裁判員制度の施行状況等に関する検討会(第2回)議事録 第1 日 時   平成31年2月22日(金)午前10時02分から午後0時03分まで 第2 場 所   法務省大会議室 第3 出席者    (委 員)大澤裕,大沢陽一郎,小木曽綾,島田一,菅野亮,堀江慎司,山根香織,横田希代子,和氣みち子(敬称略)    (事務局)保坂和人大臣官房審議官,大原義宏刑事局刑事課長,東山太郎刑事局刑事法制管理官,是木誠大臣官房付兼企画調査室長,宮崎香織刑事局参事官    (その他)戸苅左近最高裁判所事務総局刑事局第二課長 第4 議 題   1 裁判員裁判の実施状況について   2 裁判員等選任手続等の運用における裁判所の取組について 第5 配付資料   ・最高裁判所説明資料   ・島田委員説明資料 第6 議 事 ○宮崎参事官 予定の時刻となりましたので,ただ今から裁判員制度の施行状況等に関する検討会の第2回会合を開催いたします。 ○大澤座長 おはようございます。    本日は,皆様御多用中のところ,お集まりいただきまして,どうもありがとうございます。本日は,猪原委員,武石委員におかれましては,所用のため,欠席されておられます。    まず,議事に入る前に,事務当局の異動がございましたので,自己紹介をお願いいたします。 ○保坂官房審議官 内部での異動で,刑事法制管理官から大臣官房審議官になりました保坂と申します。よろしくお願いします。 ○東山刑事法制管理官 1月18日付けで刑事局刑事法制管理官を命ぜられました東山と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大原刑事課長 同じく1月18日付けで刑事局刑事課長を命ぜられました大原でございます。よろしくお願いいたします。 ○大澤座長 よろしくお願いします。    次に,事務当局から本日の配付資料について説明をお願いいたします。 ○宮崎参事官 本日お配りしております資料は,議事次第,委員名簿,最高裁判所説明資料,島田委員説明資料です。 ○大澤座長 それでは,議事に入りたいと思います。    本日は,裁判員裁判の実施状況について,最高裁から御説明をいただくとともに,裁判員等選任手続等の運用における裁判所の取組について,東京地裁の島田委員から御紹介をいただくことを予定しております。    それでは,まず初めに,裁判員裁判の実施状況につきまして,最高裁から御説明をいただきたいと思います。    最高裁刑事局戸苅課長,お願いいたします。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 最高裁刑事局の戸苅でございます。どうかよろしくお願い申し上げます。それでは,裁判員裁判の実施状況につきまして,最高裁事務当局の方から御説明いたします。    お手元にあります資料1「裁判員裁判の実施状況について」,平成30年12月末までの速報というものですが,これに基づいて順次御説明させていただき,その後で裁判員経験者に対するアンケートの調査結果につきましても若干御紹介させていただければと存じます。    では,まず,この資料1に基づいて説明をさせていただきます。まず,表1を御覧ください。罪名別の新受人員の推移というものでございます。    これを見ますと,平成30年末までの新受人員,これは基本的には起訴された被告人の数ということになりますが,延べで1万3715人になります。    初めに,この人員数の推移について御説明させていただきます。表の左側の一番上の「総数」という欄を御覧ください。    制度施行当初の平成21年は1196人になります。ただ,これは裁判員制度の施行日である5月21日以降の件数ということになります。平成22年には1797人となりまして,現在のところ,ここがピークということになります。その後,減少傾向となって,平成28年には1077人,これが現在のところ最少の人数になります。それで,平成29年はやや増加して1122人。平成30年は,またやや減少して1090人となっております。    次に,罪名別の人員数について御説明しますと,表の左側に罪名が並んでおりますが,平成30年までで一番多く起訴された罪名は強盗致傷で,3214人になります。次いで殺人,これは殺人未遂も含みますが,2995人,3番目が現住建造物等放火,これも未遂も含みますが,1355人と続いております。    表1の御説明については以上になります。    順番にいきますが,次に,表2に基づいて御説明させていただきます。    この表は,2ページから3ページに連続したものになっており,庁別の新受人員等の推移になります。表の左上の「累計」,「終局」とある列の「総数」の行を御覧いただきたいと思いますが,これが平成30年までに事件が終局に至った被告人の数ということになりまして,1万1771人となります。    念のため申し上げますと,ここの被告人数というのは実人員のことでございまして,例えば同一被告人につきまして複数の起訴があっても,併合して審理されている限りは,1人として計上しております。また,終局の中には,これは次の表3にも記載がありますけれども,有罪,無罪の判決のほかに,例えば少年法55条に基づく家庭裁判所への移送の決定とか,あるいは免訴,公訴棄却,それから他庁への移送と,こういうものも含まれております。    庁別の事件数について御説明をいたしますが,平成30年までの累計で,新受人員が最も多いのは千葉地裁本庁になっており,1292人です。2番目に多いのが東京地裁本庁1206人,3番目が大阪地裁本庁1089人となっておりまして,新受人員が1000人を超えているのはこの3庁のみになります。千葉の本庁が全国で一番多くなっておりますが,これは管内に成田空港を抱えておりまして,覚せい剤密輸事件が多いことが原因なのではないかと思われます。    表2の御説明は以上になります。    続きまして,表3について御説明させていただきます。罪名別・量刑分布別の終局人員及び控訴人員になります。この表は,平成30年までの終局人員について,罪名,終局区分ごとの分布状況などをまとめたものになります。    まず,「終局区分」のうち,「有罪人員」の欄を御覧いただきますと,総数の欄では1万1429人となっております。このうち,死刑判決は36人になります。それから全部執行猶予判決は1976人で,御注目いただきたいのは,このうち保護観察が付されたのは1063人になっております。このように全部執行猶予判決の半数以上に保護観察が付されておりますが,これは裁判員制度施行当初からの一貫した裁判員裁判の量刑の特徴の一つではないかと思われます。これは裁判員の皆様が,被告人の更生の点を重視していることの表れではないかと考えております。    さらに,無罪判決は99人となっております。終局人員の中で判決人員というものは,これは表5,7,9に出てきますが,合計で1万1541人となっておりますので,これに占める無罪の割合というのは約0.86%ということになります。    次に,表の一番右側の「控訴人員」,「控訴率」の欄を御覧ください。平成30年までの累計で,控訴人員は4186人で,控訴率,これは有罪人員及び無罪人員に対する控訴人員の割合ですけれども,36.3%となっております。    表3の御説明は以上になります。    続きまして,表4を御覧ください。主に選任関係のものをまとめた表になります。この表は平成30年までの裁判員・補充裁判員の選任状況の推移を示しております。    この表について御説明する前提として,選任手続の流れについて,簡単に御説明させていただきます。詳しくは東京地裁の運用も含めて,後ほど島田委員の方から説明があると思いますので,ここでは大まかな流れのみを御説明させていただきます。資料4に選任手続の大まかな流れ図を用意いたしましたので,これを御覧いただけますでしょうか。    上から御説明させていただきますが,まず,市町村から提出された選挙人名簿から抽選で翌年の裁判員候補者となり得る方の名簿を作成するということになります。これと,先ほどの資料1の表4と見比べながら御説明させていただきます。この市町村から提出された選挙人名簿から抽選で翌年の裁判員候補者となり得る方の名簿を作成するのですが,その名簿に載った方の数が表4の「イ」になります。この名簿に載った段階で,名簿に載ったというお知らせとか,あるいはその方の御事情をお伺いする調査票という書類をお送りしております。    その後,例えば具体的な事件が起こって起訴がされます。その具体的な事件について,裁判員候補者の数を決めて,裁判員候補者名簿の中から抽選を行うことになります。この抽選で選ばれた方の数が,表4で言うと「ハ」の欄の数になります。これは具体的事件の裁判員候補者として,抽選で選ばれた数の総数ということになります。それがこの資料4の図で言いますと,上から3番目のところになります。    そして,この具体的事件で選ばれた裁判員候補者の中から,辞退が認められた方などを除いて,選任手続の期日のお知らせとか,改めて御事情をお伺いする質問票などの書類をお送りいたします。これが図で言うと上から4番目のところになります。このようにして選任手続期日に呼出しをした方の数が,表4で言うと「ホ」になります。    実際に呼出しをした方の中から,更に辞退が認められた方などを除いた方が,選任手続期日に出席すべき方ということになりますが,その数が表4で言うと「ト」になります。選任手続期日に出席を求められた候補者数ということです。    さらに,実際に選任手続期日になりまして,これは図で言うと下から2番目のところですが,その期日に出席した方の中から,更に辞退が認められた方などを除いて,最終的にくじで裁判員と補充裁判員を選任することになります。    このような流れで,幾つかの段階を経て裁判員,補充裁判員が選任されることになります。表4の一番下の方にある「ワ」と「カ」を御覧いただきますと,平成30年までの累計で実際に裁判員に選任された方というのが6万6407人,補充裁判員に選任された方というのが2万2580人となっております。このように,これまでに約8万9000人の方が裁判員,補充裁判員として刑事裁判に参加されたということが言えるかと存じます。    なお,裁判員経験者の方の声につきましては,後ほどアンケート結果を御紹介させていただきたいと思います。    次に,裁判員候補者の出席率,辞退率について,またこの表4を用いて御説明させていただきたいと存じます。    今,御説明したように,裁判員候補者の方々は裁判員選任手続期日に先立って,あるいは選任手続期日当日に辞退を申し出ることができます。そして,裁判所は,法令に定められた辞退事由があると認めた場合には,辞退を認めることになります。他方で,選任手続期日前に辞退などが認められない場合には,選任手続期日に出席しなければなりませんが,出席されない裁判員候補者の方もいらっしゃるのが実情でございます。ここ数年,辞退率が上昇し,出席率が低下する傾向が見られるところでして,以下,この点について順に御説明させていただきます。    まず,出席率について御説明いたします。表4の「リ」の欄を御覧ください。ここには2つ項目がございまして,分子はいずれも「チ」の選任手続期日に出席した候補者数となっておりますが,分母が異なります。上段は分母が「ハ」,これは具体的事件で選定された裁判員候補者数ですが,下段の方は分母が「ト」,これは選任手続期日に出席を求められた裁判員候補者数となっております。    例えば,ある事件で裁判員候補者を100人選定したとします。途中で50人について辞退などを認めて,残りの50人について選任手続期日への出席を求めたところ,実際の出席者は30人であったという場合を考えますと,この上段の出席率,「ハ」分の「チ」になりますが,これだと100分の30で30%となりまして,下段の出席率,「ト」分の「チ」になりますが,これは50分の30で60%ということになります。    一般に出席率低下の問題が語られる場合は,出席すべき義務があるのに出席しない方がどの程度おられるかということが問題とされますので,以下では,私の御説明も下段,「ト」分の「チ」の出席率,つまり選任手続期日に出席を求められた裁判員候補者数中,どれだけ実際に選任手続期日に出席したかということで出席率を説明させていただきます。    なお,この表4の(注)4にもお書きしていますが,この分母の「ト」の数には,そもそも呼出状が到達していなくて,現実には出席を期待し得ない裁判員候補者も含まれるという点に御留意いただきたいと存じます。    それで,出席率の数字,「リ」の欄の下段を見てみますと,平成21年施行当初,裁判員制度が始まった当初は83.9%,平成22年は80.6%というように80%を超えておりましたが,その後,低下傾向となりまして,平成29年には63.9%となりました。しかし,平成30年には67.5%まで回復しておりまして,好転の兆しが見られるところでございます。    次に,辞退率について御説明させていただきます。表4の「ル(b)」の欄を御覧ください。    これは具体的事件で選定された裁判員候補者の数である「ハ」のうち,法定の辞退事由があるとして辞退が認められた者,「ル(a)」の割合を意味しております。ここで言う辞退は,先ほど御説明したとおり選任手続前にも辞退が認められることがありますし,選任手続期日当日にも辞退が認められることがありますが,その両方を含むものでございます。実際の数字を見てまいりますと,辞退率は,裁判員制度施行当初は平成21年が53.1%,平成22年が53.0%でしたが,その後,上昇傾向になりまして,平成29年には66.0%,平成30年には67.0%となっております。    この辞退率と出席率の推移,出席率が低下して辞退率が上昇する原因について,最高裁では,平成28年から29年にかけて,外部業者に委託しまして,辞退率上昇と出席率低下の原因などについて分析を行いました。その結果,これも後ほど島田委員の御説明にもあるかと存じますが,幾つかの事情が辞退率上昇または出席率低下に寄与している可能性があるということが分かってきました。    一つ目は審理の予定日数の増加傾向。二つ目が雇用情勢の変化,例えば人手不足,あるいは非正規雇用者の増加などです。三つ目は高齢化の進展。四つ目が裁判員裁判に対する国民の関心の低下。これらのような事情が辞退率上昇,あるいは出席率低下に寄与している可能性があること。それから,一部の庁で行われた運用上の工夫,これはどういうことかというと,呼出状を送りまして,呼出状が不送達になった場合に,もう一度送達を試みるということとか,事前にお送りした質問票,これが期限までに候補者の方から返送されなかった場合に,書面でまた返送依頼をするということなど,こういう運用上の工夫を一部の庁で行っておったんですが,これらが出席率を高めるための方策として一定の効果を有する可能性が高いと,こういうことが明らかになりました。    この分析などを踏まえて,平成29年の夏頃から,先ほど述べたような運用上の工夫,呼出状の再送達とか,あるいは事前質問票が返送されなかった方に対しての書面での返送依頼,こういうものを各庁で実施しているところでございます。この点については,後ほど島田委員の方から,東京地裁の取組を御紹介いただきたいと存じます。    ここまで出席率の低下傾向,それから辞退率の上昇傾向について御説明いたしましたが,先ほど申し上げたように,平成29年から平成30年にかけては出席率が改善しておりまして,この改善については,先ほど述べたような各庁の取組の成果が出ているものと思われます。    他方,先ほど述べたように,辞退率の方は引き続き上昇傾向にあります。この辞退率の上昇傾向について見ますと,まず,そもそも辞退というのは,選任手続の欠席とは異なりまして,国民の負担を過剰にしないなどの観点から制度化されたものでして,法が正当と認めた辞退事由があると裁判所が判断した場合に限って認められるものですし,これまでのところ,実際の裁判員の選任に支障が生じたこともございません。現在の辞退率は,制度の安定的な運用に差し迫った影響を及ぼすレベルには至っていないと思われます。    ただ,先ほど述べたように雇用情勢の変化,非正規雇用者の増加,あるいは人手不足等,それから高齢化の進展といった社会的要因の影響もあると考えられますので,今後も必要な取組を実施しつつ,選任手続の運用状況とともに動向を注視していく必要があると考えております。出席率についても,近時,改善傾向が見られるとはいえ,同様の姿勢で推移を注視していく必要があると考えております。    以上が出席率,辞退率に関する御説明になりますが,この点はまた後ほど島田委員の方からも御説明があるかと存じます。    次に,平成27年の裁判員法改正において,裁判員等の選任について,重大な災害で被害を受けて生活再建のための用務を行う必要があることという,災害時における辞退事由の追加や,非常災害時における呼出しをしない措置の規定が設けられましたので,これらの実施状況についても簡単に御紹介いたします。改正法が施行されたのが平成27年12月12日ですけれども,この日から平成30年12月末までに終局した事件のうち,災害時における辞退事由に基づく辞退が認められた裁判員候補者数というのは40人となっております。また,非常災害時における呼出しをしない措置,これがされた裁判員候補者数というのは163人となっております。    表4の御説明は以上になります。    続きまして,表5の説明をさせていただきます。平均審理期間及び公判前整理手続期間の推移という表になります。    この表は,自白事件と否認事件を分けまして,平均審理期間,これは事件の受理の日から終局までの期間,つまり多くの事件では起訴状を受理した日から判決宣告までの期間ということになりますが,この審理期間の平均と,公判前整理手続期間,これは公判前整理手続に付する決定があった日からこの手続が終了するまでの期間になりますが,これらの推移を示したものになります。    まず,自白事件から御説明したいと思いますので,表の「自白」の欄を御覧ください。    平均審理期間,これは多くの事件では起訴から判決までの期間ということになりますが,これを見ますと,制度施行当初の平成21年は4.8か月,平成22年には7.4か月となりました。その後,平成28年には8.0か月,これが今のところピークですね。その後,平成29年には7.9か月,平成30年には7.7か月となり,改善傾向が見られることになります。    続きまして,公判前整理手続期間の平均を見ますと,制度施行当初の平成21年は2.8か月でしたが,平成22年には4.6か月となりました。その後,次第に長期化して,平成28年には6.5か月,これがピークとなりましたが,平成29年には6.4か月,平成30年には6.1か月となって,こちらも改善傾向が見られます。    続きまして,否認事件について御説明します。表の「否認」の欄を御覧ください。    平均審理期間から見ますと,制度施行当初の平成21年は5.6か月,平成22年は9.8か月となりました。その後,長期化する傾向が見られまして,平成28年,29年には12.1か月,平成30年には12.3か月となっております。    続いて,公判前整理手続期間の平均を見ますと,制度施行当初の平成21年は3.1か月,平成22年は6.8か月となりました。その後,こちらも長期化する傾向が見られ,平成28年には10.1か月,平成29年,30年には若干改善して10.0か月となっております。    なお,例えば平均審理期間,平均公判前整理手続期間もそうなのですが,平成21年がかなり短いのは,この年に終局,例えば判決まで至った事件についてのデータでございますので,施行後この年に起訴されて,この年に終結した事件についてのデータになりますので,そういう意味では短くなるというのは自然な流れなのかなという感じはいたします。    以上が表5の御説明になります。    続きまして,その下の表6について御説明しますと,この表は公判前整理手続期間別に事件の分布状況を見たものでございます。    これを見ますと,大半の事件が1年以内に公判前整理手続を終えており,1年を超えるものは全体の1割程度,判決人員が1万1397人中,1178人にとどまることがお分かりいただけるかと思います。    それから,次に,1枚めくっていただいて表7を御覧ください。これは,平均実審理期間及び平均開廷回数の推移というものです。    ここで言う実審理期間というのは,(注)3に書いてあるのですけれども,基本的には第1回公判期日から終局,多くは判決宣告までの期間を言います。その間の期間全部ですので,審理が行われなかった日とか,あるいは土曜,日曜,祝日も含む数値になっております。先ほど申し上げた審理期間の方は起訴から終局まで,この実審理期間というのは第1回公判から終局までということになります。いずれも実際に審理などが行われなかった日とか,あるいは土曜,日曜,祝日も含むということに御留意ください。(注)3にもありますとおり,最長のものは,この平均実審理期間で言うと207日で,最短のものは2日となっております。    自白事件からまず御説明いたしますので,表の「自白」の欄を御覧ください。    平均実審理期間について見ますと,平成21年の制度施行当初は3.5日,平成22年は4.0日となっておりましたが,その後,次第に長期化する傾向が見られまして,平成29年は7.2日,平成30年も若干長期化して7.3日となっております。    平均開廷回数,これは実際に期日が開廷して行われた回数になりますけれども,制度施行当初の平成21年が3.2回,平成22年は3.5回となっておりまして,その後,平成30年まで3.7回から3.9回の前後で推移しております。    次に,否認事件について御説明します。「否認」の欄を御覧ください。    平均実審理期間は,制度施行当初の平成21年が4.7日,平成22年が6.6日,それからその後,これも次第に長期化する傾向が見られまして,平成29年が13.5日,平成30年が14.0日となっております。    同じく平均開廷回数を見ますと,平成21年が3.7回,平成22年が4.4回,その後,平成27年以降は5.6から5.8回前後で推移しているということになります。    なお,審判期間が著しく長期,または公判期日が著しく多数で,裁判員の選任等が困難な事案については,平成27年の裁判員法改正によって,裁判官のみで審判を行うという改正がされました。この改正法が施行された平成27年12月12日から平成30年末までに,審判期間が著しく長期,公判期日が著しく多数で裁判員の選任等が困難な事案という理由によって,裁判官のみで審判を行うとされた決定が行われた例というのはございません。    表7の御説明は以上になります。    続いて,審理の中身の方になりますが,表8を御覧ください。平均取調べ証人数の推移になります。    この表は,実際の審理で取り調べた証人の数がどのように変化しているかを自白事件と否認事件に分けて見たもので,法廷で直接証人の話を聞く運用の広がりぐあいを示すという側面もあるかと思います。    まず,自白事件について御説明します。「自白」の欄を御覧ください。    弁護人側請求証人の数を見ますと,平成21年が1.0人,その後,平成22年から30年までずっと1.2人前後で推移しております。自白事件ですので,情状証人として請求されている証人が多いのではないかと思われます。    他方,検察官請求証人の数を御覧いただきますと,制度施行当初の平成21年が0.5人,平成22年,23年は0.4人でしたが,平成24年以降は0.9人前後で推移しております。これは自白事件でも,1人は検察官請求証人の尋問を実施していることが多いということを示すかと存じます。犯情に関する被害者,目撃者,共犯者などの重要証人については,なるべく証人尋問を行って裁判官,裁判員が直接話を聞くという運用が広まっていることの現れではないかと思われます。もっとも近時は,事案によっては証人の負担等を考慮して,証人尋問の実施を控える運用もあるのではないかとも思われます。    次に,否認事件について御説明します。表の「否認」の欄を御覧ください。    こちらについても,まずは弁護人側請求証人の数から見ていただきますと,制度施行当初から平成30年まで,ずっと1.3人前後で推移しております。検察官請求証人の数を見ていただきますと,制度施行当初の平成21年が1.2人,平成22年が2.3人,平成23年が2.5人でしたが,平成24年以降は平成30年まで3.3人前後で推移しております。否認事件についても,なるべく多くの証人尋問を行って,裁判官,裁判員が直接話を聞くという運用が広まっているものと思われます。    表8の御説明は以上になります。    続きまして,平均評議時間の推移について,表9を御覧ください。    この表は,評議時間の変化について,自白事件と否認事件に分けて見たものです。    なお,ここに言う評議時間というのは,論告・弁論後に行われる,いわゆる最終評議のみの時間でございまして,それより前に行われる,いわゆる中間評議の時間は含まないというものになっておりますので御留意ください。    まず,自白事件から御説明します。表の「自白」の欄を御覧ください。    制度施行当初の平成21年は377.3分,これは約6時間17分でしたが,その後,長くなる傾向が続いておりまして,平成29年は580.3分,約9時間40分,平成30年も若干長くなって583.9分,約9時間44分となっております。    続いて,「否認」の欄を御覧ください。否認事件について御説明します。    制度施行当初の平成21年は477.3分,約7時間57分でしたが,自白事件同様,長くなる傾向が続いており,平成29年は916.6分,約15時間17分,平成30年は959.8分,約16時間となっております。    このように,評議時間が増加する原因ですけれども,これを特定することは困難なのですが,納得いくまで十分に議論したいという裁判員の意向を反映したものとも考えられるところです。    表9の御説明は以上になります。    ここまでが裁判員裁判の実施状況に関する御説明になります。    続きまして,資料2と3を使いまして,裁判員経験者に対するアンケートの調査結果について御説明させていただきます。    裁判員制度というのは,刑事裁判の審理・評議に国民が参加して,裁判に国民の視点,感覚を反映させることが,司法に対する国民の理解の増進と信頼の向上に資するとして導入されたものです。これは裁判員法1条に書かれているものですけれども,裁判所では,裁判員裁判に参加した裁判員の方々に対するアンケート調査を実施しておりますので,裁判員裁判に対する裁判員経験者の方の受け止めについて,簡単に御紹介させていただければと思います。    まず,裁判員に選ばれる前の気持ちと裁判員として裁判に参加した感想,資料2になりますが,これについて御説明します。    アンケート結果によりますと,裁判員裁判に参加した経験を好意的に評価する割合は極めて高い水準を維持しています。    資料の下半分にあります,裁判員として裁判に参加した感想という帯グラフを御覧いただきますと,裁判員として参加したことにつき,「非常によい経験だった」,あるいは「よい経験だった」と回答された裁判員経験者の割合は,制度施行当初の平成21年から平成29年まで,一貫して95%を超えております。    また,資料の上半分にあります二つの円グラフを御覧いただきますと,平成29年の経験者アンケートによりますと,裁判員に選ばれる前の気持ちとして,「積極的にやってみたかった」,「やってみたかった」と回答した経験者の割合の合計は,合わせて約37%であったのに対して,裁判員として裁判に参加した後には,約96%の方が「よい経験だった」,あるいは「非常によい経験だった」と評価されておられます。    それから,次に,資料3の審理内容の分かりやすさ,あるいは評議における話しやすさ,評議における議論の充実度について御説明します。    審理内容の分かりやすさについて見ますと,アンケート結果によりますと,10年間を通じて多少波はあるものの,裁判員の方々には審理内容を十分理解していただいていることがうかがわれます。審理内容が「わかりやすかった」とする割合は,制度施行当初の平成21年は7割を超え,その後,一時下落したものの,平成25年には再び上昇して66.6%となり,その後は65%前後で推移しています。    それから,次に,評議における話しやすさというグラフを見ていただければと思うのですが,あるいは評議における議論の充実度というグラフもございます。    これらを見ていただきますと,経験者アンケートによれば,評議について「話しやすい雰囲気だった」との回答は,制度施行当初,平成21年が83.1%でありまして,その後もおおむね70%台後半で推移しています。また,評議において「十分議論ができた」との回答は,制度施行直後の平成21年は75.8%でございまして,その後も70%を超える水準で推移しております。    このような評価,アンケートにおける調査結果の評価ですけれども,このような評価というのは,法曹三者において分かりやすい主張立証に向けた工夫とか努力を重ねてきたことの現れと思われますし,評議においても,各々の裁判官が,裁判員と実質的に協働できるように,裁判員が率直に意見を述べやすい雰囲気,環境づくりに努めていることなどが影響しているのではないかと思われます。    なお,以上のような裁判員の方々の評価につきましては,審理・評議が数か月にわたるような事件であっても,特に変わった傾向は見られないところでございます。    最高裁からの御説明につきましては以上になります。御清聴ありがとうございました。 ○大澤座長 ありがとうございました。    それでは,ただ今の最高裁からの御説明につきまして,質問等ございましたらよろしくお願いいたします。いかがでしょうか。 ○小木曽委員 表3に係る質問ですが,控訴率36.3%ということですが,控訴された後の控訴審での裁判結果と,もし破棄された事案があるとすれば,その理由などがお分かりでしたら教えていただきたいのですが。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 平成29年のデータで御説明させていただければと思うのですが,一審が裁判員裁判で控訴審が平成29年に終局した被告人の数が360人になりますが,そのうち控訴棄却,一審が維持されたということになりますが,これが294人で,破棄されたものが33人となっております。これは計算しますと,破棄率としますと約9.2%になります。それで,あと破棄の理由ですが,訴訟手続の法令違反が2人,法令適用の誤りが3人,量刑不当が7人,事実誤認が10人,判決後の情状による破棄,いわゆる2項破棄と言われるものですが,これが13人となっております。 ○小木曽委員 ありがとうございます。 ○堀江委員 今の点との関係で,本日お答えいただくことが難しければ次回以降で結構ですけれども,破棄率について,裁判員制度施行以降の経年変化があるのか,また,以前の裁判官裁判の時代とで,同種の事件で比較して違いがあるのか,データをもしお持ちでしたらお示しいただければと思います。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 裁判官裁判の破棄率等との比較という意味でお持ちしたのが,平成29年の地裁の第一審全体,裁判官裁判も含んだ第一審の判決人員全員の合計が4万9446人になりまして,これに対する控訴申立て人員が5993人になります。控訴率で言いますと約12.1%になります。それに対して,地裁の第一審判決全体に対する破棄率,終局人員に対する破棄人員の占める割合は約9.7%となります。 ○大沢委員 すいません,ちょっと複数お伺いできればと思ったんですけれども,まず最初,表6で,公判前整理手続が3年を超えるというケースが14ぐらい,結構ある,3年も超えるのがあるんだなというふうに感じたんですけれども,これは例えば,なかなか具体的なのはお示し願えないかもしれませんけれども,どんなですね,例えば訴因がたくさんあるとか,被害者の方の人数が多いとか,そういうのは何かお分かりになるかということと,それから,これだけ公判前整理手続に時間を掛けたんだから,では,次に初公判から判決までは,この3年ぐらい掛かっている場合はどのぐらいなのか,その辺がもし分かればですね。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 事件の具体的な,今おっしゃったような内容まではちょっと御説明は難しいのですけれども,裁判員制度施行から平成30年12月末までに終局した裁判員裁判で,公判前整理手続期間が長かった上位3件ぐらいの統計数値について御紹介させていただきますと,最も長かったのが,平成30年11月8日に神戸地裁姫路支部で判決が言い渡された事件でありまして,処断罪名は殺人になります。今,委員がおっしゃった,公判前整理手続期間の後の実審理期間がどの程度あるかということなんですけれども,この事件は公判前整理手続期間が5年11か月と2日掛かりまして,その後の第1回公判から終局までの実審理期間,土日とかも含む期間ですけれども,それが207日になっております。    次に長かったのが,平成28年1月22日に東京地裁立川支部で判決が言い渡された事件でございまして,処断罪名は強盗強姦で,公判前整理手続期間は5年と23日,この事件の実審理期間は120日になります。    その次に長かったのは,平成30年12月17日に鹿児島地裁本庁で判決が言い渡された事件でございまして,処断罪名が強盗致傷で,公判前整理手続期間は4年と3か月と18日で,この事件の実審理期間は15日でございます。    これは飽くまで,平成30年12月末までに終局した事件の中のデータということになります。 ○大沢委員 それと,もう一つはこのアンケートの方なんですけれども,もし分かれば,次回以降でも結構なんですけれども,確かに,審理でいえば分かりやすい,それから話しやすいというのが多いというのは非常にいいことだと思うんですけれども,逆に言うと分かりにくい,それから話しにくいというのも若干あると思うんですけれども,例えばこの方の自由記述みたいなものというのはないんでしょうか。何か具体的にこんなところがみたいなことは。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 審理内容の分かりやすさとか,今回御紹介した項目自体に対する自由記述はないのですけれども,ただ,例えば当事者の法廷活動については,自由記述で言いますと,主張立証の内容が分かりにくかったという意見のほかに,声が聞き取りにくいとか,証人や被告人に対する質問の意図・内容が分かりにくいとかいう意見が見られます。    それから,評議の進め方,これは裁判官の方になると思いますけれども,これについても,例えば,全員が等しく発言できて,全員の評議によって結論に至ったという充実感を述べる意見がある一方で,順番に話していくに当たって,フリートーキングとは違ってうまく話せないことが多かったとか,そういう意見も見られたところでございます。 ○堀江委員 アンケートの点で,確認ですけれども,回答率は,これは全員に回答していただいているという理解でよろしいのでしょうか。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 アンケート用紙を配付した人数を分母とした場合の回収率は,裁判員経験者は99.5%,それから補充裁判員経験者が96.5%,裁判員候補者経験者が98.5%になります。これが平成29年のデータになります。 ○堀江委員 ありがとうございます。 ○大澤座長 今,候補者経験者ということも言われたのですけれども,候補者として呼び出されて,最終的に選任されなかった方についてもアンケートはとられているということでしょうか。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 そうです。裁判員裁判に参加した裁判員と補充裁判員,それから選任手続期日に出席した裁判員候補者にお渡しして,回答をお願いしているということになります。 ○大澤座長 その場で回収しているのですか。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 その場の場合もありますし,後で郵送でお返しされる場合もあります。 ○保坂官房審議官 今の点,確認なんですが,配付自体は全員にしているという前提でいいですか。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 そうです。 ○保坂官房審議官 全員に配付した上で,それを回収する,そういうことでいいんですよね。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 はい。 ○山根委員 終了後に記者会見もされていると思うんですが,そこにおいての参加者とか,あと発言内容とかもまとめていらっしゃるのかどうかということと,あと裁判員をされた方の属性というんですか,性別とか年齢,あと職業等も統計を採っていらっしゃれば教えてほしいと思います。あと,辞退理由というのもまとめていらっしゃるんでしょうか。今日でなくてもよろしいんですけれども。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 記者会見の結果の方は,特にまとめてはございませんので,すみませんが,特にお示しできるものはございません。    辞退の理由に関しましては,平成29年のデータになると思うんですけれども,裁判員法16条1号から7号の,例えば70歳以上とか,あるいは学生とか,そういう辞退事由があるのですけれども,それによる辞退というのが全体で言うと35.7%で,1号から7号の中身までは申し上げられないです。次に16条8号ハの事業における重要用務,これは例えばお仕事など,これを理由にするのが29.7%で,この次になりますとかなり少なくなって,疾病・傷害を理由にするのが12.0%。 ○島田委員 病気,けがのことですね。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 はい。あと,介護・養育を理由にするのが8.3%です。 ○大澤座長 データがあるようでしたら,資料を次回にでも,またお出しいただくことができるでしょうか。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 はい,分かりました。 ○堀江委員 あと,これも次回以降で結構ですけれども,表7で平均実審理期間と平均開廷回数,表9で平均評議時間とあるのですが,開廷している時間の数字ももし把握しておられるのであれば,併せてお示しいただければ有り難いです。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 次回でよろしいですか。 ○大澤座長 ええ。データを採られておられるようでしたら,次回,それもお出しいただくということでお願いいたします。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 分かりました,はい。 ○大澤座長 口頭でお答えいただくよりも分かりやすいかなという感じもいたしますので,よろしくお願いいたします。こんなところを知りたいという資料のお願いも含めて,さらにご質問等がありましたら,どうぞ。 ○大沢委員 次回以降で,もし分かればということなんですけれども,審理期間のところで,平均開廷回数とか出ているんですけれども,要するに,長い裁判なんかで,1週間ぶっ続けでやっているのか,それとも毎週月,火,水だけでやるとか,何かそういう開廷の仕方みたいなものとか傾向とか,そういうものがもし分かれば教えていただければ。 ○島田委員 島田の方から御報告いたします。通常の事件ですと,例えば4日間の審理で終わるような事件ですと,なるべく裁判員の方の御負担を減らすために集中的に審理日程を組むことが多いです。これが1週間位とか10日とかになってきますと,やはり1週間,丸々5日間,裁判所に来るというのは御負担があろうかと思います。お仕事の関係ですとか家庭の事情などありますので,週3日とか4日,審理を入れて,中に,裁判所にはお越しいただかなくてよい日をなるべく入れるようにしております。そういったことが,この実審理期間が延びているということの一つの要因になっているかなと思います。 ○大澤座長 ほかはいかがでしょう。それでは,この後,島田委員からまたお話を頂くことになっていますので,島田委員のお話も伺った後,もし最高裁からのお話についても御質問があったらさらに受けるということにして,島田委員からのお話に移らせていただきたいと思います。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 座長,すいません,先ほどの開廷時間の関係なんですけれども,取りあえず今日申し上げてもよろしいでしょうか。 ○大澤座長 はい,どうぞ。 ○戸苅最高裁刑事局第二課長 平成29年のデータでございますが,総数900件のうち,5時間以内が132件で,6時間以内が82件,7時間以内が99件,8時間以内が97件,9時間以内が80件,10時間以内が59件,それから11時間以内が68件,12時間以内が41件,12時間を超えるものが242件となっております。失礼いたしました。 ○大澤座長 それでは,戸苅課長,どうもありがとうございました。    続いて,裁判員等選任手続等の運用における裁判所の取組ということで,島田委員から御紹介をいただきたいと思います。それでは,島田委員,よろしくお願いいたします。 ○島田委員 東京地方裁判所の島田でございます。    裁判員等の選任手続について御説明をいたします。レジュメを御用意いたしましたので,そちらを御覧ください。おおむね20分余りの説明時間を予定しております。    まず第1に,裁判員等の選任方法ですが,先ほど最高裁の方からも資料がございましたので,これも併せて御覧いただければと思います。最高裁判所説明資料の4番になります。    まず,裁判員等選任手続期日までの流れでございますが,前の年の秋頃,全国の各市区町村で裁判員候補者の名簿を作成していただきます。これは選挙管理委員会におきまして,衆議院議員選挙の選挙人名簿に基づいて割り当てられた人数をくじで選び,裁判員候補者の名簿が作成されます。    最高裁資料の1,表の4番を御覧ください。最高裁資料の1,表の4番,「イ」の欄を見ますと,この名簿に記載された方の人数が記載されております。年によって若干の変動がございますが,毎年全国で二十数万人の候補者名簿が作成されております。ちなみに東京地裁では,ここ数年,1万5000人から2万人程度の候補者が選任,候補者として名簿に登載されております。    もう一度,最高裁の資料4番に戻ります。    前の年の11月頃,裁判所から候補者に対し,裁判員候補者の名簿にお名前が登載されたことを通知いたします。その際,裁判員制度を説明する冊子,パンフレットや調査票という用紙も一緒に同封して送っております。そして,前の年の12月頃,候補者の方から裁判所に対し調査票が返送されてきます。調査票では,後ほど述べる裁判員の職に就くことが禁止されている事由などに該当する場合は,そのことを記載していただきます。また,そのほか,例えば70歳以上であること,重い病気や学生であることなどを理由に,1年を通じて辞退したいという申出を記載することもできます。さらに,候補者の方はこの調査票において,1年のうちの2か月を限定し,例えば田植えの時期と稲刈りの時期,6月と10月は忙しいという形で参加できないということを記載して辞退の申出をすることもできます。    次に,ある事件について,裁判の審理日程が決まりますと,その選任手続の約7週間前までに,裁判所は事件ごとにくじで裁判員候補者を選定いたします。その人数は事件によって異なります。審理や評議の期間が3日程度と短い場合には,候補者の人数は60名程度のことが多いです。審理や評議の期間が4日から1週間程度の場合には,70人ないし80人程度の候補者を選定することが多いです。    なお,事件によっては審理の開始から判決宣告までの期間が1か月以上掛かることもあります。多数の公訴事実について審理する場合,あるいは多数の証人を調べる必要があるときです。1か月以上の審理期間に対応できる候補者の方は少なく,辞退の申出が多数見込まれるために,例えば数百名単位で候補者を選定するということもございます。そして裁判所は,60人とか70人,80人,あるいは100人,数百人といった候補者選定をするわけですけれども,その時点で既に提出されていた調査票,前の年の12月頃返送していただいた調査票の記載に基づいて,辞退の理由があるときには,選任手続への出席を求めない措置をとります。その結果,70歳以上の方,あるいは重い病気の方で辞退の希望をされている方が除かれるために,この時点で選任手続への出席をお願いする候補者は,選定人数の70%前後に減少いたします。    次に,選任手続期日の約6週間前までに,候補者に対し,いつ選任手続を行うのか,その選任手続期日の通知,お知らせをいたします。この通知には,事件の審理日程,何月何日から何月何日まで裁判を行いますと,また評議も行いますといった,その日程の大まかなものを記載するほか,辞退の申出をするかどうか記載した質問票を同封しております。その後,候補者からこの質問票が返送されてきます。辞退の申出があるものとないものに分けて,辞退の申出がある方については,その質問票の記載に基づいて,裁判所は辞退を認めるかどうか,その判断をいたします。どのような理由で辞退できるのかについては後ほど御説明いたしますが,候補者から,正当な理由に基づいて辞退の申出がなされることは,もともと法律が予定していることです。裁判所としては,辞退の申出があった場合には,なるべく早い時点で許可,あるいは不許可の判断をした上,候補者に連絡をしています。    例えば,70歳以上であることを理由に辞退の希望がある場合には,候補者の名簿に生年月日が記載されておりますので,それだけで判断をいたします。学生であることを理由とする場合には,質問票とともに提出いただいた学生証の写しを確認して,辞退の許可の判断をいたします。重い病気やけがを理由に辞退を希望されている場合には,診断書の写しが添付されていれば,それによって判断をいたします。それから,重要な仕事に就いていることを理由に辞退を希望されている場合も,基本的にはその質問票に記載していただいた内容,例えばその裁判の日程の期間中に出張が入っているとか,重要な会議が予定されているとか,月末の決算のため忙しい,シフトの交代ができないといったような記載に基づいて辞退の判断をしております。    質問票に書かれた事情だけで判断ができないときには,資料の提出をお願いすることもありますが,そのようなことはかなり少ないようです。このような方法で辞退を認めていることは,候補者の負担を軽減するための一つの方策であると考えております。    候補者の方から質問票が戻ってきて,そして辞退の判断をした段階で,辞退を希望することなく裁判員の選任手続に出席予定と考えられる人は,通常の事件では20人から30人程度に絞られるということになってきます。    次に,レジュメの第1,2番に移ります。    裁判員等選任手続当日の流れですけれども,東京地裁における一般的な手続の流れについて御説明をいたします。    まず,裁判員候補者は,東京地裁の2階にあります候補者待合室に集合していただきます。選任手続は,候補者のプライバシー保護のため非公開で行われます。この手続に立ち会うのは裁判官,検察官,弁護人,書記官です。候補者待合室で候補者の方に対し,初めに今回審理する事件の概要として,被告人の氏名,そして犯行の日時,場所,内容などを御説明いたします。この事件の概要を聞いていただいて,裁判員候補者の皆さんには,御自身が事件と関係しているかどうか判断していただきます。そして,裁判長から候補者に対し質問を行います。質問の方法は,まずは当日の質問票という書類を使って,次のような事柄について東京地裁では質問しております。    まず1点目,現時点で裁判員になることができない職業や立場にないか。    2点目,事件との関わり合いがないか。    3点目,公平な判断をすることが困難な特別な事情がないか。    そして,4点目といたしまして,現時点で辞退を希望するかどうか。    この4点についてお尋ねをし,記入をしてもらっております。その上で,当日の質問票を裁判所,検察官,弁護人が見た上で,裁判長が口頭で最終的な確認の質問をしております。裁判長の口頭での質問は,東京地裁では,候補者全員に対する全体の質問と,当日の質問票に辞退の申出,その他,何らかの記載をされた候補者について,個別の事情に関わる事実を確認するための個別質問,この2段階で行っております。    辞退の関係ですけれども,事前の質問票の時点で辞退の判断はほぼ終わっているため,選任手続期日当日の辞退の申出をされる方は,急に予定が変わったという方,数人だけということになります。質問手続が全て終わりますと,くじの対象者,くじの母集団を決めることになります。この際,検察官と弁護人には2種類の不選任請求権が認められています。    一つ目は,裁判員になることができない事由があるとか,候補者に不公平な裁判をするおそれがあることなどを理由とした,理由あり不選任請求権です。しかし,この請求権が行使されることはごくごく少数です。    二つ目は,検察官及び弁護人には何らの理由がなくても,一定の人数の候補者についてくじの対象者から外すことができる,理由なし不選任請求権も認められています。何人の理由なし不選任請求権を行使できるのか,これは補充裁判員を置く人数によって異なってきます。すなわち,補充裁判員を1人も置かない場合には,検察官,弁護人それぞれ4人まで,理由なし不選任請求権を行使できます。補充裁判員を1名ないし2名置くときには,検察官,弁護人はそれぞれ5名まで,理由なし不選任請求権を行使できます。補充裁判員を3人あるいは4人置くときには,それぞれ6名まで,補充裁判員5名若しくは6名置くときには,それぞれ7名まで,理由なし不選任請求権を行使できます。しかしながら,この理由なし不選任請求権も行使されない場合も結構あります。    そのほか裁判所は,当日,候補者から申出のありました辞退について許可するかどうかの判断をいたします。これらの手続を経た後,くじの対象者が決まります。そして抽選の結果,裁判員6名と,補充裁判員を置く場合には補充裁判員数名が決まるということになります。裁判員や補充裁判員に選ばれなかった候補者の方については,ここで選任手続が終了し,お帰りいただくということになります。    なお,東京地方裁判所では,希望者に法廷の見学をしてもらうという機会を設けております。    次に,選任された裁判員と補充裁判員の皆さんに対して,裁判長は刑事裁判のルールのうち重要な事柄,それから裁判員と補充裁判員の権限,義務に関する説明をいたします。    刑事裁判のルールとしましては,証拠裁判主義,すなわち法廷で調べた証拠だけで事実を認定すること,証明責任は検察官が負っていること,そして証明の程度に関して有罪の結論を出せるのは,証拠に基づいて常識に従って判断した結果,間違いないと言える場合だけであるということを説明しております。    また,裁判員の権限として,法廷で行われる審理を見たり聞いたりすること,直接証人や被告人に質問できること,そして結論を決める会議,評議と呼んでおりますけれども,この会議においては,それぞれが意見を述べる権利と義務があること,裁判官と裁判員の投票権は全員1票ずつであって平等であること,こういったことを説明いたします。補充裁判員の方に対しては,裁判員が参加できなくなった場合に備えて,同じように審理を見たり聞いたりすることができるということなどを説明しております。また,裁判員,補充裁判員の義務として,出席義務と守秘義務があるということについて説明をしております。    それらの説明を御理解いただいたという前提で,裁判員と補充裁判員には,法令に従って誠実に職務を遂行する旨,宣誓をしていただきます。このような手続が終わりますと,選任手続が全て終了ということになります。    なお,選任手続の後,すぐに審理に入るということは最近では少なくて,通常は1日,あるいは数日間,間をあけてから審理が始まるということが多くなってきております。    レジュメの第2に移ります。    裁判員になることができる人,できない人について御説明いたします。    まず,選任の資格者は,先ほど申し上げたとおりですけれども,衆議院議員の選挙権を有している人,かつ20歳以上の方ということになります。    逆に,裁判員になることができない人,つまり欠格事由につきましては,レジュメの2番,①から③に書いたとおりでございます。    それから,裁判員の職につくことが禁止されている事由,こちらもレジュメに記載したとおりです。①から⑭まで概要を記載しておりますけれども,要するに国や地方の重要な職務に就いている方,それから法律の専門家,そして最後に,犯罪に関与している疑いのある方は,裁判員,補充裁判員になることができないということになっております。    第3に,辞退について御説明をいたします。    まず,辞退を申し出る時期と方法ですけれども,3つの段階に分かれております。    第1段階は,前の年に送られてきた調査票に記載して,裁判所に送り返していただくという段階がございます。    2番目には,個別の事件において選定された裁判員候補者の方に,事前の質問票をお送りいたしますので,辞退の理由がある場合には,そちらの質問票に辞退を希望することと辞退の理由を記載して裁判所に送っていただきます。    3番目は,裁判員の選任手続当日です。当日の質問票に,辞退の希望がある場合には,その旨と理由を記載していただきます。また,裁判長の最終的な確認の質問の段階でも,もし質問票の方に書き漏らしがあった場合には,そこで辞退したいという希望を述べることもできます。    このような3段階で,辞退の希望を申し出ることができるようになっております。    辞退できる理由については,レジュメの3ページに概要として記載いたしました。たくさんございますので,少し内容を御覧ください。    続きまして,裁判員選任手続の現状と課題,そして裁判所の取組について御説明いたします。    まず,東京地裁の実施状況についてですが,平成21年5月の制度の開始から平成30年10月までの状況について御紹介いたします。数字はいずれも概数で申し上げさせていただきます。    まず,東京地裁の名簿に記載された裁判員候補者は,この約10年間で合計約21万5000人です。そして,個別の事件で選定された裁判員候補者は合計で約9万4000人でした。裁判員の選任手続に御出席いただいた候補者の方は,合計で約2万8000人,その中から裁判員に選ばれた方は合計で約6000人,補充裁判員に選ばれた方は合計で約2000人です。    裁判員等選任手続の課題ですが,まず辞退率の上昇,そして出席率の低下につきまして,先ほど最高裁の係官から説明をしていただきました。東京地裁は,全国平均ほどではありませんが似たような状況にございまして,平成29年まで辞退率は上昇傾向にあり,出席率は低下傾向にありました。その要因についても,最高裁の係官から概要について御説明がありましたが,東京地裁でもこの点分析しておりますので,少し御説明いたします。    1点目は,高齢化社会の進展ということです。70歳以上の方は,辞退を希望すれば無条件で裁判員を辞退することができます。その70歳以上の方が急速に増えております。いわゆる団塊の世代の方,昭和22年から昭和24年生まれの方は,平成29年から,今年,平成31年にかけて70歳に到達しているところでございます。    2つ目は,雇用情勢の変化です。人手不足ということが現在言われております。また,正規雇用の方の割合に比べて,非正規雇用の方が増加したことによって休暇を取りにくくなっているということが,一つ要因として考えられます。    3つ目に,最高裁の係官からも御指摘ありましたが,審理の日数が徐々に長くなっているため,参加できない方が増えてきている可能性があります。公判の実審理期間,先ほども御説明がありましたが,第1回の公判期日から判決までに要した日数,そして審理などが行われなかった日や土曜日,日曜日,祝日を含む日数の平均について東京地裁で調べてみたところ,平成22年は5.4日でした。これが平成25年に10.5日と最も長くなりました。その後,9日から10日程度で推移をしております。    このような変化は,裁判員経験者の意見を取り入れて,審理や評議の日程に余裕を持たせることとし,例えば1日の開廷時間を少し短くしたりしております。10時から5時までビッチリやるのではなくて,夕方4時頃には審理を終える。それから十分に評議できるように,評議の時間を長めに取っているといったことなどが考えられます。こういった実審理期間が少し長くなっている点が,逆に裁判員の辞退率を上昇させている可能性はあります。そこで東京地裁では,最近,平成29年以降ですけれども,この点を見直した結果,平成30年は10月末時点で実審理期間が8.6日と短くなってきております。    要因の4つ目といたしまして,国民の関心の低下ということがあるのではないかというふうに考えております。裁判員制度が始まった当初に比べますと,国民の皆様の関心が少し低下してきていることが考えられるところです。    こういった辞退率上昇,出席率低下の問題点の意味についてですが,東京地裁でも裁判員を選任できなかったという事例はございません。そして,辞退についてですけれども,辞退は国民の正当な権利行使であって,裁判所も個々の裁判員の御負担を踏まえて適切に対応をしているところです。今回の裁判では参加できなかったけれども,次の機会に御協力いただければよいのであって,この辞退の数字についてはそれほど問題視はしておりません。    これに対して,裁判所からの期日への呼出通知に対し,何の反応もなく欠席する人が増えている,この点の方が問題であると考えております。    こういった問題点について,東京地裁の取組ですが,これまで裁判員制度が円滑に運用できてきた最も基本的な要素の一つとして,国民の制度への協力がございます。そこで,今後も国民の幅広い参加を得られるように努力を続けていく必要があると考えております。    具体的には広報活動,そして国民が参加しやすい環境整備が重要であると考えております。東京地方裁判所としては,いま一度積極的な広報活動を行うとともに,候補者の方が,例えば勤務する職場の協力を得られるように働き掛けを始めたところでございます。    まず,広報活動について御説明いたします。    裁判官による出前講義を行って,裁判員制度の意義や内容について説明をしております。この出前講義は,以前からも行っていたのですが,東京地裁では今年からいま一度力を入れることにいたしました。訪問先としては,裁判員経験者の勤務先やサークル,町内会,こういったものに加えて,さらに23区内の商工会議所,それから公立の高等学校にお声がけをしております。その結果,最近では,神津島の高校からもお問合せを頂いたところでございます。高等学校での出前講義として,比較的短い時間の模擬裁判ビデオを高校生に見ていただいて,そして有罪か無罪か,高校生に議論してもらうということを予定しております。    次に,裁判の団体傍聴ですけれども,裁判の団体傍聴を多数実施して,そしてお越しいただいた傍聴人の方に,若手の裁判官が裁判員制度の解説をしております。平成27年からこれまでのところ,約60団体,合計2200名くらいの団体傍聴の方に対して法廷傍聴をしていただき,その後に裁判員制度の説明を行っております。    それから,マスコミによる報道にも積極的に協力をしているところです。御覧になった方もいらっしゃるかもしれませんが,今年の1月23日に25分間の裁判員に関する特集番組を組んでいただいて,裁判員制度の意義や裁判員の御活躍した状況について紹介していただきました。この番組の作成に当たって,東京地裁刑事部では,裁判官が行っている勉強会の様子を取材してもらったり,裁判官がインタビューに応じたりして,全面的に協力をしたところでございます。    それから,東京地裁では,裁判員制度10年記念行事といたしまして,今年の3月19日に裁判員経験者6名をお招きして,裁判員制度10周年記念フォーラムを行います。このフォーラムは公開をしておりまして,将来の裁判員候補者となる大学生,大学院生の前で,裁判員経験者の皆様に経験談ややりがいなどをお話ししてもらうことを予定しております。    続きまして,参加しやすい環境整備についてですが,お手元の資料1を御覧ください。    先ほども御説明がありましたが,裁判員の方のアンケート結果によりますと,参加する前に積極的にやってみたいと考えていた方は約3分の1,36%,37%ぐらいでした。ところが,実際に裁判員を経験してみると,「よい経験と感じた」,「非常によい経験と感じた」方を合計して,96%以上に上っております。そこで,裁判員等候補者への働き掛けといたしまして,平成30年4月から,資料1を裁判員候補者の呼出状を送る書類の中に,この裁判員経験者の感想文を一緒に同封して,参考にしていただいております。    続いて,資料の2を御覧ください。    「小さなお子さんがいらっしゃる候補者の方へ」,そして裏面には「介護が必要なご家族等がいらっしゃる候補者の方へ」という書類でございます。    この書類,保育施設や介護施設の案内文書になりますけれども,これも裁判員候補者への通知の際に,一緒に併せてお送りしているところでございます。そして,東京地方裁判所のホームページに,育児,一時保育のサービス,それから高齢者福祉,障害福祉の相談窓口の一覧表を掲載してお問合せができるようにしております。実際にどのくらいの利用実績があるのかは,調査をしていないため具体的なことは分かりませんが,私が担当した事件でも,実際にこの育児サービスを利用して,子供さんを保育所に預けて,今日,参加しましたという裁判員の方もいらっしゃいます。    また私は,先ほど出前講義というのがありましたけれども,幼稚園に出前講義に出掛けたことがございまして,その際にも,この育児サービスを利用することができるという説明をさせていただいたところでございます。    なお,幼い子供さんの養育や障害者が家族にいて介護が必要な場合には,その御負担を考慮して辞退を認めているところでございます。    また,保育所などを利用している裁判員の方がいらっしゃるときには,そのお迎えの時間に間に合うように,夕方,長引くことのないように,審理時間をきちんと守るように配慮をしているところでございます。    資料3を御覧ください。    職場への働き掛けといたしまして,候補者を通じて,「裁判員候補者の雇用主・上司の皆様へ」という書類を作成して,これを裁判員候補者への通知のときに一緒に同封しております。    候補者の雇用主,上司の皆様にこの書類を見ていただいて,裁判員制度に御理解いただいて,職場の,その候補者の方が裁判員として参加しやすい環境づくりをしてくださいというお願いの書類を,これも昨年の4月から送っております。また,この書類の左下には「必要な休暇等について」という記載もございまして,裁判員の方,選ばれたときには休暇を取得できるよう御配慮くださいというお願いを,雇用主や上司の皆様にしているところでございます。    あと,事前の質問票をお送りしたんだけれども,送り返していただけなかった方に対しては催促のお願いをしておりますし,事前の期日の通知が送達できなかった方については,再度の送達を試みて御協力をお願いしているところでございます。    このような工夫の影響があったのかどうか,まだよくは分かりませんけれども,東京地裁でも平成30年は辞退率が低下し,そして出席率が上昇したところでございます。引き続きこのような工夫をしていこうと考えております。    私からの説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。 ○大澤座長 それでは,ただ今の御説明について,質問等ございますでしょうか。 ○小木曽委員 レジュメの2の選任手続当日の流れというところに関する質問です。例えば,具体的な事件が,法定刑に死刑がある事件であったというような場合に,候補者が,「私は死刑制度に反対なので,公正な判断ができないかもしれない」といったようなことが,この選任手続の中で,どこかで明らかになるような質問をされる機会はあるのでしょうか。 ○島田委員 死刑に賛成か反対かという,その具体的な質問はしないのですけれども,裁判長の最終確認の質問の中で,裁判所に対して何か質問しておきたいこと,あるいは確認しておきたいことがありますかといったような質問をすることがございます。そこで,もし手を挙げていただいたとすれば,個別に事情を伺うということになろうかなと思います。 ○小木曽委員 もう1点,これは先ほどの最高裁の御報告,それから山根委員からそういう御要望というか,質問も出ていましたが,今,島田委員の資料の3の「裁判員制度について」という左上の四角の中に,5万人以上が裁判員に選ばれて,8割近くが会社員等のお仕事と,こう書いてありますが,もし地方裁判所でも最高裁でも,裁判員の属性をまとめたような資料がありましたらば,差し支えない範囲でお示しいただけると有り難いと思います。 ○島田委員 はい。先ほど山根委員からも,裁判員に選ばれた方の年齢や男女比,そして職業などについてという御質問がありました。    まず,男女比ですけれども,裁判員の男女比,平成30年9月までの合計で,男性が55.1%,女性が43.3%,そのほかの方はちょっと御回答が頂けなかったということで不明ということになっております。    それから,続きまして,年齢ですけれども,これも平成30年9月までの合計ですが,20代の方が13.6%,30代の方が20.7%,そして40代の方が23.7%,50代の方が19.7%,60代の方が18.5%,そしてそれ以外の方が70歳代以上又は不明ということになります。これは国勢調査の年齢調査と,ほぼ同様の割合になっております。    それから,お仕事の関係などですが,国勢調査による職業と比較してみました。裁判員の方の職業構成は,国勢調査による職業とは大きな異なりはございません。詳しく見ると,裁判員は,お勤めの方が国勢の場合よりも比較的多く,そして家事ですね,専業の主婦,それから男性の主夫の人が若干少ないという傾向があります。自営業やパート,アルバイトの人も,国勢調査の結果とほぼ同じです。そして,裁判員で無職の方は,国勢調査の無職の方よりは若干多めという傾向が出ておりました。 ○保坂官房審議官 今の点の確認ですけれども,東京地裁だけではなく全国ですか。 ○島田委員 ええ,これは全国の統計になります。 ○大澤座長 もし,お差し支えなければ,これも資料の形ででもお出しいただけたらと思います。 ○島田委員 はい,分かりました。 ○大澤座長 それともう一つ,先ほどの確認ですけれども,死刑が想定されるような事件の場合でも,そのような事件であることを前提とした特別な質問はされないという御回答でしたでしょうか。 ○島田委員 はい,そうです。そのとおりでございます。 ○大澤座長 分かりました。 ○堀江委員 御報告の中で,選任手続が終わって公判期日までに,最近は少し間をあけるとおっしゃいましたが,以前は連続してすぐに公判を行うこともあったということですか。そのやり方が変わった理由は,どういうところにあるのでしょうか。 ○島田委員 裁判員制度施行当初は,午前中に裁判員選任の手続を行って,選ばれた裁判員,補充裁判員の方,午後1時半とか2時頃から,すぐ審理が始まりますというような形で審理の日程を組んでいたことがありました。ただ,裁判員,補充裁判員の方の感想を聞きますと,裁判員や補充裁判員に選ばれるとは思っていなかったと,その日から審理となると,職場への連絡など,結構なかなか大変なことがある。それから,まだ気持ちの整理がつかないうちに審理が始まってしまって,初日の審理の内容が頭の中に余り入ってこなかったといったような感想がありましたので,選任手続の後,1日あるいは数日間あけて審理を始めるというふうになっております。 ○堀江委員 ありがとうございます。 ○菅野委員 辞退率の要因(仮説)の中で,審理日数の長期化というものが3番で上げられていましたけれども,例えば実審理日数が何日になると,辞退率が何%とか,そういった統計的な分析はあるのかどうかという点を1点お聞きしたい。それと島田委員から,東京地裁は平成25年に10.5日だったものが,今は8.6日まで,裁判所の取組で審理日数が短くなったというお話がございましたけれども,具体的にはどういった取組をされて,この8.6日になったのかお聞きしたい。    お話の中では,最初はもともと10時から5時まではきついから,結局長く,少し余裕を持って審理計画を組んでいたというようなお話もあったので,逆にそれをまた今は詰め込んでいるのか,あるいは,当事者にもうちょっと短くして欲しいというアプローチをしているのか,差し支えない範囲で教えてください。 ○島田委員 まず,審理日数と出席率や辞退率との関係です。平成29年の数字で申し上げます。まず,全国の数字になりますけれども,出席率で言いますと,実審理予定日数が3日の事件の出席率は66.4%です。そして,実審理予定日数7日の事件では63.1%,ところが,実審理予定日数が11日以上の事件になりますと,54.4%となっておりまして,やはり実審理予定日数が長くなると出席率が低下する傾向が見られます。    また,辞退率で申し上げますと,実審理予定日数が3日の事件の辞退率は61.6%,7日の事件では65.3%,そして11日以上の事件では71.5%となっており,実審理予定日数が長いほど,辞退率が高くなる傾向を見てとることができます。    あと,東京地裁の実審理予定日数,実際の実審理期間ですか,これが少し短くなってきたというところでありますが,各裁判体の調査まではやっていないので分からないんですけれども,私が心掛けていたのは,審理に必要な証人なのかどうなのかというところを当事者の方とよくお話をして,この証人に聞かなければならないのかどうかというところで,その証拠の採否の段階で検討をしていたというところは一つございます。 ○菅野委員 ありがとうございます。    例えば10時から5時までみたいな審理計画を立てるようになっているわけではないということでしょうか。 ○島田委員 そうですね。1日の審理時間としては,10時から夕方4時とか4時半ぐらいには何とか終わるように,日程を組むように努力しております。 ○菅野委員 ありがとうございました。 ○大澤座長 予定した時刻に大分近づいておりますけれども,この際にぜひという御質問あれば伺いますが,いかがでしょうか。 ○和氣委員 辞退の理由のところで,国民の関心の低下ということが挙げられております。大体私も,私の周りの方の反応からしますと随分低下しているように感じます。やはりマスコミさんにも御協力いただき,広報活動がもう少しあれば,ここも防げるのではないかと思います。    それで,先ほど保育園か幼稚園に出向かれて出前講義をされているとのことでしたが,幼稚園ではどのような方を対象にされているのでしょうか。 ○島田委員 私が訪問させていただいたのは幼稚園だったんですけれども,お母様が裁判員として御参加いただきました。その方の御紹介で,その幼稚園に参りました。お話をさせていただいた相手の方は,そこの幼稚園に子供さんを預けているお母さん方ですね,保護者会のようなところに,一緒にちょっと時間をとっていただいて御説明をさせていただいたということになります。 ○和氣委員 ありがとうございます。    幼稚園の先生方もなかなか情報がなく理解できないと思いますので,お願いしたいなと思います。 ○島田委員 はい。御指摘ありがとうございます。 ○山根委員 問題の背景に高齢化ということが出てくるわけですけれども,先ほどの年代別のところを伺うと,ちょっとざっと計算すると,70歳以上の方も17%ぐらいは出席されているという状態もあったりして,何か高齢化という,問題の意味というか,いろいろあるのかなと思うんですけれども。何て聞いていいか分からなくなってしまって申し訳ない。具体的に何が一番問題なのかなと思うんですけれども,何か一言いただけますか。 ○島田委員 御質問の趣旨といたしましては,高齢化の問題として,何が問題かということでしょうか。 ○山根委員 例えば,70歳という年齢が一応決められているということについて,70歳を過ぎているから辞退ができるというふうに考える方もいるし,お元気で,できる背景があったとしても,70歳になったから断ろうというふうに考える方もいるし,一方で,いろいろ家庭の環境であったり,御自身の体調だったり,いろんなことで,実際,御無理な方が,高齢ということで当然断るという方もいらっしゃると思うんですけれども,その辺り,いろいろ考えていったほうがいいということですかね。 ○島田委員 そうですね。70歳以上の方で,もう本当にお元気で,裁判員をやりたかったということで御参加いただく方も,それなりに人数いらっしゃいます。そして,十分審理の内容を御理解いただいて,積極的に御発言して裁判の内容の充実に御貢献いただいている方も多数おられます。    ただ,この辞退率という数字が変化しているものですから,その原因はどこにあるのかなというところを分析していったところ,一つの要因として高齢化ということが原因になっているのかなということを考えているということでございます。 ○大澤座長 辞退理由がどのくらいのパーセンテージで,どういう理由かという点については,資料を出していただけるのだろうと思いますので,またそれも御覧いただくということでお願いいたします。 ○堀江委員 辞退率の上昇,出席率の低下の傾向は,東京地裁でも同様とおっしゃったかと思うのですが,全国平均ほどではないがともおっしゃった関係で,特に出席率について,地域的な違いというものがあるのかどうか,もし最高裁の方で把握しておられるようであれば,次回以降で結構ですので,お示しいただければと思います。 ○大澤座長 それでは,これも資料を出していただくということでお願いしたいと思います。次回もまた運用の話を御報告いただくということになっておりますので,さらに御議論があれば、そこでお願いしたいと思います。    それでは,予定した時間になっておりますので,本日の議事は以上ということにさせていただきたいと思います。    最後に,次回の予定について確認をいたします。    次回,第3回会合につきましては,裁判員制度の運用における法曹三者の取組について,裁判官,弁護士,検察官のお立場から,それぞれ島田委員,菅野委員,横田委員に御紹介をいただきたいと考えております。よろしくお願いをいたします。    以上で本日の議事として予定したところは終了でございますが,この際,何か特に御発言等ございますでしょうか。    それから,次回の各委員からのご報告について、こういう点を特に聞きたいということがあれば,事務局の方に事前に言っていただければ,それについてはお伝えをさせていただくということにしたいと思います。    それでは,最後に事務当局から,次回の日程について御確認をお願いいたします。 ○宮崎参事官 次回,第3回会合は,3月28日木曜日午後1時30分から開催する予定としております。場所につきましては,追って御案内を申し上げます。 ○大澤座長 それでは,本日はこれにて閉会といたします。    御報告いただいた戸苅課長,そして島田委員,本当にありがとうございました。    それでは,これで終了といたします。 -了-