法についての床谷先生のお話を伺いたいと思っているのが第1点です。第2点として,フランス法はどうなっているかといいますと,前回のときに,2歳以下の場合は白地の同意のみ許容されるという話をしました。その趣旨は,子どもの取引,つまりお金が媒介することを防ぐというのがその目的であるというお話をさせていただきました。実は,それに加えて,子どもが児童相談所あるいは養子縁組をあっせんするために許可された団体に託されていたときも,白地同意のみが許容されるという民法348条の4という規定があります。その趣旨としては,児童相談所に子どもが預けられているときには,より団体に養親候補者を選択するイニシアチブというものを強く認めるという,政策的な判断があろうかと思います。いずれにせよ,原則は特定同意だけれども,今述べたような二つの例外があるというのが,フランス法の制度となっております。   私個人といたしましても,やはり特定同意は一律無効というのは少し厳し過ぎるかと思います。せっかく2段階に分けて,なるべく特別養子縁組制度を利用しやすくするという当初の目的からすると,そこがブレーキになってしまうのは望ましくないことなのかなとは思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   床谷委員のお名前も挙がっており,また,床谷委員から出していただいている資料の中に今の点に関わる規律もありますので,よろしければ,床谷委員から御発言いただいた上で,手を挙げていただいた水野委員に御発言いただくことにしたいと思いますが,床谷委員,いかがでしょうか。 ○床谷委員 前回の会議で,委員と幹事の間で白地同意のことについて意見が対立しておりましたので,それについて,一応ドイツ法の立場を改めて御説明しておきたいと思います。   ドイツ法は,基本的には白地同意については禁止するということで,法律上はなっています。なぜ禁止しているかということについては,基本的には,実親が子どもに対して保護,監護する第一次的責任者であるということで,子を養子縁組に出す場合であっても,そこの最終的な責任を持つ立場ではないかという考え方が強いということで,立法化のときにはそのようにされています。   一方の養子縁組をする親の方の情報の秘匿という課題もありましたので,それを調整するために,特定しているけれども,その人自身を特定するような個別情報は出さないで,匿名の形で同意をするということは,法律上明文で認めています。この場合,具体的にどこの国籍で,どのような宗教で,どのような職業でといったような情報を与えた上で,それで同意をもらうということになっています。また,その場合は,あっせん機関として少年局が主流ですので,その少年局が持っている養親候補者リストの中のこの人どうですかという形で,ナンバーを付けて,それで同意をするかしないかというのを決めるというのが,実際のやり方のようです。基本的には,例えば,少年局が持っているリストのどなたでも結構ですというような同意はできないと考えています。したがって,この人という形で特定の定まった人に対して同意をすると。ただし,もしその人が駄目な場合は,次はこの人という形の提案はできると実務上はなっているようで,それが第2,第3,第4となっていくと,そこはちょっと問題があるというような形で,実務は運用されているようです。   ただ,こうしたやり方については,やはり最初予定していたものがうまくいかなかったときに,その同意が無効になり,改めて同意を取り直すというのは,養子縁組を滞らせるということで,それに対しては,隣国のフランスやベルギーとか,あるいはアメリカの例として言われているように,白地の同意の方が養子縁組を促進するためにはよいのではないかという意見も,結構コンメンタールの中では示されています。そういう意味では,少しドイツ法も動いているところで,実務と民法の規定の間で動いているといったようなところかと思います。   お手元の資料のところにありますが,一つの養子縁組手続ごとに親の同意を得るという場合に,予備的な同意は取っておくという程度のことはできるということで,しかし,最初の次の人のときに,改めて探して同意を取る手続を取るというのは時間がかかるし,同意を不要とする補充手続もありますけれども,それ自体が手続に時間がかかるので,批判が最近は出てきているといったようなところです。   ドイツ法の説明については以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   幡野幹事,床谷委員から,現在提案されているのとは違う考え方に基づく立法例を御紹介いただいたということかと思います。   水野委員,お待たせしてすみません。どうぞお願いします。 ○水野(紀)委員 ドイツ法やフランス法を御紹介いただいて,大変興味深いんですけれども,何しろ普通養子をまとめて考えることが今回は許されていないということが大きな相違なんだろうと思います。普通養子の場合には,それこそ特定同意中の特定同意という形で大きく動いている養子縁組は,そちらの方は触らないということですので,特別養子についてだけという議論をするときには,私は,だったら白地同意の方が筋が通るようには思います。   ただ,この問題についても非常に危惧をしておりまして,前回も申し上げましたけれども,こういう養子縁組について,要保護児童の養子縁組について,ドイツのように少年局が全部実際には仲介して,サポートして活躍しているという,実親の支援を行った上で,その中の一環として養子縁組が行われるという立て付けにはなっておりません。つまり,私人間でということで,この特別養子が動くということがあり得るわけです。   そうすると,前回もちょっと危惧として申し上げましたけれども,典型的に自分で育てられる能力がなくて,福祉施設に入れたまま何年間もネグレクトしているというふうな場合だったらいいと思うんですけれども,そうではなくて,ようやく子どもを連れてDVから逃げてきた,でも,PTSDで精神的にも落ち着かなくて,そして,金銭的にも貧しくて上手に育てられていないというときに,でも,そういう親も,サポートを受ければ十分に育てられるというときに,やはり実親が支援を受けて育てたほうがいいと私は思うんですが,でも,何しろそういう状態であるときに,実は,元夫の親族から特別養子の提案がある,そして,彼女のところにいきなりそういう申出が行って,うまく育てられていなくて生活が回っていないときに,自衛能力がなくてパニックになったまま,ちょっと里親さんに見てもらうような感じで預けたところ,そのまま流されていって,そして,あなたの育て方はすごく下手ですから,子どものためにはいい親に任せたほうがいいわよってずるずるっと流されていって,実は元夫側の養親希望者が申し立てていたというようなケースも,事態としてあり得ると思うのです。   実務がどういうふうに動いているのかというのも,現在の実務を今一つ,私,よく分かっておりませんし,それから,これからの先の実務がどう動くかというのもますます分からないのですけれども,そんな私の心配しているような流れが,どういう形でこの白地同意のときに防げる仕組みになっているのかというのを,御説明いただければと思うのですが。 ○大村部会長 ありがとうございます。   白地同意が濫用される可能性があるのではないかということで,幡野さんのお話の中にもそれが入っていたのかもしれませんけれども,このような懸念について,何か対応をお考えなのかという御質問かと思いますが,いかがでしょうか。 ○山口幹事 まずは,同意をされるということは,正に今の事例がそうでありましたように,実親,今の例ではお母さんということなんでしょうけれども自らは育てることができないということで,その後に,元DV夫の親族に引き取られるということかと思います。実際なかなかそれを防ぐ,特に実親のイニシアチブで何か防ぐ手段があるかというと,今のところ,私としてはちょっと考えつかないところであります。   ただ,もし仮にそれで裁判所が特別養子縁組の成立を認めるということであれば,やはりそのこと,DVが原因でそういうふうになっていったということはさて置き,しかし,その子にとっては,親戚に引き取られていったほうが利益になるという判断だということだと思いますので,それが必ずしもいけないことなのかなという気もしております。 ○大村部会長 水野委員,何かありますか。 ○水野(紀)委員 私は,その場合には,実親の支援を手厚くするというのが必要なことではないかなと思っております。 ○棚村委員 これも御質問で申し訳ないんですけれども,第1段階の審判のときに,年齢要件とか,あるいは同意とかとかについて,かなり早い段階でなぜ取らなければいけないかというと,試験養育とかということが開始するというのもありますから,それも,前からずっと養育していれば問題ないわけですけれども,審判の申立てみたいなところから養育を始めようという場合が出てくることもあります。第2段階との関係もあると思うのですけれども,養親の候補者が仮に申し立てたときに,どの段階で実親の同意を取るかというときに,実親との縁を切って特別養子に出すという同意と,それから,試験養育も含めて,これから具体的な手続が進むんだというんで,手続全般の説明もしなければいけないときが出てくると思います。この第1段階と第2段階で,私もイメージとしてはかなり早い段階で,同意があるものについてはさっさと,さっさって言うと失礼なんですけれども,比較的迅速に進んでいくと思います。しかし,同意がないとなると,少しいろいろなことを聴いたり,調査したり,審理しなければいけないということになって,やはり要保護性とか,それから必要性のことは,割合とそれが大体確認できた後の方で審理,判断できるように思います。その辺りの最初のイメージが,私も同意とかほとんど問題ないものについて,養親候補者がやっているときは,特定同意というんですか,そういうものを前提として進んでいくんだろうなと考えていました。   もう一方で,そうでなくて児童相談所長みたいな人が,少しもう里親さんとか施設へ入っているとかいろいろなケースであっせんする場合には,その同意,やはりこれもかなり早い段階で取っていくのではないかと,ちょっとイメージしていました。その結果,気になっていたのは,せっかく第1段階の審判をしたのに無駄にならないようにということで前回も申し上げて,それで白地同意というのがある面では,場合によっては原則化していくという流れもいたしかたない,原則化というか,それもできるかぎり取る必要が出てくる。だけども,特定同意というのも,それでは必要ないかとか,余り意味がないかということを言うと,その手続を無駄にしないようなために少し工夫をしていただきたいと思います。やはり同意の有無については,かなり早い段階で,問題のないケースだったら一番確認がしやすい部分ではないかと思うのです。   そうなってくると,やはり第1段階のところで特定同意か白地同意かということについて,もちろん白地同意でもいいのですけれども,何らかの誤解のない説明をされていくときに,問題がなければすらっといくのではないかと思うのですが。それで,第2段階の方にまた移っていくということで,迅速にされたほうが何かいいのかなという感じをもちました。特定同意について,無効とまではしなくても,何か工夫できないのかなという趣旨で,発言をさせてもらいました。 ○藤林委員 この議論になかなかついていけていないので,少し筋違いの話になるかもしれませんけれども,前回も発言しましたように,児童相談所が実親の同意を取るときに,基本的には白地同意で,床谷委員がドイツ法の紹介で示されているような匿名同意のような,ある程度の情報は提供するけれども,個人情報,住所,氏名は教えないというふうな形で,児童相談所の場合には養子縁組里親委託の同意を取るわけなんですね。そこから,養親候補者の方が申し立てていくわけですけれども,もしその第1段階で認められたときには,当然実親の方はこの養子縁組里親さんのところに部分的な情報だけでも行くものと想定しているけれども,最終的にはマッチングでうまくいかなくなったときには,また別の養親候補者の方に行くんだと,大体は理解していると思うんですよね。   ですから,この申立ての制度は,最初の段階で児童相談所としては,この養子縁組,里親さんに委託しているけれども,もしうまくいかなかったときには,あなたが行った同意というのは白地同意なので,別の方に行くことは自動的になりますということは,多分あらかじめ説明するのではないかと思うんですね。ですから,家庭裁判所の方でも,そこは早い段階で説明されても,多分ほとんどのケースは,だからといって同意撤回するということにはならないのではないかなと,私は思います。   ただ,我々児童相談所を介しない個人間の特別養子縁組の同意の場合,それから養子縁組あっせん機関の中には,自分のところの養親さんを,この人だと管理特定している場合に,それがもしマッチングの末成立しないといったときにどうなるのかというのは,ちょっと経験がないのでよく分からないんですけれども,そのときは,例えば,個人間の場合には特定されているわけなので,この方以外には同意するつもりが元々ないにもかかわらず,第1段階へ進んでしまったら,いや,あなたは,これ,白地なんで,誰でもいいんですよと言うと,何かちょっとだまし討ちみたいになってしまうのかなというところも,気になるところなんですけれども,ドイツ法のように,児童相談所があっせんする場合には,これはもう白地なんだけれども,そうでない場合には,特定という選択肢も残るのかどうか,ちょっとその辺ぐらいまでしか,私は考えられないんですけれども,意見として述べさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○磯谷委員 今,特定同意を排斥するかどうかというところで,排斥すべきではないという意見が多分続いていると思います。   私自身は,ちょっとまだ態度を決めているわけではないのですけれども,あえて逆の立場から検討してみると,一つは,特定同意を許容するリスクとして,要するに人身売買のようなかたちで使われるおそれがあり得るのではないかと考えます。現在,少子化,晩婚化,不妊なども増加していて,養子縁組に関して,子ども側のニーズもさることながら,養親側のニーズというのが強く出てきている,そういう時代だろうと思うんですね。そういう中で,最初から養親候補者を特定して同意をするということ,その候補者以外は認めないということは,その背景に,例えばお金のやり取りなどが隠れているかもしれない。そうではなくて,誰が養親になるかは最終的に裁判所にお任せするんだという文脈であれば,恐らくそういったお金のやりとりという事態は生じにくいだろうなと思うんですね。もちろん,人身売買的な疑いが審理の中で見えてくれば,これはもう当然,裁判所としては養子縁組を認めないということになるんでしょうけれども,裁判所が全ての事情を把握するということも難しいということになりますと,制度的に「最後の最後は,思惑とは別の人になるかもしれない」という余地を残しておくことが,政策的にいいのかもしれないと思います。   もう一つは,いわゆる第2段階,つまり特定の養親と養子とのマッチングを考える段階ですけれども,ここでの考慮要素として,実親と養親との関係ということを考えるのかどうかというところがあると思うんですね。もちろん虐待のケースなんかは,そんなことは考えられないのでしょうけれども,こと同意のケース,特に実親と養親候補者が何らかの関係性があるケースを考えますと,子どもの利益という観点からは,これまでの議論でも出てきましたように,やはり実親と養親との関係というが良好であるということが,子どもにとって非常に大きな安定要素になると考えられるわけで,そういったところをもし必要性の要件の中で考慮するとしますと,例えば,白地同意に絞ったとしても,実親が,いや,私はこの親御さん,この養親候補者さんを希望するんだとおっしゃれば,それは,同意という意味では意味がないことにはなってしまうけれども,しかし,その後の具体的なマッチングにおける審理の中では考慮要素になって,結果的には実親さんが許容しないマッチングというものは,子どもの利益に反するという一つのクッションを置いて実現されないということにもなるのかなと。そうすると,白地だけにしたとしても,結局,実親が望まない養親は排斥することが可能であり,余り不当な結果にはならないのかもしれないなとも思いますので,事務当局のように,白地で統一するということも確かに一つの整理かなとは思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   棚村委員,それから山根委員と順でお願いします。 ○棚村委員 白地を原則にしていくのか,それとも特定同意も可能とするのかというところで,ちょっと疑問を提起して,私が口火を切ったのですけれども,私自身は,やはり特別養子縁組をいか利用しやすくするか,ほかの制度との整合性というのは,いろいろ問題があっても少し思い切ってやるんだという点も理解しているつもりですが,本当に白地同意だけで利用促進ということにつながるかという疑問と,それから,家裁の実務をやはり余り大きく変えないほうがいいのではないかと両面で考えています。   つまり,何か手続も,2段階にするとか,実務のやり方も大きく変えなければいけないということになると,これは,家裁を擁護するという立場から言っているわけではなくて,むしろ実務で今までやってきたものが,例えば,養親候補者にしても児相にしても,それを大幅に変えるということになると,説明だとかいろいろなことをしなければいけないということになると思います。それをやはり最小限にすべきであり,なおかつ,お話を聞いていると,どうもあっせんの問題と,それから養子縁組の成立とか同意に関わる問題とが,何かごっちゃになっているようにも思えます。あっせんというのは正に大きな問題であって,どういうふうに実親さんに対する支援をしながら,子どもが適切なケアを受けるような受け皿に結び付けていくかという問題なんですけれども,飽くまでも,実親との関係が切れるという特別養子縁組の第1段階の手続で,正にそのときの同意は一体どういう同意なんだということが明らかにされる必要があります。しかも,成立の手続の中でどう位置付けられるんだというお話なので,その辺り慎重に区別をしながら,議論すべきではないか。私も特定同意の可能性というんですか,そういうのはやはり少し残したほうがいいと考えています。つまり,従来型の特定の方がいらっしゃって,第1段階も第2段階もそうやって進むというものと,そうではなくて,児相長が関わって,少しいろいろなことが予想されるとか,これから適当な養親さんとか里親さん,養親候補者さんを見付けなければいけないというところも広げていくんだというケースも含む,そういう中で2段階手続が採られ,実親との対立関係みたいなものもできるだけ構造的に持ち込まないようにと配慮する。その中でやっていくためには,やはり家裁の実務は余り大きく変えず,なおかつ利用促進につながるというので,せっかく採用した二段階手続で,白地同意一本に制限したために利用が減ってしまうということになると,それはできるだけ避けたほうがいいと思います。負担にならない同意の取り方とか,あるいは位置付けみたいなことで,従来の特定同意というのも生かしてゆくべきであり,白地同意一本でいくんだという方針で進めていいのかなというのが,疑問として解消できていません。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○山根委員 すみません。最初の頃の説明で,無効という言い方がやや問題があった,書きぶりについてもうちょっと考えていきたいという事務当局の方のお返事があったと思うんですけれども,それで,どういう言い方を考えられるのかなというのを,いろいろ思っていたわけなんですけれども,今案があればお聞きしたいということと,やはり幅広く捉えて制度を進めていくには,今回の案でもいろいろ懸念はあるとしても,まとまっていくのかなと思うんですが,例えば,原則という言い方も言葉としては出てきていると思うんですけれども,そういう“原則”という言い方にすれば,ある程度救えるようになるのか,その辺りをちょっとお伺いしたかったのです。 ○山口幹事 まず,お尋ねのありました書きぶりの問題ですが,先ほど御指摘がありましたのは,御指摘を受けて改めて見直してそう思いましたのは,今の資料の書きぶりですと,もう特定同意は無効ですねと,そこでおしまいみたいな感じになっていて,それがちょっとよろしくなかったかなと思っております。   やはりそういう,最初は養親候補者を特定してする同意をされたとしても,更にきちんと説明をして,制度としては白地同意一本なんですよと,ですので,ここで今候補に挙がっている方はこの方ですけれども,この方とうまくマッチングがいかなかった場合には,ほかの養親候補者,適切な方との縁組も認めるという意味になりますが,それでもいいですかというような説明をきちんとする必要があるということを,この資料に記載しておくべきだったなと思っておりまして,そこは改めようと思っております。 ○山根委員 原則と,原則白地同意とするとした場合は,今の案とは違ってくるんですか。 ○山口幹事 そうですね。今の案は例外を認めないという,かなり,そういう意味でも皆さんが違和感を感じておられるのもそうかなと思われます。先ほど東京家裁の水野委員から御指摘がありましたように,正に政策判断なんだろうと思っておりまして,私どもとしましても,ここは是非,私どもだけで決めてしまうのではなくて,広く御意見を伺いたいなと思っております。   今日の御議論を伺っていると,割とやはり例外もなく特定同意を全て無効にしてしまうということについては,違和感がかなり大きいのかなと受け止めているところであります。 ○水野(有)委員 ちょっと戻るのですが,宇田川幹事からの質問に対して事務当局の方からのお答えの中で,民法の規定がこのままでも白地同意と読めるのではないかというお話をされたような気がするのですが,それはそうなのですか。 ○山口幹事 そこはいろいろ意見があるところかと思いますので,ちょっとこれ以上,余り具体的なというところは聞かれても,すみません。 ○水野(有)委員 分かりました,ありがとうございます。   あともう1点なのですが,例えば,実父が,実母と別れた後とか,元々結婚していない場合などに,新しい配偶者と共に特別養子縁組をする,その際に,実母の方も本当に真摯に同意しており,子を育てられないので実父にお願いしたいとして,特別養子を認める事案も全くないわけではないかと思います。そのような事案があるとすると,特別養子で白地同意という発想ではない事案も想定できなくもないかと思いますので,そのような事案もあり得ることも含めて,御検討いただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○久保野幹事 すみません。私も意見の方向性としましては,やはり白地同意のみではなく,例外を認める場合,例外といいますか,特定ないし匿名の同意がふさわしい場合はないかということが気になっております。白地同意にすべきという理由の中で,特定の人を想定して同意がされていたところ,養親子の適合性が否定されたときに,別の方と円滑に,次の候補者と円滑に縁組を成立させて,子どもの福祉を,利益を図っていくということが目指されているわけですけれども,それは,やはり別の養親候補者がしっかり確保されて実現していくということを想定して議論しているわけですが,そのような別の可能性を開くということを,誰がどのように責任を持ってやるのかというところが,少し気になっております。具体的に言いますと,児童相談所が申立人のときは,先ほどのフランスの話も参考になりましたけれども,児相が多分責任を持ってやっていくという発想で見ているんだろうと思いますが,1段目が縁組希望者の申立ての場合に,その当初の希望者との養親子適合性が2段階目で否定されたとき,その後に,どのような主体が別の養親候補者を探してくるのかというところが気になるところです。あっせん機関なり児童相談所が積極的に探してくるのだと期待できるのであれば,白地同意にして安心と言えるような気がしますが,そのような積極的な動きが確保できなかったり保証できないのであると,白地同意を取ってということでよいのかということに不安が残るように思います。   どこかの説明で,子の利益について親に判断させなくても,家庭裁判所がその判断をしていくという仕組みであるから,大丈夫だということが言われているわけですけれども,だからといって,家庭裁判所が別の養親候補者を見付けてくるということはできないわけですので,やはり少し慎重になったほうがいいのではないか,仮に白地同意を認める方向で行くのであれば,そこで誰がどう責任を持つのかというところは,意識したほうがいいように思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○窪田委員 今,多くの方から意見が出ていたところと基本的に同じことになりますし,あるいは,原則例外という立て方をもうするのではなく,一時期の案で出ていたと思うのですが,養親を特定し,又は特定しないという形での同意というのを,もう有効だとしてしまってもいいのかなという気もいたしました。   なぜそのようなことを申し上げるのかというと,今まで出てきた実質的な話でもありますが,元々,同意に関して,有効性が問題になっていたのは,特定同意ではなくて白地同意はそもそも有効なのかという問題だったのだろうと思います。現行法を前提とすると,白地同意が当然に有効かどうなのか自体が明確には読めないと。そうだとすると,むしろ2段階に分けたときに,そうして1段階の段階では,正しく養親候補者が決まっていないという形であっても,白地同意が有効だということを示せれば,取りあえず足りるのではないかということだったように思います。そうではないパターンに関して,特定していたら今度は無効とまでする必要はないのかなという気もします。特定同意を有効だとした場合に出てくる問題というのは,今,久保野幹事からも出ておりましたけれども,第1段階が空振りになってしまうという話なんですが,その不利益というのは,それほど大きいものなのかなというと,全体の制度設計からいうと,場合によっては無視できる程度のものなのではないのかなという気もいたします。むしろ原則例外というのではなくて,特定又は特定しないという形での同意を有効だという方向で,検討していただくというのもあるのかなと思って,伺っておりました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   多くの委員,幹事から御意見を頂きましたけれども,特定同意を認めたほうがいいのではないかという御意見が多かったように思います。藤林委員は,児相不関与の場合については,やはりそれは必要ではないかということなので,白地同意一本ということではないと理解しましたし,磯谷委員は,別のところで特定同意に示されている実親の要望を反映できるようなものが考えられるのではないかということだったかと思います。   事務当局の方も,それは手続的に難しいという御指摘があったわけですけれども,このように原則を定めたとしても,特定同意について,実質的には考慮することができるという前提でお考えだったと思いますので,何らかの形で特定同意について受け皿が必要だというところについては,意見は一致しているようにも思います。そうすると,ではどのように線を引くのか,あるいは線を引くのが難しいのならば,窪田委員がおっしゃったように,線を引かないで組み込むことができるのか,そうしたことについて,事務当局にさらに御検討いただくのがよいかと思いますが,この点については,それでよろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは,今の点につきましては,御意見を参酌して,更に事務当局の方で御検討いただきたいと思います。   第1につきまして,ほかに何か。よろしいでしょうか。 ○床谷委員 先ほどの久保野さんの,第1が駄目なとき,児童相談所が関わっていない場合に,第2にどうつないでいくかという話ですけれども,父母の同意によって選任されている後見人が,私の方は,児童相談所が自動的に後見人という案ですが,後見人に選任されている人が,その状態に子どもを置いておくことは後見人としての職務に反するので,しかるべき形で次の者に進めるという職務があるんではないかと,私は思っていたのですけれども,違うんでしょうか。 ○大村部会長 受け皿はなくならないのではないかという御指摘ですね。 ○手嶋委員 その観点も入ってくるとなりますと,余計に未成年後見人としてどのような方を想定するのかというのが,非常に難しくなると直感的に思いますので,そのような立て付けを考えるのであれば,適切な未成年後見人の確保の手法を併せて御議論いただかないと,難しいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。 ○磯谷委員 先ほどの床谷先生の疑問に対するお答えになるかどうか分かりませんけれども,多分,今の文脈でいくと,恐らく当初失敗した養親候補者さんも,一定期間多分試験養育のような形で面倒見ているとすると,恐らく児福法の30条で,児童相談所に同居人届を出すのかなと思いまして,そうだとすると,児童相談所が養子縁組そのものにかかわっていないとしても,少なくとも把握をしていると思われます。そして,これは全国やっているのかどうか分かりませんけれども,同居人届を出されたとところに児童福祉法27条1項2号の指導措置をかける児童相談所が,私が知る限りはそれなりにあると思っています。そうすると,児相としてはこの家庭を把握をしていますから,第1段階で裁判所の決定が出ているとなると,裁判所がこのお子さんを養子縁組適格と判断したことがわかりますので児童相談所としては,それである養親候補者さんが駄目だということになれば,別の方を探す機会は十分あるのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   久保野幹事が御指摘の問題から始まって,幾つか御意見を頂きましたけれども,久保野幹事の御指摘の問題は,特定同意を入れたとしても可能性としてはなお残りますので,その場合に,一つ目が空振りだったというときに,そのあとどうするかということにつきましては,頂いた御意見を踏まえて,これも少し御検討いただきたいと思います。   ほかはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,休憩を予定している時間までまだ少しありますので,次の第2に進ませていただきたいと思います。   第2は,養子となる者の上限年齢等についてということでございますけれども,資料につきまして,事務当局の方から説明を頂きます。 ○満田関係官 それでは,第2について御説明させていただきます。   第2は,養子となる者の上限年齢等を検討するものでございます。   まず,前回会議におきましてですが,18歳を超えた子どもについても,特別養子縁組を成立させることの是非等について御議論がありましたので,この点を踏まえ,上限年齢について再度検討させていただきました。   今回の案は,民法上,実親の許可等がなくても,自ら普通養子縁組等をすることができる年齢が15歳となっていること等を踏まえまして,特別養子縁組における養子となる者の上限年齢については,原則として縁組成立の審判の申立時において15歳未満とすることとしております。ただし,その審判申立時に15歳を超えている子どもであっても,安定した家庭環境の下で養育すべき場合があるという御指摘がございましたことも踏まえ,一定の要件の下で15歳を超えた子どもについても特別養子縁組の成立を認めることとしております。もっとも,前回の会議における議論を踏まえまして,子どもが成人に達した後も特別養子縁組が成立するといった事態を避けるということが必要と判断いたしましたので,子どもが18歳に達するまでに審判が確定することが確保されるような要件というものを設定することと考えております。   そこで,例外要件ですけれども,まず,例外的に子どもが15歳を超えて特別養子縁組を成立させ得ることのできる要件としまして,一つ目としては15歳前,15歳に達する前から養親となる者が養子となる者を引き続き監護していることという要件のほか,15歳に達するまで特別養子縁組成立の審判の申立てがされなかったことについて,やむを得ない事由があることという要件の二つを設けることを提案させていただいております。また,特別養子制度が縁組成立後において子どもを養育することを目的としているということも踏まえまして,縁組成立後に確保し得る養育期間も考慮すべきとすることも提案させていただいております。さらに,付随的な論点ではございますが,養子となる者に子どもがいる場合についても,その考え方を事務当局の方で整理させていただいております。   これらの点につきまして,御意見を賜りたく存じます。   説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   資料5ページ以下を御覧いただきますと,まず,中間試案の甲案,乙案,丙案が挙がっておりまして,それから,前回部会資料における要綱案たたき台が出ております。今回は,要綱案たたき台について更に検討をして,いくつかの点を変更したらどうかということで,御説明があったと理解しております。   前回いろいろな御意見が出て,要綱案たたき台のままでいけるかどうかというような問題もありましたので,現時点では,要綱案のたたき台はここに書かれた状態のままになっておりまして,固まった案を御提案するということではなく,今のような考え方を踏まえて御議論を頂くということにさせていただきたいと思います。   さっそく御議論いただきたいと思いますが,前回の審議の際に申し上げましたように,意見の対立が著しいというのが現在の状況かと思います。もし合意が形成できないということになりますと,案を取りまとめることができないということになります。いろいろなお考えがあると思いますけれども,最初に検討し始めたときに,現行法の年齢要件を緩めるということで,そのことを前提にして甲,乙,丙の3案が出ております。どの案についても,あるいはどれかの修正案についても,まとまらないということになりますと,年齢を緩めるという甲,乙,丙の3案がいずれも前提にしている考え方が実現されないということになります。ここでの議論の方向としては,甲,乙,丙,あるいはその間に位置する修正案のどれかで議論をまとめるということを,皆さんお考えだろうと思いますので,そういう方向で御発言を頂ければ幸いでございます。   言わずもがなのことを申し上げましたが,御意見を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○磯谷委員 ちょっと質問なんですけれども,9ページの下から,31行目ぐらいでしょうか,「そこで」というところで,要するに,ここは,18歳以上の者を養子とする特別養子を成立させることの可否についてという文脈でありますけれども,私は18が成年になった場合に,18以上を養子ということはあり得ないと思ってはおるんですが,この最後のところの書き方の確認なんですけれども,要するに,18歳になったら,成年になったら,もう特別養子縁組の成立は認めないというふうな規律は盛り込むのか,それとも,それは盛り込まないで,別の工夫で実質的にそういうふうな結論にしたいとお考えなのか,そこのところをちょっと,最初確認をさせていただきたいと思います。 ○山口幹事 具体的な規律をどうするのかというのは,またいろいろな観点から検討が必要かと思いまして,今,私の方に定まった考え方があるわけではありませんで,まずは,その辺りの実質を御議論いただければなと思っている次第であります。 ○磯谷委員 もしそうであれば,18歳に,成年に達した場合には認めないという規律はきちんと設けた上で,もう一つここに示唆されておりますような,18歳に近いところの場合に,残り期間なども含めた形で必要性があるのかどうかというのを判断する。そうしないと,ちょっと18歳というラインが,この特別養子の枠組みの中でどういう意味があるのかはっきりしないまま裁判所に判断を委ねることになるのではないかと思っておりますので,繰り返しになりますけれども,審理の途中であっても18歳になったら特別養子縁組は認めないということは,明確に規律したほうがいいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   書き方の問題は多少残るかと思いますけれども,上限18歳であるということについては,はっきりさせたほうがいいという御意見だったと思いますが,まず,この点について何か御意見がありましたら伺いたいと思いますけれども,いかがでしょうか。   前回,18歳を超えてもということを強く主張される方は余りいらっしゃらなかったのかなと思いますけれども,いかがでしょうか。   ここは,前提にして固定してよろしいでしょうか。 ○岩﨑委員 今の児童福祉法では,対象年齢が18歳になっています。これが,成年年齢になることはほぼ決まっているとしても,今現実的には18歳を過ぎてもかなりの数の措置延長を認めているんですね,施設の子どもも里親の子どもも。それは,18歳では自立ができない状態があるということです。20歳までは少なくとも措置延長を,数の制限はあるとしても,認めているのは,現実的にその子どもだけでは生活が成り立たないというような状況があるということです。例えば,それで特別養子という形で動き始めたのに例えばですよ。18歳までに審判が出なかったことのために,もう一回振り出しに戻ってしまうということになるんでしょうか。そういうことになると,即ち18歳になったら特別養子は認めないということを明言してしまうと,この中でも何度か書かれていますけれども,審判がいつ成立するかについては予測し難い問題が含まれているということですから,15歳未満のケースだとしても,成立が18を超えることがないわけではないでしょう。だけど,原則して18歳までに成立をすることを前提とするということですよね。それがまして15歳以上であって,諸般の事情で審判がなかなか下りないうちに18歳を超えてしまった。では,そもそもこの特別養子縁組の話は,それでなくとも難しいところをやっているんだから,また御破算ですねっていうことにしてしまうとすれば,例外的,もう例外中の例外として挙がっていた子どもにとっては,とても悲しい結果になるのではないかという辺りを,ちょっと心配するんですけれども,いかがなものでしょうか。 ○大村部会長 伺っていると,岩﨑委員は,18歳まで申立てを認めるという前提に立たれていると思うんですね。ですから,そこのところを議論しないと,今のような限界事例が出てくるのか,出てこないのかということが定まらないということになりましょうか。 ○岩﨑委員 なりますか。はい,なるほど。 ○大村部会長 もし18歳まで申立てを認めるということになると,申立時に18歳未満であって,それを少し超えた場合に救わなくていいのかという御議論も出てくるのかと思いますけれども。今のところ,皆さん,上限は18歳と考えておられる。この後,15歳という年齢をどのように扱うのかということを議論する必要があると思いますが,こういうふうにしましょうか,18歳を上限とするということについて,差し当たり,皆さん,大まかな同意は得られている,しかし,申立て年齢をどうするかということによっては例外があるかもしれないという御発言が残っている,これを共通の前提にして,ほかの問題について御議論をしていただく。ほかの問題について御議論が固まってくると,今の問題についても着地点が定まるのではないかと思いますけれども,いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   よろしければ,今のようなことで,取りあえず18歳を超えるということについては,それは原則としては考えないということを確認して,先に進みたいと思います。 ○平川委員 少し論点がずれるんですけれども,そもそもこの部会が始まった当初,法案成立時の立案担当者の話がよく出てきておりました。わらの上からの養子というふうな言葉でずっと言われ続けてきて,確認をしたいのは,やはりそういうある一定の年齢までではないと,わらの上からの養子の趣旨であるとか,実質的な親子関係を形成するのは,やはり幼少の頃からではないと駄目なんだというふうな理屈は,もはや今回のこの検討の場ではあり得ないということも,同時に確認するということでいいのかどうなのかということです。   そうしないと,パブリックコメントを見てみますと,やはりわらの上からの養子を前提にした御意見も多数あったと思いますので,それも含めて,ちょっとどうなのかというのを確認をしたいと思います。 ○藤林委員 今の大村部会長のまとめ方をちょっと確認したいんですけれども,要するに,15歳,16歳,17歳の子どもの特別養子縁組をどのような場合に認めるのか,どういうメリットがあるのか,デメリットがあるのかということを十分議論する中で,この18歳までに成立する必要があるのか,また,岩﨑委員が言ったみたいに,18歳を超えてもなおかつ認めたほうがいいのかというのは,後から議論するということという意味ですか。それとも,もう今の時点で,成立前,18歳前に成立するということを,この場で結論を付けてから,休憩を挟んで議論するということなのか,そこのまとめの趣旨がちょっと今一歩よく分かっていなかったもんですから。 ○大村部会長 少し整理をし直しますけれども,18歳を上限とするということについては,多くの方がそうお考えいただいているのは,先ほど岩﨑委員がおっしゃいましたけれども,成年年齢が下がるという前提で,特別養子というのは未成年者のための制度だと皆さんお考えになっているということかと思います。さしあたり,このことを確認する。ですから,18歳を超えるということは通常はないということを確認する。ただし,全ての場合に,18歳を超えることはないという原則を貫くことができるのかという問題は,どこかに年齢の線を引くときには,必ず出てくる問題です。15歳で線を引くとしても,そういう問題は出てくると思います。いまのところ,これは未成年者のための制度だということについては意見の一致を見た。その前提で,あとの御議論を頂くということかと思いますが,それでよろしいですか。 ○藤林委員 はい,了解しました。 ○大村部会長 その上で,平川委員からの問題提起がありましたけれども,何かそれについての御発言があればと思います。 ○棚村委員 私も気にはしているのは,普通養子制度があって,それで特別養子制度というのができた経緯とか目的,これをどういうふうに捉えるかというので,私自身は,対象となる子どもの年齢要件というのは乙案を支持して,大体小学校ぐらいまでという提案をしたのは,正にどれくらい広げていくのが,制度として整合性があるかということでした。   ですから,当然,赤ちゃんを,生まれたばかりの子を養子にしたいと,それから育てられないという,従来型の実子型というんですかね,わらの上からの養子型というのも十分射程に入っているんですけれども,それだけだと,一応学校に上がるぐらいまでということで当初は年齢を決めたのですけれども,あの当時の担当者の解説の中でも,今後運用されて,どういうふうに使われていくかというのを見たら,養子の年齢要件を引き上げる可能性はあると指摘しています。ただ,現在は虚偽の出生届とかわらの上からの養子というのは,かなり立法するときの大きな動機やきっかけにはなっているので,年齢要件は低く抑えるということになりました。だから,それを大幅に上げることについてどうかというのは,正に私も平川委員が考えているように,使いやすくするとは言っても,使いやすく本当に使われるのだろうかということも含めて,年齢要件の引き上げの幅を決める場合にもやはり慎重にとは思っています。   ただ,私自身は,更に加えて,養子の年齢要件との関係で。   やはり15歳というのが,民法の身分行為を行う当事者になり得る重要な年齢と位置付けられており,ここでちょっと6ページの上の方に,「大人になる」と書いてあるのは,ちょっと誤解があるのかなと思います。明治民法の起草当時はやはり元服ということがあって,確かに一人前として社会で扱われるというのは15歳というのが,120年前の民法を作るときには,そういう立て付けで作られました。その結果,やはり養子縁組,普通養子であれば,797条でしたかね,15歳になっていれば,法定代理人の代諾とか,そういうことはいらなくて,自分で養子になれるわけです。これは,契約型ということになっていますから,当事者になれますよという年齢だし,氏の変更なんかでも自分でできることになります。そうでないときは,15歳未満であれば,法定代理人がやはり代わって行うという規定がありますし,それから,認知もできれば,遺言もできる。こういう立て付けになっているということは,民法全体が,今度成人年齢も変わってくると,18歳とか15歳に達してしまうと,やはり自分が虐待とか保護の対象になっているのではなくて,自分が意思決定の主体として決められるという地位を与えられているといえる。このことはとても重要です。   ですから,どう考えても,15歳を超えて養子縁組の対象になっていくとか,18歳超えて対象になっていくということ自体に,民法のやはり枠組みの中で,それがほかの制度との関係で不整合を来すのではないかというのが,やはり一番大きな懸念の理由です。もっとも,児童福祉法上,支援が18歳を超えても必要だと,児福法では,そういうふうに引き上げたいという動きがあれば,それはそれでいいと思います。未成年者の飲酒とか喫煙というのは,正に特別法の中で20歳ということを維持されたわけですから,20歳未満というんですかね,そういう形で規制がされたり,法律の目的に沿って年齢をどう決めるかということなんですけれども,民法はやはり18歳に成人として,15歳未満と15歳以上ではっきりと分けているので,この点についてはやはり確認をした上でやらないと,例外要件を設ける場合であっても何でもですけれども,ほかの制度全体との関係で,非常に齟齬が生じてくるのではないかというのが気になります。   ですから,養子の年齢要件の見直しの議論をするのであれば一番,リミットとしては,やはり18歳超えていないということと,それから15歳未満が飽くまでも一番上限として提案されているものの中でもあるとすれば,そこについての例外要件をどうするかとか,その辺りの議論が必要ではないのかなと思います。どこまで広げることが制度の趣旨とか目的,そういうものにかない,かつ,利用をやはり広げていくということになるのかということで,出発点として年齢要件の上限については議論していただきたいと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   平川委員の御発言との関係で言うと,前の立法の際に考えられていた立法趣旨は,今回も廃棄されているわけではないという御理解で,しかし,それは,緩めることは考えられるだろう,緩めるときに,どこまで緩めるかということについて,いろいろ考え方があり得るけれども,15歳というのが一つの線になるだろうというお考えだったと思います。 ○平川委員 立法理念を全面的に見直すということになると思います。このような大きな方針転換があったということから考えれば,この特別養子縁組の立法の理念をどこに置くのかということも,本来であればあったほうがよかったのではないかと思いました。   加えて,立法の理念は大幅に変わったんだということについて,国民の皆さんに広く広めていかないと,多分わらの上からの養子という感覚で,この制度改正が行われるのではないかと思っている方が相当数いると思いますので,その辺,少し懸念というか,しっかりやっていかなければならないのではないかと。意見です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   立法の理念が変わったのか変わっていないのかというのは,なかなか表現が難しいところがあると思います。従来の制限を正当化していた考え方を緩めるということなので,その意味では確かに変わっているのですけれども,それを全部なくすのかというと,そういうわけではないというのが,棚村委員の御発言だったと思います。   平川委員の御指摘は,この制度がどういう制度なのかということについて,十分に説明をすることが,この先望まれるだろうという御指摘として伺いました。 ○藤林委員 特別養子縁組制度の理念,目的をどこに置くのかということ,そういう根源的な問題だと思うんですけれども,やはり子どもの安心・安全な育ちを保障していく,安心・安全の養育環境を保障していくということが重要ではないかなと考えますと,それは,6歳でなくても,8歳でなくても,15歳でもあり得るのではないかなと思うんですけれども,そういう理念がぶれないで維持するためには,18歳になってから特別養子縁組が成立するというのは,やはり理屈が立たないのかなと思うところありまして,岩﨑委員が,では,結局時間切れになった子はどうすんのやみたいに言われても,そこはしようがないなとは,私自身は思わざるを得ないところです。そこは,そういう例外,やむを得ない事由で15歳の年齢を超えてしまった子どもさんに対しては,やはり実際に里親委託なり措置を行った児童相談所が十分,子ども本人の意思を確認し,養親,里親さんの意思を確認しながら,18歳を超えないような申立ての準備をしていくということで解決できるんではないかなと思います。   ちょっと,後半の意見の先取りのようなことになりましたけれども。 ○大村部会長 ありがとうございました。   皆さんの御意見を引き続き伺いたいと思いますけれども,平川委員,御自身の御意見ということで,年齢の問題について何か具体的な御意見はございますか。 ○平川委員 中身に入るんですか。 ○大村部会長 皆さんから順次御意見を伺おうと思っていますが,後でよろしければ,後にしますけれども。 ○平川委員 私,今の藤林委員と同じように,永続的なパーマネンシーの理念であるとか,実親との関係性をどう考えるのか,そして子どもにとっての安全な居場所という観点で言うと,この特別養子縁組というのが少し,より幅広い形で使われるというふうなことからすれば,18歳というところについては,それは一つの考え方としてあるのではないかなと思います。課題は,まだいろいろあるかと思いますけれども。 ○大村部会長 今の御意見は,18歳まで認めるべきだという御意見でしょうか。 ○平川委員 そうです。原則18歳までいいのではないか。 ○大村部会長 申立てを認めるということですね。 ○平川委員 申立ては何歳にするかというの,実際は,成立時には18歳というのがあると思いますけれども,申立時との時間的な関係は,実際の実務でどういうふうな形で,どのくらい期間が必要なのかということも併せて考えていく必要があるのではないかと思います。 ○大村部会長 分かりました。   藤林委員も平川委員も18歳を上限とするという考え方をお示しになられたということで,伺っておきたいと思います。   ほかの皆さんの御意見を伺いたいのですけれども,3時を10分過ぎましたので,ここで少し休憩をさせていただきまして,その後,引き続き御意見を伺おうと思います。25分まで休憩をいたします。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開をしたいと思います。   養子となる者の原則的な上限年齢について,請求時15歳という点につきましては,前回いろいろ御意見が分かれたところでした。この点について御意見を頂ければと思いますけれども,いかがでございましょうか。   棚村委員は先ほども御発言がありましたが,御意見としては15歳を超えないということでよろしいのでしょうか。 ○棚村委員 私は大分変遷してきました。最初はやはり15歳未満で,成人年齢が20歳未満のときは18歳までという案を結構支持したり言ってきたことがありました。ただ,日によっても変わるときがありますので,今回もずっと維持するかどうかは分かりませんけれども,15歳未満というのは,先ほど言いましたように民法が保護の対象ではなく本当に身分行為の当事者として尊重しているので,それがアッパーリミットというか上限だろうなと思います。   ただ,平川委員もちょっとおっしゃっていましたけれども,実は特別養子の今利用の仕方というのは,とても多様化しているところがあると思います。藤林委員とか岩﨑委員がおっしゃっている,レアケースだけれども,そういうかなりいろいろ虐待とか困難な事情があるために里親さんに引き取られたり,それから特別養子縁組が遅れたりということもあると思うので,譲れるとしたら15歳未満を対象にして,今後,特別養子だけではなくて普通養子も見直しをして,未成年養子制度全体をどういうふうに位置付けていくかを検討しなければならない。それから里親さんとか,そういう社会的な養護とか社会的養育という枠組みの中で,全体をどういうふうに整理してやっていくか,児童相談所も民間のあっせん機関も,どういうようなあっせんだとかサービスを提供していくかとか,そういう大きな視点でもっての法律の改正ではありませんので,飽くまでも民法の改正ということであれば,15歳未満に上げるとすれば,15未満を原則年齢として,その例外要件についてはかなり私は絞ったほうがいいと思って,御提案のように,やはり引き続き15歳未満から監護を続けられているというだけではなくて,特別養子縁組の申立てができなかったやむを得ない事由みたいなことで,やむを得ない事由というのはやはり不明確ではないか,基準にならないのではないかという御意見もあるかと思いますけれども,ただ,それをかなり絞っていくということで,例外的にはその可能性の余地も残すというようなことで,原則年齢については,正直言って割合と低い年齢についても魅力はあるんですけれども,13歳未満ということを考えていましたので,2歳ちょっと上げて15歳未満ということについては何とか支持できる範囲の中かなというふうな,今の時点ではちょっとそういう感じを持っています。   ただ,例外要件についてどういうふうな決め方をするかというのは非常に慎重にすべきだということと,磯谷委員がおっしゃったようなことについては,やはりきちっと明確に定めていく。というのは,成人年齢が18歳になって一人で何でもできることになり,正に大人として扱われていながら,ここだけは子ども扱いというのがなぜなのかということをやはり説得力あるようなことで説明できないのではないかという感じです。   すいません,ちょっと口火を切らせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   他の委員,幹事の方,いかがでございましょうか。 ○浜田幹事 ありがとうございます。   年齢のところですが,今部会長のおっしゃったのは,請求時15歳というふうなことだったかと思いますけれども,それが果たして適切なのかというところには,引き続き疑念を持っておるという意見でございます。と申しますのは,前半で,18歳を超えて縁組が成立することというのが,成人年齢という大きな話の中で理屈が立たないだろうという話がございました。これと同じく成人年齢そのものではないとしても,家事事件手続一般,前半でも棚村先生からもありましたし,前回も窪田先生ほかからあったと思いますけれども,家事事件手続において15歳という年齢が持つ意味も,これも大変に大きかろうと考えております。   そこの例外をどう仕組むか,仕組み方としてはいろいろあるのかもしれませんが,そもそもそこを曲げて,15歳に達した以降も曲げて例外を設けなければならないのかということについて,そもそもまだ私はすとんと納得することができておりません。そういった意味で申しますと,15歳を超えて18歳までの間だとしても,そこに例外を設けることがそもそも必要なのかというところにまだ疑念がありますのと,併せまして,年齢を15歳といったときに,それが果たして請求時でよいのか,ここもやはり成立が15歳までになされていないと,理屈として整合しないのではないかというふうには大きく疑念を持っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   15歳というところで線を引くとしても,例外を設けるべきではないということと,それから成立時で考えるべきだということだったかと思います。 ○床谷委員 子どもの年齢なんですけれども,申立時の年齢で区切ることは可能ですけれども,成立時を一定の年齢で区切ることは事実上できないと思うんですね。それは承知の上で,それをどうするかというのは後の問題かと思うんですけれども,今の御意見とか,それから元々の甲案の中にあった15歳に達している者は養子となることはできないという案にしても,逆算をして申立てを何歳までにするかという方策を採るとか,あるいは申立てがあってから半年以内に結論を出すというような,裁判所を縛るような形の規定を置くとか,何かそういうものがないと,終わりで決めるというのは規定上難しいと思います。なので,その点がどうしても,そちらの終わりを15で切りたいという方の意見については,そこをどうするのかということをどうしても聞いておきたいというところがあります。   それから,今日の資料の8ページのところで,例外の作り方として,15歳に達する前から養親となる者の監護を受けていたということに加えて,つまり前回は亀甲に入っていたやつを「かつ」のような形で要件として追加すると。水野紀子委員がおっしゃっていたような最初の二つの要件を満たさないといけないというような発想だと思うんですけれども,この場合は15歳になってから新たに特別養子にしたいというような事情が分かった,あるいは発現したというような,以前議論をしていたような状態のものも外すということになるんだろうと思うんですね。そうすると,15歳までに監護を受けていて,かつ15歳になるまでに申立てができなかったということですから,ぎりぎりに監護が始まって,それから15歳を超えてしまったので,例えば監護を受けてから1年以内とか2年以内という,その監護期間の試験期間との関係は工夫をするのかもしれませんけれども,何かそういうような形で,かなり今まで議論していたものに加えて,相当絞られるのではないかなという気が少ししています。   私自身は,18歳に達しないような形にする,15歳前に申立てをするのは原則とし,15歳を超えても一定の事情があれば申立てができると。それで,可能な限り18歳未満で成立する,審判が下りるような,抗告も含めて確定するような形の工夫をするというところに,今のところ賛成はしています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   お考えは,成立時は18歳を超えないということで,しかし,成立時で線を引くのは難しいので,申立時15歳というところに線を引くという考え方ですね。ありがとうございます。   そのほかいかがでございましょうか。 ○大村部会長 浜田幹事。 ○浜田幹事 今の床谷委員の御指摘について,私の考えるところを申し上げます。   別に作りの仕方として,成立時15歳とか成立時18歳という切り方をせねばならないと思っているかというと,そこまでは思っておりませんで,いずれにせよ,だから仕組み方はいろいろあるのだと思うので,それは例えば,一つは元々乙案にありましたとおり,審理期間を見越してもうちょっと謙抑的な年齢設定にするというふうなことも一つ考えられますし,そのものずばりで,難しいとは思われつつも成立時15歳を超えていてはならんというふうな作りもあろうかと思います。そこは私も知恵を絞ってみたいと思っておりますけれども,今申し上げておるのは,成立したときに15歳を超えているというのは,成立するときに18歳を超えているのと同様に,全体的な理屈の中で説明が困難なのではないかという指摘にとどまるものでありまして,具体的な名案,これが是非こう在るべきだというところまでは考えが至っておらないところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○窪田委員 まず,18歳以上というのはもうあり得ないだろうというふうに,やはり私自身も思っています。床谷委員からは,先ほどやはり成立時を基準とすることはできないのではないかということでありましたけれども,成立時が法律効果を発生する時点ですので,そのためにどういうふうな手続を取らなければいけないか,いつ手続を始めなければいけないか,裁判所はどの程度急がなければいけないかということはあるとは思いますけれども,やはり成立時が本来基本なのではないかと思っています。   その点では,積極的に15歳というわけではないですが,15歳を基準とするのであれば,先ほどお話があったとおり,むしろ成立時というほうが本来自然なのではないかなと思っています。その上で,更に例外を作るかどうかという問題は残るのだろうとは思いますが,そのように考えるべきではないかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   基本的なトーンとしては浜田幹事と共通すると理解しました。   そのほかいかがでございましょう。 ○水野(紀)委員 私は当初から甲案でしたので,それが何となく全体としては丙案ということになっているんでしょうか。私自身は甲案で,延ばしても甲案だろうと思っております。そして丙案の方の理屈は,普通養子縁組は15歳だからというふうなことで,そういう理屈が立つからということなんですが,なぜ甲案でとどめることができないのかというのは,どうも余り十分には私は説得されておりませんで,と申しますのは,これは一番最初のときから申し上げておりますけれども,先ほど藤林委員からも,子どもの安心・安全のためにというふうに言われましたけれども,子どもの安心・安全のために特別養子縁組制度をこのように活用することについて,そもそも私は非常に心配を抱えております。   まず,危険な実親に対して,私人であるところの養親に,言わば対決させるということが元々の安心・安全というのの発想なんだろうと思うんですけれども,それはやはり公権力が守るべきだろうと思います。   それから,戸籍がたどれなくなるからというふうに言われていましたけれども,これも戸籍についての議論,正式な詳しいところをお教えいただいたら,そうすると,養子縁組の離縁を請求するんだというふうに実親が申し立てれば,戸籍をたどれないわけではないということも分かってまいりました。   そして,年齢を上げてしまいますと,ティーンエイジの被虐待児童を特別養子が養親として離縁の請求権がない形で受け入れるということになるわけですけれども,これも非常に難しいことを抱えているティーンエイジの被虐待児童を素人の養親の私人に任せて,離縁ができない特別養子という形ですることの意義というのが,今一つよく分かっておりません。児童相談所の監督と支援の下にある里親でいいのではないかと思えてなりません。   それから,普通養子縁組という制度がありまして,これでも十分親権は移ってしまいます。そして普通養子縁組の,もちろん本当は変えたい問題点は一杯あるんですけれども,普通養子縁組のことを考慮せずに,今度の特別養子縁組だけで並列させる前提で,かつ普通養子縁組には手を入れないということで,特別養子縁組を活用しやすいようにするということについての根本的な疑問をいまだに解消できずにこの席に参加しております。   そういう私から申し上げますと,やはり本当は甲案でいいのではないか,ゆっくり上げていって様子を見るということでいいのではないかなと思えてならないのですが,ただ,最終的に15歳ということに決まってしまったら席を立つかと言われれば,それはいたしませんけれども,でも,この際,年齢を上げて使いやすくしましょうということについては,もうちょっと慎重に考えていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   前回,甲,乙,丙の3案,それぞれお考えがありましたので,今回は前回のたたき台を作り直して,これでどうかという形でお諮りしているということではなくて,取りあえず,まずコンセンサスが作れるかどうかということを考えたい。そのための考える材料として,この資料の中に書いたような考え方が出されているということだと思います。甲案,あるいは乙案支持の方はほかにもいらしたと思いますので,御意見があれば頂きたいと思います。もちろん丙案の方の御意見も頂きたいと思いますが,そのほかに御発言があればお願いいたします。 ○藤林委員 児童福祉法が2016年に改正されまして,その後,新しい社会的教育ビジョンとか,その後,児童相談所運営指針とかも,また改正されていく中で,やはりこの子どもの永続性を,パーマネンシーを保障していくという考え方が大分児童福祉業界にも浸透してきているなと思っています。   今年の1月に児童相談所運営指針が公表されまして,その中で,飽くまでも里親又は施設でのケアというのは代替的なものであって,目指すべきは実親家庭への復帰であるとか,又は養子縁組を保障していくんだ,又は親族の家庭への復帰も進めていくんだといったことが児童相談所運営指針に割と明確に書かれました。これは非常に大きな進歩だと思います。そうしますと,今まで以上に児童相談所は,特別養子縁組だけではなくて,やはり普通養子縁組も積極的に活用しようと,又は親族による普通養子縁組を活用していこうというふうな動きは今後加速していくのではないかなと思います。   今まで厚労省の統計では,普通養子縁組はそれほど使われていなかった。多分,年間確か数十件ぐらいだったと思うんですけれども,児童相談所運営指針又は児童福祉法の家庭養育優先原則でも,里親も養子縁組も活用しようというふうになっていることから考えていくと,子どもの養育を里親さんに委託して,18歳になって措置解除で終わるということでなくて,年齢の一定の段階で養子縁組を考えていこうというふうになっていくと思います。その意味で,我々は普通養子縁組を決して軽視しているわけでもありませんし,今後も普通養子縁組は積極的に活用していくべきケースには活用していくというふうになっていくのかなと思います。   その意味で,本人の同意で普通養子縁組が可能な15歳というのは,一つの,児童相談所関係者にとっては目安になる年齢として,この年齢でどうするのか。本当はもっと早い段階で永続性を保障するべきなんですけれども,いろいろな事情があって,もし長引いている場合であっても,15歳,本人同意で普通養子縁組のできる年齢になる前に,どちらを選ぶのかということを考えていくことになっていくのかなと思います。そういう意味で,事務当局の方で書かれておりますように,確かに原則としての上限年齢を15歳に置くというのは,一つの妥当な考え方ではないかなと思っています。   ただし,なかなか15歳で普通養子縁組が決断できないケースというのは,やはりどうしてもあるなと思っています。なかなかこの場で,公の場で,議事録に残る場で,我々福岡市の具体ケースが挙げられないという制限があるために,なかなか委員の皆様方には納得できない面が残ってしまうわけなんですけれども,乳幼児期からずっとネグレクトであるとか,又は里親に措置しっ放しで全然家庭引き取りにならないというケースはちょっと置いておくとして,小学生年齢とか,又は10歳前後ぐらいで虐待のために分離をした,里親さんに措置をしたという方というのも一定数いらっしゃいます。そういった子どもさんの中には,非常に重篤な虐待のために,もう家庭復帰はほぼあり得ない,又は非常に重いPTSDのために親とも会うことができない,又は会うこと,又は交流することが不利益になるといったケースもあったりもいたします。   では,そういった方々が15歳までに申し立てることが可能なのかどうかというと,実務の経験からいくと思春期年齢,特に12,13,14というのは非常に不安定な時期なんですね。そういった虐待の経験がなくても非常に不安定で不登校があったりとか,いろいろな問題行動があったりする中で,なかなか子どもの方も,又は里親さんの方も,養子縁組そのものの決断が付かない時期が大体この年齢の時期です。この年齢が超えてくると,15,16になると,ある範囲の子どもさんは大体安定してくる時期を迎えてきます。ずっと続く子どもさんも,虐待の内容とか,虐待を受けた年齢によっては影響が残る場合もありますけれども,大体一番大変なピークは思春期年齢,13,4,5ぐらいのところなんですけれども,そうすると,ある程度安定はしてきて,この状況で子どもと里親さんとが普通養子を考えていくということもあったり,又は特別養子を考えていくということもあったりする場合が,レアケースかもしれませんけれども,一定数いらっしゃるというふうに,実務の感覚から考えるとあります。そういうケースが,多分この事務当局8ページの29行目に書いてあるような,なぜ15歳に達するまでの間に申立てをしなかったのかというのは,そういった里親さんと子どもとの,非常に養育の,本当にとても大変な時期を経ていたということを考えると,やむを得ない事由に当たるのではないかなと思っています。   ですから,事務当局案で書かれておりますように,15歳を一つの目安にしながらも,そういったやむを得ない事由を持った子どもさんというのは一定数いらっしゃる。今,水野委員が言ったように,離縁ができない決断をするというのは,これはとても大変な決断だからこそ,そういったある程度子どもが安定した年齢を待つということもあるのかなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   仮に上限は15歳ということにして,あるいはもっと下の年齢を設定するとしても,何か例外が必要ではないか,それをどういうものにするかということは考えなければならないと思いますが,今の藤林委員の御発言は,例外を設けるということを前提に15歳で線を引くということだったかと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○木村幹事 1点,確認だけなのですけれども,8ページの例外要件のところで,「引き続き15歳に達する前から監護していること」と,その後に書かれている,「そのような要件に加えて」というのは,先ほどの床谷委員のご発言にあったように,「かつ」という要件の理解でいいということでしょうか。 ○山口幹事 そのとおりでございます。 ○木村幹事 ありがとうございます。 ○大村部会長 木村幹事は何か御意見はありますか。もしよろしければ,どうぞ。 ○木村幹事 私の意見ですか。もう少し考えさせて頂きたいと思います。 ○大村部会長 分かりました。   ほかに,どなたかいかがでしょうか。 ○岩﨑委員 私自身もいろいろ申し上げましたけれども,15未満まで認めていただけたこと,今回の事務当局の案に対して賛成ですし,とてもお礼を申し上げたいような気持ちになっています。特別な事例を含めて検討していただけたことも,とても有り難いと思っています。   基本的な考え方は藤林先生と同じなんですけれども,ただ,現実的に私たちの,たまたま,昭和63年の特別養子法が施行されるまでに,私たちは既に500件の普通養子縁組を成立させてきました。普通養子を子どもの福祉のための制度として取り扱ってきて,大きな問題は数としてそうそうありませんが,最近やはり小さな問題がいろいろと出てまいります。   皆さん方は,実質的な親子関係ができることを願っての特別養子縁組とおっしゃるんですが,逆に言えば,普通養子縁組をされてきた子どもたちは,今その多くの子どもたちが50代になろうとしています。その長さの中で見てくると,40代,50代になってどんどん実の親の生活保護申請に基づく扶養の義務を問われてくるケースがやはり多くなってきました。2歳や3歳で別れて四十何年,50年近く実の親と会わなかった子どもたちです。それこそ実親とは実質的な親子関係の経験が全くなかった子どもたちに,突然実の親への援助をしないかという要請が来るのです。最近生活保護の申請をした親の担当者から,入院をするので身元引受人としてきてくれないかというような申し出があって,43年ぶりに実母と出会った女性がいます。彼女が泣いて私に訴えるのですけれども,確かに40歳になった頃から実母の所在をぽつぽつと捜し始めていた。これは捜せていたら本当によかったんだと思うんですけれども,捜し得ていたら少し違うと思うんですけれども,捜し切れなくて,ちょっと一時中止をしていたときに生活保護の申請があって,思いがけないところから実親の住所が分かり,まして入院をするので身元引受人になってほしいという要請がついてきて,取りあえず彼女は出掛けていきました。   彼女の率直な感想を聞くと,3歳のとき別れたとき,「必ず迎えに来るからね」と言った言葉が今でも耳にこびりついているというんです。そして去っていった母の面影とは違う,四十何年ぶりにベッドに寝ているその女性を見て母だと思えなかった。もう本当に,正直,母だと思えていたらもっと楽だったんだろうと思いますけれども,母だとは思えなかった。そうすると,病院の方々が,娘さんが来ているというのに何かしらじらしいわよねって,他人事のようねというような声が聞こえてきて,「私は3歳でこの親と別れ,43年ぶりに今日初めて出会ったんですということを,もう取りあえずどの人にもどの人にも,まくし立てるようにして説明をするしか自分の立場を守れるものがなかった。情けなくて情けなくて,こんな人の面倒を私,本当に見ないわ,見たくないわ,それぐらいだったら夫の両親を手厚く見守ってやりたいという気持ちになって帰ってきたよ」と訴えました。そういうふうにしたらいいよと私も言いましたけれども,その声を聞きながら,皆さん方が普通養子,普通養子と言われると,確かにこれも使い勝手だと思います。   私も普通養子を500件やってきて,それほど大きなデメリットがあったとは思っていませんから使い方によってはいいんですけれども,でも,逆に言えば,養子に出された子どもは実の親との実質的な親子関係が築けなかった子どもたちなんです。そこに法的な親子関係,法的な親子関係と皆さん方が期待されることが,私にとってはとてもつらくて,この子どもたち,こんな思いをした子どもたちのために,絶対私は普通養子なんてこれから認めへんわっていう気持ちにさせられています。それで特別養子で,そうすると,少し年齢の幅も上げてもらわないといけないし,特別な子どもたちにとっての何か特例を見付け出してもらって,できるだけ社会的養護下の親に育てられなかった子どもたちについては,できるだけ特別養子が速やかに認められ,その関係性を私たちが壊さないようにいかにして守っていってやれるかしか私は子どもの守り方がないなと,正直この頃思っています。   そういう意味では,今回の英断に対して,私は法務省の事務当局に対して心から感謝を申し上げたいと思いますし,それでもなおかつ皆さん方に,この法律がどういうふうに動かされていくのかについては,既に平成25年の統計で少し古いんですけれども,厚労省が出されたものに,0歳から施設に入って18歳まで,結局施設でしか生活をしなかった子どもたちがざっと数えただけで4500人ほどいるという数字を見たことがございます。その4500人もの子どもが実の親との実質的な親子関係などさらさらなくて,そして施設という世界しか知らないで,大人として社会の中に出ていかなければならない,そういう子どもたちをできるだけ小さいうちからきちんとした家庭を持てるような養子縁組政策をとっていかなければならないんだというのが,今回の特別養子法の改正に対する大きな期待があるんだと私も思っております。それにはなかなか難しくて,年齢の幅を広げるといっても,私の経験では10歳でもとても大変でした。何件かやりましたけれども,10歳でもとても大変で,それ以上の年齢に上げる勇気が私もありませんでした。それもうまくいかなかったケースもあれば,うまくいって,今なお親子をしているケースもありますけれども,その辺りまでで,新しく作るのはそうだと思います。   ですから,決して15歳になったからといって,どんどんと児童相談所が親子関係を作っていこうとするのは,きっと大きな間違いをしでかすだろう。とても慎重にならなければいけないし,慎重にやって,どれだけ私たちが子どもを守り切れるかという実態を見せることでしか,これからの特別養子法を変えていくきっかけにはならないので,藤林先生,どうぞ,全国の児童相談所長がどこまで取り組んでくれるか分かりませんけれども,年齢が高くなったから大きな子どもをもっともっと縁組したらいいというのではなく,できるだけ小さいうちにめどを付けて,そして白地同意を取って,そして二段階方式が児童相談所長としてやらせてもらえるのであれば,そこを何とか成功裏に持って行っていただくことが一番有効な今回の改正の成果だと思っています。   そういう意味で,これからまだ残っている新規のところを,私の意見としては皆さんのおっしゃることとてもよく分かって,なおかつちょっとした隙間があれば例外を認めてもらいたいとは思っていますけれども,15歳未満の年齢,それから18歳までにできるだけ成立をすることの必要性,そういうことも全部含めて了解はしております。だけれども,その中に入れない子どもたちのために,何とかチャンスを与えていただけるような考え方を裁判所,関連の方々に持っていただければとても有り難いということをお願いする次第です。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございました。   いろいろな御指摘が含まれていたかと思いますけれども,今回の具体的な提案との関係で言うと,18歳,15歳という線引きに基本的には同意するけれども,例外をできるだけ広く設けてほしいということがお一つだったと思います。   それから,年齢の上限が上がったからといって,年齢の高い子どもについて養子縁組が積極的に行われていくというわけでは必ずしもないということ,低年齢で行うことが望まれているということもおっしゃっていたかと思います。3番目に,普通養子についていろいろ不備があるという御指摘がありましたけれども,これは既に何人かの委員,幹事の方からも御指摘がありますように,この先,普通養子法を未成年の子どもの福祉のために使っていくという観点に立った場合に,現状でいいかという点についてはいろいろな問題があるということが指摘されていると理解していおります。   ほかにいかがでしょうか ○窪田委員 今,大村部会長から最後に御指摘があった部分なのですけれども,やはり今回の改正,この法制審議会というのは,未成年養子,普通養子の場合もあれば特別養子の場合もあるのだけれども,その特別養子のみを取り上げるという形で,大変に手足が縛られた形での議論になっていたような気もいたします。棚村委員からも御指摘がありましたけれども,普通養子の方は一切手を入れずに,特別養子縁組だけいじるというときにどうなるのかと。   法制審議会の最終的な答申等において,そういうことを記載するということは一般的にあるのかどうか分からないですが,少なくともこの審議会の中で,普通養子縁組の場合であったとしても,例えば実親の介入に対してどういうふうな対応をするのかとかという意味での対応策が必要だということは,少なくともある程度共有されているのではないかと思いますので,何とかそういう部分について,普通養子についても制度を見直せるような形につなげられるような答申にしていただければなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。 ○棚村委員 すいません。それで,岩﨑委員の御発言について,少し私の意見を述べさせていただきたいと思います15歳未満,原則年齢ということで,例外的に18歳未満ということについては異論がないということで安心しましたけれども,例として,要件を更に検討してほしいという中で,例えば生活保護法の改正があって,結局,生活保護費が非常にかさんでくると,何の面倒をみてくれなかった実親の扶養の問題がでできたことが理由とされています。生活保護費の増加に対して,何らかの形で抑制するような歯止めというので,親族扶養優先の原則ということを根拠にしながら照会をするという制度を設けたわけです。むしろ生活保護法の改正こそが,本当に面倒もみられず育てられもしなかった子のところに行政当局から,親族だからというだけで扶養の可能性はないかどうかというのが確認されるという制度そのものが,むしろ問題だと思います。民法の普通養子というのが二重の関係であるということよりも,むしろ先ほどのお話の中では,それから岩﨑委員からいつも言われるような借金だけの相続で,そういう督促が来たとか,これも非常に迷惑なことだと思います。   普通養子縁組制度自体の問題点というよりは,これも相続とか扶養のところで,そういうような,ある意味では親としてきちっと責任も果たさなかった人が借金だけの相続のときにはでてきてしまう。放棄の手続みたいなことについて,やはりきちっと何らかの手立てをすることが必要ではないか。つまり,請求が来てから例えば3か月以内というものも,ほかの国でも,むしろ借金取りみたいな者が頃合いを見計らって,そうやって債務についての取立てみたいなものを単純承認の期間が徒過することによってやるようなものについては,お隣の韓国でも台湾でも改正をして,やはりおかしいのではないかと熟慮期間を延ばしたり,限定承認を原則にしたりしています。だから,その辺りのところも含めて,戸籍の記載の在り方とか,生活保護,相続,扶養の制度設計自体が問題であって,普通養子縁組という制度自体の問題なのか,それとも個々のそういう生活保護だとか,あるいは戸籍の記載とか,それから扶養とか相続とかという親子関係に伴う効果として置かれている制度が使いづらいとか,本来の,きちっと共同生活をしてやっていた親子の間柄にない人のところまで行ってしまうことに問題があるのか。しかも,これらを悪用というか,濫用している人たちに対してどういうふうに手立てをするかとは別の話だと思います。   それから,こういう養子縁組だったら,成年養子もそうですけれども,ブラックリストから逃れたいとか,いろいろな高齢者の財産をのっとりたいからみたいなことで縁組の届出みたいなものが非常に濫用されている事例については,手立てをやはり考えなければいけないと思うんですよね。   だから,その辺りのことと現行の普通養子制度を,民法の制度として未成年養子の中でどういうふうに位置付けて改めていくかというのは窪田委員がおっしゃったとおりですし,それから特別養子というものがある面では制度が変わることによって,どれくらい利用しやすくて使いやすいものになるかという発想と,それから御指摘されている普通養子縁組では実現できない特別養子になることの本当のメリットとか必要性みたいなことは,やはり引き続き,きちっと念頭に置きながら議論をしてゆくべきで,要件を緩める場合でも,普通養子ではなかなか難しい子について受け皿としての特別養子という特別類型みたいなものをどううまく使うかということで,取りまとめをしていただきたいと思います。私は先ほど,ちょっと長くなりますけれども,学会の方で家族法改正委員会というので床谷先生が中心になりいろいろ,もう10年ぐらいたちますけれども,検討していたときに,実は年齢要件は普通養子というものが前提のときは12歳未満という提案を皆さんで,させてもらったこともあります。   床谷先生が15歳未満ということで御提案を最終的にされた背景は,普通養子はなくしてしまおう,それで特別養子という断絶型のもの一本にして改正の提案をしたので,15歳ということで提案がされましたけれども,やはり普通養子縁組をどうするかということは非常に重要なことなので,引き続きその改正についての議論をするという前提で,今回は特別養子縁組だけという枠の中でどこまでコンセンサスが得られるかということで考えさせていただきました。最終的には私はコンセンサスを得られるように了解しますけれども,実はやはり普通養子縁組というものをどういうふうにやるかという,水野先生もおっしゃっていたけれども,そこのところを今の連れ子養子も含めて,こういう利用の仕方についていいのだろうかとか,それから離縁も,そういう制限を未成年養子の場合にはする必要があるのではないかといういろいろなことも含めて検討するという条件で,了解したいということです。 ○大村部会長 ありがとうございます。   複数の委員の方から,普通養子についての課題を指摘するということと併せた形で,今回の年齢問題について一つの結論を出すべきだという御指摘がありました。答申にどういう形で反映させられるかということは事務当局の方でお考えいただく必要があるかと思いますけれども,皆さんからの御意見として承りました。 ○木村幹事 上限を18歳にして,申立時15歳という案としてあり得るのは理解しているのですけれども,先ほどの水野紀子委員のご疑問,あるいは問題意識との関係で2点お伺いしたいと思います。まず1点目ですけれども,例えば「要綱案のたたき台に批判的な意見」が6ページに載っており,また7ページの検討の①において「養子となる者の上限年齢を大幅に引き上げることへの懸念が全般的に強い」という意見があったということですけれども,これに対して,なぜ15歳という基準であれば,この点をクリアできるのか,あるいはどのように説明できるかということについて,余り明確なお答えがないようにも思っております。例えば7ページの30行目の辺りから,その理由に該当する事柄は書かれてあると思うのですけれども,なぜ,ほかの年齢基準ではいけないのかということについては,明確な根拠とかは示さなくてもそもそもよいのかという点について,まず1点,お伺いしたいというふうに思います。   2点目ですが,15歳という基準についてですけれども,今回の部会資料5ページの(1)からその理由が書かれてあると理解しております。そのうえで,おそらく,私の感覚的な違和感にすぎないかもしれないですけれども,15歳以上の者について,民法上,自分で身分関係などを形成できる能力などが認められているということと,それ以上の年齢の人が,ここで言われているところの国家によるパターナリズムの保護を受ける必要性がないということは論理的な結びつきをもって説明されうる事柄なのでしょうか。そもそもここで言われている国家によるパターナリズムの保護という表現自体,今回の部会資料で初めて出てきたと思いますので,ここで具体的に何をイメージされていて,どういうものに対してどういう保護を与える必要があるのかということについて,具体的なイメージも持っておられるのであれば,それを内容として示して頂いたほうがいいのかもしれないとも思っております。まず,ここの国家によるパターナリズムの保護というものについて,どういうものに対して,どういうものを与える必要があるということを考えておられるのか,もう少し具体的なお話を頂ければと思います。 ○大村部会長 御質問には,すぐ後でお答えを頂くことにして,今の木村幹事の御意見は,1点目はもっと下げたほうがいいという方向を指しているのに対して,2点目はもっと上げてもいいかもしれないという方向性を含んでいるように思うんですけれども,御自身の御意見を伺えればと思いますが,いかがですか。 ○木村幹事 すみません。2点目の質問内容は,たしかに15歳という基準について,もっと上げてもいいという方向性を示唆するようですけれども,1点目の質問も2点目の質問も,15歳という年齢を基準にするということ自体が,説得的に説明されているのかということ自体について,もう少し説明していただきたいという趣旨からお伺いしたものです。 ○大村部会長 御疑問は分かりました。何か御自身の御意見があれば,併せてお伺いしたいと思いますが。 ○木村幹事 本来であれば平川委員がおっしゃったように,元々の現行法における立法趣旨として,実親子関係らしいものというものが想定されていたのであれば,仮にそれがわらの上からの養子を想定してされていたものであったとして,今回,わらの上からの養子以外のパターンについても幅広く取り込むとしたときであったとしても,その実親子らしいというものとか親子らしい関係,あるいはどういったものを特別養子制度として取り込むのかということについて,やはり何も明確な,実質的な理由は述べられてはいないと思っております。そうであるとすると,これまでの元々の議論に遡って,現行法からどこまで上げられるのかということについて検討していくと,単純には申立時15歳という基準には,すぐには結び付かないと思っておりまして,そうであれば,乙案も排除できないとも考えられるというのが,現時点での意見になっています。 ○大村部会長 15歳という案について必然的な理由がないのならば,他の案も考えられるということですね。 ○木村幹事 はい,そうです。 ○大村部会長 分かりました。 ○平川委員 年齢要件の関係で言うと,実はパブリックコメントで,前回も言いましたけれども,同じ児童相談支援機関で全く違う考え方が示されていますが,私は両機関とも言っていることは正しいと思っております。大阪の子ども家庭センターは,やはり永続的な家族関係の維持であるとか,先ほど言った実親からの扶養請求の問題等々を含めて,この特別養子縁組に対してのメリットということが強調されています。私もこういう面はあるのかと思いますけれども,もっと言えば,年齢制限によってそのメリットが享受できない子どもがいるということについては,やはり何らかの対応をしなければならないと。そういう意味では,年齢要件の引上げというのはその一つの選択肢だと思うんですが,一方で東京都児童相談支援センターの意見は,年齢要件の緩和は養子となる子どもの心理的な負担感を考慮する必要があるとされています。実親子関係の完全な終了を未成年者本人に仕切ってさせるということに関しての問題ということが指摘されているということであります。これについては私もこれまで繰り返し述べてきたのですけれども,年齢要件を引き上げるに当たっては,この子どもに対しての心理的な負担感をどう解決していくのかというのは,これは避けられないのではないかなと思っています。   特に中間試案の補足説明にも書かれてありましたけれども,家事事件手続法65条で,養子となる者の意思を年齢に応じて考慮しなければならないというふうなことが明記をされておりまして,その子どもの意思は重要な判断,若しくは重大な決断につながるということに対して,どういうふうな支援が必要なのかという点が,年齢要件を引き上げるという必要性はありつつも,それをどうやって解決していくのかという議論がまだ足りないのではないかなと思います。これは制度の運用だから,この部会では余り関係ないんだというふうな議論があるかもしれませんけれども,やはりその辺を考慮していかないと,大きな問題が起きる可能性があるのかもしれませんので,その辺どう考えているのかというふうなことも含めて,事務当局の方で何か考えていることがありましたらお聞きしたいと思います。 ○大村部会長 では,先ほどの御質問と併せて,お願いします。 ○山口幹事 それでは,まず,木村先生からお尋ねのあったところですが,部会資料の7ページの(3)の,行数で言いますと12行目辺りに「養子となる者の上限年齢を大幅に引き上げることへの懸念が全般的に強い」とあるけれども,今回の事務当局の案というのはこの懸念に答えているのかどうかというお尋ねだったかと思います。   15歳というのが大幅な引上げだというふうにしますと,この懸念にきっちり答えられているかどうか分からないのですけれども,事務当局の役割としましては,これだけ意見が分かれているところで,どういうところならコンセンサスが得られるのかと,そこを探っていくというところもあろうかと思いまして,そういう観点で見ますと,なかなか,例えば現行法の原則6歳,例外8歳のところから引き上げていくという発想になったとしても,そこから上でどういう線が引けるのかと。棚村先生からは13歳というお話もありましたし,事務当局も当初,例えば乙案なんかでは13歳というところを示しておりまして,これは小学生は全員入るという仕切りの中で考えてみた数字なんですが,やはりこれだけ議論が割れているときに,それだとなかなかまとめ切れないのかなというところがありまして,それで出しているところであります。そういうわけで,この懸念に答えていないではないかと言われると,そのとおりかなというふうにも思っております。   それから,二つ目のお尋ねは,6ページの5行目のところで,「通常はパターナリズムの観点からの保護等は不要である」うんぬんというところは,これはどういうイメージであるのかということですけれども,これもちょっと資料が言葉足らずで申し訳なかったんですが,15歳に達すると身分行為,普通養子縁組などを単独ですることができると,こういうふうになっているわけですので,普通は国が15歳を超えた人の身分関係に介入するということは考えなくてよいのであると,家庭裁判所の許可というのはありますけれども,まず縁組自体は単独でできるのだというところがあるわけで,それを縁組自体を国家がするのだということは,15歳以上の子にとったら通常は考えられないことであろうというふうに考えました。ただ,これまでの部会の議論の経緯からしますと,先ほども議論に出ましたけれども,やはり15歳を超えても,なかなか自分で判断し,普通養子縁組をするということができない子もいるのだという,そういう御指摘もありましたので,そういう子に対してはパターナリズムの観点から,本来は国が身分関係を形成する必要はないという子についても,身分関係を形成してあげることが保護につながるのではないかと,そういう発想で書いております。なかなか「パターナリズム」という表現がちょっと適切であったかどうかというのは御指摘のとおりかと思いますが,事務当局がここで考えていたことというのは以上でございます。   平川先生から御指摘のあったところで,年齢を引き上げていって,お子さんが,高齢のお子さんでも特別養子縁組ができるというふうになった場合に,その心理的負担をどういうふうにしていくのかということで,これは御指摘もあったとおりで,なかなかその制度の問題ではないというところではあろうかと思います。ですので,ちょっと私の方からなかなか答えにくいというところであります。すいません。前提としてそういうことも,運用も議論しないと制度が仕組めないではないかという御指摘も誠にそのとおりとは思っているのですが,かといって,私の方から何かこういう運用ができるのではないかという御説明はしにくいというところであります。 ○成松幹事 すみません,関連して厚生労働省でございますが,養親子の支援という意味では,児童福祉法の平成28年改正におきまして,養親子となるべき者の支援が法律に位置付けられているところです。   今般,もし,年齢要件が引き上がれば,養親子となるべき者の心理的負担に対応する業務が増えるのではないかというようなことも考えられるわけですけれども,その場合には,今も児童相談所の体制強化を図っているところですが,また我々の方でも,児童相談所,あるいは民間あっせん機関への支援を通じて,それに対応できるような体制を整えていくことを,考えていきたいと思っています。 ○大村部会長 藤林委員は関連する御発言ですか。 ○藤林委員 今の厚労省の説明と同じことを言おうと思っていたんですけれども,やはりこの問題をみんな意識するようになったのは,平成28年改正児童福祉法がきっかけで,その後,先ほど言いましたように新しい社会的教育ビジョンが公表されて,今年の夏に各都道府県で,この改正児童福祉法,家庭養育優先原則の実現のための都道府県社会的養育推進計画を作るように定められているわけなので,各都道府県は今,その本文を見ましたけれども,養子縁組の推進のための支援体制の構築に向けた取組の計画を作るように,厚労省の方からも通知文が出ているわけですから,正に平川委員又は以前から水野委員が言っているように,今の児童相談所で本当にできるのかみたいな批判を込めた意見と思っておりますけれども,児童相談所を代表するわけではないんですが,児童相談所を代表してもいいと思うんですけれども,しっかり養親さんに対しても十分な支援を今からスタートしていく,そのスタートラインに今立っているのではないかなと思っています。   もうちょっと前段で言いますと,当然実親に対する支援も十分した上で,なおかつ家庭復帰ができない場合に普通養子縁組,特別養子縁組の選択肢,チャンスが与えられるということが重要で,その中で普通養子縁組が可能な子どもなのか,特別養子縁組が本当に必要な子どもなのかということを児童相談所がしっかり判断した上で,その後の申立てをまた児童相談所長が行うことも,今回,法改正が実現すればできていくわけですし,当然,成立後の支援,成立プロセス,又は申し立てる段階での子ども,又は養親候補者の支援もともに行っていく,これは非常に児童相談所にとって大きな使命と思いますけれども,やはり子どもの最善の利益を実現するためには,全国の児童相談所がやっていくべき課題と思っています。当然,厚労省は全国の児童相談所にその方針で進めるべきだといった通知も出していますし,今後様々な研修等の機会を通じて実現していくものと私は思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○窪田委員 今,厚生労働省と藤林委員から出たお話というのは,先ほどの平川委員の示した問題に答えているものではないのではないかなと思います。養親子に対するサポートを行うというのは,それは大事だということはよく分かりますが,先ほど出たお話は,一定の年齢以上になってきたときに,養子となる者についての意思についての必要的聴取をするということを前提として,それ自体が一定の心理的な負荷になるという問題提起だったと思いますので,それをサポートしてうんぬんというのはちょっと筋の違うお話だっただと思います。 ○藤林委員 当然,このような15歳又は15歳を超えた子どもさんというのは,基本的には代替養育,里親委託中の子どもさんですので,その子どもの将来に向けての重大な決定をサポートするのが児童相談所の役割と思っていますので,それは今現在もしっかりやっていますし,またこれからも,養子縁組は一つの大きな選択肢というふうになっていけば,当然,児童相談所は全国,子どもの意思決定に対して十分な支援を行っていくことになるかなと思います。答えになっていないですかね。 ○木村幹事 今の質問との関連,そして先ほどの山口幹事の答えとの関連で2点,お話しさせていただきたいと思います。まず,仮に例外要件が認められた場合については,15歳以上の子が対象になるとなった場合に,当然にその場合には,家庭裁判所において意見聴取の対象になるという場面は当然にあり得るという理解で,それは構わないということでしょうか。 ○山口幹事 そのとおりです。 ○木村幹事 次に,先ほどの山口幹事の答えとの関連ですけれども,確かに15歳以上の者に対して,国家が関与をして審判という形で決めることは必要性も相当性もないという御説明はあり得ると思うのですけれども,その効果として,特別養子縁組という普通養子縁組と違った効果のものを与えるという側面については,15歳以上の者と,そうでない者について,必要性ならびに相当性が異なるかという点については触れられてはいなかったと思います。   15歳以上の者は当事者として関与できるのであって,他方15歳未満の者は家庭裁判所の審判の対象になり得るという意味がパターナリズムの御説明だったと思うのですけれども,そのパターナリスティックな保護の効果としては,実親子関係の終了という普通養子縁組と違った効果を特別養子縁組の場合には認められますよね。その効果を15歳未満の子どもに対しては享受できるけれども,15歳以上の子どもに対してはそういった効果は与えられないということ自体は,このパターナリスティックな保護の内容には含まれていないという理解でしょうか。 ○大村部会長 木村幹事がおっしゃっているのは,効果ごとにどのような保護が必要なのかを分けて考えることができるのではないか。まとめて考えるというのは必然ではないということをおっしゃっていますか。 ○木村幹事 いや,たしかに一方で15歳以上の者の場合は自分で判断して普通養子縁組を使えるというお話につながると思うのですけれども,他方で15歳以上の者にはなぜ特別養子縁組の効果を認める必要はないのかという説明にはなっていないと思うのですけれども。 ○窪田委員 私が別に代わって何か言う立場ではないと思いますし,15歳が論理的かといったら,幾らでもそれは違うという説明は可能なのだろうと思うのですが,私自身はそれほど大きな違和感はない部分だったのですが,普通養子縁組の場合だったら15歳までというと代諾という形になっている。これは別の形でのパターナリズムということなのだろうと思います。片一方で,国家の公権的な役割といったときに,そのパターナリズムが同じように15歳まで働くというのは,15歳まで引き上げろということに当然つながるわけではないですが,一応,説明にはなるのだろうと思います。ただ,15歳になったら,今度は自ら選択するという普通養子縁組ができるわけです。そういう形で自ら身分関係を作るという仕組みは一応用意されている。   それで,木村幹事からの問題提起というのは,しかし,普通養子縁組では実親子関係は切れないということをふまえて,実親子関係は切れるという特別養子縁組ももう一つはあるのではないか,そういう考え方もあるのではないかということなのですが,もしそれを認めると,最終的に,自らの意思によって実親子関係を切るということだけを目的とした制度というのを認めることになるのだろうと思います。普通養子縁組でなくて特別養子縁組によるというのは,実親子関係を切ることだけを目的としているということになります。そうした制度を作るという考え方はあり得るとは思うのですが,現行法の中で実親子関係を切る,あるいは積極的に実親子関係を処分することができるという仕組みは多分用意されていなくて,現在,特別養子縁組において多分反射的な効果として認められているというだけなのではないかと私は理解しています。そういうふうに見ると,この説明というのはものすごく強く書いているので,いや,そうではないという見方もあるかもしれませんが,一つの説明としてはあり得る説明なのではないかなと思います。 ○大村部会長 資料の6ページの5行目の「保護等は不要」という表現は,窪田委員も御指摘になられましたけれども,少し強過ぎる,断定的ではないかという話が一つあります。   それからもう一つ,木村幹事がおっしゃった,15歳以降の人について用意されている養子制度は,現在の普通養子制度でいいのかという問題がある。これは先ほどから皆さんおっしゃっていることで,仮に15歳以上の未成年者については,そのイニシアチブによって自分の身分関係を変更するとして,代替的な選択肢が現在の普通養子のままでよいのかどうか,それは更に検討を要するということでしょうか。 ○水野(紀)委員 先ほどのやり取りで,子どもに聴くことが問題なのではないかという窪田委員の御質問に対して,それは藤林委員が全面的にサポートをするというふうに言われたので,お答えになっていますかというので,私はお答えになっていないだろうなと思いましたので,そこを御説明しようかと思いました。   つまり,聴くこと自体が非常に残酷な疑似選択になるということです。疑似選択って少し説明が要るかもしれませんが,本来選んではいけない,選ばせてはいけないものを強引に選ばせてしまうというある種の拷問で,戦争中なんかも捕虜を虐待するときに,お前が選べばその者は助けてやる,もしお前が選ばなければお前の味方を全員殺すという,そういう形の,いわゆる精神が殺されてしまうらしいんですが,それは両親のどちらに親権,子どもの場面で父と母とどちらに親権を与えるかを子どもの意見を聴くんだという議論がされることがあります。児童の権利条約などでも,子どもの意見を聴く権利というのは書かれているといって,子どもに聴くということをするという主張があるんですけれども,それは非常に危ない疑似選択で,父と母のどちらを選ばせても,それはその子に聴いたこと自体が非常に残酷な疑似選択の拷問になってしまうという議論は現場の中ではよく伺います。それはその子の様子をものすごくよく見なければいけないし,その子がどう感じているかというのも感じ取るまで調べなくてはならないけれども,でも,決めるのは裁判官だ,お前ではないという形を崩してはならないと。   それは,そのことを聴くこと自体がその子に対して大変な拷問だからだというんですが,同じことがこの場でも言えるのではないかというのが,先ほどの窪田委員の御質問だったのではないかと思います。つまり,お前は実親との関係を切りたいのかというふうに聴いてしまう,お前が切りたいのであれば切るよということにするのは,そのことによって実親を完全に捨てたと。たとえ,もう捨てたいと思っていても,やはりその決断をお前が下したからこういう結論になったということになるのは,その子にとって非常に重いことを迫るのではないかという御質問だったと理解しております。そうすると,それに対するサポートというのは,構造的にはあり得ないのではないかと思われます。 ○久保野幹事 私は従来,大幅に引き上げる必要性について,納得がしづらいという意見を申し上げ続けてきましたけれども,結論としましては,現時点として,成立の時点を基準に15歳を基準に考えていくという案に反対はしないというふうに考えています。   ただ,先ほど平川委員の御指摘,木村幹事の御指摘がありましたとおり,実質的な親子関係と同様の関係というような特別養子を支える考え方をどのように変えて,その考え方からすると何歳が積極的に基礎付けられるかというところは,言わばブランクにして結論を出すということかなと個人的には理解しております。といいますのは,引上げ自体の必要性については,正確な表現ではないかもしれませんけれども,児童心理学の専門的な知見などを背景に,安全基地としての親,あるいは愛着対象としての他者といったものを安定して得るために,実親子関係をなくしてそれを作っていくということの必要性というのは,6歳,8歳までに限られるわけではないというようなことが一つ根拠になっていたような気がするんですけれども,年齢が上がっていったときに,どの段階までが愛着対象や安全基地というものを親子という形で設けなければいけないかというのが,私などはちょっとまだ分からないところがありまして,ある程度以上の年齢になっていくと,愛着対象が必要なこと,安全基地が必要なのは確かなんだけれども,それを確保するのはもう親子という形ではなくて,別の何か目標を立てて確保したほうがいいということがあり得ないのかといったようなことはちょっと気になっております。そういう意味では,特別養子を基礎付ける考え方から何歳が積極的に基礎付けられるというのははっきりさせないまま,どこまで引き上げるかということを考えているのではないかと思っております。   厚生労働省以来,児童相談所が現行法の上限年齢を超えた年齢で必要な場合があるというのが出ていて,最終的には家庭裁判所の判断によるというところがありますので,そこで判断されるんだというところに信頼をして年齢を上げると思います。ただ,それでは上限はなくてもいいのではないかという先ほどの話にもなり得るとは思うんですけれども,慎重な意見も強く,私自身も慎重に考えたほうがいいと思っておりますので,上限を画するために,消極的に,15歳という民法上ある特定の意味を持つ年齢にするのだということにならないか,まどろっこしく申し上げましたけれども,そういうようなことで,積極的ではないけれども賛成という意見です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   子ども本人の意思をどのように取り扱うかというのは,いろいろなところで出てくる問題で,ここの場面だけではないのだろうと思います。それぞれに対して適切な問い方があるのかということは常に考える必要があると思いますが,この制度の中で考えたときに,それが問題として特に顕在化する場面があるとすると,それに対する手当てが必要になるということだろうと思いますけれども。 ○藤林委員 この論点は,もうずっと最初から出てくるわけなんですけれども,この事務当局が書いていただいている8ページの29行目,30行目辺りの「やむを得ない事由」というのは,やはり子ども自身が実親との法的な関係を切りたいというケースと思うんですね。そこはまだ非常に迷っているとか,いや,切りたくないとか,そういう子どもに,いや,あなたは切ったほうがいいからというふうに児童相談所なり里親さんが迫っていくのは,それはやはり酷やと思うんですけれども,子どもの方が積極的に切りたいという,そういう意見に対して,それが本当に真意なのか,それが本当にあなたの将来にとって利益のあることなのかどうなのかということをしっかりサポートしていくということは,当然,児童相談所が行うべきことであり,それを確認するということは決して酷なことではないのではないかなと思います。   反対に切りたいという,もう本当に親の顔なんか見たくないし,自分のところに突然やって来てほしくないし,将来,扶養義務照会なんかも受けたくないという子どもに対して,今,その制度上,あなたにはそのチャンスがありませんというほうが酷なことではないかなというふうに私は思います。 ○窪田委員 もう繰り返しになりますから簡単に言おうと思いますけれども,切りたいと思っている子どもについてという話ではなくて,ここで先ほど意思の聴取というふうに申し上げましたけれども,多分,15歳以上だったら同意というふうなことを積極的に要件としなければいけないと思うのですが,同意するかしないかということを聴くこと自体が精神的負荷を掛けるのではないか点でしたので,ちょっと議論はかみ合っていない状態なのかなと思っています。   その上で,ちょっと1点だけ補足しておきたいのですけれども,今回の資料には出てきていませんが,同意について必要とする場合に,先ほどの実親の同意は異なって白地同意では駄目で,実親子関係を切るという同意と,この特定の人と養親子関係を結ぶという,多分二つが当然必要とされると思いますので,その点だけは確認しておいていただければと思います。 ○棚村委員 すいません,途中で。先ほどから平川委員がおっしゃったように,家事事件手続法の65条というのは正に子どもの年齢とか発達の程度に応じて,やはりそこで表明される意思を考慮したり尊重するという児童の権利条約の考え方だと思います。これは,むしろどんどん年齢がやはり下がったところでも考慮をし,聞き置いたり,いろいろな形に配慮する趣旨です。しかし,それをどうやって司法の場で反映させるか,それから誰がどんなふうに聴くかというのは課題として残っているわけで。   それで,養子もそうですけれども,私はハーグ条約にも関わったので,ハーグ条約も正に16歳未満の子どもを対象としているわけです。それ以外の国境を越えた子どもの不法な連れ去りがあっても,一切ハーグ条約での保護の対象にはしない。そのときの議論の中でも,やはりこの年齢の子どもたちであれば保護の対象ではあるけれども,それを超えた人たちはもう自己決定というか,自分がもう決めていくことになる,こういう形で線引きをしたと思います。正に養子の対象とする年齢の要件を決めるときも,やはり基本的にはこの年齢の子どもたちはまだ保護の対象だけれども,ここを超えたらやはり保護の対象というよりはむしろ当事者になっていくんだと考えるべきで,自己決定というのは尊重され,むしろ当事者に準じて扱われるんだと切り方になると思います。そうなると,何歳が妥当で,それが一番いいのかというのは,ある意味ではどこで線引きをするかという非常に政策的な判断というのが中心になって,むしろこれを超えた子で保護の必要性があるとかないとかという個別の話をし始めるときりがなくなる。個別事案では,多分,年齢がいっていても判断力が十分でないケースもあれば,年齢は低いんだけれども判断力をかなり備えている子どもというのが結構いるわけです。   これは監護とか親権の争いだって,話を聴くときに,そういうケースというのは出てくると思うのです。ただ,年齢要件というのは,正にそのどこで線引きをするかということを決めざるを得ないので,私はハーグ条約とか子どもの親権争いなんかは,もちろん一時的に誰と暮らすかとか,どこの常居所国へ戻すか戻さないかとかということですけれども,子どもにとっては非常に重要な誰と暮らすか,どこで暮らすかというやはり環境を大きく変えたりということなわけです。その辺りで,先ほどから言うように,民法はどの辺りで自分がもう決めるような立場になるのか,それとも保護の対象として--先ほどのパターナリズムではありませんけれども--考えていくかというときに,どこかの線引きをするとなると,やはりかなり15歳というのは,今,日本の中でも,それから世界的に見ても,やはり一つの大きな分かれ目だと思うまです。   それで,先ほどから13歳だとか12歳だとか,あるいは8歳とかというのも出てきますけれども,多分意見を聞き置かなければいけないというのは,ハーグ事案も,前はイギリスでも大体14歳以上の子どもではなければ,その意思というのは聴くこともしなくて,もうとにかく返してしまうという考え方でした。ところが最近の裁判例を見ていると,子どもというのは,しかも裁判官がいろいろな聴き方を,恐ろしくないように,しかもこういう点を中心にというガイドラインなんかを作っているぐらいです。しかも,今まで考えられなかった5歳とか6歳とか,そういう子どもたちの意思というか気持ち,そういうものが尊重されて,返還拒否のオブジェクションみたいなものが認められる判決もでてきました。これはすごく驚くのですけれども,ただ,その意思の聴き方,例えばどれくらい強いものか,それからもう一つは,どれくらい本心なのか,それとも親の意向だとか,いろいろなものをそん度して影響を受けているのかとか,それから客観的に見た子どもの福祉と,それから主観的に感じている福祉の判断とか,福祉との不一致の程度がどれくらいかとか,そういう何か新しい判断の枠組みや基準を持ちながら専門家による丁寧で慎重な子意向とか心情調査みたいなのをやっていいます。   それくらい子どもの年齢でいえば,児童の権利条約12条の聞き置かなければいけないというものはどんどん下がっていく傾向が出ている。その中で年齢要件をどこに定めるかというのは,ある意味ではもう政策判断になってくると思うのですけれども,私はやはり15歳というのは,ある意味ではこれからいろいろなグローバル化も進んで,日本も入管法の改正で外国人の人たちが34万5000人入ってくるとか,こういう状況の中で,やはり国内のもちろん事情もあると思うのですけれども,15歳というところに一応線を引っ張って,それで今後は普通養子も含めて未成年養子縁組とか,それから厚労省の方でも取り組んでいる社会的養育ビジョンみたいなことで支援もやっていくという中で,実親の支援,それから養親になろうと,それから子ども自身の声をどうやって,司法もそうですけれども,あっせんの手続の中でどう拾っていくかと,そういう議論をしながらやらなければいけないと思います。   ちょっと回りくどくなりましたけれども,その辺りのところでぎりぎりアッパーリミットとして,やはり15歳未満というのは皆さんも何とか了解できないかと。もちろん現段階では,やはりかなり低年齢の子どもの意思とか思いというのもうまく扱うかきちっとやらないと,水野委員とかおっしゃっているように,私も賛成なんですけれども,やはり親を選ばせるとか,それから親との関係を切らせるということは非常に子どもにとってはつらい選択にもなり得るので,むしろ私自身はそういう意思の尊重とか心情の尊重みたいなこともやはり大事にしながら,出自を知る権利みたいなこともありますから,ある意味では15歳未満ということで,また繰り返しになってしまいますけれども,どこかで線引きをするとしたら,そういう合理性はあるのかなと思っています。もちろん,難しい選択ですが。 ○平川委員 確かに,先ほどの子どもの意思表示への支援の関係について制度化するのは難しいという話でしたけれども,せめて,いわゆる善管注意義務であるとかいうことも含めて考える必要があると思います。やはり親との関係を切るとかというのは,子どもの権利の中でも相当重い話にもなってくる可能性はありますので,何らかの形で制度的な裏付けというものを明確にしないと,問題が起きてしまうのではないか,懸念があるということです。 ○磯谷委員 私もなかなか悩ましいところで,本来的にはそれほど上げる必要はないのではないかという思いは引き続き持っております。その上で,今15歳というラインが出てきていて,それを共有するとして,成立時に15歳未満でなければならないというふうな形というのは,当初なかなか難しいと聞いていて,そうかなとも思っていたんですけれども,今いろいろ御意見も伺っていくと,それはあり得るのではないかなというふうに感じてきています。   それで,やはり例外をどのぐらい認めるべきなのかというのが,本当に確たるものが実は何もなく議論をしているのではないか。確かに,いや,理論的には,広いこの日本の中で幾らかの子どもたちは,やはり15を超えても特別養子縁組を認められてしかるべき子どもがいるだろうと,そのこと自体はやはり否定はできないのですけれども,しかし,それが弊害がない制度を設計して救ってあげられるのであれば,もちろんそういう子どもたちが一人でもいるんだったら救ってあげましょうということになるんですが,もうこの議論が始まってからずっと指摘されているとおり,明らかに弊害が予想されているわけですよね。   つまり,先ほどの15を超えてくると子どもの同意を取ることについては,やはり大きな懸念がある。そういうふうなところも併せて考えると,今回,成立時15未満という形で例外を認めないという設計もあり得るのではないかと思います。先ほども指摘されているように,今後普通養子縁組について,いずれにしても議論をしなければいけないということが,もうスケジュールとしても想定されていることを考えると,むしろその段階までに,本当に例外を設ける必要があるのかというところをやはりより実証的に研究をしていただいて,「なるほど,こういった弊害を踏まえても,なお例外を認める必要がある」ということが明らかになれば,その段階で15を超えた場合の例外というのも認めるということもよいのではないか。つまり,簡単に言えば二段階で,今回は成立時15未満ということで例外を認めないということで整理をした上で,今後の実証的な研究を待って,必要があれば将来的に普通養子縁組の改正のときにまた認めていくという,そういうこともできるのではないかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○山根委員 今の御意見に賛成です。この制度の当初の目的からして,やはりなるべく低い年齢で成立を目指すことが望ましいという気持ちは私も変わっていなくて,広げるとしても小学生までかなというふうなことを思っていたわけですが,ただ,12歳,13歳がよくて,なぜ15歳は駄目なのかと言われれば積極的な説明は付かなくて,またこの会の中の委員で,実際現場で御苦労されている方の御意見も尊重したいというふうな思いもありまして悩んでいたわけですけれども,ただ,15歳ということが決まることになれば,制度の趣旨としては,やはり随分変わってくるだろうということは思っていて,その辺り,どういうふうに整理を付けていくのかなというのも思っていたところです。   ただ,その子にとってふさわしい制度を選べるということで,この制度が安心な暮らしに結び付くということであれば,15歳という年齢をある程度理解しようというふうには思います。ただ,例外としていろいろと設けることにすれば,またどんどん拡大していくようなことにもなりますし,まだまだ制度全体,普通養子も含めて議論がこれからというところでもあるので,今後の議論で煮詰めていくべきこともあるというふうにやはり思うので,そういう流れでいっていただければと思います。 ○藤林委員 普通養子縁組の問題点,又は先ほどあった戸籍の問題点とか扶養義務の問題点,これらを解決していく中で,次の段階で考えればいいのではないかというふうな意見もあるかもしれませんけれども,その間やはりこれは何年もかかっていくということを考えると,では,その間にもう18歳に至る方々も何人もいらっしゃるということを考えれば,その反対で,取りあえずやむを得ない事由で,本当にもうケース・バイ・ケースで認めつつ,今後普通養子縁組又は様々なほかの法制度の改善を進めていく中で,また考えていってもいいのではないかなと思っています。   それと,弊害の一つとして言われた本人の同意を促すということが,それほど酷なことなのか。例えば,6歳とか8歳,9歳の子どもに選ばせるというのは,それは非常に酷なことかもしれませんけれども,棚村委員の今の御発言というのは,15歳以上の子どもはいろいろな場面で自分の意思決定を行うことが求められてくるわけですし,又は子どもの権利条約においても,子どもの意見表明権を保障されているわけですから,そういう意味で,15歳以上の子どもが,やむを得ない事由の場合に限ってですけれども,実親子の関係を切ることに対して意見を表明する,又は意見を表明することにきちんとサポートがされるということがあれば,それはそれほど大きな弊害とか,ひどいことではないというふうに私は思いますし,それは国際的な潮流ではないかなと思います。 ○浜田幹事 最初に,今の藤林委員の御指摘について,これは多分平行線なんですけれども,私はやはり酷だと思うので,それを申し上げておくというのが一つ目です。   もう一つ,先ほど来,かなりの委員の方々から15歳未満だとか15歳未満がアッパーだというお話がある中で,あえて反旗を翻すものですが,やはり私は得心はできておりません。なんとなれば,先ほどの藤林委員の御発言を聞いていて思ったことなんですけれども,その対象たる年齢が広くなればなるほど,結局のところ,例えば里親委託をされてから実際に申立てに至るまでの期間が空いてしまうこと,いわゆる様子見という弊害と前回指摘されたところですけれども,そのリスクは広がれば広がるほど上がるのだと思います。この点に関しては,確か前回,藤原委員から,厚生労働省としても適切に運営指針等で対応したいという御発言も頂いたところですけれども,そこで厚生労働省さんが頑張ってくださるから,では,それで民法を変えていいということになるかというと,やはりそうではなかろうと思います。   藤林委員の,例外が必要だという御発言の中で,例えば12歳から15歳ぐらいの思春期年齢の頃に委託を受けて,なかなか里親としても申立てをなかなか決断できないことがある。そういったときには,例えば15歳を超えてからでも,やはり縁組成立の余地を残す必要があるのだという御発言があったかと思いますけれども,それというのは結局のところ,例えば12歳,13歳から委託をされて,16歳,17歳まで縁組の申立てをせずに引っ張るというふうなことがあり得るということ。このことは,実は別に15歳を超える年齢のところだけではなくて,15歳未満一般のところで,言ってみれば様子見をする余地というのは,現行年齢よりも上げる時点で必ず広がっているわけですから,そこのリスクをどう考えるか。そのことを考えますと,確かに,では何歳までだったらいいのかと言われると大変困ってしまうんですけれども,15歳がアッパーだということ,私もその趣旨の発言はいたしましたけれども,そのことと,だから15歳までは上げるんだということとは必ずしもイコールではないというふうに考えます。   このように考えますと,何歳と言われると困るけれども,改正の幅というのは小幅で在るべきだというふうに結論付けられるのではないかというふうに考えまして,私は従前から,甲,乙,丙の中で言うと甲案に賛成するものだと申し上げてきたところであります。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○宇田川幹事 年齢要件そのものについてではないのですけれども,議論をお聞きしていて,裁判所の実務の運用という観点で少し気になった点を申し上げさせていただきたいと思います。   まず1点目は,審判の成立時に15歳未満とか18歳未満というような議論があるところで,これは部会資料にも書いてあるのですけれども,審判時ということは審判確定時の年齢ということになるところで,その確定時期というのがいつになるかというのは裁判所としても分からない部分があります。二段階手続を導入したとしても,家裁調査官による調査として,実親ですとか養親候補者,それから子の調査もある中で,成立時ということでの規律を設けたときに,適切な審理ができるような形での仕組みということを考えていかなければいけないところでございまして,そこをもう少し意識していただいて,最終的な規律に落とすときに,また議論をさせていただきたいと思いますし,そのようなことを意識して御検討いただければというふうに考えているところでございます。   それから,例外要件を設けるということで,15歳未満ではなくて,それより上もというようなことでの御提案をされているところで,これまでも述べてきたところですけれども,この「やむを得ない事由」というのが何であるのかということは,やはり明確とはいい難いところではないかというふうに考えておりまして,更に客観性のある要件を設けていただくか,この部会においてどのような場合が例外事由に当たるのかというのを御議論いただければ,実務としても円滑な運用を確保できるのではないかというふうに考えているところでございます。   それから,これも繰り返し指摘させていただいているところですけれども,今回,床谷委員からも,養親となる者と養子の年齢差についての資料も提出していただいているところですけれども,この年齢差についてどのように考えるべきかというところについて,裁判所としては実務の在り方の中で関係してくるところと思っておりますので,この点も併せて御議論いただきたいと考えているところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。   では,棚村委員,短くお願いします。 ○棚村委員 すいません。藤林委員の方から,先ほど,何か年齢が上がれば上がるほど判断はできるのではないか,それを尊重するのは問題ないのではないかというときに,私自身は前から言っているのは,まず,子どもの意思というのが思春期ぐらいだと相当に微妙だと,先ほどおっしゃっていたようにいろいろなことを考えるわけですよね。全くそういうことも考えない時期ですら,子どもというのは割合と敏感にいろいろなことを,周りの親の争いみたいなものも感じ取ったりします。それを誰が聴いて,どんなふうに聴くのかという問題がやはり一つあります。それで,その結果をどういうふうに司法なり裁判なりにいかすかという問題もあるわけです。   そのときに,やはり前から言うようにDVとか大人の問題であれば,この人と切れたいとか,この人とはもう顔も見たくないということができるのだけれども,親子になってしまうと,やはり虐待のケースだって,私らが見ているものの中だって,親をかなり慕ったり,離れるという決断それ自体は非常に微妙な判断を迫ることになるので,それについてはやはりかなり考慮しないとできないのではないか。特に一定の年齢ぐらいになると,どんな理由でどんなふうに思っているかに関わらず,もうやはりそういう人がノーと言ったら,ある程度,もうそれ以上は進めないという年齢が15歳ぐらいだと思っています。更にそれを超えていって18歳未満まで認めなければいけない,あるいは聴かなければいけないということは,一体どんな内容を誰がどういうふうに確認するのかという,むしろ年齢要件というのはある面でもうこの年齢を超えたら,もうこの人が言っていることは理由の如何を問わず,もうそれに反してはできないというやり方もあると感じてさえいます。   逆に,その真意を聴きただしたり,調査をしたりというのもあると思うのですけれども,私はとにかく,ある程度の年齢になったら,もうとにかくその人の理由如何を問わず,もうそういうコントローリングというか,そういう状態になってしまうとそれ以上は触れなくていい。それまでの間で子どもたちの,どういうふうに聞き届けて,どう反映させるかというのは,まだ課題が海外でもあります。そういう状況の中でやはり年齢を決めなければいけないので,やはり一番無難な辺りのところで,だから私は15歳未満辺りのところで落ち着くような乙案ぐらいだったら,それを将来に託しながらできるのでという提案だったわけです,中間的ですけれども。   そういう意味で,私自身は例外を一切認めないとか,そんなことまでは考えていなくて,18歳未満だってやむを得ない事情があって,そういうことであればあり得ると思ています。ただ,子どもの意思の尊重ということを改めてきちっとまた議論しないで,そういう年齢だけで線引きをするというのはなかなか難しいのではないかと思っています。 ○大村部会長 いろいろな御意見を頂いて,今日もどうしたものか悩ましく思いますが,三つのことを申し上げます。   一つは,甲,乙,丙という3案が中間試案にはあったわけですが,現在も,甲案を支持するとおっしゃっている方が複数いらっしゃると理解しました。ただ,それらの方々も,意見をまとめるために,15歳で線を引くということに,最後は反対しないという御意見だったかと思います。   他方,15歳を上限とするといったときに,請求時15歳かするのではなく,成立時15歳とすべきであるというお考えも複数の方から出ていたと思います。成立時15歳とすると,実質的には乙案に近付くところが出てまいります。木村幹事は乙案を支持するとおっしゃいましたが,成立時15歳ならば賛成していただけるという理解もできるかと思います。   そこで,甲案の方々に15歳に集約する形で,この後,議論していただくということができるかどうかということをお伺いしたいと思います。15歳を請求時にするのか成立時にするのか,ここはもう少し御議論いただく必要があるかと思いますが,どちらにしろ,15歳ということにしたときに,例外を設けるのか設けないのか,設けるとしたらどういうものを設けるのかということで,この先の議論をして構わないかということを確認させていただければと思います。   それとの関係で,二つ目,三つ目ですけれども,二つ目は,15歳という線を引いて,しかし,何か例外を設けて15歳を超えることもあるということになると,15歳以上の同意は,意見を聴取するというのとは異なる同意になると思いますので,その同意の取り方については工夫が必要になる。例外を認めるならば,この点を考えていく必要があると思って伺いました。   三つ目は,今,15歳という線引きをしようとしているのですけれども,これも理論的に説明するとなるとなかなか説明は難しいのですね。理屈だけで考えていくと,多分,何歳まで上げるという明確な線は出てこないかと思いますが,我々が今まで議論してきた中で,年齢を上げるべきだと考えているときに,考慮した要素はどういうものかということは整理をしておく必要があると思っております。この点は,新しい制度を説明するときに,どのような説明になるのかということに関わるかと思いますけれども,そこは更に検討する必要はあると思っております。   そこで,差し当たり第1点なんですけれども,この後,更に議論する必要はありますけれども,15歳という線を念頭に置いて,様々なお立場の違いをそこに集約するという形で御議論を頂く,そういうことは可能でしょうか。甲案支持の方は,15歳は成立要件にしたい,例外はなしにしたいという主張になるでしょうし,丙案支持の方は15歳は申立ての要件であり,例外はできるだけ広く認めたいという話になるのだろうと思いますが,その間で御議論を頂くという形で詰めていくことはできるでしょうか。この点を確認できればと思うのですけれども,いかがでしょうか。   何か御意見があれば,お願いいたします。   今のように議論を絞ったとしても,なお行く手は険しいように感じられますけれども。 ○窪田委員 誰かが何かを言わないと先に進まないと思いますし,もう先ほど木村幹事からもお話ありましたが,15歳という年齢が決定的な論拠があるのかというと,多分それほど厳密に詰められるわけではないと思います。ただ,今回の議論からすると,15歳というのは対立する立場が歩み寄った一つのラインなのかなという程度の共有はできるのかもしれないなと思いながら伺っておりました。多分この種のものは,決定的にこの案になるということで決めるということは難しくて,どこかで妥協しなければいけないという状況になるのだろうと思います。そうした議論状況の中で,事務当局,かなり考えていただいた上で15歳というのを出していただいたと思いますし,15歳の扱いに関して,大村部会長からお話があったとおり,かなり実質的には成立条件にするというのと申立時にするというのでは性格は違うと思いますが,その点をもちろん留保した上で,15歳という形で議論を進めていくしか,少なくとも残された期間,もう幾らでも法制審議会は延長するということであれば,それはそれでいいのかもしれませんが,残されたスケジュールからすると,実質的にはそのぐらいしか方策がないのかなと思いながら伺っておりました。 ○大村部会長 皆さんの中には,議論が足らないというお考えの方はいらっしゃると思います。それぞれのお考えは,もしお許しいただけるのならば,今のような土俵の中で,次回以降,御表明いただいて,この部会としての意見が取りまとめられればよいと考えています。取りまとめられるかどうかやや自信はないんですけれども,そういう進め方を今考えております。   窪田委員からサポートしていただきましたけれども,取りあえず15歳というところに集約するような形で,次回,残っている選択肢について御議論いただくということにさせていただいてよろしいでしょうか。 ○久保野幹事 今のお尋ねについては賛成ですというので,ちょっと大きな話をしているときに細かいお願いで申し訳ないんですけれども,先ほど国際的な子の奪取の法律での16歳というお話が出まして,その事件において,16歳というのが申立時とか成立時とか,今している議論との関係で,国際的な子の奪取の16歳というのはどのように判断なり基準値なりが使われているのかというのを参考に,今後,供していただけると有り難いなと思います。 ○棚村委員 私の知っている限りだと,外務省の援助申請というのも16歳未満ということになっていますから,15歳までということになります。   多分,申立時にそれを満たしていないと,要するに条約の対象外になってしまうので援助申請もできないし,それから,多分返還の申立てですか,それの要件もそこに掛かってくるのではないかと思ったので,確か申立時ではないかと思っているんですが,申請時とか。違いますか。 ○倉重関係官 「外国返還援助申請の却下」と,これは7条でございまして,「申請に係る子が16歳に達していること」に該当するときには,返還援助申請を却下するというふうなものになっておりますので,多分これは却下時点ということでよろしいのではないかと。同様に,子の返還事由につきましても,「子が16歳に達していないこと」というのが命ずる要件になっていますので,達している場合は却下ということになるのではないかと。 ○棚村委員 では,判断の時点でということですか,16歳に達しているかどうかは。 ○倉重関係官 ちょっと改めて確認させていただきますが,条文を読む限りではそうではないかと考えます。 ○棚村委員 はい,分かりました。 ○磯谷委員 判断の時点でもそうですし,一旦決定が出て,それを執行する段階で,もう16歳に達すると,もう既にそれはできないというふうに条約上はなっておりますので。 ○大村部会長 その点は,もう少し事務当局の方で御確認を頂ければと思います。   年齢の問題につきまして,何がよいということではなくて,この後の議論の仕方について何か御発言があれば伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。   では,差し当たり,先ほどのような緩いまとめをさせていただきたいと思います。   今日は,養子となる者に子がいる場合についても資料が出ておりますし,床谷委員から比較法的な知見もご提供頂いておりますけれども,もうこれは無理なので,先に送らせていただきます。   今回の資料は,残る論点についての検討ということで,取りまとめをするにはこれらの点を何とかしなければならないという問題を出していただいております。ほかにこの点も考えておく必要があるのではないかという御指摘がありましたら,頂ければと思いますけれども,いかがでございましょうか。 ○幡野幹事 原則15歳まで上がったときに,普通養子縁組を小さい頃にしたけれども,その後,特別養子縁組に変えたいというニーズが出てくるのではないかなと思います。それも可能かどうかということも検討する必要があると思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかいかがでございましょうか。 ○磯谷委員 前回か前々回にもちょっとだけ申し上げたと思うんですけれども,同意に関して,同意を取ろうとしたときに,同意をしますと。しかし,なぜかというと,300万円もらえるからというふうな話になったときの整理をどういうふうにするのかというところ。確かに,いや,そういうのはもう人身売買に近いものですから,公序良俗違反で無効であって,したがって裁判所としてはそれは認めませんという整理も一つあり得ると思っておりますけれども,その辺りを何か同意の審理といいますか,同意をどう取るかというところについて,何か実質的な,又は手続的な要件といいますか,そういったものを設ける必要があるのかどうかというのは,私もちょっと結論は出ていないんですけれども,論点としてあり得るかなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかいかがでしょうか。   では,年末年始になりますけれども,もし何かお気付きになりましたら,事務当局の方に御一報いただければと思います。   差し当たり今考えられる論点を御指摘いただいたということで,今日のところは事務当局の方に持ち帰っていただくということにしたいと思います。   よろしいでしょうか。   それでは,今後のスケジュール等を事務当局の方からお願いします。 ○山口幹事 次回ですけれども,次回は来年,年が明けて1月15日火曜日の午後1時30分からということであります。場所は,また今日と同じこの場所でございます。   その後,1月29日を予備日として確保させていただいておりましたが,この議論の経緯からしますと,恐らく1月15日に取りまとめというのは困難であろうと思いますので,申し訳ありませんが,1月29日も開催というふうにさせていただければと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   1月は2回お願いするということになろうかと思いますけれども,どうぞよろしくお願いを申し上げます。   年末まで熱心に御議論を頂きまして,誠に感謝しております。本日はこれで閉会をしたいと思います。皆さん,よい年末年始をお過ごしください。   閉会します。 -了-