法制審議会 第183回会議 議事録 第1 日 時  平成31年2月14日(木)   自 午後1時29分                         至 午後4時01分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題   信託法の見直しに関する諮問第70号(公益信託部分)について   会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する諮問第104号について   戸籍事務へのマイナンバー制度導入に係る戸籍法等の改正に関する諮問第105号について   特別養子制度の見直しに関する諮問第106号について   民法及び不動産登記法の改正に関する諮問について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○福原司法法制課長 それでは,定刻となりましたので,ただいまから法制審議会第183回会議を開催いたします。   本日は,委員20名及び議事に関係のある臨時委員4名の合計24名のうち,23名に御出席いただいておりますので,法制審議会令第7条に定められた定足数を満たしていることを御報告申し上げます。   また,本日はやむを得ない所用によりまして,山下法務大臣が本審議会に出席できませんので,大臣から託されております挨拶を辻法務事務次官が代読いたします。 ○辻事務次官 法務事務次官の辻でございます。よろしくお願いいたします。   ただいま申し上げましたように,大臣はやむを得ない公務のために出席できませんので,託されました挨拶を代読させていただきます。   法制審議会第183回会議の開催に当たり,一言御挨拶を申し上げます。   委員及び幹事の皆様方におかれましては,御多用中のところ本会議に御出席いただき,誠にありがとうございます。   また,この機会に,法制審議会の運営に関する皆様方の日頃の御協力に対し,厚く御礼申し上げます。   さて,本日は,御審議をお願いする議題が五つございます。   まず,平成16年9月に諮問いたしました,「信託法の見直しに関する諮問第70号」のうち,公益信託に関する部分についてでございます。   この諮問については,「信託法部会」において調査審議が行われ,平成18年2月の法制審議会第148回会議において信託法改正要綱を御決定いただき,私益信託に関する事項について御答申を頂いております。今回は,残りの公益信託に関する事項を対象として要綱案が取りまとめられ,本日,中田裕康部会長から報告がされるものと承知しております。   次に,平成29年2月に諮問いたしました,「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する諮問第104号」についてでございます。   この諮問については,「会社法制(企業統治等関係)部会」において調査審議が行われた結果,要綱案が取りまとめられ,本日,神田秀樹部会長から報告がされるものと承知しております。   この諮問は,平成27年5月に施行された会社法の一部を改正する法律の附則に設けられた施行後2年で更に検討を行う旨の検討条項の趣旨に従って,近年における社会経済情勢の変化等に鑑み,社外取締役を置くことの義務付けなど,企業統治等に関する規律の見直しの要否を検討することなどをお願いしたものであり,会社法制(企業統治等関係)部会において,これらの課題について精力的に調査審議をしていただいたと伺っております。   次に,平成29年9月に諮問いたしました,「戸籍事務へのマイナンバー制度導入に係る戸籍法等の改正に関する諮問第105号」についてでございます。   この諮問については,「戸籍法部会」において調査審議が行われた結果,要綱案が取りまとめられ,本日,窪田充見部会長から報告がされるものと承知しております。   この諮問は,国民の利便性の向上及び行政運営の効率化の観点から,戸籍事務にマイナンバー制度を導入し,国民が行政機関等に対する申請,届出その他の手続を行う際に戸籍謄本等の添付省略が可能となるようにするとともに,戸籍の記載の正確性を担保するための規定の整備等,戸籍法制の見直しを行う必要があることから行ったものであり,戸籍法部会において,これらの課題について精力的に調査審議をしていただいたと伺っております。   次に,平成30年6月に諮問いたしました,「特別養子制度の見直しに関する諮問第106号」についてでございます。   この諮問については,「特別養子制度部会」において調査審議が行われた結果,要綱案が取りまとめられ,本日,大村敦志部会長から報告がされるものと承知しております。   この諮問は,実方の父母による監護を受けることが困難な事情がある子の実情等に鑑み,特別養子制度の利用を促進する観点から,民法の特別養子に関する規定等について見直しを行う必要があることから行ったものであり,特別養子制度部会において,これらの課題について精力的に調査審議をしていただいたと伺っております。   最後の議題は,「民法及び不動産登記法の改正に関する諮問」についてでございます。   不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない,又は判明しても連絡がつかない所有者不明土地は,民間の土地取引や公共事業の用地買収,森林の管理など様々な場面において土地利用を妨げており,その対策は,政府全体として取り組むべき重要な課題です。   政府は,いわゆる骨太の方針2018において,所有者不明土地の対策として,相続登記の義務化等を含めて相続等を登記に反映させるための仕組みや,登記簿と戸籍等の連携等による所有者情報を円滑に把握する仕組み,土地を手放すための仕組み等について検討し,2020年までに必要な制度改正の実現を目指すこととしています。   法務省においては,この政府方針に基づき,2020年中に,民法や不動産登記法等の改正を実現することを目指し,検討を進めておりますが,この改正を行うに当たって法制審議会の御意見を賜る必要があると考えられますので,御審議をお願いするものでございます。   それでは,これら五つの議題についての御審議・御議論をよろしくお願い申し上げます。   代読でございました。 ○福原司法法制課長 法務事務次官は公務のため,ここで退席させていただきます。           (法務事務次官退室) ○福原司法法制課長 ここで報道関係者が退室しますので,しばらくお待ちください。           (報道関係者退室) ○福原司法法制課長 では,井上会長,お願いいたします。 ○井上会長 井上でございます。本日はよろしくお願いいたします。   まず,審議に入る前にお諮りしたいことがございます。   本日,国会対応等の都合により小野瀬幹事及び筒井関係官が審議中に席を離れられる見込みです。ただ,今回の審議の内容に鑑みますと,そのお二人が抜けられた後,堂薗民事法制管理官及び杉浦民事第一課長のお二人に審議に加わっていただいて,いろいろ御説明を伺うのがよいと思いますので,関係官として本審議会の審議に参加していただきたいと考えますけれども,よろしいでしょうか。   (一同異議なし)   ありがとうございます。   それでは,お二人に関係官として本審議会の審議に参加していただくということにしたいと思います。よろしいですか。   それでは,本日の審議に入りたいと思います。   先ほどの法務大臣の御挨拶にもございましたように,本日は議題が五つございますので,いつにも増して審議に御協力を頂きますようお願い申し上げます。   まず,「信託法の見直しに関する諮問第70号」,これは公益信託部分でございますが,御審議をお願いしたいと存じます。   初めに,信託法部会における審議の経過及び結果につきまして,同部会の部会長を務められました中田裕康臨時委員から御報告を頂きたいと存じます。   中田部会長,それでは,報告者席にお移りいただけますか。よろしいですか。   それではお願いします。 ○中田部会長 信託法部会の部会長を務めました,早稲田大学の中田でございます。   本部会では,後ほど申し上げます経緯によりまして,旧信託法の中の公益信託の部分について,平成28年6月以来,約2年半にわたって調査審議を行い,昨年12月18日に開催されました第55回会議におきまして,「公益信託法の見直しに関する要綱案」を決定しました。   本部会における審議の途中経過につきましては,昨年2月の第180回法制審議会総会におきまして中間報告をさせていただきましたが,本日は改めて,現在の公益信託制度の概要及び要綱案の決定に至るまでの審議経過を簡単に御説明した上,要綱案の概要について御報告させていただきます。   資料民1を御覧になりながらお聞きいただければと存じます。   まず,現在の公益信託制度の概要を申し上げます。   公益信託は,委託者が受託者に対し,契約や遺言によって金銭を信託し,受託者がそれを学生や研究者などの受給権者に奨学金や助成金として給付するというものが代表例です。公益信託は主務官庁の監督に属すと定められており,その目的が奨学金の支給であれば文部科学省,自然環境の保全であれば環境省といった主務官庁が,公益信託の許可や監督を行っています。このほか信託管理人という制度もあり,弁護士等が信託管理人として信託目的がきちんと達成されるよう内部で監督することが多くなっていますが,これは現行公益信託法上は必置とはされていません。   このような公益信託に関する規律は,大正11年に制定された旧信託法の中に既にありました。旧信託法は平成18年に全面的に見直され,新信託法となったのですが,公益信託の部分については,次のような経緯で検討が先送りになりました。   すなわち,信託法改正につきまして,平成16年9月に法務大臣による諮問第70号が発せられました。これは「現代社会に広く定着しつつある信託について,社会経済情勢の変化に的確に対応する観点から,受託者の負う忠実義務等の内容を適切な要件の下で緩和し,受益者が多数に上る信託に対応した意思決定のルール等を定め,受益権の有価証券化を認めるなど,信託法の現代化を図る必要があると思われるので,その要綱を示されたい。」というものでした。   これを受けて信託法部会が設置され,平成16年10月から30回にわたる調査審議が行われ,平成18年2月の法制審議会第148回総会において「信託法改正要綱」が決定されました。もっとも,当時,民間の資金を利用して公益活動を行うという点で,公益信託と社会的に同様な機能を営む公益法人制度の全面的な見直し作業が並行して進んでいましたことから,公益信託の部分の改正については,公益法人制度の改革の内容の確定や実施状況を見た上で取り組むこととされました。このため,信託法改正要綱は私益信託の部分について答申するものとなりました。これに伴い,信託法部会は公益信託制度について,将来,調査審議を行うために休会とするという取扱いがされました。   その後,平成18年5月に公益法人関連3法,同年12月に新信託法が成立しましたが,旧信託法のうち公益信託の部分については,ただいま申し上げました経緯から,実質的な改正がされませんでした。そこで,新信託法の衆参両院の附帯決議において,公益信託制度について,公益法人制度改革の趣旨を踏まえつつ,遅滞なく所要の見直しを行うこととされました。   こうして公益法人制度改革が先行しましたが,平成25年11月に旧制度下で設立された公益法人が新制度下での公益社団法人,公益財団法人に移行する期間が満了するなど,新制度が定着してきました。   このような状況の下,平成28年6月に信託法部会が再開され,平成29年12月に公益信託法の見直しに関する中間試案を取りまとめ,パブリック・コメントの手続に付されました。その後,同部会はパブリック・コメントに寄せられた意見も踏まえて更に調査審議を行い,昨年12月18日の第55回会議で全会一致をもって「公益信託法の見直しに関する要綱案」を取りまとめました。   続きまして,要綱案のポイントについて御説明いたします。   ポイントは3点ございます。   1点目は,公益信託の信託事務及び信託財産の範囲の拡大です。   現行公益信託法の下では,主務官庁による許可の指針として,「公益信託の引受許可審査基準等について」という平成6年の公益法人等指導監督連絡会議の決定があります。この基準があることなどから,公益信託の利用は,委託者が金銭を信託財産として受託者である信託銀行に拠出し,信託銀行がそれを用いて,不特定多数の学生に対する奨学金の支給や研究者等に対する研究費の助成を行うというものに事実上限定されています。これを見直し,公益信託の信託財産として金銭以外の財産,例えば不動産や有価証券,美術品などの動産も許容し,公益信託の受託者が奨学金の支給や研究費の助成等に加えて古民家の保存や自然環境の保全,美術館や学生寮の運営等の公益信託事務を行うことを許容することとしております。この点につきましては,主に要綱案の第9の2(1)及び3(1)が対応しています。   2点目は,公益信託の受託者の範囲の拡大です。   これまでの公益信託の受託者は,許可審査基準等の存在により,ほぼ信託銀行に限られてきました。しかし,公益信託の信託事務や信託財産の範囲を拡大する場合には,それを遂行する能力を有する多様な受託者を確保するため,受託者の担い手を信託銀行以外の法人や企業にも拡大する必要がある,このことについて,信託法部会では異論がありませんでした。   他方,公益信託事務が適正かつ安定的に実施されることも重要であり,公益信託事務の担い手としての受託者の範囲をどのように画すべきかという点について信託法部会で活発な審議がされ,またパブリック・コメントにおいても多くの意見がありました。この点につきましては,要綱案の第4の1(1)において「公益信託の受託者は,公益信託事務の適正な処理をするのに必要な経理的基礎及び技術的能力を有するものでなければならないものとする。」としています。すなわち,信託会社や法人などという形式的な基準によって,その範囲を画するのではなく,必要な経理的基礎及び技術的能力という実質的な基準によって判断することとし,それを満たしていれば法人であれ,自然人であれ,受託者となり得ることとしています。   3点目は,主務官庁による許可・監督制の廃止です。   現行公益信託法の下では,先ほど申しましたとおり,奨学金支給なら文部科学省,自然環境保全なら環境省というように,それぞれ所管の主務官庁が公益信託の許可や監督をする仕組みが採られています。しかし,公益法人制度において,平成18年改正により主務官庁制が廃止されたこととの整合性を図り,公益信託においても主務官庁制を廃止することについて信託法部会では異論がありませんでした。   そこで要綱案では,新たな公益信託の認可やその監督は民間の有識者から構成される委員会の意見に基づいて,特定の行政庁が統一的に行うものとすることを提案しています。それに伴い,新たな公益信託においては信託管理人を法令上の必置機関とし,信託内部の自律的ガバナンスを行政庁が補完する仕組みとすることとしています。この点につきましては,主に要綱案の第5及び第7が対応しています。   以上のポイントとなる点のほか,要綱案においては新たな公益信託が利用者にとってより使いやすい仕組みとなることを重視する観点から,税法や信託業法等の関連法令も視野に入れつつ様々な提案をしています。すなわち,公益信託の認可や監督,ガバナンスの具体的な仕組み,公益信託の変更及び併合・分割,公益信託の終了等の幅広い事項について,信託法部会の調査審議を集約した案を提示しております。   公益信託法の見直しに関する要綱案の概要は以上のとおりでございます。よろしく御審議のほど,お願い申し上げます。 ○井上会長 どうもありがとうございました。   それでは,ただいまから御質問,御意見をお伺いしたいと思いますが,二段階に分けまして,ただいまの御報告及び要綱案の全般につきまして,まず,御質問がある方は挙手の上,御発言を願いたいと思います。 ○岩間委員 3点目の主務官庁制の廃止のところで,特定の行政庁が行う方向に改正するということですが,これは具体的にどういうものをイメージされているのかということと,第7の2に,都道府県知事もそれに該当するということですが,実際上はどちらがメーンになるというふうにお考えでしょうか。 ○堂薗民事法制管理官 まず,統一的な行政庁につきましては,現在,政府部内において調整中ということでございます。   例えば公益法人であれば内閣府が認定・監督を行っているわけでございますが,公益信託につきましても,そのような制度を参考にして認可・監督を行っていくということが想定されているところでございます。   ○中田部会長 国の行政庁と都道府県知事の仕分けでございますけれども,第7の「2 行政庁の区分」というところに,そのことが書いてあります。(1)の方が国の行政庁で,「公益信託事務を2以上の都道府県の区域内において処理する旨を信託行為で定めるもの」と,それから,国の事務等と密接な関連を有するものであり,それ以外のものが(2),つまり一つの都道府県の中でだけ公益信託事務を行うものについては,当該公益信託事務が処理される都道府県の知事ということになります。   そのどちらが多いかということは,公益法人制度の方で見ますと,やはりそれぞれございますが,それぞれかなりのボリュームがあるというところです。 ○井上会長 それでよろしいですか。   ほかに御質問ございますでしょうか。   特に御質問がないようですので,御意見を伺うということにしたいと思います。   御意見のある方は挙手の上,御発言を願います。 ○佐久間委員 ありがとうございます。   まず,今回の見直しによりまして,適正な公益信託の利用が促進されるということを期待してございます。   その上で,既存の公益信託があるという現実を踏まえまして,既存の公益信託に新たな負担が生じるということは望ましくないと考えます。したがいまして,既存の公益信託については自動的な移行,又は簡素な移行手続というのが是非必要だと考えますので,御配慮のほど,お願いしたいと思います。 ○井上会長 これは御意見としてお伺いしておくことにいたします。   ほかに御意見ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。   特には御発言のお申出がないようですので,採決に移らせていただきたいと存じますけれども,御異議ございませんでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○井上会長 よろしいでしょうか。   それでは,御異議ないようですので,諮問第70号(公益信託部分)につきまして,信託法部会から報告されました要綱案のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いします。           (賛成者挙手) ○井上会長 よろしいですか。それでは,手を下ろしていただいて結構です。 ○福原司法法制課長 採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は18名でございますところ,全ての委員が御賛成ということでございました。 ○井上会長 採決の結果,全員の方が賛成されましたので,信託法部会から報告されました要綱案は原案のとおり採択されたものと認めます。   採択された要綱案につきましては,会議終了後,法務大臣に対して答申することといたします。   中田部会長におかれましては,これは約2年6か月,非常に多岐にわたる論点につきまして調査審議をしていただきまして,ありがとうございました。   それでは,次に,「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する諮問第104号」につきまして,御審議をお願いいたします。   初めに,会社法制(企業統治等関係)部会における審議の経過及び結果につきまして,同部会の会長を務められました神田秀樹臨時委員から御報告を頂きたいと存じます。   神田さん,それではお願いします。 ○神田部会長 ありがとうございます。   会社法制(企業統治等関係)部会の部会長を務めさせていただきました神田と申します。   諮問第104号につきまして,先月16日に開催されました会社法制(企業統治等関係)部会の第19回会議におきまして,「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する要綱案」を決定いたしましたので,この部会における審議の経過と要綱案,それから,これに合わせて行われました附帯決議の概要につきまして,御報告をさせていただきます。   まず,審議の経過ですけれども,諮問第104号の内容は,「近年における社会経済情勢の変化等に鑑み,株主総会に関する手続の合理化や,役員に適切なインセンティブを付与するための規律の整備,社債の管理の在り方の見直し,社外取締役を置くことの義務付けなど,企業統治等に関する規律の見直しの要否を検討の上,当該規律の見直しを要する場合にはその要綱を示されたい。」というものでございます。   この諮問は,平成26年に会社法の改正があった際に,その附則におきまして,先ほど大臣からも御指摘があったと思いますが,いわゆる検討条項が設けられたことなどの事情を踏まえたものと理解しております。具体的には,平成26年の会社法の一部を改正する法律の附則第25条に,「政府は,この法律の施行後2年を経過した場合において,社外取締役の選任状況,その他の社会経済情勢の変化等を勘案し,企業統治に係る制度の在り方について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて社外取締役を置くことの義務付け等,所用の措置を講ずるものとする。」という検討条項が設けられておりました。また,平成26年改正法の施行の後,コーポレート・ガバナンスに対する関心の高まりとともに,社外取締役を置くことの義務付け以外にも様々な検討課題が生じてまいりました。諮問第104号は,これらの事情を背景として,会社法における企業統治等に関する規律の見直しを求めるものであったと理解しております。   この諮問を受けまして,平成29年2月の法制審議会178回会議におきまして,会社法制(企業統治等関係)部会が設置されました。この部会におきましては,平成29年4月から調査審議を開始いたしまして,昨年,平成30年2月に「会社法制(企業統治等関係)の見直しに関する中間試案」を取りまとめ,この会議にも御報告させていただいたところでございます。中間試案につきましては,事務当局において,その後,平成30年2月28日から4月13日までの約1か月半の間,パブリックコメントの手続をとりました。その後,中間試案に対して寄せられた意見も踏まえ,更に調査審議を重ねまして,先月16日に開催されました第19回会議におきまして,要綱案を決定するとともに附帯決議を行いました。お手元の資料で申しますと,要綱案が民2-1,それから附帯決議の方は民2-2でございます。   以上が部会における審議の経過です。   次に,要綱案と附帯決議の内容につきまして,概要を御説明させていただきます。   要綱案,資料の民2-1ですけれども,3部構成になっております。第1部が「株主総会に関する規律の見直し」,第2部が「取締役等に関する規律の見直し」,第3部が「その他」ということであります。この項目に沿って,簡単に御説明をさせていただきます。   まず,「第1部 株主総会に関する規律の見直し」でございます。   要綱案1ページ以下に,「第1 株主総会資料の電子提供制度」とあります。   これは,株主に対してインターネットを利用して株主総会資料を提供することを可能とする制度を創設するものであります。インターネットを利用して株主総会資料を提供することが可能になれば,株式会社は,印刷や郵送のために生ずる時間や費用を削減することができます。また,印刷や郵送が不要になるということに伴いまして,株主に対して従来よりも早期に充実した内容の株主総会資料を提供することが可能になるものと考えられます。   現行の会社法においては,株主総会資料は株主に対して書面によって提供することが原則とされておりまして,インターネットを利用して提供しようといたしますと,株主の個別の承諾を得なければならないとされています。そのため,上場会社においては,この方法はほとんど採用されておりません。そこで,要綱案におきましては,株式会社が定款でその旨を定めることによって,株主の個別の承諾を得ないでも,インターネットの利用によって株主に株主総会資料を提供することができるようにしています。   具体的には,株主総会資料を自社のホームページ等のウェブサイトに掲載し,株主に対して,このウェブサイトのアドレス等を書面によって通知すれば,これらの資料を適法に提供したものと取り扱うということにしております。株主総会資料の電子提供を開始する日,すなわちウェブサイトにいつから掲載すべきかということですけれども,部会でも論点になりましたが,要綱案では,株主総会の日の3週間前までに行うものとしております。   他方で,資料で申しますと3ページの4にありますように,インターネットを利用することが困難な株主の利益に配慮し,この制度の創設後も,書面の交付を希望する株主は,会社に対して,ウェブサイトに掲載された資料を書面によって交付することを請求することができるようにしております。   なお,上場会社など,類型的に見て,その株式の売買が頻繁に行われ,不特定多数の株主が存在することが予想される,振替株式を発行する会社につきましては,投資家が議決権の行使に際して株主総会資料の内容を検討する期間を十分に確保する必要性が高いと考えられますので,電子提供制度の利用を義務付けることとしております。   また,4ページの5にありますように,電子提供措置につきましては,サーバーのダウンや,ハッカーやウイルス感染等による改ざんなどが生ずる場合があり得ます。このような場合に,常に適法な株主総会資料の提供がなかったものとするのは,株式会社にとって酷であり,また,株主を無用に混乱させることにもなると考えられます。そこで,電子提供措置の中断が生じたとしても,一定の要件を満たす場合には,電子提供措置の効力には影響を及ぼさないものとしております。   次に,5ページ以下の「第2 株主提案権」であります。   株主提案権の濫用的な行使を制限するための措置を設けるというものにしております。近年,1人の株主が膨大な数の議案を提案するなど,株主提案権の濫用的な行使と思われる事例が発生しているということが問題として指摘されております。そこで,株主が同一の株主総会において提案することができる議案の数を10までに制限し,また,株主による不当な目的等による議案の提案を制限する規定を新たに設けることとしております。   以上が,第1部です。   続きまして,第2部は,「取締役等に関する規律の見直し」であります。   まず,取締役に対する報酬等が,取締役に対して適切な職務執行のインセンティブを付与するものとして機能するように,取締役の報酬等に関する規律について,6ページ以下にあるような見直しをしております。   具体的には,上場会社等の取締役会は,取締役の報酬等に関する定款又は株主総会の決議において,個人別の報酬等の内容が定められていない場合には,その内容についての決定方針を決定しなければならないものとすること,取締役の報酬等に関する議案について,その報酬等が相当であることの理由に関する株主総会における取締役の説明義務の範囲を拡大すること,株式報酬等に関する株主総会の決議事項等を見直すこと,さらに,事業報告における情報開示を充実させることなどの見直しをしております。   次に,これもやはり取締役等への適切なインセンティブ付与ということですけれども,9ページ以下にありますとおり,会社補償に関する規律や役員等賠償責任保険契約に関する規律を整備するものとしております。ここでは,役員等に対する責任追及等に関して役員等が要した防御費用や賠償金を株式会社が補償することを会社補償と呼んでおります。会社補償や役員等賠償責任保険,これはいわゆるD&O保険などと呼ばれておりますけれども,これらには,役員等として優秀な人材を確保するとともに,役員等が損害賠償責任を負うことを恐れてその職務の執行が萎縮することがないように適切なインセンティブを付与するという意義があると考えられます。   しかし,現行の会社法には,これらに関する規定はありません。株式会社が会社補償をしたり,D&O保険契約を締結したりする場合には,どういう手続が必要となるか等は解釈に委ねられておりますけれども,これらの解釈は必ずしも確立されているとは言えません。会社補償及びD&O保険につきましては,その構造上,利益相反性が認められることから,会社法に規定を設けて適切な運用がされるようにすべきであるという指摘があり,これを踏まえ,要綱案におきましては,会社補償をすることができる費用等の範囲を明確にし,相当と認められる額の防御費用や,役員等が善意でかつ重過失がない場合の賠償金等に限定するとともに,会社補償の内容,あるいはD&O保険の内容を決定するには,取締役会の決議,あるいは取締役会のない会社では株主総会の決議によらなければならないものとし,かつ,事業報告において一定の情報開示を求めるものとしております。   次に,11ページ以下,「第2 社外取締役の活用等」であります。   まず,いわゆるマネジメント・バイアウトなど,株式会社と取締役の利益が相反する状況にあるような場面では,正に社外取締役による監督が期待され,社外取締役が経営陣から独立した立場で取引の交渉その他の対外的行為を伴う活動をすることが相当な場合もあり得ると考えられます。しかし,他方で,業務を執行しないということが社外取締役の社外要件とされております。このため,このような活動を行った社外取締役はその要件に該当しないこととなる,すなわち社外要件を満たさなくなるのではないかという懸念が指摘されております。そこで,一定の場合には,取締役会の決議により業務執行を社外取締役に委託することができ,委託された業務を執行したとしても,社外取締役としての要件に該当しないことにはならないということを規定上明確にすることとしております。   次に,社外取締役を置くことの義務付けについてであります。   我が国の資本市場が信頼されるようにするために,会社法におきまして社外取締役の選任を義務付け,上場会社等については社外取締役による監督が最低限保障されているということを明らかにすることが相当と考えられます。また,平成26年改正後,実務におきましては社外取締役の選任が進んでおりまして,社外取締役の有用性は広く認知されてきていると言えると思います。こういった事情等を踏まえ,上場会社等について社外取締役を置くことを義務付けるものとしております。   最後に,第3部は,その他の規律の見直しであります。   資料の12ページ以下にありますのは,社債の管理に関する規律の見直しです。社債管理者につきまして,これは現在ある制度ですけれども,権限が広範であり,また,義務,責任及び資格要件が厳格であり,なり手の確保が難しいという指摘を踏まえまして,社債管理者とは別の社債管理者よりも裁量が限定された社債管理補助者というものを設け,社債管理補助者に社債の管理の補助を委託することができるという制度を新しく設けようとするものであります。また,社債実務におけるニーズを踏まえて,社債権者集会の決議によって社債の元利金の支払債務を減免することができるものとしております。   次に,17ページ以下にありますのが株式交付という制度です。   通常の募集株式の発行等の手続によらないで,自社の株式を対価として,他の株式会社を子会社とすることができる制度を新しく設けようとするものであります。これは,企業買収に関する手続の合理化を図るものであります。また,要綱案の末尾になりますけれども,26ページの5にありますとおり,現在の会社法では,成年被後見人及び被保佐人は,欠格条項により取締役等に就任することはできないとされております。そのような欠格条項は削除し,成年被後見人や被保佐人であっても,一定の手続によって取締役等に就任できるものとしております。   以上のほか,第3部におきましては,取締役等の責任追及等の訴えに係る訴訟における和解に監査役等の同意を必要とすることや,株主による議決権行使書面の閲覧等の請求に関する拒絶事由等を設けることなどの見直しをするものとしております。   以上において御説明させていただきました要綱案に盛り込まれなかったものの,部会において議論があった事項について,附帯決議を行っております。   資料の民2-2を御覧いただければと思います。   先ほど申し上げましたとおり,株主総会資料の電子提供制度につきまして,電子提供措置を開始する日は,株主総会の3週間前の日としております。部会におきましては,株主による議案の十分な検討時間を確保するためには,より早期に情報提供がされることが望ましいという意見もございました。そこで,附帯決議の1点目といたしまして,金融商品取引所の規則において,上場会社は電子提供措置を株主総会の日の3週間前よりも早期に開始するよう努める旨の規律を設ける必要があるとの意見を付しております。   また,部会におきましては,株式会社の代表者の住所が記載された登記事項証明書に関する規律の在り方についても議論がございました。そこで,附帯決議の2点目といたしまして,法務省令におきまして,株式会社の代表者から申出があった場合において,一定の要件を満たすときは,登記官はその代表者の住所を登記事項証明書に表示しない措置を講ずることができるものとするとともに,インターネットによる登記情報の提供においては,株式会社の代表者の住所に関する情報を提供しないものとする旨の規律を設ける必要があるという意見を付しております。   附帯決議の3点目は,今,御説明いたしましたような規律の円滑かつ迅速な実現のため,関係各界の真摯な努力を要望するというものでございます。   以上,要綱案及び附帯決議の概要について御説明をさせていただきました。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。 ○井上会長 どうもありがとうございました。   それでは,ただいまの御報告及び要綱案並びに附帯決議の全般につきまして,ここでも,まず,御質問からお伺いしたいと思います。   御質問がおありの方は挙手の上,御発言願います。 ○大塚委員 どうもありがとうございました。   2点,質問させてください。   1点はシンプルな質問なんですけれども,株主の提案できる議案の数を10までとするというくだりですけれども,この10という数字には何か根拠があるのかどうかですね。データ的な後ろ盾とか,もしおありでしたらば教えていただきたいのと,もう1点は,社外取締役の業務執行の委託に関して,一定の要件の下でということでございますけれども,この一定の要件の下でというのをもうちょっと具体的に教えていただければと思います。 ○神田部会長 ありがとうございます。   1点目の御質問ですけれども,部会におきましては,10個が適切ではないか,5個が適切ではないか,あるいは更にもう少し少ない数にすべきではないか,といったいろいろな御意見がありました。,最終的に10個という結論に落ち着きましたのは,一つには,実際にこれまで行われている株主提案における議案の数を見ますと,なかなか10に達することはない一方で,濫用的と思われるものは大きくそれを超えているという現状があります。   それから,要綱案には含まれているのですけれども,役員等の選任及び解任の議案をどう数えるかという問題があります。例えば,A,B,C,Dという人を取締役に選任するという提案を,A,B,C,Dで四つに数えてしまいますと非常に増えてしまいますので,要綱案では,選任なら選任で,人数にかかわらず全部で一つと数えることにしております。したがって,選任,解任と,あと会計監査人の不再任というのがあるのですけれども,それぞれは最大で1個として計算されますので,株主提案の数の上限まで提案するといたしますと,それら以外にあと七つということになります。   最後に,定款変更議案の数え方に関する問題がございます。これまでの株主提案では,定款変更としてたくさんの項目を提案するという例がございます。これについて要綱案は,複数の事項に関する定款変更の提案を一つの提案と数えるための要件を厳しめにしておりますので,その結果,例えば,二つの事項についての定款変更の提案は二つと数えられることもあるというようなことを勘案しまして,株主提案の数の上限は5では少ないということになり,10に落ち着いたと理解しております。   それから,2点目の御質問ですけれども,これは要綱案の11ページの下から4行目で,「業務執行の社外取締役への委託」に記載のとおり,業務を執行することによって株主の利益を損なうおそれがあるときに,その都度,取締役会の決定によって当該株式会社の業務を執行することを社外取締役に委託することはできるものとするということでございます。   ポイントは二つあると思いまして,一つは,その都度,取締役会の決定で委託しなければいけない。ですから,日常的に,一般的に委託することはできません。二つ目は,どういう行為が問題になるかに応じて違ってくるということではないかと思います。マネジメント・バイアウト,MBOと呼ばれていますけれども,そういう場合につきましては,例えば,そのMBOにおける株式の取得の価格が低過ぎないかどうか,あるいはMBOの条件について,業務執行者から独立した立場で,相手方と交渉したり,判断したりしてくださいというような形で,具体的に委託することが考えられます。   別の例で申しますと,例えば,親子会社間取引の場合で,その子会社が上場会社であるという場合を考えますと,それが公正な条件で行われるかどうかということについて検討をしてくださいという形で具体的な委託が行われる。つまり,どういう行為が問題になっているかによって異なってくるということではないかと思います。 ○井上会長 よろしいでしょうか。 ○大塚委員 ありがとうございます。 ○井上会長 ほかに御質問ございますでしょうか。 ○大石委員 詳しい説明をありがとうございました。   私は,その附帯決議のところをちょっと伺いたいんですけれども,この部会でこういう附帯決議がなされて,ここで審議会として,またこれを認めるということの意味なんですが,特定の期限を区切られて,こうしなさいということを書いてあるわけでもなく,しかし,この1番目のところに書いてありますように,あるところにおいて,こういう規律を設ける必要があるというふうな形での決議ということの法律的な性質がよく分からないんです。多分こういうものも従来から設けられているんだと思いますが,その拘束力といったものは一体どういう形で考えておられるのかをちょっと伺えれば幸いです。 ○堂薗民事法制管理官 まず,今回の附帯決議につきましては,基本的に法務省令や金融商品取引所規則における対応を求めるものでございますので,それ自体は,仮に答申を頂いた場合に作成される法律案の中に盛り込まれるわけではございません。基本的には,法制審議会において,関係の部署に対して要望をするというような性質のものということになろうかと思います。 ○井上会長 よろしいですか。   ○大石委員 つまり要望を伝えるという意味でのものですか。 ○井上会長 それを関係のところにお伝えして,善処を求めるということですよね。 ○大石委員 なるほど。決議の意味がよく分からないので伺いました。非常に公法的な質問で申し訳ございません。 ○井上会長 ごもっともな御質問かと思いますけれども。   ほかに御質問,ございませんでしょうか。 ○高山委員 一つ,確認の意味で質問させてください。   社外取締役を置くことの義務付けについては,もちろん全く異存はございません。   その部会での議論の状況をちょっと教えていただきたいんですが,その設置を義務付ける会社の範囲について御議論があったのかどうか,もう1点は,今回は独立性を問わないという形についても,もし議論がございましたら教えていただければと思います。 ○神田部会長 社外取締役の設置を義務付ける会社の範囲と独立性の点は,部会では余り議論になりませんでした。   平成26年の会社法の改正のときに社外取締役の設置の義務付けが議論されまして,義務付けまではいかなかったのですけれども,義務付けが望ましいという規定が入り,先ほど申し上げました検討条項も附則に設けられていまして,そのときの議論を引き継いで,今回議論したということです。   したがいまして,今回の部会の議論は主として義務付けをするかどうか,言わば平成26年改正のときの規定を一歩進めるかどうかというところに焦点が当たりまして,その点については意見は分かれたのですけれども,最終的には部会として全員一致というのでしょうか,ということで,義務付けを提案するに至ったということでございます。 ○高山委員 分かりました。ありがとうございます。 ○井上会長 ほかに御質問があれば。よろしいですか,御質問。 ○山根委員 ありがとうございます。   ちょっと今の繰り返しになるんですけれども,社外取締役の選任とか業務の中身というか,そういうのに当たっての課題といったものについては,また別途上がってくるようであれば検討するというようなことでよろしいのでしょうか。 ○神田部会長 これは制度の問題と運用の問題があると思うのですけれども,会社法で規定を設けるのは制度ですので,今御指摘のような点は,主として,私は,その制度をどう運用していくのかというところの問題だと思っております。 ○井上会長 御質問がほかになければ,御意見をお伺いすることにしたいと思うのですが,よろしいですか。   では,御意見のある方は挙手の上,御発言願います。 ○佐久間委員 ありがとうございます。   まず,精力的に企業の現場実態も踏まえて見直しに取り組んでいただきまして,感謝申し上げたいと思います。中身としましても,時宜にかなったものになっていると考えてございます。   ただ一方で,世の中の動きというのは,御案内のとおり極めて速い,加速的に速くなっているということを踏まえますと,本日,本会議で了解が得られたならば,速やかに立法の手続に入っていただき,ここからは希望ということになりますけれども,立法府においても速やかに法制化していただきたいと,このように考えます。 ○井上会長 ありがとうございました。   ほかに御意見のある方はいませんか。 ○岩原委員 どうもありがとうございます。   私もただいまの佐久間委員と同趣旨でございまして,まず,多くの難しい問題について大変緻密なものを作っていただきましたことを感謝したいと思います。   それから,佐久間委員おっしゃいましたように,このような案が取りまとめられた以上は,速やかな立法をお願いしたいと思います。平成26年の会社法改正の際は,要綱をまとめてから国会に提出されるまでに1年以上掛かり,更に国会で成立するのに2年掛かったわけですので,今回はそのようなことがないように,是非お願いしたいと思います。   それから,会社法,今回大変良い案を作っていただきましたが,会社法については,なお今回取り上げられなかった数々の問題もあり,また佐久間さんもおっしゃいますように,新しい問題が次々と生まれてきておりますので,今後とも会社法については継続的に法制の見直しを図っていただきたいということを希望したいと思います。 ○井上会長 ありがとうございます。 ○神津委員 ありがとうございます。   要綱案につきましては,企業の適切な情報開示を始め,企業統治において一定の改善が期待できる内容と受け止め,賛同するものであります。   その上でなんですが,社外取締役がその役割,機能を発揮できる仕組みの整備を進めることが重要だと思います。従業員との連携などにより,社外取締役が必要な社内情報を入手できる仕組みの構築を始め,その実効性の確保に向けた取組が重要だと思います。コーポレート・ガバナンスに関わる様々な主体による前向きな検討と仕組みの導入が必要であるという点を申し述べておきたいと思います。 ○井上会長 ありがとうございました。   ほかに御意見ございませんでしょうか。よろしいでしょうか。   付け加えて御意見がないようですので,採決に移ってよろしいでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○井上会長 それでは,御異議ないようですので,諮問第104号につきまして,会社法制(企業統治等関係)部会から報告のありました要綱案及び附帯決議のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いします。           (賛成者挙手) ○井上会長 では,下ろしていただいて結構です。 ○福原司法法制課長 それでは,私の方から採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は18名でございますところ,全ての委員が御賛成ということでございました。 ○井上会長 採決の結果,全員御賛成ということでしたので,会社法制(企業統治等関係)部会から報告のありました要綱案及び附帯決議は原案のとおり採択されたものと認めます。   この採択されました要綱案及び附帯決議につきましては,会議終了後,法務大臣に対して答申することといたします。   神田部会長におかれましては,約1年9か月の間,非常に精力的に多岐にわたる論点につきまして調査審議をしていただきまして,ありがとうございました。   次に,「戸籍事務へのマイナンバー制度導入に係る戸籍法等の改正に関する諮問第105号」につきまして,御審議をお願いしたいと存じます。   初めに,戸籍法部会における審議の経過及び結果につきまして,同部会の部会長を務められました窪田充見臨時委員から御報告を頂きたいと存じます。   それでは,窪田さん,お願いします。 ○窪田部会長 戸籍法部会の部会長を務めさせていただきました窪田でございます。   本部会では,平成29年9月の諮問第105号について,約1年3か月にわたって調査審議を重ねてまいりましたが,本年2月1日に開催されました第12回会議におきまして,戸籍法の改正に関する要綱案を決定いたしました。本日は,その概要について御報告をさせていただきます。   この諮問第105号でございますが,国民の利便性の向上及び行政運営の効率化の観点から戸籍事務にマイナンバー制度を導入し,国民が行政機関等に対する申請,届出,その他の手続を行う際に戸籍謄本等の添付省略が可能となるようにするとともに,電子情報処理組織を使用して行う戸籍事務を原則とするための規定及び戸籍の記載の正確性を担保するための規定の整備等,戸籍法制の見直しを行う必要があると考えられるので,その要綱を示されたいというものでございました。これを受けて戸籍法部会が設置され,これまで審議を行ってまいりました。   この部会における審議の途中経過につきましては,平成30年10月の第182回法制審議会総会におきまして中間報告をさせていただきましたが,本日は改めて要綱案の決定に至るまでの審議経過を簡単に御説明した上で,最終的に取りまとめました要綱案の概要について御報告をさせていただきます。   まず,審議経過の概要でございますが,戸籍法部会では,第1回会議を開催いたしました平成29年10月から平成30年4月までの間,各論点について調査審議を重ね,戸籍法の改正に関する中間試案を取りまとめ,平成30年5月から6月までの間,パブリック・コメントの手続を行いました。その後,パブリック・コメントに寄せられた意見等も踏まえて更に調査審議を行い,本年2月1日の会議において全会一致で要綱案を決定するに至ったものでございます。   なお,諮問においては,電子情報処理組織を使用して行う戸籍事務を原則とするための規定の整備についても検討を求められたところでございますが,全ての戸籍の情報がコンピューター化されていない現状に照らしまして,その規定の整備については,今回の本要綱案の中には盛り込んでおりません。   それでは,要綱案の概要について御説明を申し上げます。   資料民3を御参照ください。   まず,要綱案の1ページの「第1 法務大臣が番号利用法に基づき戸籍関係情報を利用すること等について」でございます。   戸籍は現在,正本を市町村に備え,副本を管轄法務局に備えることとされており,磁気ディスクをもって調製された戸籍の副本については,国が管理する戸籍副本データ管理システムにより,国が管理する電子計算機に情報が送信されております。   そこで要綱案では,国が副本を保存している実情に合わせ,磁気ディスクをもって調製された戸籍の副本について,法務大臣が保存するものとしております。そして,この仕組みを前提として,戸籍事務にマイナンバー制度を導入することとしております。他の行政機関において,戸籍証明書の添付が必要となる場合,現在は手続を申請される方が戸籍証明書を添付しております。しかし,戸籍事務にマイナンバー制度を導入することにより,マイナンバーの提示を受けた行政機関が戸籍の情報を確認することにより,戸籍証明書の添付を省略することができるとするものです。   要綱案では,マイナンバー法に基づく他の行政機関等からの情報照会に対して戸籍の情報を提供するため,法務大臣において戸籍の副本に記録されている情報を個人ごとの情報に整理した上で,戸籍に記録されているものと,他の者との親子関係や婚姻関係などの身分関係の存否や,身分関係が発生,消滅した日付などの異動に関する情報として戸籍関係情報を作成することとしております。これにより,他の行政機関等からマイナンバー法に基づく照会があった場合に,法務大臣において,この戸籍関係情報を提供することとしております。   また,(注1)に記載されているところでございますが,法務大臣は,戸籍関係情報の作成及び提供に当たっては,12桁のマイナンバーを直接には用いずに,マイナンバーを変換して作成する行政機関での間でのやり取り以外には利用しない情報提供用個人識別符号,いわゆる機関別符号を利用することとしております。   続きまして,要綱案の2ページ以下の「第2 戸籍事務内における情報の利用について」でございます。   要綱案では,届書を受理した市町村長は,届書の情報を国が管理するシステムに送信することとしております。また,法務大臣は,市町村長から戸籍事務の処理に関し求めがあったときは,その保存する戸籍の副本に記載されている情報及び届書等の情報を提供する仕組みを構築することとしております。現在,本籍地以外の市町村に婚姻届を提出する場合,届出を受け付けた市町村においては,その保有する情報からは届出をされる方の戸籍情報が明らかではなく,法律用の要件を満たしているかを判断することが困難であることから,届出をされる方に対して戸籍証明書の添付を求めております。しかし,法務大臣が市町村長に対して情報を提供する仕組みを利用することにより,本籍地以外の市町村において他の市町村の戸籍情報を確認することができるようになるため,戸籍証明書が添付されなくても届書の審査を行うことが可能となります。   また,戸籍の届出は,届出事件の本人の本籍地又は住所地の市町村に届け出ることができることとされておりますが,本籍地以外の市町村に戸籍の届出がされた場合,届書を受理した市町村は戸籍の正本を管理している本籍地の市町村に対して,戸籍の届書を郵送しております。しかし,この仕組みを利用することにより,市町村間で戸籍の届書を郵送する手続を省略することが可能となります。さらに,現在,戸籍証明書を入手するためには,本籍地の市町村に対して請求しなければならず,例えば相続関係を証明するために戸籍証明書を請求する場合,それぞれの本籍地の市町村に請求しなければなりません。この点が不便であるという指摘は従来よりなされており,中間試案に対するパブリック・コメントでも同様の指摘はございました。   そこで,中間試案後に再開した戸籍法部会においては,本籍地以外の市町村で戸籍証明書の交付請求ができるかどうかを議論いたしました。   その結果,戸籍を取得する必要性と現行法における戸籍の公開の原則を踏まえ,原則として請求理由を明らかにしなくても戸籍証明書の交付を受けられる者,これは具体的には戸籍に記載されている者,その配偶者,直系尊属,直系卑属ということになりますが,これらの者であれば,新しく構築する仕組みを使うことにより,本籍地以外の市町村において戸籍証明書の交付をすることが可能となる,いわゆる広域交付を認めることとしてよいのではないかという結論に至りました。これにより,相続等で戸籍証明書の取得が容易になるものと考えられます。   続きまして,4ページ以下の「第3 法務大臣が保存する戸籍関係情報等の保護措置について」でございます。   先ほど御説明いたしました第1及び第2の措置を講ずることにより,法務大臣が新たに構築するシステムにおいては,番号利用法に基づく情報連携において提供される戸籍関係情報を管理・保存し,戸籍の副本や届出書等の情報については戸籍事務における情報連携に当たって,各市町村長が戸籍事務の処理に関して法務大臣に提供を求めることができるということとなります。新たに戸籍に関する個人情報をコンピューター処理により取り扱うこととなり,戸籍の副本等の情報については本籍地以外の市町村長が参照することも可能となり,特に個人情報の保護の必要性が高まると考えられることから,適切な保護を確保するために必要な規律を設ける必要があります。   そこで要綱案では,関係する他法令を参考に,法務大臣が行う情報提供事務に関する秘密等について,その漏えいの防止や適切な管理のために,コンピューターの安全性や信頼性を確保するなどの措置を講ずること,また,法務大臣から提供を受けた副本記録等情報について,漏えいや滅失,棄損の防止などのために必要な措置を講じ,目的外での利用や提供を制限すること,あるいは戸籍関係情報や個人情報に関する秘密を保持する義務を課すなどの各規律を設けるものとなっております。   続きまして,6ページの「第4 市町村長及び管轄法務局長等の調査権について」でございます。   市町村長は,戸籍の届出又は申請の受理に際して,必要に応じて届出人等に対して質問をすること,資料の提出を求めることができることとされております。また,市町村長は,届出の審査に当たり疑義がある場合には,管轄の法務局に指示を求めることができることとされており,管轄法務局長は市町村長に指示又は助言を行うために,必要な範囲で届出人等に対して資料の提出を求めるなどしております。しかし,これについては現在法律上の明文の規定が置かれてはおりません。   そこで要綱案では,市町村長又は管轄法務局長は,必要があると認める場合には,届出人等に対して質問をし,又は必要な書類の提出を求めることができるものとするとしております。   なお,この調査については飽くまでも任意のものであって,罰則等をもって強制されるものではなく,また現行の実務で行われている調査の範囲に変更を来すものではございません。   続きまして,6ページ以下の「第5 戸籍訂正について」でございます。   戸籍訂正手続は,確定判決を得て行う手続,家庭裁判所の許可を要する手続,管轄法務局長の許可を要する手続,市町村長の職権による手続に分類されているところです。このうち家庭裁判所の許可を要する手続については,訂正許可審判の対象となる事件の範囲が法律の規定上,必ずしも明らかではなく,また市町村長の職権訂正手続についても明文の規定が置かれてはおりません。   そこで要綱案では,家庭裁判所の訂正許可審判により訂正できる事件についての解釈を明確化するとともに,市町村長の職権訂正手続について明文の規定を置くこととしております。   最後に,7ページの「第6 死亡届の届出資格者の拡大について」でございます。   死亡の届出について,現在任意後見監督人は届出資格を有することとされておりますが,他方で任意後見の受任者は届出資格が認められておりません。そのことから,要綱案では任意後見受任者についても死亡の届出をできるものとしております。   戸籍法の改正に関する要綱案の概要は以上のとおりでございます。よろしく御審議のほどお願いいたします。 ○井上会長 ありがとうございました。   それでは,ただいまの御報告及び要綱案につきましても,全般について,まず御質問がございましたら御発言をお願いしたいと思います。 ○岩間委員 ありがとうございます。   実現すれば,戸籍関連の手続が大変便利になると思いますし,非常に一般市民の生活に直結する問題だと思うんですけれども,他方で,マイナンバー制度自体もまだ十分定着しているとは言えない現状ですので,それに更に個人識別符号というのを振っていった上で,このシステムが稼働することが可能になるということだと理解していますが,実際問題として,大体どれぐらいの時間を掛けて,このシステムに移行していくというふうに考えておられるのか教えていただけますでしょうか。 ○杉浦民事第一課長 お答えいたします。   このシステムを構築しまして,また,戸籍の情報を個人ごとに整理した上で戸籍関係情報を作っていくということが必要になりますので,現在のところでは,5年程度を掛けて準備をしていきたいというふうに考えております。 ○井上会長 よろしいですか。   ほかに御質問はございませんでしょうか。 ○山根委員 プライバシーの保護というのを,やはりきちんと立て付けていただきたいということをお願いしたいと思いますが,その秘密を漏らした者に対する罰則も設けるということでございますけれども,これは重い意味を持たせるというふうにするということの理解でよろしいでしょうか。 ○杉浦民事第一課長 現在でも,国家公務員法ですとか地方公務員法におきましては,秘密漏えいに対して懲役1年以下の罰金50万円以下というような罰則は設けられておりますけれども,今回作ります戸籍関係の情報を漏えいするとか,あるいは勝手に,必要もないのにほかの市町村の情報を市町村の職員が参照して漏えいさせるような,そういったことになりますと,システム全体の信頼性,制度全体の信頼性を損なうことになりますので,そういった国家公務員法ですとか地方公務員法の既存の罰則よりも重い罰則を設ける必要があるのではないかということで検討されたところでございます。 ○井上会長 ほかに御質問はございませんでしょうか。   ないようでしたら,御意見をお伺いするということに移りたいと思いますが。   それでは,御意見のおありの方は挙手の上,御発言を願います。   特にございませんでしょうか。   それでは,御意見がないということですので,原案について採決に移りたいと存じますが,御異議ございませんでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○井上会長 御異議がないようですので,諮問第105号につきまして,戸籍法部会から報告されました要綱案のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いしたいと思います。           (賛成者挙手) ○井上会長 どうぞ,下ろしていただいて結構です。 ○福原司法法制課長 それでは,採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は18名でございますところ,全ての委員が御賛成ということでございました。 ○井上会長 ありがとうございました。   採決の結果,全員賛成ということでございましたので,戸籍法部会から報告された要綱案は原案のとおり採択されたものと認めます。   この採決された要綱案につきましても,会議終了後,法務大臣に対して答申することといたします。   窪田部会長におかれましては,約1年3か月にわたり精力的に調査審議をしていただきまして,ありがとうございました。   次に,「特別養子制度の見直しに関する諮問第106号」について,御審議をお願いしたいと思います。   初めに,特別養子制度部会における審議の経過及び結果につきまして,同部会の部会長を務められました大村敦志臨時委員から御報告を頂きたいと存じます。   では,大村さん。それでは,お願いします。 ○大村部会長 特別養子制度部会の部会長を務めました大村でございます。   この部会では,法務大臣から昨年6月に受けた諮問第106号について,約8か月間にわたり調査審議を重ねてまいりましたが,先月29日に開催されました第10回会議において,特別養子制度の見直しに関する要綱案を決定いたしました。本日は,その概要等について御報告をさせていただきたいと存じます。   資料は民4というものになります。   特別養子制度の見直しに関する諮問第106号は,実方の父母による監護を受けることが困難な事情がある子の実情等に鑑み,特別養子制度の利用を促進する観点から,民法の特別養子に関する規定等について見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたいというものでございます。   この諮問を受けまして,特別養子制度部会では,昭和62年の制度創設以来,約30年ぶりの見直しに向けた検討を行ってまいりました。   具体的には,昨年6月の第1回会議から10月の第5回会議までの間,議論を重ねまして中間試案を取りまとめ,10月12日から11月11日までの1か月,パブリック・コメントの募集手続を行いました。また,パブリック・コメントの募集手続の期間中に開催された第6回会議におきまして,お二人の参考人にヒアリングを実施いたしました。お一方は,施設に入所中の6歳に達したお子さんとの間で特別養子縁組をすることはできなかったものの普通養子縁組をされたという経験を有する方,もうお一方は,発達心理学を専門とされる東京大学の遠藤利彦教授でございます。その後,部会におきましては,パブリック・コメント及びヒアリングの結果を踏まえまして,更に調査審議を行い,最終的な意見の調整を進めました。このような審議経過を経まして,先月29日の第10回会議において全会一致で要綱案を決定するに至ったものでございます。   それでは,要綱案の概要を御説明申し上げます。   今回の見直しは,我が国において社会的養護下にある子供が約4万5,000人いるのに対して,特別養子縁組の成立件数が,近年は年間500件程度で推移しているという状況を背景に,社会的養護下にある子供のうち,特別養子縁組によって家庭的な環境で養育されるようにすることが望ましい子供がいるのであれば,特別養子制度をそのような子供にとっても利用しやすいものとすることが望ましいのではないかとの指摘があることを背景とするものでございます。実際に児童福祉の現場からは,特別養子縁組を検討すべきであったにもかかわらず,制度上の障害のためにその検討をすることができなかった事例が相当数あるとの報告もございます。   そこで指摘されている制度上の障害は,大きく分けますと,養子となる者の年齢要件に関するものと特別養子縁組の成立手続に関するものでしたので,部会におきましてもこれらの二つの点を中心に検討を行いまして,要綱案もそれらの二つの点で見直しをするものとされております。   それでは,要綱案の具体的な内容について御説明をしたいと存じます。   要綱案の第1は,特別養子縁組における養子となる者の年齢要件等の見直しに関するものでございます。   現行の民法817条の5は,特別養子縁組の成立の請求がされたときに6歳に達している者は,原則として養子となることはできないとしており,例外的に,6歳に達する前から養親となるべき者に引き続き監護されている場合には,請求時に8歳未満であれば養子となることができるとしております。しかし,このような規律の下では,小学生や中学生の子供は特別養子縁組が望ましいと考えられる場合であっても,年齢超過という一事をもって特別養子縁組の可能性が否定されるということになってしまい,相当ではないのではないかという指摘があったところでございます。そこで部会では,養子となる者の年齢の上限を引き上げるという方向での検討を行ってまいりました。   この年齢の引き上げにつきましては,普通養子制度との関係や特別養子制度の趣旨及び目的に立ち返って検討が行われ,現行法上,15歳に達している者は,自ら普通養子縁組をすることができることや,特別養子制度が専ら未成年者を家庭的な環境で養育するということを目的とする制度であるということなどを考慮いたしまして,要綱案では,養子となる者の年齢の原則的な上限を特別養子制度の成立の審判の申立時に15歳未満であるということにしております。すなわち特別養子縁組の成立後,養子が成年に達するまでに,養親に監護される期間が一定程度確保されるようにしているわけでございます。   また,一般的に子供の身分上の地位は早期に確定することが望ましいということから,養親となる者に,養子となる者が義務教育を修了する頃までには申立てを決意していただこうという意味も含められております。さらに実際上も,15歳に達してから養育が開始されたという事例について,特別養子縁組が成立するというようなことは想定しにくいという,想定することができないという指摘もございました。   このように,要綱案では養子となる者の年齢の原則的な上限を15歳未満としておりますけれども,パブリック・コメントの中には,養子となる者が15歳に達している場合であっても,真に特別養子縁組が必要な場合には,例外的に縁組を成立させることができるようにすべきであるとの意見もございました。   そこで,要綱案の第1の2のとおり,養子となる者が15歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されており,かつ15歳に達するまでに特別養子縁組の成立の審判の申立てがされなかったことについてやむを得ない事由がある場合には,例外的に,審判の申立時に15歳を超えている者についても養子となることができるということにしております。このやむを得ない事由に該当する具体例といたしましては,部会では,養子となる者が15歳に達する直前に養親となる者に里親委託されたため,養親となる者において,特別養子縁組を決意するために十分な時間的な余裕がなく,審判の申立てをすることができなかったといった事例が挙げられておりました。   これらに加え,先ほども申し上げましたように,特別養子制度が専ら未成年者の養育を目的とするものであるということから,要綱案の第1の3では,養子となる者が18歳に達した場合には,特別養子縁組を成立させることができないということとしております。   また,先ほども申し上げましたとおり,15歳に達している者は自ら普通養子縁組を行うことができるとされていることとの関係上,特別養子縁組につきましても,要綱案の第1の4のとおり,養子となる者が15歳に達している場合には,その者の同意がなければ縁組を成立させることはできないこととしております。   以上が,養子となる者の年齢要件等に関する見直しについての御説明でございます。   続きまして,要綱案の第2ですけれども,要綱案の第2は「特別養子縁組の成立の手続に係る規律の見直し」に関するものでございます。   現在の特別養子制度については,次の点などについて,養親となる者について負担が重いという指摘がなされております。   1点目は,特別養子縁組を成立させるためには,原則として実親の同意がなければなりませんけれども,この同意が特別養子縁組の成立の審判の確定まで,いつまでも撤回することができるとされている点に関するものでございます。特別養子縁組の成立の審判は,養親となる者が養子となる者を6か月以上の期間,試験的に養育し,その状況を考慮してなされるものでございますけれども,養親となる者は試験養育の期間中に,仮に実親が縁組の成立に同意していても,それを撤回するかもしれないという不安を持ち続けることになるという指摘がなされております。   2点目は,同じく実親の同意に関するものでございますけれども,実親が養子となる者を虐待等しているというような事情がある場合には,例外的に実親の同意がなくても特別養子縁組を成立することができます。しかし,その事案が実親の同意が不要な事案であるかどうかという判断は,6か月以上にわたる試験養育期間を経た審判において初めて示されますので,養親となる者としては,果たして,その事例において実親の同意が不要と判断されるかどうかということを確実には予測することができないまま,やはり不安を持ち続けながら試験養育を続けざるを得ないということも指摘されております。   要綱案における特別養子縁組の成立手続の見直しは,今申し上げました指摘に応えるために,特別養子制度の成立手続を二段階に分け,家庭裁判所は第1段階の審判において,実親の監護に関する要件及び実親の同意に関する要件が充足されていることを確認し,第2段階の審判においては,第1段階の審判で確認された要件については充足されているものとして審判をしなければならないこととするものでございます。これによって,養親となる者は,あらかじめ実親の監護や同意に関する要件が充足されているという第1段階の確認の審判を得ておけば,不安を感じることなく養子となる者の試験養育に集中することができるようになります。   また,このように特別養子縁組の成立手続を二段階に分けた上で,第1段階の手続の申立権を児童相談所長にも付与するということが想定されております。これが実現いたしますと,養親となるべき者は第1段階の手続に関与する必要がなくなり,実親の監護状況についての立証の負担や,手続内で実親と対峙することによる精神的な負担を免れるということにもなります。さらに,実親の同意が特別養子縁組の成立の審判の確定まで,いつまでも撤回することができるとされている点につきましては,要綱案では,第1段階の手続において,実親が裁判所の審問の期日においてした同意等については,同意をしてから2週間が経過した後は撤回することができなくなるということとしております。   特別養子制度の見直しに関する要綱案の概要は以上でございます。よろしく御審議のほどお願い申し上げます。 ○井上会長 どうもありがとうございました。   それでは,ただいまの御報告及び要綱案の全般につきまして,まず,御質問からお伺いしたいと思います。 ○竹之内委員 御説明ありがとうございました。   この第1の関係なんですが,2点ほど御質問させていただきたいと思います。   先ほど,やむを得ない事由については事例を挙げて御説明をされましたけれども,この要綱そのものは例示などはないまま,いわゆる裸のといいますか,やむを得ない事由ということになっておると。そういう関係で,ちょっといかがなものかと思うわけなんですけれども,こういう場合にはやむを得ない事由には当たらないというふうなことについても,いろいろ検討もされたようにも伺っておるものですから,もうちょっとイメージを与えていただきたいということと,それから裁判所の方で,これは裸なものですから,そうすると,ばらつきが出たりはしないかというふうなこともあるんですが,その点のお考えもちょっと頂きたいというのが1点目でございます。   もう1点ですけれども,特別養子における養子と養親の年齢の差の問題です。要綱案の第1の3項によりますと,結局,特別養子は18歳になる直前もあり得るということになるわけですが,現在の民法817条の4ですね,これは養親となる者の年齢を定めているわけですけれども,そのただし書を見ますと,養親となる夫婦の一方が25歳に達していない場合においても,その者が20歳に達しているときはこの限りでないと,こういうことになっておりまして,つまり養親の一方が25歳に達していれば,あとのもう一方の養親は二十でもよいと。そうしますと,養親と養子の年齢差が3歳などということもあり得るように思えるわけですね。そういう特別養子縁組も認めるということで理解したらよろしいのでしょうか。この2点を伺いたいと思います。 ○井上会長 それでは,順次,お答え願います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   まず,第1問についてでございますけれども,養子となる者が15歳に達するまでに特別養子縁組の成立審判の申立てがされなかったことについて,やむを得ない事由があるという要件は,特別養子縁組の成立の申立てについてはできるだけ早く行っていただくということが必要であるという考え方を前提にして設けられた例外要件でございます。   部会におきましては,この要件に該当するには,今の申し上げた趣旨からいたしますと,基本的には,養親となる者が特別養子縁組の成立を申し立てる必要性を認識してから,その申し立てるまでに十分な熟慮期間がなかった,そのために15歳を超えてしまったという場合に限られるのではないかというのが共通の認識として述べられたところでございます。   そのほかにどういう場合があるのかということについても,いろいろ御意見を頂きましたけれども,これは具体的な事情による部分が多いものですので,一般的な形で,ここに定型化して例示するのは難しいのではないかというのが部会の意見でございました。同意が得られるかどうか分からないからというようなことで,ずるずると引き伸ばしているというような場合については,これに当たらないのではないかというような意見が示されておりましたけれども,これも先ほど申し上げましたように,できるだけ早く縁組を行うということが基本なのだという前提に立って,そのような意見が出されていたものと理解しております。   それから,ばらつきが生ずるのではないかという御指摘がございました。できるだけばらつきが生じないように要件を具体的に絞り込むことは難しいけれども,しかし,どんな場合が例外に当たるのかということについて意見を交換し,記録等に残るようにし,後に参考にしていただけるようにしたということが一つございます。他方,全体として,例外に当たるか否かが問題になるような事例がどのくらいの数が出てくるのかというのがなかなか分からないところもございますが,そう多くのものが出てくるということは想定しておりません。そうなりますと,やはりケース・バイ・ケースで判断を積み重ねていくしかないのではないかと考えているところでございます。   以上が第1点についてでございます。   それから,第2点の御質問は,年齢差の問題かと思います。   御指摘のとおり,現在の規定ですと,養親の一方は20歳であるということがあり得るわけで,養子の方の年齢要件を引き上げますと,養親と養子の間の年齢差が非常に小さくなり,親子としては不自然だというようなケースが出てくることが,理論上は考えられるところでございます。   しかし,これについても,年齢差要件を設けて一律に線引きをするよりも,家庭裁判所が養親の監護・教育能力,養親としての適格性を個別に判断する中で判断する方が,具体的な妥当性を得るという観点からは望ましいのではないかと考えまして,年齢差要件は最終的には設けないということにしたものでございます。   ただ,特別養子制度というものが家庭的な環境の下で子供を養育するということを目的とするものであるということからいたしますと,また子供の利益のため,特に必要がある場合に限って縁組の成立を認めるというものであるということに鑑みますと,委員御指摘のような,年齢差が非常に小さいというような例につきましては,養子縁組を認めるということが適当であるという判断がされるということは,ほとんどないのではないかと考えているところでございます。 ○井上会長 ほかに御質問ございますか。 ○岩間委員 ありがとうございます。   今回,養子となる者の要件の見直しが行われたということで,その趣旨として,なるべく家庭的な環境で養育をできるようにということだと理解しています。他方,養親となる者に関しては,特別養子に関しては現在も,配偶者のあるものでなければならないという要件があるということで,確か里親となるに当たっては,特に配偶者要件はなかったと思うのですが,こちらの方で,養親となるほうの要件を緩めるというような議論はなかったのか教えていただけますでしょうか。 ○大村部会長 今回,実際上の困難な事例として指摘されているものの多くが,養子の年齢に関するものであるということに鑑みまして,主として養子の年齢について検討をしたということでございます。 ○岩間委員 では,議論はなかったということですね。 ○大村部会長 準備の段階での研究会も含めまして,ここに至るまでに全く御指摘等がなかったわけではありませんけれども,それが取り上げられて,正面から本格的に検討されるということはなかったと考えております。 ○井上会長 ほかに御質問はございますでしょうか。 ○佐久間委員 ありがとうございます。   今,世の中で関心を持たれているからというわけではないのですが,第1段階の手続については児童相談所長も申し立てることができるという御説明につきまして,これは非常に工夫されており,現実的な問題の解決だとは思うのですが,この「できる」というのは,養親になろうという方がお願いすれば,するということになるのか,あるいは,それは全く裁量というか,忙しいから駄目ですと,こういうことになり得るのか,この点はどういう設計,デザインになっているのかという点についてお聞きしたいと思います。 ○堂薗民事法制管理官 この点につきましては,児童相談所長の権限として申立権を認めることになるわけでございますけれども,当然,児童相談所長は子供の利益を図ることを職責としておりますので,家庭的な養育が可能な子供については,できる限りそういった環境を提供するというのが望まれるということかと思いますので,基本的には職権の範囲内で適切な判断をすることが期待されているということだと思います。したがいまして,基本的には特別養子縁組の申立てをすることが子供の利益になるという場合には,児童相談所長の方で適切に申立てがされることになるのではないかというふうに考えているところでございます。 ○井上会長 御質問はほかにございませんでしょうか。よろしいですか。   それでは,御意見を伺うということにしたいと思います。 ○竹之内委員 竹之内です。   何だかまだちょっと時間がありそうなので,ちょっと意見を述べさせていただきたいと思います。   私,別にこれに反対するというつもりはありません。しかし,幾つか懸念があるということは申し上げざるを得ない。その関係の中で,御要望を申し上げたいと,こういう趣旨でございます。   一つの懸念といいますのは,原則15歳まで特別養子縁組が可能ということになりますと,幼少期に監護を開始したケースであっても,養親候補者が特別養子縁組の申立てを先送りするケースがあるのではないかという点です。具体的に申し上げますと,思春期になるまで,我が家になじむかどうか見てみたい,そういう考え,そういうふうに考える養親候補者がいてもおかしくないと思いますし,取り分け実親がもう既に死亡しているという場合などで,これは同意を得る必要がないわけですよね。そういうケースでは,そのような事態が生ずるということも十分あり得るように思うわけです。こういう事態は,先ほどもお話がありましたけれども,子供の法的地位を長く不安定にすることにもなりますし,早期に安定的な養親子関係を形成させようとした本来の特別養子制度の目的が損なわれるのではないかと,こういう危惧でございます。   そこで,国としての対応をきちんとお願いしたいと思うんですけれども,年齢は引き上げるものの,やはり特別養子はできるだけ幼いうちに申立てをするように,児童相談所を始めとするところの関係機関に周知することともに,国民の皆様にもその広報をしていくということが必要だと思うものですから,その点を要望したいと思います。   2点目の懸念といいますのは,要綱案の第1の4項によりますと,15歳に達した子については,その同意を得ることを要件としているわけですね。これは平仄を合わせる上でもそうなっているんだと思うんですけれども,そうなりますと,特別養子縁組というのは実親子関係の断絶を含む制度であること,この点を頭に置きますと,子供に対して実親を切り捨てるかどうかという非常に酷な判断を,決断を迫ることになりかねない,この点です。子供の方としましては,既に養親の候補者の方に育てられているということがあるわけですので,本当は実親との間で他人にはなりたくないという考えが仮にあっても,やむを得ず同意せざるを得ないということもあり得るように思いますし,特別養子縁組,先ほど申し上げたように実際上,離縁は困難で,言わば後戻りのできない関係であるわけですけれども,15歳という程度のお子さんがそういうことの理解,あるいは決断が付くのかということです。   これらの懸念を踏まえますと,15歳に達した子に特別養子縁組を認めるのは極めて例外的である,先ほどの説明でもそのようなことだと思いますが,やむを得ない事由の解釈については裁判所に委ねるということのようですけれども,今申し上げたような運用と配慮ということを要望したいということです。   3点目ですけれども,これが最後ですので。現行の特別養子制度というのは,実親子の関係になるべく近い関係を形成するということを理念としてきたものというふうに私も理解しておりますけれども,今回の特別養子の年齢引き上げで,特別養子の在り方が大きく変容するということになるのではないかというふうにも考えております。15歳を超えた場合,子供は自分の意思で普通の養子縁組ですね,これもできるわけですけれども,要綱案では特別養子縁組も,例外的であれ認めていると。   そういうことになりますと,一つは養子制度の全体の中で,この要綱案に基づく特別養子縁組制度がどう位置付けられるのかということ,それから未成年者の普通養子縁組との関係がどうなるのか,そして未成年者の普通養子縁組の在り方が今のままでいいのかといった点の検討が,これはある種,不可欠ではないかと思っておりまして,その意味において,法務省におかれては,更に我が国の養子制度全体を見直して普通養子制度の改正の要否も含めて検討していただけたら有り難いと,そうすべきであると,こういうふうに考える次第です。 ○井上会長 ありがとうございました。   ほかに御意見ございませんでしょうか。 ○神津委員 ありがとうございます。   今回,年齢要件の引き上げに伴って,15歳以上の子が特別養子縁組をするには本人同意が必要となったわけであります。その点は受け止めるとしても,15歳以上に限らず,子供の発達に応じて本人の意思を確認し,その意思を尊重するよう,家事事件手続法の第65条の考え方にものっとりながら,丁寧な運用が図られるよう求めておきたいと思います。   特別養子制度については,子供と実親との親族関係が終了する制度でありますから,子供の心理的な負担感は大変に大きいものがあると思います。場合によっては,子供が実親や養親候補者,里親などの意思に左右されて自らの意思を表明できない場合や,同意したとしても,その判断に後ろめたさを感じたりする場合もあり得ると思います。また,特別養子縁組を結んだとしても,安定的な親子関係の構築ができない事例もあり,現場においては家庭裁判所調査官による慎重な意思確認や児童相談所の支援が求められるものと考えます。 ○井上会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○山根委員 こちらの部会に参画をしていたので,少し発言をさせていただきます。   まずは,毎回本当に熱心な,真剣な討議でした。対象年齢の大幅な引き上げには実際慎重な意見も多く,私もそちらの方だったんですけれども,児童福祉の現場で日々御苦労されている方々の訴えもあり,ヒアリング等もあり,事例としてはごく僅かと思われるけれども,1人でも望ましい養子という形に収まることができる子がいるのであればということで納得をしました。また,あの制度の利用が広がらない理由の一つとして,養親の負担の重さというのがあるということでしたので,二段階の手続として見直しを進めることで,そこの改善も進むのではないかというふうに期待をしました。   ただし,今回の提案で,これでよしではなくて,先ほど来,御意見も出ていますけれども,養子制度全体を見直す議論を進める必要があること,そして何よりも苦しい事情の中に置かれた子や親たちの支援体制の強化を国全体で推し進める必要があるんだということを委員みんなが感じて,要望して終わったと思っています。   今回の改正がきっかけとなって,子や親の福祉が向上してほしいというふうに願っています。 ○井上会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○大塚委員 ありがとうございます。   今回の見直し,制度の利用促進の観点から,私は賛同したいと思います。   その上で,今後の運用の面で是非お願いしたいことがあります。神津さんもちょっとお触れになっていましたけれども,子の年齢が,例えば13歳,14歳と上がってくるにつれて,なかなか幼い頃よりも親子関係の構築が難しいケースというのも少なからず出てくるかと思います。その際の,やはりその支援策,これから拡充を是非していっていただきたいと思います。特に養親への支援策というのは不可欠だと思います。里親の場合は自治体での研修とか,里親同士の交流とかというのがかなりやられているようには思いますけれども,それに比べて養親への支援というのは,これからもっと拡充させる必要があるのではないかと思いますので,その辺を是非よろしくお願いいたします。 ○井上会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○岩間委員 ありがとうございます。   今まで出たそれぞれの点ももっともなのですが,今回,児童相談所長に新たな役割を与えるということで,現状でも非常に負担が掛かっている場所かと思いますので,それに更に法的役割を与えるのであれば,弁護士等の支援の体制をしっかりしなければ,今のままの児童相談所で新しい機能を増やしてしまうと,ますます負担が重くなって,結局は子供のためにもならないと思いますので,その辺りの配慮をよろしくお願いしたいと思います。 ○井上会長 ありがとうございます。   ほかに御意見はありませんか。よろしいですか。   特に御発言のお申出がないようですので,採決に移りたいと思いますが,よろしいでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○井上会長 それでは,採決に移らせていただきます。   諮問第106号につきまして,特別養子制度部会から報告されました要綱案のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いしたいと思います。           (賛成者挙手) ○井上会長 下ろしていただいて結構です。 ○福原司法法制課長 それでは,採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は17名でございますところ,全ての委員が御賛成ということでございました。 ○井上会長 ありがとうございます。   ただいまの採決の結果,全員賛成でございましたので,特別養子制度部会から報告のありました要綱案は原案のとおり採択されたものと認めます。   この採決されました要綱案につきましても,会議終了後,法務大臣に対して答申することといたします。   大村部会長におかれましては,約7か月の間,多くの論点につきまして調査審議をしていただきました。ありがとうございました。   それでは,最後の審議事項ですが,「民法及び不動産登記法の改正に関する諮問」について,御審議をお願いしたいと思います。   初めに,事務当局に諮問事項の朗読をお願いします。 ○大谷参事官 民事局参事官の大谷でございます。   諮問を朗読させていただきます。   諮問第107号。   土地の所有者が死亡しても相続登記がされないこと等を原因として,不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず,又は判明しても連絡がつかない所有者不明土地が生じ,その土地の利用等が阻害されるなどの問題が生じている近年の社会経済情勢に鑑み,相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組みや,所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組みを早急に整備する観点から民法,不動産登記法等を改正する必要があると思われるので,左記の方策を始め,その仕組みを整備するために導入が必要となる方策について,御意見を承りたい。   記。   第一,相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組み。   一,相続登記の申請を土地所有者に義務付けることや登記所が他の公的機関から死亡情報等を入手すること等により,不動産登記情報の更新を図る方策。   二,土地所有権の放棄を可能とすることや遺産分割に期間制限を設けて遺産分割を促進すること等により,所有者不明土地の発生を抑制する方策。   第二,所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組み。   一,民法の共有制度を見直すなど,共有関係にある所有者不明土地の円滑かつ適正な利用を可能とする方策。   二,民法の不在者財産管理制度及び相続財産管理制度を見直すなど,所有者不明土地の管理を合理化するための方策。   三,民法の相隣関係に関する規定を見直すなど,隣地所有者による所有者不明土地の円滑かつ適正な利用を可能とする方策。 ○井上会長 続きまして,この諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由につきまして,これも事務当局の方から説明をお願いいたします。 ○堂薗民事法制管理官 それでは,本来であれば民事局長の小野瀬から御説明すべきところですが,公務で席を外しておりますので私の方から御説明をいたします。   諮問107号につきまして,お手元にお配りしました「所有者不明土地問題の解決に向けた民法・不動産登記法の見直し」というA4横の2枚の資料でございますが,こちらの資料に沿って御説明申し上げます。   それでは,まず,資料1枚目を御覧ください。まず,所有者不明土地について御説明いたします。   ここで言う所有者不明土地は,不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない,又は判明しても連絡がつかない土地のことでありまして,相続登記がされないことなどを原因として,所有者不明土地が発生するとの指摘がされているところでございます。   参考1にございますように,平成29年に法務省が行った調査では,最後の登記から50年以上経過している土地の割合が,大都市では約6.6%ですけれども,中小都市,中山間地域では約26.6%に上っております。また,参考2にございますように,国土交通省が行った地籍調査における土地所有者等に関する調査では,不動産登記簿の記載だけでは所有者の所在が確認できない土地の割合が約20.1%に上ったということでございます。   所有者不明土地は,所有者の探索に多大な時間と費用を要するなど,土地の円滑・適正な利用に支障を生じさせますが,今後,相続が繰り返される中で所有者不明土地が更に増加し,ますます状況が深刻になるおそれがあることから,所有者不明土地問題の解決は喫緊の課題となっているところでございます。   法務省では,資料の下段に記載しておりますとおり,政府方針に従いまして,所有者不明土地問題の解決に向けて取組をしてまいりました。一番下の段にありますとおり,2017年10月には登記制度・土地所有権の在り方などにつきまして,研究会において検討を開始し,2018年6月には短期的課題への対応として,所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法が成立したところでございます。また,今月中には,研究会において最終取りまとめがされる予定でございます。このような取組の成果を踏まえ,本日,法制審議会に民法及び不動産登記法等の改正について,法務大臣から諮問させていただいたところでございます。   政府方針では,2020年に必要な制度改正を実現することとされているところでございまして,法務省といたしましても,関係省庁と連携して検討を進めてまいりたいと考えているところでございます。   続きまして,2枚目を御覧いただければと思います。   所有者不明土地問題の解決のためには,所有者不明土地の発生を予防するための仕組みと所有者不明土地を円滑・適正に利用するための仕組み,この二つの仕組みを整備する必要があるものと考えております。このうち所有者不明土地の発生を予防するための仕組みについてですが,資料の左側の,不動産登記情報の更新を図る方策と,右側に書いております,所有者不明土地の発生を抑制する方策を導入することが考えられるところでございます。   まず,不動産登記情報の更新を図る方策といたしましては,相続等の申請の義務化が考えられるところでございます。現行制度では,相続は発生しても,相続登記の申請は義務とされていないことなどにより相続登記はされないまま放置され,所有者不明土地を発生させているという指摘がされているところでございます。そこで,相続の発生を適時に登記に反映させるための方策として,相続人に対し,土地建物の相続登記の申請を義務付けることが考えられますが,その実効性をどのように確保するかといった点が課題になるところでございます。また,これに関連して,相続登記をしやすくするための方策についても,併せて検討する必要があるものと考えられます。   また,左下の枠のところでございますが,現在は登記名義人が死亡しても,登記所が直ちにその死亡情報を把握することができる仕組みとはなっておりません。そこで,登記所は,他の公的機関から登記名義人の死亡情報等を取得することにより,不動産登記情報の更新を図る方策を検討する必要があるものと考えているところでございます。   次に,資料右側の所有者不明土地の発生を抑制する方策のうち,まず,土地所有権の放棄についてでございますが,近時,急速な少子高齢化等の社会情勢の変化に伴いまして,土地を手放したいと考える方が増加をしているという指摘がされているところでございます。土地を手放すための方策としては,土地所有権を放棄するということが考えられますが,民法には所有権放棄の規定はなく確立した判例もないことから,その可否は必ずしも明らかでないというところがございます。   そこで,土地所有権の放棄を認める法制度を創設することが考えられるところでございますが,その検討に当たっては,放棄の要件,効果や,放棄された土地の帰属先機関,あるいはその財政負担など,あるいは土地所有者が将来放棄するつもりで土地の管理をしなくなるといったモラルハザードの防止方法などが課題になるものと考えております。   次に,下の枠の遺産分割の期間制限について御説明いたします。   相続が発生いたしますと,相続財産は遺産共有状態になり,その後に遺産分割されることが想定されていますが,現行法上は遺産分割に期間制限がないため,遺産分割がされずに遺産共有状態が継続し,そのまま数次相続が発生する場合があり,そのような場合に権利関係が複雑化するといった指摘がされているところでございます。また,遺産分割がされないことから,相続された土地について相続登記がされないまま放置されるといった側面があるといった指摘もされているところでございます。   そこで,遺産分割を促進するため,遺産分割に期間制限を設けることが考えられるところでございますが,その検討に当たっては,遺産分割ができなくなるまでの期間の設定をどうするか,あるいはその期間を徒過した場合の効果についてどのように考えるかといった点についての検討が必要になるものと考えられます。   続いて,3ページ目を御覧ください。   「所有者不明土地を円滑・適正に利用するための仕組み」について御説明をいたします。   まず,左上の共有関係にある所有者不明土地の利用については,民法の共有制度を見直すことが考えられるところでございます。現行法上,共有物を変更したり処分したりするには共有者全員の同意が必要であり,共有物を管理するには各共有者の持分の価格に従い,その過半数の同意が必要とされております。したがいまして,共有物を利用するためには,共有者を個別に探索して,共有物の利用につき交渉する必要があり,共有者の一部が所在不明であるような場合には,その者の同意をとることができずに土地の利用処分が困難になるといった事態が生じるところでございます。   そこで,共有物の利用を円滑にするため,所在不明の共有者に対して公告等を行った上で,残りの共有者の同意を得て,土地の利用を可能にするといった方策や,共有者が所在不明の共有者の持分を相当額の金銭を供託して取得するなどして共有関係を解消する方策,あるいは共有物を適切に管理するとともに,利用希望者の負担を軽減する観点から,共有者を代表する管理権者を選任するといった方策などについて,検討する必要があると考えられるところでございます。   次に,資料の右上を御覧ください。   所有者不明土地の管理の合理化につきましては,民法の財産管理制度の見直しをすることが考えられます。   現在の財産管理制度では,ある不在者等の土地を管理するために財産管理人を選任した場合に,財産管理人は不在者等の特定の土地だけではなく,それ以外の財産も管理することとされていますことから,管理のためのコストが高くなるといった指摘がされているところでございます。   そこで,不在者等の財産の一部だけを管理するための方策について検討する必要があると考えられるところでございます。また,現在の財産管理制度では,土地の共有者のうち,複数名が不在者という場合には,不在者ごとにそれぞれ管理人を選任する必要があることから,やはり管理のためのコストが高くなるといった指摘がされているところでございます。そこで,複数の不在者などに共通する1人の管理人を選任するといった方策についても検討する必要があると考えられるところでございます。   次に,資料の下の部分の隣地所有者による所有者不明土地の利用・管理についてでございますが,この点については,民法の相隣関係規定を見直すことが考えられるところでございます。民法の相隣関係規定は明治29年に民法が制定されて以来,実質的な見直しがされておらず,立法時から大きく変化した社会経済情勢に合わせた見直しをする必要があるものと考えられるところでございます。例えば,電気,ガス,水道等のライフラインの導管等を引き込むために隣地を使用する必要が生ずる場合の規律については民法に規定がなく,隣地が所有者不明状態となった場合に対応が困難になるといった指摘がされております。   そこで,導管等を設置するために他人の土地を使用することができる制度を整備することについても検討する必要があるものと考えられます。また,所有者不明土地が管理されないことによって荒廃し,近傍の土地所有者に損害を与えるおそれがある場合の権利関係が,現行法上,必ずしも明らかでないため,近傍の土地所有者において土地の管理不全状態を除去するといった方策についても検討する必要があるものと考えられます。そのほか境界の確定に関し,土地の境界標等の調査のために隣地に立入りをする場合などにおいて,隣地が所有者不明である状況に対応する場合に,対応に困難が生ずることは少なくないといった指摘もあることから,こういった点についても検討が必要になるものと考えられるところでございます。   以上,御検討いただきたい項目は多岐にわたりますけれども,今回の諮問は所有者不明土地の発生を防止する仕組みと,所有者不明土地を円滑・適正に利用するための仕組み,この二つを整備する観点から,民法及び不動産登記法を改正することにつきまして法制審議会の御意見を求めるものでございます。   諮問第107号についての御説明は以上のとおりでございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○井上会長 ありがとうございました。   それでは,ただいま説明がありました諮問第107号につきまして,まず,御質問がございましたら御発言をお願いしたいと思います。 ○白田委員 白田と申します。質問させていただきます。   本件は,もう大分前から私の方も審議をお願いしてきたところですので,是非前向きに進んでくれればと強く強く願っております。   2点ばかり質問させていただきます。   揚げ足ではないのですが,不動産登記といいますと,土地だけではなくて,当然建物もあるかと思います。今御説明の中で,相続登記の申請の義務化のところを御説明されたときに,一言,「土地建物」とちょっとおっしゃいまして,本文には書いていないのですが。政府方針のところでも,所有者不明土地等と,「等」と入っておりまして,これは建物の部分についてはどういうように検討されているのか伺いたいと。土地と建物が同一の登記であるというふうな考え方は,必ずしも当たらないと思うのです。また,借地契約をしているかというと,都内でも古い土地などに関しては,土地の所有者はいるけれども,何となく共同でそこの上に建物を建てていて,建物は個別に登記しているけれども,土地の方は借地契約もしていなければ登記もしていない。それで,相続で何代も代わって,しかも,その土地についても,その所有者は管理する状況にないので,建物がどうなっているか分からないというような状況の,その建物について,今回の議論の中で検討がなされたのかどうか,そこが1点目です。   それから,二つ目ですが,遺産分割の期限,制限のお話が出ました。当然に死亡届,相続などで親族等の死亡届が市区町村に出されますと,固定資産税は地方税でございますので固定資産税は止められるわけですが,税法上の遺産分割協議は期限が定められておりますので,当然に遺産分割協議はされていると。遺産分割協議はされているけれども,登記をしていないというところなのではないかなと思うんですね。そこの辺の連携といいますか,もちろん国税,税務署と法務省,また先ほどのマイナンバーではないですが,戸籍を管理しているところが全く別々なので情報が行き届かないというところがあると思うのですが,その辺の国税の申請との連携をとっていこうではないかといったような議論は,まだかなりハードルは高いと思うんですが,出ませんでしたでしょうか。   以上,2点です。 ○井上会長 どうぞ,お答えをお願いします。 ○堂薗民事法制管理官 まず,建物についてでございますけれども,基本的に,相続があった場合に登記を義務化するという場合に,土地についてだけ義務を課すけれども,建物については課さないというのは,なかなか法制上も説明が難しい面があるんだろうと思います。そういった意味で,ここで直接問題になっておりますのは所有者不明土地問題ではございますが,相続登記を義務化する場合には,当然建物も含めて義務化することについての是非が検討されるべきではないかというふうに考えられまして,そういった観点から,研究会では議論がされてきたものと承知をしているところでございます。   それから,2番目の遺産分割までの期間でございますけれども,こちらにつきましては,正に期間制限をした場合に,その期間を徒過した場合にどういう効果を生じさせるのかというところが非常に重要なところだと思いますので,その点につきまして,例えば期間を徒過した場合には,先ほどの死亡届との連携ができることが前提ですけれども,それに基づいて,例えば職権で登記をするというようなことができれば,それは一つ,解決に結び付くんだろうと思いますので,その辺りも含めまして,今後,法制審議会の方で議論をしていただければというふうに考えているところでございます。 ○白田委員 分かりました。ありがとうございます。 ○井上会長 ほかに御質問ございませんでしょうか。 ○内田委員 土地所有権の放棄の問題について2点と,それから相隣関係について2点,質問をさせていただきたいと思います。 ○井上会長 では,まず最初の2点だけ。 ○内田委員 最初の2点。まず,土地所有権の放棄についてですが,放棄のところの説明の中で,将来放棄するつもりで管理しなくなるモラルハザードということが書かれていて,興味深く思いました。ただ,現在は,登記されている不動産は事実上,放棄できないという現状の中で,それでもきちんと管理していないという問題が起きているわけですよね。それを放棄できるようになったら,さらに管理しなくなるという心配があるのか。いずれにせよ,管理したくない土地の問題なのではないかという気がいたしました。   一般に私的所有権というのは,その財産を最適に,最も効率的に管理できるようなインセンティブを与える制度として位置付けられていると思うのですが,それが機能していないというのがここでの問題なのだろうと思います。そうだとすると,別にモラルハザードを心配しなくても,私的所有権制度が管理との関係で機能していない,しかも,所有者に一定の管理を義務付けるというのは,これはなかなか現行法制上,難しいところもあるということですね。そこで,放棄を認めて,公有にすることで管理の主体を変えてしまうという方向というのは十分あり得る選択なのではないかと思いました。そういう意味では,このモラルハザードの防止が必要ということは,それほど気にしなくてもいいのではないかという気がしたのですが,この点について何か御検討されたことがあれば,お伺いしたいということです。   もう一つは,所有権の放棄というところで,先ほど建物の問題も出ましたけれども,建物のほか,民法に仮に規定を置くとすると,当然動産の放棄との関係も問題になります。不動産あるいは土地の放棄は可能であると書いてしまうと,予期せぬ反対解釈を招くおそれもありますので,動産についても触れざるを得ない。そうすると,動産の中には動植物もあれば危険物もあり,いろいろな場合があると思います。従来,動産は捨てることができるから放棄できるというふうに,一般論としては考えられていると思いますけれども,本当にそれでいいのかということです。なかなか厄介な問題は残っているように思いましたが,その点についても何か内部で御検討があれば,お聞かせいただければと思います。 ○井上会長 まずそこまで,お答えしていただけますか。 ○堂薗民事法制管理官 まず,所有権放棄を認めた場合のモラルハザードの点につきましては,先生からの御指摘も踏まえて今後も検討していきたいとは思いますけれども,例えば土地の所有者である場合には,当然一定の義務といいますか,その土地の管理が十分されていないことによって,他の人に迷惑を与えることがないようにすべき義務というものも考えられるように思いますが,放棄をすることによって,あるいは近いうちに放棄をすることにより,今後そういった責任を負うことがなくなるということで,十分な管理をしなくなるといったモラルハザードが生ずるおそれはあるのではないかということで,こういった議論がされてきたのではないかというふうに考えているところでございます。制度設計をするに当たってその点をどの程度重視すべきかという点につきましては,御指摘を踏まえて,今後,法制審議会の方で検討を進めてまいりたいというふうに考えているところでございます。   それから,当然不動産の所有権の放棄を認める場合には,それに伴いどのような影響が生ずるかというのは御指摘のとおり検討する必要があろうかと思いますので,不動産について所有権の放棄を認めることによって,動産の所有権放棄に関する解釈に影響を与えることがないかどうかといった点も含めて検討する必要があるんだろうと考えております。   研究会におきましては,基本的には動産の放棄に関する規律は変えないという前提で議論がされてきたものというふうに考えておりますが,今申し上げたような予期せぬ影響が生じないように,どのような配慮が必要かという辺りも含めまして,今後議論をしていきたいというふうに考えているところでございます。 ○井上会長 では,内田委員,残りの二つの御質問をどうぞ。 ○内田委員 あと二つは簡単な,相隣関係についての質問ですけれども,ライフラインの導管を引き込むために,所有者が分からない隣地を使用する制度を整備するという言い方をされていまして,あるいはこれは何らかの権利を設定するということが想定されているのかと思いますが,そうだとすると,どういう権利なのかということです。もし何か内部で御検討されていれば,教えていただければと思いました。   現在は,所有者が判明していれば,地上権を設定するなどの合意をして,多分,対価を払うということになっていると思います。実務上はそういう扱いが多いだろうと思うのですが,それとの関係をどうするのか。無償でこういう権利が設定できてしまうということになるのか。もちろん厳格な要件の下でということではあると思いますが,その点の検討はどういうふうになっているのか,もし内部で検討されていれば教えていただきたいということです。   それから,最後の質問は,お配りいただいたレジュメの中で,所有者不明の隣地の管理が不全であるために,隣の土地に損害を与えるおそれがあるというような場合に,何らかの管理不全状態を除去する方策を検討すると書かれているのですが,これは,その上にある,所有者不明土地の財産の一部だけを管理する財産管理制度を創設するということとどういう関係にあるのかというのが,よく分かりませんでした。物権的請求権が機能しない場合でも,管理制度を作ってしまえば,それで対応できるようにも思うのですが,隣地所有者に何か,所有者不明の隣地に介入する権利を与えるということを想定しておられるのかどうか,その辺についても教えていただければと思います。 ○井上会長 では,お答えの方お願いします。 ○堂薗民事法制管理官 正に御指摘の点はこれから議論すべき点ではございますけれども,研究会の方で議論された状況といたしましては,まず,ライフラインの点につきましては,相隣関係に関する権利の内容として,特にライフラインに特化した形で,新たな権限を認めるという方向性について検討がされてきたものと理解しております。現行法上は,相隣関係に関する規定の類推適用などで対応することが考えられるところかと思いますが,それを法律上制度化することができないかということで検討が進められているところでございます。   それから,管理不全の状態を除去する方策でございますけれども,もちろんこれらの方策は,いずれも例示として挙げているものでございますので,最終的には大きな目標としては,先ほど申し上げました二つの点,すなわち,所有者不明土地の発生を予防するための仕組みと所有者不明土地を円滑・適正に利用するための仕組みを設けるということがあるわけですが,その二つの目標を実現するためにどういった方策を採っていくのかという点につきましては,正に今後の議論に委ねられているものと思っております。基本的に財産管理制度は,隣地所有者が特に何かするわけではなくて,財産管理人に管理不全状態の除去をしてもらうということが前提でございますけれども,そうではなくて,隣地所有者の方でも,何らかの形で自ら管理不全状態の除去をすることができるようにするという規律も考えられるのではないかということで,今後多角的に検討がされるものと考えております。 ○内田委員 ありがとうございました。 ○井上会長 御質問が更になければ,御意見をお伺いすることにしたいと思います。 ○佐久間委員 ありがとうございます。   御如才なきことながらという点で2点申し上げます。   1点目は,この設計に当たっては,デジタライゼーションを前提とした上で効率的な,また,今までになかったような発想で取り組んでいただきたいと思います。   あと2点目は,先ほどのモラルハザードの点ですが,これは当然土地を放棄したいと思っている方は世の中に多いと。土対法,廃掃法の関係からすればそういう問題もありますので,当然これは検討された上で結論を出すと,こういうことではないかと思います。 ○井上会長 ありがとうございます。   ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○白田委員 白田です。   意見として,是非,先ほどちょっと遺産分割協議に絡めて,国税との関係をお話ししましたけれども,戸籍法の改正ともあいまって,戸籍と登記簿との連携というふうに書かれておりますので,是非ともマイナンバーとの連携,登記をするときにマイナンバーを登録するといったような形でトラッキングができるようなシステムを是非御検討いただきたいというのが,以前から何度も言っておりますが,希望でございます。よろしく御検討いただければと思います。 ○井上会長 ありがとうございます。   ほかに御意見は。 ○高山委員 今後検討に当たって考慮いただければという,マクロな視点からのコメントをさせていただきたいと思います。   1点目は,やはりこういう問題の背景には,人口減少や少子高齢化の問題,それからやはり土地というものに対する意識,価値観の変化というのが背景にあると考えられますし,家族構成や,その人の出身地域と居住地域との関係や,例えばどういう職業に従事しているかとか,そういういろいろな価値観が多様化し,かつ細分化しているのが背景としてあると思います。こういう法改正は頻繁にできることではございませんので,特に2030年は団塊世代の大量相続が発生する時代ということもありますので,現状の実態に加えて,やはり将来を見据えた検討をお願いしたいというのが1点目です。   それから,もう1点は,相続というものは非常に手続が面倒というのが国民全般の意識だと思っておりますので,先ほども幾つか出ましたけれども,シンプルで,なるべく手続等が簡便なものを是非御検討いただきたいというのが2点目です。   それから,3点目ですが,できる限り行政のコストの負担を掛けない仕組みというのを,是非アイデアを出していって検討いただきたいと思います。土地というのは公的なものですので,その管理や利活用については,やはり公的色彩を持った機関が必要になってくるというのは承知の上ですが,一部,民間の力を借りる等々の視点も持って御検討いただければと思います。   以上,3点,よろしくお願いいたします。 ○井上会長 ありがとうございました。 ○小杉委員 皆様の意見に重ねるだけでございますけれども,やはり土地の意味が大きく変わっている,社会変化が非常に大きいことが象徴されている問題ですので,発想の大きな転換も含めてやっていただきたいということです。   それから,もう一つは,やはりこれも既に出ましたが,マイナンバー連携を是非使っていただきたいなと思います。 ○井上会長 ありがとうございます。   ほかに,特に御意見のお申出はございませんでしょうか。   それでは,諮問第107号の中身について御意見を伺うのは,本日はこのくらいにしまして,今後の審議の進め方について御意見を承りたいと思います。   どなたからでも,御意見があれば承りたいと思いますが。 ○内田委員 既にいろいろな意見が出ましたし,私も若干質問させていただきましたけれども,この諮問第107号というのは専門的,技術的な事項が非常に多く含まれているように思います。   したがって,通例に倣いまして,新たな部会を設置をして調査審議し,その結果を報告していただいて,それを受けて改めて審議してはどうかと思いますので,新たな部会の設置を御提案申し上げたいと思います。 ○井上会長 ただいま内田委員から,部会設置等の御提案がございましたけれども,これにつきまして御意見はございませんでしょうか。   特に御意見も御異議もないようですので,他の例にも倣い,諮問第107号につきましては,新たに部会を設けて調査審議するということにいたしたいと思います。   新たに設置する部会に属すべき総会委員,臨時委員及び幹事に関してですが,前例に倣い会長に御一任いただきたいと思いますが,御異議ございませんでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○井上会長 ありがとうございます。   それでは,そのようにさせていただきます。   次に,部会の名称でございますが,諮問事項との関連から,この諮問第107号につきましては「民法・不動産登記法部会」という名称にしたいと思いますが,いかがでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○井上会長 ありがとうございます。   では,そのように扱わせていただきます。   ほかに,部会における審議の進め方も含め,御意見ございましたら御発言を願いたいと思いますが。   特にお申出もないようですので,部会を設置し,そちらの方でまず調査審議していただき,それを踏まえて,またこの総会の場で御議論いただくということにさせていただきたいと思います。   予定しました議事は以上ですけれども,ほかにこの機会に御発言いただけることがございましたらお願いいたしたいと思います。   よろしいですか。御発言はないようですので,議事はこれで終了いたします。   本日の会議における議事録の公開方法ですけれども,議事の内容等に鑑みまして,会長としては,議事録の発言者名を全て明らかにして公開するということにしたいと思いますが,よろしいでしょうか。           (「異議なし」の声あり) ○井上会長 ありがとうございます。   では,そのようにさせていただきたいと思います。   なお,本日の会議の内容につきましては,後日,御発言いただいた委員等の皆様に議事録案をメール等にて送付させていただき,御発言の内容を確認していただいた上で法務省のウェブサイトに公開するということとしたいと思います。   最後に,事務当局から何か事務連絡がありましたらお願いします。 ○小出司法法制部長 次回の会議の開催予定について御案内申し上げます。   法制審議会は2月,それから9月に開催するのが通例となっております。次回の開催につきましても,現在のところは本年9月に御審議をお願いする予定でございますが,具体的な日程につきましては後日改めて御相談させていただきたいと存じます。委員,幹事の皆様方におかれましては,御多忙とは思いますが,今後の御予定につき,御配意いただきますようお願い申し上げます。 ○井上会長 最後に,私についてでございますけれども,この2月で法制審議会の委員の任期を終え,退任いたします。それに伴い,会長も退任することになりますので,一言御挨拶を申し上げます。   振り返りますと,私が法制審議会に関わるようになったのは,平成元年,1989年に幹事を拝命したのが始まりですが,その後10年ほど,その当時は常設であった刑事法部会の方に所属し,その後は,臨時委員あるいは部会委員として,断続的ですけれども刑事法関係のいくつかの部会の審議に加わり,平成25年以降は,総会委員として,皆様とこの場で議論させていただいてまいりました。もうすぐ平成が終わろうとしておりますので,ちょうど平成の30年間を通して法制審の一員として,主として,幾つかの刑事立法に至る審議に関与させていただいたことになります。   先日,早稲田大学での最終講義でも申したのですけれども,こういう立法に至る審議に関わったことは,既存の法規や判例,学説を前提にした法解釈論をやっていただけでは得られなかったような新たな視点とか,新たな発想を得る機縁となったと考えておりまして,研究者としても非常に恵まれた時間であったというふうに思います。   本日は,四つの答申がまとまりましたし,更に新たな,内容的にも非常に重要な事項に関する諮問がなされましたが,先ほども何人かの方から御発言がありましたように,国内外の様々な状況が目覚ましい勢いで変化をしており,人々の意識や価値観も大きく変わりつつある状況の下で,それに伴って新たな立法を検討する必要のある事柄がどんどん増えてくると考えられます。   そのような状況ですので,本審議会においても,より充実し,実りの多い審議を尽くしていただき,国民・社会のニーズに速やかに,かつ適切に対応できる立法につなげてくださることを期待し,御挨拶とさせていただきます。どうもありがとうございました。   以上でございます。   本日は,お忙しいところ,ありがとうございました。 -了-