裁判員制度の施行状況等に関する検討会(第8回)議事録 第1 日 時   令和元年10月25日(金)午前10時1分から午後0時11分まで 第2 場 所   東京地方検察庁会議室 第3 出席者    (委 員)大澤裕,大沢陽一郎,小木曽綾,重松弘教,島田一,菅野亮,武石恵美子,田野尻猛,和氣みち子(敬称略)    (事務局)大原義宏刑事局刑事課長,吉田雅之刑事局刑事法制管理官,羽柴愛砂刑事局参事官兼企画調査室長,鈴木邦夫刑事局刑事法制企画官    (その他)戸苅左近最高裁判所事務総局刑事局第二課長 第4 議 題 1 裁判員裁判関係者からのヒアリング 2 その他 第5 配付資料 ・「担当された事件の概要等」と題する資料 ・大城聡氏説明資料(「市民から見た司法参加の意義と課題」,「守秘義務の緩和を求める共同提言」) 第6 議 事 ○鈴木刑事法制企画官 予定の時刻となりましたので,ただ今から,裁判員制度の施行状況等に関する検討会の第8回会合を開催いたします。 ○大澤座長 本日は皆様,御多用中のところ,また,あいにくの雨で足元が悪い中,御出席いただきまして,ありがとうございます。   本日は,堀江委員,山根委員におかれましては,所用のため欠席をされています。   それでは,事務当局から,資料について説明をお願いします。 ○鈴木刑事法制企画官 本日お配り申し上げています資料は,議事次第,「担当された事件の概要等」と題する資料,大城聡氏説明資料「市民から見た司法参加の意義と課題」及び「守秘義務の緩和を求める共同提言」でございます。 ○大澤座長 それでは,議事に入りたいと思います。   本日は,前回会合で皆様にお諮りしたとおり,引き続き,裁判員裁判関係者からのヒアリングを実施したいと考えております。   委員の皆様には,事前に事務当局からお伝えいたしましたが,本日は,裁判員経験者4名及び一般社団法人裁判員ネットから大城聡さん,坂上暢幸さん,福田隆行さんにお越しいただき,お話を伺う予定としております。   まず,裁判員経験者4名からヒアリングを行い,その後,裁判員ネットの方々からのヒアリングを行いたいと思います。   それでは,裁判員経験者の方々からのヒアリングをまず行いたいと思います。   進行としては,前回会合と同様,まず事務当局から,それぞれの方が担当された事件の概要等について,簡単に紹介をしていただきます。その後,裁判員経験者の方々がお話ししやすいように,初めに私から幾つかの質問をさせていただき,これにお答えいただく形でお話を伺い,その後,委員の皆様からの質疑を行うということとしたいと思います。   全体で,おおむね1時間から1時間半程度を予定しております。   なお,プライバシー保護の観点から,裁判員経験者のお名前は匿名とさせていただき,1番から4番までの番号でお呼びすることとさせていただきます。 (裁判員経験者 入室) (大城聡氏,坂上暢幸氏及び福田隆行氏 入室)(傍聴) ○大澤座長 皆様方におかれましては,お忙しい中,また,あいにくの雨で足元の悪い中,当検討会にお越しいただきまして,誠にありがとうございます。検討会一同を代表いたしまして,心よりお礼申し上げます。着席させていただきます。   本日は,皆様が実際に裁判員裁判に関与された御経験を踏まえて,お話を伺いたいと存じます。   まず,事務当局から,皆様方が担当された事件の概要等について,簡単に紹介してもらいます。 ○鈴木刑事法制企画官 それでは,事務当局から,皆様が御担当された事件の概要等につきまして,簡単に御紹介をさせていただきます。   プライバシー保護の観点から,皆様のお名前は匿名とさせていただき,1番さんから4番さんまでの番号でお呼びすることとさせていただきます。   お配りした資料は,「担当された事件の概要等」を御覧いただきたいと思います。   1番さんは殺人未遂事件,2番さんは強盗致傷事件,3番さんは傷害致死事件,4番さんは覚せい剤取締法違反及び関税法違反事件をそれぞれ担当されました。   事実関係,争点,審理期間,判決内容等につきましては,お手元の資料に記載したとおりであります。   事件の概要等につきましての御紹介は以上でございます。 ○大澤座長 それでは,私から幾つか質問をさせていただきたいと思います。   まず,第1の質問ですが,皆様が裁判員裁判を経験する前,刑事裁判の印象はどうだったか,裁判員裁判を経験した後はそれが変わったかについて,簡単にお話しいただければと思います。 ○1番さん 私は,裁判員を経験する前は,お恥ずかしい話,犯罪イコール悪いこと,それをした人も悪い人,被告人自体にも悪い人という,一つの悪としての,イコールでつなげた視点だったんですけれども,裁判員裁判を経験したときに,犯罪をしたことは悪いことではあるが,犯罪をした人イコール悪い人というふうにしてつなげることはできなくなり,犯罪に対する,今まで他人事だったことが他人事にならなくなったというのが,大きく違います。 ○2番さん 私も,今までこういう事件というのは,裁判官,弁護士,検察官がやるものだと思って,自分は全く関係のないものだと,本当に人ごとのように考えていたんですが,自分が裁判員裁判に参加することで,ああ,こんな身近にこんな事件がたくさんあるんだということと,何か自分たちが変えていかないと,社会のシステム自体を何とか変えていかないと,事件というのは起こり続けるんだなというのを考えるようになって,すごく,自分たちが変えていこうという感じで,コミットするようになってきたと思います。 ○3番さん 私は,刑事裁判というものは,皆さんのデスクにあるような六法全書がまずあって,それから,難解な文章で書かれた証拠の紙の山がいっぱいあって,それを読み込むことから始まるのだと思っていたのです。ところが,裁判の初日,検察の方から出された資料,何とA3用紙ペラ1枚で,カラー,箇条書き,私たちにとっても,すごく分かりやすい資料でございました。   ですので,ああ,裁判ってこんなに分かりやすいものだったのか,というのが印象でございます。 ○4番さん 私は,裁判員裁判を経験する前は,刑事事件は,通常,報道で接するぐらいしかなかったので,早く捕まればいいとか,そういった程度の認識しかありませんでした。また,10年くらい前,この制度ができる前後だと思うんですけれども,過去の袴田事件とかのドキュメンタリーを見た際は,過去には,そういったこともあったのかなという認識程度でした。   ただ,裁判員裁判の経験後は,裁判官や裁判員との評議を経験しておりましたので,事件の記事とか読むにつれ,裁判員が裁判や評議の中でどんな心境で,どんなふうに考えて,この判決を出したのかなといったことも考えながら,見るようになりましたので,その点では,かなり変わってきたと感じています。 ○大澤座長 それでは,次の第2の質問ですが,公判の手続では,検察官及び弁護人が証明しようとする事実を最初に述べる冒頭陳述,そして,審理の最後に,検察官及び弁護人が最終的な意見を述べる論告・弁論があったと思いますが,これらについて,それぞれ分かりやすかったか,改善すべき点はあったかなどについて,簡単にお話しいただければと思います。 ○1番さん 私の場合は,初日に被告人の人が違う名前を名乗ってしまったという,ちょっとイレギュラーがあったものですから,事件に関しての説明,検察側の説明はすごく分かりやすかったんですが,そのイレギュラーに対して,弁護士さんがすごく興奮されてしまって,何かをすごい叫んでいるんだけれども,全部専門用語で,何を言っているのか全く分からなくて,その威圧感で,こちらも少しパニックになってしまったというか,動揺したというのがあって,結局,裁判長が休廷をして,説明してくださったんですけれども,そのイレギュラーがあった際に,全く理解ができなかったというのがあったので,出来上がっていた資料は分かりやすかったんですけれども,そのイレギュラーに対しての対応というのは分かりにくかったところがあります。   改善すべき点はどうかというと,ちょっと私は,そのイレギュラーのパターンだったので,どこを改善したらいいのかなというのは思いつきませんでした。 ○2番さん 6年前の事件になるので,ちょっと記憶が確かでないところもあるんですが,被告人が否認をしていた事件で,何が争点になるのかというのが,最初はちょっとよく分からなかったような記憶があります。いろいろ進んでいくうちに,だんだん説明を受けてきて,ああ,そういうことなのかなというのが分かってきたという経過は覚えています。   最後の最終的なところは,分かったような気がします。それぐらいです。 ○3番さん 先ほども申しましたように,冒頭陳述のところでは,検察側の資料は,A3用紙ペラ1枚,カラーでとても分かりやすかった。ただ,非常に残念なことに,弁護側の資料は,ほとんど文章だったのですけれども,ロジックがなっていないような文章で,何を言いたいか分からない,非常に残念なものでございました。それは,裁判を通して全て,残念ながら,弁護士さんの方は分かりづらく,いま一つの部分がとても多ございました。   実は,東京地裁の意見交換会に出席させていただきまして,そのときに裁判員経験者が,私を含め8名出席いたしましたが,8名全員が同じことを言っておりました。そのとき出席されていた弁護士代表の方が,とてもいたたまれない感じでございました。すごく残念です。   さらに,これは公判に出ており守秘義務に該当しないと思いますのでお話ししますけれども,検察官が求刑をする,それもA3用紙1枚の資料を用いての説明だったと思うのですけれども,最後に,求刑の年数の数字が空欄になっていたのです。そして,最後に「5年」と数字を言葉で言ったのですね。そうしたら,弁護側が,ばたばたと私の目の前の席で慌てふためきまして,何と弁護側が次に出してきた資料には,「5年」と印刷してあったのです。それをあろうことか,弁護士の方は,「すみません,誤記です,3年です」と言って,その場で訂正いたしました。   私は,そこですごくがっかりいたしました。後々いろいろな方々とお話しする機会を得て,ああ,そうなのかと思ったことがございます。検察の側は,一つの大きな企業のような組織であり,研修制度もしっかりしているし,公判で用いる資料をチェックする機能も働いている。ただ,弁護側は,例えば小さな弁護士事務所だった場合,研修を受ける機会や資料をチェックする機会,戦略を練る機会も少なかった可能性があり,やはりそこに,申し訳ないですけれども,力量の差があったかなというのは否めないかなと思いました。   ただ,そういうふうに力量の差はすごくありましたけれども,それに左右されてはいけないと思って,裁判員全員が一生懸命弁護側の意を酌み取るように努力をして,公平に判断を下したいなと思っていたというのは申し添えておきたいと思います。 ○4番さん 私の裁判でもやはり,特に検察官の冒頭陳述の部分での資料ですね,これはパワーポイントでしっかり作ってあって,非常に分かりやすかったです。   私が担当した裁判は,ちょっと特殊なもので,事件にかかる経緯期間が大体1か月ぐらいあり,そういった時系列とか,また関係者も多かったので,共犯者との人間関係を含めて,全て整理されており,そういった面では,非常に分かりやすい説明だったと思います。   それに対して,弁護側の資料については,やはり3番さんのおっしゃったとおり,非常に分かりづらい印象はあったと思います。ただ,弁護側からすると,検察側の主張,これを崩すということが多分目的だと思いますので,幾つかの争点を絞って反証を書いたのだろうと後から考えはしましたが,その事件の経緯について,ポイント,ポイントの説明でしか主張がなかったので,非常に分かりづらい部分はあったと思います。   ただ,そういった部分的な主張をすることについて,弁護側の肩を持つわけではないですし,また事案にもよるのでしょうが,こういった反証を整理して主張することは,非常に難しかろうと感じております。 ○大澤座長 続いて,第3の質問に移りますが,証拠調べについて,法廷で取り調べられた証拠の内容は分かりやすかったか。それ以外に,こういう証拠も見たかったと思ったことがあったか。あるいは,証拠調べについて,改善すべき点はあったかといったことについて,また簡単にお話をいただけたらと思います。 ○1番さん 私の担当した裁判は分かりやすかったです。ですけれども,証拠として挙がってきていないものもあるかもしれないし,何を見たいとか,そういうことに関しては,ちょっと難しいのかなというふうに思っています。 ○2番さん 映像で現場の写真を見せていただいたり,あと地図を映像で見せていただいたというのは,とてもイメージがつきやすくて,資料で,文字で見るよりも,映像というのはいいなとは思ったんですが,ちょっと,例えば血のついた服というのを見せられたときは,さすがにちょっと,どきっと衝撃を受けました。そのときは,ちょっと視線を外しながら,ちらちらっと見るような感じだったんですが,その前に,そういう証拠が出ますよということを言っていただいたので,そこの心構えはちょっとできたかと思います。   それ以外の証拠というのが,ちょっとそのときはいっぱいいっぱいだったので,思いつかないです。 ○大澤座長 血のついた服というのは現物ですか。 ○2番さん はい,現物が回ってきました。 ○大澤座長 分かりました。 ○3番さん 私も証拠の方は,すごく分かりやすかったと思います。ただ,先ほどから申しますように,弁護側の準備がとても足りなくて,例えば地図で,この場所でこうなったという経緯を検察官が説明した後に,反論するのですけれども,何も示す物を持っていないので,検察官がその場で,地図貸しましょうかと言って出して差し上げたり,そういうことがありましたので,非常に不十分さはあったかなと思います。   さらに,映像解析の専門家が証人として出ていらして,車でひいたときはこうだったというような映像解析をされていて,何キロぐらいのスピードでひいたから,だからこれはこういうこと,傷害に当たるんだというようなことを検証されていまして,分かりやすいような,丸め込まれてしまってはいけないなというような感じはございました。   また,事件から裁判まで1年半ぐらいが経過しておりまして,目撃者の証人が2,3名出てきたのですけれども,お1人は,やはり古過ぎて,覚えていないという答えが多くて,聞き出したいことがなかなかできなかったということがございます。せっかくこういう制度になって,裁判までの期間が短くなったのですから,やはり,できるだけ早いうちに,証人の記憶が新しいうちに呼んでいただけたらいいかなと思いました。   さらにもう一つ,一番大事な証人を最初に呼ぶのだということを後から聞いて,ああ,そうだったのかと思ったのですが,やはり初日の午後に証人1人目がいらっしゃいました。初日というのは,裁判員はものすごく緊張しておりまして,頭が真っ白というのが正直なところです。そんな中で,一番大事な証人に出てこられても,聞きたいことが十分聞けなかったというのがすごくありますので,やはりどうしても,何日目にどの証人を呼ぶか,あるいは初日は,例えば最初の説明だけで終わるとか,そういう配慮をしていただいた方が,より効果的かなと考えております。 ○4番さん 私の裁判についても,出てきた証拠自体は,非常に分かりやすくはありましたが,事件の性質上,海外での出来事の事実認定ということが主なものでしたので,残念ながら,証拠は量的には少なかったと思います。   また,海外での出来事に関する証言とかも,検察官が現地の警察に行って,ヒアリングしたものを証言するといったものだけでしたので,証拠の対照性に欠け,ちょっと偏っているかなと感じました。   それと,証拠に関してですが,この制度が開始する前後だったと記憶していますが,公判前整理手続で,基本的に証拠は開示されるようになったと聞いています。担当した裁判官は,この裁判については,ほとんどの証拠が出されていると言ってはいましたが,制度的に全部開示になっていないことと,裁判員裁判以外は,こういった証拠が,開示されない場合もあると聞いておりますので,証拠については,基本的には,全部開示の方がいいのかなと考えています。   その方が,評議で議論する上でも,全ての証拠を参照した上で議論できるということがありますので,その辺は改善していただければと思います。 ○大澤座長 開示と言われたのは,弁護人に開示されているという御趣旨ですか,それとも法廷に出してくださいという御趣旨ですか。 ○4番さん 基本的には弁護人へ。裁判に全ての証拠を出すということは,不可能だと思いますので,少なくとも検察側の持っている資料,証拠というのは,公判前整理手続の中で,基本的には全て開示されることが一番望ましいのだと思います。 ○大澤座長 それでは,続いて第4の質問ですけれども,証人尋問あるいは被告人質問があったかと思いますが,それは分かりやすかったかどうかということについて,これも簡単にお話しいただければと思います。 ○1番さん 私が裁判員として事件を担当したのは,2009年で,制度が始まった最初の方でしたので,すごく私たち,お客様のように扱っていただきまして,説明も丁寧だったし,分かりやすかったです。 ○2番さん 先ほどの第2の質問とちょっと絡むかもしれませんが,検察官の方は,資料をあらかじめ,分かりやすく図解で見せていただいたので,それに伴って,頭に入っていたので,尋問が分かりやすかったんですが,確かに3番さんと一緒で,弁護士の方が何も資料がなかったので,その資料がない中での質問というのが少し,何を意図しているんだろうというのが分かりにくいところがありました。それは最後までちょっと感じていて,やはり,何か目で見る資料があった方が,私たちとしては,頭を整理しやすいねというふうに話し合ったのを覚えています。 ○3番さん 大変分かりやすかった。ただ,先ほどから申しますように,弁護側がちょっと残念だったというところです。   もう一つ,裁判長が,私たちがちゃんと理解した上で裁判が進んでいるかというのをとても気遣ってくださいまして,一つのセクションが終わりましたら,必ず10分ぐらい休廷を挟んでくださいました。法廷の裏に小部屋があるのですけれども,そこに連れていってくださって,今の分かりましたかと聞いてくださいました。さらに,皆さん質問したいことありますか,こういうこと聞いてみたい,ああ,ではその話だと聞きたいことは聞けないから,こういう質問の方が聞けると思いませんかとちょっと打合せをする時間を作っていただき,また戻って,私たちから質問する,あるいは裁判官から質問するようなことがございましたので,大変分かりやすく進んでまいりました。 ○4番さん 私の裁判でも,3番さんがおっしゃったように,証人尋問の途中に休廷を挟んでいただいて,尋問の内容の整理とか,それに対する質問の整理とかをやっていたので,非常に理解しやすく進めていただいたと思います。ただ,事件の性質上証人が10人ぐらい,共犯者,検察官,税関職員,それと,現地の警察から話を聞いてきた検察官が証言しており,後になると,当然,前の証人に再び聞くことができないのですが,共犯者といった犯行に近かった人の証人尋問が先行していたため,後の検察官とかの証人尋問の後に,再度,聞き直したいという点が,多々生じました。同じ証人を二度,三度連れてくるというのは,難しいとは思うのですが,うまく改善できないものかと思います。 ○大澤座長 続いて,第5の質問ですが,評議について,評議に十分参加できたと感じているか,法的概念や量刑の考え方についての裁判官の説明は理解できたか,評議の進め方に改善すべき点はあったかなどについて,簡単にお話しいただければと思います。 ○1番さん 評議に関してですけれども,私は裁判が終わった後に,非常に後悔の時期が長かったです。それはなぜかというと,私たちが被告人の刑期を決め,有罪か無罪かまず決めて,量刑を決めてというときに,その人が裁判が終わった後に行く刑務所のことを何も知らないで,何か勝手にデータベースを見て,ああ,これぐらいなのかなとか,何か空気読んでとか,そういうふうにして,その後の生活をする場所のことも知らず,きちんと全てを知った上で,判決に至ったわけではなかったので,何かかえって申し訳ない気持ちになって,すごく後悔していたので,評議が十分にできたかというと,そうではなかったなというふうに思っています。   評議を進めるに当たって,裁判官の方は,すごく丁寧に説明していただいたんですけれども,何せ始まったばかりだったので,裁判員裁判というものをきちんと,裁判ってどういうものなのか,裁判員裁判ってどういうものなのかというのを理解しないで参加したことを非常に後悔しております。 ○2番さん 私の参加した裁判員裁判のときは,裁判官の役割分担がとてもはっきりしていて,いろいろ法律の知識について説明をしてくださる方と,あと,この事件に絡んで,ではどういうふうな,専門用語がどうなのかとか,この事件に照らし合わせると,法律はこうなっているんだというふうに教えてくださる方と,あと裁判長が,とても役割分担で,それがうまく機能しているな,そのファシリテートがすごいなと思って,分かりやすかったなと感じています。   あと,最初の頃は,こんなささいな引っかかり,ちょっと間違っているから,発言するほどのことでもないのかなと思って,言えないで黙っているようなことも最初はあったんですが,裁判長の方で,どんなささいなことでも,どんなことでも構わないから言ってくださいというふうに言っていただいたので,ああ,では言ってもいいのかなと思って発言したり,そうすると,ああ,なるほど,そういう見方もあるんですねというふうに,言ったことに対して,ちょっとフォローしていただいたりすると,言いやすくなってきて,そうすると,だんだん全員の中で,少しずつ意見が活発になっていったなと思います。   あと,一応,全員が話すように,特定の人が話すのではなくて,全員が話すようにというふうに振られたので,何か心の準備ができて,ああ,では自分だったら,次こういうこと話そうかなというのが最初のうちはできてきて,最後の方ではもう,言われなくても自分から話すようになっていったので,とても裁判官のファシリテートがよかったので,十分話合いができたという印象を私は持っています。 ○3番さん ファシリテーションという意味においては,2番さんと全く同感でございます。   ただ,私は,量刑データベースに対するもやもやというのが,この3年ぐらいずっとございました。裁判員経験者が10人ぐらい集まる機会があり,全員,皆さんの事件では,量刑データベース使いましたか,そして,使わざるを得なかったと思いますかと聞きましたら,全員が全員,使いましたし,量刑の年数というのは,ド素人には出てこないものだとおっしゃっていました。有罪か無罪かは決められても,それが3年だ,5年だ,10年だ,20年だという点はさっぱり分からないので,やはりデータベースに頼らざるを得ません。   ただ,データベースに頼るということは,結局,前例主義なのではないのというのが私の中でございます。あのデータベースが,なくては年数が出せないのでしょうけれども,前例主義になってしまうのかなというのが,すごくもやもやしたところです。先日ある事件の判決が出た際,裁判員の方が前例で決められることに対しお考えを述べていらしたことが報道されていました。記事になっていたのを御覧になった方もいらっしゃるかと思います。公平性ということをもって,前にあった同じような事件を参考にしながら,量刑を出すということに対して,今後,検証と改善策が必要なのかなと思っています。   私も仕事でデータベースをよく使うのですけれども,データベースというものは,設計とデータの入れ方と検索の仕方で,答えが全く違う場合がございます。私のときにも,類似の事件がありそうでなく,結局参考にならなかったということもございまして,やはり,今ある量刑データベースは仕方がないと思うのですけれども,今後もあれを改善していかないと,そのうち,その存在意義とか,いろいろ言われてくることになるかなと思います。   さらに,申し上げたいことがあるのですけれども,あのデータベースって,どうも裁判官とか事件の関係者にしか公開されていないらしいですね。そうすると,検証の機会はあるのでしょうか。例えば裁判に関する研究をされている方に公開して,もっといい設計があるのではないかとか,何かそういう検証の場が要るのではないかなと考えております。 ○4番さん 私の裁判でも,評議に関しては,そこそこできたのかなと思っています。   私の担当した裁判は4週間という期間で,証人尋問をやっている間の話合いを含めますと,大体15日ぐらい評議を行っていました。   証人の人数も多く情報が多かったというのもありますし,裁判員の年齢層も多岐にわたっていましたので,中には議論にキャッチアップできない裁判員が出る可能性もあったと思います。   このため,裁判官の方も,うまくファシリテートしていただいていましたし,私も,なるべく細かく質問をすることで,情報がきちんと理解共有されるように気を遣っていました。   あと,量刑に関しては,量刑データベースを,使っていました。覚せい剤の犯罪は,国によっても,量刑の幅が違うと聞いており,では何年が正しいのかというのは,正直,一般市民には全然分かりません。このため,覚せい剤事件の裁判では量刑データベースを使うのは,やむを得ないと思います。   この判断基準に対し,評議の中で,プラスマイナスとしてどう情状等を反映して判断するのかといったことが,多分,裁判員としてできる範囲なのかと考えます。私の裁判でも,裁判官の説明の中で,いろいろ過去の事例とかの説明がありましたが,結局は,それプラスマイナスとして理解し,進めていった感じでした。 ○大澤座長 次に,第6の質問ですが,守秘義務の範囲や内容についての裁判官の説明は理解できたか,裁判終了後も守秘義務を負っていることについて,どのように感じているか,不都合を感じていることはあるかなどについて,簡単にお話しいただけたらと思います。 ○1番さん 私の場合は,裁判長の方から,裁判で見聞きしたことは言っていいですよ,評議室で話した内容は守秘義務に当たりますから言ってはいけません,だけれども,裁判員をやった感想は大いに言ってくださいという説明で,紙を見せられました。その紙には,罰金,守秘義務違反すると五十何万とか,あと懲役とか何か書いてあって,私はもう金額だけに目がいって,ああ,違反したらこんなにお金取られてしまうんだという,何かすごい責任を負ったなというのは感じたんですけれども,そのときは裁判長の言うことは理解したつもりではいたんだけれども,裁判員を経験した感想というと,ここでこういう思いがあったから,こういう感想になるんだけれども,どこまで言っていいのかというのが全く分からなくて,具体的な,例えばSNSに上げてはいけませんよとか,何対何と言ってはいけませんよとか,そういう具体的に,ガイドラインではないんですけれども,絶対これをしたらアウトという,何さんと言ってはいけないよとか,そういう具体的なことがもし分かっていたら,もうちょっと楽だったのかなというふうに思うのと,あと何か,裁判員制度をちゃんと知ってから臨むことが,一番いいのかなというふうに思っておりまして,それは,何でそういうふうに思ったかというと,裁判員裁判を経験した後に,裁判員ネットの一般市民モニターというのに参加して,私の友達のママ友を連れて,一緒に模擬評議に行ったりしたんですね。   そのときに,私が最初に経験して,もやもやしたり悩んだことを,同じように一番最初に,そのママ友は,模擬評議が終わった後に,同じことを言って感じていた。でも,そのとき私は,ああ,いい評議ができた,納得した議論ができたと思えていた自分に気がついて,やはり知るということは大事なことなんだなと思って,候補になったことも言ってはいけない,確か言ってはいけなかったような気がして,そんな自分が候補になって,どんなことをするのとかも,私,候補者になったんだけれども,どんなふうにして,こんな心配事があるんだけれどもという,井戸端会議ができるようになれば,もっともっと裁判員裁判のことを,ああ,こうなんだってよとか,この人の事例のときはこうだから,こういうふうにあれだったんだってよと,では自分のときにはどうしようかなというふうにして考えて臨めると,すごくいい評議もできるだろうし,何と言うんでしょう,後悔とかも少ないのかなというのはすごく感じております。   なので,守秘義務に関して,罰金とか何かもう,そういう金額が頭にちらついてしまうと,本当にすごい苦しくなってきてしまうなというのが私の経験談です。 ○2番さん 裁判長から,守秘義務の本質的な意義,例えば評議の内容で話されたことが,例えばSNSで広まってしまうと,何かそれが裁判に影響があるしとか,あと,誰がどういうことを話すということが,それは話さないでくださいという,大まかな意味は,何となく分かったような気がするんですが,ただ,感想は話してもいいというのは,1番さんと一緒で,ではどこからどこまでがというのがよく分からなくなるので,そうすると,何かこう,自分が大変だったということぐらいしか言えないというのがありました。   守秘義務,何か話せないというのがとてもこう,自分の中で,周りの家族や職場の同僚とか,そこから浮いているような,自分が重大なことを抱えているような,何かすごく孤独感をずっと感じながらいて,気持ちがどんどん重くなっていって,何か,すごく私は今,大事な裁判に臨んでいるんだという高揚感もあるし,すごい,誰にも言えないという重さもあるしというので,精神的にすごくしんどかったかなというのがあります。   終わってからも,何かもっと話したい,自分がこういう体験をしたんだというのを,もっと話したいなと思うんですけれども,何かその守秘義務の縛りがどうも漠然とあるので,なかなかそれを,余り話さない方がいいのかなという思いがあると,何か未消化のまま終わってしまっている感じがとてもあります。   この守秘義務って,何なんだろうと,自分でも考えるんですが,私は職場で,実は精神科の病院で心理士として働いているんですが,同じ心理士仲間に,自分のしんどかった体験を聞いてもらったことで,すごくすっきりしたなというふうに,とても有り難いなと感じているんですけれども,この守秘義務の縛りがあると,もしかしてほかの方は,御家庭に,日常生活に帰っても,何かそこが言えないで,ずっと抱えながら,どの辺まで言ったらいいのか分からずに,あと話しても,しんどかったという話をしても,御家族や周りの方が分かってくれなくて,苦しい思いを持ったまま,日常生活に帰っていらっしゃるのではないかなと思うと,この守秘義務って,もう少し語りたいし,何か緩和ができないものかなというふうに考えています。 ○3番さん まず,理解できたかということですけれども,裁判長の説明はとても分かりやすく,理解はしていたと思います。   さらに,実は自分が名簿に掲載されたときに,民放で2時間ドラマをやっていました。ただ,幾ら検索しても,それがもう出てこないのですけれども,有名な俳優さんは一切出ておらず,裁判員が主役になった2時間ドラマで,こんなふうに選任されます,こんなふうに進んでいきます,ここは言ってはいけないなど説明されておりましたので,自分は全部予習できたのです。そのおかげで,不安もありませんでしたし,しっかり理解できていたと思っておりました。   ただ,ここはしゃべっていいから,どうぞ皆さん聞いてという気持ちで職場に戻ったのですけれども,誰も聞いてこないのです。しゃべってはいけないのでしょうという感じで。ですから,2番さんと同じように,自分の経験を分かち合いたかったのに聞いてくれないという,とても残念な状況になっておりました。   さらに,裁判員経験者仲間に聞きますと,守秘義務というのは自分たちを守るものだという理解がまずあったのですが,中には,それが足かせになって,やはり心に負担があって,自分の人生が大きく狂った人もいるらしいということを聞くと,非常に残念でなりません。   候補者の名簿に載ったときぐらいは,言ってもいいのではないかなと思っています。どの裁判を担当するか分かりませんから,そこで何か起こることもないでしょうし,逆にそこで,例えば学生さんとか若い方が,名簿に載りそうだということをSNSでつぶやくと,裁判員というものに世間がはっと目を向けてくださり,あっ,こういう制度もあったな,自分もやってみたいなというところにつながっていくのではないかなと思いますので,そこの敷居もなくしてもいいのかなと思っています。   さらにいろいろな記者さんから取材を受ける機会があるのですけれども,せっかく取材をしてくださっても,それが報道されていかないというジレンマがございます。裁判員の辞退率が上がっているという非常に残念な状況を聞いて,では,もっと報道してくれればいいではないと何人かに言ったのですが,自分がどんなに頑張って記事を作っても,センセーショナルな内容でないと,トップがそれを記事として取り上げてくれないと。では,何だったら書いてくれるのと言ったら,それはもちろん評議ですというふうにおっしゃる。   ということは,やはりある程度,評議についての守秘義務を緩和していかないと,やはりそれは報道にものってこない,世間も目を向けてくれない,辞退率は上がるばかり,制度はどんどん廃れていくようなことに,負のスパイラルに陥らないかなというのを懸念しているところでございます。 ○4番さん 私の場合も,裁判長の説明は非常に分かりやすく,公判は基本的に公開情報,ただし被告人等の個人情報に関する事項は,個人情報保護の観点でNG,また,評議については基本的にはNG,ただし感想程度はOKというものでしたので,非常に分かりやかったと思います。   ただ,一般の人から見ると,裁判員は守秘義務を負っているというふうにだけ思われているので,私の場合も,職場に戻ってから,誰も裁判員の内容というのは聞いてきませんでした。このため,私の方から進んで,公判の情報であれば,公開情報だから話しても構わないと言って,初めて相手にも分かってもらえ,話せるという状況でした。一般的にはそんな認識だと思いますので,裁判員の経験というのは,もっと話しても構わないということを,広めていただきたいと思います。   3番さんの話にもありましたけれども,評議の情報というのは,なかなか記録に残らないですし,一般にも出てこない。逆に,アメリカとかの陪審員ですと,評議の内容含めて,小説とかに書いていらっしゃる方もいると聞きます。ちょっと極端ではありますが,こういった評議の情報というのは,やはり国民の財産でもありますし,また,被告人の知る権利でもあるのではとも思います。   単純に,全て話して構わないと言ってしまいますと,いろいろな弊害が出てくることは予想されます。私の裁判は,覚せい剤の密輸で,反社会的勢力が関わっていましたので,私の裁判の評議の情報全てを単純に公開すると言われてしまうと,私の場合はNGです。ですので,公開の仕方を工夫し,裁判員を特定しない形であるとか,何らかの制限をかける,ないし裁判員,ないし裁判官が合意をしたものだけOKであるとか,そういった形にして世間に出せればと思います。一部だけであっても公開されれば,やはり世間から裁判員裁判を見る目が変わってくると思いますので,守秘義務については,ある程度緩和をして,どんな形であってもいいと思いますので,世間に情報として出せるような形にしていただきたいと思っています。 ○大澤座長 それでは,7番目の質問ですが,裁判員として裁判に参加するに当たって,職場や家族などの関係で,どのような苦労があったか。裁判員として参加しやすくするための工夫や配慮として,要望したいことはあるかなどについて,簡単にお話しいただきたいと思います。 ○1番さん 私は,子供の保護者会に参加していたときに,取材を受けたときの新聞が出ていて,それを見た保護者の1人から,裁判員やったんですってね,かわいそうだったわねと言われたのが,すごく心に残りました。私って,かわいそうな人なのかなと。裁判員を経験したことが,かわいそうなことなんだという気持ちになり,いや,私は,裁判員を経験したからこそ,かわいそうな人ではなくて,社会に貢献した人でありたいなというふうに思いました。   いろいろ悩みもありましたけれども,ある新聞社の,裁判官,検察官,弁護士,裁判員経験者というので,対談をした経験がありまして,そのときの休憩時間に,検察官の方が私のお隣にいらしたので,ちょうどいろいろ,ふつふつと思っていたときなので,失礼ながらにも,何でこんないろいろ思い悩む裁判員制度を,何か負の遺産ばかり作っているんですかみたいな感じで,そこにいらした検察官の方に聞いたら,あなたは裁判員裁判を経験して,裁判が他人事ではないというふうに先ほどおっしゃっていましたよね,そういう他人事ではないと思う人の目を増やすということは,コンビニにいっぱい防犯カメラをつけたら,万引きが減るのと一緒で,そういう他人事に思わない人の目が増えれば,犯罪って減るんですよという話を伺って,ああ,そうなのかと思って,私なんかは一般の人ですから,どっちかというと主婦ですし,家庭の御飯も扱っていて,例えばスーパーへ行って,特売があって,ああ,このおいしそうな鶏,今日唐揚げにしようといって買って,納得して買って,子供たちが,ああ,おいしい,今日の御飯,唐揚げおいしかったと言ってくれたら,私は満足だし,しかも,お財布にも得したりすると,ああ,何かいいことをしたという,単純にそういうふうに思える感覚が,その検察官の方がそのことをおっしゃったときに,あっ,私は,裁判員裁判を経験することによって,社会の犯罪率が下がって,いい社会のために一つ貢献したことになったんだといったら,何かすっと落ちるものがあって,あっ,こういう感覚って大事なんだというふうにすごく思いました。   だから,裁判員の今,かわいそうなこと,面倒くさいことはやりたくないから,どうやって辞めようかという,断ろうかという検索よりも,裁判員をすることによって,こんなに世の中にいい,お買い得ではないですけれども,社会に貢献できるんだとか,そういうことが,もうちょっと皆さん認知すれば,何かすごくいいのではないかなという。そうすると,裁判員を経験したからって,あなた,かわいそうだったわねということよりも,あなた,よく頑張ってお仕事してきたわねというふうになっていくのがいいのではないかなというのを,自分の体験から感じたことでございます。 ○2番さん 私は,職場がちょっと公的な機関なので,幸いなことに,裁判員でちょっと休みますという話をしたら,ああ,それはどうぞ,行ってきてくださいというふうに,スムーズに通りましたし,上司の方も,ああ,それはいい体験だから,いいんではないのと言ってもらったので,そういう外側からのバックアップがあると,そこに関しては,すごく有り難いなと思いました。これがもし,個人的な経営とか,そういうところだと,やりづらいというのが,職場の理解がないというのはとても,多分きついだろうなと思うので,周りのバックアップがあるのは有り難いなと思います。   ただ,一つ,仕事が個人的に,患者さんと会うという約束が何件も入っていて,抽選で裁判員になって,その次,翌週,土日挟んで,次の月曜日からすぐ裁判が始まるので,その調整を,一人一人に連絡するのがすごく大変だったということぐらいなので,もう少し時間があると有り難かったかなとは思うんですが,それはきっと,裁判のいろいろなほかの問題もあるので,もうちょっと検討,いろいろあるんだろうなとは思いますが,職場に関しては恵まれていたと思います。 ○3番さん 私は一般企業に勤めているのですけれども,何と会社の体制がすごく整っておりました。参加する間は特別休暇が出て,有給休暇は消化しないで済む。謝礼金は受け取ってよい,交通費も受け取ってよい。さらに上司は裁判員を妨げてはいけないという説明がございまして,それがちょっと感動を覚えたようなところでございます。   ただ,実は自分が参加したのは12月の裁判でした。一般の,例えば小売りの経営者の方とか主婦は,とても忙しい時期です。自分の裁判で,6人の裁判員と補充裁判員2名,合計8名,全員が30代から50代の一般企業に勤める会社員でございました。もっといろいろな方がいらして,多種多様な価値観でもって議論を交わすと思ったのに,似たような人しか集まらなかったのは残念だなという思いがございました。もしかして,一般企業はそういうバックアップ体制が,制度発足とともに整っているのではないかと。   8人のうち7人が,同じように制度が全部整っていて,特別休暇で参加していました。1人だけ,制度がないけれども,これから組合にかけ合って制度を作るよと言っていました。自分は,裁判員がもしかしたら将来均質化してしまうのではないかという懸念はすごく持っています。議論はしやすかったですけれども,同じような人ばかり集まるのはどうかと思っています。   さらに,自分の友人たち,実は小売りに勤める者が多くて,2,3人の職場に勤めている友人とのグループLINEで私こんなことやったのよと言いましたら,「えっ,すごいね,私もやってみたい」という反応を期待してアップしたのですけれども,全員が全員,私は無理という返事が返ってきました。例えば,今日選ばれて,来週から休め,そんなのとても無理という感じでした。やはり,いろいろな方に参加していただくためには,その勤務先でのバックアップ体制が必要ですね。特に,一般企業は制度が整っていそうですのでもういいと思うのですけれども,そうではないところへのバックアップ体制をどう考えていくかというのが必要ではないかなと思っています。   さらに,私,実は一度辞退をしております。3月にも呼ばれていたのですけれども,子供の学校の卒業式と重なりまして,どうしても1日出席できないということで,辞退をさせていただきました。   やはり,どうしても辞退せざるを得ない人は多いと思うのです。自分はそんな中で,すごく残念で,もう一回来たら絶対やってやるという意気込みでしたので,11月に再度通知が届いたときは,やった,もう一回来たという気分だったのですね。   そんなふうに,裁判員のお知らせが来たら,ああ無理とか,さっき1番さんがおっしゃったように,かわいそうとか,やりたくないとか,今検索すると,裁判員と検索すると,どうやって辞退するかとか,そんなのばかりヒットするのですけれども,そうではなくて,裁判員の通知が来たらぜひやりたい,という気持ちを,もっと国の中に湧き上がらせるようなことがあればいいのにな,と思っております。 ○4番さん 私の場合,事件の性質上,反社会的勢力が絡んでいましたので,家族,特に家内は,あまり,いい顔していませんでした。   そういったこともありますので,やはり反社会的勢力が関係する事件などは,裁判長の判断とする方法もありますが,裁判員裁判の対象から外すこともありだと思います。   あと,勤め先に関してですが,私は幸い少し大きな会社に勤めていますので,制度上はきっちり整ってましたし,4週間という長期間ではありましたが,その時期仕事を調整して空けることが可能でしたので,参加できました。   ただ,通常の時期,例えば今,4週間やれと言われても,ちょっと厳しいところがありますので,一定期間以上のものについては,企業に勤める人,当然小売りの方とかも含め,時期によっては,かなり難しいかと思います。   そういった面も考えますと,義務とする制度はそもそもどうなのかなと個人的に疑問を持っています。個人個人の事情というのがありますし,裁判員についてインターネットで検索すると,すぐに辞退する方法とかいったのが出てくる現状もあり,ある一定以上の辞退というのは,やむを得ないと考えています。   それと,裁判の日程に関してですが,4週間という期間の中で,予備日程というのを何日かとっていました。特に証人尋問の中で,その後,追加で発生するといったことも想定して,予備日程を組んでいたのと,評議日程は2週間とっていたんですが,これに関しても,早目に結論が出てしまったため,日数が余ってしまったということがありました。   私の会社の場合には,最初からこの期間,特別休暇といった形で認めていただいていたので,特に手続とかはなく,空いた予備日も単純に休んでしまったんですけれども,ただ,別の方は,その空いた日をもう一回,その特別休暇から通常の出社日に振り替えて,出社して仕事をしていたと聞いています。こういった手続は,会社によっても随分違うと感じました。   また,裁判員の中に,派遣社員の方が2名いらっしゃったんですが,私の場合には,この裁判員の報酬というのは,会社の給与と別に受領することができたのですが,その派遣社員の方は,その期間の給与から裁判員の報酬分を控除されてしまったようです。不利にはなっていないんですけれども,裁判員をやっていた期間,通常の給与と変わらなかったと聞いています。   法律上,不利な扱いをしてはいけないと書かれてはいますが,会社によってであるとか,働き方によって,報酬や待遇に差があるといったことは,裁判員をやる上で,本人のモチベーションといいますか,意欲がそがれる面もありますので,難しいとは思いますが,まだまだ課題があるかなと思います。 ○大澤座長 私からの質問を若干残しておりますが,大沢委員におかれましては,所用のため,途中退席の御予定と伺っております。この時点で,何か御質問等ございましたら,この機会にいかがでしょうか。 ○大沢委員 本日は貴重なお話ありがとうございました。大変参考になりました。   それでは,座長からの話なので,少しだけ質問させていただければと思います。   皆さんが裁判をなさった裁判の結果というのが,その後,例えば控訴をしたりとか,上告をしたりするケースが,皆さんの中でも幾つかあったと思うんですね。   皆さんは,裁判が終わって,裁判員の任務を終えられた後,そういった高裁とか最高裁の結果というのに関心を持たれたかどうかということと,もしそれを聞く機会があったとすれば,どんな受け止めをされたかということ,それからあと,そういった上級審,高裁や最高裁の裁判の結果とか,そういったことについて,何らかの情報提供というのが,もし裁判所側からあったのかですね。もし,それがあったとすれば,それは十分だと思われたかどうか,その辺をお聞かせ願えればと思うんですけれども。 ○1番さん 私の場合は,控訴に関しては,もし控訴をしていたんだったら知りたいなとは思っていましたけれども,控訴はなかったという感じです。   知り合いの,同じように裁判員経験者で会うことがあったときに,必ずいつも,控訴されたことはやはり知りたいし,その後,何か差戻しで,また違う裁判員裁判でやった方は,私たちのしたことが全否定されたような気がするとか,そういう感じですごく,心穏やかではない話を聞いたことがあります。 ○2番さん 私,個人的には,もうこの裁判で,私は全力を使ってやり切った,私のやるべきことは終わったと思ったので,その後,控訴というのは,特に気にならなかったというのが正直なところです。   ただ,ほかの,その後たってから,死刑の,そういう裁判だったり,そうなったときは,やはりすごく気になるだろうな,そうしたら,とことんまで知りたいと思うだろうなという気持ちにはなりました。 ○3番さん もちろん知りたいです。   ただ,実は,意見交換会のときに,委員というか,事務局の方が,よろしければ調べてお教えしますよと言ってくださって,聞いたら,やはり控訴していたとのことでした。そのときは,とてもがっかりしました。私たち,もう一度同じ議論しても,絶対同じ判決を出すと思っていたのですが,弁護活動がいま一つだったので,被告人の気持ちも分からなくもないというのが正直なところです。   ただ,人によっては,電話をしても,そんなこと教えられないと,シャットアウトされた方もいらっしゃるそうで,やはり裁判員に対しては,何らかの情報開示をする仕組みを作っていただけたら,うれしいなと思います。 ○4番さん 私は,裁判員裁判が終わった後に,せっかくだからと,いろいろ資料にまとめ,大学とかで話をしたこともありました。その話の一つとしてということもありますが,裁判がその後どうなったかについても興味がありましたので,控訴の状況について地裁に聞いてみたのですが,そこでは教えてはいただけませんでした。そこで,高裁に聞き,実際に控訴されたこと,また,その約1年後には,控訴棄却となったことを教えていただきました。   その後,最高裁からは上告されたことは教えていただけたのですが,結果については,なぜか教えていただけませんでした。期間的に多分,上告も棄却されたのかなとは思うのですが。   私の裁判の場合,裁判員の年齢層が広く,若い方が多かったこともあるかもしれないのですが,控訴をされることについては,どうのこうのという感じはありませんでした。   また,ある裁判員の方は,逆に控訴をしてほしいとも言っていました。というのは,自分たちの考えて出した結論というのはありますが,本当にそれが正しいのかどうか,100%自信が持てないということもあり,控訴審で,別の方の目を入れて判断を確認してほしいといった思いもあったのだと思います。   私自身も,控訴をされてがっかりという感じはなく,どういった点で控訴したのかという疑問は当然ありましたが,正直,ちょっとほっとしたといったところもありました。 ○大沢委員 では,あと,皆さんもお聞きになると思うんですけれども,裁判が終わった後に,よく感想というのを,すぐ裁判所でアンケートに書いたりされたと思うんですけれども,皆さんは少し,裁判が終わってから時間がたっていると思うんですけれども,かなり時間がたったことによって,もう少しこういうことを言いたいとか,そういったようなことが増えてきたのかどうか。その辺のところだけ,簡単に教えていただければと思います。 ○1番さん 裁判が終わったときは,何か達成した感じがあったので,やってよかったと思ったんですけれども,その後,守秘義務に苦しみまして,2年ぐらいは,やらなければよかったというふうに,何でこんなのに私は参加してしまったんだろう,こういうことに参加したことを後悔,選ばれたことを後悔しておりました。だから,やってよかったとは思えなかった。   だけれども,自分の人生,そんな嫌なことで終わらせたくないというふうに思いまして,なぜというふうになると,いろいろ調べたり,知りたくなる性格もありまして,どうして犯罪が起きるんだろうとか,被告人の人となりが,人格障害というのがついていたんですけれども,どうしてそういう犯罪に至るような心理になったんだろうとか,そういうので心理の勉強をしたり,私自身のこの悩んでいるのは,おかしいのではないかとか,そういうふうな,自分自身の心理のことも少し勉強したりとかして,何とかいいことにつなげたいというふうな時間を過ごしました。   現在は,先ほどの検察の方のお話から,すっと来るものが来たという頃から,裁判員制度というのは,実はいい方向に向いているのであれば,自分のやったことはよかったことなんだろうと,やってよかったというふうにして思っている心境の変化があります。 ○大澤座長 私の次の質問も,実はほぼ同じ質問です。裁判員という立場で審理・判決に関与した当時に感じたことと,その後,時間がたった現在とで,何か変化はありましたか,あったとすれば,どのような変化がありましたかというのが,私の次の質問でしたので,併せてお答えいただくとすると,付け加えるべきことがありますでしょうか。 ○1番さん あと,私は裁判員として事件を担当したのが2009年ですから,相当時間がたっている中で,どういうふうな考えに行き着いたかというと,裁判員の候補になったんだったら,候補になった人は,まずは裁判員裁判のことをやはり,ちゃんと知らなければいけないというふうに思っていて,そのためには,どういうふうに知り得るかといったら,人に聞くぐらいとか,そういうこと,人に気軽に聞けるとか,オリエンテーションに参加して,裁判体でどんな評議が繰り広げられるのかというのを一度経験する,模擬で1回オリエンテーションやってみる,それから本番に臨むということが,いい評議にもつながるだろうし,逆に,オリエンテーションのときに,例えばこういう証拠があるというときに,こういう心の変化がありますよとか,こういうので,あっと思うこともありますよとか,そういうオリエンテーションで,審理の部分のところも少しアドバイスがあったりとかすると,例えば証拠を見たときに,あっ,そういうふうに言っていたから,今,心のこのわっと思ったのは自然なことなんだとか,そういうのが,自分で自分のことを客観的に理解して臨むことができればいいのかなという,苦しまないのかなというふうに思います。   証拠に,ちょっと血を白黒にしてみたりとか,新聞で見聞きしたことがありますけれども,そうすると何か,本当のものが本当でなくなってしまうような気がして,だけれども,見せなければいけないものは,ちゃんと本当のものを見る義務があると思うんですね。見る方の裁判員の方も,そういうものだというのがちゃんと分かっていて,臨むことができたら,自分も,客観的に見る視点を持って臨むというのが,負担を少なくすることではないかな,心理的負担や,いろいろなことに対しての思い,悩みというものの軽減になるのではないかなというふうに考えが行き着いております。   やはりこれから,子供たちも,若い人たちも評議に参加するわけですし,私なんかは学生のときに,裁判員裁判でするような評議の話合いというようなことを余り経験してこなかったという人たちが,いざ,では話し合ってくださいと言われても,何か,足りない力ばかり露呈されてしまって,ああ,こういう力があった方がいいんだなというのは気付きましたし,今の子供たちも,そういう教育を,やはり充実させていかなければいけないというのもすごく思いますし,自分の娘が,今高1なんですけれども,中3のときに,公民の授業で,裁判員裁判が教科書に載っていて,ママのやった裁判員裁判だよねと言って,明日の授業ここなんだと,うれしそうに言っていて,帰ってきたときに,ママ,裁判員裁判1秒だった,授業で,教科書めくって,ああ,次,裁判員裁判,どんな授業をしてくれるんだろうと子供は思っていたのに,2009年から裁判員裁判が施行されました,市民が参加します,はい次といって,ああ,それだけだったと言っていて,やはりそういうので,あなたたち習ってきているでしょうというのは,ちょっと違うかなというふうに思って,やはり裁判員の候補になったんだったら,候補になった人たちでオリエンテーションを受けて,悩みを打ち明けたり,こういうふうに,こういう気持ちを共有できたりとか,そういう機会があるというのは,今後できたらいいなと。そうしたら,本当にいい評議につながるのではないかなというふうに感じております。 ○2番さん 裁判が終わった時点というのは,とても高揚した気分と,何かやり切ったという達成感と,あと,ちょっと罪悪感があって,何か自分が被告人,全然見ず知らずの被告人に対して,判決を出し,刑期も決めたということに対して,何かとても身勝手な感じもする,そういう罪悪感もちょっと混じった感じだったので,ああ,もうとにかく,自分のことは全部やり切ったので,早く終わりにしたいという気持ちが一番強かったと思います。   しばらく,その後半年ぐらいは,少しもやもやした気持ちがあって,特にテレビの映像とか見て,裁判のニュースとか聞くと,やはり自分の裁判の状態がばっとフラッシュバックしてきて,被告人がしゃべっているときのこととかも映像として思い出されるので,何かそこで,うっときたり,テレビドラマで事件,ドラマでさえも,何かすごく刺激になって,ああ,そういえばそうだったなというふうになって,なかなか消化するのに,半年ぐらいはかかったような気がします。   でも,半年以降たってからは,だんだんと,何かもっとしゃべりたいなというのと,あと,やはり自分も,もう少し何かできるのではないか,何かもうちょっと,何か自分ができることをやっていきたいなという思いがあるんですけれども,では何をやったらいいのか分からないというのがありました。   インターネットとかで,たまたま刑務所から出所してきた人を招いて,お話をするなんていうNPOの,そういう試みなんか知って,ああ,ちょっと行ってみたいなと思ったら,もう期間が終わっていて,それもちょっと,次は予定がないというのを知ったりとか,あと,何かそういうので,ああ,行きたかったのになと思ったり,あと,刑務所の中はどんなシステムなんだろう,自分は刑期を一応,量刑を出したけれども,では,その量刑の中で,被告人はどういう生活をするんだろうというのがものすごく気になって,若い20代をどういうふうに過ごして,出所してきたときに,では,どういうふうなフォローのシステムがあるんだろうというのとか,いろいろな関心が出てくるんですが,それを学ぶ場所がないというか,どこでどんなことをやっているのか分からないしというのはあって,何かそういう情報が欲しいな,もっとあったらいいな,そうしたら何か,勉強に行きたいなというのがあります。   何かそういう,いろいろな,NPOでも何でもいいんですが,こういう勉強会とか,こんなのがあるよといったら,そこに参加したいと思う人は結構いるのではないかなと思うと,何か,それが今,しゅんとしぼんできて,相当に長い期間たつと,ああ,もういいかとなるのが,ちょっと残念なような気がします。   あと,もう一つは,とても不思議で仕方がないと思うのは,これだけ期間がたっているのに,私の周りで裁判員を経験したという人が,まだ全然,1人もいなくて,おかしいな,いたっていいのになと思うんですけれども,私もやったよという人が出てこない。職場でも,私の職場は200人以上,従業員,職員いるんですが,誰も聞かない。でも,そんなはずはないのになというのが,今,一番不思議なところです。   もしかしたら,いるんだとは思うんですが,なかなかそれが,自分も経験したというのが発信できないような,何かそういう空気になっているのではないかな。もし,自分が候補者になったという人がいたら,私は自分の体験を,こうだったよと,もっと話したいし,何か,あるいは経験した人がいたら,しんどかったよねとか,どうだったというのを共有したいなという思いはとても強いんですが,なかなかそれができないことの,何か寂しさみたいなのはあります。   あと,ちょっと,病院で,精神科の病院で働く心理士という職業柄,気になるのは,最近の虐待事件とか残虐な事件を見ると,裁判員はどんな思いでいるんだろう,しんどいだろうなと,自分もしんどかったので,そこは今,かなり,こんな事件はしんどいのではないかというのは,すごく気になるんですけれども,そこの心のケアのシステムがどうなっているんだろうというのは,ちょっと気になるところでいます。 ○3番さん 私は,終わった直後は,達成感でいっぱいで,この経験をぜひお話したいという気持ちでした。   さらに,とある事件の判決が出たときに,被害者も,世間のマスコミもみんな刑が軽過ぎるという発言をしている報道があったのですけれども,一度評議を経験した自分からしたら,ああ,そうだよな,これぐらいになるんだろうなと,納得した感覚がありまして,その昔の自分とのギャップに驚いたといいますか,裁判が身近になったといいますか,判決に対する理解が深まったような気はしております。   さらに,その後,いろいろな方と出会うことによって,実は裁判員裁判制度が始まってから,裁判が大きく改善されたのだということを知りました。昔は,傍聴席はおろか,被告人御本人にも,あそこで何をやられているか分からないものが裁判だったのだよと伺いました。自分の裁判なのに,あそこで何か書類のやり取りをしているな,ということしか分からなかったということをおっしゃる方がいらっしゃいました。今は,裁判員にも分かりやすいし,傍聴席にも,ある程度分かりやすいし,もちろん被告人にも分かりやすい裁判になっている。これは,裁判員制度のおかげなのだよということを言われまして,ああ,そうか,自分がやったことは,こんないいことだったのだということを後で知りました。参加した当時よりもずっと,本当に参加してよかったし,その話をみんなにしたいと思うようになっております。   ただ,非常に残念なことに,同じチームだった8人ですね,全員,やりがいがあった,この経験をお話ししたい,記者会見があったら参加したい,そういう感じだったのに,今3年しかたっていないのですけれども,今や,私がこういうことをやるよと言っても,誰も反応を返してこないような状態になってしまいました。やはり,気持ちが熱いうちに,いろいろ何かする仕組みがないと,そういう,みんなに発信したいとか,裁判よかったよという話をしてくれる人も減っていくのだろうなと思います。   幸い自分は,逆に気持ちが,もっといい方向に向かっているなというところでございます。 ○4番さん 私も,裁判が終わった後,高揚感がありましたので,その辺,忘れないうちにと,パワーポイント30枚ぐらいにまとめました。大学や裁判員ラウンジであるとか,裁判員の経験を話す場所もあると聞きましたので,その資料を使い,話をしたりとか,またちょうど今年の春が,制度10周年でしたので,そういったイベントとかでも話させていただいたりしました。   そういった経験もあり,この制度について,自分の考えも広がり,自然と,裁判員制度について,これがどういった制度で,なぜこの制度ができて,どういった目的で,その目的が達成されたのかどうか,そういったことも考えながら,話すようにもなりました。   最近では,裁判員経験者や弁護士の方とかと話す機会も増えたこともあり,この制度の効果や課題についても,話を聞いたり議論をしたりもしています。 ○大澤座長 既に,いろいろと幅広くお話しいただいたようにも思いますが,最後に,まだ言い残したことで,裁判員裁判について,意見や要望等がございましたら,何でも結構ですので,お話をいただきたいと思います。どなたか御発言のある方はおられますでしょうか。 ○3番さん 二つ。一つは,先ほどもちょっと話が出ましたドラマの話でございます。   あれがあったおかげで,自分はすごく予習ができていたので,何の不安もなく,裁判員に臨むことができました。ぜひ,ああいう施策を何か講じていただきたいなと。   例えば,今,ラグビーのワールドカップやっているではないですか。このワールドカップが始まる直前に,民放でドラマを放送していました。あれで大分,みんな知識も出て,ちょっと盛り上がって,すごく効果的だったと思うのですね。ですので,できれば,裁判員候補者名簿に載りましたというお手紙が市民に届く11月から12月の間に,私が見たような,そういう,裁判員ってこういうものとイメージできるようなドラマなり何なりがあると,すごくいいのにと思っております。   さらに,さっきも言いましたけれども,名簿に載ったことぐらいは,みんなが発信できるようになっていれば,ああ,裁判員かと,世間一般に思い出していただける,報道もしていただける,そんなところにつながるのかなと思っているので,ぜひ検討していただければと思います。   ちなみに,裁判員載りました,名簿載りますというお手紙の中に,DVDがあったらしいのですけれども,残念ながら,ものすごく忙しい時期だったので,全く見ておりません。申し訳ないです。なので,そのDVDよりも,テレビかなという気はいたします。 ○1番さん DVDは,余り分かりやすくなかった。 ○3番さん ああ,そうだったんですか,分かりました。   もう一つ,メンタルケアのことで,お願いしたいことがございます。   私自身は,メンタルケアの心配,全くなかったので,よかったのですけれども,実は裁判員を経験したことで人生が狂った人がいるようなことも,聞いたりもします。   さらに,法務省さんのホームページで,これまでの会議の資料を拝見しました。メンタルケアのサポートのシステムがあるのですけれども,その議事録にそこを利用した人数の資料が載っていまして,これまでに,8万人か9万人でしょうか,の裁判員がいらっしゃるのに,メンタルケアのところに電話をした人が,わずか430人しかいない。さらに,医療機関に紹介した人は11人しかいないというデータが出ていたんですね。そんなに少ないはずはないだろうと思っております。ということは,やはり,みんな電話をしないのです。   裁判員に対しては,私のときは,全てが終わって,最後に,こんなのもあります,何かあったら電話してくださいと,チラシ1枚いただいただけでした。   日本人って,アメリカ人のように,カウンセリングを積極的に受ける文化にまだなっていないと思うのですね。自分が病気なのではないかと思うことにさえ罪悪感があり,本当に危なくなるまで,そんなところに電話をしないと思うんです。そうすると,予備軍がいっぱいいるのではないかという懸念があります。それによって,さらに,裁判員をやりたくない人が増えていくのではないか,そんな懸念もあります。せめて,あのチラシは最初に配ってほしいと思います。   実は,2番さん以外に,臨床心理士さんにお会いする機会があって,裁判員がもし心の負担があって,病気になりそうだというときに,どういうところでケアするのが一番いいのでしょうかと質問しましたら,なるべく早いうちに,例えば,刺激的な証拠を見たら,その日のうちに,その感情を吐き出していただくことで,それが改善されるのだということを聞きまして,やはり裁判中に,それをケアする仕組みがあるといいのではないかなと。ですから,せめてあのチラシを最初に配るとかですね。   欲を言えば,裁判所にそういうことを受け止めるカウンセリング室があって,みんながいつでも聞きに行けるとか,そういうのが必要なのではないかなと思っています。   さらにもう一つ,いろいろな方に聞いたのですが,実はそのチラシに載っている電話番号に電話をしても,プロの心理士が受け答えをするわけではないのだそうです。私は電話したことがないので,知らないのですけれども。素人の,多分,例えば栄養士さんが出たりもするのですって。生半可な受け答えを非専門家がやるというのは,非常に危険であるというふうにある方がおっしゃっています。確かにそうだなと思うのですけれども,やはり,あの電話番号にはプロが待機していてほしいと思いましたので,そこも御考慮いただければと思っております。 ○2番さん 今,3番さんに言っていただいたので,私も臨床心理士という職業柄,自分が裁判員裁判に参加したときに,ああ,この裁判員制度は,心のケアが本当に軽く見られているなというふうに感じました。   同じ裁判員の仲間で,法廷中に具合が悪くなって,メモが渡ってきて,休廷お願いしますと裁判長に回したんですけれども,その直後に,トイレに行かれて,嘔吐されていた方もいました。私自身も,やはり睡眠が浅くて,食欲もなくて,自分で臨床心理士なので大丈夫だろうと,たかくくっていた,この自分でさえも,ああ,やはりこんなに大変なんだというのはすごく感じたので,すごく精神的にストレスを感じるのは,とても事実だと思います。   精神科には,精神科という分野と心療内科という二つの分野があるんですが,ストレスを心の悩みとして,鬱病とかというふうに,鬱っぽいというので感じる方と,心療内科というのは,体の症状に出てくる方がいて,ストレスを腹痛だの微熱が続くだの,そういうふうに体に出てくる方がいるんですが,もし体の方に出られた方は,これが裁判員裁判のストレスだと感じないで,ずっと内科にかかって,それでも治らなくてというふうなこともあるかもしれない。特に男性の方なんか,なかなか悩みを言葉にして言うというのは,とても苦手な方が多いですので,何かそれを,この24時間の相談窓口があるから,いつでも電話しなさいよと言っても,なかなかこちらから,ああ,自分は悩んでいるから,では相談しようというふうには,本当にならないだろうなというのをすごく感じました。   せめて,心のケアをする者がちゃんとその場にいて,顔を合わせて,この私が担当するので,どうぞいつでも声をかけてくださいというような仕組みがあったり,あるいは,こういう体の症状,腹痛だの嘔吐,気持ちが悪くなる,あるいは頭痛だの,あるいは気持ちが重くなる,体がだるくなるという症状が出てくるかもしれませんが,それはストレスですので,もしそういうのがあったら,いつでも相談してくださいという予備知識みたいなものが前もってあると,とても楽になるのではないかなというふうに感じています。   こういうシステムが,私のときにはなかったですし,その後も,何か改善がないようなので,そのまま御家庭に帰って,ずっと苦しんでいる方も,実際本当にいるのではないかと思うんですが,なかなかそれが声として上がらないというのが,とても懸念しています。   守秘義務と,とても絡んでくると思うんですが,人間,カウンセリングでも心理士でも,話すことによって,それがだんだん整理されていって楽になる。守秘義務でも縛られて話せない,体の症状とか,いろいろ精神症状が出てきても,なかなか電話をするという,とても,相談窓口が一体どんな人がいて,どんなことを言えばいいのかというのが全く見えてこない。そういう不透明なところに,ではどういう電話をして,何を話せばいいのかというのが分からないシステムは,やはり心のケアとしては,とても不十分だと思うので,そこのところは考えていただきたいなと思っています。 ○大澤座長 それでは,委員の皆様方からの質問をお願いしたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○武石委員 大変いろいろなお話をお聞かせいただき,ありがとうございます。私は,裁判の専門家では全然ないので,大変参考になりました。   3番の方と4番の方にお伺いしたいんですが,まず,3番の方なんですけれども,検察の方の資料は分かりやすかったんだけれども,弁護側がというお話があって,なるべくそこには左右されないような判断をしたというお話があったんですが,それに関して,例えば,裁判官の方から,そういうフォローがあったりしたのか,あるいは,率直に言って,本当に左右されなかったのか,そこはどうですかとお聞きしたいこと,3番の方に。   それから,4番の方には,大変長い裁判,御負担の大きい裁判員裁判だったと思うんですが,どのぐらい前に,裁判員としてお願いしますというのが来て,お仕事のやりくりがその間にできたのかどうかということと,あと,それに関連して,ほかの方たちは,どういう方たちが御一緒だったのかということをお聞かせいただければと思います。よろしくお願いします。 ○3番さん 左右されなかったのかということですが,されていないと断言いたします。   裁判長も裁判官もみんな,あれはないよ,といった本当に私たちと同じ感覚で議論させていただいたので,ないよねといったことはございました。   逆に,弁護側が何を言いたいかを酌み取ろう,酌み取ろうと,一生懸命でした。 ○4番さん 私の場合には,12月のクリスマスぐらいに2回目の通知が来て,2月の上旬の火曜日に出頭し,くじ引きで裁判員に選出。翌月曜日から4週間でしたので,日程的には比較的準備の時間はあったと思っています。   あと,12月に通知が来たときに,過去の統計資料とかを見て,出席者のうちで大体3倍ぐらいの確率かなと計算していましたが,期間も長く,辞退者も多いはずなので,確率が高くなるかとも予想していました。当時,仕事の調整がしやすい状況ではあったので,予め準備はしていた,という感じです。   ほかの裁判員の方については,先に申し上げました派遣社員の方が2名ぐらい,私と同じいわゆる会社員の方が2名,ちょうど転職の合間であった方が1名,あと私と同年代の主婦の方,とそんな感じで,結構,幅広い方がいらっしゃったという状況です。 ○小木曽委員 どうもありがとうございました。   私も,3番さんと4番さんに伺いたいんですが,私どもの手元に,担当された事件の主な争点が書いてありまして,3番さんについては,正当防衛の成否,4番さんについては,捜査の適法性,共謀の有無なんていうのが書いてあるんですけれども,これは,事実認定,プラス,法律上の論点と絡むと思うんですが,そのあたりの,審理の分かりやすさ,あるいは評議のときの分かりやすさといったようなものはどうかということをお聞かせいただければと思います。 ○3番さん 自分の事件は正当防衛で無罪なのか,傷害致死で有罪なのかが争点でした。評議をしている最中は,十分理解してはいる,自分の感覚的にはそうだったのですけれども,何をもって正当防衛とするかというところが,一般市民の感覚と,法律用語で違っていまして,そこを理解するのは,ちょっと苦労しました。ただ,裁判長がよく説明してくださったので,自分は理解ができていたと思います。 ○4番さん 私の裁判については,かなり特殊な事案で,分かりやすかったかといえば,分かりやすかったんですけれども,内容的には非常に複雑なものでした。   密輸に関しタイ警察が現地でおとり捜査をやっていて,その捜査方法の日本での適法性が,この裁判の一番の争点になっており,その適法性が崩れると,密輸した覚せい剤の証拠能力がなくなり,事件そのものがなくなってしまうという性質の事件でした。   裁判員の役割というのは,タイで行われたことの事実認定を行い,それに基づいて,裁判官が,タイで行った捜査の適法性,当然,タイでは手続にのっとってやってはいるんですが,日本の法律に照らしたときに,適法かどうか裁判官が判断を行って,密輸された覚せい剤を証拠として採用するかどうかを最終的に判断したものです。役割としては,裁判員は事実認定を行い,それに基づいて,裁判官が法律の解釈をすると明確に整理されていましたし,最初の時点で,裁判長から,役割分担について説明があり,その点では非常に分かりやすかったと考えています。 ○大澤座長 それでは,皆様,本日はお忙しいところ,非常に有益なお話を頂戴いたしまして,誠にありがとうございました。 (裁判員経験者4番さん 退室  同1番さんから3番さん 傍聴) (大城聡氏,坂上暢幸氏及び福田隆行氏 講師席へ着席) ○大澤座長 大城さん,坂上さん,そして福田さんにおかれましては,お忙しい中,また雨で足元が悪い中,当検討会にお越しいただきまして,誠にありがとうございます。検討会一同を代表いたしまして,心よりお礼申し上げます。   皆様は,多くの裁判員経験者からお話を聞かれて,情報を発信するなどの活動をされていると伺っておりますので,本日は,そのような活動を通じて得られた御知見をお聞かせいただきたく存じます。   それでは,どうか,よろしくお願いいたします。 ○大城聡氏 御紹介ありがとうございます。弁護士の大城聡と申します。   一般社団法人裁判員ネット代表理事と裁判員経験者ネットワークの共同代表世話人をしておりまして,今日は刑事弁護人ではなくて,市民の立場から裁判員制度を見て,裁判員の方と一緒に,これまで考えてきたことを基に,お話をしたいと思います。ちょっと座って進めさせていただきます。   裁判員ネットというのは,制度が始まった2009年5月の1か月前である同年4月に,市民の視点から,やはり裁判員制度を考えなければいけないだろうと,新しく刑事裁判の担い手になる裁判員の立場から考える活動をしたいなと思って立ち上げました。裁判員裁判の傍聴やフォーラムといった形で活動しております。   経験者ネットワークは,翌年,裁判員経験者の方と何人かとお会いすることになったので,定期的な交流会をできればということで,立ち上げて運営をしています。2か月に一遍か3か月に一遍ぐらい,交流会を開いておりまして,これまで46回,臨床心理士と弁護士を交えての交流会というのを行っています。   そのほかに,市民が関わっている交流団体というのが幾つかあるので,簡単に御紹介をしております。   これまで,この検討会でもお話があったかもしれませんが,裁判員候補者の数というのは,これは昨年までの段階で約289万人なので,今年11月に,また新たに裁判員候補者選定されると,恐らく約300万人を超えるのではないかと思います。   経験者の数は約9万3000人で,内訳は,裁判員約7万人,補充裁判員が2万3799人となっております。   私たちが,裁判員経験者の方からお話を伺って,非常に強く印象に残っているのは,まず,一つは本当に,市民の視点を生かすというふうに言って,裁判員制度が始まりましたが,市民から見ると,非日常の刑事裁判に市民が参加をしていくというふうになるので,日常に差し込まれる非日常の刑事裁判と書きましたが,まずその最初のスタートが,やはり裁判所から通知が届いた時点,候補者になった時点で,非常に多くの方が,驚くというか,まさか自分のところに来るとはなという形で思っているというところがあります。   呼出状が届くというところに書きましたが,裁判員候補者通知が来た段階では,かなり意識があったんだけれども,だんだん,その後数か月たつと,日常生活の中で忘れてきて,また呼出状が来て,もしかしたら本当になるかもしれないという感覚の方が非常に多いと思います。   先ほどの経験者の方のお話にもありましたが,お仕事を持っている方はもちろんそうですし,御家庭で子育てしている方も,やはり日常生活がある中で裁判に参加するので,そのやりくりは皆さん,非常に工夫をしたり,苦労をしてやっているというお話を伺っています。お子さんのお迎えとか,御飯の時間に,午後5時半までやるとぎりぎりだみたいなお話も伺っております。   実際,裁判員裁判に参加をして,人を裁くことの難しさに直面するということで,会社とか地域の会合では,いろいろな話をしているけれども,それとはまた異質の,人の一生がかかっているような話合いと決断をしなければいけないんだというお話を伺っております。   あと,同じこの50代男性の方だと思うんですけれども,職業裁判官の方というのは,何度も何度も判決に関わっているけれども,自分たちは一生に1回なので,やはり非常に,そのことは忘れられないし,いつも思い返して,本当にそれでよかったのかと,自信を持って判断をしたけれども,でもやはり,よかったのかということを何度も考えるというお話も聞いております。あとは,被告人のその後についても,その後,きちっと更生しているかとか,あるいは,被害者の方のその後についても,非常に心を砕いている方が多くいます。   先ほどの経験者の方のお話にもありましたが,やはり裁判員を経験することという重みが,その経験した人自身を変えるような要素というのも非常にたくさんあると。その中から,自分と社会の関わり方を考えていくようになるというケースも多く聞いております。自分の人生が,やはり180度変わったという,そういう衝撃的な告白というか,お話をしていただいている方もいらっしゃいます。   未来の裁判員へバトンを渡すという書き方をしていますけれども,それを次にどう伝えていくか,自分はどう生活していくかということが大事なんだというようなお話を,これはこの方だけではなくて,多くの裁判員の方から,自分が経験したことをやはり伝えていくことが大事なのではないかというお話を聞いております。   これは,我々が聞き取っただけではなくて,最高裁がしているアンケート調査の中でも,非常によい経験と感じた,よい経験と感じたが,合わせて96.7%というふうになっていることからも分かると思いますし,私たちがお話を聞いていても,よい経験とやはり感じたと,このときには答えましたと。それは本当にそのとおりだと。でも一方で,いろいろと,例えば心理的な負担があったりとか,自分の思いが伝えられないとか,そういう悩みもあるんだけれども,総じてよい経験と感じたというふうに,このときに答えたのは,高揚感の中だったけれども,そういう答えをしましたというふうに聞いているので,我々の各論での聞き取りと,この数字というのは,肌感覚としても一致をしているかなというふうに思っております。   一方で,裁判員制度10年で課題も明らかになったというふうに思っておりまして,制度開始から,参加意欲に関しては,低迷するというふうに書いてありますが,参加したいと参加してもよいというのを意識調査,最高裁がしているのは,合わせて15.5%で,義務であっても参加したくないという方が約4割いるということで,これ,制度開始時と比べると,参加したいと参加してもよい,やや低下していますね。逆に義務であっても参加したくないというのが,やや上昇しています。そういう意味では,10年たって,裁判員を経験した人が増え,制度は進んでいる一方で,参加意欲に関しては低迷をしたままだというふうに思います。   さらに,その意欲の問題が,選任手続にも影響しているのではないかというふうに考えられるのは,辞退率が上昇している傾向にあると。昨年は67.1%,辞退率となっております。途中から,2,3年前ですかね,最高裁の長官がお手紙を入れて,非常にいい内容が書いてあるとは思うんですけれども,なかなか抜本的な改善には至っていないと思います。   出席率も一方で,非常に低下をしています。制度開始時は83.9%,翌年の2010年も8割あったんですが,その後,8割を割り込んで,昨年は67.5%。本来出席する人が出席している割合というのが下がっています。   そもそも裁判員制度の目的というのは,国民の理解の増進と信頼の向上ですし,司法の国民的基盤をより強固にすることということでスタートしましたが,参加の意欲の部分ですとか,実際に選任手続の部分を見ると,必ずしも司法の国民的基盤は強固になったというふうに断言はできない状況ではないかと思っております。   ここは非常に,裁判員制度が始まって10年の大きな課題で,一つは,せっかくよい経験だというふうに,96.7%の方が答えていたり,各論で裁判員の方のお話を聞くと,これは制度開始時に私が思ったよりも,非常に深い内面の変化が,裁判員を経験した方にある。しかも,社会へ関わりをしっかりしていきたいというふうに思っている方が多くいらっしゃるのに,なかなかそこが伝えられていません。そういう意味で,よい経験が共有されていないということがあって,そもそもの目的である司法の国民的基盤をより強固にするためには,裁判員の経験共有というのが必要だと考えております。   辞退率の上昇や出席率の低下に関しては,さまざまな要因が指摘をされていて,それへの取組というのも考えられております。例えば,最高裁の調査結果ですと,非正規雇用が増加をしている背景があるのではないかということがあって,これには武石先生がペーパーを,前々回か出されていた中に,働き方改革との連動みたいなことも書かれておりまして,こういった取組も非常に有効だと思います。   心理的負担に関しても,先ほど2番さんからお話がありましたけれども,事前とか審理中とか事後の対策というのは,今後もしっかりと進めていかなければいけないことだと思います。大切なのは,それらの取組の土台として,やはり裁判員を経験した人の思いであるとか,具体的な経験が共有されるということが重要だと思っております。   これは,最高裁が昨年,意識調査をしたもので,恐らく昨年から,この質問が入ったのではないかと思うんですが,あなたが裁判員に選ばれるかもしれないとして,参加意欲を高めるために必要な情報はどれですか,当てはまるものをこの中から全て挙げてくださいという中で,一つ目は精神的負担の問題で,二つ目が,裁判員として実際に参加された方の具体的な経験談というので,44.7%の方が,具体的な経験談を聞くことが参加意欲を高めることにつながると答えております。   しかし,裁判員の経験の共有を阻む二つの壁があります。先ほどの経験者の方のお話にも出てきましたが,一つは,裁判員候補者であることの公表禁止規定,二つ目は,裁判員経験者の守秘義務,この二つの壁が,裁判員経験の共有を阻んでいるというふうに考えております。   裁判員候補者の公表禁止規定というのは,裁判員法の101条で,何人も裁判員や裁判員候補者等の氏名,住所,その他個人を特定するに足りる情報を公にしてはならないと規定しています。何人もとあるので,自分が候補者であることも言ってはいけないことになります。   これは,裁判員候補者のプライバシーや生活の平穏を保護するためといわれております。裁判員を経験した人は,自分で裁判員でしたと言うことはいいんですけれども,実は,ここは結構誤解につながっていることで,世の中の多くの人が,裁判員経験したことも言ってはいけないんでしょうみたいなことを,裁判員経験者の人に話しているんですね。そういう意味で,実はこの候補者禁止規定で,候補者であることを公にしてはいけないということと守秘義務が,少なくとも世の中的には混同されて,裁判員のことは話してはいけないのではないかというふうに思われているのではないかと感じています。   裁判員候補者になった時点から,公表を禁止されているので,どうしても萎縮効果があったり,本来は裁判員候補者が制度に一番関心を持つ人だと思うんですけれども,その人たちが制度から遠ざけられるという弊害が生じていると思います。   裁判員ネットでフォーラムをやるときも,例えば,裁判員候補者の方が裁判員経験者に,私,候補者になったんだけれども,どういうことに気をつけたらいいですかとか,どうですかというのを,例えば対談みたいにしたら,おもしろいなと思って,企画を考えたことがあるんですけれども,やはりどうしても,候補者であることの公表禁止規定があるので,公の場で,自分が候補者だということを言えないため実現できませんでした。あるいは,フォーラムの会場でも,自分は候補者なんですけれどもと言って質問することができません。裁判員候補者であることを言えないことによって,せっかく毎年2,30万人,裁判員制度に近づく機会がある人が生まれるのですけれども,逆に遠ざけてしまっているのではないかと考えています。   これは,制度が始まるときには,もし裁判員候補者に危害が加えられたらという心配があって,慎重に制度設計されたと思うんですが,実際この10年間で,裁判員候補者であることで,何か危害を加えられたという事例はありません。裁判員を行っているときに脅迫事件というのが九州でありましたけれども,裁判員候補者の段階というのは,呼出状の前は事件が決まっていないわけですし,そもそも裁判員になるかどうかも分からないので,この段階では一律に公表禁止規定を設ける必要はなく,呼出状を受け取った段階で公表禁止というふうに見直すべきです。そうすると,大きく世の中の裁判員制度に対するイメージ,あるいは裁判員候補者が選任手続に臨むときの姿勢というものが,変わるのではないかと考えております。   そういった意味で,辞退率の上昇と出席率の低下の改善には,裁判員候補者が制度をどうやって受け止めるのかという点を,きちっと入れて考えることが重要だというふうに思っております。   次は,裁判員経験者の守秘義務で,裁判員である間,審理をしている間に守秘義務を持つということは,審理への直接影響があるので,これは大事だと思います。今日お話ししたいのは,裁判員として審理が終わって,役目を果たした後ですね。経験者としての守秘義務ということです。   今,守秘義務の範囲というのは,評議の秘密全部になっております。裁判官の説明というのは,先ほど経験者の方4名のお話もありましたが,非常に分かりやすいというふうに,経験者の方からは聞いております。ただ,具体的に,自分が話をしようとすると,感想の理由をどこまで話していいのかというところで迷いが生じるというところを聞いております。   今,評議全般について守秘義務の対象なので,評議の中のことは話してはいけませんというふうになっています。裁判員経験は,原則として守秘義務の範囲内にあり,例外的に公開の法廷や感想は話して良いとされていますけれども,原則として裁判員経験の中身の話ができないということが,裁判員経験の共有を妨げている,一番大きな要因だと考えております。   ただ一方で,裁判員経験者の方,守秘義務,全く要らないと,アメリカの陪審員みたいに,事後は全く要らないんだという人は,ほとんどいらっしゃらなくて,守秘義務はあった上で,でも,もう少し話せることを増やすようにしてほしいというようなお話が多いです。そういう意味では,守秘義務を緩和をすると。具体的には,守秘義務の範囲をもう少し限定することができれば,裁判員経験が共有できるのではないかと思います。   特に,具体的に言いますと,裁判員の自由な討論を損なうことがないように,発言者が特定されないようには守秘義務を課す必要があります。あと当然,事件関係者のプライバシーに関しては,引き続き守秘義務の範囲とする。一方で,例えば評議の経過,例えば正当防衛について,たくさん議論しましたよとか,こういう順序で話をしたとか,その他に多数決の数や,発言者を推知させないような裁判官や裁判員の意見については,守秘義務の範囲から外すということが考えられるのではないかと思います。   これは,我々が直接お伺いした人もそうですし,今日,資料として抜粋をしたのは,裁判所が主催している裁判員経験者の意見交換会の議事録の中に記載されている裁判員経験者の守秘義務に関する発言です。自分は守秘義務は全然負担ではないですよというコメントをしている方もいます。一方で,この議事録の中にも,しゃべらない,しゃべってはいけないという負担はありましたとか,全会一致であったとか,あるいは,もう少しもめたということは言ってはいけないと伺ったので,そのくらいは,ちょっと言えてもいいのではないかというふうな意見があります。また,ある程度言える余裕,自由に言える部分は作ってほしい,やってよかったというのを共有するという意味ではやはり守秘義務が壁になっているという趣旨の発言があります。   裁判員裁判で,評議が一番大事なところなので,そこが評議の秘密ということで,自分の経験をほとんど話せないのがつらいという,これは多くの裁判員経験者の方から伺っている話です。例えばフォーラムやインタビューで話していただいているんですけれども,やはり,聞く側も非常に気を遣うんですね。ここから先は,言うと守秘義務違反ですよねとか,会場から質問が出ても,そこに答えると守秘義務違反になるので,そこの質問にはちょっと答えられませんということがあります。私は弁護士で,守秘義務の範囲もよく分かっているから,進行できますけれども,例えば,経験者の方がお一人で地域の学校へ行って,裁判員経験を話すときとかに,やはりよほど慣れているか事前の準備をしないと,非常に難しいのではないかなというふうに感じています。   いろいろな意見があって,ちょっと全部紹介するお時間はなさそうなので,要点を紹介します。しゃべらないということは非常にフラストレーションになります。あと,例えば評議の中の意見だとか,どういう決め方をしたのかという話を,人を特定しないような形では,ある程度,もう少し出していけるような制度にしてもいいのではないかなと思いますという方,これはさいたま地裁ですね。   この意見は非常に多く聞いていて,我々の提案というのは,裁判員経験者の方のこういう意見を踏まえて,では,守秘義務を具体的に見直すのであれば,どういうことなのかという形で提案をしています。評議の中で起きたことは一切,守秘義務ということで表に出すことはできない。でも,本当に知りたいのは,やはり評議の中でどんなことが起きたということなのではないかと思います。これは経験者の方もそう思っておりますし,これから裁判員になる方も,やはり,法廷を傍聴して分かること,裁判の流れが分かることも非常に大事なんですけれども,一方で,評議でどうだったのかということが,やはり,ある程度伝わるということが,次に裁判員になる方の準備にもつながると思います。   これは,今年の5月に,裁判員制度10周年の市民団体のシンポジウムで発表した共同提言です。市民の側から,裁判員制度に関わる六つの団体が共同提言として,議論の自由を保障し,プライバシーを保護するという守秘義務の機能を維持しつつ,過度な守秘義務による弊害を除去するために,評議の内容は発言者を特定しない限り,裁判員経験者が原則自由に話せるように,裁判員法70条を改正することを求めますという提言をしております。   守秘義務を緩和する場合にいくつか論点があります。例えば,判決に対していろいろな意見が出て,正当性がなくなるのではないかとか,職業裁判官の守秘義務との関係をどうするんだとか,いろいろな論点があると思います。制度化するときには,こういった点も考えなければいけないと思いますが,そもそも多数決で評決することを法律は予定しているので,少数意見が存在したとしても,あるいはそれが明らかになっても,判決の正当性自体は損なわないのではないかと考えています。裁判官との守秘義務に関しては,同じ裁判を担当するので,裁判員裁判については職業裁判官も同じとするか,あるいは,職業裁判官と市民というのは,やはり立場が大きく違いますから,市民についてのみある程度緩和をするという考え方もあるのではないかというふうに思っております。   このように裁判員経験の共有を阻む二つの壁を見直すべきです。一つ目の公表禁止規定の見直しは,インパクトは非常に,私は大きいと思っています。裁判員候補者であることの公表禁止規定をなくすのではなく,呼出状の受取を公表禁止にするように見直すべきです。11月に候補者通知が届いた段階は,それは法律では公表禁止にはしませんとすることが大事だと思っております。   二つ目は,守秘義務の範囲を限定する見直しです。この二つの見直しで,裁判員経験を共有することがかなり進むのではないかと考えています。逆に言うと,この10年間,裁判員経験者の方のお話を聞いて,裁判員裁判の傍聴もしてきましたけれども,正直なところ,思ったよりも社会の中で,裁判員制度に関する経験の共有とか進まないなと感じています。   例えば,当初想定していたのは,地域の学校とかで,裁判員経験者が年に1回ぐらい,総合的学習の時間で経験を話すとか,いろいろな形で,裁判員の経験が市民の中にも蓄積をして,それが刑事裁判をよりよくすることにつながっていくと思っていて,我々も法教育の活動の柱の一つにしています。しかし,実は,そこが思ったよりも広がらない。むしろ,裁判員のことは余り話してはいけないんだという空気が,社会の中では醸成されつつあるのかなと感じています。だから,この裁判員経験の共有というのは,この10年のタイミング,そして,この制度見直し検討のタイミングで,非常に大事な課題だと思っております。   今の二つが大きな柱なんですけれども,あと,そのほか,裁判員の心のケアに関しては,先ほど経験者の方,心理士の方からのお話もありましたが,臨床心理士を裁判員裁判の行っている裁判所に配置することで,大分変わるのではないかということと,裁判員候補者を対象にしたオリエンテーションというお話がありましたが,裁判員事前ガイダンスといったものを実施すること,あるいは,今日の論点には出てきませんでしたが,裁判員裁判の控訴審にも市民が関わるということも,検討し始めてもいい時期なのではないかと思っております。   あわせて,今日のような形で,裁判員経験者の声が直接反映をされるような形で検証する仕組みというのが継続的にあるということが,市民参加の制度にとっては大事だと思っております。   最後に,裁判員経験者の声を紹介します。自分が社会の一員であるということ,あるいは自分自身,人生が180度変わったという,非常に個人の内面に強烈に深く影響を与えていくのが裁判員経験,市民にとっての裁判員経験だと思います。   いろいろな方が集まって,被告人のため,社会のために,重大な結論を導き出していくと,これぞ民主主義だというのも,これも裁判員経験者の言葉で,非常に印象的なものでした。そういう意味では,刑事裁判を適正にしていくというのと併せて,裁判員制度というのは民主主義を深めていき,一人一人が主体的に社会に関わっていくための重要なきっかけであると,裁判員を経験した皆さん,あるいは裁判員になるかもしれないという市民の話を聞きながら,私たちが強く感じているところです。そういった意味からも,ぜひ積極的に,裁判員制度がより市民のためになる,そしてそれが,刑事裁判,社会のためになるような形での検討を,改めてお願いをしたいと思います。   私たちからのお話は以上とさせていただきたいと思います。どうもありがとうございます。 ○大澤座長 ありがとうございました。   既に予定した時間もきておりますが,ただ今の御説明について,御質問等ございますでしょうか。いかがでしょうか。   私から一つ,お伺いしてもよろしいでしょうか。裁判員候補者の通知が来たことについて,それは公表してもよいのではないかというお話がございました。候補者本人が何か知りたいというときに,候補者になったことを明らかにしつつ,例えば経験者から話を聞けるようにするということが,一つの目的だと思うのですけれども,候補者段階での公表禁止を全て撤廃するとしますと,候補者本人が自分のことを公にする場合だけでなく,無関係な第三者が候補者情報を勝手に拡散することについても禁止が外れることになると思われます。この点については,どのようにお考えですか。 ○大城聡氏 恐らくそこは,裁判員経験者が,自分が裁判員を経験しましたとしてコメントしたものが拡散されるのと同じ構造になると思うんですね。だから,最初は,本人が明らかにしないとだめで,第三者が勝手に,この人は候補者ですということは言ってはいけないと考えています。   ただ,今の御指摘のように,自分が裁判員候補者通知来ましたよと,例えばSNSで上げますと,それを別の人が拡散するということはあり得ると思います。それは,今,裁判員を経験した人が自分は裁判員経験しましたというのは禁止されていないのと同じ仕組みになると思っております。 ○鈴木刑事法制企画官 今日は大変貴重な御発表,ありがとうございます。   私の方からは,守秘義務に関しまして,ちょっと御趣旨の御確認という観点でお尋ねいたします。   評議の内容を守秘義務から外すということについてのお話があったと思うのですが,資料「市民から見た司法参加の意義と課題」を拝見いたしますと,その内容として,評議の経過,多数決の数,発言者を推知させない場合の裁判官・裁判員の意見の内容が,具体的な例として挙げられておられます。   裁判員の方々から聞かれた御意見を踏まえますと,具体的に,これらにつきまして,どのような緩和をしていくようなイメージでおられますか。 ○大城聡氏 一つずつ,まず評議の経過に関しては,そもそも評議で,どういう順番で何を話したのかとか,争点はここだったので,ここにたくさん時間をかけて話しましたという,その大枠も,恐らく評議の経過になるので,言えないのではないかという点ですね。だから,そういう意味では,評議の経過は外すべきだと考えています。   多数決の数については,これはお話聞いていると,うっかり,全員一致だとか,どういう形で評決をしましたみたいな話が,やはりすぐ出てくる部分なので,今,多数決の数自体を言ってはいけないので,そこを緩和をした方がいいということになります。   一方で,発言者を推知させない場合の裁判官,裁判員の意見というのは,これは,一番端的な例は,まるまるさんがこう言いましたとか,あるいは,名前を言わなくても,1番さんの意見はこうでしたと言うと,推知はできるので,そこはやはり言わないようにしてもらわないと,自分が後で何を言ったかみたいなのを,ほかの人がオープンにされると,意見が評議の場で言いにくくなるので,守秘義務の範囲にしてほしいという意見を聞いています。そういう趣旨で書いております。 ○鈴木刑事法制企画官 例えば,先ほどと同じ資料を見ると,少なくとも,自分が評議で言ったことは言えてもいいのではないかと。もし死刑になった場合に,自分は死刑に反対したんだと言えないことがつらいという,裁判員の方の御意見を御紹介なさっておられるんですが,もしそれを可能にするとしますと,これは,言われたところの発言者を推知させるものに該当してしまいます。先生の御意見としては,そこまでは緩和は必要ではないのではないかという趣旨でしょうか。 ○大城聡氏 そこは,そうですね,ここはなかなか議論があるところだと思います。自分はこう言ったとすると,発言者が特定されます。それは自分の意見だから言っていいという考え方もありますけれども,そうすると次々に発言者が特定をされていく可能性があります。私たちは,守秘義務の範囲は,自分がこう言ったということも発言者を推知させるので言ってはいけないという形が制度としては望ましいと思っております。 ○吉田刑事法制管理官 今のお話を前提としますと,資料に記載されている発言者を推知させないという部分は,評議の経過とか多数決の数についても同様にかかっているという,そういう理解でよろしいんですか。 ○大城聡氏 そういう趣旨です,はい。 ○吉田刑事法制管理官 ありがとうございます。 ○大澤座長 それでは,大城さん,坂上さん,福田さん,本日はお忙しいところ,非常に有益なお話を頂戴いたしまして,誠にありがとうございました。 (裁判員経験者1番さんから3番さん,大城聡氏,坂上暢幸氏及び福田隆行氏 退室) ○大澤座長 本日予定したヒアリングは以上でございます。   最後に,次回の第9回会合の進行について,委員の皆様にお諮りをしたいと思います。   これまで4回にわたりまして,裁判員裁判関係者からのヒアリングを行い,さきの裁判員法改正の際の国会の附帯決議において,意見を反映することとされております裁判員経験者,犯罪被害者,法廷通訳人のほか,鑑定人,犯罪被害者の支援をされている方,裁判員経験者と意見交換等をされている団体の方などを含めまして,延べ23名の方にお越しをいただき,お話を伺いました。   ひとまずヒアリングは,この程度といたしまして,次回以降の会合では,これまで出た御意見やヒアリングの内容等も踏まえまして,本検討会において取り上げるべき事項を整理した上で,個々の事項についての意見交換を順次進めてまいりたいと考えております。   本検討会で取り上げるべき事項については,既に第4回会合において,ひとわたりの意見交換をいたしておりますので,それを前提に,事務当局において検討項目の案を作成してもらい,次回会合において,その案をもとにして御協議いただくことにしたいと思いますが,そのような進行でよろしいでしょうか。 (一同了承) ○大澤座長 では,最後に事務当局から,次回以降の日程について,確認をお願いいたします。 ○鈴木刑事法制企画官 次回会合は,11月19日火曜日午前10時から開催する予定としております。場所につきましては,追って御案内を申し上げます。 ○大澤座長 本日の会議の議事につきましては,今後精査した際に,公開に適さない部分が出てきた場合には,議事録に記載せず,非公表としたいと思います。具体的に非公表とする部分等については,座長に御一任いただきたいと存じますが,よろしいでしょうか。   それ以外につきましては,発言者名を明らかにした議事録を公表することとさせていただきたいと思います。そのような取り扱いでよろしいでしょうか。 (一同了承) ○大澤座長 それでは,そのような取り扱いとさせていただきます。   少し延長してしまいましたが,本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。 -了-