法制審議会 仲裁法制部会 第5回会議 議事録 第1 日 時  令和3年2月12日(金)自 午後1時32分                     至 午後4時45分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  仲裁法制の見直しに関する諮問について 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○山本部会長 それでは,予定した時刻を過ぎましたので,法制審議会仲裁法制部会第5回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中,御出席を頂きまして誠にありがとうございます。   本日,出席状況ですが,小川委員,高杉委員,春田委員,衣斐幹事が御欠席と伺っております。   それでは,まず,前回に引き続き本日はウェブ会議の方法を併用して議事を進めていきたいと思いますので,ウェブ会議に関する注意事項について,事務当局から御説明をお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。本日は,山本部会長も含めてウェブ会議ということで進めさせていただきたいと思っております。   おととい行われました法制審議会の総会におきまして,新型インフルエンザ等対策特別措置法の規定に基づく新型インフルエンザ等緊急事態措置を実施すべき期間中は,令和2年10月29日法制審議会決定にかかわらず,部会長を含む委員,幹事及び関係官は,いつでも情報通信機器を利用する方法で会議に出席することができるものと取扱いが改められました。この取扱いは,緊急事態措置を実施すべき期間中のみならず,まん延防止等重点措置を実施すべき期間中においても同様の措置を採ることができることとされておりまして,おとといから効力を生じているものでございます。   議長である部会長も情報通信機器を利用する方法で参加する会議は初の試みであり,事務当局がいる場所と部会長のいる場所が異なっておりますので,なるべく皆様に御迷惑をお掛けしないように議事を進めてまいりたいと思いますけれども,何か不具合がありました際は御容赦いただければと思います。   いつもと同様のお願いとなりますけれども,念のため改めて御案内させていただきます。ウェブ会議を通じて参加されている皆様につきましては,ハウリングや雑音の混入を防ぐために,御発言をされる際を除き,マイク機能をオフにしていただきますようお願いいたします。御発言される場合は,手を挙げる機能をお使いいただいて,お知らせいただければと思います。   また,本日,会場にも2名の委員と幹事の方がいらしておりますので,その方が挙手される場合は,私ないしはほかの事務当局で確認した上で,山本部会長にチャット機能を用いる方式でお知らせすることにしております。   指名されましたらマイクをオンにして御発言いただき,終わりましたら再びマイクをオフにして,同じように手のひらマークをクリックして手を下げるということを行ってください。また,御発言の際は必ずお名前をおっしゃってから発言されるようお願いいたします。場合によっては,挙手された順番と指名の順番とが前後する可能性がございますが,この点は御理解いただきますれば幸いでございます。 ○山本部会長 そのような形で,法制審議会始まって以来の試みだと思いますが,私は外部から司会をさせていただきますので,なるべく御迷惑をお掛けしないように進めてまいりたいと思います。   それでは,本日の審議に入ります前に,配付資料の説明を事務当局からお願いいたします。 ○福田幹事 再び福田でございます。まず,部会資料としまして5-1,5-2,仲裁法等の改正に関する中間試案のたたき台(1),(2)の2種類を事前に送付させていただきました。こちらの内容につきましては,後ほど事務当局から説明をさせていただきます。   次に,参考資料がございます。参考資料5になりますけれども,こちらは前回の会議で当省司法法制部からODR推進検討会について説明をさせていただきましたけれども,その検討会において実施されたヒアリング結果の概要になります。内容につきましては,部会資料5-2の説明と併せて後ほど司法法制部から説明をさせていただきます。 ○山本部会長 それでは,本日の審議に入りたいと思います。本日から中間試案の取りまとめに向けた御議論をしていただきたいと考えているわけですが,まず,事務当局より審議の対象等についての御説明をお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。前回までの審議をもちまして第二読会の審議を終えていただいたものと理解しておりますので,本日からは中間試案の取りまとめのための御審議をお願いしたいと考えております。事務当局におきまして,これまでの御議論を踏まえて,部会資料5-1,5-2として中間試案のたたき台を作成いたしました。こちらの資料を基に御議論を頂戴したいと考えております。   念のために申し上げますと,中間試案につきましては,今後,取りまとめをしていただいた後,パブリックコメントの手続を取ることを予定しております。そのパブリックコメントの対象となるものは,本日お配りした部会資料5-1,5-2の太字のゴシック体で書かれた部分,これがパブリックコメントの主な対象になります。ただ,これだけではなかなか御意見を出しづらいと思いますので,慣例として補足説明というものを事務当局の方で作成させていただいており,中間試案と併せて公表しております。この補足説明には,これまでの部会資料において我々が説明として記載しておりましたところを,皆様の御指摘も踏まえて整理をし,取りまとめることを考えております。こちらは事務当局の責任において作成させていただくものですので,この内容も併せて部会では御議論いただくことは予定しておりませんけれども,最終的にパブリックコメントに付す手続の際には,皆さまにも送付させていただきます。   中間試案につきましては,今申し上げたように,将来的にパブリックコメントの手続を取ることを予定しておりますので,本日の御議論に当たりましては,中間試案としての提示の仕方としてどうかというところを中心に御審議を賜りたいと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   そのような趣旨でありますので,本日の主題としましては,パブリックコメントを行う対象としてどういうようなものをお示しするのが適当か,あるいは,どのような形で示した方が一般の方々からより御意見を頂きやすいかといった観点から,部会資料の内容あるいは表現ぶり等について御議論いただきたいと思います。   両論併記等になっているところがございますけれども,これはその両論併記でパブリックコメントに付するという趣旨でありますので,本日の段階では,こちらがいい,こちらが反対というよりは,もちろん,こんな案はおよそパブリックコメントに付する必要はないという御意見であれば,それは御意見を出していただいて結構なのですが,一応聴いた方がいいということであれば,その中身,どちらがいいかというよりは,こういう聴き方で意見を出しやすいかということを主眼に御議論を頂戴できればと思います。   それでは早速,中身の審議に入りたいと思います。   まずは部会資料5-1,仲裁の方でありますが,これについて「第1 暫定保全措置に関する規律」のうち1から7,資料の2ページから4ページの辺りですが,この辺りを取り上げたいと思います。   まず,事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○吉川関係官 それでは,吉川から御説明をさせていただきます。   部会資料5-1の第1では,暫定保全措置に関する規律について取り上げております。ここでは,以前の部会資料から規律を変更した点や,新たに記載を追加した点を中心に御説明をさせていただきます。   本文第1の1に関する説明では,緊急仲裁人による暫定保全措置及び一方当事者のみの手続による発令の可否について記載を追加しております。緊急仲裁人については,一般的に,緊急仲裁人の制度を導入している仲裁規則を適用する旨の仲裁合意がされた場合には,別段の合意がされていない限り,暫定保全措置は有効であるとされている旨を記載しております。他方で,主要な仲裁機関の仲裁規則においては,緊急仲裁人による暫定保全措置は仲裁廷を拘束するものではなく,仲裁廷が当該暫定保全措置の変更等をすることができるとされていることから,執行力を付与する必要性及び相当性については慎重な検討を要するとの考え方を記載しております。   次に,一方当事者のみの手続による発令の可否については,引き続き解釈に委ねられるものと考えておりますが,仲裁手続においては当事者は平等に取り扱われなければならず,事案について説明する十分な機会が与えられなければならないという基本原則があることには留意する必要があるという考え方を記載しております。例えば,この基本原則を踏まえても一方当事者のみの手続で発令する緊急の必要が認められる場合に限り,発令を認めるものとするといった考え方や,承認及び執行に際しては,この基本原則を踏まえて,防御が不可能であったことという拒否事由の有無を判断するといった考え方などがあり得るものと思っております。そうしたことから,何か明確な規律を設けるということは難しいのではないかと考えているところでございます。   続きまして,本文2に関する説明では,暫定保全措置の発令要件のうち本案について理由があるとみえることという要件について,その意味を明らかにするため,記載を追加しております。   最後に,4ページの本文7(1)の下線部では,暫定保全措置に係る費用及び損害について,費用及び損害の賠償を命ずる相手方が暫定保全措置の申立人であるということを明示することを提案しております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいま御説明があった部分について,どの点からでも結構ですので,御意見,御質問等をお出しいただければと思います。   特段ございませんか。よろしいでしょうか。   それでは,後でまた戻っていただいても結構ですが,特段の御意見がないようですので,便宜,前に進めていきたいと思います。   それでは,引き続きまして,今度は8の部分ですね,暫定保全措置の承認及び執行,これが4ページから9ページぐらいまででしょうか,この点につきまして事務当局から説明をお願いいたします。 ○吉川関係官 吉川でございます。第1の8については,まず,規律を変更している部分,本文で下線を付している部分から御説明をさせていただきたいと思います。   5ページの8(1)イ⑤では,前回会議で,モデル法への対応という観点から暫定保全措置の申立ての範囲を超える場合を拒否事由として明示すべきであるという御意見があったことを踏まえ,暫定措置若しくは保全措置の申立ての範囲を超えてという文言を加えることを提案しております。   次に,8(1)イ⑦では,対応するモデル法の規律を参考に,暫定保全措置の申立人が仲裁廷による担保提供の命令に違反したことという形で文言を改めることを提案しております。部会資料4-1では,当該担保が提供されたことの証明がないことという規律を提案しておりましたが,前回会議では,(1)イの柱書と合わせて読むと,証明がないことの証明を求める内容となってしまっているという御意見があったことを踏まえ,文言を改めたものとなります。   次のページをめくっていただきまして,8(2)イでは,訳文添付省略の範囲について,部会資料4-1では暫定保全措置の命令書の一部という提案をしていた点について,全部又は一部と文言を改めることを提案しております。この点につきましては,前回会議で,例えば,執行決定の申立書に給付文言が日本語で記載されており,裁判所及び当事者においてその記載内容に問題がないとされている場合などには,暫定保全措置の命令書の全部について訳文添付を省略し得るのではないかという御意見があったことを踏まえ,規律を改めたものとなります。   8(2)ウでは,本文5の暫定保全措置の変更等の規律,4ページにございます本文5の規律と平仄を合わせるため,語順等を入れ替えまして,取消し,変更,又はその効力の停止と規律を改めることを提案しております。   本文の変更点としては以上になります。   次に,説明を追加した部分について御説明をさせていただきます。まず,本文8(1)ア,いわゆる暫定保全措置の承認については,前回会議では,当事者間で拘束力を有するという規律としてはどうかとの御意見があったところですが,暫定保全措置の拘束力が及ぶ範囲については国際的に議論があり,その範囲を当事者間に限定するかのような規律とすることには慎重であるべきという御意見があったことや,裁判所に対しても暫定保全措置の拘束力があるものと理解する余地があることを踏まえ,引き続き,その効力を有するという規律を提案しております。   また,暫定保全措置の承認という文言を用いることが適切であるのか,外国判決の承認や仲裁判断の承認とは意味が異なっているのではないかという御意見も頂いたところですが,現行法上も仲裁判断や外国倒産処理手続について,異なる意味で承認という文言が用いられていることや,モデル法においても承認という文言が用いられることに照らし,規律の見出しの部分ではありますが,引き続き承認という文言を用いることにしております。   最後に,8ページの説明4,本文8(1)イ⑨の執行することができないという拒否事由についてですが,こちらについては差し当たり,部会資料4-1での規律を維持することとしております。例えば,法的地位を有することを確認する暫定保全措置について,民事執行の対象とならないことを理由に承認拒否事由があると解されるおそれがないかが問題となり得るものと考えております。前回会議では,承認又は執行することができないという規律としてはどうかとの御意見もありましたが,対応するモデル法の規律が執行の局面を想定したものであることや,承認については,特に裁判所による特別の手続等を経ることが予定されていないことから,承認することができないという規律とすることにもなお問題があると考えております。また,モデル法への対応という観点からすると,承認拒否事由と執行拒否事由とを書き分ける,例えば,この⑨の点については執行拒否事由としてのみ規律するということもなかなか難しいのではないかと思われます。こういった問題意識を踏まえまして,引き続き御意見を伺えますと幸いです。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,ただいまの承認・執行の部分,これもどの点でも結構ですので,御意見,御質問等を頂ければと思います。 ○古田委員 古田でございます。2点ございます。まず,部会資料5ページの⑦ですけれども,担保を提供すべきことを命じた場合において,その者が当該命令に違反したことという書きぶりなのですが,ここは担保の提供義務があるというよりは,担保の提供が暫定措置又は保全措置の条件になっているという状況ですので,命令に違反したことという表現にするよりは,命令を遵守していないこととか,あるいは,端的に担保を提供していないことという書き方の方が良いのではないかと思いました。   次は今ご説明があった⑨についてです。趣旨としては⑨は執行の要件であり,承認の要件ではないということなのですけれども,今の書きぶりですと,承認の要件としても⑨があるように読めます。この点は解釈に委ねるということかもしれませんが,やはり書き分けた方がいいのではないかと思います。例えば,執行決定の申立てがあった場合において,暫定措置又は保全措置が日本の法令によって執行することができないものであることを独自の拒否事由とするか,あるいは,承認と執行の双方の拒否事由として,①から⑧,⑩,⑪を挙げた上で,別の項目で,執行決定の申立てがあった場合において,暫定措置又は保全措置が日本の法令によって執行することができないものであるときも前項と同様であると規定することが考えられます。これは法制上の問題かもしれませんけれども,解釈に委ねるよりは,条文上も明確に書き分けた方がいいのではないかと思いました。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,事務当局からコメントをお願いできますか。 ○福田幹事 御意見ありがとうございます。⑦の点,それから⑨の点ともに,今御意見をいただいたところを踏まえて,引き続き検討したいと思いますけれども,特に⑨については,先ほど吉川からの説明にありましたように,モデル法との関係で,執行拒否事由と承認拒否事由という形で書き分けるというところがどのように国際的に受け止められるのかというところを考えなければいけないと思っておりますので,その点についての何か御意見等も頂ければ幸いでございます。 ○垣内幹事 垣内でございます。どうもありがとうございます。声は聞こえておりますでしょうか。   今,御発言もありました⑨の問題に関してなのですけれども,直前に古田委員の方から御指摘がありましたように,現在の案ですと,執行ができないものであるときに承認もされないというような読み方が文言上はできてしまうというところに一つ,問題があるということかと思います。この点に関して,モデル法そのものは,日本の仲裁法ですとか今日の御提案と異なり,以下の場合に限って承認又は執行を拒絶できるというような書き方をしているために,こういった形では問題が顕在化していないところです。これが日本法ですと,仲裁法の承認に関する規定もそうですし,本日の資料の御提案でもそうですけれども,効力を有するという形で,その規定を適用しない場合としてこの①から⑪が掲げられるということの関係で,この問題が目立つ形で顕在化しているということなのだろうと思います。   一つには,提案を維持した形で,しかし,これはモデル法よりも承認の範囲が狭いことを意味するものではないのだと解釈すべきだということを説明等で明らかにしていくということが考え方としてはあり得るかと思われますけれども,他方で,現在の御提案の規定ぶりというのが,あるいはそういった誤解を招くのではないかということであれば,私自身は古田委員のおっしゃった二つ目の方法というのがどうかなと考えておりましたけれども,本日の資料6ページの(2)クのところですが,執行決定の申立てがあった場合において,前記(1)イ各号に掲げる事由のいずれかがあると認める場合に限り申立て却下できると。ここで,⑨はここから除くと,⑨は(1)イの方からは削除しまして,この⑨に関するものをクの後段,あるいは別の項目として,⑨の日本の法令によって執行することができないものであるときも同様とするというような,執行拒絶事由としての意義を明確にするような形にするということが,少なくとも一案としてはあり得るのだろうと思われます。   その場合に,モデル法は確かに承認,拒絶は一括して書いていることと外観上異なることになるわけですけれども,恐らくモデル法の趣旨として,⑨に相当するもので承認まで拒絶するということまで考えているということではないように思われますので,その点でモデル法よりも承認あるいは執行拒絶の範囲が広くなるということではないと,実質的には同じであるということをやはり説明しておくということで,いずれにしても,現在の体裁を基礎にして規律を仕組んでいきますと,モデル法と体裁上は少しずれるところは出てくるけれども,実質的にはモデル法より仲裁フレンドリーではないというような誤解が生じないような説明をしていくということになるのではないかと思われまして,そのような意味では,両案ともに選択肢としてはなお,あり得るのではないかという感じを持っております。ですので,例えば,中間試案の段階で注記の形等で,⑨については執行拒否事由として規定するという考え方もあるであるとか,何かそういった問題についても御意見を伺えるような形でお示しするということも,現在の段階ではあり得るのかなという気がしております。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○三木委員 日本のこの仲裁法は,現行の仲裁法も,それから,今般改正される仲裁法も,モデル法を全面採用しているわけです。そして,モデル法を採用して作られた各国の国内立法の解釈,運用に当たっては,各国の言語による文言のみを前提にためにするような文言解釈をするのではなく,モデル法の立法の際における趣旨であるとか,あるいはモデル法を採用しているほかの国の解釈や裁判例などを参照して,自国の法律の解釈をしていくというのが世界的な常識になっているように思います。   幸いなことに,日本でも,最近の最高裁を始めとする裁判例では,モデル法を尊重した解釈や,モデル法の立法趣旨に遡った解釈というものが,されるようになってきていると理解しております。そのようなことから,私は,現在の文言のままで維持して結構ではないかと思います。それによって懸念されているような解釈が生じるということは,もちろん考えられないわけではないですけれども,そういうことが起きないようにすることこそが,モデル法を採用するということの意義ではないかと思います。そして,ことさら何か際立たせるような規定を作ると,そのことの方が逆に,諸外国から見ると,日本はモデル法と違う立法をしたのではないかと疑われる余地が高いのではないかと私は考えます。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○道垣内委員 本文ではなくて説明のところ,7ページですけれども,よろしいでしょうか。 ○山本部会長 結構です。 ○道垣内委員 7ページの1の真ん中辺り,なおと書いてあるところからです。この文章は,前にはない新しい説明かなと思います。ここでいっていることは,暫定保全措置の承認という用語を使うこと,この結論で私は結構だと思うのですけれども,その説明として,外国判決の承認や仲裁判断の承認とは必ずしも同一の意義ではない云々といろいろ書いてあります。ここでは,承認についてそもそも何種類を想定していらっしゃるのでしょうか。承認という用語の意味を何種類想定されているのかを説明していただき,それに基づいて分かりやすい説明をしていただければいいかなと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。事務当局,今の点はいかがでしょうか。 ○福田幹事 福田でございます。御指摘ありがとうございます。   この承認という文言に何種類の意味があるかというところは,本当に様々な御意見があるのだろうと考えております。少なくとも,今議論を頂いている暫定保全措置の承認というものは,外国の裁判所のした確定判決の承認とは違いますね,さらに,仲裁判断の承認ともやはり違う可能性が高いですねというところまでは,この部会で御議論いただいたのかなと思っております。どちらに近いかということはここでは省略しますけれども,部会資料に記載しましたとおり,日本のこれまでの制度で多義的に使われておりますので,ここでも,それらとは違う趣旨ですけれども,承認という文言を使っても,日本の法制的には特段大きな問題は生じないのではないか,さらには,モデル法が「レコグニション」という単語を使っていますので,その意味でも,承認という文言を使わせてもらいたいというのが事務当局の考えでございます。 ○山本部会長 道垣内委員,いかがでしょうか。 ○道垣内委員 その説明は分かるのですけれども,そのことがこの表現で反映されているのかどうかよく分かりません。仲裁判断の承認という場合の承認は外国判決の承認と同じではないかと思います。既判力を認めるという意味で。ですので,現行法上の後のところにそれが出てくるのはやはり少しおかしいかなと思います。それから,外国倒産処理手続の承認も,これは専門の方に聞いた方がいいですけれども,むしろ,直接の執行はしないということを前提に書かれていると理解しています。ですので,これらの用例があるから,仲裁廷による暫定保全措置について承認という言葉を用いても許されるという説明にはなっていないのではないかと思われます。モデル法でそうなっているのだから,難しいことは言わずに書いておきましょうというのが本当のところなのかなと思いますが,いかがでしょうか。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,今の点は,事務当局において補足説明を作成する際に,今の御意見があったことを踏まえて作成を頂くということでよろしいでしょうか。 ○福田幹事 ありがとうございます。そのようにさせていただきます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,ほかの点はいかがでしょうか。 ○手塚委員 手塚でございます。聞こえていますでしょうか。   やはり,同じく部会資料1の5ページ,⑨のところなのですけれども,なかなかほかの文言に変えれば問題がなくなるというようなうまい文言が私も思い付かないので,結論的には,この文言は取りあえず変えず,ただし,補足説明のところで誤解のないように説明をしていただくのがよろしいのではないかと思っております。   特に,例えば暫定措置ないし保全措置が,地位確認を求めるだけで,特定の給付であるとか作為あるいは不作為を命じていないという場合には,そもそも執行の対象になるような事項が対象となっていないというか,執行の対象となるようなものが含まれていないわけですけれども,確認的命令は執行することが日本法上できないから,承認もできないのだという意味ではないということで,趣旨としては,日本の法令によっては執行することができないような行為を命ずるものは駄目であるというような趣旨だと思います。ただ,日本の法令によって執行することができない行為を命ずるものであることと限定してしまうと,不作為命令がどうだとか,またいろいろなところが問題になると思うので,そういうところも含めると,この文言を残しつつ,説明で補足していただくのがいいかなと思います。   あと1点だけ,これはむしろ確認なのですけれども,例えばマリーバ・インジャンクションのように,全世界で資産凍結を命ずるというような暫定措置ないし保全措置が出た場合に,日本法上はそういう保全処分を執行に乗せる手段が多分ないと思うのですけれども,それについては⑨では,日本の法令によって執行することができないと考えるという理解でよろしいのでしょうか。 ○山本部会長 ありがとうございました。最後の点は御質問かと思いますが,少しここでも議論したような記憶がありますが,事務当局の方から。 ○福田幹事 福田でございます。今の点は前にも御議論があったところだと思います。特定の解釈でこうだということにならないような形で補足説明は書いた方がいいのかなと思っておりますので,今,手塚委員がおっしゃったような考え方ももちろんありますし,すべからく執行できないということで執行拒否事由に当たるというような表現も,なかなか補足説明ではしづらいと思いますので,その辺りは少し工夫して記載したいと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,これもまた戻っていただいて結構ですけれども,先に取りあえず進めさせていただきます。   続きまして,部会資料5-1の残りの部分,「第2 仲裁合意の書面性に関する規律」及び「第3 仲裁関係事件手続に関する規律」,管轄と訳文添付の問題ですけれども,この部分につきまして,まず事務当局から説明をお願いいたします。 ○吉川関係官 吉川でございます。まず,第2の仲裁合意の書面性に関する規律については,部会資料4-1と同じ内容を提案しております。   次に,第3の1では,仲裁関係事件手続における管轄について,新しい規律の提案などをしております。   本文1(1)では,仲裁法第5条第1項第3号に,本文の括弧書きの部分,(その普通裁判籍が定まらないときは,最高裁判所規則で定める地)という部分を追加することを提案しております。日本国内に事務所等がない外国法人については,日本に普通裁判籍がない場合があるということに加えまして,本文1(2)では,仲裁法5条1項3号に基づく管轄権を有する裁判所がどこであるかに応じて,東京又は大阪地方裁判所の競合管轄を認めるという規律を提案しているため,どの裁判所が仲裁法5条1項3号に基づく管轄権を有するのかを定める必要があると考えられます。そこで,被申立人の普通裁判籍が定まらないときは,最高裁判所規則で定める地を管轄する地方裁判所が仲裁法第5条第1項第3号に基づく管轄権を有するという規律を設けることを提案しております。   また,1ページめくっていただきまして,10ページの(説明)2では,前回会議での御意見を踏まえて,移送に関する規律についても検討しております。現行仲裁法においても,仲裁判断の取消しや執行決定を求める申立てについては,裁判所が相当と認めるときは他の管轄裁判所に移送することができるという規律が設けられていることから,これ以外の,必ずしも紛争性の高くない事件類型を念頭に,移送に関する新たな規律を設ける必要性が高いとはいえないのではないかという考え方を記載しております。   最後に,第3の2では外国語資料の訳文添付の省略について規律を提案しております。本文2(1)では,仲裁判断の執行決定を求める申立てについても,暫定保全措置の場合と同様に,仲裁判断書の全部又は一部について訳文添付の省略を認める規律を設けることを提案しております。本文2(2)では,仲裁関係事件手続一般について,裁判所が相当と認めるときは外国語で作成された書証の訳文添付の省略を認めるという規律を設けることを提案しております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,この点もどの点からでも結構ですので,御質問,御意見があればお出し頂ければと思います。 ○竹下幹事 竹下でございます。聞こえていらっしゃいますでしょうか。   この第3のところについて,まず1点,質問をさせていただければと思いますが,現在の仲裁法第5条第1項第3号,ここのところに,その普通裁判籍が定まらないときはという文言を加えるということでいらっしゃるのですが,どういう事件のときにこの文言が生きてくるとお考えなのか,少しクラリファイをしていただければと思います。 ○福田幹事 福田でございます。今御質問いただきました点ですけれども,事務当局として念頭に置いておりますのは,基本的に外国の法人,日本に普通裁判籍を置いていない外国の会社や法人を念頭に置いております。そういった会社が被申立人となる場合は,現行法の5条1項3号では,日本の一つの地方裁判所に管轄裁判所が定まらないという問題点があります。そこに加え,5条2項として今回,競合管轄の規律を設けようとしておりますので,それとの接続も考えて,このような規律を設けることを提案しております。 ○竹下幹事 すみません,聞き方が悪いのかもしれないのですが,例えば,仲裁判断の執行の手続であるとか,仲裁の取消しの手続であるとか,それらは多分,独立の管轄がそれぞれ,お書きのとおり,規定されているかとは思いますが,どういった事件類型を念頭に置いて,被申立人が外国法人であって,しかし日本で裁判をするということを考えていらっしゃるのか,御教示いただいてもよろしいでしょうか。 ○福田幹事 福田でございます。失礼いたしました。   基本的にはやはり,仲裁判断の取消しの場面,それから執行の場面が多いのだろうとは想定をしております。仲裁判断の取消しの場合は,特別の管轄規律がなくて,結局,5条1項の管轄規律が使われるということになると思います。執行決定の場合は,それプラス,執行の目的となる財産の所在地というもので管轄がとれる場合もあるかと思いますが,基本的にはこの5条1項の各号というものが管轄原因になってきますので,それを前提に規律を設けることを想定しております。 ○竹下幹事 そうしましたら,若干意見になるのかもしれませんが,よろしいでしょうか。 ○山本部会長 続けてください。 ○竹下幹事 今おっしゃられた取消しの事件について,取消しの事件であれば,恐らく仲裁地が日本国内にあるはずで,そうすると,仲裁地を管轄する地方裁判所の5条1項2号で,恐らく日本で裁判をすることは必ず可能で,それに加えて何か,最高裁規則で定めた地を管轄する地方裁判所で,それをアンカーにして,この新しい5条2項を適用するという必要性が余りよく分からないところです。仲裁判断の承認執行,執行決定の話についても,そもそも,外国企業に対して執行を日本で求める場合が実際にどれだけあるのかよく分かりませんが,日本に財産があれば執行を求めることがあるのだろうと思うのですが,日本に財産がある場合の管轄原因は既に46条5項で手当てがされているのではないかと思われ,今回この括弧書きを入れることの具体的な意味や必要性がよく分かっていないところでございます。外国法人であるとか,外国に主たる事務所又は営業所や住所があるといった事例について日本で裁判をする場合には,やはり日本国内に当事者が合意により裁判所を定めているとか,仲裁地が日本にあるとか,日本との関連性というのがどうしても必要となってくるのではないか,この括弧書きが入ることによって,私自身少しまだすっきりしない,私自身が分かっていないところもあるのではないかとは思いますが,やや管轄が過剰になるような気がしているところでございまして,雑駁な意見で申し訳ありませんが,その点だけ伝えさせていただきます。 ○福田幹事 正に竹下幹事のおっしゃるとおりの問題意識は事務当局も持ってございます。もう少しだけ補足させていただきますと,5条1項2号で仲裁地をどこか一つの都市に定めた場合は,その土地を管轄する地方裁判所が管轄権を持つということになっておりますけれども,5条1項2号で日本とだけ仲裁地を定めた場合は,この規律が適用されないというルールでございます。ですので,今回,5条1項3号の方で手当てをしようというのがそもそもの発想になります。   竹下幹事がおっしゃるように,日本の仲裁関係事件手続の国際的な連結点として仲裁地というものに重きを置いているということを重視するならば,場合によっては5条1項2号で日本とだけ定めた場合,どこか一つの都市に限定していない場合に,むしろ最高裁判所規則で定める地というような規律とする方法もあるのではないかと事務当局としては考えているところですので,場合によってはそちらの方が竹下幹事のお考えと近いということであれば,その点も含めて検討を続けていきたいと思っておりますが,いかがでしょうか。 ○竹下幹事 ありがとうございました。もしその点の御懸念で今回,追加をされたということであれば,正に仲裁地が日本とだけ定まっていて,それ以上に特定がされていなくて2号が使えないということが問題であるとするならば,むしろ,日本とだけ定めているときに東京か大阪が管轄を有するという規定を設けた方が,サブスタンスの問題に直接こたえているような気がするところでございまして,逆に3号で,これで定まらないときに最高裁規則で書くとすると,外国企業が被申立人となるときに常に日本で裁判ができてしまうというようなことに読めてしまい得るのではないか。そうではないのかもしれず,あまり自信はないのですが,今おっしゃられたような,仲裁地が日本国内のどこかに定まっていないということについての対応であれば,福田幹事御指摘のような方向性の方が,個人的には妥当かなと考えているところでございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○古田委員 古田でございます。2点ありまして,1点は今の竹下さんと福田さんのやり取りでかなり解決されたところかと思いますが,そもそもの仲裁法5条1項の趣旨は,1号から3号までの管轄原因が併存しており,日本に普通裁判籍があれば5条1項3号の管轄原因もあるということなのであり,もし日本に普通裁判籍がなければ,5条1項3号の管轄原因が生じる余地はなく,あとは1号か2号いずれかの管轄原因が日本にあれば日本の裁判所に管轄があり,どれもなければ日本の裁判所に管轄は生じないということと理解しています。そうすると,3号との関係で日本に普通裁判籍がない場合に普通裁判籍があるようにみなすというのは,現在の5条1項3号を大幅に拡張することになって,今回の立法の方向性として少し違うのではないかと思いました。   福田さんがおっしゃった5条1項2号の場合で,仲裁地について日本とか関西地区という程度の特定しか無く,特定の地方裁判所が定まらないときは,5条1項2号括弧書きで,ある地方裁判所の管轄区域内に特定されなければいけないことになっているので,何らかの基準で特定の地方裁判所を定める必要があります。その場合には,民事訴訟法10条の2に倣って,仲裁法5条1項2号括弧書きとの関係で,日本に仲裁地があるのだけれども特定の地方裁判所が決まらないときには,最高裁判所規則で定める地方裁判所,おそらく東京地裁になるのだと思いますけれども,を管轄裁判所とするという規律を設けるのであれば合理的かなと思いました。   2点目は,移送の関係なのですけれども,今回の部会資料11ページで,移送の規定を特段設けないことの帰結として,したがって移送はできないと理解がされているように思うのですけれども,ここは事務当局にお伺いしたいのですが,仲裁法10条で民訴法の一般的な準用があり,それによって民訴法17条の裁量移送の規定が準用されるので,移送の規定を特段設けなくても,専属管轄裁判所が複数ある場合に,その複数ある専属管轄裁判所の間での移送は可能であるとの解釈もあり得ると思っているのですが,その点はいかがでしょうか。 ○福田幹事 福田でございます。今の点ですけれども,これは事務当局内部でも実は意見が分かれておりまして,民訴法の移送の規律の準用というのは両論あるのではないかと考えております。と申しますのは,仲裁法は,5条3項のような形で移送の規律を置いていますけれども,この規定が,仲裁関係事件手続における移送というのはこれだけであり,これが仲裁法10条の「特別の定め」に当たるのであれば,その他の民訴法の移送の規律というのは準用されないという解釈もあり得るのだろうと思っております。そこまで厳格に読むべきではない,すべからく準用されてもいいのではないかという考え方も他方であろうかと思いますので,現時点でどちらというのはないわけですけれども,仮に厳格に考えるべきだとの考え方に立つのであれば,新たな規律を設けない限り,裁量移送のようなものは仲裁関係事件では認められないという帰結になろうかと思います。 ○山本部会長 古田委員,いかがでしょうか。 ○古田委員 もし解釈で疑義があるのであれば,むしろ裁量移送の規定は設けておいた方がいいのではないかと思います。要するに,複数の専属管轄裁判所があるときに,いずれかの専属管轄裁判所に申立てがあると,そこで管轄が固定されてしまって,別の専属管轄裁判所の方がより便宜なのに全く移送できないというのは,実質的に見て規律としては不合理な結論になるように思いますので,少しお考えいただければと思います。 ○山本部会長 今の点は,取消しとか執行決定については別段の規定があるということですが,それ以外の事件類型においても,やはり移送というのは必要だろうという御趣旨でしょうか。 ○古田委員 移送が必要となり得る類型は仲裁判断取消しとか執行決定申立に限られるわけではなく,例えば仲裁人の選任ですとか証人尋問の援助などについても,管轄裁判所が複数あるときに,当初申立てがあった裁判所よりも別の裁判所の方がより便宜だということもあり得るのではないかと思います。また,例えば申立人がある裁判所に申立てをした後で,当事者間で管轄合意がされて,別の裁判所に移送しとうとしたときに,現行法の解釈上,移送の規定がないから移送できないことになると,それはそれで当事者にとっても便宜が欠けることになるのではないかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○出井委員 すみません,今の点なのですが,仲裁合意はそもそも仲裁法で書面でなければならないとされていたから,それを緩めるとか撤廃するとかいうことが問題になっているので,それ以外の合意については特に方式の定めはなかったのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○髙畑委員 ありがとうございます。髙畑です。   2点ございまして,1点目は今のところなのですけれども,古田先生,出井先生と全く同じ感覚を持っておりまして,恐らく仲裁事件において今まで想定されていない手続というか,普通の民訴でカバーされていない部分について,やはり管轄をそろえていただくというか,東京,大阪でやっていただくということが必要になるのではないかということは容易に想像していて,そこは是非,そこの余地を残しておいていただきたいということと,2点目は,仲裁合意のところなのですけれども,書面性のところです。仲裁合意について書面性ということなのですけれども,その仲裁合意の範囲ですね,範囲といいますのは,現行の恐らく仲裁法上の規律ですと,仲裁合意というのは正に仲裁合意そのものだけを指しているように思えますので,そうだとすると,それ以外の部分での,今回新しく追加される,例えば当事者の合意であるとか,先ほどの8のところでございました,当事者間に合意があるときの当該合意とか,そこら辺についても書面性を要求される趣旨なのかどうかというところを,書面にしておいた方がいいかどうかというところについては,どうお考え方というところを少し伺いたいと思ったのですが。 ○山本部会長 ありがとうございます。それでは,事務当局から。 ○福田幹事 福田でございます。重要な御指摘を頂いたものと思います。この仲裁合意の書面性に,仲裁合意そのものではない,例えば暫定保全措置の場合の別段の定めとか,そういったものが含まれるかどうかという御趣旨の質問だと承りました。現時点でそこまで検討が及んでおりませんでしたので,次回までにはお答えできるように検討していきます。 ○髙畑委員 ありがとうございます。 ○出井委員 すみません,今の点なのですが,これは仲裁合意はそもそも仲裁法で書面でなければならないとされていたから,それを緩めるとか撤廃するとかいうことが問題になっているので,それ以外の合意については特に方式の定めはなかったのではないかと思いますが,いかがでしょうか。 ○山本部会長 なかったというのは,モデル法になかったということですか。 ○出井委員 モデル法というか,現在の仲裁法。 ○福田幹事 福田でございます。出井委員のおっしゃるとおり,仲裁法において,別段の合意について書面でなければならないとの規律はありません。しかしながら,この点については,これまでも執行拒否事由について,仲裁合意のほかに別段の合意というものの文言を加えるかどうかという点を議論していただいたときに,それも全部仲裁合意で含めて読むべきだという解釈,これもあり得るというような御発言もあったかと思います。恐らく,その御発言を前提にすると,仲裁合意そのものではない別段の定めについても,仲裁合意として取り込むのだとも読めるかと思います。   逆に,今回の事務当局の提案のように別段の合意というものを特出しして書いたときに,これが仲裁合意に当たるのか,当たらないのかというのは,やはり解釈の余地は残ると思いますので,その辺り,整合的な説明ができるように検討をしなければいけないかなと,考えたところでございます。 ○山本部会長 出井委員,いかがですか。 ○出井委員 了解いたしました。 ○三木委員 今の点ですが,まず,出井委員がおっしゃったことは,そのとおりではないかと思います。モデル法も日本法も,書面性を元々要求しているのは仲裁合意のみであり,したがって,仲裁合意については書面性の実質撤廃の法改正が必要になるわけですが,それ以外の仲裁手続上の合意については,元々書面は要求されていません。したがって,特に手当ては必要ないということになります。ただ,ここで問題になるのは,最後に福田幹事がおっしゃった,日本法で独自に設けようとしている別段の合意というものの取扱いです。私は,この別段の合意というのは事後的に追加された仲裁合意であって,仲裁合意に取り込めるので,この「別段の合意」という文言を入れる必要はないのではないかということを前回の部会で申し上げました。その後,事務当局と事前の御説明を受ける際の会合において,あっても特に害もないので,入れてもいいのではないかという意見を申し上げたところですが,今日の御議論を伺うと,やはり別段の合意という文言は入れない方がよいのではないかと思います。元々モデル法にはそれに相当するような文言はないわけですし,そういった文言を入れずに,事後の合意は仲裁合意の追加的な合意と考えられるというようなことを補足説明で書けばいいのではないかと思います。 ○山本部会長 事務当局,何かコメントはありますか。 ○福田幹事 いえ,ございません。ありがとうございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○吉野委員 吉野です。   少し今までと違う問題ですが,過去の第2回までの資料によりますと,この仲裁に関してオンライン方式が取り上げられていたかと思うのですが,これが今回の説明にはないかと思います。これは,私は積極的な意見を述べたのですが,消極的な意見の方が多かったということ,それから,そもそも仲裁規則で定める問題ではないかという御意見が多かったと記憶しています。この点を論点から落とされたということについて,それを復活せよという意見ではないのですが,落とされた理由について何らかの説明が頂ければと思います。よろしくお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。御質問ありがとうございます。今,吉野委員がおっしゃった点につきましては,第2回会議における議論で,オンラインによる口頭審理の手続自体を既に実施している仲裁機関があるとの紹介があったほか,世界的にもそれは排除されていないというような見解もお示しいただきました。そうしますと,基本的にはオンラインでの口頭審理ができることが前提で,それが明らかになるような形で条文の規律を変える必要があるのか,ないのかという話に次は移ってくるのだろうと思います。そうした中で,口頭審理においては第三者からの意見聴取等を行うことがあり,その際,一方の当事者が異議を述べた場合の取扱い等をどうするのかといったところについて御議論をいただいたかと思います。   いろいろな御意見を頂いたわけですけれども,今,吉野委員からもありましたように,それぞれの仲裁機関の機関規則での手当てというものが念頭にあるのかなと思っておりまして,仲裁法の規律を必ずしも変えなければいけないというところの御意見までが多数を占めたものとは認識しておらず,そういったことから,何らかの規律の改正を踏まえた提案を中間試案として出す必要までは感じなかったというのが正直なところでございます。   ただ,議論がまだ必要だということでありましたら,追ってまた部会のどこかで機会を設けさせていただいて,取り上げて御審議を頂くということはあるのかなと考えております。 ○山本部会長 吉野委員,いかがでしょうか。 ○吉野委員 結構ですが,恐らくパブリックコメントに掛けた場合に,いろいろな意見が出てくる可能性があると思います。この点に関しても意見が出てくる可能性があると思いますので,あえて質問させていただいたということです。今の御説明で,取りあえずといいますか承知しました。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○高田委員 一つ前の話題に戻りますが,よろしゅうございましょうか。   移送の件について1点だけ申し上げさせていただきます。現時点で私自身には定見はないわけですが,前提として,5条2項で優先管轄の規律がありますので,私の理解ですと,他の裁判所,優先管轄以外の裁判所は管轄権がなくなり,したがって17条の適用はないという解釈が出てくる余地があろうかと思います。細かくなりますが,家事事件手続法は5条で優先管轄を認め,9条2項で,5条の規定により管轄を有しないと認めた裁判所に17条移送と同等の規定を設けているという理解ですので,その解釈の方が落ち着きがいいのではないかと個人的には思います。いずれにしましても,5条2項で優先管轄を認めている趣旨に照らして改めてお考えいただければと思います。   ただし,髙畑委員もおっしゃいましたように,今回,競合管轄を認める提案がされておりますので,前提が異なっております。競合管轄を認めた東京地裁,大阪地裁をどう位置付けるかということについては御検討いただければと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○原田委員 原田です。聞こえますでしょうか。   パブリックコメントに付す内容に関する質問なのですが,冒頭の説明で,太字ゴシック体の中間試案に加え,補足説明を出されるということでしたけれども,日本での国際仲裁の活性化ですとか,モデル法への整合性をとっていくことですとか,そうした今回審議していることの背景や経緯,意義などの説明についても,パブリックコメントに付すという理解でよろしいでしょうか。 ○山本部会長 事務当局から説明をお願いします。 ○福田幹事 福田でございます。御質問ありがとうございます。   こちらの責任で作成させていただきます補足説明において,今回の検討に至った経緯等を触れさせていただくということを予定しております。また,今回は特に,第1の仲裁の部分は,モデル法を強く意識した議論をこれまでしていただいておりますので,中間試案の中にも参照条文としてモデル法の規律も載せた方がいいかなと,事務当局で考えているところでございます。 ○原田委員 ありがとうございました。 ○山本部会長 よろしいでしょうか。 ○垣内幹事 すみません,一つ前の高田委員の言われた移送の関係についてですけれども,実質的な考え方としまして,私自身は今日の資料の11ページでいわれている,紛争性が高くない他の事件類型うんぬんという説明があるのですけれども,既に御指摘がありましたように,忌避ですとか解任,あるいは仲裁権限の有無に関する争いといったものについて,紛争性が取消し等に比較して高くないと評価できるのかということに若干,疑問の余地があるように思いますし,一切移送の余地がないというような解釈があり得るとすれば,それは相当でないだろうと思われますので,何らか手当てを考えるという方向がよろしいのではないかと思います。   それから,先ほどの優先管轄との関係ですけれども,仲裁法の場合は,この資料でも指摘されている44条等の規定で,他の管轄裁判所に移送することができるという規定を設けているわけで,そこでの「他の管轄裁判所」という文言との関係で,家事事件手続法と仲裁法が同じ前提に立っているのかどうかというのが今一つよく分からないような感じもいたしましたので,これは事務局に対するお願いということになるのかもしれませんけれども,その辺りを整理して,あり得る対応がどういうものなのかということを中間試案の際に御意見を伺う対象としてお示しすることになるのかなと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○竹下幹事 何度も申し訳ございません。パブリックコメントに出すときの意見の聴き方として,この部分について是非,純国内的な仲裁の事案についてもこの規律が適用されるということを明示していただいた方が良いように思います。今回の改正は全体として,今,経緯など御説明がありましたとおり,UNCITRALへの対応といったことがメインであることは間違いないのですが,この部分は,純国内的な事案についても適用され,例えば九州の企業間の紛争などでも東京と大阪に競合管轄を認めることとなるので,一方の当事者の申立てによって大阪で裁判を行う場合が多分あり得るのだと思います。余り重要ではないのかもしれませんが,やはり純国内事案にも適用されるということを明確にして,その点の当否をパブリックコメントでは伺っていただくのがいいのではないかと思いますので,恐らく中間試案はこの説明がそのまま載るわけではないのかなとは思いますが,(注)みたいなものは付くのではないかと思いますので,そこで競合管轄を新たに作るということについて,純国内事案にも適用されるということは明示していただいた方が,意見を聴きたいところが聴けるのではないかと考えているところです。   なお,移送の件が先生方から出ておりますが,私も個人的にはやはり移送についても併せて御提案いただく方がよいのではないかと,中間試案でパブリックコメントを出すときにも,移送の規定を設けることについてどうかと聴いていただいた方がいいのではないかと考えているところです。   長くなりました。失礼いたしました。 ○山本部会長 ありがとうございました。   若干私から補足しておきますと,本日の資料に付いている説明というのは,飽くまでも本日の審議向け,ここで議論していただくために分かりやすくするための説明でございまして,中間試案と同時に出される補足説明というのは,当然といいますか,これに比べればはるかに詳しい,要するに,これまでの前提なども全て書いた上で,先ほどの原田委員からの御懸念もありましたけれども,そういう前提も全て含めて,一般の人に,なぜこういう提案がされているのか分かるように,事務当局の責任で作成するものだということは,私から注意喚起をさせていただければと思います。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,これで一応,資料5-1について全体的に御議論を頂いたということになりますので,いつもに比べると少し早いですが,ここで休憩を取りたいと思います。15分程度ということですので,15時5分に再開ということにしたいと思います。よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○山本部会長 それでは,会議を再開したいと思います。   続きまして,部会資料5-2の審議に入りたいと思います。まずは部会資料5-2のうち第1の1から4,資料の2ページから7ページぐらいまででしょうか,この部分について取り上げたいと思います。   まず,事務当局から部会資料の説明をお願いいたします。 ○鈴木関係官 それでは,鈴木から説明をさせていただきます。   部会資料5-2の第1では,調停による和解合意に対する執行力の付与に関する規律を取り上げています。   まず,本文1では,調停の定義に関する規律を提案しています。ここでは,第3回会議において,調停適格に関する規律を設けることについて検討をすべきではないかとの指摘がされたことを踏まえて,部会資料3-1で提案した調停の定義に関する規律に,当事者が和解をすることができるものに限るとの規律を追加することを提案しております。   続いて,本文2では,適用範囲に関する規律を提案しております。ここでは,部会資料4-2と同様,対象となる和解合意を「国際性」を有するものに限定する甲案と,そのような限定を設けず国内のものも適用対象とする乙1案,国内のものについて対象を認証紛争解決手続によるものに限定する乙2案の3案を併記しています。もっとも乙2案は,国内のものについては適用範囲に一定の制限を設ける規律を提案するもので,その制限の仕方の一例として,認証紛争解決手続に限定するとの規律を記載しているものであり,第4回会議において,法曹有資格者等が調停人として関与した場合も対象とするなどの考え方も示されたところ,そのような他の規律を設けることを排除するものではありません。本文の(注)書きはそのような趣旨を記載したものになります。   (説明)の記載では,これまで甲案,乙1案,乙2案それぞれについて示された意見,考え方を整理しております。これまでの議論において,具体的にどのような要件や手続を設ければ,執行力を付与することにより懸念される弊害を取り除くことができるのかという観点から御審議を頂いておりましたところ,その弊害とは国際性の有無によって違いが生じるのか,違いがあるとすれば具体的にどのような場面が想定されるのかなどの検討が必要であるとの指摘がされました。事務当局としましても今後,甲案,乙1案,乙2案のいずれを採用するかを議論していくに当たっては,このような検討が必要不可欠であると考えており,部会資料の5ページから6ページに掛けての(注)書きはそのような考え方を記載したものになります。   続いて,本文3では,一定の紛争の適用除外に関する規律を提案しています。基本的には,シンガポール条約に倣い,消費者紛争,個別労働関係紛争,家事紛争については適用除外とすることを提案しております。もっとも,これまでの議論において,消費者紛争,家事紛争について執行力を付与する対象とすることを検討すべきとの考え方が示されているところであり,パブリックコメントの手続において一般の方々から広く御意見を頂く必要があるものと考え,本文に(注)書きとして記載しております。   他方,個別労働関係紛争については,これまでの議論において,執行力を付与する対象とすることに対し消極的な意見が強かったものと認識しておりますので,(注)書きとしての記載はしておりません。   本文4では,和解合意に基づく民事執行の合意に関する規律を提案しております。ここでは部会資料4-2と同じ規律を維持しており,変更は加えておりませんが,当事者による意思表示の時期及びその態様の在り方については引き続き検討する必要があるものと考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   この部分と関連して,参考資料5というのが出ております。この点につきまして,司法法制部,渡邊関係官から御説明をお願いしたいと思います。 ○渡邊関係官 参考資料5を御覧ください。少しお時間を頂戴しまして御説明をさせていただきます。   前回御紹介しましたとおり,法務省に設置されましたODR推進検討会では,昨年の11月から12月に掛けて,ADR事業者に対するアンケートやヒアリングを実施したところでございまして,この資料は,そのヒアリングの結果をまとめたものになります。  ヒアリングに当たりましては,いわゆる士業団体のほか,取扱件数の多いADR機関を中心にお声掛けをさせていただき,各事業者においてADRの実施状況等の実情を御説明していただいた上で,執行力の付与に関するニーズや弊害を中心に御意見を賜りました。この参考資料5は,その概要をまとめたもので,執行力の付与についての賛否に関する部分は,事務当局の方で下線を引かせていただきました。   続きまして,ヒアリング結果について簡潔に御報告させていただきます。まず,総論的なことを申し上げますと,執行力の付与に全面的に反対をするという機関はございませんでした。一方で,無条件で賛成するという意見,又は一定の条件の下であれば執行力を付与することが考えられるのではないかという意見がございました。   個別のヒアリング結果につきましては,時間の都合もございますので,全てを御紹介することまではかないませんので,本日は特に,部会資料5-2の第1の3にありますように,執行力の付与の適用除外の対象とすることが検討されております3つの紛争類型,消費者と事業者との間の契約に関する民事上の紛争,個別労働関係紛争,家事紛争といった類型の紛争を主に取り扱っているADR機関の実情や御意見を御紹介させていただければと思います。   まずは,参考資料5の1ページの上段,独立行政法人国民生活センターとある部分を御覧ください。御案内のとおり,国民生活センターでは全国に1,200か所以上ある消費生活センターと連携して消費者問題に取り組まれておりますけれども,年間約90万件の相談情報を収集されているとのことでございまして,相談段階を含めますと,消費者と事業者との間の紛争について,恐らく我が国で最も関わりの深いADR機関であり,専門的知見を有するのでないかと思われます。   二つ目の・でございますけれども,国民生活センターにおけるADRでは,成立した和解の履行の確保を図るなどのために,義務履行の勧告制度や結果の概要の公表制度といった民間ADRの認証制度にはない独自の法的な手当てがされておりまして,これらの制度を活用して,義務を履行しない者に対しては,その義務の履行を勧告することのほか,その勧告によっても合理的な理由なく履行しない場合には,事業者名等を公表しているとのことでございました。そして,そのような制度の活用に加えて,三つ目の・にございますとおり,執行証書や和解に基づく仲裁判断を利用して執行力を付与することも行っているということでございます。   執行力の付与に関する国民生活センターの御意見は,四つ目の・のとおりでございまして,いわゆる消費者紛争は,元々紛争の目的となる価格が低額であるため,執行手続の利用が費用対効果の点からなじまないという特色があり,また執行証書等の別途の手続を利用することについても,費用の問題や,相手方との対面が必要となるなどの心理的ハードルが高いということから,国民生活センターとしても,また利用者としても,執行力の付与に対する期待は大きいとのことでございました。   なお,御参考までにということになりますが,ODR推進検討会には,国民生活センターの理事にも委員として御参加いただいており,今申し上げたようなことから,いわゆる消費者紛争を執行力付与の適用除外とすることについては強く反対するとの御意見を述べられているところでございます。   続きまして,3ページの下になりますが,家族のためのADRセンター(小泉道子氏)とある部分を御覧ください。この小泉氏は元家庭裁判所調査官であった方で,個人で認証を取得されています。一つ目の・にございますとおり,家族のためのADRセンターでは年間120件ほどの離婚,相続等の家事紛争を取り扱っており,そのほとんどが離婚関係,夫婦関係の紛争であるということでございました。その取扱件数は認証ADR機関全体の中でも相当の割合を占め,家事紛争の取扱件数につきましては認証ADR機関の中で最も多い機関となっております。まだ認証を取得されて間もない機関ではございますけれども,このような実績があり,いま最も勢いのあるADRの一つということになろうかと存じます。   二つ目の・にありますとおり,家族のためのADRセンターでは養育費の支払や財産分与で分割払を約束する事案,つまり将来に履行の問題を残して和解合意をする事案では,ほとんどの場合に公正証書を作成し,執行力を確保しているとのことでございました。   続きまして,ページをめくっていただきまして下線部の部分でございますけれども,家族のためのADRセンターの御意見としましては,強制執行できないことを危惧する問合せがあることや,和解合意を公正証書にする費用や手間を考えると,執行力を付与するニーズが高いものと考えているとのことでございました。   最後になりますが,4ページの下になりますが,全国社会保険労務士会連合会とある部分を御覧ください。一つ目の・にございますように,社会保険労務士会では個別労働関係紛争を取り扱っておりまして,そのうち約9割が労働者側からの申立てであるそうでございます。ページをめくっていただいて,全国社会保険労務士会連合会としましては,かねてより執行力の付与が必要であるとの立場であるそうでございますけれども,現状としては,単位会によっては賛成の会もあれば反対の会もあるというのが実情のようでございます。   本日御紹介できなかったADR機関のものにつきましては,参考資料5を適宜御参照いただければと思います。御案内のとおり,ADRにより成立した和解合意に執行力を付与することについては,ADR法制定当時からニーズが指摘されているところでして,前回御紹介しましたとおり,今般のODR推進検討会で実施したアンケートでは7割以上のADR機関が執行力の付与に賛成の意見を表明しているということでございまして,ADR機関を含む関係者におかれましては,この部会での調査,審議については大きな関心と期待を寄せられている状況にございます。引き続き充実した調査,審議をお願いしたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,今御説明いただきました参考資料の内容も踏まえながら,部会資料5-2のうち第1の1から4まで,この辺りについて,どなたからでも,どの点でも結構ですので,御発言を頂ければと思います。 ○古田委員 ありがとうございます。古田でございます。   今御紹介いただいたヒアリング結果の概要で,消費者の関係で国民生活センターですとか,あるいは家事事件の関係で家族のためのADRセンターから出ている意見を伺いまして,なるほどと思いました。ただ,今回の立法では,調停による和解に執行力を与えるといっても,それを債務名義にするためには執行決定の手続を経ることが必要となっております。他方,公正証書ですとか即決和解ですと,それが直ちに債務名義になりますので,特に消費者事件ですとか家事事件を考えると,強制執行するときに執行決定の手続を経るというのは,それはそれなりに手間がかかります。もちろん執行力を付与した方が,より債権者保護になるという面はあるかと思いますけれども,現在も利用されている公正証書ですとか即決和解ほど簡単に強制執行ができるわけではないということは,中間試案の補足説明などに書いておいていただいた方が誤解がないと思いました。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○手塚委員 手塚です。聞こえておりますでしょうか。   まず第一に,国際,国内というところで言いますと,私の認識は,シンガポール条約への対応をスムーズに行うということが,日本企業にとって国際的紛争の解決に調停を利用することの促進のため,あるいは,少なくとも調停利用の妨げとならないことのために重要であると考えておりまして,そうでないと,海外のシンガポール条約加盟国の当事者は,自分が支払う調停和解は自国で執行されるのに,日本側が支払う調停和解は日本で執行できない,あるいは,調停和解の場合によくあることだと思いますけれども,お互いに相互的に権利義務を持つ,相互的な義務を負っているという場合に,加盟国の当事者から見ると,自分の義務については自国で執行されるのに,日本側当事者の義務については日本で執行力がないという不公平ないしは非対称性というものが生ずるというところに,シンガポール条約が加盟国を増やす中での,それに対応しないことから生ずる問題点の大きさがあると思っております。ハイブリッド的な仲裁と調停を組み合わせた手続の振興という点でも,その点は重要だと思っております。   それで,国内についてはいろいろなタイプの調停,あるいはいろいろな性格の主宰者がいて,意見の一致をスムーズに得られるかどうかが不明ではないかというのが私の認識でしたので,国内の意見調整に手間取ることによって国際商事調停の方についてまで法制化が遅れるという事態は是非避けていただきたいと思っておりました。そのために,乙2案というようなことも一時申し上げたところではありますが,乙2案で,執行力を付与するかどうかについて認証調停かどうかということで分けると,これは東京三会のようにあえて認証を取っていない弁護士会の賛同が得られないのではないかというような懸念があり,やはり法制化の遅れを招きかねないのではないかと思っていた次第です。   他方で,考え方として先ほど,弁護士等の法曹資格者が関与しているというようなものを一つの基準にするという考え方も示唆されておりましたが,認証調停及び弁護士会調停というような形で線引きをするということで,国内についてある程度早期に,もし見解の一致が見られるのであれば,私自体は国際商事調停の方の法制化が遅れることを心配していただけであって,国内調停については執行力は常に不要であるということを考えていたわけではないので,もし今言ったような線で,例えば,国内の方が意見の一致を比較的早期に見られるのであれば,私としては,認証かどうかだけで分けるよりは,その方がいいのかなと今は考えております。 ○山本部会長 ありがとうございました。確認ですが,今の手塚委員の御意見は,中間試案の提示の仕方としてはこれでいいという御意見だと伺ってよろしいですか。 ○手塚委員 そうですね,そこは。ただ,認証で分けるというのが飽くまで一例であるというところは,できれば説明をしていただきたく,あと,説明に入るかどうかあれなのですけれども,できれば,例えば認証プラス弁護士会調停とか,そういうようなことを言っていただくと,恐らく東京三会なんかも,そこはほっとされるのではないかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございます。   今の点は補足説明等で御対応を頂くということになろうかと思います。 ○増見委員 ありがとうございます。増見でございます。   当初から御質問とか御意見も申し上げさせていただいているところなのですけれども,甲案,乙案で,甲案は国際性を有するものに限定するという趣旨の御提案だと理解はしているのですけれども,ただ定義が,例えば,甲案の①の,当事者の全部又は一部がお互いに異なる国に住所,事務所又は営業所を有するとき,要件としては,いずれかに当てはまれば該当するということになるわけですけれども,お互いが,若しくは一方が,複数国に営業所を有していたら,では国際性を有すると解釈していいのかというふうに,このままでは読めてしまうので,日本企業同士の紛争であっても,これは適用可能であると解釈し得るように見えます。複数の項目でそういうふうに解釈ができると思っておりまして,例えば,準拠法を日本法以外の法律に,日本企業同士,日本に本店を持つ企業同士の契約であっても,準拠法を他国の法律にすれば,この調停は執行可能である国際性を有するものと解釈できると,このように読み取れる案になっておりますので,その辺りの趣旨が御提案と合っているのか,これはどこまでを適用することを想定しているのかというのを,少し補足説明をしていくなり,明確化していただく必要も出てくるのかなと思っております。それと併せて,やはりそこの線引きが難しいので,私は乙案の方が適当ではないかと考えておったところなのですけれども,このまま御提案されるのであれば,少し甲案について明確化が必要であるように考えております。 ○山本部会長 ありがとうございます。今の点,事務当局からコメントがございますか。 ○福田幹事 福田でございます。御指摘ありがとうございます。おっしゃるとおり,外縁をどこまで取り込むのかというのを,そこの部分が最大の関心事だろうと思いますので,補足説明等で具体例も含めながら,なるべく分かりやすく説明を加えたいと思います。ありがとうございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○道垣内委員 ありがとうございます。道垣内です。   二つあります。一つめは3ページの説明のところです。これは,4-2のときから既にあるところなので,そのとき申し上げればよかったのですけれども,国際性がある和解について,執行証書とか即決和解が現実的ではないとされています。しかし,日本で執行しようと思っている場合ですから,必要があればそうするのではないでしょうか。できないということはなくて,調停で執行力を与えるということができるのであれば,便利になるということであって,やや書き過ぎかなと思います。むしろ,先ほど手塚委員がおっしゃったようなところが正直なところで,シンガポール条約対応だということをもっときちんと書く方がいいのではないでしょうか。これが付け加わったからといって,ではこちらだけにしようかとはならないのではないかと思います。それが1点めです。   そのような観点からいうと,2番目の点ですが,甲案と乙1,乙2の分け方が少し不自然なように思われます。乙2は甲の別案なのではないでしょうか。甲は乙よりも優勢だといった優先劣後関係はないとしましても,分かりやすくするために,乙1を甲にして,今の甲案を乙案とし,国際性があるものに限るものを乙1,それに更に一部国内のも付け加えるという乙2が付くという方がいいと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。事務当局からございますか。 ○福田幹事 福田でございます。今の御指摘も踏まえて,このネーミングをどうするかというところだと思うのですけれども,今の我々の考えですと,まず国際性があるものだけに限定して,和解合意に執行力を付与するというのが甲案で,国内にまで広げるものを乙案として対比していたのですけれども,なかなかその部分が分かりにくいということであれば,もう甲,乙,丙みたいな形で三つ出すこともあり得るかなとも考えましたけれども,引き続き少し事務当局内部で考えさせていただきたいと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○吉野委員 吉野です。   先ほどの渡邊関係官の説明に加えて,私どもの民間総合調停センターもヒアリングに基づいて意見を述べております。その内容のとおりなのですが,適用除外に関する問題で,これまで私どもは消費者紛争とか個別労働関係紛争も含めるという方向で意見を述べさせていただいたところです。私どもの担当する事件で,そのような事件がどの程度の割合であるのかというようなことを,前回までの議論の中で聴かれていたところでありますので,それについて若干,補足して説明させていただきたいと思います。   私どものセンターの事件の中で,個人が申立人で相手方が法人というのが50%ぐらいあります。そうしますと,やはり個人が申立人になって,言わば債権者となって,法人に対して請求するという事件が非常に多くを占めるということです。その中には債務不存在確認的なものもあるのではないかというのですが,債務不存在確認はこの10年間で年に1件ぐらいずつしかございません。したがいまして,消費者が申立人となって,言わば債権者となっている事件が非常に多い割合を占めているということは,これまでの私の意見に付加して説明をさせていただきたいと思っております。   これは,中間試案の原案の問題ではありませんけれども,先ほどの渡邊関係官の説明に付加して述べさせていただきました。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 垣内です。どうもありがとうございます。   中間試案の示し方に関しましては,私は今日御提案のような形で基本的によろしいのではないかと考えておりました。先ほど道垣内委員から御指摘があった点は,なるほどと思って伺っていたのですけれども,甲,乙,丙とすることも一つあり得る選択肢かと思いますし,甲案,乙案という形で整理するということであれば,乙1案,乙2案を包括する乙案全体の説明として,国際的なものに限らず国内の事案についても一定の範囲で執行力付与を認める考え方というような説明を付けた上で,具体的にはそのうち乙1案,乙2案があるというような整理をして,その点が分かりやすいように表現するということも,仮にこの二本立てで一方を分けるということであれば,考えられるかなと思いました。   あとは,内容的には補足説明の内容に関わるお話になるのかもしれませんけれども,乙2案の考え方に関しまして,私自身はこれもあり得る方向ではないかというようなことを発言させていただいてきておりますけれども,本日の資料ですと5ページ(2)の第1段落の終わりの辺りに,認証紛争解決手続によっては手続の公正かつ適正な実施が一定程度担保されているとの指摘があるといったような記述がされているところです。こういった観点も一つあり得る観点かなと思っておりまして,更に加えますと,裁判所が執行についての決定をするという段階で,認証紛争解決手続の場合には,ここでありますように,手続実施記録の保存義務でありますとか,手続の標準的な進行が定められているといったようなことで,手続全体の透明性確保に一定の配慮がされているというようなこともありますので,事後的に執行拒否事由の存否を判断するような場合にも一定程度,その判断の資料の確保が期待できるといったようなところも一つの観点としてはあり得るのかなと考えております。   最終的にそういった点を補足説明に盛り込んでいただくかどうかは事務局の御判断かと思いますけれども,意見がおよそ出ていないものを盛り込むことはできないと思いますので,ここで念のため少し付言をさせていただいた次第です。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○有田委員 有田です。ありがとうございます。   今,お二人の方がいろいろとお話しされたましたが,当初,この案を見たときに,何か分かりにくく意図的に作っているのかと感じましたが,今の御提案にあったような形で,事務局の方が分かりやすく変更してくだされば,この案でよいと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○今津幹事 東北大の今津でございます。大きく2点,御意見を述べさせていただきたいと思います。   1点目ですけれども,全体に関わるところかと思うのですけれども,調停による和解合意に対する執行力の付与という用語が少し分かりにくいというか,誤解を招きそうだなというところで,先ほど出たように,執行力を仮に付与するとしても,執行判決を取った上でということを前提に考えていらっしゃると思いますので,その場合は,執行決定のある和解合意に執行力が付与されるというような形になると思うので,端的に和解合意に執行力を付与するという表現だと,あたかも執行判決なしでいきなり行けるというようなイメージを持たれかねないと思いますので,少し長くなってしまうのですけれども,執行決定のあると付けることも考えていいのかなというところを一つ,気になったところとしてお話をしたいと思います。   それから,もう1点,既に出ているところですけれども,甲,乙案の書きぶりというところに関してですが,私も最初に見たときに,甲,乙の区切り方を,特に乙1と乙2の書き方が少し分かりにくいかなという気がしたので,その辺りは事務当局の方で工夫されていただければと思います。   それから,甲案の書き方ですけれども,先ほど増見委員のおっしゃったことと少し関連しそうなところなのですが,この御提案の中では国際性があるものについてのみ適用するという形の書きぶりになっているのですが,ぱっと見て長く要件が書かれていて,少し分かりにくいかなという印象がありますので,例えば,国際性がないものについてはこの限りではないというような書き方にすることはできないのかなと。国際性がないもの,つまり純国内的なものについて除外するというような書き方が,もしかしたら,できるのかなというところを,少し思い付いただけなのですけれども,そういったことができないかというところも検討していただければと思います。 ○山本部会長 ありがとうございます。事務当局から何かコメントはありますか。 ○福田幹事 福田でございます。甲案,乙1案,乙2案の並べ方については,皆様から今,御意見いただきましたので,見出しを付けるなどして少し工夫する余地は十分あるかなと思っております。いずれにしましても,分かりやすい形にしたいと思います。   最後,今津幹事から御指摘のあった点については,そのような御意見も昔,研究会のときなども出ていたかと思いますけれども,具体的には,では,どうやって逆に純粋国内のものを書くかという問題もまたあるのかなと思っておりまして,どちらがどう分かりやすいのかというのは,私も定見がございませんけれども,将来的にひょっとしたら,そういうふうな方向での規律ということもあり得るかなとは思っておりますが,なかなか中間試案でそこをいきなり出すというのは,現時点では難しいかなと思っておりますので,引き続き検討の素材としては引き取らせていただきますので,そういう方向でよろしいでしょうか。 ○山本部会長 よろしいですか。是非,今津幹事にも具体的な案をお考えいただければ。 ○今津幹事 1点だけ,少し関連してなのですけれども,書き方が,先ほどの話だと,全部又は一部が異なる国にとかいう書き方になっているので,少しややこしかったりするのかなという気がするので,両方が日本にというような書き方で限定する方が端的に書けるのかなと,思い付きで申し上げたのですけれども,確かに厳密に区切るとなると,国内に限るというのも書き方が難しいという今のお話は,そのとおりだと思いましたので,引き続き,そういう可能性もあるということを念頭に考えていただければというところで。結構です。 ○河井委員 河井でございます。聞こえますでしょうか。   皆さんとは若干違った観点での確認というか,御質問なのですけれども,この和解合意の執行力の付与の,執行決定を前提としているという話が今ほど何人かの先生方からありましたけれども,少し下世話な話かもしれませんけれども,費用の点なのですけれども,これは民訴費用等の法律でいう仲裁法の執行決定の申立ての場合は4,000円で,和解の申立てが2,000円なのですけれども,4,000円とかそういうレベルで執行決定をできるというイメージで皆さん議論していて,そういう前提でよろしいのかという点を事務当局に確認したいのですが,よろしいでしょうか。 ○山本部会長 現段階ではなかなか答えられることに限界はあるかもしれませんが,事務当局から,もしお答えがあれば。 ○福田幹事 福田でございます。この点については,これまでまだ御議論いただいていないところですので,現時点で事務当局として勝手に決め打ったような定見を出すわけにいかないのですけれども,仲裁判断の執行決定と並びでという部分がこれまでも再三,議論の中で出てきましたので,そこから大きく費用の面でかさむようなことになるというようなことは今のところは想定しておりませんが,こちらもひょっとしたらパブリックコメントが終了した後に御議論いただくのが適切な場面もあるかもしれません。現時点では以上のとおりです。 ○山本部会長 ありがとうございました。よろしいですか。 ○手塚委員 手塚です。聞こえておりますでしょうか。   2点ございまして,一つは,国際性のある調停の書きぶりですが,シンガポール条約にもし加入するときに,その妨げとならないようにすることが大事なので,シンガポール条約の文言であるとか規律の仕方と整合性のある書きぶりが望ましいということを忘れてはいけないと思います。   私の理解は,今の書きぶりはシンガポール条約と整合するように工夫されていると思っておりますし,二つ以上ある場合にどうなのかという点は,部会資料5-2の3ページ(2)のところで,当事者が2以上の事務所又は営業所を有するときには,和解合意成立時において,和解合意によって解決された紛争と最も密接な関係がある事務所又は営業所をいうとされているので,複数あるときに,幾つかある中の一つでも違うところであればいいという話ではなくて,飽くまでも最密接関連の営業所を基準に判断するということではないかと思います。それが第1点です。   2点目は,道垣内委員の御指摘で,これは同じ資料の3ページの下の方の説明の1の冒頭のところで,国際的な調停においては執行証書や即決和解等の代替手段を要求するのが現実的ではないとはいえないのではないかという御指摘があったと思うのですが,これは和解合意をする段階で,英語だけで調停をしてきて,英語だけで和解合意書も書くということを可能にするということが大事だという趣旨でありまして,日本で執行することが将来,可能性があるということで,したがって日本語で外国の当事者が裁判所を利用して即決和解手続をしておかないといけない,あるいは公証人と日本語で何か手続をしなければいけないと,そういう手間を常に要求するのは現実的でないという趣旨でありまして,和解合意というのは必ず裁判所で執行することが,可能性として,より高いといえるかというと,そうではなくて,むしろ執行しなくても任意に履行されることの方が多いと思いますが,仮に履行されないときに執行できるというところが,調停を促進するという意味で,執行力を付与するといっているだけですので,実際に執行しなければいけないときに日本語で裁判所に書類を出さなければいけないということは,それは当然なのですけれども,仲裁判断でも,英語の仲裁手続で英語で仲裁判断をしたのだけれども,万一執行できないときに日本の裁判所に行く可能性があるから,その時点で日本語でも書いておくべきだという議論はないのと同様に,国際的な調停において英語だけで手続をして,英語だけで和解をするということができるようにするという趣旨ではないかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○長沼幹事 外務省の長沼でございます。今,手塚委員から非常に重要な御指摘がありますので,1点だけコメントさせていただければと思って,発言をお願いいたしました。   シンガポール条約に入るということになりますと,その段階で,条約の規定と本当に細部に至るまで精査することが必要になってまいります。その段階で,もし微妙な齟齬があるということになるのだとしますと,そこは合わせざるを得ないということになります。今は非常に大枠の観点から大所高所の議論を行っていただいて,その方向性を決めた上で,最後は細部を本当にぎりぎりと詰めて,齟齬がないようにしていく,そんなプロセスではないかと我々としては考えています。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○山田委員 ありがとうございます。山田でございます。私から3点申し上げたいと思います。   全体として,この聴き方に関しては特段の異論はないですけれども,一つは,いわゆる立法事実に関する説明を少しした方がよいのではないかということでございます。本日御紹介のありました参考資料5は開示の際には参考として付されるのかなと推測をしておりますけれども,かねてよりこの執行力付与の問題というのは議論されてきて,立法事実がない,あるいはニーズがないと言われていたところが少し変わってきたのだということが,過去とは異なる立法事実があるということは,少しどこかで御紹介を頂ければ,答える方も答えやすいのかなということが1点です。   第2点は,先ほど古田委員からかな,お話があったかと思いますが,現在ある執行方法と執行決定というのは,どちらもなかなか苦労がありそうだというお話でございましたけれども,正にそのとおりでして,現在ある執行方法においても一定,限界がある,あるいは即決和解においても,一旦請求の趣旨等を固めなければならないというような手間暇があるということは,並びで書くのであれば,両方とも書いた方がよいのかなということが2点目でございます。   3点目なのですけれども,6ページの3の紛争の適用除外のところです。ここに関してはこれまでの議論は,ニーズ論あるいは弊害論も含めて,国内事案を前提としていたように思うのですけれども,現在の書きぶりですと,国内,国外を問わない書きぶりになっているのかなと思いまして,ここは答える方もやや,どちらの話をしようかということになりそうな気がしますので,少し御工夫いただいた方がよいのかなというところでございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○福田幹事 今の点,事務局から一つ質問させていただいてもよろしいでしょうか。 ○山本部会長 お願いします。 ○福田幹事 ありがとうございます。福田でございます。山田先生の今の御発言に対して,一つ質問をさせていただきたいと思います。   3の一定の紛争の適用除外のところについての御意見を頂いたと思うのですけれども,国際と国内とで別の規律もあり得ると,そういうものを排除しないということを何か(注)等で記載した方が,より意見が出やすいのではないかという趣旨の御意見と承ってよろしいでしょうか。 ○山田委員 はい,シンガポール条約そのものはもちろん商事調停を対象にしており,また,先ほど御紹介いただいた資料5というのは国内の話をしているので,端的に,例えばハーグ条約事案などでは,ある程度,家事のことも分かるとしましても,その他のことは適用除外すべきかどうかがなかなか難しいのかなと思いまして,法案といいましょうか,規範としてどうなるのかというのは,全く私も定見がないのですけれども,分けて聴く余地はあるのかなということでございました。 ○福田幹事 ありがとうございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。 ○出井委員 出井です。パブリックコメントの聴き方としては,こういう形でよいと思います。強いて言うとすると,先ほど手塚委員がおっしゃったような方向で,乙2になるのか丙になるのか分かりませんが,その(注)の書き方は工夫をしていただければと思います。   それから,これは事務当局への質問になるのかもしれませんが,先ほど山田委員のお話の中にも出てきた立法事実,すなわち一定の条件での執行力のニーズ及び弊害,問題点について,その辺りが立法事実になるのだと思いますが,これについてはODR推進検討会の方でも一定の取りまとめがなされると承知しておりますが,そのタイミングを少し確認したいのですが,当部会では今日このたたき台が出てきて,次回との間なのか,次回は3月5日でしたか,それまでに中間取りまとめがまとまるのでしょうが,ODR推進検討会の方でも,このヒアリング及びアンケート,それからこれまでの議論を踏まえて,取りまとめがなされるのだと思いますが,それが出てくるタイミングが当部会の方のパブリックコメントのタイミングとどういう関係に立つのか,その辺りの見通しを教えていただければと思います。 ○山本部会長 それでは,福田さんか渡邊さんか,分かりませんが。 ○渡邊関係官 それでは,渡邊から申し上げます。ODR推進検討会の関係でございますが,一応,見通しとしましては,今年の3月,年度内をめどに取りまとめをする予定でおります。取りまとめをした内容は,これまで暫時御紹介していますとおり,この部会でも結果を御報告させていただこうと,このように考えているところです。 ○山本部会長 ありがとうございました。先ほどの質問として,3月5日,次の部会との先後関係という御趣旨もあったように思われるのですが。 ○出井委員 それと,パブリックコメントとの先後というのか,真っただ中というのか,その辺りのイメージですね。パブリックコメントには資料になるのでしょうかというのが端的な質問になるかもしれません。 ○福田幹事 では,福田からお答えいたします。中間試案の補足説明の中で,ODR推進検討会で行われたアンケートやヒアリングの結果概要を一部紹介するということはあり得るかなと思っておりますが,その補足説明の資料という形で,別途,ODR推進検討会での資料をそのまま添付するということは想定していませんでした。ですので,その点は補足説明でどこまで書き込むかというところについて,更にこちらで検討したいと思います。   時間的なところですけれども,恐らく,次回のこちらの部会が3月5日になります。そこで取りまとめがされるのか,また引き続き検討ということになるのか,まだ予断を許さないわけですけれども,一定期間,準備をさせていただいてパブリックコメントを掛けるということを予定しておりますので,仮に3月5日で取りまとめをしていただけるのであれば,3月中にはパブリックコメントを掛けることが可能になるのではないかと考えております。 ○山本部会長 出井委員,いかがですか。 ○出井委員 弁護士会でもパブリックコメント対応を検討しなければいけないものですからお聞きしています。いろいろなコンティンジェンシーはあるとしても,そうすると,ODR推進検討会の方の取りまとめは3月5日には間に合わないとしても,その後,パブリックコメントが付されている途中では出てくる可能性が十分あると,それも踏まえて意見を出す人は意見を出すことができる,そういう態勢になるということですか。 ○福田幹事 そういうことになろうかと思います。 ○山本部会長 よろしいでしょうか。   垣内幹事,関連する点ですか。 ○垣内幹事 はい,今の点ですけれども,今のやり取りのお話の中に含まれていたかと思いますけれども,ODR推進検討会におきましてニーズ等について,これまでの議論を踏まえて取りまとめということを予定しておりますので,中間試案の補足説明等での取扱いについてどういう形でしていただくのがいいのか,十分に御検討いただいて,しかるべくお願いできれば有り難いと考えています。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。   それでは,次に,部会資料5-2の第1の残りの部分,5から9ですね,8ページから12ページの辺りについて御審議をお願いしたいと思いますが,まず,事務当局から説明をお願いいたします。 ○鈴木関係官 それでは,鈴木から説明をさせていただきます。   まず,本文5では,一定の和解合意の適用除外に関する規律を提案しております。ここでは,部会資料3-1と同じ規律を維持しており,裁判上の和解や仲裁判断としての効力を有する和解合意を適用対象から除外するとの規律を提案しております。   第3回会議において,外国裁判所における裁判上の和解については執行力を付与する対象とすることも考え得るとの指摘がされましたが,他方,裁判上の和解といっても,各国の法制度により様々な内容が含まれ得るところ,当事者間の合意と裁判所の判断との区別が困難である場合が想定されるとの指摘や,管轄合意に関する条約と他の条約の規律との整合性が問題となり得るとの指摘もされました。これらの議論を踏まえますと,外国裁判所における裁判上の和解を今般の枠組みによって執行力を付与する対象とすることには,なお慎重な検討が必要であると考えられることから,外国裁判所における裁判上の和解も適用除外とする規律を本文に掲げることとしました。   続いて,本文6では,書面によってされた和解合意に関する規律を提案しています。部会資料3-1で提案した規律に対し,第3回会議において特段異論は見られなかったことから,同規律を維持しております。   本文7では,和解合意の執行決定に関する規律を取り上げております。ここでも部会資料3-1で提案した規律と同じ規律を維持しておりますが,(2)の翻訳文の提出に関する規律や(4)の管轄に関する規律については,仲裁関係事件手続における外国語資料の訳文添付の省略や,管轄に関する規律と同様の規律を設けることの要否を検討する必要があるものと考えており,本文に(注)書きとして記載しました。   続いて,本文8では,和解合意の執行拒否事由に関する規律を提案しています。⑧,⑨の拒否事由について,部会資料3-1では,「当事者が和解合意をするに至らなかった」との規律を提案しておりましたが,第3回会議での指摘を踏まえて,「当事者が当該和解合意をするに至らなかった」との規律に変更しています。その他の規律については変更を加えておりません。   第3回会議において,本文8の規律は,国際私法が指定した準拠法を前提に執行拒否事由の有無を判断することを想定していることから,国際性を有しない和解合意については別途,執行拒否事由に関する規律を設けるべきとの指摘がされました。しかし,この点は準拠法の位置付けをどのように解釈するかに関わるものであるところ,国際私法の分野においてはその解釈が分かれているものと認識しており,国際私法は純然たる国内的私法関係には適用されないとの解釈を前提に,別途,執行拒否事由を設けることにはなお慎重な検討を要するものと考えられます。また,仲裁法は外国仲裁判断と内国仲裁判断について統一の承認執行の規律を設けており,執行拒否事由を区別していません。以上を踏まえ,ここでは国際性の有無にかかわらず,統一の執行拒否事由に関する規律を設けることを提案しております。   最後に,本文9では,和解合意の援用については特に規律を設けないことを提案しております。この点に関しては,第3回会議において異論が見られなかったことから,規律を設けないとの提案を維持しております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,今御説明がありました部分について,御質問,御意見等,どこからでも結構ですので,お出しを頂ければと思います。 ○北澤委員 北澤です。聞こえておりますでしょうか。   私は,8の和解合意の執行拒否事由の説明のところの2,すなわち11ページの一番下の国際性の有無による区別のところで,主立った記述は12ページの方にあると思うのですが,こちらについて少しコメントをさせていただきたいと思います。上から3行目の辺りに,国際性を有しない和解合意について別途,執行拒否事由に関する規律を設けるべきではないかとの指摘があり,これは確か部会の3回目辺りに私が発言申し上げたように記憶しております。その趣旨といいますのは,元々シンガポール条約をベースに国際調停を念頭に置いて,この執行拒否事由についての規律を設ける際に,部会資料3-1のところでは,執行拒否事由の説明のところに,我が国の国際私法によりという説明が度々出てまいりまして,これは国際調停を念頭に置いているから,そうならざるを得なかったのだと思うのですけれども,今回のように甲案,乙1案,乙2案という形で乙案のような提案をする際には,当然のように我が国の国際私法によりという説明を入れたときに違和感を持つ方も,純国内事案については,いらっしゃると思うのです。ですから,純国内事案について新たに規律を設けるというよりも,純国内事案についても執行拒否事由は同じ基準ということでいいのだけれども,説明のところで,渉外事案と純国内事案のところで少し,言葉を補うといいますか,説明を付け加えるということをしてほしいという趣旨の発言でございました。純国内事案について新たに規律を設けてほしいということではなく,これまでシンガポール条約の国際調停の規律を前提に説明をしていた箇所については,甲案でない乙案のようなケースが出てきたときに,純国内事案をも念頭に置いた説明というものが当然,必要になるかと思いますので,そういった配慮を補足説明をお書きになる際にもしていただければという趣旨でございます。 ○山本部会長 ありがとうございます。それでは,その点は補足説明で対応を頂ければと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○竹下幹事 竹下でございます。聞こえていらっしゃいますでしょうか。   私,5の一定の和解合意の適用除外のところ,裁判所により認可され,又は裁判所の手続において成立した和解合意うんぬんのところでございまして,ここのところ,第3回の会議でも様々と述べさせていただいたのですが,多分,裁判所で行われたとすると,そもそも第1の,部会資料5の2の2ページの,調停による和解合意,ここのところで,当事者に対して紛争の解決を強制する権限を有しない第三者の仲介により和解と書いてあって,恐らくこれは裁判所でやったとすると,この権限を当然に持つという判断になるのではないかと思われ,この御提案自体は全くこのとおりでいいと思うのですが,説明を行うときに,今ここの説明として書いていただいていることに加えて,裁判所で行われたこういった和解合意については,やはり強制する権限を有しないという要件がそもそも当てはまらず,少し異質なものではないかという説明をしていただいて,今回の対象にはしないということを御説明いただくと,少しすっきりするのではないかと思いましたので,御参考までに発言させていただきました。 ○山本部会長 ありがとうございます。事務当局,よろしいですか。 ○福田幹事 福田でございます。御指摘ありがとうございます。   そういったところも踏まえて補足説明を作成したいと思っておるのですけれども,例えば,我が国の場合は裁判所が行う民事調停というのは,ここにいう「裁判所の手続において成立した調停合意」ということになろうかと思いますが,その場合に多分,調停委員会が何らか判断権限を持っているかという話になってくると,これはこれで一つ大きな論点なのかなと思っており,竹下幹事からの御指摘を踏まえた修文でかえって誤解が生じないようにすることも,また気を付けなければいけないかなということを,御指摘を聞きながら考えたところです。いずれにしても,今の御指摘を踏まえて,少し書きぶりは工夫させていただきたいと思います。ありがとうございました。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○古田委員 古田でございます。今,福田さんも指摘されましたが,民事調停はどう考えるかを竹下先生にお伺いしようと思っていました。民事訴訟の場合も,途中で調停に付して,調停が成立こともあるので,竹下先生がおっしゃった理由付けは余り強調しない方がいいのではないかなと思いました。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 ありがとうございます。垣内です。   今の点に関してなのですけれども,今日の8ページの5の①のところで,竹下先生のお話というのは,裁判所の手続において成立したと,これが特に訴訟である場合についてはよく当てはまるような感じがしたのですけれども,改めて見ますと,裁判所により認可されというのが何を意味しているのかということが今一つよく分からないような気もしてまいります。例えば,裁判外で行った和解について,何らか非訟事件手続的なもので認可をしてもらうと執行ができるようになるといったような制度は,比較法的には例があるのではないかと思いますけれども,一つの国でそういった認可がされると,例えば日本では執行ができないものとなる,あるいは,執行決定のようなものはこの認可に含まれるのかどうかとかいったことが若干,気になるような感じもしてまいりまして,その場合には,竹下幹事の言われた,強制できる権限のある裁判官だからというのとは,また少し違う問題がここに含まれているのか,それともいないのか,民事調停は裁判所の手続ですので,含まれるのですけれども,外縁について少し理解が私自身,及ばないところがありますので,もし事務局に現段階でお考えのところを御説明いただけるのであれば,お教えいただきたいということです。すみません,よろしくお願いします。 ○山本部会長 それでは,事務当局からコメントありますか。 ○福田幹事 福田でございます。今こちらが想定しているものとしましては,日本ではそのような制度はないものと思いますけれども,当事者間で調った合意を裁判所に持ち込み同意判決といいますか,そういった体に整えるような制度を持っている国もあると承知しております。そういったものは,この「裁判所に認可され」というところに含まれるのかなと思っております。   あと,我々が調べたところによりますと,垣内幹事がおっしゃったように,民間のADRで行われた調停合意でも一部,裁判所に持ち込めば,執行決定のような手続を経た上で執行力を付与する制度を持っている諸外国も既にあるようですけれども,そういったものもここには含まれ得るのかなとは考えておりました。 ○山本部会長 垣内幹事,よろしいですか。 ○垣内幹事 そうしますと,そういうものが全部除外されてしまっていいのかなという素朴な疑問が少し湧いてくるような感じもするのですけれども,少し私自身,考えがまとまっていないところもありますので,もう少し考えてみたいと思います。 ○山本部会長 裁判所で認可されたものとして持ってきても,強制執行はできないけれども,民間でのADRの合意それ自体を日本に持ってくれば,それがその外国で認可されていたとしても,そのADR合意自体は日本でも強制執行ができる,この規律ができればですね。 ○垣内幹事 そういう解釈が採れるのであれば,問題はないということかなと思いますので,そうであれば,その辺りを少し整理する必要があるということかなという感じがいたします。 ○山本部会長 シンガポール条約の解釈にも関わる問題かと思いますけれども,事務当局の方で精査を頂いて,検討を頂こうと思います。 ○福田幹事 承知いたしました。 ○山本部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○竹下幹事 すみません,今の点で。今,福田幹事や古田委員から御指摘いただいた点はそのとおりかとも思われますが,他方で,元々シンガポール条約がこういったものには適用されないということの趣旨が,どこまでのことを念頭に置いているのかというのが若干気になるところでございまして,もちろんハーグとの関係で,ハーグの方でやっているからシンガポール条約の方ではやらないというのは一つなのだと思うのですが,他方でシンガポール条約を単体で見たときに,この裁判関連とでもいわせていただきましょうか,こういったものについて適用しないといっていることの趣旨がどこまでのことを意味しているのかというのは,今,御議論いただいていて,少し考えなければならないのかなと思われ,私自身も引き続き考えてみますが,事務当局の方でも御検討いただければと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○河井委員 今の竹下幹事の質問の延長なのですけれども,福田幹事のおっしゃった,執行決定を得ている場合も含まれるとすると,認可という言葉がそういう意味を含んでいるとすると,国内の調停合意に執行力を付与しようと法制を作って,それが全部ここに当てはまって,強制執行することができるものになると,適用しないと,自家撞着みたいなことにはならないのですか。 ○福田幹事 福田でございます。おっしゃっている趣旨はよく理解できるところですけれども,正に垣内幹事が先ほどおっしゃったように,執行決定を取った後のものについて,更に日本で執行力を付与するということまで認める必要があるのかどうかということにもなると思います。ですので,自国で執行決定を取らないで日本に持ってきたものは,まだそれは裁判所により認可されていないと思われますので,それは適用除外にならないと思うのですけれども,執行決定を得たものについても再度日本で執行決定をする必要があるかどうかというところは御議論いただく必要があるかなと思います。 ○河井委員 いや,日本で執行決定を得た場合も含まれるように読めてしまうというのが,どうなのかという。 ○福田幹事 執行決定を取ろうとしている段階ではまだ除外されていない状態なので,本文5の規律によってはじかれるということはないように思うのですが,そういうことではないのでしょうか。 ○河井委員 例えば,この裁判所というのは外国の裁判所と仮定していいのか,それとも日本の裁判所も含むのか,それはどちらですか。 ○福田幹事 それは日本のものも含まれると理解しております。 ○河井委員 ということですよね,そうすると。 ○山本部会長 そういう解釈をすると,全世界の1か国でしか強制執行できなくなってしまうような感じもするので,本当にそうなのかと,少し。先ほどのようなことで,シンガポール条約の「認可され」という部分は,少し議論の経緯とかを整理していただいて,引き続き当部会でも検討したいと思いますが。 ○古田委員 古田です。部会長がまとめた後で続けて申し訳ないのですけれども,今の裁判所の認可について,私としては,例えば,米国のクラスアクション和解は裁判官の認可が必要になっていますし,日本でも破産管財人が和解するときには破産裁判所の認可が必要だということになっており,そのような和解の実体法上の効力を発生させる上で必要な裁判上の認可という手続のことをいっているのだと理解していました。これに対して,執行決定は実体法上既に成立している和解合意に執行力を与える手続ですので,執行決定をすることが部会資料8ページの5①にいう裁判所の認可に当たることはないと思っておりました。 ○山本部会長 ありがとうございます。今の古田委員の解釈も含めて,少し事務当局で,先ほどのように,このシンガポール条約の趣旨も精査していただいて,認可されという文言でよいのかどうかということについて。 ○山田委員 すみません,先生方既におまとめのところ,若干の情報提供でございますけれども,シンガポール条約の議論の際には,まず,執行決定,日本ではもう執行決定という名前にしてしまっていますけれども,執行を認めるという機関は裁判所には限っておりませんで,しかるべき行政的な機関等もあり得るという前提で議論をしておりました。条約の条文にも,権限のある当局としか書いていないというところでございます。この5①に該当するところは,しかし,これは裁判所でありまして,基本的にはその外国において,先ほど垣内幹事かな,が言われたように,裁判官が関与せずにされた和解について認可をし,そして,それに基づいてその国で強制執行できるということを念頭に置いておりましたので,一言付け加えさせていただきます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,またこの点は次回の案で何らかの形で事務当局の方でクラリファイしていただければと思います。   ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,続きまして,最後ですけれども,部会資料5-2の第2,民事調停事件の管轄の問題ですが,これについて事務当局から説明をお願いいたします。 ○石川関係官 石川から御説明申し上げます。   部会資料5-2の第2では,裁判所において行われる民事調停事件の管轄に関し,知的財産の紛争に関する調停事件について,民事調停法第3条に規定する裁判所のほか,相手方の住所等が東京高等裁判所,名古屋高等裁判所,仙台高等裁判所又は札幌高等裁判所の管轄区域内にあるときは東京地方裁判所に,相手方の住所等が大阪高等裁判所,広島高等裁判所,福岡高等裁判所又は高松高等裁判所の管轄区域内にあるときは大阪地方裁判所に,それぞれ競合管轄を認めることを提案しております。この点については,第3回会議で特段異論が見られなかったことから,中間試案の本文に掲げることを考えております。   他方,第3回会議では,東京地方裁判所及び大阪地方裁判所において活用できる専門的知見の更なる活用の観点から,知的財産の紛争のほかに,例えば,医療,建築,商事,交通に関する紛争など,専門的知見が必要となるその他の事件についても,東京地方裁判所又は大阪地方裁判所に競合管轄を認めることとしてはどうかとの御意見も頂きました。これらの紛争については,対象となる紛争の範囲を明確かつ適切なものとするような規律の在り方など,更なる検討が必要であるとも考えられることから,本文の(注)において,引き続き検討することとしております。   なお,15ページの下方に記載しておりますように,高度な専門的知見が必要となる事件類型について,明確かつ適切に規律することは必ずしも容易でないと考えられることから,知的財産の紛争以外の紛争については,管轄に関する規律ではなく,例えば,民事調停法第4条の移送の規定に加え,裁判所は,専門的な知見を要する事件を処理するために特に必要があると認めるときは,申立てにより又は職権で,事件の全部又は一部を東京地方裁判所又は大阪地方裁判所に移送することができるといった規律を設けることも考えられます。このような規律の在り方についても,更に検討してまいりたいと考えておりますので,本日はこの点についても御議論を賜れれば幸いでございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,この点について御議論いただきたいと思います。 ○三木委員 今,御説明の一番最後にあった15ページのところですが,私もその後,検討した結果,やはり商事とか交通とかいう区切りでは仕切りとして余計なものを拾ってしまう可能性があるので,適切な規律が難しいのではないかと思います。この15ページに御提案のように,移送の要件として,専門的な知見を要する事件というようなことで,裁判所の裁量移送として東京地裁又は大阪地裁への移送で処理するというのは,それなりに適切な考え方ではないかと思います。したがって,もし可能であればですが,中間試案としてパブリックコメントに付す際には,こうした説明の中のやや目立たない形ではなくて,ゴシック体の案の一つとして掲げることも検討していただければと思います。 ○山本部会長 ありがとうございます。事務当局から何かございますか。 ○福田幹事 福田でございます。御指摘ありがとうございます。そのような形で皆さん御賛同いただけるようであれば,その方向性も含めて考えたいと思いますので,御議論いただければと思います。よろしくお願いします。 ○山本部会長 分かりました。 ○河井委員 河井でございます。建築紛争についてなのですけれども,私は今たまたま小さい支部の事件に本来管轄が在るべき事件を東京地裁で扱っている事件に関与しているのですけれども,建築紛争でも,一つの瑕疵による損害賠償請求のような比較的論点が簡単なものもあれば,例えば,建築契約の内容とか請負契約の内容と,その請負契約の進行の度合い,出来高についての細かい論点で,論点がたくさんあるような事案とか,かなり種類が多様だと理解しておりますので,建築紛争なら常に競合管轄を認めるというよりは,何らかの形で移送することができるという規律の方が柔軟な取扱いができるのではないかとは思っております。   以上,感想めいたことで失礼いたします。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○渡邉幹事 以前にも申し上げたところでございますが,東京地裁及び大阪地裁におきましては調停部が設けられており,知的財産の分野のみならず,医療,建築,システム開発等の幅広い分野の専門家調停委員が多数所属しております。そのような専門家調停委員に事件を担当してもらいたいというニーズは東京,大阪以外にも全国各地にあるのではないかと考えているところでございますので,知的財産調停以外にも,部会資料に記載されている医療事件,建築事件,商事事件のほか,システム開発に関する事件などについて,東京地裁又は大阪地裁の調停委員を活用できるようにするための方策を御検討いただきたいと考えております。   前回までは,管轄がない裁判所に対して移送することはできないということを前提に,競合管轄の規律の検討をお願いしておりましたが,今回の部会資料に記載されているとおり,知的財産の紛争以外の紛争について専門領域を特定して規律することは難しく,また,専門的な知見に対するニーズは変化していくことからすると,管轄の有無に関わらず,移送に関する規律を設けることに賛成したいと考えております。この規律によれば,裁判所が専門的な知見を要する事件を処理するために特に必要があると認めるときには,申立てにより又は職権で,事件の全部又は一部を東京地方裁判所又は大阪地方裁判所に移送することができることになり,両地裁の専門家調停委員を活用することができることになります。   先ほど三木委員からもお話がありましたとおり,この点について中間試案の本文又は(注)に入れていただくのが望ましいと考えている次第でございます。加えまして,必要な事件に限り移送が利用されるようになるための運用上の工夫として,移送先の裁判所において,本当に必要な専門的知見の内容や,それに対応する専門家がいるのかどうかといったことを確認した上で移送することが必要になるかと思っております。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○古田委員 古田でございます。今,渡邉さんからも御紹介がありましたけれども,東京地方裁判所の調停部は非常に専門的知見も高いと思っております。私もこれまで非常に複雑な案件ですとか困難な案件について,当事者間で管轄合意をした上で,東京地方裁判所で民事調停をやって頂き,うまく解決したことは何度もございます。そういう意味で,知的財産関係以外の事件でも東京地裁,大阪地裁で調停をやっていただくニーズというのはあると思います。その観点からは,いずれかの簡易裁判所に申立てがあった場合に東京地裁,大阪地裁に移送ができる規定を設けるというのは意味があることだと思いますけれども,その場合にはやはり一旦はどこか別の簡易裁判所に申立てをしなければいけないことになり,基本的には裁判所はなかなか移送には消極的な姿勢を示すこともありますので,やはり当初から東京地裁,大阪地裁に申立てができるという管轄規律があった方がいいのではないかと思っています。   渡邊さんからも,専門的事件の種類ですとかニーズというのは時代とともに変容していくのだという御指摘もありました。現状の御提案ですと,法律で管轄を決めることになっていますが,法改正はそれなりに手間も掛かりますので,一つのアイデアとしては,例えば,今回の法改正に当たって,知的財産の紛争に関する調停事件,その他専門的な知見を要するものとして最高裁判所が規則で定める種類の事件について,大阪地裁と東京地裁の競合管轄を認めるという規律を設けることもあり得ると思いました。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○垣内幹事 垣内です。ありがとうございます。   今,古田委員が言われたことにも重なるのですけれども,移送に関する規律を設けたときに,当初から東京地裁とか大阪地裁にしたいという当事者についてどうかという問題がありそうかなと思いまして,現行の民事調停法ですと,その場合,当初から東京地裁なりに申立てをして,4条1項で自庁処理をするということは一応可能なのではないかと思われまして,そうすると結局,初めから行くこともできるし,後で移送してもらうということも,場合によってはあり得るということになりそうで,そのことの実質的な合理性については私は特に疑うものではなくて,こういう規律があってもいいのかなという感じがしておりますが,仮にそうなのだとすると,そのことをもう少し端的に表現した方がいいのかなという感じもいたしまして,それが管轄の規定ということなのか,どういう形でするのかというのは幾つか選択肢があるかと思うのですけれども,規律が全体としてどうなるのかということが分かりやすい形で示されて,その御意見を伺うということが適切かなと感じました。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○山田委員 ありがとうございます。山田でございます。   私も,必要に応じて一定の裁判所に移送するということ自体は,その必要性はあるのだろうなと思ってはおります。ただ,御説明の中で,16ページの最後のところで,専門的な知見に係る訴訟事件について,付調停とした上で,それを東京地裁あるいは大阪地裁に移送することができるという御説明を卒然と読みますと,専門的な事件については,訴えを提起しているわけなので,訴訟で専門委員等の充実等を図るというのが本来のやり方であろうかと思われるところ,その専門的な知見を得るために付調停をし,言わばその調停の,便宜的とまでは申しませんけれども,そのような読み方をされてしまいますと誤解を招くのかなと思いますので,その辺り,書きぶりを少し御工夫いただければということと,それから,移送とか,あるいは民事調停法20条の付調停と,特に付調停の方は,争点整理等が終わった後は当事者の合意が必要だというふうな縛りが掛かっているわけですけれども,移送に関してもちろん職権でということであれば,必ずしも当事者の意見等を聴くということは明示的には書かれていないわけですが,そこは少し配慮する必要があるのかなと思います。この説明の中でどういうふうに書けばいいのか,定見がないので,お願いばかりで恐縮ですけれども,そのような感想を持ったということでございます。 ○山本部会長 ありがとうございました。 ○吉野委員 吉野です。先ほどの議論について,実務の実情について,私が知っているのはかなり前のことですが,お話をさせていただきます。   専門的な事件,しかも,特に専門中の専門事件について,移送というのは非常に現実的な方法だと考えています。ただ,これまで医療事件や建築関係事件については,司法制度改革の後,各裁判所において,調停委員あるいは専門委員の充実に努めてきておりまして,相当そろってきているのです。したがって,全ての事件について最初からこの競合管轄にするというのは,各地方裁判所のこれまでの努力は何だったのかということにもなりかねませんので,事件を限定したもの,例えば,建築事件についても,ある特定の分野については,それに通暁した建築士さんがいない,ごく一部の地方にしかいないということもありますし,医療事件についても,本当に特殊な分野のお医者さんについては,例えば東京などにしかいないということはあり得るわけですが,それ以外の多くの事件については,専門性がある医療事件や建築事件といっても,かなり多くの裁判所では対応する体制が整えられてきているということがいえると思います。したがって,当事者として,そのような情報を得た上での話ですけれども,特に特殊な専門分野の事件については移送ができるというのは非常に現実的なところだろうと思っております。だから,何が何でも建築事件や医療事件の全てをある裁判所に集中させるということまでは,やはり少し現段階ではまだ早いのかなという気がしております。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがですか。よろしいですか。   かなりいろいろな意見あるいはアイデアをお出しいただきましたので,今の議論を踏まえて事務当局では次回に,どういう形でパブリックコメントに付すかということについて原案を作成していただくということで,事務当局はよろしいでしょうか。 ○福田幹事 福田でございます。皆様の御意見を踏まえて,できる限り工夫して書きぶりを考えてみたいと思います。ありがとうございました。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,よろしいでしょうか,ほかに何かあれば。あるいは,この点に限らず,資料5-1から今日の全体を通してお気付きの点があれば,御指摘を頂ければと思いますが。 ○福田幹事 福田でございます。髙畑委員から御指摘のあった,仲裁合意の書面性に関するところの話を少しさせていただいてよろしいでしょうか。   部会資料5-1の仲裁合意の書面性で,9ページのところですけれども,まず,事務当局の考えとして,この仲裁合意に書面性が要求されている範囲を今回の改正で広げるということは想定していないという点は,御説明しておきたいと思います。   そこで,髙畑委員の問題提起というのは,今回,執行拒否事由等々におきまして,特に暫定保全措置の規律のところもそうなのですけれども,別段の合意というものが幾つか出てきますが,それらについて,この書面性の規律が掛かるのか,掛からないのかという問題意識であると受け止めているところですけれども,この論点のみならず,仲裁法には別段の合意というものがたくさん出てくるわけで,先ほど申し上げましたように,恐らく現行法の解釈では,そこは仲裁合意と同様の書面性までは要求されていないのだろうと我々は理解しております。   そうすると,今回の暫定保全措置の関係する部分の別段の合意というのも,基本的にはそれに倣うべきなのかなとも思っているのですが,髙畑委員の問題意識というのは,そういうふうな現行のものを変える必要がないという問題意識なのか,それとも,やはり別途また何か考えなければいけない,検討すべき事柄があるという御指摘なのか,そこを少し明らかにしていただけると大変有り難いのですけれども,いかがでしょうか。 ○山本部会長 髙畑委員,御発言いただけるでしょうか。 ○髙畑委員 ありがとうございます。髙畑です。   先ほど私の方で申し上げたのは,現行法上の仲裁合意の確か法律上の定義がございますので,それ以外に出てくる別途合意について,恐らく現行法を前提とすると書面性というのは求められていないという認識ではありますが,そこについて再度,御確認していただきたいという趣旨でございます。もちろん,改めて書面性を要求すべきだという意見は持っておりません。 ○福田幹事 ありがとうございます。 ○山本部会長 よろしいですか。   ほかにいかがですか。 ○三木委員 今の点に関してですが,私も仲裁法とか今回の提案の全体を精査していないので,具体的にはいちいちは分からないのですが,別段の合意というようなものが登場する場合に,それが仲裁合意の一部を構成するものと見られるものと,そうではないものがあるとすれば,そこがきちんと仕分けないと,今回の改正によって書面性に関する規定が修正されることとの関係で,その対象範囲に疑義が生じるおそれがあります。したがって,別段の合意の中で,仲裁合意の一部を構成するものがあるのか,それともないのかといったことの精査は,次回までにきちんと行っておく必要があろうかと思います。 ○山本部会長 ありがとうございました。   ほかにいかがでしょうか。よろしいですか。   それでは,意見は出尽くしたものと思われますので,本日の審議はこの程度にさせていただきたいと思います。   最後に,次回の議事日程等について事務当局から説明をお願いいたします。 ○福田幹事 福田でございます。本日も長時間にわたりまして熱心な御議論を頂きまして,ありがとうございました。   次回の日程は,本年の3月5日金曜日,午後1時30分からを予定しております。   次回の議題ですけれども,今日たたき台についてたくさんの御指摘を頂きましたので,これをリバイスする形でまた改めて提案をさせていただきますので,中間試案の取りまとめに向けた御議論をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○山本部会長 ありがとうございました。   それでは,これにて仲裁法制部会第5回会議は閉会とさせていただきます。   本日も長時間にわたりまして熱心な御審議を頂き,誠にありがとうございました。 -了-