裁判員制度の施行状況等に関する検討会(第7回)議事録 第1 日 時   令和元年9月18日(水)午前10時1分から午前11時55分まで 第2 場 所   東京地方検察庁会議室 第3 出席者    (委 員)大澤裕,大沢陽一郎,重松弘教,島田一,菅野亮,田野尻猛,堀江慎司,山根香織,和氣みち子(敬称略)    (事務局)保坂和人大臣官房審議官,大原義宏刑事局刑事課長,吉田雅之刑事局刑事法制管理官,鈴木邦夫刑事局刑事法制企画官    (その他)戸苅左近最高裁判所事務総局刑事局第二課長 第4 議 題 1 裁判員裁判関係者からのヒアリング 2 その他 第5 配付資料  ・委員名簿  ・「担当された事件の概要等」と題する資料 第6 議 事 ○鈴木刑事法制企画官 予定の時刻となりましたので,ただ今から裁判員制度の施行状況等に関する検討会の第7回会合を開催いたします。 ○大澤座長 本日は皆様,御多用中のところお集まりいただき,ありがとうございます。   まず,議事に入ります前に,委員の異動がございましたので,御紹介をさせていただきます。   田中勝也氏,横田希代子氏が委員を退任されまして,新たに重松弘教氏,田野尻猛氏が委員となられました。それぞれ一言ずつ,自己紹介をお願いいたします。 ○重松委員 8月20日付で警察庁刑事企画課長に着任をしました重松でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○田野尻委員 前任の横田が異動いたしましたので,東京高等検察庁の公判部長をしております田野尻でございますが,後任を仰せつかりました。どうぞよろしくお願いいたします。 ○大澤座長 お二方とも,どうぞよろしくお願いいたします。   また,事務当局の異動もございましたので,御紹介をお願いいたします。 ○吉田刑事法制管理官 刑事法制管理官の吉田でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○鈴木刑事法制企画官 刑事法制企画官の鈴木と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。 ○大澤座長 よろしくお願いします。   本日は,小木曽委員,武石委員におかれましては,所用のため欠席をされておられます。   それでは,事務当局から資料について,説明をお願いいたします。 ○鈴木刑事法制企画官 本日お配りしている資料でございますが,三つでございまして,一つ目は議事次第,二つ目は委員名簿,それから,三つ目が「担当された事件の概要等」と題する資料でございます。 ○大澤座長 それでは,議事に入りたいと思います。   本日は,前回会合で皆様にお諮りしたとおり,引き続き,裁判員裁判関係者からのヒアリングを実施したいと考えております。   委員の皆様には,事前に事務当局を通じてお伝えいたしましたが,本日は,法廷通訳人であるケネディ綾子さん,深尾麗華さん,そして,裁判員及び補充裁判員経験者4名にお越しいただき,お話を伺う予定としております。   まず,法廷通訳人のお二人からのヒアリングを行い,その後に,裁判員及び補充裁判員経験者4名の方からのヒアリングを行いたいと思います。   それでは,最初に,ケネディ綾子さん,深尾麗華さんからのヒアリングを行いたいと思います。進行としては,お二人からそれぞれお話を伺った後に,まとめて質疑応答を行いたいと思います。質疑応答を含めて,おおむね30分程度を予定しております。 (ケネディ綾子氏,深尾麗華氏 入室) ○大澤座長 ケネディ綾子さん,深尾麗華さんにおかれましては,お忙しい中,当検討会にお越しいただきまして,誠にありがとうございます。検討会一同を代表いたしまして,心より御礼を申し上げます。   着席させていただきます。   本日は,ケネディ綾子さん,深尾麗華さんが実際に裁判員裁判に関与された御経験を踏まえて,お話を伺いたいと存じます。   それでは,よろしくお願いいたします。 ○ケネディ綾子氏 初めまして,ケネディ綾子と申します。英語の通訳を担当させていただいております。   稼動してから,恐らく15年ほどの期間を経ていて,最初は年に2,3件ぐらいから,少しずつ増えていって,今は大体,年間40件から50件ほど担当しております。   裁判員裁判に関しましては,年間に約4,5件のペースでして,私が担当している,私が携わらせていただいた案件としまして,ほぼ覚せい剤の輸入絡みの件があって,あとは強盗致傷が1件ですかね。   今まで裁判員裁判をやってきた中で,すごく改善されてきて,すごくよかったなと思う点から,まずお話しさせていただきます。まず,裁判員裁判になりますと,証拠の量が膨大になりまして,スライド式で,30枚ぐらいから100枚ぐらいというような形で,スライドでどんどん出てくるんですけれども,その証拠などを出していただけるタイミングが,ものすごく早くなって,本当それは,検察官たちの努力のたまものだと思うんですけれども,その点はすごく助かっております。   今,恐らく10日前には準備ができていて,証拠などをいただけるような状況になっているので,とてもその点では,うれしく思っております。   あとそれから,証人尋問,被告人質問をやっている中で,話すスピードをものすごく最近,気にしておられる方が多くて,ゆっくり明確に,あとそれから,日本語は主語がなくても通じてしまう部分が多いんですけれども,主語をすごくはっきりとさせながら話していただく方が増えてきていらっしゃってて,それは検察官,弁護人両方なんですけれども,その点ではすごく,うれしいなと,とてもやりやすさを感じるようにはなっております。   特に,裁判員裁判ですと,その辺,普通の公判よりも,恐らく気にしてくださっているのではないかなということを感じるようにはなりました。   困った点,幾つかあるんですけれども,専門家が出てくる場合,精神科医の鑑定の方でしたり,もしくは,例えば覚せい剤の精製の過程をいろいろ説明される専門家が出てこられるときに,できたら,その専門家の方とも一度打合せをさせていただける機会をもらえたら,うれしいなということが何回かありました。   日本語では一語なんですけれども,例えば覚せい剤の精製と,精製という言葉に関しまして,英語だったら言葉が三つぐらいあるんですね。精製の種類によって,3種類ぐらいあるものですから,そのうちのどれを指し示しているのかといったものが,資料からだけでは,ちょっと私も分からないので,できたら,本当は専門家の方と前もって,ちょっと打合せさせていただいて,そういったところをきちんとクリアにしてから裁判に臨めたら,うれしかったなということはありました。   あとそれから,裁判員裁判,認めの場合なんですけれども,認めの裁判員裁判の場合に,例えば月曜日,火曜日,でも3日目の午前中に論告・弁論というふうになった場合に,間に休廷日が全くないものですから,論告・弁論をいただけるタイミングというのが前日だと,なかなか準備するのが難しいということがありまして,前日午後5時まで被告人質問をやって,次の日の朝10時に論告・弁論で,その日の夜にいただいても,なかなか難しいので,もうちょっと前もって,特に認めの場合は,恐らくこういうふうに言うであろうというのが想定できていると思うので,弁護人からも検察官側からも,もう少し早目に,ドラフトの状態でもいいから出してくださいということをお願いしています。でもそれで,対応してくれる方と,完成版でないとだめですよという方といらっしゃるので,困ったなということは何回かありました。   あとは,弁護人からの弁論なんですけれども,最近ちょっとぽつんぽつんと出てきているのが,原稿を読まない弁論をされる方が何人かいらっしゃって。ただ,原稿がないので,原稿はありませんというふうに言われてしまうと,同時通訳を,原稿10枚分とか20枚分の同時通訳,全くメモなしでやるというのは,なかなか不可能ですし,それでちゃんと被告人に伝わるような通訳を,同時通訳でそれだけの長さというのは,ちょっと物理的にも難しいので,何かしらの暗記する前の原稿というのは絶対あると思うんですが,それをなかなか出してくれない弁護人の先生が時々今いらっしゃって,それはちょっと困ったなというふうには感じております。   あと,一つ要請があったのが,今までの裁判員裁判で,私が今までやった中で一番長いのは,3週間のものがありました。3週間プラス,4週間目に判決というのがありまして,3週間のうち月,火,木,金というのが3週間続いて,その間にいろいろな証人が出てきたわけなんですけれども,ちょうどそのとき私,一番下の子が幼稚園生だったので,週4で午前10時から午後5時までは難しいということを裁判所にお願いして,もう一人交代の方,もう一人の方に入ってもらうことにはなりました。   ですから,2人体制では,時間的に,いろいろな準備したりとか,そういった余裕はできるようにはなったんですけれども,通訳人同士,横のつながりが余りないものですから,その方とはもちろん初対面でしたし,直接のやり取りがなかなかできなかったので,裁判所を通してその方の連絡先をお願いして,それで向こうからオーケーもらって,それでようやくというような形でしたので,通訳人同士,横のつながりをもう少し持てたらなというのは感じました。   あと,別の日に入っていただいていても,その日に要するに,何が起こったのかというのを教えていただかないと,次に私が出たときに分からない部分があったりとか,そういった連絡事項をちゃんと密にするとか,あとそれから,言葉にしても,被告人が使うこの言葉はこういうふうに訳そうというような,そういった取り決めをやはりしなければいけないので,複数で臨む場合には,横のつながり,きちんと連絡をさせていただけたらなというのはあります。   あとは,そうですね,私,そんなに長い間,裁判員裁判に携わってまだ,恐らく5年,6年ぐらいになると思いますので,そんなにまだ件数はこなしていないので,このくらいしかちょっとお話しすることがないんですが。ありがとうございます。 ○大澤座長 ありがとうございます。 ○深尾麗華氏 初めまして,中国語の深尾麗華と申します。今日,この場でお話しさせていただくということですけれども,大変恐縮です。   私は法廷通訳として,今,18年目に入りました。担当した公判の件数は,ざっと1000件は超えているでしょう。内訳,裁判員裁判は,多分40件ないし50件ほどです。やっていないのが,強盗殺人や強姦殺人,そのほかは経験をしました。   平均にして要する日数は3日間ないし5日間というものですが,最も長かったのは,判決を入れて9日間を要した現住建造物放火,保険会社に対する詐欺未遂又は詐欺という,被告人2人いらっしゃった事件です。   そうですね,公判日は飛び飛びでしたが,1週間の中で4日間,先ほどケネディ先生もおっしゃるように大体4日間,1日だけはやはり休むということで,裁判員の方たちの負担を考えても。ですので,このペースはとても理想的だなという,月曜日から金曜日やるのが,多分みんなしんどいのではないかなというふうに思っています。そして,裁判所も検察庁も,やはり通訳人がベストの仕事をできるように,結構サポートしてくださいまして。   ただ,私が一番気がかりに感じているのは,やはり弁護人,とりわけ国選弁護人の仕事に対する姿勢や考え方は,ものすごい差があります。ものすごい真面目にやっている先生がいらっしゃって,これは普通の事件だけれども,ひどい先生が,裁判前,一度行って,30分も満たずに接見をして終わって,裁判に臨んだ。   裁判員裁判はとりわけ,そういうのがないですけれども,ただ,弁護人はそれぞれの考え方があって,今結構よくなりましたけれども,やはり法廷で通訳をやる先生が,要は裁判所の通訳だから,接見には連れていけませんということですよね。接見には法テラスの通訳,被疑者段階の通訳を連れていく。   それぞれのやり方があるけれども,私たちも尊重しないといけないですが,ただ被告人の立場に立って考えると,いきなりこの人が裁判で自分の通訳をやる。特に裁判員裁判って,重大な,自分の人生がかかっている裁判においては,裁判所で,はい,公判が始まりました,ああ,この人が自分の通訳というのは,普通の人だったら,とても不安ではないかなというふうに思います。   だから,そういったことも考えて,弁護人がやはり,1回でもいいから,裁判の前に通訳人を同行させて,この人が裁判のときの通訳ですよと,しゃべっている言葉とかお互いに,方言とかいろいろ,言葉に対する,みんなそれぞれの表現の仕方があって,それも通訳人としては,通訳をしていく上で把握しないといけないですよね。いきなり裁判で,何か特徴的な言い方を言われると分からないですよね,対応できないから。   裁判をスムーズにやっていくためにも,事前にやはり,一度だけでもいいから,例えば事件のことを言わずに,ほかのことを,いろいろと話をしたりして,お互いに少しでも理解し合えるような,そういった場をつくってくださると,大変助かります。   もう1点は,私が感じているのが,被疑者段階のときの通訳と,被告人と,またその御家族との距離感です。たまにありますが,被告人の御家族が法廷に,裁判に参加するために来日する。そうすると,法テラス,被疑者段階のときの通訳人の関係先が,その御家族の宿泊先になっている。また,通訳人の電話で,相手方とWeChatをやったり,それから,法廷に行くために,その通訳がその御家族と同行して法廷に,裁判に連れていったり,弁護人の事務所に連れていったりして。   私が言いたいのは,私たちがとりわけ,御本人,御家族と2人きりになるような場面を避けるようにはしないといけないのかなということです。要は何か聞かれたら,どう答えたらいいか。私たちは通訳なので,先生方,誰かが言ったことを通訳するのが私たちの仕事なんですよ。ですので,いや,その距離感は,弁護士会がどうなっているのか。何かトラブルになるような,もちろん私の杞憂であれば,それが幸いですけれども,やはり弁護士会としては,弁護士が独立した仕事をやっているけれども,ただ,一つの基準として,提案した方がいいのではないかというふうには思います。   それから,裁判所では,最高裁においては毎年,裁判員裁判の通訳を養成するフォローアップセミナーをやっていまして,毎年言語が異なっています。例えば,今年は英語,中国語,ベトナム語となっています。時にはほかの言語,韓国語とか,毎年言語は異なるけれども,大体3言語ほど一緒にやります。今年は11月だけれども,例年は12月が多かった。その場合は,日本全国の地方裁判所から裁判員裁判の通訳人の候補者を推薦されまして,中国語の場合は大体,本当に南は沖縄,北が北海道から参加されて,大体十数名ほど,東京地裁に集まりまして,2日間かけて研修を受けます。   東京地裁の場合は,裁判官や書記官,事務官,ほぼ全員参加でやっています。大がかりなことを年に一度はやっています。やはり裁判員裁判の通訳を養成する,そういう緊急性がありますから。   それから,1日目は裁判官が,裁判員裁判に関する法律とか,いろいろ説明するレクチャーがあって,午後からは,講師となる人の話をしてから質疑応答,それも昔は言語ごとにわかれていましたが,2年ぐらい前からは,一堂に会してやるようになりました。先生の,お互いの問題意識を共有しようという,やはり一緒にやった方がいい,経験を共有できるからということで,一緒にやるようになりました。   1日目の午後から,講師の話が終わってから,みんな法廷に移動して,裁判所がそのために,わざわざ台本を用意しています。人定質問から最後の判決まで,分厚い台本を用意していまして,そこで,研修を受ける通訳人たちは,みんな同じような時間で,受講生の同時通訳のレベルがどれぐらいなのかやっていきます。それも時間によって,例えば5分間だと,5分間ずつみんなやって,それから被告人質問とか証人尋問とか,みんなは同等の時間を使って,みんな満遍なく,そのレベルを見られるように,問題点とかいろいろ,良いところとか見られるように,そうしてやっています。   裁判官,事務官,書記官,みんな裁判官の役と検事役,弁護士役,また,私たち講師は,大体被告人役とか証人役とか,そういうことをやりつつ,東京地裁をあげて,みんなものすごい力を入れてやっています。   2日目の大体午後3時ぐらいになってからは,今度またみんなが研修を終えて,一堂に会して,いろいろな感想や問題点,講師に聞きたいこと,別に自分の言語でなくても,ほかの言語の先生にいろいろ答えてもらったりとか,そうやった,みんなが一堂に会して,1時間以上ぐらいかな,時間を使って,最後の終了までです。   終了した後は,裁判官や通訳人の講師が,今回参加された候補者たちの採点をします。この方は修了しました,「修了した」ということは,これから裁判員裁判を担当できる能力を有しているよというものです。場合によっては,その方,もうちょっと普通の事件を経験させた方がいいのではないかということになると,「研修を受けた」という2段階で採点するということです。   私の話は以上です。ありがとうございます。 ○大澤座長 ありがとうございました。   ただ今のお二人の説明について,御質問等ございますでしょうか。 ○菅野委員 弁護士をしている菅野といいます。   ふだん弁護人をしている立場から,何点か質問させていただきます。これは一般的な質問だとお考えください。   裁判員裁判だと,何日間も連続して審理が続くので,先生方,基本的には1人だけ選任されて,かなり長時間,法廷で通訳作業をされているので,その後の接見だとか休憩時間の依頼者との面談には,むしろ先生方にお声をかけない方がいいのかなと感じることもあります。あるいは,先生方,せっかく法廷にいらっしゃるので,空き時間であれば,通訳をお願いしてもいいのか,結構悩むことが多いんですね。   なので,法廷通訳作業中に,ちょっと接見の通訳とかが,むしろ避けてほしいのか,あるいは,それぐらいなら負担にならないということなのかを1点教えていただきたいのと,あとは,場合によっては,例えば長い裁判員裁判であれば,二人体制とか,時間によって何人かの通訳人を選任した上で,連携しながらやっていくのがいいのか,それとも,お一人でやっていくのが通訳人としてやりやすいのか,そのあたり,もし御意見とかあれば,教えていただきたいと思いました。 ○ケネディ綾子氏 では,まず1点目なんですけれども,休廷中もしくは公判後の接見は,ぜひとも同行させていただきたいと私は思っています。というのも,その裁判,公判にかかわった質問や何かの質問を向こうから受けるので,それを説明するときに,全く別の通訳人ですと,本当に裁判のための打合せというような形の接見になると思いますから。そこは同行,一緒にさせていただいた方が,私としては助かります。   実際に,やはり1日なので,頭がかなり疲れているという部分はあるんですけれども,やはり立ち上がって動くということによって,また場所が変わるということによって,ある程度はリフレッシュができるので,そんな長い接見でなければ,それはぜひとも同行はさせてください。   実際に,午後5時まで裁判やって,その後,午後6時とか6時半に東京拘置所に,前日,夜の接見に行ったりということも,実際何回もしていますので,それがめちゃくちゃ遅くなるとか,そういうことでなければ,それはぜひとも同行させてください。   あと,それから,2点目の,もう一人の方とという,ちょっとこの,相方との,恐らくそりが合うとか合わないとか,そういったものも,ちょっとあるとは思うんですけれども,私的には,長い裁判に関しましては,やはり二人体制ではいた方がいいとは思うんです。   前に裁判員で,恐らく耳の不自由な方がいらっしゃって,手話通訳が入っていたんですね。手話通訳が入っていたときは,その手話の方は,3人か4人,その場にいらっしゃって,恐らく20分,30分交代で,ぐるぐるぐるぐる,その場で交代していたんです。   それがもしできれば,すごく私たちも助かるんですけれども,要するに,その場にいるので,何が起こっているのかは分かる,だけれども,頭を実質的に休ませる機会があると。それができれば,すごくうれしいんですけれども,それはちょっと何か,予算的な問題で難しいというふうに聞いているので,どうしても二人体制になってしまったときは,一人がいて,もう一人の人は,要するに支払いがないので,傍聴席に自分の意思でいるか,もしくはオフというような形になってしまうというふうには聞いております。   ただ,予算があれば,一緒に同時にその場にいてということができると,うれしいかなというふうには思っています。 ○深尾麗華氏 そうですね,通訳ですけれども,裁判員裁判のみならず,普通の裁判が,争う裁判だと,1日がかりとか,そういうのも結構ありますし,逆に裁判員裁判は,裁判員の方の負担を考えて,ちょこちょこっと1時間ごとに休んだりとかします。   私たちも一応プロですので,その裁判は,これからやりますよと,やはり全て,そういうモードですから,負担にはならないです。逆に,ケネディ先生がおっしゃるように,やはりありがたいです。その全ての流れが分かっていて,なおかつ,きっと,弁護人が間に接見行くということは,何かの問題点とか,前の裁判から何か問題点が出たと。すぐにそれを対応しないといけない。だから,私たちもやはり,すぐにそれを協力しないといけないということです。負担にはならない。   二つ目ですけれども,何人か一緒にやるということは,ケネディ先生が指摘されている問題点もある。もう一つ,率直に言いますと,通訳人,とりわけ法廷通訳をやっている通訳人のレベルは,本当にまちまちです。正直に言いますと。   私は,サイマル・アカデミーという通訳人を養成する学校から出ましたけれども,そこの方たち,先生からも,あなたはずっとそういうことやっちゃいけないよと,レベルが低いからということを言われたことがあって。でも,私は,自分が法廷通訳,自分には合っていると。私にとっては天職だと。もちろん,華々しい同時通訳,ブースの中に入って,ぱぱぱっとやる,そういう,合っている方もいるけれども,私にとっては余り合わないということで。ただ,周りの方たちの話を聞くと,余り法廷通訳には興味がない。サイマル・アカデミーから出ると,ある程度みんなはレベルがあって,でも法廷通訳をやられる方は自己流が多くて,基本はちょっと定まっていない方たちもいたりします。   例えば高裁で,この控訴を棄却すると。棄却するだから,棄却という訳をしないといけないけれども,ちょうど私の裁判の続きに,同じく中国語の裁判があって,それを傍聴したら,その人の訳としては,取消しというものになっていて,えっ,取消しと棄却はちょっと違うと思います。終わってから,あなたも通訳ですよねと声をかけられて,「自分の問題点は」と聞かれて,正直にね,棄却と取消しは違うのではないかなと思っているよということを言いました。   だから,ものすごいレベルの差があって,私,さいたま地裁で,2人の通訳が,同時に法廷に入って,同時通訳と同じように,10分間とか,あそこは30分間で交代して,それをやったことがありまして,違うストレス,ものすごくありました。   なぜならば,例えば起訴状に,芝の上と書かれているけれども,実際出ている言葉は,植え込みというところになっていて,違いますよね。私たちは,やはり忠実に訳さないといけない。でも,その方が起訴状に捉われて,ずっと芝,芝と訳していて,その場で聞いた話を訳さないといけないよと,終わってから言っても,やはりそれぐらいの,レベルが出来てないんですよ,単語を思い出せないから。そうすると,芝は,少なくとも起訴状はそういうふうに書かれているから,間違いはないよということになる。   あと,引っ張って,引っ張るとつかまると全然意味が違いますよね。でもその方は,被告人が相手をつかまえていたということを言っているにもかかわらず,引っ張っている,引っ張っているとずっと言うの。そこはやはり,とても大きく違っていたのだから,それこそ芝との違いは全然違うので。それで,さすがに私の番になって,ちょっと1点だけ確認させていただきたいと。それは相手の腕をつかまえているのか,それとも引っ張っているのかと。いや,つかまえていると。それで,裁判官はさすがに,「ではあなた,今までずっと,つかまえているという意味で言っているの」と尋ねると,「まあそうですよ」と言う。   だから,みんなで一緒にやるのは,全然構わないですけれども,それでちょっと問題が生じてしまうと,元も子もないというふうに思います。だから,その前に,やはり法廷通訳という仕事に,やはりたくさんの人がそれに対する興味があって,そのレベルアップについて,時間をかけて,ある程度の一定のレベルまで持っていって,そこから初めて,何人かで一緒にやりましょうという,要は同時通訳,国際会議の場合は,本当に4,5人で,ばっと座っていて,ほぼ同じぐらいのレベルだから。   ただこれが,聞いたことのない単語が出たとき周りのみんなで一生懸命調べて教えるというような,そのレベルが,基本的なレベルが同じだから。でも,法廷通訳,もしそこまでのレベル,同じぐらいのレベルがないと,かえってちょっと不信感を生じさせてしまうのではないかというのが,私の勝手ながらの意見で,申し訳ないです。 ○菅野委員 大変参考になる御意見ありがとうございました。   ちなみに今,サイマルの話が出たので,お聞きしたいんですけれども,先生のようにサイマルで訓練を受けられた方ばかりでは,法廷通訳はないわけですけれども,裁判所の研修とか弁護士会の研修は,確かに定期的にやったりしているんですが,ほかに通訳人の,ふだん通訳の先生方というのは,どういう訓練というのがあり得るんですか。 ○深尾麗華氏 訓練といえば訓練ではないけれども,やはりなるべく傍聴する。ケネディ先生も私の裁判で,ちょこちょこっと,ああ,今日も来ているという。   だから,同じ言語だと,ああ,何かちょっと,やっている方,やっている先生,ちょっと気分を害してしまうというのがあるのよ,同じ言語だと。何か特に,私たち,ちょっと長くやっていると,顔をみんな知られてしまって,そこにぱっと座ると,やっている先生が,多分見えないプレッシャーみたいな,えーっという,何か気分を害されることがあるから,だから,なるべくほかの言語,あるいは本当に,普通の日本人の裁判を聞きに行けばいいんですよ,手続とか,そこから出ている言葉とか。   だから,フォローアップセミナーのときは,私もいつも受講生には,本当に傍聴する。最近,民事裁判も多くなっていて,民事裁判も聞きに行ったりとかするから,やはり勉強,常に自分も傍聴に行く。裁判所は,それが一番,とてもいい場所です。   あとは,私の場合は,ここでのお話ではないけれども,やはり自分の言葉が明瞭に話せるように,NHKの教育テレビの夜,手話ニュース845という番組があって,そこが字幕出つつアナウンスがあって,手話があって,だから,その字幕に沿ってしゃべられているものではなくて,字幕は基本的な情報で,その後を追って膨らんでいくと。それが私たちの通訳の場合も,結構同じですよね。   先ほどケネディ先生が,全く原稿がないとおっしゃるけれども,私がよく,これは基本だけれども,そのままは読まないよという,弁護人から言われたり,また検事も突然変えたりとか,それがあるので,生き物だから。そういった場合,やはり基本的に,しゃべっている人のお話を聞く。自分が持っているものは,あくまでも参考。   そうすると,やはり845というのがとても,しゃべられるスピードも普通のNHKよりはスピードが落ちていますので,勉強としては,とてもいい材料だというふうに思っております。 ○菅野委員 弁護士会に対する御意見は持ち帰って,ちゃんと伝えさせていただきますので,ありがとうございます。 ○大澤座長 それでは,ケネディ綾子さん,そして深尾麗華さん,本日はお忙しいところ,非常に有益なお話をいただきまして,ありがとうございました。 (ケネディ綾子氏,深尾麗華氏 退室) ○大澤座長 続きまして,裁判員及び補充裁判員経験者の方々からのヒアリングを行いたいと思います。   進行としては,まず事務当局から,それぞれの方が担当された事件の概要等について,簡単に紹介をしてもらいます。その後,裁判員及び補充裁判員経験者の方々がお話ししやすいように,初めに私から幾つかの質問をさせていただき,これにお答えいただく形でお話を伺い,その後,委員の皆様からの質疑を行うこととしたいと思います。   全体で,おおむね1時間から1時間半程度を予定しております。   なお,プライバシー保護の観点から,裁判員及び補充裁判員経験者のお名前は匿名とさせていただき,1番から4番までの番号でお呼びすることとさせていただきます。 (裁判員及び補充裁判員経験者 入室) ○大澤座長 皆様方におかれましては,本日はお忙しい中,当検討会にお越しいただきまして,誠にありがとうございます。検討会一同を代表いたしまして,心より御礼を申し上げます。   着席させていただきます。   本日は,皆様が実際に裁判員裁判に関与された御経験を踏まえて,お話を伺いたいと存じます。   まず,事務当局から,皆様方が担当された事件の概要等について,簡単に紹介をしてもらいます。 ○鈴木刑事法制企画官 それでは,事務当局から,皆様が御担当された事件の概要等につきまして,簡単に御紹介をさせていただきます。   プライバシー保護の観点から,皆様のお名前は匿名とさせていただき,1番さんから4番さんまで,番号でお呼びすることとさせていただきます。   1番さんは強盗致傷事件,2番さんは強制わいせつ致傷事件,3番さんは覚せい剤取締法及び関税法違反事件,4番さんは殺人未遂事件をそれぞれ担当されました。事実関係,争点,審理期間,判決内容等につきましては,お手元の資料に記載されたとおりであります。   事件概要等の御紹介は以上となります。 ○大澤座長 それでは,私から幾つか質問をさせていただきたいと思います。   まず,第1の質問ですが,皆様が,裁判員裁判を経験する前,刑事裁判の印象はどうだったか。裁判員裁判を経験した後は,それが変わったかということについて,簡単にお話をいただければと思います。 ○1番さん 裁判員裁判を経験する前,刑事裁判の印象という御質問なんですけれども,これは一般の市民生活をしている中で,ほとんど考えたことがないというのが正直なところでございます。   経験するまでは,刑事裁判というのは,やはりテレビのニュースの向こう側,新聞の向こう側で起きているということで,特に自分が関わったような経験がなかったものですから,ほとんど,正直申し上げて,考えたことはございませんでした。   経験をいたしました後ですが,印象は全く変わってしまいまして,ニュース等で裁判の,こういう判決が出ましたというようなニュースを見ておりますと,裁判所の建物が映って,法廷で裁判官の方が並んでいらっしゃる。その後に,裁判の概要ですとか,こういう判決が出ましたというニュースが出ているんですけれども,実際に裁判に関わってみて,建物,裁判官の方がぱっぱっぱっと判決を出して,決めていらっしゃるというような印象では全くなく,裁判官の方も非常に,人間が起こした事件を,人間として,法に基づいて,本当に悩んで悩んで判決を出していらっしゃるんだなというのを目の当たりにすることができて,そのあたりは本当に印象が全く変わってしまいました。   私の印象は,そういうことでございます。 ○2番さん おはようございます。   やはりドラマなんかで見ていたので,何となくイメージはあったんですけれども,実際地裁に行きましたら,ドラマと似たような感じだったので,イメージはそんなに大きく乖離はなかったんですけれども,他方,やはり供述と証拠の関係が,かなり入り組んでいるのかなと思っていたんですけれども,私が担当した裁判は,被告人が既に犯行を認めていたので,全面的に認めていたので,極めて,何といいますか,証拠があれば,判決が出やすいパターンだったのかなという感じはしました。   ただ1点,本人は被害者と面識がないということだったんですけれども,果たしてそういうことってあるのかなと疑問が残って,こればかりは,やはり証拠がないので,本人が面識がないと言う以上は,そうならざるを得なかったというところが,ちょっと不思議な感じを持った場面ではありました。 ○3番さん 私も,ほとんど1番さんと同じような感じですが,ふだんの生活の中で,刑事裁判だろうが民事裁判だろうが,余り意識する場面が少なくて,ほとんど気にとめたことというのは,自分の気持ちとしてはなかったんですが,ただ,衝撃的な事件だったり,結構最近ニュースで聞くことが多いので,いろいろ聞いたり,あと新聞で見たりしたときに,ちょっと自分の中での基準でしかないですけれども,その出ている判決が,何か軽いのではないかなとか,重いのか軽いのか,何となくもやもやが残ることが多かったんですけれども,裁判員制度のところで,今回参加させていただいた後は,やはり自分が評議であったり,いろいろな場面で,自分も含めて,裁判官の方がすごく悩みながら,いろいろな基準に基づいて,ちゃんと考えているんだなということを目の当たりにして,何となく見る印象も変わりましたし,刑罰が重い軽いとか,そういったところを余り思わないようなことが,自分で増えてきたなというふうには感じております。 ○4番さん 私も刑事裁判というのは,それほどふだんの生活で関わるものではなかったので,検察官がいて,弁護人がいて,裁判官がいてと,ドラマで見るような構図というのは知ってはいたのですが,傍聴もしたこともなかったので,余り身近な存在ではなかったです。最初は,どちらかというと,イメージとしては,法律だったり証拠だったりに基づいて,機械的にぱっぱと決めていくのではないかなという印象でした。   しかし,裁判員裁判を経験しまして,今まで関わりのなかったところだったのですけれども,進行については理解が深まりました。裁判に参加させていただいたので,冒頭陳述があって,尋問があってという,すごい手順がしっかり定まっているものなんだということは知ることができました。   また,公判で尋問の際に聞いたもの,被告人からの回答であったりの心証というのが大事で,決して機械的に決まるものではないのだというところを,特に強く感じました。 ○大澤座長 続いて,第2の質問ですが,検察官,弁護人の活動に関してです。検察官及び弁護人が,証明しようとする事実を最初に述べる,冒頭陳述というものがあったかと思います。また,裁判の最後に,検察官及び弁護人が最終的な意見を述べる,論告・弁論というものがあったかと思いますが,それぞれについて,分かりやすかったか,改善すべき点はあったかなどについて,簡単にお話しいただければと思います。 ○1番さん 2番目の御質問の検察官及び弁護人が分かりやすかったかということ,結論から申し上げますと,とても分かりやすく,お話はしていただけたと思います。全く法律的に素人の裁判員に向けて,とても分かりやすく,丁寧にお話はしていただけたという印象でございます。   私ども,冒頭陳述のときは,全く裁判員として,法廷に入るのも初めてですし,これまで自分自身で傍聴したこともありませんでしたので,全く生まれて初めての法廷で,お話を聞くわけですから,もう一言一句,聞き逃してはいけないという緊張感もありまして,分かりやすい分かりにくいの前に,とりあえず検事さんですとか弁護士の方がおっしゃっていることを聞き逃さないように聞くのが,本当に精いっぱいでした。   そういった意味でも,とても分かりやすく,お話は整理してあって,時系列に,丁寧に説明はしていただけたと思います。   印象ですけれども,検察官の方は割と,ちょっと強目な感じで,被告人に対しても,質問の口調がちょっと強く,弁護人の方は,割とマイルドな感じでお話をされるので,さっき2番の方もおっしゃっていましたけれども,ドラマで見る裁判のシーンに,その辺はちょっと似ているなという印象でした。 ○2番さん 検察側はスライドを使って説明をしていただいて,弁護人側は,目を見ながらといいますか,言葉で,手振りを入れながらという感じで,やり方はちょっと違っていたんですけれども,いずれもゆっくりと,そして論理的に話をしていただいたので,非常に理解はできたと思います。   プレゼンテーションの違いはあっても,伝わり方というのはあるのかなという印象でした。 ○3番さん まず,検察側の方の御説明というのは,すごく分かりやすくて,資料とかも,会社の役員会議に出すような,ものすごく順路が立っていて,分かりやすくて,誰が見ても一目瞭然というようなところで,非常に親切なものだなと思いました。   弁護人の方は,ちょっと,私が担当させていただいた事件が,外国人の方が被告人だったので,最初の部分の冒頭陳述におっしゃっていたところと,あと,最終的に弁論としておっしゃっていたところが,若干ずれていったのかなというところが感じたんですけれども。分かりやすさは,弁護人の方もありましたが,途中ちょっと意思疎通が,通訳の方も介してだと思うんですけれども,ちょっと難しそうだなという印象があって,何となく,お互いに釈然としていないような雰囲気を感じたところもありましたが,全体を通しては,私たち周りの者,裁判員の人たち,あとは傍聴されている方々に対しては,非常に分かりやすい進行の仕方だなと思いました。 ○4番さん 私も,先ほど2番の方がおっしゃっていたとおりで,検察官の方は整理ペーパーを用意していただいて,すごい分かりやすく御説明いただきました。弁護人の方も,口頭のみではございましたが,はっきりとした,ゆっくりとした口調でお話しいただき,分かりやすいものではありました。   ただ,1つ気になったのが,弁護人の方は口頭のみでお話しなさるので,その後の評議のときに少し材料が,しっかりとメモしておかないといけないというところはありましたが,説明自体は,すごい分かりやすいものではございました。 ○大澤座長 それでは,次に,第3の質問ですが,証拠調べについて,法廷で取り調べられた証拠の内容は分かりやすかったか,あるいは,こういう証拠も見たかったと思うようなことがあったか。改善すべき点はあったかなどについて,これも簡単にお話しいただければと思います。 ○1番さん 証拠調べについてですけれども,私個人の印象では,非常に証拠が少なかったということで,評議を進める上で,とても,手探りの状態でお話をしていかなければいけない。具体的にちょっと,どこまで申し上げていいのか分からないんですけれども,今回私が担当した事件では,お弁当とかサンドイッチを盗んで,スーパーを出たところで警備員に呼び止められて,そこで,警備員さんがけがをするような事件ということで起訴されているんですけれども,お弁当を盗んでお店を出た後の双方の供述が全く食い違っておりまして,被害者の方は,殴られた,首を絞められた,馬乗りになってというような証言だったんですけれども,被告人の方は,たまたまバランスを崩して転んだだけで,それを警備員さんを巻き込んでしまって,けがをさせてしまったという,全く正反対の供述だったんですね。   それで,具体的な証拠が,そこの辺に関しても,全く具体的な証拠がなくて,現場の写真があるわけでもなく,助けを求めた通行人の証言もなく,助けに出てきたお店の方の証言も全く法廷では出てきていなくて,診断をしたお医者様の,けがの程度,ここにあざができております,ここを骨折しています,ここに指の跡がありますというような写真と証言のみ,物理的なものだったので,実際に事件が起きた現場すら特定ができていないような状況でしたので,評議していく中で,非常にもう少し,私個人としては,証拠が欲しい,物理的な証拠がもう少しあればいいのになというふうには思いました。 ○2番さん 今回犯行は,2人とも同じ駅で降りて,帰宅経路途上だったんですけれども,駅からの各人の家の距離感というか,そういったデータがなくて,プライバシーの問題があって,住所が明らかにされないのはもちろんですけれども,できれば駅からの距離とか,被害者と被告人の家の距離感ぐらいが分かると,立体的に理解できたのかなと。そうすると,先ほど申し上げた,面識があったかなかったかというところの心証にも影響があるのかなという印象はありました。 ○3番さん 今回,私が担当したところの証拠が,携帯電話でのメールのやり取りの抜粋なのか,全てなのか,ちょっとそこが明らかでなかったというものと,あと,押収された覚せい剤2キロ弱の二つだったんですけれども,メールの前後が分からないと,どういう意識の変化があったのかとか,そういったところがちょっと分かりづらくて。あと和訳も書いてあるんですけれども,何となく直訳過ぎて,雰囲気が伝わらないかなというふうに,個人的に思った部分もありました。   あと,覚せい剤そのものもあったんですが,まず,ふだん見ることがなくて,出てきたのが,岩塩の2キロ弱の袋みたいなものしかなくて,これ,実際あったら,これが覚せい剤ですと言われても,全く分からないような感じなんですけれども,それだけが回ってきて,見たというだけなので。それが,スーツケースに入っていたというんですけれども,スーツケースは写真だけだったんですが,実際そのスーツケースに,どこにどういうふうに入っていたとか見られたら,本当に被告人が,どういうふうに隠し持っていたのか,見たのか見ていないのかとか,そういうところも論点にあったので,ちょっとそういう判断もできたのになというところもあったので,ちょっとスーツケースはあってもよかったのではないかなとか,その証拠品がない理由とかというのも,お聞きできればよかったなとは思います。 ○4番さん 私の参加させていただいた裁判では,自宅にて親子で,子供が母親を包丁で刺してしまい,殺人未遂ではあったのですけれども,そういった状況だったので,家にほぼ,証拠となるものはそろっていた,という事件でした。ですので,部屋の間取りであったりを図式化していただいたり,あとは写真でしっかり証拠を残していただいたりしていたので,物的証拠という意味では,私の場合は,十分だったというふうに感じました。   ただ,裁判の争点にもなったところですけれども,被告人に責任能力があったかというところで,お医者さんのお話を聞いたのですけれども,精神鑑定の結果というのが,検察側の用意いただいた先生と弁護人が用意いただいた先生で,かなり食い違っていたので,そこはもう少し何とか,お医者さんのそれぞれの見解があると思うので,難しいかとは思うんですけれども,はっきりするとよかったのかなというふうに思っております。 ○大澤座長 それでは,4番目の質問ですが,裁判の中で,証人に話を聞く証人尋問,あるいは被告人自身に話を聞く被告人質問があったと思いますが,証人尋問,被告人質問は分かりやすかったかどうかについて,簡単にお話をいただければと思います。 ○1番さん 証人尋問,被告人質問ですけれども,証人の方は,被害者とお医者様,あと被告人関係の福祉の方3名,プラス被告人,計4名で証言があったんですけれども,検察の方からの証人尋問というのは,割とこちらが,ああ,こういうことを聞いていただきたいなというような質問の投げかけ方で,割と分かりやすく答えを引き出していただいていたのかなという印象はあります。   被告人質問に関しての,弁護士さんから被告人に質問をされたときに,被告人の方も,割とちょっとしどろもどろな感じで答えがあったんですけれども,ああ,もうちょっとこれを聞いてもらえないのかなとかいうような点が幾つかありました。ちょっと消化不良のような感じではありました。   もちろん,その点につきましては,後ほど裁判員から質問ができる時間がとってありましたので,割と裁判員の方からも,結構な数の質問が出てきましたので,ほかの裁判員の方も,やはり同じような印象を受けたのかなという感じではございました。 ○2番さん 結論から言うと,非常に分かりやすかったです。今後の更生をどうするかというところが,一つ論点になったんですけれども,被告人の母親とその友人の方が対応可能だということと,地元に戻って生活をすることで,友人との交流も増えるというところで,そういった説明が分かりやすかったという印象でした。 ○3番さん 証人の方が税関の方お一人だけだったので,その方に対しては,結構負担が大きかったのかなというふうに感じました。検察側からの質問というのも,すごく分かりやすかったですし,弁護人の方からの質問も分かりやすかったです。   ただ,ちょっと印象として残ったのは,弁護人の方が,何か最終的にどこに終着点を持ちたいのかなというのがちょっと疑問な感じで,何でその質問なのかなとか,何かちょっと分かりづらい,内容として分かりづらい部分が何点かありましたけれども,聞き取りとか,あとやり取りとしては,非常に分かりやすかったと思います。 ○4番さん 私も結論からすれば,分かりやすかったと思っております。   ただ,今回の場合の被告人の方と,あと,被害者が被告人の母親だったのですけれども,どちらも割と高齢の方で,どうしても質問攻めにされると,その場の空気にのまれたのか,発言に齟齬が生じてしまったり,どうしても分からないですとなって,しどろもどろになってしまう場面が結構ありました。ただ,そういったときに,質問を分かりやすく変えたり,検察の方も弁護人の方も,軌道修正を上手にしていただいたかなと思うので,聞いていて,かなり分かりやすいものではございました。 ○大澤座長 続いて,第5の質問ですが,評議に十分参加できたと感じているか。また,法的な概念や量刑の考え方について,裁判官から説明があったかと思いますが,その説明は理解できたか。評議の進め方に改善すべき点はあったかなどについて,簡単にお話をいただければと思います。 ○1番さん 評議には,十分に参加させていただいたと感じております。   法的知識がない中で,何をどう発言していいかも,ちょっと手探りな状態ではあったんですけれども,裁判官の方が,うまく言いたいことを聞き出していただいて,疑問があれば,それを素直に出して,裁判官の方にぶつけられるような雰囲気をつくってくださいましたし,法的な概念の説明も,非常に詳しく,一般市民の私たちにも分かりやすく説明をしていただきましたので,自分の思っていること,考えていること,ほかの方と意見が違うことも,お互いに十分話し合えたと感じております。   法的概念ですとか量刑の考え方についても,本当に丁寧に丁寧に説明をしていただきましたので,とても分かりやすかったです。   評議の進め方に関しましても,大学のゼミの授業のような感じで,手取り足取り教えていただけるような進め方で,誰かが意見を言うと,ちゃんとそれを吸い上げていただいて,こういうことですねという確認をしながら,ほかの裁判員の方と認識を共有しながら,一つ一つ丁寧に,非常に証拠の少ない裁判でしたので,出てきている証言ですとかけがの写真ですとかをもとに,ここにこういうけがをするためには,こういうことが起きないとだめですよねというような,一つ一つ話を詰めていって,多分,裁判員全員が納得できるような,言いたいことが言い残しがないような場はつくっていただいて,十分に評議には参加できたと思います。 ○2番さん 裁判長から指名されたり,順番だったり,いろいろあったんですけれども,やはり評議には十分参加できましたし,皆さんの意見を聞きながら考えたりすることができたので,問題はなかったと感じています。   今回の私が担当した裁判では,どうしてけがをしたのかというところがありまして,後ろから勢いよくぶつかったような形で,女性が勢い余って,自ら転んだ,しゃがんだということなんですけれども,それは果たして致傷になるのかというところがあったんですけれども,法的概念を御説明いただいて,これはけがになった,勢いをつけたためにけがしたということで理解ができたと思っています。   それから,執行猶予をどうするかというところで,先ほどお話ししたように,更生のための知り合いの方がどれだけいるのかというような話も,これはやはり,それで執行猶予をどのくらいにするかというところ,それから,過去のデータを使って,同じような事件の場合,どのような執行猶予になっているかというところを勘案して,最終的にみんなで評議したので,そういった意味では,コンセンサスを得て,皆,おおむね同じ答えになっていったのかなという印象です。 ○3番さん 個人的には,評議に参加というのは十分にできていたと思います。   あと,全体的に発言が少ない方って,どうしても出てくるんですけれども,裁判官の方がうまく話を振っていただいて,大体皆さん同じような発言量に導いてくださるのと,やはりもともとの知識が,裁判員なので,ないところなんですが,そこを,普通だったらという感覚を尊重していただきつつも,法に照らして,一応考えると,こうなんですよとか,細やかな説明が十分にあったと思います。   量刑に関しても,過去の事例とか,そういったものをグラフだったり,分かりやすい例をとって御説明いただいたので,大体皆さんの納得感もすごくあって,全体的にちょっと,進行が本来どういうものなのかは,ちょっと分からないんですけれども,ただ,私が担当させていただいたところの裁判官の方は,必ずその日の目標というか到達点,今日はここまでやりましょうというところを示していただいて,そこに向けて,必ず帰着させるという,そこがあったので,非常に気持ちよくというか,すっきりと一日一日終われたと思います。 ○4番さん 評議に参加できたと感じているかというところなのですけれども,個人的には十分参加できたと感じており,むしろ,ややしゃべり過ぎたかなというところもあるところではございます。ですが,裁判官の方,うまく話を振ってくださって,裁判員同士で同じ発言量になるように,うまく話を振っていただいたのかなというところも,印象としてはございます。   法的概念とか量刑の考え方とか,そういった部分につきましては,個人的には,最初に定義づけをしっかりしていただいたので,十分に理解することができました。   ただ1つ,評議の中でも少し議論になってしまったのが,殺意の有無というのが,今回私の参加させていただいた裁判では争点になっていたのですけれども,殺意という言葉が,法律の用語だと,相手が死ぬかもしれない,死んでも構わないという認識があったかどうかを指しますが,日常の用語で殺意というと,憎しみだったり,恨みだったりという被告人が,犯罪を犯してしまったときの思いというところに,どうしても目がいってしまうので,そういった法律用語と日常用語のちょっと違いにより,評議の中でも,どうしても日常用語の方に走ってしまうというところがありました。   改善案ではないですけれども,いっそもう,殺意とか日常でも使われ得る用語につきましては,もっと一層法律用語で,未必的故意のような用語を使ってしまってもいいのかなというふうには少し感じました。 ○大澤座長 それでは,6番目の質問ですが,守秘義務の範囲や内容についての裁判官の説明は理解できたかどうか。裁判終了後も守秘義務を負っていることについて,どのように感じているか。そのことに伴って,不都合を感じることはあるかなどについて,簡単にお話しいただければと思います。 ○1番さん 守秘義務の範囲や内容につきましては,裁判が始まる前に裁判官の方から,非常に丁寧に,分かりやすく説明をしていただけて,十分,私個人としては理解できていたつもりでおります。   裁判終了後の守秘義務という点でございますけれども,日常生活をするにおいて,全く不便は感じておりません。といいますのも,私の周りで,最初に裁判員をやることになったという話を,知人ですとか家族にしました際も,興味の行き先が,えっ,どんな事件をやるのですとか,何日ぐらいかかるのとか,何時から何時までやるのとか,そういうレベルの質問が多かったんですね。   それで,裁判員が終わってからも,評議室でどんな話をしたのという質問自体は全くされたことがありませんで,毎日裁判所へ行くの大変でなかったとか,すごい事件の写真とか見て気持ち悪くなったり,ニュースで言っているけれども,そういうことあるのとか,そういう質問は多いんですけれども,実際の評議,誰が何を言って,どういうことをしたのということを聞かれるということは全くありませんので,通常の生活に戻ってからの日常生活の中で,守秘義務を負っているということで不便を感じていることは,今のところ一切ございません。 ○2番さん 私も特に不都合に感じることはありませんし,守秘義務の説明については,非常によく理解できたと,理解しやすかったと思います。   事件,判決後は,どんな判決だったかということは話しても問題ないということでしたので,その範囲では話すことは,友人などにはありました。 ○3番さん 守秘義務を負う範疇(ちゅう)の御説明については,非常に丁寧にいただいたと思います。   あと,終了後に守秘義務を負うことによって,不都合というのは全くなく,聞かれることもないというのもありますし,自分としても,記憶力が低下しているというのもあるんですけれども,どこまで覚えているのかと聞かれても,ちょっと覚えていないぐらいのところもありますので,余り問題なく,日常生活には支障ないと思っております。 ○4番さん 守秘義務の説明でございますが,最初に裁判官の方からしっかり説明いただいたので,十分に理解できました。また,事前の資料でも説明が少しあったので,そこでも理解を促されたのかなと思います。   あと,不都合についてですが,特に私も不都合とは感じていないです。裁判員の安全というのを守るためにも,当然必要なことだと思いますし,全く日常生活の中で,負担とも思ってはおりません。 ○大澤座長 7番目の質問になりますが,裁判員として裁判に参加するに当たって,職場や家族などの関係で,どのような苦労があったか。裁判員として参加しやすくするための工夫や配慮として要望したいことはあるかといったことについて,簡単にお話しいただければと思います。 ○1番さん 今の御質問ですが,私は数年前に仕事を辞めておりまして,今,家におりますので,そういった意味では,日程を調整したりする苦労というのは全く,今回に関してはございませんでした。   ただ,ちょっと一つ思いましたのが,昨年の11月ごろに,裁判員としての名簿に載りますという御連絡をいただいて,順次,2月,3月でしたか,ぐらいから,選ばれた方に選任の手続の連絡がいきますので,1年間は名簿に載っていますという御連絡だったんですけれども,全くプライベートなことなんですけれども,例えば1年間の間で,このあたりはちょっと九州の実家で,私が法事を設定しなくてはいけないですとか,去年からちょっとお友達と約束をしていて,この期間,ちょっと長目の旅行を設定しているというような,全くプライベートなことなんですけれども,ありまして,それで,あら,どうしましょう,せっかくこういう名簿に載って,機会をいただくんだから,裁判員やってみたいなという気持ちはあったんですが,ただその1年間の中で,どうしても外せないような,プライベートではあるんですけれども,用が入っていて,ここにちょうど連絡がきてしまったら,断らざるを得ないのかなというようなことが常に頭の隅にありまして,たまたま私の場合は,5月に裁判がありましたので,これ以降の予定に何の支障も出なかったんですけれども,多分お仕事していらっしゃる方ですとかは,1年間の中で調整難しいのかなとか,あるいは,そうですね,それが常にあるというのは,裁判員はやってみたいんだけれどもという,ちょっと頭の中にストレスとして常にあるのかなと。   こういう場合は辞退していいですよというケアもしてはいただいているんですけれども,いや,せっかくだから辞退はしたくないというような方も,多分多いのではないかなと思いました。   それで,こういうことが可能なのかどうかは分かりませんけれども,例えば,名簿に載りますよというお知らせをいただいたときに,例えば,辞退する方は書類を出すというようなことなんですけれども,その次の段階として,例えば,どうしてもこの時期はできません,それ以外の時期だったらできますとか,この時期だけはできますとか,例えば1年の前半は大丈夫です,後半はだめですというような,そういうちょっと,辞退の次の段階の要望を聞いていただけるようなシステムが,もし今後できてくれば,参加しやすい方も増えるのではないかなという印象は持ちました。 ○2番さん 会社に提出する書類の中で,交通費の内訳というのがあって,領収書にはまとまった金額が入っているんですけれども,幾つかの路線を乗り継いで,地裁まで行ったので,地裁にお電話して内訳を聞いた次第でした。そういった意味で,領収書に合わせて内訳を入れていただくのも一案かと思いました。 ○3番さん 特に苦労というところはないんですが,どんな事件を担当するかというまでは,やはり何か,家族としては,家族からは何か,大丈夫なのと,ちょっと心配されたりとかがありまして,私自身は全く気にはしていないですし,そんな影響があるものとも思っておりませんでしたので,大丈夫,大丈夫みたいな形で,普通に参加はさせていただいたんですけれども,やはり何となく,うちだけではなくて,そこに参加する方の御家族には,中にはそういう方もいるのかなという,その心配事の部分では感じました。   あと,会社のところでは,うちの会社は裁判員制度ができたときに,そういったところに参加するための特別休暇制度というものを設けておりまして,そういったところには積極的に,むしろ参加してくださいというようなところなので,非常に参加自体はしやすかったんですが,ただ個人的にちょっと,担当する業務のところで,裁判の期間中の中日1日だけ,本当にイベントがあって,それは個人的には,どうしてもやりたいなと思っていたものではあったんですが,もちろん裁判の方を通しで優先するのがいいということで,会社からも言われて,こちらに参加したところだったんですが,ちょっと状況によって,例えば,時間的に裁判が終わった段階であれば,評議の時間帯の数時間,早目に出ることができるとか,何かそういったものがあれば,なお,仕事をしている方は,何となく調整はつけやすいのかなというふうに思いました。   ちょっとそれを管理するのも大変でしょうし,本来であれば,その評議のところが一番大事なので,影響が出るかもしれないんですけれども,もしそういうことがあれば,参加しやすくなるのかなというようなふうに思いました。 ○4番さん 私の職場では,特別休にしていただいたので,そういう意味では,休暇的に不都合はなかったです。しかし,業務量が多いところで働いていて,たまたまですけれども,私は裁判所に隣接する建物で勤務しているので,裁判所に行く前後はみっちり,働けるのですよねと上司には言われ,それは大丈夫ですというところで,では裁判員裁判行ってきていいよみたいなところで送り出していただいたところでございます。   なので,ほかの会社でお勤めの方とかだと,やはり全休,1日中休みになってしまうのだろうなというところを想像すると,厳しいのかなというところを思いました。   あと,もう一つ感じたのが,選任手続の通告自体はかなり早くいただいていたので,その段階から裁判員裁判があるところの予定というのは,自分の仕事の予定というのは入れないように調整はしていたのですけれども,実際に裁判員として選ばれる,選任手続自体は,かなり裁判の日と近付いていて,実際に裁判員決定ですという日は直前だったので,もう少し早目に決めていただくと,予定調整が容易になりますし,裁判員をやらないのであれば,予定調整も必要なくなりますし,そういった意味で,裁判員の選任手続自体,もう少し手前にしていただけるとよいのかなと感じました。 ○大澤座長 ありがとうございます。   7問伺いましたが,最後にその他,裁判員裁判について,何か御意見や御要望等がございましたら,何でも結構ですので,お話をいただければと思います。   何かおありの方ございましたら,御発言をお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○2番さん 先ほど4番さんから,会社の休暇の取扱いについてお話があったと思うんですけれども,やはり一般的にどういう形になっているのか。恐らく会社によって,制度が,理解が違って,取扱いも違うのかなという印象があります。ぜひ,幾つかの会社からデータを集めていただいて,一般的にはこういう形ですというのをいただければ,会社に対しても説明,理解を得やすいのかなと思いました。 ○1番さん 裁判員をやらせていただいて,非常に私個人としては,いい経験だったというふうに思っております。   それで,こういうふうにいい経験をさせてもらえましたということを,できれば周りの方に伝えていくというのも,一つ,裁判員経験者の任務ではあるのかなという気はするんですけれども,ただ,守秘義務ということがあるので,余り詳しく,これがこうだから,絶対やってみた方がいいですよみたいなことは安易に言えないという,ちょっと葛藤,その辺の葛藤はありますので,守秘義務の範囲といいますか,その辺がもう少し,ちょっと具体的に何がどうということは,私,分からないんですけれども,もう少し,まだこれから経験する方に伝えていい部分というのが,もう少し増えてくれたら,いいから絶対やってみた方がいいですよということも,強く周りの人に言えるような状況になるのかなという気はしております。   あと一つ,裁判所の中に裁判員の方向けの託児所があればいいなというのは非常に強く感じました。それはなかなか難しいかもしれないですけれども。 ○4番さん 今回,裁判員裁判,参加させていただいて,体験させてもらった身としては,すごくいい経験になりましたので,大変感謝しているところでございます。   ただ,参加していない一般の国民の方から見たときに,どうかなというのが少しあって,この裁判員裁判を行うことは,かなりリソースを割いていると思っておりまして,幅広に声をかけるのであれば,郵送費もかかるでしょうし,人件費というのもかなりかかっているところかとは思います。   法曹の皆様から見たときの,裁判員制度の効用というのは,ちょっと私は分からないんですけれども,きっと税金でこの事業は行われているでしょうから,少し,一般国民としては,効用が理解しづらいのかなという部分はございました。   もし,この制度を続けていくのであれば,こういう効果があるんですよというのを,法曹の方の意見を私は分からないのですけれども,アピールをする機会を設け,もっとPRをすればいいのかなと思いました。 ○大澤座長 それでは,私からの質問は以上ということで,委員の皆様から御質問を受けたいと思います。何か御質問等ございましたら,お願いいたします。 ○菅野委員 今回,4番さんに質問があります。専門的な方々が証人として出てきたり,責任能力って,ふだん余り考えたこともないような法律概念が出てくる事件類型だったと思うんですね。   そこで,ちょっとお聞きしたいのは,責任能力というものが審理の中で,納得できるぐらい理解できたのかどうかとか,あるいは,専門家の方って,恐らく精神科医の先生方だったと思うので,そういう精神科医の先生方が尋問でおっしゃるようなことが,その場で聞いていて,率直に言って分かるのか,それとも,後から裁判官からいろいろ聞かないと分からないのか。その辺,正直なところ,少しお聞きできたらと思いました。 ○4番さん 専門的な,医師の方から精神鑑定の結果であったりを,検察側,弁護人側,どちらからも聞いたんですけれども,医療関係の知識も少しありましたので,個人的には,すっと話は入ってきたんですけれども,やはり100%の理解はできなかったので,後から裁判官の方から評議室でお話伺って,ああ,そういうことだったのねという部分は結構ございました。   あと,検察側の御用意いただいた先生が,初めて精神鑑定で法廷に立つという方だったのに対し,弁護人側が,手だれではないですけれども,もう何十回も御経験のある医師の先生が法廷に立って,どうしても弁護人側の精神鑑定の結果の方に引っ張られてしまうという部分はあったので,そこは聞いてて,難しいなというところはございました。 ○島田委員 裁判員に選ぶ手続と,裁判が実際に始まる日までの間隔について,お仕事される方にお尋ねしたいんですけれども,どのぐらいの日数があると,仕事の引き継ぎだとか準備できるのか。そのあたり,適切な日数について,御感想がありましたら教えてください。 ○2番さん そうですね,大体1か月先まではスケジュールが入ってくるので,2か月から3か月あれば,準備は問題なく,引継ぎなどもできるのではないかと思います。 ○3番さん 私も大体同じなんですけれども,ちょっと職業柄,どうしても外部のイベントに合わせなければいけないとか,そういったところがあるので,ちょっとそういうのは度外視するとしても,最低でも1か月半とか2か月ぐらいあると,大変助かります。 ○4番さん そうですね,私は個人的には,そこまであけなくても,2週間ぐらいあればいいのかなと感じたのですけれども,私の場合は,選任手続をやった次の週から始まりますという形だったので,間2週間置いていただけるとよいと思いました。 ○大澤座長 裁判員裁判が始まったころは,午前中に選任手続やって,すぐに午後から公判が始まるというようなこともあって,それに対して,今は恐らく,4日とか5日とか,そのぐらいの期間は空けているということですけれども,それでもまだまだ足りないという感じでしょうか。 ○4番さん そうですね,もう少し時間は空けていただけるといいなというのと,あと,もしかしたら行くかも,裁判員裁判をやるかもしれませんということで予定調整していたにもかかわらず,もし裁判員裁判をやらなかったら,期待外れ感ではないですけれども,周りからどう思われるのかなというのは,不安に思ってはいたので,もう少し間空けていただけるといいかなと思っています。 ○和氣委員 私は,被害者の方の支援をさせていただいています。被害者が裁判に参加すると,裁判員の方々の服装関係がまちまちで気になるとおっしゃっています。中にはこの場にはふさわしくない服装の方がいらっしゃるというようなことを聞いたことがありますが,皆様方は,参加する際に,服装の部分は,どのように感じたでしょうか。 ○1番さん まず,裁判員に選ばれたときに,服装に関してのお知らせということで,冊子に,特別な服装をしてくる必要はありません,ふだんの服装で結構ですということで明言されているんですね。   それで,ちょっと雑談の中で,裁判官の方に伺ったんですけれども,裁判官の方が着るような法服を,裁判員用の何かそういったものを用意しようかという案も出たそうなんですけれども,逆にそういうものをしてしまうと,威圧感があるのではないかというようなことで,今は自由な服装というふうになっているそうなんですけれども。私が経験した,それは裁判員に選ばれたときに,まず,何を着ていけばいいのというのは,結構大きく,どうしますと。私,特にもう,仕事辞めて何年かたちますので,スーツですとか,そういうものは全部処分してしまって,持っていないんですね。   それで,あらどうしましょう,ふだんの服装で結構ですと言われたんですが,ふだんの服装ってこれですよ,ジャージで行ってしまっていいんですかみたいな感じだったんですけれども,やはりちょっと裁判員として行くときも,やはり被害者の方の,事件を起こした被告人の前に立つわけですから,ふだんでいいと言われても,やはりちょっと地味目なものを選ぼうかなというのは,私個人的にはありました。ちょっと私が経験した裁判員裁判の中では,皆さん法廷に立つときは,一応法廷に入る日は,ジャケットを男性の方は着ていらして,女性もちょっと地味目な服だったと思うんですね。評議だけの日は,ジーンズの方とか,ちょっと派手なシャツの方とかいらっしゃったんですけれども。   だから,若干割と皆さん,何でもいいですよと言われても,気にはしていらっしゃるのかなという印象だったんですが。 ○2番さん 短パン,Tシャツはお避けくださいということをちょっと言われた記憶があるんですけれども,やはり,それでなければ,極端でなければいいんだなというのは意識はできましたので,一言何かサジェスチョンをいただければ,大丈夫ではないかなと思いました。 ○3番さん そうですね,私個人は,仕事の延長で来るようなところもあったので,特に考えはなかったんですけれども,やはり同じメンバーの方の中には,何着ていいか分からないんだというようなことは,おっしゃっている方はいまして,ただ,その割にはちょっと,肌の露出が気になる方もいたので,ちょっとそこだけ,平服でというのはいいんですが,何となく露出度とか,そういったところは,もうちょっと分かりやすく,何か冊子に書いてあればいいのかなというふうに思いました。 ○4番さん 個人的には,裁判の前後に職場で働いていたので,このままの格好で,普通にスーツの格好で行っていたのですけれども,全員が全員スーツをお持ちであるかどうか分からないですし,現場で作業されている方,作業服がふだんの格好だという方もいらっしゃるでしょうし,何かしら統一感は持たせた方がいいのかなと。   先ほど,サジェスチョンがあればというお話ではあったのですけれども,皆さん,どう判断するかというのは,裁判員によって,まちまちになってしまうので,そういう被害者の方の思いを考えたときには,何かしら統一感があった方が,もしかしたらよろしいのではないかなというふうには少し感じました。 ○山根委員 4番の方にお伺いしたいんですけれども,資料に補充裁判員ということが書かれておりますが,最初から裁判員として担当されたということでよろしいんですか。 ○4番さん 最初,私も,補充裁判員ですというふうに伺って,ああ,これはふだんの法廷の場には行かないで,何かあったときのリザーバー的な感じで行くのかなと思っていたら,最初から公判も全部聞いて,評議の場でもずっと一緒に。   ただ,公判の場で発言はできなかったので,そこは他の裁判員の方や,裁判官の方に代理で御発言いただくというところだったので,補充裁判員という名前ではありますけれども,ほとんど裁判員として参加させていただいた形でございます。 ○山根委員 そこで特に,もっとこうしたかったとか,逆に,どうだったという特別な御意見はない。 ○4番さん そうですね,ほかの裁判員の方との違いは,法廷で発言ができないというところだけでして,しっかり裁判官の方にかわりにお話していただいたので,私としては,特に不都合は感じませんでした。 ○山根委員 それと,もう1点,担当された裁判は,裁判員の方に,年齢とか性別とか職業とか,バランスよくといったらおかしいですけれども,まちまちな感じで行われていたかをお伺いしたいんですけれども。 ○1番さん 私の場合は,そうですね,多分,補充裁判員で一番若かった方が,20代だとお聞きしています。私よりちょっと上の男性がお一人と,私ぐらいの,女性が2人だったんですが,女性は年齢をお聞きしたら,ほぼ同じ年齢だったんですね。若い女性がいなかったということで,男性が8人中6人,それぞれの年代,60代,70代ぐらいから,50代,40代の方もいらっしゃいましたし,男性が人数が多かったせいで,割と年代はばらけていたと思います。女性がたまたま,私ともう一人の方が,同じぐらいの同世代の2人でした。 ○2番さん 裁判官と裁判員,補充裁判員の方含めて,男女ほぼ同人数になっていました。くじ引きだったわけですけれども,やはり場合によっては,女性だけになったり,男性だけになる確率もあるのかなと思って,そのときにどうなるのかなと想像したんですけれども,やはり一定のバランスはあった方がいいのかなというイメージはありました。 ○3番さん 私のときも,年代と,あと性別も,本当にバランスよく,半々ぐらいに,性別も半々で,年代もいいバランスだったと思います。   ただ,その中に,2回目だという方がいて,2回当たるんだと思って,ちょっと2回はきついなと,みんなで言っていたので,何年かは空くそうなんですが,ちょっと,それはそれで,引きが強い方なんでしょうけれども,職業によっては,ちょっと難しい場合もあるので,やりたい場合は別でしょうけれども,何となく,1回やった人はというのは,外すような方向でもいいのかなとか思いました。 ○4番さん 私の場合も,皆さんと一緒で,バランスよくといいますか,性別も,8人いて,3人女性,5人男性という形で,年代も,私が一番若かったのですけれども,20代,30代,40代,50代,60代,多分,少なくともお一人ずつはいたと思います。そこについては,何かしら調整されているのかなと少し感じたんですけれども,その点でバランスはよかったです。   バックボーンまでは,多分,調整できないとは思うのですが,たまたま私の参加させていただいた裁判員のときは,皆さんバランスよく,いろいろな職種がいらしたかなという印象です。 ○堀江委員 連日長時間,審理に立ち会って,評議も行うという中で,恐らくふだんされているお仕事などとはかなり違う体験をされたと思うのですけれども,その点で,体力的にきつかった,あるいは精神的に負担に感じられたというようなことはおありだったでしょうか。  それから,評議の場と法廷では,また違うのかもしれませんけれども,例えば法廷で,やり取りをずっと見て聞いているときに,集中力をその間保っていることができたかどうか,あるいはその点で,特に何か気をつけられたようなことがおありであれば,お聞かせいただければと思います。 ○1番さん 今の御質問ですけれども,一番に感じた,私は仕事を辞めて,もう数年たつんですけれども,ああ,仕事に行っている方が随分楽だったなという印象を持ちました。   それで,実際裁判に携わっているときは,非常に緊張していますので,法廷の場でもお話を真剣に聞かなくてはいけない,評議の場も,もう思考が,余りに証拠が少な過ぎて,思考がもう,皆さんもそうだったと思うんですけれども,堂々めぐりしてきて,あれがこうだと,こっちが整合性があると,こっちはだめだよねみたいな話が毎日毎日続くわけですね。そうすると,そのときは何も感じないんです。ただ,家に帰ってくると,体というよりも頭が疲れている感じで,ちょっと食欲がなかったような気はします。   ただ,評議の中でも,裁判の中でも,裁判長さんが気を遣ってくださって,一つ尋問が終わったら,休廷しますということで,思っていたよりも非常に休憩をたくさんとっていただいて,評議室の中でも,メンタル的なこともいろいろ,すごくケアをしていただきましたので,本当に倒れるところまではいかなかったと思う,ケアを本当に十分にしていただけたなという気はします。 ○2番さん 私の場合は,判決を含めて3日間という,一番最短だということで聞いていまして,その範囲であれば問題ないと思うんですけれども,やはり1か月にわたって,しかも凶悪な犯罪となれば,メンタル的にも厳しいものがあるのかなと想像はしました。   また,その間,3日間でしたけれども,やはり家に帰ってから思い出して,どうつながるのかなと,やはり考えたりするので,もっと難しい事件であれば,本当にメンタルも含めて,疲労も蓄積するのだろうという想像はつきました。 ○3番さん 疲労の具合という部分については,ちょっとお借りしていたお部屋が,何かエアコンがつかないのか,何か修理が必要なのか,なかなか蒸し暑い中で何時間も話をするには,ちょっとぼおっとしてくる瞬間もあったりして。ただ,裁判官の方々が,結構大き目の扇風機をあちこちから持ってきてくださったりとか,かなり裁判員の方々に対するケアで,逆に気を遣わせてしまって,そこが申し訳なかったなというふうに感じているぐらいですね。   ただ,話の中身のところでは,やはり全然知らない人,被告人という呼び方ではありますけれども,ただ,知らない方の人生がそこで決まってしまうのかというのを考えると,ちょっと,いろいろ考えるところもありましたし,あと自分だったらという考えが,被告人の方が外国人なので,果たして同じような感覚で考えていいのかなとか,何かちょっといろいろ悩むところは多少,ふだんの仕事よりも多かったように感じます。   ただ,経験したことのないことなので,ちょっと何か,自分としても,テンションが上がっていたのか,余りそのときの疲れは感じませんでした。 ○4番さん 私個人の感覚としても,裁判自体は余り,疲労的な意味では問題はなかったと感じています。   業務の関係で,朝は早出して,夜は終電まで,その前後は働いていたので,そっちの方がつらかったところはございますが,裁判自体は,そこまで問題はなかったです。   というのも,しっかり裁判官の方も配慮いただいて,休憩,適宜とっていただいたり,今日は少し早目に終わりましょうかという日もあったので,そういったところは,かなりケアしていただいたかなと思います。   ただ,先ほど3番さんもおっしゃっていましたけれども,どうしても事情はあるんだとは思いますが,エアコンの効きが余りよろしくなかったなというのは感じたところでございます。 ○大澤座長 先ほど4番さんは,補充裁判員ということで,公判では直接質問等できなかったというお話でしたけれども,1番さんから3番さんの場合には,公判で多分,質問する機会というのがあったのではないかと思います。実際に御質問なされたかどうか,あるいは質問しやすい雰囲気だったか,何か抵抗を感じるようなところはあったか,そういったあたりについては,いかがでございましょうか。 ○1番さん 評議の中で,こういうことが分かりませんよねというような質問が,たくさん出てきたんですけれども,その疑問を出した人が基本,質問をするということだったんですが,では,その次の段階で,こういう質問をしたら,こういう質問も出てくるのではないですかみたいな話がどんどん出てきて,質問が結構たくさんになったんですけれども,その辺は,裁判長さんがうまくコントロールしてくださって,では,あなたはこれを聞いてみましょうかというような振り分けをきちんとしていただけたので,質問もしやすかったですし,聞きたい答えは多分聞けたと思います。 ○2番さん やはり事前に疑問点を出し合って,その趣旨を最初に説明した人が裁判でも質問するという形でやっていけたので,やり方としては問題ないと思います。   最後にやはり,どうしても被告人がはっきりと言わないところがあったりすると,裁判長が後でフォローしてくださったりしていたので,そこは,特に大きな問題はなかったのかなと思います。 ○3番さん 私も1番,2番さんと同じような形で,裁判官の方々が事前に,事前にというか,評議の段階で,質問の大体の調整をしてくださったというところが大きいと思います。 ○大澤座長 評議というのは,尋問が終わった後,休憩中に話を整理して,もう一回法廷に入ってという,そういうことですね。   予定した時間が大分近づいておりますが,もしさらに何かあれば,あと一つぐらいかと思いますが,いかがでしょうか。   それでは,皆様,本日はお忙しいところ,非常に有益なお話を頂戴いたしまして,まことにありがとうございました。 (裁判員及び補充裁判員経験者 退室) ○大澤座長 本日予定したヒアリングは以上でございます。   最後に,次回以降の進行について確認をさせていただきます。   次回会合においても,引き続き,裁判員裁判関係者からのヒアリングを実施したいと思います。具体的な人選や実施方法等については,現在検討中でございますので,後ほど速やかに,事務当局を通じて,委員の皆様にお知らせすることとさせていただきたいと思います。   本日予定した議事は以上でございますが,この際,何か御発言のある方はいらっしゃいますでしょうか。   では,最後に,事務当局から,次回以降の日程について確認をお願いいたします。 ○鈴木刑事法制企画官 次回会合は,10月25日金曜日午前10時から開催する予定としております。場所につきましては,追って御案内を申し上げます。 ○大澤座長 10月25日金曜日の午前10時からということで,よろしくお願いいたします。   なお,念のためですが,本日の会議の議事につきまして,今後精査した際に,公開に適さない部分が出てきた場合には,議事録に記載せず,非公表としたいと思います。具体的に非公表とする部分が出てきた場合,その部分がどこかということについては,座長に御一任いただきたいと存じますが,よろしいでしょうか。   それ以外につきましては,発言者名を明らかにした議事録を公表することとさせていただきたいと思います。そのような取り扱いで,よろしゅうございますでしょうか。 (一同了承) ○大澤座長 それでは,本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-