法制審議会 特別養子制度部会 第9回会議 議事録 第1 日 時  平成31年1月15日(火)    自 午後 1時30分                          至 午後 5時26分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  要綱案の取りまとめに向けた検討 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○大村部会長 まだお見えになっていない方もいらっしゃるようですけれども,定刻になりましたので,法制審議会特別養子制度部会第9回会議を開会したいと思います。   年明け1回目ということになりますので,まず,みなさんに,新年のご挨拶を明けまして申し上げます。おめでとうございます。残りの回数も予定では限られてまいりましたけれども,御審議の方を改めてよろしくお願い申し上げます。   さて,本日ですけれども,まず配布資料の確認をお願いしたいと思います。 ○倉重関係官 それでは,本日の配布資料ですけれども,お手元に部会資料として9-1「要綱案のたたき台(2)」というものを配布しております。こちらは,第7回でお示しいたしました「要綱案のたたき台(1)」につきまして,前回までの審議を踏まえて修正したものとなります。それから,もう1部,部会資料9-2を配布しております。こちらは部会資料9-1について補足的な説明を加えているものです。   以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。資料9-1が「要綱案のたたき台(2)」で,9-2がそれの補足説明ということになりますけれども,要綱案の取りまとめに向けまして,本日も御意見を賜りたいと存じます。第1と第2に分かれておりますので,順次御説明を頂いて,御意見を頂くということで進めていきたいと思っておりますが,第1と第2の間で休憩を入れることを予定しております。ただ,審議状況によっては休憩の前に第2に入るということになるかもしれませんけれども,その辺は時間を見ながら進めさせていただきたいと思います。   それでは,第1の審議に入ります。まず,第1につきまして,事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○満田関係官 それでは,部会資料9-2の第1の養子となる者の上限年齢等について説明をさせていただきます。   前回会議におきましては,養子となる者の上限年齢を基本的には15歳を基準とすることとした上で,例外的に15歳以上であっても特別養子縁組の成立を認めるか否かに関しまして,その必要性の有無等を慎重に検討することとされましたので,この点について再度検討いたしました。   今回提示させていただいた案は大きく二つに分かれておりまして,一つ目は,養子となる者は縁組成立のときに15歳未満の者でなければならないとする案でございまして,他方で二つ目は,養子となる者は縁組の申立時に15歳未満の者でなければならないものの,一定の要件を満たす場合には,縁組成立の時に18歳未満の者であっても養子となることができるとするものでございます。   養子となる者の上限年齢についての例外要件につきましては,部会資料9-1の第1の2に記載のとおり,「15歳に達する前から養親となる者が養子となる者を引き続き監護していること」という要件に加えまして,「15歳に達するまで特別養子縁組成立の審判の申立てがされなかったことについてやむを得ない事由があること」という要件を提案させていただいておりまして,この点については前回の資料から変更はございません。   また,第1の3では,15歳以上の者について特別養子縁組を成立させる場合には,その者の同意を要することとしております。この点については,養子となる者にとって大きな精神的負担となるという懸念がある一方で,必ずしも大きな精神的負担を負わせることにはならない場合もあると考えられますことから,そのような場合に限って子の同意を求めるなどして,同意が得られたときには特別養子縁組を成立させることも許容されるのではないかという考え方を提案させていただいております。   さらに,付随的な論点ではございますが,前回の部会において積み残した論点として,養子となる者に子どもがいる場合の考え方を整理しております。これらの点につきまして御意見を賜りたく存じます。   説明は以上です。 ○大村部会長 ありがとうございます。前回の議論を踏まえて,改めて整理をしていただいております。確認ですけれども,第1の1の15歳というのは,申し立てと確定のどちらで御提案されたのですか。資料9-1だと,申立てと確定の双方がかぎ括弧に入っていますけれども。 ○満田関係官 それについていずれの考え方もあり得るということで,御議論いただければと思います。 ○大村部会長 分かりました。そこも含めて御議論を頂ければと思いますけれども,御意見がありましたらお願いいたします。   前回はいろいろ意見が分かれておりましたので,再度整理をしていただいたわけですが,なお選択肢が残っているという状況です。御意見を頂いて,絞り込みをできればと思っておりますので,是非御発言をお願いいたします。 ○磯谷委員 今回,補足説明の1ページの一番下の辺りから,ハーグ条約について少し補足をしていただいてございます。基本的にこのとおりなのですが,加えて,ハーグ条約実施法では,強制執行につきましても16歳に達すると実施できなくなるという規律を置いておりますので,決定の時点においては16歳に達していなかったとしても,その後に16歳に達すれば決定の内容が実現できなくなるということは想定されている規律であろうと思います。そのことに鑑みますと,特別養子に関しても15歳未満であることを審判確定の段階で求めて差し支えないのではないかと思うわけです。もう一つ,事務当局では,年齢制限を申立時にしないと手続的に難しい面があるという話もあったように思いますが,仮にここで申立時としたとしても,亀甲括弧2の(1)のところでは,審判確定時に18歳に達していないことが要件になっているわけで,結局は同じことなのかなとも思われますので,決定的な問題ではないのではないかと思います。やはり15歳に達しますと,同意を求めざるを得ないという,この部会でも大変悩ましいと意識されてきた問題に直面してしまうことに鑑みても,やはり確定のときに15歳未満ということが望ましいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○床谷委員 今の御意見との関係なのですけれども,ハーグのこの御説明ですと,各裁判の時点あるいは執行の時点での年齢を基準にしているという御説明だと思うのですが,特別養子縁組の手続の場合,例えば15歳直前に第1審の審判があって,上に上がっている段階で15歳になったら,もう駄目ということになるという理解になりますよね。その点は非常に問題ではないかということで,私はやはり,申立てから一定の期間で確定するというのがはっきりしていない限りは,確定時ではなくて申立時を基準とせざるを得ないのではないかという意見を現在でも持っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。1の申立てか確定かというところが,両論併記になっておりますが,それぞれについてサポートする御意見がございましたけれども,他の委員,幹事の方々はいかがでしょうか。 ○浜田幹事 結論的に意見を申しますと,私は,磯谷委員から先ほど御発言がありましたとおり,成立の審判の確定のときに15歳未満とするべきであろうと考えております。理由については,先ほど磯谷委員がおっしゃったところについては繰り返しませんが,一つ,15歳以上を対象とした場合に,その同意の取り方,また,同意にどういう意味合いを持たせるのかというところが大変に悩ましいということを敷衍して考えますと,今回,資料9-2の3ページ辺りにも出てきておりますが,ここは従前より対立のあるとおり,自分で意見を言える子もあるだろうということが,15歳以上の同意を求めても構わないではないかということの理由付けの一つに挙げてあろうかと思います。しかし,制度として仕組むとなりますと,子どもが15歳以上であれば全て,どんな子どもであっても,その子にはどうするかという聴取をしなければならないということになりますので,それで意見を言える子どももいるのだということは余り積極的な理由付けとはなっていないのではないかと思います。従前から申し上げておりますとおり,私はむしろ15歳以上で重大な決断を迫られることの残酷さということが上回ると考えておりますので,そのようなことも併せ考えますと,冒頭に申し上げましたとおり,ここでは年齢の15歳未満というのは確定時に見ることが望ましいと考えるものです。 ○大村部会長 ありがとうございます。同意の点と,それから,床谷委員がおっしゃった,手続に時間がかかって15歳を超えるということがあり得るので,それに対する対応が必要なのではないかという点と,二つの点が出されておりますけれども,それらの点につきまして,あるいは他の点でも結構ですので,更に御意見を頂ければと思います。 ○高田委員 恐縮です。床谷委員に御質問ということになるのですけれども,抗告の場合が例に挙がりましたけれども,抗告の場合には,15歳に達しますと,その時点で改めて同意が必要になるという手続になるわけですけれども,それ自体は構わないという御判断なのでしょうか。 ○床谷委員 私は,15歳以上は同意ということですので,なった時点で,そこの同意は新たに必要になるという理解で今,御意見を申し上げました。 ○大村部会長 ほかに,いかがでございましょうか。 ○藤林委員 磯谷委員の意見と一部かぶりますけれども,亀甲括弧2の15歳以上の子ども,私は同意を取ることは残酷な場合もあると思っておりますけれども,15歳以上の子どもの同意を得ることによって,やむを得ない事情の場合に成立するのであれば,申立時なのか,確定時なのかということはそれほどこだわらない。要するに,亀甲括弧2のところで15歳以上の場合が保障されているのであれば,別にいいのかなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○床谷委員 今の藤林委員の御発言なのですけれども,2が確保されているのであれば申立てと確定にこだわらないということですか。1が確定の時に15歳未満ということは,2というのはないという前提ではないのですか。 ○山口幹事 その辺は事務当局の方から御説明いたしますと,今,床谷委員から御説明があったところが事務当局として考えていたところでございまして,資料9-2の1ページ目の(2)として,前回の部会長におまとめいただいた整理として記載しておりますが,(2)で①の考え方としましては,確定時15歳未満で例外は一切なしと,逆に,例外のあるものは請求時15歳未満というふうな整理にしておりますので,事務当局の考え方としては,この二つの案でありましたので,床谷先生のおっしゃるとおりであります。したがいまして,藤林先生も,例外を必要とされるのであれば,こちらにありますような②の考え方の方が,より親和的なのかなと伺いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。藤林委員の中心的な主張は,例外を認めていただきたいということですね。   ほかはいかがでございましょうか。 ○棚村委員 私も,余り年齢を大幅に引き上げることについては,大丈夫かなという懸念をずっと持っていたのですけれども,いろいろ実際に,数は少ないかもしれないけれども,実際のニーズがおありになるというようなことで,原則は15歳未満で,床谷先生が言うように,この間も少しハーグ条約の例を私が出して,実際にハーグ条約のケースは裁判確定時を基準にして16歳未満を判断していたわけですけれども,これはやはり子どもの迅速な元の居住国への返還という目的をもつものと,それから養子となる者の年齢要件の線引きをどうするかという趣旨で,特別養子とは少し違うのではないかと考えているところもあります。それで,やはり最初に,実はハーグ条約実施法を少し誤解していたところもあって,申立時に15歳未満ということでやっておいて,年齢を15歳を超えてはやはりまずいという判断がありました。ただ,例外要件を厳格に絞って考える場合には,やはり申立時に15歳未満ということで,そこを基準時にしながら,例外的に,どんなに引っ張ってもこれは18歳以上にはならないけれども,場合によっては18歳未満の方も引き続き監護を受け,そして特別養子縁組ということのチャンスを,やはり申立てをできなかったやむを得ない事情があれば例外的に認めるということで考えるべきではないかと思います。もちろん,どれくらいこれが使われるかということは別にして,申立時に15歳未満というものを原則とする,後の案ですかね,そういう案を今回も支持させていただきたいと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。両論に割れている状態ですけれども,ほかの委員はいかがでしょうか。 ○窪田委員 話に付いていっていないということが露呈されてしまうのですけれども,先ほど事務当局から御説明がありましたが,1のところで,申立て,確定とするかというのと,2のところの亀甲括弧は完全にリンクするのかというと,私はよく分からないところがあるのですが,1のところで原則として特別養子縁組成立のときに15歳未満でない,つまり,これは確定のときというルールを採るのですが,採った上で,2の亀甲括弧というのはあり得るのではないかという気がいたします。だから2の例外を積極的に認めるというふうに今,発言するつもりはないのですけれども,1の部分では,やはり15歳未満が成立要件であるということを明確に示すという意味では,これを審判確定のときにとかと書くから非常に分かりにくくなるのですけれども,要するに成立のときに15歳未満ではなければいけないということがまず,原則として示されて,その上で(2)の話をするというのがあり得るのかなという気がいたしました。手続上,申立てのときでないと分からないということに対しては,例えば未成年後見人の選任というのは,選任の審判をやっている最中に未成年者が成年に達してしまえば,もうその審判は成り立たないですよね。同じ問題は,別にハーグ条約というかなり特殊なものに限らず,国内法においてもあるのではないかと思いますので,そこのところで,恐らく1で成立とすると例外を認めないというと,その後の議論が収束しにくいのかなという気もしたので,その可能性について確認したいのですが。 ○満田関係官 その点についてはこちらでも検討させていただきまして,窪田先生のおっしゃるように,原則年齢について成立時に15歳未満とした上で例外要件を設けるということも選択肢としてはあり得る,可能性はあるとは思います。ただ,他方で2のような例外要件の場合については,(3)で成立の審判の申立てがされなかったことについてやむを得ない事由があること等の要件もございますので,裁判所としまして,第1審の家庭裁判所の方で,原則年齢を確定時15歳未満としますと,その例外要件について判断すべきかどうかというところについて,場合によっては悩むといいますか,この要件を判断するかどうかが分からないという場合もあり得るかなというところもございまして,基本的に例外要件を設ける場合には,申立時に15歳未満という形の方が親和的かなと思った程度でございまして,理論的にはどちらもあり得るのかとは思います。 ○窪田委員 その点にこだわりましたのは,1のところで2以下の例外要件を設けるか設けないかに関わらず,基本的なところで申立てとしてしまいますと,当然15歳を超える場合というのは考えられると。そのときには同意という問題が出てきてしまうわけですけれども,原則の部分で15歳未満としておけば,そこの部分では同意の話は出てこないですよね。ですから,立て方として,例外と結び付けるのだったら申立てにしなければいけないとする必要性はないのではないかという気が,やはり少しします。確かに2の(3)に関して言うと,少し違和感があるのかもしれませんが,14歳のときにもう申立てがされていて,しかし審判が遅れた場合だったら,そのときはもう(3)については例外要件として特に挙げる必要はないというだけのことなのではないかと思いますが。 ○大村部会長 窪田委員がおっしゃっているのは,1について確定の方を採って,例外は設けるけれども(3)は除くということになりますか。 ○窪田委員 いや,そうではなくて,1を成立のときとした上で,2,3という例外は設ける可能性は,やはり,1を成立のときとした上で,さらに,正しく次の要件を充足する場合には15歳以上の者であっても養子となることができるというのは,成立時をむしろ前提とした上での例外なのだろうと思いますので,そういう立て方はあるのだろうということです。(3)については,15歳以上という場面が出てきますので,同意要件は当然必要だろうというふうになるだろうと思います。2の例外を認めるのであれば。 ○大村部会長 そうすると,2の(3)も認めるという御趣旨ですか。 ○窪田委員 2の(3)に関して言うと,15歳に達するまでに申立てがされなかったというのは,もうされているわけですから,この要件に関しては,やむを得ない事由があることなんていうふうに言わなくても,既に申立てがされているということだけで足りるということなのだろうと思います。あるいは,もっと丁寧に書き込むのだとすると,(3)のところで,15歳に達するまでに特別養子縁組の成立の審判の申立てがされなかった場合については,それについてやむを得ないことがあることと書き直せば,足りるのではないかと思いますが。 ○大村部会長 例外なので,これはこれであり得るということでしょうか。 ○窪田委員 はい,あり得るのかもしれないという感じはしています。 ○棚村委員 私自身は,やはり例外要件を立てるときに,どの時点を基準にして例外を判断するのかというときに,申立時が原則満15歳なのだということになれば,満15歳を基準として,その時までに申立てができなかったやむを得ない事情みたいなことを明らかにするということが例外要件の判断の対象になるので,家庭裁判所としては,判断しやすいのではないかと思います。それから,2のところも,15歳に達する前から引き続き監護されていたと,これは事実状態ではあるのですけれども,これも,先ほどの趣旨で言うと,私自身はやはり15歳未満というのはかなり重い年齢要件,ぎりぎりの年齢要件だと考えていますので,できるだけ,養親の候補者になる人や,児相もそうですけれども,早い段階で,可能であれば養親候補者を見付けて,きちんと手続を進めていただきたいと考えています。   要するに,お子さんには責任がないわけなので,むしろ関係している人にきちんと手続を迅速に進めるというのが,ある意味では年齢要件を低く抑えていたときも,そういうことがあったと思うのです。年齢要件を上げた場合にはそういうリスクがあるわけで,もう少し時間があるから遅れてもいいではないかとか,様子を見ておこうとか,そういうお子さんとは違うような大人の事情が入る可能性があるので,例外要件を設けるのであれば,やはり申立てを迅速にするという前提があって,その申立時に年齢も判断をしておいて,ただ,多分,熟慮期間というか,例えば相続の放棄,あれのときも,原則はこうであるけれども,例外的にそれを超えても,理由をきちんと説明してくれれば認められるというような立て付けを少しイメージしますと,やはり申立ての段階で時間を区切るとか年齢を区切るというのは一応置いといて,そして,考え方ですけれども,前回もそういうイメージで話をしていて,少しハーグ条約実施法については誤解をしていたところがありましたけれども,例外要件を立てるのであれば,申立時にやはり15歳未満という原則をかなり強く打ち出した上で,要するに,それはお子さんのために早く安定した環境を与えるのだという趣旨であれば,できるだけ年齢が低いところでやるのだというメッセージを与えておいて,そして,やむを得ずいろいろな特別な事情が発生したときに少し柔軟に対応できるような形で例外も設けたほうが良いと考えました。だから年齢要件については,成立時という考え方ももちろんあると思うのですけれども,例外要件との関係では割合と分かりやすいのかなという感じで,申立時を基準時という考えを支持したいと思います。もちろん,窪田先生の成立時説は全く否定されるわけではなくて,論理的にはあり得ると思うのです。ただ,どこで線を引くかということでかなり苦慮しておられたようなので,例外要件をどの時点でどういうふうに判断をしていくかというときに,申立ての段階で結局15歳未満を超えてしまっている人を,これは手続が遅延してしまった,争いが激しいとか,何か別の問題が起こってしまったとか,そういう事情であれば例外的に救済すると考える,ただし,原則はやはり申立てのときにきちんと年齢が一定の者を対象にしているのだということを明確にする方が実務的にもやりやすいのではないでしょうか。確定をするときとか,恐らく裁判所もそういうぎりぎりの申し込みとか申立てが今度起こった場合にすごく苦慮されると思うのです。私も何例か見たのですけれども,期日を御配慮されてものすごく急いだとかそういうことがあって,ただ,急いでもどうにもならないという場合が起こってくるような気がしまして,そういうときに,申立時で線を引くことに合理性があると思います。確定時というのは,割合と迅速にやるのだという前提でありうる選択肢ですし,そうすると余り申立時と確定時とそれほど開きはないのですけれども,床谷委員が言うように,何らかの事情でそれが延びてしまったときに,その時点でアウトというふうな形よりも,申立ての段階で年齢が分かり易いということと,早目に判断できるというようなイメージで,申立時というのを考えていました。 ○大村部会長 ありがとうございました。 ○磯谷委員 15歳を超えた者に特別養子縁組を認める例外に期待する思いもいろいろと述べられておりますが,そういったニーズがゼロとは言いませんけれども,15歳を超えた者について特別養子のニーズが実際のところどの程度あるのかという点については引き続き疑問が残ることに加えて,15歳以上ということになりますと,子の利益のために特に必要があるという要件を検討するに当たって,恐らく普通養子縁組ではなぜ駄目なのかと,なぜ特別養子縁組が特に必要だと考えられるのかという,正にこれまで議論してきて本当になかなか難しかった問題が,具体的なケースの上でも出てくることになるのだろうと思うのです。また,15歳になる直前に新たに委託を受けたお子さんで,しかも,それが特別養子に適格で,さらに,養親候補者さんもこの子を特別養子にしていいというふうな,幾つもの条件が重なるような形に限られますので,これは本当に少ないものと私は予想しているのです。法制上難しい問題を乗り越えてまで対応すべきニーズが本当にあるのかという疑問がどうしても払拭できません。   一方で,難しさというところからすると,先ほども出ていましたけれども,このやむを得ない事由というものの判断というのが,具体的なケースにおいてイメージが本当に共有できるのかという問題もある。加えて,この同意についても,同意というのが一体どういう形で出てくるのかというところも,実は余りよく分からないですね。実際,自分を育ててくれている養親候補者さんに配慮して同意していることもあるでしょうから,そこは裁判所は相当丁寧に聴かざるを得ない。養親候補者さんの圧力によって同意したのではないか,本意でないのではないかとかいうところも相当考えなければいけないというところで,これは普通の意見聴取以上に大変になるだろうと。例えば,この子の同意書というものが裁判の場に提出をされた,当然ながら裁判所は恐らく調査をしようとはされるけれども,養親候補者さんは「いや,子どもは裁判所に会いたくないと言っている」などと言って,なかなか応じていただけない,あるいは子どもの意向確認の際に養親候補者さんが同席を求めてくるということもあり得ますし,本当の意味で確認が難しい,しかし同意書は出されている,こういう場合に一体どうなのだとか,考えると,やはり15歳そこそこのお子さんの同意というものというのは本当に実務上,扱いが難しいと思うのです。繰り返しになりますけれども,実務上大きな困難性をはらんでいるものを,おぼつかないニーズで導入することに一体どれだけの意味があるのかと私は思わざるを得ないということでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。いろいろな御意見が出ておりますけれども,委員,幹事から御指摘があった点のうち,養子となる者の年齢が低い方がよいだろうということについては,皆さん多分そのようにお考えになっているのだろうと思います。ですから,15歳が原則であるということで,手続が引き延ばされてはいけないという点についても認識は共有されているのだろうと思います。どのような規律になるとしても,養子となる者の年齢が低いうちにできるだけ手続をしていただくように各方面に御協力を頂く,これはまず一つの大きな前提なのだろうと思います。それから,前回も議論がありましたけれども,普通養子との整合性というのも非常に大きな問題であり,この点について対応する必要があるというのも,今後,真剣に考えるべき問題であろうと思います。これらについては,今後,それぞれの形で検討していただくということを前提に,その上で,どうするかということを御議論いただくということだろうと,今までの話を伺って感じた次第です。   さてそこで,申立てとするか確定とするか,どちらにしても例外を設けることはあり得るというのが窪田委員の御意見でしたが,この点について皆さんはどのようにお考えになるのかということを伺えればと思います。申立てとするのと確定とするのと,どちらにするかということは後で決めなければいけないわけですが,どちらにしても例外を設けるということがあり得るのだとしたら,例外要件を定め,それとの関係で申立てか確定かという点についても決めていくということも考えられるかと思います。なお,同意を得ることの困難について床谷委員からは,それほどの困難があるわけではないという認識が示されておりますけれども,浜田幹事や磯谷委員からは,そこはやはり問題があるのではないかという御指摘も頂いております。窪田委員からはこの点については特に御発言はなかったように思います。 ○窪田委員 そうですね,自分がどの立場なのかだんだん分からなくなってきているのですが,もう最後,どこかで一致を得なければいけないということを考えたときに,一切例外を認めないということで意見がまとまるのかどうか。私自身は,むしろ比較的低い年齢を考えていましたし,例外はないというのが基本的な考え方ではありましたけれども,最終的な意見をまとめる段階で,それをどうするのかという部分については,一切例外を認めないという形にして,最後,意見がまとまるのかどうか分からないなという感じがしています。もう学者とはとても思えないような発言を今,自分でしているなということはよく分かるのですが,ただ,その上で,少し例外の話に関して言いますと,趣旨がだんだん分かってきたのですが,この2の例外の立て方というのは,正しく申立てを前提とした例外の立て方になっているのですよね。もし成立を前提とした立て方にすると,次の要件を充足する場合には,15歳以上の者であっても,例えば,特別養子を成立させることについて特別の必要性が認められる場合にはとか,そうした一文を入れないと,例外としてはうまく機能しないのだろうという気はいたします。そこまで分からないですが,そういうふうな形での例外というのは,ひょっとしたらあり得るのかもしれないということです。 ○棚村委員 この例外要件についてなのですけれども,私が幾つか関わったケースで言うと,やはり普通養子縁組をされていたのですけれども,実親の方から非常に介入みたいなものがあって,嫌がらせ的なものがあって,実親子関係を断ちたくて,特別養子縁組に転換をしたいということで申立てをしたときに,要保護要件が引っかかってきました。裁判所では,もう普通養子縁組をしているから,それでいいではないかということで,判断が少し分かれたことがありまして,今後やはり,特別養子の年齢要件を上げた場合もそうですけれども,普通養子縁組と特別養子縁組の関係は少し曖昧になっていますから,裁判所の判断が従前でもやはり,普通養子縁組をしていれば,特別養子に転換をする必要性が本当にあるのかということで,争いが起こり得るのだと思うのです。そういうこともやはり今後,普通養子縁組と特別養子縁組,先ほど磯谷委員もおっしゃっていた,私も同感なのですけれども,その相互の関係性で,普通養子縁組というのがセカンダリーになるというのが本当に今後いいことなのかということもあるので,是非,むしろ例外要件を設けることによって,今回,立法的には十分に検討できなかったその制約を,この例外を定めることによって,普通養子縁組と特別養子縁組の微妙な相互の関係が問題になりそうな,特に転換養子ですかね,そういうものについてもやはり年齢で一律に切ってしまうのだということになると,特別養子縁組というのは年齢だけ上がって,そして,実際には特別養子がいいのか,普通養子がいいのかという微妙なこういうケースについての選択肢が,やはり少し減ってしまうことにも危惧があります。そうかといって,この例外要件がどれくらい使われるかということについては,多分,磯谷委員とか浜田幹事とほぼ同じように,極めて稀有なケースかもしれませんし,その辺りのところで議論をしてきちんと置いておくという形にして,今後,未成年養子を含めた全体の特別養子の位置付けみたいなものがはっきりできるような改正の議論ができるときには,これも残すか残さないかも含めて,議論の対象になっていくのだと思います。現在の段階では,先ほど付け加えましたのは,やはり未成年普通養子をしているのだけれども,実親子関係を切る特別養子縁組に是非したいというようなニーズが出てきたときに,立法の建前で言うと,かなり厳格に解して否定した例もあれば,最近というか,平成15年ぐらいのケースになると,緩やかに認めたという審判例というか,はきりしない。それもあって,その辺りのところを考えると,やはりもしかするとこういうニーズがあるのではないかということで,裁判所の判断とか運用が統一をされていない段階ではそういう問題があって,申立てにちゅうちょされていたというようなケースというのですかね,特別養子縁組を最初からやればよかったのだけれども,普通養子縁組みたいなことでやって,それから,連れ子養子みたいなものですね,そういうような形で使ってということがありましたので,例外要件というのは,多くはないでしょうけれども,あり得るのではないかということで,支持したいと思います。 ○窪田委員 何かいろいろな先生方の御意見を伺って,どこが一致して,どこが一致していないのか,私はだんだん分からなくなってきたのですが,今の2の立て方だと,申立時基準説を前提とした上で例外を立てていて,例外としての部分は,申立てがされなかったことについてやむを得ない事由があるということだけですよね。ということは,ほとんど年齢としての絞りは掛けていないということになるのではないかと思いますので,棚村先生のおっしゃったことがその結論と一致するのかが,私自身はよく分からないところがございました。   あと,2の例外の話より,1になってしまうかもしれないのですが,その点も発言してよろしいでしょうか。先ほど,やはりある程度早い年齢の段階で対応した方がいいということを棚村先生からもお話がありましたが,そうだとすると,むしろやはり成立時が基準になるのではないかと。15歳までは申立てが可能だし,15歳をすぎてしまったって理由があれば申立てはできるのだよというのは,むしろ逆方向に働くのではないかと思います。その意味では,1の部分は割にかっちりと作った上で,しかし,それをかっちりと作った上で例外を作るかどうかという議論ができるのではないかと,あるいは,藤林委員からも先ほどあったのも,恐らくそういう趣旨だったのではないかと思うのですが,1は成立時という形で厳格にしたとしても,一定のそれなりの事情がある場合に例外を認めるという御意見だったのではないかと思いますので,そういう意味での例外が認められるかどうかという点を議論すればよろしいのではないかと思いました。もちろん磯谷委員ほか浜田幹事の御意見というのも,むしろ例外を認めないという御意見だったと承知していますけれども,かなり1を厳格にした上で,2の例外という議論をするということは,方向としてあり得るのかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。1の申立てか確定かという点は,もちろん確定とした方が,窪田委員がおっしゃるように,全体として年齢は下がるのだろうと思いますけれども,申立てとしたとしても,やはり早く申し立ててもらう必要があるというのがここでの了解事項なのだろうと思います。例外をどうするかということについて御意見を頂いた上で,申立てか確定かということについては,手続上何か支障があるかという点についても御意見を頂いて,手続上の支障がないということであれば,確定を支持される声も多いので,申立てではなく確定という方向で考えることになろうかと思っております。その前の問題として,磯谷委員や浜田幹事からは,15歳を超えるというケースが現れたときに,その人について3で同意を得るということについて,非常に強い抵抗感が示されているわけですけれども,15歳を超えて例外を認めるということになれば,やはりこの問題はどうしても出てきます。ケースとしては数はかなり少ないものになるでしょうが,裁判所としては難しい判断を迫られることになると思います。それはそういうものとして丁寧にやっていただくということでお願いができるものなのか,もしそういうことであれば,磯谷委員や浜田幹事も,納得とまでは申しませんけれども,受け入れ可能であると思っていただけるのかもしれません。この辺りについては,いかがでしょうか。浜田幹事か磯谷委員,何かございますか。 ○浜田幹事 おまとめいただきましてありがとうございます。先ほど私が冒頭に申し上げましたのは,正におまとめいただいたとおりで,例外は設けないのであるという,これが最もすっきりいたしますし,申立てはなるべく早い方が好ましいよねということを一番確実に保障できるのが,現在の出てきている案の中ではその方向だということから申し上げたものです。もっとも,次に議論がなされるのは,ここの亀甲括弧に入っている2の例外の三つの要件,これにとどまらず,何らかの例外を設けるのだ,そのときにはどのようなものがふさわしいのか,ということの議論をすること自体を否定するつもりはございませんし,在るべき姿がどのようなものかということについては,是非議論させていただければと思います。 ○大村部会長 なかなか難しい御発言を頂きましたけれども,浜田幹事の原則的な立場はよく分かりました。まだ,2の例外として,仮に例外を認めるとして,どういうものを定めるかは,先ほどから窪田委員より,申立てとするか確定とするかによって書き方も違うし,柱書にも何か書く必要があるのではないかという御指摘もありましたので,そこは議論を要するところかと思います。15歳を超えて同意を得るというのが必要な場面が,例外を認めれば出てくることになりますが,この点についても,もう少し御意見を頂けますでしょうか。 ○藤林委員 もう何回も言っているのですけれども,私は児童相談所長を16年やっていて,全国のいろいろな里親会とか里親さんのお話を聴きながら,こういうケースというのは例外的には存在するだろうというのは肌感覚で感じているところです。福岡市のケースで,今正にこの法改正を待っているケースはないのですけれども,全国で考えれば,それほど多くないのですけれども,年間十数件はあるのではないかという印象です。要するに,やむを得ない事情の一つに,ずっと里親さんとして子どもさんを養育しつつ,特別養子縁組の年齢制限のために特別養子縁組を申し立てることが本当にできなかった,これはやむを得ない事由だと思うのですけれども,かといって普通養子縁組をするには,以前,私がこの会で言いましたように,実親さんの精神障害であるとか,又はいろいろな薬物の問題であるとか,そういったことからちゅうちょしてしまうという方は,今現在,養育里親さんの中に一定数いらっしゃるのではないかと思います。   一方で,この会で懸念される,例外要件を認めると遅くなってしまうのではないかということは,やむを得ない事由ということで一定の縛りがあれば,それは防げるのではないかということと,当然,厚労省からも説明がありましたように,児童相談所運営指針にも書かれておりますし,より早い段階で永続的な関係を保障していくということが児童相談所全体に知れ渡っていくと,それほど漫然と15歳まで引き延ばすということはなくなっていくのではないかと思っています。そう考えますと,特別養子縁組の年齢制限が例外を含めて引き上げられることによって,やむを得ない事由というのは,この数年間の経過措置として,年間十数件とか,そういう単位であるのかなと思い,3年後,4年後ぐらい,要するに,今15,16,17の方々の特別養子縁組が保障されると,その後はぐっと少なくなってくると思うのですけれども,それでもやはり一定数は,ごく例外的なケースがあるかと思います。   それは,例えば,以前,里親養育をされていたけれども,いろいろな理由で実親さんのところに戻ってしまったというケースもよくあります。実親さんの下に家庭復帰したけれども,その後,思春期ぐらいで非常に重大な虐待事件が発生して再保護されてしまった,その年齢が12歳,13歳といったケースもあったりもいたします。その重大さに基づいて,もはや実親の下への家庭復帰もあり得ないし,又は普通養子縁組もあり得ないといったケースも十分あり得ます。性虐待ケースもあったりもいたします。そういうケースも経験してきました。そのときに例外を一切認めないとなると,15歳までに何とか間に合わせるということはかえって無理を引き起こしてしまうのではないかということを考えると,やはり一定数のいろいろなケースを想定しながら,15歳に達するまで申立てができないといった理由もあるわけですから,そこは一定,例外を認めておいていただくことが子どもの利益に資するのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかに御発言,いかがでしょうか。 ○棚村委員 これは監護とか親権争いでも,子どもの意向とか心情の調査というのは家庭裁判所でも難しい課題になってきていると思うのです。かなりスキルも蓄積されつつあり,いろいろな研究も進んできていることは間違いないのですけれども,特別養子縁組についてもやはり同意の問題というのは非常に困難な課題と言えます。具体的に,誰がどのタイミングでどのように聴いていくのか,調査をしていくのか,確認していくのかというのは,かなり重要な問題であり,それぞれの機関が,例えば児相が関わったり,民間あっせんの機関が関わったり,いろいろすれば,それなりの福祉の立場から,あるいは臨床心理というような感じで,いろいろな立場からあり得ると思うのです。これは磯谷委員もかなり強調されていたように15歳前後のお子さんたちの心理状況というのはかなり微妙な状況にありますので,そういうようなことについてはやはり,かなり慎重に扱う必要があって,ガイドラインとかいろいろ海外でやっているような,そういう取組みたいなものを参考にして,日本でも,一番実務的にも適切な実施要領とか調査手法とか,そういうことを含めて,課題になってくると思うのです。そういう前提の上で,やはり同意というのをかなり慎重に位置付けながら,同意が必要ということについて理解はしているし,当然のことだと思うのですけれども,そういうようなことで,子どもにとってかなり酷な選択や,あるいは不十分な説明の中で意思決定を迫られるということがないように,やはりきちんと,どういう内容を具体的にどういうふうに説明をして同意を得ていくかということについても,やはり今後きちんと詰めていくという前提で,この例外要件というのですか,そういうことで位置付けていただければと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。これも例外要件を定めたときに実際に運用に関わられるお立場の方もいらっしゃると思いますけれども,そういう観点からの御意見もあれば,承りたいと思いますけれども,いかがでしょうか。 ○宇田川幹事 これまでの部会においても,15歳以上の子どもについて同意を求めることは酷な場面があり得るのではないかという議論がされており,裁判所としても,運用面として難しいところがあるというところはお話をさせていただいていたところです。ただ,その点に関する政策論のところについて,裁判所として何か申し上げるところではありませんので,実際に15歳以上の子どもから同意を得る必要があるという規律になった場合には,15歳以上の子どもの意思の把握というのが非常に難しいということを前提として,実務における運用をどうすべきかということを検討して取り組んでいくべき事項なのかなと捉えているところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。ほかに何か,今の点について御発言はございませんでしょうか。 ○平川委員 一つ質問なのですが,15歳という同意要件の,この同意を取る時点というのは,どの辺で取るのか。申立てで取るのか,申立てだけだと裁判所は判断できないと思うのですけれども,申立てで取るのか,審判の開始時点で取るのか,確定で取るのか,どの時点で同意を取ることになるのか,教えていただきたいと思います。 ○山口幹事 これは恐らく,私どもの考えておりますのは,養親子の適合性が本当にうまくいくのかどうかというところを見るときに,最終的に確認するのだろうと思いますので,そういう意味では,第1段階の手続というよりは第2段階の手続で確認するのかなと考えております。 ○平川委員 分かりました。申立ての時点で同意が取れていない場合をどう考えるかという課題があります。もしもいろいろな例外規定を考えるのであれば,例えばそれをどう考えるかというと,同意は取れていないけれども申立てはされましたということもあり得るのであって,それは許されるのかどうかということをどう考えるのかということです。 ○山口幹事 子どもが,例えば嫌がっているとかというのに,更に手続を進めるという場合が現実的にあるのかどうかは分かりませんけれども,理屈の上では,子どもが同意していなくても手続を始めるということはあり得て,試験養育を始めてみて,最終的に養親のところに行くということについて同意が得られれば,それでいいのかなと思います。ただ,現実的に,同意が必要なケースというのは15歳を超えていますので,それぐらい大きなお子さんが手続の開始当時にかなり消極的な姿勢を示しているのに,なお手続を進めるということがどれぐらいあるのかというのは,疑問はあるところだと思っております。 ○平川委員 全ての子どもが自分の意見を明確にできる子どもではなく,いろいろな多様な子どももいらっしゃいますので,その辺の,流れに流されてしまって最後まで行ってしまったけれども,やはり確定してしまったら後悔をしてしまったとか,そういうこともあり得るような気がいたしますので,その辺の考え方も一つ,考える必要があると思ったところです。   それから,年齢要件のところは,これは以前から繰り返し言っているとおり,15歳という要件についてです。民法上は15歳以上は同意が必要であるとなっていますが,15歳未満であっても何らかの意思確認というのは必要であるという点について繰り返し発言してきているというところであります。申立時,確定時という問題の他に,15歳未満の方に対しての対応というのをどう,今後,要綱案を作る際に,今後記載がされるような方向になるのかどうなのか。いや,これは民法上の話なので,それについては厚労省にお願いをして,この場ではその辺は別に検討しなくてもいいのだというふうな話になるのか。それとも,そうではなくて,やはり子どもの意思表示という観点からすれば,それも含めてこの要綱案の中に記載されていくことになるのか,どうなのか,私としては書くべきだと思いますが,それについてお聞きしたいのですが。 ○山口幹事 実は現行法の中でも,お子さんの意思は考慮しないといけないという規定がありますので,最終的にはこの要綱案の中に書くのは改正すべき事項を書くと思いまして,そうしますと,現行法でも子どもさんの意思を考慮しないといけないという規定がある以上は,その規定はいじらずに,要綱案には書かないということになろうかと思います。ただ,要綱案に書かないとはいいましても,現行法に子どもの意思を考慮しないといけないという規定があるものですから,現在もそうですし,今後もお子さんの意思というのは,15歳未満であっても,考慮されるということになろうかと思います。 ○平川委員 すみません,何回も。その場合,やはりある意味,親子の縁を切るという残酷な意思表示をしていただくという形になると思いますけれども,そのときにも子どもの心身の発達とかを含めて,それに配慮しなければならないとか,そういうことについても今後の要綱案には入らないという形になるのですか。要するに,言っているのは,別の要綱案では,ハーグ条約のものだと思いますけれども,子の引渡しの強制執行に関する規律の明確化というのがありまして,その中で,子どもの発達に応じた事情であるとか,強制執行に関して子どもの心身に有害な影響を及ぼさないように配慮しなければならないと記載がされているという形になっているのですよね。今までは年齢が小さかったから,子の意思というのは聴きますけれども,やはりその程度というのはかなり違っていくということの重大さというのは,きちんと押さえておかないと,単純に15歳以上,未満で線引きをすることで,それだけでこの話が済むとは思えないのです。今後の年齢要件の関係で言うと,要綱案を作るときにはその辺は配慮していただきたいと思っているのですが,どうなのでしょうか。 ○山口幹事 御指摘のとおりで,今は最大でも,例外的でも申立時8歳未満ということですので,それぐらいの年齢になっているわけですけれども,今後,14歳とか13歳とか,もし例外が認められれば,それを超えていくということもあろうかと思いまして,そういうときにはおのずから,意思の確認の仕方ですとか考慮の仕方というのは変わってくるのだろうと思います。ただ,これを要綱の中で文字的に示していくというのは結構難しいのかなと思いまして,例えば,極端な話,ゼロ歳とかのお子さんの場合,意思の考慮ということはできないということに実際上なると思いますが,ある意味,グラデーションのように,だんだん年齢が上がっていくにつれて,そのお子さんの意見というのを考慮すべき度合いというのも強まっていくだろうと思いまして,そこをどういうふうに文字で表現できていくのかというのは,少し考えさせていただければと思います。 ○平川委員 しつこくて申し訳ありません。それと,その辺の配慮とかいうのは,やはり裁判所の方でやっていくという形になりますよね,意思確認への配慮,若しくは同意への配慮というのは,多分それは裁判所が行う形になっていくと思いますけれども,裁判所における体制というのはどういう形になるのでしょうか。法律はできたけれども,そういう配慮する体制がありませんでしたという話になったら,それは厳しいと思いますけれども。 ○山口幹事 まず私の方で答えさせていただいて,もし裁判所の方で違うということであれば修正をお願いしたいのですが,今もお子さんの意思というのを考慮しているということでして,実際は家庭裁判所調査官がお子さんの意思を確認するなりしているのだろうと思いまして,今後も家庭裁判所調査官がそういう役割を担っていくのだろうと思います。そのときの確認の仕方というのが,御指摘のとおりで,年齢が上がっていくと,今とはまた違ったといいますか,より慎重な確認の仕方になるのかなというのが,考えているところです。 ○宇田川幹事 現行法でも,先ほどから話が出ているところですけれども,家事事件手続法65条で,家庭裁判所は,子が審判の結果により影響を受ける事件においては,子の陳述の聴取,家裁調査官による調査その他の適切な方法により子の意思を把握するように努め,審判をするに当たり,子の年齢及び発達の程度に応じて,その意思を考慮しなければならないとされております。このような規定がありますことから,家庭裁判所では,親権者の指定等子の福祉が問題となる事件においては,家裁調査官が,人間行動科学の知見に基づいて,子に対してどういうやり取りをもって子の意思の把握をするかということを,子の福祉の観点から十分に考えて対応しているところでございますので,特別養子縁組の関係でも,子の年齢がどれくらいかというところにも応じまして,その心身の状態にも応じて,子の意思を適切に把握するように努めていくというところだと認識をしております。 ○藤原委員 子どもの意思を確認するというプロセスは,非常に丁寧なプロセスが必要だと思うのですけれども,今の事務当局の御説明や委員のお話をお聞きすると,基本的には家裁の調査官がお子さんの同意を丁寧に確認を頂くということがもちろんメーンだと思うのですけれども,恐らく,もっと前のこのプロセスの中では,児童相談所であったり,民間のあっせん機関の規制法もでてきておりますので,そういった許可を受けたあっせんの担当の方々が側面的に支援をすることになるのではないかと思うのですが,そういう意味で,規律がどういうふうに規定されるのかをよく見させていただきますけれども,仮に9-2の例外を設ける場合の許容性についてというふうに補足をされているような内容で議論が進んで,認めていただけるような場合には,児童相談所であったりあっせん機関がやるべきことについても整理をした上で,ガイドラインなどを児相の中の指針の中に位置付けられるかどうかも含めて,前向きに検討することはできるのではないかと今,感じております。 ○大村部会長 ありがとうございます。平川委員からの御指摘は,今,15歳以上になったときには同意が要るということで,その同意をどうやって取るかということが議論されていますけれども,15歳未満についても,その子どもの意思がどういうものであるかについて聴取することが必要なので,法的な効果に違いはあるけれども,しかし連続的に考える必要があるのではないかという御指摘だと伺いました。裁判所としては従前も一定の対応をされておられるかと思いますけれども,仮に15歳以上の場合が生じるようであれば,その場合も含めて,対応については改めて御検討いただけると先ほどお答えを頂いたものと理解しております。 ○棚村委員 すみません,少し質問なのですけれども,15歳以上に達している場合に,成立させるためには縁組についての同意を求めるということになると,同意をしない理由とか同意をする理由とか,もちろんお聴きになるとは思うのですけれども,どんな理由であっても,真意に出て自由な意思でもって判断した,同意する,あるいは同意しないということについては,かなり決定的な意味を持つように私は理解をしていたのです。要するに,15歳以上の子の陳述は聴かなければいけないというのは,かつての家事審判規則の54条だったか,そこからもう流れがあって,今は家事事件手続法で,そういうものを越えて,年齢を越えて,年齢と発達の程度に応じて,やはり意思をきちんと,心情とかを把握して,それを反映させなければいけないということ,考慮しなければいけないということになっているのですけれども,ここでの同意がなければ,むしろこれは成立を阻止できるという強いものなので,もう15歳になると,前から私も言っていましたけれども,遺言もできれば認知もできるし,子の氏の変更とか,自分に関するかなりのことが自分でできるので,むしろ保護の対象とかいうことよりは,当事者本人として判断をしたことをかなり重く見なければいけないという意味での,この要件の立て付けになっていると思うのです。   そうすると,むしろ,それ以下の子どもたちをどういうふうに意思とか心情とか,10歳を超えると意向みたいな形になりますけれども,それ未満でも,心情とか思いをかなり考慮しなければいけないとされている。ただ,それとは違って,この15歳以上の子の同意というのは,するかしないかを決定的に左右するものとしてありますので,その理由が何かこういう事情だとか,ああだこうだとかという詮索をするというか,細かく聴くというよりは,かなりそういう子どもたちが,海外ではどう言っているか,もうそれはコントローリングであると,14歳を超えたらとか15歳を超えたらということで,それはもう当事者として,その子の意向を無視して判断もできなければ決定はできませんというような趣旨として捉えてよろしいのでしょうか。もちろん,だまされたとか,同意を強要されたとかということがあれば別ですけれども,そうでなくて通常のプロセスで表明をされた同意であれば,同意しないということも,同意するということも,それはそのものとして重く受け止められるという立て付けの条項というか,そういう理解でよろしいでしょうか。 ○山口幹事 はい,正にそのとおりでして,そういう意味では決定的な効果を持つものであろうと考えております。 ○磯谷委員 一つ目は,今の点に絡めてですけれども,例えば,子どもは形式的には同意をしているし,養親候補者さんとの関係は良好だし,実際のところ子どもも養親候補者さんのところにいたいのだろうとは思われるけれども,一方で,子どもは本当に実親との親子関係を切りたいとまで思っているのかどうか,この子はその点を本当に整理できているのだろうかというところが,例えば裁判所の調査官としては確信が持てない,しかし形式的には同意がある。こういう場合には一体,同意があるから成立をさせるという話になるのか,それとも,同意はあるけれども,同意以外の要件を満たさないので認めないとするのか,そこのところはどう考えるべきなのかというところは,なかなか難しいところかと思います。   ということが1点ですけれども,もう1点は,先ほど私が申し上げているように,実際にこういった15歳を超えて特別養子縁組が必要となるお子さんは極めて限られていると思うのですけれども,百歩譲って,仮にそういう方がいらっしゃるという場合に,その解決の仕方として,特別養子の上限年齢を引っ張り上げることで解決するのが望ましいのか,それとも,先ほどの棚村委員の問題意識とも重なると思うのですけれども,普通養子縁組の効果の方を見直すことで解決することが望ましいのか,やはりよく考える必要があるのだろうと思うのです。15歳で一応切った理由というのは,先ほどから出ていますように,15歳になれば,基本的には自分で養子縁組,遺言その他,身分行為ができるからです。とすると,裁判所が養子縁組関係を形成するという特別養子制度そのものが,15歳に達した段階で果たしてなじむのかどうかという,そこの疑問はやはりどうしても払拭ができないと思うのです。   むしろ,先ほどから藤林委員からも出ている,仮にそういったニーズのお子さんがいるとして,そういうお子さん,例えば,本当にもう自分としては実親子関係を切りたいのだと,自分が主導したって実親と縁を切って,どことかの養子になるのだというお子さんが仮にいらっしゃるとして,そういうお子さんは,むしろ本当は普通養子縁組の形態でなさった上で,その効果について,例えば一定の場合には特別養子と同じような形で親子関係を切るのかどうかを検討すべきではないか。従来未成年の普通養子縁組の効果については学会の方でもいろいろと議論があったように伺っておりますので,むしろそちらの方で議論をすることの方が本則ではないかと思うのです。今ここでこういった形で例外というふうな形で出すことによって,かえって今後未成年の普通養子縁組の在り方について議論する際に,その議論が縛られてしまうのではないかという懸念も感じております。 ○久保野幹事 今の御意見に基本的に共感するところがございますけれども,恐らく普通養子との関係というところと関係しまして,子の同意についての懸念を論じるところで,実親との関係の終了という効果に着目して,今のところ議論が中心にされていますけれども,今の御指摘の中にも実質的には含まれていたように思いますけれども,離縁の在り方も普通養子と特別養子で現在のところ大きく違うので,養親とやっていきたいと15歳以上の子が思ったとしても,それが817条の10という要件の下でしか離縁ができないということと,その効果も引き受けるかどうかの判断ということを含むと思うので,その点も含めて慎重に考えた方がいいのではないかと思います。その観点と,15歳というのが,実際的に同意を取るのが酷かどうかとかいうだけではなくて,普通養子と特別養子というものをどういう制度として区分けするかということを背景に議論されているということも考えますと,例外については今回も,どちらかというと消極に考えた方がいいのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。磯谷委員,それから久保野幹事の御発言の中で,現在の選択肢とは別の選択肢が必要なのではないかという御指摘がありましたが,それは十分に理解できる御指摘だと思います。現在の普通養子のように実方との関係が残り,解消が相対的に容易だというものと,それから特別養子というものと,この2本立てだけでは困らないかというのは,正にそのとおりなのだろうと思います。ただ,今回は特別養子を対象としており,普通養子については対応することができませんので,今後検討するということにならざるを得ないのだろうと思います。先後の問題,どちらを先にやるかということについては,皆さんいろいろ御意見がおありかと思いますけれども,仮に近い将来において,普通養子制度を改正することがあったときに,特別養子との関係を再度検討する必要が生ずるかもしれません。そのことを含んだ上で,現在全く例外を認めないということでよいのかということが問題なのだろうと思いますが,磯谷委員は先ほどから立場表明されていらっしゃると思いますし,久保野幹事も原則的な立場を示されたのだろうと思います。ぎりぎりのところで例外をどうするかということについて,なお慎重にという御意見は分かりましたけれども,さらに他の御意見も頂ければと思いますが,いかがでしょうか。   御発言いただいていない委員,幹事の方からも御発言をいただけますと幸いです。いかがでしょうか。 ○山根委員 年齢を大きく引き上げることについて,やはりいろいろと心配が出てきます。子どもも悩むだろうし,15歳以下であってもですね,あと,裁判所の方も大変苦労するだろうということを想像します。そういう意味でも,やはり特別養子というのはなるべく低い年齢で成立させるべきだと。もう15という具体的な数字が出ていますけれども,成立時に15歳未満で在るべきという案を支持したいと思っています。ただ,一方で,少しでも救える子がいるのであれば,例外を設けてということも理解はできます。その具体的要件をどうするかということについては,伺っていると,ニーズはごく僅かと思われるし,それぞれ個別なケースで,そういったものに関して具体的な要件をきっちり設けることが,素人で分かりませんけれども,うまく当てはまるのかどうかというのもすごく心配するところであります。ですから,例外を設けるにしても,やはり一つ一つ裁判所で運用でというのですか,具体的に個別に判断していかざるを得ないのだろうと考えます。あとは,やはり普通養子等の議論とともに詰めていくべき,議論を進めるべきところがたくさん残っているのだろうと考えます。 ○大村部会長 ありがとうございます。山根委員の今の御指摘は,最初の方で窪田さんがおっしゃったような見方と共通の見方を示しておられるように伺いました。原則は15歳ということではっきりとした線を引きたい,しかし,例外としてやむを得ない場合というのが残るであろう,それに対する対応は一定程度は必要であって,要件化をするけれども,最後は裁判所の判断に委ねるということにならざるを得ないということだったかと思います。 ○岩﨑委員 少し黙って皆さんのを聞いていたのですけれども,確かにどんなケースがどれだけ出てくるということは,現場にいる私たちでもそれほど予測性があるわけでは決してありません。ただ,例えばほかの例外規定ですよね,今まで817条の6だとか,子の利益のためにという,言葉だけは立派にできていたけれども誰も使わなかった,親が行方不明で親の同意がないケースは,もう特別養子なんて出せないのだと思っていたけれども,結局,私たちのところで,でも,子どもの利益を考えたら,裁判官の決断さえあれば特別養子が認められるのだという,この文章を信じて出していこうではないかという中で,やはり認められてきた経過があります。今まで難しいと思っていたことが,やってみると,だんだんと共通理解が深まっていって,このぐらいのケースだったら多分,裁判官さんは認めてくれるよねというようなものが私たちの中で見えてきているという経験を30年の間にしてきた者にとって,これから起こるであろういろいろな問題について,決して積極的にとは思っていません,消極的に,でも可能性があるのなら,そういう検討の仕方はないだろうかということは,絶対に私たちの経験の中から,何ケースあるとかどうなるということではなく,あると思います。   特別養子と普通養子の違いは何なのかということで,こんなことが起きています。実は私がお世話した子どもの実父が亡くなったので,その息子さんが初めて,父が死んでから,父がほかの女性に産ませた子どもがいて,その子どもが父の子として普通養子法時代に養子に出されているということをお母さんが息子に話しました。どれだけ財産が残されているのか,逆に借財があるのか,内容は全く分からないのですけれども,取りあえずどうしたらいいのかよく分からないので,明日私のところへ相談に来たいという,お母さんは泣きながらの,息子の方はうろたえた声での電話による相談でした。実の親にもこういうことが起こるのだということが,私,今回初めてなのです。実の親から普通養子に出された子どもと,父の下で育てられた子ども,その父の死がこの子どもたちの何に影響していくのかということを,その2つの家族が直面しなければならないというような中で,私たちの仕事は現実に動いているのです。あるのか,ないのか,何が起こるのかということは,本当に予測ができないような状態で動いています。   その中に,最近いろいろなケースを取り扱う中で,やはりとても困ったとき,何とかなるかもしれない手立てをいろいろ作っておいていただけることが,私たちにとって思いがけない,子どもの幸せを考えてやれることにつながるのではないか,それは誠に慎重にやらなければいけないですが,例えば,15歳になっているから,実の親,いわゆる法的な親が,その人は今も存在していて,でも,自分にとっては存在していない人で,そして,死んだり何かすると突然その人の存在が明らかになってくるというような,現実的にはそういう形で法的な親というのは存在をしておりまして,施設や里親に養育されてきた子どもの場合には,その養育上の恨みつらみが,例えばこの親と切りたいという話になる可能性はあります。   極端なケースで,私たちもびっくりしたことがあるのですけれども,協会のホームページに,「私は養子に出されたいです」と,「なぜなら私の両親とも私が歌手になることに一切,反対をして協力をしてくれません,そんな親は私は要りません,今の私の気持ちを受け入れてくれる養親を探してください」みたいなメールが書かれていて,びっくりしたことがあるのです。子どもにとって,自分の人生を決めたいと思っていることに実の親が非常に非協力的,当たり前なのですけれども,そんなどうなるか分からないものに親は同意ができるわけではないのですが,でも,思い詰めた子どもというのはそんなふうにさえ考えることがあり得るのだと思うと,そんなことが理由で親の縁を切りたい,特別養子をというようなケースまで我々が動かすわけでは決してありませんが。  だだ,本当にこの子にとってこういうことが考えてやれないだろうかというケースが,万が一,どんな風に出てくるのかどうかは分かりませんが,でも,一つ出て,それが認容されたことによって,それに近いところで悩んでいたケースが,では,思い切って出してみようというふうに出てくる中で,どこまでが限界でどこまでなら可能性があるかというようなことが経験上分かっていく中で,これをまだ法律上,必要なことと法文として残しておくべきか,逆に,こういうふうに法律の全体性を変えればこのこともカバーしていけるのではないかという動きが,これからも積極的に,こういう法律に対して先生方が取り組んでくださることを期待して,今は私たちが願うことに一つの光明を与えていただけたら,私たちはそれを大事にしながら,子どもにとってどんなときにこれが使えるのかと考えながら,決して,子どもを不幸せにするような,あるいは制度そのものをなかった方がよかったのにと思うようないじり方をしないように心して,皆さん方のこれだけの御心配を受けながら作られた法律だとしたら,そのことを子どものために使おうと思う私たちの中で,もっと慎重に考えていくことをこれからは広げていくことも含めて,私の役割にしたいと思っておりますので,どうぞその辺をお聞き入れいただくことはできませんでしょうか。 ○大村部会長 ありがとうございます。限定的なものであれ例外を開いていただけば,それを適正な形で使えるように運用したい,そういう御決意をお示しいただいたものと理解しました。 ○宇田川幹事 ありがとうございます。例外要件の運用について少しお話が出たところでございますので,少し意見を述べさせていただきます。   従前の案では,「特別養子の申立てがされなかったことについてのやむを得ない事由」ではなく,広く「やむを得ない事由」が問題とされ,その「やむを得ない事由」も広がりすぎている感があって,裁判所としても,どのような場合にやむを得ない事由があるものとして特別養子縁組の成立を認めるべきか判断しにくいのではないかと申し上げ,そこについて条文で明確化するか,又は部会で議論して明確化していただくことをお願いしていたところでございます。裁判所にいろいろ期待していただいているのは非常に有り難いことなのですけれども,要件を「やむを得ない事由」というふうに一般的にされてしまうと,判断が非常に難しいというところでございますので,その点を含めて御議論いただきたいと思います。今回提案として出されている,「申立てがされなかったことについてやむを得ない事由」という要件について,これまでの部会の議論では,例えば,先ほど藤林委員からも指摘された,年齢制限のために特別養子を申し立てることができなかったが,制度が改正されたため申し立てたというような場合ですとか,あと,前回か前々回の部会で出された例としては,実親側が反対していたというような状況が長く続いていてが,その実親が同意するようになったということで,ようやく申立てをしたというように,それまではちゅうちょしていたけれども,ようやく申立てをすることができたというような例が挙げられていたところです。こういった場合は,「申立てがされなかったことについてやむを得ない事由」があるというふうに皆さん考えていらっしゃるのか,そういうところも含めて,どういう場合に「申立てがされなかったことについてやむを得ない事由」があるのかというところについて,もう少し御議論いただけると,裁判所の運用もより適切に,立法趣旨に沿ったものになるのではないかと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。仮に例外要件を設けるときに,今,2の(3)が書かれていますけれども,ここに書き込むかどうかは別にして,これをより具体化するような内容を示していただき認識を共有してほしいという御趣旨ですね。 ○宇田川幹事 お願いします。ありがとうございます。 ○大村部会長 いかがでしょうか,今挙げていただいたようなものについてどうお考えになるのか,あるいは他のケースについて,こんな場合も考えられるというようなことがおありでしたら,何か御発言をいただければと思いますけれども。 ○水野(紀)委員 御指摘いただいた点と少し違ってしまうかもしれませんが,お許しください。ようやく妥協の議論が進みつつあるところで,ためらいつつ申し上げます。私は,「やむを得ない事由」を削る立場,例外はない方がいいという立場をいまだに考えておりますので,どうしてそう思うのかという理由を少しお話させていただければと思います。今までも磯谷委員や浜田幹事からも御指摘がありましたけれども,挙げられた例が,日本の現状を前提にしていて,そして,その前提がこの特別養子のところに変に流れ込んできていて,それゆえに,年齢を上げること,「やむを得ない事由」を認めることによって解決すると思われているようなのですけれども,それは筋が違うのではないかという気がしてならないのです。   具体的に申しますと,子どもを実親から守るために,幅広く網を掛けたいということですけれども,それは子どもに害を加えるような実親からの接近に対しては,私人である養親に子どもを守らせ,特別養子で縁を切ることによって子どもを守るのではなくて,もっとずっときめ細やかな形で,例えば実効性のある接近禁止命令をどんどんかけるとか,そういう形で守るべきだろうと思います。実親が同意しなかったから縁組が延びてしまったというのも,これもおかしな話で,本来そういう実親であれば,社会がとっとと実親の親権を切ってしまうかあるいはきちんと親権を停止させて,しかるべき親に委ねるという形にしているべきでした。それがそうできなかったということが,ずるずるとこちらの方に流れ込んできているように思えてなりません。   例外を認めるべきではないという点につきましては,15歳で意思を確認しなくてはならないということが残酷だと思うからです。本当は15歳よりもっと下の方がいいとは思っているのですが,15歳を超えてしまいますと,意思を確認しなくてはならないというのは決定的です。先ほど,もっと幼いうちから本人の意思確認はするのであって,そのやり方はグラデーションでしょうという御発言がありましたけれども,それは子どもの様子を見なくてはならない,子どもが何を思っているのかということを慎重に把握した上で決断を下さなくてはならないという意味では,正にそのとおりだと思います。ただ,ここで要件になっているのは,子どもにその決定をさせて,その意思表示をさせて,あなたが言ったことが要件なので,あなたが実親との関係を切るという判断をした,その結果この養子縁組は成立するのだということなのですから,それと事実上の意思確認との間に,やはり大きな差があるように思います。そして,そういう要件となる意思表示を子どもにはさせるべきではないという思いがございます。どうしてもということでしたら,経過規定としてはやむを得ないのかと思うのですが,そうではなくて一般的に広げておきますと,ここにたくさんのいろいろなものが入ってくる可能性があります。それよりは,現実に岩﨑先生が現場で困っていらっしゃるようなことを,どういう形で我々の社会は酌み取れるのか,ほかに手段はないのか,そこで接近禁止命令を出すべきではないのか,ここで親権の停止をもっと果敢にすべきなのではないかというような形で考えていく方が筋ではないかと思えてなりません。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○磯谷委員 先ほどから少し出た「やむを得ない事由」のところが,私としては今お話を伺って,一層よく分からなくなってきたのですけれども,元々言われていたのは,やはり15歳になる直前に虐待を理由に子どもが保護されて,申立てをする間もなく15歳になってしまったというケースで,そういうケースは私も例外要件としては分かるかなと思ったのですけれども,先ほど出てきたのが,同意をしてくれなかった実親が同意をしてくれるようになったとか,あと,藤林委員から出たのが,少し誤解かもしれませんが,実親が病気か何かだったけれども,その後にそれが回復してということなのかどうか分かりませんが,申立てが可能になったとか,つまり,申立てそのものは本来できたのだけれども,要件的に認められないのではないかと思われたと,そういったことで申立てを控えていたのだけれども,それがどうも認められそうなので,15歳に達した後に申立てをしますと,こういうものも拾っていくという理解なのでしょうか。私の理解はもっと非常にタイトで,申立てそのものをやろうと思っても,やはりやる間もなく,そういうふうな非常に例外的なものと理解していましたけれども,仮に,いや,要件的に少し見通しが立たなかったけれども,立つようになったからやります,これが申し立てなかったことのやむを得ない事由ですという理解がここでのコンセンサスなのかどうか,私もそこがよく分からない。それ一つとっても,やはりこの「やむを得ない事由」という要件はかなり曖昧ではないかと思います。 ○大村部会長 今のような点について認識をすり合わせていただきたいというのが先ほどの宇田川幹事の御発言だったのだろうと思います。普通養子の問題も含めて,実親との関係についてもどう処理をするのかということについては様々な方策があり得るということがこの会議の中でも折に触れて指摘されてきたかと思います。もちろん,それらはやらなくてよいということにはならないわけですが,それらを踏まえて,現時点でやるべきこと,あるいはやれることについて,皆さんが一致していただけるものはどういうものなのか,ぎりぎりのところでイメージをすり合わせて,それを条文化するということなのかと思って伺いました。   磯谷委員は一つの例を挙げられて,これは仕方がないかもしれないとおっしゃっておられるわけですけれども,藤林委員も,磯谷委員がおっしゃる例についてはそうだとお考えになると思いますが,他の例として,こういうものも例外要件に入れるべきなのだという御発言があれば伺いたいと思いますが。   磯谷委員は一つの例を挙げられて,これは仕方がないかもしれないとおっしゃっておられるわけですけれども,藤林委員も,磯谷委員がおっしゃる例についてはそうだとお考えになると思いますけれども,他の例として,こういうものも例外要件に入れるべきなのだ,入れてしかるべきなのだというような御発言があれば伺いたいと思いますが。 ○藤林委員 先ほどの私の出した例を,少し誤解を与えてしまったので,もう少し正確に伝えたいと思うのですけれども,一つは,先ほど宇田川幹事からも言われましたように,この法改正がないために申立てができなかったというケース,もう一つ私が例として言ったのは,ある年齢まで里親さんが養育していたけれども,その後,実親さんの下に小学生年齢とかで家庭復帰するケースというのはそれほど珍しいことではないと思っています。元の里親さんとのある程度の関係はできていたわけですけれども,その後,実親さんとの家庭の中で身体虐待なり性虐待が起こって再び保護され,元の里親さんに措置されるというケースは,これもそれほど珍しいことではないかなと思います。その年齢が,例えば12歳,13歳となった場合に,実親家庭で再虐待,又は虐待が発生した後,その影響が安定するのにやはりどうしても時間がかかってしまうかなと思うのです。それがやはり15歳に届かない,子どもの意思なり養親さんの意思が,15歳という年齢制限があるために無理してしまうのもよくないことですから,やはりそこには一定期間の生活の安定なり精神の安定なり,又は子ども自身の実親さんとの関係をどうしていくのかということを冷静に考えられる時間というのが必要かなと考えると,それはやはり15歳を超えてしまうやむを得ない事由ではないかと思います。   主に想定されるのはそういうものですけれども,中に,これもごく例外的には,10代,10歳とか12歳ぐらいまで虐待がなかなか発覚されずに,潜在的な性虐待なりネグレクトなりがずっとあって,やはり12歳,13歳で初めて保護され,里親さんに措置されるというケースもまれではありません。そういった場合に,里親さんとの関係が非常に安定して,又は子ども自身が実親さんとの関係をもう終了させたいと思うケースはあるのではないかと思うのですけれども,それにしても,この年齢で初めて保護措置されて,生活が安定する,精神が安定するというのは,ちょうど思春期年齢に掛かるものですから,15歳で本当に間に合うのかどうかというところを考えると,やはりこういった例外規定があることで,15歳という年齢,申立てなのか,確定なのかはまだ議論があるかもしれませんけれども,それに左右されずに里親さんとの関係を築いていくであるとか,子どもの精神的な安定を図っていくとか,その中で子ども自身の意思を確実なものにしていくという期間がどうしても必要かなと,そういうのが多分,「やむを得ない事由」の中に含まれてくるのかなと思います。   実親さんの方の同意がやっと得られましたとか,反対していた実親さんが亡くなったとか,それは余り理由にならないと思うのです。それは,今回の法改正で児童相談所長が申し立てることができるようになってくれば,より早い段階で,この実親との家庭復帰はほぼあり得ない,又は法的関係を残すことが子どもの利益にとってよくないといった判断が行われれば,より早期の段階で申立てをすれば済む問題ですから,それは「やむを得ない事由」の中には入ってこないのではないかと私は思います。 ○大村部会長 今のような御指摘が出ておりますけれども。 ○棚村委員 前にも少し御紹介をしたと思うのですけれども,現行の6歳未満で,6歳未満から引き続き監護されていた場合には原則8歳未満というので,ぎりぎりのところでいろいろ問題になったケースに関わったことがあります。審判の成立のために意見書を書いたというようなことなのですが,このときも実父母の同意がやはり結構問題になったケースが多くありました。もちろん同意不要要件みたいなものに該当するかというと,やはり非常に微妙な,虐待とか悪意の遺棄とか,そのほか「養子となる者の利益を著しく害する事由」というのを厳格に解するか,少し緩やかに解するかで大分違っていたのですけれども,そのケース,栃木のケースは,本当に生後1,2週間で引き取って,ずっと預かっていたのですけれども,御夫婦は離婚をしてしまって,父親の方は当いう初,3000万円ぐらいのローンがあったので,金品を要求するような行為もありました。それから,お母さんの方は離婚した後,行方がなかなか分からなくて,そして結局,育てることはできないし,会いにも来ないのだけれども,家庭裁判所から連絡が行って,やっと見付けて確認をすると,やはり子どもに対する罪悪感みたいなのがあって,心情的に特別養子縁組には同意できないと拒否しました。では,将来その子どもを引き取って育てられる計画とかがあるのかというと,全く見通しがないというケースでした。このケースで,最初の家庭裁判所は同意がないため取下げを勧告しました。要するに,同意しない以上はもうとにかくどうしようもないというのです。次に行ったときは却下されて最高裁まで争ったのですけれども,養親候補者や養子のせいでないのに,解釈や運用がバラバラなために,縁組ができなかった事例とも言えます。このように裁判所の判断が分かれているし,扱いが極端に異なることで,申立ができないとか,縁組が認められないというのは,申立時をとっても,成立時としても,「やむを得ない」事情ではないのでしょうか。このケースでは,結局ぎりぎりの年齢になったときに,裁判所が理解を示してくれて,同意は不要というようなことで,金品の要求とかそういうケースというのは,まれですけれども,あるのだなというので,私は本当にびっくりしました。そうなると,里親登録をしていたり,実際に養育をずっとやっていても,非常に申立にちゅうちょされていて,手続も弁護士さんを頼んである程度負担や労力を覚悟してやる人というのが,むしろなかなかいないのではないかと思います。そうすると,先ほど言いましたけれども,実親との確執があるとか,同意をやはり取れないとか,取ることで非常に困難が生じているとか,それから実親で,私はまれだともちろん思っているのですけれども,子どもを特別養子に出すか出さないかでお金を要求するような人たちも多くはないにしろやはりいらっしゃるのだと,親としての責任を果たさない,そのときに,養子をとろうとする人たちからすると,かなりリスクがあるわけですよね。   もう1件は,やはりかなり反社会的な勢力との関わりがあるような実父の方で,そういう意味でも,本来は刑事事件とかいろいろな形で救済をされる必要があるものだと思いますけれども,でも,子どもを本当に育てたいということで,思い切って弁護士さんを立てて,それで,弁護士さんを通じて私みたいなところに来たときに,こんなケースがあるのだなということなので,藤林委員がおっしゃっているケースも含めて,やはり予想できないような,そういうひどいものもあり得るのだということです。そういうときに,むしろこういうような,原則は15歳未満で,きちんと低い年齢のときにできるだけ早く養親になり,特別養子の縁組もしていただいて,ただ,たまたまそれができなかった,そういう例外的な特別の事情があるものについては,やはり何らかの救済の条文なり,それを置いておくというのは,私はやはりあり得ることなのだと,そういう経験を通して痛感しました。   だから,恐らく,ケースが少ないからとか数が少ないからとか,それから,普通養子縁組でやればいいのではないかということなのですけれども,特別養子縁組で本来やった方がよさそうなケースで,なおかつ,それがやはりちゅうちょされるとか,なかなかできないという特別の事情がある場合の,原則があるので例外の規定は一切要らないということについてはやはり疑問があります。それから,改正に30年たっているわけですよね。普通養子も含めて改正しましょうというのでは皆さん一致しているのですけれども,果たして,婚外子の相続の差別もそうですけれども,夫婦別姓とかもそうですけれども,これだけ時間がかかってもなかなかできないというようなことを想定すると,今の段階ではむしろ,普通養子縁組を含めた未成年養子全体の改正に期待をしてこれを削ってというよりは,これを入れていただいて,そして,やはりなるべく早くこういうような例外規定を使わなくてもいいような抜本的な改正みたいなものを,むしろ進めていただければと思います。特に私は,30年とか,10年単位どころではなくて,今,1年単位で生きていますので,恐らくこれから先,10年先にこういうような改正をきちんとしたものをやるというより,この機会ですので,是非,例外的な規定も設けていただいて,これが運用されないということであれば,皆さん,先生方がおっしゃっているように,15歳の同意をどうするかとか,18歳に限りなく近づいてくれば,そういう人たちをどうするかとか,後で出てきます,その子が子どもを持っていた場合にどういう取扱いにするかとか,非常に難題がたくさん出てくると思います。ただ,そういうことを前提としながらも,今の枠の中では,窪田委員も多分そうだと思いますけれども,申立時になるのか,審判時にするのかは少し検討していただいて,手続的なこともかなり難しい問題がないとは言えません。しかし,ただ,例外要件について,少ないケースであっても,ないと断言をされてしまうと,私自身も経験から,こういうことがあるのだな,こういう事案もあるのだなと,そういうことに対する何らかの措置というのは置いといても,使われなければ,それはそれに越したことはない。使わないのだったら要らないのではないかというお考えよりも,むしろそういうケースでも,経験をしたり,ケースがあるということになれば,1人でも2人でもやはり子どもを救うことができるのであれば,規定を置いてほしいというのが私の考えです。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○浜田幹事 やはりお伺いをしていて,例外の作り方って難しいなとしみじみ思いますのは,「やむを得ない事由」の解釈のところです。先ほど磯谷委員の御指摘に対して,藤林委員から御指摘のあったような,例えば12歳,13歳で子どもが保護され,それが再虐待であれ初めての保護であれどちらでもいいですが,そこからその子どもが15歳までになるまでマッチングや,さらにはその先までうまくいくかとかいうところを見なければいけないという事態まで,ここで例外的に拾う「やむを得ない事由」に含むのかというと,私も磯谷委員と同様の感覚を持っておりまして,それは違うだろうと。「やむを得ない事由」というのは,そこまで拾うものではないのではないかと思っておりました。なかなか一般化して話をしにくいので,今の設例についてはで,それは「やむを得ない」にはあたらない思うとしか言いようがないのですけれども,なので,ここのコンセンサスってなかなかに難しそうだなということが一つでございます。   その次に棚村委員から御発言のあったところで申しますと,そのような,例えば相当困った実親さんがいて,そのときに対処として特別養子縁組ができねばならないという事態はたしかにあるのでしょうけれども,そのような事態にこの年齢の例外要件を設けるという形で対処すべきものなのかというと,そうでもないのではないかと思っております。実親さんがかなり困った方でいらっしゃるときの対処としては,今日の後半にも出てまいります二段階手続論だったりするわけですから,そうなってきますと,年齢のところに例外を作るという形がベストの手段かというと,やはりまだすとんと来ていないなというところでございます。   さらに申しますれば,これは前半,どなたからか出たかもしれませんけれども,やはり15歳を超えて認めなければならないというか,認める方が望ましいものがあり得るということを否定しないにしても,それの数が結局よく分からず,どのぐらい出てくるか,きっと少ないだろうねというふうな,率直に申し上げてしまうと,かなりもやっとしたところがある。もやっとした中で,15歳以上の子どもには意思確認の意向はきちんと取ってこなくてはいけないのだというふうな家事手続全般の基礎となっている原則を曲げてまで導入しなければならないかというと,やはりここも疑問が残っているというふうなことでございます。   ごめんなさい,一つ言い忘れたので,発言の最初に戻りますが,藤林委員からのお示しいただいた設例で,12歳,13歳のところで保護なり再保護なりされてきて,その子の様子を見極める,それは先ほど申しましたように,私は「やむを得ない事由」に含まないと捉えるべきと思いますが,もう一つ,12歳,13歳ぐらいで保護されて,その子についての特別養子縁組を15歳以上になるまで様子を見るというのは,私に言わせれば,そこは正に引っ張って様子見をしすぎている,先回までにも何回か申し上げたと思いますが,なるべく早くに養子縁組がなされるべきだというふうなニーズとある意味,対立するような事態がそこでは生じてしまうのではないか。これは年齢を上げれば上げるほどケースとしては出てき得る話だと思いますので,結局同じことを言っているわけですけれども,やはりそこも懸念するところでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○窪田委員 宇田川幹事から御発言があったところ,それから磯谷委員から御発言があったところも,どういうふうに書き込むのかということを抜きにして,例外となるような場合を共有することができるのかどうか,実質的に共有できるかできないかがその後の議論を左右するということになるのだろうと思いますが,私自身は,今まで出てきたケースの中で言うと,藤林委員の例とは少し違いますけれども,14歳,15歳で虐待,性的虐待も含むものが明らかになったというようなケースは,ひょっとしたら例外が適用される場合に該当するのかなとは思いました。他方で,実親がなかなか言うことを聞いてくれないとかというのは,基本的には同意要件の問題ですし,2段階に分けて対応すべきという形での考えられている問題ですから,これをこの場で「やむを得ない事由」という形で持ってくるのは,議論を非常に不鮮明にするのではないかという気がします。その点では,もう先ほどお話があったところと同じなのですが,私自身の中では,例外を認めるという方向で発言していること自体がもう研究者としての矜持も何もないような発言なのだろうとは思いますけれども,かなり限定されたものということで考えておりますし,申立てが遅れたのに少し理由があるよねというようなことで認められるような例外ではないと思っております。 ○水野(有)委員 私自身がどちらが正しいと言う立場ではないのは理解しているのですが,議論の整理として,成立時を基準とするのか申立時を基準とするのかは別として,15歳までに成立しなかった,又は,15歳に達するまでに申立てがされなかったことについてやむを得ない事由があることという形で議論されているのに,特別養子の必要性が高いかどうかも議論の中に入っているような気がいたします。窪田委員が最初に御指摘されたところとも関連しますが,申立てが遅れたことがやむを得ないかどうかという問題なのか,特別養子の必要性が極めて高いかどうかという問題なのか,それとも,特別養子の必要性が極めて高いということが直前に発覚した場合の問題なのか,その辺りを整理して議論していただくと分かりやすいと感じました。 ○窪田委員 基本的におっしゃるとおりなのだろうと思いますし,やはり1の話と切り離せないのではないかという気がします。1を申立てということにしたら,申立ての話,例外になりますし,1を成立ということにしたら,にもかかわらず15歳以上で成立が認められる場合の例外要件ということになりますので,同じように例外といっても,議論の仕方が違うということになるのかなとは思います。その点ではやはり1の部分を議論せざるを得ないのかなという。 ○大村部会長 ありがとうございます。1をどうするかということももちろん決めなければいけないのですけれども,今までの皆さんの御発言だと,手続の遅延というか,同意を取るのに時間がかかったというのは,それは同意の方について今回は手続的に対応するので,そちらで受けるべきだというのが大勢を占めているように思いますけれども。 ○平川委員 すみません,私は,「やむを得ない事由」という点については,今一つ十分な理解ができません。それは,私自身は15歳ということに対して,余り大きな意義を見いだしていないことにあります。それは,先ほど部会長の方からおっしゃっていただきましたけれども,年齢要件というのは飽くまでも子どもの発達に応じたグラデーションに応じた形での支援を行うべきであって,15歳という線引きそのものについては,それほど意義を見いだしていないというのが私の考え方です。逆に,そういうことからすると,15歳だからといって特別な,その線引きとして「やむを得ない事由」を考えるということについての理屈が本当に成り立つのかどうなのかというのは少し疑問を持っているということであります。意見として言わせていただきます。 ○大村部会長 今おっしゃったのは,例外を設けるという方向になりますか。 ○平川委員 15歳をもって例外を設けるか,設けないかということに関しての理屈がどうも,成り立つのかというのがよく分からないところがありまして,15歳だからといって,「やむを得ない事由」ということをそこで持ち出してくるという理屈が,どうも実態として合わないのではないかと思います。 ○大村部会長 それは,原則自体に賛成でないという御趣旨ですか。ここでは今,15歳というところで線を引こうということを前提にしており,そのこと自体は皆さんの賛同を頂いていると思ったいたののですが。 ○平川委員 そういう前提で話をしているのですけれども。 ○大村部会長 そうなったときに,15歳で線を引くということになると,15歳までならばオーケーで15歳を1日でも超えていると駄目だということになるのだけれども,それでは困る場合はないか,あるとすればどんな場合かということかと思いますが。 ○平川委員 私の本来の意見はそういうところなのです。ただ,話の前提として15歳となっているという議論があったので,こういうふうに意見を言ったわけですけれども,やはりいろいろな議論を考えると,15歳という線引きが,もう1回,少しまだ納得いかないなというふうな感想というか,意見を言わせていただきたいと思うのですけれども。 ○大村部会長 ありがとうございます。平川委員自身は原則として,線は引かないという御意見ですか。 ○平川委員 15歳という線引きの理由が,どうもいまだに納得できないという。 ○大村部会長 しかし,14歳という線を引いても,やはり例外は出てくるわけですよね。 ○平川委員 そうですね。 ○大村部会長 そうすると,どこかに線を引くということを前提にして,例外は要らないというお考えではないわけですよね。 ○倉重関係官 平川先生のお考えは恐らく,もう18までにしてしまって。 ○平川委員 私はもう18歳という前提で考えておりました。逆にここで15歳という線を引くということによって,例外規定を作らざるを得ないということになっているのではないかと思っているのですけれども。 ○大村部会長 それは正にそのとおりで,しかし,年齢を制限する必要があるというのがこの場で大勢だと思うのです。それで,そのことを踏まえたときに,例外が要るか要らないかということになると,平川委員のお立場でも,本来は,18歳まで認めるべきものがあるならばそれは救済されるべきだということになりますよね。 ○平川委員 はい,そうです。その次善の策として,15歳としてどうしても線を引かなければならないというふうなことであれば,何らかの形での例外規定というのは「やむを得ない事由」というのはしっかりと明確にしていく必要があるのだろうと思いますけれども。 ○大村部会長 平川委員の本来の立場からすると,それほど厳格に例外を絞る必要はないという方向になるでしょうか。 ○平川委員 そういう形になると思います。 ○木村幹事 多分,子どもに同意を取るのかどうかという話と,「やむを得ない事由」についてどのように解釈するのかという二つの論点があって,前者については私も,皆さんの意見を聞いて,確かに同意を取るのは酷だと思う側面もあれば,同意を取ることによって一定の要請がかなえられるのであればという意見も少しあるので,その点については立場は決まらないのですけれども,後者の2の(3)のやむを得ない事由があることについては,今までの先生方の御意見を聞いて,私のイメージとしても,一般論には13歳とか14歳ぐらいに新たに虐待という事由が発覚をして,その上で15歳までに特別養子をするという申立ての判断が十分できなかったのでという点が「やむを得ない事由」に当てはまるという,かなり狭く解釈する点については共有することができたのですけれども,その上で,先ほど水野委員からも御意見があったときに,15歳の時点で申立てができなかったとしたときに,結局のところ,申立てができなかったとしても,最終的に特別養子という手段を採らなければいけなかったという意味でのやむを得ない事由ということの判断も一緒に行っていると思うのです。ただ,既に15歳が過ぎていたのであれば,普通養子というふうな選択もできるにもかかわらず,なぜこういうふうな場合に限ってのみ特別養子という選択を認めなければいけないのかということになると,その点について,やはり十分な正当化とか,よほどの要請があるというふうな形で説明をする必要があると思います。一定程度,あるいはかなり少ない数でそういった実務上のニーズがあるというのは分かりますけれども,他方で,普通養子制度という選択肢が既に用意されているということと,もう一つ,補足説明の3ページの(3)のところですけれども,多分これは「やむを得ない事由」の判断そのものには当てはまらないと思いますが,25行目以下のところに,例外要件を設ける場合に更に考慮すべき要素として,実際,縁組成立後に確保できる養育期間の長さなども考慮して,子どもの利益のために特に必要であるかどうか,更に慎重な検討が必要とされるというふうになっていると,結局,「やむを得ない事由」の要件はクリアしたとしても,最終的な子どもの利益のためにその養子縁組が必要かどうかという判断のところで切られる可能性は十分にあるとなると,結局のところスタートに戻って,結局ほとんど縁組成立後に確保できるような養育期間がかなり短いような15歳以上のようなケースの場合に,そもそも例外的な要件を認める必要はないというふうな判断を行うことも十分あり得るのではないかと思った次第です。   ということで,今のところは,例外要件は不要であるというのが私の考え方になります。 ○大村部会長 ありがとうございます。   様々な御意見を頂いていて,本日もなかなか難しいなと思っております。それで,全く不要というところから,広く認めてもいいのではないかというところまで幅がありますけれども,かなり厳格な線を引いて例外要件を認めるというお考えが相対的には多いのだろうと思っております。今日伺って,皆さんの中で御異論がなかったようなケースを例外として立てると,それから,それに伴って,申立てとするのがいいのか,確定とするのがよいかというのを定めて,それで,今は選択肢がある形になっていますので,なかなか意見がまとまりにくいところがあろうかと思いますけれども,事務当局で引き取っていただいて,今日のものを踏まえた形で一つの案を次回,出していただくということにしたいと思いますけれども,それ以上,今日,取りまとめるのは難しいなと感じるのですけれども,今のようなところでよろしいですか。何か御注意があれば伺いますけれども。 ○平川委員 話が戻って申し訳ありませんけれども,やはり15歳以上の同意と15歳未満の意思表示の関係について発言いたします。誤解を招かないようにしていただきたいのは,15歳以上の同意が重要で,14歳未満の意思表示,子どもの意思をどうやって酌み取っていくのかということも同じように重要なのだということです。どちらを強弱を付ける話にもなりかねないので,それをどうやって整理するのかという課題もあるかと思うのですけれども,その辺はどうなのですか。 ○大村部会長 何人かの委員,幹事が御指摘をされているところかと思いますけれども,15歳以下の子どもの意思については,それは事実として聴いて判断の材料にする,これに対して15歳以上は法的な意味を持つという整理になっているかと思いますが。 ○平川委員 ですから,それが15歳未満の子どもの意思についてどう取り扱っていくのかという考え方が,どうも見えてこないのです。 ○倉重関係官 その点につきましては,15歳以上,同意が必要であるということは,15歳以上で成立しているという規律にするのであれば,本文でゴシック体で書くことになろうかと思います。その場合に,15歳未満についても意思の把握が必要であるというのは今,家事事件手続法65条の規定でございますので,そういうものがあるのだということは補足説明でしっかりと書かせていただくという対応が可能かと思いますので,少なくとも15歳未満については子どもの意思が全然必要ではないのだというような誤った受け止められ方がされないような工夫は検討させていただこうと思いますが,それでよろしゅうございますか。 ○大村部会長 多分,事実の問題として意思をどのように聴くのかという,実際の実務をどのようにやっていくかという問題と,それを法的にどういう形で反映させるのかという問題と,二つの問題があると思うのです。2番目の問題については,現行法の中で一定の仕切りがされていて,かつ,この場でも一定の仕切りが前提にされえていると思います。平川委員が御心配になっているのは,そのような法的な線引きがされたことに伴って,15歳以下の子どもの意思について十分な対応がなされなくなるようなことがあってはならない。そういしたことないようにしていただきたいという御希望だと伺いましたが,それでよろしいでしょうか。 ○平川委員 そのとおりです。ありがとうございます。 ○大村部会長 そういう形で整理していただいて,法的な仕組みと,それから,子どもの福祉の観点から見たときの意思の聴取の仕組みをを,本文と補足説明とで書き分けていただくということになろうかと思います。   先ほどの,また暫定的なまとめに戻りますが,次が最後になりますので,次回に案を出し直していただく際の注意事項がほかに何かありましたら,伺いますけれども。 ○木村幹事 先ほどの平川委員と山口幹事の応対のところで,一つお話しになった点ですけれども,仮に例外要件が出てくれば,必ず同意が出てくると思うのですけれども,多分,前々回も同じような議論があったと思いますが,山口さんの前の話と私が混同しているのですけれども,第2段階のみで同意を要求することになっているというのは,もう確立した考え方として理解していいのでしょうか。というのは,第1段階のところで実親との間の話をするときには,子どもについては同意ではなく意見聴取のような形で対応するということで整理すればよろしいでしょうか。 ○山口幹事 その点については,また検討して,次回の資料に反映させたいと思います。 ○大村部会長 今日も非常に難しいのですけれども,3時には休憩したいと思っていたのですが,大分過ぎておりますが,御発言ございますか。 ○水野(紀)委員 すみません,一言だけ。先ほど平川委員の御発言を伺っていて思ったのですが,平川委員がもっておられるイメージとして,特別養子は当該の子どもに対する保護だと考えておられるように思いました。そうだとすると,本当にどうして年齢制限をするのだという発想になるのだと思うのですが,年齢をもっと低くしたいという者が考えていたのは,子どもの保護を特別養子という形で養親に託すということ,その枠組み自体に対する大きな不安があるということです。先ほど例が挙がりました,ティーンエイジでずっと性虐があったことが分かったようなお子さんを素人の養親に任すことが,その子を保護するという我々の任務として,果たして正しい方向なのかということが根底にある疑問だということで,議論をしていただければと思います。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   年齢の点につきましては,それでは,先ほどのような形で引き取らせていただいて,次回まとめた案を出させていただくということにしたいと思います。どうしますか,養子となる者に子どもがいる場合という点についても,御意見をいただきますか。 ○山口幹事 いや,もうよろしいんじゃないでしょうか。 ○大村部会長 それでは,第1の論点の中で,先ほど棚村委員からも御指摘があった点ですが,養子となる者に子がいる場合をどうするかという問題があって,ずっと積み残しになっておりますけれども,手続の問題についても御意見を頂かなければなりませんので,ここで10分休憩しまして50分に再開して,残りの時間で手続の方について御意見を頂きたいと思います。不手際で申し訳ありませんけれども,ここで中断させていただきます。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,再開させていただきたいと思います。   第1の年齢要件につきまして,時間がかかりましたけれども,大事な点ですので,しっかり議論していただく必要があると思います。次回また案を出していただきますが,第2の特別養子縁組の成立に係る規律の見直しということで,手続に関する点につきまして,残りの時間で御意見を頂きたいと思います。この点につきまして,事務当局の方から御説明をお願いいたします。 ○倉重関係官 部会資料9-2の第2は,特別養子縁組の成立に係る規律の見直しを検討するものです。これまで事務当局からお示ししていた案では,民法の規律を整理した上で,第1段階の審判の効果として親権行使の禁止というものを設けるという形で,2段階手続を実現することとしておりました。しかしながら,親権の行使が禁じられるとすると,未成年後見人の選任をどうするかという問題が生じますことから,この点についてこれまでこの部会においても議論がされてまいりました。そのような議論も受けて,改めて検討しましたところ,2段階手続を導入するに当たり,必ずしも第1段階の審判によって親権行使禁止という効果を生じさせなければならないということはなく,むしろ第1段階の審判については,特別養子縁組の成立に向けた中間的なものとして手続的な性質を有する審判として創設することも可能であると考えるに至りました。   このような理由などから,今回の部会資料では,第1段階の審判において,特別養子縁組の成立要件のうち実親の監護状況等について確認し,第2段階の審判においては養親子の適合性を認定するという形のものとして2段階手続を導入してはいかがかと考えております。規律の概要につきましては,部会資料9-2の6ページの(2)に記載しております。第1段階の審判に親権行使禁止という効果がないこととした点を除きますと,実質におきましては従前示していた規律と同様のものでございます。   続きまして,部会資料9-2の7ページの2において,実親の同意の性質について改めて検討しております。法的な理屈につきましては7ページの2の(2)に記載しておりますが,結論としては,まず,第1段階の手続を養親となるべき者が申し立てた場合には,いわゆる特定同意も白地同意も有効という考え方を示しております。他方で,第1段階の手続を児童相談所長が申し立てた場合には,白地同意のみが有効であって,特定同意は無効であるという整理をしております。   なお,9ページの(注)には,第1段階の手続の申立てをA夫婦がして,特別養子適格の審判が出されても,B夫婦はそれを利用して第2段階の手続を申し立てることはできないという考え方を提示しております。この点につきましては,これまで事務当局が提案していた考え方とは異なりますので,このような考え方の当否についても御意見を賜りたく存じます。   以上でございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。手続の問題については,第1段階の審判の効果をどう考えるのかということで,親権行使禁止とはどういうことなのかということについて御質問も頂いていたところでございます。また,同意の性質につきましては,前回出された案につきまして様々な御意見がありましたので,改めて整理をして御提案をし直してもらったものと理解をしております。以上の2点が中心的な変更点ですけれども,その他の点も含めまして,御意見を頂ければと思います。いかがでしょうか。 ○磯谷委員 まず,2段階手続の方ですけれども,最終的には民法そのものの要件については現状を維持して,手続的に2段階に分けて判断をするというふうな形なのかなと理解いたしました。それで,やはり少し気になるのが,現在の817条の7の方の,特に後段の,「子の利益のために特に必要があると認めるとき」という要件についてですけれども,恐らくふたつの段階のうち第2段階の方で判断する要件というのは,この点という整理をされるのかなと思う一方で,しかし,この要件というのは必ずしも特定の養親候補者さんと養子との間の適合性のみを言っているわけではなかったのではないか,もう少し広く,つまり一般的な意味で子どもの利益に特別養子がかなうというところも含まれていたとすると,要するに,手続的に第2段階では「子の利益のため特に必要があると認めるとき」,ここの部分を判断しますよという整理では,なかなか難しく,そうすると結局,民法の規定のどの部分を第2段階で判断するのかというのが明確にならないように感じています。それでいいのかどうかというのを,逆に研究者の方々の御意見も伺ってみたいと思っていたところです。   加えて,今の関連で,前回既に指摘させていただいた点ですけれども,仮にそうだとすると,「特に必要がある」という,「特に」というところがどうしても引っ掛かってきまして,全体的に特別養子縁組というものが,特に必要がある場合に認めるというのはいいとしても,第2段階のマッチングのところでそういった要件が掛かるというのは,やはり少し違うのではないかと感じますので,817条の7の規定については,本来この機会に整理をした方が望ましいのではないかと感じた次第です。 ○倉重関係官 確かにこれまでは,前段の「特別の事情がある場合において」というのを「特別の事情の要件」と呼んでいて,「子の利益のために特に必要があると認めるとき」というのを,一般的な特別養子縁組の必要性があることと,それから特定の養親子間に適合性があることの両方の要件を含んでいる,こういうふうに読むのだという整理を前提に,817条の7を分解的に考えてきたところでございます。   しかしながら,今回改めて立案担当者の解説等も参考に整理し直しましたところ,この「特別の事情がある場合」の方を,実親子関係の切断に着眼した要件であると整理をしており,「特に必要があると認めるとき」という方は,養親子適合性に着眼した要件であると整理されているということが分かりました。したがいまして,この条文の読み方はいろいろあること,この部会でもいろいろあったことは当然の前提ではあるのですけれども,今回あえて民法の規定をいじらないということを前提にしまして,立案担当者の解説の理解に寄せて読んでいきたいと考えてみたところでございます。   その上で,「特に必要があると認めるとき」という書き方が,養親子適合性を表現しているものとしては強すぎるのではないかという御指摘かとも思いますが,その点につきましては,養親子適合性,これは離縁が認められない,やはり養親子の適合性が認められなければいけないという要件ということになりますので,それぐらいもう間違いない,これであれば大丈夫だと,この適合性を表現する言葉としては,「特に必要がある」というような表現を維持しても大丈夫ではないかと考えて,今回の規律を提案させていただいている次第でございます。 ○磯谷委員 何とも言い難いところなのですけれども,必要性ということなのか,やはりストレートに適合性なのか,その辺りも本当はやはり言葉を改めた方が伝わりやすいのかなとは引き続き思っております。 ○大村部会長 ほかに御意見等,いかがでしょうか。 ○杉山幹事 今の御発言と違うところではあるのですが,幾つか確認したいところがございます。一つは,資料9-1の2ページ目の(9)で,第2段階の手続の申立てを却下する,すなわちマッチングに失敗して却下する場合,その審判が確定したときに,第1段階の手続の申立てを却下することができるとあるのですが,これまで,基本的に,ある人でマッチング失敗したときであっても,第1段階の審判の効力はある程度残しておくという前提で議論していたのではないかと思われますので,この却下することができる場合というのは今説明したような場合を想定しているのでしょうか。それと関わりまして,3ページ目で第2段階の審判手続の説明がございますが,(2)で第2段階の手続の申立てについて期間制限がありまして,第1段階の審判確定から6か月経過するまでにしなければならないとありますが,これをしなかった場合には第1段階の審判の効力はなくなることが前提でしょうか。   次に,第1段階の審判というのは,そもそもどんな審判なのか,主文をどのように書くかという点です。この子は特別養子の適格があると書くものだと考えていたのですが,養親を特定した同意がなされた場合の効果を考えると,一定の場合には,要件の一部,例えば,資料9-1の第2の1の(1)でアとイとあるうちのア及びイの(ア)のみ要件を満たすような場合,その部分にも効力が発生する,つまり審判の理由中の判断にも効力があることを前提とするような議論が出てくる可能性もあり,少なくとも第1段階の審判が具体的にどんな形で出されるのかという点も併せて教えていただければと思います。 ○山口幹事 そうしましたら,まず,部会資料9-1の2ページの(9)のところで,「却下することができる」となっていて,それはどういう場合かというお尋ねだったかと思います。これは,今回,部会資料9-2の最後のページの(注)のところに記載しておりまして,先ほど資料説明の中で口頭でも申し上げたのですが,A夫婦が申立てをして,それで第1段階の審判が出たというときには,B夫婦が申し立てることはできないという考え方を提案しておりまして,そうなりますと,また9-1の2ページの(9)に戻りますと,そういうふうにA夫婦が申立てをしていて,それで,A夫婦の第2段階の手続の申立てを却下すると,すなわちA夫婦との養子縁組は無理だなということが,マッチングがうまくいかないということが分かって,却下して審判が確定した場合には,第1段階の手続を維持させておく必要はないということですので,そういう場合には申立てを却下することができるということにしております。   ただ,更に御指摘を受けて考えますと,ここは申立てを「却下することができる」ではなくて,むしろその流れで行くと,「却下しなければならない」の方がより適切かとも思いますので,そこは改めて検討させていただければと思います。   2点目なのですが,部会資料9-1の3ページ目の2の(2)のところで,第1段階の審判が確定してから6か月たてばどうなるのかというお尋ねだったかと思います。これにつきましては,もう審判の効力が失効するということになろうかと思っております。   それから,3点目ですけれども,主文をどういうふうにするのかというお尋ねだったかと思いまして,今日の議論次第というところもあるのですが,今のところ考えておりますのは,やはり御指摘がありましたように,この子を特別養子適格があるということを認めるというふうなシンプルな主文になるのかなと思いまして,そうなると,その理由中の判断に拘束されるのかというような話が出てこようかと思います。ただ,これにつきましては,養親が申立てをした事件の第1段階の審判についてはその養親しか使えないということですので,主文がそうなっていても,実際上はその利用が制限されるということかと思いまして,他方で児童相談所長が申立てをして第1段階の審判が出れば,言わば同じ主文であったとしても,ほかの養親も制度上使えることになると,審判の主文の書きぶりによって,第1段階の審判を利用して2段階目の審判を誰が申し立てることができるのかということが決まるのではなくて,制度として誰が2段階目の手続を申し立てることができるのかが決まるということになろうかと思っております。かなり複雑になってしまっていますが,事務当局が考えているところは以上でございます。 ○杉山幹事 分かりました。したがって,特定同意があった場合であっても,第1段階の審判の主文としては,抽象的にこの子は養子としての適格があるというものなので,ほかの人がその審判を使えないようにするためには,資料9-1の2ページ目の(9)は,そのような場合には第1段階の手続の申立てを却下しなければならないと書きなおさなければならないということですね。 ○山口幹事 はい,その方が筋が通るかと思いました。御指摘いただいて,今思ったところでございます。 ○高田委員 今の第1点について,やはり確認ということなのですけれども,資料9-2の最後のページの(注)に関わる御質問ですけれども,今のような整理がされるのは,その前の8ページの15行目辺りから出てくるように,審判の申立てがそうした種類のものだという性質決定をすることに由来するという理解でよろしいわけですね。 ○山口幹事 はい,そのように考えております。 ○高田委員 としますと,結論としまして,養親となるべき者が申し立てる場合と児童相談所長が申し立てる場合については,そもそも申立ての種類が違うという御整理をされたという理解になるということでよろしゅうございますか。 ○山口幹事 はい,そのとおりでございます。 ○高田委員 その理由は,7ページ以降に書いてある同意の性質から,そうなるのではないかという御説明ということになるわけですか。 ○山口幹事 はい,同意の性質と申しますよりも,申立人の意思と申しますか,そこによって区分けされていくのだと,そのように考えております。 ○高田委員 議論を混乱させるようですけれども,確かに養親となるべき者が申し立てる場合においては,自分を想定した申立てをするわけですけれども,非常に言葉使いが難しいのかもしれませんけれども,児童相談所長と同じように,ほかの人にも使える申立てを別個に想定し,その選択を許すという議論も論理的にはあり得そうな気がしますけれども,それはやはり手続としては複雑になりすぎるという御配慮をされたということでしょうか。 ○山口幹事 はい,そのとおりでございます。 ○藤林委員 確認なのですけれども,要するに,児童相談所長が申し立てた場合には第1段階は生き残るという説明だったと思うのですけれども,資料9-1の2ページの(9)のところ,これは,その意味で,却下することができる規定になっていると私は理解していたのですが,例えば児童相談所長が申し立てました第1段階が認容されました,そこで,元々予定していた方が申し立てたところ,うまくいかなかった,そこで不調になってしまったといった場合には,全部白紙というか,第1段階まで無効になってしまうように,できる規定だったら残ると思うのですけれども,全て却下しなければならないになると,児童相談所長が申し立てた後,不調になった場合まで,そうなってしまうのではないかという懸念を持ったのですけれども,どうなのでしょうか。できる規定の方がいいのではないかと私は思ったのですが。 ○倉重関係官 こちらの(9)の第2段階の手続の申立てを却下する審判が確定したときというところは,やや言葉が足りておりませんで,第1段階の申立てをしている当該申立人の申立てによる第2段階の手続の申立てが却下したとき,こういうふうに読んでいただくと。したがいまして,児童相談所長が第1段階を申し立てている場合については,第2段階を誰が申し立てていて,その方の申立てが却下されたとしても第1段階には影響はありませんよと,こういう規律でございました。少し言葉足らずになっておりまして,大変失礼いたしました。 ○大村部会長 書き方は,藤林委員の御懸念もあろうかと思いますので,その辺が明確になるように改めていただくというか,御趣旨にかなった形に改めていただきたいと思いますが,藤林委員,実質は,それでよろしいですね。 ○藤林委員 はい。 ○大村部会長 そのほか,いかがでしょうか。 ○高田委員 ついでながら,今の点ですけれども,第1段階を養親となるべき者が申し立てた場合には,そのほかの養親との関係では第1段階の審判を使えないという整理になると思うのですけれども,仮に使うとすれば,児童相談所長が改めて申し立てるという趣旨になるのでしょうか。 ○山口幹事 はい,それでも構いませんし,別の使いたいと思っているB夫婦がまた改めて第1段階から申し立てていただくということになるかと思います。 ○高田委員 趣旨は,第1段階で,例えば児童相談所長がいわゆる参加をしていた場合等において,児童相談所長がそのまま使いたいという場合においては,従来は当事者参加というのを想定していたわけですけれども,先ほどの御整理ですと,もしかすると申立ての趣旨が違うということで,その方法を考える必要があると思いますけれども,それは第1段階に参加していた児童相談所長は,その手続を使って自ら第1段階の審判を得るという手法は残されているのでしょうかというのを,取りあえず御質問させていただければと思いますが。 ○山口幹事 御指摘のとおりで,このような整理をしますと,養親さんが申立てをする場合と,児童相談所長が申立てをする場合というのは,かなり違う手続ということになろうかと思いますので,当事者参加というのも難しいということになろうかと思いまして,そういたしますと,仮に利害関係参加を養親さんが申し立てた事件に児童相談所長が利害関係参加をしていたとしても,そこまでは許されるとしても,当事者参加をして,手続を引き継いでやっていくとかということはできなくなってしまうと考えております。というわけですので,児童相談所長が別途申立てをしていただかないといけないというふうになろうかと思います。 ○床谷委員 念のための確認の質問なのですけれども,B夫婦が申し立てるときには第1段階のものは使えないということなのですが,第1段階の審問でされた実親の同意そのものだけはどうなるのでしょうか。B夫婦がする場合,もう一度実親の同意を次のB夫婦が申し立てた審問でやらなくてはいけないのかどうか,そこを確認したいのですが。 ○倉重関係官 まず,民法の要件としての同意として有効かどうかという点からお答えいたしますと,たまたま別事件の調書という形で同意が記録されているだけということになりますので,それは実体法上,有効な同意だということになるのだと考えております。しかしながら,この同意の撤回につきましては,今回の規律では手続的な整理としておりますので,手続相対的に撤回制限が効いていくという形の規律とさせていただいております。したがいまして,A夫婦が申し立てた第1段階の手続で実親がした同意に撤回制限効が生じていたとしても,B夫婦が申し立てた第1段階の手続では,同意があるということ自体としては使えるのですが,撤回制限効は当該手続との関係では効いてこないと,こういうふうな整理とさせていただいております。 ○大村部会長 床谷委員,よろしいですか。 ○床谷委員 はい。 ○大村部会長 そのほか,いかがでしょうか。 ○藤林委員 これも確認なのですけれども,資料9-1の3ページの2の(2)なのですけれども,第2段階の手続の申立ては確定後6か月が経過するまでにしなければならないということ,これは児童相談所長が申し立てる場合でも適用されるのではないかと思うのですけれども,ということは,実務で考えると,あらかじめ里親さんなりに委託していた場合にはいいと思うのですけれども,この後委託するとなると,委託して6か月以内に養親となる者に申立てをしてもらわないといけないぐらい,非常にスピード感を持って進めなければならないということなのかなと,それはある意味で漫然と,せっかく第1段階で認容されているのに引っ張ってしまうということを防ぐという意味では,6か月というのはいいのかなと思うのですけれども,6か月って結構短いなというふうな心配が1点。   それから,もう1点は,万が一これが不調になってしまった場合に,もう1回第1段階からやり直すということになるのかなと思うのですけれども,その辺の確認です。 ○山口幹事 やはりこの第1段階の審判というのは,親権行使禁止という効果がないにしても,第2段階の手続がうまくいけば特別養子縁組が成立するという意味で,一定の効果を持つものですので,余りその効果を長く持たせておくと,先生がおっしゃるように,手続が間延びしてしまうというおそれがあるかと思いまして,そういう意味で6か月という制限を設けております。これは御指摘のとおり,児童相談所長が第1段階の申立てをされたときも適用される規定と考えております。6か月以内にお一人目の養親候補者とのマッチングがうまくいかなくて,それで,まだ時間があるうちに2組目の養親候補者を見付けていただければ,この手続をいかしてということができるのですが,それが6か月以内に見付からなくて,この6か月の期限が切れてしまいますと,やはり改めて第1段階から申立てをしていただくという必要があるということに考えております。 ○藤林委員 要するに,有効期限は6か月ということで,以前,2年という話があったような記憶があるのですが,ここの会ではなかったですかね。この会では最初から6か月だったでしょうか。 ○岩﨑委員 2年という話はあったと思いますよ。 ○山口幹事 この部会でも当初,2年という長さは出ておりましたけれども,当時もやはり,先ほど藤林委員が御指摘のとおり,少し長くて間延びしてしまうのではないかという御議論もあって,それで,かなり短くなってきたという経過だったと思います。 ○岩﨑委員 児童相談所の所長が申し立てて1段階がオーケーになったケースなどは,そんな簡単に養親候補者は見付からない。順調に行ったとして,その子どもに対して申し込みたいという夫婦の面接,それから,その情報に基づいて家庭訪問調査をするかどうか,家庭訪問調査した上で,その人で進めるかどうか,そこから健康診断をしてもらい,記録を書くというようなことをすると,やはり3,4か月,その作業だけで掛かるのです。それから施設実習,それで,引き取ってもらって,里親委託になって,6か月の試験養育期間,それで6か月が済んで,申し立てて,大体2,3か月の審判期間があって,大体1年で要するに成立するというのが,50年やってきた協会でそれぐらい時間をかけているのです。それぐらい時間をかけてもなかなか,その夫婦がその子どもとしっかりと関係を構築するのには足らないときもあるぐらいです。   ですから,いわゆる同意に対する有効期間が6か月というのでは,我々仕事ができないです。少なくとも2年でも短いと思っていたときがあるのです。4歳,5歳の子ども,まして今回,だんだん大きくなる子どもも私たちも果敢に挑戦していくとすると,もう相当難しいです。施設実習がこの頃どんどん長くなって,私たちは大体3週間ぐらいでかつてはやっていたのですけれども,今施設はどんどんユニット化され,いわゆる子ども担当制になりましたから,子どもと担当者との関係が非常に密になっているので,昔みたいに誰も自分に特定の大人がいないような施設のときには,特定の人ができるだけで子どもの方が寄ってきてくれたのですけれども,今,担当制になると,この担当者が母親代わりなのです。そこに改めて,今度は本当に母親になってくれる人が現れても,子どもにとってはこっち側の関係が既にでき上がっていると,新しい関係へ移るのはとても恐怖です。担当者と別れて養親候補者側に行くためには,その必然性が子どもの中で理解されないと行きませんし,また,最初の担当者は一生懸命母親役をしてきましたから,いい子で養親候補者側に引き取られたいと思うのですよね。そうすると,そろそろ,この子は養親候補者に対して試し行動を始めますから,そうすると,悪い子になるのでそのときには引き取らせてもらえないのです。けれども,引き取ればもう1回,試し行動から始めないといけないので,早く引き取らせてくださる方が,早くこちらの関係が築けるのですけれども,今,そういう意味でも施設との関係がとても難しくなりつつあって,そういう意味では,施設実習が2か月,3か月,場合によっては5か月,6か月もかけている施設もあるのです。そこで6か月と言われると,ほとんどの子どもは対象にならないです。少し考え直していただきたいです。 ○倉重関係官 中間決定のときから,甲案というのは6か月を前提にやっていて,それは実親さんの権利が制限されることのバランスで6か月にしましょうという議論でずっと来ていたはずだと思うのです。今回少し,規律の位置付けといいますか,法的な性質は整理させていただきましたけれども,従前の甲案と大きく異なるものではないというふうな理解で提案させていただいているのですが,今までのものについてはコンセンサスを頂いて,甲案という形でお示ししたと思っているのですが,それは何か違うものということになりますか。 ○岩﨑委員 甲案は,いわゆるセットができたケースですよね,要するに。この養親さんで養子縁組をするについて,第1審査の方もその里親さんが申し立てるという,だから,今まで従来どおり何の問題もなくすっと行く場合には,それを使ってもいいですよねというような議論もあったと思うのですけれども。 ○倉重関係官 甲案だと,児童相談所長が第1段階の審判を取得したときも,そこから半年間以内に申し立ててくださいというような規律とさせていただいたところですが。 ○岩﨑委員 でしたか,それは。 ○大村部会長 第1段階と第2段階が離れるのが望ましくないだろうというのがこの案の背後にある考え方で,それが6か月という形になって皆さんの御支持を得ていたということなのではないかと,そう思いながら御発言を伺っていました。先ほどの申立時とするか確定時とするかということとも関わるのですけれども,手続が長くかかるということになってしまうと,申立時で規律するのは難しいという御指摘も出てくるかもしれないという印象を持って伺いました。どちらがいいかというのはなかなか難しいところかと思いますけれども,その辺も少しお考えいただけるとよいかと思います。 ○藤林委員 確かに6か月という議論がどこかから入ってきたなと思っていたのですけれども,改めてこうやって見ますと,6か月で申し立てるのだなという。だから,元々第1段階で児相長が申し立てる前から監護状態,里親が養育しているケースはいいのですけれども,白地同意ということで第1段階が得られてからというケースも想定すると,6か月はなかなか難しいなというところなのですが,ここで元の議論に,前提を覆すようなことを言うと,せっかくここまで積み上げてきたものがおじゃんになるので,余り強くは言えないと思っているのですけれども,実務の感覚ではそういうところがあるかなという意見を少し言わせていただいたというところです。 ○岩﨑委員 特に,施設の中にうずもれていた子どもを掘り出そうという目的が特別養子にあります。養子縁組委託率を増やす,利用促進をする上では,今まで養子縁組の対象は,養子に出してくださいと親が言わない限り対象にしなかったのを,面会もなく,引き取られるめどもなく,そして年だけ取っていって,最終的には18年間施設にいる子どもが相当数いるではないかというようなところを見直して,できるだけ低年齢児に養子に行けるチャンスを与えてやりたいという利用促進の一つの目的の中で,同意が常に不安定な状態でやるのは,子どもにとっても里親にとっても非常につらい。だから,同意を確定しさえしてくだされば,その後どれだけでも頑張れるけれども,そのために取りあえず,少々時間がかかっても,お母さんの同意を取り付ける作業,あるいは,同意が取れなければ,逆に言えば,裁判所命令みたいな形に近い養子適性,だからこそ養子が必要な子どもなのだという審判をおろしていただけることで,その子どもたちに家庭を用意してやることができると,そういうことが私たちの狙いだったと思うのですけれども,ねえ,厚労省さんの方々,そこが6か月でと言われると,ものすごいスピードで私たちは頑張らないと,やれないということになるのですけれども。 ○山口幹事 当然のことなのですが,この6か月を過ぎてしまいますと,もう金輪際そのお子さんについて特別養子縁組ができないということになるわけではなくて,6か月が過ぎてしまいますとどういうことになるかというと,児童相談所長さんが再度申立てをしないといけなくなるということであります。 ○岩﨑委員 もちろんそれは分かっています。 ○山口幹事 現在はもう養親さんしか申立てができませんので,そのマッチングがうまくいかなかったりしたら,もう手続は全てちゃらになってしまって,もう1回別の方が申立てをしないといけないと。そういう意味では,確かにそういう角度から見ますと,6か月しかないのかというふうな感じですけれども,元々どうせやり直さないといけない手続だったのが,今回,2段階手続にすることによって,ある意味,6か月に限っては1段階の審判を利用してできるというのがプラスしてできたとお考えいただけると,それほどひどい制度ではないのではないかと思うのですが。 ○岩﨑委員 なるほど。児童相談所の場合には最初の第1段階の審判が有効な,でも,6か月過ぎたらやり直さなければいけない。 ○山口幹事 そうです。 ○岩﨑委員 分かりました。 ○大村部会長 今,事務当局の方から御発言をいただきましたけれども,手続を2段階に区切ることによる様々なメリットがあるだろうということで,今回,このような制度設計をしていると理解しています。第1段階の審判の結果を,特定の養親との関係ではなく他の養親候補者との関係でも使えるというのは,そのメリットのうちの一つだったのだろうと思いますけれども,それについて時間的な制限をどうするかは他の要請との関係でバランスが決まってくるということかと思って伺っております。岩﨑委員や藤林委員の御意見はよく分かりますけれども,どこかで線を引く必要があって,6か月というのが手続の進行との関係では望ましいのではないかというのが今回の取りまとめだと理解しております。 ○藤林委員 2段階に分けること,児相長が申し立てるメリットは十分分かっておりまして,ですから実際,実務においては多分,第1段階で認められるだろうという判例が積み重なっていくと,そういうのもだんだんみんなに知れ渡っていきますから,そうなる場合には,あらかじめ里親委託なり監護状態に入っておきながら児童相談所長が申し立てていくという,英米で最先端でやっているコンカレントフッターケアーを日本でもやっていくのだなというところで,その方が子どもにとっては,第1段階が終わってから,そこから養親候補者を探してという時間の無駄を省くという意味では,決して悪い制度ではないわけなのですけれども,この辺が,世に出たときに児童相談所とか養子縁組あっせん機関の方が,6か月というのに多分反応するような気がしたものですから,そこは厚労省の方がうまく説明されるのではないかと思っております。   それに関連して,第1段階から第2段階までの期間が,申し立ててから第2段階の審判が確定するまで,またそれから数か月かかると思うのですけれども,その間,補足説明の資料9-2の5ページのところで,親権行使を禁止する案がなくなってしまったわけなのですけれども,これも実務上どうしたらいいかなという。児童相談所長が申し立てるということは,完全に実親,特に親権者とは対立になるわけで,認められましたというところで,その間,もし子どもが何か病気とかで手術が必要になったとかいった場合に,のこのこと同意を取りに行くというのはどうなのかなという気がしまして,元々あったように親権行使を禁止なり停止なりする措置が自動的に行われれば,第1段階の申立てと同時に未成年後見人の申立てをすれば,大体スムーズに問題はクリアするのではないかと思っているのですけれども,どうなのでしょうか。 ○山口幹事 その点につきまして,やはりお子さんが入院なり手術なりするということで医療上の同意が必要になるという場合に,もし,例えば親権者が親権を濫用して同意しないというようなことがありましたら,それはやはり特別養子制度の枠内,特別養子制度が目的としていることとは少し筋の違うことかと思いますので,本筋であるところの親権停止ですとか,その制度を利用していただくしかないのかと思いまして,藤林委員としては,どうせならこの手続で一挙解決しておいた方が非常に効率的ではないかというお考えかと思いますけれども,やはりなかなかそこの筋を変えていくのは難しいのかなと思っております。 ○藤林委員 ということは,確認ですけれども,そういった親権濫用が想定されるような親権者の場合には,同時に親権停止なり喪失の申立てを行うというふうな整理になるのでしょうか。 ○山口幹事 はい,それが筋であろうと思っております。 ○大村部会長 親権行使の禁止の点について,今回,何も規定を置いていないのですけれども,どういうことになるのか,少し補足説明してもらった方がいいのではないですか。 ○倉重関係官 では,第1段階の審判がされたときの親権の関係について御説明申し上げます。   部会資料の方でも少し記載させていただいたのですけれども,児童相談所長が申し立てるようなパターンについては,その子については一時保護等,それから施設等で入所していたりというような状況にあろうかと思います。その場合には,児童福祉法に基づく児童相談所長又は児童福祉施設長の親権代行などによってその子の福祉が図られることというのを考えているところでございます。一方で,養親となる者が申し立てるときでございますが,今回の規律では,第1段階の審判を申し立てる者は第2段階の審判を申し立てていなければならないとしておりますので,養親となるべき者が申し立てる場合については,その方は第2段階の手続も一緒に申し立てている状況ということになります。そうしますと,家事事件手続法166条の保全が使えますので,それによって,親権行使について問題が生じている場合には保全的な親権停止,それから親権の職務代行者の選任をしてもらうと,こういった形を採りまして,養子となるべき者に対する親権行使については問題がないように整理できると考えているところでございます。   その一方で,仮に親権制限の制度にしてしまいますと,未成年後見人の問題が生じますことや,中間試案前に少し議論になっていた戸籍記載の問題もやはり生じてしまうものですから,親権行使禁止を入れることが子にとって必ずしも利益ばかりではないというようなことを考慮し,かつ,保全や児童相談所長の親権代行に頼ることで事実上の弊害も生じないということで,今回このような整理を提案させていただくものでございます。 ○大村部会長 民法上は,先ほど山口幹事の方から御説明があったような対応をするというのが本筋だということになりますけれども,それ以外に補足的な手段も一定程度は考えられるのではないかというのが今の御説明だったと思います。それにしても,手続が余り長く続くのは望ましくないということで,先ほどの6か月という線が出ていると理解をしております。   そのほか,いかがでしょうか。 ○床谷委員 すみません,今の点で少しだけ確認なのですけれども,親権者,実親の親権を抑えて児童相談所長が一時保護なりして必要な措置を採るということは現行法の規定で行けるという御趣旨だと思うのですが,例えば,先ほど入院の話が出ましたけれども,入院のときの費用の負担とか扶養の問題とかそういうものは,実親の保険証を使ったり,実親に費用負担をしたりという関係は残ると考えてよろしいですか。それは,先ほど藤林委員は,同意を取りに行くときに少ししんどいみたいなお話をされましたけれども,お金をもらうとか保険証を貸してとかいう,現場の話がよく分からないので,その辺りは,後見人であれば親権を行う者と同じような権利義務が生じるので,その辺も自動的についてくるだろうと思うのですけれども,そこを確認のためにお聞きします。 ○山口幹事 そうですね,ただ,やはりそれは親権がある以上は実親が費用負担をするということになるのではないかと思っておりますが。 ○大村部会長 今の点は児童福祉法の改正のときにも問題になった点ではないかと思うので,少し調べていただいた方がよくないですか。厚労省の方で何かあれば。 ○成松幹事 すみません,もし,少し現場の運用が違えば,また藤林先生から補足を頂ければと思うのですけれども,基本的に医療費に関しては,保険証というのもありますけれども,親の保険というのはありますけれども,一時保護中の医療とかその辺は,いわゆる措置費の中で出せることになっていますので,親の保険が使えるかどうかというのは,いろいろなパターンがあると思うのですが,基本的には医療費の負担については措置費としてお出しができるというような形になろうかと。ただ一方で,概念的には親から,自己負担というか,それとリンクしない形の自己負担がありますけれども,それを取れるか取れないかに関わらず,措置費という形でお出しができていると理解しております。 ○大村部会長 私もそのように理解しておりました。 ○久保野幹事 すみません,付随的にもう1回,確認なのですけれども,先ほどの,一時保護措置がなされているので一定の行為を児童相談所の方でとることができるという点なのですけれども,前提になっているのは,児福法33条の2の2項,4項で,一定の措置は採れるというお話をしているというところを確認させていただきたいと思います。御説明の方でも33条の2第4項でできると書いてある,そういうことでよろしいかということの確認です。 ○山口幹事 はい,資料に書いているとおりなのですが,33条の2の第2項も必要になるのではないかということでしょうか。 ○久保野幹事 先ほど,筋論で行くと親権停止に最終的には行くだろうというお答えがありまして,途中の説明の中で親権代行という言葉も出たかと思うのですが,親権者がいない場合に親権を行うことができるという枠組みが1項であり,親権者がいるときでも2項,4項で一定の措置を採れるということになっていて,今議論している場面というのは,親権者は親権者のままでいて,しかし第1段階手続が終わった状態ということで,それは実体法,親権との関係では,停止とまでは性質付けられないという結論を出したので,枠組みとしては,親権者がいるときだけれども,そして停止もされていないけれども,2項,4項で一定の措置は採れると,なので,その一般論にのっかっていって,手術が必要なときといったようなことの扱いについても,現在,一定の場合にはこの権限でやれる,一定の場合には停止に行くという,現行の実務でなされている取扱いに従っていくということでよろしいですかという確認でした。 ○成松幹事 御指摘のように,児童福祉法の33条の2の2項では,一時保護が行われた児童の監護,教育,懲戒に関して必要がある場合は児童相談所長が必要な措置を採ることができると書いてございます。それに対して,御指摘の4項は,児童の生命とか身体の安全を確保するために緊急の必要があると認めるときは,その親権を行う者などの意に反しても,この措置を採ることができるとなってございますので,先ほど先生がおっしゃったような運用というか,法律の整理になっておるという形になってございます。 ○藤林委員 現場の実務をもう少し説明しますと,これができるのは緊急に必要があるという場合だけなので,緊急に必要がなければ,やはり親権停止の手続を申し立てなければならないし,予防接種はなかなかできませんので,そういう場合にはやはり,先ほど説明がありましたように,親権停止なり喪失の申立てが並行して必要なのかなと思います。という理解でよろしいですよね。施設長とか児童相談所長の親権代行で全てがカバーできるわけではないので,飽くまで緊急なときにできるという規定かと理解しています。 ○倉重関係官 予防接種に関しては,確かに4項の要件には当たらないというのは,御指摘のとおりかと思います。 ○大村部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○宇田川幹事 これまでは民法の改正により1段階目の審判に親権行使の禁止という効果を設けることが議論され,その場合には戸籍上に記載するというお話があったかと思うのですけれども,今回,手続的な規律により2段階手続を導入する場合には,そういう親権行使の禁止というような話がありませんので,戸籍上にも何も記載されないということになって,第1段階目の審判がされたということが,公示-こういう言葉が正しいか分かりませんけれども-されないことになり,理屈的には,例えば1段階目の審判が違う場所で二重に行われるというようなこともあり得ると思っております。そういう場合に,二重にされないようにするための手当てが必要ではないかとも考えているのですけれども,何か第1段階目の審判が二重にされないような手当て,若しくは,実際上はこういうことになるから問題ないのではないかというようなお考えがあれば,事務当局のお考えを教えていただきたいと思っております。 ○倉重関係官 それは,申立人が同じ手続が二重にされる可能性があるという。 ○宇田川幹事 申立人が違うということもあり得るのかとは思うのですけれども。 ○倉重関係官 まず,申立人が違う場合には,今回,それぞれの申立人ごとに別の申立てであると捉える整理とさせていただいておりますので,それは理論的には排除されないというのがお答えになるのかなと思っております。一方で,同一申立人のものが二重に係属することがあり得ないかといいますと,それはもう管轄が養親となるべき者の住所地ということにしておりますので,基本的には同じ家庭裁判所になるため,それは生じないというふうな整理ということになるかと思っております。 ○宇田川幹事 あとは,例えば児相長の申立てが先行して行われていて,次に養親となる者の申立てが別途されたようなときは,どういうふうに考えているのですか。これはもう児相長が関与している以上,児童をめぐるところの情報の引き継ぎというのは,あっせん機関も含めて,十分に共有されるような状態になると考えられるのでしょうか。 ○倉重関係官 児童相談所長が先に申し立てていて,それについてA夫婦が申し立てた場合,理論的にはここに抵触関係がないというふうな整理になろうかと思いますので,それはもう特段,両方とも審判が認容され得るということで整理をしていたのですけれども。そういうことではなくてですか。 ○山口幹事 児童相談所長からあっせん機関への情報提供ということでしょうか。 ○宇田川幹事 例えば,1段階目の審判が認容されていて,その次に,養親となる者の申立てがされたときには,そこは本来,判断としては拘束されるべき規律になっていると理解しているのですけれども。 ○倉重関係官 児童相談所長が第1段階目で,養親となる者が第2段階ということでございますか。 宇田川幹事 そうですね,その場合,養親となる者は,第2段階目の審判から申し立てれば足りるのですけれども,第1段階から申し立ててしまうということも生じ得るのではないかと思います。そういう場合に裁判所としては,児童の住居所が変わっている場合には,既に第1段階目の審判が出ているということを把握できないまま,第1段階目の審判から手続を始めて,場合によっては違う判断をしてしまうということも観念し得ると思っているのですけれども,そういったことは本来,手続の構造としては在るべき姿ではないと思っているので,そこは何らかの手当てが必要ではないかというように思っております。児相長が関与しているのであれば,そこの児童についてはフォローもされるのではないかと認識をしているのですけれども,そこら辺の情報共有ということが必要になってくるのではないかとも思っていますので,そこはそういう理解でいいのか,何かお考えがあればというように思ったところです。 ○山口幹事 おっしゃるとおりだろうと思います。すなわち,児童相談所長が第1段階の手続を申し立てて,養親さんが別途,第1段階の手続を申し立てようというときに,児相長さんがもうその子を,例えば実親の下に帰しているですとかということで,児相長さんの手を離れているという場合もあるかと思いますが,通常そうでないとすれば,児相長が第1段階の手続を申し立てて審判を得ているということとは全く無関係に,全く情報提供もないまま,養親さんが申立てをするということは,やはり御指摘のとおり,考えにくいことかなと思いますので,そうすると,養親さんが別途,第1段階から改めて申し立てるという事態は,普通は考えられないのかなと思います。 ○宇田川幹事 ありがとうございます。 ○大村部会長 よろしいでしょうか。   そのほか,いかがでしょうか。 ○杉山幹事 すみません,先ほどの質問と関わるのですが,そもそも第1段階の審判が申立人によって性質の違うものとして構成するのであれば,矛盾した審判が仮に出たとしても何も問題がないのだと思いますが,どれでよろしいでしょうか。むしろ,第2段階の審判もなるべく早い時期に成立させるために,養親となりたい者が複数いるような場合には,並行して申し立てられる可能性も出てくるように思うのですが,いかがでしょうか。 ○山口幹事 はい,理論的にはそうなのだろうと思いまして,もうA夫婦が申し立てる第1段階の事件とか,B夫婦が申し立てる第1段階の事件,あるいは児童相談所長が申し立てる第1段階の事件,これらは全て別個独立の事件ということになろうかと思いますので,判断の結論が違っても,そのこと自体を問題視すべきではないということになろうかと思います。それは理屈的にはそのとおりだろうと思うのですが,ただ,最高裁からお尋ねがあったのは,実際上どうなのかということかと思っておりまして,その場合には,先ほど申しましたように,特に児相長の申立てが先行している場合に,それと無関係にA夫婦が第1段階の申立てをするとかということは考えにくかろうと思っておりますので,理論的には杉山幹事がおっしゃっているとおりかというのが私どもの前提としている考えであります。 ○大村部会長 今の点に関わる御質問等,さらにございますでしょうか。   では,ほかの点も含めまして,さらに御意見をと思いますけれども,いかがでしょうか。 ○浜田幹事 ありがとうございます。極めて細かいところで恐縮なのですけれども,部会資料9-1の2ページ目,下の方の(8)のところです。基本的には陳述を聴かねばならないのだが,それの例外としてということで,実親の所在が知れないときは,実親とその人に対して親権を行使する者の陳述を聴くことを要しないという記載がありまして,似たような規定は前の部会資料7にもあったかと思いますけれども,そこでは「実親が」知れないときはとされていたのではないか。これが「実親の所在が」ということになると,意味合いが変わるかなと思いまして,ここはそういう理解でよろしいでしょうかということが一つ。   もう一つ,実親自体の所在が知れなかったとしても,実親に対して親権を行使する者の所在は分かっているということはあり得るのかなと思いまして,実親の所在が知れないときには,もう実親にもその親にも聴かなくていいのだというふうにまとめてしまっていいのかどうかというところが若干,疑問がありましたので,確認をさせていただきたいということでございます。 ○倉重関係官 御指摘のとおりかと思いまして,所在というのを今回,要綱案を改めて作り直すときに誤って入れてしまったものかと思いますので,大変失礼いたしました。 ○大村部会長 ほかに,いかがでしょうか。 ○平川委員 もう議論されて,分かっているかもしれないですけれども,質問なのですが,資料9-1の2ページ目の下の方の(11)の,第1段階の審判についてですけれども,(7)ウ及びエに掲げる者に告知しなければならないとなっていて,(12)で,養子となるべき者の年齢及び発達うんぬんと書いてあるのですけれども,それが第2段階になると,4ページの(9)ですけれども,第2段階の審判は,その者の利益を害すると認める場合は,告知することを要しない,要するに告知しなくてもいいのだというように読めます。ただし,15歳以上の場合は告知しなければならないとなって,少し書きぶりが違うのですが,この違いって何なのか教えていただきたいと思います。 ○倉重関係官 まず一番の理由は,15歳以上を仮に認めるのであれば,15歳以上の者については特別養子縁組の成立のために絶対に同意が要るという規律を入れますものですから,同意がある人については最後まで争う権利を与えるべきであろうということで,その即時抗告権を与える必要があるだろうと,その前提として,裁判の告知を必要的なものとしているのがここの規定でございます。一方で,第1段階の手続については,第1段階の手続自体によって子どもにとって何か身分変動が起こるわけではありませんので,ここについては,15歳を超えていたからといっても必ずしも必要的なものとはしていないというところでございます。   なぜそういうふうにしたかといいますと,例えば15歳ぐらいで施設に入っている子がいて,それがすごく長期間にわたって施設に入っていた子なんかがいたとしますと,そもそも施設に入所したときに自分がどういう虐待を受けていたのかということを知らない子もいるのではないかと考えたところでございます。第1段階の手続は,実親の監護の相当でないことを認定する手続になりますので,そうしますと,場合によっては本人も知らないような虐待が認定された審判書が本人に行ってしまう可能性があると,こういった事態というのは避けた方がいいのではないかと考えました。したがいまして,家庭裁判所の裁量によっては第1段階目の裁判書というのは本人には渡さなくてもいいという規律を提案させていただいている次第でございます。   すみません,やや混乱を生じさせてしまったかもしれないのですが,まず15歳未満の場合については,本人の成長度を見て,場合によっては送らなくてもいいですよというジェネラルなルールがあって,15歳以上の場合については,特別養子縁組成立審判の方は,もうそこで身分関係変動しますし,15歳以上の子にもし認めるのであれば,絶対に同意がなければ特別養子縁組成立させられないということにしていますから,特別養子縁組成立の審判については絶対に告知をしてくださいと,一方で第1段階目の方につきましては,そこで子どもにとって何か身分関係が生じるわけではないですし,場合によっては子ども自身を傷付けるような記載が裁判書にされる可能性もあるので,審判の告知は必要的にしませんでしたと,こういうことでございます。 ○大村部会長 ひとまずよろしいですか。 ○平川委員 すみません,あともう1点質問ですけれども,資料9-1の3ページの2の(6)の,家庭裁判所は,第2段階の審判をする場合には,あらかじめ,養子となるべき者の,15歳の人ですけれども,陳述を聴かなければならないとなっているのですが,これは聴くだけでいいのでしょうか。この辺は,同意を得なければならないという話になっていますけれども,この段階では聴くということになるのですか。 ○倉重関係官 ここは実体的な規律は,同意があればいいということになりますので,場合によっては,どこかで紙で同意していたとしても,一応それは同意をしているということにはなるのかもしれないと思うのですけれども,ここで言っているのは,家庭裁判所がきちんとその人の同意を確認してくださいと,これが手続法上の規律ですと,こういうことを申し上げている。 ○山口幹事 ですので,必ず聴かないといけませんよと。必ず聴いたときに,そこで同意しているのかどうかということを確認しないといけなくて,そこで陳述を聴いたときに,同意しませんと言われてしまいますと,15歳以上の子の場合は,15歳以上の子の同意が必要だというふうな規律にするとしますと,その同意が欠けているということで,縁組を成立させることができなくなるということであります。 ○平川委員 ですから,年齢要件の見直しのときに,どの時点で同意が取られるかどうかということに関わるということでよろしいのですよね。 ○山口幹事 はい。 ○大村部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○床谷委員 これも確認なのですけれども,資料9-1の2ページの(7)のところの,先ほど御質問があった(8)の上のエのところにあります「実親に対して親権を行使する者」という言葉の意味なのですが,これと,3ページの(13)のところにあります「実親及びその後見人等実親に対して親権を行使する者」,親権を行う者ということだと思いますけれども,ここでは後見人,成年,未成年,両方だと思いますけれども,これが入っているけれども,(7)のところのエでは「親権を行使する者」だけが挙がっているというのは,なぜこちらはこれだけで,(13)の方は後見人というものが出てきているかということの御説明を頂けますでしょうか。 ○倉重関係官 こちらは最終的には両方とも,後見人も含まれるのが正しいのだと思います。その上で,(13)の書き方なのですけれども,後見人というのは親権を行使する者ではありませんので,多分この「後見人等実親に対して行使する者」という書き方が不適切だったと,少し本来の規律よりもシンプルなものにしたかったものですから,本来(7)のエについても,最終的には成年後見人又は未成年後見人みたいなものが入ってくるのではないかと思うのですけれども,すみません,(13)と(7)エの平仄が合っていないのは,こちらのミスでございます。実際に我々が考えている規律としては,「後見人及び親権を行使する者」という表現が正しいと思っております。 ○大村部会長 今の点は整理をしていただくということで,お願いをしたいと思います。   ほかはいかがでしょうか。よろしいですか。   手続について,一つは,御議論がありましたけれども,資料9-2の(注)に書かれているような規律を付け加えるという形で,今回,提案がなされています。これに伴ってどうなるのかということについて御意見,御質問等がありましたけれども,これ自体については特に御異論はないと理解してよろしいでしょうか。   もう一つは,親権行使の禁止ということとも絡みますが,今回の2段階の審判の効果については手続的なものとして整理するということが提案されております。この点について,本来は民法の要件を修正した方がいいのではないかという磯谷委員からの御指摘がありましたけれども,これでも御了解をいただけるという趣旨だと受け止めましたが,その点についてもよろしいでしょうか。   それでは,皆さんに御協力いただきまして,第2の特別養子の成立に係る規律については,実質的にはほぼ意見がまとまったのではないかと思います。細かな修正ですとか調整等につきましては,また見直しまして,次回に御提案を頂ければと思います。   それで,先ほど少し議事を急ぎましたけれども,前回からも積み残しております資料9-2の3ページの3ですが,その他の論点ということで,養子となる者に子がいる場合についてという問題が指摘されております。養子となる者の年齢が上がることによって,その者に子がいるという場合が出てくるということになります。これに伴う問題についての対応が必要ではないかというのがここでの問題提起の趣旨かと思いますけれども,事務当局の方で,この点については何か補足の説明はありますか。 ○山口幹事 特には。 ○大村部会長 今のようなことが問題になりますが,ここにあり得る考え方が幾つか出ております。4ページの(2)で,子どもがある者は特別養子縁組を許さないというのがアとなっておりますけれども,それとは別に,養子となる者とその子どもとの間の親子関係は終了しないという考え方などが出ております。ここにつきましても御感触を伺えればと思いますが,いかがでしょうか。 ○床谷委員 これにつきましては,前回私が出しましたペーパーの中に私の意見を書かせていただいています。こういった事態は今まで日本法ではなかったので,未成年の子どもが,例えば14歳で子どもを持っている子が仮に特別養子縁組を認められたとした場合に,その0歳の子どもとの関係が特別養子縁組によって終了するのか,しないのか。私のペーパーでは,これは終了するのではないかと,親とだけではなくて子どもとも切れるのではないかという意見を書いたのですけれども,子どもとは切れなくて,親と,あるいは親を介してつながっている親の上,祖父母とか傍系の血族だけが切れるというのが事務当局の理解だと思うのです。父母の親族という捉え方のときに,父母から自分を通して下に行くのも父母の親族なので,私としては,自分を通して来ている,その父母から見ると孫も,真ん中の子が特別養子に行くと,祖父母と孫との関係が終了するのではないかというのが前回の私のペーパーの意味です。   ただ,これははっきりした考え方がないので,自分と子どもの考え方,14歳の子と0歳の子どもとの関係は直接の血縁関係ですから,14歳の子の特別養子縁組による法律効果としての実方との親族関係の終了とは関係なしに存続するということも十分考えられるし,事務当局はその説に立っておられると思いますし,前回紹介したドイツ法も,自分と直系卑属は残って,その親との関係だけが切れていくというふうな形になっていますので,これはもう解釈の問題ですけれども,実際上は,14歳の子だけが養親のところに行くというのは,0歳の子を連れた14歳の母親を子どもと一緒に養育保護したいという養親の気持ちからすると,そこが切れてしまうという解釈はその趣旨に反するだろうということで,私もこういうふうに考え直してもいいかなとは少しは思いました。   ただ,これは解釈に任せるのか,実際どうなるのかというのは十分検討した上で,もう14歳の子ですと本当に0歳の子がいる可能性はありますから,そういう場合に養子縁組の対象から外すということになるのか,14歳の子を養子にした上で,その0歳の子も孫としてついてくると考えるのか,普通養子のように,養父母と0歳の子の間には養祖父母関係は発生しないと,母親と0歳の子の関係だけは残るけれども,つなぎたければ普通養子縁組をしなさいと,0歳の子というのは14歳の子の嫡出でない子なので,普通養子縁組ができるから,14歳の子を特別養子にした上で,その14歳の子が自分の0歳の子を普通養子にすれば,養親との関係は,代襲相続なんかの関係ではつながってくるという,前回説明ではそういうふうな形で書かせていただきました。こういう議論は今まで私もしたことがないので,この会の審議で初めて問題提起していただいたので,非常に勉強させていただきました。ありがとうございました。 ○大村部会長 ありがとうございます。今の御発言は,養子となる者に子どもがいるとき,だから縁組を認めないというのがアの考え方ですけれども,その場合にも特別養子縁組を認めるとすると,養子となる者の子どもが言わばくっついた形で行くのか,実方に残るのかという点については考え方が分かれ得るということですね。それで,床谷委員からは前回,書面で御意見を頂きましたけれども,議論としては両方あり得るので,検討する必要があるだろうが,検討した上で条文化するのか,解釈論に委ねるのかということを考えておくべきではないかということかと思います。 ○棚村委員 前から,年齢を上げれば当然こういうことが起こってくると思って,余り複雑にならない方がいいとは考えていたのですけれども,セットで子どもを考えていくということになると,やはり保護が必要な子どもに特別養子の機会を減らすということになりますし,それから,認めた場合に,やはり効果としては相対的に考えていった方がいいと思うのです。つまり,その子どもにとっての利益というかそういうものと,それから,更にその後に現にいる子どもについても保護が必要であれば,それにふさわしい受け皿なり支援の在り方を考えていけばよくて,余り両者をセットにして,だから駄目だとか,セットにして何かを考えていくという絶対的な効果を持たせるべきでない,何か子どもがいるということで絶対的な効果を及ぼしていくよりも,相対的に,一人一人独立しているわけですから,それについての保護なり法律関係を別途考えていく。そうでないと,子どもがいるから,それをセットにして親族関係とかつながりを切るか,切らないかということまで考えていくと,非常に議論が錯綜したり複雑になって,年齢をこんなに上げるべきではないという話にもつながりかねないので,解釈としては,理屈としては成り立ち得ると思うのですけれども,セットとして考えないことを支持します。結局のところ,余り法律関係を複雑にせずに,子ども一人一人を基準にしながら法律関係を,条文も多分想定していないことだと思うので,そういう例外的に問題については,それぞれについて考えていくというのが一番いいのかなという感じを持っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。これまで我々が全く想定していなかった問題なので,なかなか難しいところがあろうかと思いますけれども,先ほど床谷委員から御紹介いただいた,ドイツ法は現在はどちらの考え方でしたでしょうか。 ○床谷委員 前回のペーパーでは書かせていただきましたけれども,ドイツ法では,養子縁組の成立により,養子は養親の子どもたる法的地位を得るけれども,養子となる者及びその直系卑属と従前の血族との血族関係並びに,それから生ずる権利義務が消滅するということで,真ん中の養子とその直系卑属との関係は残り,その子と実方との関係は消滅すると,孫との関係も,例えばということで書かせていただいたのは,子どもZのある未成年の母Yが養子となった場合,Zと母方の祖父母,おじ,おばらとの法律関係は消滅する。Zとその父及び父Xの血族とかY,母親自身との法律関係とか,既にいる兄弟姉妹との血族関係は消滅しないという形です。一例だけなので,全部を説明できておりませんけれども。 ○大村部会長 直ちにはどうするのがいいと決め難いところなのですが,棚村委員と床谷委員の最初のお考えというのは,個別に考えるべきだというお考えだと理解いたしました。しかし,そうでない考え方もあり得るかもしれないということで,そうでないという考えもここには挙がっているわけですけれども,ほかの方々からも何か御感触があれば伺いたいと思います。 ○木村幹事 すみません,単純な質問で申し訳ないのですけれども,この問題の所在自体をA,B,C,Dで書かれている形で説明すると,Bの子どもであるCについての法的地位の話のときに,BとCとの関係が終了するのかどうかというふうな説明をされている部分と,新しく養親になったDとの関係でCがどのような関係になるのかという見方と二つあるように思うのですけれども,ここでの書きぶりは,B,C間の関係が終了するという説明が書かれていますよね。イの書きぶりとか,違いますか,B,C間の関係は終了するかしないかという論点の書きぶりですけれども,棚村先生とか床谷先生の見方は,Dとの関係でB,Cがどういう地位に立つのかという話をされておられるような気がして,どのように理解すればいいのでしょうか。すみません。 ○床谷委員 一応,両方説明したつもりなのですけれども,現行法の普通養子の効果を類推すると,養子に行った人は養親との関係はできるけれども,自分の既にいる直系卑属と養親とは親族関係が発生しないので,ゼロ歳の子と養父母とは親族関係が発生しないと。これを及ぼすとそうなるので,14歳の子だけが特別養子に行って,ゼロ歳の子が残ってしまうと,それだと14歳の子とゼロ歳の子を一緒に保護したいという養親の,養子縁組の目的が仮にそこにあるとすれば,目的を達成できないのではないかということで,ここはもう立法論といいますか,普通養子法を及ぼすと,14歳の子とゼロ歳の子を一緒に養親と親族関係をつなぐような養子縁組にはなっていないので,そこはもう立法の問題になるから,先ほど,普通養子を使えば2段階で養父母と親族関係は発生すると説明したのは,飽くまで現行法の養子だけが養親と親族関係が発生するという解釈を前提にして,2段階方式はあり得ますという説明を。 ○大村部会長 今の床谷委員の御回答と木村幹事の質問をすり合わせると,床谷委員がおっしゃったのは,BがDの特別養子になったとしてもCとDの間に関係は生じないのかという問題。生じないというのが普通養子の現在の考え方ですね,それに対して,BとDの間で特別養子縁組が行われたからといってB,Cの関係が切れるのかという問題,木村さんはこちらをおっしゃっているということですね。 ○木村幹事 そうです。 ○床谷委員 ですから,その点についても,私は切れるのだろうと前回のペーパーでは考えたのですけれども,実父母及びその親族,血族との関係が終了するということであれば,実父母の親族としては自分と自分の下にいる子も実父母の親族なので,終了することになるのではないかということで,前回そのように考えたのですが,これは全く新しい現象ですし,ドイツ法はそこは切れないという前提で立法がされているので,そういう在り方もあるのだろうということで,今,両方あり得るという説明をさせていただきました。 ○大村部会長 お二人のおっしゃっていることを併せて考えると,BとDの間に特別養子縁組がなされたとして,Bの子どもCとDの間に親族関係は発生しないけれども,B,Cの親子関係は切れないと,そういう選択肢もありますよねということを木村さんは多分おっしゃっている。 ○木村幹事 はい,そうです。 ○大村部会長 ですから,組合せは確かに幾つかあるので,それらを挙げて,どう解することになるのかということをお考えいただくということかと思いますが,しかし,現在の普通養子の規律がこのままでいいのかどうかという問題もあって,なかなか難しいところがあるようにも思います。御意見は一応頂いたと思いますので,可能な範囲で考え方を整理していただいて,うまくまとめられるようならばまとめる。しかし,解釈論に委ねるということも,あるのかもしれませんね。ここでずっと議論しているように,Bの年齢が高いというのはそう多くない事態だろうと考えているわけですが,それで子どもがいるという事態は更に少ないということになろうかと思います。規律を置ければ,それに越したことはないですけれども,なかなか難しいということもあるかもしれない。 ○窪田委員 どちらかという意見ではないのですが,規定するのは非常に難しいし,場合によっては規定しない方がいいのではないかという感じを私自身は持っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。少し規定は難しいかもしれないし,しない方がいいのではないかというのは。 ○窪田委員 余りいろいろな形のことを掘り下げて議論するのはしたくないという例も出てくるのではないかという感じもしたものですから,それほど単純に実方の父母と孫の関係に限られない場合も出てくるのかなという気もしますので,規定するのは非常に困難ではないかという気がします。 ○大村部会長 ありがとうございます。私も先ほど最後に申し上げたことですけれども,問題状況を一定程度まで検討しつつ,あとは規定をしないという対応も含めて更に整理をしていただくということかと思います。   この点について,何かほかに御意見ございますか。よろしいでしょうか。   それでは,すみません,先をせかした割には,最後は少し予定より早いのですけれども,第1につきましては様々な御意見を頂きましたので,再度案を練り直して出していただく。第2についてはおおむね意見がまとまったと理解いたしましたので,細部を整理したものを,次回,出していただくということになろうかと思います。 ○久保野幹事 申し訳ありません,第1について,1点言い落したことを申し上げたいのですけれども,そこの論点のときに,817条の10の離縁について触れたことにつきまして,その条文が気になりましたのは,15歳以上の子について特別養子を認めることについて,先ほど最後の方に,3ページのところで,養育期間の長さ等を考慮して,その特別の必要性について,より厳格な必要性が求められるのではないか,という確認がありましたけれども,もう一つ,個人的にはそれと関連することと理解していますが,しかし性質としては別ではありますけれども,例えば16歳で特別養子縁組が成立した場合に,成年年齢に達した後の離縁とがあり得るのかどうかということを確認した上で,少し議論をしたいということです。というのは,先ほどの議論の中でも,特別養子縁組の成立後に途中で後悔するということがあり得るのではないか,ということについて少し話が出ましたけれども,離縁の可能性について,より具体的に考えてみて,次回,例外について検討させていただきたいと思います。 ○大村部会長 それは15歳以上の場合だけということですか。 ○久保野幹事 主観的な問題意識としては,15歳以上の場合が特に気になっているということでありまして,論点としては一般的なものではあるとは思います。 ○大村部会長 離縁の申立てをするのは子どもの側だけですか。 ○久保野幹事 といいますか,発言の前提としましては,今回,離縁については改正をするということは選択肢に入っていないだろうと理解していましたので,そういう意味では,それ以上立ち入って何とかというわけではありませんが,気になっていることは,15歳以上の子について,同意をどう考えるかということとも関連して,16歳の子が同意をして,あるいは14歳で虐待が見付かって,例外のルートに乗って,16歳で,例えば同意をして,特別養子が認められたとなったときに,そうですね,主に私が今発言で想定しているのは,子どもの側が,成年年齢に達した後に,離縁したいというようなことがどのぐらい認められそうか,認められなさそうかということです。 ○床谷委員 すみません,その点は現行法の解釈というか説明として,「監護」の言葉が出ているので,年齢は明確ではないけれども,監護を要しなくなる成年者については離縁はないというのが一般的な解釈だと理解しているのですが,それが変わるという理解ですか。 ○久保野幹事 いえ,むしろ変わらないのではないかと思っていまして,そうだとすると,この先は意見になってしまいますけれども,先ほど発言したときに,普通養子と特別養子,それぞれの区別という問題が根本にあると思って議論していますと申し上げたのですが,その際には,第3類型というものが作られ得る可能性との関わりを議論していったのですけれども,現時点で,第3類型は創設しないというときに,普通養子と特別養子のどちらの類型に振り分けるのが適当かということを考えたときに,成年年齢に達したら離縁の可能性がないということも踏まえると,養育期間の長さが非常に短い15歳以上の子については,特別養子の必要性ということについて,より疑問があると思っていて,類型的に例外を認めない方がいいということにならないかと考えますということです。 ○大村部会長 おっしゃったのは,現行法の離縁の要件との関係で,例外を認めるべきではないという御主張にあるわけですね。 ○久保野幹事 意見としてはそうです。そこも踏まえて,例外を認めるべきかということの議論をする必要があるのではないかという意見ということになると思います。 ○大村部会長 新たに何か離縁についての規定を設けるという御趣旨ではないということですね。 ○久保野幹事 そうです,はい。 ○大村部会長 分かりました。今の件はよろしいですか。 ○水野(紀)委員 すみません,一言だけ確認です。以前にも申し上げたことで,今まで出てきていませんので,取り上げないという御判断をなさったのだと思いつつ,一言だけ確認をさせてください。   817条の7の書きぶりです。「父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であること」という表現,これが書かれているために特別養子がスティグマ性を持ってしまっているというのが気になっておりまして,この文言は変わらないという前提で立案をされたということでしょうか。 ○山口幹事 はい。 ○水野(紀)委員 分かりました。 ○大村部会長 そのほか,いかがでしょうか。 ○杉山幹事 第1の議論のときに発言をしそびれたのですが,これまで15歳の要件を満たす時期が,申立時か審判の確定時かで二者択一で検討しているのですが,ある要件の充足を審判の確定時と明記してあるものが家事事件手続法とか民法上はないようです。確かに審判確定時に効果が発生することになっているので,審判確定時という考え方は出てくるのですが,机上の議論になりますが,審判のときには15歳未満であっても確定時には15歳になっていることもあり得,そのときの審判の扱いといった問題が出てくるような気がいたします。確定とまで明記すべきかという点も少し御検討いただけるといいかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。第1の1について申立てとするか,確定とするかというのは,今おっしゃったような手続的な諸問題との関係で困難が生じないかということも踏まえて考える必要があるかと思いますけれども,今の御指摘も踏まえて見直していただきたいと思います。   その他,何かこの機会に。 ○棚村委員 すみません,第1の審判が確定してから6か月という期間が短すぎるというお話だったのですが,これ自体も,先ほど実務ので,一からやり直さないといけないと6か月を超えるぐらいかかるというお話だったのですよね。その辺り,私も実務がどうかというのは分からないのですけれども,最初に,第1の審判と第2の審判というのは余り時間を置かない方がいいだろうということは私たちも主張させていただきました。それから,海外の例を見ると,やはり2段階に分かれているアメリカなんかでも,両方の連続性みたいなものを確保するために,こういう場合には2か月の間にこうやる,その後の手続も2か月の間にやるというので,やはり1年を超えないようにしているのですね。ですから,今回の実務で,かなり厳しいというときも,やはりもう一度,児相長がきちんと,余りにも時間がかかるようであれば,迅速にできるだけ連続性を保って処理をするという考え方でもって,やはり整理をしていただきたいので,私も特に6か月に拘泥するわけではないのですけれども,基本的にはやはりほかの国の例を見ても,かなり迅速に処理をしようという傾向はもうはっきりしているので,その辺りのところで,6か月を基準にしながら,1年というのが妥当なのか,事務当局でも少し検討していただいて,できれば私は6か月という案は,それほど不合理な,不当な期間制限ではなくて,やはり養親になろうとする者が申し立てた場合もそうですけれども,円滑に手続が進めば特に問題はないのだと思うのですけれども,それをやはりできるだけ円滑に連続性を保ちながら進められるような合理的な期間設定ということでお考えいただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。御意見として承って,検討していただきたいと思います。   ほか,よろしいでしょうか。   それでは,次回のスケジュールをお願いします。 ○山口幹事 次回は2週間後,1月29日火曜日の午後1時30分からとさせていただきます。場所なのですけれども,今日とまた場所が変わりまして,東京地方検察庁の総務部会議室ということでして,この建物の15階ということになります。 ○大村部会長 それでは,次回もまた,どうぞよろしくお願い申し上げます。   本日も活発に御意見の交換を頂きまして,ありがとうございました。これで閉会としたいと思います。 -了-