法制審議会 民法・不動産登記法部会 第20回会議議事録 第1 日 時  令和2年10月20日(火)自 午後1時00分                      至 午後3時17分 第2 場 所  東京保護観察所会議室 第3 議 題  民法・不動産登記法の改正について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山野目部会長 法制審議会民法・不動産登記法部会の第20回会議を始めます。   本日は,御多用の中御出席を賜りまして,誠にありがとうございます。   本日は部会資料49及び50をお諮りすることにいたします。これらの審議が終わり次第,会議を終了ということにいたします。   なお,本日は,阿部委員,佐保委員,増田委員,衣斐幹事,木村幹事,勝目関係官が御欠席でいらっしゃいます。   事務当局から,本日用いる資料の確認を差し上げます。 ○小田関係官 今回,部会資料の49及び50を事前送付しております。   部会資料49及び50につきましてお手元にないようでございましたら,事務局までお知らせいただければと存じます。 ○山野目部会長 お手元に部会資料がそろっておりますでしょうか。   それでは,内容の審議に進むことにいたします。   部会資料49をお取り上げください。管理措置請求制度についてお諮りをいたします。   1ページを御覧いただければお分かりのとおり,第19回会議に引き続きまして,管理措置請求制度についてお諮りをいたします。第19回会議におきましては,管理について問題がある土地の所有者に対して,行為の請求をすることができるという形態の管理措置請求の制度も掲げておりましたけれども,第17回会議における議論の様子を拝見いたしますと,理論的な観点その他から様々な難しい部分があるようにも感じられたところでございます。   本日はそのようなところから,それを(注1)の所に掲げて,重みを下げてございます。それと入れ替わる形で,第17回会議におきまして,その土地に立ち入ることができるという形態の提案も差し上げていたところでございまして,これを甲案としてお示ししているものであります。   また,第17回会議においても,そのような可能性を示唆する御意見を頂いておりますけれども,様々な観点への考慮をしますと,本日お示ししている乙案でございますけれども,管理措置請求制度に関する規律を設けないという方向もあり得るものでございまして,これについても掲げているところでございます。   部会資料40でお諮りしている事柄の骨子はこのようなことでございます。部会資料49でお示ししている管理措置請求制度について,委員,幹事の皆さんに御議論を頂きたくお願いいたします。どうぞ御自由に御発言を賜りますようお願いいたします。 ○橋本幹事 部会資料49に関して,日弁連で検討している議論状況の御紹介を差し上げたいと思います。   まず,前回の部会資料39と比べてがらっと変わっているので,どうしたんだろうなというような受け止め方が大きくて,それで,今回の甲案,乙案に関しては,いずれも賛否両論がありまして,なかなかこれでいこうという統一的なところ,一致はなかなか見られなかったんですが,後に検討する部会資料50の方の,管理不全土地管理制度の方と対比して考えると,50の方は,所有者と管理人が対立する可能性を想定している制度ですから,所有者が反対の意思を表明する場合には,そもそも発令されないであるとか,取消しというような説明がされています。そうすると,この管理が不適切な土地について他人が管理に関わっていくということについては,なかなか50の方では,実効性が薄いのではないか。そうすると,49の管理措置請求の方を何とか実効性がある方向で育てていった方がいいのではないかという大まかな流れでした。   そこで,ただ,甲案でいきますと,「瑕疵がある場合」というような非常に要件が広範になっておりまして,第17回会議のときに,議事録を読み返しましたけれども,安髙関係官がおっしゃっていたことも私としては胸に突き刺さるものがありまして,管理措置請求というものの乱発ということ,これはやはり避けなければいけないだろうと思います。   そこで,甲案についてもうちょっと要件を明確化,厳格化するような方向で何とか育てていっていただきたいなと思っています。具体的にどうするかというのはなかなか難しいんですが,方向性としては,甲案の方向を何とか実現していっていただければなと思います。 ○山野目部会長 弁護士会の意見を御紹介いただきまして,ありがとうございます。   藤野委員,お願いします。 ○藤野委員 ありがとうございます。   今回御提示いただいたものの甲案,乙案で申しますと,やはり経済界としては甲案に賛成で,こちらの方を強く支持したいと思っております。これまでの部会でも理由等を申し上げてまいりましたが,やはり隣の土地が正に今後脅威になり得るというような事態に遭遇したときに,今までは隣地所有者に何か対策をしてもらおうとしてもなかなか動いてもらえない。かといって,では,自分たちでやろうとすると,それを行うための法的根拠が明確ではないのではないかというところで,どうしても躊躇してしまうというところがございまして,そういった観点から言いますと,甲案のような形のものが法律の中に入るということによって,未然に大きな災害であるとか,そういった近隣の土地の管理不全による被害を防ぐことができるという点で非常に大きいのではないかと思っております。   ここに提示されている要件に関しましては,例えば先ほど橋本幹事からも御指摘があった瑕疵のところは私も気になっておりまして,これは広い概念なのか,それとも狭いのか,どういうふうに解釈すればよいのかというところは,これまでの資料と比べると確かに分かりにくくなっているところはあるように思われます。余りここが狭くなり過ぎてしまうと,実効性が薄れるというところも多分にあるかとは思いますし,そもそもこれは土地の瑕疵という言い方をすべきなのかどうか。既に括弧書きで,「土地上の工作物若しくは竹木」という表現も併記していただいていますが,例えば土地の瑕疵といったときに,では,その上にある工作物とか竹木に問題があるときもそこに含まれるのかとか,そういった疑問というのは当然湧いてくるところはございますので,仮に甲案で進めるということになった場合には,ここの所はもう少し詰めて議論していただいた方がいいのかなというところは思うところがございます。   あとすみません,もう一点,要件に関して申し上げますと,これは今の書き方だと,他の土地に立ち入り,損害の発生を防止するために必要な工事をすることができる,という書きぶりになっておりまして,この点に関してちょっと意見として出ていたのは,これって予防工事ができるのは分かるんですけれども,実際に損害が発生した後もこれで読めるんですよね,ということで,この点について確認したいという意見もございましたので,最後質問になりますけれども,教えていただければと思っております。   いずれにいたしましても,基本的には甲案の方向性に賛成ということで,是非管理措置請求制度を新たな規律として入れていただきたいというところでございます。 ○山野目部会長 藤野委員から御意見を頂きましたとともに,最後の所でお尋ねがありました。大谷幹事からお話を差し上げます。 ○大谷幹事 ありがとうございます。今のところは,自己の土地に損害が及び,又は及ぶおそれがあるときはというふうにしておりますので,「損害の発生を防止するために必要な工事」というのは,実際に生じている損害を除去するための工事も含むものと考えております。 ○山野目部会長 藤野委員,よろしいですか。 ○藤野委員 損害が継続しているのでそれ以上発生しないようにする,ということも,防止するため,と読むということですね。 ○大谷幹事 今,実際に生じている損害の原因を除去することが可能だと考えております。 ○藤野委員 承知いたしました。ありがとうございます。 ○山野目部会長 及び,又は及ぶおそれがあるときという法制上の表現をもって,及んでいるとき及び及ぶおそれがあるときの両方を包含するという趣旨であって,今,大谷幹事からもそのようなお話を差し上げたものであります。ここはよろしいですかね。   先ほど松尾幹事がお手をお挙げになっておられました。どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。お尋ねと意見と一つずつ申し上げたいと思います。   お尋ねしたい点は,部会資料39の第1の1では甲案,乙案,丙案とございましたが,今回の部会資料49における甲案の提案は管理措置権と構成されている点で,部会資料39の第1の1の丙案を展開したものと承りました。   ただ,それと一つ違っているのは,「天災その他避けることのできない事由による」という要件が落ちています。これについてはどのような理由によるものかということをお尋ねしたいと思います。   それとの関係で,今回の提案は物権的請求権論との関係を意識した説明になっているように思われます。もっとも,相隣関係の規定は,物権的請求権で救済できないところを法律の規定でカバーするという関係にあるように思いまして,そのような観点から物権的請求権論との関係をどのように整理するのかということについては,検討の余地があると感じました。   例えば,管理措置権に類似するものとして,既存の規定としては,民法215条の疏通工事権がございますけれども,こちらの方は「天災その他避けることのできない事変により」という要件が付いている一方で,その場合には,高地の所有者が低地に立ち入って疏通工事,つまり,水流の障害を除去するために必要な工事をすることができるとされています。しかも,その場合は「自己の費用で」と定めていますので,高地の所有者がその工事をして,費用も高地の所有者負担とするということが明確になっているように思います。その際に,民法215条の疏通工事権は忍容請求権説に立ったものかどうかというような議論は余りしないのではないかと思います。   同様に民法216条の工事の請求権についても,こちらは物権的請求権の行為請求権説に立つものという説明によるというよりは,相隣関係上の一種のリスクの分配と負担の公平を図った規定であるというふうに理解できるように思います。そこで,管理措置権もこのような相隣関係上のリスク分配の観点から要件を整理するという方向を検討する必要があるのではないかと思います。   その観点から,管理措置権をまずは民法215条の疏通工事権の延長として考えていくと,民法215条が前提とする,不可抗力によって,自然流水の承水義務が果たされなくなっている状況において,物権的請求権によって解決できない部分を条文化しているという点を看過できません。この観点から見ますと,それを更に展開したものとして管理措置権の制度を検討するときには,不可抗力要件をどういうふうに見るかということは,部会資料39の第1の丙案との関係でもやはり検討が必要ではないかと思われます。この要件が今回落ちている理由は何かということを確認したいと思います。   今回の管理措置権が主たる場面として,典型的に想定しているところは何だろうかと考えますと,例えば,大雨とか,様々な理由で,隣地の木が倒壊しかかっているとか,隣地の土砂が自分の土地に崩れかかっているとか,そういうときに応急措置をしたいというような場面が考えられます。そういう場面で管理措置権を用いることを前提に考えますと,取りあえずは自分で立ち入って,自分の費用で工事をすることができる。しかし,それ以上の本格的な措置に関しては,物権的請求権で論じているような領域に入ってくるのではないかと思われます。管理措置権の制度については,そういう制度の位置付けもできるように思われます。そこで,ここで提案されている管理措置権をどういうふうに位置付けているのかということについて,確認させていただきたいと思います。   それから,先ほども指摘がありました「瑕疵」について,意見がございます。今回,瑕疵ということが要件に入ってきているわけですが,瑕疵については8ページの最後の段落で,民法346条や661条の用法を前提に御説明いただいておりますけれども,民法717条の土地工作物の設置または保存の瑕疵というものとの関係もどうも気になってくるところでありまして,やはり瑕疵というと,何か責任問題と結び付いてきて,誰がそれについて責任を負うんだというようなことがどうしても連想されてしまう気がいたします。   この管理措置権の制度を,瑕疵についての責任問題とリンクさせるべきかどうか,私はそこはむしろ切り離して,ここは誰に責任があるかという問題とは切り離したところで,先ほど申しましたように不可抗力で生じている危険状態を取りあえず自分で隣の土地に立ち入って応急措置をしたいというときに,現在では適切な制度がないので,それを管理措置権でカバーする必要があるのではないかと理解しました。   そういう観点から甲案を展開していくという前提に立ちますと,この「瑕疵」という要件は必ずしもなくてもよいのではないかと思います。その代わり,「天災その他避けることのできない事変により」というような不可抗力要件は入れてはどうだろうかと考えます。かつ,もし可能であれば,損害の発生を防止するため必要なということの前に,前回の提案にもありました,「自ら」とか,「自らの費用で」とか,費用負担についてまで踏み込んで規定することによって,物権的請求権論との役割分担を条文上も明確に整理しておく方がよいのではないかと思いました。   先ほど橋本委員から御指摘がありました,管理措置請求の乱発を回避するという視点は私も重要であると思います。その意味でも,管理措置権の要件をきちんと絞り込んでいくということに私は賛成であります。 ○山野目部会長 前段でお尋ねがありましたから,大谷幹事からお話を差し上げます。 ○大谷幹事 前回,部会資料39においては,甲案,乙案として,行為請求権に親和的なものを,丙案として,認容請求権に親和的なものをお示しをし,乙案と丙案が天災その他避けることのできない場合というような不可抗力の場合に限ったものとしてどうかということでお示しをいたしました。一方で,(注2)においては,今回の甲案に相当するものも掲げていたところでございます。   前回の御議論をお聞きしておりますと,物権的請求権について,占有訴権の規定が現行民法にあって,それも一つの根拠になるということで,不可抗力の場合に物権的請求権が生じないという学説はあるのかというような御指摘もございました。改めて考えてみますと,管理不全の土地,危険な土地への対応という文脈で考えたときに,前回の丙案のように,不可抗力に限って新しい規律を設ける理由はあるのだろうかと。不可抗力でなくても新しい規律を設けるということには一定の意義があるのではないかと考えまして,そのような趣旨で,今回の甲案は,物権的請求権に関する解釈については現状を変えない,そこに触れることなく,なお,管理不全の土地についての対応として意義がある規律としてどういうものがあるかということを考えまして,甲案というものをお示しいたしました。この甲案は,どのような原因で瑕疵が生じたかということについては問うていませんので,不可抗力の場合であってもなくても,この規律は使うことができるだろうと考えています。ただ,費用の負担については,物権的請求権の解釈の内容とバッティングするところがあるので,なかなか費用については規律を設けることが難しいのではないかということで,費用についての規律を置くことはしないという方向で提案を差し上げたというところでございます。 ○山野目部会長 部会資料を作成するに当たっての経緯の案内を差し上げましたから,松尾幹事,どうぞ,お続けください。 ○松尾幹事 ありがとうございます。今の大谷幹事から御説明いただきました,物権的請求権論との関係という点ですけれども,私はもしこれを相隣関係の規律として置くということであれば,必ずしも物権的請求権論のどの立場に立つということを明確にしなくても,規律を設けていくことができるし,そうすべきではないかと考えます。大谷幹事がおっしゃるように,物権的請求権論の特定の立場に立つものではないという点は私も全く賛成で,更に進んで,規律の要件,効果を明確にすることによって,物権的請求権論の特定の立場に立つものとは異なる,独立の規律としてこれを設けていくということも可能ではないかと思います。その例として,現行民法215条,216条のような例もあって,これは物権的請求権のどちらの立場に立つということとの関連付けは,私の不勉強かもしれませんが,余り議論としてはないように思われまして,むしろその規律が費用負担者も含めて明確になっていれば,それでよいのではないかと思った次第です。 ○山野目部会長 御意見は承りました。   大谷幹事,どうぞ。 ○大谷幹事 今の費用の点,不可抗力で生じた危険な状態について,それを除去する工事の費用負担をどうするかということは,中間試案の際からずっとお示しをしてまいりました。ただ,実際に生じる危険な状態の土地は,複数の土地との関係で危険が生じるということもあり得て,費用の負担のルールを,不可抗力も含めて,合理的に作るというのはなかなか難しいというところがございます。加えて,物権的請求権との関係もどう整理すればいいのかというのは難しいところがあるというところで,今回,費用の負担のルールを設けることについては,提案をしていないというところでございます。 ○山野目部会長 松尾幹事の御意見は受け止めておりますから,参考といたします。ありがとうございます。   道垣内委員,お待たせしました。 ○道垣内委員 どうもありがとうございます。松尾さんがおっしゃった瑕疵の問題,瑕疵という言葉の問題に関連することで,同じことを申し上げるのかもしれません。というのは,瑕疵という言葉がここのコンテクストで出てきますと,やはり717条における瑕疵というものとの親和性というのがあるような気がするのですね。そして,717条における瑕疵という概念を考えてみますと,これは不法行為の中の条文ですから,よく無過失責任だとか,何とか言われたりしますけれども,やはりそれは瑕疵を生じさせているということに責任があるというのが,根本的な責任原理として存在しているんだと思います。   しかるに,本日の案のコンテクストで申しますと,瑕疵であると評価できないとしても,自分の土地に隣の土地が原因で損害が及び,また,及ぶおそれがあるときというのは,何かできなければいけないはずだろうと思います。もちろんそれが不当な損害でなければならず,何らかの場合の限定は必要になります。例えば隣の土地に,これは建物ではないかもしれませんが,建物が建築基準法上,許される建物で,かつ受忍限度内である程度の日影ができるというふうな建物が建った場合にも,損害があることは確かですから,それで何かできるのかといったら,それはできないわけです。そのとき,瑕疵という概念で調整して,損害のところは単純に「損害」と書いておしまいにするという方法と,瑕疵のところは,そういった要件を書かないで,損害のところを「不当な損害」といった感じでして,そこで調整するという方法の両方があり得ますが,私は,瑕疵という概念のところで調整するというのは,先ほどの繰り返しになりますけれども,やはり土地の所有者の方の行為義務違反みたいなものを念頭に置いている方法だと思うのです。   今回はそうではなくて,不可抗力であろうが何であろうが,これは成立するということになると,やはり形容詞を付けて縛るのならば,それは多分,「損害」のところに限定修飾語を付けて調整するということが必要なのではないか。このままで条文化されますと,損害が具体的に生じているのに,瑕疵ではないというふうに言えれば,立入権限をストップすることができることになりそうなのですが,それはおかしいのではないかと思います。   そこで,限定して調整するための形容詞は,損害のところに在るべきであって,瑕疵という言葉は使わない方がいいのではないかというのが,私の意見です。 ○山野目部会長 御意見は承りました。次第に甲案の難しさが分かってまいりました。   佐久間幹事,お待たせいたしました。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。私は(注1)の案を支持し,甲案と乙案ならば乙案,甲案のみ単独では反対という立場で意見を申し上げます。(注1)のようなものを前提として甲案もありというのはあるかなと思うという,そういう意見を今から申し上げようと思っています。   まず甲案に反対の理由ですけれども,補足説明におきましては,簡単に申しますと,物権的請求に関する規定がないところ,前回までの案,(注1)の案を採るということになりますと,物権的請求を忍容請求とするような考え方に矛盾することともなり得るし,あるいは物権的請求権に関する議論と両立しない,そのため導入は難しいという,概略はそういうことであろうかとは思います。   先ほど松尾幹事が物権的請求の議論に必ずしも付き合う必要はないのではないかとおっしゃって,それは私もそうだと思っていて,ここは独立して考えておけばいいのではないかと思っておるんですけれども,物権的請求の考え方に付き合うとしましても,考え方は様々でありまして,その考え方の矛盾と見られることを避けたいということでありますと,甲案を採るとしますと,そもそも物権的請求自体が行為請求を含まない,また,行為請求には消極的であるととられるおそれもあるのではないかと思います。   つまり甲案を置きますと,この場面では物権的請求ではそもそも相手方に対応を求めることは難しい。甲案のように被害を受けている側が自分で対応すればよいというようにも受け取られかねないのではないかと思います。そうなったとすると,それはそもそも論としておかしいと思いますし,後でも申し上げますけれども,かえって問題の解決を遅くするのではないかと思っています。   甲案の基礎には,全体としては物権的請求権について様々な考え方があるということは触れられておりますけれども,どちらかというと,忍容請求にかなり配慮した考え方があるのではないかと受け止めます。しかし,前回も申し上げましたけれども,占有の訴えが可能である以上は,その占有の訴えも制限しない以上は,所有者は,占有を持たない場合を除いては,占有の訴えによって,妨害排除,占有ですと占有保持,あるいは妨害予防,占有保全の請求ができるはずだと思います。   補足説明の2ページの一番下には,216条につきまして,水流に関する工作物に限り,帰責事由のないケースを含んで工作物の所有者に義務を課しているというふうにされておりますけれども,この理解は少なくとも立法趣旨とは異なると思っています。   216条の規定は,所有者は占有の訴えによって普通対応可能であるところ,占有のない所有者もあり,例えば不法占有されている所有者ですけれども,この者にも請求を認めるという趣旨で置かれたもののはずです。   では,占有の訴えを制限するかといいますと,占有の訴えでは199条に妨害発生に備えて担保の提供を求めることができるとされているところから分かりますとおり,これは明らかに行為請求を認めるものです。占有の訴えができる場合を相手方に帰責事由があるときに限るとする考え方も学説の一部にはございますけれども,そこまでいきますと,我が国の民法の規定の前提を根本的に動かすことになるのではないかと思っています。   また,先ほど松尾幹事が215条のことを触れられましたけれども,215条は214条と対になる規定であると,元々は理解されていたはずでありまして,214条は自分の土地に自然に流れてきた水が来るのを妨げてはならない,要するに自分の土地で被害を受け止めろと,まず高地の所有者は言われていて,その高地の所有者に自分で受け止めろ,仕方がないとされているところを,低地で閉塞したときまで受け止めろというのはあんまりだということで,これは低地に立ち入って作業することができますよというふうにした規定のはずです。つまり,これは物権的請求とは何ら関係ないとまで言うと言い過ぎかもしれませんが,214条があるからこそ,置かざるを得ない規定だったと理解しています。こう考えますと,占有の訴え又は占有の訴えに関する規定と整合的に考えられる内容の物権的請求に問題を任せればよいというふうに全体として考えることができるのではないか。そういう立場を採れば,乙案でよいのではないか,甲案よりは乙案の方がいいと私は思います。   しかし,ここからが本当に申し上げたいことなんですけれども,国民に対する分かりやすさということを考えますと,不動産の管理不全の問題がこれだけ大きな問題となっているわけですから,(注1)のように,この場面で物権的請求とは切り離して,具体的な要件の下で,何ができるかということを規定する方がいいのではないかと私は思っています。占有の訴えとか,物権的請求というのは,それはできることはできるんだけれども,占有の訴えというのはかなり抽象的でありますし,そういう言い方をしていいのかどうか分かりませんが,地味な規定のような感じがします。   また,物権的請求に至っては規定がないというわけですから,国民に対する分かりやすさという観点からすると,これは松尾先生も先ほどおっしゃいましたけれども,相隣関係上の規定として,土地所有権の行使を妨げる,又は妨げるおそれがある事象に対しては,何をすることができるのか,妨げる事象の横行している方は何をしなければいけないのかということを明らかにする方がよいのではないかと考えています。   もう一つ,次に出てくる管理不全土地,建物管理命令の制度の関係からいたしましても,(注1)の案のようなものを置いておく方がいいのではないかと思っています。管理命令の制度は他人の土地に妨害又はそのおそれが生じた場合に妨害者の側が積極的に対応しなければならないということを前提にして初めて成り立つ制度だと思います。命令の方では,管理不適当によって,妨害があるということを要件と現状はされておりますけれども,これは後でも申し上げるつもりではおったんですけれども,妨害発生の原因が管理不全にあるという場合に限るのではなくて,妨害継続に対処しないことも管理不全に当たるという理解で,その場合には発動があり得るという制度にすべきだろうと思っています。   そういたしますと,妨害状態の継続の場合には,妨害者は対応しなくてはいけない。継続している場合には対応しなくてはいけないのに,それが起こった直後は何もしなくていいかのように見えるのは,好ましくないのではないかと思っています。   そもそも,自分の方は何もしなくていいんだなというふうに妨害をしている原因を作っている側から,受け止められますと,結局,相手が対応してくるのを待っていて,問題の解決が遅くなってしまうということにつながるのではないかと思っております。 ○山野目部会長 御意見を頂きました。ありがとうございます。   次に御発言なさるのはどなたでしょうか。部会資料49について御議論をお願いしているところです。   ここまでお出しいただいたところで,(注1)に示している案についても関連して若干の御議論がありましたが,主に甲案を中心として,甲案そのものの成立可能性,適否に始まって,仮に甲案でいくとする際の甲案の中身,文言の選択,要件の整備等について,種々の御指摘を頂いているところであります。   ほかに御議論がおありでしょうか。いかがでしょうか。   吉原委員,お願いします。 ○吉原委員 私は専門的なことは何も分からないのですけれども,甲案のような,こうした隣地で不適切なことが発生しているときに関与できる法的な根拠が設けられるということには賛成をいたします。   ただ,今,先生方の話を伺っていまして,これは隣地の側から見るか,あるいは所有者の側から,マイナスが発生している,あるいは発生するおそれのある土地の所有者の側から見るのかによって,権利の保護の在り方の問題が,見え方が随分違うのだなと思いました。その意味で,財産権あるいは所有権の観点から,この管理措置請求制度がどう位置付けられるのかということも関心を持ったところです。   それから,(注2)で,ほかの土地に立ち入るための手続については,部会資料46の規律を参考に引き続き検討するとありますけれども,46の規律というのは,飽くまでも隣地の使用の承諾を求める規律ということで,今回の管理措置請求制度とはまたかなり違う側面もあると思いますので,この立ち入るための手続ということが是非丁寧に議論されるとよいのではないかと思ったところです。 ○山野目部会長 ただいま吉原委員から,論点を整理するような仕方でおっしゃっていただいたことを受け止めて申しますと,第17回会議において御審議を頂いた所を踏まえて,冒頭にも申し上げましたように,本日,部会資料49の甲案でお示ししているような方向が,少なくとも一つの有力な選択肢として考えられるところではないかということでお示ししているものではありますけれども,しかしながら,ここで甲案として示しているものは,確かにこの損害を受け,又は受けるおそれがある状態になっている土地の所有者から見ると,こういうことができると述べられておりますから,納得感が直ちに得られる規律ではありますけれども,吉原委員がおっしゃったように,この権利行使を受ける側の視点に立ってみると,立ち入ってきて,工事をされるという状況に置かれるものでありまして,その状況は,その人の立場に立ってみると,それは尋常ならざることであります。やむを得ずそういうふうになるならば,それは受け止めてもらわなければなりませんけれども,そこの要件の絞りは適切にされなければならないのでありまして,要件の絞りという際には,内容,実質に関わる要件の絞りと,それから,手順に関わる要件の絞りと,両方をきちんと考えなければなりません。内容の絞りとの関係で申しますと,道垣内委員の御発言にあったように,瑕疵という言葉で絞って,そこに修飾,限定を付けて絞っていく方法に加えて,及んでいく損害という観点から絞るということも有力にあり得るというアイデアを頂き,いずれにしても,実質の要件をこのままして進むということは,立ち入られる側の立場に立って見ると,ある意味では恐ろしいことになってくるかもしれないわけでありまして,そこの規律をうまく仕組むことができるかという課題がございます。   また,手順の関係から見ても,そのことを本日の資料では,(注2)で簡単に示しております。簡単に示しているというのは,事務当局のさぼりではないのでありまして,本日,仮に乙案ではなくて,甲案で進むというふうな方向が見えてきた際には,そこの規律の仕込みは権利行使を受ける土地所有者の側とのコミュニケーションも含めて,かなり細密に組まなければならないものでありまして,そのときに全く同じになるかどうかはともかくとして,部会資料46などにおきまして,隣地使用権について,既にこの部会の調査審議の過程でコンセンサスが得られつつあるところを参考にして,所有者に対する催告であるとか,急迫の事情がある場合の催告の省略による立入りであるとかいったようなことを,規律の細密度を上げる仕方で整備していかなければならないと,そのことを忘れないようにして,御案内するために(注2)を添えているところでございます。   これらの実質,内容と手順の両面に関わるハードルを乗り越えたときに,社会経済上,存在する需要に対する一つの回答として,甲案のようなアイデアが成り立つものであると考えられますけれども,裏返して言いますと,そういう所についての難点がどうしても明解な解決を得るということがかなわないということになってくるのであれば,本日,資料でお示ししているものでいきますと,乙案にならざるを得ないということにもなるものでありまして,本日,委員,幹事からもおおむねそういうふうな問題意識が大事であるというお話を頂いているものと感じます。   もう少しこの部会資料49についての御議論をお願いしたいと考えますけれども,いかがでしょうか。   松尾幹事,お願いします。 ○松尾幹事 ありがとうございます。先の議論に続けて,補足的に申し上げたいと思います。   今,山野目部会長が御整理くださったとおりだと私も考えておりまして,甲案を,要件・効果についてしっかり絞らないと,やはりこれを規律することは難しくて,限りなく乙案の方に流れてしまうのではないかということを心配いたします。   翻って,所有者不明土地に起因する様々な問題の中で,しばしば指摘された典型的問題として,隣地が所有者不明状態で,木が倒れそうになっている,今度台風が来れば倒れるかもしれない,あるいは崖が崩れるかもしれないといった例があります。そういうときに,現行制度ではなかなか使いやすい手立てがなくて,不在者の財産管理人を選任するといった方法しかないという中で,何か適切な措置が採れないかという素朴な問題意識があったように思います。   それに対して,今回の民法の見直しの中で,何がそれに対応できるだろうかと考えますと,一つはこの後に出てきます,管理不全土地管理人の制度が考えられます。もっとも,これは裁判所に管理不全土地管理人の選任を要求しなければならないという手続を必要とします。そこで,それと併存する形で,とりあえず何か措置ができないかということを考えたときに,管理措置請求あるいは管理措置権の制度が使えるとするのであれば,要件をしっかり絞り,不明土地所有者の必要以上の所有権侵害を回避する形で,しかも効果についても,所有者の所有権行使を妨げない範囲で何かできないかという観点から,甲案をうまく絞り込んで育てていくという観点が重要であると思います。この観点から考えますと,先ほど道垣内先生がおっしゃった要件について,損害のところをしっかり絞っていくということ,それから,もう一つこの損害の発生を防止するために必要な工事ということについても,絞り込みが必要であると思います。例えば,隣の土地の崖が崩れそうになっているということで,この損害を受けそうな土地の所有者がしっかりした石垣を隣地や境界線上に作ってしまい,俺が費用負担をするからいいではないかということで,余りに余計なことをされてしまうようでは,これはちょっとやり過ぎだろうと思うわけです。   その一方で,今のままだと危ないし,所有者もなかなか見つからないので,取りあえず自分で応急措置をしたいんだというときに,暫定的な措置は,損害防止のために必要な限りで自らすることができるということが,必要になると思われます。   それで,本格的な問題解決は,先ほどちょっと申しましたけれども,まずその所有者を見つけて,その者との間で物権的請求権を行使するなりして,片を付ける問題ですけれども,そこに行くまでの制度的なつなぎがなかなかないので,それを作る意味があるのではないかと考えます。そういう観点から,要件・効果についての言葉遣いについては更に詰める必要があると思いますけれども,コンセプトとしてはそういうようなものとして,甲案を育てていく余地があるのではないかと考えます。   それとの関係で,先ほど吉原委員がおっしゃった部会資料49の5ページの「エ 具体的な実施方法」の所にあります,他の土地に立ち入る際の手続ですけれども,これについては,やはり事前通知等をしなくてもよいのか,部会資料46の第1に準じた手続が必要かどうかという問題提起がされています。しかし,これについては,管理措置請求権,あるいは管理措置権の制度的な位置付けを,今申したように,本格的な管理を求めるまでの一つのつなぎと考える観点からは,できるだけ使いやすくするという意味で,必ずしも公告手続や請求の手続というのは得なくてもいいのではないかと考えることもできるように思います。しかし,その分だけ要件・効果をしっかり絞っていくということが考えられるのではないかと思った次第です。 ○山野目部会長 松尾幹事に整理していただきましたとおり,甲案でお示ししているものをざっくばらんに言いますと,少し大きめに作るといいますか,いろいろな場面にかなり幅広く用いることができますということになっていく場合には,工事をするなどの権利行使をするに当たっての立ち入られる側の土地所有者との間のコミュニケーションのところの規律をかなり重装備にしていかなければなりません。209条の隣地立入権の場合すら,きちっと催告とか公告とかいったようなものに実質的に近いものをしてくださいという方向でお話が進んでいて,そちらの工事のために立ち入るときにもコミュニケーションが要るのに,もっとどんどん入っていって,やらせてもらえますよというときにはコミュニケーションが要らないということでは,バランスとしては説得力のある話になりませんから,そういうふうに大きなサイズで作るときには,この手順の所をしっかり議論しなければいけないという度合いが高まります。   半面,松尾幹事から示唆を頂いたとおり,そういうふうに甲案を大きめに作るのではなくて,何と申したらよろしいでしょうか,急迫といいますか,緊急といいますか,そういうふうな状況において,とりあえずこの被害,損害を被る側の当事者が自分ですることができるという規律を考えるということでありますれば,その土地所有者との,立ち入られる土地所有者の側とのコミュニケーションについて,気を遣わなければいけない度合いが相対的に下がりますけれども,今度はそうなってきますと,乙案で行ったときの物権的請求権を本案とする民事保全の制度との役割分担であるとか,あちらで話を賄うことができるという程度をにらんだ上で,新たに甲案のような仕組みを設けることがどこまで切迫,緊要なものとして要請されるのかといった辺りについて,今度は目配りが必要になってまいります。こういった悩ましい位置にこの論点は置かれているということを松尾幹事の示唆で整理していただきました。ありがとうございます。   佐久間幹事,お願いします。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   甲案で行った場合に,私は少しイメージがうまくできないところがあるんですけれども,まずこれが管理不全の土地であるということは,瑕疵という言葉を使うかどうかはともかくとして,前提となるわけですね。そうすると,管理不全の土地が隣にあって,自分の土地が迷惑を被っているとなると,迷惑を被っている側の人の普通の反応は,あんた何とかしろということだと思うんです。あんた何とかしろと言われることが,占有の訴えや物権的請求では通るだろう,多くの場合,不可抗力で物権的請求の一部の考え方によると,どうなのかなということはあるかもしれないけれども,占有の訴えだったら,多分できるし,そういう極めて限定的な状況を除いては,あんた何とかしろというのは,それは通るはずだと。ところが,そのあんた何とかしろと言ったけれども,らちがあかないとなったときに,甲案の出番がやってくるんだと思うんです。今までは甲案のようなことができなかったので,その部分については甲案が機能するというか,役割を発揮するというか,力を発揮するということになるのだと思うんですけれども,そうすると,迷惑を掛けている土地の側からすると,いや,知らぬ存ぜぬというふうに言っていると,最後,不法行為によって損害賠償請求されたならば,費用は結局そちらから出るということになるんだけれども,被害を被っている側からすると,もう一回訴訟して,何とかしなければいけないというふうになる。そのような状況になるんですよということを甲案というのは含んでいると思うので,本当にそれでいいのかなというのが,僕は疑問に思っているところです。   それで,もう一つ,部会長がおっしゃっている,あるいはほかの皆様がおっしゃっている,手続が大事ですよというのは,そうなのかもしれませんけれども,今のような状況を考えると,209条の場合は,立ち入られる側の土地の所有者は別に他人に迷惑を掛けているわけでもなくて,立ち入りたい土地の所有者の方が自分の都合で立ち入りたい,だから何とかしてくれというのに対して,こちらは本来は自分が何とかしなければいけないところをしていないからこそ,立ち入らせろというふうに要求されている人で,侵害の度合いというか,介入される度合いが強くなるというのは,ある意味当たり前だと思うんですね。それが嫌だったら,自分で何とかしろと,妨害を除去しろということになると思うので,そういう意味では(注2)のような,隣地使用権の規律が参考にはなるんだろうと思いますけれども,あちらほど丁寧にしなくてもいいのではないか,この甲案の要件をそこまで絞り込む必要はないのではないかと思います。   もし逆に,甲案を前提として,甲案だけ置きます,隣地使用権の規律を参考に立入りの要件を厳しくしますというふうになると,何だかものすごく逆のメッセージといいますか,侵害している側が放っておいたっていいんだよと,侵害されている側が何とかするんだから,というふうなメッセージにもなりかねないのではないかと思います。先ほど申し上げたのと基調は一緒なんですけれども,以上です。 ○山野目部会長 よく分かりました。ありがとうございます。   引き続き御意見を伺います。いかがでしょうか。   特段の御発言が,更なる御指摘としてお持ちの方はおられないでしょうか。   もし御発言がないようでありますれば,本日ここまで頂いた御指摘を踏まえて考えまするに,まずこの甲案と乙案という仕方でお示ししているところについては,既に委員,幹事から多くの御指摘を頂いて,繰り返しませんけれども,甲案で示している内容,実質にわたる立入り,予防工事を自らするという権利の行使についての要件の実質的検討を踏まえた上での言葉の選択が問われます。瑕疵であるとか,損害であるとかいったものについての言葉の選択について,更に考え込んでいかなければいけないという課題がありますとともに,(注2)のところで留保しておりますように,仮に甲案のようなものを採用するということになった際には,この立ち入られることになる土地所有者との間でどのようなやり取り,段取りを経た上で,権利行使をしていくことが適切であるかということについて検討しなければいけない。このことの検討の必要があるということ自体は,委員,幹事の間で広く認識が共有されたものではないかと感じます。(注2)の所では,あるいは,その(注2)の補足説明においては,一応,隣地立入権について,これまで検討してきたところを主要な参考にするという案内を差し上げているところでございますけれども,ただいまの佐久間幹事のお話をお聞きしていると,単純に隣地使用権についての規律をこちらにコピーしてくればいいという話でもない。そういうことをしたときに,帰結が何かおかしくなるというような側面がないか注意をしてほしいという御指摘もあったところでありまして,それらも踏まえて,更に検討していくということになります。   なお,更に申し添えますと,そのようにして甲案でうまく規律の立案が成り立たないということになりますと,乙案に赴くことになりますとともに,付け加えますと,(注1)でお示ししている方向について,本日,委員,幹事からは余りたくさんの御意見は頂きませんで,第17回会議の議事の様子を踏まえると,それも理解するところでありますとともに,佐久間幹事からは,なお,(注1)の方向での提案を考えていくことの相当性というものがあるという御指摘も頂いたところでありまして,(注1)についても引き続き,仮にこの(注1)に示しているような案を採用するということになった場合には,その中身を整えなければなりませんし,(注1)のような方向はもう考えないということになる際には,今度はどうしてそういうふうな解決になるのかということについての説明を用意しなければならないということもございます。   本日,委員,幹事からお出しいただいた所を踏まえて,ただいま申し上げたような観点から議事の整理に努めるということにいたします。   部会資料49について,このようなことで次回以降の会議において,御審議をお願いしてまいろうと考えておるところでございますけれども,49との関係について,何か特段の御指摘が残っておられますでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,部会資料49についてお願いする審議をここまでといたします。   部会資料50をお取り上げくださるようにお願いいたします。部会資料50におきましては,まず管理不全土地管理制度を採り上げております。これにつきましても,部会資料39でお出ししたものの骨格を保ち,第17回会議で御指摘いただいたところを種々反映させて整えたものをお示ししております。1ページはこの制度の骨子をお示ししているものであります。   2ページから3ページにまたがって,太い文字で管理人の権限等についてお諮りをしています。これも部会資料39で御提案申し上げたところと大きくは変わっておりません。1点のみ,委員,幹事の皆様方に御審議を頂きたいところを取り立てて申し上げることにいたしますと,3ページの上の方,②の柱書のところにおきまして,第三者保護の主観的要件を単に善意とするか,善意かつ無過失とするかというところについて,鍵括弧を付けて,留保した上で,お示ししているところでございます。   この局面は,管理人が自ら法律行為として行うことになりますから,表見代理とは性質を異にいたします。表見代理と性質が全く同じであれば,表見代理の規定,規律の定めるところに従って,主観的要件の処理をすればよいことでありますけれども,それとは異なる局面でありますところから,改めて規定を起こすという仕方での提案をしているところでございますが,しかしながら,局面の構図が表見代理とかなり近接する面があるところも確かであります。表見代理と同じにするということであれば,善意かつ無過失ということになりましょうし,しかし,必ずしもそのようにする理論的必然性がないということになれば,単なる善意ということになるものであるかもしれません。そのようなところから悩ましい点でありますゆえ,このような仕方で部会資料をお示ししておりますところですから,委員,幹事の皆さんから御意見を頂きたいと考えます。   6ページの方に参りますと,この管理人の義務,それから,解任,報酬についての提案を差し上げ,管理命令の取消しについての提案も添えてございます。部会資料39でお示ししたものをここで改めて御提示申し上げています。   7ページの方に進んでいきますと,今度はお諮りする制度が変わります。管理不全建物管理制度という制度の創設について御提案を差し上げているものでありまして,建物について何と申せばよろしいのでしょうか,独立型といいますか,土地とは別に管理命令の対象とすることができるという趣旨,骨格の制度を提案しているものでございます。   土地と建物とを分ける必要もないと考えられますところから,部会資料50の全体につきまして,すなわち管理不全土地管理制度と管理不全建物管理制度の両方についてお気づきの所を御随意に御発言いただくということをお願いいたします。   中村委員,お願いします。 ○中村委員 まず今回の管理不全土地管理制度につきまして,本制度の適用場面として主に想定されていますのは,所有者が実際に利用していないというケースで,本文(1)①の要件を満たし,かつ,所有者が管理人による管理処分に同意する,又は明確には反対していないケースであると理解しましたが,これを前提としてよろしいでしょうか。その上で,日弁連のワーキンググループでは,管理不全土地管理制度では現に所有者が判明しているので,所有者が反対している場面では,訴訟手続を通して物権的請求権等を行使するというのが適切とも考えられるため,本制度は限定的ではあるけれども,今回想定されているような場面で働けばよい,本制度を利用できない場合はほかの制度でいくというのは一つの方向性として理解できるものであって,これには基本的に賛成するという意見が比較的多数ございました。   他方で,資料49で検討しました管理措置請求制度を仮に新たに設けないとする乙案となる場合は特に,管理不全土地,管理不全建物管理制度が何とか有用性を持つように具体的かつ限定的な要件設定の下で,所有者が反対していても,管理人が選任され,かつ,場合によっては処分までできるという作りにできないものかという熱心な議論もございました。   どちらの方向で行くにしても,発令の要件と判断基準が明らかになっている必要があると考えます。補足資料の4ページを拝見しますと,所有者が実際に利用していないこと,また,所有者の意見が重要な考慮要素になるということが記載されておりますけれども,本文(1)の要件からは,そのことが重要な判断基準になっていることを読み取るのは困難だろうと思います。   これがあらかじめ分かってないと,申立人は本制度を利用できると期待して申し立てたのに,実は利用できなかったというようなことにもなりかねませんので,あらかじめ何らかの形で重要な判断要素が明示されているような作りにした方がよいのではないかと考えました。   それから,本文(2)の管理不全土地管理人の権限等について申し上げますと,第17回のときの資料39では,管理人の権限は基本的には保存行為と利用改良行為であり,裁判所の許可を得れば処分行為も可能という作りになっていましたけれども,今回の①は管理人は土地,動産,財産全体につき権限を有するということを示すためにこのような書きぶりになっているかと推測いたしますけれども,①が先に挙がっていることで,管理人はいわゆる処分行為について権限を有するのが原則であるかのように読めなくもない気がいたします。その場合には,②のただし書における信頼の対象ですとか,過失を要求するとして,過失の内容などに影響が出てくる可能性がありはしないかという気もいたしましたので,趣旨が前回と変わらないということであれば,書きぶりを工夫いただければと感じました。   先ほど部会長から御指示のありました,第三者保護の要件についてですけれども,善意だけでよいか,無過失を要求するかということについては,意見が分かれておりまして,必ずしもどちらというふうには申し上げられない状況です。無過失を要求するべきだという意見もありましたし,要求しないという意見もございました。   それから,本文(3)管理不全土地管理人の義務等について申し上げます。アの義務の部分につきまして,所有者のために善管注意義務を負うという記載になっておりますが,本制度は,所有者不明土地管理人等と異なり,現に判明している所有者の管理が不適当である場合に管理人となるということが想定されるので,ほかの制度と比べて,管理人と所有者との意見の対立ないしは意見の相違が生じて,管理人が難しい局面に立つ可能性を想定しておかなければなりません。4ページの補足説明にありますように,所有者の意見を重要な考慮要素と見て,所有者が管理人選任に反対しているような場面は選任に至らないというのであれば,ある程度対立場面は限定されるかもしれないのですけれども,選任後に所有者と管理人の意向が対立するなどの事態になった場合に,所有者に対して善管注意義務を負うと明記されておりますと,所有者が不満の表明の手段として善管注意義務違反を根拠に管理人を訴えるというようなケースが出てくる可能性も考えておかなければならないと思われます。   この点に関しまして,第17回の部会で松尾幹事からその旨の御懸念が示されていたと記憶しております。この際,松尾先生からは,あえてこのような注意義務の規定を置かないという考え方もあり得るのではないかという御示唆があったと思います。管理人に選任されて,所有者が管理人に対立している,あるいは非協力的であるというケースで,客観的には合理的で相当であるけれども,所有者の意には添わないという管理を行わざるを得ないという場合に,管理人がその所有者に対して善管注意義務を負うというふうに書くことの意味というのをここでもう少しはっきりさせておけたらよいかなと考えております。   それから,最後に管理不全建物管理制度についてですけれども,これは管理不全土地管理制度と基本的に同様の意見でした。ただ,管理人に就任した場合,建物の管理の場面の方がより困難が予想されるのではないかという指摘が出ていました。(3)の区分所有法との関係の御提案に関しましては,異論はありませんでした。 ○山野目部会長 弁護士会の御意見をお取りまとめいただき,ありがとうございます。また,幾つか御意見を具体的に頂いた点についても承りましたから,この後の委員,幹事の意見交換に反映してもらえるものと期待します。   引き続き御発言を承ります。いかがでしょうか。   佐久間幹事,お願いします。 ○佐久間幹事 ありがとうございます。   まず1ページの1の,先ほど少し申し上げたことなんですが,本文の①に関しまして,「所有者による土地の管理が不適当であることによって」というのが,この原因のようになっているところが気になりました。管理の不全,あるいは不適当が原因で他人の利益を侵害することになるということももちろんあると思いますけれども,不可抗力に当たるようなもので,侵害状態が生じた,あるいはそのおそれが生じた場合に,適切に対応しないということ,そういう例も適用場面として入ってきていいのではないかと思います。その場合,「によって」だとちょっとそこまで読めるかどうか分からないので,もし私が申し上げたような場合が入ってきてもいいということであるとするならば,表現を工夫していただけると有り難いと思います。   2点目は,先ほど中村委員からお話のあった2ページの管理人の権限のところなんですけれども,私はこの①と②の並びでいいのではないかと思っています。管理人は処分まで含めて全部権限はあります。だけれども,②で保存,管理を超える変更行為には裁判所の許可が要りますと,そこで制限がかかりますと。その制限について,この②,一,二に当たる行為であるかどうか,あるいは裁判所の許可があったかどうかについて,実はなかったという場合に,善意又は善意無過失の第三者は保護されるんだと。そういうことでよいのではないかと,私は思っています。   その上で,善意無過失なのか,善意なのかということにつきましては,私は善意でよいのではないかと思っています。   その理由ですが,裁判所によって選任された管理人の権限に対する信頼は,ここもやはり裁判所がかむことはかむので,厚く保護されていいのではないかと思うのが第一です。   第二には,保存等の許された行為かどうかの判断が,相手方は素人であることもあるわけでして,微妙な場合もあると思います。そのときに,管理人も判断を誤ることはあるはずで,その管理人の判断の誤りについて,基本的には一体いずれが不利益負担すべきか,相手方と所有者のどちらに不利益を負担させるべきかというと,私は所有者でいいのではないかと思います,ここでは。所有者はそもそも自分がすべきことをしていないという状況にある人なわけですから,その判断が微妙になるというような場面では,所有権の保護がやや後退するということがあっても,やむを得ないのではないかと思うというのが2点目です。   3点目は,そうはいっても相手方は,自分は善意なんだということは立証しなければいけないということにはなるんだろうと,この考え方だとなると思います。そうすると,そこで,相手方は自分には保護されるべき相応の理由があるんだということをある程度明らかにすることを求められるので,相手方の保護に偏することにはならないのではないかと思っております。   第4に,今まで申し上げたことを総合してということにはなるのかもしれませんが,保護されるために相手方に無過失までもし求めますと,行為が無効になり得る範囲が,結局は広がるということとなりまして,管理人が権限内の行為をするに当たって,慎重になり過ぎるということも恐れられるのではないかと思います。以上の理由から,私は,無過失まで要求する必要はないのではないかと思っております。   それから最後に,次は6ページの(3)の所なんですけれども,善管注意義務についてです。中村委員がおっしゃったこともなるほどとは思うのですけれども,所有者の意向とやや対立的なところがあるからこそ,逆に,所有者の利益を図るべく善管注意義務を負うべきだと私は思います。ここでいう「所有者のために」というのは,所有者の意向どおりにやりなさいということではなくて,所有者の利益を害しないというか,所有者の利益も適切に守るように,しかし,すべき管理をしなさいという趣旨で,管理者には注意義務が課されるのではないかと思います。   それで,私が申し上げたようなことを表すに当たって,現状の文言がいいのかどうかが問題になるかもしれません。私はこれでいいのではないかと思いますけれども,いや,不適切だというお考えがあるのであれば,そこは対応していただく必要があるんだろうと思います。けれども,だからといって,義務規定をなくすというのは,それはよろしくないと私は思います。 ○山野目部会長 それぞれの論点についての意見を頂きました。ありがとうございます。   藤野委員,お願いします。 ○藤野委員 ありがとうございます。   今回部会資料50で出していただいている管理不全土地の管理制度及び管理不全建物の管理制度,いずれも非常に合理的な内容の規定として提案いただいているのではないかと思っておりまして,基本的には賛成でございます。当初,この管理不全土地の管理制度に関しては,暫定的な制度,一時的な管理のための制度とする,というような話も部会の最初の頃にあったかと思うんですが,今回拝見する限りでは,所有者不明土地の管理制度と同様に,ある程度の期間の管理を念頭に置いたものになっているのかなと思っておりまして,先ほど部会資料49で議論した管理措置請求制度との関係で申しますと,管理措置請求制度では,暫定的というか,ある程度,緊急性の高いものを対象にした上で,更にある程度期間をおいてじっくり対応すべきというものに関しては,この管理人を選任して行う制度を用いる,というようなすみ分けで,バランスを考慮して制度を組み合わせるのが一番よいのではないかなと考えておるところでございます。   そのような観点から,部会資料50の制度について見ますと,やはり管理人に選任された方がある程度安定的に業務を行えるというような形がやはり望ましいのかなと思っておりまして,先ほど来,善管注意義務に関する議論等もございますが,正に今,佐久間先生がおっしゃられたとおり,管理者による権限行使の内容を,ダイレクトに所有者の意向に反するかどうかだけで見てしまうと,こういう場面ですから,どうしても対立している,所有者の意向に反している,というふうになりがちなんですが,結局ここで大事なのは,管理不全の土地や建物が,管理不全が放置されることによって最終的には周りに被害を与え,結局,所有者にとっても大きなダメージになるというところを防ぐというところにあると考えていますので,例えば,所有者との利益相反の話にしても,最終的にはそういう形で所有者がダメージを被らないように何をするかというところを判断基準とする,ということを明確にして,どういう形で明確にするかというのはあるかと思うんですが,その上で,そういう価値判断の下で管理人の権限が行使される限りにおいては,今の規律で十分よろしいのかなと思うところでございます。   あと,処分行為ができるかどうかという論点につきましても,仮に裁判所からの許可を得ないで行った場合の話だったとしても,余り簡単にその効力が否定されるということはやはり避けなければいけないというところはあるように思います。選任の時点で裁判所の判断が入っているということと,飽くまでその土地のために何が必要かという観点から行われることなのだと思われますので,そういった意味では管理人の権限行使が安定性をもって認められ,制度が運用されるという形の規律とするというのが望ましいのではないかと考えております。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   続きまして,山田委員,お願いします。 ○山田委員 ありがとうございます。   管理不全土地管理制度の前提にある考え方がよく分からないので質問させていただきます。中村さんの御発言などに所有者との関係というものが触れられていました。所有者が,この管理不全土地に関心を持っていない,あるいはこの管理不全土地管理制度が立ち上がったときに,それに関心を持っていないということであれば,この制度はうまく意義を持って動くだろうと思います。   しかし,所有者がこの土地について関心はあるけれども,不適当な管理が行われているとき,あるいは,確かに最初の管理を命ずる処分を裁判所がするときには,所有者の陳述を聴かなければならない旨の規律が検討されていますので,これでカバーできると思うのですが,この段階ではまだ所有者は関心を持たなかった場合において,しかし,その後で管理不全土地管理制度が動きはじめ,その立ち上がった管理不全土地管理制度について,消極であったり,反対の方向で意見を持っているとき,どうなるのかなと思いました。   そうしますと,管理不全土地管理人の解任ができるか。多分,これは今のような事情だけではできないのだろうと思います。管理不全土地管理人が第三者と,処分も含みますが,例えば請負契約を結んだというようなものを解除できるか。当所有者は解除できないのだろうと思います。しかし,費用は所有者が負担するという状況に置かれます。そのとき,所有者の元々管理が不適当だったのだし,最初に裁判が行われるときに,意見を発言する機会があったのだからと,その後はやはり,管理不全土地管理人に任せないといけないのかということです。しかし,他方で所有者は所有者としての権限がありますから,所有者が何もしないのならば,この管理不全土地管理命令の制度によってカバーされるのでしょうけれども,積極的に,例えば別の方法で保存行為をしようとか,あるいは利用改良を管理不全土地管理制度の管理人とは別のことをしようとすると。その権限は,所有者としての権限ですから,この制度では妨げられていないと理解しました。そういうことが生じたときに出てくる問題について,この制度はうまく動くのだろうかという心配が出てきました。事務当局でお考えがあればお聞かせいただきたいと思います。 ○山野目部会長 山田委員から頂いたお尋ねについて,大谷幹事から説明を差し上げます。 ○大谷幹事 ありがとうございます。   今のところは,部会資料でいいますと,5ページの必要な処分のところに少しお書きをしております。所有者が最初は無関心で,陳述の聴取をした時には何も反応がなかったが,管理人が選任されてから急に関心を持ち出したという場合にどうするかということでございますけれども,一つの考え方としては,その所有者がきちんとした管理をする方向であれば別にいいわけですけれども,管理人が適切な管理をしようとするのを邪魔してくるということであれば,管理人と土地所有者の関係では,管理権が侵害されるということで,妨害行為の禁止を求めるということも可能なのではないかなと考えて,ここのところで書いておるところでございます。   その後,結局この対立がひどくなってしまって,うまく管理ができなくなり,管理人の選任状態を継続していくことが相当でないということになると,解任というよりは,命令の取消しをすることによって,管理人との関係をなくすということが考えられるのではないかと思っておりました。 ○山田委員 分かりました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。   続きまして,中田委員,お願いします。 ○中田委員 要件について,整理した方がいいのではないかと思います。   現在出ている要件が四つあって,所有者による土地管理の不適当,これは佐久間幹事が批判されましたけれども,これが一つ目。   それから,それによる他人の権利,利益の侵害,又はそのおそれ,それから,三つ目として,必要性,そして四つ目として相当性があるんだろうと思います。   ただ,相当性の要件については,ここには出ていませんで,命令の取消しに関する(3)のエから導く,これは部会資料39の当時からそうだったと思います。この四つの要件があるにも関わらず,三つしか表に出ていなくて,相当性と必要性との関係が余りはっきりしないということもあるので整理した方がいいと思います。   恐らく,開始時の要件と存続要件との違いということで出ていないのかもしれませんけれども,取り分けこの制度が,所有者が利用している場合も含めて考えているのだとしますと,その要件を整理した上で,どこが問題なのかということを検討する必要があるのではないかと思います。   更にその上で,中村委員のおっしゃいましたように,それぞれの判断要素を考えていくというのは,その次の段階として必要ですけれども,まず最初に要件を詰めるということかなと思いました。 ○山野目部会長 中田委員,ありがとうございます。   宮﨑関係官,お願いします。 ○宮﨑関係官 御指摘ありがとうございます。おっしゃっていただいたようなことを要件とすることを考えてございました。相当性の要件についてはっきりと書かれていないのではないかという御指摘かと思いますが,今回,要件の書きぶりを一部書き改めているところがございまして,従前「管理していないことによって」としていたところを,御指摘があったことも踏まえまして,「管理が不適当であることによって」と修正しております。管理が不適当であって,更に必要性も認められるような場合であれば,普通は相当性というのも満たしていると考えられるのではないかと思われましたことから,ここでははっきりと書いてはございませんが,当然そういうものも含意しているということでございます。 ○山野目部会長 今,宮﨑関係官から説明を差し上げたことについて,更に中田委員の御意見を承る事項があれば,承りたいと考えるところでありますから,この部会資料の1ページの(1)①を見ますと,中田委員も御指摘のとおり,「必要があると認めるときは」という文言が,これ自体を要件として掲げられているわけでございます。宮﨑関係官が今,説明として申し上げたのは,その表現そのものではありませんけれども,ここで「必要があると認めるときは」ということの内側,意味の内包の一つとして,相当であると考えられるときはということも含意しているという趣旨の案内を差し上げました。ここはやや言葉の選び方が難しいところがあって,悩ましいものでありまして,必要があって,かつ,相当と認めるときは,という文言にはしづらいと感ずるところもあるものですから,中田委員にお教えいただきたいものですけれども,中田委員に御指摘いただいた4要件が実質において備わっていなければいけないということについて,恐らく異論はないだろうと感じられるところであるとともに,この手続を始めるときの入口の要件をどういうふうな文言表現していったらよいかということについて,何か御提案の御教示いただくことがあれば,お話を承って,この後の議事の整理に努めてまいるということにいたしますけれども,何かおありでしょうか。 ○中田委員 私の方から積極的にということではございませんですけれども,例えば4ページの第3パラグラフの4行目に「相当性を欠く」ということが出ております。ということはやはりこれは必要性とは別に相当性という要件を考えておられるのだろうなと想像いたしました。   ところが,その関係が余りはっきりいたしませんので,まずそこを整理することが必要だと思いました。私の方でこうだというふうに御提案できるまでには至っていないのですけれども,まず何を考えているのかということを分析して,整理するということが必要だろうということでございます。 ○山野目部会長 よく分かりました。次回以降の会議におきまして,この太字でお示しするところの内容をもう少し精密に補足説明で対応が図られるような仕方で御案内していかなければいけないと感ずるものであります。中田委員,御指摘,誠にありがとうございました。   引き続き御意見を伺います。いかがでしょうか。   蓑毛幹事,お願いします。 ○蓑毛幹事 ありがとうございます。   管理不全土地管理制度,管理不全建物管理制度,いずれもですが,賃借権など権限を有する者がこの制度の対象となる土地または建物を占有している場合にどうなるのかということが気になります。前回の部会資料39では補足説明の中で,そういった賃借人がいる場合であっても,管理不全土地管理制度の対象となり得るということが簡単に書いてありましたが,今回の部会資料では,この点について触れられていません。   そこでまず,今回の提案では,対象となる土地または建物に賃借人がいる場合であっても,1ページの1(1)あるいは,7ページの2(1)の要件を満たせば,管理命令は発令され得るのかということを確認させてください。  その上で,仮にそうだとすると,ここまで様々議論があったとおり,この制度においては,管理人の権限と所有者の所有権とのぶつかり合いをどう調整するかという問題が起こるのですが,それだけでなく,管理人の権限と賃借人の賃借権とのぶつかり合いをどう調整するのかという問題が起こるように思います。   具体的に申し上げると,管理人は,土地または建物の保存行為をするため必要があれば,賃借人に何も落ち度がなかったとしても,その賃借人の占有を排除して,修繕などの保存行為ができるのでしょうか。更に進んで,仮に所有権者が承諾すれば,管理人は土地又は建物を売却するなどの処分行為ができるか,あるいは建物であれば取壊しまでできるのか。賃借人がいる場合に,それはさすがに行き過ぎのように思いますが。   また,仮にそうであれば,管理命令発令の際の陳述を聴く対象として,所有者だけではなく,占有している賃借人等の意見も聴くべきではないかなど,賃借人がいる場合を想定して,管理人の権限と賃借権との関係を整理して検討する必要があるのではないかと思いました。 ○山野目部会長 蓑毛幹事から大事な御指摘を頂いたと受け止めますから,今,お尋ねの形式でお話がありましたゆえ事務当局の発言も求めることにいたしますけれども,その前段階の整理として,蓑毛幹事において話題としておられる状況を確かめさせてください。この土地の賃借人がいる際に,その場合であっても1(1)①の要件を充足すれば,管理命令を出すことができるかという問いの前提として,要件としては,土地の管理が不適当であることを満たさなければいけないものでありますけれども,お話になっているのは,この土地を賃借して,土地を現に使用している賃借人による土地の管理が不適当であるという局面をおっしゃっているものでしょうか。それとも,そうではない何かをイメージしておられての御質問でありましょうか。あるいは,その辺りを全部ひっくるんだ上で,賃借人がいる局面についての体系的なまとまりのある説明をひとまず求めておきたいというお望みでいらっしゃるかといった辺りについて,何かお考えがあったらお話しいただければ,事務当局において,幾分答えやすいものではないかと感じますけれども,いかがでしょうか。 ○蓑毛幹事 ありがとうございます。あまり整理せずに,賃借人がいる場合と申し上げたのですが,部会長がおっしゃったとおり,様々なケースがあろうかと思います。   例えば,土地について言えば,実際に使用している賃借人がごみを廃棄するなど,賃借人自身の管理が悪いために管理不全の状態になっている場合もあれば,不可抗力によって,土砂が崩れ落ちそうな状況になっているのに,所有者として,あるいは賃貸人として,対処すべき土地所有者が適切に対処しないために,土地が管理不全になっているという場合もあると思います。建物も同様で,賃借人自身の管理状態が悪いために,管理不全になっていることもあれば,修繕義務を負っている所有者・賃貸人が適切な対応を採らないために,危険な状態になっていることもあろうかと思います。この程度で,質問にお答えしたことになりますか。 ○山野目部会長 どうもありがとうございます。お話が相当明瞭になってまいりました。今,蓑毛幹事に更に明解に整理していただいたところを踏まえて,今,事務当局の考えを尋ねますけれども,そういたしますと,お話の本質というか,サイズが蓑毛幹事はやや遠慮気味に,場合によっては賃借人の陳述も聴かなければいけないのではないかというようにおっしゃってくださいましたが,ひょっとすると,陳述を聴く相手を加えようという手続の次元の話にとどまることではなくて,今,うなずいていただいておりますが,そもそも手続の内容,実質といいますか,事件がどういう性質のものとして係属するかということに関して,所有者に対して発せられている命令になるか,賃借人あるいは賃借権に対して発せられる命令になるかといったようなところまで立ち戻って検討しなければいけない問題が隠されていますという,そういうサイズのお話を御指摘いただいているものであるのかもしれません。何か私は,事務当局が答えやすくしようと思って整理したつもりですけれども,どんどんハードルが上がっていって,かえって答えにくくしているかもしれませんが,どうぞお話しください。 ○大谷幹事 ありがとうございます。   管理不全土地管理あるいは管理不全建物管理については,以前は,所有者が現に使用していないなどの要件を求めるなどの提案をしておりましたけれども,無関心で管理不全状態にしているというところを中心的なターゲットとして,土地所有権に制約を掛ける,あるいは建物の所有権に制約を掛けるということを考えておるところでございます。賃借人がいる場合も,正に蓑毛幹事に整理していただきましたけれども,賃借人がいて,普通に使っているというときで,管理不全土地制度,管理不全建物管理制度というものが使えるかというと,普通に使っているのであれば,通常は考えられないところでございまして,最もありそうなのは,賃借人は法律上いるけれども,賃借人は実際には使用収益をしていなくて,土地の所有者と賃借人と,一応,法律上はそういう関係があるけれども,土地,建物の管理状態が悪くなっているというケースではないかと考えられるところです。   管理不全土地になってしまっているということで,前回の資料から,賃貸借されている場合でも,土地の適切な管理がされていない場合には,要件を満たし得る,管理人の選任がし得るというところで,所有者ができる限度では,管理人も管理の行為ができるということになるのかなと思われるところでございまして,それ以上に,賃借権それ自体についての管理制度を設けることまでは考えていないというところでございます。   要するに,土地について賃貸借契約がある場合でも,土地の所有者による管理が不適当な状態になっているのであれば,管理人が選任され得て,その土地の所有者に代わって,所有者ができることについて管理人がするということになるのかなと思っておりました。 ○山野目部会長 蓑毛幹事のお話の続きがあれば伺いますし,今,道垣内委員がお手を挙げになっていらして,その話をお聞してから,また蓑毛幹事にお話しいただくことでもよろしいですが,いかがいたしますか。 ○道垣内委員 私の話は今の話につながりません。賃借人以外の話ですので,どうぞそちらの方をお進めください。 ○山野目部会長 分かりました。   それでは,蓑毛幹事,今のお話の続きでもし御発言があるならば伺っておきたいと考えます。 ○蓑毛幹事 ありがとうございます。   今の大谷幹事の御説明でだいぶイメージが湧いたのですが,そうすると,特に管理不全建物管理制度の方が気になるのですが,非常に古くて適切に修理がなされていないために,危険な状態にある建物であっても,そこに賃借人が現に居住している場合は,この制度は使えないということになりますか。このような場合に,この制度を用いる必要性は高いと思うのですが。あるいは賃借人が同意すればできるのでしょうか。 ○脇村関係官 ちょっと場面があれかもしれませんけれども,この資料ではあれですが,アパートなり,一軒家について,所有者とは別に住んでいる人がいらっしゃるケースについて,恐らくその建物をメンテしないといけないのは,建物所有者だろうと思いますので,当然,所有者としてやるべきことを怠っていたケースについては,これが発動し得るんだろうなということは想定していました。ただ,もちろん中に人が住んでいらっしゃいますので,その賃借権を不当に侵害してはいけないという意味では,それは所有者がやれる限度というのは当然あるわけですけれども,いるからといって,必ず制度が使えないというわけではなくて,先ほどお話しさせていただきましたのは,所有者が適切にやっていないと,評価できるというケースに限られるのかなという趣旨で賃借人が怠っているとしか言えないケースなどは,当然に発動しないということだろうと思います。 ○蓑毛幹事 そうすると,今のようなケースでは管理命令を発令し得るけれども,管理人は賃借人を排除して修繕行為ができるわけではなく,賃借人と話合いをした上で,賃借人が了解して,同意をすれば,その範囲で保存行為ができる,こういう理解でよろしいですか。 ○脇村関係官 そういう意味で,所有者ができることは,代わりにできるとしか,言えないということで,賃借人の権限を何か当然に奪うとか,制約するということは想定していなかったということです。 ○蓑毛幹事 分かりました。 ○山野目部会長 今しがた御議論いただいた局面も含めて,蓑毛幹事に問題提起いただいた事柄というものは,幾つかそれに隣接する多様な局面も含めて整理をしなければいけないと感じられるところでありますから,ただいま意見交換をしていただいたところも踏まえて,更に整理を進めることにいたします。どうもありがとうございます。   道垣内委員,お待たせしました。 ○道垣内委員 ありがとうございます。   賃貸人の話ではないということから始まったのですが,今,最後の会話で若干気になりましたのは,脇村さんの方から,所有者ができることができるんだと,それを超えてできるわけではないというご説明があり,たしかに,それは超えてできるわけではないのは当然なのですが,例えば民法の606条の2項のような,賃貸人が賃貸物の保存に必要な行為をするときに,賃借人はこれを拒むことができないといった,これは所有権に基づくものか賃貸人たる地位に基づくものかはにわかには分かりませんけれども,606条2項というのが,管理人が出てきたときにも当然に適用されて,賃貸人の地位の所に管理人が付くのかというのは,私はかなり怪しいような気がするので,そう簡単ではないのかなという気がします。これは実は言おうとしていなかったことであります。   言おうとしておりましたことは,山田さんのおっしゃったことに関連するんですが,山田さんが所有者の意思を尊重すべきかどうかという話をされたときに,この制度においては,所有者が悔い改めて自分で何かの行為を始めたとして,その行為というものが制限されるわけではないという,そういう話をされました。それはそのとおりだと思います。   しかるに,それの山田さんの御発言に対する恐らく返事となる,回答となる文脈において,管理人がある行為をしようとしているときに,所有者がそれを妨害するということになったりすると,それについては管理人が排除できるのではないかということをおっしゃったような気がするんですが,それはちょっと問題と回答がずれているような気がいたします。所有者もやると,所有者がただ単に妨害していると,自分はやらないんだけれども,妨害しているというときに排除できるかという問題と,自分はこっちの方法でやるというふうに言っているときに排除できるかという問題は全然違う問題でして,そのときに,どちらがよりよいのかというふうなことで決まるのではないのだろうと思うんです。所有者がやる行為というのが,例えばそれをやっていれば,管理不全土地管理人の選任が行われるような状態にはならないのであれば,そのような行為は認められるべきですよね。所有者が緑色のペンキを塗ろうとしているとき,いや,そこは赤ですよなんて言って,ほかの人が赤に塗れるかというのは,それは塗れないわけで,ちょっと話がずれているのではないか。   したがって,この5ページの所に妨害するというときには排除できるんだというふうに書かれるのは,もちろんそれはそれで正しいので結構なんですけれども,若干の説明,どういった場合にはそういうことができるのかということをもう少し丁寧に書いて,山田さんが御指摘になったようなシチュエーションとは違うんだということは明らかにする必要があるのではないかという気がいたします。 ○山野目部会長 道垣内委員に今,御注意いただいた点について,大谷幹事や宮﨑関係官から何かお話がおありですか。 ○大谷幹事 ありがとうございます。山田委員の御発言に対して,私も管理人が選任されたけれども,土地の所有者が自分できちんと管理をしたいと言って,管理行為をするということ自体は妨げられない,当然だろうというふうにお答えをして,その上で,私が申し上げたのは,不当に拒むというような場合には,ここに書いてあるとおりの管理人の管理権侵害だということで,妨害禁止を求めることができるわけですけれども,そうでない,不当だとまでは言えないような,所有者として,当然やりたいことをやりたいというのであれば,それはもちろん管理人が妨げられるものではないと考えられますので,少しここの説明について,更に検討したいと思います。 ○山野目部会長 思い起こしますと,部会資料50の6ページの所で,その題材になる事柄が幾つか提示されておりまして,最初に御発言いただいた山田委員は,そこのイの管理人の解任などを題材としながら,所有者が最初無関心であったところが,やがて自分なりの考えを抱いて,土地管理について関心や情熱を抱くようになってきたときの,その動きということ自体は受け止めてあげなくてはいけないけれども,それが直ちに管理人の解任事由になるわけではないでしょうと,この辺の所をどういうふうに整理されるものでしょうかというお尋ねをしてくださいました。それに対して,大谷幹事などから差し上げた回答は,私も道垣内委員がおっしゃるように,最初,妨害されたときは管理人が排除するというところからお話が始まりましたから何かかみ合っていないなという気分は抱いたものでありますけれども,最後は大谷幹事のお話が,そこのページでいうと,イの話ではなくて,エの話になって,管理を継続することが相当でないという事態になることがあり得ますということでした。すなわち,管理人が進めようとしている管理と,言わば立ち直った所有者が描いた管理構想とが衝突をし,また,その衝突を起源として,両者の間に摩擦が管理の現場で生ずるような事態を見たときに,裁判所が終局的に管理を継続することが相当であるか,ないかということを判断するという仕方で問題は解決されていくでしょうという案内はひとまずしてくれたものです。多分それをしてくれたから,山田委員としては話が分かりましたとおっしゃっていただいたものと受け止めました。   更にお話は続いていて,このエの所に焦点を置いた大谷幹事の説明を発展させて,中田委員からは,このエの所で手続を終わらせる要件としての相当性ということが出てくるということを認識しながら,言わば手続の入口の要件の所の太字の提案や,それに関連して補足説明の説明ぶりとの整合性等についてもう少し注意をしてほしいという御指摘があったと感じます。   道垣内委員から,今のお話の全体の進み具合について,更に整理,御注意を頂きました。ありがとうございます。   引き続きいかがでしょうか。   松尾幹事,どうぞ。 ○松尾幹事 ありがとうございます。   この管理不全土地管理人の権限の範囲について議論が続いていますけれども,所有者不明土地管理人の管理権との関連で少し整理したい点を確認したいのですが,所有者不明土地管理人の権限については,第18回会議の部会資料43で改めて整理がされました。その際,所有者不明土地管理人の管理命令が下された範囲内では,所有者不明土地管理人に管理権限が専属するということで,例えば,その土地に関する訴えについては,管理人が原告となり,あるいは被告とすることができるという定めの提案がされていたと思います。   それとの関係で,管理不全土地管理命令が下された土地について,何らかの訴えがあったときに,誰を被告とするのか,あるいはこの管理不全土地命令が下された土地について訴えを提起するときに,管理人が原告となって訴えを提起することができるのはどこまでの範囲かということについて,確認したいと思います。この場合も,管理不全土地管理人の管理権限の範囲内では,管理人に当事者適格があるという理解でいいかどうかという点の確認です。   それから,それとの関係でもう一つは細かな点ですけれども,先ほど山野目部会長からも御紹介がありました,今回の部会資料50の3ページの②の管理不全土地管理人が権限外の行為をした場合の効力について,第三者保護要件が善意か善意・無過失かということとの関係で,管理不全土地管理人の権限外行為の性質が,これも所有者不明土地管理人のように,権限外行為の性質が無効だというふうに判断するのかどうかです。これについては,表見代理との関係で考えると,確かに表見代理の場合には代理人として合意しているのに対し,管理不全土地管理人の場合には自らの名前で合意しているという違いはありますが,権限外処分であるという点は大きく違わないのではないかという点も気になります。そこはむしろ相手方が,管理人に権限があると信じる正当の理由――それは善意かつ無過失と一般的に解釈されていますが――があったときには保護されるというような110条との関係をどう整理するかという点も問題になってくると思われます。この点は,先ほど佐久間先生の御指摘で,管理不全土地の方は所有者の帰責性が高いこと,裁判所による選任があることという要素をどう考慮するかという御指摘もございましたけれども,そのことと併せて,この権限外行為の性質をどう解釈すべきか,所有者不明土地管理人の権限外行為との関係をどう整理するかという点と合わせて,それについてお考えがあれば伺いたいと思います。 ○山野目部会長 前段と後段とそれぞれお尋ねがありました。大谷幹事からお話を差し上げます。 ○大谷幹事 前段の方は,これは部会資料39の17ページの下の方で書いておりました。管理不全土地管理人の場合には,当然に土地所有者の代理人になったり,担当者になるわけではないということで,所有者本人がいることが前提になりますので,その訴訟は御本人が基本的にやるということ,少なくとも第三者との関係ではそういうことになるのかなと考えております。   それから,善意なのか善意無過失なのかというと,正に松尾幹事の御指摘のとおり,不在者財産管理などの他の制度において,表見代理の規定が適用されると整理される部分との関係ということがあろうかと思います。善意とするのがいいのか,無過失とするのがいいのかというところで,今回,ブラケットの形で皆さんの御意見を聞いてみようと思ってお出しをしたところですけれども,松尾幹事からの御指摘もありましたように,善意というふうに整理するには,佐久間幹事から4点ほど御指摘いただきましたけれども,あのような根拠が確かに考えられるなと思っているところでございます。 ○松尾幹事 部会資料39の17ページから18ページの記述については,私も確認いたしました。   その上で,この管理不全土地管理人の権限内の行為について,もし何か問題があって,その問題があってというのは,第三者の行為との関係で問題があって,例えば,第三者からの妨害を排除したいと考えるときには,管理人としては,その場合には所有者の名前で訴訟を提起してもらうとかということになるのか,その場合にはどういうふうに問題を処理すればいいのということについて,少し不透明というか,もやっとした部分があるように思いまして,そこはどういうふうに処理することになるでしょうか。 ○山野目部会長 松尾幹事がおっしゃっているものは,どういう訴訟ですか。 ○松尾幹事 例えば,管理不全土地管理命令が下されて,管理不全土地管理人が管理をしているときに,その土地所有権を侵害するような第三者の行為があった場合に,それを排除したいというときに,なかなか話合いで解決が付かないというような場合には,どういう形で解決することができるかということです。 ○山野目部会長 部会資料が前提とする考え方が,何か説明があればお話しください。 ○大谷幹事 今のは恐らく管理人が管理を開始してから,その管理を妨害する人が出てきているというようなケースかと思いますけれども,その場合には管理人の管理権が侵害されているということで,管理人自身がその名前で請求していくこと,妨害排除請求という形になるかなと理解をしておりました。 ○松尾幹事 そうであれば,私も異論はございません。 ○山野目部会長 分かりました。ありがとうございます。   ほかに御意見はいかがでしょうか。   佐久間幹事,お願いします。 ○佐久間幹事 全然勘違いしているかもしれませんけれども,大谷さんが今おっしゃったことは,結論としては管理人が排除できていいと思うんですけれども,その妨害排除の基礎となる権利は何なんでしょうか。所有者だったら,所有権に基づいてとかできると思うんですけれども。占有ですか。 ○大谷幹事 部会資料の6ページに書いておりますけれども,管理処分権というのが与えられるので,その管理権の侵害なのかなと思っておったのですけれども。 ○佐久間幹事 そうなのかもしれませんけれども,行為に対して妨害があったら,妨害排除って,差止めなんですか。 ○大谷幹事 差止めですね。そうですね,失礼いたしました。 ○山野目部会長 部会資料の現在の補足説明の書き方が確かに御指摘のとおり,必ずしも十分にはなっていないかもしれないですけれども,改めて考えますと,確かに松尾幹事から御指摘があったように,こちらの管理不全土地管理制度の管理人は,所有者の持っている権能を全部,管理人の方に移すという,つまり権限を専属させるというものではありませんから,所有者の持っている権限が100だとすると,100丸々管理人に移るわけではありませんけれども,半面におきまして,本来は所有者が管理をするためにしなければならない所有権の権能の,それが100のうちの60か80か分かりませんけれども,その一部を管理人が行使する権限に移すという帰結が裁判所の管理命令という裁判によって,その形成的な効果として与えられているということになりましょうから,管理人がそのしようとしている土地の管理の行為を妨害されたときのそれに対する当該妨害しようとする第三者に対する不作為の請求は,本来,所有者がすべきものであって,所有権に基づく妨害排除請求権の本質を持ち,しかし,この制度の下でのやや特殊な表れ方をした権限行使であるというふうに整理しようとすれば,整理していくことになるかもしれません。   ただし,確かに部会資料の書き方が,そこをやや整理し切れていないところがありましたから,今の御指摘も踏まえ,更に説明を整えていくことにいたします。ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。次の御発言が出るまで,いささか私の方から法制的な悩みの関連で,一,二お話を差し上げて話題提供をさせていただくとすると,二つ申し上げますけれども,一つは1ページの佐久間幹事から御指摘があったところですが,1(1)①の「管理が不適当であることによって」のこの「よって」ですけれども,佐久間幹事がおっしゃるとおり,確かに法制的に従来の言葉遣いの理解としては「によって」というのが出てくる個所は,因果関係の要件を要求しているものでありまして,それも特段のことを言わなければ因果関係が存在するという側が主張立証しなければならないと理解されてきたところであります。例えば,民法709条には「によって」という言葉が2回出てまいりますし,あれはいずれも不法行為の成立要件としての因果関係のある側面をそれぞれ表現しようとしていて,賠償請求をする被害者の方で主張立証をしなければならないと考えられているところでございます。そのような理解の記憶の上に,ここに「によって」という言葉が入りますと,管理命令の申立てをしようとする側が,因果関係の煩瑣な,あるいは重い説明を要求されることになって,必ずしもそれは良い結果に結び付かないものではないかという御心配を頂いたところでありまして,御心配そのものは誠にもっともな所でございます。   ございますけれども,ここの局面は,いささか他の表現を工夫することが難しいですね。そこで,もしかしたら,更に法制的な検討を加えますけれども,この「よって」という文言を,こういうふうな今の仕方で用いながら,ここの局面は民法709条のような損害賠償の帰責原理が問題となっている局面ではございませんから,あれよりはもう少し緩やかな自然的な因果の説明として成り立っていれば,管理が不適当であることから,このような制度を用いることがよいでしょうという柔軟な運用の理解の下での因果関係の考え方をしてもらう趣旨で用いているというふうな説明をしていって,この文言を用いさせていただくということもあるかもしれません。法制的に悩ましいところです。   それから,今度は中村委員に御指摘いただいたところですけれども,管理人の権限の2ページから3ページの所の(2)が,①が先に出てきて,②が後に続くと,読む人に誤解を与えるものではないかという御心配も,内容は誠にそのとおりですけれども,ここも不在者財産管理等,従前のこの種のところは,このような書き方になっているものですから,これを②のように絞りますという方向から説明した規定ぶりそのものをそうするということについて,内容として御指摘いただいていることは誠にそのとおりでございますから,きちんと説明していくということは少なくとも必要であろうと感ずる次第であります。弁護士会から御意見を頂いたそうですから,また弁護士会の先生方との御議論を続けさせていただければ有り難いと存じます。   以上,御案内を差し上げました。垣内幹事,お待たせしました。 ○垣内幹事 どうもありがとうございます。   先ほど佐久間幹事と山野目部会長との間であったやり取りに関係してなんですけれども,また方向整理をされるということなので,それで結構かと思いますけれども,仮に管理人が何か差止めないし妨害を排除するために,訴訟上,手段を講ずるという場合に,それが所有権の権能の一部を行使しているのだと文字どおりに捉えたといたしますと,その訴訟,例えば訴訟であれば,訴訟において,まず所有者の所有権から主張,立証して,それで管理命令があって,自分が管理権があってというような主張,立証の構造を考えるということになるのか,それとも,管理命令が出ているということでもう尽きていて,元々その所有者が真の所有者なのかどうなのかというようなことは差し当たり問題にならないと整理をするのか,その辺りについて,元々管理命令そのものの効力として,所有者とされていた人が本当はそうではなかったということが後に判明したときに,どうなるのかというような問題もあるのかもしれませんけれども,併せて整理をしていただくとよいのではないかという感想を持ちました。 ○山野目部会長 ありがとうございます。垣内幹事から御指摘いただいたことを事務当局に引き続き検討してほしいと思いますし,今,何か所見があれば聴取しておきたいと考えるものであります。垣内幹事から御注意があったように,管理人が管理行為として何かしようとしていることに対し,妨害を受けたときに,妨害をしないでくれという不作為の給付を請求する訴訟を起こすときに何を主張していかなければいけないか,原告は管理命令を得たという事実を主張すればよいか,それだけでは足りなくて,原告が管理命令を得た件に係る本件土地は,管理命令の宛先であるこれこれの者が所有するという事実を更に添えて言っていかなければならないかといったような辺りが悩ましいと感じられるところであります。   現段階で事務当局の方から何かあればお話しください。 ○宮﨑関係官 御指摘ありがとうございます。ご指摘の点をそこまで明確に意識していたわけではございませんが,今回の制度は,土地に着目した管理制度ですので,誰に土地の所有権が帰属しているかということは余り問題にならないのではないかとは考えてございました。その意味では,今,垣内幹事にご整理をいただいた中では,後者の管理命令が出ていることで足りるという考え方に近いのかなと考えてございます。 ○山野目部会長 引き続き検討いたしますけれども,垣内幹事として,更に何か追加で御注意いただくことはおありでしょうか。 ○垣内幹事 特にはないんですけれども,もし管理命令が独自にお受けになるということですと,佐久間先生が言われた疑問に対する応答をどうするのかということについて,更に検討されることになるのかなというように感じたところです。私からは差し当たり以上です。 ○山野目部会長 ありがとうございます。事務当局で更に検討いたします。   佐久間幹事からお出しいただいた御疑問は,管理人が自ら妨害行為を排除していくときの根拠として,何が考えられるかということでした。よく考えてみないと分かりませんけれども,一つの方法としては,所有権の権能の一部であるかもしれないというふうに仮に押していくときのその所有権というものは,例えば,いろいろな考え方があると思いますけれども,これこれの特定の者に帰属している所有権ということではなくて,所有者は必ずいるはずですから,その抽象的に存在する所有権ないし所有者の権能の一部を行使しているという説明をするとした上で,垣内幹事から御指摘のあった点についても,それを受けての説明をしていくか,それとも,それとは異なる整理の上で,主張立証しなければならない事実についても,それに整合するような説明をしていくかといったようなことについて,事務当局において引き続き検討することにいたします。ありがとうございます。   沖野委員,お待たせしました。 ○沖野委員 すみません,部会長が法制的な悩みとしておまとめくださった点で,法制的なことであれば,特に意見は必要がないのかなと思ったんですが,ちょっと思いつきを申し上げたいと思います。   1点目につきまして,1の(1)の①ですけれども,佐久間先生のおっしゃった天災等,不可抗力によって状態が生じ,しかし,所有者は何もしないというような場合が果たして「所有者による土地の管理が不適当であることによって」と言えるのかという点につきましては,何もしないという期間がどのぐらいかということにもよるかと思いますけれども,幅広に捉えるならば,何もしていないということを捉えて,不適当であると考えるということは十分できるのではないかと思いますけれども,しかしながら,原因,結果の関係ということが厳密に追及されるおそれがあるということだとしますと,ここからが思いつきなんですけれども,現在問題となっているのは,ある土地自体によって,他人の権利や法律上の利益が侵害されている,あるいは侵害されるおそれがあると,そういう状況であるにもかかわらずといいますか,そういう状況下で所有者は何をしているかというと,適切な管理をしていないという,そういう局面において,必要があるというときには請求によって,一定の処分,この管理を命ずる処分ということですが,それができるということだとしますと,例えばですけれども,そのある土地によって,他人の権利又は法律上の利益が侵害され,又は侵害されるおそれがある場合において,当該土地の所有者による土地管理が不適当であるときは,裁判所が必要があると認めるときは,利害関係人の請求によりこれこれというような表現も考えられるのかなと思いまして,全くの思いつきですので,適切かどうか分かりませんけれども,もし今後考えていかれるということであれば,あるいは参考にしていただくといいのかなと思いました。もちろん所有者不明土地の書き方ですとか,いろいろなほかの規律との整合性とかはあるとは思うんですけれども,思いつきだけ申し上げたということです。 ○山野目部会長 ただいま沖野委員に出していただいたアイデアは,卒然と耳で伺いましたが,耳に心地よく美しく響き,大変よく分かりました。ご提案のことも一つの候補として,更に法制的な検討を進めるということにいたします。どうもありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。建物管理の方についても御意見をお出しいただければと望みます。それでもいいですし,そうでなくても結構ですが,松尾幹事,お願いします。 ○松尾幹事 すみません,先ほど佐久間幹事,垣内幹事,それから山野目部会長の間で整理された管理不全土地管理人のその行為を妨害する第三者に対する訴訟手続の問題ですけれども,例えば,土地の賃借人の妨害排除請求のような問題もございますので,これについては,管理不全土地管理人の管理権限の行使の範囲内では,その管理人に管理行為の妨害を排除する限りでは,それをめぐる訴訟の原告又は被告となることができるというような規定があった方がいいのではないかとも思います。   所有者不明土地管理人については,既に部会資料43の中で所有者不明土地に関する訴えについて,所有者不明土地管理人の当事者適格についての定めも置かれていますし,それから,所有者に対して提起された訴えとの関係についても規定の整理がございますので,そういうこととのバランスで考えると,管理不全土地管理人についても,そういう定めがあってもおかしくないのではないかと思った次第です。 ○山野目部会長 松尾幹事の御提案を検討することにいたします。既に皆様御案内のとおり,所有者不明土地管理制度の方につきましては,管理人の権限が専属するというパワフルなものであるということを踏まえ,それと論理必然の関係があるものでは必ずしもありませんけれども,それとの見合い等も意識しながら,原告となり,又は被告となるという規定が置かれているところでありまして,同じ格好の規定を管理不全土地管理命令の制度の中に置いたときに,管理人の権限の差異との関係で,置いたときの得失,置かないときの得失等について,総合的に検討するということになろうと予想します。御提案を頂きありがとうございました。   畑幹事,お待たせしました。 ○畑幹事 畑でございます。   今の話,難しい問題だと私も思っておりますが,少し違う所です。6ページの(3)のウの管理不全土地管理人の報酬等という所ですが,その①の所にアンダーラインがある「管理不全土地等から」という,これはアンダーラインがあるだけに,今回入ったような気がするのですが,これが何を意味するのかがちょっとよく分からないような気がしました。以前の話ですと,実際は申立人が費用を予納して,そこから払うのだろうというような話になっていたと思うのですが,「管理不全土地等から」と入れることが,今の予納の話としっくりくるのかどうかというところをちょっと教えていただければと思います。 ○山野目部会長 事務当局から説明を差し上げてください。 ○宮﨑関係官 従前,畑先生からは所有者不明土地管理制度の方で,この報酬等の規律については御質問,御意見を頂いておりました。御趣旨としてはこの「土地等から」という文言を入れてしまって,それ以外の財産に対して掛かっていけるのかどうかということだと思いますが,今回この文言を入れた趣旨は,そこを限定する意図があったわけではございません。元々の提案では②の規律を置くことはしていませんでしたが,途中で所有者不明土地の方についても②のような規律を入れておりまして,このように土地等の「所有者の負担とする」という規律がありましたら,一般的に費用については,その対象となっている土地等以外の所有者の財産に負担させることができるということは②の中で読めるのではないかと考えておりました。   ①については,費用の前払いですとか,報酬を受けることができるという規律なんですけれども,実際,管理の最中に費用の前払いなどをするとしますと,今,御指摘のあった予納金などの中から支払うことになろうかと思われますので,①では「管理不全土地等から」という文言を入れているものです。これがあったとしても,②があれば,ほかの財産に掛かれるということは読めるので,差し支えないのではないかと考え,このような文言へと今回表現を修正させていただいたものでございます。 ○脇村関係官 先生すみません,脇村です。   予納の関係なんですけれども,イメージとしては,予納金が納まっただけでは当然組み入れられていないわけなんですけれども,予納されたものをある意味,倒産ですと破産財団に組み入れますが,この管理人の得た財産というものを組み入れて,そこから払うというイメージで,予納はそういう意味で裁判所の判断の後で組み込まれていくことを想定して,予納金を考えておりました。 ○山野目部会長 畑幹事,どうぞお続けください。 ○畑幹事 今お伺いしたところだと,実質的に考えていることにずれがあるわけではなさそうですが,この言葉で適切に表現されているのか,ちょっと引き続き気にはなりますので,言葉遣いの問題だと思いますが,御検討いただければと思います。 ○山野目部会長 ありがとうございます。畑幹事がお感じになった懸念というか不安な気持ちというものは,何かちょっとこれは不安ですね。   佐久間幹事,どうぞ。 ○佐久間幹事 御指摘があって実は私も不安に思ったんですけれども,①は報酬が入っていますけれども,②は報酬が入っていませんよね。このことからすると,報酬は2ページの(2)①のここに定義されている管理不全土地等からしか取れないように何か見えますけれども,宮﨑さんの御説明だと多分報酬も所有者の財産一般から取れるんですよね。そうすると,②も少なくとも要した費用及び報酬はとかというふうにしていただいた方がいいのではないかと思います。 ○山野目部会長 ①に「管理不全土地等から」と入れることの適否,それから,①,②で費用は両方出ているけれども,報酬が片方に出ていないということの不ぞろいが何を意味するか,あるいは誤解を与えるものではないかという,これらの点について,少し文言を整理していただくというお話になるものでしょうか。今日のところはそういう整理でよろしいですか,事務当局においては。 ○大谷幹事 ありがとうございます。ここのところ,①の方で裁判所が,管理人が管理しているものを含めて,支払を命ずることができるようなものを①の方で規定して,それ以外のものを②でということを考えておりましたけれども,今,御指摘のあったように,ちょっと文言に工夫を要するのではないかというような御指摘が複数ございましたので,再度検討させていただきたいと思います。 ○山野目部会長 この点は更に検討することにいたします。ありがとうございました。   次に御発言いただく方はどなたでしょうか。御案内申し上げましたように,管理不全建物管理命令の制度についても御意見がおありであれば,仰せいただきたく存じます。いかがでしょうか。   土地,建物それぞれについて何か御指摘をまだ頂いていないことがあれば承りますけれども,どうでしょうか。   特段ないというふうに受け止めてよろしゅうございますか。   それでは,部会資料50について,御相談を差し上げたように,管理不全土地管理制度,それから,管理不全建物管理制度のそれぞれについて,委員,幹事から多くの有益な御指摘を頂いたところでございます。これらを踏まえて,次の機会にこれらの制度について更に整えた提案を差し上げるように努めることにいたします。   本日は部会資料49及び部会資料50についての審議をお願いいたしました。委員,幹事の御協力のお陰をもちまして,内容に関わる審議をここまでといたします。   事務当局から次回の会議等についての案内を差し上げます。 ○大谷幹事 御案内いたします。次回の日程は11月10日の火曜日,3週間後になります。また,午後1時から終了時間未定という形で,一応6時まで会場は確保するということにしております。場所はまた元に戻りまして,地下1階大会議室になります。次のテーマですけれども,現時点においては,要綱案のたたき台をそろそろお示しする段階になってきているかなとは思っております。全部ではなく,主に民法の関係で要綱案のたたき台の一部をお示しできればと考えております。 ○山野目部会長 ただいま差し上げた次回の御案内も含めまして,この際,委員,幹事から部会の運営につきまして,お尋ねや御意見があれば承ります。いかがでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは,本日も熱心な御審議を頂きまして,ありがとうございました。これをもちまして,民法・不動産登記法部会の第20回会議をお開きといたします。   どうもありがとうございました。 -了-