法制審議会 民法・不動産登記法部会 第8回会議 議事録 第1 日 時  令和元年10月8日(火)自 午後1時00分                     至 午後6時09分 第2 場 所  法務省20階第一会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第8回会議を始めます。   本日は御多用の中,御出席を頂きまして,誠にありがとうございます。   事務当局の方におきまして,本日から新しく出席をすることになった関係官をお二人御紹介いたします。後でもうお一人いらっしゃいますが,今の段階で,お一人を御紹介いたします。   法務省民事局民事第二課地図企画官の戸井さんです。一言御紹介,お願いいたします。 ○戸井関係官 地図企画官の戸井でございます。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   なお,本日は,阿部委員,門田委員,衣斐幹事が欠席です。   配布資料の確認を事務当局から差し上げます。 ○宮﨑関係官 今回,部会資料14から16までを事前送付しております。また,本日は,前回配布いたしました部会資料13「遺産分割に関する見直し」も併せて使用いたします。   本日,部会資料14から16までについては,お手元に配布させていただいておりますが,部会資料13も含め,お手元にないようでしたら,お知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 部会資料13も含めて,お手元におありでしょうか。何かありましたら,事務当局におっしゃってください。   内容の議事に入ります。   「遺産分割に関する見直し」を審議事項といたします。部会資料13に即して,事務当局から説明を差し上げます。 ○脇村関係官 では,御説明いたします。   部会資料13では,遺産分割の見直しとして,遺産分割の期間制限を取り上げております。   第3回会議におきましても御検討いただきましたが,異なる効果ごとに区別して検討すべきというふうに御指摘ございましたので,今回のレジュメでは,分けて検討させていただく方式にしております。   まず,第1の2でございますが,こちらでは効果を書いておりまして,(1)では,特別受益又は寄与分の主張について取り上げております。   ここでは,遺産分割の合意も遺産分割の手続の申出もないまま,一定の期間を経過したときにつきましては,共同相続人は具体的相続の主張をすることができないものとすることについて取り上げております。   その理由等は補足説明に書かせていただいているとおりでございますが,現行の判例等の立場を前提にしますと,相続を開始しまして,相続人が複数ある場合には,遺産分割される前であっても,各相続人は法定相続分に相当する持分,共有持分を有するとされておりますが,一方で,実際の遺産分割の場面では,法定相続分ではなく,特別受益や寄与分などを踏まえて算定される具体的相続分に沿ってされるというふうにされておりまして,そのときにとるべき裁判手続や共有物分割ではなく,遺産分割の手続でやるというふうにされているところでございます。   そのようなことから,実際,遺産分割の手続の中では,具体的相続によれば,法定相続よりも多くの財産を取得することができる相続人,そういった者は,自分に寄与分がある,あるいは他人に特別受益があったということを主張し,他方で,他の相続人は,これに反証等をするということになってくることでございますが,相続開始から長期間経過しますと,証拠等が散逸するといったことから,他の相続人が反証等をすることが困難となるというケースが想定されるところでございます。   こういったことから,相続開始から長期間経過した後に,具体的相続分で遺産分割されるということになりますと,相続人にとっては不当に害されるおそれが生じるケースがございます。そういったことから,具体的相続によれば,法定相続分によるよりも多くの財産を取得できると考える相続人に対しまして,自分の自己の利益を確保するために,一定の期間内に必要な手続をとることを要求するといったことも考えられるところでございます。   例えば,他の法制度でいいますと,遺留分侵害額の請求権,遺留分の侵害額は,特別受益に該当し得る贈与等の額を踏まえて算定するものでございますが,遺留分侵害額の請求権におきましては,遺留分権利者が相続の開始及び遺留分を侵害する贈与若しくは遺贈があったことを知ったときから1年間又は相続開始のときから10年間を経過したときには消滅するとされているところでございます。   以上の点から,今回提案させていただいているところでございます。   続きまして,2ページの(2)では,分割方法を取り上げているところでございます。   先ほど述べました具体的相続分を主張することにつきまして,制限を設けるといったことを前提に,ここでは,一定の期間経過後は,各相続人が相続財産に属する特定の財産それぞれについて有する法定相続分に相当する持分,共有持分に沿って,相続財産に属する特定の財産を分割することができるというものにつき取り上げており,その手続として,次の各案を取り上げております。   甲案は,一定の期間を経ても,一応遺産分割手続ができるということを前提にしつつ,個々の財産について,共有物分割をすることも認めるという案でございます。   乙案は,遺産分割手続でなく,共有持分,共有物分割によって,一括して手続,処理をしようというものでございます。   その内容等は,補足説明に書かせていただいているとおりでございますが,現在,共有状態,遺産共有状態については,遺産分割でしか分割できないとされております。また,共有物の状態と遺産共有が併存しているものについても,共有状態であることと遺産共有であること,まずこの二つを分けるということをするとともに,遺産については,別途遺産分割するということにしておりまして,遺産について共有物分割をするということはできないというふうにされているところでございます。   このように,現行法が共有物分割をすることができない,遺産分割状態についてはできないとされていますのは,端的に言いますと,具体的相続等による修正をされることが,遺産分割では想定されるのに対し,共有物分割されていないというところに起因するところでございますが,先ほど述べましたとおり,一定の期間経過した場合に,具体的相続分につきまして,主張できないということにするのであれば,一定期間経過後には共有物分割をしても差し支えないのではないかということから,提案させていただいているところでございます。   甲案と乙案の具体的内容の違いでございますが,甲案につきましては,遺産分割の手続を残すというものでございますので,全ての遺産について,一括して一つの手続でやることが,一定程度,前提になっているというところでございます。   一方で,乙案につきましては,確かに共有物分割ということで,個々にさせていただいておりますが,前回御議論にもありましたとおり,現在の判例では,共有物分割であっても当事者,共有者が同一の場合につきましては,一括して,併せてすることもできるということから,甲案と乙案では,確かに遺産分割できるかどうか違いがありますが,結果には似ているところもございます。   そういったことを含めて,甲案,乙案,どちらがよいかというふうに御検討いただきたいというふうに思っているところでございます。   また,乙案の関係では,(注1)を書かせていただいております。   乙案につきましては,遺産に属する財産個々について,共有物分割あるいは準共有物分割をすることを前提にしておりますが,金銭債権,例えば預貯金債権につきましては,現在,判例によると,準共有とされているところでございます。   ただ,こういった準共有の金銭債権につきましては,結局,法定相続分で割る以外の方法はないわけでございますので,そうしますと,あえて裁判上の手続で,準共有物分割の手続を用意する必要があるのかという点は,別途問題となることから,(注1)では,こういった点の取扱いについて,御検討をお願いしているところでございます。   また,(注2)では,相続分の指定があった場合について検討するということにしております。相続分の指定があった場合については,昨年というか,民法改正により,対抗要件を具備しなければ第三者に対抗できないという規律が入っておりますので,これとの関係についても検討していくことが必要であるというふうに考えているところでございます。   そのほか,甲案,乙案を採った場合の帰結につきましては,5ページの補足説明(4)に記載してございますので,御覧いただければというふうに思います。   続きまして,5ページの(3)では,売渡請求権を取り上げています。   部会資料3などにおきましては,通常共有における売渡請求について御検討をお願いしたところでございます。その場合には,具体的相続分のあることから,遺産共有について,この売渡請求権について,直ちに導入するのは難しいのではないかという検討を部会資料に書かせていただいたところでございますが,今回,具体的相続につきまして,一定の期間の経過によって主張できないということにする場合には,売渡請求権についても,共有物分割と同様,導入することを考えているところでございますので,御検討いただければ幸いでございます。   また,次に,7の3の期間の長さでございますが,ここにつきましては,遺産分割に関する期間制限につきまして,具体的相続の主張の重要性や遺産分割禁止の制限を踏まえて,10年又は5年,さらには3年とする案について,掲げさせていただいているところでございます。   その個々の理由につきましては,補足説明,特に8ページ以下に書かせていただいているところでございますが,例えば,10年の案は,遺留分侵害額の請求権の時効期間,除斥期間等の,あるいは一般的な債権の消滅時効とのバランス等を考慮して提案させていただいているところでございますので,御意見いただければというふうに思っております。   8の4,その他のところでございましては,そのほか検討すべき点を取り上げております。補足説明1に書かせていただいていますとおり,調停とか審判の申立ての取下げ制限をすべきかどうか,9ページの2では,相続放棄につきまして,相続放棄がされた場合に,期間経過後については,相続人になった者がどのように請求権は認められるのか,3では相続回復請求権などを書かせていただいておりますので,御検討いただければというふうに思います。   最後,9ページの補足説明の4のところでは,具体的相続分の主張制限を設けずに,共有物分割を先行して行うことについて取り上げております。   この問題につきましては,部会資料では,基本的に難しいのではないかということを書かせていただいているところでございますが,趣旨としましては,具体的相続分を保護することを前提に,ただ,共有物分割を先行してやるということを認めますと,残された財産で事後的に具体的相続分の振り分けをしていくということになります。そういったことが本当にできるのかどうか。さらには,先行する場合に,そういったことについて,できるかどうか見込みを全く判断せずにやっていいのかどうかについては,問題があるのではないかというふうに考えております。   平成30年の民法改正では,遺産分割の一部審判ということで,先行して一部の審判について,することを認める改正がされているところでございますが,これについては,一部の審判をする前に,将来,別途,遺産分割をする際に,特に問題ないかどうかを,具体的相続分がどの程度かを含めて調査するということは予定されているところでございますので,そういったことがないまま,共有物分割するのは難しいのではないかというふうに考えているところでございます。   御説明の方は以上でございます。 ○山野目部会長 部会資料13は,第1のみがございまして,その中が1から4の項目に分かれております。   初めに,1,遺産分割の期間制限,それから2,一定の期間経過による効果,この範囲で御意見を頂くということにいたします。いかがでしょうか。 ○潮見委員 お願いが1点と,それから,確認のための質問をさせていただきたいことが,取りあえず二つあります。   お願いというのは,前のときの資料では,一定期間経過したら,法定相続分での遺産分割がされたものとみなすという表現がありまして,ちょっと仰天したところがあったんですけれども,今回はそういう考え方というものは,表には出ていません。つまり,一定の期間が経過すれば,具体的相続分による主張というものができないということだけを示したというものと,私は理解をしています。いろいろな御意見はあると思いますけれども,考え方としてはあるかなと思いました。   その上でのお願いが1点ですが,前にも言ったことにも少し被るところがありますが,今回のここでお示しになっている考え方というものは,従来の相続法の枠組みというものを大きく変えるものです。所有者の不明な土地だとか,あるいは所有者が不在の土地,その問題を扱うというか,それのみを対象とするにとどまらないところがあります。   今日も脇村さんが先ほど口頭で説明されましたような預金債権,預貯金債権とか,あるいは前回出ましたゴルフ会員権だとか,あるいは投資信託とか,株式もそうですかね,いろいろなところに波及するという基本的な枠組み転換だと思います。   従来の相続法の枠組みというのは,基本的には,具体的相続分による遺産共有,共同相続人の遺産共有を基礎として,具体的相続分を基準に遺産分割をするという,そこでは法定相続分とか,あるいは指定相続分というのは,具体的相続分を計算するための基礎にすぎないし,特別受益とか寄与分も考慮に入れて遺産分割をするという枠組みが考えられていたと思います。   もちろん,共有と登記だとか何とかと登記というところでは,個々の財産について,法定相続分を譲渡したり,あるいは,それに対する差押えをするということは許容していたけれども,これは個々の財産については,共有説を前提に,そこまでのことについては,法定相続分については権利性を認めて許しましょうということから,説明されてきたのかなというところがございました。   それに対して,今回の遺産分割の期間制限のところで言われているというものは,正に一定の期間を経過したら,もはや具体的相続分に依拠した主張はできない。具体的相続分というのは意味を失うんだというようなことになるわけです。   これは,前にも少し御意見が出たかと思いますけれども,遺産分割がされないままで,ずっと放置されて,遺産を構成する財産の権利関係が宙ぶらりんになるということは財産の管理処分上,好ましくないという判断から出たのだと思います。このことは分かるのですが,ここからがお願いなんです。   私も,家族法学会ほかに関わっておりますし,いろいろな形で,家族法あるいは相続法を専門にしている研究者や実務家の方とも,この間,対話をしたり,あるいは意見を聞いたりする機会がございました。そうした中で,これはもちろん,その人たちの勉強不足だという形で抑えてしまうと,それで収まってしまうことなのかもしれませんけれども,家族法の研究者,相続法の研究者の辺りでは,今回のこの部会で扱っている内容について,十分に意識がされていません。これは所有者不明土地問題を中心とした問題を処理するために,枠組みを何か変えるようなルールの改正を目指した,そういう提案をしているのではないかぐらいのところでとどまっています。   もちろん,きちんと勉強,研さんをしなさいと言いっ放すのは構わないと思うんですが,相続法の枠組みというものを大きく変える部分がございますから,パブリックコメントも求めるということでありましたら,そういう方々にも,実はここを変えることによって,相続法というものの捉え方が大きく変わるんですよというぐらいのメッセージは,できれば出していただきたいと思います。分かっている人たちだけの議論でこれをやるということについて,少し危惧を感じるからです。これがお願いです。   さらに,お尋ねしたいのは,その関係もあって,2点ありまして,一つは脇村さんが口頭でもおっしゃったことですが,例えば預貯金債権はどう扱うのかということは,今回の改正においては,ここには何も書かれていない。場合によれば,預貯金債権の共同相続が生じた場合の扱いというのは,従前の最高裁の代表的決定以降のこの枠組みで処理するということもあると思います。   投資信託なんかも,従来どおりということもあろうと思うんですが,他方,今先ほどの説明をお聞きしたところでは,預貯金債権は法定相続分によって当然分割という構成もありかなというようなことをおっしゃいましたよね。そうなってきた場合に,当然分割だということでやってしまったら,預貯金債権が遺産共有になるというところの理由として,預貯金は金銭と同じようなものだとか,遺産を分割するに当たっての調整的な機能を預貯金債権が担うことがあるから,共有にするんだというようなこともありましたよね。   仮にここで,当然分割だということになると,そこは余り考えないという趣旨なのか。ここでの改正を所有者不明土地のところでやった場合に,預貯金債権についても解釈論の変更が起こり得るというようなこともメッセージとして,ここでお示しになっておられると理解するのがよいのか,これが1点です。   それから,もう1点は,全く違う問題ですが,分割方法について,甲案と乙案とありますよね。しかし,どちらを採った場合でも,いわゆる通常の共有分割の方法を採ることができます。その際,遺産全体を,遺産に属する個別の財産全部ひっくるめて,通常の共有物分割の方法を採ることができるということになった場合には,通常の共有物分割の方法についても,通常の共有物分割の方法を使いながら,全部の遺産を取り込んで,地方裁判所の下で,事実上,遺産分割と同じようなことが行われることもあるという想定なのだろうかという点です。   そのときに,遺産分割のところでは,民法の906条があり,どういう要素を考慮に入れて遺産を分割するのかが書かれています。通常の共有物分割のときに,しかも遺産が全部取り込まれた場合に,そのようなものを考慮に入れて,遺産分割をするというか,裁判所がそのような判断を示すということは可能なのか、教えていただきたいのです。 ○山野目部会長 前段で,お願いという仕方で,潮見委員からおっしゃっていただいたことは,誠にごもっともでございまして,法務省事務当局において,既に家族法,相続法を研究しておられる研究者の皆さんへの可能な範囲での意見の聞き取りということを始めておりますけれども,ただいま潮見委員から御注意を頂いたところでもございますから,単に意見公募,パブリックコメントの機会にとどまらず,機会を捉えて,家族法,相続法を研究し,あるいはそれらの実務に精通した皆さんに対して,広く意見をお尋ねする機会を設けてまいりたいと考えます。広い意味でのこの部会の運営の問題として心得ました。   御指摘のとおり,こういう方向で進むということになりますと,我が国の相続に関わる制度の基本構造を変更し,それに伴って,蓄積されてきた法文化や法実務に多大な影響を与える側面がございますから,心して検討を進めなければならないと考えるものでございます。   後段でお尋ねを頂いた点について,脇村関係官から発言をお願いします。 ○脇村関係官 すみません,最初に頂いた御質問の関係で,まず,私の説明,若干先走っていたところがあったんですけれども,前提としましては,甲案,乙案であったとしても,期間経過後について,具体的相続分による修正はされないですけれども,元々あった状態というのは変わらないのではないかというふうに考えておりまして,預貯金などについても,特に何の手当てもしない場合には,以前の判例法理,あるいは判例の下にされている解釈が,そのまま引き続いていくんだろうと考えています。   また,不可分債権などについても,従前は遺産分割の手続をとっていたものを,手続としては準共有物分割というふうに変わりますが,その際の判例法理,事例判断かもしれませんけれども,例えばゴルフ会員権については,持分を移すにはゴルフ場の承諾を得ないといけないとか,そういった判例の解釈等々については,特に変更することは考えていません。   その前提の上で,ただ,預貯金については,解釈を変更するということではないんですけれども,そういったのとは別に,そもそも準共有物分割手続をとるべきではないというような考え方を採るかどうかというのを,解釈とは別に,立法論としてお尋ねしたいということが(注1)の趣旨でございます。   もちろん,この考えにつきましては,今潮見先生がおっしゃったとおり,まとめてやるときには預貯金があった方が便利だという潤滑油的な説明からすると,いずれにしても,まだ分割されていない遺産が,個々とはいえ残っているので,併せてすることを踏まえてやることからすると,準共有の状態を残していいのではないかという意見もあるでしょうし,一方で,やることないではないかということで,立法論としてやるべきではないかという意見があると思いますので,そこは御意見いただきたいという趣旨でございます。   二つ目が,分割の基準に関しまして,正にそういう意味では,この遺産分割手続を残すか残さないかが大きく影響してくるだろうと思います。   分割手続として共有物分割をした場合には,もちろん個々の事案に応じて,今の裁判所でも適宜・適切に,その人の状況を踏まえ,誰に使わすべきかといったことを考えながら,分割しているものだと思いますが,やはり家裁でやっていた営みとは,同じなのかといいますと,そこは今後議論されるところだろうと思います。   そういった意味では,家裁での営みを,残すべきだというふうに考えるのであれば,やはり甲案で基本的にいくべきではないか,その上で,共有物分割を特別にやるのを認めるべきではないかという考えもあるでしょうし,そこは今の共有物分割でも適切にやっているんだから,あえて遺産分割の手続をとらなくていいのではないかということであれば,乙案になるでしょうから,そこは是非御意見いただきたいというふうに考えているところでございます。 ○潮見委員 ありがとうございました。預貯金債権の場合は,そうなると,何の規定もこのままで置かないということであれば,従来の預貯金債権について,それが共同相続された場合にどうなるのかで,いろいろな学説も今ありますけれども,それがそのままの形でスライドしていくということですね。仮に,当然分割が望ましいということであるならば,それは規定を設けないとできないという趣旨でおっしゃったということですよね。   それから,後の方ですけれども,906条を申し上げたのはなぜかというと,今の寄与分の制度というのは,寄与分制度がなかったときには,906条の枠の中で寄与分というものが扱われていたんですよね。   そうなると,906条が,あるいは906条的な考え方が,これ通常の共有物分割で参酌されるのだとしたら,具体的相続分は考慮しないといいながら,実際には同様の要素が考慮される可能性があり,それを裏から容認するということもあり得るかもしれないと思いましたので,一言申し上げました。 ○中田委員 3,4点,御質問をしたいと思います。   1点目は,先ほど潮見委員が出された906条の基準がどうなるのかということでございましたので,これについては割愛します。   質問の2番目は,遺言による相続分の指定があった場合の効果はどうなるのかについて,お考えをお聞かせいただきたいと思います。   それから,3点目は,ただ今の潮見委員と脇村関係官のやり取りの中で,ちょっと自分で混乱してしまったのですが,3ページの(注1)で,可分債権という言葉が使われておりますけれども,この可分債権について,預貯金債権の話をしておられたような気もしますし,それ以外の話をしておられるような気もしますので,ここで書いておられる可分債権というのは,何を指しているのかを明確にしていただければと思います。   それから,次に,この期間制限の効果は何なのかを教えてくださればと思います。具体的相続分の主張ができないということは分かるのですけれども,それは例えば,時効消滅ということなのか,それとも出訴期間の制限なのか,何を考えておられるのかということです。  全体を通じて,期間制限によって何が変わるのか,何が従来の相続法で前提とされていたことと変わるのかということを検討する必要があると思います。具体的相続分について申しますと,特別受益の持ち戻しと寄与分とがあって,寄与分については比較的新しい制度で,先ほど潮見委員がおっしゃったように,それ以前は906条の問題だったのではないかと思います。それに対して,特別受益の持ち戻しというのは,もっと古く,明治民法からある制度です。これらの制度を一定期間でなくするということが,従来の考え方,あるいはそれぞれの制度が設けられた趣旨を覆すことの正当化を,どうやってするのか。もちろん,幾つかのことをおっしゃっています,証拠散逸の危険だとか,他の相続人の期待だとかとあるんですが,それは従来からあったことでありまして,所有者不明土地の問題を超えて,より一般的な改正をする際に,やはり基本的なところを検討する必要があろうかと思います。 ○脇村関係官 では,お答えさせていただきます。   遺言があった場合の処理,相続分指定された場合につきましては,現在の判例法理等を前提にしましても,遺産分割を経ないで効果が発生するものが一定数あります。そういったものにつきましては,遺産分割が問題となりませんので,この制度とは関係がないといいますか,従前の判例法理のまま,そのまま固定して終わりというふうに,今のところ考えているところでございます。   先生がおっしゃったのは,相続分の指定の方も含めてでしょうか。その後に遺産分割がされることを予定しているケースの遺言もございますが,そういったものにつきましては,正にこの申立てをしてもらうということを想定しているところでございます。   さらに,その関係で,ちょっと遺言方法の指定ではございませんが,相続分の指定につきまして書かせていただいているのは,先ほど言いました対抗関係の問題がございますので,その処理が別途問題となることを注記したというところでございますので,遺言がされた場合につきましては,遺産分割がされないケースについては,今回の問題とは関係がなく,される場合については,依然として遺産分割が問題となりますので,この申立ての制度が枠組みの中に入ってくるというふうに考えているところです。   また,可分債権につきまして,預貯金を例に挙げさせていただいたのは,まずそもそも,ここで議論しているのは,遺産分割の対象となる可分債権を議論すべきであろうというふうに考えていまして,以前の預貯金の判例が出る前は,可分債権は全て当然分割されるという考えがあり,預貯金の判例が出た後につきましても,他の可分債権についてそれが維持されているかどうかについては,今,正に解釈を委ねられているところでございます。   その前提で,ここに書かせていただいたのは,預貯金については判例がありますので,間違いなく準共有状態でございますが,そのほかの可分債権についても,解釈論として,今後,準共有とすべきだという話になった場合には,ここで問題となっていることが問題となるので,部会資料としては,すみません,可分債権と端的に書いてしまったんですけれども,先ほど議論として預貯金を出させていただいたのは,その中でも準共有であるのは間違いないのは,預貯金がありましたので,その例でしゃべらせていただきました。ですから,何といいますか,可分債権全般問題になるんですけれども,そのうち問題となるのは,準共有にあるものというふうに考えているところです。   また,先生が最後,正当化のお話を頂いたところでございますが,まず前提として,我々としても,具体的相続分を何でもかんでも軽視すべきでないというのは,当然の前提にしているところでございます。ただ,一方で,その主張について,本当にずっと主張し続けることが認められるのか。従前は,遺産分割自体に期間制限がないことから,これ自体について,一定の範囲で区切るという議論はなかったわけでございますが,我々としましては,提案としては,何といいますか,そういった,確かに重大,重要なことなんだけれども,そういったものについては,できるだけ,一定期間内に手続をとことによって申立てをしていただき,それによって,そういったことを予期していなかった人たちに思わぬ被害が被ることを防ぐということは,一つ理由にはなるのではないかというふうに考えているところでございます。ただ,それについて,それで十分ではないという御意見もございますところでございますので,また御意見いただければというふうに思っているところです。   最後,すみません,期間制限の法的性質ですけれども,遺留分と同じように考えますと,いわゆる除斥期間ではないかと思っているところでございます。ただ,後で出てきます,一定の期間,やむなく徒過してしまったケースについて,具体的には,相続放棄が経過後にされたケースの相続人取扱いしております。   そういった意味では,除斥だとしても,そういった例外的な処理があるということは,今,御議論させていただいているところでございますので,そういった例外的処理が更にあるのかどうか含めての検討は,今後必要なのかなと思っているところです。 ○中田委員 1点だけ確認したいんですが,遺言については,遺産分割があれば,その中で生きてくるからというお話があったように思うんですけれども,分割方法について,乙案を採った場合にはどうなるんでしょうか。つまり,一定期間経過すると,遺産分割の手続ではなくて共有物分割になるんだという,その場合なんですが。 ○山野目部会長 相続分の指定があった場合において,乙案を採用するときには,共有物分割の手続のみが問題になりますが,その場合に,遺言でされた相続分指定の意思表示は意味を持つか持たないか。持つとすれば,どのような仕方で意味を持つかという御疑問をいただきました。 ○脇村関係官 相続,遺産分割の方法が指定された場合については,一定の場合には,直ちに効果が発生しまして,遺産分割をしない処理をされているというふうに理解しております。そういったケースについては,この甲案,乙案というのは問題にならない,遺産分割されないので問題にならないというふうに考えています。   それとは別に,遺産分割をしないといけなかったケースについては,この甲案,乙案を前提にしますと,法定相続分か指定相続分で処理をするというふうに考えております。   すみません,もしかしたら理解できていないかもしれませんが,一応,お答えとしては以上でございます。 ○中田委員 今,法定相続分か指定相続分かとおっしゃった。ということは,指定相続分が生きるということですか。 ○脇村関係官 はい。遺産分割方法の指定と,ちょっと相続分の指定が若干,私の中でごっちゃになっていたかもしれないんですけれども,相続分の指定がある場合については,相続分の指定でなされるというふうに考えています。   ただ,相続分の指定で準共有になったとしても,第三者が出てきたケースについては,対抗要件の問題がございますので,それは別途問題になりますが,少なくとも内部関係については,相続として処理をするというのが一つの考えだろうと思います。(注2)は,その点を一応意識して書いたのですが,分かりにくくて申し訳ございませんでした。 ○山野目部会長 ただし,最後の点は,恐らく事務当局において,熟慮の上,強く推す趣旨でお話ししていることではなく,そこは委員,幹事から意見を頂いた上で,検討を続けなければいけないものではないでしょうか。   恐らく,遺言者がする意思表示の形態が,遺産分割方法の指定である場合と相続分の指定である場合に分けた上で,それぞれが甲案及び乙案と組み合わせたときに,どういうふうな帰趨になることがよいかということについて,委員,幹事から御意見がおありでしたら仰せいただき,それを踏まえ,また整理をしなければいけないことであると考えます。   もし中田委員,お続けになることがあったら,お願いいたします。 ○中田委員 取りあえず,御趣旨を確認したいというところでしたので,今の段階はこれで結構でございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   それから,中田委員からお話があった遺産分割期間の制限の効果・性質のお話は,引き続き悩んでいかなければならないことでありまして,部会資料では簡単に,遺産分割の期間の制限をしますよという表現をしていますが,これがそのまま法文になるということは考えられません。このことを法制上表現するときに,どういうふうな文章で描いていったらよいかということも関わってくる事柄でございますから,引き続き検討しなければならないと感じます。 ○佐久間幹事 潮見委員が随分柔軟になってくださったのに,いや,それでは足りないというようなことを言うようなことになりまして,申し訳ないんですけれども,私はちょっと,今回の提案は,問題の解決には中途半端なところがあるのではないかと思うので,その点で申し上げたいことがございます。   中途半端になるのではないか,ということなので,私が今から申し上げることが,いつの段階か分かりませんが,最終的に通らないことになった場合には,今の案をブラッシュアップしてというのがいいのかなと思っております。   申し上げたいのは,期間経過の効果の話でございまして,前回は分割擬制だということになっておったわけですよね。それが今回は,分割擬制が消えて,遺産共有である状態は変えずに,具体的相続分の主張はさせないということにしましょうということでした。そうすると,論理の恐らく必然だと思うんですが,まず分割方法が当然違ってまいります。遺産共有だとなると,今までずっと御議論が続いてきたように,遺産分割の手続になるのに対し,分割擬制だったら当然,共有物分割になるはずです。   そこが実は,ちょっと私は,それでいいのかなということがございまして,一つは,非常にマイナーな問題なんですが,遺産共有であるといいながら,甲案のように共有物分割もできますよというのが,ちょっと私にはよく分からないというか,なぜ遺産共有なのに共有物分割手続をここでだけ,とることができるようにするのかというのがよく分からないので,これは理由の説明が必要になるのではないかなと思っています。   困るのではないかなと思いますのは,5ページに例が挙げられているところなんですけれども,例えば①のような場合ですと,Aがいて,それが亡くなって,相続人であるB,Cが相続をしたと。ここで遺産分割がされなかった。そのまま,次,Bについて,共同相続が起こり,Cについても起こったという場合ですけれども,この問題の解決の一つの大きなポイントといたしまして,こういうふうになったときに,遺産分割の手続と共有物分割の手続を混ぜこぜにすることをやめる,ということがあったのではないかと思うのですね。   もし分割擬制となるといたしますと,D,E,F,Gの単純共有だということになりまして,持分も決まっているので,共有物分割だということで決着が付くと思うんですが,もし今回の原案の遺産共有だ,そして906条の適用もあるんだということになりますと,どの順番なのかちょっと分かりませんが,D,Eは一つの固まり,F,Gは一つの固まり,そして,D,Eから成るB,F,Gから成るCがまた一つの固まりで,遺産分割を3回やらなければいけないということになってしまうのではないかと思うんですね。   これは,今ある,このような数次相続が起こっている場合に,問題を解決できないままに置いておくことになると思いますし,将来,遺産分割せずに,ほったらかしの状態をまた多くの方がするということになったら,一定の期間がたつと解決不可能な状態になるのではないかと思うんです。   そこで,例えば甲案のように,遺産分割もできるけれども共有物分割もできますよという,その当事者に任せているというのでは,やはりうまく解決できるかどうかというのが分からないことになるので,ここが私は問題ではないかというふうに,この審議会部会のミッションの関係で思っております。   それと,もう一つ,今申し上げことからするとマイナーなことなんですけれども,預貯金債権等の可分債権ですね。遺産共有状態にある可分債権かもしれませんけれども,預貯金債権について,潤滑油だというのは分かるんですけれども,その潤滑油の一番多分大きな,28年判決を動かした大きな要素は,具体的相続分の調整ができないではないかということだったのではないかと思うので,具体的相続分を考えないでいいですよとなったら,潤滑の意味が大分変わるんだと思うんですね。   あるとしたら,共有物分割をしましょう。ただ現物分割に変えて,柔軟な分割方法を考えましょうと。その柔軟な分割方法を考えるときに,やはり金銭的調整というものの役割が,今までよりは大きくなるでしょうと。   この場面で,金銭的調整というのは結局,ある人の資力を当てにして,その人に債務を負わせるとか,それを履行させるという形になるのに対し,預金があれば,その預金を言わば,金銭的調整の原資に最初からできるということはあると思うんですが,この場面でだけ,それをしなければいけないのかどうかを,私は疑問に思っております。単純共有にして,結果,当然分割ですかね,遺産でも。そうなることがあっても仕方がないのではないかなと。先ほど意見があったらお出しくださいということがありましたので,預貯金債権について,このように思っているということを意見として申し上げます。 ○山野目部会長 お尋ねというより,前段,後段,意見ということで宜しいですか。 ○佐久間幹事 そうです,意見です,はい。それで,意見としては,恐らく中間試案をにらんで,これから議論がされていくんだろうと思いますので,希望としては,2の(1)の効果のところに,乙案でもいいし,もっと下の案でもいいので,注記でもいいので,分割擬制とすることも考えられるというようなことを入れていただくと有り難いと私は思っていると,そういう意見でございます。 ○中村委員 日弁連のバックアップチームでの議論では,この提案に対して,賛成から大反対まで,多岐にわたる意見がございました。   賛成という意見の中では,遺産分割の迅速化を図って,所有権の帰属を早期に確定していくということが,この問題の解決のためには必要であろうということで,今回の御提案について前向きに考える方向です。ただし,分割方法については,甲案賛成説もあれば,乙案賛成説もあり,また,期間についてもまた,後での検討になるかと思いますが,意見が分かれておりました。   これに対して,反対,大反対という意見は,どうしても私的自治に介入していくことになるというので,慎重な検討が必要である,また,寄与分,特別受益を主張し得なくなるという効果を結び付けるということについては,極めて疑問が大きく,慎重な検討が必要であろうということでした。   また,特別受益や寄与分が問題となるケースで,それを主張する相続人ではない別の相続人にとっては,協議に応じないとか,それから引き延ばすというインセンティブが働いてしまって,不公平なのではないかという,前回も出ていましたけれども,そのような実務的な懸念がございました。   慎重意見の中では,今後,民法がこの方向での改正となった場合には,所有者不明土地問題が関係のないようなケース全てにまで係っていくことであり,また,本当に相続法の根幹に関わる問題でであって平成30年の相続法の改正でも手を付けなかった部分を,ここの部会で短期間でやるということについては,議論が十分にできるのだろうかという懸念が出ております。   先ほど潮見先生の御指摘により,また部会長もお引き取りになって,専門家の先生の御意見をヒアリングしていかれるということですので,あるいはその点の懸念は,これから払拭されていくのかもしれませんけれども,日弁連の方では,そのような意見が出ておりました。   それから,この部会で検討している,ほかの制度との兼ね合いなのですが,今日この後,資料16で検討いたします,登記所が何らかの連携によって死亡情報を取得して,それに基づいて,任意の登記を促すということをする。それから,公法上の義務を何らかの形で課すことになれば,任意の登記の促しというのも,強い指導にすることができるだろうと。   それから,登記官が取得した死亡情報を登記に反映する仕組みなどについても検討されることになっておりますし,さらに,財産管理制度の見直しによって,特定の個別の不動産についての財産管理を認め,かつ,今度は相隣関係についても,かなりの手当てをするということになりますと,この所有者不明土地問題に関しての遺産分割がなかなか進まないことの問題の,どのぐらいの部分かは分かりませんが,かなり進む可能性もあるところですので,それを見てから,根幹的な改正については,慎重に手を付けるべきではないかという考えもございました。   ただ,これに対しては,慎重にと言っているだけでは進まないではないかと,思い切れという意見もありました。 ○今川委員 我々は,遺産分割協議を擬制するということについては,やはり慎重にという意見を前回申し上げましたけれども,今回のように具体的相続分の主張に期限を設けるということについては,一定の意義があるのではないかという意見が多かったです。   というのは,実感として,なぜここまで放置していたのかというような事案,特別受益を受けている相続人があるということを分かっていても,そのまま放置していたというような事案も見受けられます。特別受益については,何か後出しのような感じもあるということで,今回,主張すべき権利を主張しない場合に,一定期間で失権するというのは,やむを得ないのではないかというような意見がありました。   ただ,そこで,期間経過後の分割方法ですけれども,乙案は,やはり否定的でありました。というのは,今回,法定相続分で遺産分割協議をしたものとみなすものではないといいつつ,乙案は結局,法定相続分で遺産分割をしたのと同じことになるのではないかと思われます。そうすると,自分が相続人であることを知らなくて,縁もゆかりもないので,遺産については要らないと主張しようとしている人も,現実に法定相続分で取得してしまって,共有物分割をしなければならないということになりますし,そういう場合,相続税に加えて,実務上,贈与税も問題になる場合がありますので,その辺も考えなければいけないという意見です。   それから,これは質問ですけれども,甲案の場合は当然,自分は取得しないというような分割の仕方もいいということですよね,遺産分割と同じように。ということですね,はい。   それと,相続分の譲渡はできるという前提なのかどうか。   それから,乙案だと,登記は当然,一旦,法定相続分の登記を入れてから,共有物分割登記をするということになると思います。   甲案の場合は,場合によっては,相続で1回で登記申請を行うこともあれば,ある物件については,法定相続分で登記をした上で共有物分割による登記を行うということになります。   裁判所を利用する場合に,ある遺産は遺産分割調停,ある遺産は共有物分割訴訟をするということで,調整はできるのではないかと説明されていますが,家裁と地裁で連携がとれるのかとか,地裁であっても同一の裁判所で審理されるわけではないので,他の裁判の内容を把握することができるかという意見もありました。それと,裁判手続を利用しない場合,相続人が登記をするときに,これは共有物分割でいくのか,これは遺産分割でいくのかというような判断を,どのようにしてやるのか,まだこの提案を見たばかりですので,我々も十分検討していないんですが,どのように考えればいいのかという意見はありました。 ○山野目部会長 質問というお話でありましたが,甲案及び乙案を採用したという,それぞれの前提の上での不動産登記の手続,その他の実務上の諸問題につきましては,事務当局において,多分検討の用意がないと思いますから,引き続き検討していくことになりますけれども,今川委員から今,いろいろ御注意いただいたことを踏まえ,検討をしてまいらなければなりません。   大筋,甲案を採った場合において,そのような宿題がたくさんできますけれども,乙案になった場合にも実務上の混乱がないかというと,そうとは限らなくて,今までの方法を大きくがらっと変えなければいけないという問題点は多々あります。   贈与税とおっしゃいましたけれども,むしろ共有物分割でいったときには,狭い意味の現物分割をする場合や等価交換の特別措置が働く場合を除いては,課税当局から譲渡所得が発生したというふうに見られる局面が出てくるであろうと想像します。加えて,不動産登記の手続との関係では,共有物分割でいくと,共有物分割が登記原因になりますし,普通に考えれば,遺産共有が続いているという前提ですれば,遺産分割又は相続を原因とする所有権の移転の登記になりますが,今のままの扱いですと,いずれでいくかによって,農地法許可証明情報を添付情報として求められるかどうかということについて差異が生じまして,こういうことを詰めて考えていかないで,うっかりすると実務上,大きな混乱が生じますから,成案を得る段階には,かなり細部のところを検討しなければいけないであろうと考えます。   遺留分侵害額請求権に変更した先般の平成30年の改正が実務で動き出した今になって,登記と課税の関係について,実務上困惑するという声が寄せられていて,あれと似たような姿のことが,また今回起こり得る懸念はありまして,そういうことは考えていかなければなりません。ただし,それらの課題があるからといって,基本のところの検討が直ちに左右されるということにもなりませんから,十分に注意をしながら考えていかなければいけない,そういう観点の御注意を今,今川委員から頂いたものとに理解いたします。 ○沖野委員 すみません,なかなか言い出せなかったのですけれども,この提案全体が,所有者不明土地問題といわれる問題にどう取り組むかという政策課題をスタート点として,必ずしもそれに限られないところも,適切な手当てがあるならば,手当てをしておくということですので,土地以外にも関わってくるということは,もちろんあり得ることだと思うんですけれども,この遺産分割の期間制限は,いつまでも遺産分割がされないということ自体を問題として,それに対応するということから出ているのか,それともやはり,所有者不明土地問題といわれるものの一つの原因がそこにあるということからきているのかというのが気になっていまして,そして,後の問題関心だとすると,例えば分割擬制というのも,土地に限るとか不動産に限って,そこはもう一部分割がされてしまったものとして扱うというようなことがあり得るのかどうかです。   何か,それもあり得るように思いまして,そうしたときには,非常に中途半端といえば中途半端かもしれませんけれども,一定の範囲で具体的相続分が担おうとしていた公平等への考慮も残る面が出てくるかと思います。そういう考え方はあり得ないのか,問題が多すぎるのかどうかということも,まだこの段階であれば,考えてもいいのかもしれないというふうに思っておるのですが。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   甲案,乙案を御提示申し上げている,このゴシックのところで,本来は不動産ないし土地に限り,又は限らないでという文言をそれぞれ入れて,御検討をお願いすべきところであったものではないかという御注意を今,沖野委員から頂いたというふうに感じます。 ○大谷幹事 今,沖野委員から御指摘があった,まず,どういう問題関心からなのだということでございますが,やはり所有者不明土地の中には,ずっと遺産分割がされずに放置されているものがあり,それをいざ,東日本大震災のときでもそうでしたけれども,いざ利用しなければならないというときになって,非常に困る。遺産分割の手続を全部しなければいけないということになってしまって,非常に困るということは元々ございましたので,その問題関心から出発して,遺産分割の期間制限ということを御検討いただいてきたわけですけれども,やはり土地の問題なんだろうということで,前回も確か,そのような御議論もあったと記憶をしております。   この部会資料で申しますと,一番最後の9ページ,10ページ辺りで述べております個々の土地についての共有物分割の手続を設ければいいのではないかということも検討させていただきましたけれども,やはり,遺産分割を先出しで一部だけしてしまうというところがあるために,共有物分割という形で分割をしてしまったときに,残りの財産の遺産分割が困難になってしまうという側面があるのではないかということで,この部会資料では,なかなか難しいところがあるとしていますが,いかがでしょうかというところでございます。 ○山野目部会長 お続けになることがあれば,お願いします。 ○沖野委員 いえ,どのくらいの問題点なのかということが,ちょっと実感がまだ湧かないものですから,もう少し考えさせていただきたいと思います。 ○佐久間幹事 すみません,先ほどの発言のときに,現在の議論の範囲を勘違いしておりました。5ページの(3)は入っておるんですね。入っていないんでしょうか。入っていなかったら,今は発言しません。 ○山野目部会長 入っています。 ○佐久間幹事 私は別の案の方がいいと考えることを先ほど申しましたが,それはちょっと置いておいて,原案を前提とした場合に,3のほかに,ここまでの議論で出てまいりましたところでいえば,処分に関する同意調達も多分,例外になっていたのではないかと思うんです,共有物の。同意調達の大方は,通常共有と遺産共有,一緒に並べてしましょうねということだったんですが,処分関係は確か例外になっていたところ,処分に関する同意調達の例外も,ここはやはり認めないと,処分できない,動かないということになります。それもこの3の売渡請求と並んで入っているのかな。「等」となっておりますから,入っているのかな。よく読み飛ばすので,入っていたらごめんなさいと先に言っておいて,入っていなかったら入れてくださいという意見です。 ○山野目部会長 趣旨はおっしゃるとおりです。通常共有に移行したときに,この部会で別途検討している通常共有についての新しいメニュー,ツールは,ここに適用がありますということであり,代表例として売渡請求を挙げているということでございます。 ○蓑毛幹事 日弁連のワーキンググループでの議論の状況は,先ほど中村委員から御説明したとおりですが,遺産分割の期間制限は難しい問題だと思います。   所有者不明土地問題を解決するために,新しい制度を作る必要性はあるけれども,今まで積み重なってきた相続に関する判例理論や法律の解釈を,どこまで変えていくのか,どこをどのような仕組みにするのがいいのか,私自身考えあぐねているところです。   特別受益及び寄与分の主張について一定の期間制限を設けた場合に,その期間を過ぎたときの相続人の共有は,遺産共有なのか,通常共有なのか。そこをどう考えるかで,この効果の箇所で,甲案と乙案に分かれるのだと思います。特別受益及び寄与分の主張が出来ないとしても,遺産分割の場合には,同じ家族の間の解決ということで,906条という分割の基準があり,また,地裁ではなく家裁で行う,調査官の関与等もあるということに,意味があるのではないかと思っていまして,一定の期間が過ぎると直ちに乙案になって,全て地裁で共有物分割で処理するということには,若干の違和感を感じているところです。   乙案の場合でも,共有物分割手続の中で,相続人間の遺産の分割という趣旨に沿った,柔軟で適切な処理がされるということであればいいのですが,それも難しいと思いますので,甲案がよいと思います。ただし佐久間先生がおっしゃったように,では,遺産共有なのに,なぜ共有物分割請求ができる場合があるのかというところで,一つ,越えなければいけないハードルがあります。  共有物分割の手続を行うべきなのは,たとえば,5ページに記載されているような,土地の所有者であるAが亡くなって,BとCがその相続人であり,その遺産分割が行われないうちに,B及びCが亡くなって,D及びEがBの相続人,F及びGがCの相続人であるというケースが考えられると思います。この場合,Aの土地の共有状態を解消するために,三つの遺産分割を行って,共有状態を順々に解決していくのは困難なので,このような場合には,例外的に,個別の財産について共有物分割を認めることとし,DないしGが,A名義の土地の共有状態の解消を,1回の共有物分割手続で行えるようにする。所有者不明土地問題の解決を図るためにも,このような仕組みを例外的に認めるのがよいと考えます。   今の提案では,甲案は,遺産分割もできるし,共有分割請求もできるというふうになっていますので,もう少し工夫が必要だと思います。 ○畑幹事 今の遺産分割の分割方法ですが,定見があるということではないのですが,甲案のように,遺産分割と共有物分割,両方あり得るというのは,ちょっと手続的には気持ちが悪いという感じはあります。取り分け,全体を分ける話と一部を分ける話が競合したとき,どうなるかという問題があり,4ページの(2)のところに,その辺りの話が書いてあります。   これは,恐らくは,全体で分けたいという人がいる場合には,そちらの方向に吸収するという方向で,大筋ではそれでよさそうなのですが,ただ,偶然の順序,どちらが先かによって,共有物分割で全部を分けることになったり,遺産分割で全部を分けることになったりして,そうすると,先ほどから議論になっていますが,その二つは全く同じかという問題が残っているように思います。   地裁と家裁で違うというのもそうですし,管轄だって,別に一緒ではないですから,共有物分割でいく場合と遺産分割でいく場合が両方あるというのは,手続的には少し,もう少し整理すべき点が残っているという感じはいたします。 ○山野目部会長 手続的な観点の御感触,よく理解することができました。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   遺産分割の期間制限に関しては,まさに今,遺産分割協議をやっている状態であるとか,あるいは,これから相続が発生する場面を考えると,かなり難しい問題だなと思います。   ただその一方で,今,所有者不明土地問題で起きている話というのは,100年くらい前から登記が変わっていなくて,おそらく数次相続されているんだけれどもそれが反映されていない,そもそも遺産としても認識されていない,といった土地が,いざ使おうかというときに問題になるという話です。   そう考えると,正直,そういう状態にある土地についてまで,遺産共有されているという前提でずっと見なければいけないというのは,ちょっとやはり,やりにくいというところはあるのではないかと思っております。法制的にどういう整理ができるのか分からないのですが,これから発生する相続に関する問題への対応と,既に起きている問題に対する対応を,もし切り分けて考えることができるのであれば,もう少しシンプルに整理できるのではないかと思いますので,一応意見として申し上げます。 ○山田委員 2種類のことを申し上げたいと思います。   一つ目は,相続法の様々な現存のルールに対して,どういう方法で,どの程度手直しを加えるか,そのときにどう説明していくかという話が今日,最初の方から出てきております。そこについての私の考え方は,次のようなものです。   私自身がそうだったということであるんですが,相続法から考える上では,相続人,複数いる相続人の場合が多いですが,その間の利害調整,そして,被相続人や相続人の債権者や債務者,取引をした人,それらの利害をどういうふうに調整していくかということに知恵を絞ってきたんだろうと思います。一番近い時期の相続法改正も,そういう趣旨のものだと私は思います。   ただ,ここで,その外に大きな不利益が生じているのではないかと思います。要するに,相続について,今申し上げたような関係者間で,できるだけよいように解決しようとしてきたということです。それは,遺産分割の期間を制限しないというのもその一つだと思うんですが,そうしていると,結局,相続人の誰も相続したと知らない不動産がどこかにあるということが,また世代を,相続を何段階も繰り返して続けていくと,そういうのが残ってしまっているということです。   それは,プラスにも意味がないということは大体分かりますが,マイナスにも意味がないんだということであれば,今の相続法のままで良いと思うんですが,やはりそれは,様々なところに損失,社会的なというんでしょうかね,公共の面での,公共工事,公共事業というだけではなくて,一般的な社会一般の損失を生じさせていると思います。そこに気が付いて,問題にして動き始めたのが,最近の動きであり、この審議会だったり,別の国土交通省の審議会だったりということだろうと私は思います。  したがって,そこの問題を解決するために,相続法が関係者だけで,権利義務の当事者だけの世界で最適の解を目指していたのとは,やはり違う発想を今回取り入れようとしているんだということを,社会に向けて,そして,様々な法律の実務家,相続を得意としている実務家の人たちにも説明をしていくということが必要なのではないかなと思いました。そういうふうに私は思っております。   二つ目は,ちょっと今の話と,うまくつながらないかもしれません。矛盾もしないと思うんですが,今,藤野さんのおっしゃったことと,ちょっと関わると思います。   今,ここにいらっしゃる皆さんも含めて,実は近親の方が亡くなって,相続人になったときに,その相続財産の中に,どこかの山林の共有持分があるかもしれないということを知らないまま,期限を経過しているということはあるかもしれないし,世の中に一般的に,たくさんあるのではないかと思います。その問題をどうするかということを考える際に,ここから先は,藤野さんがおっしゃったことと少し局面が違うかもしれませんが,今後そういうものを,これ以上複雑にしないということが求められるんだと思います。   今分かっている財産について,きちんと遺産分割をして,きちんとそれを表現する登記をしようというのが,いろいろな方法でやっていますが,それとは別に,そうではない,ぼんやりとなってしまっているものについて,今後,何かの機会で,所有者,所有関係をはっきりさせようとしたときに,どれぐらいのコストでそれを明らかにできるかということも考えたらいいと思います。   諮問事項にちょっと,今の申し上げたことがぴたっと入っているかどうか,よく分からないんですが,関連することだろうと思います。そうすると,今日の前の方の議論でありましたけれども,分割擬制というのはかなり強力であり,副作用も大きく,であるがゆえに,評判もよくないのかもしれませんが,有力なツールになるのではないかなと思います。こういうふうに分割しましたということが擬制されてしまうということです。   どうも,今日御提案いただいている,具体的相続分の主張を許さなくするというのでは,特に複数の財産があったときに,誰にどういうふうに帰属しているかというのは,基礎とする相続分は法定相続分で,外部から容易に知ることができるものの,権利のやり取りが様々あり得るため,外部からはよく分からないということになると思います。   そうすると,ずっとほったらかしになっているというものを分割擬制で,法定相続分で,共有持分の分母も百の位になったり,千の位になったりしていくのかもしれませんが,その人たちがどういうふうに遺産分割したかということについての探索を,一定程度のところでその努力をやめて,現在の法律関係はこうだというふうに言えるようになるというのは,分割擬制にとって,大きなメリットだなと思います。   ただ,総合考慮して考えないといけないので,今のメリットだけで強く,分割擬制を維持してほしいということではないのですが,前回の資料と比べて,今回の資料になったことについての私の意見でございます。 ○脇村関係官 1点だけよろしいですか。   すみません,ではちょっと,部会資料の若干の敷えんだけさせていただきたいと思うのですが,2ページの(2)で甲案,乙案,特に乙案を出させていただいているのですけれども,前回,みなしという表現にしていたのをやめた趣旨は,そのようにすると,何かそこに処分行為が入ったということになりそうですが何かその効果がよく分かりにくいなというのがあったからであります。一方で,もともと,やろうとしていたこと,つまり共有,法定相続分の共有持分状態になっているんですよということ自体を否定するつもりがあったわけではなくて,今でも判例を前提にしますと,皆さん共有持分を持っていて,ただそれが,将来修正される可能性があるという状態になっているのを,その修正可能性を取っ払ってしまえば,もともとの持分の状態が出てくるはずですので,別にみなしと言わなくても,やろうとしたことはできるのではないかなということがあったので,表現したものでございます。   みなしと書くと,何か処分行為があったような感じがすることが,どんな影響があるのか,自分でも分かりにくくなったので,やりたかったことは,浮動状態をなくして,共有持分で固定しますよということだけ言えればいいんだったら,この表現でもいいかなということで,やらせていただいていたものでございます。   みなしとすることでまずい,あるいは,みなしの方がやはりいいんだということであれば,教えていただきたいと思うんですが,ただ,その関係でいくと,可分債権だけは確実に効果が違ってくる。みなしとすると,正に分割されますので,そこだけは絶対違ってくるので,(注)で出していますので,そこについては少なくとも,是非御意見いただきたいという趣旨でございます。   もちろん,私の理解が間違えているかもしれません,是非御意見いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○松尾幹事 私が十分に理解していないために間違っているかもしれませんけれども,部会資料13の1〜2頁で遺産分割の促進について提案されている内容は,基本的に,具体的相続分を主張しないと不利益を受ける相続人のインセンティブに訴えて,一定の期間内に遺産分割の合意,あるいは遺産分割の申立てをすることを促すという構造になっていると思います。   そういう前提状況がある場合には,この制度は相当の効果を発揮と思われますが,具体的相続分を主張するしないで利益・不利益は生じないけれども,遺産をどういうふうに分けるのかについて争いがある相続人であるとか,あるいは法定相続分でよいと考えている当事者にとっても効果を持ち得るかということを考えますと,やはり一定期間の経過によって何らかの効果を持たせる意味で,最初に佐久間委員がおっしゃいましたように,乙案あるいは更に進んで分割擬制になるというところまでいく必要があるのかどうか,共同相続人のインセンティブをどのように把握すべきかが気になりました。   そのこととの関係で,できるだけ遺産分割を促進し,相続登記を促進するツールとして,もう一つの期間制限,すなわち,部会資料16の5ページで,相続人が誰であるかということについての法定相続分での登記の方に期間制限を設けて,そちらの方からできるだけ登記を促進しようという提案もされていますが,相続登記の促進という観点からは何れが重要か,両者の関係がどうなるかが,関心の引かれるところです。   これらを二つ併せて制度化するということが前提になっているとも思われますが,相続登記を促進するという制度目的に照らして,特に今回提案されている,一定の期間内に遺産分割の合意または申立てをしないと具体的相続分を主張できないというサンクションの効果については,再度確認する必要があると感じました。 ○山野目部会長 承りました。   ほかにいかがでしょうか。   部会資料13の後ろの方に用意されている3の期間の長さの問題と,4のその他の問題も含めての御議論をお願いするということをしてよろしいでしょうか。   では,こちらも含めて,前の方と関連しているというか,あるいは,前の方の議論が前提になってのお尋ねという側面もございますから,1と2の部分についての御議論を続けていただくことを妨げませんが,3及び4の部分についての御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 単純に賛成だというのでもいいんですよね。   3の期間については,私は,どれという定見はないんですけれども,数次相続を可及的に防ぐということからすると,10年を超えることはないようにすべきだと考えていることだけ申し上げたいと思います。   それで,4の細かいところについて,幾つか意見がございまして,一つは取下げの制限は,これはしないと駄目だろうと思っております。   それから,相続の放棄について,これは前回からちょっとニュアンスは変わったのか,変わっていないのか,よく分からないですが,前回は何か,放棄をさせないんだということも考えられるということがはっきり書かれていたのに対し,今回は書かれていないので,放棄はすることができるということでよろしいですね,ということをまず確認させていただきたいのと,その上で,ここに書かれている金銭的な調整にとどめるんだということは,必要なのではないかと思います。   というのは,今回このような期間制限というものを設ける趣旨は,持分だけかもしれませんけれども,権利関係について決めを打つということであるはずですので,権利関係についてもう一度手続をやり直さなければいけないなんていうことになると,効果が大きく減殺されますので,これは,そのようにすべきではないかと思っております。   そのほかに,この資料に書かれていないこととして,今後御検討いただきたいのが,効果が今回の御提案のようになろうとも,あるいは分割擬制になろうとも,その効果を認めるについての例外を考える必要はないかということでございます。   私が今ぱっと思い付くのは,遺産分割協議をしました。成り立ちました。その後に期間である5年とか10年を超えました。ところがさらにその後に,相続人の一人が遺産分割協議に無効原因があったということに気付いて,その無効の主張がなお,例えば取消しの期間制限なども含めて可能であるという場合に,無効の主張がされました。その主張が認められるべき場合について,遺産分割協議は無効になったんだけれども,遺産分割の期間が過ぎているので,もう再度の遺産分割は不可能ですというか,許しませんという,それはちょっと好ましくないのではないかということです。   ただ,この場合は,その無効の後,いつまでも,もう一度,再度の遺産分割を許すことでいいのかどうかを併せて考えなければいけないと思っています。   もう一つは,今と違いまして,遺産分割の協議が成り立たないまま期限が間近に迫ったときを典型として,相続人の1人が例えば遺産分割の申立てを家庭裁判所にしようとしたところ,ほかの相続人が不正に妨げた。その結果,期間が経過してしまいましたというときに,期間の経過の効果を認めることは,ちょっとこれは正義にかなわないと思います。そこで,それを例外とすべきだというふうに強く主張するわけではありませんが,こういったことを始めとして,例外とすべき場合がないかを慎重に検討する必要があるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 遺産分割協議については,錯誤取消しがあり得るということを述べる判例もございますし,例外がないかどうか点検してほしいというお話はごもっともですから,検討を続けることにいたします。   相続の放棄について,資料の趣旨を確認いただいたことは,そのとおりではないかと感じます。その余の点も,ありがとうございました。 ○蓑毛幹事 効果の点で,質問があるのですが,今回の甲案,乙案,いずれを採ったとしても,5ページにある①のケースで,Dは,E,F及びGに対して,共有物分割請求を行うことができるのですが,これは,A,B,Cの相続について,いずれも一定期間が経過していることが前提となっています。   そこで質問なのですが,このような設例と異なり,多数の当事者が存在しているけれども,そのうち一部の当事者については,期間制限が徒過していない場合は,どのような取扱いになるのでしょう。 ○脇村関係官 お答えさせていただきますと,今先生がおっしゃったケースですと,この部会資料を前提にしますと,一部については,ある意味,今でいう遺産共有が解消されていて,一部は残っているケースですので,例の判例といいますか,ちょっと前ですか,出ていた共有と遺産共有が併存している判例の処理が,そのケースは残ってくるんだろうなという認識です。 ○蓑毛幹事 部会資料の3ページに書いてある,最判平成25年11月29日でしょうか。   今回提案された甲案または乙案と,この判例をうまく組み合わせることにより,Dとしては,1回の手続で共有状態を解消できるのでしょうか。それとも,今回提案された制度と平成25年最判を組み合わせてできるのは,通常共有と遺産共有との切り離しだけで,その後,遺産共有部分の解消は別途遺産分割で行う必要があるのか。できれば,まとめて1回で出来ればいいと思うのですが,今回の制度と平成25年最判の組合せで,1回でできるのか,やはり2回に分けなければいけないのかが,ちょっとよく分からないなと思ったものですから。 ○脇村関係官 結論的には,共有物分割の判決内容にもよると思いますけれども,2回に分けざるを得ないだろうと思います。   期間を経過したものについては,これはもう共有,所有としては共有物と同じように扱うことによって,一括してできるんですけれども,1人について,遺産共有がどうしても残っているケースについては,それも期間経過前に,共有物分割の中で完全に分割するのは,多分できないんだろうと思っていますので,共有者,不動産でいえば,今の判例と同じように,不動産について,先に遺産分割をやるのか,共有でやるのかは別にして,先に共有物分割やるのであれば,共有の中で割って,そこで遺産共有の人に与えたものは,そちらで分けるというのは,処理としては残らざるを得ないのかなとは思っています。   本当は,この処理がもっときれいにできれば,いいんですけれども,なかなかやはり難しくて,そうなのかなというふうに,今考えているところです。 ○畑幹事 先ほどの共有物分割訴訟と遺産分割審判が同じかどうかということについて,もう1点だけ付け加えておきたいのですが,共有物分割訴訟については恐らく,対象財産ごとに一つの請求と観念していると思います。そうすると,遺産全体を対象にする場合は,全部の財産を一つ一つ挙げて,一々請求の趣旨に,それを全部掲げるということになり,それが現実的かどうかという問題もあるように思いました。   不動産だけを念頭に置けば,余り問題ないようにも思うのですが,動産とか債権とか,いろいろあるとすれば,結構煩瑣な問題を生じ得るという気がいたします。 ○市川委員 期間経過後に相続放棄があったときの価額の支払請求に関し,このような是正措置を設けることがふさわしいかどうかということについては,特に意見はありません。もっとも,このような規律を設ける場合に,参考になる民法の910条は,特に具体的な要件ですとか手続を定めているものではありませんので,実際に同様の規律を設けるのであれば,具体的に,どのような要件で,どのような手続でできることになるのかということについて,整理をお願いしたいと思います。 ○水津幹事 遺産分割に関する期間制限について,提案では,期間の長さはともかく,起算点は,全て相続開始の時からとされています。   これは,遺産分割が禁止されているときであっても,相続開始の時から起算されるという御趣旨でしょうか。そうだとしますと,遺産分割が禁止されているときは,期間の長さの設定の仕方によっては,共同相続人は,遺産分割の禁止がなくなると同時に,あるいは,遺産分割が禁止されている間に,具体的相続分の主張をすることができなくなるケースも出てくる気がします。 ○脇村関係官 分割禁止等の関係については,もう一度整理しないといけないと思っています。その上で,考えていることだけお話しさせていただくと,10年という期間を,仮に設定した場合に,分割禁止についても期間を10年と同じようにそろえるというのが,一つ方法としてあるのかなと思います。もちろん,そうしますと,終着点が一緒になりますが,私のイメージかもしれませんけれども,分割禁止のときであっても,申立て等はその前からできる,あるいは,実際上の話合いはできると思っておりまして,そうしますと,遺産分割禁止期間の10年がたつ前に,話合いを当然するというふうな仕組みを前提にした上で,申立ても,話し合いが付かないんだったら,遺産分割の申立てを10年が経過する前にするというようなことにすれば,そろっても大丈夫ではないかなという気もするのですが,ただ,その辺は少し,そもそも遺産分割禁止の期間も,ちょっと教科書を読んでも,私はよく分からないところもありましたので,少しまた整理をして,皆様に御意見を伺う形にしたいとは思っております。 ○山野目部会長 水津幹事,ひとまずよろしいですか。   ほかにいかがでしょうか。   そうしましたら,部会資料13について,本日御議論を頂きました。今日の御議論を踏まえて,次にこの部会として進めなければならない作業については,本日の多くの委員,幹事の御発言の中にも,その御示唆が含まれていましたけれども,次のような点に注意をしながら作業を進めるということになるであろうと考えます。   すなわち,特別受益と寄与分というものは,それ自体は民法の法文で表現されている法制的な制度装置であるにすぎないかもしれませんけれども,それぞれの背景には,関係する人の人生が刻まれていて,被相続人を取り囲む親族ないし,その共同体の歴史があるといってもよいものであります。そういうものの処理を従前は,司法が国民に対して差し上げるサービスとして,審判や調停という柔らかい手続を用意し,家庭裁判所調査官が事情を聴き取るといったような丁寧な手順をとって進めてきました。それを今般,引き続きそういうことを行うにしても,ある期間,タイムリミットを設けて,終わりにするということをしてよいかということは,国民の意識を問わなければなりません。   これと対比して検討される政策的観点は,結局のところ,そのきっかけが,1947年5月3日以後に開始した,そして,今般の新法施行までに生ずる多くの共同相続に関わって,土地その他の財貨の帰属が不安定になるという問題に対する施策として提案されていることでありますが,これらの政策的効果や理念の相克が適切に説明されるかということについて,問題点をきちんと整理し,国民の意見を問わなければなりません。   そのための問い掛けは,中間試案に盛り込むということになりますが,それを適切な,よく整理された問い掛けにし,この部会の責任として,それをしていかなければなりません。そのような作業を続けてまいりますから,是非,委員,幹事に引き続き御協力を賜りたいと存じます。   なお,この方向で,仮に成案を得る場合には,さらに,経過措置について,法制的な説明の整合性の点でも,また政策的効果の確保という点でも,相当複雑な問題を検討しなければいけないということも覚悟しておかなければいけなくて,藤野委員と山田委員の御発言の一部にその示唆がありましたし,蓑毛幹事が新法施行後のことでおっしゃったことは,実は新法施行の前後にまたがって起きたときには,さらに,同様又はそれ以上に深刻な形で問われる事態となります。経過措置の仕組み方ということについても,ですから通常の法制以上に重い課題であるということを自覚しておく必要があるのではないかと考えます。   特段の御発言がなければ,ここで休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開いたします。   議事の内容に入ります前に,新しく関係官として出席することになった方が,もう1人いらっしゃいますから,御紹介申し上げます。法務省民事局の渡部局付が,本日から関係官として出席してもらえることになりました。   自己紹介をお願いいたします。 ○渡部関係官 すみません,局付の渡部と申します。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   それでは,内容に入ります。   部会資料14をお取り上げいただきます。「財産管理制度の見直し(相続財産管理制度等)」を審議事項といたします。   この部会資料14の,まずは第1及び第2の部分につきまして,事務当局から説明を差し上げます。 ○宮﨑関係官 関係官の宮﨑から,資料の御説明を致します。   部会資料14は,財産管理制度の見直しということで,相続財産管理制度を中心に取り上げています。   まず,1ページ目から御説明します。   第1は,現行の民法918条第2項の相続財産管理の制度を見直し,相続財産の帰属が流動的である間,つまり単独の相続人による相続の承認がされるか,共同相続人による遺産分割がされるか,相続人のあることが不分明な場合に,清算のための相続財産管理人が選任されるまで,管理のための相続財産管理人の選任などを命じることができるようにしてはどうかというものです。   一読目のこの部会の際にも,この論点は取り上げていますが,その際には,現行の相続財産管理人制度について整理をすること自体については異論がなかったように思いますので,より検討を深めたというものになります。   補足説明について,ちょっと御説明しますけれども,補足説明の中では,具体例を四つほど挙げておりますが,部会資料2ページ目の方では,そのうち三つを記載しております。   例1といいますのは,相続人が遠方に居住しているなどのために管理ができないために,相続財産管理人の選任を申し立てるケースでして,所有者不明土地問題でよく取り上げられるような一場面をイメージしております。   例2-1と例2-2というのは,いずれも被相続人に対して権利を有していた者が,権利行使のために財産管理人の選任を申し立てたいと考えているようなケースです。   これらは,この二読目で新たに取り上げている例示ということになりますが,現状ですと,被相続人に対する権利者が権利を行使する直前で被相続人が死亡した場合には,まず最初に第一順位者の熟慮期間が始まりまして,その期間内に相続の放棄があると,相続人が入れ替わり,また第二次順位者の熟慮期間が始まるといったような形で,なかなか権利者にとって,権利を実現するまでに時間が掛かるといった事態が生じ得ますので,そういった部分を円滑化するためにも,相続財産管理の制度を活用できないかというものです。   例2-1は,時効取得者が不動産登記手続を求めるケース,例2-2は,金銭債権者がその回収のために訴訟を起こして,最終的に相続財産の強制執行をしようとするケースです。   特に例2-2のようなマイナスの相続財産との関係では,相続債務が相続財産管理人による管理の対象になるのかといった点や,相続財産のみならず,固有財産に対する強制執行もできるようになるのかといったような点が問題になるのかと思っております。   5ページ目では,例3というものを挙げておりますが,こちらは遺産分割の前提として,共同相続人のうち,ある財産の取得を希望する者が,その持分の売却防止のために財産管理制度を活用できないかというものです。   現行法ですと,家事事件手続法上の保全処分手続をとることが考えられますが,それだと,遺産分割の審判手続の申立てをしなければならなかったり,また,認容されるためのハードルも高いといったような点が負担としてあり得るところです。   こうした問題を回避するためには,相続人の管理処分権の制限も含めて,本見直しの検討を進めることも考えられるかと思っております。   また,その際には,現行法上の家事事件手続法200条の財産管理人との関係についても整理が必要である旨を(注1)で記載しております。また,清算を前提としない相続財産管理人の制度との関係については(注2)で,それぞれ記載しているというところであります。   続きまして,8ページ目から,第2ということで,相続財産管理人の法的地位,職務等について取り上げております。   現行の民法918条の相続財産管理人につきましては,明文はありませんが,相続人の法定代理人であるというふうに考えられております。   本見直しをするに当たっては,次順位の法定相続人が相続財産を承継した場合には,その管理人の行為の効果というのを次順位の法定相続人に帰属させる必要があると考えられます。そのような意味で,代理行為の本人である相続人といいますのは,相続の承認によって,被相続人の相続財産を承継する相続人や相続財産法人を指すことになると考えられますが,そんなふうに整理するに際しても,顕名をどのようにするのかですとか,訴訟手続における当事者本人の表示というのをどんなふうにするのかということについても検討していく必要があるのかなと思っておりますし,また,先ほどのように,管理処分権をもし制約するということにした場合については,それでも法定代理人という位置付けをすることはできるのかどうかということも問題になるのかなというふうに感じております。   一方,もし法定代理人として位置付けないとすれば,職務上の管理者として位置付けて,訴訟の上では,法定訴訟担当のような立場で関与していただくというふうなことも考えられるのかなと思っております。そうしたことを,この第2の中では記載してございます。御意見を賜れればと思います。 ○山野目部会長 ただいま説明を差し上げた第1の部分,それから第2の部分について,御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 何点かあるんですけれども,ちょっと,よろしいでしょうか。 ○山野目部会長 たくさんおっしゃってください。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。いつも断りもせずに,たくさん話しているんですけれども。  まず必要性については,ある程度共感するというんでしょうか,特に相続債権者が,相続が開始したことによって,被相続人の債権者が履行を得られない,なかなか得られないというような状況がある,これを何とかしなければいけないというのは,正にそうだと思っておりまして,そのことを前提といたしますと,何らかの手当てが必要なんだなとは思っております。   ただ,その上でなんですが,今の,これは説明の問題なのかもしれませんけれども,918条2項,926条2項,940条2項を列挙されまして,これらの言わばすき間というか,まだ規律が置かれていないところとして,相続人は承認はしたんだけれども,遺産共有状態であって,まだ,単独でというんでしょうか,各自がきちんと責任を持って,いろいろなことに当たる状況にないときに拡張しようということですよね。   それはそう,よく分かるんですけれども,しかし,918条は,一旦相続にはなっているけれども,承認するか放棄するか分かりませんねという場合についてで,相続人が本当の意味での権利者になっているというふうに認められない状況だと思うんですね。ですから,鍵括弧付きですけれども,「権利者がいない」状態とも見られる場合であり,かつ,期間としては,それほど長い期間ではありません。   926条は,限定承認の場合についてですから,相続財産が言わば独立財産化というか,特別財産化されて,それについて,誰か管理しないといけないですねという場合ですよね。   940条は,918条の言わば拡張型みたいなもので,相続を放棄した人がいました,次順位者が現れてくるまでに,またこれも結局,確定している権利者といえるような人がいませんねという状態だと思うんですね。   それに対して,今回御提案になっているのは,承認はしましたということですから,既に権利者にはなりましたという人たちを相手にすることになります。そういたしますと,その承認をした人たちの自由も守らなければいけませんし,責任も問わなければいけないという状況だと思うんです。   自由に介入をするという観点からいたしますと,今ざくっと利害関係人等の請求によって,かなりいろいろなことができるとされているんですけれども,この利害関係人を先ほどの918条とか926条,940条の場合と同じように考えるのは,余り適当ではない,また,選ばれた管理人が同じようなことができるのも適当ではないのではないか,というふうな気がいたします。   先ほど宮﨑さんの御説明で,権利者の権利の実現を図るんだというお話が,多分,言葉として出てきたと思うんですけれども,利害関係人として考えられるべきは,相続財産に対して,または相続人に対して,何らかの権利を持っている人が,保存の要求も含めて,それが基本になるべきだということをできれば確認をしていただきたいなと思うのと,その権利者が権利を実現すべき,要求できるべき状況にあるんだということをもって,必要な場合と考えるんだということにしていただきたいな,と思っているというのが1点です。   2点目は,(1),(2),(3)と,4ページまできて,5ページで(4)が挙がっているんですけれども,この(4)は,4ページまでのことと,随分状況が違うと思うんですね。(1)から(3)まで,特に(2)と(3)のところで例に挙がっているのは,これは第三者の,先ほど言いました,権利者がほかにいるときの権利者の利益を図るということであるのに対し,この(4)は,相続人間の利害調整がうまく付かないというときに,管理人を立てて,利害調整に当たらせたらどうですかという話でして,随分局面が違うと思うんです。   私が先ほど申し上げたような,権利者の権利の実現を図るという観点からは,ということでいえば,ここはそのような要請がないので,必ずしも管理人を立てることは好ましいとは思えないと。駄目だというつもりはありませんが,思えないということ及び,ここでの御説明は,財産を散逸させてはいけないんだというふうな基調で,どうも書かれているように見えるんですけれども,相続をして,時間がたって,遺産分割がなかなかできないで,財産が入らない。相続人は,なるべく早く,相続財産の一部でもいいから,自分の生活のために充てたい,というニーズがある場合だってあると思うんです。ところが,相続人の債権者は差押えをして,一部,言わば財産を切り離すことができるのに,相続人は任意の処分が余りできないようにしましょうという,そういう観点を入れるということが本当にいいのかどうかということを,私,疑問に,実は思っております。   それと,最後,正当化根拠が6ページに書かれているんですが,この(1)で書かれているところは,今のでいいますと,(2)と(3)の正当化根拠にはなっていると思うんですが,(4)の正当化根拠には多分なっていない。それは,事柄の性質が違うということを表しているんだと思いますけれども,(4)を導入するのであれば,この正当化根拠のところに,その必要性について,きちんと何かが記されるべきものではないかと思います。   長くなりまして,申し訳ありません。 ○山野目部会長 多岐にわたる御指摘を頂きました。   引き続き,いかがでしょうか。 ○中田委員 ただいまの佐久間幹事の御指摘と似たような問題意識を感じております。   相続人が承認して,相続人が確定した後も,遺産分割までの間は相続財産管理人を選任できる,選任すると,相続人の管理処分権が制限されて,管理人は職務上の当事者になると,こういうアイデアだと思うんですが,何となく,遺産共有状態を管理人の管理の下の,一種の合有のようなものにするというイメージかなというふうな印象を受けました。   ただ,遺産共有については戦後,909条ただし書が導入されることによって,共有説が一般化されてきた。しかし,それだけだと,うまくいかないこともあるから,何とか調整しないといけないという意見もあり,そこで先般の相続法改正の際に,906条の2という形で,一定の着地点を見いだしたのではないかと思います。   今般,またそれを,何というか,更に見直すということは,もちろん所有者不明土地の問題の解決というために,できることは,いろいろなことを検討するというのは,それは私も,是非そうあるべきだと思っているのですが,ただそのことと,相続法改正の一般的な結実,到達点との間で,ややフリクションが生じるのではないかなと思います。ですから,例えば,所有者不明土地の問題について,他の提案の拡充ができないだろうかということを考えております。   特に今回は,消極的な指摘もあり得るのだということをわざわざ書いておられまして,それについては両方バランスよく検討されていると思って,敬意を表しておりますけれども,何かほかの方法ないのだろうかと思います。たとえば,これは全くの思い付きなんですが,第一種財産分離をもう少し使いやすくするような形で対応できないかとか,もう少し,この問題に特化した解決方法ということも考えていいのではないかなという印象を受けました。 ○今川委員 我々も,現行法における相続財産の管理の規定を整備するということと,相続財産の帰属が流動的な間に,このような新たな相続財産管理制度を置くということは,基本的には賛成ですが,一つ確認です。これは相続財産管理人という位置付けなので,遺産全体の管理人ということですね。 ○宮﨑関係官 はい,それで。 ○今川委員 そうすると,相続人のあることが明らかでない場合に,清算を前提としない相続財産管理人を置いた場合に,この管理人の事務の終了はいつなのかが分かりません。   申立てをした利害関係人がいて,その利害を有する当該土地について,利害が解消されたというところで終了となると,スポット財産管理人とどこが違うのかというのも分かりません。そこが整理できているのであれば,御説明を頂きたいです。それから,第1の補足説明の7ページの5ですけれども,読み方が悪いのかもしれませんが,相続人のあることが明らかでない場合でも,この新しい制度を利用するというところの,括弧書きのところで,申立人が相続人を特定しないで相続財産管理を申し立てるというところです。申立人は探索をしないと,相続人のあることが明らかでないというのが分からないのではないかと思うのですが,ここが,どういう意味なのか分からなかったので,細かくなるかもしれませんが,御説明お願いしたいと思います。 ○大谷幹事 今の後ろの方からですが,一応ここでは,相続人があることが明らかでないことが最初は分かっていない前提で,918条のような相続財産管理を切れ目ないものとして考えたときに,相続が発生したということと,相続財産があるということ,それから必要があるということで,相続財産管理を始めることができるのではないかと考えられるところでございまして,その後,相続人を管理人の方で調べなければいけないんだとすれば,こういう形になりますかねということを書いております。   ただ,実際には,相続が発生したからといって,すぐに相続財産管理人の選任を申し立てるかどうかというのが分からないところがございますので,申立人の方で調べられることは調べておいた方が,コストは下げられるということになるかなという趣旨で書いております。   それから,以前の御審議を経まして,相続財産管理人というものを,物単位のものとして導入するのはなかなか難しいのではないかという御議論を頂きました。その上で相続財産管理人を,今の全体を管理するものだという位置付けは変えないで,なお,必要な場合には使えるようにするということを考えたところでございます。   スポット財産管理人と,今正におっしゃいました,それは土地管理人のこととはまた違うものとして,実際,財産管理制度であるとか清算制度で,いわゆるスポット運用がされているという話がございますけれども,運用として,実務の知恵として,一定の範囲で事務を絞るということがあり得るかもしれませんけれども,制度としては,財産の全体を管理をする,目録も全体について作るというようなことをイメージして書いておるところでございます。 ○潮見委員 皆さんがおっしゃったのと,よく似た印象を持っているんですけれども,基本的に,今回のこの部分の説明というのは,事実上,財産分離という制度を,実質的ですけれども,基礎に据えて,その財産管理人というものを選任して,その者に財産を管理させる。場合によれば,債務の可分債務で,共同相続で,当然分割されたものも含めて,弁済する権限まで与えるというところで,かなりドラスティックな,一つの大きな決断ではないかとは思います。だからこそ,先ほどの中田委員のお話ではありませんけれども,それ以外の,今までの相続制度,これとのフリクションのないような形で詰めていっていただきたいというのが私からのお願いです。   その上で,先ほどの(4),5ページから出てきている,この例は,ちょっと何とかならんのかという,もう少しエレガントな例にしていただきたいなとは思いますが,6ページの上から4行目辺りでしょうかね,相続財産管理人が選任された場合に,相続人の管理処分権を制限するという部分ですが,これはちょっと行きすぎではないかと思ってなりません。   基本的に,共同相続があって,財産についてはそれぞれが法定相続分に基づく権利というものは有しているという観点から,枠組みが作られているところ,そういう共有に関わる持分処分の自由を奪ってしまうということになるので,この影響は,かなり大きすぎるのではないのかなという感じがいたしました。   それから,もう1点,質問ですが,家事事件手続法第200条との関係で,よく分からなかったのは,もしこういう制度を入れた場合には,家事事件手続法第200条に基づいて,財産の管理者を選任するということは,認められないというか,許さないというふうな趣旨なのか,それとも,両者は併存するという趣旨なのか。200条に基づいて選任された遺産管理人と,今回導入しようとしている相続財産管理人との間で,権限とか内容が違いますから,どちらでも選べるという趣旨なのかということです。7ページに書かれている本文(注1)の中身がよく分かりませんでしたものですから,ちょっと御教示いただければと思います。   併せて,7ページの4のところの最後の部分で,遺産分割の審判事件を本案とする保全処分を存置する必要性は大きくないというのは,これは相続財産管理人の選任に限ってのことですよね。それ以外に,この前の相続法改正で,預貯金債権の仮分割の仮処分などということも導入されましたが,そういうことについては別に,これは切って捨てたわけではないという,そういう趣旨で理解しましたけれども,それでよろしいですねというところです。 ○大谷幹事 今,正に潮見委員から御指摘のあったように,少し書き方が,今の部分のところは,足りていないところがあるかもしれません。申し訳ございません。   元々この相続財産管理人制度を切れ目のないものにするということは,昔から,どうも立法提言としてはあるのですが,その意味について,なかなか我々も,前回までのところで,きちんと検討ができておらず,その後,調べたり,いろいろ考えていく中で,大きく二つのことが今まで言われてきたのだなということを理解を致しました。   その一つが,債務者が亡くなる前までであれば,債権者は簡単に権利行使ができたはずのところが,亡くなってしまうと突然,ものすごく難しくなってしまうということを何とかするための相続財産管理制度というのは作れないのかという方向,それから,もう一つが,遺産分割において,財産の処分を相続人の方がなさるということについて,有効な手立てがないという方向から,この段階で相続財産管理制度を作ってはどうかという立法提言,両方があるなと理解を致しました。   この際,切れ目のない相続財産管理制度を作るというときに,どこまでのものを念頭に置いたらよろしいでしょうかというところも,現時点で確たるものがあるというわけではございませんけれども,ただいま述べた二つについて御議論いただきたいということで,お示しをしたところでございます。   遺産分割の際に相続財産管理人を付けることができるとすれば,それは,先ほど家事事件手続法における遺産管理人との関係の御指摘もございましたけれども,この相続財産管理人を付けることができれば,遺産管理人の方は余り,要らなくなるとも考えられたので,そういうふうに書いておりますけれども,そもそも,この場面において,相続財産管理制度を使うのがいいかどうかということについては,御議論いただきたいと思って作成を致しました。 ○山野目部会長 潮見委員,よろしいですか,ひとまず。ひとまずですけれども。 ○潮見委員 はい。 ○道垣内委員 5ページの(4)について,理由がないのではないかという指摘が,佐久間さんから出たわけなんですが,結局,どうしてこれが正当化されるかについて事務当局のお考えはいかがなのでしょうか。 ○大谷幹事 一応,6ページの3の(1)の「さらに」のところに,遺産分割の促進も課題となっているけれども,今の保全制度だけでは,一部に所在不明者がいるというときに,迅速かつ適切に対応することができないということがあるということで,それを一応の正当化根拠として挙げておりますが,それが十分かどうかというのは,もちろん議論があろうかと思います。 ○道垣内委員 遺産分割の協議が仮にあるとしても,この例3のCというのは,持分を他人に売却するということを妨げられるんですか,一般論として。 ○大谷幹事 一般論として,妨げるのは困難だろうと,妨げられないと思います。 ○道垣内委員 妨げられないとするときに,これを妨げるという制度を入れようという話なのでしょうか。そして,仮にそうだとしたときに,10年たったら全部が法定相続分による共有にすればよいというふうなポリシーと,ここの法定相続分の部分を勝手に売らせないようにして,Bに自分が取得したいという希望をかなえさせてあげるというポリシーとが両立するのか,分かりません。そこにはコンフリクトはないんですかね。 ○脇村関係官 今の現行法の説明を先にさせていただきますと,民法上は当然これ,持分を移転させることできるのが前提になっているところでございますが,家事事件手続法によりますと,一定のケースについて,処分禁止の保全処分が出せるというふうになっているところでございます。   家事事件手続法を制定する際の議論としては,結局,調停を少なくとも申立てが必要ということになりましたが,ある人が,遺産分割で当該財産については取得する見込みがあるようなケースについては,それは処分を禁止することを認める,処分禁止の保全処分は昔からあったわけですけれども,それを法律の方で明文化したわけでございます。   そういった意味では,ここの5で書いていることについては,すみません,要件も何も書いていないので,当然に止められるというふうな前提のような記載になっている点が,多分問題なのかもしれませんが,現行法でも,一定の要件の下では売却を止めるシステムがあり,我々としては,今のシステムが,少なくとも今のシステムでやろうとしている場面について,今の申立ての方法だとやりづらいのではないか。例えば,必ず調停申立てをしないといけないということになると,相手方全員,特定をしないといけないとかということを書かせていただいておりますが,そういったことですとか,処分禁止の仮処分は,飽くまで保全処分を申立てした人との関係のみの相対的な効果でございますので,そういったことで本当にいいのかどうかについて,もう一度考えたいというところでございます。   ただ,その辺が,余り悩みとして出ていないのが問題なのかもしれませんが,少なくとも現行法でも,一定のケースございますので,そういったケースを広げるかどうか,広げないにしても,手続として何か工夫がないかということを,我々としては,今後とも考えていきたいですし,御意見いただきたいというのが,一応趣旨ではございます。すみません。 ○山野目部会長 道垣内委員,いかがですか。 ○道垣内委員 いや,よく分からないなというところですが。 ○山野目部会長 よく分からないということを承りました。垣内幹事,どうぞ。 ○垣内幹事 すみません,ありがとうございます。   今回の御提案の財産管理制度の拡充と申しますか,新設に関しましては,これを推し進めていった場合には,かなり相続という権利義務の承継のプロセスの性質を大きく変えていく部分というのがあるのかなと思われます。その点そのものについて,私自身は,特に定見を持っているということではないんですけれども,発言させていただきたいと思っておりますのは,若干技術的な話になるのかもしれませんが,資料ですと4ページのところで,これは債権者の権利行使との関係での管理制度の機能について検討されている箇所ですけれども,代理人構成,代理構成を採るか,それとも担当者構成を採るかということの関係で,4ページの下から三つ目の段落でしょうか,こうした問題やというところから始まる段落ですけれども,職務上の当事者に改めるということについて言及された上で,その場合には,固有財産に対する強制執行も可能になるという記述がされております。   この点,非常に難しい問題が,この辺り,絡んでいるかなというふうに理解をしておりまして,確かに担当者として,管理人が訴訟遂行等をして,受けた判決の効果というのは,一般的には被担当者に及ぶということになりますので,ここで書かれているような解釈というのも,あり得る解釈の一つということではあろうかなと思います。   ただ,一方で,この問題は,担当構成を採ったことによって初めて出てくる問題なのかというと,代理構成を採った場合でも,当事者として,正に判決を受けているという形になるわけですから,当事者として債務名義の効力も及ぶということで,その場合,責任財産の限定等が主文に掲げられていなければ,同じような解釈を採る可能性というのはあるのだろうということですから,代理構成を採るか担当構成を採るかにかかわらず,この点が一つ,悩ましい問題として存在するのかなというふうに理解をしております。   それから,仮に担当構成を採った場合に,この解釈が採られるということだといたしますと,これは前提としては,債務そのものは分割して承継されているということであろうかと思いますので,固有財産に対する強制執行は可能だとしても,その場合の限度額と申しますか,それは,分割して承継された債務の額の限度ということにならざるを得ないのではないかと考えますが,そうだとすると,担当構成を採った場合でも,誰が幾らの債務を負っているのかということを債務名義上で明確にしないと,まずいということになりそうで,仮にそうだとしますと,ここで担当構成を採ることの利点として想定されている,特定の要請を緩和するということが,実はこの解釈を前提にすると,達成されないということもあり得るのかなと思われまして,その辺りも,ここは両論あり得るところかと思いますけれども,なお検討していく必要があるのかなと感じております。 ○山野目部会長 よく分かりました。   引き続き,いかがでしょうか。   宇田川幹事,お願いします。 ○宇田川幹事 ありがとうございます。   これまで委員,幹事から御指摘があったところとも重なりますが,一つは,法定代理人構成を採ったとしても,また訴訟,職務担当の構成を採ったとしても,相続財産管理人が相続債権者からの訴訟に対応することが想定されています。資料3ページの下から2行目以下にも,相続人の手続保障や財産管理の関与の在り方について整理する必要があるなどと記載されていますが,制度として導入された場合に,相続の承認をした相続人ということで,権利者として主張している方との調整は,非常に難しくなるのではないかと考えております。具体的には,相続財産管理人が応訴を受けて和解をするときに,裁判所が権限外行為の許可の審理をするに当たって,例えば,相続財産管理人自身も,どこまで相続人と調整をすればいいのか,裁判所としても,どこまでの事情を考慮して,相当性を考慮すればいいのか,非常に悩ましい問題があるなと感じております。そういったところで,こちらに記載されている手続保障の整理も含めて,御議論いただければと考えているところでございます。   もう1点,先ほど今川委員からも御指摘があったところかと考えていますが,資料7ページの5の2段落目に,相続財産が清算されないまま塩漬けとなる事態が生じ得るとの記載がありますが,清算を前提としていない手続であることから,終了原因をどう考えるのか,民法918条などの相続財産管理の終了原因については,家事法201条10項で125条7項が準用されており,その他財産の管理を継続することが相当でなくなったときと規定されているところをどのように考えるのかが問題になると思います。   これまでの民法918条などの相続財産管理,特に相続の放棄・承認前のところでは,長期間管理が続くことが想定されていなかったことから,余り問題も顕在化していないのではないかとは思いますが,このように長期間管理が続くことが想定されるということになると,利害関係人が申し立てて,課題が終了したら管理が終了することがあり得るのかどうか。そういったところも含めて,この終了原因について,整理をしていただく必要があるのではないかと思いまして,この点も含めて,御議論いただければと考えております。 ○畑幹事 この制度について,手続的に,いろいろ難しい問題が生じるというのは,議論があったとおりかと思います。   そういう問題が生じることを,どの範囲でやることを想定したらいいのかというのが,ちょっとよく分からないのですが,1ページのゴシックのところだと,いつでもと書いてあるのですが,これはもう,要件は特になしで,相続財産管理人を選任し,場合によっては相続人の管理処分権を奪うということを想定しているのか,今の段階では具体的化されていないけれども,やはり何か,こういう場合にはというように想定する方向なのかというのを,ちょっとお伺いできればと思います。 ○大谷幹事 やはり土地が荒廃しているのを管理しなければいけないという場合と,その他の場合とではまた見るべき要素が違うのではないかというふうな御議論も頂きました。   確かに,基本的には第三者,債権者から権利行使を受ける相続人のために,財産の保存が必要な状況だということになるのかなとは思いますけれども,今の提案のような,ふわっとした形でいいのかというのは,やはり考える必要があるだろうと,別の要件を立てるということもあるのかもしれないなとは思っております。 ○山野目部会長 畑幹事,いかがですか。 ○畑幹事 どういう要件かということにも関係するのですが,その要件の定め方によっては,今までの議論にも出ておりますけれども,非常に射程が広いというか,所有者不明土地問題への対処をはるかに超えた射程を持っていて,端的に言えば,相続財産に土地が含まれていなくても,この制度が作動するかのようにも見えて,かなり思い切った話だなという印象は,手続法の話ではないのですが,持っております。   その意味では,しばらく前に中田委員がおっしゃったと思うのですが,ほかの制度で何か適切にカバーできれば,そちらの方が穏当かなという感じもしております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   部会資料5ページに掲げられている例の3というものが,先ほどから委員,幹事の間で度々話題になりまして,そもそもこの例3が,ほかとかなり性質が異なるものではないか,どのような趣旨で例3が挙げられているか,あるいは,例3について,狙おうとしている解決の中身が,そもそも妥当であるか等について,多くの疑問が寄せられたところでございます。それらは,一つ一つ繰り返しませんけれども,ごもっともな側面があるものではないかとも見えます。   反面,部会資料2ページの例の1,それから例の2,例の2がまた二つに分かれておりますけれども,これらは,いかがでしょうか。今般,この問題に取り組むに当たっての国民の側の関心といいますか,国民の側の需要ということを考えますと,確かに皆さん御指摘のとおり,例3が差し迫った問題かというと,そうとは感じられない反面において,現在も,そして,これからますます我が国の社会の状況を想定して考えたときに,自分の親族について,相続が開始して,あなたが相続人の1人であるというふうに言われたときに,自分は承認してもよろしいと考えるに至ったり,あるいは,結果的に単純承認が生じたりという状況のときに,自分1人が相続人であるかどうかは確信が持てない,あるいは,ほかにもいるかもしれないが,連絡が取れないといったような状態に置かれたときに,土地などの重要な財貨がある際,どのように振る舞ったらよいかということについて,少なくとも現在の918条を始めとする民法の規定が,必ずしも国民にとって分かりやすいものになっていないし,実際にも恐らく,解釈・運用の上で,どこかに隙間が生ずるものではないかという疑問を払拭し切ることができないという課題がありそうであると感じます。   それを具体的に表すものが,例の1と例の2なでありまして,これらについて,今後の我が国の社会の中で,その場に立たされた市民が,こういうふうな方途でそれらを打開していただくことが可能ですという道筋を,現行の制度や,それから,ここで,この部会で検討しているほかの制度等の手当てによって,こういうふうにすればよろしいですというガイドをあげることができれば,多くの委員,幹事が御指摘になったように,それを超えて無理なこと,理論的にも無理であったり,あるいは政策的な需要を超えた大振りのことをするという必要は全くないものでありますから,これらについてお考えがあったら,また改めてお伺いしたいというふうに感じますけれども,いかがでしょうか。   例1の方でいうと,土地が荒廃しているときに保存行為をしたい。これ,ここでいっている保存行為というものは,承認すれば共有者の1人になりますから,保存行為ができることは法的に当たり前であり,述べたいことは,もう少し組織的な,多少組織的な土地の管理を,最終的な費用の分担の問題も含めて,いささか自分1人で担わされることは困る状況であるという悩みでしょうし,例の2-1は,むしろ今度は,単純承認をしたその相続人ではなく,ほかの局外の第三者から見て権利行使をする際に困惑をするということに,答えをどういうふうに出していくかというお話ではないかと考えます。   例の2-2は,先ほどの垣内幹事のお話を伺うと,少し打開するこが難しい側面があるかもしれませんけれども,こういったものについて,こう考えたらどうかというような御意見もあったら,それもお出しいただければ有り難いと感ずるものでございます。 ○道垣内委員 こう考えたらどうかという前に,例の1なのですが,ある土地があって,所有者が遠方に住んでおり荒廃しているが,相続と全く無関係であるという場合と,これはどこが違うのでしょうか。 ○大谷幹事 これも前回から御議論いただいていますけれども,流動的な状態にある,遺産分割の前の遺産共有状態にあることから,放置されかねないのではないかという問題意識から,こういう場合は手当てが必要というふうに考えられるのではないかと思っております。 ○道垣内委員 例えば10人の共有であるという財産があって,いろいろなところにみんな住んでいますが,相続とは無関係,しかし荒廃している。そういった場合とはどこが違うんですか。 ○大谷幹事 最終的に,自分がそれを取るかどうかは分からないという意味での流動性があろうかと思いますので,普通に,最終的に共有持分を持っているというのとは,少し違うのかなというふうに考えております。 ○道垣内委員 この利害関係人というのは,共有者ないしは共有になる可能性がある人だけを指しているのですか。 ○大谷幹事 そういうわけではないと……。 ○道垣内委員 ではないんですよね。 ○大谷幹事 はい。利害関係人として,今解釈されているような方々と思っておりますが。 ○山野目部会長 ですけれども,典型的には,相続人の1人が,自分は承認に至ったけれども,ほかの相続人の有無,内容,それから,承認しようとしているか,放棄したかといったようなことについて,よく分からなくて,情報をうまく確保することができなくて困ったという状況に置かれるところが,道垣内委員がおっしゃった一般的な共有地の不明状況と少し景色が異なるかもしれない。そこで,もしここで特出しで考えることがあるとすれば,考えてみようということでしょう。   しかし,道垣内委員が示唆されたように,一部所在不明などの場面の共有地の制度の中で手当てができるということになれば,それで措置すればよいということでもありましょうから,それらの点について御意見を頂きたいというふうに望みます。   お願いします。 ○道垣内委員 相続が絡まないときにも同じ問題の解決が,この部会では求められているわけですよね。何人もの共有のもので,1人,2人は所在等がはっきりしているかもしれないけれども,はっきりしない人もいる。そのような土地が荒廃したり,あるいは危険な状態になっていたりしているという話で,同様の問題が,相続のプロセスの中で起こっているというときを,特に外に出して考える必要というのが,そもそもないのではないかと思うわけでありまして,そうなりますと,例の1について,何か意見はありますかと言われると,意見がなくて恐縮なんですが,ほかのところと同じようにすべきではないかという話になってしまうんですが。 ○山野目部会長 意見がないというよりも,共有地について考えられている一般的制度で処すべきだという御意見を頂きました。 ○潮見委員 半分は道垣内委員と同じなんですけれども,土地管理制度と同じルールで処理をしたらいい。そこは共通だと思うんですが,ここでは,保存行為に要する費用を相続財産に関する費用として,その財産から支弁するということまで踏み込んだルール設定をされようとしています。そこの部分に独自性があるということなのでしょうね。 ○佐久間幹事 ちょっと違うことを2点申し上げたいんですが。一つは,今の潮見先生がおっしゃった御質問で,土地管理制度だと費用を相続財産から出せないんですかね。何か,前回の話だと,いや,よく,余り分かりませんけれども,出せる,出す余地はある,あったのではないかなという気がするので,取りあえずそれだけ申し上げます。   もう1点は,例の1は土地管理制度で,これだったら基本的に解決ができるのかなと,何となく思います。例の2-2は,先ほどの垣内さんのおっしゃったことからすると,どっちみち解決は難しいのかなと思い,例の2-1は,今御提案のようなものを設けることによって,解決が容易になるのかなという気はするんですね。   例の2-2は相続財産管理人の制度を設けても解決できないというのはしょうがないんですけれども,実益のあるところといったらおかしいですけれども,例の2-1のような場合について制度を設けることが考えられるときに,どこまで広げるかということで,例1が含まれてはいけないということはないと思うんですね。   なぜ含まれてはいけないとは思わないかというと,土地管理制度でできる限度で,同じことをこちらの制度でもできますということになったって,多分,弊害はないとは思うので,よろしいのではないかと思うんです。けれども,一体,この例の2-1のような,これは解決するためにあった方がいいですよねというのが,どのぐらいあるのかというのが,私にはよく分かりません。それで,やってくださいと勝手に投げて,言いっ放しで申し訳ないんですけれども,そういったものを具体的に拾っていただくと,ああ,それはやらなければいけないな,制度が要るなというふうになるのか,その程度だったらこの制度は要らないのではないかとなるのか,どちらかが分かってくるのかなという気がします。 ○山野目部会長 例2-1について,可能であれば,実際的需要を確かめてほしいという御意見,御要望を頂きました。   ほかにいかがでしょうか。 ○道垣内委員 佐久間さんがおっしゃったように,例の1について,通常の共有土地ないし不動産に関する制度と,この制度が併存したって,それは構わないのではないかというのは,それは一見そうだとも言えるんですけれども,この制度自体の問題は,例の1なら例の1というのを救おうとすることによって,例えば,財産分離をしていないという状況において,相続債権者が固有債権者よりも当然に優先してというふうな効果を導いたり,あるいは,持分の処分というものが禁じられるという効果を導いたり,余りに付いてくる効果が多すぎるんだと思うんですね。   そうなると,一般論としては,佐久間さんのおっしゃるとおりなのですけれども,例の1については,少なくとも視野の外に置いて,ほかの制度でやるということにすることによって,相続財産管理というふうな制度を,適切な範囲に収めるということをすべきだろうというふうに私は思います。 ○蓑毛幹事 日弁連のワーキンググループの議論を少し紹介したいと思います。日弁連ワーキンググループでは,この財産管理制度の見直し,切れ目のない財産管理人を設けるということについては,総論としては,おおむね賛成という意見が多かったです。   ただし,もう既にたくさん意見が出てきているところでありますけれども,今回の提案のように,制度の射程を大きく広げ,また権限外許可も含めて,処分もできて,弁済もできてということになると,相続財産法人に近いものになるのではないか。そうすると,現行法との関係,952条以下の財産管理人との関係であるとか,財産分離との関係はどうなるのかという疑問があり,相続制度全体との整合性を保って,新たな制度を作る必要があるという意見があります。   部会資料2頁の例2について,確認させてください。ここでは,B,C,D,Eという法定相続人が想定されているのですが,この者らが,承認あるいは放棄をしてしまって,誰が具体的な相続人かが決まったけれども,まだ遺産分割はされていない。そういう意味では,相続財産の帰属は流動的というような状況になったら,どうなるのでしょうか。その場合には,具体的な相続人に決まった者を相手に訴訟をすればいいので,相続財産管理人の選任は取り消されることになるという理解でよろしいでしょうか。 ○宮﨑関係官 先ほど,畑幹事から御質問あった点とも関連するかもしれませんけれども,いつでもと書いてはいるんですけれども,やはり相続財産の保存を求めるような必要性というものが,もし必要,要件のような形で課すことも考えられるかなとも思っていまして,おっしゃるような,承認をしてしまった後のようなケースで,B,C,D,Eを被告として訴えることが何ら妨げないというふうな状況であれば,わざわざそれと別に,財産管理人を選任して,その人に対して訴えるとかというふうなことをやる必要性がないのではないかなと思いますので,そういうような場合については,あまりこの制度を使うということは想定しないというふうな整理も,一つあり得るかなとは思っております。 ○蓑毛幹事 そうすると,法定相続人が非常に大勢いたり,法定相続人の一部が不明で,不確定な状況が長期間継続するというような例外的なケースでは,相続財産管理人を選任して,訴訟を遂行させるということもあるのでしょうが,通常のケースで,例えば私がそういった立場になった場合には,裁判所には,「法定相続人が相続を承認するか放棄するか,ある程度の時間がたてば分かるので,それまで進行を止めて待って欲しい。」と言って,そのような流れになるのではないと思います。例2のようなケースが機能するのかなと,ちょっと疑問に思いました。 ○山野目部会長 訴訟代理人となった弁護士の先生が,蓑毛先生のように,うまい具合に動いていて,現場が収まっているのなら,もういいではないかとおっしゃったのが,佐久間幹事です。だけれども,何かそれとは異なる立法事実が認識されるのなら,引き続き考えましょうというお話もおっしゃっていただきましたから,佐久間幹事から御指摘いただいたことへの一つの回答を蓑毛幹事が,御自身の実務経験に即して,おっしゃっていただいたということではないでしょうか。   引き続き伺います。いかがでしょうか。   切れ目のない相続財産管理というものを考えたらどうですかという声が,時に出されたということを踏まえて,事務当局の方で今日,資料を用意してもらって,御議論をお願いしたものであります。それに対して,例の1や例の2-1,例の2-2に対して,ここでの審議の経過が記録されて,それなりのガイドが対社会的に示されているということであれば,それを踏まえて,今後の成案を得る方向に行くか,そうではない方向に行くかということを考えてまいるということでよろしいものであろうというふうに感じますけれども,第1と第2のところについてはよろしいですか。 ○中村委員 1点だけ言及させていただきます。   この制度を前向きに進めるとした場合に,相続財産管理人は,清算事務を行わないものとして,ここでは設定されているわけですけれども,そうすると,管理人にできることは,保存行為と,限界を見極めつつあともう少し踏み込んだもの程度ということになりますが,この管理人を引き受ける可能性のある日弁連のメンバーとしましては,何を守るための,どのような利益のための制度か,この相続財産管理人がやるべきことは何かというところをもう少し具体的に出していただけますと,どういう仕事をすればいいのかということのイメージを持つことができると思います。   一つ参考になりますのは,遺言執行者ですけれども,先般の改正で相続人の代理人という文言が削られまして,効果という面に着目した規定になった,それはよかったと思うんですけれども,従前から,遺言執行者は,個々の相続人のために動くのではなくて,亡くなった方の最終意思を公正に実行,実現するという目的を持って動いていたわけです。   そのように,この新制度は,何のために,誰のために,何を実現するためのものかということを明らかにしていただけたら,検討しやすいかと思いました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   今の点も含めて,また整理してもらうということでよろしいですか。 ○宮﨑関係官 はい,そうですね。検討します。 ○山野目部会長 ほかに,第1と第2の範囲でいかがですか。   よろしければ,部会資料14の後半に用意されております第3,法定相続人が相続放棄をした場合における放棄者の義務,それから,第4といたしまして,その他,この部分について,事務当局からの説明を差し上げます。 ○宮﨑関係官 それでは,10ページ目をお開きください。   第3では,法定相続人が相続放棄をした場合における放棄者の義務ということで,この940条1項に関する現行法の解釈を踏まえて,義務の内容・発生要件,終期の見直しの要否について取り上げてございます。   これについては,一読目の第4回の部会でも取り上げたところではありますが,その際には,相続による不利益を回避するというような相続放棄制度の趣旨からすれば,次順位者が現れるまで放棄者が管理を継続しなければならないということ自体への疑問ですとか,管理継続義務を免れる措置を与えることも検討すべきではないかとの意見がございました。   また,相続財産管理人の選任については,その選任の請求をするには予納金が必要になることがありますが,放棄者にその選任の請求義務を課すとしますと,放棄者が予納金を負担しなければならなくて,結局,そのような不利益を負担させられてしまうのではないかというような意見もありました。   そういった御意見も踏まえて考えてみますと,その趣旨などからすれば,この940条1項自体については,現在も管理継続義務というの自体は,負わせる必要がある場面もあるのではないかなとは思われますが,他方で,この規律からして,管理継続義務の内容等についての解釈が現行法上,必ずしも明らかでないので,適用場面での疑問が生ずることがあるのではないかというふうに考えるに至りました。   具体的には,まず内容や発生要件という面では,二つの考え方が,読み方ができるのではないかなと思われまして,まず一つ目の考え方としましては,民法第940条1項の義務というのが,918条1項の義務というのを引き続き負わせるものであるというふうに考える考え方があるのかと思われまして,その点を重視しますと,918条第1項と同様に,相続放棄をした者は,相続財産全体の価値を維持するという管理義務を負うことになるのかと思われます。   そのときには,相続放棄者の中では,土地の管理にはおよそ関与していなかった者もあるかと思いますが,そういう人についても,管理継続義務に基づいて,価値を維持しなくてはいけないということになる可能性もあるのかと思われます。   他方で,940条1項の管理継続義務というのを,一種の事務管理であるというふうに理解されていることに着目する考え方があるのかなと思われまして,その場合は,放棄者の中でも相続財産に属する財産の管理事務を始めた者のみが,その財産の価値を維持する管理継続義務を負うと解釈することも考えられるかと思われます。   ただ,そのような解釈をしますと,独居の被相続人が死亡したような場合で,財産を全く管理していないような場合には,誰も管理継続義務を負わなくなったりですとか,また一方で,意思に基づかないで管理を始めた人が,たまたま相続開始時に相続財産の管理をしていたということで,その人だけが管理継続義務を負うというような事態もあり得るのかなというふうに考えられます。   また,所有者不明土地問題に関連しましては,地方公共団体が放棄者に対して,相続財産に属する土地の管理を求めたいとするようなケースも見られますが,いずれの理解に立つにしましても,放棄者が他の相続人や相続債権者以外の第三者に対して,どのような場合にいかなる管理義務を負うかは,明らかでないということも指摘できようかと思います。   続きまして,12ページ目の真ん中の項ぐらいから,管理継続義務の終期ということを記載しておりますが,そこについても二つ,先ほどの考え方に応じて,二つの考え方があるのかなと思っていまして,前者の考え方によりますと,相続財産の管理を始めることができるようになるときという940条1項の終期の規定というのは,相続財産の全体を管理することができるようになるまでを意味しているのではないかというふうに理解されるのに対して,後者の事務管理のように考える考え方によりますと,相続財産といいますのは,管理を開始した個々の財産を指すというふうに考えられるのではないかなと思われます。   一方で,どちらの考え方を採るにしましても,相続財産を現に引き継いだときには,管理継続義務が終了するということにはなろうと思いますが,次順位者が引き継ぎに,そもそも応じてくれないような場合もあろうかと思いますし,そのような場合に,いつまで管理継続義務を負わなくてはいけないのかということは,必ずしも明らかでありません。   また,どの段階に至れば,管理を開始することができるまでに当たるのかというと,放棄者の情報提供によって相続財産の所在を把握したような場合で足りるのかどうかといったような点についても,解釈は必ずしも明らかでない面があります。   また,法定相続人の全員が相続の放棄をした場合の処理に関しましては,管理継続義務を負う放棄者というのが,いずれの考え方を採るにしても,最終的には出てきてしまうんですけれども,そのような人は,現行法の解釈ですと,どちらにせよ,民法952条の相続財産管理人が選任されて,その者が管理を始めることができるときまで,義務を免れないことになるということになるのではないかと考えられます。   そのような点を踏まえますと,見直しの方向性としては,義務の内容を明確化すること,それから発生要件について見直すこと,終期について見直すこと,それから,最後に触れました財産管理制度との関係ですと,財産管理人が選任された場合には,管理継続義務を終了させるということを明確化することというようなことが考えられようかと思います。   ただ,一方で,そんなふうにした場合には,事実上の,申立てをしない限りは管理継続義務は終了しないということになりますので,事実上の申立て義務を課すことになるとも考えられますし,一方で,この点は,管理継続義務の内容をどんなふうに考えるのかということとも関連しているのかなと思われまして,その内容について,放棄者に多大な負担を負わせないものというふうに考えるのであれば,そのように考えたとしても,財産管理の事実上の申立て義務を課すことにはならないとも考えられようかと思います。それが第3について,記載しているような内容でございます。   最後に,15ページ目の一番最後のところで,その他ということで,相続財産管理について,他に検討すべきこととして,どのようなものが考えられるかというのを記載してございますが,この点については,何かもしございましたら,御自由に御意見いただければというふうに思います。   私からの説明は以上です。御意見賜れればと思います。 ○山野目部会長 部会資料14の第3,法定相続人が相続放棄をした場合における放棄者の義務及び第4,その他についての説明を差し上げました。   これらについての御意見を伺います。いかがでしょうか。 ○中村委員 日弁連の議論では,この義務を,管理継続義務を更に進めるという方向については,消極的意見が多かったです。   その理由については,いろいろあるのですけれども,実務的に見て,相続放棄をする方というのは,やむを得ない事情があって放棄されますし,また規定上,相続人とならなかったものとみなされる人に管理継続義務を認めるという現行の規定自体に問題があるという実感を持っている弁護士が相当数いるということが一つ,それから,これは一般的な相続財産管理人の選任の方法で乗り切れるではないかという指摘もございました。  さらに,管理継続義務があるとするにしても,努力義務にとどめてはどうかという意見もありました。努力義務という定め方では意味がないというお考えもあるかもしれませんけれども,そのような規定があることによって,例えば地元自治体ですとか地域のコミュニティとの話合いの中で,努力義務を負っている人ということで,それなりの強めのお願いをしたりとかという,交渉の手掛かりにすることはできるのではないかという意見でした。   仮に,何らかの義務を認める方向でするのであれば,終期ははっきりさせるべきだろうという指摘もございました。 ○山野目部会長 いずれも弁護士の先生方の実際感覚に富んだ,ごもっともな御意見を頂いたというふうに感じます。 ○今川委員 我々も,この相続放棄者の管理継続義務の内容は,ある程度はっきりとした方がいいと思います。ただ,余り重いものであっては,やはり今,中村委員がおっしゃったとおり,放棄の趣旨と矛盾してきますので,管理継続義務を免れるような基準を検討すべきという意見があります。   それと,切れ目のない管理,相続財産の管理ということを考えると,952条の相続財産管理人に引き継いでいく方策も検討しなければいけないので,例えば,相続人全員が放棄をした場合には,放棄者に対して選任の申立てを義務付けた上で,負担を軽くする方法も検討してはどうかと思います。   その他にも入るんですが,952条の管理人の選任に限らず,管理報酬に見合う財産がある程度見込めるというときには,予納金なしで選任の申立てを認めるべきであると思いますし,また,そもそも管理人の報酬の財源というのは,別途考えるべきではないかと思います。財産からすぐに報酬が出ないような場合は,申立人の予納でもってあてがうというのではなくて,根本的にほかの方法も考えるべきではないかという意見も,我々の内部にあります。   それと,もう一つ,これもその他になるんですが,952条の相続財産管理人が選任されまして,相続財産法人の財産が残った場合は,国庫に帰属するというふうになっておりますが,この国庫への引き継ぎが,なかなかハードルが高くて,うまく引き継ぎができていない,なかなか受け取っていただけないような事情もあったという報告は,相続財産管理人になった司法書士から幾つか聞いております。   最近,財務省から引き継ぎに係る運用について文書も出たりして,改善の方向に向かっているようには見えるんですけれども,劇的に変わったという報告は受けていませんし,まだ調査もしていないので実情は分からないんですが,やはり相続財産管理人に過度の負担を負わせないようにしないと,管理がいつまでも続くということになり,報酬も,どこから出すのかという問題になりますので,そこはこの際,できる限りスムーズに相続財産管理人の事務が終了できるようなことも検討していただけたらと思います。 ○山野目部会長 司法書士会の方でも一所懸命,実際のことを考えていただいたということがよく分かるお話を頂きました。 ○佐久間幹事 放棄をした人の義務を拡張しようということは,全く思っていないということを申し上げた上で,実は全然分からないことがありまして。この940条1項は,自己の財産におけるのと同一の注意を持ってというふうにしているわけですよね。自分の感覚が世間からずれていることはよくあるので,間違っているだけなのかもしれませんけれども,自分のものでもないもの,自分のものでなくなったものを,自己の財産におけるのと同一の注意で管理しようと思ったら,多分,自腹は切らないでやるということになるのではないかという気がするんです。   つまり,一応財産が,集団的な財産があって,ここに価値があれば,その価値の範囲内で,しかも,余り大変なことをせずに管理できるのであれば,しましょうという程度のことが,自己の財産における同一の注意だったら,入ってきてもいいのではないかなという気が私はするんですが。ここでの確定した解釈とか,あるいは有力な解釈を存じませんので,いや,そうではないんだ,自腹を切ってでもやれということなんだというふうになると,全く意味はなくなるんですが,もし今申し上げたようなことだとすると,その範囲では,例えば,相続財産管理人の申立ての義務というんですかね,それをしてくださいというような要請をしてもよろしいのではないかとは,場合によっては思うんですが。そこも超えるというのであるとすると,第1段階の940条1項が正に適用されるという場面であってすら,なかなか難しい問題を抱えているのではないかと思います。ですから,これを拡張するというんですかね,最後,出口がなくなったときにどうするかとか。あるいは,実体化するというんでしょうか,最初に管理に手を出した人には,きちんとやりなさいという義務を明確に定めるというのは,厳しすぎるのではないかなという気が私はいたします。 ○潮見委員 私もよく分からないところがあるんですけれども,940条の1項自体の妥当性には,私は疑問を持っています。前から申し上げていることです。   自己の財産におけるのと同一の注意って,どこまでかなというところも,佐久間幹事のようなお考えも,私はあるとは思うんですけれども,ただ,相続財産管理人の選任までいくと,ここのところにも書かれていますように,やはり予納金は,まず自腹切って出さなければというところもあります。   実際に,予納金の部分で,どうしても金は出したくないというか,出せないというところが制約になっているという部分もあるので,ここでいろいろ方策を考えられているところに,特に11ページのところですけれども,こういう管理継続義務というものを認めていくという場合に,起草趣旨までも参照しながら,国家の経済上とか,あるいは社会経済上の利益の保護というところが出てきているので,こういうもので,相続放棄をするという人の自由を奪っていいのかなというのが気になるところです。   むしろ,いろいろな文脈で出ていますけれども,所有者不明土地というものがあって,その管理への対応ということを考えるのであれば,土地管理制度というものを充実させることによって対応すれば,今申し上げたような国家の経済上の利益だとか,あるいは社会経済上の利益というものに対する対応としては,必要で十分なことができるのではないかという感じもするわけでして,そうなると,こうした理由から,相続放棄をした人の事後の管理継続義務というものを広げたり,あるいは質を高めることになるのかどうか分かりませんけれども,あるいはコストを負担させたりというのは,どうもちょっと,私は賛成できないというところです。 ○佐久間幹事 もしかして,潮見さんが私の言ったことを,管理人の選任について自腹を切ってもやれというふうに受け取られたとしたら,私はそういうことは…… ○潮見委員 それはないでしょう。 ○佐久間幹事 そうではなくて,ああ,そうです。それと,もう一つ,ついでに申しますけれども,私,この資料を拝見して,すごく気になったのが,例えば14ページのところで,管理継続義務は相続人及び相続債権者に対する価値維持義務とあります。何で相続債権者のために義務を負わなければいけないのかというのが,私はものすごく疑問で,次の相続人に対する義務ですら,非常に疑問であるところ,今潮見さんがおっしゃった,社会に対するうんぬんとかとおっしゃいましたよね。それがつながっていく,より具体的に相続債権者と書いてある。これからどういう案を作っていくにせよ,この発想は,最初からやめるべきだというふうに思っています。 ○山野目部会長 前段でおっしゃったことは,佐久間幹事の御意見を別に誤解していないと思います。 ○佐久間幹事 それで結構です。 ○山野目部会長 予納金のない土地管理制度の手続の請求したらというアイデアを今川委員が明示的におっしゃって,佐久間幹事のお考えは,発展させていくと,そういうものに近付いていきますけれども,ただし,それはやや心配でもあります。潮見委員が心配なさったことが,恐らくそういうことであると考えますけれども,実務的にワークするかという問題があって,裁判所としては,それを引き受けてくれと求められても,必ずそういうものがあり得るということに,なかなかすぐいかないんであろうと想像しますから,そこは悩ましいというふうにみえます。   第4回会議の議論を受け継いで,今,議論をお願いしている途上であります。2点問題があるということ,課題があるということを確認のために申し上げますが,1点は,現在の940条の文言が無責任であると感じます。   ちまたでは,どういう都市伝説が流布しているかというと,相続放棄なんかしても責任免れるということにはならないよ,国が引き取ってもらうまでは管理を続けなくてはいけません,国はなかなか引き取ってもらえないですから,君分かったかというふうに,何か専門家っぽい人が述べると,次々それが引用されていって,何となく巷間,そういう理解が,いつの間にか,通俗的通説とでもよぶことになりましょうか,一般化してしまっていますけれども,本当に940条って,そういうものですかということは根本的な疑問があります。同条は,元々そういう曖昧な議論を助長しかねないような文言になっていて,注意義務の水準を選択して,注意しろという大上段の書き方をした上で,継続しろとまで書いていますから,何となくそういう誤解が生まれやすい素地が文理にあります。不明確な文言になっています。   実は,無責任であることはもう一つあって,空家等対策の推進に関する特別措置法に登場してくる管理者という概念ですが,市町村長から除却命令が受け,第一次的には君の負担でやりなさいといわれる人は,所有者等となっていて,所有者と管理者ですが,その管理者というものは相続放棄した人も含まれるかとか,一般的には含まれないけれども,たまたま親が死んだ前後に出入りしていた長男とか,あるいは二男とかだけ義務を負わされるか,といつた点は,曖昧な状況になっています。   民法の940条は,第1の課題として,誤解がないように文言をきちんと整え,国民に対し親切な規律に直さなければいけませんし,空家対策の推進に関する特別措置法の見直しは,カレンダーからいうと,その後になりますから,ここでの立法成果を受け,管理者の概念ももう少し明確にしてもらわなければ,やはり国民に対して,不誠実な規律を用意しているということになるであろうと考えます。   その上で,規律の中身の問題ですけれども,では,なるべく管理してくださいという方向で明確化するか,いや,そういう義務は免じてあげるという方向で,基本的には考えるかということも,また議論しなければいけないものでありますけれども,ここまで委員,幹事からお出しいただいている御意見の大勢は,何か重い義務を,相続放棄をした推定相続人であった人に課することは相当でないという御意見ではないかということも感じます。   これは,社会経済の大局を見れば,現代日本社会で様々な労苦と向き合っている現役世代に対して,親が死んだときの面倒くささを,さあ引き受けろというふうに,ぶん投げるのに等しいことになりかねませんから,そういうことはしてはならないという発想での御意見を多数頂いているものであります。   こういった課題にどう答えていったらいいかということについて,引き続き,委員,幹事から御意見を承ります。 ○道垣内委員 2点申し上げます。   1点は,佐久間さんがおっしゃった14ページの一番上の相続債権者に対する相続財産の価値維持義務であってというのは,これは,かなり問題のある叙述だろうと思います。相続債権者なんて,その人のためにきちんとやってあげるという筋合いにあるわけではありませんから。   次に,2点目なのですが,940条や918条を根拠にしながら,土地や建物の話をしていますが,これ逆なのではないかという気がするんですね。   相続財産として,ここに動産があるといったときに,放棄といって,投げて,その場を立ち去ればいいわけではない。それはわかります。預金だってそうかもしれない。しかし,それに対して,土地建物は立ち去ればいいんですよ,放棄した人は。所有権放棄ではなく,相続の放棄なのですから,自分の財産ではなく責任はない。そう私は思っており,これが,話は逆なのではないかなという気が私はします。 ○大谷幹事 我々としても,今の管理継続義務を更に重くすべきだと思っているわけではございません。適切な範囲で区切ることはできないかということで,いろいろ書いておりますけれども,相続債権者と書きましたのは,物の価値を維持するということは,当然,相続人のためにもなりますけれども,それに関わっていく債権者のために,副次的にはそのためにもなるのかなと思って書いております。そういうのを明示的に書くのはよくないということであれば,それは控えた方がいいのかもしれませんが,趣旨としては,価値を維持すれば,それは債権者のためにも一応はなるのではないかと。 ○道垣内委員 ごめんなさい,私,当然だと思って言わなかったのですが,相続人に対するという部分もおかしいと思います。とにもかくにも,価値を維持する義務はない。 ○脇村関係官 積極的な義務とか,そういう概念でなくて,積極的に害することはしてはいけないといいますか,そういったことをしてはいけないということを言っているにすぎないので,それを義務とかいって,何か維持するとかいう発想自体が変ではないかということでしょうか。 ○道垣内委員 山野目さんが940条を徹底的に批判されましたが,940条は何を念頭に置いているのかというふうに聞かれると,私も困る,よく分からないわけでありまして,そうではなくて,あなたはどう思うかといわれたら,別に相続人に対してだって,相続債権者に対してだって,価値を維持する義務はないだろうというふうに思います。   ただ,940条とかの条文が存在して,それを解釈するときに,どういうふうにいうのかといったら,次の相続人のために価値を維持するという義務であるというふうにいうことは可能かもしれない。ただ,それも,知ったことではないと私は思いますけれどもね。 ○山野目部会長 940条は,何々の注意をもってという,スタイルであり,あれ自体,やや読む人を怖がらせるような側面があります。つまり,一般の人にとって,自己の財産におけると同一の注意と書かれて,その注意義務が高いか低いかということは,卒然と分からないことがあります。くわえて,管理を継続しなければならないと書いてあって,これも何か,よく吟味しないで読むと,やはりイメージとしては重いですね。   民法がこのような局面で,どういう表現をしているかというと,皆様方御案内のとおり,事務管理の終局場面の700条は,ほぼ同じ表現になっていますし,それに対して,委任の終了のときの654条は,何とかの注意とかといわないで,必要な処分はしなければならないという,割と寡黙な表現になっていて,さらに,いろいろ考えていくと,中村委員がおっしゃったように,何々に努めなければならないというようなものも出てくるかもしれませんが,それとともに,やや民法の規定としては,努めなければならないというものは,絶対に書いていけないということはないですけれども,いささか法制的に考え込ませるところがあるということも感じます。   決定的な決め手というものはありませんけれども,相続放棄をした人の立ち居振る舞いについて,内容も適正であるし,国民に対しても明確なメッセージを与えるような文言を,私たちの努力で探していかなければならないであろうと感じます。今日で決着の付く話ではないかもしれませんけれども,引き続き,何か御意見があったら頂きたいと望みます。  ○國吉委員 この相続放棄の問題も,恐らく根底にあるのは,ここで議論をしています所有者不明の土地ですとか管理不全の土地をどうにかしようという問題なんだと思うんですね。   相続放棄をするという方に対して義務を負わせることは,私もないとは思うんですけれども,ではそのとき,その土地の管理はどうするのかということを,まず考えていかなくてはいけなくて,やはり財産管理をする人間をどうにかして選任しなければいけないということなので,その辺はやはり,国になるのか分かりませんけれども,そういった資金的な手当てとか,そういったものをやはり考えていっていただかないと,この問題は多分,解決していかないのではないかなとは思っています。 ○佐久間幹事 単なる言葉の問題ですが,管理というのが,まず,すごく広い概念のように思えて,ほかのところで使われる管理ですと,利用とか改良も含まれてまいりますよね。ここでは,そんなことは,およそさせるべきでもないし,放棄した人だとするべきでもないと思います。ですから,言葉としては,ほかに使われている,保存の方がいいのかなと,しなければいけないことは,せいぜい。   かつ,自己のため,自己の財産うんぬんのところですけれども,これも中身は,やはり明確化した方がいいと思います。もう一つ,私は,相続財産の何というのか,が,ちょっと表現はできませんけれども,ある範囲でというか,そのカツの範囲での保存の,義務なのかもしれませんが,義務と考える方がいいのではないかなと思いました。  さらに,もう一つ,918条1項と,これはやはり連続性のあるものですよね。そうすると,なお権利者である可能性のある人と,もはや権利者でなくなった人とで言葉遣いは違ってくる部分があるのかもしれませんけれども,918条1項も併せて可能な限り同じような言葉遣いで,現在そうなっているんですけれども,考えていく必要があるのではないかなと思いました。 ○松尾幹事 きちんと理解していないかもしれませんけれども,先ほど道垣内先生からの,土地・建物の場合については立ち去ればよいという問題提起を受けて,はっとしたところがありまして,そのときにどういうことをすればいいんだろうかということがなお気に懸かっております。先ほど國吉委員がおっしゃった点に絡むかもしれませんけれども,今問題になっている,できるだけ切れ目のない相続財産管理をしていく仕組みを作ろうという観点からすると,とにかく管理してくれる人を誰か頼んで,ではお願いしますというところまではしてください,そういう仕組みを作っていくということが必要かどうか,そのぎりぎりのところをどう考えるかという問題なのかなと思います。   そのときに,相続人全員が放棄してしまったら,相続財産法人の相続財産管理人の選任ということになるでしょうし,そうでない場合にも,相続人の中で後を引き取ってくれる人がいるということで誰かやってくれればいいですけれども,そうでない場合には,やはり管理してくれる人を選任して,それで管理してもらって,ではお願いしますねという,その仕組みを作っていく方向を,費用的にも可能な方法で見付けないとまずいのではないかなという気もするんですね。   その際,管理人を選任するために,予納金とかの負担がたくさん掛かるのは,共同相続人間の不公平があったり,現実的ではないし,そのときにコスト的にも実現可能で,管理が何とか続いていくような仕組みが作れないのかという観点から,土地管理人という制度を作ることになるのか,一つの新しいカテゴリーの相続財産管理人ということになるのか分かりませんけれども,何かそれができる方向はないだろうかというのも,やはり考えるべきことかなと思いました。 ○山野目部会長 誰かに何かを告げた上で立ち去ればよいという感覚が,委員,幹事の間で共有されてきて,それを民事基本法制において,どういうふうに表現するかが,なお課題であるというところまで議論がきていると感じます。増田委員,どうぞ。 ○増田委員 ありがとうございます。   今,最後,山野目先生がおまとめになったようなことでいいと思うんですが,ちょっと私,今までの議論を聞いて,若干戸惑ったのは,やはり民法の大先生方が940条の条文おかしいと,これ昔からあった条文なので,やはりそれについて,要は,今議論しているのは所有者不明土地であって,そこにはどんな格好であっても,必ず管理する人間がいなくてはいけないのと,それから,それなりの管理費用が掛かるという現実の問題があって,先ほど来ございましたとおり,今の管理する体系に新たに義務を課す必要は,私は特にないと思うんですが,それが大前提ですけれども,いずれにしても,どこかで必ず管理する人,それから,それに必要な,何がしかの費用を掛けての管理ということが現実にあるので,そこが是非飛んでいかないような議論をしていただければなと思います。 ○山野目部会長 承りました。   方向の感覚を共有しているとともに,明確な,文言上こうしたらよいというところまで,今日行き着いていないと思いますけれども,ここまでとさせていただいてよろしゅうございますか。   それでは,部会資料14についての審議をお願いいたしました。   続いてお取り上げいただきたいものが,部会資料15でございまして,遺言の制度の見直しでございます。   これについて,事務当局から説明を差し上げます。 ○脇村関係官 すみません,では,御説明させていただきます。   部会資料15でございますが,遺言を取り上げております。   補足説明にございますとおり,所有者不明土地は相続によって生ずることが多いこともありまして,遺言を活用して,被相続人が土地の帰属をあらかじめ定めることによって,所有者不明土地が生じることを防止すべきといった指摘がございます。   本年6月14日の所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議の基本方針においても,遺言書保管制度の円滑な導入を図ることによって,相続登記を促進するといったことがされているところでございます。   そういったことから,遺言について,何か見直しするべき点はないかというふうな観点から,資料を作成させていただきましたが,補足説明2にございますとおり,現行法では,遺言は自由に撤回することができるというふうにされておりまして,その方式は遺言の方式に従っておればいいと。ただ,この遺言の方式につきましては,当初やった,当初された方式と限ることはなく,他の方式でもいいというふうにいわれているところでございます。   そのため,例えば公正証書遺言を作成し,その公正証書遺言が公証役場に保管されていても,その後,自筆証書遺言の方式で撤回することも可能でございますし,最近作られました遺言書保管制度において,法務局で保管された遺言につきましても,法務局の方で遺言保管されていますが,そういった法務局での保管を申請撤回しなかったとしても,自筆証書遺言の方式をとれば,遺言を撤回することができるというふうなことにされています。   しかしながら,公正証書遺言や公正証書につきましては,自筆証書と比較しまして,かなり厳格な手続がされていますが,そういった厳格な手続で作ったものを簡易な手続で撤回していいのかというのは,一つ検討すべき点,あるのではないかと思っております。   また,遺言保管制度につきましても,保管について,それを利用することによりまして,遺言によって生じるリスクを軽減する方向での改正されたわけでございますが,こういった点からしても,自由な方式で撤回することを認めることでいいのかという点は,議論の一つとしてあることを思うわけでございます。   いずれにしましても,公的機関を関与させることで,遺言をめぐる紛争を防止しようとする観点からしますと,公的機関の関与の下に作成又は保管された遺言の効力が,自筆証書遺言の方式でされた撤回,そういったものでひっくり返るということについて,検討する点があるのではないかということで掲げさせております。   もちろん事案によりましては,危急時のケース,そういったケースもございますが,部会資料といたしましては,2ページの(4)に,以上を踏まえということで書いていますが,提案としては,例えばということでございますが,公正証書遺言については,その撤回,公正証書遺言の方式によって行わなければならないものとする,あるいは,その遺言が作成された後は,公正証書遺言を作成しない限り,後の遺言は有効とはならないものとするといった点,あるいは,法務局で保管された遺言につきましても,その撤回については,法務局で一定の手続をとらないといけないといった点について,検討することが考えられるかということで,ゴシックに書かせていただいていますとおり,遺言をめぐる紛争が生じることを防止し,相続を円滑に行うことを実現する観点から,今言ったような遺言撤回の方式を見直すことについて,検討することが考えられないかということで書かせていただいております。   もちろん,今のような提案,検討につきましては,3ページところで,反対意見,書かせていただているところでございます。具体的には,遺言者の最終意思をできるだけ尊重すべきであるという観点からすると,遺言撤回の方式を限定すべきでないといった御意見や,遺言書保管制度においては,遺言の保管申請の撤回,また新たな遺言書の保管申請をするためには,遺言書の保管申請をした遺言書保管所に遺言者自ら出頭して手続を行わなければならないとされていますから,これらの手続をとらなければ,遺言撤回をすることはできないとしますと,遺言者が転居や健康上の理由で出頭が困難となった場合には,事実上,前の遺言撤回は困難となるといったことも考えられるため,遺言の方式を限定すべきでないといった意見,さらには,撤回の方式が限定されますと,逆に公正証書遺言や遺言書保管制度の活用が阻害されるのではないかといった意見も考えられるところでございますので,こういった点も踏まえながら,御検討いただきたいというところでございます。   3ページの補足説明辺り,特に3,4では,生前処分との関係,破棄についても書かせていただいております。事実行為が行われたケースについてまで同様に考えていいのかという点については,問題があるところでございますので,御検討いただければというふうに思います。   最後に,ゴシックにも書かせていただいておりますが,このように,遺言の点について見直しという観点をした場合について,遺言を活用して相続登記を促進する観点から,遺言の撤回の方式等を見直し,公正証書遺言や法務局で保管した遺言が最後にされた遺言であるといったことが明確になった場合に,こういったものを利用して,土地の所有者及び,速やかに登記に反映させる方策として,何か考えられるのかについても,是非御意見いただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。   説明は以上です。 ○山野目部会長 部会資料15の前半の御説明を差し上げました。   これについて,一括して御意見を承るということにいたします。いかがでしょうか。 ○潮見委員 最初,資料を送ってくださったときに,本当に,この短期間で検討するのか,正直言って疑いました。   仮にこれを検討するにしても,15の最初のところで,遺言の活用ということが書かれていまして,所有者不明土地は相続によって生じることが多いこともあり,遺言を活用して,被相続人が土地の帰属をあらかじめ定めることによって,所有者不明土地を生じることを防止すべきであるという意見を反映させたものとして,どうですかという提案の形で,検討事項として示されているんだと思いますが,中身を読んでいると,むしろ,法務局に保管されている自筆証書遺言と,公証人役場に保管されている公正証書遺言について,それを基礎として法律関係が展開されたような場合とか,あるいは,それをめぐって取引が展開された場合の取引安全の保護を目指したいがために,公証人役場や法務局で保管されたものについては,同一の方式でなければ撤回できないという,何かそっちの方に意図があるのではないかというふうに,思わず勘繰ってしまうような内容です。   その意味では,賛成はできないし,ここまでのところですら,所有者不明土地をかなり離れて,相続法あるいは相続制度全体に大きな影響を与えるような提案がされておりましたが,それに輪を掛ける相続制度全体に対する大きな変更をもたらす方策ということで,ちょっと付いていけません,   特に,方式主義が大事だといったら,それは同じ方式でなくても,別に真意性の確証がとれれば,それで足りるわけです。それからまた,遺言後の生前処分等の抵触行為は,無方式でも構わないとあります。こういうものによる撤回は認めていいということになっていますから,全体として,補足説明を含め,ここで書かれていることの統一がとれているのかということも疑問を感じるところです。   個人的には,気持ちは分かります。私個人の考えというのは,自筆証書遺言の制度が野方図にといいますか,厳格な方式主義で使いにくいという言葉の下で,実は非常にルーズに遺言というものが書かれ,保管されている。そっちの方が問題で,その制度自体を一から変えた方がいいのではないかというぐらいの考え方を持っているわけですから,気持ちは分かるんですが,でも,今申し上げたところを踏まえて考えると,今回のミッションとはかなり違ったことに着地点があるのではないかというふうな感じがいたします。 ○中田委員 私は,この御提案が,相続制度全体に関わる非常に根幹的な問題とまでは思わないのですけれども,ただ,既存の制度との関係がよく理解できないなという印象があります。   まず,法務局の保管する遺言についてですが,これは,資料にもございますけれども,その法律の8条で,いつでも保管の申請を撤回して,遺言書の返還を求めることができるということになっているわけです。それに伴って,情報も消去される。それは何のためかというと,多分,遺言自由だとか最終意思の尊重ということを考慮して,そういう制度にしたんだろうと思います。   ところが,遺言の撤回に保管申請の撤回を義務付けたり,あるいは,さらに,その後,再度の保管申請までしなければいけないということになると,実際上も困るのではないかと思います。つまり,保管申請を撤回した後に自筆証書遺言が作成されても,新たな保管がされない以上は無遺言の状態になってしまう。それは,遺言書を活用しようというのと,何かずれるのではないかなという気がしました。   それから,そもそも,遺言書の保管制度にそこまでの実体法的な効果を結び付けると,この資料にもございますけれども,利用が阻害されるということは懸念しなければいけないのではないかと思います。   相続法部会でも,そこまで検討されていなかったと思いますし,まして,これから,まだ施行されていない,一番最後に施行されるものですが,これから制度を作って,使いやすいものとして広めていこうと,特に民間の同種サービスとの競合のある中で,何とかこの制度を利用してもらおうということに対して,それが始まる前から,非常に制約的なことをしてしまうと,かえって利用が妨げられるのではないかなと思います。   公正証書遺言についても,やはり同じように,新たな公正証書遺言を作成しない限りは,後の遺言が有効にならないということになると,やはりこれも遺言自由と,かなりぶつかるのではないかと思います。全体を通じてのコンセプトは,公的機関を関与させた意義を尊重すべきであるということなんですが,そこが私にはよく理解できなくて,例えば公正証書遺言についていうと,相当の報酬を支払っているわけでありまして,余り公的機関を関与させたということを強調しすぎるのも,どうかなという感じがいたします。 ○蓑毛幹事 私も今回の提案については,賛成できません。   潮見先生,中田先生がおっしゃったことに,付け加えることは余りありませんが,実務的な感覚としても,特に地方において,公証役場が限られていたりとか,土日は法務局も公証役場もやっていないとか,そういう状況からすると,今回の提案では,迅速に,遺言者の最終意思を遺言に反映させることが難しくなるという現実があります。 ○山野目部会長 沖野委員,どうぞ。 ○沖野委員 ありがとうございます。   私も,3ページの(5)に書かれている反論というのが,やはり有効な反論ではないかなと思っております。   全般的には,自筆証書遺言の効力の見直しや利用可能性の限定ということにつながっていくのかなと思うのですけれども,それが,一方では遺言の活用ということをいう中で,本当にそちらにつながっていくのか。確かに,しっかりとして,その後の紛争を防止するということにはつながるかもしれないけれども,逆に,そうすると,最後,その考え方になったときには,なかなか難しいよと,ハードルが高いから,最初から使わない方がいいということにもなりかねないので,正直,どちらに動くか分からないところがあります。   ほかの制度は,まだ始まっていないということで,逆に言うと,それがチャンスかもしれなくて,なるべく保管できっちりさせましょうと,保管をしたら,その代わり,後から自筆証書遺言がぱっと出てきたというようなことはなくなりますので,逆に紛争も予防されて安心ですよということで,うまくいくかもしれないし,逆に,一旦保管すると,余り自由にはできないし,なかなか自分で出かけていくこともできなくなれば,もう遺言はできないのも同じだよみたいな言い方がされると,使われないということにもなりかねないので,正直どちらに動くか分からないという中で,どうかということがあります。   さらに,ここで懸念されていることは,ある程度公的な,あるいは第三者の関与がある形で内容が確認され,意思も一定程度確認されて,それでも意思能力などが争われることがあると思いますけれども,しかもそれが,さらに,この後,別のものがあって,これ自体は効力がなくなっているというようなことが,その後になって明らかになるというのが一番問題だとすると,あるいは,これらの公正証書ですとか,あるいは保管されている遺言書であれば,死亡情報が分かれば,かなり早い段階で,最終的な権利の帰属に利いてくるのですけれども,自筆証書遺言がその後,ずっと後になって見付かって,全部ひっくり返るというようなことが問題ならば,そこに期間制限を入れるとか,あとは金銭的な扱いで終えてしまうとか,そういうような手法もあるのではないかと思われます。   およそ処分をなくしてしまうというか,使えなくなってしまうということよりは,他の方法も考える余地があるのではないかとも思われまして,そうだとすると,正面から遺言にこういう形で切り込んでいくというのは,ややドラスティックではないかなと思うところです。   それで,あと,大変細かいことですけれども,保管制度を使うと,原本は法務局保管でよろしいですか。公正証書遺言は,これは原本は公証人役場で保管ですか。   そうすると,この3ページの4で,遺言者が故意に遺言書を破棄したときというのは,どういった,公証役場に行って破棄しますとか考えにくいので,これはどういう場合を想定しているのか。適用しないと言うまでもないのではないかという感じがちょっとしたものですから,ご説明いただければと思います。細かいことですみません。 ○脇村関係官 まず,原本の破棄について,おっしゃるとおり,あり得ない前提で考えています。ただ,解釈論として,受け取った正本を破ったときについて,有力説では,ここに当たるのではないかという議論もあるようでしたので,明確にした方がいいのかなということで書かせていただいた趣旨でございます。 ○山野目部会長 最も素朴な疑問は,撤回するときの方が歳を重ねていますから,そちらの方が,体が弱ってきたり,動けなくなってきたりしており,そこが困ると感じます。現在の本人出頭主義が変更されない限り,元気なときに法務局に出頭して保管させた人は,次に撤回しようとすると,自分では足腰が弱っていて行けないという状況になったりしますから,その辺は何か説明していかないといけないでしょうね。   皆さんのような難しい話ではなくて,一番素朴に感ずることは,そういうところかもしれません。 ○今川委員 我々司法書士の中でも,最終の遺言であることを確定させた方がいいという趣旨は,一応は理解できるんですけれども,やはり意思の尊重ということから,反対意見が多いというか,ほとんどが否定的,消極な意見でした。   今回,遺言書の保管制度ができまして,自筆証書遺言でも,きちんと保管はしてくれるので安心ですという形でお勧めできますが,この提案では,一旦保管してしまうと,撤回や内容の変更をしたいときは法務局へ行かないと,できないということも併せて説明をするということになる。そうすると,利用にちゅうちょするのではないかというのが感覚としてあります。   それと,5の提案ですが,最後の5のところですね。この遺言を登記に反映させる仕組みというのは,登記官とか公証人が,その遺言に従って登記をするという意味ではないですよね。これはどういうことか,ちょっと想定ができなかったんですけれども。 ○山野目部会長 何も想定していません。   つまり,この5のところについては,事務当局がどういう問題関心を持って,そして,なぜこの部会資料の15を上程しているかという,法務局行政が現在置かれている大局の中で見なければいけないことがあって,それを見ると,この5のところについて,直ちに答えが得られないというジレンマも認識せざるを得ない側面があります。三角形を想像していただきたいものですが,戸籍と不動産登記と遺言書保管という三つを頂点とする三角形があったときに,戸籍,不動産登記,遺言書保管をつなぐトライアングルの3辺の全ての辺が,理論としては,情報通信技術を用いた情報連携をすることが,抽象的な空間では可能です。ただし,現実にそれが今進んでいるかというと,この三角形の3辺のどれも,十分になっていません。   21世紀のある日というべきかどうか分からないですけれども,どこかでこの3辺が完全に電子技術でつながれば,この遺言書保管についての今般の改革のようなものを更にそれに加え,不動産登記,戸籍が連動して,例えば,公正証書をしばらく措いて考えますと,法務局に保管されているある遺言が最後の遺言であって,かつ,その人は死亡していて,効力が発生しているから,直ちにこのとおりに不動産登記をしてください,極端な場合には,職権でやりますというふうにつながっていきますけれども,繰り返すと,どの3辺も情報連携が,電子通信技術的につながっていない状況では,やっても直ちに,目に見える効果が得られません。   この5番のところは,最後はこういうふうに持って行かなければいけないという状況を念頭に置きながら,こういう課題を確認しながら進めていきましょうという一般的,抽象的な課題の確認を差し上げているということになるものであります。   お続けください。 ○今川委員 今の部会長がおっしゃったことに異論があるわけではないんですが,情報連携が仮にパーフェクトになったとしても,いろいろ問題はあるのではないのかと思います。遺言執行者がいる場合どうなるのかという問題もありますし。   遺言書保管は飽くまでも自筆証書遺言なので,その内容について,相続人の特定であるとか,不動産の表示の仕方に関して不動産の特定であるとか,内容について検討しなければならない場合もあるし,その辺りは,情報がしっかり連携されたとしても,法務局で内容の判断をするのは無理な場合もあるだろうと思います。そういう意見が内部では出ています。 ○山野目部会長 お話はよく分かりました。   引き続き御意見を承ります。 ○中村委員 ただいまの部会資料の最後の5項についてなのですが,有効と見られる遺言書があってもなお,相続人間で,それとは異なる遺産分割協議が成立するというケースというのは,実務的には結構あるんだろうと思います。遺言をされてから随分時間がたっていて,現実とそぐわなくなっているとか,又は,例えば,遺言で子どもたちにも遺産を分けようとしてくれたお父さんの気持ちは有り難いけれども,全部お母さんに持たせてあげて,お母さんの老後が安心なようにしようと全員で決めるとか,そういうことはあるわけですよね。   しかし,この5項のような形で,例えば職権でとかというようなことになりますと,本来家族で自由に決められるはずのものが,それができないままになるという可能性はないのでしょうか。その辺りも少し考える必要があるかなというふうに指摘が,日弁連でございました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   私,先ほどの発言で,極端な場合には職権でというふうに申し上げました。別に,事務当局がこの局面で,将来的に職権による相続登記を入れるという前提で物を考えているものではありませんけれども,例えば,極端な話をすると,情報連携を考えいく中にあって,そういうこともあり得るかもしれないということであり,そのような文脈で出てきたお話であるという背景の御案内を差し上げた次第です。   引き続きお話を伺います。いかがでしょうか。   恐らく,遺言書保管については,これから運用が始まる制度でありますけれども,現在の法律の建て付けでいいますと,法務局に保管されている個別の遺言書が,果たして相続が開始して遺言が効力を発生しているものであるかどうかが,法務局の側で,当然にといいますか,あるいは情報通信技術的に直ちにといいますか,分からないような仕組みになっているところに,どうしてもあの制度が,本当に威力を発揮する手前のところにとどまっているという側面があるのであり,やはり,この後の部会資料で御議論いただきますけれども,戸籍と不動産登記との情報連携などをにらみながら,それに遺言書保管の制度を将来的にどういうふうに関連させていくかということが,一つの大きな課題になってくるであろうと感じます。   そのようなことをにらみながら,この部会資料15は,事務当局が,一つ問題提起をしてみようということで,お出ししたものでありますけれども,全面的に賛成と述べた人は1人もいなくて,沖野委員が若干,いろいろなことを更に考えてみましょうとおっしゃられたという意見分布を確認させていただきましたけれども,引き続き御検討いただくことでよろしいですか。   それでは,ここで休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開します。     続きまして,部会資料の16を取り上げます。   不動産登記制度の見直しを審議事項といたします。   これについて,第1の部分の説明を事務当局から差し上げます。 ○佐藤関係官 それでは,部会資料16「不動産登記制度の見直し(4)」を御準備ください。   第1で,相続の発生を登記に反映させるための仕組み,第2で,登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み,第3で,外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策について,それぞれ取り上げてございます。   まず,第1の1,相続登記の申請の義務化について御説明します。   第5回会議におきましては,義務違反の効果等も含めた総合的な検討が必要であるとの御指摘もございましたが,ここではまず,改めて相続登記の申請を義務化する根拠を整理しまして,その根拠を踏まえて,義務化の対象とするべき権利移転の範囲等について,より具体的な制度設計を試みてございます。   1ページの補足説明1(1)では,相続登記の義務化の根拠及び対象とするべき権利移転の範囲について,相続,特定財産承継遺言及び遺贈を対象とすることなどについて,検討を加えてございます。   特定財産承継遺言や遺贈につきましては,一般に対抗要件主義が妥当するものの,第三者から購入した土地などと異なり,自らの能動的な意思に基づいた取得ではなく,長期間にわたり登記が放置される事態が定型的に生じ得るともいえることから,これらについても対象とすることを検討してございます。   4ページの補足説明4(1)では,登記申請義務の発生の主観的要件として,相続人において,登記名義人の死亡の事実を知らなかったり,相続した具体的な財産を知らなかったりするケースも考えられることを踏まえ,当該不動産の取得の事実を知った日からとすることについて検討してございます。   また,(2)では,客観的な要件として,当該不動産の取得の事実を知った日からどのくらいの期間とするかについて,検討を加えてございます。   法定相続分での相続登記を所定の期間内に行うべきとの方向性と,その反対に,法定相続分での相続登記は過渡的なものであり,遺産分割の結果を踏まえた相続登記をすべきであるとの方向性のいずれを強く打ち出すかによりまして,この期間を比較的短期間とするかどうかが異なってくるものと考えられます。こちらについて,広く御意見を頂けますと幸いでございます。   なお,(注2)では,過渡的であることをより直視いたしまして,例えば法定相続人の氏名及び住所を登記するにとどめ,持分は登記しない新たな登記を創設することについても触れておりますが,この点につきましても,併せて御意見を頂けますと幸いでございます。 ○山野目部会長 第2の部分も続けて御説明を差し上げてください。 ○有本関係官 続きまして,6ページの第1の2(1)では,登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報を取得するための仕組みについて,以前の部会資料8で御議論いただいたときよりも,やや具体化した案について検討を加えております。   死亡情報を取得するための連携先システムとしては,戸籍副本データ管理システムや住民基本台帳ネットワークシステムがあり得ますが,いずれにしても,登記所としては,登記名義人本人から,これらのシステムへの照会に必要な情報,すなわち戸籍の方であれば,氏名,生年月日,本籍,筆頭者氏名,それから,住基ネットであれば,氏名,住所,生年月日の情報の申出を事前に受けておくことが考えられます。もっとも,申出を受けた情報のうち,登記事項である氏名及び住所以外の情報は公示しないことを前提としております。   このほか,7ページの3にありますとおり,例えば固定資産課税台帳など,その他の情報源から情報を取得することも考えられますが,その場合は,効率性やコストの問題には留意が必要かと考えられます。   また,8ページの(2)では,死亡情報を取得した登記所として,更に行い得る施策について検討しております。   最も単純に考えられます相続登記を促す通知という措置ですと,本来であれば,各相続人に送付することが望ましいものですが,これには相当な手間を要しまして,現実的でない部分もございます。他方で,登記名義人の最後の住所に宛てて送付をするということは可能ですが,この点については,どの程度実効性があるかという問題もございます。   さらに,死亡し,相続が開始した旨を登記記録上に公示することも考えられますが,個人情報保護等の観点からの検討も必要であると考えられます。   登記所が死亡情報を取得した際に,どのような方策を採ることが考えられるのかなどについて,御意見を賜りたく存じます。   続きまして,9ページ,第2の1では,登記記録上の氏名等の情報が最新の状態でないことが,所有者不明土地の発生原因の大きな部分を占めていることも踏まえまして,これを最新のものとするために,不動産の所有権の登記名義人の氏名等についての変更の登記の申請を義務付けることについて検討しております。   仮に義務付けをしたとしても,10ページの2で検討していますように,本人自らが申請する負担を実質的に軽減するような方策を採ることができれば,過度な負担とはならないとも考えられます。   この10ページの,いわゆる情報連携の方策については,部会資料9で御議論いただいたものから,こちらもやや具体化した案を御提示しております。   登記名義人が自然人である場合には,氏名等の変更の情報を取得するための連携先システムとしては,住基ネットが考えられまして,死亡情報の場合と同様に,事前に情報の申出を受けた上で,住基ネットへの定期的な照会を行い,情報の変更が判明した場合には,直ちに登記を変更するというのではなく,一旦登記名義人に変更の登記の確認を取るなどすることが必要であると考えられます。これは,氏名や住所という個人情報保護の観点や住民基本台帳制度の趣旨,登記名義人がDV等の被害者で,住所情報の取扱いに注意すべきものであった場合などを考慮したものでございます。   他方で,登記名義人が法人である場合には,会社法人等番号を登記事項として公示することとした上で,商業・法人登記のシステムから変更情報の通知を受けた後,こちらは登記名義人に個別の確認を求めることなく,直ちに不動産登記の変更をすることが効率的であるとも考えられます。こういった仕組みを採ることについて,どのように考えるか,御意見を賜りたく存じます。   御説明は以上です。 ○山野目部会長 初めに,部会資料16,第1,相続の発生を登記に反映させる仕組みの部分について,御意見を承ります。 ○道垣内委員 それの1の相続登記の申請の義務化で,一定期間内に,例えば②ですね,特定財産承継遺言により取得した人がいるという場合の話なのですが,それと,先ほど中村委員がおっしゃったこととの関係が,私は若干気になっております。つまり,ある遺言があったとしても,それは,遺言があるよねということを前提の下に,別の遺産分割協議というのをする可能性というのはあるのではないかという話がありまして,それで,遺産分割協議については,10年間やらないと,法定相続分による供給になるという仕組みが考えられつつありますが,10年間は変わり得るということになるはずなのではないかという気がしまして,そこで3年,4年,5年というふうな,それよりも短期間の期間において,登記義務化をするということは,本当に整合的なのかというのが若干気になります。余り自信はないんですが。 ○山野目部会長 おっしゃっているとおりであると考えます。   言い換えると,②を特出しで,別なルールとして打ち出すことがよいかという御疑問をおっしゃっていただいたものではないかと感じます。   ①で読み取ることが,論理的には可能であるとも理解することができるのではないでしょうか。ありがとうございます。 ○佐久間幹事 意見ではなくて,①に含まれている範囲をちょっと明確にしていただきたいと思いまして。相続による所有権の移転の登記を対象としておるんですけれども,ここには,法定相続分での登記と遺産分割の結果としての登記の両方が含まれているということでよろしいんでしょうか。   なぜそんなことを聞くかというと,補足説明の3ページの(2)の最後のところでは,法定相続分での相続登記を義務付けることが適切であるとも考えられると書いてあって,元々は含んでいないかのような書き方なんですね。けれども,2ページの真ん中辺りの義務付けの必要性の中では,法定相続分の登記については,対抗要件主義も働かないので,必要性が高いよねということが書かれていたり,5ページの(注1)の直前のところでは,遺産分割の期間制限を設けた場合における,その具体的期間についての議論を踏まえてと,今,道垣内さんがおっしゃったことも考えてということが書かれたりしておりますので,それらを見ると,法定相続登記も入っているのかなとも思えるんです。それで,原案としてはどちらか,関係をどう整理されているのか伺いたいと思います。 ○村松幹事 ゴシック部分では,比較的ちょっと幅広く書き込んでおりまして,それを開いた部分で,3の(2)の辺りでは,ちょっとオープンに,これは法定相続分での相続登記でオーケーということにするのか,それとも個別でいくのか。特にそれは,5ページに移りますけれども,相続登記をすべき期間を長くするのか短くするのか,またその際の,では相続登記というけれども,具体的にはどのような登記をするのかというものの位置付けとの兼ね合いで,内容的には幾つか選択肢があります。そこで,その幾つかの選択肢を,ここでは一応並べてみたというところを想定しています。   あとまた,更に言うと,そういう意味では,ちょっと書き方がよくなかったかもしれませんが,3ページの(2)のところでは,法定相続分での相続登記をすることで,義務が果たされたことになるという道もありますよというふうに記載しておりますが,また,5ページの(注2),先ほどちょっと,元の説明で申し上げましたけれども,法定相続分の登記ということではなくて,法定相続人を登記するという新型の登記というもので,その義務を履行したことにするという道もあると並列的に記載をさせていただいたというところになります。   基本的には,神の目から見て,所有権の移転が起きたんだということが確定した段階で,このルールが掛かるというぐらいのつもりで,ルールは作っておりましたので,その意味では,そうですね,先ほどおっしゃったような,遺言はあるけれどもそれはなしにして遺産分割で分けましょうというような辺りについての位置付けをどうするのかという問題については,部会長もおっしゃったように,ちょっとそこをどう整理するのかという問題は出てきてしまうなという感じはいたします。 ○佐久間幹事 法定相続分での登記は,やはり,できればされる方がよろしいと思うんですけれども,法定相続分の登記をした上で,また次,遺産分割をして,その登記をするとなると,やはりどうしても,手間も費用も増えることは間違いないので,なかなか現実味は乏しいのかなと思います。   今日は議論されないということは承知しておるんですけれども,仮に法定相続分の登記を遺産分割の期間の満了までより前に義務が発生するようにしたとしても,義務の制裁的効果というんでしょうか,それが何になるか分かりませんが,それは遺産分割の期間が経過するまでは発動しないようにしておかないと,結局2回,どうしてもやりなさいということになるので,制度として難しいことになるのではないかなと思っております。 ○今川委員 我々としますと,第5回会議において意見を申し上げましたが,義務化の根拠というのは十分認識をした上で,私的自治の原則,あるいは実効性の観点,それから国民の理解とか,また導入に当たっては,公共的な目的のために例外的に入れる観点から,慎重に検討すべきであると。死亡の事実を公示するにとどめるべきではないかという意見を持っているということを前提としまして,意見を述べさせていただきます。   まず,遺産分割が完了していなくても,登記はしなければならないとすると,その場合は法定相続分で登記をするということに,結果的になると思いますが,その場合,不動産を取得したくない相続人とか住所,氏名を公示されたくない相続人もいることを考えなければなりません。また,自分が具体的に相続分が少ないと考えている相続人が,期間経過するのを待つというようなことも考えられますので,例えば持分を入れないというのも,一つの案とは思います。   それと,不動産の取得の事実を知ったときからということですが,これは登記申請があったときに,登記官が多分判断されると思うんですが,若干曖昧というか,漠然とした基準をどのようにして判断するのか気に掛かるところであります。   相続放棄の場合は,自己のために相続の開始があったことを知ったときということで,実際は柔軟に解釈されているんですけれども,今議論の対象となっている制度についても柔軟に解釈するような余地があるのかどうか検討が必要になる。それから,遺産分割協議ができずに期間を経過してしまって,法定相続分で登記をせざるを得ないという場合,数次相続がありますと,いや,数次相続があるという前提はおかしいのでしょうかね。いずれにしても,相続人特定のために,相当の時間が掛かる場合もありますし,ほかにもいろいろ事由もあると思いますので,相続放棄の熟慮期間と同じように,期間延長というのも考慮されていいかと思います。   それから,特定遺贈の場合は,いつでも放棄できることになっていますが,3ページの(注2)で,一旦登記をしておいて,遺贈の放棄が許されたケースでは,錯誤を原因として抹消すると書いてありますが,これはちょっと分かりにくいのと,であれば,特定遺贈の場合に,義務化する意味はあるのかという意見がありましたので,もし整理されているようでしたら,教えていただきたいと思います。   それと,非常に実務的で,細かいお話になりますが,法定相続で登記せざるを得ない状況になったとして,相続人の1人が相続の登記を申請しますと,登記識別情報が他の相続人に交付されないという規定がありますので,この点も,検討すべきかと思います。 ○村松幹事 御質問ありがとうございました。   まず,大きな質問の1点目は,主観的要件の考え方ないし判断の部分だと思います。   主観的要件,これはやはり付けないと,なかなかうまく,合理的な説明をしていくことが難しいとこちらも思っておりますので,主観的要件を基本的には付ける。かつ,その意味合いとしましては,相続が単純に発生したということだけではなくて,個別の財産の存在も含めて知らなくてはいけない。そういう意味では,放棄よりももうちょっと,個別の財産に着目して,例えば,何か土地があるらしいと聞いてはいるけれども,地番も全然分からないということで,実際のところは,どこの土地について,登記手続をとっていいのか分かりませんと,こういうことは当然ございますので,そういったケースについて,義務違反が生じると,ちょっとなかなか言いにくいのではないかということで,そういうケースへの対応を考えざるを得ないのではないかということで考えております。   その上で,では,そのような事実について,確かに,まずは登記所の方で把握して,その上で裁判所の方に通知して,過料を科すということになっていくはずですけれども,今おっしゃったような面でいいますと,どういうふうに登記所の方で,これを具体的に把握できるのかというと,現状,権利の登記については,形式的な審査しかいたしませんし,この主観的な面について,直截に,あるいは直接的にこれを把握するという書面というのは,実際,基本的には余りないものと思われます。   たまたま要件を具備していることが分かるというケースは,例外的にあり得ると思いますけれども,なかなか分かりにくいというところでございますので,実際上はなかなか,ここの知った日というのから,もう期間経過してしまっていること,逆に言うと,知った日がいつなのかということを明確に判断できるケースというのは,運用上は,なかなかこれを捕まえにくい状態にはなってしまうのかなというふうには考えてございます。   ただ,これ自体については,これまで100年以上,自由に,相続登記しなくてもいいですよというふうに言ってきたものを大きく方向転換していくわけですので,どこまで具体的に法務局の方で把握して過料を科すこととするべきなのかというのは,またそこも一つ,政策の問題あろうかと思いますけれども,現状では,なかなか把握自体,そこは難しくはなってくるかなというところです。しかし,登記については義務がある,あるいは,それを前提に簡素化や連携などの様々な施策を考えるという中で,自発的に相続登記をしていただくという一つの根拠付けであったり,あるいは,その大元のルールということにはなるのではないかということで,一つの整理としては,そういう整理があるのかなというふうに考えております。   あと,それから,3ページの(注2)の部分で,ここの部分も,ちょっと試みというところで,先ほどの議論と別の議論であるものの,実際上,義務を課してしまって,実態的に問題はないのかという部分に関する,一応の検討というところです。   結局のところ,義務違反の期間が,余り短いと駄目ですけれども,長くなれば,ある程度,こういったニーズについては,吸収されるのではないかということを,ここには書いているつもりです。もし万が一ひっくり返すということがあれば,そのときには,こういった遺贈の放棄が許されたということになった場合には,改めて抹消していくということで,そこは,権利関係がもう一度変動したということに一応はなりますので,仕方がないのではないかという見方もできるのではないかという趣旨で記載を致しました。   あとそれから,登記識別情報の関係とか,恐らく,どういう登記にしていくのかというところとの関連も含めてで御指摘かと思いますけれども,検討は,そういった点も含めて,必要になってくるというのは認識させていただきました。 ○山野目部会長 今川委員,いかがですか。 ○今川委員 はい,結構です。 ○山野目部会長 よろしいですか。 ○佐久間幹事 二つの(注2)について,ちょっと伺いたいこと,あるいは意見を申し上げたいことがあります。  まず,3ページの(注2)の方なんですけれども,これは今,村松幹事がおっしゃった,この時期までに登記しなさいという期間をどのぐらいに取るかということが大いに関わってくると思うんですけれども,遺贈の放棄をするかどうかは決めていない段階で,登記だけはしなさいということになるわけですよね,この御提案は。   そうすると,登記をしたことが遺贈の承認にはならないということを明確に,ここで確認しておくだけではなくて,登記の上でなのかどうなのか分かりませんが,それが分かるようになっている必要はないのかなと,一つは思いました。これが3ページの(注2)です。   5ページの方の(注2)が,先ほど今川委員がおっしゃったところに少し関係すると思うんですけれども,今川委員は何か,放棄のところでおっしゃって,数次相続はとおっしゃって,ああ,それは起こらないのかというふうにおっしゃったんですけれども,この(注2)のように,持分を登記する,要するにこれ,権利の登記ではなくて,注記するだけのことになるんですか。それとも,これは権利の登記なのかな,どうなのかなということでありまして,まず,相続が開始しましたと。それで,法定相続分による共有になり,その後遺産分割の期間が満了したんだけれども,遺産分割がされませんでしたと。   この場合に,期間経過の効果がどうなるかは分かりませんが,仮に法定相続分どおりの共有に確定しましたというふうになっても,法定相続登記がされていなければ,義務違反になることは間違いないと思うんですが,そのときにされているのは,持分を登記しない,法定相続人の氏名及び住所だけの登記なんですよね。そして,次にまた相続が起こったら,そこにまた,その法定相続人の氏名と住所を書いていくということになって,誰に幾らの持分があるかは分からないけれども,現状,法定相続人として,下へずっとぶら下がっている人たちはこういう人たちですということだけが,記録として連なっていくということなんでしょうか。何か,それは余り好ましい状態ではないような気がするので,確認をまずさせていただきたいと思います。 ○村松幹事 好ましくないというお話ございましたけれども,持分まで入れるということの意味合いは,また別にありますので,場合によっては法定相続分を入れない形で,そういう意味では,おっしゃるように記録として連なってしまう部分は,最終的には出てきてしまうのかも分かりませんけれども,そういった形で登記をするのは,今よりは所有者の把握ができるという面では前進になっておりまして,そこから先,ではどういうふうにそういった状態の土地を利用しやすくするかといった辺りは,また民事実体法の方で受け止めるという振り合いもあるのかなというところでございます。 ○山野目部会長 前段は,佐久間幹事の御指摘のとおりであると感じますから,遺贈を義務化の対象に含めるかどうかは検討しなければなりませんが,含めるとする際には,登記申請に際し異議をとどめたときは,黙示の承認としては扱わないといったような規律を設けておく必要があるかもしれないということに留意いたします。   それから,御質問の後段は,これから新しい種類の登記を考えることですから,村松幹事がおっしゃったことも一理ありますが,佐久間幹事が御心配になっておられるように,持分が記録されていない,見た目に不正常なものとも見えかねない登記がどんどん量産というか,蓄積していくことの心配ということにも,引き続き留意しなければならないと感じます。ありがとうございます。 ○水津幹事 登記申請義務の発生の具体的な要件について,5ページの(注1)では,熟慮期間の趣旨に照らすと,熟慮期間内に登記申請義務が発生するというのは相当でないとしつつ,「当該不動産の取得の事実を知った日から」という要件を設ければ,熟慮期間内に登記申請義務が発生するおそれは乏しいから,両者の抵触を考慮する必要性はなくなるとされています。  自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に,当該不動産を取得した事実を知ることも,あるような気がします。また,そもそも,ここで問題となっている抵触は,事実上のものではなく,規範的な評価に関わるものです。そうだとしますと,登記申請義務が発生するのは,自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月を経過することと,当該不動産の取得の事実を知ったこととの双方を満たした時であるとすべきであるように思いました。 ○山野目部会長 御意見の趣旨を理解しました。   平川委員,どうぞ。 ○平川委員 ありがとうございます。   住基ネットの情報連携ですけれども,登記を義務化することに対応した住基ネットに対しての情報連携というのも,一定程度可能な面もあるかもしれません。一方で住民基本台帳法においては,住民の居住関係をしっかりと公表していくとか,事務員の利便性を高めていくとか,そういう制度の位置付けがある一方で,閲覧に関しての制限が,かなり強くされ,強い性格のものであるということです。   登記に関しては,公示をするという感じのことでありますので,法制度の性格が違うということを,しっかりと踏まえた連携が重要と思いました。   その意味で,本人確認をどうしていくのか。例えば11ページの(注)に,手続的なことが丁寧に書いてあります。とはいえ,登記名簿名義人の同意を前提にしたとしても,やはり二つの制度,例えば性格が違うという点を,どうやって整合的なものにしていくのか,というのも,課題なのかなと思っているところです。   また,もう一つの問題としては,DV被害者であったり,現住所を何らかの理由で秘匿をしたいと考えている方もおります。その場合,過去に同意をしたからといって,現住所が公示される危険性も,やはりまだあるかと思います。その辺,実務の話になるかと思いますけれども,しっかりと押さえておく必要があるのではないかなと思ったところです。   そういった意味で基本的には,この方向で検討すべきだということは賛成をしているわけですけれども,先ほど言った課題について,もう少し詰めた議論が必要ではないかと思いました。 ○山野目部会長 住民基本台帳ネットワークシステムとの連携については,趣旨は理解するが,十分に慎重に進めてほしいという御注意を承りました。   藤野委員,お願いします。 ○藤野委員 ありがとうございます。   まず,相続登記の義務化の関係でございますけれども,主観的要件が入るのは,何らかの義務を課し,場合によっては制裁も入り得るということを考えると,やむを得ないところなのかなと思っております。ただ,実際に発生している問題の中では,例えば,相続人が外国に住んでいらっしゃっていて,そもそも相続が生じている事実自体を知らないというようなことも,結構実態としてはございますので,そうなってくると,なかなか,義務化によって登記申請を進めるということにも限界があるのかなと思っているところです。したがって,やはり,それ以外の策もあわせて講じる,例えば,相続した当事者で整理する,というのもそうですし,あるいは,死亡の事実を把握した第三者がある程度関与して,いろいろ対策をとって進めるというような形も,どうしても併存させないといけないのではないかな,と今回の提案を拝見して感じているということは申し上げておきたいと思います。   また,その観点から申しますと,死亡の事実の公示に関しては,ちょっと今回トーンが落ちたというか,部会資料16の8ページの補足説明の記述が消極的にも読めるところはございます。ここのところは,やはり,所有者探索等の作業を開始する上での最初の出発点であり,誰がインセンティブを取って登記を正常にするか,といったことと合わせて,いろいろな切り口になる部分だと思いますので,適切な方法を御検討いただきたいということを,改めて申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   最初に,部会資料16の1ページの③の(注)で死因贈与を除外している点なんですけれども,死因贈与を除外する理由として,部会資料16の2ページから3ページに,そもそも不動産を取得するに至った経緯に鑑みて,特に公法上の義務を課さなくとも,自発的に登記するということが,死因贈与の方は期待されるけれども,特定財産承継遺言の場合にはそうではないのではないかという理由が挙げられていると思います。けれども,あえてここで公法上の登記義務ということをいうからには,公益の観点からは,とにかくすべからく登記してくださいというのが,公法上の登記義務のあり方かとも思いますので,その意味では,死因贈与についても,やはり登記義務の対象の中に入れてもいいのかなという気がいたしました。ちょっとそこは議論があるかもしれませんけれども,一つの意見です。   それから,もう一つ,部会資料16の1ページの①と②,③というのは,恐らく,登記義務の中でも性格が違っているというふうに考えられます。つまり,①は,相続が発生しましたという情報を,とにかく登記してくださいねという意味で,一種の第1段階で,それを踏まえて,特定財産承継遺言がある場合とか,相続開始後に遺産分割が成立したということを登記してくださいねと,これが第2段階だとすると,この2段階方式を採ることが可能かという重要な問題があるように思います。   それで,仮に第1段階がない場合にどうなるかです。つまり,現在のように遺産分割を直ちに反映した登記ということなんですが,それについて,例えば,遺産分割についても5年とか10年という期間制限を設けるということは,逆に言うと,5年,10年は登記しなくてもいいですよということになりますので,その間の遺産に属する不動産についての情報取得がどうなってしまうのかが気に懸かります。その間に更に相続が生じるということもあり得るという意味では,例えば遺産分割に5年,10年の期間制限を設けるということになるにしても,やはり,とにかく不動産の所有者について死亡が発生したら,何か情報を登記所に届けてくださいねということに,やはり意味があるのではないかと思われます。   それについては,5年,10年ではなくて,もっと短い期間の提案が考えられます。部会資料16の5ページにも1年,2年,3年というような例で挙げられているので,私はそれには意味があると思います。これは現実的に難しいという話もあるかと思いますけれども,基本的な仕組みとしては,意味があると思います。そして,もし2段階方式を採るということになれば,第1段階はなるべく手続的な負担は軽くするということ,それから,期間についても,第2段階とはやはり違うんだという考慮は必要かなと思いました。   それから,情報連携の方で,氏名,名称及び住所の変更の登記ということが,部会資料16の9ページにあって,これも非常に大きな,かつ重要な問題であると思います。既に何回か議論されましたけれども,例えば,銀行預金については,住所変わったときには届けることがされているけれども,はたしてそれと同じような負担感覚で,登記についても,住所が変わったときに届け出るべきかということで,不動産について届出義務を課す根拠として,やはり不動産については,所有者は所在が分かるようにしておかなければならない義務があるということが認められるということが,届出義務の大前提になると思います。はたしてその大前提が承認されるか,そこのところについての認識は,やはりしっかり共有しておく必要があります。届出義務は,不動産者にとって,本当に所在が分かるようにしておく義務があるんだということが認められた上での話なのかなと思います。   そして,仮にそれがあるとしての話ですけれども,やはり届出の方法について,負担をどれだけ減らせるかという問題があるように思います。例えば,複数の不動産を持っている人は,不動産一個一個について,届け出ないといけないということになると,結構大変だと思いますので,例えば法務局に,住所変わったんですということになったら,どういう不動産持っているのかということについて,いろいろ助けてもらって,所在情報の変更が容易になるというような配慮も必要かと思いました。 ○山野目部会長 第2の部分については,この後,御意見を伺うことになりますが,今の御意見は,しかし承りました。 ○蓑毛幹事 日弁連のワーキンググループでの議論の状況を御紹介します。   相続登記の申請の義務化,あるいは6ページにある,登記所が他の公的機関から情報を取得することについて,意見が全て集約されているわけではありませんが,不動産の登記名義人が死亡しているにもかかわらず,それが登記されていない状況というのは望ましくない。そして,このことが所有者不明土地問題の大きな原因になっている。このようなことを踏まえると,抽象的な登記義務,つまり,制裁は科さないという範囲の条件付きで,申請の義務化には賛成というのが,意見の多くを占めています。   そして,登記すべき期間について,どれぐらいの期間が適切かというのも,皆の意見が一致しているわけではないのですが,過渡的な登記ということで,短い期間において,法定相続分による登記を促進する,促進の方法は,制裁ではなくて,登録免許税の免除であるとか,そういったインセンティブによるのがいいという意見が出ています。   6ページにある,登記所が他の公的機関から登記名義人の死亡情報を取得することについて,この制度を創設するに当たっては,個人情報の保護等を非常に慎重に考えなければなりませんが,ここに書いてあるような方法であれば,比較的,個人情報に対する侵害の危険性は低いということで,許容できるのではないかという意見が,多数という状況です。   ただし,第2については,少し別の意見がありますので,後で申し上げます。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見の集約に努めていただいて,ありがとうございます。   前段でおっしゃっていただいた抽象的義務にとどめるといういき方は,今後,それも大いにあり得るとして,検討の候補に含めていかなければならないであろうと感じます。   過料を入れたときと,どれくらい現実が異なるか分からないですけれども,過料を科せられる話というものは,ペナルティーであって,一種スキャンダルですよね。そうすると,例えば,内閣改造がある度に週刊誌が,新大臣の誰と誰は,先代が死んだのに相続登記をしていないと報ずる。国会が召集され最初の予算委員会で,法務省事務当局に対し質問がされ,何とか大臣と何とか大臣に過料は科さないか,科さないならばその理由を説明しなさいと尋ねる。こういうのを内閣改造の度にやって,それが何か,いろいろと論戦の皮切りになるという,そのようななりゆきが意義のあるここと考えるかどうか,この辺りは考え込まされます。日本社会が今,極度に相互監視社会になってきていることを踏まえると,そういうことにみんなが汲々としてエネルギーを注ぐという社会でいいかということも,気にしなければいけないでしょう。そのことを考える上では,またしかし,抽象的義務にすると,そういう問題が全くないかということは,それもよく分からないんすけれども,いすれにしても考えてみなければなりません。   それから後段では,情報の取り方について理解はできるがというふうにおっしゃっていただいて,御理解を頂きましたが,それと同時に,恐らく地方公共団体情報システム機構にアクセスし,照会を掛けて情報を頂くということは,国の官庁ならどこでも無制限にできるというものではありませんで,きちんと制度趣旨を説明した上で,それが可能になっていくと考えますから,そのこととの関係でいうと,少なくとも抽象的義務はありますという制度の建て付けを示さないと,恐らく総務省と法務省が協議をして,これから話を進めていきますけれども,そこの制度的・法制的な説明も,なかなか難しいであろうと思います。肝心なところについての両面の御意見をおっしゃっていただきました。   引き続き,意見を承ります。いかがでしょうか。 ○山本幹事 ただいまの話の繰り返しのようになってしまいますけれども,ここにおいては,義務化というときに,過料を科す要件を想定して書かれています。   ただ,現在の戸籍法上の届出も,あるいは住民基本台帳法上の届出もそうだと思いますけれども,基本的な義務の部分と,それから過料の部分というのは書き分けられていて,過料のところは,正当な理由なくという要件が一つ加重されているというようなこともありますので,基本的な義務を定めて,それで,過料を仮に考えるとすれば,そこのところの要件を書くと。   では,その基本的な義務は,何のために書くのかということですが,正に今言われたように,情報連携をする際の根拠になるという意味があって,むしろそちらの方が,実際上は重要ではないかと思います。つまり,本来登記所に届け出なくてはいけない義務が課されているのだから,当然公益上の必要性があって,行政機関が情報連携することができるという形で,細かいことを言えば,技術的な問題,あるいは,情報セキュリティーの問題など,いろいろあるかとは思いますけれども,基本的な根拠にはなるのではないかと思います。   あとは,若干細かいことですけれども,8ページに,死亡した個人に係る情報とありますけれども,これは厳密に言えば,死者の尊厳という問題と,それから,死者の情報がそのまま相続人の個人情報になるという意味があって,普通,個人情報保護法上は,むしろ後者の方の意味で使われているかと思いますので,その点は整理していただければと思います。ただ,結論としては,整理すれば可能なのではないかと思いますが。 ○山野目部会長 いずれの御注意も,よく理解することができます。承りました。   引き続き御意見を伺います。 ○中田委員 しばらく前に部会長が,遺贈についてはどうするかというのが,まだ確定していないけれどもとおっしゃったことなんですけれども,私も遺贈の取扱いについては,いろいろ検討する必要があるのではないかと思います。   一つは,特定財産承継遺言と機能的には似ているからということで,くっつけるということだと思うんですが,やはり相続ではないとか,受遺者が相続人以外の者である場合もあるとか,あるいは共同申請であるとか,いろいろな問題がありますし,それから,遺贈については,放棄ですとか,登記義務者が協力しない場合どうするかとかと,いろいろな問題がありますので,そう簡単にくっつけられるのかなという感じがします。   現行法ですと,相続による権利の承継というのは,一つのカテゴリーとしてありますので,そこで切るというのも一つかなと思います。他方で,死因贈与との区別について,能動的な意思で所有権を取得したか否かというところで区別しているんですが,能動的に取得したのだとすると,むしろ,より義務が大きいといえるのではないかという気もしまして,そこがよく理解できませんでした。また,むしろ,死因贈与にまで広げていくという御提案もありましたけれども,そうすると,今度は,売買との間でどうやって線を引くのかということが出てくると思います。   最終的な線の引き方は,名義人が死亡しているから,あるいは情報連携の基礎にすべきであるからということで,広く死亡に係る登記の変動という,権利の変動を反映するということが考えられますけれども,ただそれは,相続による登記,相続による権利の承継について規定しておけば対応できるのかなという感じもしますので,遺贈と死因贈与の間で線を引くというのは,ちょっと中途半端だなという感じがいたしました。 ○國吉委員 すみません,私の方から,死亡情報の取得の問題について,ちょっと御意見させていただきます。   多分,相続登記を義務化する大前提として,死亡情報と,それから,死亡した被相続人がどの土地,どの建物を持っているかという情報が,一番大事なんだろうと思うんですね。今,不動産登記のシステム上,いわゆる名寄せというのが,非常に困難なんだろうとは思うんですけれども,その点をやはり,もうちょっとシステムを改良していただいて,その名寄せをやはり,きちんとしたものを作っていただくということが重要なのかなと思います。   それから,死亡情報なんですけれども,公的な住基カードですとか,戸籍うんぬんというのはあるんですけれども,またここは,一つは,例えば,我々が取り扱っています表示に関する登記と権利に関する登記の連携というものが,多分出てくるのかなと思っています。   例えば土地の調査をしたときに,隣地の調査において,死亡,いわゆる相続が発生しているというような情報を得る回数というのは,前もお話ししましたが,結構多いということで,そのときにやはり,不動産登記法の規則93条の調査報告書の中で,相続が発生していて,例えば,立ち会いは誰と誰と行ったとかいった情報を,一応提供させていただいているような状況です。   これも非常に個人情報の,高い部分なんだろうと思うんですけれども,これは,一度我々が登記所に収めた情報ですので,登記所サイドとして,その辺の個人情報を十分に配慮していただいて,そういった情報も,使うべきなのではないかなとは思っています。 ○山野目部会長 前段でおっしゃった名寄せは,この部会資料ではない,前の部会資料で,事務当局として進めるということを申し上げていて,今,激励のお話を頂きました。   それから,後段の表示に関する登記との連携も,おっしゃるとおりではないかと感じます。来年の通常国会で,国土調査法の改正が日程としては想定されておりますけれども,地籍調査の過程で集約した死亡情報のようなものを不動産登記と,どう連携させるかという課題がありまして,あれと似た性質の問題について,今,御注意を頂いたものというふうに受け止めます。ありがとうございます。   引き続き御意見を頂きます。 ○蓑毛幹事 部会資料6ページの不動産の登記所が他の公的機関から死亡情報を取得して,連携を図る方法に関する記載は,個人情報に対する配慮をしているものと理解しました。(1)の①で,氏名及び住所以外は,登記記録上に公示せず,登記所内部において保持するデータとして取り扱うと。   そこで質問ですが,このデータをさわれる人が誰になるのか,あるいは,情報の申出にあたっては,本籍地の付いた住民票など,何らかの書類が登記所に提出されることになるのではないかと思うのですが,それらの書類の取り扱いはどうなるのか。今までの附属書類とは違う扱いにするのか,閲覧をどうするのか,そういったところについては,検討されているでしょうか。 ○村松幹事 附属書類の関係,先般も,その関係もありますので,御議論いただいたという,正にそこの部分ですけれども,本籍を含めた本人確認情報あるいは本人特定情報,これを普通に閲覧によって見られてしまうという状況で本当にいいのかというのは問題になりますので,そこは,そういう意味で,整理をしなくてはいけないと考えております。   その上で,本籍情報を扱う者をどれぐらい絞っていくのか,ここも併せて,そういう意味では検討というところで,今でも,何といいますか,附属書類という形で提供されている書類を取り扱っておりますので,それがシステムで検索できるような状態に,どういう形でなっていくのかという部分で,そういう意味では,システムの内容次第で変わってくるのかなと思います。   つまり,戸籍の副本システムを本当に縦横無尽に使えるということだと,相当,これは限定しないとまずいのではないかという話になろうと思いますし,また,そこのやり方を,多少制限的な形になるとかいうことが,もしあるのであれば,多少変わってくるかもしれませんが,問題意識としては,本籍情報はやはりちょっと,特別な位置付けになっているかと思いますので,そういった部分の配慮を念頭に考えるということだと思います。 ○蓑毛幹事 そういった形で,具体的にお示しいただいた方が,より適切に検討できると思いますので,お願いしたいと思います。 ○平川委員 質問が2点あります。7ページ,その他の情報取得先について,「固定資産税台帳等」の「等」とは,何を想定しているのでしょうか。   それから地方税法で,地方自治体から法務局へ情報提供をお願いするという仕組みがあるとなっていますけれども,その逆もあり得るのではないかとの根拠を教えていただければと思います。 ○村松幹事 前者については,差し当たり,一番大きく考えているのは,固定資産税の情報でございます。固定資産税の関係,またいろいろと制度的に,今後もどうしていくのかという議論がされているところのようですけれども,固定資産税の方で把握されている情報について,必要に応じて,こちらの方に頂くということを,必要性に鑑みて検討していくというのが,抽象的にあるのではないかというところです。   それから,後段でおっしゃったのは…… ○平川委員 例えば,法務局の方から地方自治体に対して,「固定資産税情報を見せて下さい」「情報を提供して下さい」というのは,「その情報は公示しますよ」というのが前提になると思うんです。根拠としては,あり得ないのではないかなと思ったものですから,質問させていただきました。 ○村松幹事 今の部分に関していうと,公示,場合によっては公示かもしれませんけれども,まずは死亡情報の把握のツールを増やすという部分で,どうも死亡されたらしいですよということを法務局側で探知する端緒にするという意味合いになります。その上で,そのまま公示するのに,どういう手続を経るのかも含めて,死亡の公示をするのかという問題はまた別の問題として出てまいります。場合によっては,それに加えて,普通に公用請求をして,例えば住民票の写しとか戸籍謄本を取り寄せて,それで別途確認するということも,もちろんあり得ますけれども,まずは端緒を登記所側で持たないといけないというところがあります。その端緒をどういうふうに把握するのかというところに関して,連携による死亡情報の把握だけではなくて,もう少し固定資産税の方から,もし頂けるならというところですけれども,ツールが増えてくれば,もう少し幅広く把握はできるだろうということを記載したというところです。   取りあえず,そのまま,いきなり公示するとか,そういうタイプの話というよりは,端緒的な部分だと思います。 ○今川委員 個人情報に十分配慮するというのが大前提になると思いますが,このような情報を入手するというのは,特に我々の中でも大きな反対はありません。   相続登記を義務化するという前提であれば,登記官が公的機関から死亡情報を取得して,その死亡の事実を職権で公示していくということも,あり得ると思っています。今現に,所有者不明特措法では,そのような公示を職権で,付記登記していくことになっていますので,それは可能ではないかと思っております。   ただ,登記官が定期的に照会を掛けるというのが,ちょっとイメージができなくて,今政府では,相続ワンストップサービスというのを検討されていて,その取りまとめもされていますが,死亡届を端緒として,情報連携を図る仕組みを検討されているということなので,死亡届があった場合に,法務局に死亡の事実の連絡がいく仕組みというのが考えられて,しかるべきなのかと思います。   それから,國吉委員からも指摘がありましたけれども,名寄せや検索の機能を充実させるということについてですが,生年月日もバックに情報として持っているということであれば,もちろん個人情報に配慮するというのは大前提ですけれども,かなりその機能は上がるのではないかと思います。 ○山野目部会長 御意見として承りました。   ただし,死亡した事実を戸籍の届出を受けた当局が法務局に通知するといっても,登記名義人の不動産を所有している法務局の所在地と死亡届が出された市町村役場の場所が一致するとは限りません。どちらかというと,今の状況の中では,ここで書いているように,地方公共団体情報システム機構に登記官の方から照会する方が,効率的で現実的であることでしょう。けれども,御指摘の点は,引き続き研究しなければいけないと感じます。   第2の部分も説明を差し上げていますから,併せて御意見を承りたいというふうに感じます。   蓑毛幹事,先ほど,第2のところについて御意見がおありだというふうに伺っておりますから,そこから伺っていってよろしいでしょうか。 ○蓑毛幹事 意見の前に,確認,質問です。部会資料10ページの2の(1)の自然人の仕組みについてですが,③で,登記官は,住基ネットから得られた情報と,登記情報とが異なることが判明した場合には,当該登記名義人に対して確認をとったうえで,氏名又は住所の変更の登記を行うとあります。   先ほど,この方策は個人情報の保護にも配慮したという御説明もあったのですが,この確認の内容は何でしょうか。変更登記することに承諾するか否かの本人の意思確認,つまり,住民票上の住所や氏名が登記情報と異なっているので,氏名や住所の変更の登記をしますかと聞いて,本人が嫌ですと言えば,登記はしないということなのでしょうか。それとも,本人に事実関係を確認して,客観的に,氏名又は住所が登記情報と異なることが確認されれば登記変更するのか。要するに,確認というのは,本人の了解を取った上で登記変更するという趣旨なのか否かがよく分からなかったのですが,いかがでしょうか。 ○村松幹事 その部分については,ここも個人情報保護ないしは住民基本台帳制度の趣旨を損なわないという,そういう発想がいろいろ出ているところですけれども,結局御本人の,御本人が,では変えてくださいというような意思を持たない状況で,法務局側で行ってしまうのは,やはり難しいだろうというのが,これは住民基本台帳制度の趣旨との不整合を回避するという観点から一つと,それから,もちろんDVの関係への配慮の必要性がありますので,そこを,やらないんですかというふうにこちらが聞くのも,ちょっとおかしな話ですので,いや,それはやりませんということであれば,それ以上深追いはしないという形になろうかと思います。   ただ,確認と,ちょっとふわっとした言い方をしておりますのは,いわゆる登記申請とはちょっと違う意思の表示をしていただく予定ですというニュアンスを込めたつもりです。 ○蓑毛幹事 分かりました。   そうすると,日弁連のワーキンググループの意見としては,第2についても,今おっしゃったような方法,つまり,本人の了解がない限りは公示されない,変更の登記がされないということであれば,先ほどと同様に,抽象的な登記義務であること,制裁は科さないということを前提に,賛成であり,また,部会資料10ページのような方法で,登記所が情報を取ることについても許容し得るというのが,今のところの大勢です。   第2の場合は,第1に比べ,より過料を科すべきでないと考えます。   仮に第2で過料を科すとした場合,この仕組みによると,所有権の登記名義人に連携のための情報を必ず出させ,登記官は定期的に照会を掛けて,客観的に住所や氏名の変更があることを把握し,登記名義人に問い合わせて確認を行う。そこで,登記名義人が,変更登記をするのが嫌だと言えば,もうそれで,客観的に過料を発生させるだけの事実が登記官に判明しますので,過料を発生させるということに直結すると思われます。この方式で過料を科すというのは,非常にまずいと思います。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見をよく理解いたしました。考えていかなければいけないと感じます。   村松幹事が説明した配偶者の暴力の問題があることに加えて,住所の変更の登記の場合には,その前に御議論いただいた相続のような権利変動の場合とは異なり,中間省略登記の概念がありませんから,函館市にこの間まで住んでいた人が,釧路市に移転しているけれども,間もなく来年は札幌市に引っ越す予定ですというときに,ひとまず住所の変更の登記はしないでおきますということは,別に構わないわけであり,そのような局面も考えなければいけないし,逆にそれを過料などで威嚇して,函館から釧路,札幌というふうに移転したものを都度登記せよ,というふうに要請して,ああ,このファミリーは,そういうふうに転々と動いて回っているけれども,どんな家族なんだとかという興味を,登記簿を閲覧した人に抱かせるということもおかしな話であって,そういったことも考慮に入れた上で,弁護士会の御意見もよく分かりましたから,引き続き考え込んでいかなければいけないと感じます。 ○道垣内委員 非常に詰まらないことで恐縮なんですが,これ,現在,例えば私の住所が変わったといって,変更するときには,手数料は掛かるのですか。掛かるとするならば,この制度の導入というのは,我慢していればただでやってくれるというもののような感じがするのです。登記所が気付くまで,じっと我慢していて,変えませんかと言ってきてくれて,おお,では変えますと言ったら,ただになる。 ○村松幹事 その部分は,正に,一つの問題ですけれども,おっしゃるとおり,義務化された中で,登録免許税をどうすべきなのかというところに関わってくる問題だと思います。 ○佐久間幹事 義務化との関係で,ちょっと伺いたいんですが,過料を科すかどうかはともかくとして,氏名又は名称及び住所の情報を更新することは義務とするわけですよね。義務とするんだけれども,義務が果たされていない間に,登記所の方で変更について知ったと。知ったので,変更していいですかというふうに問い合わせをする。これに対して,特段理由がないのに嫌だと言う。嫌だと言った場合は,これは義務違反になりますよというふうに一言言って終わるという,そういうことになりますか。   私は別に過料を科せと,積極的に申し上げるわけではないんですが,過料を科すという効果があるとすると,多分,過料を科されますよという通告をすることになると思うんですが,そうでない場合は,「義務違反になりますよ」と伝えたところ,「分かりました」と返事をするかどうかはともかく,それで済む,そういう扱いになるということでしょうか。 ○村松幹事 抽象的義務にするかどうかと,先ほど来,相続登記の関係とこちらの関係ございますけれども,ちょっとまとめてお話しさせていただくと,今の点に関していえば,住所変更については,それこそ,また過料を科すかどうかという問題が一つございますけれども,仮に過料を科せないということになった場合に,自分ではやりませんという方に対する不利益は,ほかのところで議論されておりますけれども,自分の住所ではないところにいろいろな法令上の通知がいってしまうことになりますよといったタイプの不利益が,どういう内実になるかというのはありますけれども,形を変えて生じることになります。   現行の不動産登記法に基づいても,やはり住所を一致させておかないと,いろいろなタイプの不正登記の防止の施策が動かないと,以前の部会資料にも書きましたけれども,そういう部分もありますので,やはりきちんと住所は最新のものに動かしておいた方が所有者のためにもいいですよということかと思います。   実際,理由があって動かさないケースというのは,我々の整理だと,この間のDVの関係で,形を変えてといいますか,どこかを経由して,本人に到達するんだというような仕組みにしていくのかなと考えております。   それから,ちょっと前に戻りますけれども,山本幹事から御指摘ありました,正当な理由を過料の規定の方に課していくということも想定するべきだという御趣旨だと思っておりまして,我々の方もそこの部分は,正に御指摘のとおり,過料の規定の方に更に上乗せで,正当な理由が必要だという規定を,相続登記の義務のところには書くんだろうということで,3ページの末尾のところに,唐突に正当な理由と書いてしまって,趣旨が分かりにくかったかと思いますが,それはそういう趣旨で,一般的に過料の規定について,こういう要件が更に課されるというケース,多うございますけれども,こういったもので,かなり制約的に,いずれにしても制約的にしていくということになってくるのかなというところがございます。   またこれも,山本幹事おっしゃいましたように,やはりこういった義務ないし,過料付きかどうかというところが影響するかどうかというところは,またこれ,個別の折衝ですけれども,こういった義務があるから,やはり情報を出せるんですと。そうでないと,なぜ登記に,しかも公開されるような登記の方に情報を出していいのですかという疑問というのは,やはりそれは出てくるというところがありますので,そういった情報を出す根拠を整理してあげるという部分と,頂いた情報を法務局としては,しっかりと管理して,必要なことに使っていきますというところをしっかり整理していかないといけないというふうには考えておりますので,またそういった辺り,よく検討させていただきたいと思っております。 ○山野目部会長 藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   まず,全体として,氏名,住所の更新に関しては,やはり表示されている氏名,住所が適正であるということが,土地の管理等を行う者が隣地所有者等と円滑なコミュニケーションをとる上で一番大切なところだと考えておりますので,抽象的な義務であっても,義務化することについては,基本的に賛成です。   法人の場合,非常に膨大な数の土地を持っている会社もある中で,一つ一つの土地に関して更新の手続を行うことが非常に煩瑣であるという課題もあるのですが,この点に関しては,部会資料16の10ページ目の2の(2)で提案していただいているように,会社法人等番号を登記事項とし,商業・法人登記の情報とひも付けすることによってクリアできるところが多いと考えておりますので,これも方向性としては,全く異論はないところです。   なお,これに関連して,お伺いしたい点が2点ございます。まず1点目は,先ほど個人,自然人との関係で,自然人の場合は確認を事前に取る,法人の方は職権で行うということで,ご説明をいただいておりますが,これ,法人の場合は,職権登記を行った旨の通知も基本的には一切ないということなのか,それともあるいは,逐一事前確認はしないけれども,職権で変更登記をしたら,連動して,変わりましたよという通知は何かいただけるのか,ということをお伺いしたいと思っております。   あともう一つは,その下の(注)に関して,法人等番号を届け出た後に,それに商業・法人登記の情報をひも付けてやるというのは分かるのですが,それまでに登記されているもの,それまでに既に所有権の登記名義人として登記されているものに関して,後からひも付けをしていただきたいと考えたときに,これ,既に登記されている不動産の情報を全部出さないといけないという話になってしまうのか,あるいは,既に登記名義人としてなされている表示に関して,この表示とこの表示は全部同じ法人ですというふうな形で,何か申告すればやっていただけるのか,その辺のお考えがもしあるようであれば,教えていただければ幸いです。 ○山野目部会長 いずれもこれからの検討事項であり,検討を求めるという御意見を頂いたというふうに受け止めてよろしいでしょうか。 ○藤野委員 そうですね。もし既に登記名義人として登記されている土地についても,遡って全部ひも付けしていただけるのであれば,会社としては,とても有り難いというところは当然ございます。 ○村松幹事 一応,ひも付けの仕方に関しては,ある程度まとめてやっていただくという方策でないと,なかなか実際上,法人だけでなくて,自然人もそうですけれども,難しいのではないかなという印象を持っておりましたので,各登記所ごとにやりなさいというと,なかなかそれは大変だということになりますので,そうでない方策を考えないといけないという御指摘で承りました。 ○藤野委員 それが何か,例えば登記名義人となっているすべての不動産のリストを出してくださいとかという話だと,なかなか大変かなというところがございますので,そこをどういう形で整理するかというところもご検討いただければ幸いです。 ○山野目部会長 承知いたしました。 ○蓑毛幹事 先ほど,情報連携の仕組みと過料の関係に,焦点を当てて申し上げたのですが,そもそも第1の死亡したときにそれが分かるように,登記上明確にするということと,第2の氏名と住所を常に,最新の情報にしておかなければならないというのは,レベルが違うと思います。   元裁判官の弁護士の方がおっしゃっていたのですが,3,4年に一遍は引っ越しがあるのに,その度に住所変更の登記を行う必要があるのかと。不動産を所有したら,自分が,どこに住んでいるかを全て,番地まで含めて明らかにする義務を負うというのはおかしいとおっしゃる方がいました。あるいは,氏名の変更については,結婚とか離婚とか,非常に個人情報に係わるという問題があることは,以前,橋本幹事からも申し上げました。住所や氏名の変更登記の問題は,公示の必要性がある一方で,個人情報保護の要請とのぶつかり合いもあるということを踏まえて,考えなければなりません。公示はしないけれども,登記所が,バックデータとして必要な情報を持つだけでも,意味があると思いますし,その辺りも含めて,整理する必要があると思います。 ○山野目部会長 御注意はごもっともなことであり,承りました。ありがとうございます。 ○中村委員 第1,第2に共通なのですけれども,公法上の義務違反の効果として,過料に対しては,かなり議論があったところなのですが,以前の資料8ですと,過料による制裁のほかに,罰則以外の不利益といって,3項目挙がっていました。   今回は,それについては触れられていないのですけれども,先ほど佐久間先生の御発言に対して,村松幹事がおっしゃったこと,ちょっと通知のことが少し入っていましたでしょうか。   当時の資料8にある罰則以外の不利益という御提案は,まだ生きているというふうに考えた方がよろしいんでしょうか。 ○山野目部会長 生きているはずです。まず通知は,少なくとも最低限の効果として残ると予想されます。   それから登録免許税は,府省協議が必要ですから宿題ですけれども,引き続き検討課題ではないかと思います。   民事損害賠償責任は,実効性があるかどうかということを,その際の会議でも御議論いただきましたから,いけるかどうか分かりませんけれども,引き続き実効性,その機能の仕方に注意しながら,あり得るとすれば考えていくという程度のお話ではないでしょうか。   村松幹事からも,お願いします。 ○村松幹事 すみません,確認いたしました。   そういう意味では,部会長おっしゃいましたように,個々的にもう一度整理して,お示しをさせていただきたいと思っております。   それぞれに,やはり難易度の問題がございますし,またあと,現行法上,各種法令に基づく通知がございます。あと,新しい不動産登記の制度の下で,いろいろと,登記簿上の住所地をまず基本にして探索をするようにするかというような,幾つかの提案もさせていただいておりますので,そういったものも,直接かどうかはちょっとあれですが,間接的に登記簿上の住所をまずは確認しましょうということになっていくわけで,そういった,ちょっと幅広いものをどう位置付けるのかというのは,もう一度議論いただきたいと思います。 ○中村委員 よろしいですか。   部会資料の第2のところ,氏名,名称,住所というところが,特に通知との関係で,問題になるかと思うんですけれども,念のため申し上げますと,日弁連の議論では,この罰則以外の不利益は,いずれも反対という意見が多かったです。   この通知に関しては,ほかの仕組みの中で,どのような通知をすれば,通知義務を果たしたといえるのかという,そちらの視点から見るということはあろうかと思いますけれども,住所等の変更を反映しなかったことによる不利益という視点で見ると,それは反対であると。つまり,通知義務者がどこまでやれば,通知義務を果たしたのかといえるかという観点では,あるいは,この問題を考える一つの手掛かりになるかもしれませんけれども,住所の変更などを反映させなかったことによる不利益という課し方ということについては反対だという意見がございましたので,申し上げておきたいと思います。 ○山野目部会長 2点御案内しますが,一つは,第6回会議の際に,佐久間幹事が御発言になったこととして,登記簿上の住所に通知しないと,ある扱いがされてしまうという仕組みになるということが,果たして登記義務の懈怠に対する制裁でしょうかということです。それは相続登記の義務化のところだけではなく,一般的に働く可能性のある仕組みであり,それを制裁と位置付けるということについて,体系上,疑問があるとおっしゃいました。今,中村委員の問題意識の重点の置き方と同じではないかもしれませんけれども,趣旨として共通する側面が大きいと感じます。   それから,通知の仕組みは,それ自体として,またお諮りする機会があると思います。配偶者から暴力を受けている者の住所が示されていない場面で,どう通知をしたらいいかとか,そこで法務局にどういう役割を求めると,うまく仕組みが成り立つかということを,今こちら側で検討していますから,またそれをお諮りする際に御議論を,弁護士会の先生方の意見も集約していただきたいと望みます。ありがとうございます。 ○垣内幹事 恐らく当然のことかとは思いますので,念のための確認ということなんですけれども,内容的には,先ほど佐久間幹事,あるいは蓑毛幹事が指摘されたところに関連いたしますが,第2のところの住所等の変更の申請義務に関しまして,一つの観点として,義務化ということをしたときに,それが国民一般に与えるメッセージ性と申しますか,どういうふうに受け止められるかということを,少し注意をしておく必要があるかなというふうに感じております。   と申しますのは,例えばDVの問題について,了解を取るということなので,了解がなければ,あえてしないということで,それはそれで望ましいんだろうと思いますけれども,義務だということになれば,やはりそれは従わなければならないのだろうと考える方もおられるでしょうし,また,部会資料12の方で検討されていた別途の制度というものもありますので,あちらが実現した場合に,そこは公開はしないんですという形で,一応対応はされるので,そこは顕在化しないということになるのかもしれませんけれども,その制度の対象になるかどうかというのが,微妙なラインというものもあるかもしれませんので,その辺りのところで,余り曖昧なメッセージを与えますと,それで不慮の不利益を被るという人が出てくる可能性があるというところを少し懸念いたしますので,その辺りも御留意いただくと,よいのではないかと感じました。 ○村松幹事 すみません,いろいろと本当に議論いただいて,ありがとうございました。   この第1の,特に相続登記の義務のところですけれども,中田先生から御指摘いただきましたが,どこに線を引くのかと,我々もちょっと,売買の方には義務を波及させないために,どこで線を引いたらいいのか悩ましいところで,確かに相続で線を引くというのもありましょうし,というところで考えておりますが,なかなか難しい御指摘も頂いておりますので,ここの線引きについては,またよく考えたいと思います。   それから,5ページ目の辺りのところで,結局,どちらからアプローチするのかという部分がありまして,より長期間のものになるということになると,しかしという,真ん中辺りに書いてありますけれども,結局のところ,何年間も放置されるという状況が続きますので,死亡の事実を何らか公示する必要があるのではないかといった辺りの問題が出てまいりまして,ここを法務局側でやるということになると,職権で何かいろいろと情報を得てやっていくという方式になりますし,この部分について,所有者の側にちょっと負担いただけるほどに,手数の掛からない手続が作れるのであれば,そういう意味では,法定相続分ないし法定相続人の登記というものを一度いれていただく,そういうイメージなのかなというところで,今日も全体的には,そういったところもよく考えてという御趣旨でご指摘を頂いたような気がしますので,もう少し,どういったやり方で,負担がどの程度生ずるのかといったところをよく整理して,中間試案に向けて,ある程度分かりやすい,一つの案として整理できればと考えております。 ○山野目部会長 引き続き御検討をお願いいたします。   部会資料16の第3,外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策の部分を,本日の段階では審議未了といたします。   この部分を審議するだけのために,次回,この部会資料16をお持ちくださいというお願いになりますけれども,やむを得ない仕儀として御海容いただき,部会資料16を次回御持参いただきたいと望みます。   このことを取り上げるほか,次回どのような事項を扱うかについて,大谷幹事から,日時,場所等も含めて案内を差し上げます。 ○大谷幹事 本日も熱心な御審議,ありがとうございました。   次回の日程ですけれども,10月29日の火曜日午後1時から,場所は地下1階の法務省大会議室になります。   テーマといたしましては,本日未了になっております部会資料16の第3の部分,それから,これ,以前から少しお話を差し上げておりましたけれども,地方公共団体からのヒアリングをさせていただきたいというふうに思っております。今のところ,全国知事会,それから全国市長会,全国町村会からご推薦を受けて,それぞれヒアリングをさせていただこうかと思っておりますけれども,参考人の選定については現在調整中でございます。   それから,意見聴取に当たっては,簡単に今の審議の状況,あるいは事務局側で考えていることについて,少し大まかなところを御説明して,参考人からお話をしていただこうかと思っております。次回の部会の前には,どのような質問事項をお送りをして,どのような考え方をこちらでお示ししたかという資料も併せて,お送りをしたいと思っております。   それから,もう10月29日ですので,中間試案の取りまとめに向けたたたき台を,できたところから,またお送りすることになると考えられます。できたところからということでございますので,今まで複数の論点が絡み合っているところを全部整理した形でお出しするというのは,なかなか難しいかなと思いますけれども,その時点で,できるところまでお示しをしたいと考えております。  山野目部会長 それでは,次回会議もどうぞよろしくお願い申し上げます。   第8回会議をお開きといたします。どうもありがとうございました。 -了-