法制審議会 担保法制部会 第21回会議 議事録 第1 日 時  令和4年7月26日(火) 自 午後1時28分                      至 午後5時05分 第2 場 所  法務省共用会議室6・7 第3 議 題  担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(6) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 まだ予定した時刻になっておりませんけれども、出席予定の方は全員既に御参加になっていらっしゃいますので、法制審議会担保法制部会の第21回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして、誠にありがとうございます。   本日は衣斐さんと加藤さんが御欠席ということで、横山さん、青木哲さん、青山さんが途中退席と伺っております。   なお、委員を務められておりました堂薗審議官が7月25日付で裁判所に異動になられました。そこで、後任は松井信憲審議官ですが、事務手続の都合等も踏まえまして、次回から本部会での調査審議に加わっていただく予定にしております。   また、前回の部会後に関係官の異動がございましたので、御報告いたします。新たに近江関係官が部会に参加されますので、近江さんにおかれましては簡単に自己紹介をお願いいたします。 (関係官の自己紹介につき省略) ○道垣内部会長 よろしくお願いいたします。   そこで、本日の審議に入りたいと思いますが、まず、資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。今回新たにお送りした事務当局作成の資料はございません。前回お配りいたしました部会資料17「担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(6)」を使用いたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、審議に入りたいと思いますが、前回の積み残しとなっておりました部会資料17です。「担保法制の見直しに関する中間試案のとりまとめに向けた検討(6)」ですが、これについて議論を行いたいと思います。   その中の否認について前回、少し順番を変えて、先にやらせていただきました。事務当局から説明がありまして、既に議論もしていただきましたけれども、その後、しばらく時間も空きましたので、事務当局において再度、部会資料の説明をお願いし、「第6 否認」について再度議論をするということから本日は始めたいと思います。その後、「第4 倒産手続開始後に生じ、又は取得した財産に対する担保権の効力」というところに移っていきたいと思います。それでは、事務当局において再度、部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 それでは、36ページの「第6 否認」について御説明いたします。本項目では、集合動産や将来発生する複数の債権を目的とする担保権において、個別の動産や債権が担保権の目的の範囲に加入した場合に、いかなる要件の下で偏頗行為否認の対象とするべきかを検討しております。   【案17.6.1.1】は、客観的な取引の異常性を要件とすることを意図したもので、具体的な要件については検討が必要ですが、部会資料13の表現に合わせて、通常の事業の範囲を超えるという文言としたものです。【案17.6.1.2】は、問題状況が破産法第71条第1項第2号で相殺が禁止されている場合と類似していることに鑑みて、主観的な要件を規定することを提案するものです。この二つの案は、一読の際に御提案した内容と同様ですが、一読の際にはこのほかに、設定者が担保権者と通謀して他の債権者を害する意図をもってしたことを要件とする考え方もお示ししておりました。この考え方については、要件が狭きに失するという御意見を複数頂いたため、本資料では御提案しておりません。   また、本文では、設定者が支払不能等であったことに対する担保権者の主観的要件を課すかどうかについて問題提起しております。前回に引き続き、この点についても御議論いただけますと幸いです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構ですので、御意見等を頂きたいと思います。前回も御発言を既に頂いたわけですけれども、前回と重なっているから発言しないというのではなくて、御自由に御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○阪口幹事 阪口です。前回、債権者の主観的要件について少し議論があって、要求すべきなのではないかという多数の御意見も頂いたところなので、改めて検討したのですけれども、確かに担保の提供という意味でいうと、偏頗行為であり、債権者の主観的要件が必要だというのは、筋としてはよく分かる話です。   他方、実務的な観点から意見を述べると、弁済なり担保の提供なりのイベントがあって、債権者側にもその出来事が起きている場合であれば、その時点で知っていた、知らなかったという議論がまだできるかもしれない。ところが、ここで考えている在庫が積み上がるというような問題については、債権者はきっかけも何もない。その行為が行われたことを後日になってから認識するというシチュエーションです。こういう状況下で、管財人なり倒産債務者側で、在庫が積みあがった時点の担保権者の悪意を立証しなさいよと言われると、これはかなりしんどいなというのが正直なところです。だから、仮に債権者の主観的要件が必要だという考え方を採るにしても、162条1項2号のような形の、立証責任の転換が考えられないかということを検討しました。   というのは、例えばここでいう案1であれば、通常の事業の範囲を超える加入ということになるわけですから、本来的には義務ではないという捉え方もあり得るのではないか。そうだとすると、当事者間の特約で義務に入っているかも分からんけれども、ここの局面でいうと本来的な義務ではないという意味で、破産法162条1項2号のような規律は考えられないかという意見です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見等、お願いできればと思いますが。 ○沖野委員 ありがとうございます。沖野です。今の主観的要件の点につきまして、前回も問題になりましたので、補足も兼ねて申し上げたいと思います。前回、債権者なり担保権者というのは後になって加入を知るので、何ら別に不利益はないのではないかという御指摘もありました。担保権者や債権者の行為というのがどういうものかについての考え方も違っているのかなと思いまして、私自身は、債権者というのは、例えば在庫がどういう状況になるかというのは基本的にチェックをして、常時というか、何をもって常時というかというのはあるかと思いますけれども、チェックをしていて、それを見ながら、その融資を継続するかとか、あるいは新たな融資をするかとか、あるいはアクセレーションを掛けるかとか、そういうことを見ていくのではないかという想定をしております。だから、通常どおり在庫等が出たり入ったりしているということであれば問題なかろうということでやっていたところ、実はそん度していましたというのでは不利益を被るのではないかと、そういう理解に立っておりました。   ただ、それに対しては、別に24時間監視とかいうことでもないので、その範囲に入ってくる、加入といったらいいでしょうか、それがいつ起こったかを正にリアルタイムで知っているわけではないとすると、基本的には加入の時点で主観的要件を考えるのではないかということを申し上げたのですけれども、その時点では加入のことも知らないのだから、およそ、例えば、【案17.6.1.2】に即したときの目的など知りようがないので、常に善意ということになる、あるいは、仮に【案17.6.1.1】で支払不能の状態というのをその時点で知っていたということになると、もう少しそちらの方は可能性があるのかもしれないですけれども、加入自体も知らなかったのに、その時点でどうだということを問うことがいえるのかというような話も出てくるという御指摘が前回あったように思います。   その点なのですけれども、確かに厳密に今、加入しましたということで、その時点を知っていて、その時点で何を知っているかということを問うということになりますと、ほとんど主観的要件を満たさないということになる。今回、阪口先生から証明責任の方で、その分担の方でもう少し考慮できないかということだったのですが、もう一つは、時点を何とかできないかということも考えておりまして、今申し上げたような、債権者や担保権者というのはそういう在庫だとか、担保になっているのだろうと思われる状況を見ながら自分の行動を変えていくということだとすると、それが対象になったということを認識したときにおいて、目的も知っていたとか、そういうような時点を捉えることはできないだろうかと考えております。それがいつなのかということもまた難しい問題になるので、余りワークしないのかもしれません。前回御指摘を受けて、もう少し考えてみたということです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。その心はということなのですが、加入があったことを知ったときの主観的な要件を問題にするというのは、それまでの間は所詮、期待は生じないのだから、別に担保権者を保護する必要はなくて、入ったというのが分かったときに、これは異常だよねと思ったならば、否認になって、入ったというふうなことが分かったときに、これは普通だよねと思ったときには、その権利を確定的に取得できて、否認されないようにするという必要があるという、認識によって生じる期待を問題にするという感じですか。 ○沖野委員 ありがとうございます。主観的要件によって何を保護しようとしているかという点が、不測の不利益を被らせることになるからということだとすると、不測の不利益というのがどこに生ずるのかということで、今のような、部会長が言われたような話かなと思っております。ただ、今おっしゃったのは、通常の事業の範囲を超えるかどうかについての主観と言われたと思いますけれども、【案17.6.1.1】の場合は、主観的な要件が要るのかどうかすらここでは分からないのですが、客観的に異常であるということであれば、それは正に期待もすべきではないということになりそうではありますけれども、【案17.6.1.1】の場合は、債務者の財産状態を想定しておりましたけれども、それから、【案17.6.1.2】の場合は、目的について知っていること、ということを想定しておりましたので、少しそこもあるいはずれるのかもしれません。 ○道垣内部会長 分かりました。すみません、私のまとめが、形成される期待のところに力を入れた説明をして、その主観の対象について余り気を使わないで話してしまったかもしれません。どうもありがとうございます。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。私も、前回申し上げたところと変わらないわけですけれども、沖野先生の御指摘を受けまして少し補足したいと思います。沖野先生のお話ですと、在庫があると担保権者が把握した後に、追加的な融資をしたけれども、その後にその在庫の加入が否認されてしまうと不測の不利益を被ってしまうのではないかと、それゆえ担保権者の主観的要件を問うべきではないかという御指摘だったかと思います。   ただ、幾つかの場合が考えられまして、まず一つ、沖野先生の御指摘は当然、根担保を前提としておられるかと思います。そうすると、根担保ではない場合には特に不利益はないということもいえるかなと思います。根担保の場合、追加的な融資をして、それが被担保債権となるという場合を考えますと、新たな在庫、通常の事業の範囲を超えて在庫が増えたという場合、それを認識したときに、その時点ではいつもより多くの在庫があるということなのですが、しかし、その時点で別に固定化しているわけではありませんので、その後、変動する可能性というのはある。そして、新たな融資をした後にそれが減る可能性は当然あり得て、それは設定者の義務違反にはならないと、通常の事業の範囲に戻すということも当然あり得るので、そういったリスクは覚悟の上で追加の融資をしなければならない。そうではなくて、通常の議論の範囲を超えて加入した在庫がそのままずっとあり続ける、担保権をその後、実行した際にまで、増えた在庫がずっとあり続けるということを期待して追加の融資をするということは、これは合理的といえるのかというところには疑問の余地があるのではないかと思います。そして、そういった合理的でない期待を保護する必要というのは、これも必ずしもないのではないかと考えているところ、前回申し上げたのはそういう意図です。   これに対して、在庫が加入した時点で即座に実行すれば、その増えた在庫分を確保することができると、そういう期待が生じているかなと思いますが、ただ、その場合には追加的融資というのが発生しないので、これまた保護する必要はないのではないかと考えられます。   以上の理由から、担保権者の主観的要件は問わなくてもよいのではないかと考えています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに。   これは少し確認なのですが、【案17.6.1.1】を採ったときに、当該加入というものが通常の事業の範囲を超えるかどうかということは、否認をする側が主張立証していくことになるのですか。 ○笹井幹事 まだそこまで詰めて考えていたわけではありませんでしたが、基本的に否認を主張する側が立証するのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 ですよね。そうなると、本当はどちらが簡単か分からないですよね。つまり、通常の事業の範囲というものが、部会資料の38ページの12行目ぐらいから書いてあるように、取引時点での事業の状況やいろいろなものを考えて、異常性があるかどうかというのを判断するということなのですが、それが分かって否認をするというのも大変で、かえって、それは目的が分かっただろうということをいろいろな事実から証明していった方が簡単であるということになるかもしれないと思いまして、そうすると、阪口さんがおっしゃったことに関係するのですが、どの部分の立証責任を転換するのかというのも結構、もう少し詰めて考える必要があるかなという気がしました。 ○山本委員 ありがとうございます。一つ、私も主観的要件の話で、その必要がどうかというところで、私は前回、それは普通、必要ではないかということを申し上げました。確かに目的物の加入というのに気が付かないという事態がそれなりにあるだろうというのは、そうかなとは思うのですけれども、ただ、厳密に言えばほかの場合でも、例えば弁済でも、預金口座に振り込まれたことに数日間気が付かないとか、細かなことを言い出せば、ほかでも同じようなことはあって、ただ、その場合にそれで、では主観要件をどうするかと、その時点を変えるかというと、私の理解では余りそういう議論はされていなくて、やはり弁済がされた時点の認識を基準にしているのではないかという気がしております。そういう意味では、沖野さんが言われたように、担保権者側も一定のモニターをするということだと思いますので、その頻度のもちろん違いという、預金口座を見ている頻度とは違うのかもしれませんけれども、そこに何か本質的な違いがあるのだろうかということは思いました。   それから、阪口さんが言われた立証責任の転換の点ですけれども、部会長が言われたこととも関係するかもしれませんが、【案17.6.1.1】とか【案17.6.1.2】みたいなものをいずれにしろ要件とするとすれば、かなり異常なことをしたということになるわけであって、そういう異常なことをした動機としては、やはり通常、債務者が危なそうだと思ったのではないかという、経験則上ですね、事実上の推定というか、何かそういうものが働く事案というのはそれなりにあるような気はします。ただ、法律上、立証責任を転換するまでのところに行くのかということについては、私はやや疑問は持っていて、そういう事実上の推定的なところで、経験則的なところで対応するということで実際上、十分なような気もするということです。   それから、もう1点は、この第6と直接関係なくて、あるいはまた、前にも言ったかもしれないという気もするのですけれども、詐害行為取消権をどういうふうに扱うのかということです。否認についてこういう規定を設けて、だから、この行為が担保の供与に当たるのかどうかということですけれども、資料では担保の供与と捉えることには疑問もあると書かれていて、仮に詐害行為取消しで何も書かなかったときにどうなるのかということは考えておく必要があるのかなと思います。何もしないという判断もあり得るとは思います。この場合はいわゆる逆転現象にはならないので、私の方から何か申し上げることではないのかもしれませんけれども、民法として、この詐害行為取消権との関係でこういう行為をどういうふうに扱うかというのは考えた方がいいかなということを思ったということです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。詐害行為取消権との関係で、何か事務局からありますか。 ○笹井幹事 少しそこは、まだ引き続き検討させていただければと思います。 ○道垣内部会長 また。すみません、急に振ってしまいました。 ○阿部幹事 ありがとうございます。東京大学の阿部です。今、否認の要件論のところでかなり詰めた議論がされているところ、そもそも論に戻ってしまって申し訳ないのですけれども、少し気になったのは、先ほど大塚関係官が、担保の目的物の範囲の中に入ったとしても、その後、設定者や管財人が処分してしまうこともあり得るよねということをおっしゃっていて、現行法の議論の中でも、資料の注61が付されている本文のところで、集合物が流動性を失わず、その構成部分が入れ替わったにすぎない場合は、有害性が否定されるというふうなことが紹介されています。今飛ばされている資料の第4では、設定者や管財人に、取得財産であるとか担保の目的の範囲に入っている財産の処分権限、取立権限が倒産手続開始後も引き続き認められるかどうかという議論がされていて、もしそこで広範に設定者あるいは管財人の処分権限を認めていくということになると、一旦、倒産手続開始前に、例えば通常の事業の範囲を超えて目的の範囲に加入していたとしても、それは最終的に倒産財団を害すると確定的にはいえないと考えてよいのでしょうか。そこがよく分からなくて、もしそういうふうに、加入の後も設定者あるいは管財人の処分権限があるということで有害性が否定されるということになるとすると、この否認の話は結局余り実益がなくなっていくのかなというような気も若干いたしまして、そこが少し気になったということです。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。その点につきまして、何かございますか。 ○笹井幹事 ここはむしろ御議論いただければと思っていますけれども、どの時点のどの行為を否認の対象と捉えるかにも関わってくるのではないかと思います。集合動産は、一つの加入行為を前提として、更に構成部分の変動が積み重なっていきますので、一つ一つの加入行為に本当に個別に分解できるのかという問題はあるのかもしれませんけれども、一般的には、行為の時点で否認に該当するかどうかというのが判断できる必要があるということが一読でも指摘されていました。この考え方は、一個一個の加入行為を否認の対象として捉えるということを前提としていたのではないかと思いまして、事務当局においても、一つ一つの加入行為を否認の対象として捉えるという感じで考えていたと思います。   ただ、今少し御指摘を受けまして、更に明示的に考えると、その後にいろいろな積み重ねがあった、その前の行為を一つ取り出して否認するということが現実的なのか、妥当なのかというところもありまして、そこはもう少し私どもとしても考えていきたいと思いますけれども、もし何か今日の時点で先生方の方から御意見がありましたら、承りたいと思います。 ○道垣内部会長 阿部さん、何かありますか。 ○阿部幹事 そうですね、私が考えていたのは、管財人のような目から見たときに、倒産手続開始前に何か担保の目的に範囲にたくさん動産が入っていたとして、否認権の行使という手続をもってそれを正常化する必要があるのか、それとも、そんなことはしなくても、普通に処分して通常の範囲に収めてしまって、それで、処分したものの対価とかは財団に組み込んでしまって、という枠組みでもし同じようなことができるのであれば、あえて否認という手続に乗せる必要はないのかなと、卒然と思ったというだけのことでした。 ○道垣内部会長 分かりました。ありがとうございます。実は阿部さんのおっしゃったことと笹井さんのお答えが若干ずれているのかもしれないのですよね。阿部さんはどちらかと言うと、その後の管財人なら管財人の行動の権限について、との関係を考えなければいけないという話をされたのに対して、笹井さんはどちらかというと、何が否認の対象になっているのかという話からお答えになったわけですね。前者ももちろんですし、後者についても本当は考えなければいけないですね。個々のものが一対一対応で、後で搬入されたものが先に売却されてしまった場合、処分されてしまった場合にはどうなるのかとか、いろいろなことがあります。また、例えば、ここにいう否認とは、担保権者の有する優先弁済権とか、そういうものの範囲を画するという効果があるという特別な意味を、単に加入行為を否認するというのではなくて、少し特殊な効果というのを考えなければいけない可能性というのがあるのかもしれないという気がいたしました。それについては両方とも更に、ほかの権限のところも含めて詰めていく必要があるというのは阿部さんの御指摘のとおりかと思います。 ○片山委員 慶應義塾大学の片山でございます。どうもありがとうございます。十分に考え切れてはいないところではありますが、幾つか気付いた点を申し上げたいと思います。   まず第1は、御議論の中でも出てきた、否認だけではなくて詐害行為取消権はどうするのかというお話ですけれども、私自身は、いろいろな方からそういう御意見がありましたけれども、やはり担保権の中では、抵当権の付加物の規定の370条ただし書きとかなり類似性があるところですので、譲渡担保権についても、「設定行為に別段の定めがある場合及び債務者の行為について第424条第3項に規定する詐害行為取消請求をすることができる場合には、この限りでない」として、このような加入行為を一般債権者に対抗できないという趣旨の規定を置くこととが有用ではないかというのがまず第1点であります。   それから、有害性の問題なのですけれども、確かに大塚関係官が仰ったことはそのとおりかなと思いまして、仮に通常の営業の範囲を超えて加入されたという場合であっても、その後に加入される量が減るという場合を想定しますと、全体として見ると、果たして当初の加入行為だけを切り取って、有害性があるという形で否認の対象にするということには若干問題があるような気もいたしました。   私は、前回も申し上げましたとおり、通常の事業の範囲か、それともそれを超えるかというのは、基本的には設定者が担保目的物を処分する際の基準ということになりますので、それをそのまま逆に加入する場合についても、適用することには若干違和感を覚えておりますので、やはりここでは、かなり悪質な財産隠匿的な加入行為が初めて否認あるいは取消しの対象になるのだと考えるのだとしたら、【案17.6.1.2】のように、設定者の方の害意というか、害する目的といいますか、そういう点がやはり要件となるべきではないかとは思っております。   それから、議論になっております担保権者の主観的要件の問題ですけれども、これは改めて考えますと、本当に偏頗行為なのか狭義の詐害行為なのか、いずれとも評価は可能なところであるのかとは思いますが、仮に本来在るべき担保権の範囲を超えてその担保目的物が増えるということになりますと、一般債権者への偏頗行為の側面が出てきますが、そうではなくて財産隠匿的な意味での狭義の詐害行為として見るとしたならば、相当対価行為ではありませんので、受益者である担保権者の主観的要件の立証責任は転換され、原則として否認できるけれども、善意の受益者である担保権者は保護するという要件として機能するのではないかとも思った次第であります。   以上、3点指摘させていただきました。どうもありがとうございました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。先ほどの阿部先生からの御指摘に関するところなのですけれども、結局、一旦増えてまた減るかもしれないという状況をどう捉えるかということだと思うのですが、今日この後に議論される点との関係で、倒産手続開始後の設定者あるいは管財人の処分権限をどう考えるのか、例えば、従来型の固定化説に立って、手続開始時に処分権限がなくなるという場合、あるいは、今回御提案されている中でいうと手続開始時の評価額で担保権の上限を画するという場合は、手続開始時が重要な意味を持つので、危機時期に急激に在庫を増やして、その後、手続が開始したときには、否認により対応する意義があるのではないかと思いますし、そうではなくて、実行時に初めて対象が固まるという見解に立つとしても、今回併せて議論されている中止命令とか禁止命令とかが手続申立ての段階で併せて申し立てられることが実務的には相応に想定される中で、債権者に不当な損害を与えないことを要件とするとき、あるいは、そのために必要な条件を付けるときの規準として、手続の申立時、開始時、あるいは命令が出される時点において、危機時期に加入行為がなされた後に増えた段階の在庫レベルをベースに、債権者に不当な損害を与えないようにするための措置が執られるとすれば、やはり危機時期に至った後の加入行為については否認という形で対応する必要が出てくるのではないかと思いました。   逆に言えば、担保権者の権利が手続開始時におよそ確定されないような処理がなされるのだとすると、そもそも否認という問題は出てこないという整理もあるのかもしれないですけれども、取りあえず私自身は、手続開始時に集合動産がどういう状況にあるのか、例えば、在庫の内容がどういう状況にあるのかが意味を持つという前提に立って、ここで否認を問題とする必要があると考えております。   その上で、37ページの9行目の辺りに書いてあるように、元々集合動産の構成部分の変動は、担保権設定そのものではなく、かつ流動するものであるから一定の増減が想定されるわけなので、構成部分が入れ替わっているにすぎない場合には有害性が否定されるというのが前提になっていると理解しておりまして、それで、ここにいう「入れ替わっているにすぎない」というのは、例えば、通常の事業の運営において、100ぐらいを平均値として80から120ぐらいの間で在庫レベルが変動しているような事業を想定しますと、たまたま危機時期において100だったものが、ぴったり100に入れ替わるときしか有害性が否定されない、あるいはそれより少なくなるときしか有害性がないわけではなくて、基本的には120に至るまで多少増えても有害性はないと考えるべきではないかと、元々そういうものとして平時において担保に取り、対抗要件を備え、一般債権者としてはその範囲で言わば責任財産からの流出を覚悟したと評価するとすれば、そこは有害性がないと考えるべきではないかと思います。そうだとすると、今回御提案されている【案17.6.1.1】と【案17.6.1.2】という問題ですけれども、【案17.6.1.2】のような要件を課して絞るべきだという議論はあり得ると思っているのですが、【案17.6.1.2】の要件があれば【案17.6.1.1】は要らないということにはならないのではないかという感じがしておりまして、通常の事業というのをどう捉えるかについては、より厳密に、あるいは具体的に考えなければいけないのですが、客観的な状況で、その時点における事業のサイクルとして元々覚悟している、あるいは許容している範囲の変動だとすると、それと併せてたまたま、例えば、この担保権者との関係では個人保証が入っているからとか、家族が物上保証を入れているからとかという動機が仮にあったとしても、そこは否認という形で対応する必要はないのではないかという感じがしていて、【案17.6.1.1】か【案17.6.1.2】かという問題ではなくて、【案17.6.1.1】は元々否認すべきでない範囲を画す基準として必要ではないかと感じております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。実は私も同じことを考えていたのですが、恐らく【案17.6.1.2】の方は「専ら」という言葉にすごく重きを置いて、「専ら」のところの解釈で何とかそれをやってしまおうという形なのかなという気がしておりますけれども、簡単な対立関係にあるわけではないというのは、おっしゃるとおりかと思います。 ○沖野委員 ありがとうございます。3点を申し上げようと思っておりまして、一つは流動性との関係で、ですから、ある一時点で問題であったと、否認の対象ともなり得るような要件を満たしていたとしても、その後の流動性の状況によって問題のない状況になるということはあるのだろうとは思っております。それは前回も申し上げたかと思います。   それから、2点目が大塚先生がおっしゃった点で、追加融資だけを取り上げられましたけれども、債権者の行動は、それで融資を引き揚げるとか、期限の利益を喪失させるとか、担保の維持義務が満たされていないとか、そういうような行動もありますので、追加融資だけではないということは一応、念のために申し上げたいと思いました。   それから、3点目は、阿部先生の御指摘で、もう今、井上先生がおっしゃったところなのですけれども、例えば、実は増殖していてというか、本来、否認で否定されるというものでも、それがされない限りは担保目的財産を処分しているということになりますので、そうだとすると、担保目的財産の処分としてのいろいろな拘束が掛かってきますし、それから、それだけ処分して出したのならば、入れる方も、手続開始後の倒産の状況ということを勘案してだけれども、それなりの正当な流動性というのは確保させなければならないといったような話も出てくるように思われまして、担保目的財産からも除外してしまうとか、否認によって除外してしまうということが、それなりに意味があるのではないかと思ったところです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○阪口幹事 阪口です。先ほどの井上先生の御発言に関係すると思いますけれども、【案17.6.1.1】でいう通常の事業の範囲というのが平時のときの通常の事業の範囲とイコールなのかというと、私自身はそうではなく、部会資料38ページの12行目ぐらいにある、その時点での状況に応じた判断と思っています。ここは危機時期に至っているときの話なので、平時の在庫は80から120の範囲で動いていて、平均100ぐらいの数字で、120まではいいのかなという通常の事業の範囲に関する議論がここに至ってそのまま当てはまるのかは疑問です。一読のときに出ていた、現金が100万円しかないのに、その100万円を使ってひたすら在庫を買って全部担保の中に放り込んでしまうという、本来なら払うべきところもあるのに、とにかくなけなしの現金を全部在庫を増やすことだけに使ったという、そのケースであれば【案17.6.1.2】の方で専らに当たるのでしょうけれども、では【案17.6.1.1】を採ったときに、120の範囲内だからいいではないかということにはならないと思っています。その意味では【案17.6.1.1】と【案17.6.1.2】は両方とも否認できるということはあるかもしれないけれども、通常の営業の範囲である限り否認されないということにはならないのではないのかと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。それは通常の営業の範囲、事業の範囲というのが常に数値的な概念として出てくるということが前提になっていますか。そういうことでは多分ないということで、作られているのではないかと思うのですけれども。 ○阪口幹事 100とか120というのは飽くまでフィクションでの説明ですから、簡単に数字だけではないのですけれども、しかし、否認の可否を判断するときには当然、数字を出して議論することになると思うのです。その際、危機時期になったときのボリュームと、平時のボリュームは違って然るべきで、かつ、ほかの財産の、現金が幾らあったとかそんなことも含めて、そのシチュエーションごとに通常の営業の範囲が決まるだろう。なので、平時のときの数字の水準内だから否認されないということにはならないということを申し上げたかったわけです。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○大西委員 私は、前回のときも発言させていただいたのですが、【案17.6.1.1】か【案17.6.1.2】ということについていろいろな考え方があるものの、やはり担保権者と設定者間の担保権設定契約の趣旨から合理的な範囲で考えた場合、通常の事業を超えたかどうかで判断をする要件の方がふさわしいのではないかと思っております。   それから、もう1点、先ほど阿部先生から、一旦通常の事業の範囲を超えた担保加入で担保物が増殖しても、その後、減る場合を想定したお話がありました。例えば、経営危機時に通常の範囲を超える担保物の加入が行われて、その後、民事再生手続が開始決定になった場合を想定すると、その段階で再生債務者はその担保物について担保価値維持義務が発生することになります。その場合、その後に担保物の換価をした場合には、その後に元々の低い水準の担保物のベースまで戻せばいいということではなく、担保価値維持義務により開始決定時の水準まで担保物を戻さなくてはいけないことになります。しかしながら、通常の範囲を超えた担保物を担保対象に含めたままだと一般債権者の弁済原資の減少につながることから、ここで否認権の行使手続が必要になると思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。そういう厳密な意味で価値を維持しなければいけないという義務が、そのような流動資産について発生するのかというのは、微妙な問題もあるような気もいたしますが、おっしゃっていることはよく分かるところであります。 ○井上委員 ありがとうございます。先ほどの阪口先生がおっしゃった点についてですけれども、少なくとも私が先ほど発言したときは、平時の通常の事業の範囲が固定して続くという意味ではなくて、基本的には、やはり通常の事業の範囲という基準は事業の状況に応じて変動していくものだと思っております。設定時に与信判断の基礎となったという意味では、担保権者からするとその時点の通常の事業状況を基礎にしたいという気持ちがあるのかもしれませんが、それがフィックスされた形でずっと適用されるということではなくて、事業の状況に応じて増えたり減ったりしていくものだろうと思いますので、危機時期に陥ったときには相当下がっている可能性はあると思います。   いずれにしても、そのときの事業の状況に照らして、何とか事業を継続しているときに、これぐらいの在庫がないと商売できないよねというような、そのときのミニマムの在庫レベルと、あとは、通常でもこれぐらいは増えることもあるよねというような在庫レベルの幅を想定しておりまして、その幅を超えて、つまり、これはもう、すぐにでも倒産手続を申し立てるしかないから、えいやっと有り金全部を在庫の購入に充ててしまうというような、後先なしに持続可能性がおよそ欠けるような態様で在庫を購入するということになると、これはそのときの事業の通常の範囲とはいえないのだろうと思います。ですので、恐らく言っているところはそれほど違わないのではないかと思うのですけれども、そういう幅をなお超えていなければ、意図は問わなくてもいいのではないかという趣旨で申し上げました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにございませんでしょうか。   いろいろ御意見を伺っておりまして、中間試案に向けてまたブラッシュアップしなければいけないのですが、今回事務局から提出させていただいた案というのは、比較的客観面を重視するのか、主観面を重視するのかということを対立軸として出させていただいたわけですが、皆さんのお話としては結局、倒産手続開始なら開始という状態で、どういうふうな権限関係になるのかとか、あるいは否認の対象は本当に何なのかとか、そういった問題の前提を詰めないとなかなか判断できないし、そちらの方が結構重要なのではないかということではなかったかという気がいたします。それを踏まえて、更に中間試案に向けて考えたいと思います。   とりわけ私が気になっていたのが、同種の動産とかというのを念頭に置いて考えると、それでも何となくうまくいきそうなのですが、異種のものがいっぱい含まれているときに、入ってきて否認の対象となるのは、例えば木材なのだけれども、売却したのは別のものであるというときに、それでは木材については全部否認されて空っぽになるのかというと、それもおかしくて、倉庫なら倉庫全体の価値によって決まるはずですね。そこら辺も本当は考えないと、同種のものであるということで考えていてはいけないのだろうなというのも感じていました。そういうことで、更に検討しなければいけませんが、しかしながら、御意見を伺っておく必要がございますので、ほかにもし何かあれば、お願いいたします。   とくにないようですので、大体そういうふうなまとめとして、更に考えさせていただくということにさせていただければと思います。   それでは、先ほどの中でも話が出ておりました、「第4 倒産手続開始後に生じ、又は取得した財産に対する担保権の効力」ということについて議論を行いたいと思います。事務当局におきまして、部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 まず、22ページの「1 倒産手続の開始後に生じた債権に対する担保権の効力」について御説明いたします。   現行法の将来債権譲渡担保については、設定者の倒産手続開始後に発生する債権に譲渡担保権の効力が及ぶかどうかが、将来債権譲渡の効力や管財人のいわゆる第三者性などと関連して議論されており、新たな規定に係る担保権について規定を設ける場合も、その担保権の効力が及ぶ範囲に制限を設ける必要がないかが問題となります。   部会資料16においては、平時における実行の観点から、飽くまで個々の債権が直接譲渡の対象になることを前提として、担保権の効力が及ぶ範囲の制約等を設けないことを提案しております。他方で、倒産手続開始後に発生した債権に担保の効力が及ぶとすると、倒産手続開始後に再生債務者等が費用を投下して事業を継続したことによって発生した債権にも担保の効力が及ぶこととなり、費用を倒産財団が負担したにもかかわらず、その結果生じた債権が担保権者の債権の弁済に充当されてしまうことになるのは不合理であるという指摘があるところです。   そこで、本文では四つの案をお示ししております。これらの案は、一読の際にお示しした四つの案について、いずれの案を支持する意見もあったことから、それらを維持するものです。  また、一読の御議論を踏まえて、目的債権の弁済又は対価として受けた金銭等の利用権限を設定者が有するかどうかによって場合分けをする考え方について、問題提起しております。これは、当該利用権限を設定者が有さず、随時目的債権から担保権者が被担保債権の回収を行うという場合であれば、将来にわたる目的債権の累積の残高を基礎として与信がされる余地がある一方で、利用権限が一旦設定者に付与され、その付与が解除されて初めて目的債権から担保権者が回収を行うという場合については、累積の残高を基礎として与信がされるということは考えにくいという点で、違いがあるように思われるためです。   次に、31ページの「2 倒産手続の開始後に取得した動産に対する担保権の効力」について御説明いたします。   集合動産譲渡担保の設定者について倒産手続が開始された場合に、再生債務者等が取得する財産に担保権の効力が及ぶかどうかについても現行法上議論があり、新たな規定に係る担保権について規定を設ける場合も、担保権の効力が及ぶ範囲に制約を設ける必要がないかが問題となります。   部会資料16においては、平時における担保権の効力が及ぶ範囲は、担保を実行する旨の通知が設定者に到達した時点で特定範囲に含まれている動産であるという考え方に基づいて御提案しています。さらに、倒産手続開始後の新規加入物に担保権の効力が及ぶかどうかは、実質的な観点から検討することとなりますが、一読での御議論では、規律の内容自体についても債権及び動産に関する規律とそろえるべきであるという御意見も多くありました。   まず、平時と同様に考えて、担保権が実行するまでに取得した動産に担保権の効力が及ぶと考えるのが【案17.4.2.2】です。他方で、債権と同様に倒産手続開始後に再生債務者等が費用を投下したことにより取得した動産に担保権の効力が及ぶと、業績の回復による担保目的財産の増加分を担保権者が把握することになるという問題があり、この問題を回避しようとするのが【案17.4.2.1】の、倒産手続開始後の新規加入物にも担保権は及ぶ一方で、設定者も処分権利を失わないこととするが、担保権者が把握することができる価値は倒産手続開始の評価額を限度とするという考え方です。   また、倒産手続開始後に担保権者が把握する価値を増加することを一切認めるべきでないとすれば、【案17.4.2.3】の、倒産手続の開始によってその後の新規加入物には担保権が及ばなくなるとともに、設定者は個別動産の処分権限を失うとすることも考えられるところです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして御意見等を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○山崎委員 ありがとうございます。山崎です。今御説明いただきました第4の1の四つの案について、事業者にヒアリングを行いました。【案17.4.1.1】のように、倒産手続開始後に管財人などの下で発生した債権に対して無制限に担保権の効力が及んでしまうと、部会資料にあるように、事業の再生を妨げる懸念がございます。一方、【案17.4.1.4】のように、倒産手続開始後に発生した債権については一切担保権の効力が及ばないものとしてしまうと、担保権者の権限が一定程度失われ、担保価値を下げてしまう可能性があると思われます。   以上より、【案17.4.1.2】若しくは【案17.4.1.3】を採用することが、よりバランスのとれた意見であるというのが大多数でした。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○鈴木委員 ありがとうございます。千葉銀行の鈴木でございます。第4の1の選択肢についてでございます。これまでの融資実務で形成されてきたものを考えますと、【案17.4.1.1】の選択肢を採りたいと考えております。かねて事例で挙げられることが多いのですけれども、太陽光発電設備向けのファイナンスでは、将来発生する売電債権も含めて担保と認識しているというのが銀行界の実情でございまして、この形態が担保債権を累積的に捉えたものの中で、事実としてかなり定着した融資の形なのかなと思っております。また、特定の会社との長期的な部品供給契約のようなものの下に工場設備を新設するとか、そういったケースも考えられまして、こういったケースでも、やはり将来の債権を累積的に担保と捉える形の融資もあるのかなと思っております。   こういったファイナンスでは、仮に担保を売却して債権を回収する場合においても、将来債権が累積的に捉えられているからこそまとまった金額で処分できるものと考えております。担保権の効力を一時点で切り取る選択肢を採ると、元々担保に期待していたものと異なってきてしまいまして、このタイプの長期融資が機能しなくなってしまうことになるのではと考えております。   少し外れますけれども、27ページの17行目のところですね、こういった融資の形態が倒産隔離されたSPC向けの与信以外でニーズがあるのかという投げ掛けもありますので、それにお答えしますと、例えば太陽光発電設備向けの融資では、別会社で営むケースももちろんありますけれども、事業法人の一部門として投資するケースの方が多く見られます。元々国内の太陽光発電につきましては、東日本大震災後の電力不足を補う目的だったと思いますけれども、事業法人に設備一括償却という税の優遇策を伴って投資を促した経緯もありますので、多くが事業法人の一部門という形で使われているというケースになっていると思います。こういったファイナンスは、不動産担保中心の時代にはなかなか実現しなかったと思われますけれども、金融機関もそうですが、ビジネス弁護士の方とか、さらには事業者さんと協力して、創意工夫しながら新たな選択肢を作り上げてきたものと想像していまして、こういった不動産担保に依存しない融資の選択肢を確保していく意味でも、こういったこれまでの創意工夫が引き続き生き残る余地というのは残していただきたいと考えています。   以上になります。ありがとうございました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。少し鈴木さんにお伺いしたいのですけれども、例えば太陽光発電の設備のための融資をするという際に、当該太陽光発電設備から発生する債権の何年分について担保を設定するというふうなことが普通なのでしょうか。あるいは、そして、その融資額というのは、その何年分というものに対応していると考えるべきなのでしょうか。 ○鈴木委員 実際には何年分という形で捉えているというよりは、融資期間を満たす形で契約しているというのが一般的です。そういう意味では、金額の累積から逆算して融資額を決めているという感じではないケースが多いかなとは思います。 ○道垣内部会長 鈴木さんとかがおっしゃっていることは十分分かるのですけれども、この文章として、【案17.4.1.1】の、無制限に担保権の効力が及ぶと書くと、それは無制限はおかしいのではないかとみんな思うわけですよ。だけど、それは多分、無制限というか、永遠に全部それを取っていくわけではないというのが実務の前提になっているのではないかと伺っていて思い、それはどういうふうなストラクチャーになっているのかということを伺いたいなと思ったわけです。いや、私たちは幾らその後貸しても、どんどん取れるのです、私たちは特別ですというのでは、それはとても通らない意見だと思いますので、どこに合理性があって、どのくらいのものをというものを考えに入れていらっしゃるのかというのが少し伺えればと思ったと。 ○鈴木委員 そういう意味では、フリーキャッシュフローになると思いますので、結局、費用差引後というのが実態になりまして、当然ですけれども、債権額を上限としてという形で組み立てていると思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。すみません、少し伺いまして。 ○大西委員 よろしくお願いします。私もこの件、一読のときにも発言したのですが、民事再生・破産と会社更生では少し結論が違うのかなと思っております。まず、民事再生・破産の場合は、【案17.4.1.1】でいいのではないかと思います。その理由は、このことが、集合物譲渡担保の担保価値評価を担保権者にどれだけ見てもらえるかにリンクしてくるからです。例えば、私的整理においてプレ・ディップ・ファイナンスを実施する際に、担保として流動債権を入れる場合を想定します。その際、倒産後は担保権の内容に制限があることになると、担保権者から担保物の価値を十分に見てくれないリスクがあり、結果として、私的整理による事業再生を阻害する結果になりかねません。従って、民事再生・破産では、譲渡担保権は別除権であることもあり、【案17.4.1.1】が原則になると思います。ただし、一般債権者の財源確保の視点も重要であるため、その点の均衡を図るため、後の第5でテーマとなっている担保権者の費用負担についても認めるべきだと思います。   一方で、会社更生の場合は、譲渡担保権が更生担保権になりますので、担保対象債権は、会社更生手続の開始時の評価を限度とすべきだと思います。ただ、ここでの文言が倒産手続開始時に発生していた債権の担保評価という文言だと、将来発生する債権分は含まれないことになります。しかしながら、実際、担保権者は、担保評価の際に将来債権も含めて担保価値をみているはずなので、倒産開始時における債権の担保評価という文言にすべきと考えます。そうなった場合、担保物の更生担保権評価は、将来債権のキャッシュフローを現在価値で割り戻した評価額になると思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○大澤委員 大澤でございます。今いろいろお話がありましたけれども、まず【案17.4.1.1】につきましては、正にその無制限というところが倒産手続との関係では問題になろうかとは思っております。この後、5の、その後ろですね、費用負担とセットで、倒産財団からの費用負担を、優先弁済をそこでカーブアウトするような形で存続するということと多分、セットで【案17.4.1.1】は考えるのだと思いますが、だとしても、例えば、集合債権の一部だけを担保に取っていたというような場合に、どこまでの費用がどう反映されるべきなのかというようなことに関して申し上げると、それは恐らく算定はできないとも思います。そういった意味でも、【案17.4.1.1】で考えるべきではないのではないかというのが、まず一つございます。   次に、【案17.4.1.2】についても考えましたけれども、こちらは、先ほどどなたかがおっしゃいましたが、倒産手続が開始された後に発生した債権には担保権の効力が及ぶが、優先権を行使することができるのは倒産手続開始時に発生していた債権の評価額とあります。この、倒産手続開始時に発生していた債権という、その発生というものが、事務局のこの案を見たときに、将来分も譲渡担保契約設定時に発生していたということで考えるのか、あるいは、個々具体的な債権が発生しているときをもって正に発生というのかというところで、大分評価額も違ってくるようにも思います。   また、いわゆる累積型と循環型においても、循環型であれば基本的には、その循環する債権というもの、取引債権の不確定さを見た上でのリスクを取って貸付けをしているのが通例だとも思いますので、評価額というのは極めて低くもなっていくというふうにも、低くなるというか、ワンサイクルみたいなもので考える部分も多いのかもしれません。そこはその評価の仕方が大分難しいというのはあろうかと思います。   ただ、考え方としては、【案17.4.1.2】というのはバランスがとれているかのようには見えるのですけれども、事務局案にお伺いしたかったのは、【案17.4.1.2】を採った場合に、倒産手続開始時に発生していたというときのその債権というのが、契約締結時に発生したことになるのか、それとも個々の債権発生時が正に発生ですよとお考えなのか、そこはどちらなのでしょうか。 ○道垣内部会長 今の段階で、何かありますか。 ○笹井幹事 そこが正しく問題だと思っておりまして、27ページの3行目以下で問題提起をしていたところです。【案17.4.1.2】は、恐らく、契約がされたからといって直ちに発生したというわけではなく、もう少し具体化されている、例えば、その反対債務がもう履行されているとか、請負だったら仕事がある程度完成しているとかというようなことが想定されていたのではないかと思います。   ただ、厳密に考えていくと、例えば請負契約における反対債権がいつ発生しているのかについてはいろいろな考え方が主張されております。また、ここでは、継続的な契約で、ある程度の期間中毎月10個の物が引き渡されるという例を書きましたけれども、一回的な売買契約で、ただ物の引渡義務の履行期が少し先になっているというものと、理論的にどこまで区別できるのかというのは難しいのかなと考えていたところです。そういう意味では、明確なお答えを今、申し上げられるということではないのですけれども、私どもとして考えていたのは以上のようなところになります。 ○大澤委員 ありがとうございます。もう少しだけ続けてよろしいでしょうか。   今のお話を伺いまして、この発生していた債権というところについてはなお疑義があるというか、なおこれが詰められるものかどうかも含めて検討課題だということを改めて認識はいたしましたけれども、もし譲渡担保契約設定契約時ではなくて、もっと後ろ倒しに少しずつなっていくというようなこと、具体的な発生時との関係で少し個別に分かれていくとなると、やはり評価のところでの考え方が【案17.4.1.2】では難しいとは思いつつも、【案17.4.1.1】に比べるとバランスはとりやすくなっているかなと感じております。   次に、【案17.4.1.3】ですけれども、こちらは担保権者が実行時を選べるという意味で、別除権としての取扱いということでは、一つのバランスの在り方として、あるのかなとも思いますけれども、開始後に発生した債権についても、それがもし実行がその更に後になるということであるとするならば、開始から実行までの間についての費用という問題も出てきて、先ほど【案17.4.1.1】で申し上げたとおり、そもそも費用ということで適切にバランスがとれるのかという点では、また一つの問題があるのかなとも思っております。   【案17.4.1.4】は、いわゆる固定化説と呼ばれるもので、批判も多いところでもあるとは思いますけれども、考え方の一つとして、特に循環型にはなじみやすいお話ではないかとも思っておりますので、なお【案17.4.1.4】であっても、そういった立法をするということそのものであれば、十分な検討をされるべき案だとも思っております。   簡単ですが、以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○片山委員 慶應義塾大学の片山でございます。どうもありがとうございます。【案17.4.1.1】から【案17.4.1.4】の案が提案されておりまして、その中の一つというのは、やはりなかなか難しいのかなとは思っております。類型論がどこまで可能かという問題はあるのですけれども、やはり実務家の先生方のお話を聞いておりましても、債権譲渡担保に関しては、累積型と循環型で明らかに違う形の担保ですので、それを倒産法上、特に再生手続の中で区別した取扱いをしていく必要があるということを前提に議論をすべきでしょうし、その上で、立法の在り方も考えていくべきではないかと思っております。   累積型に関しましては、倒産手続開始後に発生する債権にも担保権の効力が及ぶということ、あるいは実行と切り離して目的債権の取立金からの回収を保証すること、そういう制度枠組みを設ける必要があって、先ほどからいろいろな例が出ておりますけれども、事業債権を担保化した中長期の大型のファイナンス、そういったものが広く行われて、資金調達が推進できるように誘導するというのは、今回の担保法改正の一つの課題であるかなとは思っております。   他方、恐らく通常行われている形態は、むしろ循環型ということになるのかと思われますので、それについては集合動産担保と同様の枠組みで、実行による固定化を前提とした収益担保として規律していく、すなわち実行によって固定化した債権からの取立てのみが可能となるという担保としての位置付けを認めていく必要があるのではないかとは思っております。そういう意味では、累積型には【案17.4.1.1】、それから、循環型については【案17.4.1.2】か、あるいは実行を前提とするなら【案17.4.1.3】という形での類型的な取扱いが求められているのではないでしょうか。   その上で、2点を申し上げたいと思います。第1点は、先ほどから議論がなされておりますように、【案17.4.1.1】が無制限に担保権の効力が及ぶとする点ですが、このように無制限に担保の効力が及ぶということはあってはならないと考えています。この点は、おそらく多くの先生方の御認識と一致しているかと思いますが、要するに、事業債権をまとめて担保に取るという場合、取立権を担保権者に持たせるということであるとしても、その取立金の全額を常に被担保債権の充当に充てられているというわけではなくて、当然、事業を行っているわけですから、設定者に一定の範囲で、その後の事業資金として活用されているということが前提となっているということかと思います。ですから、倒産手続の開始前後を問わずということになるのかもしれませんが、必ず一定の範囲は事業債務者、設定者の事業資金として、あるいは一般債権者の責任財産としてカーブアウトしていかなければいけないということなのだと思います。それは、後で議論する費用負担の問題に集約できるのかも知れませんが、そもそも担保の本質論として、累積型といっても、取立権が付与された目的債権の全てについて優先弁済権が確保されている担保ではないのだという点が、そのカーブアウト論の本質的な根拠になると思っているところです。それが第1点ということになります。   第2点は、類型論は果たして立法として可能なのかという点です。それはやはり非常に難しい問題かと思っております。累積型と循環型を観念的には区別できるとしても、観念的に区別できるだけでは立法ができないという御指摘を部会長からもいつも頂いているわけですが、それでもなお、実態に即してやはり何らかの形で区別をしていかなければならないと思っております。要するには、平時に目的債権の取立金から被担保債権の優先的な弁済を受けることが想定された担保かどうかということで峻別がなされるべきで、資料で申し上げますと29ページから30ページのところで新たに利用権限というキーワードが出ておりまして、その利用権限がどちらにあるのかということを考えていくべきだという指摘が一部にあるということで取り上げてくださっています。すなわち、目的債権の弁済又は対価として受けた金銭等の利用権限がどちらにあるのか、担保権者なのか設定者になるのかという点がポイントだということで、両者を切り分けていくという御指摘がなされているところです。   本質的には恐らくそうなのだと思うのですけれども、しかし、対外的には全く明らかでない担保権設定当事者間の経済的な実質的基準によって峻別を行うというのは、やはり担保物権の規律としては困難を伴うということになろうかとは思っております。やはりそこは法的な意味で、取立権限がどちらに帰属しているのかということによって峻別せざるを得ないと考えています。再生手続では、法的な意味での取立権限が設定者に残されている債権譲渡担保、狭義の集合債権譲渡担保といいますか、循環型といいますか、そういったものと、担保権者が設定権限を取得している債権譲渡担保、これが累積型となるのかもしれませんが、それを取立権の帰属という形で区別をしていくというが有効なのではないかと思っております。   取立権が設定者にあるという場合は、動産と同じように考えて、固定化した債権に担保目的が集中するということになるし、かつ、実行は中止命令等の制約を受けるということになるのだと思いますが、累積型、取立権限がそもそも担保権者に与えられている類型に関していいますと、これは再生手続後に発生した債権にも担保権の効力が及んで、実行という形とは切り離して、引き続き取立てを行って優先弁済に充てることができると、そういうふうな仕分をしておいて、融資実務においてはそれに合わせる形で累積型か循環型かを選択していただくというような方向で、区別が何とか可能となるのではないかと思っているところではございます。   以上、長くなりましたけれども、意見を述べさせていただきました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   たくさんお手が挙がっているのですけれども、すみません、一言。鈴木さんのおっしゃった【案17.4.1.1】が適用されるべき太陽光発電融資の話なのですが、これって債務不履行があるまでの間、当該太陽光発電設備から生じた債権か何か知りませんけれども、少なくとも担保目的になっている債権の取立権限は、誰にあるというタイプのものなのですか。 ○鈴木委員 千葉銀行の鈴木でございます。取立権限は、これは債務者にあると思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   片山さんは、最初から取立権限が担保権者にあるとおっしゃったのですが。 ○片山委員 実際には取立権限がどちらにあるのかということに関係なく、利用権限というのは実際的に回収した資金がどこに渡っているのかということを問題にすべきだという御指摘があるところなのですけれども、それだと結局は、実質的に設定者間の中での取決めを担保権の効力として主張していくということになりますので、それはなかなか難しいのではないかと思っております。そうしますと結局、立法としては取立権限をどちらに置いているかということで切り分けをせざるを得ないと考えます。それで、もし累積型という形で担保を設定したいということであるならば、取立権限は潔く担保権者の方に渡してください、そうしないと、集合債権譲渡担保といいますか、循環型としての保護しか与えられませんよというふうな割り切り方が必要ではないかということを申し上げたということになります。 ○道垣内部会長 その言葉を使わないようにしましょうと私が言っておりますのは、定義が今でも鈴木さんと片山さんで違うのですよ、累積型といっているものについて。それは議論を混乱させるだろうと思うのです。私は別に【案17.4.1.1】に反対だという立場を採っているわけではありません。【案17.4.1.1】には括弧書きがあって、なお設定者は取立権を失わないと書いてあるので、片山さんのような累積型というのは【案17.4.1.1】がそもそも適用されると困ってしまうのですね。そもそも設定者が失わないのでは困ってしまうわけだから。   そうすると、今出ている話は恐らく三つあって、実行時に存在している債権のみに及ぶというタイプの集合債権譲渡担保と、平時には設定者が回収するけれども、実行が行われたら、その後発生する債権については被担保債権額に満つるまでずっと及びますよというタイプのものと、片山さんがおっしゃる、実行前から担保権者が取得するというふうなものとがありますという話で、少なくとも三つに分けて議論しないと、どうもずっと議論が混乱しているように私には思えるのです。そういうことを少し申し上げて、ですから、どういうタイプのものを発言されているのかということを前提にして御発言いただかないと、このままで循環型、累積型と言っていると、絶対にこれは混乱します。その点はよろしくお願いしたいと思います。 ○片山委員 異論ございません。 ○日比野委員 ありがとうございます。2点申し上げます。1点目はもうこれまで発言された方にほぼおっしゃっていただいたことだと思うのですが、金融機関としては【案17.4.1.1】、これは、今の道垣内部会長の整理でいうと2番目の類型ということかと思ったのですけれども、この考え方がやはり実務に合っているということを申し上げておきたいと思います。   これは、倒産手続に入ったときに別除権協定あるいは更生担保権としてどのように評価されるのかということを意識した捉え方だと思うのですけれども、やはり倒産という有事の局面になったときに、その時点で発生している債権の価値しか押さえられていないというようなことになりますと、融資の検討をするという、平時としての融資の入口のところで担保の価値をどう評価するかという、融資ができるかどうかの判断に影響してくると考えます。太陽光のような類型のものについては、今の2番目のような発想で、したがって、第5でいう費用は当然控除するし、倒産手続開始決定時点での評価ということになれば、恐らく将来価値、将来発生するキャッシュフローから費用も控除して現在価値に引き直すというコンセプトになると思うのですけれども、そのようなものとして評価できる類型があるということは共通理解として議論をしていただきたいと考えている次第です。   あと、2点目として、先ほど議論になりました29ページの第5の場合分けのところなのですけれども、金融実務とすると、取立権限というのは、より正確にいうと担保対象債権がどこに振り込まれているかということですと、担保権者ではなく設定者の方に振り込まれている、したがって、これを取立権限は留保されているという言い方をするのであれば、実務上、取立権限は留保されているのが恐らくほとんどではないかと思います。   この実務は、譲渡担保権の設定によって、取立権限も担保権者に移転するが、その上で一定のタイミングまでは設定者に取立権限を留保しており、そうすると、振り込まれた資金に色はないので、平時においてはその資金を利用することができるという運用になっているものだと理解しております。このようにしているのは、この部会資料の説明のように担保権の効力に差を設けるということを何か企図したということではなく、通常は約定返済額を上回るはずの売掛債権の回収金などを約定返済の充当のために直接、担保権者に入金させるということになりますと、売掛債権の締め日と約定返済日のずれなどによって債務者の資金繰りを必要以上に悪化させることが起きるため、平時においては債務者の事業活動における効率的な資金繰りのために取立権限を留保していると、このような考え方で実務は動いているのだと理解をしております。   加えて、これは昔から言われていることですけれども、譲渡通知を売掛先に送ることに対する債務者の信用不安の惹起の懸念への対処として債務者に対する通知及び取立権限を留保するといった観点も、やはりまだあり得るのだと思います。特に、多数の売掛先に対する売掛債権を担保取得していて、一月の間にそれぞれの売掛債権の締日で入金されてくるというときに、それを全部担保権者に入金させるとなると、今言ったような弊害が更に大きくなるということで、そのような事情を考慮した結果がおそらく、現状の実務運用なのだと理解をしております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。何人かの方がおっしゃったことと重なる部分もありますけれども、倒産手続が開始された後に、債権担保でいえば債権を発生させるために必要な費用、事業性のある売掛債権などであれば事業継続のための費用ですかね、在庫の場合も同じように、在庫が流入するために必要となる費用は、元々一般債権者の引当てとなるべきリソースですので、それを使って担保権者のためだけに、発生した債権あるいは加入された動産が担保の対象になるということには問題が大きいということだと思うので、【案17.4.1.1】を採用するとすれば当然、第5における費用の償還とセットにならなければ倒産手続上は正当化できないのではないか、少なくとも立法論としては、そうするべきではないかと思います。   別の言い方をすれば、【案17.4.1.2】から【案17.4.1.4】までのような形で、どこかの段階で存在するものを対象として担保権者が優先的、排他的に把握するという考え方を採るのであれば、それは【案17.4.1.2】、【案17.4.1.3】、【案17.4.1.4】いずれの考え方による場合であっても、カーブアウトの議論をする必要はなく、そのときの換価価値を全て担保権者が基本的には把握することになってよいのではないかと思います。   その上で、【案17.4.1.1】プラス第5がうまくいくのかについては、なかなか難しい面があるのではないかと思います。これは先ほど大澤委員がおっしゃったことに重なりますけれども、販売業者の在庫担保を想定すると、仕入れ費用は比較的明確だと思うのですけれども、しかし、そういった事業を継続するために必要なのは仕入れ費用ばかりではなくて、間接的な人件費その他の費用も必要となりますが、それを、例えば倉庫Aの中の在庫という担保の取り方をした場合に、その倉庫Aのほかにも倉庫がいろいろあり、あるいはいろいろな業務をやっている会社について、カーブアウトすべき費目というか金額を算定するのは容易ではないでしょうし、さらには製造業者の在庫になると、仕入れ費用というよりはむしろ製造費用になりますから、具体的な在庫との結び付きが更に希薄になります。医薬品などは、そもそも膨大な開発費が10年も20年も先立って投下されていることもあるでしょうから、いずれにしても、いろいろなことをやっている、あるいはやる可能性のある事業会社について、第5のようなカーブアウトを伴う【案17.4.1.1】のような担保制度を構想するのは容易ではないのだろうと思います。   仮にやるとすると、以前、商事法務の研究会のときに申し上げたこともありますし、昨年、粟田口弁護士が金融法学会でも言っておられたと思いますが、収益執行を集合動産譲渡担保、あるいは将来債権譲渡担保の実行について整備した上で、倒産手続においてもそういった実行方法を想定することは、考えられないではないと思うのです。ただ、それは相当大掛かりな話になるし、裁判所が必要な費用として一定の金額を定めることは、かなり裁判所の負担にもなり、その判断も容易ではないと考えられます。そうすると、現実的には、こういった【案17.4.1.1】のような効力の及ぼし方を前提として必要費用をカーブアウトしていくというのは、一企業あるいは一法人についての全資産担保型の担保について導入する方が現実的ではないかという感じはいたします。   企業単位であれば、ある意味、企業会計を通じて、一定の費目についてカーブアウトの対象にすることが、例えば仕入れ費用、商取引債権者への弁済とか、それ以外の様々な費目を、例えば人件費とかですね、そういったものを引いた上で、その剰余部分を担保権者が把握するという設計はあり得るのかもしれず、そういう意味では、事業担保あるいは包括担保の分野で、こういった、累積的担保ファイナンスと世の中で呼ばれているものを想定することはあるのだと思います。それでは困る場合があるか、というのは、先ほど御紹介いただいた、事業会社が一部門で太陽光発電をやっておられることを、どれだけ今後も維持し続ける必要があるのかにもよるかもしれません。そういうものもやはり必要なのだとすると、先ほど申し上げたような、全資産担保ではない、企業の一部資産についてのみの【案17.4.1.1】プラス第5の費用カーブアウトみたいな制度を設けるために労力を掛けなければいけないのかを検討しなければいけないのですが、そこでは、先ほど申し上げた、全資産担保型の別の事業担保制度に置き換える実務を志向することができないかということも、併せて考えなければいけないと思いました。   それとは別に、一般的によく行われている債権担保については、【案17.4.1.2】から【案17.4.1.4】までのどれかという形で検討すべきで、私自身は【案17.4.1.3】ですかね、担保権者が基本的には実行時を選択できる状態がベースになるとすれば、これが一番説明しやすいのかなと思っておりますが、もう一つ、【案17.4.1.2】というのも、実務的に考えると、流動性が喪失しない範囲で事業を継続できるという意味では、一つの有力な選択肢になるのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。立教大学の藤澤です。二つコメントをさせていただこうと思います。一つは、これまで少し出てきた類型論という考え方に反対ですということを申し上げたいと思います。というのも、類型論の定義、類型論を採る場合の累積型と循環型との定義が難しいということがありますし、累積型と循環型の違いというのは結局、【案17.4.1.1】とか【案17.4.1.2】を採ったときには、例えば費用を控除するとか、評価額を決めるとか、額面額から何らかの額を引き算するということになると思うのですけれども、その計算の中に入れてしまうことができるのではないかと考えるからです。   例えば、具体的に申し上げますと、太陽光発電のようなものは当初、大きな投資が必要であって、その後の費用というのは余り掛からず、だから、そこから上がってくる収益を担保権者に対する弁済に回しても大丈夫だし、担保権者としてもそれを返済として期待しているというタイプのものだと思うのです。そうすると、費用を算定するというときには、費用はすごく小さくなりますので、担保権者の取り分が多くなるということになるでしょうし、例えば【案17.4.1.2】で評価額を算定するというときにも、その評価額は大きく評価されるだろうと考えられます。   これに対して、例えば小売業の売掛債権のような場合には、そもそも当初のコストというのは非常に小さい分、何回も継続的に融資をして、売掛債権で上がってきた回収金というのは次の商品の取得のために回さないとビジネスが回っていかないというようなものだと思うので、金融機関としても、その大半を取ってしまうというようなことは予想していない、だから循環型と呼ばれているだけなのではないかと思うのです。この場合には、例えば【案17.4.1.1】で費用を計算するとすれば、その費用は非常に大きくなってきますので、担保権者の取り分は少なくなるし、【案17.4.1.2】で債権の評価額を計算するというときには、その評価額が小さくなるだろうというだけで、結局その計算の中に類型の違いを込められるのだとすれば、それをわざわざ別の担保として設定しておく必要はないのではないかと考えたところです。   以上が一つ目のコメントで、次に二つ目なのですけれども、次は【案17.4.1.3】に反対ですという意見です。ここでは債権について、実行するまでに発生したものには担保権の効力が及ぶけれども、実行後に発生したものには及ばないというふうな考え方を採っているようなのですけれども、現在の判例法理を前提とすれば、将来債権の譲渡というのは基本的には個別債権が譲渡されている、その特定の仕方が集合的であるというだけだと思うのです。そうすると、ある債権について実行を行ったことが他の債権の実行に影響するメカニズムというのが説明しづらいのではないかと考えております。もしこの【案17.4.1.3】のルールを潜脱しようと思えば、例えば、債権譲渡契約を結ぶときに1か月ごとに別の契約にしておけば、一つの契約の債権の一つに実行を掛けたとしても、また別の設定契約を結んでいる担保権には影響しないのではないかと、そんな言い訳が可能になってしまうのではないかとか、資料でも書かれているとおり、【案17.4.1.3】というのは集合債権概念みたいなものを導入しないと機能しないルールなのではないかというふうな感じがしております。ですので、【案17.4.1.3】ではなくて、それ以外の案にするのがいいのかなと考えております。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございます。 ○倉部委員 ありがとうございます。法政大学の倉部でございます。【案17.4.1.1】についてですけれども、こちらについてはやはり無制限にというところが引っ掛かってまいりまして、この点は既にほかの先生方も御指摘をされているところかと思いますけれども、やはり事業の継続、とりわけ再建型の倒産手続の場合ですと、事業の継続を阻害するということもいえるかと思いますので、採り得ないのかなと考えております。   【案17.4.1.2】の方ですけれども、こちらは現行の会社更生手続、会社更生法における担保権の取扱いには非常になじみやすいものであると考えています。教科書的な説明になってしまいますけれども、手続開始時に評価をして、いわゆる二分化というものを行っていて、更生担保権と更生債権に分けているという、なかなか評価というのは難しいというのは常々御指摘があるところではありますけれども、そこを実際は行っているというのが会社更生であるかと思いますので、【案17.4.1.2】というのは会社更生手続の場合にはなじみやすいと考えています。   【案17.4.1.3】の方が、ただいま藤澤先生から【案17.4.1.3】は難しいのではないかという御指摘があったところではございますが、私としては、別除権として担保権を取り扱っている民事再生では【案17.4.1.3】がなじむのではないかと考えております。先ほど、みずほ銀行の日比野様でしたでしょうか、【案17.4.1.2】に対する批判であったかと思いますけれども、別除権協定のお話を挙げておられたかと思います。倒産手続開始時の評価額で縛られてしまうということになると別除権協定を結びにくくなるですとか、あるいは当初、そういった縛りがそもそもあるということ、【案17.4.1.2】の考え方が前提となると、当初の融資のときに萎縮してしまうといったような趣旨の御批判があったかと思いますけれども、仮に民事再生の場合に【案17.4.1.3】という考え方に立った場合ですと、まだ評価というのはブランクの状態だと思います。差し当たりは担保権の効力がどこまで及ぶのかということについて述べているのが【案17.4.1.3】ですので、実行時点に存在する債権について効力が及ぶ、それ以降は及ばないということだけを述べているのであって、実行するまでの段階では、別除権協定は、特に評価については何も画されていないまま、それこそ別除権協定の交渉の材料、対象であるといえるかと思いますので、先ほどの御批判というのは必ずしも、【案17.4.1.2】に立ってしまえば確かに縛りが掛かってしまいますけれども、民事再生について【案17.4.1.3】に立つのであれば、先ほどの御指摘の別除権協定にまつわる問題というのは解消されるのではないかと考えております。   それから、【案17.4.1.4】ですけれども、手続開始時で全面的に固定化ということになりますと、事業再生を後押しするという意味では意義があるのかもしれませんけれども、やはり一読のときにも申し上げましたが、やや硬直的であると考えておりますので、【案17.4.1.4】は採りにくいのかなと考えています。   会社更生と民事再生で【案17.4.1.2】と【案17.4.1.3】、それぞれがなじみ深いと今、申し上げたわけですけれども、こういった倒産手続ごとに分けて担保権の効力が及ぶ範囲というのを変更するような立法が実際、可能なのかと考えますと、それは少し難しいところもあるのかなと思っておりまして、そう考えますと、【案17.4.1.2】と【案17.4.1.3】というのは必ずしも、評価という点がはっきり明言されているのは【案17.4.1.2】の方になりますけれども、その点を除けば、基本的に通底している考え方というのは実は同じなのではないかとも考えていまして、と申しますのも、民事再生の場合は別除権として取り扱われているので、担保権実行時が基準時になりますけれども、会社更生というのはそもそも手続開始してしまえば担保権の実行はできないわけですから、手続開始時に担保権実行がなされていると擬制するような考え方を採れば、実は【案17.4.1.2】と【案17.4.1.3】は余り矛盾したことを言っているのではなくて、担保権実行に相当するものがあれば、その時点までにあったものについては担保権の効力が及び、それ以降に発生するものについては及ばないというようなことで考えるとしますと、【案17.4.1.2】と【案17.4.1.3】の合わせ技のような文言が仮に作り得るとすれば、何とか立法も可能なのかなという夢を込めて、発言をさせていただきました。   以上でございます。ありがとうございました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○村上委員 ありがとうございます。一読のときにも申し上げたのですが、一般債権者の保護、また労働債権確保という点から、倒産手続開始後に発生した債権には担保権の効力が及ばないという【案17.4.1.4】に私は賛同いたします。また、次の議題になりますが、動産の場合も同様の考え方で【案17.4.2.3】に賛同いたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○阪口幹事 阪口です。【案17.4.1.1】の必要性について、質問をしたいと思います。今までの議論の中で例としては、一つは、太陽光ファイナンスのようなもの、二つ目は、長期の部品供給契約があるという前提で工場資金、建築資金などを融資するもの、三つ目が、具体的にどうかは別にして、取立権限が担保権者に最初から行っているようなものと、この三つの例が出たと思います。   一つ目、太陽光ファイナンスについては、井上先生も御指摘があったと思いますけれども、事業担保権のようなものでカバーできるのではないのかと思います。先ほど法人の一部門でやることもあるのだというお話があったのですけれども、一部門でやると、他の部門の何かのアクシデントによって会社自身が倒産して、完全に廃業するという局面だって起き得るわけで、そのときには、もう対象債権は発生しようがない。そのような可能性を考えたときに、本当に一部門でやっているからいいのかというと、むしろ逆ではないか。そうだとすると、一部門ではなくて、そこの部分だけ切り出してSPCか何かの仕組みを作ることの方が、むしろファイナンスとしては安定しているのではないのかというのが一つ目の例による必要性に関する疑問です。   次に二つ目の例が、先ほど言った長期の部品供給契約があるような場合の工場建設資金ですけれども、これも当該会社が何らかのアクシデントで潰れる、若しくは供給契約の売り先が、何かの理由でもう買わないと言ってきたという場合には、結局は回収不能状態が発生するわけですよね。そう思っておられないのは、売り先も買い先もよほど安定したところで、潰れないし、取引は続くだろうと思っておられるからではないかと思うのです。しかし、それは一般的信用力が高いということを意味しているだけであって、ここの担保の問題なのかなと思います。   三つ目の、取立権限が最初から担保権者にある場合、私の知っている例でいうと、診療報酬債権を担保に取っている場合の一部の事例かなと思います。毎月1,000万円の診療報酬債権が発生するとして、診療報酬債権であれば2か月分のサイトだから与信は2,000万円になるのだけれども、2,000万円以上、例えば1億円貸します、それで、1,000万円入ってくるものを全額一旦担保権者が取得します。しかしながら、もちろんそのまま全額を充当すると病院は経営が成り立ちませんから、800万円なら800万円をリリースし、200万円は回収します、こういう形で安定的に回収もできるから多額の融資ができますという、このような事例は実務で一部あると思うのです。   ただ、それも病院が本当に廃業するリスクがないかというと、あるわけですよね。病院でも、民事再生より倒産、破産して廃業する方がむしろ、ケース的には多いのではないかと思うのです。そうすると、実は取立権限を最初から持っていたとしても、その与信は、10か月分なら10か月分をカバーしているのではなくて、2か月分の担保と8か月分の裸の債権なのではないのかと、こう見たとしても同じことなのではないかと思うのです。   民事再生という局面、会社更生という局面だけ考えたら、その後も対象債権が発生するということを考えているけれども、本当の廃業リスクの方がむしろ大きくて、それを考えたときに、法律で【案17.4.1.1】を採らないと融資ができなくなりますというのが本当なのか、廃業リスクはどうお考えなのですかというのが疑問なのです。つまり、【案17.4.1.1】であったら便利だという議論は分かりますけれども、【案17.4.1.1】でなければいけない必要性というのは、事業担保権のようなものを創設することで十分カバーできるのではないか。あとは【案17.4.1.2】、【案17.4.1.3】、【案17.4.1.4】の中でどの案を採るかという議論が残り、【案17.4.1.2】、【案17.4.1.3】、【案17.4.1.4】の選択肢の中ではいろいろ評価も分かれるところだと思いますけれども、少なくとも【案17.4.1.1】でなければいけない理由というのは、伺っていても実感できないというのが正直なところです。 ○道垣内部会長 どなたかから回答はございますか。 ○鈴木委員 ありがとうございます。千葉銀行の鈴木でございます。阪口先生のおっしゃるところは、半分当たっているような気もしておりまして、特に太陽光発電におきましては、先ほど政策的なところを申し上げました、要は黒字の会社が設備を一括償却できるという制度を使って投資を促しましたという、国策的にやった時期がございますので、その時期というのはやはり非常に優良企業がこぞって投資したという時期がございましたので、担保評価ありきでやったものでない可能性というのは非常に高かったとは思っております。それと、先ほどの長期の部品契約の場合も、大手同士であればおっしゃるような形があり得ると思っていまして、ここもやはり工場の新設となりますと、それなりの信用力がないとできないところかなと思っております。   一方で、太陽光にしても、長期の部品供給契約というケースにつきましても、大分事案が重なってきたこともありまして、今後いろいろな応用が利いてくる可能性というのはあるように思っておりまして、それが正に町工場が大手企業と取引を開始することを支援するとか、そういった場面につながる可能性というのはあるような気がしていまして、これまで積み重なってきたものというのは阪口先生のおっしゃるような一面も多々あるようにも思いますが、ここを応用してどういうふうなファイナンスで中小企業を支援できるかといった面も考えていく必要があるのかなと思います。   すみません、答えになっているか分かりませんが、以上です。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございました。単純化して言えば、10億円の不動産があるといったときに8億円貸すといったら、その10億円の不動産について抵当権の実行ができるのに、累積したら10億円になるだろうという債権を担保に取り、それを見越して8億円融資したといったときに、倒産したらその後は取れませんよというのでは抵当権とは大分違うのであり、それはおかしいのではないのというのが多分、累積といいますか、その後発生する債権にも及ぶのだという考え方の基本にあるのだろうと思います。ただ、僕はどちらの味方でもないのですけれども、現在の実務において事案が積み重なっていますからというのは、僕はこれは最高裁へ行ったときにどうなるか全然分からないと思いますから、あまり理由にならないと思います。まだ全く不安定な状況で、たくさんやっているからもう大丈夫だということには恐らくならなくて、これを立法した後、最高裁に持って行って全部認められるとは、私は必ずしもそうはならないのではないかという気もします。それは若干、前提として期待のしすぎなのかもしれない。すみません、要らないことを申しまして。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。累積型、循環型という用語を使えなくて説明するのがなかなか難しいところもあるのですけれども。 ○道垣内部会長 どうぞお使いください。定義しながらね。 ○片山委員 なるべく。はい。   類型論が難しいとなりますと、今回の提案ですと、例えば【案17.4.1.3】で画一的に規律するということになるのでしょうか。そうしますと、太陽光なら太陽光で20年のスパンで融資をしました、売電債権から回収をしていくという予定だっただが、15年目に再生手続になりましたというときには、その時点で発生している債権でないと駄目ということになりますと、残り5年分は担保に取っていないことになるということですよね。それは担保の限界と捉えるべきかも知れませんが、実務上、20年、フルスペックできちんと再生後も回収していけるような担保が必要であれば、もちろんきちんとカーブアウトはすることを前提に、それを認めていくという方向で議論すべきではないか、そのような担保が求められているということで、今回の担保法改正の一つのインセンティブとなっていたのではないとは思っています。そこの部分が、例えば【案17.4.1.3】で切り捨てられてしまっていいのかという点は、疑問には思っているところではございます。いかがでしょうか。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。そのような目的があったのかどうかは、私は寡聞にして存じ上げません。村上さんがずっと御主張になっていらっしゃるように、給与債権者その他とのバランスもとらなければならないわけで、ともかくも使いやすくするというのが本部会の目的であったとは私は思っていません。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。今、片山委員がおっしゃっていた、フルスペックで担保に取れるかどうかという点なのですけれども、たとえ【案17.4.1.1】を採ったとして、20年分を見越して担保を取ったとしても、必ず20年分を回収できるとは限らないわけですよね。阪口幹事がおっしゃっていたとおり、破産をして廃業したとすると、その時点でもう取れなくなる、そういったリスクは必ず付きまとうわけです。そうすると、【案17.4.1.1】やそれ以外の選択肢との違いというのは、どのようなリスクを考慮するのかどうかと、特に再生手続が開始した場合のリスクを考慮させるのかどうかという点だと思います。そうした場合、どちらを採るべきなのかという点で大きく関わってくるのが、【案17.4.1.1】を採った場合とそれ以外を採った場合とでどれくらい担保価値というのは変わるのだろうかという点なのだと思います。   金融実務に携わっている方々に聞きたいのは、これらの違いによってどれくらい担保価値というのは変わるのでしょうかという点です。例えば、現在【案17.4.1.1】の実務で動いているのだとすると、現在どれほどの担保価値を計算していて、それが【案17.4.1.2】や【案17.4.1.3】に変わるとどれだけ減ると考えていらっしゃるのかという点は、いかがでしょうかということです。 ○道垣内部会長 もしお考えがあればお聞かせいただきたいと思いますが、日比野さん、お願いいたします。 ○日比野委員 ありがとうございます。今、太陽光のケースでお話ししていますので、これで申し上げますと、これまでのお話に出てきましたとおり、太陽光の発電事業は入口で設備投資が必要になりますが、その一方で、稼働し始めてキャッシュフローが生まれる状態になったときは、太陽光発電設備をメンテナンスすれば、売電先は比較的信用力の高い先にまとめて販売すると、こういうビジネスモデルですので、いわゆる売上げから控除される費用部分というのはそれほど大きな割合にはならない、したがって収益構造的には多分、不動産と似たような構造になっているのだろうと思います。   他方で、やはり不動産と比較しますとどうしても確実性がある担保ではないということもあるので、今、大塚先生がイメージしているような精緻な形での何か金融機関共通の理解が実務として確立しているというところまでは多分、まだ行っていないのではないかとは思います。ただ、今申し上げたとおり、売上と費用の差額部分、つまり収益として残るであろう、したがって担保権者が収受できるであろう価値というのは、例えば一般的な小売業の利益率と比較すると相応に大きいと思いますので、その将来価値を評価したときには、開始決定の時点で既発生のものしか把握できないという場合と比較すると、大分評価は変わってくるということはいえるのだろうとは思います。   少し抽象的なお話になってしまって申し訳ないのですけれども、私からは以上です。 ○道垣内部会長 どうもありがとうございます。   様々な御意見を頂きまして、皆さんがおっしゃることはそれぞれもっともな論理と、もっともな価値判断に立っているお考えだろうと思います。なかなか今日の時点で一本化することはできないのかもしれませんけれども、類型的に考えるというのとか、あるいは類型化が難しいのではないかとか、いろいろなところで根本的なところでも対立点がございますので、更にこれを踏まえて中間試案に向けて、第4の1はもう一度整理をし直すということにさせていただければと思います。第4の1のところは、そもそも現在の解釈論としても非常に対立があるところでございますので、立法論として考えたときにもいろいろな意見の違いが出てくるのは当たり前なのかもしれないと思います。   ただ、第4の1についてはこういうふうにいろいろ御意見を頂いたのですが、第4の2についてはほとんど御意見を頂いておりません。2について何か御意見はございませんでしょうか。 ○日比野委員 ありがとうございます。第4の2について、最初から少し質問のようなことなのですけれども、例えば肉牛を担保取得している場合において、再生手続が開始したというケースを念頭に置いたときに、開始時では、まだ子牛で価値が低いのだけれども、再生型手続なので事業は継続しており、子牛を育成して成牛になって出荷をすれば高い価値を実現できるので、開始決定後に投下した費用は当然、控除してよい、つまり担保権設定者の方で優先的に取得していただいてよいという前提で育成して出荷し、その販売代金を担保権者として回収をするというようなことを考えるとします。再生手続であれば当然、事業が継続しているゆえにそういうようなアレンジもでき、かつ、それは債務者、担保権者あるいは販売先、いずれにとってもメリットがあるということに多分なるのではないか、したがってこういうアレンジはできるということでよいのではないかと思うのですけれども、現在提案いただいている【案17.4.2.1】から【案17.4.2.3】の中ですと、これが実現できる案というのはどれになるのかというようなことを考えていてもよく分からなくて、これをよろしければ教えていただければと思います。 ○道垣内部会長 お答えは事務局から頂きますが、日比野さんの念頭に置いていらっしゃる事例について少し確認をさせてください。子牛に餌をやって育てて、それで大きくなって出荷をするといったときに、債務者ないし設定者側が取れるお金というのは餌代だけですか、それとも、大きくなったことは倒産手続開始後の労力の投下による価値の増加に思えますので、必ずしも担保権者に行くとは限らないようにも思うのですけれども、設定者が幾ら取れるということを前提に御発言されたのかということを少し確認させていただければと思うのですが。 ○日比野委員 ありがとうございます。その点は、全額担保権者が取れるというところまでは考えていませんでした。私としては、どちらかというと別除権協定をするイメージでおりましたので、いわゆる組入れのようなイメージで、当然、債務者側に対しても、そのような労力を投下したということの対価というものも入るということはある程度念頭に置いておりました。ただ、それが全額債務者側に行くということではなく、担保権者の方もそのような価値、つまり、なぜかというと、これを循環といってはいけないのでしょうが、育成して販売するという流れの中で、その動産の価値を把握しているという認識ですから、担保権者もその価値の上昇分というのを一定程度取得できるという理解も現実的にされてよいのではないかと考えた次第です。それ自体が評価の問題だという反論もあるかもしれませんが、一応私としてはそのように考えておりました。 ○道垣内部会長 分かりました。ありがとうございました。事務局の方から何か、日比野さんの御質問に対して、ございますでしょうか。 ○笹井幹事 最終的には事案ごとの判断ということになるのかもしれませんし、今、日比野さんが念頭に置かれていた物の価値の上昇というのは、牛が大きくなることによって価値が上昇するということですので、価値の変動が流動によって生ずるというケースとは少し違っているのかもしれません。その辺を捨象して【案17.4.2.1】から【案17.4.2.3】までの文言に従って考えるとすると、【案17.4.2.1】によると、再生手続が開始された時点で、その牧場にいた牛さんたちが担保の対象であるということが確定すると、ただ、そこではまだ子牛の状態なので価値が低いのだとすると、その低い価値が法律上はその担保価値の上限になるということになるのではないかと思います。そういう意味では、丸々と太ってきて価値も上がったということになったとしても、その丸々の部分については取ることはできないということになるのではないかと思います。   他方で【案17.4.2.2】と【案17.4.2.3】については、これも同様に、その開始決定時にその場にいた牛たちに担保権が及ぶということが動産レベルでは確定し、【案17.4.2.2】については実行によって集合動産が固定化するという考え方なので、御指摘の事案にうまく適用できるのかよく分かりませんけれども、集合物として実行されるのであれば、その実行時点でその牧場にいた牛たちが担保目的物になるということになりますから、そこは別除権協定としてどういう協定をされるかということになるかと思いますけれども、いずれにしても、開始時にいた牛さんたちが直ちに担保目的物として確定するわけではないということになるのではないかと思います。   【案17.4.2.3】については、民事再生手続開始時点で固定化するという見解なので、その子たちが丸々太っていったときには、その丸々分が担保権者に帰属するということになるのではないかと思います。 ○道垣内部会長 どうも。日比野さんの御質問は非常に的確な御質問なのだろうと思います。【案17.4.2.1】というのが最終的には評価額を問題にしているのに対して、【案17.4.2.2】と【案17.4.2.3】が物に着目しているというところで、日比野さんが出されたような問題については【案17.4.2.2】と【案17.4.2.3】については類推適用といいますか、そういうふうなことをしなければならないという状態が多分発生しているのだろうと思います。したがって、価値の変動というのをどういうふうに【案17.4.2.2】や【案17.4.2.3】について考えるのかというのは、更に考えてみる必要があるのかもしれないと思います。   さらに、抵当不動産であっても、倒産手続開始後に、例えば、修理が行われたということになったときに、共益費用の先取特権等はあるとしても、共益費用の先取特権と抵当権との関係で処理をしているわけで、そうすると、今僕は、債務者が投下した資本によって上がっているのだったら、上がり分はどちらに帰属するとは当然にはいえないと申し上げましたけれども、抵当権と共益費用の先取特権ですと、実は投下した額よりも値上がり額が大きければ、値上がり額は抵当権者に多分行くのだと思うのです。したがって、実はそれは抵当権者、担保権者に行くのですよというのも十分にあり得る見解だろうと思いますので、その辺りも含めて再整理をする必要が多分あるのだろうと思います。すみません。   ほかに御意見は。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。立教大学の藤澤です。今、道垣内先生が整理された、評価額アプローチか、それとも物アプローチかということについて、コメントをさせていただきたいと思いました。   動産は不動産と違って、例えば混和してしまって識別困難になってしまうという問題があり得るということとか、隠匿や移動のリスクがあるということとか、それから、価値の減少の幅が大きい可能性があるというようなことを考えると、物について担保権の範囲を保証するというやり方は、もしかしたらその後の管財人の行動などをめぐってトラブルを引き起こしやすいのかもしれないと思いました。そこで、【案17.4.2.1】のように開始時の評価額としておくと、その物の管理や移動をめぐるトラブルというのは少なくなって、いいのかなと思いました。ただ、その額をどうやって決めるのだという別のトラブルがあるかもしれないのですけれども、一応、【案17.4.2.1】が分かりやすいかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見等はございますでしょうか。   これも、実行構造などにも大きく関わってきますし、結局、今、藤澤さんからも出ましたけれども、管財人などの権限の範囲等によっても変わってくる問題ですので、ここだけ切り取ってというのは議論しにくいのかもしれません。   差し当たって本日のところはまだ3案並行で、いろいろな御意見、日比野さんからの更なる精緻化の必要性の御指摘などもありましたし、それを踏まえて更に藤澤さんからも御発言がございましたけれども、これを踏まえて考えていくということでよろしゅうございますでしょうか。   まだあるかもしれませんが、開始して既に2時間15分を過ぎておりまして、そろそろお疲れがあろうかと思います。せっかくでございますので、切りのいいというところで4時に再開させていただければと思います。その際に先ほどの、とりわけ動産に関しまして御意見がございましたら、最初の段階でお願いできればと思います。   それでは、すみませんが、16時まで一旦休憩をさせていただければと思います。ありがとうございます。           (休     憩) ○道垣内部会長 16時になりましたので、再開したいと思います。   第4の2の集合動産につきまして御議論を頂いておりますが、若干途中で私が休憩に無理やりに入ったような気もいたしまして、何かここで御発言がありましたら、お願いいたします。差し当たってはよろしゅうございますでしょうか。   それでは、この話は大分、今の話でも出ましたけれども、担保目的である財産に係る費用の負担についての議論というのを行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 それでは、33ページの「第5 担保の目的である財産に係る費用の負担」について御説明いたします。   これは、設定者の倒産手続開始後に担保の目的財産について生じた費用の負担について取り上げるもので、費用の内容としましては、担保目的財産の維持管理のために要する費用や、集合動産、集合債権について担保目的財産を発生させるための費用が想定されます。これらの費用が倒産財団から支出され、その結果、担保目的財産の価値が維持されたり増大したりして担保権者の債権の弁済に充てられると、倒産財産の負担において担保権者が利益を得ることになることから、担保権者に費用を負担させる必要がないかが問題となります。   一読では、担保目的財産の維持管理のために要する費用についても提案をしておりましたが、この点については従来から抵当権などの典型担保についても議論されてきた問題であり、動産や債権のみを目的とする担保権を中心とする担保法制の見直しに当たって、それについてのみ規律を設けることが妥当かどうかが問題となるという御意見を複数頂きました。このことから、本資料においてはこのような費用については提案をしない形にしております。   次に、担保目的財産を発生させるための費用につきましては、一読の御議論において、倒産手続開始後に発生した財産に無制限に担保権の効力が及ぶという案を採る場合以外に適用することは適切ではないという御意見が複数ありました。この御意見を踏まえまして、本文は【案17.4.1.1】を採ることを前提とした提案としております。他方で、動産については債権に関する当該案に対応する案を本資料において提案していないことから、本文の記載の対象とはしておりません。   また、一読の議論では、費用を担保権者に負担させるということの趣旨について、優先弁済権が縮減されることを意味するにすぎないのではないかという御意見がありました。確かに担保目的譲渡の場合に、純粋に担保権者が費用を負担し、費用の分だけ被担保債権を減少するとすれば、他の債権者がそのような負担をしないにもかかわらず、担保権者がそのような負担を負う理由がなく、適切ではないと考えられるところです。この観点から、本文の提案は、担保権者による担保権の実行が行われた場合に、債権の対価又は弁済として受けた金銭等から、設定者が担保権者に先んじて費用の償還を受けることができるという提案といたしました。   【案17.5.1.1】は、費用を設定者が負担した債権に限らず、新たな規定に係る担保権が設定された他の目的債権について担保権の実行が行われた場合にも、担保権者に先んじた費用の償還を認めることを提案するものです。  もっとも、いわゆる集合債権が担保の目的とされた場合でも個々の債権が担保目的財産となっているという理解を前提としますと、なぜ他の担保権の目的債権の対価から費用の償還を受けることが可能なのかいう問題がございます。そこで、費用の負担についても債権ごとに考えていくことも考えられます。【案17.5.1.2】は、この考え方に基づくものです。もっとも、この考え方については、要した費用がいずれの債権に係るものであるかを個別に検討することは実務上困難ではないかという御批判があり得るものと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。   今の淺野さんからの御説明で、話が二つに大きく分かれておりまして、一つは、目的物の維持管理等に要した費用についての処理について、抵当権等についても同じ問題が生じるところ、今回の動産とか債権のところだけに置くというのはかえってアンバランスなので、置かないということにしてはどうかという問題と、もう一つは、ここの第5に書いてあるものがあるわけですが、大西さん、どちらの方でも結構でございますので、よろしくお願いいたします。 ○大西委員 1点質問と、1点コメントです。担保目的財産の維持管理のために要する費用というのは、倒産開始時において既に発生していた債権を発生させるための費用という意味ですか、それとも、倒産開始後に新たに発生した債権の発生費用という意味のいずれでしょうか。   倒産開始時にあった債権の価値は、担保設定時において担保評価として当然見ているため、基本的に担保権者が取得するものと思います。そして、倒産開始後に発生した集合物債権譲渡担保の対象となる債権も、その前に取立権限を行使して回収した金銭を使って発生させることができた債権なので、当該債権の発生のために要した費用だけを取り上げることは妥当でないと思います。このことについては、どのように考えているのかお伺いしたいと思います。 ○道垣内部会長 もし事務局からありましたら、お願いします。 ○笹井幹事 一つ目の、どの時点での費用なのかという点については、ここで想定していたのは、手続開始後に、その後に新しい費用を支出して新しい債権を発生させると、例えば、新しい仕入れをしたり、原材料を購入して商品を売却してその代金債権を取得する、その際の仕入れ費用ですとか、そういったものがここで問題となっている費用という趣旨でございました。   すみません、二つ目の御質問は、もう一度お願いできるでしょうか。 ○大西委員 今のお答えを前提として、倒産時に既に発生していた債権は設定者がその後に回収するため、その回収金とこの費用負担との関係というのはどういうふうに考えているかという質問です。通常ですと、その回収金からまた新たに物を作って、それを売却して売掛債権が発生するというサイクルになるので、それとは別に費用を概念することの趣旨をお伺いしています。 ○淺野関係官 ここで想定しているのは、飽くまで担保権者が担保権の実行としての取立てによって回収をした債権について、その債権を発生させるために設定者が支出した費用の分、担保権者の優先弁済権を縮減させるということでして、大西委員がおっしゃったような、担保権者が実行として回収をするのではなくて、設定者がまだ取立権限を有しているときに、自分で取り立てて自分で使ったという場合には、当該債権に関する費用についてこういった規律の対象とすることは想定しておりません。 ○大西委員 ごめんなさい、私の理解が不十分なのでお聞きしますが、倒産開始後に新たに発生した債権に対する費用であるとの御説明がありましたが、そうすると、倒産時に発生していた債権は設定者が当然、すぐに回収することになります。そうすると、ここでいう新しく発生した債権の発生に要した費用は、当該回収金から回収できるという考え方は採られないのかなと思った次第です。すみません、私の理解が不十分かもしれません。 ○道垣内部会長 すみません、大西さんが前提にしていらっしゃるのは、設定者に取立権限があって、取り立てたときに、それは、例えば、取立委任を受けて取り立てているわけであって、取り立てたものについて担保権者に引き渡さなければならないという義務が課せられているということが前提になっているのでしょうか。 ○大西委員 通常のいわゆる循環型の集合物債権においては、新しく債権が生まれて、その後に回収がなされて、それを利用して製品を製造し、製品を販売して新しく売掛債権が生まれます。その売掛金は、そのようなサイクルの中で、大体同じぐらいの金額水準で維持されることになります。そうすると、倒産開始後に発生した債権の発生に要する費用は、倒産時に生じていた債権の回収金から賄われるのではないかと思った次第です。 ○道垣内部会長 倒産時に発生していた債権から賄われないのか。 ○淺野関係官 倒産時に発生していた債権というのは、担保権者がその後、その取立権限を失わせて、そこから実行として回収をする場合における債権ということでしょうか。 ○大西委員 いや、そういうことではなく、設定者にまだ取立権が留保されている状態をイメージしています。 ○淺野関係官 そうすると、設定者が取立てをして、対価として得た金銭又は弁済として取り立てた金銭を利用することができると思うのですが、その場合に、そこから回収をするとおっしゃったのは、どういう御趣旨でしょうか。 ○大西委員 要するに、倒産後、例えば一月後に発生する売掛金というのは、倒産時にあった債権の回収金を使って仕入れたりして、できるというふうに考えるのではないのですかという質問なのですが。 ○大塚関係官 すみません、大西委員の御指摘の意味なのですけれども、つまり、例えば倒産手続開始前に設定者が取り立てた金銭があったとします、その金銭というのは次の債権を発生させるために一部は使うべきであると。 ○大西委員 いや、倒産開始発生前に取り立てたものというのは、そもそも債権がないわけですよね、倒産時には。 ○大塚関係官 それはそうなのですけれども。 ○大西委員 だから、倒産時には債権があるわけですよね。ここの②でいう発生した費用というのは、その債権の発生費用という意味ではないのですよね。 ○大塚関係官 もちろんそれはそうなのですけれども、つまり、その後に新たに債権発生させる費用に、それまでに取り立てた債権のうち一部を使うとすると、前に取り立てていた金銭というのは本来、その後の新たに発生する債権を発生させるための費用として使うべきであった、そこに取っておかれるべきであった、何か全然違うことを言っていたら申し訳ありません。 ○大西委員 通常の商売ってそうではないですか。売掛金回収して作って、という流れですから。 ○大塚関係官 そうすると、結局、新たな債権を発生させるための金銭として取っていたのに、しかし倒産手続開始後になると、その費用を一般債権者のためといって控除されてしまうと何かおかしいのではないのかという御指摘だったような気がしたのですけれども、違いましたか。 ○大西委員 そういうことです。例えば、倒産時に発生した債権というものを債権Aとし、倒産から一月後に発生した債権を債権Bとします。債権Bは、倒産開始後にコストを掛けて作った製品を売り掛けたことによって発生します。そして、債権Aの回収金は、設定者が使えるお金であり、その回収金の中から、債権Bを発生させるための費用を支出していることになります。これによって、設定者は、回収金がその費用の原資となっていると思ったので、更に費用を債権Bの回収金から控除するという考え方は、循環型の場合に、正しくないのではないかという点を質問しました。 ○道垣内部会長 ただ、Aの回収金の一部をBの債権の発生のために使うというのは、当該Bの債権も自分が回収できるということが前提になっている行動で、それが平時の循環の仕方ですよね。 ○大西委員 はい、そうです。 ○道垣内部会長 しかるに、倒産が起こったときには、今度はBの債権が担保権者に帰属することになる、ということになると、新たな債権を発生させるためにお金を使うということの意味が平時とは根本的に変わってくるわけですね。自分の営業の循環のために使うというのではなくて、担保権者に利益を帰せしめるために使うという意味を持つので、それは担保権者にそれに使った費用も全部帰せしめるというのはおかしくて、それは控除しましょうということになるので、平時における回収金の利用という意味と、倒産時における回収金の利用という意味が異なるのではないでしょうか。 ○大西委員 ただ、別除権の場合を想定すると、担保実行前だと、取立権限はまだ解除されていない場合もあるのではないですか。動産の場合でも当然、事業を続けている間は担保実行をする前は、動産を売却し、売掛金になって、その回収金を原資として仕入れをして、その後に在庫動産になって、また売るというような循環をしているわけですよね。 ○道垣内部会長 その意味では、第5の題名としての「担保の目的である財産に係る費用の負担」というのが若干、ミスリーディングなのかもしれませんね、大西さんの御発言を前提とするならば。つまり、担保権者に行ってしまう財産に係る費用の負担というふうにしないと、そこで、どのような状態における当該債権の発生費用なのかというのが少しこの文章だと不明確であるということになるのでしょうか。 ○大西委員 そういうことかもしれません。ですので、私がこれを思ったのは、循環型の場合だと費用負担の問題は結果的に出てこないのではないかと思ったのです。 ○道垣内部会長 よく分かりました。よく分かりましたが、多分それは出てこないのではなくて、第5の題名及び文章が若干、その債権がどこに帰属するのかということを絞り切らないで書いているところに問題があるのではないかと思いますので、更にもう少しそこは精緻化しなければいけないと思います。書いてあることの趣旨としては、担保権者に行ってしまうような債権の発生費用を、一般債権者の犠牲の下に債務者というか設定者に支出させるのはおかしいのでということで、担保権者に行ってしまう債権というのが大前提としてあるだろうと思いますので、そこをはっきりさせる必要があるのではないかと思います。誤解もあるかもしれませんので、更に文章を精緻化するに当たっては、事務局から大西さんの方に十分に御意見を伺って正確な形にしたいと思いますが、少し検討をするということにさせてください。 ○大西委員 すみません。あと1点だけコメントというのは、【案17.5.1.1】と【案17.5.1.2】のいずれが良いかという点ですが、【案17.5.1.1】の方が多分、回収の機会が多いと思います。費用負担の考え方は、一般債権者の弁済原資を毀損しないという趣旨だとすると、なるべく回収機会が多い【案17.5.1.1】の方がいいのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。今の大西委員と道垣内部会長との議論に尽きておりますけれども、私も大西委員と全く同じ疑問を実は持っておりまして、費用と債権との結び付きというのは、むしろ逆で、繰り返しになりますけれども、まずA債権で、それを取り立てて、それが費用に回って、次の新しいB債権を生み出すということですので、そのときにB債権についての費用には論理的にならないというのは基本的にあるかと思いますので、ですから、費用と個々の債権との結び付きを余り厳しく論じることにそれほど意味がないということですので、【案17.5.1.1】か【案17.5.1.2】かということになると【案17.5.1.1】の方がいいのではないかということとともに、債権を目的とする、債権譲渡担保の場合は、実は事業債権を担保に取るというときには、事業は必ずそういう意味での費用を内包しているとは思いますので、そもそも債権について、全額についての優先権があるということがむしろおかしいと私自身は思っておりますので、そういう意味で、費用という概念で捉えていいのかどうかは別として、カーブアウトに関していうと、特定の債権と費用との関係を論じても、余り意味がないと感じました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○井上委員 井上です。ありがとうございます。先ほどの大西委員と部会長とのやり取りとの関係なのですけれども、今日は累積的なという言葉を使わずに、と先ほど部会長から御説明があって、三つぐらいありますねとおっしゃったうちの一つが【案17.4.1.2】とか【案17.4.1.3】とか【案17.4.1.4】の、手続開始時なのか実行時なのかはともかく、そのときに存在するもの、あるいはその評価額で担保権者の優先権が画されるという類型であり、そうではない残りの類型が二つあって、一つが、担保設定以降ずっと担保権者が回収金を弁済に充当できるという類型であり、もう一つが、当面は設定者が回収金を利用できるけれども、実行したらそれ以降は、そのときに存在するものだけではなくて、その後に発生し続けるものもずっと担保権者が取り続けるという類型であると確かおっしゃったと思うのですけれども、今回、第5の提案は【案17.4.1.1】を前提とした御提案ということになっているわけですけれども、【案17.4.1.1】には、本来、今申し上げた残りの二つがあって、その二つのうちの、ずっと最初から担保権者が資金を利用できる場合、これは形式的な回収権限というか、第三債務者からお金を受け取る権限が設定者にあったとしても、それを丸々譲渡担保権者に渡すとか、あるいは担保権者が直接受け取る場合も含めて、資金の利用権限という意味では、設定者が事業に使えないタイプの担保になりますから、この第5のところでいえば手続開始当初から費用を差っ引くべきだと思うのですが、そうではなくて、【案17.4.1.1】のうち、しばらくの間は設定者が単に弁済金を受け取る権限だけではなくて、資金を自らの事業に利用できる権限まである場合は、これは第5の御提案のところでは、費用を差っ引かないのかと思っておりました。   差っ引かないというのは、実行までの循環している間は、ずっと発生し続けているものを担保には取っているのだけれども、リリース(担保の解放)という行為を通じて、回収の都度、設定者が自分の事業に資金を利用できるわけですから、その間は、倒産手続開始後であっても、資金の利用と費用の発生が見合っているので、第5の御提案は特段必要ないと思っていまして、どこかのタイミングで実行してしまうと、その後に初めて費用のカーブアウト問題が出てくるということではないかと思いました。そうではなくて、【案17.4.1.1】の御提案の中には、設定者が取立権限を失わないと書いてあるので、もしかするとそういう類型はここに入っていないのかもしれませんけれども、形式的な回収権限、事業上、第三債務者からの弁済金の受け取り権限は設定者が持つのだけれども、設定当初から、担保権者が設定者からその資金を受け取ることとされ、設定者が資金を事業に利用できないという形態の場合には、これは最初からカーブアウトするということではないでしょうか。   逆に言うと、そうではなくて、設定者が手続開始後も引き続き受領した回収金を自らの事業に利用できるにもかかわらず、一定の費用項目についてカーブアウトするというのは行きすぎではないかと思います。いずれにしても、私は、先ほど申し上げたように、【案17.4.1.1】を採用しても、第5の費用控除がなかなか難しいと思うので、現実にこの選択肢がいいと考えているわけではなく、一法人の一部の事業についてこういった費用償還を導入するのは難しいと思っているのですけれども、線を引くなら今みたいに区別すべきではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。ただ、井上さんのおっしゃるようなことをしようと思ったときに、担保権者が回収したものから幾らを運営資金として設定者に戻すのかという取決めの額とか、そのときの額の算定根拠とか、そういうものにもよりますよね。そうしたときには、第5の文言については大西さんがおっしゃったようにいろいろ問題があるのですが、気持ちとしては担保権者より先に設定者が当該費用の償還を受けることができるということは変わりなくて、それが約定によるカーブアウトというか、一部返還によって実現されているのか、それとも、倒産手続内とかそういうものにおいて実現しなければいけないのかという違いの問題なのではないですか。 ○井上委員 正にそうで、といいますか、先ほど部会長がおっしゃった【案17.4.1.1】の意味するところでいう、最初から担保権者に回収金の利用権限がある場合と、そうではなくて、実行までは設定者に利用権限があって、実行した後は担保権者にずっと資金の利用権限がある場合の二つの間には、恐らく中間的な形態とかが約定その他によって当然あり得るわけなので、それに従って償還すべき費用、第5で問題となる費用が変わり得ると思うのです。その意味で、第4の【案17.4.1.1】プラス第5という組合せは、制度設計としてはすごく難しくなるのかなというのが私の言いたかったことです。 ○道垣内部会長 分かりました。どうもありがとうございます。   ほかにございますでしょうか。事務局として、伺いたい対立点というのは、ポイントはどこになるのかしら。 ○笹井幹事 第5については、括弧書きに【案17.4.1.1】を採ることが前提と書いてありますので、そもそも【案17.4.1.1】を採るのかどうか、あるいは一定の類型化した上で採るのかどうかということに係ってくるだろうと思います。そういう意味では、第4についてどういうふうに考えるのかということとかなり密接に関連しているのだと思います。その上で、【案17.4.1.1】を採った場合に、こういった費用の負担に関するルールを設けた場合に、それ自体としては、趣旨としては部会長が冒頭整理してくださいましたように、担保権者が持って行ってしまう、その債権についての費用について一定の優先弁済権を縮減するという発想ではあるのですけれども、そういう計算をして優先権を縮減するということが現実の運用として可能かどうかというところが更に問題になってくるのではないかとは思っておりました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   井上さんがおっしゃったようなことも踏まえると、【案17.5.1.1】と【案17.5.1.2】がそれほど違うかというのは私にはいまだにぴんと来ないのですけれども、シチュエーションも含めて議論しなければいけないということになりますとね。   ほかにいかがでしょうか。   これにつきましては、それでは、この方向といいますか、もう少し精緻化をしなければいけないというのが何人かの御指摘でございますので、それをやるということにいたしまして、差し当たって、先を急ぐようで恐縮ですけれども、次のポイントに入っていきたいと思います。   次は、6については今日も最初からお話を伺いましたので、「第7 担保権消滅許可制度の適用」という、部会資料ですと41ページというところになります。それでは、ここにつきまして、事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 まず、41ページの「1 破産法上の担保権消滅許可制度の適用」について御説明いたします。   本文(1)は、新たな規定に係る担保権が破産法上の担保権消滅許可制度の対象になることを明示することを提案するもので、一読での御提案を維持するものです。本文(2)では、新たな規定に係る担保権を破産法上の担保権消滅許可制度の対象とする場合に、対抗手段としての担保権の実行の申立てとして私的実行を認めることとするかについて、三つの案をお示ししております。   【案17.7.1.1】は、対抗手段として私的実行を認め、また、帰属清算方式における評価額や処分清算方式における処分価額について要件を課さないこととするものです。これは、新たな規定に係る担保権が別除権として取り扱われ、本来、破産手続外において行使することができることに鑑みて、対抗手段として私的実行を認めるという考え方です。   他方で、帰属清算方式における評価額や処分清算方式における処分価額について要件を課さないこととしますと、担保権消滅許可申立書に記載された売得金の額よりも低い金額で私的実行を行うことが可能となり、担保権者に過大な交渉力を与えるのではないかという御意見があり、このような考え方に基づいて、帰属清算方式における評価額や処分清算方式における処分価額について、売得金の額以上の金額である必要があるとするのが【案17.7.1.2】です。   さらに、動産の場合、実務上、財団組入れの割合が大きくなりやすいことと等も踏まえると、上乗せを求めるべきであるという御意見もございまして、売得金を5%以上上回る額であれば担保権者自身による買受けの申立てが可能であることに鑑みて、私的実行を対抗手段としての担保権の実行の申立てとして認めないとするのが【案17.7.1.3】です。   次に、43ページの「2 民事再生法及び会社更生法上の担保権消滅許可制度の適用」についてですけれども、本文は、新たな規定に係る担保権を民事再生法及び会社法制法上の担保権消滅許可制度の適用対象とすることを明示することを提案するものであり、こちらも一読での御提案を維持するものです。民事再生法及び会社更生法上の担保権消滅許可制度においては、担保権消滅における評価の基準としての処分価額がいかなる価額を意味するのかについて見解が分かれており、新たな規定に係る担保権についてどのような考え方をするべきなのかが解釈論として問題となると考えられるため、資料ではその点についても一読に引き続き問題提起をしております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いします。 ○阪口幹事 すみません、どなたも手を挙げられないので。一読でも申し上げたことと重なって申し訳ないのですけれども、まず、1番の破産法上の消滅許可ですけれども、現在の動産の任意売却に関する実務との関係でいうと、【案17.7.1.1】は採り難いと思っています。次に【案17.7.1.2】、【案17.7.1.3】の比較については、私的実行は駄目だという必要はないのかもしれませんけれども、仮に私的実行できるとしても、この【案17.7.1.3】と同じく、結局105%以上というのが必要となる。そうしないと現在の動産担保の売却のときの組入れの実務はかなり影響を受けてしまうのではないかと思いますので。そうすると、【案17.7.1.3】か、若しくは【案17.7.1.2】をベースにするけれども、そのときのパーセントは105%以上ということになり、そこは実質同じことになるのだと思います。   もう一つは、この破産法上の担保権消滅許可制度というのは、実務的には第2順位対策が多いわけですけれども、第2順位については平場において、私的実行には先順位の同意が必要ではないかという論点があり、ここでも同様に理解すればいいのかということです。もし同様であれば、1番担保権者と管財人の話がついたときには1番担保権者は同意をしなくなって、第2順位担保権者の私的実行はそちらの理由でできないということになり、あとは法的実行になるけれども、法的実行は無剰余という問題が生じるので、結局最後は買受け申出だけになるのがほとんどなのかなというような気もしますので、そこは平場と同じく先順位の同意が必要だということでいいのかどうかの確認をお願いしたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。何かありますか。 ○淺野関係官 御質問を頂いた、第2順位を含む後順位の担保権者がいる場合に、後順位担保権者が私的実行をするに当たって先順位担保権者の同意が必要かという点ですけれども、この資料の前提としては、倒産手続が開始していない段階と同様の規律が適用されて、やはり先順位担保権者の同意がないと後順位担保権者の私的実行はできないという前提で考えておりました。 ○道垣内部会長 その前提の下で、阪口さん、何か更に御発言がございますか。 ○阪口幹事 すみません。そうであれば、第2順位対策としては、事実上どの案を採っても【案17.7.1.3】とほとんど同じになるのかなと。だからどうなるということには必ずしもなりませんけれども、多分ほとんどの問題は、ここでどういう規律をしても同じ問題になるのかなとは思いました。最後は感想になります。すみません。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○大澤委員 すみません、今の阪口先生とほぼ同じ話になってしまうので、もう手を下げようかと思ったぐらいなのですが、管財人をやっていまして動産の任意売却等をやるときは、本当に組入れで3割とかいうこともかなり多いような事例があると、私もやっていまして、そうだと思いますので、そういうのを含めて考えると、やはり【案17.7.1.1】は採れずに【案17.7.1.2】か【案17.7.1.3】かということになって、あとは、先ほどの、本当に正に阪口先生と同じ理由で、結局は【案17.7.1.3】に落ち着くのではないかと考えております。簡単ですが、以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。仮に同じ意見でも、同じ意見であるということが示されることは重要でございますので、よろしくお願いいたします。 ○松下委員 ありがとうございます。松下です。まず、【案17.7.1.1】の基本的な考え方は、担保権者は対抗措置として本来持っている権限を行使させるべきであるという考え方に立っていると思われ、そういう観点からすると、私的実行を認めるというのも考え方としてはあり得ると思います。ただ、41ページの36行目以降で書かれているとおり、私的実行の場面で処分価額がかなり安くなってしまうという問題があるのは、確かに御指摘のとおりかと思いますので、そういう点で、やはり【案17.7.1.1】は、理屈はともかくとして、実際には問題が多いのかなと思います。   それで、どうするかなのですけれども、【案17.7.1.2】というのはいかにも中途半端かなと思います。処分価額に縛りを掛けるというぐらいならば、いっそ私的実行は認めずに、買受け申出に絞るというのがよほど簡明ですし、実際にも問題は少ないのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○沖野委員 ありがとうございます。沖野でございます。私も結論から言いますと、【案17.7.1.3】で買受けの申出に限定するのが適切ではないのかと考えておりまして、以前は【案17.7.1.2】というようなこともあり得ると申し上げており、これ自体はやはり【案17.7.1.1】が問題であるということの反面であるということなのですけれども、ただ、改めて私的実行ということになりますと、私的実行の一連のプロセスをとって、ここで更に評価額と処分価額と出てくるのですが、他方で私的実行の中では、目的物の客観的価額が被担保債権の消滅額だという、そちらも出てきます。そういう私的実行の一連のプロセスを一通りとらなければいけないということですとか、そのときに、その額以上である必要があるという基準となる価額が、評価額、処分価額でいいような気もするのですけれども、もう片方で出てくる目的物の客観的価額というのが更に私的実行の中では出てくるのですけれども、これがどういう位置付けになるのかとか、ここでは結局のところ、確かに対抗措置として担保権者が採れる手段を採れるようにするということからすると、私的実行のプロセスをとらせるというのは理由もあるのかとは思うのですけれども、果たしてその必要があるのか、結局ここでは自分に帰属させるか第三者に売却するかで、より高く売れるはずであるということであるならば管財人の申出を覆すことができると、そういう形で担保権者に対抗措置を認めるということであれば、結局、買受けの申出で十分ではないかと考えました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。その心として、ここには競売手続の実行の申立てによるほか、と書いてあるのだけれども。 ○沖野委員 競売手続は、もちろんあり得ます。 ○道垣内部会長 そうですね。 ○沖野委員 はい。ですので、すみません、【案17.7.1.3】がいいのではないかということを申し上げるつもりでした。 ○道垣内部会長 はい、分かりました。   ほかに御意見はございませんでしょうか。買受け申出にしないと、担保権消滅許可制度を適用した意味が余りないよねということなのでしょうか。   民事再生法及び会社更生法上の担保権消滅許可制度の適用については、ここも御異論がないと考えてよろしゅうございましょうか。 ○阪口幹事 阪口です。適用対象とすることというゴシック体そのものについては、何の異論もないのですけれども、本文に書かれている評価というか、評価の基準のところで、一読のところでも申し上げましたけれども、動産の場合には不動産と同じ言葉を使っても意味が大分違う。早期処分価額といっても、そのシチュエーションに応じた早期処分価額ということで、バッタ価額に必ずしもなるわけではないというところが多分、実務的にすぐ問題になってしまうので、そこの確認です。これは飽くまで私の意見で、確認する場ではないですけれども、もしそうではないよという御意見があれば、是非御議論いただいて、将来の解釈の参考になったらなと思いますので、私の意見としては、そういう広い意味の早期処分価額であるという意見を申し上げたいと思います。 ○道垣内部会長 阪口さんがおっしゃったように、どうしてもその部分は解釈論ということになってしまいますので、御意見を伺ったということにせざるを得ないかなと思いますけれども。   ほかに何かございますでしょうか。そういうことで、特に御意見がないようでしたら、本日は予備日でありまして、早めに終わるというのが本来というか。   井上さん、お願いします。すみません。 ○井上委員 すみません。少し戻ってもいいでしょうか。 ○道垣内部会長 結構です。 ○井上委員 第4の1のところ、【案17.4.1.1】については随分申し上げましたけれども、私自身は【案17.4.1.2】か【案17.4.1.3】で流動性が手続の開始によって失われない前提で、ただ、どこかの時点における対象債権、あるいは対象債権の価値で担保権の範囲を区切るということがベースになるとよいのではないかと思っているのですけれども、この案のいずれかを採る場合、あるいは立場によって【案17.4.1.4】を採る場合も、発生という概念が非常に重要な意味を持つというのは既に先ほど事務局からも御説明があったところだと思います。   それについては今回、資料の27ページの3行目から11行目に掛けて、ごくさらっと書いてあるだけなのですけれども、これって多分問題になり得る様々な場合の本当にごく一場面だけが切り取られて、こういう場合、何をもって発生というのだろうねという投げ掛けなのだろうと思うのですが、もっといろいろなパターンがあるのではないかと思います。   それで、言葉として「発生」というと、これは民法上、債権が本当の意味で発生したということになると、例えば手続開始時に発生している債権の評価額とか、実行したときに発生している債権の評価額といったときの「発生」というのは結構、当事者間で割と自由に契約上、決められる概念のような気もいたします。ただ、今回こういう形で担保権が及ぶ範囲を画そうとしている背景にある価値判断というのは、先ほども発言申し上げましたけれども、倒産手続開始後に、本来、一般債権者の引き当てとなるべきリソースを投下して発生させたものについて、担保権者がずっと取り続けるのはおかしいので、一番分かりやすい類型でいえば手続開始時に存在している債権であれば、これは手続開始前のリソースを使って発生したものなので、担保権者が独占していいのではないかと、そういう発想だと思うのです。   ここでいう「発生」が厳密な意味の発生だとすると、発生はしているかもしれないけれども、反対給付を手続開始後にしなければならず、その反対給付をするためには様々なリソースを投下して物を作ったり、役務を準備したり、人手を掛けたりしなければいけないというタイプの債権が既に発生しているとした場合に、それは本当に発生したと見ていいのかという問題があると思いますし、他方で、まだ厳密には発生しておらず、手続開始の例えば1週間後に発生するものであっても、手続の開始時点では既に発生のための全てのリソースの投下が完了しており、何らかの約定なり条件なりが満たされて手続開始後に発生したものとだとすると、担保権者が独占してもよいような気もするものですから、いずれにしても、手続開始時に発生していた、あるいは実行時に発生していたという意味合いは非常に重要であり、それが契約合意における発生と同じ意味だとすると、適切でない結果になる可能性があるのではないかと思います。   正解を持ち合わせていないので、そういう意味では問題提起だけにとどまる発言ですけれども、今申し上げたような趣旨の概念ですから、何らかの時点において発生に必要な設定者によるリソースの投入が完了した債権ということを、何らかの形で表現していただきたいということです。手続開始時より前に生じた原因に基づいて発生する債権といえばそうなるのであれば、それが一つの考え方ではあるのですけれども、前に生じた原因とか前の原因とかという言葉は、いろいろと既に論じられている表現でもあるので、それがいいかどうかも含めて、今申し上げたような趣旨で、発生というよりは、何らかの形で表現した方がいいのかなと考えました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。全くそのとおりなのですが、井上さんもおっしゃったように、民法上の相殺や倒産法上のところなどに、将来発生するというのをいろいろパラフレーズしているのですが、解釈論に期待されるところが非常に大きな文言になってしまっていて、それぞれの目的ごとに解しているということなのだろうと思いまして、ここだけ本当に明確化できるのかというのはなかなか難しいところがあるかもしれないのですが、問題として残っているのはおっしゃるとおりだと思います。 ○阪口幹事 阪口です。先ほど井上先生の方から御指摘のあった27ページのところの概念で、最初のときに述べなかったのは、自分では当然そうなのだろうと思ったものだから意見を述べなかったのですけれども、動産を担保に取っている債権者と売掛金を担保に取っている債権者が別である局面を考えてみると、在庫品の売買契約が成立して、まだ渡していないときに、それを売掛金の方の担保対象として発生しているというと、二重に評価することになります。つまり、物としては動産担保に取っている担保権者の評価対象とし、また売掛金としては、売買契約が成立しているから発生して債権譲渡担保権者の評価対象にするというと、一つのものが2倍になってしまうので、それはあり得ないと思うのです。ここでいう「発生」というのは、やはり物の引渡し、反対給付なら反対給付がされているという局面でないと、今みたいなおかしなことになるので、その言葉が、「発生」がいいのか別の言葉がいいのかは分かりませんけれども、いわゆる売買契約が成立しました、よって発生ですということにはならないというのは、僕は当たり前のことかなと思っていたものですから、何らかの限定が掛かると思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。なかなか限定は難しいところもあるかもしれないのですが。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。藤澤です。少し家の電波が悪すぎて、先生方の御発言がきちんと聞こえていなかったりとか、落ちて抜けてしまったりとかしたときがあって、きちんと付いて行けているか不安なのですけれども、今、井上先生がおっしゃった問題について、少し関連することをコメントさせていただきたいと思いました。   まだ反対給付が残っているという状態の債権ですと、その発生原因となる契約が倒産法上、双方未履行双務契約として残っているということが考えられるのではないかと思います。そのときに管財人としては、この契約を履行選択したときに、相手方の反対給付の方は財団債権として保護されて、自分が手に入れられる債権は担保権者の方に持って行かれてしまうというシチュエーションかなと思うのですが、これを履行選択しないで、解除選択で発生させないという自由があるのかどうかということも、この発生を何と呼ぶかということにも関わってくるのかなと感じました。つまり、管財人としてこれを発生させない自由、履行可能な状態にするかどうかについて自由があるのか、それとも、ないというふうなことになると、やはり阪口先生がおっしゃったように、これについては担保権の効力が及ばないというようなルールにするですとか、先ほど出てきた費用の問題で解消するとか、何らかの手当てが必要になるのかなと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。その権限はあるのでしょうね。 ○片山委員 慶應大学の片山です。お時間取っていただいてありがとうございます。少し違う話になるといいますか、先ほどの取立権限の話に戻ってしまうのですけれども、よろしいでしょうか。   第4の【案17.4.1.1】から【案17.4.1.4】の選択肢の中での話ですけれども、基本的に設定者に取立権限があるので、担保権者が取立てをするということになると、実行をして取り立てるということになって、その場合には、【案17.4.1.3】に立った場合でも、実行のときに発生している債権に限定されますということになりますが、そもそも担保権者に取立権が付与されているケースを想定しますと、平時から実行しているわけではなく、取立権を行使して回収していることになるということになります。その点を前提とするならば再生手続になったときにも、実行するということではなくして、平時の取立てと同じような形で、与えられている取立権に基づいて取立てを続けるということですと、それは実行とは評価されないので、ずっとその後の債権についても取立てが可能と考えていいのか、それとも、やはり再生手続に入っているということになれば、実行していると評価して、やはりそれも制限されるのか、その辺りについて気になったもので、改めて確認をさせていただければと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。確認をすべきような事項なのかどうか分かりませんが、というのは、なかなか難しい問題ですので。もし仮にそれがずっと何らのこともしなくて取立てを継続できるというふうに、それは最初から継続できることにしているのだと、だからなのだということになると、それはもう担保性が否定されるのだと思いますよ。やはり担保であって、担保の実行として回収するということになったときには、あるところで性格が変わってくるというか、継続的に担保を実行していると考えるのだと思いますけれども、そういうことではないかと思います。継続的に取立権が担保権者にあるということになると、それはそもそも担保ではない。担保権の実行が要らない形であるというふうなカテゴライズをするのだったら、それは担保性がそもそも否定されると言わざるを得ないのではないかという気が私はします。けれども、それは片山さんがおっしゃるように、少し整理をして考えないといけないのはおっしゃるとおりで、類型化がどこまで可能なのかという問題がありますけれども、また、そもそもダイエーOMCか何かの事件について、債権譲渡担保であっても取立権が担保権者に移っていて、その債務者に対して取立権があえて認められていると、実行によってそれが撤回されるというふうに性質決定した判例理論というのをどういうふうに位置付けて考えるのか、それは駄目であると考えるのかどうなのかというのを、少しやはりきちんと整理をしないと、片山さんの御疑問に答えることができなくて、事務局がどう考えているという問題をかなり超える問題だと思いますので、中間試案に向けてそこら辺も整理をしていくということが必要かなと思います。 ○片山委員 どうもありがとうございました。 ○道垣内部会長 ほかに、よろしゅうございますでしょうか。   それでは、先ほど申し上げましたように、本日は早めにやめるということもございますので、もしよろしければ、第21回会議の本日の審議というのはこの程度にさせていただければと思います。どうもありがとうございました。   次回の議事日程等につきまして、事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 次回の日程は、令和4年8月9日火曜日、午後1時30分から午後5時30分まで、場所は法務省20階、第1会議室でございます。 ○道垣内部会長 それでは、法制審議会担保法制部会第21回会議を閉会にさせていただきたいと思います。   本日も熱心な御議論を賜りまして、ありがとうございました。また次回、よろしくお願いいたします。どうも失礼いたします。 -了-