法制審議会 民事訴訟法(IT化関係)部会 第2回会議 議事録 第1 日 時  令和2年7月10日(金)自 午後1時29分                     至 午後5時21分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  民事訴訟法(IT化関係)の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本(和)部会長 予定された時間より少し早いかもしれませんけれども,皆様おそろいのようでありますので,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会,第2回の会議を開会したいと思います。   本日は御多忙の中,またこのような新型コロナ感染症に関する状況の中,御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   本日の欠席者はいらっしゃいません。なお,笠井委員は,一時中座されると聞いております。   まず,前回に引き続きまして,本日はウェブ会議の方法を併用して議事を進めたいと思いますので,ウェブ会議に関する注意事項を事務当局から御説明をお願いいたします。 ○大野幹事 前回の部会と同様のお願いとなりますけれども,念のため改めて御案内いたします。   ウェブ会議を通じて参加されている委員,幹事の皆様におかれましては,ハウリングや雑音の混入を防ぐために,御発言される際を除き,マイク機能をオフにしていただきますよう御協力をお願い申し上げます。審議において御発言される際には,手を挙げる機能をお使いください。手を挙げる機能は,画面の下側に表示されるコントロールバーの中にある手のひらマークをクリックすることにより使用可能です。手を挙げる機能が使用されましたら,部会長から適宜指名がありますので,指名されましたらマイクをオンにして御発言ください。御発言が終わりましたら,再びマイクをオフにして,同じように手のひらマークをクリックして,手を下げるようにしてください。 ○山本(和)部会長 それでは,本日の審議に入ります前に,配布資料の確認について事務当局からお願いします。 ○大野幹事 まず,部会資料3「訴えの提起及び送達」と部会資料4「手数料の電子納付」がございます。こちらについては後ほど審議の中で事務当局から御説明します。   次に,参考資料の6から8までを配布しております。まず,参考資料6,7は本日御審議いただく手数料の電子納付の論点に関連するものです。こちらについても,後ほど審議の中で部会資料4と併せて事務当局から御説明します。参考資料8は,海外調査の結果についてまとめられた報告書です。   なお,本日は阿多委員から,公益社団法人商事法務研究会にて開催されていた民事裁判手続等IT化研究会の報告書について日本弁護士連合会において取りまとめた意見書の御提供がありましたので,机上配布しております。   配布資料は以上です。 ○阿多委員 委員の阿多でございます。本日席上に,タイトルが「「民事裁判手続等IT化研究会報告書-民事裁判手続のIT化の実現に向けて-」に対する意見書」というものを配布させていただきました。   公表日を見ていただきますと6月18日と記載しておりますとおり,前回の6月19日の前日に日弁連で決議,執行されたもので,前回には配布することができませんでした。そのため第2回における配布となりましたが,当該意見書は,令和元年12月に商事法務で実施された研究会報告書に対する現時点での日弁連の考え方を整理したものです。その意味で個々の論点において御参考,御検討いただけたらと思います。ただ,この法制審の部会で提案いただいている内容が研究会報告書から進化ないしは変更されている点もありますので,日弁連推薦の委員・幹事もそれらを踏まえて今後,御意見等を述べていきたいと思います。   お時間頂きましてありがとうございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,早速本日の審議に入りたいと思います。   本日は訴えの提起,送達,それから手数料の電子納付について,一読目の検討をお願いしたいと思います。   まず,一つ目の論点として,訴えの提起についてであります。部会資料3の第1がこの点についての記載となっていますが,ここが大きくは,「オンラインによる訴えの提起」と「濫用的な訴えの提起を防止するための方策」という二つの項目に分かれておりますので,それぞれ順番に議論をしていきたいと思います。   それでは,まず事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○藤田関係官 それでは,「1 オンラインによる訴えの提起」について,御説明します。   まず,本部会資料では,本日の御議論の前提として,1ページ目の(前注)において,「事件管理システムの利用登録」と題して,事務当局の考えるもののあらましを記載しました。こちらは,本日の議題である訴えの提起及び送達,手数料の電子納付の各論を御議論いただく際に適宜,関連部分を御参照いただくためのものでして,(前注)の内容だけに焦点を当てて御議論いただくことまでは想定しておりません。   さて,今回の部会資料では,ITを利用した訴えの提起の方法として,事件管理システムを利用した訴えの提起を提案しております。具体的な制度の内容については,本文の1及び説明の1に記載しております。概要を申し上げますと,電子データによる訴状を事件管理システムを通じて提出することを許容し,これが裁判所のサーバに記録されたときに当該訴状が到達したものとみなすというものです。   現行の民事訴訟法第132条の10においてもオンラインによる申立ては認められておりますが,これと同内容の規律としつつ,同条のように申立てに着目するのではなく,訴状自体が電子データ化される点を正面から規律する表現に改める趣旨です。   本文の(注1)及び(注2)において御提案しておりますのは,必ずしも現行の民事訴訟法第132条の10と同内容ではない部分を含む規律です。まず,本文の(注1)及びこれに対応する説明の2についてです。   訴訟記録が全面電子化された場合,オンラインで提出された訴状についても基本的に電子データのまま管理されることになりますので,作成者を明らかにする措置に加え,作成者の側及び裁判所の側において,それぞれ当該電子データが改変されないことを担保する措置を採るべきことを御提案しております。提出の場面においては,民事訴訟法第132条の10の制定当時は,紙媒体の訴状への当事者又は代理人による記名押印に代わる措置として,当事者又は代理人による電子署名が想定されていたものと承知しておりますが,これらの者の負担に配慮し,付与されたID及びパスワードを用いて事件管理システムにログインしなければ訴状をオンライン提出することができないという点に着目して,例えば,アップロードの直前に電子訴状の作成者と非改変性についてのチェックボックスにチェックを入れる,言わば宣誓方式による担保で足りるとする余地などもあるのではないかということを御提案しております。   続きまして,裁判所のサーバに提出された電子訴状については,それ自体が訴訟記録の言わば原本となるものですから,サーバを第三者の侵入を受けないセキュリティ性の高いものにする必要があります。また,そういった原本性のほか,時効の完成猶予とも密接に関わるものとして,受付の日時を公証する必要から,提出者に求める措置の内容や程度との兼ね合いにもなりましょうが,個別の電子訴状について非改変性を担保する措置を行うことの要否も御議論いただきたく存じます。   続きまして,本文の(注2)及びこれに対応する説明の3についてです。こちらは商事法務の研究会においてバックオフィス連携と呼ばれて議論されたものです。近時,行政機関においては,申請者に係る住民票の写し等が添付されたものについて,行政機関相互において融通することを許容する規律が設けられております。もっともこの行政機関内部のシステムを裁判所に広げる場合には,行政機関と司法機関との性質の相違のほか,情報の性質の相違や,専ら原告の便宜に資することとなる点をも考慮して御議論ください。   私からの説明は以上です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,今御説明の論点につきまして,どの点からでも結構ですので,また,どなたからでも結構ですので,御質問,御意見等を頂ければと思います。 ○阿多委員 今回の資料を頂いたときに,最初に「訴えの提起及び送達」というタイトルでまとめられているのですが,裁判実務を担っている者にすれば,訴えの提起から送達までという一連のプロセスでは,実はもろもろの手続が行われております。   少し,非法曹の方もいらっしゃるので,簡単に説明しますと,訴状は郵送又は直接の持参で提出し,裁判所の事件係ないしは訟廷といわれる部門で受付されるのですが,その際に形式的なチェックがあります。その上で,事件係受付で立件して担当部に記録を配付し,配付された記録は,今度担当部の方でまた訴状審査等の手続が実施され,場合によっては,原告等に連絡をして訂正させる等をし,期日を決めて被告に送達する。そのような意味では,この訴えの提起から送達の間に,原告側は数回は裁判所と接触・コミュニケーションを行っているわけですが,現状のその接触が,今回のシステムの導入によって,言わばアナログで行われていたというものが,このデジタル化されることによってどのように取り扱われるのかという部分についての議論・問題整理がありません。実務家はそれらの点についても関心があります。今日,議題として載っていないことについて議論するつもりはありませんが,どこかの場で議論させていただけたらと思いますので,その点,まず指摘したいと思います。   何点か質問ですが,部会資料3冒頭の(前注)では,事件管理システムの利用登録,事前登録制度というものがございますが,現行民事訴訟法では,いわゆる送達場所の届出制度として103条及び104条で定められていて,特に104条2項では,送達場所を届出すれば,それを固定化するルールが定められています。もちろん事件管理システムは,(前注)4を拝見しますと,当事者も代理人も登録ができる,そして,研究会報告を見ますと,当事者も訴訟記録にアクセスをして見ることができることを想定されているかと思いますが,事件管理システムは送達場所の固定化を考えているのか,代理人が就いて事件管理システムに登録すれば,原則代理人だけに固定化することを考えているのかについて教えいただきたいと思います。もし意見を述べるとすれば,私は固定化ルールを検討いただけたらと思っています。   もう1点は,(注1)で使われております非改変性という言葉,私自身が意味をとりかねており,どのような意味で使われているのかという点です。先ほど訴状の提出までのお話をしましたが,我々が裁判所に提出する場面と,その後裁判所の中での場面がありますが,事前の手続についての,3ページ2行目の第2で規則2条を引かれているものは,原告ないしは原告代理人が提出する訴状の同一性についての指摘なのかと。代理人はドラフトを作って最終確定版に押印し正本又は副本として裁判所に提出しているわけですが,それら裁判所に提出するものと手許の訴状の同一性を改変性と呼ばれているのか,それとも,裁判所に提出された後の外部ないしは内部者を含めて何者かが訴状等を改変する可能性を排除することを検討されているのか,どちらの意味か,言葉の意味を教えいただければと思います。 ○山本(和)部会長 幾つか御質問がありましたが,事務当局の方からお答えいただけますでしょうか。 ○大野幹事 まず,(前注)でお示ししたところですが,部会資料においてイメージとして御提示しているものは,事件管理システムへの登録をした場合には,常に通知アドレスの届出もあるという前提です。その上で,事前登録制度というのは,部会資料にも記載しているとおり,個別事件がなくても,IDを登録しておくことができるというものを想定しております。   御質問の送達場所の届出との関係で申し上げますと,もしこの事前登録制度が創設されることとなった場合には,送達場所の届出が個別事件とは関わりなくされているという状態になると考えられます。ただ,後ほど論点として取り上げる訴状の送達との関係で言えば,本人が事前登録制度を利用していない限り,電子データという形で本人に訴状を送ることは難しいと思います。また,例えば,弁護士の方が登録している場合であっても,委任状がなければもちろん送達はできません。訴状との関係ではそのようなものとなりますが,この事前登録制度については,研究会の段階では,特に本人についてどこまで認めるべきかが,弊害との関係で,議論されていました。   それから,非改変性の担保については,部会資料では,二つの場面で使っております。まず,代理人が訴状を作成してから提出するまでの間に改変がされていないことの確認という意味です。また,裁判所に訴状の電子データが届いた後,それが訴訟記録になりますが,その内容が改変されることを防ぐ何らかの措置を講ずることも非改変性の担保と呼んでおります。これを実際にどの段階まで求めるかというところについては,これから御審議いただきたいという趣旨です。 ○山本(和)部会長 阿多委員,よろしいでしょうか。 ○阿多委員 冒頭の,訴えの提起及び送達の間のところの御検討の機会も御審議,どこかで頂ければと思いますので,よろしくお願いします。 ○大野幹事 現行法上,訴えの提起があってから第1回口頭弁論期日までの間に行われる事象に関する規律としては訴状審査がありますが,それ以外は,基本的には裁判所の事務フローの世界なのだと思います。阿多委員の御指摘は,IT化の下で,今までその裁判所の事務フローであったものが,これからどうなっていくのかが分からないと,その中で法制化が必要なものの検討が不十分になるのではないかという御懸念だと理解しました。事務当局としても,今後の裁判所の事務フローも含めて,皆様に伝わりやすくなるように意識してまいりたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,ほかにいかがでしょうか。 ○日下部委員 日下部でございます。(前注)に関して,それそのものを本日議論することは想定されていないということは承知しておるのですけれども,本日のほかのテーマに関しても関わり合いがあると思いますので,何点か意見を申し上げたいと思います。   まず一つは,事件管理システムに利用登録するに際しての本人確認の方法を最高裁規則で定めるということが想定されています。そのことについては異存はございませんが,どういった観点でその方法を定めるのかについては共通認識を持つことが大切だろうと考えておりますので,今後その点についてもお考えを示していただくことを期待しております。   それから,2点目ですけれども,こちらは意見と申しますか,御質問になるかもしれません。事前登録制度を設けるということそのものについては私自身は異存はございませんけれども,確認したいと思っておりますのは,個別事件が生じたときに,その当事者になった者が事前登録制度によらずに利用登録をしたという場合に,その者はその後に続く,その後に発生する可能性のある個別事件において,当然に利用登録をしたものとして扱われるものではないと理解をしているところです。配布資料ではその点が必ずしもはっきりしていないのかなと思いましたが,事前登録制度によらないで登録した者がその後も汎用的に利用登録者として扱われるということについては,弊害のおそれがあると考えておりますので,申し上げました。   それから,3点目ですけれども,先ほど来も言及がございましたが,当事者とその代理人が共々,事件管理システムの利用登録者になっているというケースが大いにあり得ると思います。そうした場合に,当事者とその代理人の活動がそれぞれ訴訟法上の意味を持つということになりますと,今現在の実務においても論理的にはあり得る話ではあると思いますが,IT化されると,両者の行動の間にそごが生じたり,整理が難しい状況にもなりやすいのではないかと考えております。そうした問題については,特に実務的な観点から整理をする必要があるだろうと考えております。これは,事件管理システムの設計や運用の在り方と併せて,いずれ検討,整理をしていただきたいというふうに,これは要望でございますけれども,申し上げさせていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。2点目は質問も含まれていましたかね。 ○大野幹事 個別事件において事件管理システムの利用登録をした後の他の事件へのIDの利用の点についてお答えします。   ここでは,他の事件へのIDの利用を仮に流用と表現しますが,事務当局として,現段階において,流用について可否のどちらかの方向性を持っているわけではありません。ただ,事前登録制度に対する懸念を考えると,IDの流用を広く肯定していくべきか,また弊害に対してどのように手当てすべきかを,よく考えていく必要があると思います。もし事前登録制度を広く認めるべきではないということになれば,IDの流用も同様に抑えていくべきであるということになると思います。他方で,本人が本当に使いたいという例に配慮する必要もあるのかもしれませんし,あるいは,IDに有効期限を設けることも考えられるかもしれません。この点についても御議論いただければと思います。 ○藤野委員 主婦連合会の藤野でございます。私もただいまの日下部委員がおっしゃった事件管理システムのところで,先ほどの御説明で議論の対象ではないということは伺いながらも,意見を述べさせていただきたいと思います。   ごく普通の国民は一生涯,裁判に関係しない人が大半だと思います。事件管理システムへの利用登録は,自分に関係する裁判が起きたとか,訴えられたときに,それが必要であれば登録する,利用するというものであってよいのではないかと考えています。また,個別事件の在否に関わらず登録することができる利用登録制度そのものが作られたとしても,必要とする弁護士の先生や行政庁などは登録するであろうが,それを個人が事前に登録すべきものではないと考えています。また,誰が登録や利用をするとしても,事件管理システムへの登録の方法,利用できる場面とその制限,セキュリティ対策,本人以外の関係者の関わり方等は,一般国民が理解できるように周知した上での導入としていただきたいと思います。また,既に全ての国民に与えられている個人番号との関係は,しっかりと議論していただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○増見委員 今,マイナンバーについての言及もございましたので,一言申し上げておきたいのですけれども,事件管理システムの利用登録に関しまして,やはり全体的な利便性の向上というようなことを考えますと,個人単位ではマイナンバー,法人単位では法人番号,納税者番号ですね,こういったものとひも付けることを是非とも検討していくべきなのではないかと思っております。   それから,その他の論点についても幾つか申し上げますと,訴えの提起の時期につきましては,やはりこのタイミングが,電子的に送信した場合,受理されたのかどうかというようなところが不安な点かと思いますので,これが正しく記録されたかどうか,自動返信のメールが来るですとか,受付完了画面が表示されるといったような,そのユーザーの不安を払拭するようなシステム設計を是非ともお願いしたいと考えております。   また,非改変性の担保のところなのですけれども,これもシステムがどのように設計されて,どれだけの人間にそのIDとパスワードが知らされるのかにもよりますけれども,訴状を提出する可能性のある者だけに与えられる第2パスワードがあるとか,そういった二重の安全措置を講じるといったことも検討していただいてもよいのではないかと思いました。   それから,最後にバックオフィス連携についてですけれども,こちらもより効率的な,ユーザーの利便性に資する措置として,当事者による提出は最終的には必要なくなるということが最も望ましいのではないかと思いますので,ここを目指していただければと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○佐々木委員 3点ございまして,一つは事務局の方に質問なのですけれども,先ほど電子訴状の非改変性のところで電子署名に言及されたかと思うのですけれども,電子署名というのは提出者の負担が過重になってしまうと懸念されているという理解でよろしいのかというのがまず1点でございます。   それから,これもすみません,(前注)の話なのですけれども,この事件管理システムの利用登録に当たっての本人確認なのですけれども,本人確認の方法として裁判所に出向かないといけないなどというのは,一連のシステム構築の上で少しナンセンスなのかなと思いますので,これをやはりシステム上でやっていただくというのがよろしいのかなと思っております。その具体的な方法として,実際にアプリケーションとして存在しますけれども,マイナンバーカードですとか免許証の写真とウェブカメラで撮影した写真の照合をAIによって行うというようなものもございますので,そういうものの実際の運用というのも考えていただきたいと思っております。   三つ目が,バックオフィス連携の話です。基本的にはこれはお願いしたいところではあるのですけれども,少なくとも行政側が保有している情報で公開されているものというのは,このバックオフィス連携でやっていただくのが適当なのかなと思っております。訴状に添付する書類として何があるのかというので,我々企業の立場からすると,代表者事項の証明書ですとか,不動産登記簿だとか,そういうレベルしか思い浮かばないのですけれども,そういうのであれば全然,連携していただいても結構なのかとは思いますし,例えば弁護士会照会で照会をすれば回答を頂けるような行政情報みたいなものであれば,連携していただくというような形でもいいのかと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。それでは,御質問について。 ○大野幹事 電子署名については,現在のところ,最も厳格な電子上の本人確認の方法だろうとは思いますが,その普及状況等に鑑みると,訴えを提起しようとする者に対してこれを常に要求するのはIT化された手続の利用の促進の点で難しいのかもしれません。本部会に先行して行われた研究会においても,同様の指摘がされており,余り負担が大きいものを求めていくとなると,IT化自体の普及に影響が出てくるおそれもあるので,何か簡易な方法も考えられるのではないかという観点から,御提案しました。 ○山本(和)部会長 佐々木委員,よろしいですか。 ○佐々木委員 はい,ありがとうございます。 ○阿多委員 阿多でございます。多数の委員からいろいろ意見が述べられていましたが,前提の概念について,私の理解と異なるので事務局に確認したいのですが,まず,3ページの3の電子訴状の添付書面について,いろいろな書類が行政連携で出ればという発言がありますが,本文5行目では,規則55条も引かれており,想定されている添付書面の範囲を確認したいのですが,55条1項は裁判所限りで我々が現状提出している書類がありますが,規則の55条2項は証拠の写しの提出も義務付けられています。証拠の提出については,それぞれ当事者が提出するということが今の民事訴訟法のルールと理解をしておりますので,行政連携やバックオフィスでは,当事者が提出すべき証拠についても裁判所からいきなり取得できるというイメージなのでしょうか。私は少し抵抗があります。それぞれの提出責任を負う当事者が行政を含め第三者が所有する情報をどのような形で提出するのかという議論はあり得るわけですが,裁判所がいきなり全部取得してくるという意味で使われているのであれば,反対ということを述べたいと思います。   それから,マイナンバー等のひも付けの話が出ました。その意味が,(前注)の1の本人確認の方法としてマイナンバーカードを使うという意味であれば,確認方法の一つとして理解をするのですが,マイナンバーでひも付けをするという意味が,国民全員が事件管理システムにそもそも登録されるということまで意味するのであれば,国民の大半が裁判に関わる機会はほとんどない状況であるにもかかわらず,そのようなことを意図されているのか分かりませんでした。本人確認という限度であれば賛同したいとは思いますが,御提案の趣旨の理解も含めて私の意見という形で受け取っていただければと思います。 ○山本(和)部会長 御意見という理解でよろしいですか。 ○阿多委員 それで結構です,はい。 ○大谷委員 ありがとうございます。大谷でございます。今ちょうどマイナンバーのお話が出ておりましたので,その点について一言補足的な意見を述べさせていただければと思います。   今おっしゃられたように,本人確認の目的で,マイナンバーカードの持っている機能ですとかそういったものを利用することについては,その情報のセキュリティなどの保全の仕方を慎重に検討した上で利用するのは差し支えないと思われますが,そもそもマイナンバーというのは国内に居住している方に付与されているものですので,一時的に海外にいらっしゃる,海外居住者となった方にはマイナンバーがありませんので,裁判に関わる当事者の公平という観点でも慎重に検討する必要があると思っております。   また,番号制度そのものについて私が申し上げるのも釈迦に説法だとは思いますが,税と社会保障,そして災害対策といった限られた目的のために使うということで国民的なコンセンサスを辛うじて得て成り立っている制度でございますので,そのマイナンバーを使った事前登録というものについてはやはり慎重に考えていかなければいけないものだと理解しているところです。   他方,法人番号の活用については前向きに検討する必要があるかと思いますが,事件管理システムとのインターフェースですとか連携などについては,その法人番号の仕組みというのが,新たな番号が登録されたり,常に変わっているものですので,システム開発のコスト,それからデータ連携のコストということについても十分に検討が必要なのではないかと思っている次第です。一言意見を述べさせていただきました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○湯淺委員 湯淺でございます。先ほど来,委員の皆様方からいろいろ御意見が出ていることに,やや補足的に意見として申し上げることになりますが,まず,マイナンバーを用いた本人認証の問題は,今,大谷委員も御発言になったとおりでございまして,マイナンバーそのもののひも付けは,恐らく法改正も必要でございます。ただ,マイナンバーではなくてマイナンバーカードを用いて,その中の電子証明書を用いて本人確認をする,これにつきましてはマイナンバーそのもののひも付けではございませんので,一つの技術的な方法としてあり得ると思っております。   ただ,事件管理システムなり,あるいはこの民事訴訟のIT化全体の問題に関わってくるかと思いますけれども,利用者の本人確認と,それからIDの振り方をどうするかというのは,過去のいろいろな実証実験でも常に問題になってきたところでございます。例えば,弁護士の先生個人の本人確認を厳格にすると,事務所の秘書の方だとかパラリーガルの方にはログインはさせないということになり,常に弁護士の先生個人に事務の負担が掛かってまいります。それから,大きなローファームなどでは,むしろ個人ではなくてファーム全体としてIDを取りたいというようなニーズも出てくると思われます。それから,事件管理システムのIDと,それから個々の事件のIDとをどう切り分けるのか,共通にしてしまうのか,事件管理システムで一回,ID,パスワードを振り,さらに個々の事件が発生したら,そこの個々の事件にまたアクセス制御を行うのかという,アクセス制御の基本的な考え方を是非,次回以降でも結構でございますので,お示しを頂ければと思っております。   それから,バックオフィス連携でございますけれども,私は別に反対ではございませんけれども,専門の方には釈迦に説法になるかもしれませんが,現状では難しいと思っております。最大の理由は,裁判所は行政機関ではないことでございます。したがいまして,行政機関向けの政府共通のセキュリティ基盤なり,様々なセキュリティのルール等から裁判所は今,全く独立した状態に置かれているに近いですので,そもそも裁判所と行政機関とをネットワークで接続することが可能かという問題がございます。これも,恐らく最高裁判所と裁判所全体の情報システムや,情報セキュリティ全体の問題に関わってきますので,これについても,これをどのように考えるかということ次第でバックオフィス連携ができる,できないが変わってくるのかなと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,ほかに。 ○富澤幹事 今いろいろな御指摘を頂いたところで,最高裁判所として何点か意見を申し上げたいと思います。   まず,バックオフィス連携の点でございます。先ほど,湯淺委員からお話がありましたとおり,裁判所に構築される事件管理システムと行政機関のシステムを連携することにつきましては,技術面あるいは費用面での実現可能性などを慎重に検討していく必要があるのだろうと考えております。   また,阿多委員からも御指摘がありましたとおり,そもそもバックオフィス連携によってどのような情報を当事者の代わりに裁判所が入手するのか,具体的な情報を念頭に置いて検討していく必要があると思いますし,当事者の代わりに裁判所が証拠まで入手することになりますと,裁判所の公平中立性の観点から問題があると思われるところでございます。したがって,具体的な情報を念頭に,慎重に検討する必要があるのではないかと考えているところでございます。   また,事件管理システムの関係で本人確認の方法についてのお話がございました。日下部委員から御指摘を頂きましたが,本人確認の方法については現行法と同じように最高裁規則に委任することが相当であると考えております。その上で,事件管理システムにアクセスする際のID,パスワードの付与の方法につきましては,マイナンバーカードを利用する方法,訴え提起前に身分証明書等をオンラインで提出してもらい,事後的に出頭やウェブ会議の方法で同じ身分証明書等の提示を求める方法,訴え提起前に裁判所に実際に出頭していただく方法など様々な方法が考えられ,これらの方法を当事者が柔軟に選択することができるようにするのが望ましいのではないかと考えているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○阿多委員 登録の関係で,(注)のところにございます,どういう範囲で登録するのかについて,一つの意見として述べたいと思います。   我々弁護士の場合は業として訴訟に関与することが多いものですから,弁護士自体の,言わば,弁護士だけではないと思いますが,裁判に関する資格がある者についての登録というのは是非とも実現していただきたいと思います。その場合,弁護士法人をどう扱うのかについても検討いただきたいと思います。先ほど,法人について法人番号との関連でのお話がありましたが,弁護士の場合も弁護士法人で活動する場合がありますので,法人で取得する,個々人ごとに枝番が付く形で取得する等いろいろな方法があるとは思いますが,弁護士法人と当事者本人の代理人との関係については検討いただければと思います。それと,法人代表取締役,そして訴訟上の代理人である支配人等裁判上の権限が一定付与されている者については,在職中に限り登録されるということは実現すべきではないかと思います。   その他,後見の場合とかいろいろ考えられますが,一番問題になりますのは,やはり当事者が自然人・個人の場合かと思います。個人については問題提起ですが,期間限定の,一定使わなければ登録が抹消される,その可能性も含め検討いただければと思います。 ○小澤委員 本人確認についてですが,弁護士さんだとか我々司法書士が委任を受けて行う訴訟の場合,その依頼人の確認というのは職責によって行うことになると思いますので,お任せいただければいいのではないかと考えております。司法書士の場合で言えば,簡易裁判所における代理業務であっても,裁判所へ提出する書類の作成業務であっても,依頼を受けるときは当然,委任契約を締結するわけですが,その際に運転免許証などの本人確認書類によって本人の確認を行っているところです。したがいまして,弁護士さんや司法書士が受任しているケースについては,そのような形でいいと思っています。 ○日下部委員 バックオフィス連携について,少し思うところを述べたいと思います。   当事者の代理人として活動する者といたしましては,バックオフィス連携によって当事者の負担が軽減されるということであれば,そのこと自体は歓迎すべきことだとは思っております。しかしながら,先ほど来お話にありましたとおり,行政機関から司法機関が情報を取得するということについての技術面,あるいは法制面でのハードルの高さと,それを克服するためにどの程度のコストが掛かるのかということにも配慮はしなければいけないのだろうと考えております。   仮にですけれども,今,訴状に一定の書類を添付することが現行法上,求められる局面がありますが,電子訴状については一定の書類のデータを添付するということが必要とした上で,当事者がそうしたデータを行政機関から取得できるようになれば,バックオフィス連携をしなくても原告の実務上の負担はかなり軽減されるようにも思われました。ただ,この場合には,電子訴状に添付された書類のデータの真正性の担保が図れるのか,あるいは提出されたデータの内容が陳腐化していないといえるのかという点で課題は残すのだろうと思っております。   それから,別の点ですけれども,訴状の添付書類に含まれることもあるのかもしれませんが,証拠書類,証拠の申出に係るところで,データの取得を裁判所にバックオフィス連携でお願いするという形になったときに,それが訴訟法上の定めとうまく整合するのかという問題意識は持っております。一つの考え方として,訴訟において頻繁に書証として申し出られる類型の書類のデータにつきましては,ちょうど書証における文書送付嘱託の申立てに類似した形で,裁判所に対してデータの取得嘱託という,名前は決まりませんけれども,そういう形での書証の申出を一つの類型として新たに考えるということも考えられてもいいのかなと思いました。   ただ,この証拠としての利用につきましても,先ほど申し上げた点と同様に,当事者がそうしたデータを行政機関から取得できるということであれば,バックオフィス連携をしなくとも挙証者の実務上の負担はかなり軽減されるようにも思われたところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 事件管理システムでいろいろ発言が出ましたので,私自身はこの(前注)最後の(注)の「どの範囲の者」とは,裁判業務を前提とする資格という形で限定すべきと思っています。つまり,司法書士の方の中でも簡裁代理権を取られている等が前提の登録を想定すべきではないかと考えています。   それから,最初に実は送達場所の届出のお話をさせていただいたのは,現状の実務では送達場所の届出は本人訴訟の場合にいろいろな資格の方の住所が届出がされているのですが,事件管理システムの利用登録が導入された場合には,そのような安易な登録はだめで,登録自体が士業者で,なおかつ訴訟資格がある,代理権を付与されているというつながりがある登録を必要すべきではないかと思います。   あと1点,最初に確認すればよかったのですが,非改変性についての質問で私は同一性という言葉を使いましたが,現状の実務では訴状を提出するときに正本,副本と名前を付して複数の書類を提出するわけですが,このオンラインシステムへの記録の際には,データは一つ,先ほど事務局の説明では原本という言葉を使われていましたし,訴訟記録の関係では原本になるかと思うのですが,提出する側も,後にオンラインによる送達等が実現しない場合に別途,紙を準備して提出するのではなくて,原告はこの事件管理システムを利用して提出するのであれば,データのみを提出する,紙の提出は必要はないという意味で使われていると理解しているのですが,それで間違いでしょうか。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いします。 ○大野幹事 先ほど阿多委員から,訴状の添付書面に関する民訴規則55条について御発言がありましたので,その点を先に補足しますと,ここは,民訴規則第55条の第1項を指しており,第2項の書証を含める趣旨ではありません。   また,訴状の提出時には電子データのみを提出するのかというお尋ねの点については,事務当局としては電子データのみを提出すると理解しております。 ○富澤幹事 訴状の電子データをシステムで送達することができれば特に問題はないわけですが,紙媒体の訴状を送達しなければならない場合には,現在の民訴規則では当事者が副本を提出しなければならないこととなっております。今後,訴状の形式について実務の慣行が変わることもあり得るかもしれませんが,仮に現状を前提にしますと,訴状にカラー写真やA4版以外の大きさの別紙が添付されている場合も多く,このような場合に裁判所において全て印刷し対応することはなかなか難しいため,当事者に対して,副本の提出を求めることができるような余地を認めていただく必要があると考えているところでございます。 ○山本(和)部会長 阿多委員,よろしいですか。 ○阿多委員 データを出しながら,別途プリントアウトしたものを提出するには,持参ないし郵送が必要になるかと思いますので,事務作業がIT化で想定されている実務というのは少し抵抗があります。多分,裁判所が危惧されるのはシステム送達がどのくらい利用されるのか,それをどのような形で利用度を高めるのかというところに関連すると思いますが,データを送りながら,書類として印刷して裁判所に持参しなければならない実務を想定するのは,やめていただければと思います。 ○山本(和)部会長 御意見として。 ○阿多委員 はい。 ○山本(克)委員 山本です。添付書類の話ですけれども,添付書類としては訴状に添付を要する事項というのが民訴規則や人訴規則に定められておりますよね。それと,先ほどは法人の実在性や代表者が誰であるかを示すための商業登記簿や,その他の法人登記簿の記載事項証明書に該当するようなデータというような話が出ているかと思うのですが,もう一つ,証拠の写しは除くということは分かったのですが,客観的範囲はもう少し分かるようにして議論していただいた方がいいのではないか。先ほどのお話では,そもそも無理なのではないかという話もありそうですけれども,一応もう少し添付書類の概要を明確にしないと議論しにくいので,そこをお願いしたいと。例えば人訴規則ですと戸籍ですね,両当事者の戸籍謄本,それから,相続権を害されるおそれのある利害関係人の戸籍謄本も添付書類だとされておりますよね。果たして戸籍謄本などもお考えになるのだろうかという辺りを明らかにしていただければと思います。   それとともに,不動産訴訟における不動産の登記事項証明書ですけれども,これは,でも,原告は訴状を書く段階で登記事項証明書を取っておかないと,地番等による不動産の特定がほぼ無理なのではないでしょうか。それと,被告側の代表者を調べるためには,やはり先に被告側の法人について法人登記簿,商業登記簿の登記事項証明書を取らないと,訴状の必要的記載事項としての代表者を書けないということにもなりますので,どれだけニーズがあるかという点も少しお教えいただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。それは次回に向けてということでよろしいですかね。 ○阿多委員 山本委員から,実際取らないと書けないのだから,バックオフィス連携を使う意味が,余り実利がないのではないかという指摘ですが,今の実務では,例えば登記情報はウェブで登記情報自体を入手閲覧しています。裁判所に提出するものが証明書ないしは謄本ですので,それを必ずその都度取得することが本当に必要かということはお考えいただきたいと思います。バックオフィスについてはできるだけ前向きにと考えております。 ○山本(克)委員 不動産登記簿等については分かりましたが,戸籍はいかがなのでしょうか。 ○阿多委員 戸籍はウェブで閲覧することができませんので,取得しないと難しいとは思いますが,ただ,今は,相続人を確定するだけの除籍謄本や改正原戸籍などは取得期間の制限が言われませんので,古いものでも添付書類として提出できますが,いずれにしても,一旦裁判所に提出してしまいますと,還付を受けることはできません。不動産登記であれば原本還付ができますが,裁判所への添付書類は写しで代替することができませんので,都度取らなければならないといと思います。一度取得すれば済むというルールをお考えいただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。この文書の範囲の問題は次回また,もう少し明確化して議論するということにしたいと思いますが,ほかに。 ○井村委員 連合では,マイナンバーやマイナンバーカードの活用によるセーフティネットの構築を方針化していますので,今日議論されている,例えば個人の本人確認にマイナンバーカードの本人認証,電子証明を使用することについて十分論議できます。マイナンバーカードを一層普及させないと,セーフティネットの構築にもつながらない,と考えています。   先ほど,関連して,湯淺委員から裁判所と行政というのはそれぞれ独立しているものなので,そこをオンラインでつなぐことはできないのではないのか,との御発言があったかと思いますが,三権分立上はそうであっても,行政が持っているデータベースは国民の財産であると考えると,裁判所であろうと,あるいは国会であろうと,そこにアクセスをしてデータを活用するということは,本当にできないのだろうか,と思っています。その辺りの考え方があれば,是非教えていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。なかなか事務当局,難しいですか。 ○大野幹事 事務当局において,整理を進めたいと思います。 ○山本(和)部会長 更に少し検討を続けたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。おおむねよろしいでしょうか,第1読会としては。それでは,また戻っていただいても結構ですが,引き続きまして。   藤野委員,手を挙げられていますね。 ○藤野委員 藤野でございます。今の御説明いただいた範囲の中でもう一つお願いというか,意見というか,があるのですが,電子訴状を使う,オンラインによる訴えの提起というのが電子訴状のことだと思うのですけれども,それを利用するには事件管理システムへの利用登録をするということなのだと理解していますが,それでよろしいのでしょうか。   そして,電子訴状の扱い等はしっかりとした決め事を作ればよろしいと思うのですけれども,送達という話もありまして,結局,裁判には訴える人と訴えられる方がいまして,その両方がオンラインを使えないとできないわけですよね。訴える方が幾らオンラインによるものを使ったとしても,訴えられる側がどこまでそれに対応できるのかというのがよく分からないのです。要するに,ある日突然,私が訴えられて,それがオンラインで来たときに,私はどうしたらいいのというようなことです。それもオンラインで私が事件管理システムへの利用登録をしていないのに勝手に来るなんていうことは,余り考えたくないのですけれども,勝手に来るようなことになっているのか,メールアドレスを持っていれば勝手に来るようなことになっているのか,いろいろ分からないことがございます。そして,前回もありましたけれども,別に高齢者や弱者でなくても,オンラインに長けているという方は多くはありません。本当に皆さんが思っている以上に普通の人は使えないと思うのです。一般の人はスマホは上手に使えていろいろな自分の欲しいものの検索はできても,裁判の場できちんと使えるかというと,それは厳しいものがあると思います。   つまり,今回の議論で裁判の利便性が高くなる,いろいろやりやすくなるということは,一部の人にとってはそのとおりなのだと思いますし,システムが動くのもそのとおりなのだと思いますけれども,それによって,思いがけずに裁判を起こされてしまった者がオンラインに長けていないために困るというようなことがないような,裁判になったときも,それをサポートするシステムであったり,又は教育ですね,IT教育というか,そういうものが充実してこないと難しいのではないでしょうか。裁判の入口だけがIT化されても,本当に大丈夫かという大きな懸念がございますので,その点は御認識いただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。藤野委員からは前回も確か同様の御懸念が示されたと理解しておりまして,その点は誠にごもっともなところかと思います。訴えられる側につきましては,送達のところ,第2の1あるいは2のところで,基本的にはそのシステムに登録していない人に対して,いきなりそのシステム送達といわれるものがなされるという仕組みには必ずしもなっていないということは,後で事務当局から多分説明があると思いますので,また第2の送達のところで御議論を引き続きいただければと思います。 ○山本(克)委員 すみません,何度も。先ほど戸籍の話をしましたのは,事件管理システムへの登録における本人の確認がどれだけ厳密になされているかということと相関的なのではないか,つまり,他人に成り済まして戸籍情報を得る手段として人事訴訟の提起が使われはしないかという懸念もあり得るということを申し上げたかったわけでして,その点も一応,そういう問題意識を持っているということだけお伝えさせていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,よろしいでしょうか。   では,引き続きまして,第1の2,資料3の4ページ以下,「濫用的な訴えの提起を防止するための方策」の方に移りたいと思います。まず,事務当局から説明をお願いいたします。 ○藤田関係官 本文の(1)から(6)までは,商事法務の研究会で議論され報告書にまとめられた規律の案を御提案したものです。こちらは実務上一定数存在するとの声がある濫用的な訴えの提起の類型のうち,訴えの提起時に納めなければ不適法とされる訴え提起手数料の納付義務を猶予する効果を持つ訴訟救助の申立てという制度が存在することを奇貨とするものを一定程度間接的に抑制するためのものとなっております。   具体的には,訴訟救助の申立てが,「勝訴の見込みがないとはいえないとき」という極めて緩やかな要件を定めていることなどに着目し,一定の期間内に同一裁判所に訴訟救助を申し立てて,相当回数その却下を受けた者が,更に訴訟救助の申立てをしようとするときは,ごく少額の金銭を納めなければならないとするものです。却下回数の届出義務を課している点や,この金銭は訴訟救助の申立てが却下されれば訴え提起手数料に充当されるが,却下されなければそのまま返還される,言わばデポジットの性質を有するとされている点,オンラインによる訴えの提起の場面に限定されていない点などに特徴があります。   もっとも,このような立法の要否に関する議論の基礎資料として,実務上このような類型の濫用的な訴えの提起が一定数存在するという事実が皆様に対して提供される必要があるほか,抑制されるべき訴えの類型や,今後裁判所において構築される事件管理システムの仕様によっては,研究会の報告書に記載された方法より更に実効性の高いものが存在し得ます。このような観点等も踏まえ御議論ください。   私からの説明は以上です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この濫用的な訴えの提起を防止するための方策につきまして,どなたからでも結構ですので御質問,御意見を頂ければと思います。 ○阿多委員 部会資料3・(説明)2の第3段落の2行目(5ページ)目でも「統計等に基づく実証的な検証が必要となる」と記載されていますが,この濫用的な訴えとは弁護士が付いている事案ではなくて,弁護士が関与しない事件,本人訴訟等であるとすれば,弁護士としても感覚的にも本当に裁判所がどの程度お困りなのかというのは正直分からないところです。濫用的な訴えの防止するための方策が必要になる場面について我々がイメージできる場面を裁判所の方で紹介いただけるのであれば,お願いしたいと思います。 ○山本(和)部会長 裁判所でしょうか。では,富澤幹事。 ○富澤幹事 民事裁判手続等IT化研究会の際にも,統計等に基づく実証的な説明が必要であると御指摘を頂いたところでございます。濫用的な訴えには様々な類型があり,事件の性質や手続的な負担を踏まえて,様々な事件処理をしておりますので,その類型に応じて,統計等によって的確に裏付けることは難しいところがございます。このような前提で,若干統計的な観点からの御説明をしたいと思います。   平成30年の統計で見ますと,全地方裁判所で13万8,683件の事件が終局をしております。そのうち被告が欠席をして訴えの却下判決で終局した事件は149件ございます。この多くは,法140条に基づき口頭弁論を経ないで判決で訴えを却下する場合となりますので,その相当数が濫用的な訴えであると推測されるところです。また,命令で終局をしている事件は957件ございます。こちらは法137条の訴状却下命令を指しておりますが,その相当数が濫用的な訴えであると推測されるところです。さらに,請求棄却判決で終局した事件は7,935件ございますが,訴状却下命令に至る手続的な負担等に鑑みて,訴状却下命令ではなく請求を棄却した事件も一定数含まれていると考えられます。これらの統計の結果によりましても,濫用的な訴えの件数を正確に捕捉することはできないため,抽象的な御説明にとどまってしまっていることは御容赦いただければと思います。   また,実際に事件処理をしている中で裁判所が苦労している点につきましては,地裁の委員の方から御紹介をさせていただければと考えているところでございます。 ○横田委員 先ほど統計的な御説明がありましたので,実際の事件処理をしている中でどのように濫用的な訴えで困っているのかというイメージを持っていただくために御説明すると,例えば,まず,訴え提起手数料を納付しないまま同じような訴えを何件も提起する,例えば請求の形を少しずつ変えながら同じような紛争について何度も訴えを提起するというようなパターンが一つございます。   次に,訴えの提起は1件ですが,そこから派生する付随的な申立てが大量にされるパターンがございます。後者の場合について,分かりにくいのでもう少し補足して御説明しますと,例えば,訴えの提起と訴訟救助の申立てが一緒にされて,訴訟救助の却下決定をした場合に,その却下決定に対して即時抗告され,その即時抗告について新たな訴訟救助の申立てがされる。その上で,高裁において新たな訴訟救助の却下決定をした場合に,その却下決定に対して特別抗告,許可抗告をし,これらについて更に新たな訴訟救助の申立てがされる。さらに,場合によっては訴訟救助を却下した裁判官がけしからんということで,裁判官忌避も申し立てられ,その申立てにも訴訟救助の申立てがされる。このような場合で,1件の事件が2倍,3倍とものすごく膨らんでしまうパターンがございます。   実務を担当する者として相応の負担感があるわけですが,裁判所は限りある人的資源で執務をしておりますので,このような濫用的な申立てに手間を取られて,本来時間を掛けるべき事件の執務に支障が出て,ほかの裁判の利用者に不利益が出てしまうのではないかと危惧しているところでございます。   後者のパターンでは,訴えの件数自体は1件ですので,今回の提案にあるように,訴えの提起に係る訴訟救助の申立てが却下された回数をカウントするだけでは,なかなか濫用的な訴えを回避することが難しく,濫用的な訴えを回避するための制度は必要だけれども,もう少しいい制度はないかなというのが実務を担当しております者の実感としてございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   阿多委員,よろしいですか。 ○阿多委員 ありがとうございます。多分数字としては出ないのでしょうが,実際に裁判所のマンパワーなりリソースがどのくらい負担があって,本来時間を掛けるべき事件に時間が取れないということが,もう少し何か分かる説明が頂ければと思うのですが。 ○富澤幹事 統計的に御説明することができるものはございません。例えば,私がある裁判所で事件処理をしていたときの感覚で申し上げますと,事件類型にもよりますが,私のマンパワーの2割から3割程度を濫用的な訴えの処理で負担していたという感覚でございます。飽くまでも私の主観的な感覚ですし,どのような事件を処理する部に所属をしているのかにもよるところもありますので,御参考までに実情を御説明しました。 ○日下部委員 濫用的な訴えの提起については,自分自身の経験で直接関わるということはないのですけれども,それが裁判所の事務量をいたずらに増やして司法の資源を無為に浪費しているという立法事実があるのであれば,その防止策を検討することはよいだろうと思っております。ただ,先ほど阿多委員の方からも御発言がありましたとおり,それがある程度客観性のある,具体性のあるものとして示されないと,防止策としての適性を検討するということも困難だろうと思っております。先ほども,現在提案されている訴訟救助の申立てと共になす訴え提起に着目したカウントの仕方ですと,一つの事件で何度も訴訟救助の申立てをするというようなケースは捕捉できないという御指摘もあったところかと思います。   この濫用的な訴えの提起に対する対処については,今後構築されるであろう事件管理システムの在り方の影響が非常に大きいと思いますし,民訴法上の制度的な手当てをしないで,それこそITの活用によって濫用的な訴えの提起に対する裁判所の負担を合理化するということを検討するのも十分あり得る話ではないかと思いました。   仮にですけれども,この立法事実が認められるのだと仮定した場合に,今提示されている方策,これがその手段として適当なものであるのかということについて,これはやや踏み込みすぎかもしれませんが,意見を申し上げますと,私は疑問を感じているところであります。今の提案ですと,2の(1)のところで,訴訟救助の申立てをする者は,たとえその者が濫用的な訴えの提起とは無縁であったとしても,一定の期間において訴訟救助の申立てが却下された回数を正確に把握して届け出なければならず,(6)においては,その回数に誤りがあれば過料の制裁の対象となるとされております。濫用的な訴えの提起は少数の者によってなされていて,訴訟救助の申立てはそれとは無縁の者が多くしているということであれば,後者の人々の負担を正当化できるのかということについては疑問は否めないように思います。 ○山本(克)委員 裁判所が持っておられる問題意識についてはある程度,了解したのですが,濫用的な訴えという一種のエモーショナルな表現を,しかも非常に幅が広い意味で,人によっては取り方がいろいろあるものを表題に掲げているということ自体が,私は非常に違和感を感じました。お考えになっているのはごく小さな,小さいというと怒られるかもしれませんが,少しデビアントな行動をとる人に対する対応だけですよね。それを濫用的な訴えを防止するというような,ある種の人の取り方によっては,これで民事訴訟を起こすことが権利の濫用なのかととられかねないような表題で議論すること自体にかなり違和感を持っております。   それとともに,今おっしゃられたとおりで,果たして,仮に先ほど御紹介のあったようなケースがあるとして,それを防止する方途としてこの御提案が本当に意味があるのでしょうか。昔,消費者金融業者の訴えの回数を届け出させてうんぬんというような話がありましたけれども,それよりももっと手段としての実効性に欠ける提案のような気がしまして,これで本当に今おっしゃったような事態を防止できる,あるいはそれにうまく対応できるということなのでしょうか。私はかなり疑問を感じました。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがですか。 ○阿多委員 山本克己委員からお話あったとおり,私も濫用的な訴えの提起を防止する方策というネーミングに問題があるように思います。訴訟救助における,勝訴の見込みがないわけではないという部分の解釈の問題に,言わばそれを濫用的な訴えと等価,同値して,対応策を説明されようとしていること自体に無理があるのではないかと思っています。勝訴の見込みがないわけではないという要件が直ちに濫訴の防止に結び付けることには論理的な飛躍があると思いますし,何をもって濫訴というか自体が明確でないにもかかわらず,本案の審理にも入らない最初の段階で濫訴かどうかを判定すること自体が不可能に近いと思います。負担を強いられているのはよく分かるのですが,他の方法をお考えいただければと思います。   少し踏み込みすぎなのかもしれませんが,別の研究会等でも訴訟救助の申立て却下決定に対する抗告状却下命令に対する許可抗告事件で,抗告提起の手数料の納付命令を受けた者が不納付を理由とする抗告状却下命令が確定する前に納付すれば抗告状は当初に遡って有効とする最高裁の平成27年12月17日の決定があります。最高裁の決定の重みというのは十分理解をしているのですが,このルールがあるがために,支障が生じている。原審限りで終わる事件が記録が高裁に上がって更に時間が掛かっているという実情もあるようです。   訴訟費用の不納付による却下抗告対象から外すことが実現できるのであれば,先ほど横田裁判官から指摘いただいた2点目などは一定数負担軽減につながるのではないかと思います。先走りの提言かもしれませんが,そういうことも検討いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ほかに。 ○富澤幹事 今,阿多委員から御指摘いただいた規律は,裁判所でも検討していたところでございます。原告が訴え提起手数料を納付しない場合,現行法の下では補正命令をした上で,命令で訴状を却下しておりますが,例えば,補正命令をすることなく訴状を却下することができ,さらに即時抗告をすることができないといった規律も十分検討の余地があるのではと考えております。   また,横田委員の方から御紹介いただいたケースと今回の提案とが目的と手段との関係で正当性,合理性があるのかという点に関連した意見ということになりますが,今回の資料における提案も十分に意味があると考えているものの,訴訟救助の申立ての有無に関わらず,訴えを提起する際には一律に,例えば数百円程度のデポジットの支払を求めるというシンプルな規律も検討の余地があるのではないかと考えております。もちろん訴訟救助の申立てがその後に認められれば,デポジットを返還することになりますし,訴訟救助の申立てが却下されれば,そのデポジットに加えて,本来納付すべき訴え提起手数料の差額分を納付していただくという制度もあり得るのではないかと考えております。このような制度を導入することによって,裁判所の限られた資源を有効に活用しつつ,裁判を受ける権利の保障を狭めることにならないといったバランスが取れるのではないか考えているところでございます。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○増見委員 すみません,今の議論されている本筋とは少し違うのかもしれないのですけれども,この濫用的な訴えの提起を防止するために,申立てが却下された回数を届け出なければならないとか,それを届け出ない場合はうんぬんというのが,もうシステムにしてしまえばすぐに自動で集計できてしまうとか,誰の目にも明らかになるような立て付けにできるのではないかと思いまして,一定回数を超えたらロックされて提起できなくなるというような,自動的にそういうことをすることも可能なのだろうと思いましたので,こういった義務付けが妥当なのかというのに少し疑問を持ちましたので,申し上げさせていただきました。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 ロックというのは厳しい御提案と思って伺っていたのですが,基が裁判を受ける権利にありますので,例えば10件目までは訴訟救助の対象にならない,勝訴の見込みもないものとして訴訟救助の申立てを却下されていても,11件目は救済されなければならない場合もあり得ますので,ロックという裁判所に受け付けてもらえない制度が本当にいいのか,私はデジタルよりもアナログ的なチェックの方法を残していただければと思います。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○山本(克)委員 先ほど富澤幹事からお話のあったデポジットを取るというのは,それはそれなりに有効な制度だと思いますので,御検討いただければと思います。ただ,それを濫用的な訴えの提起というのではなくて,訴訟救助の申立ての濫用防止とか,そういうような枠組みで議論していただければと思います。   それから,これから言うことは本筋から外れるのですけれども,訴訟記録がデジタル化された場合に,一審に係属している訴訟事件について即時抗告が許される場合に,即時抗告がされて高裁に行ったときに,高裁に記録を送るというような従来言われていたような現象は残るのでしょうか,そこを少し。今すぐお答えいただかなくても結構ですけれども,何かその,上へ行ってしまうからという話がしばしばされておりまして,先ほど横田裁判官もそういう話をされましたけれども,デジタル化された場合に一体そういう現象が残るのかどうか,非常に関心があるところです。 ○山本(和)部会長 現段階では,あれですか,コメント。 ○富澤幹事 事件管理システムの設計につきましては今後の検討課題となりますので,現時点で考えていることを若干お伝えいたしますと,山本克己委員からも御指摘を頂いたとおり,現状では,抗告審に事件記録が送付されている間は,本案の事件処理ができない状況でございます。他方で,今後,事件記録が電子化されますと,このような状況は基本的にはなくなるのではないかと考えており,抗告審の担当職員にその事件記録のアクセス権限が付与されることによって,抗告審でも原審でも事件記録を見ることができるようになると考えております。この点については,今後,事件管理システムの設計,開発の中で,更に検討していきたいと思います。 ○門田委員 今の点に関連して申し上げます。確かに,事件記録については送付する必要がなくなるということはあり得るかと思いますが,先ほど横田委員から説明があった事例ですと,最初の訴訟救助の申立てに対する判断がなかなか確定しないことになりますので,事件記録の送付の手間がなくなったとしても,手続が前に進まないということで非常に難渋するというところは変わりがないということになろうかと思います。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○小澤委員 本人訴訟の受皿になっている我々司法書士の実務感覚としますと,統計データはあるわけではないのですけれども,一定数そういう方がいらっしゃるということは大変よく理解できます。実際,私の事務所でもそうした方々の相談というのは,これまで相当数ございます。司法書士はそういう方々に接する機会が少なくないので,濫用的な訴えという表現がどうかということが山本委員からもありましたが,そういう方々の訴えの抑止といいましょうか,言葉が適切ではないかもしれませんが,そういう側面もあるのだろうと理解しています。ただ,そうは言っても,弁護士さんや我々のところにアクセスできずに,感情的な着地点を見いだすことができず,延々と訴訟を続ける方がいらっしゃるということは理解できます。感想のような意見になりましたけれども,そのように考えています。 ○垣内幹事 ありがとうございます。濫用的な訴えというものをどういうふうに定義するのか,あるいは,それが現状でどれくらいあるのかということについては,なかなか客観的な情報を得ることが難しいところはあるでしょうし,いろいろな考え方があるのではないかと思いますけれども,ここで提起されている問題は,大きな意味で言えば,現在,濫用的な訴えというのが皆無ではないということを前提としたときに,電子的なオンラインで訴え提起ができるということが原告にとって再提起の際の利便性を大きく高めるということが仮にあるとすれば,それを悪用するという人が出てくるということも制度設計時に一定程度,考慮しなければならないだろうということで,誰が見てもこれでは濫用し放題ではないかというような制度にならないような工夫,観点というのは重要なのではないかと考えております。そういう意味では,この点について引き続き検討していっていいのではないかと思っておりますけれども,具体的な制度の内容については,これまでも様々な指摘がありましたけれども,なお今後,システムそのものの内容がどうなるのかということも大きく関係しますので,検討が更に必要なのだろうと思っています。   それから,その関係で,先ほど,広く一般的にデポジットを求めるというような方策,あるいは,補正命令を介することなく直ちに費用不納付の場合に却下してしまうというような処理の可能性についても御示唆がありました。デポジットというのは一つの方法としては考えられるのかと思いますけれども,仮にその方法で行く場合には,そのデポジットの納付方法等について,更に検討といいますか,今日の後半の話とも関係するかと思いますけれども,それが電子納付であると,それが納付されないと受理してもらえず,あるいは場合によっては却下になってしまうというようなものであったとしますと,その納付方法との関係で,一刻を争う訴え提起のようなものが仮にあったときに,十分な裁判を受ける権利の保障が図れるかといったことも問題となり得る場面があろうかと思いますので,その辺りも含めて更に検討が必要かなと考えているところです。 ○山本(克)委員 再三申し訳ありません。門田委員がどうも私の発言を誤解されたようなので,釈明だけさせてください。   私は,先ほど横田委員から御紹介があったようなケースについて検討しなくていいという趣旨で,記録が送られるかどうかという話をお伺いしたわけではございません。私は平成15年か16年か,どちらかの改正にも幹事として関わっておって,その際に,文書提出命令に対する即時抗告をなくしてほしいということを東京地裁の当時の裁判官の方がおっしゃったことが非常にいまだに気に掛かっておりまして,そういうような議論は今後なくなってくれればいいなと思ったので,先ほど,記録を送る,送らないという点についての見通しをお伺いしたような次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがですか。 ○佐々木委員 もう本当に意見の表明といいますか感想だけで,先ほど富澤幹事がおっしゃられた,数百円程度のデポジットを納付してというやり方というのは,非常に有効なのかなとは思っております。ただ,濫用的な訴えの提起を防止するための方策として位置付けるのかどうかというところには一考が必要なのかなとは思いますけれども,それが抑止策として有効だというのであれば,こういう方法はあり得るのかなと,賛同を表明したいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○長谷部委員 ありがとうございます。立法事実のところにもう一回,戻っての話になるのですけれども,先ほど垣内幹事から,オンライン申立てを認めたために,この濫用的な訴え提起といいますか,あるいは濫用的な訴訟救助の申立てが増えて困ってしまうというようなことになってはまずいだろうと,それは正にそのとおりだと思うのですが,先ほど来,伺っていますような濫用的な申立てをしている人たちが,果たしてこのオンライン申立てが認められることによって,更にそれを増加させるような人たちなのだろうか,ITリテラシーの点でも問題なくこういったことを使いこなせるような人たちであれば,そして,そういった人たちが潜在的にはたくさんいるということであれば,あるいは濫用的な申立てが増えていくのかもしれないと,そういう懸念もあるのかもしれないですけれども,先ほど藤野委員の御発言にもありましたが,ITに習熟している人がそれほど多いかというと,それはどうなのかなというようなところもございます。先ほどから伺っている濫用的な申立てをしている人たちは,本人訴訟の一部であると伺っていますけれども,そういった人たちの申立てが更に増えるという見込みが客観的に裏付けられるのかどうか。資料といっても難しいかもしれないのですけれども,なぜオンライン申立てを認めると更にこういった濫用が増えるのかといったところの御説明を,もう少し伺えれば有り難いと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。予測に係るところですが。 ○門田委員 今の御質問につきまして,客観的な裏付けをお示しするというのはなかなか難しいところがあろうかと思います。ただ,現場の裁判官の声や,私自身の経験からしますと,まず,この種の濫用的な申立てをする当事者の方々のITリテラシーがどうなのかという御疑問に関しては,ITリテラシーの結構高い方もおられます。そして,現場の裁判官の危惧としましては,IT化された新しい制度が入って,当事者が申立てをするのに使いやすいシステムが作られると,これまで濫用的な申立てをしてきた方々が非常に簡単にこの種の申立てをされるようになり,先ほど御紹介がありましたとおり,別の事件処理や事務の方に悪影響が及んでしまうのではないかということをかなり心配しています。この点は,なかなか伝わらなくて難しいところがありますが,現場を預かる立場としては是非御検討いただきたいところです。 ○笠井委員 ありがとうございます。すみません,実は1時間余り別のウェブ会議の方に出ておりまして,その間,2時前ぐらいから1時間10分ぐらいの議論を全然聞いておりませんでしたので,少し的外れなことを申し上げるかもしれませんが,お許しください。   今,濫用的な訴えの話をされていることは分かりました。長谷部委員の御発言の途中から聞き始めたのですけれども,私自身はIT化の検討会の頃から,そもそもこのIT化というのは国民に裁判を利用しやすくするためにやるものであって,確かにそれについて利用しやすくなれば,何かよくないことをする人も中にはいるでしょうけれども,どうも国民に裁判を利用しやすくするための取組との関係で,こういう訴えを起こしにくくするというような仕組みを組むこと自体について違和感がある旨は,ずっと申し上げてきたところであります。   それはそれとして,だから余り積極的には考えていなくて,慎重にすべきだと思っているのですけれども,それを前提に,この資料に関して申し上げます。資料の6ページ辺りに,今後構築される事件管理システムの在り方を見据えて検討する必要があると思われるということで,まだ流動的な部分があるということが出ているわけなのですけれども,これはやはり法的に考えると,何をもって裁判所が訴え提起と扱わなければいけないかとか,あるいは裁判所がどういう行為があれば事務量が増えるのか,つまり何か応答義務が生じるのかという辺りをきちんと整理しないといけないのではないかと思ったのです。   訴訟救助の申立てであれ,訴えの提起であれ,訴え提起と手数料納付であれ,一定の行為がなければ裁判所は動かなくてもいいということであれば事務量が増えないはずでありまして,どういう仕組みを組むかによるのかもしれませんけれども,どういう仕組みを組むにしても,当事者が何をすれば裁判所が応答義務を負い,その応答義務を履行するのにどのような負担が本当に掛かるのかという辺りを整理して議論をする必要があるのかなと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   おおむねよろしいでしょうか。大体御議論が出たと理解していいですか。   それでは,多々御議論を頂きまして,また新たな提案等もなされたところだと理解しましたので,少しここは,抜本的にかもしれませんが,事務当局の方で再検討をお願いしたいと思います。   それでは,続きまして,二つ目の論点ですね,資料3の「第2 送達」というのがあります。これについては,システム送達,訴え提起時のその特則,それから,公示送達の見直しという三つの項目がありますが,最初の二つはシステム送達の本則と特則ということで相互に関連をしていますので,これについてはまとめて御議論を頂いて,公示送達は少し別の問題ですから,後からということにしたいと思います。   それでは,事務当局の方から第2の1及び2の辺りについて説明をお願いします。 ○西関係官 それでは,説明させていただきます。部会資料3の6ページ以降になります。   まず,本部会資料ではITを利用した新たな送達方法として,事件管理システムを利用した送達,システム送達と呼んでおりますが,そちらを設けることを提案しております。具体的な制度の内容については,本文及び説明の2に記載しております。概要を申し上げますと,送達すべき電子書類を裁判所の事件管理システムにアップロードし,相手方の通知アドレスに対しアップロードされた旨をメール等で送信する,この通知を受信した相手方がシステムにアクセスし,書類を閲覧したときに送達の効力が生ずる,こういうものでございます。   続いて,説明の3についてでございます。IT機器の操作に習熟していない方やインターネットを利用できない方に配慮する見地から,この方法による送達の対象は,自ら裁判所に対して通知アドレスを届け出た者に限定してはどうかと考えております。もっとも,本文の(注)でも書かせていただいたとおり,一旦自ら通知アドレスを届け出た者についても,例えば,送達のタイミングで天災が生じIT機器を利用することができなくなった場合など,何らかの理由でシステム送達を受けることが困難な状況になることもあろうかと思いますが,このような場合に,通知アドレスの届出があることをもってシステム送達を実施するということが適切かどうかということについては議論の余地があるように思われます。このような点につきましても御議論を頂戴したいと考えております。   続きまして,説明の4,5についてでございます。ここでは,送達を受けるべき者が通知を受領し,システムにアクセスして送達すべき電子書類を閲覧したときにシステム送達の効力を発生するという規律を提案しております。もっとも,送達の効力発生を書類の閲覧という相手方の行動に係らしめた場合には,相手方が書類を閲覧せずにこれを放置した場合には,いつまでも送達の効力が発生しないという問題がございます。   そこで,本資料では,相手方が書類を閲覧しない場合であっても一定期間が経過した後は閲覧したものとみなして送達の効力発生を認めるという特則を設けることを提案しております。他方,このような特則を設けると,送達を受けるべき者がやむを得ない理由により書類を閲覧できなかった場合にも送達の効力が生じてしまうのではないかという問題もあり,この点につきましては,先ほど申し上げたシステム送達の例外に関する論点も踏まえて御議論を頂きたいと考えております。   続いて,説明の6についてでございます。こちらは本資料の(前注)でも記載させていただいたところでございますが,具体的な事件と関わりなく,訴訟係属の前にあらかじめ事件管理システムに登録し,通知アドレスを届け出ておくという制度を提案しております。他方,このような制度を設けるに当たっては,成り済ましの危険性等への配慮も必要と思われるところでございまして,この点を含め皆様に御議論を頂戴したいと考えております。   続いて,10ページの2,訴え提起時におけるシステム送達の特則に移らせていただきます。先ほどの事件管理システムの事前登録制度を設けた場合には,訴えが提起される前にこの制度を利用して事前登録をした者に対しては,システム送達の方法により訴状の送達を行うことが可能となりますが,それ以外の者に対しては書面により訴状の送達を行うことになります。そうすると,事前登録制度の対象者の範囲をどのように考えるかということにもよりますが,訴状の送達をオンラインでできる事案が限定的なものになってしまうとも考えられるところです。   そこで,システム送達の方法により訴状を送達することができる場面を拡大する,そのための方策として,原告が被告のメールアドレス等を提出した場合に,当該メールアドレスに通知をする方法によりシステム送達を行うことができるとする特則を設けることを提案しております。   もっとも,この場合には,被告が自ら通知アドレスを届け出た場合と比べて幾つか特別の配慮が必要と考えられます。まず,この場合には被告は事件管理システムについての知識を有していないことも想定されますので,通知を送付する際に,その旨を併せて情報提供する必要があると思われます。また,この場合には,被告は自ら通知アドレスを届け出たわけではありませんので,システム送達により送達を受ける義務はないと思われます。したがって,先ほどの閲覧しない場合に関する特則は適用せず,被告が書類を閲覧しない場合には,紙による送達をやり直すという方法を提案しております。このほかにも,このような規律を設けるに当たっては,被告の保護の観点から検討すべき課題があると考えられます。例えば,原告が自らのメールアドレスを被告のものとして提出して,送達が完了したかのように装い,不正に債務名義を得ようとするといった事態も想定されるところです。そこで,このような点も踏まえて,このような規律を設けることの可否も含め御議論を頂きたいと考えております。   私からの説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,今御説明があった点につきまして御質問,御意見を頂ければと思います。 ○日下部委員 今御説明いただいた中でのシステム送達の前提といいますか,内容の理解のためにお尋ねしたい点がございます。   一つ目は,事件管理システムに利用登録をする当事者は,その通知アドレスを届け出る,それで,その通知アドレスに対して書記官が通知をすることで送達がなされるという御提案ですけれども,冒頭の頃の御議論で,そのような利用登録をした当事者は,例えば訴え提起などのときにも,現行法の民訴法104条1項前段が定めている送達場所の届出を別途することは必要ではないという想定だと理解をしているところです。   その前提なのですが,一当事者が複数の通知アドレスを届け出るということも認める想定でいらっしゃるものでしょうか。仮にそういう場合ですと,複数の通知アドレスが届け出られることになるわけですし,そうでなかったとしても,当事者がその代理人を選任して,当事者も代理人も通知アドレスを届け出ているという状態になりますと,複数の通知アドレスが観念されることになるわけですが,そうした場合に,送達対象の電子書類というのは,届け出られている複数の通知アドレス全てに対してその存在が通知される,それで,送達の効力はその通知アドレスに対する通知を受けた者の中の誰かが最初に閲覧をしたときに生じるという整理をされていらっしゃるものでしょうか。確認をしたいと思いますので,よろしくお願いします。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局からお願いします。 ○大野幹事 御質問の点については,現段階で明確な整理をしているわけではございません。例えば,代理人が一人であって,その方に人単位で事前登録を認めている状態というものを考えたときに,事件を受任するごとに,この事件はこのアドレスというように事件ごとに通知アドレスを変えていきたいというニーズや,一つの事件について複数の通知アドレスを設定しておいて,なるべく見逃しを防ぎたいというニーズなどはあり得ると思っており,法的な整理は,こういったニーズとの兼ね合いにもよると考えています。また,先ほどから指摘がされておりますが,代理人と本人の両方の通知アドレスの登録や届出がされているような場合の規律についても御議論いただければと思います。今の実務に引き直しますと,代理人がいる場合に,訴訟資料は代理人に送付するというのが通常だろうと理解しています。そのため,IT化の下ではこのような場合に本人にも通知をするのかという点の整理が必要なのだろうと思います。この点については,皆様の御議論の状況を踏まえまして整理をしたいと思っております。 ○山本(和)部会長 日下部委員,よろしいですか。 ○日下部委員 はい。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○阿多委員 対象の確認,質問になるのですが,部会資料3の6ページ第2,1の(1)では,「送達すべき電子書類(現行法上送達すべき書類とされているものに係る電子データをいう。)」という形で対象を送達を前提とする書類を指されています。が,しかし,民訴規則3条1項の例外に定めた書類以外はファクシミリ送信で提出されることになっていますが,平成8年の民訴制定の際に,ファクシミリ送信で足りる書類と例外として送達が必要な書類に振り分けたものであって,例外である送達が必要な書類のデータだけがシステム送達の対象となるのでしょうか。民訴規則3条を削除すればということになるのかもしれませんが,裁判に関する書類全てがシステム送達の対象になり得ると思うのですが,違うのでしょうか。   商事法務の研究会報告では,準備書面に関する取扱いについては,言わば準ずる扱いで処理をされる形になっています。(1)の対象は送達の対象である書類に限って議論をするのでしょうか。広がる可能性があるのでしょうか。 ○山本(和)部会長 事務当局から,いかがでしょうか。 ○大野幹事 現行法上,これから送達がされる対象文書のことを「送達すべき書類」と表現しているため,部会資料でも「送達すべき書類」と書いております。言葉の意味としては,そのような趣旨でしたが,事件管理システムが設けられて,システム送達の制度ができる場合に,一般には送達の必要がないとされている準備書面がシステム送達の方法によって相手方に送付されたときは,その準備書面は,法律上は送達が必要ではないものの,送達がされたという整理になると考えています。もっとも,この場合に,直送のような制度がなお必要かというところは,御議論いただければとは思っておりました。 ○山本(和)部会長 よろしいでしょうか。 ○阿多委員 言葉の意味の確認ですので,結構です。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○佐々木委員 このシステム送達,これ自体の提案については賛成でございます。ただ,(3)のただし書の閲覧のみなし規定に関しては,少し留意点があるのかなと思っております。   具体的には,こういうみなしの扱いになるときには,通知が確実になされることと,通知の到達確認ができることが必要なのかなと思っております。それで,恐らくシステム障害が発生して通知がされないということはそれほど多くはないのかなと思ってはおりますけれども,裁判所側の方で,通知が確実に本当にそのアドレスに到達したのかどうかという確認の方法というのはどう考えていらっしゃるのかということと,今度,受け手の側なのですけれども,例えばの話ですが,判決書の送達というのは上訴期間を区切る上で重要な基準になろうかと思うのですけれども,判決自体は言渡し期日があって言い渡されるので,大体いつ頃送達されるのかというのは予想がつくということはあると思います。ただ一方で,即時抗告で争える決定ですとか,あとは支払督促の場合なんかも,この送達が利用されるとなると,期間内に不服申立てをしたり異議申立てをしないと確定してしまうというような事態が考えられるかと思うのですけれども,その場合,予期せぬところで送達されるのが前提だと思いますので,この点についてもどのように考えていらっしゃるのかというのをお伺いしたいと思います。 ○山本(和)部会長 それでは,事務当局の方からお願いします。 ○大野幹事 通知アドレスについては,部会資料では利便性を考慮してSMSやSNSも含めることも考えられるとしておりますが,この通知の発信が閲覧のみなしの期間の起算点とされている点について,やはり通知の到達が何らかの形で確認可能なものとするなどの手当てが必要とすべきかどうか,御意見を頂戴したいと考えています。   また,佐々木委員の御発言に関連し,判決の送達に関する研究会での議論を御紹介させていただきます。研究会では,判決の送達については,システム送達のうちみなしの閲覧の適用をすべきではないのではないかという議論がされております。判決については,先ほど御指摘がありましたように,通常であれば,あらかじめ指定された日時に言渡しがされますが,判決の言渡期日が様々な事情によって変更された場合に,上訴期間も当初の想定とは変わってしまうことを踏まえ,弁護士の委員から懸念が示されました。この点につきましては,判決書のところで改めて議論いただきたいと考えております。 ○山本(和)部会長 佐々木委員,よろしいですか。 ○佐々木委員 はい,ありがとうございます。すみません,あと支払督促などへの利用にはどうなのでしょうか。 ○山本(和)部会長 いかがですか。支払督促のところで議論するのかもしれないけれども。 ○大野幹事 支払督促も,追って議論させていただく予定です。 ○佐々木委員 分かりました。ありがとうございます。 ○増見委員 システム送達の登録した後の運用についてですとか,みなし送達のところで幾つか懸念がございますので,お話しさせていただければと思うのですが,前提として,このシステム送達,まず登録のあった者に対して運用するということで理解して賛成しておるところなのですけれども,企業として,本人として訴訟に巻き込まれた場合,一度でも訴訟の当事者になったら,一度登録したら,その登録がずっと維持されるのかと。恐らくされるのかなという想定で理解しておったところなのですが,そうすると,一度登録した以降は想定していないときに不意に送達がされる,メールで送達がされる可能性があり,そのメールアドレスの管理ですとか,そのセキュリティの設定が変わった等の理由によって一括でそのメールが受け取られない,全く認識されないというようなリスクが発生し得るのかなと考えておりまして,ですので,そこの懸念がなくなるようないろいろな措置を,繰り返し通知を頂くことが有効なのかとか,複数のアドレスの登録をしたら有効なのかというのが必ずしも確実ではございませんので,例えば一定の期間ごとに利用確認メールを発送するとか,それが有効であるかどうかチェックしていただくといった安全措置及び,複数手段で,個人に対してはショートメールですとかSNSが有効であるかもしれないのですけれども,法人に対しては余り有効ではない可能性もありますので,はがきを併用していただくといった複数手段での御連絡というのも検討していただけると有り難いのかなと思っております。 ○大谷委員 ありがとうございます。大谷でございます。システム送達そのものというよりは,その周辺の課題について付随的な懸念事項についてお伝えしたいと思います。   資料でいいますと7ページのところに,システム送達の内容ということで,文書をそのままメールに添付するときの懸念事項などが書いてあるのですが,悪徳業者が裁判所に成り済まして詐欺的なメールを送信するおそれなどが指摘されているところでございますが,現に既にはがきのようなものや封書のようなもの,あるいは電子メールでも裁判所などに成り済ましたものが多数送られてきているということを考えていきますと,やはりこの事件管理システムが稼働を始めて電子メールがそこから発信されるようになったときに,裁判所に成り済ましたフィッシングサイトが運営されたり,あるいは似たようなメールが発信されて,文書の添付はないものの,そこに記載されたURLなどで問題の多いサイトに誘導されたりということが懸念されると思いますので,そういったことへの対策というのも併せて御検討いただく必要があるかと思っております。   それから,もう1点,企業の法務部の者として,やはり増見委員からも御指摘があったように,複数人で訴状の送達などについては日頃からモニタリングしているということもありまして,そういったメールを受けるアドレスは,例えばメーリングリストのように,一つのアドレスでありながら複数のところにメールが飛ぶような仕組みなどもできれば活用させていただかないと,訴えが提起されたことを知らずに過ごしてしまう危険がありまして,企業の内部統制的にも非常に,メールを見るたびにびくびくしていなければいけないといったことが懸念されますので,そういったことが可能であるようなシステムを是非御設計いただきたいと思っております。   また,登録されるメールアドレスについては,やはり一定期間が過ぎますと,メールアドレスの変更などもございますので,それに対応して,例えば企業間でメールの送受信がなされるとき,必ず複数のものがエラーメッセージとして返ってきます。そういったエラーメッセージを裁判所でこの送達に際してどのように取り扱うのか,エラーがなされたものについては当然,メールが届いておりますので,受信した当事者が事件管理システムに記録された書類を閲覧することの可能性というか,かなり低いものとなるかと思いますので,そのときの代替策としてどういった方法を検討するのかということについても御検討いただければと思います。   あと,また付随的な論点で恐縮ですが,8ページのところに書かれている辺りかと思いますけれども,一旦送達された文書ですけれども,この事件管理システムの中で閲覧するだけではなく,そこからダウンロードして当事者の手元で確認できるような設計にしておいていただくことが必要だと思っております。例えば,下請法などの法律でも,電子的な受発注に際して,電子的記録の提供に当たっても,相手方の手元で確認できるものとして,そこについてはもちろん改ざん可能性も発生しますので,原本性の維持ということは要求されませんけれども,そのダウンロードできる仕組みというのもあらかじめ制度の中に織り込んでいただくようにお願いしたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 ありがとうございます。2点ありまして,1点は,今,大谷委員の方からの御発言があった点にも関係しますけれども,今回の資料の6ページの第2の1(3)のただし書のところですね,閲覧したものとみなすという規律に関してですけれども,これは発信された日からということが基準とされているということですが,発信したメールが何らかの事情でエラーで返送されてくるという事例は実際の社会生活上,経験するものではありますので,その場合にもこの規定が適用されてしまうと,発信はされているということで適用されてしまうということになりますと,少し問題があるかと思いますので,その辺り,例外的な措置と申しますか,発信しただけでは,届いていないことが定型的に明らかであるというようなときへの対応というものを少し考えておく必要があるのかなというのが1点です。   それから,もう1点ですけれども,少し局面が違うお話にはなるかと思いますけれども,例えば現在,ADR法上の認証ADRで,相当な通知の方法を定めておくということが必要とされているわけですけれども,その現在のガイドラインなどによりますと,一定の場合には電子メールで重要な通知をすることもできるけれども,その場合には,メールが到達して,それを開封したということをその相手方に電話等で確認をして,その旨を適切に記録化するというようなことが必要だということが示されているということがあります。訴訟の場合に,いちいちメールを送って,そのメールを見たかどうかを電話で確認するというのでは,かなり煩さなことになり事務的な負担が大きいということもあるかもしれませんけれども,ですので,そのとおりの方法がいいということでは必ずしもないかもしれませんが,メールを1本出して終わりということではなくて,それが確実に到達しているということを担保するために,様々な仕組みを考えていくということは必要なのかなと思われます。例えば,複数回メールを発信するであるとかいったこともその方法かなと思われますので,その辺りも引き続き検討が必要かなと考えているところです。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○青木幹事 ありがとうございます。青木です。今の垣内幹事のお話と重なりますが,電子メールは送信しても何らかの理由で届かないということがよくあるように思います。その事由に応じてみなし送達の効力を生じないというような例外を認めていくことが必要だと思います。しかし,電子メールが届いたのに放置されたのか,看過されたのか,それともサーバの不具合等で届かなかったのかといったことで送達の効力が左右されるということになると,後で争いが生じることになると思います。その辺りで結局,送達を受けるということにリスクが残るということになりますと,このシステム送達の登録自体が避けられてしまうのではないかと思います。これが義務であるということであれば,何らかの方法を更にとるということになると思うのですが,任意であるということであれば,垣内幹事がおっしゃったように,何らかの確認をすること,受領した旨の確認のメールを送信させることも考えられると思います。そのうえで,記録の閲覧も確認の連絡もないということであれば,最終的には紙の方法で送達をするということも考えてよいのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがですか。 ○日下部委員 今,みなし送達の定めについていろいろ御議論があったかと思いますが,本日の冒頭で阿多委員の方から御紹介がありました日弁連の意見を御紹介いたしますと,このみなし送達の定めそのものが全て駄目だというものではないのですけれども,送達の効果が受送達者の権利や法的地位に重大な影響を及ぼすものであって,かつ当事者が将来の送達を予見できないようなものを含めるべきではないという意見になっています。少し換言すると,非常に致命的な問題が生じるような重要な書類で送達が予見できないようなものについては外すという考えで,一つの考えとして御考慮いただければと思います。   それから,先ほど大谷委員からの御説明の中に含まれていたように思うのですけれども,例として,企業において,いつこのシステム送達で訴状が送られてくるのかということに常に配慮する状態,常に気を付ける状態が言及されていたと思います。これは恐らく,事前登録制度を企業が利用することができて,実際に事前登録しているという状況を念頭に置いているのだと思うのですが,事前登録制度を利用できる者をどの範囲にすべきなのかという問題については,それ自体が検討しなければいけないこととなっていると理解をしております。   その点で意見を若干申し上げますと,研究会のときもそうだったのですけれども,国や地方公共団体については事前登録制度を利用することはできるし,かつ,事前登録制度の利用を義務付けるといいますか,必ずしなければならないとしてよいのではないかと考えておりました。個人的には,国や地方公共団体に準ずるものとして,独立行政法人など一定の公的機能を営んでいる組織,団体についても同様に考えることができるのではないかと思っております。   対極なのが個人ですけれども,個人の場合には,届け出た通知アドレスを管理しなくなってしまった結果,訴状の送達に気付かずに,みなし送達によって欠席判決で敗訴するといった弊害などが予想されますので,個人については利用ができないという扱いにすることが適切ではないかと考えております。   中間的なその他の法人については,これは非常に難しくて,実態が千差万別でございますので,事前登録を仮に一定の範囲で義務付けるのだとしたら,どういう範囲にすべきなのか,義務付けではないけれども利用可能とする範囲を設定するのであれば,その範囲はどのようにすべきなのかということについては,今後より具体的に検討していく必要があるだろうと考えております。   切り口は違いますけれども,訴訟代理人になる弁護士や簡裁代理権を持っている司法書士についてはどうするのかというのは,これはまた別の観点から考える必要はあるのだろうと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかに。 ○大坪幹事 事前登録制度に関しての被告のところでございますけれども,先ほど日下部委員が言われたように,念頭に置かれている典型的なものは国,大企業などの常に訴訟の被告になるような本人と士業者などの訴訟代理人になる者と考えられます。   個人についてなのですけれども,私は日下部委員と少し考えが異なりまして,被告の個人についても一定の程度,事前登録制度に登録できることを認める必要があるのではないかと考えております。その理由としまして,被告としても訴訟係属前に,特に代理人などを通じて原告と交渉して,訴訟を提起することが予想されるという場合があります。その場合には,特に自分の方が正しいと考えている被告に関しては,早く原告がどういう内容の訴訟を提起したのか,原告の言い分を知りたいと考える場合もあります。また,被告によっては訴訟を提起されたということを家族なり会社の人に知られたくないというような人もいらっしゃる。さらに,現状ですと特別送達という形で訴状等が郵送されるわけですけれども,普段住んでいる住所地にいない,不在にしていることが多いという人に対しては,書留で郵送されても受け取れない,あるいは受け取るのに支障があるというケースも少なくないと思います。そういう意味で,被告にとってもメリットはあると考えます。   さらに,敗訴した場合に現行の規律では訴訟費用として2,000円程度の訴状の送達費用が被告に課されるということになりまして,それが今後,IT化の検討の後も維持されるべきと思いますけれども,そういうことで,初めから2,000円ぐらいの費用が掛かるということが分かっていたらオンラインで訴状を受け取ったのにというような被告もいるのではないか,そういう被告を無視して一律に書面を特別送達してしまうということは,被告にとって多少酷ではないかと思います。そういうような様々な理由から,被告にとっても事前登録制度を利用するニーズというのはあって,それは個人であっても認める必要があるのではないかと思われます。   今部会資料で記載されている事前登録制度については,必ずしも事前登録できる時期が明確ではなくて,訴状を提出された後から被告に送達されるまでの間がどうなるかというのは,必ずしもよく分からないところがあります。訴状送達前も事前登録可能という立て付けでもよいのかと思われるのですけれども,そこは少し明確ではないところがあります。   被告の方で訴状を早く欲しいというようなニーズを的確に把握するためには,原告が訴状を裁判所に提出して事件の特定ができたという場合には,それで事前登録ができるようにする必要があるのではないかと考えます。そのような形で事前登録を誘導するには,一つのアイデアとしては,訴状を送達する前,訴状審査の前に,訴状が裁判所に提出された段階で,被告に対して裁判所から,こういう訴状が提出されたということを何らかの形で分かるような手当てを考えていただくとよいのかなと思っておりますので,御検討いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○阿多委員 まず記載の趣旨を確認した上で意見を述べたいと思いますが,6ページの第2の(注)で,「その者に対してシステム送達をすることは相当でないとも考えられるが,どのように考えるか」と問題提起をされているのですが,ここの趣旨はシステム送達自体を採用しないという趣旨なのか,それともみなしについて適用しないということなのか。というのは,9ページでは,「システム送達の例外となるべき事由」を検討する旨の記載があるのですが,この相当でないとは,どこまで意図されているのですか。 ○山本(和)部会長 では,事務当局から。 ○大野幹事 昨年,大きな台風によって千葉県で大規模な停電が生じました。阿多委員の御指摘の部分は,そのような例を想定しております。ここでは,通知アドレスへの通知自体が難しいことを前提としておりますので,システム送達をしないということを一つの例として考えておりましたが,阿多委員がおっしゃるように,閲覧のみなしが発動しないという整理も考えられるところであり,場面によっていろいろ切り分けて,整理をしていく必要があると思っております。 ○阿多委員 先ほど青木幹事からも,例外を認めるのか,場合によってはみなしというところをどのように扱うのかというお話があったのですが,第1回の部会のときも,提出する側の問題として,裁判所の事件管理システムに障害がある場合,途中のインフラ,インターネット環境自体に障害がある場合,さらには提出者の支配領域で障害がある場合に分けたお話がありました。この送達の問題も,裁判所のシステムからは通知が発せられるが,広域で停電が起こってインターネット環境自体が機能しない場合や,個人の支配領域で機能しない,いろいろな場面があり得るのではありませんか。そうであればこの送達の場面も場合分けをしなければならないのではありませんか。一定期間経過すると復帰する場面は,みなしを適用しつつ閲覧の時的な部分をずらす,先回に時効完成との関係でも提出時期の問題で処理をするという提案があったと思います。時間経過後に復帰するのであれば,みなしとして扱うことができるのではありません。   そうしますと,(注)はみなしを適用除外とするだけではなく,いろいろな場面,情報の種類によって場合を分ける必要があると思います。   ただ,みなしについては,いろいろ問題があるので,日弁連の意見では書類での送達という意見も提案していますが,柔軟な対応で連絡をする方法を検討いただくべきで,そもそも適用を除外する必要ないのではないかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   かなり時間が経過しましたので,ここで若干休憩を取りたいと思いますが,時間が大変押している状況でございますので,よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○山本(和)部会長 それでは,そろそろ所定の時間に,ちょっと休憩時間短くて恐縮でしたけれども,審議を再開したいと思います。 ○藤野委員 主婦連合会の藤野でございます。   お時間がないということで,恐縮ですが,私,10ページの訴え提訴時におけるシステム送達の特則,この内容はやはりちょっと反対というか,この特則は,いろいろな意味で,特に個人についてはまずいのではないかと考えております。このことをお伝えしたいと思います。   私が予期せぬ訴えを起こされた場合に,自分から登録していればともかく,訴えた方の相手が私のアドレスを伝えて,そのアドレスに,いろいろな配慮が書かれておりますが,このような連絡が来るということ自体が考えにくいことです。また先ほど大谷委員もおっしゃってくださいましたけれども,このことにより,これまで以上に詐欺とか消費者被害が起こるような問題も起きやすくなるという懸念がありますので,この件自体を反対いたします。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかに。 ○服部委員 私からも,この訴え提起時におけるシステム送達時の特則についての意見を申し述べたいと思います。   この箇所につきましては,本日机上配布しました日弁連の意見書にも,12ページから13ページにかけて意見を掲載させていただいております。   事前登録をしていない場合にも,訴え提起時のシステム送達の特則を設けるということ自体は,システムの利用範囲を拡大するというメリットはあるかとは思いますけれども,現在,この提案されている特則の内容には,種々懸念があるだろうと考えております。   まず一つが,検討すべき課題ということで,部会資料の12ページにも書いていただいておりますけれども,訴訟詐欺のリスクがあるということです。原告若しくはその関係者が被告に成り済ましてアドレスを届けて,事件管理システムの利用登録をするなどして,債務名義などを得る恐れもありますし,例えば,被告本人のパソコンにクラッキングしてメールアドレスを乗っ取ってしまって,好き勝手にやってしまうということもあり得るわけです。   本人確認を登録時に十分に行えばいいのではないかという指摘もあり得るかと思いますけれども,例えば,消費者が貸付けなどの取引の契約時に,業者側がその時点で本人確認の書類を取り付けておいて,免許証ですとかマイナンバーカードのコピーとか,そういうものを悪用するというケースも考え得るところでして,やはりリスクがあるだろうと思っております。これが1点目です。   2点目が,大谷委員と藤野委員からも御指摘ありましたとおり,消費者被害の誘発,拡大につながるリスクがあるということです。裁判所を騙った電子メールが送信され,架空請求の詐欺のリスクがあります。これは,部会資料の7ページにも御指摘いただいているところです。   大谷委員からも御指摘ありましたとおり,現に「訴訟が提起されました」と書かれたはがきやメールが送られて,それが詐欺被害につながるということが起こっているわけです。この制度が導入されるということになりますと,そういったメールが大量に送られるということを,やはり予想をせざるを得ないという状況です。   実際,皆様御存じかと思いますけれども,警察庁の報告によりますと,令和元年までの特殊詐欺と言われるものの被害額が,8年連続で300億円を超えています。さらに,今申し上げたような類型の架空請求詐欺という被害額自体も令和元年度で98億円を超えているという状況ですので,この点は重視しなければならないだろうと考えております。   3点目ですけれども,原告が提出した被告の電子メールのアドレスが,本当に被告本人に着くのだろうかと,これが間違っている場合には,被告本人には到達しませんので,結局紙での送達ということになります。また,仮に被告のアドレスだったとしても,現在ですと,複数のメールアドレスを持っているケースが多いと思いますので,普段見ていないアドレスであれば,そのままになってしまいます。そうすると,結局紙で送るということになり,余りメリットがないだろうと思います。もし他人のアドレスに間違って届いてしまった場合には,プライバシーや営業秘密の侵害などにつながるリスクもありますので,いろいろと懸念すべき点があります。そのため,日弁連としては,問題の多い提案であって,反対という意見を述べさせていただいておりますので,御検討いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかに。 ○日下部委員 今の訴え提起時におけるシステム送達の特則について,日弁連の意見では反対であるという御紹介もあったところです。   どうして日弁連が反対をしているのかということで言うと,理由としては,大別すると,一応二つに分けることもできるのかなと思っています。   一つ目は,原告が提出した被告のアドレスが適切なものであると想定することができないという,こういう事情,これが根源だろうと思います。ですので,考えようによっては,かつて事件管理システムの利用登録をしたことがあって,IDとパスワードを既に持っている者,それに対して,それを被告とする訴えを提起するというケースであれば,かつて当人が通知アドレスを自ら届け出ているわけですから,この特則の余地というのはあり得るのかなというのは,個人的には感じたところではあります。   もう一つ重要な理由というのが,個人さんの場合には,特に届け出た通知アドレスを管理しなくなっているという状態が当然あり得るわけですので,この問題を回避するためには,やはりみなし送達の規律は適用してはいけないということになるのだろうと思います。   ですので,日弁連の意見としては,もちろん反対ということになるのですが,それでも,少しでもこの訴え提起の時点において,システム送達を利用する余地があるんだとすれば,かつて個別の事件において,事件管理システムの利用登録をした者を被告とする場合というのは,一応考え得るのかなとは思ったところです。   それから,すみません,続けて申し上げて恐縮なんですけれども,6ページの(注)のところに書かれている,利用登録者に対してであったとしても,その者が被災地域の居住者などの場合に,そもそもシステム送達をしないという扱いをする必要があるのではないかという,こういう問題意識についてです。   確かにそういうケースですと,システム送達をするということ自体が適切ではないということはあり得るかなと思いますし,具体的に例示として挙げられました千葉県における停電の事案を念頭に置きますと,さもあらんという気もするんですが,一般的に言いますと,被災地域である者に対してでも,システム送達をした結果,結果的にその受送達者が事件管理システムで送達書類を閲覧することができたのであれば,別段システム送達による効果を否定する,あるいはシステム送達の利用を否定する実質的な理由はないのではないかなという気もいたします。そうしますと,被災地域の居住者の救済ということでいえば,システム送達そのものをしないということではなくて,みなし送達の規定の適用の有無や特段の救済規定の要否の問題として検討する方が,手続の安定という点からするとよいのではないかなという気がいたしました。   資料の9ページの5のところで,これとの関連で,みなし送達の規律を適用すべきではないという状況があり得るのではないかと,それをどのように規律したらいいのかという問題意識も示されているところだと思います。これは非常に難しい問題かなと思っておりまして,例えば,「受送達者が事件管理システムにおいて送達対象の電子書類を閲覧することができない特段の事情があったとき」というような抽象的な定めを置くということも,素朴に考えると,案としては思い浮かぶんですけれども,こういう規律を入れてしまうと,手続の安定を害する事態というのが容易に想像されるところでもあり,果たしてそのような抽象的な規定でワークするだろうかということについては,疑問を感じているところです。   私自身,いろいろと考えてはきたんですが,うまい解決策というのには思い至ることがなく,この点について,引き続き考えていきたいなと思っている次第です。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○山本(克)委員 山本です。ありがとうございます。   今日の最初の頃に,湯淺委員だったと思いますが,システム登録の在り方として,一般的な登録と事件ごとの登録というのがあるとおっしゃったと思うんですね。事件ごとに登録した場合については,システム送達というのはそれほど大きな問題が生じないと思うんですが,問題は,一般的な登録をしたときにいろいろと問題があるというんですが,そもそも技術的な話として,法人の場合には,日本法人については,あるいは外国法人であって日本で登記しているもの等については,番号でアイデンティファイできると思うんですね。個人の場合で,一般的な形で,事件とは関わらず一般的な形で登録している者が,受送達者であるかどうかというのは,どうやって判定するんでしょうか,技術的に。そこはよく分かりません。   それとともに,ある特定の事件で,例えば被告になったと。それで,そのときに,一般的な登録までされてしまうというふうな理解で考えていいのか,いや,それは,一般的な登録は自らのイニシアティブできちんと登録してくださいと。こちらの方の登録を希望しないと,一般的な登録の方には入らないのか,その辺りのイメージが分からないと,ちょっと今まで皆さんおっしゃっていたこととは全然違うシステム構築の在り方が違うがために,空振りになってしまう議論も出てくるかと思うので,イメージを教えていただければと思います。 ○山本(和)部会長 今の最後は質問ですかね。 ○大野幹事 先ほどはIDの流用と表現しましたが,個別事件のために利用登録をした後,それをそのままにしておいたときに,一般的な利用登録をしたことになるのか,また,例えば,チェック欄などを設けて,これは今後も登録をしたと見てもらって構いませんという意思の確認がされれば,個別事件に留まらない一般的な利用登録がされたと扱ってよいのかについては,皆様から御意見を頂ければと思っています。いかがでしょうか。 ○山本(和)部会長 山本克己委員,どうですか。 ○山本(克)委員 私は特に意見があるわけではなくて,どういうイメージで議論を,交通整理としてはどうしたい,そこのところのイメージが,共有していないと難しいだろうなと思ったので申し上げただけで,定見があるわけではありません。 ○山本(和)部会長 分かりました。   これは,次回以降,もう少しイメージを明確に。 ○日下部委員 今の言葉が示しているもののイメージのことで申しますと,先ほど大坪委員の方から,個人の場合であったとしても,事前登録制度が利用できるようにするメリットやニーズはあるのではないかという,こういう御指摘もあったんですが,お話を聞いていますと,それは,事前登録の制度というよりは,個別事件においての登録のタイミングの話と捉えても同じなのではないかなと思われたところです。   この事前登録制度という言葉自体が,個別の事件が発生するより前に登録することを認めるということで,事前という言葉を使っているんだと思うのですが,個別事件が発生してからであっても,汎用性のある登録をするということは,制度的に考えられますので,事前という言葉がややミスリーディングなのではないかなという気もいたしました。議論を整理する上では,この用語といいますか,名前付けについては検討する余地はあるのではないかなと思います。   個別の登録をしたという場合に,それをほかの事件においても,当人の真摯な了解の下で認めるということは,制度的にはあり得ると思いますが,それは,汎用性のある登録をしたということではなくて,個別の登録をした人が,別の個別の事件について,その事件に関する限りでIDやパスワードを再利用するということを認めるという,こういうものだと思いますので,その辺を整理した上で,また機会を改めて議論ができればいいなと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。 ○川村関係官 内閣官房の川村です。   今,前回もお話申し上げたと思うんですが,このコロナのときに,特に日本のデジタル化,オンライン化の遅れが明らかになった,特に行政のところはそれが顕著であるということで,今,この年末までにかけて,書面,押印,対面,そういった手続をすべからく見直していこうという流れの中にあります。   そういう中で,書面をあえて残すというのが本当に適切なのだろうかというのは,慎重にお考えを頂いた方がよろしいのではないかと思います。とても今,常識が変わりつつあるところにありますので,デジタルで届くのが,これから10年先は当たり前になってくる世の中になるのではないかというところもありますので,少しそこの感覚は,10年先を見据えた形でお考えになるのが適切だろうと思います。   と言いますのも,民事訴訟法がそれほど頻繁に改正できるものではないとすると,この先10年,この改正で制度が固定化されるということになると,ここで紙に縛られたものを残すと,この先10年も紙に縛られ続けるということになると思いますので,そこはよくお考えになられるといいと思います。   特に今,大きな動きとしましては,今年の10月から年末調整,確定申告,こういったところでも,紙の通知はなくしていこう,デジタルで完結できるようにしようと,とにかくデジタル完結を目指す,こういった流れの中にありまして,生命保険料控除証明書,こういったものも電子で受け取れるようにしようという流れもありますし,送達ということでいうと,課税の通知書,個人住民税の特別徴収通知ですとか保険料の処分通知,こういったものも電子で送れるようにしようという検討を,今,政府部内で進めているところでございます。こういった流れの中で,併せてお考えになるのがよろしいのではないかと思います。   また,いかに国民,事業者にとって便利にするかという視点がとても大事でございまして,都度都度IDを登録するというよりも,共通のIDで手続ができるようにしようというような動きもありますので,そういったものを見据えながら,いかに便利で使いやすくするかということをお考えになられるといいと思いますし,それが嫌なものだから,届くのは不便にしておこうという,そういう発想ではなくて,きちんと受け取るべきものは,適切に使いやすく受け取れるようにすると,そういう考え方の方がよろしいのではないかと思います。   ちょっと遅れてきたのであれなんですけれども,本人確認もオンラインで完結するというのが当たり前にしなければならないというところでございますので,実際詐欺被害ですとかマネーロンダリングを防止する犯罪収益の移転の防止に関する法律,犯収法の中でも,オンライン完結する本人確認が認められておりますので,そういうものを見ながら検討を進められるとよいのではないかと思います。   本人を特定するには,今,マイナンバーカードがあります,氏名,生年月日,住所,性別という4情報で,おおむねの個人は特定できるはずだと思いますので,更にここに,これからは仮名氏名をどうやって登録していくかという検討を進めていくというような流れもありますので,そういった,今実際に変えようとしている流れと平仄をそろえて,こちらの手続といいますか,そのものを御検討されるべきであろうと思います。 ○山本(克)委員 先ほどの発言の前段階ですね。今ちょっと,川村関係官がおっしゃった点とも絡む話なんですけれども,ここで言う事前登録された人間と受送達者のひも付けはどうやってやるんでしょうか。個人で,自然人の場合に。それがきちんとできなければ,この議論はあんまり意味がないような気もするので,是非お教えいただければと思います。 ○大野幹事 システムの組み方にもよるのだと思いますが,事件管理システムへの登録に当たり,住所の入力はすることとなるのでしょうから,自然人の場合には,少なくとも名前と住所とによって特定することとなるだろうと思います。もちろん,それで十分かどうかという問題はあります。 ○山本(克)委員 その2項目だけなんですね。   いや,ちょっとそれでは本当に,何ていいますか,事前登録した後に情報の更新を怠っていればどうなるのかという問題が,やはりその程度のひも付けの仕方だと出てくるのではないかなという気がしました。マイナンバーカード,みんなが持っているわけでもありませんし,持っていない方もおられますし,外国人がどうなるかという話もありますので,その辺りもいろいろとお考えいただくと有り難いと思います。 ○笠井委員 私が聞こうと思いましたのは,システム送達そのものというよりも,訴状の送達の仕方がシステムになった場合に,これはどういう意味を持つのかということの前提になるような話なんですが,システム送達の話のところに,当然ながらこのペーパーの6ページでも,現行法上認められている送達方法に加えてと書いてあって,紙で送るときは送ると,まずは紙で送るというのが多分あるんだろうと思うんですね。その紙で送るときの送り方なんですけれども,特に訴状について,オンライン提出される訴状について,何で送達をするのかといったら,これは紙で送達するときには,それは,裁判所がそれを印刷して,それを特別送達するということで,一応理解していたんですけれども,もしそれが,当事者,原告が今みたいに訴状の副本を郵便で送って,それを紙で送達するみたいな話をもし裁判所の方でお考えになっておられるんだったら,ちょっとそれは,このオンライン化の趣旨に余り合わないと,それ自体思いますけれども,今回の訴状の電子送達についてどのくらい認めるかといった話の前提としても関係してくると思いますので,その辺りについての裁判所のお考えを伺いたいなと思っているんですが。 ○山本(和)部会長 その点,笠井委員がちょうどおられなかったときだと思いますけれども,議論がされて,阿多委員と富澤幹事の間で議論がされて,基本的には,笠井委員が今言われたとおりの,それぞれの意見表明があったと,私は理解しています。 ○笠井委員 ありがとうございます,失礼いたしました。 ○富澤幹事 今,部会長から御指摘いただいたとおり,最高裁判所としましては,当事者に副本を提出していただく余地を残していただきたいと考えております。   この点に関連しまして,本日,システム送達の特則の議論があったかと思います。先ほどから議論をしている副本の点も考えますと,システム送達の割合を高めていくという方向は,裁判所としても異論がなく,訴状送達の段階から,可能な限りシステム送達によることが望ましいと考えております。   他方で,本日も御指摘いただいたとおり,原告から提出されたメールアドレスにメールを送信してしまっていいのか,この点は非常に問題もあるような気もするところですので,他に適切な制度を導入することができないか,更に御検討をお願いできればと思っております。  民事裁判手続等IT化研究会の際には,事件管理システムへの登録をなるべく拡大するために,例えば,法人については,商業登記簿に通知アドレスの記載を義務付けることについて提案させていただきました。このような提案には,もちろんあい路もあるのかもしれませんが,川村関係官からも御指摘がありましたとおり,10年後,20年後の民事訴訟を考えますと,なるべく電子的な方法で手続が完結するような姿が望ましいと思いますので,その点についても御検討をお願いできればと思います。 ○笠井委員 訴状副本の送達の関係,例えば,大学の入試のオンライン出願とかでも,そのオンライン出願をされても,高校から出た成績証明書は,これは厳封なので,当然郵送で別に送ってもらうというようなことになるのですけれども,今回訴状と副本ですから,同じものについてもう一回郵送で出してもらって,それを送達するというのは,やはりちょっと何か,オンライン化の意義がすごく減殺されるなというのを,個人的に感想として持っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ちょっと時間がかなり押していて,今日は,諸般の事情で資料4まで全て終えたいと思っています。若干時間の延長をお願いするかもしれませんけれども,御発言を制約するわけではありませんけれども,そのことを念頭に置いて,できる限り簡潔に御意見を述べていただければと思います。 ○阿多委員 提案として発言します。   システム送達か紙の送達かという二者択一とかゼロサムの話になっているように思いますが,途中,大坪幹事から発言ありましたように,紙の送達の際に全ての書類を送らなければならないのかという,そこから考え直す必要があると考えます。   今般,会社法は令和元年に改正されましたが,上場会社の株主総会の招集通知のデジタル化が図られ,原則はデジタル,電子提供措置がとられますが,株主総会に関するアクセス通知自体は紙で発送し,それでアクセスすると改正されました。株主本人がどうしても紙の招集通知が欲しいという場合は,書面交付請求を認めました。このようにデジタルか紙かを本人に選択を認める方法もあり得るかと思います。   ですから,改正の意図が登録されていない当事者をデジタルに誘導したいのはよく分かりますので,一旦は簡単なはがきというか,提訴があった旨の通知を送って,システム登録か書類を要求する選択させればよいのではありませんか。当事者本には通知を弁護士事務所に持参して委任すれば,弁護士はデータに直接アクセスするかもしれない。弁護士に委任する前に全てを書類で送らなければならないという発想自体を変えていくことが考えられるのではありませんか。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。   よろしいですか。   それでは,恐縮ですけれども,先に進ませていただきたいと思います。   あともう1点,この送達のところで残っているのが,12ページの公示送達のお話です。これにつきまして,事務当局の方から説明をお願いいたします。 ○西関係官 それでは御説明させていただきます。   現行法上,公示送達は一定の内容を裁判所の掲示場に掲示してすることとされております。これを,当事者の利便を向上する等の観点から,裁判所のウェブサイトなど,インターネット上で行うことを提案するものでございます。   もっとも,このような規律を設けるに当たりましては,インターネットを利用しない者に対する配慮が必要となるものと考えられますし,また,訴訟に関する情報がインターネット上に掲示されることとなる点で,送達を受けるべき者のプライバシーに配慮する必要があるとの考え方もあり得るところです。そこで,このような点につきまして,皆様に御議論いただきたいと考えております。   簡単ではございますが,私からの説明は以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   いかがでしょうか,この公示送達の点,どの点でも結構ですので。 ○日下部委員 飽くまで私見ということになって恐縮でございますけれども,今御指摘いただいた課題の二つについて,思うところを申し述べたいと思います。   一つは,インターネットを使って公示送達を行う場合に,インターネットを利用しない者に対してどのような配慮をする必要があるのかということなんですが,現在行われております裁判所の掲示場における掲示におきましても,掲示場へアクセスできない者に対して特段の手当てを取っているのかというと,そういうわけではないのだろうと理解をしているところです。そう考えますと,インターネットを利用できない者に対して,インターネット以外の方法による公示送達の方策を設ける必要があるのかどうかということについては,制度を運営する上での全体的な考察をした上で判断していくことが許容されるのではないかと,個人的には感じております。   取り分け,公示送達をインターネットで行うことで,裁判所の掲示場での掲示に比べますと,公示送達情報へのアクセスは非常に飛躍的に向上することになりますが,更にそれに加えて従来どおりの裁判所の掲示場での掲示も維持するということに仮になりますと,屋上屋を架すようなものになって,裁判所の事務負担が不合理になってしまうのではないかということを,若干気にしております。   それから,プライバシーへの配慮,これは掲示すべき情報の範囲に関するものですけれども,この点は非常に神経を使う必要があると感じております。現在行われている裁判所の掲示場における掲示の内容というのは,少々表現は適切ではないかもしれませんけれども,実際上は,人々が目にすることがまずないだろうということが恐らくは背景にあって,いろいろな情報がそこに記載されているわけですが,インターネットで掲示されるということになりますと,多くの人々が掲示場よりははるかに目にする機会が増えるわけですから,本当に必要な情報に限って示すように,その必要性というのは厳密に検証する必要があると思っております。   取り分け被告とされた者について,どの程度の情報を出すのかということも気にしなければいけないわけですが,氏名は最低限必要ですけれども,例えば,住所を末尾の番号のところまで全て示すということになりますと,問題があるのではないか,しかし,氏名だけですと,自分と同姓同名の人が公示送達の対象になっているということに気付いた人が,裁判所に無駄な照会をせざるを得なくなるということもあるでしょうから,どこか中間的なところでバランスをとった範囲の住所の表示をするということも考えられるのかなと思いました。 ○山本(克)委員 この3の提案の射程ですけれども,民法98条の公示による意思表示についても同様に,民訴法に倣っていますから,当然そちらにも波及する提案だということでよろしいでしょうか。 ○山本(和)部会長 御質問ですかね。いかがでしょうか。 ○大野幹事 裁判所の掲示場の掲示とインターネット上での掲示が法制上全く同質のものだという整理が可能であれば,お尋ねの民法の公示による意思表示も同様の方式にするということも考えられます。   もっとも,民訴法第110条以下や民訴規則第46条の規定する公示送達の在り方と民法第98条の公示による意思表示の在り方とでは,官報の位置付けなどの点で異なっております。そのため,民法の公示による意思表示においてインターネット上の掲示を導入するかどうかの検討をするに当たっては,現在の公示による意思表示の制度全体のパッケージの中で裁判所の掲示場の掲示の場合との差異の比較をしなければならず,民訴法の公示送達の在り方が変われば,常に民法の公示による意思表示の在り方も変わるという関係にはないものと考えています。   この部会におきましては,飽くまで民事訴訟法の公示送達の在り方について御議論いただければと思います。 ○山本(和)部会長 山本克己委員,いかがですか。 ○山本(克)委員 これは戦略的な話として,民法に影響があるような改正を民訴部会でやると,大体民法部会から,民法の先生から怒られるという過去の経験がありますので,今のような方針でやっていただけると有り難いなと思います。 ○山本(和)部会長 分かりました。 ○阿多委員 インターネットで公示することは賛成なのですが,問題は,掲出されている個人についてのプライバシーをどのような形で守っていくのかということと思います。提供する情報を制限するという方法もあるかもしれませんが,そうすると,逆に探索,自分が対象かどうかも分からないことになりかねません。そこで,情報を見るためには,本人が本人確認ができる方法で登録した上で,情報を見にいくという方法を考えないといけないのではありませんか。そうでなければ名前を知っている,住所を知っているという第三者が覗き見るということになりかねないと思います。   現在の実務では,書記官室に記録がありますので出頭してくださいと記載した紙1枚だけが掲出されるだけですが,掲出するデータ内容が訴状の中身までという形になりますと,裁判の内容まで第三者がのぞくことができることになりかねません。本人確認ができた者しか見られないという形の制度設計を検討いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○笠井委員 プライバシーの関係は,今まで御意見が出たところに特に付け加えることはないのですけれども,掲示によるものを残すかどうかということについて,掲示によるものを残す必要は,私もないと思うのですが,裁判所の中にインターネットが使えない人のために,何か機械とかを置いて,公示送達を見られるようにするような,そういう仕組みは残しておいてもいいのかなと思います。そうしたら,少なくとも執務時間内については,裁判所に来て見られるということで,今の掲示板と同じような仕組みのものが,それほど手間を,その都度の手間を増やさずにできると思いますので,そういったことも御検討いただければと思います。 ○山本(和)部会長 ほかにいかがでしょうか。   おおむねよろしいでしょうか。   それでは,これで資料3については,おおむね検討をしていただいたということにいたしまして,引き続きまして資料4の方に入りたいと思います。   手数料の電子納付ということです。これは,第1から第3まで分かれておりますが,相互に密接に関連する問題だと思いますので,全体について御議論を頂ければと思います。   まず,事務当局から,この部会資料4について説明をお願いいたします。 ○渡邊関係官 それでは,時間の関係もございますので,簡潔に御説明申し上げます。   部会資料4の2ページの参考図を御覧ください。裁判手続を利用するにつきましては,手数料,それから手数料以外の費用の納付が必要になりますけれども,部会資料4の第1と第3は,この手数料と手数料以外の費用の納付方法の在り方について御審議をお願いするものでございます。   それから,この手数料以外の費用のうち,便宜上郵便費用と記載させていただいた費用については,現行法上,概算額を予納していただいて訴訟終了後に実費精算するという仕組みになっておりますけれども,部会資料4の第2は,この際,そのような仕組みを変えて,手数料化することの是非について御審議をお願いするものでございます。   もう少し敷衍して御説明します。   まず,部会資料4の第1でございます。これは,今後裁判手続のIT化が進められて,オンライン申立てができるようになった場合のことでございますが,オンライン申立てがされた場合の手数料等の納付方法について,これを電子納付に一本化することを御提案するものでございます。ここで言う電子納付につきましては,ペイジーを利用して納付する方法を念頭に置いておりますけれども,このような納付方法に一本化することにしてはどうかということを御提案しております。   これに関連しまして,今申し上げたペイジーを利用する方法のほかに,クレジットカード等を利用する方法など,多様な決済方法を導入することの是非についても,併せて御意見を賜りたいと存じます。   次に,部会資料4の第3でございます。これは,前回のオンライン申立ての義務化の議論にも関連することでございますけれども,今後,オンライン申立てに加えて,一定の場合に書面による申立ても許容されることとなった場合には,オンライン申立てと書面による申立てとが併存することとなりますが,この書面による申立てがされた場合の手数料等の納付方法についても,原則として電子納付の方法によることとしてはどうかということを御提案するものでございます。   これに関連しましては,電子納付が客観的に難しいという場合が考えられようかと思います。典型的な事例として考えられそうなのは,刑事施設の被収容者が書面による申立てをする場合ですけれども,このような場合などは電子納付がおよそ困難であると考えられますので,例外を設ける必要がありそうですが,例外の範囲やその場合の納付方法についてどのように考えるかということも併せて御審議いただきたいと思います。   さらに,部会資料4の第2でございますけれども,これは,先ほど申し上げたとおりでして,手数料以外の費用のうち,郵便費用につきましては,概算額を予納していただいて,必要があれば追納をしていただく,余りが出れば返還をするということで,実費精算を前提とした制度となっておりますけれども,この際,このような制度を見直し,郵便費用を手数料化して,訴え等の申立て手数料に組み込み,申立ての際に納付するものとしてはどうかということを御提案するものでございます。   この関連では,先ほども申し上げたとおり,今後,オンライン申立てと書面による申立てとが併存することも考えられるところですが,オンライン申立てを促進する観点から,両者の手数料の額に差異を設けて,オンライン申立てに経済的インセンティブを付与することはどうか,あるいは,裁判手続のIT化に伴って,現行法上で訴訟費用と認められているもの以外にも,訴訟費用として認めるべきものがあるのかどうかなど,IT化された後の裁判手続を見据えた訴訟費用制度をめぐる諸課題についても,併せて御意見を頂戴できればと考えております。   これらの御提案の趣旨等は,部会資料4記載のとおりでございます。   事務当局からは以上でございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   それでは,この資料4,どの点からでも結構ですので,御質問,御意見を頂ければと思います。 ○小澤委員 3点あったと思いますが,いずれも全面的に賛成をしています。   収入印紙や郵券の準備はやはり煩雑ですし,当事者の負担も大きいと思っています。登記の分野では既に,御案内のとおり,オンライン申請で電子納付を行っていますし,登記情報提供サービスにおけるクレジット決済も行われております。もちろん私も利用していますが,何ら問題を感じていません。   納付方法につきましては,ペイジーのほか,クレジットカードや電子マネーの利用などもできれば,更に便利だろうと思っています。また,訴訟代理人であるとか裁判書類作成者などの資格者,すなわち弁護士・司法書士というヘビーユーザーについては,将来の分まで先払いできるようになりますと,更に利便性が高まるように思っています。   インセンティブについても賛成でございまして,これも,登記の場合は5,000円を限度に登録免許税が減税されて,この減税措置を理由に,多くの司法書士がオンライン申請を行うきっかけになりました。利用が任意である登記のオンライン申請においても,少額であっても,安くなる方法があれば,依頼人の利益につながりますので,司法書士がオンライン申請を選択する大きなインセンティブになったと理解をしています。   また,登記事項証明書についても,窓口申請よりオンライン申請の方が手数料が若干安くなっていますので,ほとんどの司法書士がオンラインで請求しているという現状があります。ですので,インセンティブは,登記よりも思い切ったものにしてもいいのではないかと思っています。   最後に,本人訴訟の場合の当事者,書面が許容される場合においても,むしろ本人訴訟の当事者の方が,電子納付を希望する側面もあるのではないかと考えております。例えば,本人に500円などの高額な郵券が返却されても,使い道は余り考えられません。そういった側面からも,裁判所の事務効率化のためにも,一本化が望ましいと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 一本化のお話をする前に,予納金の納付のタイミングを話ししたいと思います。   部会資料3の方では,申立て段階で納めるのか,申立て後で納めるのかという指摘もありましたが,納付のタイミングは事後で検討いただけたらと思います。というのは,申立手数料,特に訴額の算定は複雑な点もあり,私などは算定上申を提出して,原告はこのような理解で計算して算定している旨を説明して暫定的な印紙を貼付する方法をとっています。最終的には係属部と協議をして確定する,そういうこともあります。例えば,道路だとか未登記建物では算定自体が困難な案件もありますので,事後の納付・追納もあり得る,事前に一括納付で後に還付を受ける手続にするよりも,アナログですが,相談の上で納める途を残していただきたいと思います。   次に納付方法は,便利な話ですので,電子納付に前向きです。ただ,なぜ一本化なのか,その理由についての説明を頂きたいと思います。特に,第3の書面による申立てが許容される場合にまでなぜ一本化なのか。部会資料4の7ページでは,当事者の負担軽減と裁判所の合理化の観点という指摘があります。しかし,先ほどの濫訴もそうですが,裁判所の合理化の観点は当事者には見えないところです。裁判所から,何が省力化できるのかついて,具体的に話があって,IT化,デジタル化に前向きでやっていきましょうという説明を頂けたらと思います。 ○山本(和)部会長 本日の段階で,何か裁判所からはありますか。 ○品田委員 書面による訴え提起が許容される場合における郵券の取扱いをどうするのかという点につきましては,先ほど御指摘があったとおり,各庁で最初に当事者に予納していただく郵便切手は,例えば,500円切手を何枚,100円切手を何枚といったように,セットで御準備いただいておりますので,当事者にとってそれなりに負担があるのではないかと考えております。また,余った郵券を還付するときに高額な郵券をお返しすることも,大変ではないかと考えております。  裁判所の観点から申し上げると,郵便切手は金券の一種ですので,納められたものを,事件ごとに管理して,一件一件郵便を出すたびに,破れやすい,壊れやすい郵便切手をぺりぺりとちぎって貼って,残高を確認して,また次の送達をするときには,また数えて確認して貼ってと,細かい作業を行っているわけです。   それぐらいは裁判所の方で何とかせよという御指摘があるかもしれませんが,10年後の民事訴訟の姿を想像したときに,IT化が行われ,システム送達などが実現しているにもかかわらず,郵便切手を数えて,ちぎって貼ってという細かい作業をずっと続けていくというのは,ちょっと御勘弁いただきたいなというのが,実際に現場を担当していて,書記官が行っている事務を見ていて率直に感じているところでございます。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 基本的に,部会資料4の御提案は,先ほどお話のあったインセンティブの点も含めて,基本的には賛成なんですけれども,支払方法を多様化するのは,確かに利用者の側からすると利便性高まるんですけれども,それだけランニングコストがかかってくるということにもなりますので,私はあんまり増やさない方がいいでないのかなという感じがいたします。一旦増やし出すと,新規のサービスが出たら,またそれも,またそれもということになって,結局システム投資を裁判所がやたらとしなければいけなくなって,本業の方に回せるお金がどんどん減ってくるということにもなりかねませんので,私はあんまり増やさない,電子納付には賛成ですけれども,電子納付の方法を余り増やすことには,慎重であるべきだと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○阿多委員 品田委員の方から,第2の郵券のお話も出ましたので,そこも含めて,裁判所の方の書記官の事務が今後どうあるべきかということにも関連するかと思いますし,郵券について,金銭化,納付の対象にするということはあり得る話だとは思います。   ただ,今の実額精算というようなもの,金銭で納付する限りにおいては,実額精算で管理して,そこから落ちていくというような形でする方法もあり得るわけで,それを,今回の御提案は定め額,こちらは低い額という意味の低額だとは思うのですが,定め額の御提案を頂いていまして,そうなりますと,結局抽象論ではなくて,これもコストとの関係で,余り出してしまいますと,その定額が意味がなくなるのかもしれませんが,どれだけのメリットがあるのかというところも含めて,御提案いただければと思います。   一本にすると,お金一本にするということはよく分かりますし,それを今,今は実は郵券,郵便切手代だけが電子納付できると,逆の状況になっておりますので,それについては,印紙等も併せて電子納付ができたらなと,私は思います。   1点,山本克己委員からありました,あまり触れなかったのですが,クレジットカードの件につきましては,現在,税金等についても,某事業者が立て替える形での納付が認められていますが,手数料がかかるとか,いろいろな問題があります。特に,引落しがあるまでにクレジット業者がデフォルトを起こしたらどうなるのか,例えば,弁護士事務所が納めるときに,弁護士の名前で納めるのか,本人の名前で納めるのかというようなことも含めて,いろいろな問題がありますので,クレジットカード,今日は余りそこの話をするのもいかがかと思いますが,方法の選択については,いろいろ御検討いただければ,またこちらも問題状況を御説明,御提示したいと考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○日下部委員 私は,第2のところ,郵便費用の手数料への一本化のところについてだけ,意見を申し上げたいと思います。   利用者の観点から言えば,支払う費用が一本化されるという方が,利用しやすいというメリットはありますので,基本的に一本化には賛成の立場でございます。   ただ,そのことによって,支払うことになる合計額が現状よりも増えるということになりますと,それは,利用者の立場からは受け入れにくいということに当然なるところですので,金額をどのように設定するのかということについては,慎重に考えていただきたいなと思っております。   また,オンライン申立てをする場合に,支払う手数料の額をそうでない場合よりも安く設定するということについては,裁判所に生じる手間の差に鑑みれば合理的だと思いますし,前者に経済的なインセンティブを与えて,オンライン申立てをする人が増えるようにしていくということも,政策的には納得感のある,合理性のあるものだと思っておりますので,その点についても,私としては異存はございません。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○垣内幹事 ありがとうございます,垣内です。   私も,基本的にこの資料4でされている提案の方向には賛成です。   ただ,細かいところを申しますと,今までも発言が出ておりますように,第2の郵便費用の点については,これ,郵券による予納というのが非常に煩さであろうということは想像に難くないところで,これを電子納付とするというところは全く異論がないところですけれども,手数料として一定の金額にするということについては,先ほど日下部委員からも御指摘ありましたように,金額が余り高くなるようであれば,その合理性についての疑問も出てくるところかなとも思いますので,金額がどの程度になるのかということも重要な問題なのかなと考えています。   それから,第3の書面による申立ての場合ですけれども,この点についても,電子納付に一本化するという方向でいいのではないかと,基本的に考えているんですけれども,先ほども少し申しましたように,この点は,手数料の納付と訴状の受理の際の取扱いとの関係について,確認する必要があるのかなと考えておりまして,電子納付の方がもたついていることによって,訴状の受理自体が遅れてしまうというような事態が余り起きないような形で,手続ができるようにできるといいのではないかと考えています。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○川村関係官 内閣官房の川村です。   今,政府全体でキャッシュレスの環境整備というのに取り組んでおりまして,決済インフラを見直していこう,そういった中で,先ほどお話ありました手数料の見直しも進めていこうという流れがございます。さらに,税公金の世界のキャッシュレス化もどんどん推進していこうという形で取り組んでおりますので,そういったものと整合的にといいますか,同じ流れで取組が進められるとよいのではないかなと思います。   また,実際,ここら辺の決済インフラというところにつきましては,厳しい金融業の規制がかかっておりますので,そういったことも踏まえて対応されるとよろしいのではないかなと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○大坪幹事 私も,第1から第3の本文の提案については賛成いたします。若干補足的な意見を述べさせていただきます。   まず,第3の(注)のところに,例外を設ける必要があるかというところがありますけれども,基本的には,ここで例として挙げられている刑事施設の被収容者について,まずは電子納付ができるような手当を御検討いただけないかなと思っております。ですので,基本的に,できるだけ例外も定める必要がないのではないかと,そういう方向で御検討いただければと思います。   さらに,インセンティブの点ですけれども,必ずしも直接経済的なインセンティブの付与というものにはつながらないのですけれども,部会資料4の6ページのところの第3の上のところには,訴訟費用確定手続の在り方の見直しの可能性ということにも触れられております。この訴訟費用確定手続については,司法改革のときに改正されておりまして,大分以前より計算しやすくなっており,申立てもしやすくなっておりますけれども,実際には,勝訴しても手数料が高額になる場合は除いては,余り訴訟費用確定手続というのは弁護士もしていないのではないかと思われます。それは,ある程度手間がかかる割に得られる効果は少ないということが原因として考えられるわけですけれども,その意味ではこの機会に,訴訟費用の確定手続についても,更に合理化,簡素化を図るような見直しをしていただければ,訴訟全体の利用のしやすさにつながるのではないかと思います。   あともう1点,これはかなりハードルが高いのかもしれませんけれども,阿多委員がおっしゃられた訴額の計算というところについて,この点は一冊の本になるくらい難しいところがありまして,弁護士も苦労しているところです。将来的なことを考えますと,今後ある程度AI技術が発達すると,機械的に計算をするというのができのではないかなという気もします。そうすると,裁判所が何らかのアプリを作っていただければ,申立てをする段階で当事者もすぐに訴額を計算できて,手数料を訴状等のアップロードと同時に納付するということも可能性としてはあるのかなと思います。その点も御検討いただけるとよろしいかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○渡邉幹事 今,大坪幹事から訴訟費用額の確定手続の話も出たところですが,訴訟費用につきましても,IT化することによって,いろいろ変容の可能性があると考えておりますし,また,IT化を機に,いろいろと合理化を検討することができないかと考えているところでございます。   これらの点につきましては,このような法制審で細かく御議論いただくのが適切かということはございますが,例えば,訴状等の書類の作成や提出費用というものが,IT化によってどうなるのかといった点や,直接IT化とは関係ないのかもしれませんが,証人の日当や宿泊料といったものを定額化するといった点,今後ウェブ会議の方法による手続を行った場合の通信料がどうなるのかといった点が論点として検討することができると考えております。   また,訴訟費用に関する事務を合理化するという観点から考えますと,例えば,過納付手数料を還付する場合に,定型的な判断が可能なものにつきましては,裁判所ではなく,裁判所書記官の権限で行うことで合理化を図ることが考えられるかと思います。  これらの論点は,多分に技術的な内容を含むため,法制審で御議論いただくのが適切かという問題はありますが,御指摘させていただきたいと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○大谷委員 ありがとうございます,大谷でございます。   基本的に賛成意見ということで,お話ししたいと思います。   書記官の方の非常な御苦労については,聞き及んでおりますので,是非実施していただきたいと思っております。   皆様と重なる論点については,今回はお話をしないで,ペイジーを利用するということについての賛成意見を述べたいと思っております。   この場合には,収納機関を厳選してありますので,あらかじめ決められた手数料を,決まった金額で間違えずに支払うということがしやすいということで,消費者保護にもつながるものだと思っております。詐欺的な利用等の,詐欺的な請求との峻別ができる仕組みを構築しやすいという点で,望ましい決済方法ではないかと思っております。   あともう1点,一定数の方が預金口座を持たないまま生活していらっしゃいますけれども,ATMを通じてキャッシュでお支払いすることができるような仕組みにもなっているという点で,こういった公金,公的な手数料の収納に,かなり親しい仕組みだということが言えるかと思いますので,こういった仕組みをまず導入することによって,その後で,支払方法の多様化といったものに,段々着手していくというような,段階的な取組をとられた方が,望ましいのではないかと思っております。余りにも最初から多様な仕組みに対応されていますと,利用者にとってはもちろん便利な側面もあるかもしれませんけれども,悪用された場合の被害救済ということも併せて考えるということになりますと,全体的に割高な仕組みということになってしまうかと思いますので,そういう意味で安定的な仕組みを採用されるようにお願いしたいと思います。   ただ,ちょっと,最近は残念なことなんですが,金融機関がATMを今減らしている状況にありますので,そういったことの兼ね合いで,利用者,裁判制度の利用者へのアクセスというのをどういうふうに確保していくかということも併せて,これは,この法制審のミッションではないと思いますけれども,別途検討していただく必要があるかと思います。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。 ○山本(克)委員 費用法についてちょっと御発言がありましたので,それに,尻馬に乗って発言させていただきたいと思います。   私,長谷部委員もそうでしたけれども,司法制度改革推進本部の司法アクセス検討会の委員もしておりまして,その際に,費用法の改正についても若干関与したということですが,当時は紙ベースの世界でしたので,しかも,記録自体がオンライン化されていませんでしたので,やれることに限界があって,ある程度簡素化したんだけれども,余り,それほど大きな実際上のインパクトがないような改正しかできなかったと思っております。   今回,いろいろなことを,記録のデジタル化が進みますと,プログラムしておきさえすれば,訴訟費用の総額をぱっと割り出すことができるようになってくるというところまで,プログラムを組めばできるんではないのかなという感じがして,そういう意味で,書記官権限化,そういう方向でいくんであれば,いろいろなことを書記官権限化もっとしていくと,負担の裁判だけ裁判官がやって,あとはもう書記官権限化していけばいいのかなと,客観的に裏付けがあることになりますので。そういう方向を含めて,御検討いただければなと思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。おおむね議論は出尽くしておりますでしょうか。   基本的には,私が理解したところでは,この資料4の提案第1から第3まで,全体については御異論余りないというか,基本的には賛成の方向の御意見であったかと思います。   ただ,今も出てきた訴訟費用額の確定手続の在り方とか,あるいは,郵便費用を手数料一本化するのはいいけれども,結局それで額が一体どうなるのかと,それによって違ってくるというようなお話もあったかと思います。   どの辺りまでこの法制審議会で議論するのが適切か,あるいは可能かという問題はあろうかと思いますが,基本的には,本日の資料に沿った方向で,より具体化を図っていただくということが,本日の部会の皆さんの御意見だったのだろうと思いますので,事務当局においては,引き続きこの点について,よりリファインしていっていただければと思います。   それでは,ちょっと途中の私の発言がやや先走りだったような,時間がそれほど,実は押していなかったということが今判明したわけですが,ちょっとそのときに,もし御遠慮された委員,幹事おられましたら,先ほどの資料3に戻っていただいても結構ですので,御発言があれば,頂ければと思いますが。 ○日下部委員 山本部会長の発言で控えたというわけではないところで恐縮なんですけれども,1点言い漏らしがありましたので,発言したいと思います。   部会資料3の第1の1のところで,オンラインによる訴えの提起をなすときに,裁判所の使用に係るコンピュータに,電子データによる訴状を記録する方法によるとなっております。そこでいうコンピュータには,クラウドサーバにおける裁判所の管理領域を含むという説明になっているんですけれども,技術的な問題なので,私あんまり,正直申しましてよく分からないんですが,弁護士会の中でいろいろ議論をしておりますと,このクラウドサーバの利用をするということが,どういったセキュリティ上の問題を生じ得るのかという点で,懸念といいますか,心配だというような考えを持つ者も少ないわけではないと思っております。   取り分け,そのサーバの所在場所が,日本国内ではなくて国外という場合に,何か問題が生じるのではないかという意見も出ているところです。   私,個人的には,サーバの所在場所が日本国内の場合には,別のところで検討されております国際送達の問題にも若干関わり合いはあり得るのかなという気もいたしまして,そういう点で,どういったクラウドサーバの利用,運用を今のところ考えていらっしゃるのか,教えていただけることが今現在あるのであれば,教えていただきたいと思っております。 ○山本(和)部会長 これは裁判所の方,富澤幹事からですか。 ○富澤幹事 今の日下部委員の御質問に具体的にお答えするのは難しいところでございます。前回の部会でも申し上げましたが,現在,本年度中に専門業者の知見も得ながら,システムの全体化計画の策定を進めており,その中で,クラウドサーバにデータを置くことの当否等についても,検討をしているところです。もちろん,国内のデータセンターに情報を置く必要があるということは,裁判所としても認識しておりますので,このような御指摘も踏まえて,今後しっかりと検討していきたいと考えております。   クラウドサーバにデータを置くことについては,例えば,大規模な金融機関等では,現在も実際に行っていると聞いたことがありますので,その点も含めて,今後検討をしてまいりたいと思います。 ○山本(和)部会長 日下部委員,よろしいですか。 ○川村関係官 内閣官房の川村です。   今,行政の方では,クラウドサービスの利用の徹底を推進するという流れになっております。そういう中で,今,不便になっているのは,個々の役所が,サービスの際にどういう手続,一体どういうクラウドだったらいいのかというのは,個々に判断しないといけないというので,なかなか利用が進まないというところで,実際もう使い始めているんですけれども,自治体も含めてこれから拡大していこうという流れにあって,そういう中で使いやすいようなセキュリティの要求基準の明確化とか,こういうのを進めているところでございますで,そういったもの等を参考にしながら,適切なクラウドサービスを選択していただくというのが,流れではないかとは考えます。 ○阿多委員 関連というか,もう少し違う話で申し訳ないのですが,場所は,私も,部会資料3,第1の1に関連するところなのですが,2点ございます。一つは意見なのかもしれませんが。   今回の御提案は,特に(2)の方では,裁判所の使用に係るコンピュータに記録されたという形で,記録という形。問題は,記録されるかどうか,もっというと,本当に掲載されずにはじかれるという場面があり得るのかということです。   今でもいろいろな,ウェブで何かをするときに,登録するときに,必須項目というものがあって,あとは任意の項目があって,必須項目があれば,確認というものを入れて,それで記録というか,搭載される形になるかと思うのですが,民事訴訟法だと,133条のところの2項で,次の事項を記載しなければならないというような形で法定されているのですが,例えば,請求の原因についての記載が不十分だというような形で,何度入れても記録できないというような形になりますと,いわゆる時効,さらには提訴期間というのが,そのために遵守できなかったということになりかねません。この原因まで,アメリカのように非常におおらかな形でいくのかどうかというようなことも含めて,どのような情報が入力されれば記載されるのかというところについては,はじかれる可能性も含めて,御検討いただけたらと思います。   もう1点は,非常に形式的な法律家特有の質問なのかもしれませんが,(2)の文末のところは,これ,みなすというような形で今回整理されています。従前の132条の10でしたか,これは紙が原則で,データで提出した場合,どの段階で提出したのかというところでのみなすという意味は,意味があったのかもしれませんが,今回,事務局の方で,文末をみなすというような形にしたのは,何らかの選択肢があるところを,一定このように処理するという意味で使われたのかどうか,もしよろしければ教えていただけたらと思います。 ○大野幹事 御指摘の部分は,132条の10の第3項の表現を参考にして書いたものです。 ○阿多委員 違う領域に入るというのは,いずれにしろ判断が入るのかな。従前の解説では,先ほどの項目でもありました,裁判所独自のサーバか,汎用的なところに載せるのかと選択があって,これは,高田委員が正に解説を書かれているところですからあれですが,そのようなところでの解釈の問題もあって書かれたのか。   ただ,電子という部分,データに絞るのであれば,あえてみなすという表現は必要ないのではないかと,それだけの質問です。 ○山本(和)部会長 法制的なところもあろうかと思いますが,また次の資料を作るときに,検討を頂ければと思います。 ○山本(克)委員 何度もすみません。   公示送達のところで,紙の掲示をやめるべきかどうかという話があったと思うんですが,私は,少なくとも現時点では併用すべきだと。インターネットによる公示というのも認めるにしろ,紙の掲示は併用すべきであろうと考えます。   公示送達というのは,元々擬制的な制度であることは間違いないんですが,やはり擬制は擬制なりに説得力を持たないといけないと思います。   公示送達は,やはり日本人の識字率が非常に高いということを前提として成り立つ制度であります。その場に行けば読めたはずだというものだと思うんですけれども,ネットリテラシーについては,本来の意味のネットリテラシーでない,ネットがとれたリテラシーほど高くはない,国民の中でですね。それを一律に,ネットを見るのが国民として当然できて当たり前だという立場に移行することには,私はやはりちゅうちょを覚えます。初等,中等教育でネット教育をきっちり受けてきた世代が大半を占めるようになった時代ならともかく,そうではない現状において,ネットリテラシーがあるのが当然だといわんがばかりに擬制を働かすということについては,私は反対いたします。 ○阿多委員 山本委員,阿多でございます。   委員の御意見,併用し得るべきだということはよく理解できるのですが,その場合,提供される情報はどうなるのでしょうか。今の掲出は,委員御承知のように,書記官室に出頭してくださいと書いているだけで,中身について見られるわけではありません。しかし,ネットで,先ほど私の御提案は,本人確認ができる,裁判所の方は,逆に誰でも見られるという状況になっているわけですが,今回ウェブのところで公開するという形になると,本人確認をして,ある程度の中身のものが見られるというようなことを想定すると,掲出する情報に差があるのではないかと。そのときに,併用でいいのかということがあるかと思います。   むしろ,裁判所の中に,本人が確認できれば見られるというようなシステムを,裁判所の受付なりどこかに置いて,誰でも見に行けると,ウェブが使えなくても見に行けるというようなシステムを提案すべきではないかと思うのですが,いかがでございましょうか。 ○山本(克)委員 それは,紙を併用した場合に,紙を見て来た人に本人確認をするかどうかという問題設定をすればいいだけの話なのではないですか。 ○阿多委員 そうですか。 ○山本(和)部会長 よろしいですか。 ○阿多委員 はい,結構です。 ○富澤幹事 実務の現状を申し上げますと,裁判所の掲示場に掲示した後に,受送達者が掲示を見て現実に送達書類を受け取るというケースはほとんどないところでございます。他の委員から御指摘があったように,現行法上の制度は送達書類の交付を受ける機会を付与しているにすぎないので,このような実情を踏まえると,インターネット上のウェブサイトに掲載する方法に加えて,現行法に基づく公示送達の方法を維持する必要性については,慎重に検討すべきではないかと考えております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○佐々木委員 先ほど富澤幹事がおっしゃっていた,訴状のシステム送達の実効を上げるために,一つの提案として,受信アドレスを登記事項にしてはどうかというようなお話がありましたけれども,それ自体は,それでシステム送達の数が上がるということであれば,賛成をしたいと思います。   ただ,登記事項として,代表者の今住所が登記事項になっていますけれども,それで多少弊害が起きているところがあると思いますので,今会社法でも,その扱いについて検討されているかとは思いますが,それと同じような扱いをしていただいた方がいいのかなとは思っております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございました。   ほかに言い残されたことは。 ○川村関係官 今,我々政府の方で取り組んでいますのが,ICTとかサービスの利用を,使えない人をなくしていこうという方向性で取組を進めておりまして,高齢者などが身近な場所で相談をしたり,学習できるような,そういうデジタル活用相談員というか支援員,すみません,支援員ですね,のような制度が作れないかというような検討もしておりまして,むしろ紙で残すんではなくて,皆がデジタルを使えるような形に,世の中を変えていけないか,そういった方向で取組を進めております。 ○山本(和)部会長 ありがとうございます。   ほかにはよろしいでしょうか。よろしいですか。   それでは,本日の資料3,資料4については,全体的に御議論いただけたと思いますので,本日の審議はこの程度にさせていただきます。   最後に,次回の議事日程等について,事務当局から説明をお願いします。 ○大野幹事 次回は9月11日金曜日の午後1時半から午後5時半頃までです。場所は,法務省地下1階大会議室です。   次回は,口頭弁論,特別な訴訟手続,争点整理,証人尋問等について御議論いただく予定です。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山本(和)部会長 次回も盛りだくさんになりそうですけれども,本日,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会の第2回会議は,これにて閉会とさせていただきます。   熱心な御議論賜りまして,誠にありがとうございました。 -了-