法制審議会 民法(親子法制)部会 第1回会議 議事録 第1 日 時  令和元年7月29日(月)自 午後1時30分                     至 午後4時09分 第2 場 所  東京保護観察所集団処遇室 第3 議 題  民法(親子法制)の見直しについて 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○平田幹事 それでは,予定した時刻になりましたので,法制審議会民法(親子法制)部会の第1回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中,御出席いただきまして,誠にありがとうございます。私は,法務省民事局参事官の平田と申します。本日は,この部会の第1回会議ですので,後ほど部会長の選出をしていただきますが,それまでの間,私が議事の進行役を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。   最初に,お手元の資料について御確認いただきたいと思います。   まず,事前に送付しました資料としまして,部会資料1「民法(親子法制)の見直しにおける主な検討事項」と参考資料1「監護権の規定の在り方に関する研究会報告書」,参考資料2「嫡出推定制度を中心とした親子法制の在り方に関する研究会報告書」がございます。   その他の資料は,本日新たにお配りするもので,参考資料3は親子法制の見直しに関する「諮問第百八号」でして,参考資料4は本部会の今後の日程表です。参考資料5は,厚生労働省作成の「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律(令和元年法律第46号)の概要」及びその参考資料です。参考資料6は「無戸籍者問題の解消のための法務省の取組」,参考資料7は「子どもの戸籍をつくるために」というリーフレット,参考資料8は「無戸籍の方の戸籍をつくるための手引書」です。皆様,お手元にございますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,進めさせていただきます。   まず,この部会で審議される諮問事項と,この部会の設置の経緯につきまして,簡単に御報告いたします。   本年6月20日に開催されました法制審議会第184回会議におきまして,法務大臣から,民法(親子法制)の見直しに関する諮問がされました。お手元の参考資料3,右肩に諮問第百八号と記載されたものを御覧ください。   諮問事項は,ここに記載されておりますように,児童虐待が社会問題になっている現状を踏まえて民法の懲戒権に関する規定等を見直すとともに,いわゆる無戸籍者の問題を解消する観点から民法の嫡出推定制度に関する規定等を見直す必要があると考えられるので,その要綱を示されたいというものです。   この諮問を受けまして,法制審議会総会では,その日の会議におきまして,専門の部会を設置して調査・審議を行うのが適当であるとして,この民法(親子法制)部会を設置することが決定されました。   まず,以上のことを御報告いたします。   続きまして,審議に先立ちまして,民事局長である小出委員より挨拶があります。 ○小出委員 民事局長の小出でございます。事務当局を代表いたしまして,この場をお借りして一言御挨拶を申し上げます。   皆様には,それぞれ御多忙の中,法制審議会民法(親子法制)部会の委員,幹事に御就任いただきまして,誠にありがとうございます。   この部会で調査・審議することとされた内容は,諮問事項にもあるとおり,民法の懲戒権に関する規定等の見直しと嫡出推定制度に関する規定等の見直しの二つとなります。   まず,民法第822条の親権者の懲戒権に関する規定につきましては,児童虐待を正当化する口実に利用されているとの指摘があったことを踏まえ,平成23年の民法改正の際に,その規定を見直し,懲戒権は子の利益のために行使されるべきものであり,子の監護及び教育に必要な範囲を超える行為は懲戒権の行使に当たらないことを明確にする改正を行ったところでございます。   もっとも,懲戒権に関する規定につきましては,その後も児童虐待を正当化する口実に利用されているとの指摘がされており,今般の通常国会で成立した児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律により,親権者の体罰禁止が明文で定められました。   また,この改正法の検討過程において,懲戒権に関する規定の在り方の再検討を強く求める指摘がされ,改正法の附則において,政府はこの法律の施行後2年を目途として,民法第822条の規定の在り方について検討を加え,必要があると認めるときは,その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとするとの,いわゆる検討条項が設けられました。   これらのことを踏まえますと,懲戒権に関する規定の見直しの検討が必要であると考えられます。   次に,いわゆる無戸籍者問題は,国民でありながら,その社会的な基盤が与えられておらず,社会生活上の不利益を受ける方が存在するという重大な問題であり,法務省ではこれまで,無戸籍者に関する情報の収集や手続案内等,その解消のために様々な取組を行ってきたところでございます。   もっとも,夫以外の者との間の子を出産した女性が,嫡出推定制度により,その子が夫の子と扱われることを避けるために出生届をしないことが,無戸籍者の生ずる一因であると指摘されていることを踏まえますと,この問題を将来にわたって解消していくためには,民法の嫡出推定制度の見直しの検討が必要と考えられます。   このように,児童虐待が社会問題になっている現状を踏まえて,民法の懲戒権に関する規定等の見直しとともに,無戸籍者問題を解消する観点から,民法の嫡出推定制度に関する規定等の見直しを検討する必要があると考えられることから,これらの見直しについて,法制審議会で御議論いただきたく,今回の諮問がされたものでございます。   委員,幹事の皆様方には,これらの点についての御検討をお願いすることとなりますが,適切な規律の整備のために御協力を賜りますよう,何とぞよろしくお願い申し上げます。 ○平田幹事 続きまして,委員,幹事及び関係官の方々に自己紹介をお願いいたします。お名前と所属とを御紹介ください。  (委員等の自己紹介につき省略) ○平田幹事 どうもありがとうございました。   なお,本日は,山本委員,久保野幹事は御欠席でございます。   この機会に,関係官について補足して御説明いたします。法制審議会議事規則によりますと,審議会がその調査・審議に関係があると認めた者は,会議に出席し,意見等を述べることができるとされております。この部会におきましても,関係省庁等の御意見を伺うべきと考えられたことから,他の部会と同様に御参加いただいたものでございます。どうぞよろしくお願いいたします。   それでは,続きまして,部会長の選任を行っていただきます。法制審議会令によりますと,部会長は当該部会に属する委員及び臨時委員の互選に基づき,会長が指名することとされております。この部会は,本日が第1回会議ですので,まず初めの手続として,部会長を互選していただく必要がございます。   それでは,ただいまから部会長の互選をしていただきますが,自薦又は他薦の御意見などはございますでしょうか。 ○磯谷委員 磯谷です。せん越ながら,大村委員を部会長に推薦をしたいと思います。   大村委員は,民法について幅広く,かつ深い識見を持っておられます。本部会以前においても,多くの立法の立案過程に関わってこられました。先般の特別養子の部会におきましても,難しい議論を無事に取りまとめられました。   こういう次第で,大村委員を部会長に,適任だと思いますので,推薦をしたいと思います ○平田幹事 ほかに御意見ございますでしょうか。 ○窪田委員 今,磯谷委員から,大村委員を推薦するお言葉がありましたけれども,私も,大村委員にお願いするのが適当だと考えております。   今回の問題は,親子法制に関しても,非常にデリケートな難しい問題を含むものだと思います。歴史的な背景も含めて,こうした問題について大変に造詣の深い大村委員にお願いするのが適当であろうと思います。 ○平田幹事 ほかに御発言ありますでしょうか。   ただいま,磯谷委員及び窪田委員から,部会長として大村委員を推薦するとの御発言がございました。ほかに御意見がないようでしたら,部会長には大村委員が互選されたということになろうかと思いますが,いかがでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,互選の結果,大村委員が部会長に選ばれたものと認めます。その上で,部会長は,法制審議会会長が指名することとされていますが,本日は岩原法制審議会会長に御出席いただいております。岩原会長におかれましては,いかがでございましょうか。 ○岩原会長 ただいまの皆様方の互選の結果に基づきまして,大村委員を部会長に指名したいと存じます。大村委員,どうかよろしくお願いいたします。 ○平田幹事 ありがとうございます。   ただいま岩原会長から,大村委員を新たな部会長に御指名いただきました。   これをもちまして,大村委員が部会長に選任されました。大村委員には,部会長席に移動していただき,以降の進行役をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 大村でございます。御指名でございますので,非力ではございますが,部会長を務めさせていただきたいと存じます。   改めて,一言御挨拶を申し上げたいと存じます。座らせていただきます。   当部会への諮問は,児童虐待との関連で,民法の懲戒権に関する規定等の見直しを,また,いわゆる無戸籍者問題との関係で,民法の嫡出推定制度に関する規定等の見直しを行うということを求めるものでございます。   最近の家族法改正の作業は,相続法にいたしましても,特別養子法にいたしましても,特定の社会的な出来事を契機といたしまして,一定の方向での改正を念頭に置きつつ行われてまいりました。法は社会を反映するという立法に対する見方からすれば,これは当然のことであるといえようかと思います。   もっとも,親権にせよ,実親子にせよ,従来,一定の検討が行われながら,立法を見送ってきたという課題も少なくございません。そこでこれらの課題のうち,今回の課題と密接な関連を持つものにつきましては,可能な範囲で,併せて対応を図るということが望ましいのではないかと考えております。   改めて申すまでもございませんが,民法は市民社会の基本法であり,私たちの日常生活の基盤をなすものでございます。短期的な課題にだけ捉われることなく,中長期的な視点も取り込んだ上で改正を考えるということが,生活の基盤の確保という観点からも,また裁判の指針の定立という観点からも,重要なことであると思います。   家族法に関する問題,とりわけ,その中核をなす親子や夫婦に関する問題につきましては,国民の関心も高く,それに対応する形で,社会には様々な考え方が存在しております。皆様の中にも,いろいろな御意見があろうかと思います。そうした意見の多様性に対して,相互に十分に配慮をしつつ,現在よりも安定したよりよいルールを見いだすという共通の目標に向けて,議論をしていければと考えております。   行き届かないところも多々あろうかと思いますけれども,審議の進行につきましても,会議の席上あるいは会議の外で,事務当局宛てに,あるいは私宛てに御意見をお寄せいただければと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。   なお,今後,私がこの会議に出席できないという場合に備えまして,部会長代理を指名させていただきたいと存じます。部会長代理には,窪田委員をお願いしたいと存じます。   窪田委員,よろしくお願いいたします。。 ○窪田委員 多分,お役に立てるのであれば,引き受けさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大村部会長 よろしくお願い申し上げます。   ここで,岩原会長は所要のため,御退席されるというふうに伺っております。岩原先生,どうもありがとうございました。 ○岩原会長 失礼いたします。 ○大村部会長 審議に入ります前に,当部会における議事録の作成方法のうち,発言者名の取扱いについて,お諮りをしたいと思います。   まず,現在の法制審議会での議事録の作成方法につきまして,事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○平田幹事 法制審議会の部会の議事録における発言者名の取扱いにつきましては,かつては発言者名を明らかにしない形で,逐語的な議事録を作成していた時期もありましたが,平成20年3月に開催された法制審議会の総会におきまして,それぞれの諮問に係る審議事項ごとに部会長において,部会委員の意見を聞いた上で,発言者名を明らかにした議事録を作成することができるという取扱いに改められております。   御参考までに申し上げますと,この総会の決定後に設置された民事法関係の部会では,いずれも発言者名を明らかにする議事録を作成するものとされております。したがいまして,この部会の議事録につきましても,発言者名を明らかにしたものとするかどうかを御検討いただく必要があるのではないかと思います。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいまの平田幹事からの御説明につきまして,御質問あるいは御意見がございましたら,御発言をお願いいたします。特に御意見ございませんでしょうか。   それでは,部会長の私といたしましても,当部会では,審議事項の内容等に鑑みまして,発言者名を明らかにした議事録を作成するということが適当だと思いますので,そのようにさせていただきたいと存じますが,いかがでしょうか。よろしゅうございますか。   ありがとうございます。それでは,当部会につきましては,発言者名を明らかにした議事録を作成するということにさせていただきます。   それでは,本日の審議に入りたいと思います。   まず,事務当局から,今回の諮問の内容及びその発出の経緯,検討の範囲,審議のスケジュール等について,御説明を頂きたいと思います。 ○平田幹事 まず,民法第822条の懲戒権に関する規定等の見直しについてですが,先ほどの小出委員からの御挨拶にもございましたとおり,児童福祉法等の一部を改正する法律において,検討条項が設けられたところでございます。   政府においては,児童虐待防止対策に関する関係閣僚会議を開催するなどして,児童虐待防止対策について取り組んできたところですが,平成31年1月にも児童虐待による死亡事件が発生するなど,深刻な状態が続いていることなどを踏まえて,この検討条項が定められました。   なお,この条項で目途とされている施行後2年は,令和4年4月1日になりますので,遅くともこの頃までには,一定の結論を得ることが期待されております。   次に,民法の嫡出推定制度については,昭和22年の民法改正の際も,明治以来の規定を基本的に引き継ぐ形で定められ,これまで実質的な見直しはされてきませんでした。しかし,現行法の下では,嫡出否認の訴えの提訴権者や提訴期間が厳格に制限され,母は夫の協力が得られなければ,嫡出推定を覆すことができない場合があり,子の父は夫ではないと考えているときに,母が出生届を提出しないことがあるといわれております。   また,嫡出推定が及ばない場合であっても,父子関係を否定する手続をとることが母等の負担になっているともいわれており,これらが無戸籍者問題の原因になっているとの指摘がございます。   法務省はこれまで,無戸籍者問題の解消のため,様々な取組をしてきましたが,将来にわたって無戸籍者を生じさせないためには,嫡出推定制度を中心とした見直しの検討が必要であると考えられます。   続きまして,この部会で取り扱う審議事項についてですが,基本的には諮問にあるとおり,懲戒権及び嫡出推定制度に関する規定の見直しを検討課題とすることを念頭に置いております。ただ,これに関連する範囲で,更に検討が必要な課題があるとすれば,審議の中でそれを取り上げることを一切排除する趣旨ではございません。二つの検討課題と関連性があり,同じ程度のスピード感を持って成案を得ることできるテーマであれば,同様に取り上げていくことも可能と考えております。   なお,この際,お手元の参考資料1及び2の各研究会報告書と本部会における検討との関係につきまして,念のため申し上げます。   懲戒権及び嫡出推定制度に関する規定等の見直しにつきましては,法務省も参加した二つの研究会においても検討されております。お手元の参考資料1及び2の各研究会報告書は,その議論の成果になります。   これらについては,本部会において議論をしていただく際にも,少なからず御活用いただけるものとは考えておりますが,本部会は,法務大臣の諮問を受けて新たに設置されたもので,研究会の続きではございません。本部会の委員,幹事の皆様の中には,研究会のメンバーでいらっしゃった方もいらっしゃいますが,その中で述べられた御意見に拘束されるわけではございませんし,論点についても,研究会で検討された論点のみが本部会で検討されるといったものではございません。   最後に,今後の審議のスケジュールについてですが,今回の二つの検討課題については,一方で徹底した議論をし,社会の声を広く聞いていく必要がございますが,他方で,より早く成案を得るべきだという声が高まるところもあり得るところで,現時点で明確にスケジュールを設定することは難しい面がございます。   そこで,甚だ恐縮ではございますが,次回は懲戒権,次々回は嫡出推定制度といったように,1回の会議ごとにいずれかのテーマを取り上げるということで進めまして,議論が一巡したところを目安として,中間試案の取りまとめ時期の提案をさせていただければというふうに考えております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   ただいまの平田幹事からの説明につきまして,御質問がございましたら,御発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。   それでは,御意見等については,後で伺いたいと思います。   続きまして,事務当局から,部会資料1について御説明を頂きたいと思います。 ○小川関係官 それでは,部会資料1について説明いたします。   本資料では,フリーディスカッションの参考に作成したものですので,説明は簡単なものとさせていただいております。   第1は,懲戒権に関する規定の見直しについてです。   冒頭は,諮問に至る経緯と共通しますので,割愛させていただきます。   1では,まず,児童虐待防止法第14条第1項に親権者による体罰の禁止の定めが置かれたことを踏まえ,民法の懲戒権の行使として,どのような行為が許容されるのか,また,懲戒権に関する規定の見直しには,どのような意義があるのかについて,御意見を頂戴したいと考えております。   次に,懲戒権の規定の見直しの具体的な方向性について,これまで指摘されてきたものとしては,懲戒権に関する規定自体を削除する,懲らしめ戒めるという懲戒の文言を改める,民法においても親権者による体罰の禁止を明文で定めるなど,懲戒権の行使として許容されない範囲を更に明確化する,という三つが挙げられますが,これらの方向性について,お考えを伺うものになります。   さらに,これらの各方向性を組み合わせることも考えられるとの指摘や,児童虐待防止法第14条第1項の体罰の禁止が置かれたことを踏まえると,懲戒権に関する規定は現状のまま維持することも選択肢の一つとして考えられるとの指摘もありますので,これらの点についても御意見を頂戴できればと思います。   2は,見直しに伴って,御検討いただきたい点を挙げております。   一つには,懲戒権の規定の見直しによって,親権者による正当なしつけもできなくなるのではないかという懸念にこたえることが必要になるものと考えられます。また,民法第822条の懲戒権に関する規定は,第821条の居所指定権,第823条の職業許可権とともに,民法第820条の親権者の一般的な権利義務に関する規定の具体的な現れであるとの指摘がありますが,民法822条を見直す場合には,併せて821条,823条の規定との規定の関係についても整理する必要があるとも考えられます。これらの点についても,併せてお考えを伺えればと思います。   第2は,嫡出推定制度に関する規定の見直しについてです。   1は,見直しの具体的な在り方について,大きく三つの論点を挙げております。   まず,民法第772条第1項及び第2項の嫡出推定規定の在り方についてです。特に,婚姻の解消等から300日以内に生まれた子を前夫の子と推定する点について,これが無戸籍者問題の一因になっているとの指摘がありますが,この点の見直しについて,お考えをお伺いするものです。   また,これに関連して,婚姻の成立から200日以内に生まれた子についても,民法の条文上は夫の子とは推定されませんが,戸籍実務では,嫡出子としての出生届が認められていることを踏まえ,見直す必要があるのではないかとの指摘についてのお考えを頂戴したく存じます。   次に,民法第774条が夫のみに否認権を認めていることが,無戸籍者問題の原因となっているとの指摘を踏まえますと,母のイニシアチブで嫡出否認の手続を行うことができるようにすることで,無戸籍者問題の解消につながるとも考えられますが,この点についてのお考えを伺えればと思います。併せて,否認権の行使の機会を十分に確保するという観点から,民法第777条が定める期間制限を見直す必要があるかどうかについても御議論いただきたいと考えております。   三つ目に,いわゆる推定の及ばない子については,嫡出否認の訴えによらず,親子関係不存在確認の訴えや認知の訴えによって,父子関係を否定することができるとされており,判例は,いわゆる外観説に立っているといわれます。否認権者の拡大や嫡出否認の訴えに関する期間制限の見直しをする場合には,推定の及ばない子に関する解釈論への影響についても御議論いただきたいと考えております。   このほか,無戸籍者問題を解消するためのその他の方策として,血縁上の父子関係が存在しないことを前提に,子と法律上の父など,一定の者との間に合意が成立している場合には,嫡出否認の訴えによらずとも父子関係を否定することができることとすべきであるとの指摘のほか,どのような方策が考えられるかについて,お考えを伺いたいと考えております。   第3は,以上述べましたことのほかに検討すべき事項をお伺いするものです。   冒頭にも述べましたが,本部会資料は参考という位置付けですので,フリーディスカッションでは,様々な観点からの御議論をお願いいたします。 ○大村部会長 ありがとうございました。   それでは,続きまして,厚生労働省の方から,参考資料5「児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律の概要」に基づきまして,法律の概要と親権者による体罰を禁止する規定が置かれた経緯などについて,御説明を頂きたいと存じます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○成松幹事 厚生労働省の家庭福祉課長でございます。  私の方から,参考資料5に基づきまして,先ほどの通常国会で成立いたしました児童虐待防止対策の強化を図るための児童福祉法等の一部を改正する法律につきまして,御説明をさせていただければと思います。時間の関係で,主なものに限って,あるいは背景,経緯に限って,ちょっと御説明をさせていただければと思います。  この法案自体の検討は,実は平成28年の児童福祉法改正の検討規定というのがございました。その検討規定に基づきまして,検討を行ってまいりました。その検討の,平成28年法改正では,児童相談所の業務の在り方,あるいは要保護児童の通告の在り方,児童などの福祉に関する業務に従事する者の資質向上の在り方というものについて検討規定が置かれて,それらの検討を行ってきたところでございますが,昨今の児童虐待をめぐる,依然として続く深刻な状況,特に悲惨な事件というのが繰り返されているという状況に鑑みまして,それらの事案を見たときに見えてきた課題についても,併せて検討を行って,今回の法案に盛り込んだというのが,大まかな経緯となってございます。  以下,改正の概要の個々につきまして,御説明をさせていただければと思いますが,改正の概要の横に書いていますとおり,衆議院による修正というのがなされてございます。修正がなされた結果,衆議院,参議院とも全会一致で成立してございますが,国会での修正というものがございますので,それは下線を付している部分というのが,国会の修正だと御理解いただければと思います。  一つ目,児童の権利擁護といたしまして,先ほど出てまいりました,親権者は児童のしつけに際して,体罰を加えてはならないこととするというようなことでございます。児童福祉施設の長についても同様とするということでございます。  こちらは,先ほど来,様々な方がおっしゃっていただいたように,保護者がしつけの一環である体罰と称して,実際は虐待を行ってきた事案というのが多くあるということで,中には死亡に至るなどの重篤な結果につながるものがあったということ,あるいは国際的な動向ですね,子どもの権利委員会,国連の方の子どもの権利委員会からも,最近所見が示されているということもございますので,この法案においては,体罰が許されないものであることを法定化するということ,民法上もこれにより,体罰が許されない懲戒であることが明確になるということにすることで,まず体罰を禁止する,体罰によらない子育てを推進していくということの趣旨で,この規定を入れさせていただいたというものでございます。  そのほか,2ポツで,児童相談所の体制強化,関係機関との連携等について書かせていただいてございます。  その(1)の①で,一時保護等の介入的対応を行う職員あるいは保護者支援を行う職員を分ける等の措置を講ずる。②で,弁護士の関与を強める,あるいは児童相談所に医師及び保健師を配置して,医療的な見方というのも,連携というのをしっかり図っていくということなどが,(1)の主なものでございます。  (2)児童相談所の設置促進につきましては,特に都市部では,一つ一つの児童相談所の管轄する人口などが非常に多くなっていると。100万人を超えるような管轄の児童相談所もあるということで,なかなか児童相談所の網の目が粗いのではないかという御指摘がございました。  こちらの方は,国として一定の基準を示させていただき,それを参酌して,都道府県が児童相談所の所管区域を定めていただくこと,あるいは中核市特別区が児童相談所を設置できるような支援をしっかりやっていくことというのが,(2)の方に書かせていただいていることでございます。  (3)の関係機関間の連携に移らせていただきますと,要保護児童対策協議会の関係の規定,あるいは,③は,児童が転居した場合の連携の規定を置かせていただいていますし,④は,学校,教育委員会等の守秘義務に関して書かせていただいています。⑤は,DV対策との連携強化が必要ということで,DVの関係機関との連携等々について書かせていただいています。  3ポツのところで,検討規定その他所要の規定の整備では,幾つかの検討規定が置かれております。こちらの方で,先ほど来出ています③のところでいいますと,民法上の懲戒権の在り方について,施行後2年をめどに検討を加え,必要な措置を講ずることとするということを書かせていただいていますし,その他,一時保護あるいは児童の意見表明権,⑥として資格の在り方その他の資質の向上策についてなどにつきまして,検討規定が置かれているということでございます。  この法律自体の施行期日は,原則,一番下の方に書いていますが,令和2年4月1日でございますので,施行後何年というのは,この令和2年4月1日を起点とがされるということになってございます。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   続きまして,参考資料6「無戸籍者問題の解消のための法務省の取組」,それから,参考資料7,8のリーフレット,冊子に基づきまして,無戸籍者問題をめぐるこれまでの主な経緯,無戸籍者の把握,解消の現状等について,御説明を頂きます。よろしくお願いいたします。 ○杉浦幹事 法務省民事第一課長をしております杉浦でございます。   それでは,参考資料6に沿いまして,無戸籍者解消に向けての法務省の最近の取組について御説明いたします。   1枚めくっていただきまして,資料1ページは,これまでの法務省の取組の主な経緯でございます。   一般に無戸籍者問題は,日本人でありながら,戸籍に記載がされていない方がいるという問題を指しているところでございますけれども,以前から,離婚後300日問題といういわれ方もされておりまして,主として民法の嫡出推定制度との関係で,しばしばマスコミで取り上げられておりました。比較的最近では,平成18年に新聞記事で大きく取り上げられまして,社会の注目が高まったところでございます。   その際の法務省の戸籍行政上の対応策としましては,母親が離婚後300日以内に出産した子の出生届を提出する際に,離婚の時点では懐胎していなかったという医師の証明書を提出すれば,元夫の嫡出推定は及ばないものとして,父欄を空欄にして出生届を提出することができるというような取扱いを開始いたしました。   2ページの図でいいますと,左下の方に,例外②という吹き出しがございますけれども,この取扱いは,この例外②に当たるものでございます。   これは,法務省民事局長通達による取扱いですが,この通達を発出しました平成19年5月以降,今年の3月末までの約12年間で,全国で約3,500人について,この取扱いに沿った出生届が受理されているという状況にございます。   その後,平成26年5月にテレビ番組で再び大きく取り上げられまして,それを契機としまして,現在取り組んでいるような,より踏み込んだ,法務局や市区町村の職員が当事者の方に直接働き掛けるといった取組を進めているところでございます。   資料3ページにまいります。このグラフは,統計を取り始めました平成26年10月からの無戸籍者と判明した方の数,それから,戸籍に記載がされて,無戸籍が解消された方の数の累計です。把握された方は2,407人,そのうち1,577人,約66%の方が,戸籍に既に記載されて,無戸籍が解消されてございます。毎月一定数の方が無戸籍が解消されている一方,新たに毎月数十人ずつ,無戸籍の方が把握されるといったような状況となっています。   次の資料4ページの①から③までの円グラフは,本年6月10日現在で無戸籍の状態にある方830人についての状況でございます。   ①の年齢分布を見ますと,4歳以下が約半数,14歳以下も含めますと,全体の4分の3を占めております。その一方では,31歳以上でも,なお無戸籍の方も相当数おられるという状況でございます。   それから,②の母の婚姻の状態につきましては,婚姻中に子が出生した割合が全体の25%,離婚後300日以内に出生した割合が56%となっております。   ③の戸籍に記載されていない理由,すなわち無戸籍の状態となった理由,無戸籍となった理由としましては,(前)夫の嫡出推定を避けるためが全体の4分の3以上を占めております。   円グラフ四つ目の④は,この統計を開始した以降に無戸籍が解消された方全ての,1,577人おりますが,どのような方法で無戸籍が解消されたかを表したものでございまして,全体の4分の3の方が親子関係不存在確認,強制認知,嫡出否認といった裁判所の手続を経て,無戸籍が解消されております。これら以外には,嫡出推定を受ける(前)夫を父として出生届を提出するといったことで解消された方もいらっしゃいます。   最後のページでございますが,無戸籍者の問題には,これまで行政面の対応としましては,ここにありますような三つの柱で取り組んできたところでございます。   一つ目の情報の収集の強化でございますが,無戸籍者の方を把握するというところが解消のスタートラインとなるということで,取り組んできたところでございます。   行政におきまして,無戸籍の方を把握する主な契機としましては,やはり母親が出生届を提出するために,市区町村の戸籍の窓口に訪ねてこられる場面が多いかと思われます。その場で母親が,市区町村の職員から,出生届には元夫を父として記載する必要があるといった説明を受けて,出生届の提出を留保し,無戸籍の状態が把握されるというようなケースが多いと思われます。   そのような機会を通じて,市区町村で無戸籍の方を把握した場合には,管轄の法務局に報告,連絡していただきまして,その結果を法務省で全国の情報を集約するということとしております。   一方で,母親が戸籍の窓口に訪れることがないまま,既に潜在化しているようなケースもあろうかと思われます。そういったことから,戸籍の窓口の担当者だけではなくて,福祉ですとか年金といった市区町村の役場内の他の部署の方とか,あるいは教育委員会ですとか児童相談所といった他の行政機関でも,無戸籍の情報に接した場合には,市町村の戸籍担当あるいは法務局に情報を提供していただくようにということで,お願いをしてきているところでございます。   無戸籍者の把握につきましては,また,従来は1歳未満の方,要するにゼロ歳児については,届出が一時的に遅延しているだけなのではないかということで,市区町村で把握したとしましても,統計には計上しないという取扱いをしておりました。ただ,統計に計上しないということとしておりますと,単なる統計の問題にとどまらずに,行政としての個別の事案に対するフォローもおろそかになる可能性があるといったこと,また,やはりいろいろなケースを見ておりますと,母親も子どもが小さいときよりも,だんだん成長してくると,無戸籍者解消に熱意がなくなってくるという傾向もうかがわれます。やはり子どもが小さい頃から,しっかりとフォローしていった方がよいだろうという,そういった考え方から,去年の10月からは,ゼロ歳児,ただ,生まれたばかりというわけにもいきませんので,生後3か月を経過した方についても,ゼロ歳児であっても,無戸籍者の統計に加えることとしまして,各市区町村,法務局でフォローしていくということとしております。   先ほど棒グラフがありましたけれども,昨年の10月から若干把握のペースが上がっておりますが,そういった事情がございます。   それから,また,出産前からも含めて,母親に働き掛ける取組ということも,最近始めたところでございまして,お配りしておりますようなリーフレット,参考資料7となっておりますけれども,こういったものも,産婦人科医ですとか,市区町村の母子手帳交付窓口でも,妊婦の方に配布していただいているというところでございます。   取組の二つ目として,丁寧な案内とございますが,母親が出生届を提出しに市区町村の戸籍窓口に来られるときの御案内が一番重要だと思います。そういったところで,裁判手続ですとか法テラスの利用などの案内をしているところでございます。   そういった場面での市区町村の職員の参考資料となるもの,あるいは直接当事者の方に御覧いただくものとして,昨年作成しましたのが,参考資料8としてお配りしております手引書でございます。お配りしておりますのは,今年の3月に改訂した改訂版でございまして,同じ内容は,法務省のホームページにも掲載しております。   市区町村で無戸籍者を把握しますと,管轄法務局に情報提供するというお話を先ほどいたしましたけれども,それ以降は,法務局の職員が市区町村の職員,その他の行政機関,あるいは弁護士会等と連携をとりながら,進捗管理をしていくということとしております。ただ,その後も,母親が裁判所や法テラス,弁護士会といった専門機関に相談することなく,進展が見られないようなケースにつきましては,市区町村や法務局の担当者が母親と直接面会しまして,相談に乗るなど,母親を支援しているところでございます。   最後に,情報収集にとりましても,母親に対する支援にとっても重要となるものが,関係機関との連携でございまして,法務省本省におきましても,無戸籍者ゼロタスクフォースというものを開催しまして,関係機関等と調整・連絡をしているところでございますが,最近では,二つ目の丸にありますように,各地域ごとに,市区町村,弁護士会,法テラス,裁判所等の関係機関等と連携しまして,意見交換,情報収集等をしているところでございます。   参考資料8の手引書につきましても,本省の無戸籍者ゼロタスクフォースの場で取りまとめていただいたものでございます。   ちなみに,この手引書の17ページを御覧いただきますと,一番後ろの方ですが,戸籍に記載される前であっても,受けることができる行政サービスというものが掲載されております。関係府省においても,無戸籍の方を支援するという取組を進めていただいているところでございますが,ただ,戸籍は国民の親族的身分関係を登録・公証する基礎的な帳簿でございますので,本来,戸籍に記載されることで行政サービスを受けられるようになることが望ましいということは,言うまでもございません。   不動産や預金といった財産関係の相続手続を始めまして,戸籍に代わる代替的な証明手段がないものも少なくないと思います。こういったことから,私どもとしましては,試行錯誤しながら,無戸籍者の解消の取組強化に努めているところでございます。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   ただいま頂きました,3人の方からのそれぞれの御説明につきまして,御質問がございましたら,御発言をお願いいたします。 ○棚村委員 最後の無戸籍者の問題について,少し質問をさせていただきたいと思います。   私自身,無戸籍の問題,法務省の方とも御相談させていただいたり,いろいろ活動してきた経緯がありまして,これは2007年ぐらいに,やはりかなり大きな問題になっておりました。   それで,私自身は,この無戸籍の問題は,もちろん嫡出推定の離婚後300日問題という民法の実親子の成立をめぐる問題も,かなり影響はしていると思ったんですけれども,ただ,DVとか,ストーカー対策みたいなものも関係していますし,それから,もう一つの問題としては,戸籍法でいうと,捨て子だったり棄児ですと,市区町村長が取りあえず名前を付けて,出生届を出して作っておいて,後で親を捜すというか,義務者をですね。   要するに,届出をしない事情というのが非常に多様にあるものですから,一つの問題だけをクリアすれば問題が解決するというよりは,非常に総合的・複合的に対応しなければいけないというふうに考えておりました。   それで,私自身は,戸籍法の棄児という類型だけではなくて,例えば,警察でも児童相談所でも何らかの形で,学校でもそうですけれども,保育園とか,そういうところで,戸籍が作られていないというようなことが何らかの形で問題になったり判明したときに,そういう意味では,取りあえず市区町村長が出生届,特に出生届がなくても,最近は,住民票とかいろいろな,教育委員会とかいろいろなところの対応が,個別にはできるようになってはきたんですけれども,戸籍法の改正ということで,無戸籍の人を発見した場合に,市区町村長が何らかの対応を採るという手段や制度の創設とかというのは,検討されたことがありますでしょうか。   私自身は,そういう方法も可能ではないかというふうに申し上げたことがあったんですけれども,もし検討が非常に難しいとか,それはなかなか対応が困難であるということであれば,そういうことも含めて,ちょっと御質問させていただきたいと思います。 ○杉浦幹事 現行の戸籍法におきましても,市区町村が戸籍に職権で記載するといったこと,そういった手続が用意されてはいるわけですが,実際,無戸籍者の解消におきまして,市区町村長の職権記載によって無戸籍が解消された事例,把握している限りは,5件ほどしかございません。   やはり,実務を担当されている方,市区町村や法務局の職員の方にいろいろ聞きますと,特に嫡出推定が問題となっているようなケースにおきまして,無理に戸籍に記載してしまうようなことになりますと,行政に対する母親の警戒心が高まってしまうのではないかというような懸念を持たれる実務家が多いようですので,今後,どうすべきかというところはあるのかもしれませんけれども,現在までのところでは,なるべく裁判手続を経た上で,嫡出推定を外した形で出生届を提出していただく方向で御案内をしているところでございます。 ○棚村委員 すみません,続けてなんですけれども,戸籍法上の対応というのは,飽くまでも民法と違って,実体法ではありませんので,手続法だと思うんですが,ただ,捨て子とか棄児の場合だと,要するに,市区町村長が対応できるのに,たまたま親がいて,何らかの事情で届け出ないと,無戸籍の状態がずっと続いてしまうというときに,緊急避難的に対応するとか,それから,不明高齢者のときも実は,職権消除というようなことを迅速に進めるとか,いろいろ対応されたと思います。   つまり,戸籍の届出主義というのが,家制度の下では,やはり家長だとか家族に責任を,ある意味では果たしてもらうことによって,家族を統率したり,結束を強めていくという役割はあったと思います。ところが,家族が非常に弱くなって,もろくなって,力が小さくなってしまうと,親が何らかの事情で出生届をしないと,子どもたちは生まれてすぐ,自分で届け出るわけにいきませんから,そういうときに緊急避難的に,今回も,もし,もちろん時間が非常に限られていますから,争点を絞って議論をしていかないと,余り拡散すると,実効的な対応策とか民法の改正というのはできなくなると思います。ただ,これまでも無戸籍の問題をいろいろ取り上げたりしたときに,戸籍の届出だとか出生届だとか,手続的なことをちょっと工夫すると,大分改善するようなこともなくはなかったものですから,もし今後,そういうような検討の可能性があれば,つまり緊急避難的にですよね。無戸籍の状態の子どもが発見されたときに,何らかの形で,親が対応できないときに,親を指導したり,きちんと届け出るように促すということも大事なんですけれども,やはり何らかの形で,手続的に対応できないかということは,引き続き,もし御検討いただければと思います。   というのは,海外なんかの例を見ても,割合と家族に,親に出生の届出の義務付けをしているだけではなくて,例えば医師とか助産師とか,そういう職務上,子どもの出生に関わったところに義務を課したりということも行っっていますので,ある意味では,今後,届出義務者も,家族に親にというのが,親がやってくれればいいんですけれども,何らかの事情でできなかった場合に,死亡届と同じような形で,いろいろな形で,少し検討する余地はあるのかなということで,ご質問をいたしました。長くなりましたが,ありがとうございました。 ○杉浦幹事 恐らく,先ほど私が申し上げていた,職権で記載するケース,実際に記載しているケースというのは,母親がどこにいるのか分からないような方,特に,相当年齢が高くなった方で,母親が誰かというところから法務局で認定して職権記載するといったものかと思います。裁判所で就籍の審判を受けて,就籍届を出すというようなものもあるかと思います。恐らく委員がおっしゃったのは,そういうのではなくて,母親がいるようなケースでも届出をしないような場合には,何らかの方法で行政が関与するような形で,戸籍に反映させる方法もあるのではないかというような御指摘だったと思います。   そのあたりは,全体の御議論の中での話かと思いますけれども,またいろいろと御示唆を頂ければと思います。よろしくお願いします。 ○大村部会長 どうもありがとうございました。   棚村委員,今のところ,よろしゅうございましょうか。 ○棚村委員 はい,結構です。 ○大村部会長 ありがとうございます。   それでは,ほかに御質問があれば伺いますが,いかかがでございましょうか。 ○大森幹事 今の無戸籍問題の状況の円グラフについてですが,②等は,全て830人の内訳だと御説明いただいたかと思います。上の表でいきますと,差のところの人数かと思われるのですが,既に解消された部分も含めて,内訳が分かれば,もっと状況が分かるのではと思ったのですが,その辺りは,把握はされておられるのでしょうか。 ○大村部会長 お願いいたします。 ○杉浦幹事 現在,手持ちでそういった統計は持っておりません。無戸籍が解消された方,解消されていない方を問わず,特に解消されていない方はそうですけれども,なかなか,母親と連絡が取れないとか,そもそも本人も行方不明になっている方というのもかなりいらっしゃいまして,そういった面で,なかなかしっかりとした統計が取れないという事情もございます。けれども,この部会の中の御審議の中で必要な統計等は,御指示いただければ,準備したいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございました。   よろしいですか。ありがとうございます。   そのほかに,御質問いかがでございましょうか。   ではまた,何かありましたら,後ほど質問していただくということにいたしまして,この後は,本日は第1回目の会議ということでございますので,次回以降の実質的な調査・審議に先立ちまして,フリーディスカッションをしたいと思っております。   先ほど配布,そして説明がありました部会資料1がございますけれども,この1で申しますと,第1の懲戒権に関する規定の見直しと,第2の嫡出推定制度に関する規定の見直しということで,大きく二つの項目が挙げられております。第3,その他の検討事項というのもございますけれども,大きく分けますとこの二つございますので,この後の時間,途中で休息を挟みたいと考えておりますので,前半は主として,懲戒権に関する規定の見直しということにつきまして御意見を頂き,後半で嫡出推定に関する規定の見直し,あるいはその他の問題について,御意見を頂ければと思っております。これは緩やかな区別でございますので,多少前後するということもあろうかと思います。   以上を前提に,まず最初に,第1の懲戒権に関する規定の見直しにつきまして,御意見を頂ければと思います。どなたからでも結構でございますので,御自由に御発言をお願いいたします。 ○磯谷委員 今回,懲戒権規定の見直しが議題に上ったということを,まず歓迎をしたいと考えております。   平成23年の民法改正の過程でも,この問題は議論をされましたが,当時は,国民の皆さんが「子どもを叱れなくなるのではないか」といったような誤解をするのではないかという懸念や,その他諸般の事情で,懲戒権の廃止ということは見送ったわけであります。   しかし,その後,御承知のように,非常に痛ましい虐待の事件が後を絶たない中で,先般の国会で,親権行使の在り方について,議員の先生方が熱心な議論をなさったと伺っております。その結果,体罰の禁止,そして懲戒権についての見直しという方向が打ち出されたのだと理解しております。   懲戒権の規定については,私の理解では,実際にはほとんど機能していない条文だと考えています。刑事の場面でも,理論的には違法性阻却事由になり得るのでしょうけれども,実際の裁判を見ますと,ほとんどのケースにおいて,社会通念上,許容範囲を超えているということで,一蹴されています。   一方,虐待の現場においては,子の親の方から,懲戒権という正当な権利の行使だという弁解が出て,現場の児童福祉司も介入や指導にちゅうちょするという現状が報告をされております。   懲戒権の廃止をしたからといって,直ちに具体的な効果が期待できるというわけではないと思っておりますけれども,今回の体罰の禁止とあいまって,国民の皆さんに与えるメッセージとしては,非常に明確なものになるのだろうと思っています。   その意味で,今回こそ懲戒権の廃止を,私としては是非求めたいと思っております。   メッセージである以上,やはりそれは,クリアな明確なものである必要があると。そういうことから,中途半端なものではなくて,明確に削除という形でメッセージを届ける必要があるのだろうというふうに考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○棚村委員 私も磯谷委員と全く同感です。   8年前のやはり改正でも,820条の監護教育権,大村委員とか,多分,水野委員もそうおっしゃっておられたと思うんですけれども,その中で適切な相当な範囲で,教育指導というのができるのではないかという議論がありました。   今,2018年の段階だと思うんですけれども,スウェーデンとかノルウェー,フィンランド,それから北欧の国々は,いち早く,ある意味では,懲戒という言葉も含めて改正をし,ドイツなんかも2000年に,暴力によらないで子どもは教育を受ける権利があるんだと,親による体罰とか,それから精神的な苦痛や被害,屈辱的な行為,そういう教育的な措置というのは許されないというような形で規定をしています。54か国が今,そういうような形で,懲戒権という言葉そのものもなくしていると言われています。   元々歴史的には,やはり親の支配権という概念の中で,親権という中で,監護教育の中に,ある意味では,懲戒というんですか,戒めるということもあったのですけれども,やはり家庭内での暴力とか虐待とかという問題が,深刻な事案が出てくるにつれ,言葉そのものももちろん,なくしたからといって,ボーダーラインというか,グレーゾーンがなくなるわけではないので,どこまでが許されて,どこからが許されないのかということは明確にしていかなければいけないんですけれども,そういう意味では,象徴的な宣言的な意味で,なくすということには大きな意義があると思います。   幾つかの国をちょっと見ていましたら,ニュージーランドなんかでも,やはり,あったときとない場合では,大分,例えば家庭でのしつけの行き過ぎみたいなことで,例えばテレビを絶対見せない,お小遣いを減額するとか,いろいろなペナルティー等,殴る蹴るだけではなくて,精神的にも追い込むような幾つかの類型があって,そういうことに対して,はっきりと,やはり親としてどういう形で,子どもに対して接して,教育をしていったらいいかということの議論が深まったというような報告がありました。私自身も,8年前にもやはり,できれば削除してほしかったんですけれども,監護教育に必要な範囲で懲戒をすることができるというので,しつけということも,許されるしつけというものを明確にする意味で,そういうような段階を踏まれたと思うんですね。   ドイツを見ていますと,やはりドイツなんかも,懲戒権の規定自体がなくなったのは,1957年の男女同権法のときになくしています。そして,1997年の改正のときには,親の配慮というので,むしろ親権というふうにいっていたのを,親の配慮とか,あるいは,ほかの国では親責任とかという形で,名称自体も変えたんですけれども,そのときにやはり,義務の方を先に持ってきて,権利というのを後に持ってくるとか,相当な工夫を凝らしました。   そして,その後すぐ,数年たって,やはりセンセーショナルな事件があり,ドイツでも親の暴力とか体罰とか,行き過ぎた懲戒みたいなことが,やはり虐待につながっていったものですから,2000年には,子どもは暴力によらないで教育を受ける権利というのを民法で規定をすることになりました。これらの国々では,やはり親であっても,懲戒や教育という名目で,暴力,体罰とか,行き過ぎた屈辱的な措置は許されないんだということをメッセージとして,磯谷委員がおっしゃったように,明確にすることによって,社会全体で国を挙げて,暴力や,子どもに対する心理的な虐待,要するに,モラルハラスメントとか精神的な侵害も非常に深刻になって,あんたなんか生まれてこなきゃよかったとか,あんたなんかいない方がいいんだとかというその言葉自体も,各国で,心理的に子どもを追い込むということに対する反省というのが,今は強く打ち出されています。   そういう状況の中で,今日本でも深刻な児童の虐待や体罰の問題が起きているわけですから,是非,すぐなくなるということではありませんし,線引きの問題は残っていくんだと思いますけれども,基本法である民法の中で,そういうことを宣言することによって,いけないんだということの意識を皆さんにきちんと持っていただくという意味では,磯谷委員がおっしゃったような考え方には賛成です。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○窪田委員 少し具体的な話になっているのかもしれませんが,私自身も,磯谷委員,棚村委員と前提認識が違うということではない思いますし,体罰が許されないということを明らかにするということについても,多分共有されていると思うんですが,ただ,その上で,親権制度部会の時点で懲戒権の規定を削除していたら,それだけで終わったではないかという気もするのですが,現時点で一番明確なメッセージとなるのが,懲戒権についての規定を削除することなのか,あるいは,何らかの形で残した上で書き込むという方法もあるような気がします。むしろ禁止される行為を明文で書くということが,メッセージとしてはより有効なのではないかという気もいたします。   つまり懲戒権の規定を,一番単純な形ですと,削除してということになるわけですが,でも,そうはいっても,監護の行為として,一定の行為が,やはり親は子に対してしていくという状況があるんだとすると,そうした中で,どういう行為が許されないのかというのを書くというのは,一つ,やはりあり得るの方向ではないかという気はいたします。   法的にいえば,今回の児童虐待防止法とか,そちらの方の特別法で規定されていますので,体罰が許されないということは,すでに法規範としては明らかになっているのかもしれません。ただ,民法の側でも,そうしたことについて,やはり許されない行為について規定するというのは,意味があるかもしれないという感じがしております。   したがって,前提の認識が違うということではなくて,どういうふうな立て方をしていくのかということを,これから議論していけばいいのではないかと思います。   それから,ちょっとそれに関連してなんですが,部会資料1の2ページでは,最初の方で,民法の懲戒権の行使として許容される親権者の行為の範囲というふうな書き方がされていますが,恐らく許容される親権者の行為の範囲を規定するというのは,極めて困難なのではないのかなという気がいたします。   民法として規定できるのは,やはり許容されない範囲がどこまでなのかということについてであり,この部分に関していうと,比較的広く共有されるのではないかなと思いますので,その部分について,やはり明確にしていくということが求められるのではないかというふうに,差し当たり,そのように考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほか,いかがでしょうか。   今,お三方は,基本的に同じ方向性を示されておられますが,実際にどういう形で立法するかというところについては,幾つか選択肢があるだろうというような御指摘だったかと思いますけれども,その線に沿った御議論でも結構ですし,あるいは,それと違う,多少違う認識をお持ちの委員がおられましたら,御意見を伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○棚村委員 私は,カンボジアの民法典の起草作業,2007年だったのですけれども,そこに加わったときに,カンボジアというのも,社会主義の政権が途中であったり,いろいろあって,社会主義的な形でいうと,夫婦の間でも,労働をするとか,それから職業生活を尊重するとか,その中に人格の尊重と,それから暴力をしないという,DVがすごく,やはりカンボジアでも多くあったものですから,入れさせていただきました。できれば,子どもの問題も是非入れたかったのですけれども,なかなか時間の関係もあって,個別の規定は入れられませんでした。   北欧について,今回,規定を見ていると,子どものやはり権利ということを打ち出したり,子どもの人格の尊重とか,窪田委員がおっしゃった,正に子どもの人格への配慮というような言葉と,それから,許されない体罰として,体罰という言葉と,有形力の行使とか暴力ということと,それから,もう一つはやはり,屈辱的なとか,人格をやはりおとしめるような行為は許されないという宣言をしていました。こういうようなところは,諸外国での規定ブリなどを参考に議論をしていくと,コンセンサスが頂けるのではないかと思います。   つまり,許される範囲については,私はスポーツの関係で,体罰の禁止についていろいろ議論したことがあったのですけれども,そのときも,どういう行為が具体的に駄目なんだろうかという線引きがなかなかやはり難しい,ボーダーラインとかがたくさん出てきています。ただ,例示することはできるのですけれども,なかなか具体化,文章化するとすると,やはり,かなり一般的・抽象的な表現になると思うんですね。   ドイツなんかでもそうですけれども,やはり精神的な侵害とか,それから有形力の行使とか暴力とか,それから屈辱的とか,そういうような言葉で,こういうような措置や取扱いは許されないというようなところで,もしかしたら,民法に規定が入るだけでも,非常に,ルールとしては明確にできるのかなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。 ○磯谷委員 先ほど窪田先生がおっしゃったこととは,もちろん矛盾しないと認識しておりますけれども,やはり懲戒権規定を削除する意味は非常に大きいだろうと思うのです。といいますのは,昨年度,東京都が都道府県としては初めて条例の中に体罰禁止を盛り込んだのですが,その際,私も審議に加わりました。その審議のなかで,体罰はいけないというところでは,ほぼ異論がなかったものの,しかし,民法に懲戒権規定がある以上,何か罰として許されるものがあるのではないかといった議論がどうしても出てきてしまう。   つまり,監護教育の規定とは別に懲戒権規定があることによって,やはり通常の監護教育を超えて許されるものがあるのではないか。そうすると,それと体罰との関係は一体どうなのか。許される体罰という言い方はしませんけれども,しかし,許容される罰と体罰との境界線は何か,などといった,非常に分かりにくい議論になりました。   やはりそういう意味でも,一般の監護教育の中でのしつけというものを超えたものが,懲戒権という言葉自体,あるいは懲戒権規定の存在というなかに含意されていると見られかねませんので,そういう意味でも,この懲戒権規定の削除というのは意味がある。加えて,また先ほど,いろいろ御示唆がありましたように,許されないしつけの在り方といったことを定める,それはそれで,また非常に意義があるんだろうと思いますけれども,繰り返しになりますが,懲戒権規定の削除そのものも,やはり大きな意味があるんだろうということでございます。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかの委員,幹事の方,御発言ございませんでしょうか。   1回目のフリーディスカッションですので,率直な御感触をお示しいただければと思います。 ○垣内幹事 私は,専攻は民法ではありませんので,民法820条とか822条の規定の解釈について,必ずしも熟知していないというところもあって,ちょっと発言をさせていただくんですけれども,今出されていた御議論はいずれも,もっともなところがあるかと思います。   ただ,前提としまして,現行の規定が一体何を規定していて,それを削除するということは,もちろんメッセージとして,国民一般がどう受け止めるかという問題もありますけれども,しかし,民法の規定として,何が削除によって,どう変わったのかということについて,前提として,認識が共有できるのであれば,共有した上で,削除なり,あるいは他の規定を加えるなりといった議論を進めるということであれば,門外漢の私にも,この議論がどういう意味を持つ議論なのかということが,より分かりやすいのかなと思いますので,審議の過程において,現行法がどういうものであって,例えば懲戒権の規定について,解釈は様々であって,なかなか定まらないということであるのか,それとも一定の解釈が存在していて,削除することによって,それがどう変わるのかといった点についても整理していただけると,民法学者以外の方にも分かりやすい改正になるのかなという印象を少し持ちました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   これまでの御発言の中にも含まれていたかと思いますけれども,削除すると,どういうことになるのかということについて,削除しても820条の範囲内に入るのは何かということと,822条で何かプラスされているのか,されていないのかというようなことについて,現状の認識を明らかにしてほしいという御発言だったかと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○山根委員 ありがとうございます。   今までの御意見を伺っていまして,懲戒権の規定の削除というのは,大きく理解できるものなんですけれども,やはりメッセージの出し方ということにおきましては,かなり慎重に議論して,まとめていく必要があると思っています。そういったものが独り歩きをしないように,注意は必要かなと。   虐待のようなことがなくなるためにということはもちろんですけれども,それとともに,今以上に親の育児への負担というか,不安が増したり窮屈にならないように,今の親たちの育児が望ましくできるようにという配慮が必要かと思って聞いていました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   非常に重要な御指摘を頂いたかと思いますけれども,ほかにいかがでございましょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。働く者の立場からということで,発言をさせていただきたいと思います。   連合は労働組合として,子どもの人権が守られている社会,希望する誰もが安心して子どもを産み育てられる社会を目指して,運動を展開してまいりました。昨今の児童虐待始め,相次いで悲しい事件がありましたので,先ほどの児童福祉法等の改正の議論におきましても,体罰の禁止や,あるいは保護者への支援の充実等による虐待の発生予防の強化や,あるいは虐待を受けた子ども等の心のケアなども求めてまいりました。   児童虐待が生じてしまう要因なんですが,様々複合的なものがあると思うんですが,働く者の立場から申し上げれば,保護者の働き方というのも挙げられているところでございます。   専門家の皆様とお話をさせていただくと,都市部,地方を問わず,正社員,非正社員問わず,長時間労働や過酷なノルマ,あるいはパワハラであるとか,さらに,非正規雇用でいきますと,低賃金や不安定雇用という不安の問題が,児童虐待の対応に,児童虐待に向かっていっているのではないかというお話もよく聞くところでございます。   その意味では,やはり働き方,保護者の働き方を変えなければ,虐待は減らないのではないかというふうに私どもも思っておりますし,児童虐待のない社会を作っていくのは,ただ単に児童相談所を強化するとか,あるいは虐待に至った保護者を責めるだけでは,実現はしないと思っておりまして,多面的なアプローチが必要だと思っております。そのアプローチの一つとして,親権者の懲戒権規定の見直しがあるというふうに考えています。   私ども連合としては,前回の法制審総会のところでも一貫して,親権における懲戒権の廃止を主張してきているところでございます。また,諸外国における懲戒規定のお話,先ほど棚村先生からもありましたけれども,国連子どもの権利委員会等の総括所見において,体罰の禁止が指摘されていること等からも,国際的にも懲戒規定はなじまないというふうに考えております。   連合としては,懲戒権に関する規定について,現状のまま維持するということに関しましては,社会に対する誤ったメッセージを発信することとなり,あり得ないのではないかというふうに考えております。その意味では,条文の整理だけでなく,実際に子どもや親権者にどのような影響が生じるのか,子の最善の利益を念頭に考える必要があるのではないかというふうに考えております。   専門家ではございませんが,一市民としての立場からということで発言させていただきました。 ○大村部会長 ありがとうございました。貴重な御意見として,お伺いしたいと思います。 ○窪田委員 先ほど垣内幹事からお話があった点についてです。820条と822条,細かい話になって,専門外の方には申し訳ないんですが,820条で監護及び教育の権利義務というのが,親権について基本的に規定されていて,822条で懲戒について規定されているとという点です。   822条に特別の意味があるのかということになると,822条,現在の形では,820条の規定をふまえて,子の利益のために必要な範囲で,監護及び教育に必要な範囲で,その子を懲戒することができるというふうにされているわけですが,でも例えば,子どもが危ない行為をしたときに叱るという,これが懲戒に当たるかどうか分からないのですが,危険な行為をしたときに叱るとか,あるいは,許されない行為をやったときに叱るというのは,恐らく822条がなくても,820条から説明することはできるのだろうなと思います。   ですから,その意味で,私自身も,先ほどから,磯谷委員と前提が多分違うわけではないだろうと申し上げている点にも関わりますが,822条を維持しなければ都合が悪い,何か問題があるかということではないないのだろうと思います。   ただ,現時点で,どういうメッセージを出すのかといった場合に,822条を削るだけで終わるのではなくて,822条を削ったとしても,やはり一定のタイプのものは,教育という名前でも,あるいは監護行為という名前でも,許されないということを明らかにするということが必要だろうし,そのときに懲戒権の規定を,懲戒という言葉自体がかなり強いとは思うんですけれども,残した上で,ただし書みたいにするのか,いや,削除してしまって,そういう行為は許されないとするのかということは,両方とも考えられるのだろうとは思いますけれども,いずれにしても,822条がないと,いろいろなことが説明できないとか,著しく法律状態が変わるということではないのではなと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   そのほかに御発言は,いかがでございましょうか。 ○棚村委員 多分,学校教育法も11条で,ただし書で体罰を禁止していて,校長とか教員が,やはり児童・生徒についての,児童はちょっと難しい問題あるんですけれども,子どもを一定の範囲では,やはり懲戒できるということで,組織の規律の維持とか秩序の維持という観点から,これは,いろいろな団体がそれぞれやはり一定の懲戒とか統制とか,言葉はちょっと違うと思うのですけれども,秩序維持のための規制なり規律なりをする権限を持つということはあると思います。   一番やはり,学校でも問題になるのは,どこまでが,正当な教育や指導として許されるか,どこからが体罰として禁止されるかということで,その線引きの問題は,やはり家庭でも同じことが起こってくると思います。許される行為と許されない行為についてはやはり明らかにしていかなければいけないので,窪田委員も先ほどから言っているように,やはり一般的な,最低限合意できそうな表現で,どこまでが禁止される,体罰プラス,どういう辺りの行為が,やはり人格を著しく損なうような行為は許されないとか,表現の仕方は,いろいろな国で工夫をされていると思います。   多分,そのときも,学校や部活などでもやはり,相変わらず体罰はなくならない,禁止するとはいっていても,やはりどこが許されて,どこが許されないのかということを余り明確にできない部分も非常にあるものですから,なかなか難しいと思います。   ただ,私自身は,家庭の中でも線引きの問題はあるとは思うのですけれども,やはり懲戒権ということで,窪田委員からも御説明があったように,それがあるがゆえに教育が行われているとか,しつけがうまくいっているということはないのではないかと思います。むしろ戒めるとか,そういう言葉自身がかなり誤解を生みやすいような表現になっているので,ほかの国はむしろ,子どもの権利というものを打ち出して,親からケアを受けたり,それから,安全に扱われるということが子どもの権利なんだという,そこまで踏み込んだ表現を今の民法の規定の構造の中でできるかというのは,若干ちょっと疑問があるかもしれません。しかし,やはり親の権利から子どもの権利へ,親の義務や責任という変化が重要であると思います。   ですから,多分,懲戒権というものがないと,しつけができなくなるとか,そういうマイナスな要素はないのではないかというふうに私も考えています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○窪田委員 今回の検討対象に入るかどうかという点も含めて,自由に議論していいのかと思いますので,発言させていただくのですが,今回,820条に関しても見直すということは考えられないのかと思っています。   これは,以前の親権制限の部会でも,権利と義務を少なくとも順番を入れ替えたらという議論はあって,いろいろな事情があって,そこの部分は維持されたというふうに承知しております。どこまでを子どもの権利として書くというのは,更に大きな改正が必要になるのかもしれませんが,親の立場から書くとしても,権利義務について,少なくとも順番を入れ替えてというのは,この懲戒権の制限といいますか,体罰禁止ということとの関係でも,一定の意味があるのではないかと私自身は考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   先ほどから御発言がございますけれども,現在,先般の法改正の後,体罰が認められないということ自体は前提になっているわけですけれども,その上で,民法にどのような規定を置くということが,言わば民法の象徴的な効果という点から見て望ましいのかということについて,御意見を伺ったと思っております。   ただ,その象徴的な効果については,副作用もあるかもしれないという御指摘も幾つかありまして,それをうまく調整するように規定を置く必要があるだろうと思いました。その際には,実際にどういう場合が許されない場合として想定されているのかということについて,できれば一定のコンセンサスが得られないだろうか,こんな御意見を頂いたと思っておりますけれども,今のことに関連して,あるいはその他の点につきましても,何か本日の段階で御指摘があれば,伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○中田委員 今,皆様のお話を伺っていて,方向は大体同じだろうなと思っているんですけれども,実際に規定を作る上では,やはり違いが出てくるかもしれません。   研究会で既に御検討されていまして,その中に,実質的に親権者の行為として許容される行為,あるいは許容されない行為について,具体的にまず考えて,それを言語化するのがいいのではないかという記載がございます。それは非常によく分かるんですが,結局,それは,研究会では達成できなかったのでしょうか。できなかったのだとすると,それはなぜなのか,ここでどうしたらいいのかということがあろうかと思います。   それから,多分体罰を禁止するということを民法の中でも明示するということについて,恐らく,御意見は大体一致しているのではないかと思うんですが,それだけを果たして置けるのか。その前に何かがあって,何かがある,しかし体罰はいけないという,その何かについての書き方が難しいのかなというふうに理解いたしました。   それから,別のことを一つ付け加えさせていただきたいんですが,民法の適用範囲が私,よく分からないんですけれども,日本にいる外国出身の親と子どもで,民法の適用がある場合について,しつけなり監護教育の在り方について,日本法はこうなんですよということをできるだけ分かりやすく示すということも意味があるのではないかなと思っております。その際には,これはいけないということは,やはりはっきりさせておいた方がいいのかなと思いました。 ○大村部会長 ありがとうございます。   一番最初に御質問を頂いたかと思いますけれども,研究会での検討について,事務当局の方から何かございましたら。 ○平田幹事 研究会に参加していた者として経緯を申し上げますと,この研究会は全2回で議論され,主として平成23年の議論を前提として,そこからの経緯を踏まえて論点が整理されたというふうに理解しております。   御質問は,具体的に禁止する行為等について,なぜ詰められなかったのかということかと思いますが,やはり回数がどうしても少ないというところがございまして,そこを更に深めていくというところには至らなかったと認識しております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今御説明がございましたけれども,本日,参考資料の1と2,二つの報告書が配布されておりますけれども,双方で,そのために費やされている時間はかなり違いますので,最初の方の問題につきましては,今の御説明のように,どちらかというと,論点整理のような形のものになっているということかと思います。   それにしても,中田委員御指摘のように,意見をすり合わせるというのは,かなり難しいことなのではないかと思いますけれども,しかし,そうであるがゆえに,それが要請されているというところもありまして,なかなか難しい問題であろうかと思います。   ほかに御意見いかがでございましょうか。   これまでに御発言のない委員,幹事,何かもしございましたら,御発言を頂ければと思いますけれども,いかがでございましょうか。特にございませんでしょうか。   それでは,本日のところは,第1回の会議ですので,懲戒権規定の在り方について,差し当たり皆様の御意見を頂いたということにいたしまして,より本格的な議論は,次回以降にお願いをしたいと思います。   ここで,15分ほど休憩させていただきまして,第2の論点,それから第3のその他という項目につきましては,再開後に御意見を頂ければと思います。   今3時5分ですので,3時20分まで休憩をさせていただきます。では休憩します。           (休     憩) ○大村部会長 それでは,時間になりましたので,審議の方を再開させていただきます。   先ほどは,部会資料1の第1,懲戒権に関する規定の見直しにつきまして,委員,幹事の皆様の御意見を頂きました。   後半は,第2の嫡出推定制度に関する規定の見直しにつきまして,御意見を頂ければと思います。   なお,第3に,その他の検討事項というのがございます。資料には二つ例示されておりますけれども,そのうちの一つ目につきましては,先ほど窪田委員の方から関連の御発言がございました。二つ目は,その他の検討項目ございましたら,併せて御意見を賜れればと思います。   それでは,どなたでも結構ですので,お願いを致します。いかがでしょうか。   先ほども申し上げましたけれども,1回目ですので,本当に率直な御感触を伺えればと思いますが。 ○窪田委員 中身の問題ではないのですが,恐らく議論の仕方ということにも関わると思いますので,少しだけ発言をさせていただければと思います。   第2で,嫡出推定制度に関する規定の見直しということで,無戸籍者問題という形から出発しております。これは恐らく,少し前まで,いわゆる300日問題と呼ばれていた問題なのだろうと思います。   それで,特に離婚後,婚姻解消後300日以内に生まれた子に関する問題ということではあったわけですけれども,当時もいわれておりましたけれども,別に離婚後300日以内に限った問題ではないということがありますし,他方で,この種の問題に関していうと,必ずしも無戸籍者問題にだけ関わるわけでもないんだろうなと思っております。   非常に有名な事件で,同じ日に最高裁の決定がありましたけれども,大阪事件,大阪ケース,札幌ケースと呼ばれているケース,これは別に無戸籍問題として争われたというのではなくて,やはり現行制度を前提とした場合に,明らかに父子関係がない場合であるけれども,法律上の父とされる人が,いや,嫡出否認はしないんだと決めてしまうと,誰も動かせないということに関する問題があったものです。また,最高裁でも3対2という形で,裁判官の意見が分かれていたようなケースでした。   その意味でも,今回の嫡出推定制度に関する見直しというのは,私自身も必要だと思いますが,単に無戸籍者問題という観点からだけではなくて,もう少し広い視野から,772条というものの役割であるとか,あるいは,嫡出否認制度というのも見直す必要があるんだという,そういう観点から議論をしていければいいのではないかと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   先ほど事務当局の方から御説明ありましたけれども,この規定は明治民法のときに作られてから,全く手が付けられていない規定ですので,今日の状況に照らして,いろいろな不都合が出てきているところもあろうかと思います。そうしたことを,無戸籍者問題に限らないで,可能な範囲で議論すべきではないかという御意見として承りました。   ほかにいかがでございましょうか。 ○棚村委員 ちょっと御質問なんですけれども,研究会の方では,生殖補助医療によって生まれてきた子供の親子関係の問題について議論もされていますし,それから,DNA鑑定なんかについても,ちょっと触れられたりしていて,非常に,先ほど窪田委員からもお話があったように,そういう医療とか,あるいは生殖補助医療の発達とか,それから科学技術の発達,DNA鑑定とかというので,随分民法の嫡出推定・否認制度をめぐっても,大きな変化がある中で,やはり改正がちょっと議論になっていると思います。   それで,今回の,できれば2003年に中間試案みたいなものが,大村委員とかも入られて,生殖補助医療関連親子法制部会ですかね,そういうところで,中間試案ぐらいまで出されていました。それから,厚労省の方では,私もちょっと協力をしたんですけれども,アメリカの生殖補助医療についての御報告をしたりして,医療の行為規制の問題ですね。そういうものが出ていて,それがちょっとペンディングの状態になっています。   そういう状況の中で,今回,この法制審の親子法制の部会としては,どのくらいまできちんと踏み込んで,検討ができるかどうかということについて,少し研究会の延長線上で,ある程度報告書には出ておられるんですけれども,どこまで踏み込めるかなということについて,御質問したいと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   研究会の報告書との関連について,では,事務当局の方からお願いします。 ○平田幹事 まず,研究会の報告書については,飽くまで御参考のためにということで御提供させていただいているところでございます。   それで,先ほどございました本部会の審議の対象の範囲というところでございますけれども,もちろん,嫡出推定制度というのは,婚姻中の夫婦が出産した場合の規定ということですから,こちらの方を議論すれば,論理的には生殖補助医療によって出生した子についても嫡出推定制度が適用されるかという論点が出てくるというところはあろうかとは思います。   ただ,一方で,御指摘のとおり,生殖補助医療については,平成13年2月に既に諮問がされていて,それに関する生殖補助医療関連親子法制部会が設置されているところでもございますので,どこまで審議の対象になるかについては,今後の議論も踏まえながらご相談させていただきたいと考えております。 ○大村部会長 棚村委員,よろしいですか。 ○棚村委員 はい。 ○大村部会長 ほかに御意見を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。 ○髙橋委員 では,髙橋の方から,少し意見を言わせていただきます。   先ほど,中間試案というのがありましたけれども,その中では,第三者の精子を提供してもらって,お子さんができたと。そういう医療をやっていくんだということで,父親が同意をしたと。何らかの理由で,自分の精子は使えなくて,ほかの男性の精子をもらって,自分の妻にそれを移植する形でお子さんをもうけると。このような医療が実際には行われていて,ただそれは,DNA鑑定をやってしまうと,父親と子の関係は違うではないかということになってしまう。そうすると,お子さんの地位というのはどうなんだという疑問が当然出てくるわけですね。   そうした場合に,そのような医療を行うということを父親が承認していた,同意という言葉を使っていますけれども,同意していた場合には,後になって,これは自分の子でないといえないよと,そういうようなことが,中間試案では作られていたわけですけれども,今回,嫡出推定制度を見直すに当たって,例えば,母親に嫡出否認権を認める話が,どうも出てくるのではないかと思いますけれども,母親の否認権を認めた場合,今の第三者の精子提供でお子さんを作った母親は,では否認できるのかと。何かその辺りも,やはり考えないと,おかしな話に,どうもなってくるのではないかと思われるわけです。   母親の否認権を新しく認めながら,生殖医療で生まれた場合に母親が否認できると。何かそれは,自ら生殖医療をやった人が否認できるなんて,おかしな話ですから,今回嫡出推定規定を見直すに当たっては,それに見合った中間試案の見直しも必要になってくるのではないか。今のは一つの例ですけれども,そのような観点を私はちょっと持っているところです。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今,2人の委員の方から,今回の嫡出推定制度に関する規定の見直しに伴って,生殖補助医療関連の問題が関連してくるところもあるのではないか,少なくとも,関連するの限度で検討する必要があるのではないかという方向の御意見を頂いております。御指摘としては,非常に重要な御指摘かと思いますけれども,その点も含めまして,ほかに御意見がございましたら伺いたいと思いますが,いかがでしょうか。   今の二つの御発言は,部会資料第1の最後のその他の検討事項の二つ目の丸印の末尾に,このほか,嫡出推定制度に関する規定の見直しに合わせて検討すべき事項として,どのようなものが考えられるかというところに含めて考えられると思って伺いました。その必要が大きいということであれば,ここで議論することもあるのかもしれないと思って伺っておりました。   ただ,事務当局の方から御説明ございましたけれども,生殖補助医療関連親子法制部会というのが,まだ存続することになっておりまして,そちらの権限との調整といったような問題も考えなければいけないのかと思って伺っておりました。 ○大森幹事 2点お話をさせていただければと思います。   1点目は,先ほど部会長からも少しお話がありました,明治民法来見直しをするというところで,窪田委員からももう少し幅広くというお話ありましたが,その点に関連しまして,せっかくの見直しということでもありますので,改めて親子関係,法的な親子関係の根拠を何に求めるのかという出発点をきちんと確認をさせていただいた方がいいのかなと思っております。   DNA鑑定の発達とか,そういった現代の状況,先ほどの最高裁の判断等も含めて,法的親子関係の根拠について,原則的には何を求めるのか。そこを確認した上で,修正をどこまで掛けるのかといったような整理をきちんと理論的にすることによって,場当たり的な結論,この場合はこうしましょう,この場合はこうしましょうというものではなく,きちんと一貫したものに作り上げていくことが重要ではないかと思います。   例えば,父子関係で,やはり血縁関係に基盤を求めるのだというふうに,例えば考えるのでしたら,婚姻中に出生した子の場合の父を,その出産した母の夫とすることを原則にするというのは,そこに血縁があることの蓋然性が高いからだろうというところに根拠を求めるということになってくることにつながるのではと思いますし,そうすると,では,婚姻解消後に出生した場合はどう考えるのかということも,今申し上げた血縁を基盤に考えるという発想に立つならば,その蓋然性がどこまであるといえるのかというような話になってくるとも思います。   他方で,では,母子関係の基盤はどこに求めるのか。父子関係を血縁に求めるとすれば,同じように血縁で求めるのか。いや,その場合は,やはり懐胎,おなかの中で育んでいき,またそこで出産をしたというところを重視していくのかといった,まず出発点のところから確認をさせていただいた上で,議論を重ねていくということが必要ではないかと考えます。   もう1点が,明治民法来というところも踏まえて,嫡出という言葉を今後も使うのかというところも,検討をしていただければと思います。   嫡出という言葉自体は,やはり家を継ぐ者という意味合いがありますし,嫡子と庶子という概念の中での言葉ということもありますので,それが現代において,なお有用なものであるのかというところから,そういった言葉についても検討をしていただければと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   2点御意見を頂きましたけれども,いずれも非常に重要な御指摘を含んでいるかと思いますけれども,他の委員,幹事の方々の御意見を伺えればと思います。いかがでしょうか。 ○棚村委員 恐らく,大森幹事が今おっしゃられたように,懲戒権もやはり,親の権利なのか子どもの権利なのかも含めて,名称が適切なのかという問題は,根本的にはあると思います。ただ,やはり,ある程度論点を絞りながら,本質的な議論を踏まえて,多分個別のテーマや問題ごとに議論をするということが,研究会でも行われていたと思いますし,この法制審でも,やはり必要なことだと思います。   嫡出推定,嫡出否認についても,そもそも法的な実親子というのは一体何で決めるかというのは,やはり本質的な問題でして,嫡出推定・否認制度,それ自体の制度設計の在り方を議論するときに,やはり認知とか,婚姻外の親子関係の確定のところもやはり考えざるを得ない。そこでやはり,結婚で生まれた子どもとそうでない子どもについての差別,嫡出とか嫡出でない子の概念自体も,海外はそれを撤廃をしたりしていますし,それから,親権という言葉についてもそうですし,様々,親子としての効果のところでも,どこまでが,結婚によって生まれたということで違いが,サブルールみたいなもので出てきたりという形で問題になっています。多分,大森委員が今おっしゃったような話というのは,研究会でも,それから法制審でも,常に念頭に置いて,最終的には大変重要なテーマと言わなければなりません。しかし,民法の規定や制度そのものを,建物で言うと全面的な立て替えというのはなかなか難しいでしょうから,不文的に修繕をしながら,微修正をしたり,一部変えられるところは変えていくということも,視野に入れる必要があります。   その全体の整合性というときに,大森幹事がおっしゃったように,やはり親子法というのは一体どうあるべきなんだという形で,多分,親権の問題もそうですし,親子の成立,実親子の成立のところも議論していく必要があると思います。   私自身は,付け加えるような話なんですけれども,審議をしていく時間の中で,どういう論点まで議論が可能かどうか,要するに,改正の議論が可能かという問題と,それからやはり,本質的には大森幹事指摘されたとおり,やはり親権って一体何なんだという本質的な問題は常に意識する必要があると思います。これまでの規定の成り立ちから,それから今後どうなっていくべきかというようなことも含めて,それから親子を決めるときに,やはり今,海外を見ますと,社会的家族関係というキーワードが出てきて,血縁で,もちろん親子を決めるというのはあるんですけれども,やはり場合によっては,ほかの,ずれたときに,生活も共同し,養育をする意思とか,当事者の意思も合致していれば,全然,血縁を基礎にしていっていいんですけれども,それがずれたときに,一体どういうファクターでもって親子関係の成立を認めるかというのは,根本的な問題ですし,それから,嫡出子とか嫡出でない子どもについて,そもそも親子関係の成立の手続とかが,本当に整合的になっているかどうかということも,関連はしてくると思います。   ですから,多分この議論をしていく中で,どれくらいまで改正をする時間的な余裕があるかという中では,やはり本質的な問題を常に念頭に置いて,私たちも議論をしていくということになると思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   大森幹事から御指摘があった第2点,嫡出というのも,言葉をどうするのかという問題と,それから,実際の規律をどうするのかという問題と,両方あろうかと思います。   資料の第3の二つ目の丸印のところには,認知あるいは認知無効に関する制限の在り方を検討するというようなことが出てまいりますけれども,これも嫡出子と嫡出でない子の在り方について,どう考えるかという問題の一環かと思います。棚村委員御指摘のとおり,今回の主要な問題との関係で,どこまでをやることになるのかということもあろうかと思って伺っておりました。   それから,第1点については,血縁と,社会的な関係,その他にも幾つかの要素が考えられると思いますけれども,この辺りの整理は,なかなか難しいところがあろうかと思います。しかし,その点を念頭に置くということ自体は,非常に重要な御指摘かと思いました。   ほかにいかがでしょうか。 ○水野委員 明治民法が嫡出推定規定を立法して,それからずっと我々の社会は,嫡出推定という制度をまがりなりにも運営してはきたのですが,日本人の感覚からいいますと,先ほどの御意見にありましたように,親子関係というのは血縁だという意識が,ずっと強かったように思います。民法学者の間では,嫡出推定の存在意義について,ある程度共有のアンタントがあると思うのですけれども,日本の社会の中では,必ずしもそうではなかったように思います。   そして,明治民法立法当時の西洋社会は,嫡出子を,キリスト教的な文化の下で手厚く守って,非嫡出子の地位は低く身分も守られないという社会でしたけれども,現在では,平等化しています。我々の民法も,かなり差別のあった時代の民法を継受していますので,嫡出子,非嫡出子の身分については,手を入れなくてはならないと思います。それから,そもそも嫡出,非嫡出という言葉自体を,この際変えることができれば,それもその方がいいと思っております。   ただ,婚姻に基づいて父子関係を決めるというこのルールは,現在そのように平等化した西洋社会でも維持されています。妻が産んだ子の父を夫と推定する,そして,その推定を破ることにかなりの制限をかけるという,この仕組み自体は変わっておりません。そして法律上の親子関係というのは,DNAによって決まるものではない,血縁だけによって決まるものではないということについては,民法学者は大体一致しているように思います。   もちろん,基盤になるのが血縁であることは否定されないのかもしれませんけれども,でも,血縁だけを基準にすることは人間のアイデンティティーや人間の統一性を生物学的なDNAに統一してしまうことで,それは個人の精神的なバランス,個人のアイデンティティーの確保に,非常に危険な事態をもたらしてしまうという認識を持っているからでしょう。   そして,このような認識は,嫡出子と非嫡出子の平等化を図ったほか,かつてよりは血縁主義的な傾向を強めてきた西洋の親子法においても,まだ維持されている認識であるように思います。   今回の改正が,どこまでいくか分かりませんけれども,そういう法的な親子関係を守ることによって子の尊厳を守るという考え方に,元々は日本人が余りなじんでいなかったところがありますので,その点は気を付けて考えたいと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   貴重な御意見を頂きましたが,ほかにいかがでございましょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。   先ほどから,明治民法来の見直しというところでいきますと,女性という立場からすれば,このタイミングで現在,問題,課題のあるところについては改正をすべきであるというふうに,連合としては考えています。   連合は,2年に一度,政策制度の見直しをするんですが,今回その中には,無戸籍の要因ともなっている嫡出推定については,子どもの福祉を守ることを最優先に考えて,柔軟に対応できるようにするということで,重点の政策にも入れているところであります。   正に家族や,それから様々,ライフスタイルが多様化しているというところでいけば,772条をやはり見直しを,改正をしないことには,様々な課題が解決をしないのではないかと思っています。   こちらの研究会報告書の中にも,社会の変化によって,妊娠を契機として婚姻に至るカップルが増加している現状があると報告されました。そういうものに関しては,法律の運用でいろいろ範囲を広げてきたところが,今までも,この課題だけではなく,あるんだと思いますが,運用,運用でいろいろなことをやっていて,結局,法律自体が改正されていないということでいくと,やはり,あくまでも運用は運用ですので,そういう意味では,この機会を捉えて,しっかりと法律の改正も含めて行うべきではないかと思っています。   それから,これも現場の意見ですけれども,全国で戸籍の担当をしている方たちからは,やはり嫡出推定の問題で,様々な課題があるので,これはやはり廃止をするべきだという要請を以前からされているというところも,現場から聞いているところであります。   ですので,その意味でも,今回は規定の見直しについては,是非進めていただきたいと思いますし,先ほどから出ている嫡出,非嫡出という,嫡という言葉自体も,母の婚姻や非婚によって,生まれてくる子の地位が左右されることがあってはならないというふうに考えておりますので,そういう見直しも,この委員会で議論していただければと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   嫡出推定を見直すということが,今回の課題として挙がっているのですけれども,772条に限らず,先ほど髙橋委員からも御発言ありましたが,提訴権者の範囲なども含めて,全体としての制度を見直すということが望まれていると思います。そうした観点から,更に何か御指摘があれば伺いたいと思いますが,いかがでございましょうか。 ○中田委員 この機に見直すということで,重要な役割をこの部会が担っているんだろうと思います。   ただ,一つの方向で突き進むというのは,ちょっと危ないのではないかなという気もしています。いろいろなデリケートな要素が混じっていて,血縁もそうでしょうけれども,それだけではなくて,意思がどうかとか,社会的事実がどうかとか,規範がどうかとか,あるいは婚姻制度をどう理解するかというような,いろいろな微妙なバランスの中で制度ができていて,その制度が時代に合わなくなると,最初は運用で変え,更に法律を変えていくと,そういう歩みが今まであったんだと思います。そこを,ある一つの方向だから,この理念でまとめてしまおうというのは,ちょっと,慎重に進んだらいいかなと思いました。   それから,プラクティカルなこととして,否認権者を拡大したり,あるいは期間制限を緩和するということについて,それによって一体何がもたらされるのかを確認しながら検討する必要があると思います。具体的に言うと,争い方について,嫡出否認と,そうではない,親子関係不存在の確認請求による方法とで,最終的にどこが違うのか。否認権者を拡大したとしても,まだ違いが残ると思うんですけれども,その残るところをどう評価するかということを詰めて考える必要があるかと思いました。   ということで,理念について語ることはとても重要ですし,それを意識することは重要だと思うんですが,余り一つにだけ,まとめていこうというよりも,いろいろな考え方があることを前提としながら,かつ,具体的な帰結の違いを踏まえて考えるのかなというふうに,自分ではそうしたいなと思っております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   嫡出否認について法改正をすると,それが現在の解釈論にどういう影響を及ぼすのかというのは,先ほどの御説明の中でも出てきた問題で,実務上は非常に大きな意味を持つ問題になるのではないかと思いますので,その辺りも是非御議論を頂きたいと思います。   それから,基本的な考え方につきましては,何人かの方から御指摘を頂いておりますけれども,生物学的な親子関係が,従前に比べると格段に分かりやすくなったという状況を踏まえつつ,しかし従来,親子法が採ってきた基本的な枠組みを維持しつつ,それに応じて,どのように変化させるべきなのかというスタンスが,民法の先生方からは出されているように思います。   今申し上げました生物学的親子関係が分かるのだからこれに従うという要請をどの程度反映させるかということにつきましては,これを重視すべきだという御意見も複数示されたかと思いますけれども,同時に他方で,慎重論も根強く存在すると思って,伺っておりました。   今の点についてでも結構ですし,あるいは他の点についてでも結構ですので,更に御意見を頂ければと思いますが,いかがでしょうか。何か御発言ございませんでしょうか。   事務当局の方で,今日の段階で,何かこの点について意見を聞いておきたいということがありますか。特にはありませんか。   かなり技術的な問題を含む問題でもありますので,そういう面を捨象して,一般論として意見を言うというのが難しいところもあろうかと思いますけれども,何かございましたら伺っておきたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○窪田委員 先ほどの中田委員の御発言とも重なるのかもしれませんが,大森幹事から出た御発言で,やはり,まず理論的にきちんと原則を決めた上で議論していくことが望ましいというのは,そのとおりだろうと思います。ただ恐らく,772条をどのように理解するのかということについては,血縁主義というのを前提とした親子関係が原則であって,蓋然性で説明するんだというのは,一つの考え方ではあると思うんですけれども,恐らくそれだけではなくて,婚姻というものが親子関係を考える基礎になっているとか,更に言うと,恐らく単なる事実の問題ではなくて,規範的な評価が入ってくるという捉え方もあるのだろうと思います。   それをどちらが正しいのかということを決めてから演えき的に議論するというのは,かなり難しいのではないかという気がしています。だから,その意味では,やはり原則として,どういうふうに考えるんだろうかということが議論をするうえでの背景にあるとしても,それを意識しつつ議論していくという方法しかないのではないかという感じがいたします。   血縁主義を貫いたら非常に簡単で,出生後5年たとうが10年たとうが,DNA鑑定やってみたら血がつながっていなかった,親子関係なしというのは簡単にできるのですが,やはりそういう仕組みは,多分ほかの国々でもなっていないのは,やはりそういうふうな形では説明できないし,やはり親子関係を支える別の視点というのが,常に平行してあるということなのかなと思いました。   ですから,原則を重視しつつ考えるという姿勢は,それが重要であるということは否定できませんが,この問題に関していうと,かなり難しいだろうなとも感じております。   それから,もう1点,やはり大森幹事から出たことで,嫡出という言葉をどこまで維持するのかという点についてですが,これはいろいろな議論があるんだろうと思いますが,772条に関していうと,実は,多分父子関係の推定にしかすぎないんだろうなという気がしております。父子関係の推定をする前提の中で,恐らく母子関係のことも含まれているとは思うのですが,そうだとすると,父子関係に関してのルール,母子関係についてのルールということで規定していけば,それで足りるのではないかなと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。   大森幹事が先ほど発言された2点について,それぞれについて御意見を伺いました。   ほかにいかがでしょうか。 ○棚村委員 随分大きな議論だったので,先ほどは余り言えなかったのですけれども,結局,中田委員の方からも御指摘があったように,やはり生物学的な要因というのは,かなり重要な要因として,親子関係を決める柱にはなっている。だけれども,今までも,意思だとか生活だとかという要素も加味しながら,これは医療とか科学技術が進歩していない時代から,やはり婚姻を基礎にしたり,いろいろな形でもって親子関係を決めてきた。その要素を全く排除するのではなくて,どういう場面で,どういう親子関係については,父子関係とやはり母子関係というのが,大きな柱になってくると思うんですけれども,そのときに,誰と誰との間で,どんな要素で法的に決めていくのかという議論になろうかと思います。   そのときに,決め方とかルールが今あるのは,嫡出推定と認知という形で,両方に,やはり血縁的な要素を重視する部分と,それから意思的な要素,つまり事実主義というのと,やはり意思主義みたいなものが交錯しながら,しかも,嫡出推定という制度の中には,水野委員がおっしゃったように,婚姻という安定した関係の中で,子どもを守っていくという要素があって,その要素というのは,やはり分解していっても常に残っていくんだと思います。   それを今,もう1回再編成するというか,再構成するので,やはり一番徹底しているのは,嫡出,非嫡出なんていうのはなくしてしまって,そして,ある部分では,父子関係,母子関係の決め方みたいなことでいけばいいんですけれども,ただ,婚姻制度をどういうふうに重視し,そして,婚姻制度をどう位置付けていくかという問題は,やはり残っていくと思います。   ですから,場合によっては,嫡出推定という制度と認知というのを残したまま,それをうまく整合するような形で,できる限り合理的なものに改めていくということも必要になるかもしれません。これが先ほど言った,部分的な見直しというか,それがどこまでできるか。全面的な立て替えということだと,多分,そういうところまで行き着く議論ができるかもしれません。具体的に,そういう提案も今されてはいますので,ただ,どこまで,一般の国民の皆さんから見ても,民法のルールはどうあるべきかということで,コンセンサスが得られるかという問題も,多分あると思います。   決して消極的なことを言っているのではないのですけれども,やはり,先ほど生殖補助医療も入れたのは,例えば凍結受精卵の問題も,ある部分では,御夫婦で,やはり不妊治療で,体外授精だと19人か20人に1人は,体外授精でお子さんが生まれて,不妊治療もかなり盛んに行われています。現に奈良家裁とか大阪高裁で裁判が起こっていて,結局従来の,やはり嫡出推定という仕組みの中で,やはり解決せざるを得ないということになっていますけれども,あの場合だって,やはり凍結受精卵というものを一緒に保存して,本来だったら話合いでもって,お子さんを,やはり産む産まないということを決めていくのが一番ベターだと思います。   ただ,何らかの事情で仲が悪くなって,勝手に移植をしてしまって,そのときにやはり,クリニックだとか行為規制みたいなものが,やはりきちんとしていれば,親子関係についても割合と決められるんですけれども,多分,そういうような問題も含めて,今起こっている問題が非常に多様に起こっていて,無戸籍のものもあるんですけれども,そうではなくて,通常の夫婦の間でもそういう,別の方と関係を持って,子どもが生まれて,家庭ができてしまっていると,そういうようなケースも入ってくると,多分,血縁や意思,生活事実,子の福祉などいろいろな要素を,ほかの国で取り組んでいるような経験とか,あるいは改正の動向も少し踏まえながら,日本の今の仕組みの中で,どこを改めていけば,どんな問題が,やはり具体的に解決するかということを念頭に置きながら,やらざるを得ないと考えています。   先ほど言った理念とか理想を言うと,非常に単純に,いろいろな議論ができるんですけれども,技術的な要請とか,現行の枠の中で,何をいじったときにどういう,例えば否認権者の範囲を妻に認めた場合に,どういう問題が解決するかということをいうと,先ほど髙橋委員からも出たように,例えば,AIDで子どもが生まれたときに,それを否認できるのかという問題も,否認権者を拡大しても起こってくるわけですね。   ちょっとまとめて言うと,やはり理想として,こういうものを是非求めたいというのは,将来的には課題にはなっていくし,念頭には置いた議論になってくる可能性がありますけれども,やはり今の現行法のルールや規定の枠の中で,こういうところをいじったら,こういう事は解決できる。だけれども,やはりこの問題については相変わらず,もしかしたら,推定される嫡出子とか推定されない嫡出子ということを考えても,婚姻後200日以内に生まれた子どもの問題も,やはり,できちゃった婚が4分の1以上になっていますから,かなり深刻な問題です。   あの辺りだと,親子関係不存在確認の訴えで,実際に芸能人の間で生まれた子どもがDNA鑑定で,18歳になって,実は夫の子ではなかったという事件もありました。それも東京家裁で,やはり親子関係不存在ということで,あれで本当にいいんだろうかという問題も含めて,やはりきちんと,窪田委員がおっしゃったように,300日問題もそうですし,否認権者の範囲の問題もそうですし,それから期間の問題もそうですけれども,今の規定で,どんな問題が解決して,どんな不都合が今起こっていてということで,議論を進めていく必要があるのかなと思います。 ○大村部会長 ありがとうございます。   親子法は広い広がりを持っていますので,どこかで線を引いて立法するというのは,かなり難しいところもあるのですけれども,棚村委員御指摘のように,今回の直接の課題との関連で,手が付けられる,手を付けて改善できるというところから順にやっていくということなのかと思って,お話を伺いました。   それと,親子法の原理というのは何かという話は,ちょっと次元が違うのかと思って伺っておりました。立法課題の方は,時間があれば,ある意味では,解決するのかもしれませんけれども,親子法の原理の方は,これも何人かの方々から御発言がありましたけれども,やはり一元的には考えられないのではないかというのが,中長期的に見たときの大きな流れなのかなと思いますので,そのことを踏まえつつ,しかし,それぞれの要素のバランシングの間に矛盾や緊張ができるだけないように考えていく必要があるのではないか,これも皆さん共通の認識なのではないかと思いますけれども,そんな方向で考えていくということかと思いながら伺っておりました。   ほかに何かございましたら,お願いいたします。 ○大森幹事 もう1点だけ,問題提起をさせてください。   772条は,御承知のとおり,二つの推定規定を定めておりますが,この推定ということを維持するのかどうかということも検討になってくるのではと思います。母子関係は恐らく,推定は置かなくて,母とするというふうになると思いますし,諸外国では,父子関係についても,推定ではなく,父とするという規定の定め方をしているところもあるかと思います。その関係で,今後の見直しの際に,父子関係については,これまでの推定ということを維持するのかどうか。   恐らく,日本の特有の事情として,推定という概念を使わないとした場合には,推定の及ばない嫡出子というところに影響が出てくるのかなとも思いますので,その辺りも含めて,今後,議論・検討ができればと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   今の点も非常に貴重な御指摘だと思います。現行法でいっている推定というのが,一体どういう意味を持つのかということについて,確認をしておく必要があるだろうと思って伺いました。   そのほか,いかがでしょうか。   それから,棚村委員からは,婚姻後200日の方も問題あるのではないかという御指摘もありました。先ほどの井上委員の御発言とも絡むところがあるかもしれませんけれども,そうした問題も嫡出推定の議論の中で,あるいは議論する必要が生じてくるのかと思って伺いました。   そのほか,いかがでしょうか。 ○棚村委員 だんだん,ちょっと細かくなっていくのですけれども,やはり家事事件手続法の277条以下の合意に相当する審判の位置付けですね,当事者の合意をどういうふうに評価していくかというのと,それから,最高裁で確認をされた外観説の範囲ですね。特に,推定される嫡出子と,推定されないということになると,嫡出否認というかなり厳格な縛りと,それから,一方は,利害関係ある者は,確認の利益があれば,親子関係不存在確認の訴えをいつでもできるということになります。その辺りの両方の関係も,やはり議論していくときに,嫡出推定とか否認ということをどの範囲で,どういう形で否定をすることを認められるかというので,もう一方は外観説ということで,一定の縛りは掛かっていますけれども,親子関係不存在確認の訴えがあり,かつ,DNA鑑定との関係でいうと,やはり合意があれば,かなり緩やかに認めているという実務がもしあるとすると,それとの整合性とかというのも,やはり議論,ある程度せざるを得ないと思っています。 ○大村部会長 ありがとうございます。先ほどの中田委員の御指摘と併せて,検討を要するところかと思います。   そのほか,いかがでしょうか。   既に,その他の検討事項に及ぶ御発言もたくさん頂いておりますけれども,この点も含めまして,第2,第3につき,御意見を頂ければと思います。もちろん,第1について,先ほど言い漏らしていたことがあるということであれば,それも伺います。いかがでしょうか。特に御発言ございませんでしょうか。   それでは,初日ということで,本日の審議は,この程度にさせていただきたいと存じます。  あるいはまだ御発言したいこともおありの委員,幹事もいらっしゃるかと思いますけれども,次回以降の実質的な審議の際に,個別の問題と絡める形で御発言を頂ければと思います。  そこで,最後になりますけれども,次回の議事日程等につきまして,事務当局の方から御説明を頂きたいと思います。 ○平田幹事 次回につきましては,9月10日火曜日午後1時30分から午後5時半までを予定しております。場所につきましては,本日と同様,東京保護観察所集団処遇室になります。   テーマといたしましては,懲戒権の規定の見直しを予定しており,各論点について,掘り下げて御議論いただきたいと考えております。 ○大村部会長 ありがとうございます。   次回は懲戒権の規定ということで,本日に引き続きまして,御意見を頂戴したいと思っております。   本日は,これで法制審議会民法(親子法制)部会の第1回会議を閉会させていただきます。熱心な御審議を賜りまして,ありがとうございます。閉会いたします。 -了-