法制審議会 民法・不動産登記法部会 第13回会議 議事録 第1 日 時  令和2年6月2日(火)自 午後1時30分                    至 午後5時37分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会,第13回会議を始めます。   本日は御多忙の中,御参加を賜り,誠にありがとうございました。   本年2月18日に催されました第12回の部会会議の後の状況につきまして,事務当局から説明を差し上げます。 ○大谷幹事 大谷でございます。本日は緊急事態宣言終了後,大変お忙しい中,御出席を賜りまして,ありがとうございます。事務当局から3点御案内をさせていただきたいと思います。   1点目は,この部会の今後の開催方法についてでございます。御案内のとおり新型コロナウイルスの感染の拡大が続く中で,本部会に参加する人数が多数に上ること等を踏まえまして,3月以降,4回の部会の開催を見送ってまいりました。今般,法制審議会におきましては,緊急事態宣言が解除されたことを踏まえ,当面,十分な感染症対策を施した上で部会を開催し,委員,幹事,関係官の皆様には,当省の会議室においでいただくことを基本としつつも,希望する方にはウェブで部会に御出席いただくことを認めることとされたところです。  お陰さまで,本日この民法不動産登記法部会を再開することができましたけれども,これは法制審議会においてウェブ参加を可能として行われる最初の部会になります。事務当局も大変不慣れでございまして,様々な御不便をお掛けすることになるかもしれませんけれども,可能な限り円滑な進行に努めたいと考えております。  また,長時間の審議をウェブ参加併用で行うことについては,参加者の皆様の負担の面でもやや不安がございますので,今回はこれまでよりも審議時間を若干短く設定いたしまして,長くても17時30分をめどに終了したいと考えております。新型コロナウイルス感染症の感染状況は今後も予断を許さないところでございますけれども,次回以降も,皆様に会議室においでいただくことを基本としつつも,ウェブ参加もしていただける形で運営してまいりますので,御協力のほど,よろしくお願いいたします。   なお,ウェブ参加する方々が御発言を希望される場合には,挙手機能というのがございますので,そちらでお知らせいただくことになっております。会場においでの方々には見えにくいかもしれませんけれども,スクリーンの右側に手のマークが出ます。黄色いマークが出ますので,それが出ていれば,その方が手を挙げていることになると御理解を頂ければと思います。   2点目,今後のスケジュールでございますけれども,この間の部会を開催することができなかったために,本年中の法制化に向けた審議時間の確保が大きな課題となってまいります。後ほど御紹介するパブリックコメントの結果を見ましても,全体として中間試案については,権利保護や国民の負担軽減等にも慎重に配慮しながらも前向きに検討を進めるべきという御意見を頂戴しているところです。事務当局としては,所有者不明土地に関連する各種の課題にしっかりと対応するために,この部会において十分な御審議を頂きたいと考えております。もちろん政府方針もございますので,可能な限りの努力をしていく必要はございますけれども,委員,幹事の皆様には引き続き粛々と必要な御審議を賜りたいと思っております。   3点目は,パブリックコメントの結果についてでございますけれども,昨年12月にお取りまとめいただきました中間試案については,今年の1月10日から3月10日までの2か月の間パブリックコメントを実施し,合計で249件,個人が143件,団体が106件でしたけれども,の意見が寄せられました。もちろん論点ごとに賛否は様々でございますけれども,先ほども申しましたとおり,全体として見れば,権利保護,負担軽減等にも慎重に配慮しながら前向きに検討すべきだという意見が多くございました。中間試案に対して寄せられた意見の概要につきましては,今回の参考資料6-1と6-2として配布をさせていただいております。また,これらの資料を更に要約したものとして,参考資料7を本日,席上に配布させていただきましたけれども,御参照いただければと存じます。   なお,今後の審議ですが,中間試案の取りまとめの前の審議と同様に,審議時間を十分に確保するために,事務当局からの部会資料についての説明は割愛させていただければと考えておりますので,御理解を賜りたく存じます。   以上でございます。 ○山野目部会長 事務当局から,この部会の当面の審議の進め方について提案がありました。ただいま差し上げたお話につきまして,お尋ねや御意見がおありでいらっしゃいますれば承ります。いかがでしょうか。 ○中村委員 御説明ありがとうございました。日弁連のチームから2点ほどのお尋ねと,それからお願いがございます。   1点は,パブリックコメントを経て,中間試案で検討していた項目のうち,何かこれからの検討から落ちるものとか加わるものがあるのかどうか。今回の資料を拝見しますと,どうしてこういう順番で出てくるのか少し分からない部分もございますので,今後の審議事項についてのお尋ねと,また,おおむねどのような順番で検討していくということについて,もしプランをお持ちであれば教えていただきたいというのが質問の2点目です。   お願いといたしましては,今回の,例えば資料27ですと,中間試案に提案されていた項目のうち,共有物の管理に関する行為についての同意取得の方法という部分が今回は落ちていて,後日検討ということになっているのですけれども,日弁連のチームで検討いたしました際に,一連の手続を全体としてバランスも見ないと,1項目だけについては,意見を言いづらいというような意見も挙がっておりましたので,いろいろ御都合はあろうかと思いますけれども,もし可能であれば,一連の事柄については一緒に御提案いただけましたら有り難いと思います。よろしくお願いいたします。 ○大谷幹事 ありがとうございます。2点御質問いただきました。中間試案で取り上げておりました各種の論点がございましたけれども,これはもちろん今後の審議でまたお願いをして,部会資料を作成して,審議をお願いしたいと思っておりますが,すみません,いろいろ時間の制約とか勤務体制の制約等がございましたので,取りあえず,中間試案の際にそれほど大きく取り上げていなかったものであるとか,少しここを掘り下げて御議論いただきたいというところを今回は出しておりますけれども,もちろん全体について,またお出しをしたいと思っております。   また,できるだけ一つの塊ごとに,例えば共有なら共有とか,財産管理なら財産管理という形で出していきたいとは思っておるのですけれども,何分時間的な制約がございますので,必ずこういう形というふうにはできないかもしれませんが,もちろん御審議しにくいというのはそのとおりだと思いますので,可能な限りの努力をしたいと思っております。   次回の議題の話もございましたけれども,次回はまた実体法関係で今,部会資料を準備しておりますので,御指摘のあった共有の関係の同意取得であるとか,持分の取得であるとか,そういう論点を取り上げることになろうと思いますし,あるいは,相隣関係等を取り上げることになるかもしれないと思っておりますが,まず,次回は実体法でと思っております。次々回について,まだもう少し検討が必要かと思っておりますけれども,徐々に不動産登記法関係も部会資料を作成して,また御審議を頂きたいと思っているところです。 ○山野目部会長 中村委員,いかがでいらっしゃいますか。 ○中村委員 ありがとうございます。 ○山野目部会長 いろいろ御苦労をお掛けいたしますけれども,是非よろしくお願いいたします。   ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,基本はただいま事務当局から提案があったような仕方で部会を進めてまいるということでよろしゅうございましょうか。   ありがとうございます。臨機にまた見直したり致してまいりますけれども,当面,今御相談いただいたところに即してこの部会の運営に当たってまいるということにいたします。どうもありがとうございました。   人事異動の関係の御紹介があります。委員等に異動が生じておりますから,御紹介を差し上げます。今回から新たに出席されることになった方,お二人を御案内いたします。   東京法務局民事行政部長に異動がありましたことに伴い,伊藤敏治幹事が参加されることになりました。伊藤幹事におかれては,簡単に自己紹介をお願いいたします。 ○伊藤幹事 東京法務局,伊藤でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 よろしくお願いいたします。   続きまして,もうお一方,最高裁判所事務総局民事第一課長の異動に伴い,岩井一真幹事が本日から参加されることになりました。岩井幹事におかれても,自己紹介をお願いいたします。 ○岩井幹事 最高裁民事局の岩井でございます。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 どうぞよろしくお願いいたします。   そのほか,事務当局の側でありますけれども,お三人の方が新しく参加されることになっております。   法務省民事局局付の中丸隆之さん。それから,民事第二課所有者不明土地等対策推進室長の異動に伴いまして新しく室長に就かれた沼田知之さん。そして,民事局局付の吉賀朝哉さんのお三方が本日より新しく参加なさいます。本日は別室でこの会議に出席しておりますから,自己紹介を差し上げませんけれども,委員,幹事の皆様に御相談や御説明に伺う際には,どうぞよろしくお願い申し上げます。   なお,本日は阿部委員,潮見委員,増田委員,山田委員,宇田川幹事,衣斐幹事が御欠席でいらっしゃいます。   本日皆様のお手元にお届けしている配布資料についての確認を宮﨑関係官の方から差し上げます。 ○宮﨑関係官 今回,部会資料27から29までと,参考資料6-1と6-2及び参考資料7を事前送付しております。部会資料及び参考資料につきまして,お手元にございませんようでしたらお知らせいただければと存じます。   なお,本日,パブリックコメントに寄せられた意見を紙媒体でまとめたファイルを会場の入口付近に備えておりますので,お時間のある方は追って御参照いただければと思います。 ○山野目部会長 お手元に御案内を差し上げた資料が参っておりますでしょうか。よろしゅうございますか。   それでは,内容の審議に入ってまいります。   冒頭に事務当局から案内がありましたとおり,50分程度の審議をお願いした後,10分程度の休憩を設けるということを重ねてまいるということを大づかみなイメージとして進めてまいります。   初めに,部会資料27をお取り上げください。審議事項は「通常の共有における共有物の管理」ということでございます。   部会資料27をお取り上げいただきますと,1ページの1のところで「共有物の変更行為」というものが取り上げられてございます。括弧書を加えたところのほかは,中間試案のおおむねそのとおりのものの御提案を差し上げております。   2ページにまいりますと,2の共有物の管理というところで,これもおおむね中間試案に即した提案を差し上げているところでございます。ただし,2の(2)ですが,7ページから始まっております2の(2)の「共有者全員の合意と承継について」というところについて,7ページから8ページ,9ページとお話が続いておりまして,いささか悩ましい論点が提示されてございますから,委員,幹事の皆様方から意見を頂きたいと考えております。   11ページの「3 共有物の管理に関する手続」のところについては,法制的には,ここで話題にしている手続の規律は設けないということを提案しております。パブリックコメントの意見等を踏まえて,このような方向をお示ししているところでありますが,もちろんこのような方向で行くことの得失ということもありましょうから,御議論をお願いしたいと考えております。   その次,12ページに行っていただいて,4のところ,「共有物を使用する共有者と他の共有者の関係等」というところについて,①,②とも中間試案の骨格を保って御提案を差し上げています。アンダーラインを付しているところについて,パブリックコメントの意見を容れて,今回,提案に添えるということを致しております。   そこまでが一つの塊といいますか,一群のお話になっております。13ページからの管理者のお話が少し彩りが異なりますから,まずは部会資料27につきまして,1ページから13ページの5の手前のところまでの範囲で委員,幹事の皆様方の御意見を承るということにいたします。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 まず,部会資料1ページの1の共有物の変更行為について,意見と質問を申し上げます。   この1の共有物の変更行為について,括弧書きを加えたことも含めて賛成します。日弁連のワーキンググループでも,この内容については賛成という意見が多数でした。   質問ですが,「著しく多額の費用を要しない」ということの意義について確認させてください。この要件について,改良工事等で,工事の費用が著しく多額でないことを含むのは当然ですが,それ以外に,例えば共有私道などが念頭にあるのですが,自治体からの補助金で賄われるので共有者には費用の負担が生じない場合であるとか,あるいは,これを行いたい共有者が全ての費用を出すので,他の共有者には負担を掛けないということで進める場合が,「著しく多額の費用を要しない」に含まれるかどうかについて御意見を伺えればと思います。 ○大谷幹事 御質問ありがとうございます。ここのところは正に共有私道の,例えば舗装の工事をするときにどうかとかいうところが問題になっており,取り上げたところでございますけれども,結局のところ,全員同意が必要になってしまう一つの大きな理由は,費用の負担を全ての共有者にお願いをしなければならないのに,過半数の人で決めてしまっていいのかというところが問題になっていたかと思います。そこで,あまり各共有者の負担,反対者の負担が重くないのであれば,過半数で決めてしまってもいいのではないかというところでございますけれども,今御指摘にあったような,補助金が出ているであるとか,あるいは特定の共有者が全部出すからと,他の人は払わなくていいからというときも含まれ得るとは考えております。 ○山野目部会長 蓑毛幹事,いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 はい,それで結構です。ありがとうございます。 ○山野目部会長 ほかにいかがでしょうか。藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 私もこの1番の共有物の変更行為のところ,括弧書きで,共有物の改良を目的とし,かつ,著しく多額の費用を要しないものを除く,という定義を加えていただくことには賛成でございます。   先ほども蓑毛幹事から御指摘ございましたとおり,やはり道路の整備,特に山間部であるとか,そういったところを整備するに際して,実態として,基本的にはもう全部事業者が費用を負担してやっているというような状況もございます。そういった中でも,やはり他の共有者全員の同意を得なければいけない,という要件が残っている,ということが共有者の一部が所在不明の場合に引っ掛かっていたところがございますので,このような形で定義を改めていただくというか,明確にしていただけるのであれば,実務的には非常に有益なところが大きいのではないかと考えております。 ○山野目部会長 道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 すみません,私,最初にこれを読んだときに,その費用の負担の話がポイントになっているわけではなくて,著しい変更については,やはりそれは他の共有者の同意が必要であると,そういう話なのかなと思っていました。費用の話ですよと,だから補助金が出る場合はいいんですよと言われたら,それはまあ,そういう考え方があり得るのかもしれませんけれども,例えば,今回の部会資料の形で条文化されたときに,必ずそういう解釈になるかというと,私はそういう解釈になるのが必然ではないと思います。   次に,補助金が出るという場合はさて措き,自分が払うからということと,先ほどの,他の共有者の所在がよく分からないという問題を組み合わせたときに,自分か払うからという,その意思表示というのはどうやって行うのだろうかというのが私にはよく分からりません。さらに,前提としまして,ある人,共有者の一人ですが,その人が自分が払うのだからと言って改良を行うときで,他の共有者が誰であるかということが分かっているという場合に,なぜ当該他の共有者は同意をしないのだろうと,それには何か一定の理由があるのではないだろうか,俺も共有している,その物が大きく変わるのは嫌だよと言う権利はその人はないのだろうかということが気になりますし,さらには,他の共有者の所在がわからないという場合を前提といたしますと,それは何ですかね,私はこれから改良工事をしますと宣言するのでしょうか。でも,自分の費用で全部払いまして,後から共有者に対して償還の求償は致しませんと言って宣言をしたら,その宣言が後から出てきた共有者との関係で拘束力を持つということになるのかというと,それはどういうメカニズムによるのだろうかというのが,私にとっては少し不思議なところであって,今の議論で皆さん御納得の御様子でしたので,少し私が2点,気になる点を申し上げたいと思います。 ○山野目部会長 会場の皆さんの表情を見ますと,必ずしも納得というわけではなくて,引き続き議論してみようという雰囲気だと理解しますが,蓑毛幹事,何かおありですか。 ○蓑毛幹事 道垣内先生のおっしゃることも,そのとおりの部分があると思いますので,事務当局に,さらなる理論構築をお願いしたいと思いますが,日弁連のワーキンググループの中では,具体的な事例として,共有私道以外に東日本大震災の後の復興の際の問題が出ました。東日本大震災で津波の被災をした土地について,地面の高さを3メートル上げるといった嵩上げ工事をする,こういった工事は広範囲について行わなければならない訳ですが,この工事について自治体が費用を負担するということであっても,これは形質の変更に当たるということで,所有者の同意,共有であれば共有者全員の同意を取らなければならないのではないかということが問題になったと。ただし,現実問題としてそれは不可能であるので,実務上,そこは乗り越えて,相続人代表の方の印鑑を押してもらって工事を進めたと聞いております。このようなことも含め,今回の民法改正で,適切な解決ができるような定めができればいいと思っております。 ○佐久間幹事 私も実は道垣内委員と同じようなことを思って,これを読んでおりました。著しく多額の費用を要しないということの意味は,結局のところ,大きな形状の変更になる場合は通常,多額の費用を要し,それほどの費用を要しないというのでは大したことはできないというようなことを含んで,著しく多額の費用ということで書かれているのかなと思っておりました。それで納得しておったのですが,それも道垣内委員が言われたことを別の表現で言うだけですけれども,共有持分というものが所有権と同質の権利であるといたしますと,その変更というのは結局,持分の内容,所有権の内容を変えるということにつながるものであるからこそ,全員同意が求められているのだと思うのです。   そうだといたしますと,軽微な変更については,改良を目的とする場合には,共有者間の関係があるということを前提といたしますと許容せざるを得ないとしても,大幅な所有権の内容の変更にわたるときは,たとえ利益になることであっても,それを甘受せざるを得ないということは当然のことではないのかなと思いました。   ただ,蓑毛幹事がおっしゃったような事例について,では,できないのですかと言われると,それもそれで難しいなと思い,だからこそ,著しく多額の費用という,何というのか,客観的な費用なのか主観的な費用なのか,どちらでも読めるようにしてあるのかなとも思っておった次第です。   ですから,表現がこれからどう変わるということも問題になると思いますけれども,仮にこの「著しく多額の費用」というふうに今後も残るといたしましても,それは実質的な負担であるのか,改良に係る費用が客観的に大きいのか,小さいのか,どちらもあり得ますねということを確認しておいていただいた方がいいのかなと思いました。 ○山野目部会長 御意見承りました。 ○大谷幹事 ありがとうございました。ここは改正前の区分所有法と同じような表現を取っていて,そこでも軽微変更と言われていた分野の表現でございます。今,御指摘をいろいろ伺って,なるほどと思いましたが,共有物の改良を目的とするというところでまず一つの絞りが入っていて,その上で費用の考え方として,実質的な費用負担という考え方と,改良としての変更の大きさというのと,両方の考え方があると今,確かに思いましたけれども,改良を目的というところで絞られてくるのかなとは思って聞いていたところです。 ○山野目部会長 括弧の中は,かつ,でつないでいるものを除く,ということであり,つまりアンド条件でつないだものを否定しておりますから,そのことに注意を払いながら,道垣内委員や佐久間幹事の御注意を受け止めて申せば,今,大谷幹事が指摘したことそのものでありますけれども,改良を目的とし,というところを厳しく理解した上で,通常の意味の変更と比べて相対的に軽微であるものに限られますということ,その条件は必要条件として充足しなければなりませんというところが理解されていれば,費用の議論に流れてしまわないようにすることが可能になりましょうし,そこのところの理解があやふやになっていると,御指摘いただいた心配のようなことが現実になってくると感じます。今頂いた意見,御指摘を踏まえて更なる検討を続けるということになりましょうけれども,今の点について,何か更におありでしょうか。 ○中村委員 確認させていただきたいのですが,この括弧の中の「除く」となった場合には,変更行為ではなくなるということなのでしょうか。行為自体は変更行為なのだけれども,全員の同意を得なければならない場合から外すということだという趣旨は分かるのですが,その結果として変更行為ではなく管理行為になるのか,今回は処分,変更,管理などの定義規定は設けないようですので,その場合,次の252条を適用して過半数になるのか,それとも,そうではないのかという辺りは,どのようになりますでしょうか。 ○大谷幹事 資料の作り方として,この部分だけを抜き出しているので分かりにくいというところだと思いますけれども,元々管理に関する事項という広いものがある中で,変更行為については全員の同意が必要だというのが今の建付けでございますけれども,変更行為のうちの軽微変更については除くとすると,元の管理に関する事項と同じ扱いになるということになります。概念としては変更には当たるのだけれども,軽微だから過半数でいいということにはなるのかなと思っております。 ○山野目部会長 中村委員がおっしゃった後ろの方の理解で今,答弁を差し上げましたけれども,よろしゅうございましょうか。 ○中村委員 はい。252条についての,2ページの記載が,251条の場合を除き,となっているので,その適用関係が少しうまく飲み込めなかったという意味での確認でした。もちろん法文になさるときにはお考えいただけることと思いますけれども。 ○山野目部会長 分かりました。今の点を法文にする際に注意を致します。   次に松尾幹事,それから,中田委員が挙手をしておられますから,その次,中田委員にお願いします。 ○松尾幹事 ありがとうございます。今問題になっている,部会資料27・1ページの1で,「共有物に変更」の後に括弧書きの部分を付け加えていただいた趣旨は,現行法では変更行為に当たるのか,管理行為に当たるのか,境界線上にあって非常に難しいものが結構あるときに,何れに当たるかの判断基準になるような,明確なルールがあればいいなということで,加えていただいたのではないかと思うのです。   例えば,先ほど共有私道の例が出ましたけれども,共有私道になっている階段に新たに手すりを付けるですとか,あるいは共有私道にある樹木を剪定するですとか,見方によっては変更とも見られるし,見方によっては管理とも見られる,そういう微妙な問題が起こったときに,現在の実務では,変更になることを恐れて,一人でも不明共有者がいるとなかなか手を出せないということも少なくなく,これでは結構不便ですねというような状況があることを前提に,共有物の改良を目的とするときは,形状の変更を伴う場合でも,原則として管理であり,変更に当たらないということを主眼に付けていただいたのではないかと思うのです。そういう積極面をできるだけ活かしつつ,先ほど道垣内先生,佐久間先生からの御指摘がありましたように,自分が負担するといっておいて結局払えなかったり,費用負担の約束を反故にするような事態の発生も含めて,反対する共有者に予期せぬ額の費用負担を一方的にかけるというような,もはや管理とはいえない行きすぎを妨げるための例外則を置いていくという姿勢で,この条文を見ていくのが適切ではないかと思っています。   ですので,特にこの「著しく多額の費用」の部分は,先ほど山野目部会長からも御指摘がありましたように,まずは改良のところで縛りが掛かっていて,利用目的が変わっていない場合は原則として変更ではなく管理とみてよいという判断基準の提示に主眼があることを前提に,では例外なく管理かというと,反対している共有者が通常想定しないような費用を一方的にかけられる可能性が残っても,それは困るだろうし,それは持分の過半数による決定に委ねている範囲を超えるだろうということで,かなり例外的な場面を想定したものではないかと思います。ですので,少し表現ぶりは工夫の余地があると思いますけれども,できるだけそういう,自分が費用さえ出せば,あるいは出すといえば「著しく多額の費用を要しない」に当たるというような誤解のないような形で,このルールを維持し,変更か管理に当たるか形式的に判断するのではなくて,適正な管理の範ちゅうでできることを実務上少し広げられないかという趣旨は,積極的に活かせればいいなと思っております。 ○山野目部会長 松尾幹事に整理を頂きました。ありがとうございました。   中田委員,お待たせしました。 ○中田委員 ありがとうございます。1の実質的な内容については,私も皆様と同じ方向でよろしいかと思いますが,一つ気になりますのは,法律上の処分行為が入らないことがかなり明確になるという印象があることです。別途,処分行為について規定を置かないということに加えて,今回,括弧書きが入ることによって,この変更が物質的変更であるということが非常にはっきりと浮かび上がってくるような気がいたします。   私自身はそれでいいかなと思ってはいるのですが,一応念のために調べましたところ,現在でも学説では,拮抗しているといいますか,251条に法律上の処分を含むという見解もなお非常に有力であり,あるいは半分か,それ以上かもしれません。そうしますと,それとの関係をどうするのか。新しい規定でも,なお法律上の処分を含むというようにも理解できるという方向で法文を作っていくのか,あるいは,もしも法律上の処分行為を除外するということになるとすれば,それに伴う問題がないかどうかを確認しておく必要があるのだろうと思います。   どういう問題点があるかというと,管理行為を越えるものですね,例えば長期の賃貸借,これについては別途,2の(1)の④で手当はされているのですけれども,それ以外にないだろうかとか,あるいは,準共有の場合を考えてみますと,抵当権の準共有ですとか,知的財産権の準共有ですとか,あるいは,預金が共同相続された場合に準共有説が有力でありますけれども,その場合の払戻しをこの変更に含めるというような解釈も一部で出ている,私は賛成ではないですけれども,ということなど,いろいろなところに影響してくるかもしれませんので,その点は検討しておく必要があるのではないかと思いました。 ○山野目部会長 処分の概念を法文の明示の言及から外したことに伴う問題点がなおないかという点について精査を求める中田委員の御要望を理解いたしましたから,事務当局で努めるようにいたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   ただいま話題になった1以外の点についても,1から4の範囲で御意見を承ります。いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 2のところで,伺いたいというか,どうなのでしょうかということがございます。2点ありまして,具体的には2の(1)の④に関連しまして,借地借家法の適用に係ることです。借地について取り上げられていて,借地借家法の適用があるような,例えば賃貸借は,この管理行為としてすることはできないとするというのが結論ですよね。そのことが現在の2の(1)の④で,こうしておけば表せているだろうということだと思うのですが,その上で2点なのですけれども,建物賃貸借の場合に,期間を例えば2年として,引渡しもしましたということですと,定期建物賃貸借などでなければ,借地借家法の適用がされてしまうのだろうと思うのです。その場合についても,現在の案で,建物の使用権は3年に限るということになるのか,つまり更新の拒絶事由とか正当事由ですかね,とかの規律はきちんと外れるということになるのですか,というのが一つです。   仮に外れるということになった場合に,次は借地の場合も同じなのですけれども,2点目なのですが,例えば,共有者全員の同意はなくて,過半数の同意でもってこの期間内の賃貸借をしたが,相手方の方は借地借家法の適用があると見えるような状況だったというようなときに,賃借人の方,つまり第三者の保護規定を置く必要はないのかということです。   後者の方の,第三者の保護規定を置く必要はないのでしょうかというのは,後で出てくるところですけれども,管理者につきましては,一種の権限外行為に当たる,共有者からは委任されていない事項について行いましたというときに,二つの案が確か出ていたはずで,善意の第三者を保護するという案と,内部関係の規律なのだから第三者は一切害されないようにしようという案が出ていたと思います。これと問題状況はかなり似てくるのではないかと思うのです。共有者の過半数で決定したのだけれども,本当は全員で決めなければいけないことでしたと。それほどたくさんはないのかもしれませんが,賃借人から見ると,全員で決めなければいけないということだということが分からない状況だったとか,あるいは全員の同意があると思っていた,この場合について,管理者のところで規定を設けるのであれば,こちらも規定を設ける必要はないのかなと思いました。 ○大谷幹事 前段の方ですけれども,借地借家法が適用されるような建物の賃貸借を過半数でできるのかというのは,現行法でも恐らく争いがあって,借地借家法が適用されるような賃貸借は過半数でできないという理解もあるのかなと思っておりまして,個人的には,ここはできないということになるのかなと思っておりました。それは別の理解もあるのかもしれませんけれども,借家については基本的には過半数では賃貸できないのだということと理解しておりました。   2点目の方は,いいですか。 ○脇村関係官 脇村でございます。今,佐久間先生からあった,この後出てくる善意者保護規定との関係なのですけれども,すみません,私の理解が追いついていないかもしれませんが,あちらで議論しておりますのは,基本的に管理権が及ぶ管理行為について一定の制限をしたケースという理解をしておりまして,今,先生がおっしゃっていたのは,どちらかといいますと,かつ,今,参事官の大谷から説明した説明した立場に立つのだとすると,そもそも管理行為の範ちゅうを越えているケースについて,それを誤解していたケースかなという気もしますので,少し状況は違うのではないかという気は,今伺っていて,したのですけれども,また後で議論する際に改めて考えたいと思っております。 ○山野目部会長 佐久間幹事から引き続き御発言を承りたいと考えますが,問題提起していただいた2点のうちの1点目は,確かに借地権の方については,法律が定めている年数との比較で機械的に,借地権になってくることは論理的にあり得ないというふうに外すことができますけれども,建物の賃貸借の方については,正当事由制度の適用のない建物賃貸借に限られてくるということが,ここの文理だけから当然にそういう解釈,解決になるかという点について,なお議論の余地が残るということは,御指摘のとおりであります。部会資料作成の意図は,ここでは明示していないけれども,元々解釈上,管理行為としてそれはできないという理解が前提になっていたものであり,それはひとまずの説明ではありますけれども,果たしてそれで疑義を払拭することができるかどうかを,なお事務当局において検討いたします。   佐久間幹事の御指摘の2点目でございますけれども,確かに使用権の設定を受ける者の信頼といいますか,取引の安全のことを考えると,類似の局面であるかもしれませんけれども,後で御議論をお願いする管理者の権限の方は,言わばその管理者の権限をその事案に即して制限したものでありまして,世の中の人はそれは知らないことがむしろ出発点であると思われますけれども,こちらの方は,1点目で御議論いただいたような借地借家法の解釈の問題という論点はあるとしても,そこが定まっていれば,何と申せばよろしいでしょうか,法の不知は乗り越えてくださいと相手方の方に期待してしかるべき状況であるかもしれません。ですから,似ている面もありますけれども,質的にそれが全く同じかどうかということは,もう一度考え込んでみる必要があるようにも感じますから,両方の点を通じて,今,事務当局が検討すると申しております。そのような議論の紹介を今,差し上げましたけれども,佐久間幹事の方でお続けになることがあったらお話しください。 ○佐久間幹事 1点目に関しましては,私は別に借地借家法の適用が建物に関してあることになるだろうということは全く考えておりませんで,それは,そのような借地借家法の適用のある建物賃貸借の設定はできないというふうに,この規定によって,なるのだろうとは思っておりました。ただ,借地についてフォーカスされる形で借地借家法との検討がされていたために,借家については借地借家法の適用のある賃貸借がなお可能であるということが残されているということなのかと思って申し上げた次第です。   それから,2点目に関しましては,後半で議論すればいいのかもしれませんが,共有者の過半数で,例えば管理者を選び,全員同意でならばすることのできる,例えば建物所有目的の土地賃貸借を管理者がしましたという場合ですと,確かに管理者の権限の問題ではあるのですけれども,管理者の権限がどこから出てくるかというと,共有者の各人の権限といいますか,管理権,処分権,変更権から来るものなので,同質の面があるのではないかと思ったということが一つ。同質の面があるというだけで,全く同質だと申し上げるつもりは,もちろんございません。   その上でさらに,2の(1)の④におきまして,共有者が過半数ですることができる行為を相当明確化しようということになるのであれば,それですることができない行為というのも,ある意味では明確になるわけでして,そのすることができない行為について,そのできないの意味をはっきりさせられるのであれば,させることも考えられるかなと思って,先ほど発言をさせていただいた次第です。 ○山野目部会長 お話の趣旨はよく理解しました。引き続き検討いたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○松尾幹事 部会資料27・12ページの4のところにいってよろしいでしょうか。共有物を使用する共有者と他の共有者の関係等の①について,下線部を付していただいた部分について,賛成であります。   ②の点について,後段の部分なのですけれども,共有物を使用する共有者が,自己の責めに帰すべき事由によって共有物を滅失または損傷した場合に,共有持分の価格の割合に応じて賠償する義務を負うという,この後段のところは少し引っ掛かる気がいたします。例えば,共有物がその共有者の責めに帰すべき事由ではなくて,例えば自然災害であるとか第三者の行為によって損傷したという場合に,例えばA,B,Cの3人が持分各3分の1で共有する物に300万円の損傷が生じたというときに,それを修繕するときにはA,B,Cが共有持分の価格の割合に応じて100万円ずつ分担して直しましょう,もしAが300万円支出してB,Cに求償できる場合も,あるいは帰責事由ある第三者Dに損害賠償請求できる場合も,100万円ずつですという,その場合に持分の価格の割合に応じてというのは非常によく分かるのですが,共有者の一人が自分の帰責事由ある行為によって損傷を加えたときに,その責任についても果たして3分の1の持分については自分のものを傷付けたのだからという理由で,その責任が制限されるのかということが少し気になりました。むしろ,共有者間での賠償請求の問題は,共有者間の善管注意義務違反の債務不履行による損害賠償請求とか,あるいは共有持分権侵害の不法行為による損害賠償請求という形で,各共有者がその持分に基づいて,共有物全部の使用権を持っているという前提で,どれだけ損害があったのか,損害額や因果関係等の立証によって決まる問題ですので,逆に,Aに帰責事由ある行為で損傷が生じ,これを修理したBがAに修理費用300万円の請求をしたところ,いや,私の持分の価格の割合に応じて100万円分は引くからねという形でそれが制限されてしまうのは,違和感があるかなという気がいたします。あるいは私の誤解かもしれませんが,後段についてはこの点が気になりました。すみません,私の誤解であれば申し訳ありません,そこは撤回いたしますが,以上です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。決して松尾幹事の誤解ではなくて,②は前段の善管注意義務が規律として表現されていれば,後段の損害賠償責任の発生の有無,それから発生した場合の具体的な損害賠償の内部,外部の法律関係については,一般の規律の適用を待つということで論理的におかしくはないとも考えられ,もしかしたら後段は法制的に不要であるかもしれません。既に補足説明でその方向の示唆を記しておりますし,なおさら,松尾幹事が御指摘のように,かえってその法律関係の処理に混乱ないし硬直化を招くような側面があるとすれば,ただいまの御注意を承って,②後段の規律の要否について引き続き検討するということにいたします。そのようなことで,松尾幹事,ひとまずよろしいでしょうか。 ○松尾幹事 はい,結構です。ありがとうございます。 ○道垣内委員 すみません,外出自粛をしているうちに,頭の中にある想定型が,所有者が明確な単独所有の土地になってしまいまして,共有の頭に急に切り替えることがなかなかできないのですが,佐久間さんがおっしゃった2ページの共有物の管理行為に関連する事柄について発言させてください。   管理行為としては短期賃貸借しかできなくて,借地借家法が適用されるような借家契約というのは処分行為であり全員一致でやらなければならないということなのでしょうけれども,処分行為といっても,例えば売却をするとか,壊してしまうといったりするのは,厳密に言えば,壊してしまう場合には老朽化したときがありますけれども,まあ,細かいことを言わなければ,処分行為と管理行為とが行為として性質が根本的に違い,外形的にも差異がある場合もあると思うのです。それに対して,佐久間さんがおっしゃった賃貸借契約というのを考えますと,長く貸すのは処分行為だよと,過半数でできるというのは短期賃貸借なのだよというのだけれども,外形的には同じ賃貸借契約なのです。したがって,処分は全員なのだけれども,管理は過半数でよくて,管理はこういうものだというのが,少なくとも第三者には分かりにくいシステムになっているし,全員で一致して賃貸借契約を締結したというのと,ほとんどの人が賛成して賃貸借契約をしたけれども,一人の人についてはもう,明確なオーケーは取っていないといった場合なんて,連続的な話だと思います。佐久間さんのおっしゃったことの繰り返しになるのですが,少し,取り分け第三者の立場をどう考えるのかというのを検討する必要があるのではないかと思います。言いっ放しで結構ですが。 ○山野目部会長 道垣内委員のおっしゃることはよく理解しました。言いっ放しということではなく,佐久間幹事が最初におっしゃった2点を総合し,包括して,新しく整理をしてくださったものと受け止めます。確かにその点,先ほど整理いたしましたように,引き続き検討いたします。それとともに,例えば担保不動産収益執行のときの管理人がどういうことができるかというようなことを定めている従前の規定場面の法制上の措置は,借地借家法の適用があるとかないとかいうことを明文では言及しておりませんから,ここをことさら,それを言及する法文に仕上げていくことがよいかといった法制的な観点も,少し悩ましい部分があります。本日の佐久間幹事,道垣内委員の御指摘を内容的に受け止め,法制的な観点も踏まえて,引き続き検討してまいります。   ほかにいかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 部会資料2ページの2(1)の③について賛成です。そのうえで質問ですが,この「特別の影響」がどのようなときに認められるかが,少し分かりにくい。具体的な例示であるとか,「特別な影響」が認められるための要素であるとか,何か,そういったもので説明をした方がいいと思います。中間試案の補足説明のときには,確か,共有物の管理に関する事項を定めて,ある共有者に土地のうえに建物を建てることを前提として使用させ,実際に当該共有者が土地の上に建物を建てたような場合が例として挙げられていて,そのような場合に,当該共有者の土地の使用権を取り上げるのは酷なので,「特別の影響」が認められるという趣旨の説明があったと思います。それ以外に一体どのような場合に「特別な影響」が認められるのか,何か具体例な判断要素があるのかなど,お考えがあれば,御説明いただければと思います。 ○大谷幹事 特別の影響という言葉がいいかどうか,これはまた法制的な検討が必要になると思っておりますけれども,ここでは,共有物の管理に関する事項を決めましたと,それに基づいて共有物を使用している人がいますということを念頭に置いたときに,それをまた別の人に使わせるとか,また別のルールを決めるということになれば,当然何らかの影響はある。当然影響はあるのだけれども,その中でも特に困るようなことがあるという意味を,特別の影響という言葉に今は託して書いておるというところでございます。   少し補足説明のところに書きましたけれども,例えばこれが,共有物が建物であるときに,誰か一人が使っていて,それを生活の本拠にしているというときには,やはり生活の本拠を他の共有者の合意で無理やり奪ってしまうというのは酷なことが多いだろうということで,そういう場合には特別の影響に当たるのではないかといったようなことを書いております。もちろん,どういう形で明確化するか,共有物は様々,動産も建物も土地もあるわけですので,うまく書き切れるかというところがございますけれども,何らかの形でまた明確化していく努力はしたいと思っております。 ○蓑毛幹事 この後,恐らく中村先生から更に御発言があるかと思うのですが,日弁連のワーキンググループの中では,今ご説明があったような,「特別の影響」すなわち共有物を使用している共有者にとって特に酷な事情がある場合に,当該共有者の同意がない限り,③で共有物の管理に関する事項の定めの変更ができないというのであれば,同様の事情がある場合には,②の場合にも,当該共有者の同意がない限り,共有物の管理に関する事項の定めは変更できないとすべきではないかとの意見がありました。元々日弁連は中間試案の段階でもそのような意見を申し上げていたところです。単なる共有ではなく遺産共有の場合には,被相続人との間の何らかの合意によって,共有者が生活の本拠に使っている場合があるが,②の規律では,立証の問題も含め,このような共有者が保護されない場合が生じるのではないか。また,被相続人が意思無能力に陥っている状態でその介護に当たっていた共有者が,共有物を生活の本拠に使っているような場合には,当該共有者と被相続人との間では明確な合意は認められないけれども,「特別の影響」が認められる場合には,当該共有者の同意がない限り,その使用権が奪われないとすべきではないかという意見が強くありました。ただし,日弁連ワーキンググループの中でも,②の場合には,他の共有者の利益を考えて,このままの案でいいという意見もありました。両方の意見に分かれているという状況です。 ○山野目部会長 そうしましたら,中村委員のお話を伺ってから事務当局のお話を伺った方がよろしいでしょうか。 ○中村委員 ありがとうございます。蓑毛幹事から適切に御説明いただきましたので,内容については申し上げることはないのですけれども,この項目は,遺産共有の場合もほぼ同様の規律を設けることを想定しているという記載がございますので,あるいはそこできちんと御提案があるのかもしれませんけれども,今それを見ない段階では,このことは申し上げておかなければいけないということです。   あと1点,2ページの2項(1)①の,その過半数で決するということとの関係での3項,ページが飛んで,11ページの3項の方の過半数で決する際の手続についての規律というところです。中間試案の段階では,日弁連としては何らかの手続保障を設けるのであればということで賛成意見を述べさせていただいておりますが,今回,規律は設けないという御提案になっておりますので,それに対して少し申し上げたいと思います。   一つは,やはり少数持分権者の権利をある意味,侵害する事態になることは間違いがないので,全くその手続保障を設けないということはいかがなものかという意見がかなりありました。ほかの共有者の所在が知れない場合,つまり,ここで想定されている所有者不明土地問題などのケースに限って言えば,確かに過度な手続保障を求めると負担が大きく,なかなか利用などが進まないということはよく理解できます。しかし,そのような,言わば病理現象と言ってしまっていいのかどうか分かりませんが,そういう現象を想定した定めが,通常の,全共有者が誰で,どこにいるのか分かっていて,連絡を取ることもできるというケースにまで全部かぶってくるということになりますが,そのような場合まで所有者不明土地問題を想定しての規律が掛かるというのは,逆なのではないかと。つまり,通常の場面を規定しておいて,必要のある場面はその手続をしなくてもいいという例外的な扱いにするというのが筋ではないかというのが1点です。   もう一つは,規律を設けないとした場合に,手続要件がない状態になりますので,自称管理者,例えば,過半数で決定を受けましたからこういうふうにしますと言ってきた人がいたとして,それに対して,本当に有効に協議してくれたのだろうかということは常に心配になるところで,第三者の立場からすると,共有物件に関しての取引等は慎重にならざるを得ないということになるのではないか,そうすると,かえって動かしていくことの阻害になりはしないかという意見も出ておりましたので,全く規律を設けないことでよいのかどうかというのは,引き続き検討していけたらよいなと思っています。 ○山野目部会長 二つ話題提供を頂いたうち,まず2の(1)②に③ただし書と同様の規律を設けることの適否について問題提起を頂いたところから,事務当局の考えをお尋ねします。 ○大谷幹事 ここ,特別の影響,確かに日弁連の方のパブリックコメントの際の御意見でも,特別の影響というのはどうかというようなお話もあったと思います。遺産共有でも同じなのかという点については,今後また部会資料をお示ししたいと思っておりますけれども,現時点では,中間試案の際と同じように,この規律は直接適用なのか,何か別の準用規定を置くかという問題はあるにしても,適用が遺産共有にもあるという方向で考えたいと思っております。   その上で,最高裁の判例で認められているような,被相続人と相続人との間で使用貸借契約が認定されるような場合に,相続人の過半数の決定で使用する人を変えるということができるかということですけれども,そのような決定をすることができたとしても,使用貸借契約関係がありますので,それ自体を解約しない限りは結局使用貸借の借主が使うことになるはずで,当然に解約されるわけではないと思いますので,使用貸借契約関係として保護がされ得るのだろうとは思っております。   今,蓑毛幹事からは,立証の難しい場合もあるのだというようなことがありましたけれども,立証の問題と一緒くたにして考えてよいのかというところはあろうかとは思います。ここで御提案をしておりましたのは,他の共有者の同意を得ずに無断で使い始めた共有者を,他の共有者が過半数の決定によって変えましょうと,ほかの人に使わせましょうということを認めてよいかどうかということで御提案をしておりましたけれども,やはりその勝手に使い始めた人をどこまで保護するのかという問題があるので,ここでの御提案としては,特別の影響というような規律を設けないという方向で御提案をしているところでございます。   もう1点,中村委員から二つ御指摘がございましたけれども,確かに共有者間のコミュニケーションという形で。 ○山野目部会長 2の(1)②の規律についての御意見を頂いたところで,今,事務当局からお話を差し上げましたけれども,中村委員,蓑毛幹事も含め,そこまでのところで何かおありでしょうか。よろしゅうございますか。   そうしたら,11ページの3についての事務局のお話を続けてください。 ○大谷幹事 失礼いたしました。   2点,過半数で決する際の手続についての規律を設けるべきではないのかということで,手続保障の観点というような御趣旨のことがございました。ここのところも,この部会でかなり最初の方からいろいろな形で御議論を頂いていて,元々は,協議を要しないで決めていいのだということを明確化してはどうかというところから御議論をしていただいて,そこはそうではないはずだと,コミュニケーションが必要なはずだということで,現行法と同じく,過半数で決するということだけの規律を置くという形で,この中間試案では最終的にお示しをしています。今,御指摘がございましたけれども,現行法においても過半数で決する際に手続の規律がないわけですけれども,そのこと自体に問題があるのかというと,事務当局といたしましては,現行法の規律自体がおかしいというわけではないのではないか,結局,わざと排除されて権利行使の機会を奪われたような共有者がいたときにどうするのかという問題がありますけれども,それは恐らく現行法でも権利濫用等の形で保護が図り得ると思われますので,今と変わりないのだと,何か改めて,特別に重たいものを載せるわけでもなく,特別に軽くするわけでもない,今と同様の解釈に委ねるということを考えて提案をしておるところでございます。ただ,ここはいろいろな考え方があると思われますので,また皆様の御審議を踏まえながら考えていきたいと思います。 ○山野目部会長 11ページの3について,今,事務当局の方の資料を作るに当たって考えたことの御紹介をしましたけれども,ここについていかがでしょうか。   それでは,また,ただいま蓑毛幹事と中村委員からお話しいただいたことを踏まえて検討を続けることにいたします。   藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 部会資料27の7ページから書かれております,共有者全員の合意と承継についてというところに関して,どのように考えるかということでご提案いただいているわけですが,これは補足説明のところでも書いていただいているとおり,実務的に考えますと,基本的には当事者間の合意が尊重される,優先するという形の考え方で整理していただくのが一番よいのではないかと考えております。   実際,例えば不動産開発の共同事業体のようなものを想定いたしますと,共有者間にかなり複雑な合意が存在しているというところもございますし,それが民法の規律,共有の規律に反するということをもって効力が認められない,あるいは登記をしないと特定承継人に対抗できないという話になってしまうと,やはり実務的なハレーションはかなり大きくなってしまうと思います。仮に民法の規律を強行規定だと考えるとしても,共有者間の合意によって民法の規定よりも要件を,ハードルを上げる場合もあるでしょうし,下げる場合もあるでしょうし,いずれとも言えない場合もあるでしょう。そのような場合に,どのような場合が無効で,あるいは有効で,といったことを考えていくと,やはりなかなか民法の規定を一律に優先してという形だと混乱が生じるのではないかと考えております。   実務上は,共有者の一部から特定承継を受ける者に対しては,特に大きな開発案件等であればあるほど,きちんと共有者間の契約で縛って,特定承継人に権利義務を全部移転する形でないと事実上共有持分を承継できないような形になっておりますし,仮にそういう契約上の取り決めがなかったとしても,実態としては現在の判例に基づく解釈のように,共有者間の合意の効力が特定承継人にも及ぶ,ということを原則とした運用になっていると思います。このような状況を前提とした上で,万が一それで不都合なことがあれば,また別の解釈も採り得るという柔軟性を残しておくのが,一番ハレーションは少ないと思いますので,民法の規律と共有者間の合意の関係も,今申し上げたような考え方で整理していただければというところが意見でございます。 ○山野目部会長 藤野委員から,254条は改正しない方向がよいという御意見,そのほかの御指摘を頂きました。   この点について,ほかに御意見はおありでしょうか。 ○佐久間幹事 254条を改正すべきだという意見は持っておりませんけれども,共有者全員の合意でもって,この共有に係る民法上の意思決定ルールを変更することができるという,その旨の規定を置くことを考えているのかどうかに興味があります。置かないのでしたら,特に意見はないというか,解釈に任せたらいいということなのですけれども,今,藤野委員がおっしゃったところにも出てきたのですが,例えば,保存行為を全員同意でなければすることができないと,そんなことを定める人がいるとは思いませんけれども,そういうことが定められた場合に,この合意が有効かといいますと,共有者間ではいいのかもしれませんが,社会における物の利用についての,公序というと言いすぎなのかもしれませんが,それを阻害する面があって,当然に効力を認めることはできないのではないかと思うのです。   それは,そこまで極端な例ではありませんけれども,区分所有法で区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数でもって議決しなさいというものを,過半数まで下げることはできるけれども,上げることはできないというところにも,恐らく,決定困難化というのでしょうか,あるいは決定不可能化は認めないという考え方が表れているのではないかと思うのです。他方で,全員同意で本来しなければいけないものを,一旦全員同意で過半数でできるようにしましょうということには,そのような問題はない。   そうなりますと,正に藤野委員がおっしゃったことなのですけれども,要件を民法よりも加重するのか緩和するのかで考え方はいろいろ違ってくると思うので,もしこの,今のところをどのように考えるかというふうにしか書かれていないので,最初に戻りますが,規定を設けるということであると少し,考えるべきことが多すぎて,難しいのではないかなということを申し上げたいと思いました。 ○山野目部会長 ただいま佐久間幹事から事務当局に対するお尋ねの形式で御発言を頂きましたが,お答えはありません。だから部会資料のこの27の説明を最初に申し上げたときに,2の(2)のところは悩ましいので御意見をおっしゃってくださいと申し上げているところでありまして,細かく見ていきますと,2の(2)のうち,藤野委員が御発言いただき,佐久間幹事にも引き継いでいただいた254条の方は,恐らくこれを何か改めるような,とても良いアイデアを見いだすことには困難があるという方向を示唆する部会資料の文章になっておりますけれども,ここも決め打ちではありません。   加えて,当事者間において,この民法が定める意思形成の仕方の振り合いを変更する合意が,様々なものがありますけれども,それについて何か規律を置くかということについては,部会資料自体が委員,幹事の御意見を踏まえて今後の立案を進めるという形になっていまして,ここのところは様々な考えがおありでしょうし,困難な問題があるという自覚の上で,部会資料をお示ししているところであります。   佐久間幹事,何か引き続き御発言になることはおありでしょうか。 ○佐久間幹事 いえ,もうございません。 ○山野目部会長 よろしいでしょうか。今の点,ほかにいかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 254条の規律を改めるかどうかですが,部会資料に書かれているとおり,共有者間の合意を知らない特定承継人の不測の損害にどう配慮するのかということで,非常に悩ましいと思っています。日弁連のワーキンググループの中でも,意見は分かれましたが,多数は現行のままでよいという意見でした。藤野委員がおっしゃったのと同じことで,大規模な商業施設等の場合の共有物に関する合意は非常に複雑なものになっていて,それを登記しない限り,特定承継人に対抗できないとすると,実務上非常に大きな問題が生じる。逆に,経済的な価値が低い共有私道などを考えてみても,多数存在する共有私道に関する合意について,一々全て登記をしなければ特定承継人に対抗できないと,実務上,混乱が生じるということで,複雑なものについても単純なものについても,問題があって,現行法の方がよいという意見が多数です。   ただし,一部のメンバーから,この問題は登記による対抗関係ではなく,善意無過失の特定承継人が保護される仕組みとしてはどうか。共有者間の合意を任意の登記事項とするなどの制度を設けたうえで,特定承継人の過失の有無を適切に認定することで,合意をした共有者と特定承継人との間の利害衡量を図れるのではないか,という意見がありましたので,その点だけ付け加えておきます。 ○大谷幹事 最後に蓑毛幹事から御発言を頂いた点,結局のところ,これ,第三者というか,承継した人をどのようにして保護するのかというのは非常に難しいというのは,おっしゃったとおりと思っております。この管理に関する合意は,共有物をうまく管理するために合意をするはずでございまして,一部の共有持分を移転したために管理ができなくなってしまう可能性があるというところで,善意の第三者,善意無過失の第三者,どちらでもそうですけれども,第三者が入ってきたときに管理がしにくくなるということ自体が,なかなか難しい問題があるなということで,皆さんの御意見を聴いてみようということでお出しをいたしました。藤野委員からも蓑毛幹事からも,実務上の問題が様々あると御指摘いただきまして,ありがとうございました。それを踏まえて検討していきたいと思っております。 ○山野目部会長 ただいま話題になった点について,ほかに御意見はおありでしょうか。   よろしいですか。では,引き続き今日承った御意見を踏まえて準備を続けるということにさせていただきます。   1から4までの範囲で,ほかにいかがでしょうか。   よろしゅうございますか。それでは,部会資料27は5のところが残っておりますけれども,本日初めての会議の方式で,随分時間が経過しておりますから,ここで休憩といたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開をいたします。   部会資料27の5のところでございます。共有物の管理者の関係についてお話が残っておりますから,そこについての審議をお願いすることになります。13ページ,5の(1)のところは,管理者の選任,権限,解任等についての事項をお諮りしております。中間試案から大きく変えたところはございません。一部,文言についてパブリックコメントを踏まえて見直しております。   それに続けて,16ページの(2)にまいりますと,管理に関する事項を決した場合の取扱いということを話題とし,甲案及び乙案を並べて御提示申し上げているところでございますから,御意見を承りたいと考えます。   18ページにまいりますと,(3)委任関係という項目をお示ししてございます。ここについては中間試案の段階で,今御覧いただいているような「ア 第三者を管理者とした場合」,「イ 共有者を管理者とした場合」と,この二つの局面をそれほど区別しない形で中間試案における方向を示していたところでありました。けれども,ここはパブリックコメントを踏まえてというよりも,その後の理論的な精査を踏まえて,この二つは,最後にどうなるかはともかく,ひとまず分けて御議論いただいた方がよろしいものではないかという趣旨でお示ししております。しかも,アについてもイについても甲案と乙案という二つの可能性をお示ししているところでありまして,この辺りの点につきましても,中間試案よりもなお細密な御議論をお願いしたいということで,御提示申し上げているところでございます。   21ページの(4)のところにいきますと,解任の問題についてどのように考えたらよいかという問題を提起してございます。   そして,22ページで,その他という幾つかの点を御案内しているところでございます。   この部会資料27の後ろの方,5の部分について御意見を承ります。委員,幹事におかれましては,どうぞ御随意に御意見をおっしゃってください。いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 どこでもよろしいのですね。 ○山野目部会長 どこでもよろしいです。 ○佐久間幹事 先ほど少し申し上げたこととの関係で,16ページですかね,管理に関する事項を決した場合の取扱いにつきまして,甲案と乙案が用意され,どちらがいいと思いますというのは申し上げてよろしいのですよね。 ○山野目部会長 いや,それは言っていただかないと,この後に困りますから,是非お願いします。 ○佐久間幹事 乙案は,いかにも法人とか団体の管理者の場合に出てくるような考え方だと思うのです。単なると言っていいのかもしれませんが,共有全般について,いかに管理者を選のだといたしましても,内部関係の問題だとするというのは行きすぎではないかと思っております。したがって,私は,もっとほかの方がいいという御意見ももちろんあるのかもしれませんが,この中では甲案の方がよろしいのではないかと思います。実質的なこともそうなのですけれども,理屈から言っても,共有者をいかにも,管理者を選ぶ場面では,何というか,かっちりとした団体のように捉えるということにも問題があると感じて,そのように思っております。   ほかのことも申し上げてよろしいですか。 ○山野目部会長 どうぞ。 ○佐久間幹事 (3)の18ページの委任のところなのですが,アで第三者を管理者とした場合に甲案と乙案が設けられておりますが,私はここは乙案の方がよろしいのではないかと思っております。というのは,単純な比較はできないのかもしれませんけれども,例えば,共有物の賃貸借をしますというときに,全員一致ではなくて賛成者と非賛成者がいる場合ですが,非賛成者も当然に賃貸人に加えることができるかというと,それはそうはいかないのではないかと思います。それで,委任の場合だと違うのかというと,私にはそこが違うという理屈が必ずしも見いだせないので,乙案の方がいいのではないかと思っております。   共有者を管理者とする場合はどうかというと,これも私は乙案の方がいいのではないかと思っています。なぜかと申しますと,確かに共有者の場合は,自己のために使用するという側面はあるのでしょうけれども,共有物の管理に当たることをする局面で,過半数の決定を得て,ある共有者の一人が自己のために使用,収益をするという場合ももちろんあるわけですが,それとこの場面を区別するとすると,今申し上げた場合は自己のためにするのに対し,飽くまで委任を受けてやるということであれば,自己のためにも含まれているのだと思いますが,他の共有者のためにという側面も入っているはずだと思いますので,共有内部の関係のみに吸収されることはないのではないかと考えるからです。   その上で,すごく細かくて申し訳ないですけれども,20ページの1の(5)のところで,乙案によると,管理者は共有者のために誠実かつ公平にその権限を行使しなければならないという提案は採用困難であると書かれているのですが,このままだとそうだと思うのですけれども,管理者は,ワーディングはそれでいいかどうかわかりませんが,委任者であるところの共有者のために,誠実かつ公平にというのは,なお残り得るのかなとも思いました。一応,それを御検討いただければと,勘違いかもしれませんけれども,そう思いました。 ○山野目部会長 佐久間幹事から,それぞれの論点について甲,乙と示しているところについてのお考えを頂きました。誠にありがとうございます。   今川委員,お願いします。 ○今川委員 今川です。よろしくお願いいたします。   5の共有者が選任する管理者(1)の選任と権限というところなのですが,これは(3)の委任関係にも関係してくると思うのですが,(1)選任・権限のところの補足説明を見ると,契約の当事者は管理者であって,共有者は契約の当事者とはならない。ただし,契約の当事者ではないけれども,共有者は管理者の行為の効力を否定することはできない。また,管理者が別途,共有者から代理権を与えられて代理人として契約をすることもあり得るということで,いろいろな考え方が書いてあるのですが,これはあれでしょうか,通常の管理行為であれば,管理者が契約を締結して,共有者はその行為を否定できないのだとしておけば,特に問題はないだろうと。   ただ,例えば管理者が共有者全員の同意を得て売却等の処分行為をする場合は,これは個別に同意を得るのですから,それは代理権が与えられる場合もあるだろうという形で,個別に考えていくということなのか,いろいろな考え方があって,これから決めていくということなのか。というのは,管理者が行う管理行為の中に短期賃借権の設定契約の締結もあると思います。これは登記ができますので,我々司法書士として,登記の場面を想定すると,その登記申請では,誰が登記申請人なのか,つまり,誰が登記義務者となるのか,登記原因証明情報というのはどのように記載されなければならないのかというのを考えます。管理者と共有者との関係,特に,例えばA,B,Cという共有者がいて,Cは反対している,反対しているCとの関係,それと,第三者と契約した場合の効果帰属がどうなるのかというのは明確にしておくべきだとは思うのですけれども,これは今後,明確になっていくということでよろしいでしょうかという質問です。 ○山野目部会長 今川委員に申し上げます。御推察のとおり,今後検討していく事項でございます。その上で御案内を差し上げるといたしますと,現在までの不動産登記制度の運用におきましても,実体的にはこれこれのことが可能であるけれども,それを登記上公示するなど反映するための登記をしようとすると,実体が要求している以上の者の関与であるとか情報を提供することが求められるという局面は,今川委員に対して釈迦に説法ですけれども,あったものでありまして,ここのところは,短期の賃貸借に関して述べますと,もし現在の検討の方向で行けば,賛成した過半数の共有者のみで短期の賃貸借を設定することができますけれども,それとともに不動産登記の手続をしようとしますと,一部の登記義務者が関与していればいいということで権利部乙区にその登記をするということは,恐らく通常の考え方ではできない。何か特別の考え方や規律整備をすれば可能ですけれども,それはなかなか困難であるとも感じます。そこに齟齬が生じますけれども,ずれが生ずるから大変だという話でも必ずしもないかもしれません。いずれにしても,御推察のとおり,今後,不動産登記の部門と実体法の検討を預かる方とで少し事務当局の方で検討してまいります。いかがでしょうか。よろしいですか。 ○今川委員 了解いたしました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   道垣内委員,お待たせしました。 ○道垣内委員 いえ,待っている間にだんだん,発言が不要なのではないかという気がしてきたのですけれども,簡単なところからまいりますと,21ページの(4)です。どことどこに委任関係があるのかということについては,佐久間さんが御意見を出されたように,いろいろな考え方があるのだろうとは思うのですけれども,所詮その私人間の委任契約ですよね。しかるに,どうしてここで裁判所が解任のために後見的に出てくるのかというのが私には今一歩よく分からないのであり,いや,それでもちろん裁判所が後見的な役割を果たすというメカニズムないしは制度設計というのはあるのですけれども,必ずしも日本法は全体としてそういう構成を採っていないということなのだろうと思うのです。例えば信託法を改正する際も,改正ではなく新信託法ですが,裁判所に後見的な役割を結構担わせるべきだという英米法的な発想はあったわけですが,それに対しては反対も強く,結局そういうことは否定されるという形になったわけでして,しかるに,ここで後見的な階級を認めることが日本法の中で平仄が合っているのかというのが若干気になります。   2番目に,先ほど今川さんがお読みになったところのように,管理者は代理権を有するわけではなくて,契約当事者は管理者そのものであるということで,それはそれで結構なのですが,その効力が共有者に及ぶというのは,どういうメカニズムによるのかというのが若干気になっております。それはまあ,ほかにもあるではないかということなのかもしれないですが,それが最終的に,16ページの(2)の甲案の②における,ただし善意の第三者に対抗することはできないというのは,どういう意味なのだろうかということに最後はつながってきます。法人の場合ですと,法人に帰属する,その法人の代表者の代表権限を制約したりしているときに,善意の第三者に対抗できない,それは法人というものに効果が帰属するというわけなのですし,代理の場合はもちろん言うまでもなく表見代理となり本人に効果が帰属するわけですが,ここはどういうメカニズムで帰属し,それの中で,どういうふうにこのただし書というのが位置付けられるのだろうかというのが,少し分からなかったものですから,発言させていただきました。 ○山野目部会長 道垣内委員から二つお話を頂きまして,おっしゃった順番で申し上げますと,21ページ(4)裁判所による解任の制度については,元々部会資料の補足説明が,解任の制度を採用することが困難ではないかという示唆を差し上げているところでございまして,それと同じ方向の御意見を頂戴いたしました。   もう1点の方が,おっしゃっているように重くて,16ページの(2)甲案を採用したときの①で行ったときに,対外的な契約をするときの法律関係理解と,②のただし書の適用関係がどうなっているかという疑問のお尋ねでした。これについて事務局当局の方で何かお話の用意がありますれば,承ります。 ○脇村関係官 関係官の脇村でございます。少し自信ないのですけれども,レジュメを作っている際に考えていたことを申しますと,従前からこの契約当事者が誰かという問題と,それの物権的効力の関係については,部会でも御議論がいろいろあったところだろうと思います。その上で,レジュメについては,差し当たりは契約当事者にならないのだけれども,売買ですと従前のように授権行為的な発想なのかもしれませんが,賃貸借等でもそういった賃借権限があるということを否定できないという効力を何らかの法的構成で認めていくということではないかというような発想をしていました。その上で,この16ページの(2)の甲案でございますが,そういった効力が及ぶということを②の冒頭といいますか前段で否定した上で,それを否定することをもう一回否定するということをただし書で書いていることでございますが,すみません,そういう意味では結論だけ書いているということで,法的構成については,是非お力をおかりしたいと思っているところでございます。 ○山野目部会長 道垣内委員におかれては,何か貸していただけるお力はおありでしょうか。 ○道垣内委員 色男は金と力がないものですから,ありません。 ○山野目部会長 例えば,管理者は賃貸借をする権限は一般的にはあるけれども,本事案においては管理者に賃貸借をする権限は認めないということを内部で取り決めていたときに,管理者がそれに反して短期の賃貸借をしたときに,善意の第三者は,少なくともその管理者に対して賃貸借の履行請求ができるとともに,②ただし書の効果によって,その他の共有者に対しても当該賃貸借の受忍を要求することができる法律的地位を獲得することができるという意味であろうというふうに,多分,普通に,といいますか,卒然と読むときに,そのような法律関係展開が頭をよぎるところでありまして,その上で,道垣内委員が更にこういう点を御議論したいという点があれば,そのお話を続けていただけると有り難いと感じます。何かおありでしょうか。 ○道垣内委員 すみません,私に何か意見があるというよりは,全体が全部リンクしているということ,つまり,委任が誰と誰との関係か,当事者が誰なのか,善意者をどうやって保護するのかというのがリンクしているということを発言したいというだけで,それをどういうふうにリンクさせるべきなのかということについて,何か今現在,強い意見があるというわけではありません。申し訳ありませんが,自分自身も整理がついておりませんので,今後私自身も考えていきたいと思いますし,事務局の方でもよろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 趣旨は理解いたしました。引き続き整理に努めます。   ほかにいかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 今の点について,民法の大御所の先生方のお話と比べて,非常につたない内容になるということを前置きしながらですが,私なりの意見を申し上げます。道垣内先生がおっしゃるとおり,部会資料13ページ以下の,共有者が選任する管理者に関する各論点はすべてリンクしていると思います。そして,これらを考えるに当たっては,まず18ページの(3)「委任関係等」をどう考えるかがスタートになるのだと思います。ここでの甲案と乙案の違いは,佐久間先生もおっしゃったとおり,共有者間の関係を,法人や一定の結合関係がある団体の構成員同士と見るのか,いや,そのような関係ではないと見るのかの違いから生ずるのだと理解しています。つまり,共有者間の関係が法人に類似するのであれば,権限を有する共有者が管理者との間で締結した委任契約の効果は,すべての共有者に及ぶこととなり,甲案になる。一方,共有者間の関係が法人に類似するものではないということになると,管理者との間で締結した委任契約の効果が共有者全てとの間で生じることはなく,実際に契約を締結した共有者と管理者との間で効果が生じることとなり,乙案になると。私自身は,乙案が妥当だと考えています。   そして,部会資料の16ページの(2)の「管理に関する事項を決した場合の取扱い」の善意者保護をどうするかということに関しては,今の議論とリンクして,共有者間の関係を法人類似とみるのであれば,善意者保護は,法人の代表者等の権限に制限を加えた場合の規定を参考に考えることになるし,共有者間の関係が法人類似でないと見るのであれば,善意者保護は民法110条等の規定を参考に考えることになるのだと思います。ただし,民法110条を参考にする場合でも,善意者保護の要件が善意無過失かというと,そうではなくて,共有物の管理者の権限が広範にわたるというところからすると,法人に近いものがあるので,そういう意味で善意の第三者を保護するという考え方はあり得ると思います。その意味で,部会資料18ページに引用されている法律の条文は,法人の代表者等に権限に制限を加えた場合の規定ですので,やや一方の立場に片寄っているのかなと感じました。きちんと考えがまとまっていないですけれども,以上です。 ○山野目部会長 今,蓑毛幹事にお話しいただいたことについて,事務当局からお話があれば伺った上で,お手をお挙げになった順番でいきますと,垣内幹事,畑幹事の順番でお話を伺ってまいります。   ただいまの蓑毛幹事のお話について,事務当局の方で何か所見がおありでしょうか。 ○脇村関係官 ありがとうございます。蓑毛先生の方から,この引いた参照条文について御発言いただきました。ありがとうございます。ここは差し当たり何か参考になりそうなものはないかということで掲げていましたが,確かに次の議論からすると片一方に寄った書き方に,ある意味,なっていたところで,そこは反省させていただきたいと思っているところでございます。最終的には,恐らく民法の表見代理の規定とのリンクを考えていかないといけないと思いますので,皆様の御意見を頂きながら,また引き続き当局でも考えていきたいと思っております。 ○山野目部会長 蓑毛幹事,よろしゅうございますか。   垣内幹事,お待たせしました。 ○垣内幹事 垣内です。私,先ほど30分程度中座させていただいておりましたので,もしかするとその間,既に御議論があったのかもしれないのですけれども,発言させていただきたいと思っておりますのは,資料の16ページの「3 解任について」とある直前の(3)の箇所についてなのですけれども,御質問したい点があるのですが,させていただいてよろしいでしょうか。 ○山野目部会長 お願いします。 ○垣内幹事 この(3)のところにおきまして,この管理者の訴訟遂行の問題について記載がされており,敗訴のリスクがあるので,管理者がその当事者となることは困難であるという説明があって,このこと自体はそうかなと考えております。ただ,確認なのですけれども,その前後,15ページから説明されている,管理者が,例えば契約をしたときに契約当事者は管理者であって共有者ではないという説明との関係で,例えば,共有物の管理修繕のために第三者と請負契約を管理者が締結したと,その請負の代金について紛争が生じて,請負人が請負代金の請求をするというときに,その訴訟については,これは管理者が契約当事者であり債務者でもあるということだといたしますと,管理者を被告として行うと,したがって当該請負代金の請求訴訟についての被告適格は管理者にあるということになるのかと思うのですけれども,そういう理解でよろしいのかというところの確認が1点です。   そのこととも関係いたしますけれども,仮に当該請負代金請求訴訟の被告適格者が管理者であるとして,そのときの訴訟物たる請負代金請求権は,実体法上やはり管理者を債務者とするものであるのか,それとも共有者が債務を負っていて,管理者は訴訟担当者として被告になるのかというのは理論的には両説ありそうな感じがいたしますけれども,ここまでの資料の御説明ですと,どうも契約当事者は管理者であり,実体法上の義務者も,契約上の義務者も管理者であるというような理解なのかと思われまして,そうすると,先ほど申し上げましたような二つの理解の中では,訴訟担当者ではなく,正に自分が債務者として被告であるという理解に親和的な説明がされているのかなと拝見しております。そうしたときに,例えば管理者が敗訴判決を受けまして支払いを命じられたときに,それについての強制執行というのは,管理者の個人財産を引き当てとすると理解することとなるのかと考えておりますが、そういうことでよろしいでしょうかというのが確認の2点目でございます。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 お尋ねが大きく分けると2点ありました。事務当局の方で御説明をお願いいたします。 ○脇村関係官 脇村でございます。垣内先生から御質問いただいた件につきましては,いずれも御指摘のとおりだと思っておりまして,もちろん今後の議論,あるいは民法の解釈があるのかもしれませんが,レジュメの立場で書いている,契約当事者になるのではないかと言っているのは,正に契約当事者は管理者個人で,訴訟で契約上の義務の請求をされる場合には,被告適格は個人である管理者そのもの,かつ責任財産もその管理者であるということになろうかと思います。   その先として,そういったところまで管理者は責任を負わないということであれば,恐らく個別に代理権を取った上で,本人を契約当事者にするなど,そういったことはあるのかもしれませんけれども,そういったものがないケースについては先ほど言ったとおりと考えているところでございます。 ○山野目部会長 垣内幹事,いかがでしょうか。 ○垣内幹事 ありがとうございます。そういう整理になるのかなと思いましたけれども,そうなりますと,ほかの場面ですね,例えば破産管財人ですとか,かなり微妙なのですけれども,担保収益執行の場合の管理者については,確かに御説明のような理解に沿うような取扱いがされている部分もあると思いますけれども,理論的にはいろいろ理解の仕方はあり得るのかなとも思われますので,私自身も引き続き検討したいと思いますけれども,事務局の現状のお考えについては理解いたしました。どうもありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございました。 ○畑幹事 畑でございます。私も今の16ページの(3)のところがどういう趣旨なのかなということを少し疑問に思ったということで,今,事務当局としての御趣旨を伺って,一応理解いたしましたが,そういう御趣旨だとすると,14ページにありますけれども,中間試案の(後注5)のような書き方だと少しミスリーディングかなと,「訴訟の追行については共有者全員の同意を得なければすることができない」と表現すると,先ほどの話とは少しずれているような感じがするので,いずれにしても少し今後考える必要があるかなという気はいたしました。 ○山野目部会長 (後注5)は消えていくべき運命だろうというふうに大づかみには推測しますけれども,今の畑幹事の御注意を踏まえて,引き続き事務当局で整理してまいります。ありがとうございます。道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 ありがとうございます。垣内さんがおっしゃったことはよく分かりますし,それに対する事務局のお答えも非常によく分かるのですが,そうしたときに,16ページの甲案の②のただし書はどういう意味を持つのでしょうか。つまり,権限の根拠にかかわらず,契約当事者が管理者であり,管理者が訴訟を受けて立ち,管理者の責任財産に対してのみ執行されるということになると,共有者が善意の第三者に対抗することはできないというのはどういう意味になるのでしょうか。 ○山野目部会長 しばらく前の道垣内委員のお尋ねから連続するお話であると考えます。引き続き,脇村関係官,お願いします。 ○脇村関係官 すみません,きちんと答える自信がないのですけれども,レジュメの説明の繰り返しになるかもしれませんが,一番単純に考えていたこのパターンといいますのは,例えば管理者が賃貸借契約を締結していて,ある人に貸していて,それに対して一部の共有者が,俺はお前と契約したつもりはないから出ていきなさいとか,そういったことは原則,言えないのだけれども,例えば,管理者を選任するときに,例えば貸す第三者はこの人に限るとか,そういった約束をしたときにも,先ほどと同じように出ていけと言われても,いや,管理者から受けているのだから,一応管理権に基づく賃借権があったので,私は出ていきませんというのを言えるということだけを実は考えていたことでございまして,すみません,それ以上のことがお答えできないのですけれども,またいろいろ教えていただければと思います。 ○道垣内委員 大変難しい問題のような気がするのですけれども,16ページの(2)の甲案の②の,共有者に対して効力を生じないということとか,共有者に対して効力を生じるということの意味が,賃貸借契約などは分かりやすいですよね。だけれども,そういうふうな,共有物そのものが債務の対象となっているようなタイプの契約ではないときに,共有者に効力が生じるとか,権限外であることを否定できないというのは,契約当事者が管理者である以上は,実は何の意味もないのではないかという気がするのですが。   少し話が長くなりますけれども,これは実は信託法の改正のときに論じられた問題と同じなのです。つまり,信託法で受託者が権限違反行為をしたといったときに,信託財産に属する財産を売却するといったタイプの行為というのは,当該財産の所有権が相手に移転してしまうものなので,権限外であっても相手方を保護する必要がある。しかし,例えば借入れ行為をするといったときには,相手方を保護する必要が本当にあるのだろうか。つまり,受託者が契約当事者になって金銭の借入れ行為をするのだから,別に信託にその効果を帰属させる必要はないではないかという考え方もあり得たわけなのです。ただ,信託の場合には,信託事務執行に基づいて生じた債権者というのは信託財産を差し押さえることができるという効果が生じますので,まあ善意の第三者をその場合も保護するということの意味はあるとも考えられ,そういった選択がされることになりました。   しかし,今回は,そういうふうなことがなくて,財産としては管理者のものしか差し押さえることができないのだということになりますと,信託法のときに第三者保護規定が必要だと考えられた前提が欠如してくることになりますので,何をどう保護するのかというのが分からない。だから,解釈上,賃貸借とかそういう共有目的物,共有物そのものが債務対象となっているような場合にだけ働く規定ですよと解釈するということならば,それはそれでいいのですが,ならばそういうふうに説明をするということになるのかと思います。 ○山野目部会長 道垣内委員が今まとめて整理していただいたとおりであろうと,そういう気持ちで部会資料は作成しておりますけれども,ただいま,信託とは少し話の筋具合が異なりますねという御注意も頂きましたから,なお事務当局の方において整理をすることにいたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   佐久間幹事に一つお尋ねですけれども,18ページから19ページにまたがってイの論点をお出ししておりまして,そこのところを佐久間幹事から,乙案の方を推すという御意見を頂きました。共有者の一人に共有物を使用させる場面に関しては,御高承のとおり,必ずしも賃貸借契約でそういう法律関係になるとは考えられていないものであると理解していますけれども,それと見方によっては相似形をなす局面であるようにも感じられますが,ここは委任契約で説明しようと,あるいは委任の規定を準用して説明しようというお考えを頂いたところは,何か賃貸借とか物の使用とかとは,ここは少し異質な部分があるというふうなお考えがおありのことでいらっしゃいますでしょうか。そこを少しお教えいただいて,今後引き続き,先ほどの御意見も踏まえて,事務当局において整理をしてまいるということにいたしたく存じます。 ○佐久間幹事 理解が間違っているのかもしれないですが,例えば,建物が共有であるというときに,共有者の一人がその建物を使用することになった,あるいは占有,保存,管理することになったというときに,この案は二つの場合があり得るということを前提にしているのかなと思いました。   第1は,その管理の方法の決定が共有者間でされ,ある一人の者が管理をするという場合です。この場合は,委任の関係がなく,もちろん善管注意義務等に従って管理しなければいけないのでしょうけれども,共有者は自己の共有者としての資格においてのみ管理に当たるというか,保存,利用,管理ですかね,に当たるということなのかなと。   それとは異なるものとして,第2に,共有者の一人を建物の管理者としますということがあるのだとすると,それは,何というか,賛成共有者のために,第三者がするのと同じ権利義務内容で,特段の合意がなければですが,その共有者の一人が管理に当たるのだろうと思いました。   その使い分けがどういうふうにされるのかというのは,私はよく分かりませんが,その二つの場合が抽象的にはあり得るというのは,何となくそうかなと思っておりまして,後者の場合には,共有者が共有者としてのみその物を使用,収益,管理ですか,するのとは,やはり異なる場面,異なるものとして共有者間で関係が構築されるのであろうと思い,そうだとすると,それはもう第三者が管理者である場合と,共有者の一人が管理者である場合とで区別する必要はないのではないかと思います。そこで,乙案がよいのではないかと申し上げました。ただ,私のこのような前提の理解がもしかして,違っておりますと,もう全然話にならないことになりますので,そういう理解の下ですということでお答えになっておりますでしょうか。 ○山野目部会長 ありがとうございます。確かめておきたかったという趣旨にとどまります。前提の理解が違っていればとおっしゃったのですが,実はその前提のところも含めて,恐らくは多岐にわたる議論があり得るところで,絶対これが正解だというお話ではないであろうとも感じます。今,佐久間幹事のお考えは一貫したものとして御案内いただいたと受け止めましたから,引き続き事務当局において整理をしてまいります。   沖野委員,どうぞ。 ○沖野委員 ありがとうございます。私も前提を理解していない可能性がありますので,その点を確認させていただきたいのですけれども,管理者を過半数で選任するという話と,それから,第三者を選任する場合ですけれども,委任契約でその間,共有者と管理者の間を規律するというときに,18ページの(3)のアのところでは,全ての共有者と,実際に締結した共有者というものの間で委任契約があるという二つの考え方が出されているのですが,他方で解任についての規律がまた幾つかあります。そして,私自身は,誰を選任するかということについて過半数で決めるということなので,反対者の意見をどこまで取り入れるとか,そういう問題はありますけれども,過半数で決められるということは,反対の人がいても全員に及ぶ形でこの人を管理者にするという選任だと考えておりまして,その後,具体的にその人に頼むというところが委任契約だとすると,委任契約を締結するのは,正に全員のために締結するということで,言わば複数の人の間で意思決定をした,その執行行為といいますか,それで一部の人だけが執行するということもあり得るけれども,それは全員についての契約なのだということが割と理解しやすい考え方ではないかと思っていたところなのです。   ですから,18の(3)についてのアというのは甲案かなとは思っておったのですが,これが乙案の考え方になった場合に,仮にA,B,C,3者がいて,持分過半数で,ある第三者を選任したというときに,Bが,では,交渉して契約の実際の締結交渉に当たりますということで契約をすると,Bと第三者の間だけに委任契約がある。委任契約上は任意解除権もありますし,いつでも理由を問わず解除ができるのですけれども,それと別に過半数で管理者を解任するということの意味は,仮に委任契約は一人だけだとすると,Bとの契約なので,解任ができるのはBだけだけれども,しかし,A,B,C,3者で第三者を解任しようということになると,その決定はA,B,C,3者の持分過半数で,仮にBが反対したとしても,解任せよということは,それによってBが委任契約を任意解除する義務を課されると,そういう話なのでしょうか。   そのような法律関係になってくるのかということと,それから,Bと第三者との間で委任契約ということになりますと,基本的には委任の構造としては委任者の指図に従うというのが基本だと思うのですが,もちろん契約で,その指図に従う内容として,共有者の間の決定に従いますという内容が入ってくるし,法律に書くことによって,そういう一種,遵守事項の加わった委任だと考えられるのですけれども,受任者である第三者としては,一方で持分過半数等で決まる管理についての詳細に気を払いつつ,しかし,委任者はBなので,Bの意向も無視できず,ここがそごするときにはどちらを取ればいいのか。そういうときは辞任してくださいということで,その辞任はBに対して言えばいいということなのか,という話ですとか,さらには,具体的にどう働くのか分からないのですけれども,仮にBのみが基本的には管理者との間でいろいろな負担を負うと,だけれども,物は共有物だから,本当に大丈夫かという問題もありますけれども,Bというのがかなりイニシアチブを取らないといけないことになる。自分の責任財産なども基本的には第三者との間で直接,前面に出てくるのは自分だということで,そうすると,そういう人がいることをかなり期待される共有関係においては,単に内部意思決定を誰かが執行するという話ではなくて,別途,自分だけ契約当事者になるのですと,そういう関係なのだろうかというと,複雑でもありますし,更に言えば,反対者がいるときに困るというのは,それは甲案と乙案でそれほど差があるのだろうかということも気になりまして,特に,解任ですとかそういう話と,委任契約自体の処理というものをどういうふうに考えているのか,さらには,裁判所による解任というのをここに更に入れてきますと,それは一体何をすることになるのだろうかというのが分かりません。もしそこを解明していただけたら有り難いと思います。 ○山野目部会長 部会資料が前提としている考え方を今,事務当局から説明してもらうこととし,お話の核心は,18ページの(3)アのところにおける乙案を採用した場合の,14ページのゴシックで問題提起をしている解任の規律,委任契約にとっては解除になりますけれども,これとの関係について,なお明快な整理を求めたいというお話であると感じますから,その方角からのしてもらうことといたしましょう。なお,裁判所による解任というものは,別異の御意見があればまたともかくとして,会議の雰囲気の様子を拝見しておりますと,これを裁判所に是非やっていただきましょうというお話はないようにお見受けしますから,そこはあまり重視する必要はないものではないでしょうか。ですから,今,沖野委員がおっしゃった18ページと14ページの関係のところについて,事務局から可能な範囲で明らかにする整理があれば幸いです。 ○脇村関係官 ありがとうございます。この問題については,どちらの立場に立つかで説明が全部変わってくることから,なかなか難しい面があるのですが,沖野先生がおっしゃるとおり,乙案を採った場合のこの委任契約の処理といいますのは,正に従前この,共有者の一人が賃貸借契約等をした場合の処理とほぼ同じ状況なのではないかと思っております。例えば,賃貸借契約で賃借人の債務不履行があった場合に,その債務不履行に基づく解除を誰ができるのか,誰の名前でするのかというのは従前も議論があったところだと思いますが,一つの整理としては,契約当事者しか当然できないわけですから,過半数で決した上で,その人にやりなさいと言い,極端な話で言えば,その人に代理してでもほかの人がやるかという議論があるのだろうと思っていたところです。ただ,その辺の辺りは,正に根本的にどちらの考えを採るかで大分説明が変わってくると思いましたので,まず御議論いただいた上で改めて整理をさせていただきたいと思っているところでございます。   差し当たりは,すみません,これぐらいしかないのですけれども。 ○山野目部会長 確かに18ページの(3)ア,甲案,乙案の対比のところ自体の補足説明はそれなりに明解にされているとは感じますとともに,沖野委員が御指摘のとおり,解任ないし委任契約の解除と関係について,そこも考え方が枝分かれしていく可能性がありますから,また整理をして説明の用意を整えた上で,委員,幹事の御議論を次の段階でお願いするということにいたしましょうか。   それでは,そのように取り扱わせていただきます。   ほかに,部会資料27についての御発言がおありでしょうか。中村委員,どうぞ。 ○中村委員 ありがとうございます。実務的な懸念としまして,管理者が適正に選任されているのか,またどのような権限を持っているのかを確認する方法について,気にする意見が出ておりました。この部会資料の一番最後の22ページの,一番下の3項,証明方法という部分に,共有物が不動産である場合に,管理者の選任を証明する方法の御提案があるのですけれども,では,権限の方はどうなのかとか,それから,動産や債権についてもこの制度は係っていくということが提案されていますので,そのような場合に,その相手方になるような立場の者として,管理者の適正な選任と,それから権限を,先ほどのような過半数の手続規定が特別設けられない中で,どのようにして確認していくかということについては懸念が示されておりましたので,その辺り少し,お考えがあれば教えていただきたく,また今後,御提案の際に御考慮いただければと思います。 ○山野目部会長 現行法においても,過半数で決するとされている場面について,共有者間内部であればともかく,相手方がいる場面については,本当に過半数ですかとか,過半数で本当に決したものですかとかいうことについての疑義が起こる場面は,理屈上は想定されて,それが管理者という新しい概念が加わったことによって更に増幅されていく面があるかもしれませんけれども,論理的な構造は従来あった問題と相似形であろうとは感じます。その上で,事務当局において何か現段階で所見があったらお話しください。 ○脇村関係官 ありがとうございます。この問題も,先ほどの問題と若干パラレルな問題かと思っていまして,単純に委任契約そのものですという説明を貫くのであれば,委任契約の一般的な証明方法以外のことを作るのはなかなか難しいのかなと。先生のおっしゃっていた場面ですと,本当に過半数の人,少なくとも過半数の人からきちんと証明書をもらうとか,委任状をもらって,そこに公式の何かを添付してもらうということしかないのかなと,今だと印鑑登録とかですかね,そういった問題かもしれませんが,なかなか共有単体で作るのというのはどうなのだろうと,正に委任契約だとすると,そこら辺をどうクリアしていけばいいのかなというのが少し悩みどころでございまして,元々の議論で委任契約そのもので行くのかどうかを含めて,少し考えていきたいと思っております。 ○山野目部会長 今川委員から少し前に御発言があった局面もそうでありますけれども,実体法の規律をこういうふうに整えた場合であっても,実務上,幾つかの場面においては,結局取引の相手方になる人から見ると,過半数とか管理者とか言われても困りますと感じられ,もうここに共有者の全員が来てください,その上でなければ,重くて危ない手続ですから進められませんというふうに段取りを重ねていかなければならない局面というものは最後まで残るかもしれませんね。その上で,しかし,可能な範囲での考え方の整理はしておこうということが今のお話であったと感じます。 ○中村委員 今の御説明は分かりました。日弁連の議論は,先ほどの,委任者で誰と契約が成立するのかとか,どの財産に執行するのかというのを伺う前の話です。会社法106条の共有株式の権利行使者の選任が判決でひっくり返ったりする例もございますので,実はこういうことがあったからこの管理者の選任は無効ですといった事態もないわけではないので,そのような場面も想定すると,どうやって確認するのかというのは,実務的な心配として挙がっていましたので,申し上げました。   御説明はよく分かりました。ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。既に様々な先生方がおっしゃっている中身と重なるところはあるのですが,16ページの(2)の甲案,乙案を最初に見たときに,例えば甲案に対しては,取引の相手方からすると,結局は改めて共有者全員の意思を確認しないと安心して進められないから,せっかく管理者を選任しても使い勝手が悪くなるのではないか,という印象を受けましたし,実際,事業者からもそのような意見が出ておりました。ただ,この場でいろいろお話を伺っている中で,では,取引の相手方が善意ではない場合は果たしてどれだけあるのだろうかとか,そういったことを考えていくと,甲案と乙案で果たしてどれだけ違いがあるのかというのも,正直,分からなくなってきたところはございます。最終的には,論理的一貫性であるとか,体系的な整合性とか,そういうところも重視されながら整理していくということなのだと思いますが,甲案と乙案の間で,実際に生じる効果にそれほど変わりがないのであれば,実務サイドとしてはそれほどこだわるところでもないのかなとは思っております。なので,そこのところが本当に違うのかどうか,もし更に掘り下げて御検討いただくのであれば,取引の相手方が善意かどうかを判断するための認識対象などについても,もう少し具体的に分かるようにしていただけると,意見を出しやすいかなというところでございました。 ○山野目部会長 藤野委員の御要望を承りました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,部会資料27は,今日の審議はここまでといたします。   ここで休憩といたしまして,休憩の後の再開の段階から部会資料28の審議をお願いすることにいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開をいたします。   今度は,新しく部会資料28をお取り上げいただきます。   財産管理制度の見直しの中で,所有者不明建物管理制度の提案を差し上げているところでございます。   1ページを御覧いただくと,1番と書いてありますが,実は2番はありません。この1を集中的に,今日,御検討いただくことになります。   中身を御覧いただくと,今この目にしていただいているとおりでありますが,中間試案においては,甲案,すなわち,建物について土地と同様に,しかし,土地と全く別個の管理制度を設けるというアイデア,それから,乙案,土地についての管理の制度に,言わば附属させる仕方で,土地の管理人が併せて同一の所有者の土地上の建物がある場合について管理を行うという案,この乙案とを並べて示した上で,さらに,これらの制度を一切設けないという丙案も提示していたところでございます。   パブリックコメントを実施した結果,丙案の支持はなく,甲案,乙案の支持が拮抗しているという状態でございました。そこで,本日,丙案を落として,甲案及び乙案を提示してございます。ただし,後ろの方で(2)で御案内しているとおり,引き続き建物区分所有については適用しないという前提での提案を差し上げております。   次に,甲案について,中間試案から若干の手直しを加えている点について,確認の御案内を差し上げます。   すなわち,細かく見ると2点ほどありまして,敷地利用権の管理処分権が管理人に与えられるという規律を明示するという方向を示してございます。もう一つは,中間試案にもそのアイデアは示唆しておりましたけれども,建物の適正な管理に必要な範囲で土地を使用することができるということについての,念押しの記述もしているところでございます。   部会資料28の概要はこのようなものでございます。これについて,委員,幹事の方々からの御意見を承ります。いかがでございましょうか。 ○蓑毛幹事 この論点について,中間試案の時点での日弁連の意見は,乙案に賛成というものでした。所有者不明土地問題を解決するために,必ずしも所有者不明建物管理制度を設ける必要はないということと,現実的に所有者不明建物管理制度を創設するに当たっては,様々難しい問題があるということで,乙案に賛成しました。   ただし,日弁連としても,所有者不明建物について,空き家問題等を含めて社会的に問題があることは理解していて,何か適切な制度が作れるのであれば,その方がいいと思っています。そのような中で,今回,部会資料を拝見すると,事務当局としては,甲案を基に,更に深掘りして適切な制度を創設したいということのようですので,そのような方向で審議を進めることについて,日弁連のワーキンググループの中で反対意見はありませんでした。   その上で,今後の審議に当たっては,3点ほど考える必要があると思います。   一つ目は,まず,建物所有者との関係で,建物所有者の所有権の過度な制約にならないように,適切な要件,効果を定めることが必要です。特に,部会資料5ページでは,裁判所の許可を得て,建物を取り壊すことも可能とありますので,適切な要件等を検討する必要があります。また,建物の中にある動産等の処理についても検討する必要があるという意見がありました。   2点目ですが,これが所有者不明建物管理制度の難しいところだと思いますが,建物敷地所有者との法律関係をどう考えるかということです。   部会資料の1ページには,甲案の②と(注)が書いてあります。このうち非常に気になったのは,(注)のところでして,建物所有者が何ら敷地を利用する権限を持っていない場合であっても,建物管理人は建物を管理するために必要な範囲内で敷地に立ち入ることができるということになっていて,なぜこのような土地所有権に対する制約を,敷地所有者は甘受しなければならないのか。元々敷地に立ち入る権限がない建物所有者に,管理人が付けばなぜ立ち入ることができるのか。このような敷地への立入りを正当化する根拠は何か,どのような要件で認めるのかということについて,非常に難しい問題があるように思います。   次に,建物所有者が敷地に関する権限を有している場合の規律である,甲案の②についてです。ここでは,建物管理人が建物を適切に管理するため,あるいは建物を売却する前提として,敷地についての賃借権,地上権などの権限を有することとされています。しかし,そのような仕組みにするのであれば,敷地に関する権限を維持するための地代の支払いなどについての規律を置いた方がよいとも考えられるのですが,部会資料4~5ページの説明では,建物管理人が賃料等の支払いの原資を有していないこともあるし,賃料の支払いをしなくても,善管注意義務を負わないというようなことが書かれていて,建物管理人が賃料等の支払いをしないことが前提となっているように読めます。   しかし,そうだとすると,土地所有者にとっては,敷地を使用させる義務は負いつつ,賃料等は支払ってもらえないという状況が継続することになるが,それでよいのかが気になりますし,敷地所有者としては,賃料等を支払ってもらえないのであれば,土地の賃貸借契約を解除してしまうのではないか,解除してしまうと,敷地利用権と一緒に建物を売却することもできなくなってしまうので,制度として,首尾一貫していないように思います。また,解除によって敷地利用権がなくなってしまうと,先ほどの1ページの甲案の(注)に記載された,無権限での建物管理人に敷地利用の話になるのでしょうか。建物管理人と敷地の所有権者との関係について,どのように制度設計をしていくのか難しい問題があるという意見がありました。   3点目が,建物管理人と第三者との関係です。所有者不明建物管理制度が適用されるような局面では,建物について,倒壊まではいかないまでにしても,例えば,台風が来れば瓦が飛んでいってしまうとか,そのような状況になっていて,第三者に何らかの被害が生じる可能性がある状況にあることが考えられます。そのような状態にある建物管理人に選任されたとするならば,速やかに修理をするであるとか,場合によっては,速やかに建物を取り壊すといったことができるような選任のされ方をしないと,建物管理人に大変な負担が生じることになります。したがって,例えば,建物の取壊しが予定される場合には,申立人はそれだけの予納金を納める必要がある,であるとか,修理に必要な費用をきちんと予納させるであるとか,そのような要件,手続も併せて,是非実務上ワークするような制度設計にしていただきたいと,このような意見がありました。 ○山野目部会長 弁護士会の意見の取りまとめを頂きまして,乙案を基調として推したいという御意見を承ったとともに,必ずしも甲案,乙案ということではなくて,幾つかの御注意を頂きました。   松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   蓑毛幹事の御意見について,基本的に私も賛成でございます。   その上で,少し周辺的な話ですけれども,今回提案いただいている所有者不明土地管理人の制度を設けることを前提に,所有者不明建物の管理についても制度を設けるかということに関連して,中間試案では,第2の2(2)になりますが,管理不全土地の管理人の制度についても,プラスアルファで管理不全建物の管理も認めるかどうかということで,そちらについても,甲案,乙案,丙案が検討されていたと思います。   今回の所有者不明建物の管理人についての提案は,この管理不全土地・建物の管理制度と併置するということを前提にした提案なのか,それとも,こちらの所有者不明建物の管理の制度に集約するということなのか,確認させていただきたいと思います。   管理不全土地・建物の管理人の方は,必ずしも所有者不明土地・建物に限らないということと,その一方で,管理不全建物の管理については,基本的に保存行為にとどまるということですので,確かに機能は違うわけですけれども,所有権に対する制約という観点から考えると,一番制約が軽いのは,管理不全土地管理人プラス管理不全建物管理について保存の権限を与えるという措置で,それでは不十分な場合には,所有者不明建物の管理を考える必要があるということで,さらに,その中でも乙案の方が場面がより限定されていて,甲案の方が建物所有権に対する制約を加える場合がより多くなるという,そういう順序付けかなと思うわけですが,所有者不明土地管理人の制度の導入を考える場合に,所有者不明建物が存在しているケースも結構多くて,別に他人に迷惑を掛けているわけではないんだけれども,やはりその建物についての管理もできないと,所有者不明土地管理人の制度を設けただけでは実質的意味がないというような事態になっているのか,そういう事実の確認というんでしょうか,やはりこれだけ深刻なんだから制約もやむを得ないということになるのか,確認させていただければと思いました。   ここは,一種の法政策的な判断かもしれませんけれども,そういう関連制度との関係を踏まえた上での確認をさせていただければと思いました。 ○山野目部会長 ただいま,松尾幹事から確認の要望があった点,後でまた事務当局からお話をお願いします。今川委員,どうぞ。 ○今川委員 蓑毛幹事がお話をされたこととちょっとダブるかもしれません。   我々司法書士会連合会も,中間試案の乙案に賛成をする意見を出していました。これはどういうことかといいますと,甲案を採用した場合に,建物のみについて,必要があると認めるときは,利害関係人が申し立てることによって,裁判所が管理に関する処分を命じるということになりますが,実際問題として,利害関係人が申し立てをして,選任しなければいけないような状態というのは,空家特措法でいう特定空家に該当するような建物ではないのかと判断をしました。そうすると,取壊しをしなければならない場合が,当然多くなってくるんではないかと。この建物の管理人が建物を取り壊すことができるんだろうかという疑義があったので,乙案に賛成したというのもあるんですが,今回,甲案においても,裁判所の許可を得て,建物取壊しをすることが可能であるというような説明もありますので,そのようなことが明確となるんであれば,別に甲案は駄目だということではないということだろうと思います。   ただ,実際にどのような場合に利用されるのかというのが,蓑毛幹事もおっしゃっていたように,いろいろ考えなければならないなと。建物というのは,壊れてしまえば,もうなくなってしまいますので,報酬をどうするのかということと,それから,修繕をして建物を流通に乗せるというような場合も想定されているようなんですが,そのような状態の建物について,果たして利害関係人が出てきて,裁判所が必要があると認める場合に該当するのかということも,ちょっと検討していかなければいけないだろうと思います。   それと,土地の上にある建物が未登記状態の場合というのが,説明でありまして,その場合,所有者が分かりにくいんではないかというのが指摘されていますが,普通は,土地があって,その上に未登記の建物があると,そういう状態が続いているというのは,普通は,土地所有者が建物を所有している場合か,少なくとも土地所有者は建物所有者を把握している場合が多いのかと思います。もちろんその把握している建物の所有者が,死亡して相続人が多数にわたり所在不明になるという場合がありますけれども,それは登記されている建物であっても同じなので,実務的な考え方からすると,未登記建物のことはあまり心配しなくてもいいのかなという気も少ししております。これは,深く分析したわけではありませんけれども,そのような感覚を持っております。   それと,1点質問ですが,中間試案の補足説明では,所有者不明土地管理人については,その管理人を原告又は被告とするというような方向で説明されていたと思いますが,今回部会資料では,建物管理人は,それは慎重に検討するとされているんですが,その違いは何なのかという点,そこについて,考え方が変わったのか,違う意味があるのかというのが,我々の検討チームの方からの質問がありましたので,その点説明をお願いいたします。 ○大谷幹事 お三方から非常に有益な御意見いただきまして,ありがとうございました。   蓑毛幹事からの御発言,全般にわたってこういう問題があるのではないかということで御指摘を頂きまして,これについて,特定のことをお聞きになりたいということではなく,御意見を頂いたと理解をしておりますけれども,やはり甲案の②,それから(注)の辺りのところが,難しい問題があるということで,我々としても自覚をした上で御提案を申し上げているところでございます。   これは,松尾幹事の御発言にもありましたけれども,(注)の場合というか,権限がないときに,なぜ土地の所有権,所有者の権利を制約することができるのかというところが,一つの問題になってこようかと思っておりますけれども,一つの考え方としては,管理不全土地になっていると。土地が管理不全になるというか,建物自体が危険な状態になっていて,土地全体として管理不全になっているというような認定がされることもあり得るかもしれませんけれども,そういう土地所有権が制約されても仕方がないような状態になっていることを前提として,建物独自のこの管理制度を使って,管理人が入っていくことを許すということは,一つあるのかもしれないとは考えておりました。   ここのところ,現在の不在者財産管理制度で建物だけを不在者が所有していて,土地についての権限はないというときに,不在者財産管理人は土地に入っていけるのですかというと,恐らく土地の所有者の承諾を得た上でないと入れないということになるんでしょうから,それと同じように考えると,直ちに建物の管理人に,土地に入っていく権限がないのではないかという考え方もありそうで,この辺り,正に今日,幾つかの御発言を頂いて,もう少し整理をする必要があるなと考えておるところでございます。   それから,今川委員の方から,空家特措法との関係の御指摘もございました。特定空き家になっているということが,直ちにこの土地管理,建物管理の方に何か影響を与えてくるのかというところではないかもしれませんけれども,やはり特定空き家になっているという認定があれば,周囲に危険を与えていて,隣地所有者などが危険を覚えていて,利害関係を有しているというような認定に近づく一つの要素になるのではないかとは思っておりまして,そういう空家特措法の特定空き家に認定されていることも,一つのファクターになってくるかなとは考えておったところです。   それから,今川委員から,原告,被告になるのかという話がございました。これもまた,所有者不明土地の管理制度に関する部会資料の際にまたお示しをしたいと思っておりますけれども,パブリックコメントの結果は,原告,被告になるのだと,で,権限を専属させるのだという方向にすべきだという意見が大変多くございました。建物の管理制度についても,もしこれを甲案に従ったような形で考えていくとすれば,土地と同じように原告,被告になるんだという方向になるのかなと思っておりますが,今,部会資料で書いておりますのは,部会資料の5ページの2段落目のところでしょうか。ここは,建物の敷地に関する権利についての訴えで,建物自体ではなくて,敷地に関する権利に関係する訴えを建物管理人にさせるということは,また別の考え,別の検討をする必要があるのかなということで書いておるところでございます。 ○山野目部会長 ただいま事務当局から差し上げた説明で言及された点も含め,委員,幹事からの御意見を引き続き承ってまいります。   お三方からあった御指摘の中で,甲案であれ,乙案であれ,この開始の要件である「必要と認めるときは」という概念の運用について,管理不全を来しているというような実質のところまで見た上でと絞るかどうか,といったような問題提起を頂いているところは,まだ必ずしも解明されていない側面がございますから,委員,幹事の御意見を引き続き伺ってまいりたいと認識しております。   道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 申し訳ございません。私の記憶力ないしは想像力の欠如によることなのかもしれず,既に議論になった話なのかもしれないんですが,お教えいただければと思います。   所有者不明建物の管理制度のときに,土地の所有者と一緒だとか,賃借権とか地上権とか持っているとか持っていないとか,これは,どうして分かるのでしょうか,建物所有者が不明なのに。言いたいのはそれだけの話でして,どのような場合を念頭に置いてこの制度が発動され,どのような場合に賃借権があるとかないとか分かったり,土地の所有者もそもそも不明だとかいっているのに,土地の所有者と建物の所有者とが同じか同じではないか分かったりするのかというのが,イマジネーションの問題としてよく分からなかったもんですから,お教えていただければ有り難いです。 ○山野目部会長 いいえ,まだ議論にはなっておりません。   部会資料28が示している内容は,何と申せばよろしいんでしょうか,手続の進行と実体的法律関係の客観的理解,把握等,これらを厳しく分け隔てして表現する文章になっておりませんから,客観的な事実として分かったところははこうです,ということを前提に記している部分もあるし,それが分からない段階での関係者の権限行使を描いているところもあって,道垣内委員が御指摘のような御疑問が生ずるということは理解できるところでございます。   顔ぶれ分からないのに,なぜ権限あることになるか,という疑問について,何か事務当局の方からお話がありますか。 ○大谷幹事 ここも,実際を考えたらなかなか難しいのがあるなと思っておりまして,元々この甲案の(注)にあるところは,最初からデフォルトの権限として持っていてもいいかなと思って,最初は資料を作っていたんですね。それは,まずは,建物の所有者が権限を持っているかどうかすら分からないので,その権限を有しているかどうかを調べるためにも,まずは入れるようにしてはどうかなということで,(注)のものを入れてみたのですが,その上で,その賃借権等があるということが書類等を見て分かるということがあれば,それに従って仕事をしていくということが考えられるかなとは思っておったところですが,一方で,先ほどの御指摘もありましたように,土地の所有権との関係をどのように考えるのかというのが,なかなか難しいところがあるので,そこも御意見を聞きながらと思いまして,(注)に落としてお聞きをしているというところでございます。   賃借権があるかどうかについては,土地の所有者はいるのですから,土地の所有者から聞くということはもちろんあると思いますけれども,それ以上に,土地の所有者がいないというときにどうするかという問題は,出てくるのかなと思っております。 ○山野目部会長 道垣内委員,いかがですか。 ○道垣内委員 中へ入って,紙見たら,賃貸借契約書があったというけれども,その人が所有者かどうか分かんないのに,それが権限を示すことになるということになること自体が,私にはイメージできないですけれども。   そういう場合が何かあるかもしれないというのは分からないではありませんで,そういうふうな形で権限を決めるということがあるのかもしれませんが,蓑毛さんか誰かがおっしゃったかもしれませんけれども,そうすると,現実に選任されたときに,どういうプロセスで何ができるかというのは,実はかなり細かく決めないとうまくいかないのかもしれないという気もいたします。ただ,ちょっとこれ以上のことは今,私,分かりませんので,言いっ放しで大変恐縮なんですけれども,御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 分かりました。ありがとうございます。   道垣内委員が御指摘のように,確かに,いろいろなことが不明なまま事態が推移していくということはあり得るだろうと想像します。半面,細かく分けて見ていきますと,土地ないし建物の所有者自体を特定することができない場合と,特定ができるけれども所在が不明な場合とでは,また様相が異なるでしょう。所在が分からないにとどまる範囲であれば,例えば,賃借権の登記があるというような場合には,賃借権の登記の持っている事実上の推定力から,多分賃借権があるという前提で動いていくということが,実務上あり得るかもしれません。   御指摘のとおり様々な場合がありますから,マニュアルのような感覚で,こういう場合にはこういう手順でというようなことが,最終的には運用として関係者の間で共有されるようになればよいかもしれません。と同時に,それを法文に事細かくマニュアルのように描くことがよいかということも,法制的には考えていかなければならないものであろうと感じます。   引き続き,部会資料28について御意見を承ります。藤野委員,どうぞ。 ○藤野委員 ありがとうございます。   パブコメの時点で,中間試案に対して経団連から出していた意見では,特に甲案と乙案の間での支持の強弱は付けていなかったと思います。そもそも建物管理人になった方に,いわゆる建物取壊しの権限まであるかどうかというところは,中間試案公表前の部会でもいろいろ質問させていただいていたところですが,そこが明確にならないと,どちらが良いのかはなかなか言えないねという感覚が事業者側にはございました。   ただ,今回,部会資料の中で,限定的な場面とはいえ,甲案であっても,裁判所の許可を得て建物を取り壊すことも可能であるというお考えを示していただいていますので,そうなってくると,やはり,どんな場合でも使える甲案の方がいいのかなとは思うところです。   あとは,もう既に他の委員,幹事の先生方からもいろいろと御指摘いただいているように,例えば,土地の所有者も分からない,建物の所有者も分からない,土地の所有者と建物の所有者が同じかどうかも分からないというようなときに,果たして手続的にどうやって進めていくのかといったところですね。所有者不明土地と所有者不明建物が同じ土地の上に出てきたときに,同じ管理人を立てて手続きを進めるというのは,土地と建物の所有者が異なる可能性があることを考えると,利害関係が異なるのでなかなか難しいと思う一方で,別々に手続きを進めるとなると,かなり時間がかかってしまうような気もいたしますので,そういったところまで含めて,全体として制度設計をどうしていくかというところについて,引き続き御検討いただく必要があるのかなと思っていたところです。 ○水津幹事 甲案の②と(注)について,意見を申し上げます。   甲案の②の規律は,建物の管理人に対し,建物のみならず,その敷地利用権の管理処分権をも与えるものです。判例によれば,建物について抵当権の設定がされたときは,その根拠規定は不明確であるものの,従たる権利である敷地利用権についても,その抵当権の効力が及ぶとされています。建物について管理を命ずる処分がされたときについて,これと同じように捉えることができるのであれば,従たる権利である敷地利用権についても,建物の管理人の管理処分権が及ぶこととなるのではないかという気がしました。   そうであるとすると,甲案の②の規律の趣旨は,よく理解することができます。従たる権利は,従物に準じて扱われるとされていますので,この規律は,確認の意味を有することとなりそうです。   他方,(注)の規律については,先ほどから御意見が出ているとおり,これを正当化するのは難しいように思いました。敷地利用権を有しない建物の所有者が無断で敷地に立ち入ってこれを使用したときは,建物を管理するために必要な範囲内であったとしても,その使用は,不法な使用であるとされる以上,その建物の管理人が建物を管理するために必要な範囲内で敷地に立ち入ってこれを使用したときであっても,その使用は,不法な使用であるとされるものと考えられるからです。 ○山野目部会長 國吉委員,どうぞ。 ○國吉委員 ありがとうございます。   私も,この乙案を前提として,甲案,要は,並立で成り立つんではないかなとは思っています。特に土地と建物の所有者が,不明ということなんですけれども,所有者が違った場合です,通常,この建物の管理不全,もしくは,例えば,所有者が分からない,いわゆる利用権,利用されているかどうか分からないようなときに,この土地の管理人と建物の管理人が同一ということですね,どうしても土地の所有権に引っ張られてしまうんではないかなというのを感じています。   それから,建物自体も,未登記の建物,それから所有者が分からない建物と,先ほどありましたけれども,未登記の場合ですと,もしかしたら建物としての認定ができないものもあるんではないかなとは思っています。その場合には,どういうような手続になるのかというのは,ちょっと私も法律的にはよく分かりませんけれども,そういったところも考えていくと,この甲案,乙案並存でいいのではないかなというのが,私の意見です。 ○山野目部会長 並存というのは,甲案を採用してもよいということですね。 ○國吉委員 はい,そうです。 ○山野目部会長 甲案を採るとすれば,土地の管理命令を出したときに,同じ管理人に建物管理人を命ずるということでいいわけですかね。 ○國吉委員 そういうことです,はい。 ○山野目部会長 理解しました。 ○市川委員 どちらの案をということについては,特段の意見は持ち合わせていませんが,今後,制度の詳細を検討していただくにあたって,管理命令を出す立場からのお願いを念のためしておきたいと思います。既に何度も御指摘いただいていることの重複になってしまいますが,特に建物の取壊しを認めることになりました場合,建物の所有者との関係では結果が重大になりますので,その要件について,部会資料の5ページに書いていただいているような場合に限られるのか,それとも,限られないとすると,どのようなときに認められるのかということについて,具体的な検討をお願いしたいと思っております。   また,加えますと,管理命令の要件について,未登記建物など,どのような調査をした結果,所有者が分からないときに所有者を知ることができない場合と認定できることになるのかということについて,先ほどからマニュアルなどを御準備いただけるかもしれないというお話もありましたけれども,できるだけ運用についての手掛かりになりますような判断基準をお示しいただけるようにお願いしたいと思います。判断基準が不明確ですと,実務上の混乱が生じてしまうおそれがありますので,その点を是非お願いしたいと思っております。   ほかの要件についても,申立てを行うことができる利害関係人の範囲ですとか,必要があると認めるときという要件などについても,できる限り判断基準の材料になるようなものをお示しいただけると有り難いと思っております。 ○山野目部会長 裁判所の方でお感じになっておられる課題を認識しましたから,引き続き事務当局において,御用命に沿うように整理に努めることにいたします。   ほかにいかがでしょうか。   甲案と乙案との関係でいいますと,今までの御発言は,それぞれ両様の御発言いただいているような気もいたします。引き続き御議論お願いします。 ○中田委員 先ほどから問題になっております甲案の(注)ですけれども,建物を管理するために必要な範囲というのは,人によってイメージが相当違っているのではないかと感じました。そもそも無権原で建てられている建物について,どのような管理をすべきなのかというのがよく分からなくて,例えば,第三者に売却するということは多分できなくて,土地所有者に売却するということなのだろうかとか,あるいは取壊しのためなのだろうかとか,あるいは第三者に賃貸することができるんだろうかとか,どんどん広がっていくのです。しかし,大谷幹事のおっしゃったことは,もっと小さなことを考えていらっしゃると思いますので,建物を管理するために必要という言葉を,もう少し精査して絞り込んでいただいた方が,議論しやすいのではないかと思いました。 ○山野目部会長 ただいま中田委員からおっしゃっていただいた,建物を管理するために必要な範囲内という事柄のイメージを,もう少し事務当局の方で豊かに説明ができる御用意はありますか。防護ネットとか柵とかということがキーワードになるかもしれませんけれども,どうぞお話しください。 ○大谷幹事 そうですね。先ほど御説明したような程度ではございます。   立ち入って使用することができるというようなことに限ってのお話だとは思っておりましたので,そういう書き方をしておりますが,確かに管理をするために必要な範囲内でと言われると,非常に印象が揺らぐということはそうかもしれませんので,結局のところ,どの程度土地の所有者の所有権を制約できるのか,どういう場合を念頭に置くのかというところは,もう少しきちんと整理をしてお示しをできるようにしたいと思います。 ○山野目部会長 この注記のところに登場してくる管理は,確かに民法の法文が,例えば,共有のところなど,ほかのところで用いている管理とあまり異ならない意味ですというふうな受け止め方がされてしまうと,中田委員が御心配になったように,賃貸とかも含まれてきますかとかと,話が広がっていきかねない,広がっていきかねないという嫌いがあります。それでもいいですという御意見があれば別ですけれども,委員,幹事におかれて,そういう御意見が特段ないとすると,このワーディングのままでいくならば,考えていることと規律の表現が必ずしも即応しないということになりかねません。   恐らくここで言おうとしているものは,管理といっても,物理的な管理を主として指すものであって,果実を収取するような行為が含まれるかというと,必ずしもそうではないでしょうし,どちらかというと,物を保存するというのに近い概念であるかもしれませんし,あるいは,土地基本法が用いている言葉でいうと,周辺に及ぼす悪影響を防ぐとか,そういうふうな観点から言われているものであると感じますから,法文にするときにも,そういうことの危惧が極小になるような努力が必要ですし,市川委員から御注意があったように,裁判所に運用をお願いする段になっては,更にその規定の主意が明確になるような工夫を重ねていかなければならないものであろうと感じます。   中田委員,今の段階では,このような心構えで検討を進めるということでよろしゅうございましょうか。 ○中田委員 はい,ありがとうございました。お願いします。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き御意見を承ります。 ○垣内幹事 垣内です,ありがとうございます。   お尋ねしたい点が大きく2点ありまして,いずれも説明,資料で申しますと,5ページの辺りの記述に関係する,あるいは4ページから5ページにかけてなんですけれども,第1の点ですけれども,先ほども少し話題になっておりましたが,建物管理人に敷地利用権についての管理処分権が付与されるといった場合に,利用権の対価としての賃料あるいは地代の支払いに関する権限をどう見るのかという問題に関係してなんですけれども,4ページから5ページにかけての説明ですと,この賃料の支払いというのが,職務の目的に必ずしも合致するわけではないという説明がされております。   ただ,先ほども御指摘ありましたけれども,賃料が払われないことによって,例えば,賃貸借契約が解除されて無権限だということになりますと,最終的には建物の収去を求められるというような事態になり得ると思われますので,そういう意味では,建物の存続ということを目的と考えれば,賃料等の支払いがその目的に基本的には合致するのかなというような感じも持ちますし,場合によっては,無権限の場合に,管理人の方で新たに土地所有者との間で賃貸借契約を,条件によっては締結するというようなことも考えられるのではないかとも思われるんですが,そういう権限があるということなのか,その辺りについて,何か現時点でお考えがありますでしょうかというのが,第1点です。   それから,第2点ですけれども,同じく5ページの上から3番目の(エ)の直前の段落で,訴訟の関係で,建物の収去を求める訴訟であるとか,賃料相当額の損害賠償義務の履行請求に関して,建物管理人が被告になるわけではないという説明がされております。   確かに,例えば,強制管理の場合の管理人などの場合を考えますと,管理人には収去義務,建物の収去権限がそもそもないというようなことですので,建物収去を求める訴えの被告となるわけではないというように,一般的には理解されているだろうと思います。それとパラレルということなのかなとも考えるんですけれども,他方で,今回の提案になっている建物管理人の権限が,場合によっては建物を取り壊して,そういう意味では処分をしてしまうということも,一定の要件,裁判所の許可等の要件を満たす場合にはできるということも併せて御提案になっておりますので,そうしますと,建物を維持する方向での管理だけにはとどまらない権限を持っていて,場合によっては収去もできるのではないかということになりますと,この収去権限がないので被告になるわけではないというのとは,また少し異なった説明をする必要があるのかなという感じもしておりまして,その辺りについて,何かお考えがありましたら伺えればと思っております。   以上です。よろしくお願いいたします。 ○山野目部会長 垣内幹事から問題提起を頂きました,建物の管理人の,取り分け物理的な管理ではなく,法的な管理とでもいいますか,特に敷地利用権との関係で,賃料,地代を支払ったり,あるいは建物の収去との関係での訴訟の当事者となり,訴訟行為を行ったたりするといったような局面との関係で,どこまでのことをさせるという想定で,この制度を築くかということは,重要な観点でございますから,ここについての委員,幹事の考え方の分布を把握しないまま,制度の設計をしていくということになると支障が大きゅうございます。   事務当局でもよろしいですし,委員,幹事の皆さんも御意見を承りたいと考えますが,今問題提起を頂いた点について,どうぞ御発言をください。 ○宮﨑関係官 よろしいでしょうか。   関係官の宮﨑です。   2点頂いたと思うんですけれども,前半の賃料の支払いをするかどうかというふうな話ですけれども,ちょっと補足説明の方にも書かせていただいたところではあるんですが,おっしゃるとおり,賃貸借契約を解除されてしまって,なかなかその建物の存続を前提とした管理というのが難しくなるケースというのは生じるのかもしれないなとも思うんですが,その一方で,支払いの原資を持っているケースというのも,常にあるわけでもないのかなとも思われまして,そういうふうなことも考えますと,やはり賃料の支払いというのを,建物管理人に常にやらなくちゃいけないというふうなことは,なかなか,実際としては難しいのかなと思っておりました。   後半の取壊しの原告,被告の件につきましては,これにつきましても,御指摘は非常にごもっともだなと思いますが,一応の整理としては,もしかしたら,建物管理人は,ここの補足説明で書かせていただいたような,例外的な要件を満たすようなケースであれば,建物を取り壊す権限というものはあるんですけれども,その建物の所有者,所有権の帰属というのは,飽くまでも不明になっているその所有者に帰属していて,その取壊し等の収去義務というのも,その所有者が負っているんだというふうなことで,被告となるかどうかというようなことも,切り分けのような整理ができないかなというようなことも,個人的には考えておりました。 ○山野目部会長 今の点について,ほかに委員,幹事の御意見はおありでしょうか。   委員,幹事の御意見を伺っていて,いささかの整理を試みることにいたしますと,考えてくださいという問題提起でしたから,はっきり垣内幹事の御意見として推しておられるものでもありませんけれども,建物の,広く言って法的管理ですね,賃料,地代を支払うなどして,場合によっては,敷地利用権という法的な権利の保存ということにも,この管理が及ぶという考え方はあってよいという方向と,宮﨑関係官が今述べたように,部会資料作成の意図としては,どちらかというと,そういうものは含ませることに困難があるというお話と,それは両方あると考えます。   引き続き,委員,幹事の御意見を伺っていきたいと考えますが,仮に宮﨑関係官がおっしゃったように,どちらかというと,物理的管理の方に限定した想定で考えているとすると,それと整合させるためには,やはり少し前に話題になった,甲案であれ,乙案であれ,手続開始の要件が,必要であると認めるときというところが,曖昧というか抽象的すぎるところを,物理的管理が必要な管理の不全を来しているような場合というものを典型的な場合として想定しますといふうに絞らないと,前後の話がうまく整っていかないのではないかと感じます。   そういうふうに絞ると,世の中にたくさん所有者不明の建物なんてありそうですから,たくさんの申立てが裁判所に来ますというような裁判所の方の御心配に対しても,いやいや,そこを更に絞りますというお話になっていくわけで,一定の見通しが得られてくると感じますとともに,そういうふうに絞ると今度は,既に御指摘があったとおり,空き家等対策の推進に関する特別措置法がケアしている事象と,かなり重なってくるものでありまして,民事基本法制でここの検討を続けることと,向こうの特別措置法との役割分担ということを,重なるけど重複して置いておこうと仕切るか,それとも,こちらはもう甲案のようなものは考えないで,特別措置法に任せると踏み切っていくかということについての,私たちの選択も求められることになります。   カレンダーはあまり余裕がありませんで,特別措置法の方は,附則の規定によって5年以内の見直しを今,しなければならない段階に来ておりますから,こちらの答申が出るのがどうしても後になりますけれども,私どもとして,いつまでも甲案,乙案と,いろいろありますねという議論を続けていると,そちらの方の立案検討にも迷惑になってくる部分があります。性急に議論を進めることは控えなければなりませんけれども,委員,幹事から,ただいまの話題について,なお,活発な御議論があれば伺った上で,引き続き議事の整理に努めることにいたしますけれども,いかがでしょうか。 ○佐久間幹事 甲案を中心に今後議論を深めることは反対をするものではないのですが,乙案ではなく甲案であることが,重要なものとして認められる場合がどういう場合かというのがちょっと,私にはよく分かりません。補足説明を拝見いたしますと,乙案では,先ほど大谷幹事が口頭説明でもおっしゃいましたけれども,できる行為が限られてくるんだというふうなこと,例えば,防護ネットをかける程度のことはできるかもしれないけれども,ほかのことはできないではないかとかって,そういうことが書かれているんですね。   甲案についてよく分からないので,非常に素朴な疑問でしかないことは承知して申し上げますけれども,例えば,乙案のような所有者不明土地,土地管理命令の対象となった土地について,建物がある場合には,その建物の管理人を選ぶことができるというのは,選択肢としてあり得ないんでしょうか。つまり,甲案というのは,土地管理命令の対象となっているかどうかは問わないんですよね。乙案は,土地管理命令の対象になっている場合に限るんだけれども,その場合に,乙案は,建物も土地所有者に属するというときに限っているわけですよね。   道垣内委員がおっしゃったことなんですけれども,土地所有者が不明であるときに,建物が誰のものかが分からないことだってあるではないかということを考えると,私,それを強烈に推そうというわけではないんですが,土地管理命令が発せられている場合であって,その土地の上に建物があるときを対象とするということも,論理的にはあり得ると思います。甲案が,今,私が申し上げた場面以外でこういうときに使うんですというのが,私には分からないので,もし私の分からないというのにも理由があるのであれば,その考え方があり得るのかなと思いました。   あんまり深く突っ込まれると,よく分かっていないので答えられなくて,意見だけ言いっ放しでお許しいただきたいんですけれども。 ○山野目部会長 言いっ放しというか,今,佐久間幹事からアイデアを頂いたという感覚を抱きます。どのようなニックネームを与えればよいか分かりませんけれども,丙案はもう消えましたから,丙案というラベルは用いにくいですが,甲案と乙案の間にあるものですよね。甲案のダッシュなのか,乙案のダッシュなのか分かりませんが,甲案,乙案のハイブリッドで,つまり,今の乙案は,土地と建物の所有者が同じときにという要件から入って,建物の管理命令を出すことができるというものですが,そうではなくて,土地の管理命令の要件が調っていて,土地の管理命令が発令される場合において,その上に建物が所在するときには,裁判所は,併せて建物の管理も命ずることができるというアイデアはあるでしょうということであり,必ずしも乙案,あるいは甲案そのものぴったりではないけれども,そこのところの検討を明示に求める部分が欠けていますよという,その隙間のところを衝いていただいたものと理解しますから,それもアイデアとして受け止め,検討していくに値するものではないでしょうか。   そして,それは多分,道垣内委員がおっしゃった,結局分からないときに,これが働くのですかという御疑問に対しても,ある部分は答えていくということになるかもしれません。   仮にそれでいく場合には,土地の上に所在する建物の所有者が知れているときに,その異議がないときは,とかというふうな歯止めが,一種の手続保障として制度構築の際に留意をして,要件として設ける必要があるかもしれませんけれども,幾つかの注意をしながら,そういうふうな甲案と乙案を互いに擦り寄らせていく仕方で,より良い案を見いだしていく可能性というのも,あるものであるかもしれません。   ほかにいかがでしょうか。 ○大谷幹事 ありがとうございました。   今,佐久間幹事と部会長のおまとめのとおりの考え方も,確かにあるなと思っておりました。   所有者不明土地上に違う人が持っている建物がありますというときに,所有者不明土地であれば,その建物も管理ができるというとすると,その建物をなぜ管理することかできるのかというのは,結局のところ,先ほど甲案の問題と同様の問題であると思いますが,どういう場合にこの建物管理制度を使おうとしているのですかという,その主なターゲットをもう少しはっきりさせろということを,先ほどから様々な形で御指摘いただいているんだと理解いたしました。   甲案を採ったとしても,保存のためのものだということを,もう少しはっきりさせてはどうかというような御指摘もありましたし,その辺りも踏まえまして,甲案,乙案しかないのかというところも含めて,もう少し考えてみたいと思います。 ○山野目部会長 垣内幹事,どうぞ。 ○垣内幹事 ありがとうございます,垣内です。   少し前に部会長の方から御整理いただいた点,大変よく分かりまして,分かった感じがするんですけれども,甲案の狙いとして,物理的な管理というものに的を絞って考えるということであれば,今回お示しいただいている提案の内容が,かなりよく理解できる面があるのかなという感じを持ちました。   その上で,ただ,なかなか難しい問題を引き起こしておりますのは,例えば,今日お示しいただいた,1ページの甲案の②のところですけれども,敷地に関する権利の管理及び処分をする権限といった形で,非常に一般的な形で,しかも敷地に関する権利の管理処分ということですから,物理的な管理というものとはかなり異なる性質のものが一般的に付け加えられているというところで,全体の印象がかなり変わってくるところがあるのかなと思われまして,そうしたときに,この敷地に関する権利の管理処分という権限が,どういう想定で提案されているのかという点ですけれども,私の理解では,3ページの辺りで,建物の管理のために建物を売却するという場合に,利用権も一緒に移っていくというような規律をスムーズに実現するといったようなところが,重要視されているのかと受け止めましたけれども,それであれば,そうした建物の売却時に関するより個別具体的な敷地利用権の譲渡に関する規律をピンポイントで設けるといったようなことも,あるいは考えられるのかなというように思われまして,一般的な形で権利の管理処分権があるというような形にしますと,その権利に関係する訴訟等の当事者適格もあるのではないかというような疑問を招きがちのような感じもいたしましたので,その辺りも含めて,引き続き御検討いただくとよいのではないかという印象を持ちました。 ○山野目部会長 ありがとうございました。   補足説明の3ページで記していて,何となく頭の中ではみんなが共有してしまっていることについて,今,垣内幹事から御注意を頂いた点は,1ページのゴシックの規律文言案のところにも,きちっと絞りとして明示しておかなければいけないという,そういう御指摘を頂きました。   それは,少し前に水津幹事から,この②は従たる権利の法理の一つの発展的な表現であるという御指摘を頂いていたところとも符合するところでありますから,前向きにそこのところを引き続き事務当局において検討いたします。   松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 すみません,ありがとうございます。   甲案を中心に考えていくこと,その問題点を一つずつクリアしていくということについては,基本的に私,先ほど申しましたように賛成です。   それとは別に,乙案についてなんですけれども,甲案を検討すれば,乙案を検討しなくてもいいかというと,ちょっと悩ましい問題があると思っております。所有者不明土地について,その土地管理命令が下されて,そうすると,土地管理人は処分までできる,その土地の売却までできるということを前提に考えたときに,土地管理命令が下された土地の上に建物があるときには,土地は売れるのかという問題がやはり出てくるということを,乙案は問題提起しているとも思われます。   つまり,土地の上に建物があるときに,土地だけ売れるのかということについて,部会資料28・6ページでは,そのことを指摘していただいています。6ページのイの(ア)の2段落目から始めて4行目,「また,土地の管理の観点から」というところから始まる文章なんですが,土地所有者と建物所有者が同一で,土地管理命令が下されているというときに,建物がある場合に,土地売却するといっても,建物があるときに土地を売却してしまうと,建物は利用権限を失って,収去されざるを得なくなるという説明は,言わんとすることは非常によく分かるんですが,土地所有者と建物所有者が同じで,土地だけ売却できるというときは,普通はその利用権限を留保しておくという黙示的な合意があるとか,あるいは制度として一種の法定地上権みたいなものを付けずに,土地だけ売却することを認めるということが,制度設計として想定できるかというと,やはり想定しづらいので,ここで説明されようとしている内容は非常によく分かるんですが,結局は土地・建物を一括売却する形にせざるを得ないでしょうという問題点の指摘だと思うんですね。   ここは,やはり非常に大事な点で,所有者不明土地について,土地管理命令を得たけれども,建物があるときには土地の売却の駄目なんですよということにしてしまうのか,場合によっては,建物まで一緒に売却できる一括売却の制度を乙案で創設するというところに踏み込むかは,政策的な判断も絡むと思うんですが,そこまでやらないと所有者不明土地問題というのは実効的に解決できないと見るか,それほど深刻でもないと見るか,乙案それ自体の問題提起というものも,しっかり考えてみる必要があるかなと思いました。 ○山野目部会長 先ほど申し上げましたように,佐久間幹事の御提案もありましたし,今,松尾幹事の御指摘もありましたから,甲案,乙案に機械的に限ることではなくて,これらの組合せの発想によるものも考えてまいりますから,ただいまの御注意をその中で活かしてまいりたいと考えます。   ほかに部会資料28についておありでしょうか。   今日は,多岐にわたる御指摘を頂きましたから,またこれは整理させていただきます。   提案でございますが,5分間休憩した後,部会資料29についての御審議をお願いしたいという進行のイメージを抱いておりますが,お許しいただくことがかないますでしょうか。   よろしいですか。   それでは,休憩にいたします。           (休     憩) ○山野目部会長 再開をいたします。   部会資料29で題材としております,財産管理制度の見直しの中の相続の放棄をした者の義務についてお諮りをいたします。   この部会資料のなかの番号は,相続の放棄をした者による管理として1番と掲げているもののみでありまして,2番はございません。中身としてお示ししているものは,中間試案とおおむね変わっておりません。パブリックコメントの結果も,現行の940条1項が定めている内容が不明確であり,ないしは相続を放棄した者に対して,重い責任,義務を課する傾向がある点を改めるべきであるという方向での意見が,大勢を占めたところでございます。それを踏まえての提案をしており,自己の財産におけると同一の注意をもって保存すれば足りるという文言の提案を差し上げた上で,その保存した結果,最後はどうなるかということの出口に関して,注記で,弁済供託によって,その決着を図るということが考えられるというところをお示ししているものでございます。   この部会資料29の全体についてお諮りをいたしますから,委員,幹事から御意見をお出しくださるようにお願いいたします。いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 今回の提案では,相続の放棄をした者の義務について,保存義務の発生要件を絞り,保存義務の内容についても軽くしているものだと理解しました。また,保存義務の終了させるための方策についても書かれていて,このような内容について賛成します。日弁連のワーキンググループの中でも,賛成するという意見が大半でした。   さらに,その上でということで,少し質問いたします。   1点目は,相続放棄をした者が義務を免れるための,(注)の記載に関する質問です。相続の放棄をした者は,財産の引渡債務について弁済供託をすることで,本文の義務を免れることができると書いてあるのですが,実務上は金銭以外の,動産や不動産については供託が難しいということがあり,そのことについて,どのように考えておられるのかということが1点目。   2点目については,相続の放棄をした者の義務が軽くなっていると理解していますが,ただし,これは,他の相続人との関係であって,第三者との関係でどうなるか。例えば,倒壊しそうな建物について相続の放棄をした場合について,その建物によって第三者に何らかの損害が生じたらどうなるのか,といった意見が,日弁連のワーキンググループの中でありました。   今申し上げた二つとも,必ずしもこの条文,民法940条1項の規律を改めることで解決できることではなく,一つ目については,弁済供託の制度を全体的にどう考えるのかということでしょうし,2点目でいえば,工作物責任をどうするかということですので,この部会での検討の対象外ということかもしれませんが,関連するということで,事務当局において,何かお考えがあればお聞かせいただければと思います。 ○山野目部会長 お聞かせいただきたいという御要望でしたから,二つ問題提起を頂いたことについて,何かあったらお話をください。 ○大谷幹事 相続放棄をした者の義務をどのように考えるのかというのは,現行法上もよく分からないという御指摘がこれまでもありました。基本的には相続人に対する義務なのだろうと,それを明確にしようということで,今回の提案に至っておるところでございます。   その内容ですけれども,自己の財産におけるのと同一の注意をもって保存をするということに限られるわけでございますので,もちろん供託をして,最終的に引渡義務を果たしてしまう,それをしてしまえれば,もちろんいいのですけれども,特定物について必ずしもうまく自助売却ができるわけでもない,結局保存をし続けなければならないということもあり得るわけですが,それでも,その義務の内容として,それほど重いものではないということをはっきりさせるという意味で,このような提案をしているところでございます。ですので,最終的に手放せることがかなわないこともあり得るわけですけれども,規律としては,相続財産法人になって管理人を選任されたら,その人に渡すということもあり得るところですし,持っていなければいけないとしても,大した義務ではないということを,ここでは書いておるところでございます。   それから,2点目が,例えば,建物などが相続財産に含まれておって,それを占有していた方が放棄をした。この管理の義務を負っているというときに,相続人に対しては,保存の義務を負うということになりますが,第三者に対する義務はない。ただ,別途不法行為法などで,占有していれば,土地工作物の占有者の責任を負い得るというところですので,損害賠償責任を問われないように,最低限危険がないようには,結局管理をする必要があるのかなと考えていたところです。 ○山野目部会長 蓑毛幹事におかれて,お続けになることがあれば仰せください。 ○蓑毛幹事 いや,もうよく分かりました。結構です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   引き続き,いかがでしょうか。   ほかに,委員,幹事の皆様方から御意見がおありでしょうか。  道垣内委員,どうぞ。 ○道垣内委員 ありがとうございます。   これ,940条1項の規律ということなんですが,940条2項は触らないということが前提になっているのでしょうか。 ○山野目部会長 そのとおりです。触らないです。 ○道垣内委員 そういたしますと,現行の940条1項は,財産の管理を継続しなければならないという形で,管理義務というふうな雰囲気の条文になっているのに対して,これは,放棄をした人というのは相続人ではないわけで,管理人義務を本当は負うのはおかしいのではないのというふうな考え方も多分あって,自己の財産と同一の注意をもって保存をするということになる。   ところが,940条2項というのは,あたかも受任者のように,例えば,債権の弁済期,債権の弁済を受けたら,それを相手方に渡す,相手方というのは相続人に渡すとか,また650条の1項,2項というのは,費用の償還請求というのを書いているわけですが,もちろん保存のときにも費用はかかるとは言えますけれども,2項は,部会資料に書かれている1項とは異なった前提の下に存在しているのではないか,そうすると,そこに何らかの齟齬といいますか,平仄が合わないところが出てくるのではないかという気がします。   私個人は,放棄をした人が何らかの責任を負うなんていうのは,根本的におかしいのではないかと思っているんですが,この点は,必ずしも皆さんの納得は得られないかもしれません。しかし,2項と1項との関係について,もうちょっと詰める必要があるのではないかとは思います。 ○山野目部会長 940条の1項と2項との関係,もう少し砕いて申し上げれば,1項の規定を今回提案のように見直すことに伴って,2項について,言わば関連するというか,何て申せばいいでしょう,関連する見直しをするということも怠らないでくださいという御注意を承りました。   受任者が引渡義務を負うという委任の規定を,現在の940条は準用しておりまして,これについて,本日特段大きく改めるという御提案はしておりません。1項の方で,管理をしなければならないというところを,管理をすることで足りると改めていることに伴い発展的に理解の見直しが望まれるということは,ありうるものでしょう。受任者に擬して考えられる相続放棄をした者が,やはり引渡しの義務を負い,引渡しの義務を負うからこそ弁済供託の前提が説明可能になりますけれども,ただし,そこで期待される引渡しの義務というものは,恐らく1項の規律が変更されたことに伴って,これも一つの債務でありますから,債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして,相当な方法で履行されるという解釈,一般的な解釈,債権法を支配する一般的な解釈理解が妥当するということが理論であると考えられますから,今の規律のままでも,適切な理解を導くことが不可能ではないと考えますけれども,道垣内委員から御注意があったとおり,なお1項の見直しについて成案が得られた段階で,2項についても関連の見直しを怠りなくするということは当然のことでありまして,それを致すということを,御注意を承って理解をいたしましたから,そのようにいたします。ありがとうございました。   沖野委員,どうぞ。 ○沖野委員 ありがとうございます。   相続人が存在しないというか,相続財産法人になる場合についてなんですけれども,本文におきましては,それは中間試案からそうだったわけなのですけれども,相続財産法人がある,あるというか,それができているような場合には,そちらに渡すという想定です。少し気になりましたのは,改めて供託の規定を設けるという考え方が出されたことに伴って,相続財産法人は,理念的にというか,成立はしても,必ずしも管理者がいるとは限らないわけで,そうすると,利害関係人や検察官の請求によって管理人を選任するということが出てきます。相続財産法人の場合には,その相続財産法人に対して引き渡さないといけないということだとすると,実質的に最後の者になった,みんなが放棄しているとかいうようなことで,その人は,この申立てをしないといけないのか,それとも,管理者をわざわざこの一つの財産のために選ぶほどではないので,供託をその場合もできて,必要ならほかの人が選任して,それをもらってということでいいのか,それでいいのではないかという感じもするものですから,そうだとすると,この供託の対象のところに,相続人が引渡しの受領を拒んだとか,受領不能ということだけではなくて,もう相続財産法人が成立する要件を満たすような場合には,既に管理者が選任されているというような場合を除いて,これでできるとした方がいいのではないかなとも思うものですから,大変細かいところではあるんですけれども,もしお考えあればお聞かせいただければと思います。 ○山野目部会長 今,沖野委員から問題提起を頂いた事項について,事務当局の方で,今ここで考えることがあったら伺ってみたいと考えておりますけれども,念のための御案内をいたしますと,これは少し御説明が足りていませんでしたけれども,注記で示している内容は,部会資料を作った段階では,新たな規律を創設するということは想定しておりませんでした。一つ前に道垣内委員との間で話題になったように,940条2項によって委任の規定が準用され,あそこで債務が発生していることは説明が可能ですから,その債務について後は弁済供託の通則に従って弁済受領不能,又は拒絶を原因とする通常の弁済供託をしてもらうということで,弁済供託の通則に委ねるという解決になりますものであって,ここで新たな供託原因を創設する規定を設けるということではなく,このような結果になりますということを,この段階で委員,幹事に解決の理解として共有してもらうために,注記を置いておいたものであります。   もっとも,今,沖野委員から御指摘いただいたようなことを更に受け止めて,一般の市民が読んでも,規範の透視性において疑いがないようなものにしていくためには,もしかすると,ここで改めて整えた弁済供託の要件を明示する規律を置くということが望まれるものであるかもしれません。部会資料を作ったときは,そういう気持ちでしたが,沖野委員のお話を聞いていて,うん,なるほどとかというようなお話が,大谷幹事からあります。 ○大谷幹事 ほとんど部会長から御説明いただきました。今の(注)のところは,弁済供託に別の供託原因を作っていくということではないということでございます。   この相続人になることが明らかでない相続財財産法人ができたときに,管理人が選任されていない状態は,相続財産法人が財産の引渡しを受領することができないということになるのではないかと思われますので,供託の原因としては,現行法の解釈の下でもできるのではないかと考えたところです。   そういうこともございまして,(注)のところでは,あえて(注)という形で書いているところでございます。 ○山野目部会長 沖野委員,今の段階では,このような御案内でよろしゅうございましょうか。 ○沖野委員 ありがとうございます。どういう扱いであるかということは理解しました。   ただ,利害関係人として請求して,選任ができるというときに,本当に不能というところでいけるのかというのは,ちょっと気になるところではあります。 ○山野目部会長 意見の趣旨はよく理解いたしましたから,検討いたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○今川委員 まず,一つ質問があります。   またちょっと補足説明の読み方がまずいのかもしれませんが,中間試案の補足説明の91ページに,相続財産を積極的に害してはならない義務を負うにとどまるとの考え方によれば,その土地の管理を放棄して,その土地から立ち去ったとしても,義務違反を問われることはないと考えるという記述があったんですが,これは,やはり今回変更されたということで,少なくともこれ,立ち去るということは,現に占有しているということだろうと思うんですが,現に占有している場合は,引き渡すまでは保存義務があるんだよ,そういうふうにまず考えるということでよろしいんですよねというのが1点です。   それと,もう既に説明はされていると思うんですけれども,保存すれば足りるという意味は,この中間試案の(注1)の②,現状を滅失させ,又は損傷する行為をしてはならないことのみを意味すると,こういう考え方に立つということでよろしいんですねという確認が,これ,二つ目です。   それから,現に占有しているという場合として,どのような場合があるかと考えると,例えば,被相続人である親の所有する建物に自分が一緒に同居して住んでいて,親が亡くなった。これは,現に占有している,これは分かりやすいんですが,そのときに,更に田畑があって,その相続人は全く関与していない。こういう場合は,現に占有しているというのかとか,親が田畑を第三者に耕作させるということはよくある,間接占有しているということはよくあるんですが,こんな場合に,相続したらどうなるのかとか,その辺は,整理はこれからされるのか,ある程度今,考えがあるんであれば教えていただきたいなということです。   最後にもう1点ですが,この競売手続,蓑毛幹事もおっしゃっていましたが,自助売却というのが,それほどうまくいかないというか,そう簡単なものではない場合が多いということになりますと,これは勢い,現に占有している相続人は,放棄した場合には,どちらかというと,相続財産管理人の選任申立てをしないとけりがつかないという方向にも流れるのかなと。そうすると,そのときの予納金の問題があって,どちらが時間がかかって,どちらが費用がかかるのかというようなことも,ちょっと検討をしておかないといけないと思います。   我々司法書士会連合会としましては,この予納金については,減免措置も検討していただきたいという,この部会で検討することではないのかもしれませんが,それも視野に入れて検討していただきたいという意見を出しておりました。 ○山野目部会長 合わせて四つほどお尋ねがあったことについて,事務当局から所見があればおっしゃってください。 ○大谷幹事 最初に2番目の御質問について,中間試案の(注1)で示していた①の考え方,②の考え方がございましたけれども,その②の考え方を基礎として,今回の御提案をしているのは,そのとおりでございます。   相続放棄者が立ち去ったときについてどのように扱うかというのは,以前から御議論を頂いているところですけれども,現に占有しているという相続放棄者がいましたら,その相続放棄者は,相続人に対して引渡しまでの間保存の義務を負っているという状態になります。ただ,その立ち去るというところの意味するところですけれども,自分の財産におけるのと同一の注意をもってということですので,普通に,例えば,建物であれば,建物を施錠するとかいうのが普通の自己の財産の保存の仕方かなと思いますけれども,鍵をかけて置いておいても,それを壊さないでいれば,それで足りるということかと思っておりました。   現に占有するというものをどのように認定するか,確かに難しい問題があろうかと思います。直接に占有していれば当然そうだけれども,間接占有が認められるというときにはどうなるのかというところで,基本的に,この現に占有というのは,間接占有を入れない形かなと思っておりました。このような表現でいいのかというところは,今後も法制的に検討しないといけないと思っておりますけれども,基本的には,実際に占有をしていて,その人は管理を続けることでも仕方がないのではないかということを考えておりました。   最後に,供託のところですけれども,これも,先ほど蓑毛幹事の御質問に対してお答えしたのと同じかなと思いますけれども,一定程度,どうしてもその処理ができないものが出てくるだろうと,それは現行法でも同じだと思いますけれども,その義務の内容はそれほど重いものではないので,壊さない程度に保存しておれば足りるということで考えるのかなと思っておりました。   予納金について,財産管理人を選任するとすれば,また予納金の問題が出てまいります。予納金がどれぐらい必要かというのは,その事案に応じて裁判所の方で判断されるものですので,こちらの方でどうかということではございませんけれども,御要望として承りたいと思います。 ○山野目部会長 今川委員の方で,お続けになることがあればお話しください。 ○今川委員 いえ,ありません。ありがとうございます。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいですか。   940条1項の見直しについては,本日お出しいただいた点も,それぞれの御指摘を有益に伺いました。さらに,一般の理解を得るために,仮にこのままの案でいくとしたときにも,規律内容についての平明な理解が得られるよう努めていかなければならないと考えます。ただいま事務当局からもその方向での決意が語られたところであります。   それをなぞるような仕方で,私から5点ほど申し上げておくということにいたしますと,1点目は,仮に現に占有しているという要件で入口の議論を始めるとしても,現に占有しているという要件に該当しているかどうかの審査認定自体が,慎重にされるべきではないかと考えます。今川委員が例にお挙げになった,親の田畑の耕作を手伝っている,娘さんなのか息子さんなのか分かりませんけれども,それは,かなりの場合に占有しているものではなくて,占有補助者ではないでしょうか。そういう可能性もあるということに留意をして認定をしていくという契機が,一つあってよいと思います。   それから,2点目として,しかし,そういう要件審査,要件認定上の努力をしたとしても,自助売却を申し立てなければいけないという成り行きになる場合はあることでありましょう。自助売却の申立ての要件自体は,平成29年法律第44号によって改正された民法の規定によって緩められておりますから,そこのところは,その改正がされる前よりはしやすくなっているということに留意されてよいと考えます。   それから,3点目でありますけれども,そうは言っても,緩められた要件の下でも,なかなか自助売却を現実には考えにくい場合があるではないかということであります。けれども,しいて自助売却を申し立てることをせず,そのままにその物をしておくということも,この規律の読み方としては,そのような局面があっておかしくはないであろうと感じます。そのままにしておくということの中の一つに,よく言われる立ち去るという所作も含まれるものでありまして,確かに940条の2項が準用して引渡しの義務を負いますけれども,申し上げたように,その局面にふさわしい仕方で,債権の発生原因及び取引上の社会通念に照らして,引渡しの時期,方法が定まっていくものでありますから,当面はそのままにしています,自助売却も現実的ではないし,そのほか,予納金を納めて面倒なことをすることも嫌ですから,そのままにしていますけれども,何か違法な債務不履行をしていますかと問われれば,いや,それは局面によって判断をいたしますという契機はあるものであろうと考えます。   それから,4点目ですけれども,棄ててしまうという選択肢が違法かというと,そうとも限らなくて,今般,自己の財産におけると同一の注意をもって足りるという規律表現にしますから,この注意義務の運用の一環として,社会的な重要性が著しく乏しく,経済的価値も皆無,ないしそれに近いと認められるものを棄てる行為が,違法な保存義務違反であるかというと,そうではないという事例もあることでしょう。もちろん,棄ててはいけないという場合もありますけれども,そうではないという場合もあるだろうと考えられます。   5点目ですが,そのような無価値な重要でない財貨とは異なり,かなり重たいものについては,やはり相続財産管理であるとか,新しく設けられるであろう所有者不明土地管理制度に引き継いでいかなければならない局面はありましょうし,その場面に関していうと,沖野委員や今川委員が御心配になったように,予納金の負担も通則どおり覚悟して申し立てなければならないものですかという問題が,課題として残ります。ここについては,今川委員からも御指摘があったように,この部会のサイズのみで,お金の面などについて,最終的な決着を図ることは難しいかもしれませんから,引き続き課題として認識していかなければならないことではないかとも感ずるものでございます。   委員,幹事から頂いた御意見を踏まえて,今日,この辺りのところについて議論をしましたね,ということを確認させていただいた上で,また部会資料のブラッシュアップに努めてまいりたいと考えます。   部会資料29の問題について,特段の御発言がおありでしょうか。   よろしいですか。   それでは,部会資料29についての今日の審議をお願いしたという扱いにさせていただきます。   本日お出ししている3点の部会資料についての内容にわたる審議を了しました。この後の部会の進行について,事務当局が考えるところについて今,大谷幹事からお話をしてもらいます。それを踏まえて,今日,久しぶりに開かれた部会の会議であって,かつ会議開催方法も変則でありましたから,今後の運営について,委員,幹事から特段の御意見があれば承っておきたいと考えます。 ○大谷幹事 皆様,大変長時間お疲れさまでございました。ウェブで御参加いただいた方,特にお疲れになったかと思います。   次回の議事日程ですが,6月23日火曜日です。これまで,午後1時から午後6時ということでやってまいりましたけれども,その時間の会議室の準備はできております。ただ,今日の御負担を踏まえて,この5時間の審議というのが現実的かどうかというところは,また皆さんの御意見を踏まえながら考えたいと思います。場所は,同じ法務省大会議室で会議を行い,また,ウェブの御参加も頂けるという形にしたいと思っております。   なお,テーマについては,最初の方に少し申し上げましたけれども,今,共有関係等について部会資料を準備しておりますので,実体法に関する部会資料を御審議いただきたいと考えております。 ○山野目部会長 この後の部会の進め方について,事務当局として考えているところを,今,提案してもらいましたけれども,この際,委員,幹事から部会の運営,進め方につきまして,特段の御意見,その他の御発言がおありでいらっしゃいますれば,承ります。   いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 これはお願いですが,今回のコロナ問題がありますので,会議室に集まるメンバーを絞らなければならないということは重々理解しております。   その上でのお願いですが,メモ取りのために,随行者についてもウェブで,もちろん発言も何もしないで聞いているだけですけれども,ウェブで参加できるような体制を整えていただけると大変ありがたいです。管理の問題もあろうかと思いますが,お願いできればと思います。 ○山野目部会長 承りました。   ほかにいかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,本日はこのような会議の持ち方で,3点の部会資料の御審議に御協力を頂きましてありがとうございました。   まず,会場の様子から御案内申し上げますと,やや湿気,熱気があって,御参集の皆様方お疲れでいらっしゃるだろうと想像します,ありがとうございました。   それから,ウェブで参加いただいた委員,幹事の先生方にも,特段の御礼を申し上げます。私もZoomで法科大学院の学生などとやり取りをすると,終わってから,それなりに疲れを感じます。いささか異質な疲れ方をするということを経験しているものですから,短時間でも,そんなふうにへこたれちゃうところを,本日,これだけ難問続きの話題について,これだけ長きにわたる時間にわたり御審議に御協力いただき,相当なお疲れでいらっしゃるかもしれません。わけても,深く御礼申し上げるところでございます。   いろいろ無調法もあったのではないかと想像いたしますから,後でまた個別に事務当局の方に御要望や御意見をお出しいただきたいとお願いいたします。ありがとうございました。   それでは,第13回の民法・不動産登記法部会を,これにてお開きといたします。どうもありがとうございました。 -了-