法制審議会 第189回会議 議事録 第1 日 時  令和3年2月10日(水)   自 午後2時03分                        至 午後3時18分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題   緊急事態宣言中等における情報通信機器を利用した法制審議会への出席について   民法及び不動産登記法の改正に関する諮問第107号について   離婚及びこれに関連する家族法制の見直しに関する諮問第113号について   担保法制の見直しに関する諮問第114号について 第4 議 事 (次のとおり) 議        事 ○丸山司法法制課長 ただいまから法制審議会第189回会議を開催いたします。   本日は,委員20名及び議事に関係のある臨時委員1名の合計21名のうち,会議場における出席委員12名,ウェブ会議システムによる出席委員6名,計18名に御出席いただいておりますので,法制審議会令第7条に定められた定足数を満たしていることを御報告申し上げます。   初めに,法務大臣挨拶がございます。 ○上川法務大臣 法制審議会第189回会議の開催に当たりまして,御挨拶を申し上げます。   委員及び幹事の皆様方におかれましては,御多用中のところ本会議に御出席をいただきまして,誠にありがとうございます。また,法制審議会の運営に関する皆様方の日頃の御協力に対しまして,厚く御礼を申し上げます。   さて,本日は御審議をお願いする事項が四つございます。   議題の第1は,「緊急事態宣言中等における情報通信機器を利用した法制審議会への出席」についてでございます。   前回の会議において,情報通信機器を利用した法制審議会への出席に係る規律について御決定いただいたところでございます。本日は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止のため,緊急事態宣言が延長され,予断を許さない状況が継続していることを踏まえ,緊急事態宣言中等における会議の在り方について,改めて御検討をお願いするものでございます。   議題の第2は,「民法及び不動産登記法の改正に関する諮問第107号」についてでございます。   この諮問事項については,所有者不明土地問題の解決に向けて,平成31年2月の諮問以降,民法・不動産登記法部会において調査審議が重ねられ,その結果が本日報告されるものと承知しております。不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない,又は,判明しても,その所有者に連絡がつかない所有者不明土地は,民間の土地取引や公共事業の用地買収,森林の管理など,様々な場面において多くの問題を生じさせており,その対策は政府の喫緊の課題でございます。   民法・不動産登記法部会においては,相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組みと所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組みの整備に必要となる施策について,精力的に調査審議を行っていただいたと承知しております。   委員の皆様方には,御審議の上,できる限り速やかに御答申をいただけますようお願いを申し上げます。   議題の第3は,「離婚及びこれに関連する家族法制の見直しに関する諮問第113号」についてでございます。   父母の離婚後の子の養育に関わる我が国の法制度については,近時,様々な問題点の指摘がされているところであり,離婚やこれに関連する法制度の在り方が大変重要な課題となっております。その背景として,①父母の離婚によって生ずる子の貧困の問題,②非監護親と子との適切な交流の実施といった子の福祉に関わる問題,③女性の社会進出や父親の育児への関与の高まり等から,子の養育の在り方や国民意識が多様化している社会情勢があります。   そこで,このような社会情勢に鑑み,子の最善の利益を図る観点から,①父母の離婚後の子の養育の在り方,②未成年養子縁組制度の見直し,③財産分与制度の見直し等に関する検討が必要であると考えております。私がこれまでも申し上げてきたチルドレン・ファースト,すなわち子どもを第一に考える視点で,幅広く,また,実態に即した御検討をお願いするものでございます。   議題の第4は,「担保法制の見直しに関する諮問第114号」についてでございます。   近年,不動産担保や人的担保に過度に依存しない融資を促進する必要があるとの認識が高まり,在庫などの動産や,売掛債権などの債権を担保の目的として活用する手法が注目されてきました。しかし,民法には,担保設定者がその所有する動産の占有を維持したまま,これを担保の目的としたり,複数の動産や,債権を一体として担保の目的としたりすることを予定した規定はありません。そのため,実務では,動産や債権などを担保とするための手法として,明文の規定のない譲渡担保などの手法が利用されてきました。   これらの手法について,現在は,判例によってルールが形成されていますが,なお不明確な点も残されており,法律関係の明確化や安定性の確保等の観点から,動産や債権を目的とする担保を中心として,担保に関する法制の見直しが必要だと考えております。そこで,この課題に対処するため,法制審議会での御検討をお願いするものでございます。   それでは,これらの議題についての御審議,御議論をよろしくお願い申し上げます。 ○丸山司法法制課長 法務大臣は,公務のためここで退席させていただきます。           (法務大臣退室) ○丸山司法法制課長 ここで報道関係者が退出しますので,しばらくお待ちください。           (報道関係者退室) ○丸山司法法制課長 では,内田会長,お願いいたします。 ○内田会長 内田でございます。本日はどうぞよろしくお願いいたします。   まず,前回の会議以降,本日までの間の委員の異動につきまして御紹介をいたします。   詳細はお手元にお配りしております異動表のとおりでございますが,新たに委員に就任された委員が本日出席されていますので,御紹介いたします。   主婦連合会環境部副部長の山崎初美さんが御就任されました。   山崎委員は,本日ウェブ参加をしていらっしゃいますが,一言御挨拶をお願いいたします。 ○山崎委員 主婦連合会の環境部副部長をしております山崎と申します。よろしくお願いいたします。 ○内田会長 どうぞよろしくお願いいたします。   ここで,審議に先立ちましてお諮りしたいことがございます。   本日の議題の内容に鑑みまして,4人の方に関係官として審議に参加していただきたいと考えております。すなわち,村松民事第二課長,藤田官房参事官,笹井参事官,大谷参事官の4人でございますが,いかがでございましょうか。御異議ありませんでしょうか。           (一同異議なし)   それでは,村松民事第二課長,藤田官房参事官,笹井参事官,大谷参事官に関係官として審議に参加していただくことといたします。   それでは,本日の審議に入りたいと思います。   先ほどの法務大臣の御挨拶にもございましたように,本日は議題が四つございます。   まず,1番目の議題ですが,「緊急事態宣言中等における情報通信機器を利用した法制審議会への出席」について,御審議をお願いしたいと存じます。   審議事項につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○金子関係官 司法法制部長の金子でございます。   お手元にお配りしております資料,緊急事態宣言中等における情報通信機器を利用した法制審議会への出席に係る令和3年2月10日法制審議会決定(案)につきまして,その要点を御説明いたします。   まだ記憶に新しいことかと思いますが,前回の法制審議会におきましては,情報通信機器を利用した法制審議会への出席について御決定いただきましたが,今回の申合せ案は,新型コロナウイルス感染症の感染拡大が収束せず,再び緊急事態宣言が発出されるという現下の状況等に鑑みまして,このような特別な状況における法制審議会への出席の在り方について,改めて御審議をお願いするものでございます。   前回会議におきましては,議長を除く委員及び臨時委員につきましては,交通,健康,業務上の事情により会場に参集することが困難であるなどの正当な事由があり,議長が相当であると認めるときに,情報通信機器を利用した法制審議会への出席を認めるとされたところでございます。他方,本年1月8日から,東京,大阪などを対象とした緊急事態宣言が発出され,現在その延長がされ,また,今般,法改正によりまん延防止等重点措置が新設されたことを受けまして,これらの措置がされている期間中につきましては,法制審議会の総会及び部会のいずれにおいても,議長を含めた委員,臨時委員,幹事,関係官,参考人は,正当事由や相当性について個別に判断するまでもなく,情報通信機器による会議への出席を可能とする旨の申合せを御提案したく存じます。   なお,決定案に「緊急事態措置を実施すべき期間中」,「新型インフルエンザ等まん延防止等重点措置を実施すべき期間中」とあるのは,国内のいずれかの区域に各措置が発出された場合を想定しております。   事務局からの説明は以上です。よろしくお願いいたします。 ○内田会長 どうもありがとうございました。   ただいま事務当局から,「緊急事態宣言中等における情報通信機器を利用した法制審議会への出席」に関する決定案の御提案がございました。事務当局が作成した決定案につきまして,御意見,御質問を承りたいと存じます。   まず,御質問の方から承りたいと思いますが,御質問はございますでしょうか。   特にありませんでしょうか。   それでは,御意見がございましたらお伺いしたいと思います。いかがでしょうか。   特にありませんでしょうか。   それでは,特に御意見もないようですので,事務当局から提案がありました決定案につきまして,採決に移りたいと存じますが,御異議ありませんでしょうか。   はい,ありがとうございます。   それでは,採決に移らせていただきます。   「緊急事態宣言中等における情報通信機器を利用した法制審議会への出席」につきまして,事務当局から提案された決定案のとおり決定することに賛成の方は挙手をお願いいたします。ウェブ会議システムにより出席されている委員につきましては,賛成の方は画面に見えるように挙手をしていただくか,又は挙手機能ボタンを押していただきたいと思います。           (賛成者挙手) ○内田会長 事務当局において,票読みをお願いいたします。 ○丸山司法法制課長 それでは,採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除く…… ○内田会長 手を下ろしていただいて結構でございます。 ○丸山司法法制課長 すみません,手を下ろしていただいて結構でございます。ありがとうございます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は16名でございますところ,全ての委員が御賛成ということでございました。 ○内田会長 ありがとうございます。   採決の結果,全員賛成ということでございましたので,事務当局から提案されました決定案は,原案のとおり議決されました。   今後につきましては,当該決定に基づいて対応していくということにしたいと存じます。どうもありがとうございます。   続きまして,議題の2番目ですが,「民法及び不動産登記法の改正に関する諮問第107号」について,御審議をお願いしたいと存じます。   初めに,民法・不動産登記法部会における審議の経過及び結果につきまして,同部会の部会長を務められました山野目章夫臨時委員から御報告いただきたいと存じます。   それでは,山野目部会長,報告者席まで移動をお願いいたします。   それでは,お願いいたします。 ○山野目部会長 民法・不動産登記法部会の部会長を務めました山野目と申します。どうぞよろしくお願い申し上げます。   この部会におきましては,諮問第107号について,約2年間にわたり調査審議を重ね,今月2日に「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」を決定いたしましたから,本日はその報告を差し上げることといたします。   諮問第107号は,不動産登記簿により所有者が直ちに判明せず,又は判明していても連絡がつかない所有者不明土地が生じ,その土地の利用等が阻害されるなどの問題が生じている近年の社会経済情勢に鑑み,相続等による所有者不明土地の発生を予防するための仕組みや,所有者不明土地を円滑かつ適正に利用するための仕組みを整備するために,導入が必要となる方策について御意見を賜りたいというものでございました。   民法・不動産登記法部会におきましては,平成31年3月の審議開始から約9か月を経た令和元年12月に,「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)等の改正に関する中間試案」を取りまとめており,その内容は,第186回会議でも報告を差し上げたところでございます。中間試案につきましては,令和2年1月から同年3月までの期間,パブリックコメントの手続が行われ,計249件の御意見が寄せられました。民法・不動産登記法部会におきましては,パブリックコメントに寄せられた御意見等を踏まえまして,更に調査審議を行い,今月2日,全会一致で要綱案を決定するに至ったものでございます。   要綱案の内容の説明を差し上げます。   基本的には,項目番号の順番に御説明を差し上げますが,時間の制約があり,重要な改正項目を中心に,適宜に要点を絞って御説明を差し上げることといたします。   まず,要綱案1ページ目の「第1部 民法等の見直し」の中の「第1 相隣関係」におきましては,隣地等の円滑,適正な使用を可能にする観点から,規定を整備することとしております。   具体的には,「1 隣地使用権」におきまして,社会的な需要が高まっている境界調査や,竹木の枝の切取り等のために隣地を使用することができることとしております。「2 竹木の枝の切除等」におきましては,催告をしても越境した枝が切除されない場合や竹木所有者不明の場合等には,越境している土地の所有者が自ら枝を切り取ることができる仕組みを整備することとしております。また,「3 継続的給付を受けるための設備設置権及び設備使用権」におきましては,ライフラインを自己の土地に引き込むための導管等の設備を他人の土地に設置する権利等を明確化することとしております。   次に,要綱案2ページの「第2 共有等」のところにお進みください。   共有者の中に不明共有者がいる場合には,利用に関する共有者間の意思決定や持分の集約が困難となります。遺産分割前の相続財産も共有の状態でありますから,遺産分割がされないまま長期間放置され,不明相続人が生ずるということになりますと,同様の問題が生じます。そこで,共有物の利用や共有関係解消の促進を図るために,共有に関する規定を整備することとしております。   具体的には,不明共有者等がいる場合の共有物の利用促進の観点から,「2 共有物の変更行為」のところの②,及び「3 共有物の管理」のところの②アにおきましては,裁判所の関与の下,不明共有者に対して公告等をした上で,残りの共有者の同意で共有物の変更行為や管理行為を可能にする制度を創設することとしております。また,5ページにおきましては,不明共有者等がいる場合の不動産の共有関係の解消を促進する観点から,「8 所在等不明共有者の持分の取得」,及び「9 所在等不明共有者の持分の譲渡」のところにおきまして,裁判所の関与の下,相当額の金銭を供託して不明共有者の不動産の持分を取得し,又は売却する仕組みを創設することとし,相続開始から10年を経過して不明相続人がいる場合にも,同様に法定相続分に相当する額の金銭を供託して不明相続人の不動産の持分を取得し,又は売却することができるものとしております。   2ページに戻っていただきまして,「2 共有物の変更行為」のところの①におきましては,共有物の軽微な変更行為は,共有者の持分の過半数で決定することができることとし,「3 共有物の管理」のところの②イにおきましては,催告をしても意見を述べない共有者がいる場合には,裁判所の関与の下,残りの共有者の持分の過半数の決定で共有物の管理を可能にする制度を設けることとしております。また,4ページの「6 裁判による共有物分割」,及び「7 相続財産に属する共有物の分割の特則」におきましては,いわゆる全面的価格賠償による分割方法を明記したほか,相続人でない第三者も財産の一部を有する場合で,遺産分割がされないまま10年間放置されているような事例につきまして,現行法では遺産分割を経なければ共有関係を完全に解消することができないところ,遺産分割を経ることなく,共有物分割請求訴訟のみで財産を全面的に分割する仕組みを創設するなどしております。   次に,要綱案7ページの「第3 所有者不明土地管理命令等」のところについての説明を差し上げます。   現行民法上の財産管理制度に対しましては,所有者の財産全般を管理しなければならず,所有者不明土地への対応としては,使いづらいという指摘を受けているところでございます。そこで,「1 所有者不明土地管理命令及び所有者不明建物管理命令」におきましては,所有者不明土地及び所有者不明建物の管理に特化した,新しい財産管理制度を創設することとしております。   次に「2 管理不全土地管理命令及び管理不全建物管理命令」,11ページでございますけれども,そこでは,所有者が判明していても,管理不全状態にある土地や建物にも対応するために,所有者が判明していても,管理に無関心なため,これを放置していることで他人の権利が侵害されるおそれがある場合において,管理人の選任を可能にする制度を創設することとしております。   次に,要綱案13ページ目の「第4 相続等」のところのお話を差し上げます。   「1 相続財産等の管理」におきましては,(3)で不在者財産管理人等が供託を活用して,早期に財産管理を終了させることを可能とする仕組みを創設するなどしております。「2 相続財産の清算」におきましては,相続人不分明の場合における相続財産の清算手続の短縮化や合理化を図り,「3 遺産分割に関する見直し」におきましては,長期間放置された後に遺産分割をする際には,証拠等が散逸し具体的相続分の算定が困難となるおそれがあること等を踏まえ,相続開始から10年を経過したときは,具体的相続分による分割の利益を消滅させ,画一的な法定相続分により簡明に遺産分割を行う仕組みを創設することとしております。   続きまして,要綱案16ページの「第2部 不動産登記法等の見直し」について,お話を差し上げます。   まず,「第1 所有権の登記名義人に係る相続の発生を不動産登記に反映させるための仕組み」のところでございますけれども,所有者不明土地の主要な発生原因である相続登記の未了に対応するため,(1)及び(2)におきましては,不動産を取得した相続人に対し,その取得を知った日から3年以内に相続登記等の申請をすることを,過料の罰則付きで義務付けるものとし,(3)から(5)におきましては,申請人の負担軽減策をパッケージで講ずることとしております。   具体的には,(3)におきまして,相続人が登記申請義務を簡易に履行する手段として,仮称でございますけれども,相続人申告登記という新しい登記を創設するほか,(4)及び(5)におきましては,相続人に対する遺贈による登記や法定相続分での相続登記がされた後にされる登記について,登記権利者による単独申請を可能とすることとしております。   また,所有権の登記名義人が死亡しているという事実が登記簿に表示されていれば,事業用地を円滑に選定することができるという指摘があることを踏まえ,2におきましては,登記官が他の公的機関から取得した所有権の登記名義人の死亡情報に基づき,その旨を示す符号を不動産登記に表示することとしております。   次に,18ページの「第2 所有権の登記名義人の氏名又は名称及び住所の情報の更新を図るための仕組み」について,お話を差し上げます。   相続登記の未了とともに,所有者不明土地の主要な原因となっておりますところの住所の変更の登記の未了に対応するため,そこの1におきましては,氏名又は名称や住所の変更についても,2年以内に変更の登記の申請をすることを,過料の罰則付きで義務付けるとともに,2におきましては,その負担軽減を図る観点から,登記官が住民基本台帳ネットワークシステムや商業法人登記システムから取得した情報に基づき,職権的に変更の登記をすることができるものとしております。   そして,「第3 登記所が他の公的機関から所有権の登記名義人の死亡情報や氏名又は名称及び住所の変更情報を取得するための仕組み」におきましては,先ほどの相続の発生や住所等の変更を登記官が不動産登記に反映する方策を取ることを前提として,登記官が住民基本台帳ネットワークシステムから所有権の登記名義人の死亡情報や住所等の変更情報を取得するための仕組みを設けることとしております。   19ページの「第4 登記義務者の所在が知れない場合等における登記手続の簡略化」におきましては,存続期間が満了した地上権等の登記や解散した法人の担保権に関する登記などの形骸化した登記につきまして,一定の要件及び手続の下で,その抹消を簡略に行う仕組みを設けることとしております。   次に,20ページの「第5 その他の見直し事項」について,御説明を差し上げます。   「1 登記名義人の特定に係る登記事項の見直し」におきましては,所有権の登記名義人が法人である場合には,会社法人等番号等を登記事項に追加することとしております。「2 外国に住所を有する登記名義人の所在を把握するための方策」におきましては,外国に居住する所有権の登記名義人の国内連絡先を登記事項に追加するとともに,外国に居住する外国人についての住所証明情報に関する運用を見直すこととしております。「3 附属書類の閲覧制度の見直し」におきましては,登記簿の附属書類の閲覧について,その基準を合理化することとしております。「4 所有不動産記録証明制度(仮称)の創設」におきましては,特定の者が所有権の登記名義人として記録されている不動産の一覧を,証明書として発行する制度を新設することとしております。そして,「5 被害者保護のための住所情報の公開の見直し」におきましては,登記簿上で住所が公開されると,生命や身体に危害が及ぶおそれがある者,例えば,配偶者若しくは配偶者であった者から暴力を受け,又はストーカー行為や虐待を受けるおそれがある人などを保護するために,登記事項証明書の記載事項に関する特例を設けることとしております。   次に,要綱案23ページの「第3部 土地所有権の国庫への帰属の承認等に関する制度の創設」について,お話を差し上げます。   この制度は,相続による所有者不明土地の発生を抑制する観点から,そこの1にありますとおり,相続等により土地を取得した所有者は,所定の要件を満たす場合において,法務大臣による承認を経て,土地を手放して国庫に帰属させることを可能とするものでございます。承認の要件としては,本来は所有者が負担すべき土地の管理コストが国に転嫁され得ることなどから,過分の費用又は労力を要する土地ではないことが必要であるとし,具体的には,建物など工作物等がある土地や土壌汚染などがある土地など,そこにお示ししている3の①から⑩までに掲げられた土地に該当しない場合において,国庫に帰属させることとしております。   24ページの7のところにありますとおり,承認を申請する者は,土地の性質に応じた標準的な管理費用を基に算出した10年分の管理費相当額の負担金を納付しなければならないものとして,国における土地の管理費用の一部負担を求めることとしております。   なお,この制度は,中間試案の段階におきましては,土地所有権の放棄と呼ばれ,民法に不動産の所有権の放棄に関する新しい規律を置くことも検討されておりましたけれども,審議の結果,法務大臣の承認等の効果として,土地を国庫帰属させる仕組みを設けることで目的が達せられますことから,24ページの(注1)において御案内を差し上げておりますとおり,民法に新しい規律は設けないものとされました。   「民法・不動産登記法(所有者不明土地関係)の改正等に関する要綱案」の概要は以上のとおりでございます。よろしく御審議賜りますようお願い申し上げます。 ○内田会長 御報告ありがとうございました。   それでは,ただいまの御報告及び要綱案の全体につきまして,御質問及び御意見を承りたいと思います。   御質問と御意見を分けまして,まず,御質問がございましたら承りたいと思います。いかがでしょうか。 ○白田委員 多分,かつてからいろいろ議論されている中で,部会でも話題になったのではないかと思うのですが。前から言われています所有者の登記名義人の情報にさらに生年月日等を提供するということで,今以上に追いかけやすくするというか,そこのところで,マイナンバーの連携のことは多分議論に上ったのではないかと思われます。あえて,この中には一言もマイナンバーとの連携などについて触れてこなかったわけですが,何かその辺の背景というか,次のステップ,もちろんマイナンバーを持っている人が限定的であるとか,そういう制限はあると思うのですが,その辺を今どの段階ぐらいまで審議されたのかだけ,ちょっと教えていただければという質問です。よろしくお願いいたします。 ○内田会長 お答えいただけますでしょうか。 ○山野目部会長 委員仰せのとおりでございまして,個人番号というものを,国全体の制度の見直しの中で,情報通信技術の活用というコンテキストにおいて,どのように活用していくかということが重要であり,また,スピード感からいっても喫緊の課題となっておるところでございます。専門部会におきましても,当然のことながら,そのことを意識して調査審議に携わらせていただきました。   個人番号を用いるということによって,内容の面で,もちろん実質的に情報連携がうまくいくという面があるかもしれませんし,加えて,個人番号を用いて登記簿と連携するということにいたしますならば,この情報連携の意義を人々にといいますか,社会に対して象徴的な意味を持ってお伝えするという側面もあって,もし活用の可能性があるものであるならば,そういうものを大いに,躊躇することなく活用していかなければならないとも感じられたところでございます。   その上で,改めて検討してみますと,登記簿との情報連携を図っていくためには,不動産登記において,取り分け問題になっている相続登記のようなものが,個人番号を用いることによってうまくいくという関係になってくれると大変よろしいものでありまして,そういたしますと,個人番号を用いた情報連携で一体何がうまくいくものですかということを,いささか丁寧に専門部会としては考え込まなければいけないということになります。その上で,個人番号の,少なくとも現在の状況を見てみますと,一つ,二つ気になるところがございます。   まず,相続登記の実現につなげていくという観点から申しますと,個人番号というものは,この人とこちらにいるこの人物とが同じ人ですか,異なる人ですかというようなことを,ピンポイントで精密に明らかにすることには役立つものでありますけれども,その方に配偶者はいますか,いないですかと,お子さんは,その人の人生の中で,どういう段階で何人おられたものですか,あるいはおられなかったのですかとかいうことになってきますと,個人番号は,その人のアイデンティティーを確認するための制度ですから,少なくとも現在の個人番号の制度を見る限りは,必ずしもうまくまいりません,という側面がございます。加えて,そもそもある人に個人番号が与えられているか,登記簿に載っている人物に個人番号が与えられているかという観点から見てみましても,平成27年10月以前にお亡くなりになった方につきましては,個人番号が全く与えられていないという制度運用上の限界もございます。   こういったことがありますことから,本日お示ししている要綱案に,個人番号という概念そのものを用いて,今後これが採択されたならば,法務省は必ずこれを用いて進めてくださいという仕方で書き込むということは躊躇されました。しかしながら,委員御指摘のとおり,今後に向けて,個人番号というものは全く関係ないというお話になるかというと,そこも決め付けるような話でまいるということは乱暴なことではないかと感じます。令和2年10月には,政府においてデジタル・ガバメント閣僚会議が設置されまして,御高承のとおり,その下に国と地方のデジタル基盤抜本改善ワーキンググループが設けられて,政府全体として動いているところでございます。法務省としても,当然それについて無関心でいてよいはずがございません。   今後,個人番号の制度がもう少し,こちらとの距離が実質的に機能面で近くなってくるようなことがあれば,そういうものを活用していくということも,中期の課題としては,あるいはあり得ることであろうと考えますから,要綱案の段階では情報連携という言葉を用いておりますから,個人番号を用いよ,という明示のお話にはなっていませんけれども,使っていけないという話にもなっておりませんから,本日委員から御指摘を頂いたことも踏まえて,この後,ここのこの議事を聞いている法務省が鋭意進めてくれるものではないかと予想いたします。   お尋ねをいただき,ありがとうございました。 ○白田委員 ありがとうございました。明確な御説明,分かりました。ありがとうございます。 ○内田会長 どうもありがとうございました。   ほかに御質問ございますでしょうか。   よろしいでしょうか。   それでは,御意見がございましたら承りたいと思いますが,いかがでしょうか。 ○佐久間委員 ありがとうございます。   まず,長年の国民的な課題であったこの問題について,手当てができるようになったという点に関して,関係者の皆様に感謝申し上げたいと思います。   ただ,この問題というのは非常に実務的で,なおかつ,世の中のいろいろな動きに影響されるものだと思います。今,白田委員がおっしゃったようなデジタル化の動きにも当然関係してくると思いますし,社会そのものが変容するということもございます。ということで,この法案ができた後も,やはり不断の見直しというものが,ちゅうちょなくされるということが,極めて重要な分野だと思います。 ○内田会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○橋本委員 ありがとうございます。   この諮問については,現今の社会的な要請に応える反面として,土地の利用や取引の促進,工事の利便などのために私人の権利などに制約を加え,また新たな負担を課すという側面もあることから,若干の懸念も想起されるところだと思います。   しかし,今回の要綱案を見させていただきますと,この点についても相当に配慮し,大変に数多くの論点に関して丁寧に対策を検討していただいた上での取りまとめをされているように思いますので,賛成をしたいと思います。   その上で,要綱案の中でも,最も懸念される過料の制裁を伴う相続登記申請の義務化につきまして,幾つか意見を申し上げたいと思います。   この点は,既に部会におきましても相当に議論がなされたところと仄聞しておりますが,過料の制裁を伴った相続登記申請の義務化は,従来の実務を大きく変更し,国民に重い義務を課すものとなります。したがって,施行までに十分な周知期間を置き,国民に対して分かりやすく丁寧に説明して,その周知に努めていただきたいと思いますし,それを施行日の時点で,既に相続が開始しているケースに遡及して適用するということにつきましては,適切な経過措置を置くなどの,更に慎重な対応をお願いしたいと思います。   また,過料の制裁が科される範囲につきましても,不公平な取扱いが生じないように,運用面においても適切な対応をお願いしたいと思います。既に検討されているところとは思いますが,例えば,法務省令で,義務を怠っているときの催告に関する手続準則などを明確に規定するとか,通達などで登記申請義務を怠ったことについて,「正当な理由がない」と判断される具体的な例を分かりやすく明示するなどの方策を,是非進めていただきたいと思います。   さらに,相続登記の申請を促進するという観点からしますと,国民の義務の面を強調することももちろん大切でしょうが,国民の負担軽減に向けた環境整備策も,先ほどちょっとお話に出ましたけれども,パッケージで必要だろうと思います。その中でも,登録免許税の負担軽減は取り分け重要と考えますので,改めてその実現に向けまして,最大限の努力をお願いしたいと思います。 ○内田会長 ありがとうございます。   ただいまの御意見に対して,事務当局の方から特に何かありますでしょうか。よろしいですか。 ○小出幹事 ありがとうございます。   今回のこの要綱案でございますが,非常に多岐にわたる論点について,難しい点につきまして御議論を重ねていただいて,今こういう形になっているということでございますけれども,やはりその制度の趣旨に沿った運用がなされてこそという点がございますので,今回提案している制度趣旨の周知,広報については,しっかりやっていきたいと思います。   それから,正に社会が動いている,世の中が動いているということで,不断の見直しが必要だというような御指摘も頂きましたけれども,特に今回の要綱案の最後の方にございます,土地所有権の国庫帰属の制度につきましては,要件をかなり厳格に設定し,かつ,10年分の管理費相当額を徴収するということでございまして,運用を始めてみて,果たしてこの要件が妥当なのかどうかということも,やはり見なければいけないということでございますので,この土地所有権の国庫帰属の制度につきましては,何年間かで見直し条項を設けて,妥当性をそのときに判断するということを,今検討しているところでございます。   また,過料の罰則付きの相続登記の申請の義務付けでございますけれども,これも,施行のときに相続が発生して,まだ未登記のものについても適用するという前提でございますが,今,御意見ございましたとおり,経過措置をしっかり設けまして,今は3年経過という期間の猶予を設ける方向で検討しておりますけれども,少なくとも,法施行前に既に相続が発生したときでも,施行日から3年間の期間をとるなどの経過措置を設ける方向で検討してまいりたいと考えているところでございます。   義務の面を強調するだけではなくて,負担軽減もパッケージでということでございまして,この点につきましても,先ほど部会長からも御説明がございましたけれども,相続人申告登記という,申請者にとって負担の軽い新たな類型の登記を設けますし,お話のあった登録免許税につきましても,令和3年度の与党の税制改正大綱におきましては,今回の法改正の成案を踏まえまして,令和4年度税制改正において必要な措置を検討するということになっており,そのときに相続等に係る不動産登記に関する登録免許税の在り方について検討される予定と考えておりますので,法務省といたしましても御意見を踏まえてしっかりと検討していきたいと考えているところでございます。 ○内田会長 ありがとうございます。   ほかに御意見ございますでしょうか。   特にありませんでしょうか。   それでは,特に御意見がないようですので,原案について採決に移りたいと存じますが,御異議ありますでしようか。   ありがとうございます。   それでは,特に御異議もないようですので,採決に移りたいと思います。   諮問第107号につきまして,民法・不動産登記法部会から報告されました要綱案のとおり答申することに賛成の方は挙手をお願いいたします。先ほどと同様,ウェブ会議システムで御参加の先生方も,挙手あるいは挙手機能ボタンでお願いいたします。           (賛成者挙手) ○内田会長 事務当局において票読みをお願いします。   下ろしていただいて結構でございます。 ○丸山司法法制課長 それでは,採決の結果を御報告申し上げます。   議長及び部会長を除くただいまの出席委員数は16名でございますところ,全ての委員が御賛成ということでございました。 ○内田会長 ありがとうございます。   採決の結果,全員賛成でございましたので,民法・不動産登記法部会から報告されました要綱案は,原案のとおり議決されたものと認めます。   議決されました要綱案につきましては,会議終了後,法務大臣に対して答申することといたします。   山野目部会長におかれましては,多岐にわたる論点につきまして,大変精力的に調査審議をしていただきまして,誠にありがとうございました。 ○山野目部会長 恐れ入ります。ありがとうございました。 ○内田会長 続きまして,3番目の議題ですが,「離婚及びこれに関連する家族法制の見直しに関する諮問第113号」について,御審議をお願いしたいと存じます。   初めに,事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ○藤田官房参事官 民事局官房参事官,藤田でございます。   それでは,諮問事項を朗読させていただきます。   諮問第113号。  父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑み,子の利益の確保等の観点から,離婚及びこれに関連する制度に関する規定等を見直す必要があると思われるので,その要綱を示されたい。   以上でございます。 ○内田会長 ありがとうございます。   続きまして,この諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○小出幹事 それでは,家族法制の見直しに関する諮問第113号につきまして,提案に至りました経緯及び諮問の趣旨等を御説明申し上げます。   父母の離婚後の子の養育に関わる我が国の法制度につきましては,近時,離婚後の父母による子の養育の理念や父母の関与の在り方等を巡って,養育費や面会交流の問題を始めとして,国内外に様々な意見がございますが,その背景には,父母の離婚に伴って子が置かれる生活,経済状況への影響や離婚後の非監護親と子との交流の在り方の問題,さらには,女性の社会進出や育児の在り方,国民意識の多様化といった現下の社会情勢がございます。   このような父母の離婚に伴う子の養育の在り方につきましては,平成23年民法改正の際の衆参両院法務委員会の附帯決議におきまして,離婚後の親権,監護の在り方等についての検討が求められており,直近の令和2年7月の「経済財政運営と改革の基本方針2020(骨太の方針)」などにおいても,養育費の確保や面会交流に関して所要の対応をすべきことが明記されているところでございます。   これらの課題につきましては,子の利益の確保等の観点から,これまでに述べた父母の離婚後や,あるいは離婚前の別居段階における子の養育の在り方について,民事実体法及び民事手続法の両面から幅広く検討することが必要となります。また,離婚に関連する制度といたしましては,未成年養子制度や,離婚に伴う財産分与制度がありますが,これらの制度につきましても,問題点の指摘がされ,その見直しに向けた検討の必要性などが指摘されております。   そこで,このような状況,とりわけ父母の離婚に伴う子の養育への深刻な影響や子の養育の在り方の多様化等の社会情勢に鑑みまして,子の利益の確保等の観点から,離婚及びこれに関連する制度に関する規定等を見直す必要があると考えられますことから,これらの見直しについて,法制審議会の御意見を頂きたく存じます。   諮問第113号についての御説明は以上でございます。よろしくお願いいたします。 ○内田会長 ありがとうございます。   それでは,ただいま説明の在りました諮問第113号につきまして,まず,御質問がございましたら承りたいと思います。いかがでしょうか。   特に御質問はありませんでしょうか。   それでは,御意見がございましたら承りたいと思います。いかがでしょうか。 ○神津委員 ありがとうございます。   民法第766条では,協議離婚の場合の面会交流や養育費等を協議で定める旨が規定されていますが,強制力がありません。そのため,取決め率は十分ではなく,結果として,特に母子世帯で養育費を受けているのが約2割という,極めて低い水準にとどまっています。私ども連合として,これまでもひとり親家庭の貧困問題に取り組んできておりますが,目下のコロナ禍におきまして,更に深刻化している事態を強く憂慮しております。   また,特に足元では,外出自粛が重ねて求められている中で,面会交流にも影響が出ていると聞き及んでおります。第5次男女共同参画基本計画にも検討が盛り込まれており,待ったなしの課題ですので,スピード感を持って議論を進める必要があると考えます。   以上であります。よろしくお願いします。 ○内田会長 どうもありがとうございます。   ほかに御意見ございますでしょうか。 ○小杉委員 ありがとうございます。   神津委員とほとんど同じような論点なんですけれども,現在やはりコロナ禍におきまして,ひとり親世帯の困窮は本当に極まっているところだと思います。特に現在の非正規雇用の女性の収入も大幅に減るという状況にありますので,特に養育費の問題をスピード感を持ってやってほしいと思います。   日本は,やはりほかの国に比べて養育費を受け取っている割合というのは非常に低いんですよね。今回,困窮の大きな要因は雇用の方ですけれども,相対的に養育費の役割というのは非常に大きくなっている現状だと思います。その中で,特に日本の場合の養育費の低さの背景をきちんと調べていただいて,その上で,子供の利益にかなうような実効性を持った仕組みを早急に創設していただきたいなと思います。特に,親の権利,親権というよりは,親の義務というような観点から,両方の親がきちんと養育に携われるような,そういう仕組みを是非考えていただきたいと思います。 ○内田会長 ありがとうございます。 ○古城委員 この問題,子供の観点から見直しを図るということで,その点で大いに賛成したいと思います。   今,問題になっていますドメスティック・バイオレンスなどにより,離婚の協議ができないような状況,母親がその協議の場に出られないという,そういうケースがかなり多いと聞いております。そういう点も是非配慮していただいて,子供の利益が損なわれないような,そういう方向でやっていただければと思います。 ○内田会長 ありがとうございます。   ほかに御意見はございますでしょうか。   特に御意見ございませんでしょうか。 ○高田委員 私も,養育費の確保は重要な課題と考えておりますので,是非とも実効的な方策を検討いただきたいと存じております。   それともう1点,周辺的な問題で恐縮ですけれども,未成年養子制度の在り方の検討というのは,先の特別養子制度の改革の折の言わば積み残し事項でございまして,改めて検討いただく機会を得たことは,非常に喜ばしいことのように思います。   ただ,取り分け連れ子養子というんですか,家庭裁判所の許可を得ないで成立する和解につきましては,大臣の御発言にもございましたように,幅広く実態に即した議論という観点からの検討をお願いしたいと思いますけれども,その前提として,どの程度実態を把握しておられるのか,あるいは問題についての共通認識があるのかという点について,お伺いできればと存じます。 ○内田会長 今のは,御質問ということですね。 ○高田委員 そうですね,はい。 ○内田会長 事務当局の方からお願いできますか。 ○藤田官房参事官 民事局の藤田の方からお答え申し上げます。   御指摘いただきました連れ子養子の実態等の関係でございます。これにつきまして,養子縁組全体は,直近の戸籍統計で年間約7万件とされておりますけれど,その中で,未成年養子であるとか連れ子養子の占める割合につきましては,直接の統計がない状況です。その観点からは,法務省としても今後,調査審議をお進めいただくために,実態把握の必要があるものと考えておりますので,引き続き,更なる情報収集を進めることはもちろん,御指摘ございましたような実態調査も必要に応じて実施することを検討したい,その上で,その結果を提供させていただきたいと考えてございます。 ○内田会長 是非よろしくお願いいたします。   ほかに御意見いかがでしょうか。   特にありませんでしょうか。   それでは,この諮問についての審議の進め方については,後でまとめてまた御議論いただくことといたしまして,続きまして,4番目の議題でございます,「担保法制の見直しに関する諮問第114号」について,御審議をお願いしたいと存じます。   初めに,事務当局に諮問事項の朗読をお願いいたします。 ○笹井参事官 民事局参事官の笹井でございます。   諮問事項を朗読させていただきます。   諮問第114号。   動産や債権等を担保の目的として行う資金調達の利用の拡大など,不動産以外の財産を担保の目的とする取引の実情等に鑑み,その法律関係の明確化や安定性の確保等の観点から,担保に関する法制の見直しを行う必要があると思われるので,その要綱を示されたい。   以上でございます。 ○内田会長 ありがとうございます。   続きまして,この諮問の内容,諮問に至る経緯及びその理由につきまして,事務当局から説明をお願いいたします。 ○小出幹事 それでは,「担保法制の見直しに関する諮問第114号」につきまして,提案に至りました経緯及び諮問の趣旨等を御説明申し上げます。   従来,金銭の貸付け等による債務の担保といたしましては,不動産や個人保証が多用されてまいりました。しかし,バブル経済崩壊後の不動産価値の下落や,個人保証をした者,特に企業の債務を個人で保証した者が過大な責任を負う場合があることが問題視されたことなどを背景といたしまして,企業が有する在庫などの動産や売掛債権などの債権を担保として活用する資金調達方法が注目されております。このような担保取引について,平成30年6月に閣議決定された骨太の方針2018では「経営支援を強化するため,金融機関による担保・保証に依存しない融資の促進を通じて金融仲介機能を一層発揮させる」とされ,令和元年6月の未来投資戦略の成長戦略フォローアップでは「企業や金融機関からのニーズを踏まえて,動産担保に関する法的枠組みや登記制度の整備について,将来的な法改正も視野に入れて検討する」とされるなど,制度整備の必要性に言及されています。   しかし,民法には,担保設定者が所有する動産の占有を維持したまま,これを担保の目的とすることを予定した規定は存在しておりません。そのため,在庫などの動産に担保を設定するための手法としては,明文の規定のない譲渡担保が用いられております。また,在庫や売掛債権等を担保の目的とするためには,複数の動産や債権を一体として担保の目的とする必要がありますが,設定者が将来取得するものを含む財産の集合体を目的とする担保の取扱いについても,民法には規定がございません。  このため,動産や債権等を目的とする担保取引に関する法律関係は,専ら判例法理に委ねられてまいりました。判例は,一定程度蓄積していますが,なおルールが不明確な場面も残されております。   このように判例法理に委ねられてきた担保取引に関するルールにつきまして,必要に応じて見直しをした上で明文の規定を設けるとともに,判例によって解決されていない問題について規律を設けることが,担保取引に関する法律関係の明確化,安定性の確保のために必要であると考えられます。  そこで,法律関係の明確化や安定性の確保等の観点から,動産担保及び債権担保を中心として,担保に関する法制の見直しを行うことにつきまして,法制審議会の御意見をいただきたく存じます。   諮問第114号についての御説明は,以上でございます。 どうかよろしくお願いいたします。 ○内田会長 ありがとうございます。   それでは,ただいま御説明のありました諮問第114号につきまして,まず,御質問がございましたら承りたいと思います。いかがでしょうか。 ○白田委員 すみません,もしかすると非常に素人的な質問かもしれないのですが,ちょっと教えていただければと思います。   この中には,いわゆる無形固定資産による担保というか,変な言い方ですが,企業間取引でいうところの債務保証,もしくは,債務保証ですと特定の借入れに対して,私の方が保証しますよという形ですけれども,例えば,経営指導年念書のような,非常にざっくりとした,その経営について,我々が,第三者がサポートしますよという,会計でいうと,無形固定資産に該当する,オン・バランスされない無形固定資産ですが,こういったものの担保というか,その借入れに対する保証のようなものは,この中では扱われているのでしょうか。お尋ねしたいと思います。 ○内田会長 事務当局からお願いいたします。 ○小出幹事 今回の諮問では,ただいま御説明差し上げましたとおり,動産や債権を目的とする担保を中心として御審議いただくことを想定してはおりますが,委員御指摘の無形資産を含む事業全体を目的とするような担保制度も,調査審議の検討対象から除外されているものではございません。   現に,関係省庁におきましては,そういった事業全体への担保設定を含む担保法制の見直しに向けた検討がされていると承知しておりまして,この点を含めまして,検討の具体的な内容については,審議会での御議論の展開に委ねたいと考えております。 ○白田委員 ありがとうございます。   ちょっと余談なのですが,私,企業倒産を専門にしているものですから,こういったオフ・バランスのような担保を設定していますと,表に見えないうちに当該倒産がするというケースがあるものですから,その辺のところはちょっと曖昧になっている部分ではないかなと感じているものです。   ありがとうございます。 ○内田会長 どうもありがとうございます。   ほかに御質問ございますでしょうか。   特にありませんでしょうか。   それでは,御意見を承りたいと思います。御意見ございましたら,よろしくお願いいたします。 ○佐久間委員 ありがとうございます。   今御説明いただいた趣旨とはちょっと違うのかもしれませんが,今後のこと,やや先取り的なことを考えますと,やはり,既に社会でもう実態として機能している,いわゆるデジタル通貨というか暗号資産,これについての担保的な位置付けというのも,やはり検討する必要があるのかないのか,この辺も重要だと思います。御案内のとおり,もう既に,先ほど話題に出ていた財産分与とか遺産分割においても,ビットコインというのは登場していますし,直前で言えば,テスラが企業として10億ドル買ったということ,つまり,これはもう企業の資産として極めて重要な部分が仮想通貨になっていると,こういう現状で,多分これは,想像を超えるスピードで広まる可能性もあるということからすると,やはりその点も視野に入れた検討も必要かどうかという点,これをちょっと問題提起したいと思います。 ○内田会長 検討内容についての重要な御指摘を頂きましたが,よろしいでしょうか。 ○小出幹事 先ほど申し上げましたとおり,検討の対象となる担保の目的財産の種類としては,動産,債権が中心になるものと考えておりますが,財産的価値が高く,担保として活用する必要性が実務上あるのに,担保とするための法制度が十分に整備されていない財産ということでございますれば,今回の見直しの対象になり得るものと考えております。   したがいまして,佐久間委員御指摘の仮想通貨等につきましても,抽象的には見直し,検討の対象となっておりますので,具体的に,それも含めてどのようなものを見直しの対象とするかにつきましては,今後の法制審議会での議論の展開に委ねたいと考えております。 ○内田会長 ありがとうございます。   ほかに御意見ございますでしょうか。   特にありませんでしょうか。   それでは,ここで,先ほどの諮問第113号,それからただいまの諮問第114号の審議の進め方について,御意見を承りたいと思います。御意見ございますでしょうか。 ○山下委員 ありがとうございます。   今回の2件の諮問,諮問第113号と諮問第114号につきましては,いずれも専門的,技術的な事項が多く含まれておりますので,これまでの通例に倣いまして,それぞれ新たに部会を設置して調査審議し,その報告を頂いて,更に総会で審議するのが,手順としてはよろしいのではないかと考えます。 ○内田会長 ありがとうございます。 ○橋本委員 諮問第114号について意見を申し上げます。   この諮問に関し,部会を設置して審議を行い議論を深めてもらうという山下委員の意見に賛成でございますが,その場合に,既に十分に考慮されているものとは思いますけれども,改めて要望がございます。   御説明によりますと,今回の諮問は,動産,債権に関して,利用しやすい担保制度を整備するという,金融サイドからの要請に基づく面があると認識をいたしました。この課題について検討を行うこと自体にはもちろん異論はありませんが,担保制度の在り方をめぐっては,一方で他の債権者に先立って,できるだけ多くの安定した優先回収を求めるという担保権者がいると同時に,他方には,公平平等な弁済を求める,主として少額・多数の一般債権者がいるわけで,両者は鋭く対立する関係にあります。   このことは,取り分け倒産などの領域で顕著に表れているわけでございますが,そうした中で,現行の実務は,両者のせめぎ合いの微妙なバランスの上に立って,それほど大きな破綻なく運用されているという面もあるように思います。   本件の諮問には,担保責任者にとって利用しやすい担保制度の在り方を探るという文脈が見られるように思いますが,以上の状況を考えますと,部会の構成に当たりましては,この種の担保制度を取り巻く意見の対立や利害状況が十分に反映された審議がなされるように,バランスの取れた委員の選任を特にお願いしたいと思います。 ○内田会長 ありがとうございます。部会を設置する場合にはという御意見でございましたが,事務当局はよろしいでしょうか。御意見を踏まえて,御検討いただきたいと思います。   ほかに御意見ございますでしょうか。   特にありませんでしょうか。   それでは,特に御異論もないようですので,諮問第113号及び諮問第114号につきましては,ただいまお決めいただきましたように,新たに部会を設けて調査審議をするということにしたいと存じます。   次に,新たに設置する部会に属すべき総会委員,臨時委員及び幹事に関してですけれども,これらにつきましては,会長に御一任いただきたいと思いますが,御異議ありませんでしょうか。 (「異議なし」の声あり)   ありがとうございます。ただいま橋本委員からも御意見がございましたけれども,そういった点も十分踏まえて,進めるようにしたいと思います。   次に,部会の名称でございますが,諮問事項との関連から,諮問第113号につきましては「家族法制部会」,諮問第114号につきましては「担保法制部会」という名称にしたいと思いますが,いかがでございましょうか。よろしいでしょうか。 (「異議なし」の声あり)   ありがとうございます。それでは,そのように取り計らわせていただきます。   ほかに,この部会における審議の進め方を含めまして,御意見ございましたら承りたいと思いますが,何かありますでしょうか。   特にありませんでしょうか。   それでは,諮問第113号につきましては「家族法制部会」,諮問第114号につきましては「担保法制部会」で御審議を頂くということにいたしまして,部会の御審議に基づいて,総会で更に御審議を願うということにしたいと思います。   以上で,本日の予定は終了となります。盛りだくさんの議題でございましたけれども,大変効率的な審議に御協力いただきまして,ありがとうございました。   ほかに,この機会に特に御発言いただけることがございましたら伺いたいと思いますが,何かありますでしょうか。   特にありませんでしょうか。   それでは,特に御発言もないようですので,本日はこれで終了ということにいたします。   本日の会議における議事録の公開方法につきましては,審議の内容等に鑑みまして,会長の私といたしましては,議事録の発言者名を全て明らかにして公開するということにしたいと思いますが,御異議ありませんでしょうか。 (「異議なし」の声あり)   ありがとうございます。それでは,本日の会議における議事録につきましては,発言者名を全て明らかにして公開するということにいたします。   本日の会議の内容につきましては,後日,御発言いただいた委員等の皆様に,議事録案をメール等で送付をさせていただきまして,御発言の内容を確認していただいた上で,法務省のウェブサイトで公開するということにしたいと思います。   最後に,事務当局から何か事務連絡がございましたら,お願いいたします。 ○金子関係官 次回の会議の開催予定についてでございますが,通例,2月と9月に開催することになっております。次回の開催につきましても,現在のところ,本年の9月に御審議をお願いする予定でございます。具体的な日程につきましては,後日改めて御相談させていただきたいと思います。   委員,幹事の皆様方におかれましては,御多用中大変恐縮でございますけれども,今後の御予定につき御配意いただけますよう,よろしくお願い申し上げます。 ○内田会長 ありがとうございました。   それでは,本日はこれで会議を終了いたします。   本日はお忙しいところお集まりいただき,またウェブ会議システムでの御参加をいただきまして,熱心な御議論をいただき,誠にありがとうございました。   これにて散会といたします。 -了-