法制審議会 担保法制部会 第29回会議 議事録 第1 日 時  令和4年12月6日(火) 自 午後1時30分                      至 午後3時18分 第2 場 所  法務省7階・共用会議室6・7 第3 議 題  担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台第2案(2)         担保法制の見直しに関する中間試案(案) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第29回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、また、一部の方は寝不足の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は、委員の松下さんが途中退席の予定と伺っております。   まず、配布資料の確認というか、説明をしていだきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 新しくお送りしたものといたしまして、部会資料26「担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台第2案(2)」という見え消しのもの、それから、全体版ですけれども部会資料27「担保法制の見直しに関する中間試案(案)」がございます。   部会資料26は、前回の部会における皆様の御議論を踏まえて、ゴシック部分の修正点を見え消しにし、修正点に関する説明を記載したものでございます。部会資料27は、部会資料26のゴシック部分を反映したものの後ろに、前回の部会資料24からの修正点を見え消しにしたものを加えたものでございます。   資料は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、本日の審議に入りたいと思います。   まず、部会資料26「担保法制の見直しに関する中間試案のたたき台第2案(2)」について議論を行いたいと思います。最初は、(前注)から「第2 個別債権を目的財産とする譲渡担保の実体的効力」までについてです。事務当局において、部会資料の説明をお願いいたします。 ○森下関係官 部会資料26につきまして、実質的に変更を加えた部分を中心に御説明差し上げます。   まず(前注)ですけれども、このうち、本文の2におきまして、債権を目的とする担保権について、担保目的取引規律型による債権譲渡担保権に関するルールのみを本文に記載する理由を追記しております。また、あわせて、中間試案の用語の意義を明確にしておいた方がよいと思われるものについても明記いたしております。   続きまして、3ページ目の「第1 個別動産を目的財産とする新たな規定に係る動産担保権の実体的効力」について説明いたします。このうち、1から4までに実質的な変更部分はございません。   5では、(2)の(注)におきまして、目的物を真正に譲渡する意義などを明らかにしております。また、(3)では、担保権の設定者が第三者に対する妨害予防の請求ができることを明記いたしております。   続きまして、5ページ目の6でございますけれども、(1)で目的物を第三者に譲渡することの意義を明らかにしております。また、(2)では、新たな規定に係る動産担保権の処分等について、前回の御審議を踏まえて記載ぶりを改めるとともに、対抗要件等の記載を(3)に移すことといたしております。   6ページ目の7では、(3)の(注)の規律を改めております。具体的には、原則として物上代位とその目的債権を目的財産とする担保との優劣につきましては、差押えの時点と、その目的債権を目的財産とする担保が対抗要件を具備した時点の前後によるものとしつつ、新たな規定に係る動産担保権の設定について登記をしたときは、差押えの時点ではなく、登記の時点を基準とするということを提案いたしております。   8につきましては、部会資料21から変更はございません。   9は、前回の御審議を踏まえまして、(4)のアにつきまして、【案1.9.1】と【案1.9.2】を併記しております。そのほかに実質的な変更点はございません。   8ページ目の「第2 個別債権を目的財産とする譲渡担保の実体的効力」についてです。このうち、3の(1)では、債権譲渡担保権の処分等につきまして、前回の御審議を踏まえて記載ぶりを改めるとともに、対抗要件等の記載を(2)に移すこととしております。   以上の点について、御審議いただければと存じます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。   全体といたしましては、前回までの議論を踏まえまして、それまでの案を多少修正したというか、分かりやすくした、あるいは別案を加えたというところが多いと思います。何か非常に新たな積極的な提案が今回なされているわけではないと理解しております。 ○片山委員 慶應義塾大学の片山でございます。8ページのところになりますが、第2の個別債権を目的財産とする譲渡担保の実体的効力の2のところです。第三債務者の弁済の制限、設定者の処分の制限のところで、改めて気付いたんですが、墨付きの括弧で、債務者対抗要件が具備されという点が入っているんですけれども、恐らく対抗要件の具備がなされていない場合に、これらの処分権制限、弁済制限等の効力が生じるとお考えになっておられる先生方はいらっしゃらないのではないかと改めて思いました。そのことをあえて書くかどうかというだけの問題なのか、あるいは、実質的に債務者対抗要件が具備されない場合でも、これらの効力が生ずるという場合も想定されるのでしょうか。もしないということであれば、墨付きの括弧は要らないようにも思われます。よろしく御確認お願いできればと存じます。 ○道垣内部会長 事務局から何かございますか。 ○笹井幹事 ここに墨付き括弧が付いた経緯を、すぐには思い出せないのですけれども、何かの議論を踏まえて墨付き括弧を付したのだと思います。ちょっと確認をいたしますけれども、私の理解としては、今先生がおっしゃった中では、前者の方、つまり、実質的には債務者対抗要件が具備される必要はあるということかなと思っておりました。そういう方向で修正を考えたいと思います。 ○道垣内部会長 これ、①は第三債務者に対する制限ですので、債務者対抗要件がないと生じないというのは当然なのかもしれませんが、②はどうなんですかね、片山さん。設定者が設定したということによって、拘束を受けるということはあり得ますよね。 ○片山委員 確かにそのとおりかもしれませんね。その趣旨で、墨付きの括弧を残したということでしょうか。 ○道垣内部会長 そういう指摘をしたからといって、墨付き括弧がそのままでいいのかという問題の解決には一切なっていませんけれども、多少文言の整理をしなければいけませんし、逆に、①は別の理屈によって債務者対抗要件が必要なのは当たり前であると考えると、②も含めて考えるために、墨付き括弧を完全に削除した方が分かりやすいということになるのかもしれませんね、片山さんの御指摘のように。 ○片山委員 そうですね、はい。 ○道垣内部会長 その点につきましては、ちょっと検討して修文を、修文というか整理をさせていただければと思います。   また、何か債務者対抗要件の具備というのを書いた方がいいという議論があったといたしましたら、場合によっては(注)等で、(注)というか説明等で補足をさせていただく、いずれかの方向に、何で書いたのかというのか、あるいは書かないけれども、こういうことがあり得るよということを書くかということをさせていただければと思います。 ○片山委員 よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ほかにございませんでしょうか。   案が併記されているところも多いですので、まだ内容が改正の方向で決まったという話ではございませんけれども、中間試案で皆さんの意見を聞くということに関しましては、ここまではこういう形でよろしゅうございますでしょうか。   どうもありがとうございます。   ただし、第1の7の(3)ですね。6ページですが、そのところは若干違うんですよね。先ほど説明がありましたが、(注)で原則として【案1.7.1】の規律によるが、目的物に設定された新たな規定に係る動産担保権の設定について登記がされたときは、登記の時点を基準とするという考え方があるというわけで、あり得るという別案が提示されているので、そこに書くということございます。別にこれが部会の中で多数の意見を占めたという理解が書かれているわけではございません。皆さんの意見を確認しておくという意味でよろしゅうございますね、載せさせていただいて。   それでは、次に、「第3 集合動産・集合債権を目的とする担保権の実体的効力」について議論を行いたいと思います。事務当局において、部会資料の説明をお願いいたします。 ○森下関係官 9ページ目の「第3 集合動産・集合債権を目的とする担保権の実体的効力」について説明いたします。   1では、前回の御審議を踏まえまして、用語の意義を明らかにするとともに、(注)では、集合体のための正当化要件を求める考え方がある旨、記載ぶりを改めております。   続きまして、10ページ目の2の(1)及び(2)では、前回の御審議を踏まえまして、用語の整理ですとか、その意義を明らかにするなどの修正を行っております。   3は、設定者が権限範囲を超えて、集合動産の構成部分である動産を担保権の負担のないものとしての処分をした場合における、処分を受けた者の保護についての記載でございますけれども、ここの点につきましては、前回の御審議を踏まえて記載ぶりを大きく変更しております。   まず(1)は、処分を受けた者が、動産が担保権の目的物であることを知らなかった場合の規律です。この場合には、この者の保護は、民法192条の即時取得によることを明らかにしております。(2)は、設定者の処分権限について、別段の定めがない場合の規律です。この場合において、通常の事業の範囲を超えて処分がされたときは、処分を受けた者は、その処分が通常の事業の範囲に含まれると信じるについて正当な理由があるとき、すなわち、過失なく信じた場合に保護されることとしております。(3)と(4)は、設定者の処分権限を制約する別段の定めがある場合の規律です。(3)は、通常の事業の範囲内ではあるが、制約された権限範囲を超えて処分がされた場合について、制約された権限範囲を超えていることを知らなかったときに保護されることとしております。これに対し、(4)は、通常の事業の範囲及び制約された権限範囲を超えて処分がされた場合について、通常の事業の範囲に含まれると信じるについて正当な理由があり、かつ、制約された権限範囲を超えることを知らなかったときに、保護されることとしております。(5)は、設定者の処分権限を拡大する別段の定めがある場合の規律です。この場合において、通常の事業の範囲及び拡大された権限範囲を超えて処分がされたときは、拡大された権限範囲に含まれると信じるについて正当な理由があるときに、保護されることとしております。   続きまして、13ページ目の4でございます。こちらは、(1)のところで、前回までの御指摘を踏まえまして、集合債権の特定要素の表現を改めることとしております。   5と6につきまして、実質的内容に変更はございません。   以上の点につきまして、御審議いただければと存じます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見を頂ければと思います。よろしくお願いします。 ○阪口幹事 阪口です。10ページの3のところについて、まず2点質問というか、確認をしたいと思います。前回、分かりやすく書いてくださいとお願いして、分かりやすく分類していただいたんですけれども、ただ、それでもちょっと分かりにくいところがありまして、特に2点、確認をしたいということです。   まず、(1)と(2)以下という、その二つの関係はどうなっているのかということに関して確認させてください。   まず(1)は、192条が問題になるということは、引渡しがないと保護されないというルールと理解していいか。またしたがって、善意無過失と言っているときの時点というのは、引渡しの時点という、そういう話でいいのか。(2)から(5)は、引渡しが必要かどうかが問題になることは、(注3)で書いてありますけれども、少なくとも提案されている本文そのものは、引渡しは関係なく、単に処分行為があればいい、したがって、その善意や悪意なんかも全部処分行為の時点という理解でよいか。つまり、(1)と(2)以下は、基準時も違うし、引渡しの要否という意味でも、別の規律の話をしているのかという確認をしたいんです。   次の質問はそれも関係するので、まずこの点はいかがでしょうか。 ○笹井幹事 (1)については、即時取得による保護ということですので、引渡しが必要だということになります。その善意無過失についても、引渡しの時点が問題になるというのは、御指摘のとおりかと思います。   (2)以下は、今御指摘もありましたけれども、(注3)については、(2)以下との関係で、(注3)の考え方がどう関わってくるのかというのも含めて、まだ今後も引き続き検討課題なのかなと思っておりまして、(2)以下の本文においては、全く引渡しは考慮しない、単に処分行為だけで考える案として示したというわけではなくて、この(2)以下につきましても、(注3)との組合せで引渡しを要するとか、そういうことにする可能性はあるのかなと思っております。 ○阪口幹事 分かりました。そうすると、(注3)は、(2)以下全体に掛かっているということになるんですね。 ○笹井幹事 そうですね、(注3)というのをどこに書くかは、もう一度考えさせていただきます。 ○阪口幹事 それが、まず一つ目の確認です。   二つ目の確認が、購入者の認識の対象についてです。(1)では、担保権の負担の有無に関する認識が書かれています。(2)以下では、通常の事業の範囲内とか、当事者が合意した範囲内ということの認識は書かれています。   仮に、担保権の負担の認識はないんだけれども、その認識がないことに過失があるという人を想定したときに、そういう人は192条の保護は受けられないんですけれども、(2)以下の保護も受けられないのかどうかが、よく分からないんです。ここで書かれている(2)以下というのは、通常の事業の範囲に含まれると信じたことについて正当な理由があるとか、権限範囲を超えていることを知らなかったということですから、これは、あたかも担保権対象であることの認識が前提のようにも読めて、そうすると、先ほど言った、知らないけれども過失がある人みたいなのはどこに行くんだろうというのが、よく分からない。普通は、担保権の負担の認識がない人は、一番保護されるべき人、保護されるべきという表現がいいかどうか分かりませんけれども、担保権の負担の認識があって、権限範囲を誤解している人よりは、普通は保護されるんだろうと思うので、(1)と(2)以下の認識対象がずれているときに、エアポケットみたいな状態になっていないかどうかが分からないんです。そこを、どういう規律が提案されているのか、お教えいただけたらと思います。 ○笹井幹事 そこは、エアポケットがあるのではないかというのは、御指摘のとおりで、今、一つの例を挙げていただいたんですけれども、詳細に分類していきますと、特別な定めによる別段の定めがあることは知っているけれども、その範囲内かどうかの認識を誤ったとか、いろいろなパターンが考えられるかと思います。場面というのは分類して考えてみたんですけれども、それを全部書き出すと、逆に分かりにくくなってしまうというところもあろうかと思いまして、今は、非常に原則的なものとしては、即時取得があり得ることを確認した上で、通常の事業の範囲内の取引は保護されるというルールがあるので、そこに加えた制限については、即時取得よりも緩い要件の下で保護してあげましょうという、そういう大きなルールだけを書くという方針で書いております。   この(1)から(5)までの中に分類し切れないエアポケットはどうしても生じてしまうのかなと思っていまして、そこは、条文にするときにどこまで書くのか、ある部分については解釈に委ねてしまうのかというのは、これもまた引き続きですけれども、検討課題なのかなと思っております。   その辺は、かなり細かくなって、逆に読みにくくなるのかもしれないんですけれども、補足説明の中には少し分類して書き込もうかなと思っておりまして、その際に、今御指摘のように、バランス問題というか、本当は担保権の対象になっているということを知らなかった人の方が、より保護されるべきではないかというような問題が出てくるのかもしれません。そこは、補足説明で多少、こういう場合はこうなりますみたいことをお示しした上で、パブコメなり、あるいはパブコメ後のこの審議会において、また御議論いただければと思っております。先生がおっしゃったような考え方も一つかなと思う一方で、担保の目的であるということ自体は知っていたわけだから、取引に入る以上は、もう少しこういうところには注意すべきだったでしょうというような考え方もあり得るとは思いますので、バランスが今の提案で全く取れていないのかというのは、議論はあり得るのかなと思っているところです。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。   動産の即時取得という制度は、ある種変わった制度で、対抗され得る状態にあるにもかかわらず、善意無過失で引渡しを受けるということによって、その権限を取得するという制度なんですね。そうなったときに、例えば、私がある動産について、誰かから借りて持っているといったときには、所有者は、本来は誰に対しても、当該動産の所有権を持っているということは対抗できるという状態にあるんですが、善意無過失の状態で、かつ、引渡しを受けた人だけが保護されるというわけです。それでは、悪意又は善意有過失の場合、どういう状態なのかというと、所有者なら所有者が持っている権利を、取得者が対抗されるという状態になるというわけですので、担保で言いますと、担保権を持っている人の担保権というものの対抗を受けるという状態に、処分の相手方は置かれるわけですね。そうすると、今度は処分の相手方が、そういった対抗を受けるのに、受けたらもはやもう絶対保護されないのかというと、それはそうではなくて、担保権設定者の権限範囲内の処分であると信じた場合には、即時取得とは別の法理で保護されるということはあり得ると考えられるわけで、それが(2)から(5)までが示しているところであるんだろうと思うんですね。   したがって、善意有過失の人は落ちちゃっているのかというと、それは違いまして、善意有過失は、即時取得の保護を受けず、かつ、担保権について対抗要件が備えられている限りにおいて、当該担保権の対抗を受けるというわけで、悪意者と一緒なんですよ、論理的には。したがって、今、笹井さんは、エアポケットがあるかもしれないとおっしゃっていましたが、ないはずなんですけれども、私の理解が正しいとは限らないんですけれども、仕組みとしてはそういう仕組みになっている。(1)は担保権の対抗を受けない、これは善意無過失であるんだけれども、(2)は担保権の対抗を受ける、善意有過失であっても悪意であっても、対抗を受けるということで同じであるという形で仕組んであるものと、私は理解しているんですけれども、違うかな。 ○笹井幹事 先ほど申し上げましたけれども、いろいろなパターンがあり得て、そこは若干意識しつつ、全ては書き切っていないと思います。(1)と(2)以下の関係につきましては、今、道垣内先生がおっしゃったとおりなのかなと思いますので、それを踏まえて、もう一度補足説明の書き方を考えて、できるだけ分かりやすい形でお示ししたいと思っております。 ○道垣内部会長 阪口さん、続けて何かよろしいですか。 ○阪口幹事 (1)が全体に適用されること、一般法理として192条があることは間違いないので、それはそれでいいんですけれども、(2)以下、(2)から(5)だけで足りているのかというと、ちょっと足りていないのではないかということ、つまり、担保権の認識がないという人は一体どこにいくのかは、もう一つよく分からないというのが一つです。特に、先ほど言ったように(1)は引渡しが必要で、(2)以下に引渡しは要らないとすると、時点も変わってきますので、幾つかややこしいことになってくるなと思っています。   かつ、今のお話を聞いて、まだ自分の中で整理できていないのですけれども、仮にここで、(2)から(5)で何らかの規律があって、それを、それ以外のエアポケット的なところに当てはめていくのを解釈に委ねるという処理をするとすれば、(4)と(5)の関係が難しくならないかと思います。   つまり、12ページにベン図が書かれていて、これは、二つの丸が一部重なっているパターンで書かれているんですけれども、本文の方の規律は、制約と拡大しかありません。通常の事業の範囲としての権限を制約するか、拡大するかです。ところが、この書かれているベン図というのは、制約し、かつ、拡大している図ですよね。つまり、このベン図は、A、Bが通常の事業の範囲なんだけれども、それを、Aは除くという意味では制約し、かつ、Cは本来通常の事業の範囲内ではないんだけれども、権限範囲に含めているという意味では拡大している。制約かつ拡大の特約をしている絵を描いてあって、仮に、先ほど言ったように、担保権の認識がない場合のように、別の局面に(2)から(5)の規律を当てはめていくとすると、制約か拡大かが分からないと、ちょっと当てはめにくい。担保権の認識ある人は問題なく当てはめられるんですけれども、類推していくとなると、当てはめにくくならへんかなというところも気になりますので、そこも含めて御検討いただけたらとは思います。   すみません、長くなって申し訳ないです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ベン図との関係は、阪口さんのおっしゃったように、若干の問題があるかもしれませんので、ちょっと検討させていただければと思います。 ○青木(則)幹事 恐れ入ります、ありがとうございます。9ページの第3の1の特定の要件に関する規律について、少し御趣旨をお伺いできればと思います。種類、所在場所、量的範囲の指定、その他の方法とお書きになっておりますけれども、その他の方法とその前の三つの要件の関係のような質問でございます。これは例示であって、種類、場所、量的範囲以外の、それらの要素を含めないような方法、ある意味では特定の方法を緩和する方向でのその他の方法というのも含めて、今後検討できるということなのでしょうか。それとも、この三つの要素は基本的にはほぼ常に必要と考えられており、プラスアルファの要件として、その他の方法というのが加わっているというふうに理解するべきなのでしょうか。   (注)を見ますと、比較的要件を厳格化するような、追加の要件を要求するような書き方になっているようにも読めますので、その他の方法というのが、代替的な特定方法を認める意味を持っているのかどうかということについて、お伺いできればと思います。 ○笹井幹事 こちらの理解といたしましては、「その他の」というのは通常は例示を示す用語ですので、この本文に書いてあるのは、何らかの形で特定されていることが必要だということを書いてあるということです。   その上で、(注)には、特定されていることを前提とした上で、しかし、それを1個のものとして扱うことができるかどうかは、1個のものとして扱うことを正当化するための、何か統一感というか一体性というものが必要かどうかということについて、問題提起をしてあり、特定の在り方とはまた別の要件を付加しているという、そういう理解でございました。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。   青木さんがおっしゃったことで若干気になりますのは、パブリックコメントを募るときの対象の方々はもちろんのこと、今日、中間試案を仮に承認をしたら、本部会の委員、幹事の皆さんが、その後拘束されてしまうのかというと、それはそんなことはありません。それは、先ほどの知らない人の方がいいのか、阪口先生がおっしゃったような話になるんですが、部会とかに加わっていないほうが、今後も自由なのかという話にもなりかねませんで、そんなことはありませんで、今後どういうふうに議論するのかというのは、青木さんのお考えでいろいろ御発言を頂ければと思いますので、よろしくお願いいたします。 ○日比野委員 ありがとうございます。13ページの第3の4で、何度も同じ話を申し上げて恐縮なのですが、取立権限は、集合債権譲渡担保においても、個別の債権譲渡担保と同じコンセプトなのではないかという話を差し上げたことがあったかと思います。この点、ゴシックには反映を頂いていないのですけれども、これは補足説明で言及されるということでよろしかったでしょうかという確認です。   あともう1点、同じ第3の4で、債権発生年月日の始期及び終期で特定するとされておりまして、ここは、恐らく譲渡登記は終期を記載するとなっていると思うのですが、ここは、実体法の要件の御提案と理解しております。そうすると、終期については、権利の濫用となるような定め方でない限りは有効であるというように理解をしてもよいかということの確認です。   例えば、特定債務担保の場合は、当然のことながら、被担保債権が弁済されるまでというように、確定的な終期にならないという場合もあると思うのですが、実務上支障がないように定められるように配慮していただきたいということが、ここでのお願いとなります。 ○森下関係官 一つ目の御指摘につきましては、デフォルトルールが、今は取立権限があるとなっているところですけれども、逆もあり得るのではないかというふうな御指摘だと認識しておりました。その点につきましては、前回までの議論でも御指摘いただいたところでしたので、何らかの形で明らかにするように、中間試案の補足説明なのか、(注)なのか、本文なのかというところにつきましても含めて、事務局の方で検討させていただきたいと考えております。   2点目につきましてですけれども、平成12年の最高裁の判例であったと思いますけれども、債権につきましては、識別されて特定されているかというふうなところが一つ要件として上がっておりまして、必ずしも識別のための要素につきまして、これを絶対に挙げないといけないとはなっていなかったのではないかと思います。ここでも、基本的には始期、終期並びに発生原因等という形で、等というふうな形でいろいろ特定の方法はあるというふうな形で記載させていただいておりまして、ただ、少なくとも特定はされていなければならないので、総合的にそこは判断するのではないかと考えておりました。 ○道垣内部会長 終期というものが確定的な日付であるのかというと、それは必ずしもそうではなくて、差押えのときにおいても、幾らに満つるまでという形で差押えがなされることがあるわけですけれども、特定されていないのかというと、それは特定されているんですよね。特定されていなければ、それはそういう、債権ですけれども、いわば物権的な変動が起きません。そうすると、終期ということの解釈というのも、どういった場合を終期というふうな、終期の債務と認めるのかという問題もまずあって、さらには、それが本当に必須とされるのかという問題として、今、森下さんがおっしゃったようなことがございまして、ここについて、確定的な日付ではなくてもいいんだと書くということになりますと、いろいろな他の法制度との関係でアンバランスな点も出てまいります。こういうことで、しかし、特定を何らかの形でしなければならないということは明らかにするというふうなものだと、御理解いただければよろしいのかなと思いますが、よろしゅうございますか。 ○日比野委員 何か終期を特に定めるというよりかは、等というところに意味があるのだという御説明と理解しましたので、それで大丈夫でございます。ありがとうございました。 ○道垣内部会長 ただ、今の私の説明に、その後の拘束力あるかといったら、それはないですので、今そういう感じに読めるよねという一つの解釈が示されているというだけですので、今後終期が絶対ないといけないというのが皆さんの御意見になりましたら、そういうふうにするということになります。今の等のところに意味があるんだという説明に、取り立てて別の方の発言よりも拘束力があるわけではないとはお考えいただければと思います。 ○日比野委員 はい、分かりました。 ○佐久間委員 ありがとうございます。ちょっと最初に伺いたいというか、意見を述べたいところは、10ページの3の先ほど阪口さんがおっしゃったところなんですけれども、その前提として、中間試案の場合は、補足説明というのが大概付きますよね。その補足説明は、3のところですが、11ページから13ページにあるものが予定されているのか、それとも、これは飽くまで今日の説明であって、もっと別のが予定されているのかって、それ、ちょっと前提として伺えますでしょうか。 ○笹井幹事 これは全く別です。 ○佐久間委員 別ですか。そうしたら、ちょっと要望しておきたいんですけれども、まずゴシックについては、特に異論があるというわけではありませんというか、ちょっとどうかなと思うところは申し上げますけれども、これを変えてくださいということではないんですけれども、説明のときに、先ほどの阪口さんと、特に道垣内さんがおっしゃったこととの関連で、(1)については即時取得の規定だと。(2)以下は、基本的には担保権の目的に当該動産がなっているということを知っている場合についての保護ルールであって、ただ、そうであるんだけれども、(1)の場合に、善意なんだけど過失があるという人は、先ほど道垣内さんがおっしゃったことですけれども、悪意者と同一に扱われると、この(1)のルールでは。   そのことを前提に、(2)以下を、善意有過失者について当てはめた場合、そもそもが担保権の設定を知らない人なのだから、当該自分のする取引が通常の事業の範囲に入っているのか、入っていないのかということは、そもそも意識しないはずだし、権限外の、特に課された制約を超える行為であるということも意識しないはずなので、善意有過失者については、この(2)以下の規定がどういうふうに当てはまるのか、つまり、主観的要件が考えられるのかということを、ゴシックはこれでいいと思うんですけれども、一つの例を、補足説明で考え方を示せるなら示した方がいいのではないかなと思いました。   それは、あとは解釈に委ねるんですというのは、それはそうなんだと思うんですけれども、全く何も、どういうふうに考えるかということを示さないまま、全部解釈でどうぞというのは、これだけ新たなルールを立てるという以上は、ちょっとあんまり好ましくないかなと思うので、もし可能であれば、それをお願いしたいというのが1点です。   もう1点は、これは(2)のことなんですけれども、今から申し上げるのは、担保権の設定をしている人を取りあえず対象にして、通常の事業の範囲の内外に関する信頼保護の在り方なんですけれども、確かに通常の事業の範囲を超えているか、超えていないかというのについては、比較的客観的なことなので、相手方からすれば、内部的な制約に比べれば知りやすいということから、このようなルールになっているというのは理解できるんですけれども、他方で、通常の事業の範囲内であれば、設定者は余りというか、制約なく普通に取引できていいはずだと考えますと、通常の事業の範囲に属するかどうかについて、取引相手が神経を使わなければいけないというか、無過失まで要求されるということで、場合によっては、ある程度調べなければいけないのかなとなってしまいますと、通常の事業の範囲というのが必ずしも明確でないために、取引に対する制約要因になるのではないかと、私は思っているんですね。   それは多分、前回、この話題として申し上げたと思うんですけれども、言っていなかったらごめんなさい、そう思っているんです。そうすると、正当な理由まで信じるについて求めることが、つまり、善意無過失まで求めるということが、本当にこの設定者の行為を基本的に制約しない通常の事業の範囲内ではということとの関連で、好ましいことなのかどうかということは疑問に思うところがあるので、そういう観点もあるということを、もし可能であれば説明に書いていただけると有り難いかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。確かに佐久間さんがおっしゃっていたような問題は、議論の中で出てきたわけで、例えば、信託法においては、受託者の権限というものは、一応フルに処分ができるんだというのを前提にしながら、権限の制約について、重過失であるという場合にだけ、処分の相手方が取得ができないということになっています。そうであるならば、ここも、それに合わせて、重過失にすべきではないかというふうな意見も、確かに出ていたような気もいたします。その辺りの可能性というのも、十分に書き込むということが、補足説明とかそういうところになるかもしれませんけれども、必要であろうと思います。   もう1点は、ちょっと要らないことを付け加えますと、抵当権が山林に設定されているときに、山林を一部伐採して外へ出す、外へ出すというか売却するという際に、一定の処分権限は多分、抵当権設定者にあるんですよね。ただ、その木材について、抵当権の効力が及んでいるということを知らない場合どうなるのかということになると、またこれが、即時取得は認められるんだと言いながら、善意有過失であるといったときに、抵当権での対抗を受けるわけですが、抵当権対抗を受けるんだけれども、抵当権の存在は知らない。しかし、一定の範囲においては、設定者に伐採権限、売却権限というのがあるといったときに、第三者との関係をどういうふうに処理するのかという問題があり、必ずしも、そこもはっきり書かれないまま、世の中は流れてしまっておりますので、なかなかここだけ書くのも難しいのかもしれません。そういうのも踏まえて、しかるべき、少なくとも説明はして、今後、阪口さんがおっしゃったことも含めまして、穴があることを認識した上で一定のルールを出すのか、穴がないように出すのかというのは、また選択の問題かもしれませんけれども、検討を事務局の方でしていただくようにいたします。どうもありがとうございました。 ○阿部幹事 私も、資料の10ページの3のところですけれども、ちょっと特に気になったのは、(注2)が付いているところです。設定者の処分権限について、それを特別に制約する別段の定めがある場合の話で、制約された権限範囲を超えていることを知らなかったときに、処分を受けた者が担保権の負担のない権利を取得するというふうな書き方になっています。ただ、ほかのところの書き方との平仄を考えると、これについては、そもそも権限範囲を制約する別段の定めがあることを知らないという場合と、その別段の定めがあることは知っているけれども、特別の制約の範囲内だと信じた場合とを、区別する必要があるのではないかと思いました。そして、そのうち、特に善意者であれば全て保護すべきだというのは、恐らく特別の定めがあること自体を知らないという話のときに限られるような気がしまして、別段の定めが置かれていることは知っているけれども、その範囲内だと信じたというような場合には、それは分かりにくいはずの別段の定めの存在を知っているわけですから、その先その定めの範囲内だと信じたことについて、信じれば足りるのかということについては、ちょっとそうでもないような気もいたしました。   ですので、制約自体を知っているか、知らないかという話と、仮に制約自体を知っていたときに、その制約の中だと思ったかどうかという話を、区別する必要があったかもしれないと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。おっしゃることはごもっとものところはあるんですが、市町村長の出納権限と民法110条とかいう問題がありまして、権限の制約を知らなかった場合と、その当該権限の行使に課されている手続が履践されたと誤解した場合というのと、区別しなければいけないというわけですが、しかし、条文上はそれほど明確な区別があるわけではないわけですね。そのような中で、ここだけどうできるかというような問題はあるんだろうと思うんですね。   ただ、阿部さんおっしゃるような問題は確かにあるわけですので、何らかの形で取り込んでいくようにしたいと思います。ありがとうございました。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。私も同じ3のところですが、(1)の即時取得の問題と(2)以下の権限の問題が違うということで、よく整理されていらっしゃると思いますが、(2)以下のところが、基本的には解釈論として、例えば、110条とか93条1項のただし書とかの類推適用等の既存の法理で解決ができるようにも思われます。その点を、きちんと条文に書き込むという御趣旨かとは思います。   それに対して、(1)については、192条の適用がありますということを書いているだけで、その趣旨が、この(1)で何か規定を設けることによって、初めて創設的に192条が適用されることになるということなのか、それとも、当然192条は適用されるが、一応議論の整理のために書いておられるというだけのことなのかというところが、若干気にはなります。もし議論のために整理をするだけに書いてあることであって、192条の適用自体はもう争いはないということであるならば、書きぶりは少し変えておいた方がいいのかなとは思った次第でございます。   それが1点と、もう一つは、(1)のところに(注1)が付いていまして、いわゆる離脱の問題が(注)で書かれている点は、その意味でも、(1)で意味があるのは確かだと思いますが、逆に、(2)以下のところも、離脱の場合は別だという議論が、判例法理の理解を前提とすればあり得るのかとは思います。ということで(注)をどこに位置付けて書くかという点を、改めて御検討いただいた方がいいのかとは思いました。別項目にするということもあるのかもしれません。よろしく御検討お願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   事務局から何かございますか。 ○笹井幹事 最初の(1)の位置付けについては、私の理解としては、それは当然192条の適用はあるんだけれども、読みやすさというか、全体の理解のしやすさという点から書いた、先生が今おっしゃった言葉で言えば、議論の整理のために書いたという理解でおります。   (注1)につきましては、ちょっと御指摘も踏まえて、どこに書くかというのは検討させていただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。片山さんがおっしゃったのは、そうであるならば保護されるものとすると書いちゃうと、創設的な雰囲気がするのでよくないのではないかというお話だったろうと思うんですが、これは、前回か前々回か、192条の適用が当然あるよねという形で、ちょうど見え消しになっている、消している部分ですが、それは書かないと、当然のルールだからとしておりましたら、どのような場合に192条が適用されるのかということが問題になりましたものですから、それでは、一応分かりやすくするために書くかということで、書かせていただいているということだろうと思います。ただし、されるものとする、という文言でいいのかどうかについては、若干慣例も踏まえて検討させていただければと思います。ありがとうございました。   ほかによろしゅうございますでしょうか。 ○水津幹事 部会長は、(1)の規律と(2)以下の規律との関係について、(1)の規律は、即時取得を定めるものであるのに対し、(2)以下の規律は、即時取得とは別の法理を定めるものであるとされていたかと思います。他方、最初の方では、阪口幹事と笹井幹事との間において、引渡しについてのやりとりがされました。そのやりとりの中で笹井幹事がされた御発言は、(2)以下の規律を即時取得の特則として理解する余地を残したものであったような印象を受けました。   ここで扱われている規律及びその基礎に据えられた理解と、前回の会議において部会長がおっしゃり、今回の会議においても言及された抵当権についての議論との関係が気になっております。すなわち、抵当不動産の一部が分離・搬出された場合において、その物が抵当不動産上で処分されたときは、処分の相手方がその物について抵当権の効力が及んでいることを知っていたとしても、その処分が通常の使用収益の範囲内であると信じており、そのことについて過失がなかったときは、その処分の相手方は、192条の規定に基づいて抵当権の負担のない所有権を取得するという理解が一般にされているようにも思います。この場合には、その処分の相手方が占有改定による引渡ししか受けていなかったときは、同条の規定は、適用されません。ここで扱われている規律及びその基礎に据えられた理解は、このような抵当権についての議論に対して影響を与えるのか、それとも、別の問題として棲み分けがされるのかが問題となりそうです。また、即時取得については、御案内のとおり、192条の規定は、所有権に対する信頼を保護するものなのか、それとも、処分権限に対する信頼を保護するものなのかについて、議論があります。(2)以下の規律は、即時取得とは別の法理を定めるものであるとする理解は、前者の見解を前提としているようにもみえます。他方で、後者の見解も、有力に主張されています。先に述べた抵当権についての議論における理解は、後者の見解を前提としているような気がいたします。いずれにせよ、ここで扱われている規律及びその基礎に据えられた理解については、他の問題との関係を踏まえて検討を行う必要があるように思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。これ、ちょっと中間試案のゴシックのルールないしは補足説明で、今の御指摘を書き切れるかというと、なかなか難しいところがあるかもしれませんが、理論的には、いろいろなところにつながっている話ですし、また、ほかのところとのバランスを考えながらルールを作らなければならないところなんだろうと思います。   何か事務局からございますか。 ○笹井幹事 いえ、今の時点ではございません。 ○道垣内部会長 頑張るということだそうです。ありがとうございます。 ○加藤幹事 2点コメントがあります。1点目は、10ページの3の内容がそのまま条文になった場合に、実務の方が契約書を作成する際にどのように対応されるのかが気になりました。現在の実務の詳細を存じ上げてはいませんが、集合動産譲渡担保を設定する場合に、担保権設定者が何をやっていいか、悪いかということは、詳細に決まっている場合が多いのでしょうか。そのような実務が存在する場合、今回の御提案が実務にどのような影響を及ぼす可能性があるのか気になりました。通常の事業の範囲内かどうかは、当事者が決めることではなくて、争いが生じた場合は裁判官の判断に委ねられることになるかと思いますが、既に担保権設定者の権限について一般的な定めが存在する場合、通常の事業の範囲内の解釈においてそのような定めの存在が考慮されるのかが問題となり得るように思います。もし、考慮されないのであれば、現在の実務の変更につながる可能性があるように思います。   2点目ですが、このような担保権設定者の権限に関する別段の定めについて、担保権の設定者と取引をする相手方は、その内容をどれくらい容易に知ることができるものなのかも気になりました。第三者の保護を考える際には、どれくらい容易に入手可能な情報なのかということも考慮した上で、制度設計をする必要があると思います。以上です。 ○道垣内部会長 事務局から、今の段階で何か、特にございますか。 ○笹井幹事 そうですね。またその辺は、実務家の先生にも御意見を伺ってみたいと思いますが、後者の部分について、内部的な制約を知ることは、極めて難しいだろうと思っていますので、そういうのもあって、少し第三者が保護される要件を緩めるというような提案をしているところです。ただ、非常に例外的な場面として、内部者といいますか、関係者みたいな人が取引に関与してくるということもあり得るのかなということで、そういう場面も想定したということでございます。ちょっとその辺の実務的な影響等につきましても、調べていきたいと思っております。 ○大西委員 また、10ページの3のところで大変恐縮なんですが、(1)の善意取得が認められない場合に、でも、(2)が認められる場合があるよということで、これを救済するという関係性なのかなと思うんですが、逆に、(2)では正当理由がない場合ですね。要は、通常の事業の範囲は超えているような、そういう態様でも、担保権の存在を知らない場合というのは、この(1)で救済されるという関係性にあるという理解でよろしいんでしょうかという質問なんですが。 ○道垣内部会長 それはそうだと思いますが。 ○大西委員 そうすると、本来この担保権というのは、通常の事業の範囲外というのはシャットアウトしようということで、その正当理由ということなんですが、ただ、担保権の存在というのは、特に登記とかしていない場合というのは、これはほとんど知り得ることがないはずなので、結構通常の範囲外の処分行為が、(1)で救済されてしまうケースもないのかななんて思った次第で、それは、もしかしたら192条の善意の内容が、担保権について知らないことだけではなくて、通常の範囲とか、この辺も、要は、無権限かどうかということですね。権限範囲内の処分かどうかと、ここも含めて考えるという余地もないのかなと思った次第ですが、ちょっとすみません、的を射ていない質問かもしれませんが。 ○道垣内部会長 賃借物を借主が第三者に自己所有のものとして譲渡した場合において、所有者は、動産譲渡の対抗要件の関係で言えば、対抗できるんですね、譲渡がないから。賃借人に対しての譲渡はなくて、賃貸人が持ったままですから。しかし、それを賃借人の所有物だと信じたことに過失がない、で、引渡しを受けたということになりますと、引渡しを受けた人が所有権を取得するというのが民法192条の法理ですので、それが逆に担保権であるというときに、特に第三者の保護が減るのかというと、これは減らないはずなのではないかと思うんですね。したがって、大西さんがおっしゃること、極めてよく分かるんですが、動産というものの性質上は、そういうふうな所有者、設定者が、今回は所有権がないわけではなくて、担保権がないものとして売るわけですが、所有者、設定者が、自己が処分権限を有するものとして第三者に売却して、それを第三者が善意無過失で信じたということになりますと、それは、どうしても民法192条が適用されざるを得ないのではないかと思うんですけれども。 ○大西委員 分かりました。私は単純に、(2)で、例えば、悪意の方が(1)で保護されるというパターンもあり得るかなと思って、それはどうかなと思った。その利益考慮として思った次第です。だから、192条で保護される論理だということであれば、はい、分かりましたということ。 ○道垣内部会長 今の問題にはちょっといろいろ、また所有権の所在がないという場合ではなくて、処分権限がないという場合に、どういうふうに192条を適用するのかというふうな問題も絡んでいますので、なかなか難しいところあるのかもしれませんので、更に論理的な検討をしなければならないと思うんですが、一般法理との整合性というのが多分必要になると思います。   ほかにございませんでしょうか。   今、とりわけ、10ページの3のところについて、分かりにくさがあったり、別の考え方があったりするということの御指摘を頂きましたけれども、例えば、(注3)をどこに振るかとか、そういう問題も含めまして、あるいは、(注2)の重過失の話をどこに印を付けるかというのも、(3)なのか(2)なのかという問題もあるのかもしれません。ただ、こういうふうな整理が必要であることは確かなんですが、前回よりも一応見通しをよくしたというつもりなんですけれども、全体の方向としては、更にわかりやすくするということも考えつつ、こういうかたちで、中間試案として皆さんの意見を伺うということにしてよろしゅうございますでしょうか。   どうも、修正についてはまた後でも話しますけれども、それではちょっと、先へ進ませていただきまして、第4の「新たな規定に係る動産担保権の対抗要件等」から第7の「動産・債権譲渡登記制度の見直し」まで、議論を行いたいと思います。事務当局において、部会資料の説明をお願いいたします。 ○森下関係官 関係官の森下でございます。では、14ページ目の「第4 新たな規定に係る動産担保権の対抗要件等」について御説明いたします。   1では、新たな規定に係る動産担保権の対抗要件等について記載しております。まず、分かりやすさの観点から、動産譲渡担保権等という言葉を使っていましたが、これを、新たな規定に係る担保権という形に記載ぶりを改めております。また、(1)のイでは、集合動産担保権に設定した担保権についての対抗要件の効力が、設定後に集合動産に加入した個別動産にも及ぶ旨を明らかにしております。(2)のウでは、前回までの御審議を踏まえまして、いわゆる設定時説と加入時説の対立につきまして併記するという形にいたしております。   15ページ目の2の留保所有権の対抗要件等についてです。こちらも、分かりやすさの観点から、原則として担保目的取引規律型を前提とする記載ぶりとしまして、留保所有権という言葉を使用することとしました。その上で、担保物件創設型からの説明、規律につきましては、(注1)の後段のところに明記することとしております。また、(注2)のところで、留保所有権について登記できるとする考え方が、どこまで及ぶのかというお話があったところですので、狭義の留保所有権と拡大された留保所有権のいずれについても登記できるとすることを明らかにしております。   続きまして、18ページ目の第5の新たな規定に係る動産担保権の対抗要件等についてです。この点は、表現ぶりを改めさせていただいたほかに、実質的な変更点はございません。   第6の「債権譲渡担保権の対抗要件等の在り方」についてです。2の(2)の(注)に登記優先ルールを採用する考え方があるというふうな御指摘があったものですから、こちらを(注)に明記することとしております。また、3のところでは、雇用関係の先取特権を含む一般先取特権について、新たな規定に係る動産担保権の場合と同様に、債権譲渡担保権に対しても一定の優先権を認めるかについて、引き続き検討する旨を明記しました。   20ページ目の第7の「動産・債権譲渡登記制度の見直し」につきまして、内容に変更点はございません。   以上の点につきまして、御審議いただければと存じます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○井上委員 15ページ末のところの留保所有権について、3点申し上げたいと思います。   今の時点で、ここのゴシック部分を修正することまでお願いするものではなくて、場合によっては、補足説明で補足していただければとも思うのですけれども、1点目は、まず(注1)の「動産を購入するための資金の融資に基づく債権など、目的物である動産と密接な関連性を有する一定の債権を担保する留保所有権」について、この留保所有権はどういうものを指しているのかということです。一般的に言うと、これは、信販会社が担保権者となって、立替金の償還請求権と、それから利息相当の手数料債権などを被担保債権とする、いわゆる三者型の所有権留保と呼ばれるものを意味しているのかなと理解しました。   別の言い方をすれば、代金債権を立替払いした信販会社が、売主の代金債権に代位するとともに、売主の留保所有権を代位行使する代位型の所有権留保とは異なるものを指していると理解したんですけれども、そういう意味の三者型は、一般論として、判例とか学説で所有権留保の一形態として論じられていることは理解しているのですが、今回の立法に当たって、今まで事務局でといいますか、整理してきた概念からすると、これは所有権を留保する担保ではなくて、所有権を譲渡する担保、すなわち譲渡型の担保ではないかと思います。元々所有権を持っていたのは売主ですから、信販会社は自らの買主に対する立替金償還請求権プラス利息相当の手数料債権を被担保債権として、売主から所有権の移転を受けているわけで、これは、物上保証人たる売主による譲渡担保の設定そのもののように思われます。   物上保証人である売主は、信販会社に譲渡担保を設定した上で、売買契約に基づいて設定者留保権を買主に移転することにより、この三者型の取引がなされているということではないかと思うのですが、そうだとすると、こういったタイプの担保権を、目的物である動産と密接な関連性があることを理由として特別に保護するべきではないかという議論は、本来、むしろ輸入ファイナンスなどと同様に、譲渡担保のうち、目的動産と密接な関連性がある金融債権の担保をどう扱うかという文脈で、中間試案で取り上げるという考え方もあったのではないかなと思っておりまして、今回、この三者型について、ここで取り扱うのだとしても、補足説明で、狭義の留保所有権に含めるかどうかではなく、むしろ、繰り返しになりますが、譲渡担保のうち一定の類型のものを特別扱いするかどうかという文脈で整理するという考え方もあるということを示していただければなというのが、これが1点目です。   2点目は、(注2)と(注4)に関わるのですが、以前申し上げたことでもあるんですけれども、所有権留保についての登記に言及されているのですけれども、担保ファイリングであれば、担保自体を公示するという制度なので、所有権留保の担保ファイリングを、いかようにも設計できるのかなと思っておったのですが、譲渡登記をベースにして留保所有権を登記するというのが、一体どういうイメージなのかは、このゴシック部分に記載することは要らないかもしれませんけれども、補足説明で、登記のイメージが分かるようにしていただけると、それが、(注2)や(注4)で示されている考え方の是非を検討するのに有用ではないかと思いました。   人的編成主義で作られる担保だと考えると、所有権留保の場合、買主を起点にして検索するようなイメージで譲渡登記に載せるとすると、売買における売主から買主への方向とは逆向きの、買主を起点とする担保権設定という形の譲渡登記に載せることになるのか、登記制度をどういうふうに変えるのかということなので、いろいろな設計があり得ると思うのですが、イメージが湧くようになっているといいかなというのが、これが2点目です。   3点目は、(2)のアで、「留保所有権と競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、留保所有権が目的物の代金債権以外の債権を担保する限度では、これをもって第三者に対抗することができるようになったときの前後によるものとする」となっているところなんですけれども、その一方で、(注5)によると、拡大された留保所有権については、「目的物の代金債権を担保する限度では拡大された留保所有権が優先し、それ以外の部分については、原則として、それぞれが対抗要件を具備した時の前後による」となっていて、どっちを先に決めるかというのが、このアと、それから(注5)でずれているようにも思ったのですが、私の読み方がおかしいのかもしれないんですけれども、ここの関係を教えていただければと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。いかがでしょうか。 ○笹井幹事 最後の点、もう一度おっしゃってくださいませんか。 ○井上委員 私が読み落としているんですかね。(注5)によると、拡大された留保所有権があるときに、まず、目的物の売買代金を担保する限度で、対抗要件の前後などを問わずに留保所有権が優先して、代金額を超える部分(「それ以外の部分」)については、対抗要件具備の先後で決めるという順序になっているのに対して、16ページのアのところでは、「留保所有権と競合する他の新たな規定に係る動産担保権との優劣は、留保所有権が目的物の代金債権以外の債権を担保する限度では、第三者に対抗することができるようになったときの前後による」となっているんですけれども、これは、うまく整合するんでしょうかということです。(注5)では、仮に、目的物の価額から代金債務全額の弁済に充当した後に、目的物の代金債権以外の被担保債権額よりも少ない金額しか余りがなかった場合は、両方の制約(先に代金債務に充当され、次に、先に対抗要件を具備された他の担保権に劣後する)が掛かるというだけのことを意味しているんでしょうか。 ○森下関係官 まず、16ページ目の(注1)のところの留保所有権というふうな言葉が適切かというところにつきましては、御意見を踏まえまして、また補足説明等で説明を加えようと思います。(注1)の中では、留保所有権と動産譲渡担保権双方について、狭義の留保所有権と同様に取り扱う考え方があるというふうな形で、そこは若干濁して書いていましたが、少しそこはクリアにした方がいいというふうな御指摘だと思いますので、また検討いたしたいと思います。   2点目の留保所有権の登記のイメージにつきましては、御指摘のとおり、譲渡人をどちらにするのかというふうな問題があるというのは、おっしゃるとおりでございまして、検索の便宜等々を考えると、買受人基準にするのがいいのかもしれませんけれども、物権変動等の在り方の関係で、どういうふうな組み方にするのかという問題があるかと思いますので、少しそこは、中間試案の説明ぶりも含めて検討したいと思います。   すみません、ちょっと三つ目のところ、私の理解が少し誤っているのかもしれませんけれども、(2)のアとイを組み合わせると、(注5)の結論になるというふうな理解で書いていました。(2)のイは、目的物の代金債権を担保する限度では当然に優先するというルールがあって、アで、それ以外の部分については前後によりますと。これを組み合わせると(注5)のよう結論になるというようなことで書いていたのですが、その説明ぶりですと、優先する前後のようなところが抜け落ちていたのかもしれません。 ○道垣内部会長 井上さん、よろしいですか。 ○井上委員 はい、分かりました。アとイの関係がまず先にあって、それによれば、目的物の代金部分が当然に優先し、その残りの部分と、留保所有権が目的物の代金債権以外の債権を担保する限度と、どちらか限られた方が、他の担保権との競合ルールに回るということなのかなと、一応御説明は理解したつもりです。ありがとうございました。 ○道垣内部会長 日本語として、アは限度というのはおかしいよね。 ○井上委員 そこがちょっと、代金債権以外の債権の額までは対抗要件の先後で決め、それを超える金額があれば代金債権の限度で当然に優先するかのように読んで、引っ掛かってしまったんですけれども。 ○道垣内部会長 そこら辺が結構、分かりにくさを生んでいるような気がしますね。 ○笹井幹事 ちょっとそこは、表記を含めて検討します。 ○道垣内部会長 気持ちは分かるけれども、幾らでも広がる外を意味しているわけだから。   ほかにございますでしょうか。 ○阪口幹事 すみません、まず確認ですが、今は第7まで全部、この部会資料26全部含めて質問でよかったですか。 ○道垣内部会長 はい。 ○阪口幹事 第7の見直しのところで、補足説明で触れていただくことで十分なんですけれども、譲渡登記の公示力というか、どの範囲で見えるのかという点について、現行法どおりでいくのか、もうちょっと広げるのかという辺りについても、述べていただいたらいいのかなと思うんです。というのは、先ほどの善意無過失の議論なんかありましたが、あれも、登記制度の在り方というか、どこまで見られるのかというのがないと考えにくい。それは買主にとって普通は分かんないよねという話になるのか、いや、それは登記見たら分かるやんかという話になるのか、によって大分違うのではないかと思います。   なので、第7の補足説明の中で、今後の登記制度として、そういうところを見直すのかどうかという辺りも議論の対象になる。これは、全体に影響し得る問題なので、そういうことも、問題意識として持っていただいて補足説明に書いていただいたらなと思っています。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。   どうもありがとうございました。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○水津幹事 14ページの第4の1の(1)のイの規律について、表現の仕方が気になりました。同規定には、「集合動産を目的とする新たな規定に係る動産担保権の設定は、その構成部分である動産の引渡しがなければ、これをもって第三者に対抗することができない」とあった後に、「この場合には、当該設定後の集合動産に加入した個別動産に及ぶ当該担保権の効力についても、第三者に対することができる」とあります。ここでの前後の文章のつながりが、少し悪いのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ここの気持ちは、現存する動産の引渡しがあったら、それで集合動産を目的とする集合動産譲渡担保権を第三者に対抗することができるようになる、しなければできない。そういうふうに集合動産譲渡担保権が設定され、第三者に対抗することができる状態になったら、その後に加入した個別動産に当該担保権の効力が及ぶことになり、そのことも第三者に対抗することができるというつもりで、多分書いていて。 ○水津幹事 前の文章では、引渡しがなければ第三者に対抗することができないという規律が書かれているだけです。そのため、後の文章における「この場合」に対応する規律は、前の文章において書かれていないように思います。 ○道垣内部会長 前の文章に「場合」がないからね。 ○水津幹事 はい。前の文章には、引渡しがあれば第三者に対抗することができるという規律は、書かれていません。 ○道垣内部会長 分かりました。 ○水津幹事 規律の内容は、理解しております。 ○道垣内部会長 そうすると、どうかな。対抗することができない場合にみたいに読めちゃうからね。おっしゃることはよく分かりました。ちょっと文章の手直しをしたいと思います。   ほかに御意見ございませんでしょうか。部会資料26でございますけれども。   よろしゅうございますか。   それでは、もう一個、今日、部会資料がございまして、部会資料27「担保法制の見直しに関する中間試案(案)」につきまして、これを、一応説明を頂くんですよね。どういう趣旨で今回お配りしているかということにつきまして、若干の赤字が入っておりますので、そのことにつきまして、事務局から簡単に御説明いただければと思います。 ○笹井幹事 部会資料27につきましては、冒頭ちょっと触れましたけれども、部会資料26、これは実質的な変更といいますか、大分大きく変わったところございますので、見え消しでお示しして、独立した資料といたしましたけれども、27は、この26の赤字見え消し部分を全部反映させた上に、第8以下、これは、前回たたき台第2案(1)としてお示しした部分からの変更点を見え消しで示してくっつけたものということになります。   ただ、第1から第7までにつきましては、今まで様々な御意見いただきまして、第8以降につきましては、それほど大きな変更点ございません。少し記載ぶりとか、語句を修正したというようなものでございまして、実質的なところにつきましては、前回までに既に頂いた意見をそのまま反映させたというものになっております。   少し、これも書きぶりだけですけれども、赤字がちょっと長いなと思われるところは18ページかもしれません。【案8.3.2】の書き方ですけれども、【案8.3.2】の(1)において、【案8.3.1】の(1)から(3)まで及び(5)と同じと記載していたんですけれども、(5)につきましては全く同じではないので、少し書き下したということです。3行ほど赤字になっておりますけれども、実質的には、同じことを実現しようとしたものでございまして、実質を変えたものではありません。   そのほかの部分についても、誤字といいますか、少し抜けていたところとか語句を修正したということですございますので、実質的な変更はございませんので、御確認いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等があればお願いいたします。 ○阪口幹事 36ページの(注)のところで、前回僕は、ここは修正されないんですかって聞いて、修正されていないんですけれども、これは、もうこのままいくということでしょうか。 ○笹井幹事 失礼しました、ここは修正しようと思っていて、抜けていたところです。確定版では修正させていただきます。申し訳ございません。 ○阪口幹事 ありがとうございます。 ○道垣内部会長 ほかにございませんでしょうか。 ○井上委員 井上です。34ページの事業担保権の倒産法上の取扱いのところの3なんですけれども、今回修正頂いて、この修正の趣旨は、私が理解したところによると、倒産手続後の発生財産、取得財産に及ぶとしても、倒産手続開始時を基準として何か価値的なキャップを付けるという立場に立ったときに、その付けるキャップの額は、飽くまでも個別財産の清算価値の積上げ額ではなくて、事業を元々対象にしているので、事業担保の目的物全体、すなわち事業全体の価値、事業価値をキャップにするというものだと思います。   なので、金額を固定する時点の定め方としては、一つの考え方として手続開始時ということがあり得るけれども、その額のイメージとしては、個別財産の清算価値の合計ではないのだという発想を示す趣旨と理解したんですけれども、考えてみれば、元々30ページの事業担保制度導入の是非のところに、「事業のために一体として活用される財産全体を包括的に目的財産とする」となっていて、基本的には、31ページの3のところで、「のれん、契約上の地位、事実上の利益などを含む」全ての財産に及ぶという形で設計されることを前提にしているので、この34ページの3のところの、見出しはこれでいいと思うんですけれども、本文が、急にここだけ債権と動産だけになってしまっているのは、不釣り合いな感じがいたしまして、もう一回、31ページの表現をここに持ってくるのか、あるいは30ページの財産全体をここに持ってくるのか、あるいは34ページのこの3の見出しにあるように、倒産手続開始後に生じ、又は取得した財産という形で拾うのか、書き方はいろいろあると思うのですが、債権と動産に限定しないような形で本文を書いていただき、(注)の最初の2行分についても、同じく、ここも債権と動産に限定しないようにすべきなのかなと思いました。 ○道垣内部会長 なるほど。何か、いかがですか。 ○笹井幹事 そこは、御指摘のとおりだと思います。典型的には、やはり一番重要なのは動産と債権だと思いますので、ここでも動産と債権が特に言及されていたということだと思いますけれども、それに限らないというのは御指摘どおりだと思いますので、そのような方向で修正したいと思います。 ○道垣内部会長 ただ、34ページの3の(注)のところの直しの趣旨なんですが、これは、ゴーイング・コンサーンバリューというか、そういうものを限度額にするんだよという意味を含めてお書きになっているんですか。 ○淺野関係官 部会長から御指摘いただいた点ですが、この修正自体に必ずしもそのような含意があるわけではなく、もう少し形式的な趣旨でして、本文や注の冒頭にも債権や動産と書いてしまっているではないかというのは井上先生から御指摘いただいたとおりなのですが、ここで評価額というときに何の評価額かというと、担保目的財産は事業のために活用される財産全体ですのでその評価額だろう、にもかかわらず動産や債権の評価額と記載していたのはミスリーディングだったのかなということで修正をしたところです。   ただ、ではどのように評価するのかというと、基本的に実行の方法として事業譲渡を想定しているということに鑑みると、先ほど井上先生から御指摘があったような評価方法になるというのが自然なのかなと思われますので、その辺りは補足説明に記載することを想定しておりました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかにございませんでしょうか。   よろしゅうございますか。   それでは、この段階で、中間試案の取りまとめを行ってよいかどうかということについて、お諮りしたいと思います。本日も、部会資料26につきまして、幾つかの御指摘、御意見を頂きましたし、部会資料27として取りまとめているところに関しましても、若干の字句の修正の意見が出て、ごもっともな御意見も多々あったかと思います。それはそうなんでございますけれども、またこれにつきまして、今日頂いた御指摘を基に、必要な修正を施したもので取りまとめることとさせていただければと思うのですが、いかがでございましょうか。   具体的な修正作業なんでございますけれども、最終的な中間試案の字句の修正等、実質的な内容の変更にわたらない範囲というか、今日、本日の御指摘を踏まえてということでございますけれども、での修正作業につきまして、部会長である私と事務当局に御一任いただければと思いますけれども、よろしゅうございますでしょうか。御異議等ございましたら、どうぞ御遠慮なくおっしゃってください。   御一任いただいたことに反しない、委任の趣旨に反しないようにやっていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。なお、またこういうふうなところを是非注意して、字句の修正をしろということでアドバイス等ございましたら、御遠慮なくお聞かせいただければと思います。   それでは、そういうふうな必要な修正を施すということを含めて、本日の段階で中間試案が取りまとめられたものと扱わせていただきます。どうもありがとうございました。   それでは、この中間試案をパブリックコメントの手続に付することとさせていただきま す。   また、事務当局の責任におきまして、中間試案の補足説明を取りまとめて公表していただきたいと思います。これまでの会議におきましても、皆さんから、ゴシックのところはともかく、中間試案はこういうふうなきちんとした説明をしようとか、こういう意見ないしは可能性について、補足説明で触れなさいという御指示を多々頂いているところでございます。事務当局におかれましては、それを踏まえて、補足説明を作成していただきたいと思います。よろしゅうございますでしょうか。 ○笹井幹事 改めまして、中間試案の取りまとめに向けてこれまで熱心な御審議をくださいまして、どうもありがとうございました。   ここからの作業といたしましては、パブリックコメントの手続ということになります。パブコメにかけるまでには補足説明を作らないといけませんので、適宜準備を進めてはおりましたけれども、いろいろなところで、それは補足説明に記載するというお約束をしてまいりましたので、その準備をさせていただきたいと思っております。 ○道垣内部会長 それでは、法制審議会担保法制部会の第29回会議というのは閉会させていただければと思います。   本日も熱心な御審議を賜りまして、ありがとうございました。また来年、よろしくお願いいたします。   よいお年をお迎えくださいませ。 -了-