法制審議会 特別養子制度部会 第10回会議 議事録 第1 日 時  平成31年1月29日(火)   自 午後 1時30分                         至 午後 3時31分 第2 場 所  東京地方検察庁総務部会議室 第3 議 題  要綱案の取りまとめに向けた検討 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 それでは,定刻になりましたので,まだお見えになっていない委員,幹事の方もいらっしゃいますが,法制審議会特別養子制度部会の第10回会議を開会いたします。   本日も御多忙の中を御出席いただきまして,誠にありがとうございます。   初めに,事務当局の方から本日の配布資料について御説明を頂きます。 ○倉重関係官 それでは,本日の配布資料の御説明をいたします。   本日は,部会資料10-1,それから10-2を配布しております。部会資料10-1は,これまでの御審議を踏まえまして事務当局の方でまとめさせていただいた要綱案の(案)ということになります。それから,部会資料10-2につきましては,この要綱案の(案)の補足説明ということになります。   以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   本日取りまとめをするということで,要綱案の(案)と,それからそれの補足説明が配布されております。要綱案の(案)の方は,第1の「養子となる者の年齢要件等の見直し」と,第2の「特別養子縁組の成立の手続に係る規律の見直し」の2項目に分かれております。一つずつ資料に基づいて検討を進めさせていただきたいと思っております。   そこで,まず第1の「養子となる者の年齢要件等の見直し」の方について御審議を頂きたいと思います。   では,これにつきまして,事務当局の方から部会資料の御説明をお願いいたします。 ○満田関係官 それでは,第1の「養子となる者の上限年齢等の見直し」について,部会資料10-2に基づいて説明を申し上げます。   まず,「1 前回会議までの議論の状況等」についてですが,前回会議までの議論では,特別養子縁組における養子となる者の上限年齢を引き上げるとしても,15歳未満までとすべきであり,例外を設けることは相当でないとの意見が述べられた一方で,15歳を超える者についても例外的に特別養子縁組の成立を認める必要がある場合があり得ることは否定し難いとして,原則的な上限年齢を15歳未満とした上で,例外的に18歳未満の子どもについても特別養子縁組の成立を認めることとすべきであるとの意見が述べられました。   そこで,養子となる者の上限年齢についての要綱案の(案)の考え方でございますが,ごく例外的にではあれ,特別養子縁組を成立させて安定的な家庭環境の下で養育すべき例があるという指摘は,これまでの部会で重ねてされてきたところでもあり,このような指摘を踏まえてもなお,15歳に達している子どもについて,事情のいかんを問わず,特別養子縁組を成立させる余地を一切認めないとすることは,必ずしも相当でないと考えられます。   他方で,これまでの部会におきましては,養子となる者の上限年齢の引上げに慎重な意見もまた繰り返し述べられてきたところでありまして,特に15歳に達した子どもは自らの意思により普通養子縁組をすることができるのであるから,通常は特別養子縁組をするまでの必要はないという指摘は,民法上のほかの制度との整合性にも目を配った重要な指摘であると考えられます。   そこで,要綱案の(案)では,養子となる者の上限年齢として,民法上のほかの制度との整合性なども考慮し,15歳未満を原則とした上で,厳格な要件の下でごく例外的には15歳を超えた子どもについても特別養子縁組の成立が認められることとするという規律を設けることとしております。   次に,養子となる者の原則的な上限年齢を15歳未満とするとしても,その基準時を「請求時」,すなわち特別養子縁組の成立の審判の申立時とするのか,「成立時」,すなわち審判の確定時とするのかについて,前回の部会では意見が分かれておりました。   この点についての要綱案の(案)の考え方でございますが,養子となる者の原則的な上限年齢をその縁組の成立の審判の確定時に15歳未満でなければならないとしますと,手続上,解決困難な問題が生ずるものと考えられます。すなわち,このような考え方を採りますと,裁判所は,審判をする時点ではその審判の確定の時期を適切に予測することは困難であるにもかかわらず,その時点において例外要件について審理すべきかどうかを判断しなければならないこととなります。   養子となる者が15歳に達するまでに審判が確定するであろうと見込んで,例外要件について審理をしていなかったものの,何らかの事情で審理が長期化して,養子となる者が15歳に達するまでに審判が確定しない可能性がそれなりに大きくなってから,改めて例外要件についても審理を始めるということでは,審判が更に長期化することとなります。他方で,このような事態にならないようにするために,養子となる者が15歳に達するまでにまだ相当の時間がある場合であっても,幅広に例外要件についても審理をするということでは,結果的に養子となる者が15歳に達するまでに審判が確定した場合には,必要のない審理を行い,それに相応の時間と関係者の負担を要したということにもなりかねません。   以上は,審理を担当する裁判所の観点から述べてまいりましたが,法制審議会への諮問は特別養子制度の利用を促進する観点からその制度を見直すというものでございますので,特別養子縁組の成立の審判を申し立てる申立人の立場も忘れてはならないと考えられます。申立人から見ますと,15歳未満の基準時が審判の確定時であるとする規律では,例外要件を事実上立証する必要があるのかどうかの見通しが不確かなまま申立てをするか否かという重要な決断をし,場合によってはその立証の準備をしなければならないこととなります。   また,先ほど述べました審理の長期化という問題は,申立人の負担を増大させる要因になるものでもあると考えられます。   以上申し述べましたところなどからしますと,原則的な上限年齢の15歳未満の基準時は,審判の確定時ではなく,審判の申立時とする方がより適切であると考えられます。本日お示しした要綱案の(案)も,このような考え方に従ったものとしております。   なお,前回の会議では,未成年後見人の選任の審判を例として,現行法上も未成年被後見人が審判時においては未成年であったが,審判確定時においては成年に達しているといった場合が生じることが指摘されました。この点についてでございますが,未成年者に親権者がいない場合には,できる限り早急にそのような事態を解消することが求められているものと考えられますので,裁判所においても,審判時に成年に達していない場合には,仮にその確定時に成年に達している可能性があるとしても,未成年後見人の選任の審判をする必要が高いと考えられますし,仮に審判の確定時に被後見人が成年に達していても,成年に達した者に対する未成年後見人選任の審判というものは概念上想定されないものとして,審判の効力が生じないと整理することができるように思われます。これに対し,特別養子縁組の場合には,養子となる者にとって特別養子縁組の成立の必要があるのかについては慎重な検討が必要であること,また,15歳以上で特別養子縁組が成立するということも概念上想定されていることなどからしますと,未成年後見人の場合と同様に論じることはできないものと考えられます。   また,例外的な上限年齢である18歳未満につきまして,その基準時を審判確定時とする規律を設けるのであれば,原則的な上限年齢についても基準時を審判の確定時とすることは可能ではないかとの御指摘も頂いたところでございます。   しかし,養子となる者が審判の確定すべきときに18歳に達していれば,実体法上,特別養子縁組が成立する余地はないため,その審判が確定しないものとすれば足りるのに対し,養子となる者が審判の確定すべきときに15歳に達していても,例外要件を充足すれば特別養子縁組が成立するという余地はございますので,その審判が一律に確定しないものとすることはできないという違いがございます。したがいまして,18歳未満の場合と同じようには論じられないという問題があるように思われます。   次に,部会資料10-2の3ページの36行目以下を御覧ください。   例外要件としての「15歳に達するまでに特別養子縁組の成立の申立てがされなかったことについてやむを得ない事由があること」という要件について整理したものでございます。   前回の部会におきまして,実親の同意が得られなかったということのみが原因で,特別養子縁組の成立の審判の申立てをしていなかった場合は,この「やむを得ない事由」に当たるかどうかが検討されたところでございます。この点につきましては,「やむを得ない事由」があることという要件を設ける趣旨が,養子となる者の地位の早期確定という利益に配慮して設けられたことに鑑みますと,単に実親の同意が得られなかったから審判の申立てをしなかったというような事案では,「やむを得ない事由」の要件を満たすものではないという形で整理しております。   最後になりますが,部会資料10-1の第1の4を御覧ください。   この要件は,養子となる者が15歳に達している場合には,その者の同意を要するという規律でございますが,その同意の基準時については,審判時を基準としております。したがいまして,特別養子縁組の成立の審判時に養子となる者が15歳に達している場合には,特別養子縁組の成立には養子となる者の同意が必要ということになります。   第1の説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今の御説明にもございましたけれども,この養子となる者の上限年齢の引上げにつきましては,意見の対立がなお残っているということがございます。そのことを認識しつつ,前回の議論を踏まえて改めて15歳を上限とした上で例外を設けるという案を御提案いただき,御説明を頂いたものと理解しております。これに対しまして,委員,幹事の皆様には,いろいろな御意見はあろうかと思いますが,本日は取りまとめを行いたいと考えているところでございます。   そこで,今後の取扱い,あるいは運用などにつきまして,御意見や御要望を各委員,幹事に述べていただきまして,その上でこの案に御賛同を頂けるかどうかということを伺っていければと思っております。   質問もおありかと思いますけれども,この場で質疑応答を繰り返すというのではなくて,できるだけ意見ないし要望という形で,今後に向けた形でお示しいただけますと,有り難く存じます。   少し前置きが長くなりましたが,以上のような希望を述べさせていただいた上で,御意見を頂ければと思います。どなたからでも結構ですので,お願いをいたします。 ○磯谷委員 事務当局の方におかれましては,この要綱案の整理に大変御尽力いただきまして,ありがとうございました。心からお礼を申し上げたいと思います。   もう先ほど部会長がお話しいただいたように,なかなか意見の対立があるところでありまして,私自身もすとんと腹に落ちたかというと,まだのどに引っかかっているぐらいのところでもありますけれども,ただ,もし特別養子の上限年齢を15歳とし,さらに例外も認めるということで,現在と比べるとかなり年齢が高くなるということを踏まえますと,やはりこの部会で出ていた懸念というのはしっかり認識をする必要が実務家としてはあると思います。   恐らく経過措置にもよりますけれども,改正をした後,これまで6歳ないし8歳を超えてしまったということで,今回の機会を捉えて高い年齢で申立てをされるということが幾らかあることは予想されますが,しかし,そういったことがある程度収まった後でもなお,高い年齢の申立てが続くということですと,やはりこれは本来ノーマルなことではないと思います。   したがって,是非運用の中でできるだけ早く子どもを安定した環境で育てられるように,申立ても早くしていただくということと同時に,特に年齢が高くなって申立てがあるケースについては,しっかり調査をしていただいて,どういう事情でそれほど遅くなったのかというところをしっかりリサーチをしていただきたい。そして,弊害が生じていないかどうかということをきちんとフォローしていただきたいなと思いますので,それをお願いしたいなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでございましょうか。 ○棚村委員 磯谷委員からもお話があったと思いますけれども,やはり現行は6歳未満ということになっていますので,やはりゼロ歳から1歳ぐらいまでにはが6割ぐらい対象になっていて,6歳を超えた児童では,厚生労働省の調査の結果なんかですと,やはり年齢要件が問題になって断念をせざるを得なかったという障害にはなったというのもかなり報告はありました。   年齢を大幅に引き上げるということについては,いろいろな懸念があると思うのですけれども,海外を見ましても,赤ちゃん養子というところから,ある程度年齢が行っても,特に里親制度の下で家庭的な養育を受けながら段階的を経て養子縁組に,半分ぐらいはつながるという実情がありますので,そういうような形で,本来だったら日本でも里親制度とか家庭的な養育というものをかなり充実させていく必要があると思います。その上で,次のステップとして特別養子縁組というものが位置付けられ,適当な子どもたちについてはパーマネントなケアを,パーマネントプランニングを行うという流れが重要だと考えています。   私も,当初は割と年齢は低目にということを考えてはいたわけですけれども,ただ,アメリカで最新の保健・ヒューマンサービス省という,要するに厚労省に相当するところが統計をやはり出していて,養子縁組の対象になった児童の年齢を見ると,18歳未満ということなんですけれども,やはり4歳未満ぐらいがもう50%ぐらいで,5歳まで上がって9%ぐらいちょっと増えて6割ぐらいになっていますが。ただ,15歳,16歳,17歳というのが,実は2%,2%,1%という形で5%はいらっしゃるわけです。アメリカでは,赤ちゃん養子という実子型というだけではなくて,かなり虐待・ネグレクト対応型も利用されていることがわかります。確かに,水野委員が前にもおっしゃっていましたけれども,ネグレクトとか虐待みたいな形で傷付いた子どもたちがいて,それを日本で年齢をあげて特別養子でケアをするとなると,専門性とか経験とか支援が足りないので,非常に困難な面はあるかと思います。でも,藤林委員とか岩﨑委員からの御指摘もあるように,そういう子どもたちで是非,ある程度経験もあって覚悟もある方が家庭的に養護をし,なおかつ子育てをし,特別養子縁組という受け皿を使って,そして親子関係をしっかり固めていくと,こういう可能性というのはやはりあるんではないかと思います。   ヨーロッパなんかを見ましても,やはり赤ちゃんを対象にしたり低年齢の子が多いんですけれども,ただ,そうではなくて,15歳,16歳,17歳ぐらいの子どもたちにもやはり法的親子関係をきちんと固めるための一つの受け皿ということで広げる可能性というのはあって,日本でもこれからはニーズが増える可能性はあると思うのです。ただ,磯谷委員もおっしゃっていたように,私自身も,海外ですとそういう養子縁組がかなり困難な,ハード・トゥ・プレース・チルドレンというふうに言うのですけれども,そういうところには政府が補助を出したり,それから特別な援助をしたり,それから養親候補者には里親さんとして十分に経験を積んでいただいて,やはりお互いにいろいろな起こり得る問題を克服しながら,しっかりと親子関係とか家族のきずなを強めていく。やはり専門的な支援とかというのがすごく重要だと思います。   そういう意味では,ちょっと長くはなりましたけれども,原則15歳未満ということで対象年齢は引き上げてもいいと考えています。おそらく,比較的低年齢の子どもたちが多いとは思いますが,さらに,例外要件ということで,どの辺りのどういう事情を,「やむを得ない事由」とか,そういうふうに判断するかというのは,ちょっとこれからも議論をする必要はあると思うのですけれども,ただ,15歳を超えてしまった子どもたちに対しても,必要がある限りは特別養子縁組という受け皿を開いておく必要があるの手はないかと考えます。   これから運用とかいろいろなことの中で特に重要になってくるのは,里親制度とかそれに対する支援と同じように,特別養子の縁組をした後も,そういうような様々な形で交流をできたり,支援やアドバイスを受けることができるようにする。だから,児童相談所とかそういう国の方でも都道府県の方でも,やはり里親や養子縁組に対する支援を強化するという方向性を打ち出していますけれども,是非そういうような形で,かなり多様な子どもたちがこの特別養子縁組の対象になり,年齢も上がってきますし,養子縁組前も後も,その親子をトータルに支援をするという仕組みみたいなものを是非充実させてゆかなければならない。それがやはり大前提になってこの年齢要件の大幅な引上げ,そして特別養子縁組の利用の促進ということにつながるんではないかと思いますので,是非そういう縁組前後の支援強化ということで,様々な起こり得る困難な問題に対しても応援をしていくんだということが,非常にこの制度をうまく働かせたり機能させていくためには重要かなと思います。   すみません,長くなりましたけれども,そんなことで賛成をしたいと考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかの委員,幹事,いかがでございましょうか。   では,浜田幹事,それから藤林委員の順番でお願いいたします。 ○浜田幹事 ありがとうございます。   先ほどの磯谷委員,棚村委員の発言と相当程度かぶるところもありますが,最終回ということですので,改めて申し上げたいと思います。   年齢要件が大きく引き上げられることになるときの最大の不安は,この部会でも何度か申し上げておりましたけれども,養親候補者による様子見が必要以上に長く続くということでございます。これについてはもう本当に相当に心配をしております。そこが様子見で,しかも思春期年代に広がるということは,思春期に子どもが荒れるのはある意味当たり前といえば当たり前の話でございまして,それで申立てを控えられるということになりますと,子の利益のために早期に安定的な環境を確保するという制度の趣旨が,もう何か,その根幹が崩れることにもなりかねないなというふうに危惧をしておるところでございます。   この点について,前に指摘を申し上げたときに,厚生労働省の方から例えば指針等の策定等で適切に対処するという御発言も頂戴をしておりますが,大変重要な事柄であると思いますので,あえてもう一度,意見と申しますか,確認的に述べさせていただきました。   早くという表現が磯谷委員の御発言にあったかと思いますけれども,それというのは,もちろん年齢的に若い方がいいということと,その子についての社会の側の関わりが始まってから,実際にその特別養子縁組までに至るまでの期間が短いということの両方を含むものだと思いますので,子どものために適切な運用がなされることを強く望んでおきたいと思います。   あともう一つは,例外要件を設ける場合のやむを得ない事由というところについてでございます。これについては,先ほど事務当局からの御説明の中でも,15歳以上の場合であっても厳格な要件の下でごく例外的に認めるのだと,そういう作りのものなのだという御紹介があったと認識をしております。全くもってそのとおりだと思いまして,そう考えますと,この「やむを得ない事由」というのは,これは前回も出てきたところですけれども,かなり厳格な判断がなされることになるのであろうなと。しかも,その方が望ましいのであろうと考えているところ,こちらももう何か単なる念押しのような形でございますが,改めてちょっと発言をさせていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○藤林委員 この審議会で年齢のことについては何度も議論を重ね,複数の委員から懸念であるとか,また疑問点を示されるときもありました。   一つに,今,浜田幹事が言われましたように,特別養子縁組の申立てが漫然と引き延ばされていく。本来早期にパーマネンシー保障をなされるべきことがなされないということが,子どもの不利益になってしまうのではないか。年齢制限の引上げがそのような事態を発生させてしまうのではないかという懸念が一つあったと思います。   もう一つ,子どもの同意という問題で,それは本当に子どもの同意なのか,子どもの意見表明を十分関係者は支援しているのかといった問題。その子どもが親子関係が法的に終了するということに同意させることにどれだけの負担が掛かるのかといった意見もあったと思います。   また,ほかの委員からも,このように,この年齢になって親子関係を終了させるだけの非常に難しい,虐待ケースのような,そういう子どもさんを養親さんに委ねるということは,果たして本当に適切なんだろうかといった指摘もあったかと思います。   私は,この審議会の場で各委員さんから頂いた懸念,又は疑問に対して,それはやはり児童相談所長として,その疑問を一つ一つしっかり胸に刻みながら,そういったことで子どもの不利益にならないように,また養親さんに大きな負担にならないように,今後児童相談所であるとか,また里親さんとか,又はいろいろな関係機関に対して,こういった疑問点,懸念があったということを伝えながら,その1個1個の懸念が実現しないように取り組んでいくということが重要なことではないかなと思っております。   実際にこれがどのように立法化されていくか分かりませんけれども,一般の児童相談所長さんとか里親さんがこの法制審議会の議事録を全部読むということはなかなかあり得ないと思うんですけれども,こういった論点があったということを多く公表しながら,そういったことが発生しないように進めていくことがとても重要と思っています。   1980年代に,アメリカでパーマネンシー・プランニングのテキストが出されているわけなんですけれども,同じようなことが語られていて,非常に不安定な状態に子どもが置かれてしまう。養子縁組がこの子どもには妥当であるというふうな,そういった判断が出ているにもかかわらず,それがなかなか実現せずに何年も置かれていることで,子どもが非常に精神的に不安定になってしまうというふうな事例が紹介されておりました。やはり,それはどこの国でもこういった懸念があったり,またそういった事態が発生するということは,共通する問題なんだなと思いながら,最近読んでいたんですけれども,原則はより早期に早い段階でパーマネントな関係を保障していくということがとても重要であるということもまた主張しつつ,それでも本当にやむを得ない事由の場合にこういった例外を認めていただけるということは,子どもの利益になっていくのではないかと改めて思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかの委員,幹事,いかがでございましょうか。 ○岩﨑委員 本当にいろいろと皆様方にお世話になりまして,ありがとうございました。   取りあえず,私たち現場からの声を割合しっかりと受け止めてもらえた結果になりました。その裏に先生方の悩ましい思いを一杯感じておりますので,そのことについては私なども肝に銘じて,これに浮き上がらず対処していきたいと思っております。実は,私たちの方では,身内同然の毎日新聞の記者から昨日もう既に取材を受けまして,一生懸命強調したのは,まさかあなたたち,大幅対象年齢上がったなんて,そんな見出しにしないでねと,これはなかなか大変な問題なんだから,まず養子縁組をもう一度考え直す上で,実の親が育てられるための支援が今日本でどれだけしっかりとなされているかから始まって,本当に必要な子どもについて,どれだけ早くにその見通しを児童相談所長が出せてこれるか,施設の中で長期化する子どもをいかにして防ぐかというようなことがまずしっかり考えられた上で我々の仕事が成り立つのだということを,一生懸命記者に説明をしておりました。メリットもあればデメリットもあるというところを,間違いなくメリットだけを報道するのではなく,こんな難しい問題も抱えているのだというところも,できれば記事として上げてほしい。そうでなければ,今回の多くのここにいらっしゃる先生方の御苦労が私は実らないものになると思っております。   そういうふうに,現場にいる私たちが一番,高年齢児の親子関係の構築がいかに大変かということは,もう重々分かっております。難しいといえば,もう3歳で難しいです。6歳になればとても難しいです。10歳になれば,ほとんどうまくいかなかったという経験を実際問題持ちながら,6歳と決められてしまったがゆえに,6歳以上の子どもについてはかなり限定的な子どもを普通養子でしかやってこなかったという思いがございます。一応,どの子にも特別養子縁組という機会が与えられるということがあって,私たちも,どの子どもにもそのチャンスをいかにして保障できるのかということを考えることになるのだということも,また分かっていただきたいと思います。   難しさは,私など本当によく分かっていて,水野先生が再々おっしゃる,大きな子どもを年寄りの夫婦が,これならばと思って委託なんかされたらとんでもないことになるのではないのと言われることは,当然に私も予測の内にありまして,そのことをどれだけあっせんの現場にいる私たちや児童相談所,ましてこれから認可されて公的に動き始める民間のあっせん団体が,単に赤ちゃんあっせんにとどまらず,かなり年齢の高い子どもを扱っているということも聞いておりますので,その人たちにどれだけの技術力と,それからどれだけの忍耐力と,それからどれだけの相手を見る目があるのかということを研さんしないと,こういうケースを生半可に取り扱うことはいけないんだよというメッセージを何とか行き届かせるように,これから私も努力をしたいと思っております。   でも,法務省の方々を始め,私たちが現場で抱えている一人一人の子どもたちにとって,やはりチャンスを与えられるシステムを作っていただくために,かなり大幅に妥協していただけたこと,本当に心からお礼申し上げたいと思います。この度は本当にお世話になりました。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかの御発言いかがでございましょうか。 ○山根委員 これが始まる第1回のときに言ったと思うんですが,この制度の利用が伸びないから,伸ばすためにまず年齢を上げるんだというような説明を聞いて,いやその前に制度の周知であったり,国とか自治体とか民間とか,社会全体の理解の促進とか支援体制の充実とか,それが先なのではないかというようなことを思って,それは今も持っているんですが,ただ,いろいろ現場の皆さんの声とかを伺って,ある程度の年齢になっても,高い年齢でも特別養子が最適である子というのがいて,彼らにチャンスを広げる扉の一つなんだということで,よりよい方向で進むことを信じまして,これから注意深く見ていきたいなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでございましょうか。 ○平川委員 ありがとうございます。   この部会がスタートしたころの制度の趣旨についてですが,パブコメがされて以降,法の制度の趣旨というのが大きく転換があったのではないかと感じております。それは何かというと,わらの上からの養子という考え方については,今回についてはほとんど最終的には出てこなくなったということからすると,特別養子の法の趣旨について,どう変わって,どういう議論経過でこうなったのかという点を,国民の皆さんにしっかりと説明をしていく必要があるのではないかと思っているところであります。   昔の菊田医師事件をきっかけとして,この制度が作られたんですけれども,社会のいろいろな変化に応じて,この制度も逆に変わらざるを得なかったということも含めて,説明をしていく必要があるのではないかと思っているところであります。   そういった中で,私,再三申し上げてきました子の意思表示の関係については,やはり実務として実際の運用についてしっかりと支援体制を構築していくということが重要ではないかと思っているところであります。   手続法において,それは15歳未満であっても子の意思については尊重するということは明記をされておりますし,この要綱案の補足説明の一番最後の方にも,児童の心理の専門家である裁判所調査官の活用ということについても記載がされておりますが,やはり子の意思ということについては,15歳未満であってもその辺はしっかりと尊重しつつ,どういう支援が必要なのかというのを日々考えていく必要があるのではないかと思っているところであります。   また,この特別養子制度の特徴といいますか,普通養子と違うところは,永続性という面が普通養子に比べて相対的に担保がされていると。また,実親との関係性を切るということからも,そういうことから将来的にわたって実親から例えば金銭的な援助を求められるとか,若しくは介護の義務を求められるとか,扶養義務から逃れられるという特徴があるのかと思っております。それ自身は一つの特徴として押さえておく必要があるかと思います。   ただ,実質的親子関係ということからいうと,逆にこの特別養子だからそうなのか,普通養子だからそうなのかということ,若しくは里親ならどうなのかということではなくて,実質的親子関係というのは,その法律に規定されるのではなく,実質的に,本当にどういう関係性が作られているのかということが一番重要なのではないかと思っているところであります。   ですから,特別養子だからとか普通養子だからというふうなことで区別するということではなくて,本当にどういう実質的親子関係を作っていけるのかということについては,児相の関わりとかということも重要なのではないかなと思っています。それはなぜかというと,この特別養子縁組をした後でも,様々な不適応の問題というのはやはり一般の親子に比べればどうしても多く出ているという実態もありますので,その辺様々な関係機関の関わりとか支援というのが重要なのではないかと思っているところであります。   以上,感想めいたことですけれども,発言に代えさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかの方々はいかがでございましょうか。御発言ございませんでしょうか。 ○棚村委員 よろしいですか。すみません。   先ほど年齢のことを中心としてお話をさせていただきました。ほかの委員からも出ていましたが,今回特別養子ということを中心に取り上げざるを得なかったわけですけれども,本来だったら,やはり望まない妊娠,こういうような不安定な状況に置かれた母親ですけれども,そのような母親を中心に,これに対する相談支援体制みたいなもの,実親の支援,相談支援ということを,きちんとドイツなどの秘密出産制度とか内密出産制度みたいなものも含めて確立をしていくこと申し訳ございません必要だと思います。そして,実親が子育てについてかあるいは里親に出すか自分で育てるかというようなことについて,やはり十分に熟慮したり冷静に考えたり,そういうプロセスの中で,むしろ育てることが難しいということになれば,子どもにとって一番ふさわしい受け皿である後見,里親,どういう仕組みの中で育つことが大事なのか。その中に特別養子縁組という一つの選択肢ということで用意をされているということがやはり明確にされる必要があって,そういう一連の実親が育てられるかどうか,それからそれに代わるべき適切な人がいるかどうか,どういう形が一番子どもにとっていいのかということで,実親それから養親に対する相談支援の充実だけではなくて,やはり特に子どもの権利,平川委員の方からも出ていましたけれども,子どもの思いとか子どもの安定した養育環境を確保するために,どういう仕組みなりそういうものが一番この子どもにとってふさわしいのかということで,関係者の相談支援の体制を,特に実親さんの支援をきちんとするんだということを要望したいと思います。それから,きちんと育てる役割を一時的でも,あるいは恒久的にでも引き受けようという人に対する相談支援も充実をさせ,その中で特別養子という制度をどういうふうに位置付けて活用していくかという大きな議論がやはり大事だと思います。残念ながら,なかなか時間の関係で今回は十分検討ができませんでしたので,普通養子縁組との関係とか,いろいろな周辺の制度としての里親制度とか,それから親族による後見というようなもの,こういうような制度も,やはり子どもにとって一番ふさわしい受け皿としての役割みたいなものをきちんと議論する必要があると思います。   そして,もう一つは,やはり特別養子縁組を子育てをする仕組みの中でどう位置付けるかということと,子どもの声だとか子どもの思いとか子どもの権利,あるいは子どもの利益,子の最善の利益というものを中心として制度を見直していくという大きな動きが必要です。その中で,今回の議論も是非そういう支援,社会的な支援の充実ということと,子どもの権利なり子どもの利益を守っていくと,そういう枠組みの中でこの制度が年齢を引き上げたこと,そして使いやすくなるということの大きな前提条件になっていくんだと思います。ちょっと補足的にお話しします。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかの方々,いかがでございましょうか。 ○浜田幹事 申し訳ありません,先ほど一つ言い忘れましたので,更にまた念押しのような話で申し訳ありませんが,述べておきたいと思います。   15歳に達した子どもについての「やむを得ない事由」があるという形での例外要件を求めるところの関連の話で,今回の資料ではないのですけれども,前回の部会のときの部会資料9-2,お手元にない方もいらっしゃるかと思いますので,場所の御指摘を申し上げますと,部会資料9-2の3ページの26行目からの一つの段落,ここに記載されたことは大変重要だなと思いますので,念押しでございます。何が書いてあるかと申しますと,「養子となる者が15歳に達した後に特別養子縁組成立の審判が申し立てられる事例の中には,その申立ての時点において養子となる者が成年に達する日が迫っているものや,縁組成立後の養育の期間が短いものとなるものも十分に想定されることから,特別養子縁組制度が,専ら縁組成立後に養子となる者を養育することを目的とするものであることを踏まえると,縁組成立後に確保し得る養育期間の長さ等も考慮して,当該縁組を成立させることが子の利益のため特に必要であるかが慎重に検討されるべきことになるものと考えられる」という記載がございました。今回の10-2には同じような指摘,記載は入れていただいていないわけですけれども,例外的に15歳以上の子どもについての縁組成立を考えるときの一つの基準と申しますか,考え方として大変に重要な御指摘をこの9-2の方で頂いているなと思いますので,改めて念押しをさせていただきたいというふうなことでございます。ありがとうございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかの御意見,いかがでしょうか。研究者の方々や裁判所から何か御意見があれば伺いたいと思いますが。いかがでしょうか。 ○水野(紀)委員 もう今までもお話をしてきたことですけれども,日本の社会の構築が,一番失敗してきた問題が,この課題の背景にはあるのだと思います。   近代化の前の群れによる育児,地域社会や大家族による群れによる育児で様々な安全弁があった社会が崩壊していったときに,それに代わるものとして育児に対するケアを社会福祉として手厚く支える必要があります。しかし,我々の社会はそういう社会福祉の制度的構築に失敗してきました。その問題が背景にあるのだと思います。   特別養子縁組についても,これを民間の私人間,養親と実親との関係にしてきてしまった,このことにも大きな問題があって,それが年齢要件をめぐる意見の対立の背景にあったのだと思います。正しい解答というのは,社会福祉による実親の育児支援をもっと手厚くして,そしてそこがうまくいかないときには,よりその子どもにとって最適な育児環境を与えるというルートで養親に結び付いていくというものであるはずです。でもそれができず,年齢のことだけで議論をされてしまうという,悲しい構造があるのだと思います。   こうなって,今さら反対は申し上げませんが,やはり危惧することはございます。児童相談所などが介入することによって,本当に難しいティーンエイジを素人が無謀に引き受けるという危険なケースは,抑えられるかと,実務に期待をしているのですが,もう一つ,危惧する類型があります。特別養子は,結局は民民の関係のままですので,子どもの奪い合いにこれが悪用されないかと危惧しております。今でも児童相談所に子どもの奪い合い紛争が流れ込んできていて,子どもを抱えている親が虐待をしていると他方の親が訴えるような,そういうケースも増えてきていると伺っております。特別養子が子どもの奪い合いに用いられてしまうようなことがないように,実務ではその点も御配慮いただければと願っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか,いかがでございましょうか。 ○久保野幹事 すみません,先ほど浜田幹事の方から御指摘がありました9-2の資料に載っている記述との関連で,前回,最後の方で離縁について発言をさせていただきましたけれども,先ほど御指摘があったような慎重に考えるべき事情に加えて,離縁が制限されるということになるということも,十分考慮の上に運用していっていただきたいと思います。   その関連では,特別養子の制度の趣旨といいますか,性質というものが,実は変容することになるのではないかという御指摘がありまして,先ほど来,普通養子等ほかの制度との関連で見直しを続けていくことの重要性の御指摘がありましたけれども,離縁を始めとする特別養子の今回改正していない点についての不断の見直しということも課題になるということだと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでございましょうか。   最後の機会ですので,御発言を頂ければと思いますけれども。 ○木村幹事 今回の要綱案の(案)という形で示していただいた申立時15歳という形で例外要件を認めるということで,幅広く特別養子の可能性を作り出すということについて御説明いただいた点と,これまでの議論の内容を含めて,その点については納得したというつもりであります。その上で,先生方の意見を踏まえて2点だけ指摘させていただきたいんですけれども,今回の議論を含めて,多くの先生方がおっしゃったように,普通養子縁組との関係自体については,まだまだ議論すべき点は多く残されているということを一つ言いたいということと,もう一つ,磯谷委員が初めにおっしゃったように,これから年齢要件が拡大する中で,特にこれまでの年齢ではカバーできていなかった年齢の人たち,特に15歳に達するまでの人たちでも高年齢の中で申し立てられるという事案が,一体どういった実情とか背景の下でなされているということについては,なるべく実態が分かるような調査をしていただきたいと思っています。   というのは,元々のこの法制審議会の目的として,親がいない子であったり,被虐待児童を想定されていたと思いますけれども,実際,特別養子を連れ子養子などの形で使いたいというふうなニーズも全くないわけではないと思っていますので,今回の年齢要件の拡大というものが実際どういうふうな形で運用されて,それが特別養子だけではなく,普通養子縁組制度そのものの見直しにもつながる可能性があると思いますので,今後の運用についても幅広くフォローしていただきたいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○床谷委員 年齢要件については,私はこの案に基本的には賛成なんですけれども,どなたかがおっしゃったように,赤ん坊からある程度の中年齢というのか,年齢が上がることによって,縁組前の実親との関係や,実親を通じた親族との関係というのが記憶の中にある子どもたちになりますから,その後の実方の親族との関係の維持をするのかしないのか,実方,実父母に問題があったから別の人に育ててもらうということだけれども,実父母以外の親族との関係はいい場合もありますので,そうした場合のコミュニケーションの問題とか,アメリカやヨーロッパでも言われているオープンとかハーフオープンと言われている養子縁組の流れというものも,恐らく日本の方にも出てくると思いますし,養子縁組のあっせん団体がそういった情報をどういうふうに管理していくか,それを養子になった子どもたちがどういう形でアクセスするのかというのは,民法の問題とは別のところだろうとは思いますけれども,かなり事情が,本人自身が持っている情報があるので,初めから自分がそういう子だということを知らない,知らせるという段階の問題を超えたところからスタートするので,より一層その情報の問題,戸籍の仕組みなども当時の発想とは違うものが求められるかもしれませんので,関連する制度の検討を更に進めていただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかはいかがでございましょうか。   では,特に御発言ないということでよろしいでしょうか。今までたくさんの委員,幹事からそれぞれ御要望を頂いております。また,積極的な賛成から消極的な容認まで,差はあると思いますけれども,各委員,幹事からは賛成の御意見を頂いたと認識しておりますけれども,そのような取りまとめでよろしいでしょうか。   ありがとうございます。それでは,この第1の「養子となる者の年齢要件等の見直し」については,このような内容で取りまとめをさせていただきたいと思います。本日の最後にまた第1も含めて意見を言っておきたいというような御発言がありましたら,それはまた伺いますけれども,取りあえず第1につきましては御意見を頂いたということで,この内容で取りまとめるということにさせていただきたいと思います。   それでは,第2の「特別養子縁組の成立の手続に係る規律の見直し」の方に進ませていただきたいと思います。   この点につきましても,まず事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○倉重関係官 それでは,「第2 特別養子縁組の成立の手続に係る規律の見直し」について御説明します。   要綱案の(案)について,前回の部会資料からの実質的な変更点は以下のとおりです。   まずは,第1段階の審判についてです。   部会資料9-2におきまして,第1段階の審判については,養親となるべき者の申立てによるときは,申立人が養親となる特別養子縁組との関係でのみ用いることができるものとする一方で,児童相談所長の申立てによるときは,広く養親としての適格性を有する者一般との特別養子縁組との関係で用いることができるものと整理する規律を提案しました。   前回会議において,この整理について特段の反対はありませんでしたので,要綱案の(案)ではこのような整理を前提とした規律としています。この点につきましては,部会資料10-2の5ページの表を御参照ください。   なお,このような整理をした場合には,養親となるべき者の申立てによる第1段階の審判と,児童相談所長の申立てによる第1段階の審判とは,特別養子縁組に向けた制度という点で共通するものの,審判の効力は異なるということになりますので,主文は異なることになるものと考えられます。もっとも,この点につきましては引き続き検討を要するものと考えております。   また,児童相談所長の申立てによる第1段階の審判がされたときには,その審判が確定してから6か月以内に第2段階の手続を申し立てなければならないものとしています。これは,6か月というように期間を限定することによって,第1段階の審判がされてからなるべく早く第2段階の申立てをしていただこうという趣旨です。児童相談所長にもなるべく早く養親候補者を見付けていただきたいという意味もあります。また,第1段階の審判がされてから第2段階の審判の申立てがないまま6か月経過しますと,第1段階の審判は効力を失いますが,児童相談所長はこの第1段階の審判事件で用いた資料を利用すれば,改めて第1段階の手続を申し立てるに当たっても過度の負担ということにはならないと考えております。   第1段階の手続につきましては,ほかに,前回会議における御指摘を踏まえ,親権を行使する者と後見人について整理を行いました。また,即時抗告に関する規律を詳細にしました。さらに,養子となるべき者は,第1段階の審判に対する即時抗告権を有していますが,その審判を告知されないことがあり得ることに照らしまして,養子となるべき者の即時抗告期間は養子となるべき者以外の者が審判の告知を受けた日から進行することといたしました。この規律は,特別養子縁組の離縁に関する家事事件手続法第165条第8項等を参考にしたものでございます。   この点につきましては,部会資料10-1の方を御覧ください。こちらの方で2点補足して説明を申し上げます。   1点目は,2ページの(5)において,「第1段階の審判における申立人,養子となるべき者及び実親は,未成年者又は制限行為能力者であっても,自ら手続行為をすることができる。」としております。これは,第1段階の審判事件においては,申立人は制限行為能力者である場合でも,また,実親は未成年者又は制限行為能力者であっても,さらに,養子となるべき者は常に未成年者ですが,そうであっても,それらの者は第1段階の手続を法定代理人によらず自らすることができるという規律を記載したものです。ここでは,制限行為能力者に未成年者が含まれていないかのような記載ぶりになっておりますが,厳密には制限行為能力者には未成年者が含まれると思われますので,表現については適切に修正させていただきたいと考えております。   2点目は,同じ資料の10-1の2ページの(7)のウですが,ここでは,養子となるべき者の未成年後見人というように,「未成年後見人」に限定しております。これは,養子となるべき者は常に未成年者であり,成年後見に付されることは想定し難いと考えられるためです。   続きまして,第2段階の手続についての変更点について,2点説明いたします。   1点目は,第2段階の手続における養子となるべき者の代理に関する規律についてです。民法第833条は,親権を行う者はその親権に服する子に代わって親権を行う旨規定していることに照らしまして,養子となるべき者の親権者が未成年者である場合には,その未成年である親権者の親権者,つまり養子となるべき者の祖父母に当たる者についても,養子となるべき者を代理することができないということにしようとするものです。養子となるべき者のその親権者が未成年者である場合に,その祖父母が代理権を行使することで,実親が間接的に第2段階の手続に関与することを防ごうとするものでございます。   変更点の2点目は,陳述の聴取,第2段階の審判の告知及び第2段階の審判に対する即時抗告権に関する規律についてです。   要綱案の(案)では,これらの規律を養子となるべき者に対し親権を行う者であって,実親及び養子となるべき者の親権者に対して親権を行う者でないもの,これと,養子となるべき者の未成年後見人にまで拡大しております。   前者の方,「養子となるべき者に対し親権を行う者であって,実親及び養子となるべき者の親権者に対して親権を行う者でないもの」とは,児童福祉法に基づき親権行使をする児童相談所長や児童福祉施設の長を意味しておりますが,これらの者及び未成年後見人は,実親とは離れた第三者の立場で養子となるべき者の利益を図ることを職務とする者です。そうすると,養子となるべき者について実親子関係を終了させるという重大な効果を生じさせる特別養子縁組の成立の審判をするに当たりましては,これらの者の意思を十分に考慮すべきであると考えられます。   そこで,特別養子縁組の成立の審判をするに当たっては,これらの者,すなわち児童相談所長とか施設長,それから未成年後見人の陳述の聴取を必要的なものとするとともに,これらの者の意向に反して特別養子縁組の成立の審判がされた場合には,再度慎重に検討すべく,これらの者に即時抗告権を認めることといたしました。   また,即時抗告権を実質的なものとするために,これらの者に対しても審判を告知しなければならないということにいたしました。   前回の資料からの変更点についての説明は以上ですが,最後に,2段階手続を導入した場合の運用のイメージについて御説明いたします。   まず,養親となるべき者が第1段階の手続を申し立てる場合ですが,この場合には,第1段階の手続と第2段階の手続とは同時に申し立てられなければなりません。   その後の進行としましては,養親となるべき者におきまして,あらかじめ実親に関する要件について裁判所の判断を得ておく必要があるという場合には,第1段階の確認審判が先行し,それが確定した後に第2段階の審判がされると,こういう運用になることと思われます。   他方で,実親においてそのような必要性がない場合には,第1段階の審判と第2段階の審判とが同時にされることとなります。   これらに対しまして,そもそも養親となるべき者に養親としての適格性がない,こういう場合には,先に第2段階の申立てが却下されることになりまして,その後,第1段階の審判が却下されることになります。   次に,児童相談所長が第1段階の手続を申し立てる場合ですが,この場合には,養親となるべき者が第2段階の申立てをすべき時期については特に制限はございません。したがって,児童相談所長が第1段階の手続を申立てをするよりも前に,養親となるべき者が第2段階の手続を申し立てること,これは可能でございます。もっとも,その後,児童相談所長による第1段階の申立てがされない場合には,第2段階の審判の要件を充足しないことになりますので,申立ては却下されるということになります。   なお,児童相談所長が第1段階の手続を申し立てた場合には,第1段階の審判と第2段階の審判とを同時にする必要がないと考えられますので,この場合には同時審判は想定しておりません。すなわち,同時審判,1段階目と2段階目の同時審判は,養親となるべき者が第1段階の審判と第2段階の審判とを同時に申し立てたときの規律と考えているところでございます。   第1段階の手続と第2段階の手続のそれぞれの審理対象についてですが,部会資料9-2に記載しましたとおり,第1段階の審判は実体的な効力のない手続的な審判と整理することといたしましたので,実体法的な規律としましては,特別養子縁組の成立要件は全て第2段階の審判において判断されているということになります。もっとも,第1段階の審判において民法817条の6及び特別の事情要件について判断された場合には,第2段階の審判の手続ではもはや争うことができず,第2段階の審判事件の係属する裁判所は,それらの要件を満たしているものとして審判をしなければならないという規律としています。   したがいまして,第2段階の手続については,この民法第817条の6の要件,それから817条の7のうち特別の事情という要件を除いたほかの部分について審理をするということになると。例えば,養子となるべき者が15歳に達している場合における同意など,こういった要件などは第2段階で審理されることになると考えております。   制度の説明は以上ですが,最後に部会資料10-2の7ページにおきまして,前回会議において御指摘がありました養子となるべき者の意思の把握についての記載をしております。   家事事件手続法第65条は,親子等に関する家事審判事件の手続では,子どもの陳述の聴取や家庭裁判所調査官による調査等の適切な方法によって,子どもの意思を把握するように努め,審判をするに当たっては,子どもの意思を考慮しなければならないということを定めております。したがいまして,第1段階の手続と第2段階の手続のいずれにおいても,養子となるべき者の年齢に応じて養子となるべき者の意思は適切に把握されることになると考えられます。   その上で,第1段階の手続及び第2段階の手続のいずれでも,養親となるべき者が15歳以上の場合には,その者の陳述の聴取が必要とされています。さらに,第2段階の審判をする場合には,養親となるべき者の同意が要件とされており,養子となるべき者の意思に反して特別養子縁組が成立する事態は生じないようにしています。   このように,2段階手続の導入に当たりましては,子どもの意思が十分に尊重されるような規律を設けておりますし,実際にもこのような規律は家庭裁判所におきましては児童の心理の専門家である家庭裁判所調査官を活用するなどして,適切に運用されるものと考えているところであります。   以上でございます。 ○山口幹事 ちょっと補足して,更に御説明したいと思います。   まず,形式的なところですが,事前に資料をお送りいたしまして,その後御指摘を頂いたところです。資料10-2を御覧いただけますでしょうか。資料10-2の7ページであります。こちらにも幾つか訂正箇所がありますので,順番にお伝えしていきたいと思います。   まず8行目のところで,ゴシック体で(「(6)」)とございますが,これは(「(5)」)の誤りでございます。   それから,その下3行行ったところに同じくゴシック体で(「(12)」)とありますが,これは(「(13)」)の誤記でございます。   その1行下,(「(10)」)とありますのは,これは(「(9)」)の誤記であります。   そうなりますと,1ページ戻っていただきまして6ページですけれども,6ページの32行目のところで,((6),(10)及び(12)関係)とありますのが,今訂正申しましたように,((5),(9),(13)関係)ということになろうかと思います。   それから,すみません,行ったり来たりで申し訳ないんですが,7ページの29行目を御覧いただきますと,ここでちょっと中身の話になるんですが,「以上のとおり,要綱案(案)の規律では」うんぬんかんぬんとあるんですが,「養子となるべき者の意思が十分に尊重されるような規律を設けている」というふうにあるんですが,これはもとより現行法も含めてということですので,ここは要綱案の(案)の規律と,それから現行法とあいまって養子となるべき者の意思が十分に尊重されるような規律になっていると,こういうことでございます。   これは,資料の訂正というよりも,ちょっと表記が適切ではなかったということで,念のため申し上げたところです。   それからもう1点,具体例としてこういう場合はどうなのかというお尋ねも受けましたので,この機会に御説明しておきたいと思います。   お尋ねは,今回1段階目の審判に実体法上の効果を持たせないと,この部会で従前検討しておりましたような親権行使禁止という効果を持たせないということになりましたので,そうなりますと,例えば父が分からなくて実母しか分かっていないという事例で,実母が同意をして1段階目の審判がされて,1段階目の審判が確定しましたと。その後になって,実父が現れて認知をしてというふうな事例になったときに,果たしてこの実父の同意も改めて取らないといけないのかという問題でございます。   結論としましては,この場合には新たに現れた実父の同意を取る必要はないと考えておりまして,それは資料10-1を御覧いただきますと,資料10-1の4ページのところでございます。資料10-1,4ページの(8)のところで,「第1段階の審判がされた場合には,その審判において養子となるべき者が上記1(1)ア及びイの要件に該当する旨の判断」,ここに同意が入っているんですが,そういう判断というのは「第2段階の手続において当事者及び参加人は争うことができ」ないと。さらに,「第2段階の審判事件の係属する裁判所は,第2段階の審判をする時点においても上記1(1)」,同意の「要件が充足されているものとしてその審判をしなければならない」と,こういうルールを設けておりますので,そうしますと,先ほど申しましたような具体例の場合にも,最初に実母しか存在しなくて,その方の同意を取っていれば,その後に第1段階の審判が確定して,その後に実父が現れて認知したというような場合でも,その実父の同意は要らないと,第1段階の審判をした時点で必要であった要件は全て充足されていて,その第1段階の審判で要件が充足されているという判断は,第2段階の裁判所は第1段階で確定すべき要件が全て確定しているものとして審判しなければならないという規律になっておりますので,そういうことになるということでございます。   この点,御質問がありましたので,念のため今御説明いたしました。   以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○窪田委員 質問があっただけなんですが。先に進めていただいてよろしいですが。   最後の御説明だけよく分からなかったものですから,質問させてください。   手続法の方でこうやって規定すれば,実父の同意が要らないということは,本当に正当化できますか。民法の規定は多分変えないまま手続の規定で対応すれば,認知した実父について特別養子前にもう認知して父子関係があるんですが,同意は要らないというのは説明できるんでしょうか。ちょっとその点だけ気になったものですから,大変に。 ○山口幹事 どうしましょうか。 ○大村部会長 今,御質問いただきましたけれども,この第2の点につきましても,御意見を頂きたいと思っております。今の御質問につきましては,この場でお答えできるものであれば,事務当局の方にお願いをしたいと思っておりますけれども,それが難しいのであれば預からせていただきたいと思います。ただ,いずれにしても,これから皆さんの御意見を伺いますが,今の時間の頃合いを見ていますと,伺い始めて途中で切れるということになりそうですので,ここで少し休憩をさせていただいて,3時に再開いたしまして,この第2についての御意見を頂戴するということにさせていただきたいと思いますが,よろしいでしょうか。   それでは,ここで休憩させていただきます。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開をさせていただきたいと思います。   第2の「特別養子縁組の成立の手続に係る規律の見直し」につきまして,先ほど事務当局から御説明を頂いております。細かい修正等はございましたけれども,養親となるべき者が申し立てたとき,あるいは児童相談所長が申し立てたとき,具体的にどのように進行するのかということについて,補足的な説明があったものと伺いました。   この第2につきましても,先ほどの第1と同様でございますけれども,皆さま様々な要望等をお持ちかと思いますので,御意見を頂くという形で御発言を頂き,その上でこれに御賛同いただけるかどうかということを伺えればと思っております。   どなたからでも結構ですので,御意見を頂戴できれば幸いです。   いかがでしょうか。 ○宇田川幹事 先ほどは2段階手続の関係で詳細な御説明を頂きまして,ありがとうございます。事務当局の方から考えられる手続の具体的イメージも含めて御説明を頂きまして,更に具体的な事案も含めてお話をしていただいたところで,このように御説明いただいたところは実務を運用していくに当たっても非常に参考となるところです。ですので,まだ立法が通っていない段階で申し上げるのもあれですけれども,立法され,成立した際には,まず逐条解説等で更に明確化していただくことをお願いしたいと考えているところでございます。   実際に第1段階の審判と第2段階の審判を同時にすることができるというところについても,条文上も明確になるところだと思いますけれども,そういった手続の具体的なところも含めて解説等で明確化していただければと思っております。 ○山口幹事 今ちょっと補足してもよろしいでしょうか。 ○大村部会長 はい。 ○山口幹事 同時の審判のところですけれども,先ほどの説明でちょっと正確に伝わっていないかもしれませんので,改めて念のため申し上げたいと思いますが,同時に審判をするというのは,認容と申しますか,同時に肯定的な審判をするということだけではなく,却下の審判も同時にすることができると,こういうことでございますので,その点ちょっと念のため補足させていただきたいと思います。すみません。 ○大村部会長 ありがとうございます。   制度を作りますと,この場合はどうなるかという解釈論的な問題が多々出てくることになろうかと思いますけれども,そうした問題の所在の御指摘も含めて,御意見を更に頂ければと思いますが,いかがでしょうか。 ○床谷委員 前回の9-2の資料ですと,民法の規律が2段階になると,817条の6と7がこういうふうになりますという図を挙げていただいていたんですけれども,今回の10-1の第2の1の(1)のア,イの審理する内容のところの形と少し違うので,前回の場合は同意があるか,同意がなければ同意不要事由か意思表示不能事由かという形で,同意の問題と特別の事情要件というふうに分けておられたので,その形がどういうふうに条文になるのかなと思っていたのですけれども,要綱案なのでまだ条文の形ではないんだと思いますけれども,ここに書いてある1ページのアとイのいずれも判断をするという,この書き方はそのまま読んでしまうと,アのところにある「父母により養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情」という部分と,イの(イ)のところの後段の「虐待,悪意の遺棄」という,以前議論していたところの問題がどういうふうに最終的に整理されるのかということが,ちょっとこれだけでは分からなかったので,そのところがどうなるのかということを確認したいということと,親権喪失の関係とか,そういう以前議論されていたことはもう今回はこれ以上議論しないということだと思いますので,そういう点とか,意思を表示することができないという意味として,例えば長年月行方不明であるとか,そういうような場合も,年齢が上がってくるとその期間が長くなってくると思うので,そういう場合の規定による明確化というようなことは,今回はもうしないわけですけれども,射程に入らないわけですけれども,そういったところの議論も今後検討を重ねていっていただきたいと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。御意見として承りたいと思います。   そのほか,いかがでございましょうか。   実際にこの手続に関与されることになる方々もいらっしゃると思いますけれども,何か御発言があればと思いますが,いかがでしょうか。 ○高田委員 取り分け第1段階の手続と第2段階の手続の関係が非常に複雑となっているように思いますので,その辺り,どこかの段階で分かりやすい説明をしていただくことを期待したいと思いますが,実質的な内容でいいますと,先ほど窪田委員からも出ましたように,第1段階で,第2の1の(1)にある要件を確定してしまうということで,実体要件の基準時がもしかしたら移るのではないかという疑問があり得,また,手続保障の観点からも異論があり得るところかと思いますけれども,今回の案は,第1段階の審判を安定させるということによって,特別養子縁組の成立というものを支援し,ひいては子の福祉に資するという目的で設けられたこの手続でありまして,非常にぎりぎりのところで微妙な調整していただいた結構な案ではないかと思いますので,賛成したいと思います。   ただと申しますか,先ほども出てまいりましたけれども,恐らく一番問題となりますのは子どもの意向の反映,あるいは手続保障の観点だろうと思います。児童相談所の支援もあり得るかと思いますし,場合によっては特別代理人という制度の活用も必要となってくる場合があるのかもしれませんけれども,いずれにしましても,子の利益が手続によりよく反映されるような支援体制を厚労省関係,児童相談所関係,それから裁判所関係とも心がけていただければと思います。その点が,この2段階手続がうまくいく,動くためのひとつの鍵となるというか,そう思っておりますので,一言申し添えさせていただきます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   御指摘とそれから御要望を頂いたと理解しております。   そのほか,いかがでしょうか。今の御要望に関する御発言でも結構ですけれども,何かございましたら伺いたいと思いますが。 ○藤原委員 多分もうちょっと後に御発言した方がいいのかもしれませんが,全体のことにもなるんですけれども,今回のこの見直しに当たりましては,恐らく児童相談所ですとか,あるいは民間のあっせん機関が新たに取り組むべき実務が出てくるなと思いますので,一つ法務省にお願いしたいのは,特に福祉の現場からしますと,後半の規律の部分ですね,手続的な部分というのを我々の方でもきちんと理解をして,児童相談所の皆様方に正しい情報をしっかり伝えて,もしこの見直しが実現する暁には,円滑な施行の一端を担っていくということになるので,特にこの手続的な部分については,我々も正確な情報を現場に伝えていきたいと思っておりますので,その辺り,例えば補足の資料ですとか,中間のまとめのときにも補足的な付随の資料とかを作っていただいたかと思いますので,最終的なものとして使いやすいようなものがもし作っていただけるのであれば,そういったものも活用しながら,福祉の現場の方にも我々からもしっかり説明をするというふうなことを努めていきたいと思いますので,その辺はよく法務省さんとも連携をさせていただきたいなと思います。裁判所だけではなく,福祉の現場の方にきちんと情報が伝わるようなということでも,是非法務省さんと連携をさせていただければと思います。よろしくお願いします。 ○大村部会長 ありがとうございます。   新しい制度を作りますし,手続につきましては先ほど事務当局の方から御説明がありましたけれども,幾つかのパターンがあって,なかなか規定を読んだだけでは分からないというところもあろうかと思いますので,広報や普及につきましては,法務省を始め関係の諸機関に御尽力を頂くということになろうかと思います。その点はよろしくお願いしたいと思います。   そのほか,御発言いかがでしょうか。 ○杉山幹事 元々この2段階審理というものは,様々な,しかも複雑な要請から出て来たものでして,実親と養親候補者をなるべく手続上切り離すこととか,児相長の申立権を併せて認める形で,養親のサポートをすることとか,あとは同意の撤回時期を早期に設定してなるべく審判手続を安定なものにするとか,様々な要請に基づくものであり,他方で,これを導入するためには,思った以上に多くの障害があったかと思われます。問題として容易に想定されたのが,第1段階での審判の効力を強くすればするほど,手続が重くなり,裁判所も慎重に侵犯しなければならないので負担が大きくなるという問題があり,それは早い段階から指摘されてきたことではありますが,今回の案では,第2段階の審判を先行させることができて,その結果によっては第1段階の手続についても却下したり,失効するというような規律にしてあるところとか,あとは主文の内容についてはなお検討の余地はあるかもしれませんけれども,申立人によって審判の効力等を違わせる扱いをするというのは,第1段階が重くなり過ぎないようにするための一つの手当てであると思われます。最初想定されていた2段階審理の手続と比べると,やや第1段階の効力を制限するような形にはなっているかと思いますが,多様な要請をうまくまとめたものではないかと思われます。   解釈上残された宿題というものは多々あるかと思いますが,それは今後検討していきたいと思っています。若干気になるのは,先ほどの説明でもありましたが例えば第1段階で認容する審判が出たときの拘束力の問題で,部会資料の10-1の第2の1(1)が最終的にどんな条文の形になるか分かりませんけれども,認容する場合はアとイのいずれの要件もあることを確認する審判になるの,結イの要件方は,(ア)と(イ)のいずれかに該当すれば満たすということになりますので,例えば同意があったという理由で,イの要件を満たし,かつアの要件を満たすということで認容したとしても,第2段階では同意はもとより,虐待の事実についても争えないことになりそうです。その点を条文の文言にどう反映させるのかという問題はあるかもしれませんが,全体的には様々な要請を調整した案として賛成したいと思います。 ○大村部会長 御指摘ありがとうございました。   そのほか,いかがでございましょうか。   ほかに御発言ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。   先ほどの休憩前の御発言も含めまして,解釈論上の帰結がどうなるか,あるいは条文に起こしたときにどうなるのだろうかということについて,幾つかの御指摘をいただきましたけれども,要綱案としては,「第2 特別養子縁組の成立の手続に係る規律の見直し」について,賛成の御意見を頂いたものと理解しております。そのような取りまとめでよろしいでしょうか。   ありがとうございます。   それでは,この第2につきましても御賛同を頂いたということにさせていただきます。   最初に申し上げましたが,第1,第2を取りまとめて,この際,発言をしておきたいという御希望がありましたら,伺いたいと思います。何かございましたらどうぞ御自由にお願いいたします。 ○磯谷委員 今回の特別養子の改正というのは,今特に第2のところで御紹介いただきましたように,非常に大きな制度改正になりましたし,それから従来問題とされてきた実親や養親候補者のそれぞれのプライバシーの問題であるとか,いろいろな面で解決ができる非常に優れた内容だと思っておりまして,先ほど申し上げましたけれども,本当に事務当局にはお礼申し上げたいと思います。   ただ,やはり特別養子というのは,まず決してバラ色ではないということです。うまくいかないケースというのも児童相談所を通じて複数聞いておりますし,私自身も別のケースでも経験したことがございました。やはり離縁も事実上困難であるということで,うまくいかなくなるとなかなか逃げ場がなくなるというふうなところもございます。どんな子どもにとっても,この特別養子が何か最良の答えであるかのようにいうのは,誤っているだろうと思います。   それからもう一つ懸念は,養親さんないし養親になろうとする方がこの特別養子に過剰な期待を持たれると,それは違うのではないかと思います。ここの議論でも実親子関係の切断というところが随分強調されたことがございましたけれども,実際のところ,実親子の法律上の関係は切れるかもしれませんけれども,その親から生まれたという事実がなくなるわけではございませんし,むしろ諸外国の例なども見ても,実親との関係を一定程度維持していくことをプラスに考える考え方も広がっているやに伺っております。   また,私どもも今回の議論の過程で勉強させていただきましたけれども,やはり実親と養親とがよい関係を保っているというのが,子どもにとって非常に大きな安心材料であるという,実際にあっせんに関わっている方からのお話も伺いました。   そういったところをしっかり踏まえて,これから恐らく国の方としては一定程度この特別養子を様々活用していこうということなんだろうと思いますけれども,やはり正しいイメージを国民に向けて広報をしていっていただきたいなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。   そのほか御発言ございますでしょうか。 ○浜田幹事 ありがとうございます。   ほぼ磯谷委員の御発言にかぶるわけですけれども,今回の取りまとめで要件は大きく広がる,特別養子の要件としてかなり大きく広がるように見えるわけですが,特別養子の利用促進といったときに,何でもかんでも特別養子に持って行くのだということではないということは,もう皆さん御異論のなかろうことかと思います。結局のところ,例えば先ほどの制度の正しい周知というところにもつながろうかと思いますけれども,そこを失敗しますと,例えばそれは私ども実務家を含めた制度理解,又は児童福祉の現場の皆様方ももちろんそうだろうと思いますけれども,どんどん,あのケースもこのケースも特別養子に持って行こう,それが良いことなのだという捉え方にはなるべきではないのであろうと思います。特別養子になるべき子どもがなっていくのであって,そうではない子ども,普通養子が適切な子ども,里親養育が適切な子ども,それぞれに応じた,それの中で特別養子になるべき子どもが今回きちんとなれるように制度が整ったというところにとどまるのだと思いますので,引き続き,多様な子どもを養育するについての多様な制度が多様に用いられるべきだということは,改めて確認をしておきたいし,自分としても肝に銘じて今後の実務に当たっていきたいと,このように考えているところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかに何か御発言はございませんか。いかがでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,御発言が尽きたということで,要綱案の(案)について,御意見を頂いたということにさせていただきます。   改めてお諮りしますが,この部会における審議の結果といたしまして,要綱案を本日の部会資料10-1の内容で取りまとめさせていただきたいと考えておりますけれども,よろしいでしょうか。   ありがとうございます。   それでは,御異論がないということだと理解いたしましたので,特別養子制度部会といたしましては,全員一致をもって部会資料10-1の内容を要綱案とするということで決定をしたということにさせていただきたいと存じます。   どうもありがとうございました。   この要綱案につきましては今後法制審議会総会に報告することになります。それまでの間に誤字等の修正,あるいはその他実質的な内容変更を伴わない表現,字句等の修正があり得るのではないかと思いますが,そのような形式的な修正につきましては,部会長である私と事務当局に御一任を頂きたいと存じますけれども,よろしゅうございましょうか。   ありがとうございます。   それでは,修正の点につきましてはそのように取扱いをさせていただきます。   では,今後の予定につきまして事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○山口幹事 本日御決定いただきました要綱案を報告する法制審議会の総会は,2月中旬に開催される予定です。この総会におきましては,大村部会長から要綱案の内容について御報告をしていただいた後に,総会の委員の皆様に御審議を頂くことになります。   総会における御審議の結果,要綱が決定されますと,直ちに法務大臣に答申されるという運びになる予定です。   なお,特別養子制度部会で御決定いただきました要綱案につきましては,いずれも必要な点検作業などを行った後,速やかに法務省ウエブサイトに公表する予定です。この点は総会において要綱の御決定がされた場合も同様です。   私からの説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   以上でこの部会の議事を終えることができましたので,事務当局を代表して御挨拶を頂きたいと思います。民事局長は御退席になっておりますので,筒井委員の方からお願いをいたします。 ○筒井委員 本日は,この部会としての要綱案の取りまとめをしていただき,誠にありがとうございます。小野瀬民事局長は公務のため離席しておりますので,代わりに私の方から事務当局を代表して委員,幹事の皆様のこれまでの御尽力,御協力に心から感謝を申し上げます。   この部会では,実方の父母による監護を受けることが困難な事情がある子の実情等に鑑み,特別養子制度の利用を促進する観点から,特別養子制度のうち特に養子となる者の年齢要件や審判手続の在り方を見直すという大変難しい論点について,かなりのスピード感を持って取り組んでいただきました。このため,平成30年6月に諮問を受けてこの部会が設置されましてから,約8か月の間に合計10回もの会議を開催させていただき,毎回長時間にわたり大変熱心に議論を重ねていただきました。この間,委員,幹事の皆様からは,現行の実務において問題となっている点などについて積極的に問題提起や改正提案をしていただき,その結果として本日無事要綱案としてお取りまとめいただくことができました。   委員,幹事の皆様におかれましては,それぞれに御多忙であるにもかかわらず,部会の審議に御尽力,御協力を賜りまして,誠にありがとうございました。   また,この部会の取りまとめ役を担っていただきました大村部会長及び窪田部会長代理におかれましては,それぞれ豊富な御経験に基づく卓越した御見識と周到な心配りにより,適切かつ迅速な議事の運営に当たっていただきました。この部会におきましては,議論が白熱することも多々ありましたが,そのような場合でも適切に論点を整理され,問題の所在を明確にした上で議論を進めていただきました結果,本日,要綱案の決定に至ることができたものと考えております。心より厚く御礼を申し上げます。   この間の議論におきましては,最終的には要綱案に盛り込まれなかった論点も含め,様々な案が検討されてきましたが,この部会において展開されてきた議論は,今後の実務の発展等にも大いに寄与するものと確信いたしております。今後は,先ほど山口から御説明いたしましたとおり,来月中旬に開催予定の法制審議会総会への報告と要綱の決定,法務大臣への答申というスケジュールが予定されております。私ども事務当局におきましては,その後,関係法案をできる限り速やかに国会に提出するとともに,早期の成立を目指してまいります。皆様方には是非引き続いての御支援,御協力を賜りますよう,どうかよろしくお願い申し上げます。   委員,幹事の皆様,関係者の皆様,本当にありがとうございました。 ○大村部会長 続きまして,私の方からも一言御挨拶をさせていただきたいと存じます。   本部会で取り上げました問題は,最終的には養子となる者の上限年齢の問題と審判手続の問題,この2点に絞られたわけですけれども,前者の問題につきましては,意見の隔たりが大きく,また後者の問題につきましては二転三転するところがございまして,議論がなかなか大変であったという印象を持っております。   閉会に当たりまして,三つのことを申し上げたいと思います。   一つ目は,言うまでもないことではありますけれども,法制度は様々な要請のバランスの上に成り立っているということでございます。児童福祉の現場の御要望を取り入れつつ,学説あるいは裁判実務との整合性を保っていくということで,ぎりぎりのところで成り立ったのが今回の案であると了解しております。学説上の説明ですとか,あるいは裁判実務上の対応につきまして,難しい問題を引き受けていただくことになったという面もございますけれども,御理解を賜れれば幸いでございます。   二つ目は,現場での運営に当たっては,くれぐれも慎重を期するようにお願いを申し上げたいということでございます。15歳上限に例外を設けるということ,更には上限を15歳まで引き上げるということ自体につきましても,なお異論が残っていると認識しております。考え方としては,15歳を超えるのは望ましくないという意見が有力に主張されていたということを踏まえまして,弊害が生じないように御留意を頂きたいと思います。   三つ目でございますけれども,普通養子との整合性について,解決すべき問題が残っているということでございます。この点は,本日も含めまして繰り返し御指摘のあった点でありますので,法務省としても早い時期に対応をするという方向でお考えを頂きたいと思っております。   今,各方面にいろいろお願いをさせていただいたわけでございますけれども,この先,立法が成立した暁には,さらに各方面に御尽力を頂き,至らないところを補うという形で,新しい制度を適切な方向に育てていっていただきたいと思っております。私自身も,及ばずながら可能な限りの努力を続けたいと考えております。   最後に,意見集約の非常に難しい困難な課題に取り組み,案の取りまとめに向けて熱心に御議論を頂きました委員,幹事の皆様,また事務当局,それから関係官庁の皆様に改めてお礼を申し上げます。どうもありがとうございました。   以上をもちまして,特別養子制度部会の審議を終えることにいたします。熱心な御議論を頂きまして,誠にありがとうございました。   閉会いたします。 -了-