法制審議会 担保法制部会 第32回会議 議事録 第1 日 時  令和5年4月25日(火) 自 午後1時30分                      至 午後6時16分 第2 場 所  法務省大会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(1) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第32回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日はリアルな御出席者が4人いらっしゃいます。他方、本日は井上さん、大西さん、衣斐さんが御欠席で、沖野さんが途中退席と伺っております。さらには幹事の加藤さん、鮫島さんが遅参ということで、青山さんも遅参をされて、途中で退出予定と伺っております。   また、前回の部会後に関係官の交代がございましたので、報告をさせていただきます。新たに伊賀関係官、金ア関係官、水野関係官が部会に参加されます。各関係官におかれましては簡単に自己紹介をお願いいたします。 (関係官の自己紹介につき省略) ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、まず配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事  事前に部会資料28「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(1)」をお送りしました。これについては、後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。また、直前となりましたが、お送りしたものとして、部会資料29−1「「担保法制の見直しに関する中間試案」に対して寄せられた意見の概要(第3まで)」がございます。後ほど事務当局において、部会資料28の説明に際し随時触れさせていただきます。なお、部会資料29−1はパブリック・コメントとして頂いた御意見のうち、中間試案の冒頭から第3までを対象としており、中間試案第4以降につきましては、次回以降、部会資料29−2以下として随時送付させていただく予定です。 ○道垣内部会長 それでは、まず、部会資料28の「第1 新しい担保制度の規律方法等」から議論を始めたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 それでは、私の方から部会資料28の第1につきまして御説明させていただきます。   まず、部会資料28の3ページの「第1 新しい担保制度の規律方法等」の「1 新しい担保制度の規律方法等」について御説明いたします。本文は、新たに担保取引に関する規定を設けるに当たり、動産抵当権等の物権を新たに設けるのではなく、譲渡担保契約や所有権留保契約を定義し、これらの契約の効力について規定を設けるという規律を提案するものでございます。これは、これまでの実務との連続性の観点からも受け入れられやすいのではないかと考えたことによるものです。また、新たな担保物権を設けた場合、その当該担保物権の設定行為ではなく、当事者が担保目的で所有権を移転する取引をした場合の効力が問題となりますが、当事者の意思に反して異なる内容の法律行為がされたものとみなす旨の規律を設けることについては疑義もあり得るという点も考慮いたしました。   なお、部会資料29−1の4ページにおいて、この点についてのパブリック・コメントの意見を掲載しております。担保目的取引規律型と担保物権創設型のいずれの方式を採るべきとの意見はなく、むしろこれらを対置させること自体が適切ではないといった意見なども出されていたところです。   次に、第1の2を御説明いたします。第1の2は譲渡担保契約の定義に関する規律の提案です。本提案は、まず、被担保債権を金銭債務に限ることとしております。それ以外の債権は除外することとしておりますが、例えば物の引渡し債務の不履行により生ずる損害賠償請求権は対象となるということでございます。また、譲渡担保契約の目的物につきましては、不動産に関しては抵当権が実務上も多く利用されているということなどから、不動産以外の動産の所有権、債権その他の財産権一般を対象としております。   船舶、登録自動車又は登録飛行機など、物的編成主義による独自の登記又は登録制度が設けられている動産についても、担保目的で譲渡されること自体はあり得ることから、適用対象としつつ、後順位担保権の設定の可否などについては各登記登録制度における対応の可否も関係するため、個別に検討する必要があると考えられます。   倉荷証券、船荷証券又は複合運送証券が作成されている動産の所有権についても適用対象としておりますが、動産債権譲渡登記制度の対象ではないことから、動産譲渡登記による公示を前提とする規定の適用は除外されることとなります。   なお、ここでの譲渡担保契約の定義は、動産や債権だけでなく、その他の財産権を目的とする譲渡担保契約を包含するものになっております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を伺いたいと思います。ただ、今なされました説明に関連いたしまして、少し私の方から一言お断りをしておきたいと思います。と申しますのは、第1の1のところの説明に、新たな物権を作るのではなく、と書いてあり、しかし、その26行目には譲渡担保権が新たに設けられた担保物権であるという理解をおよそ否定するものではないと書いてあります。この関係でございますけれども、私の理解するところによりますと、結局、条文の形として、新たな担保物権というのを念頭に置いた形で、それを設定するという形で作っていくのか、それとも、このような契約についての効力という形で作っていくのかという点につきましては後者の方法を採るけれども、そのことが、およそ担保物権が創設されたという解釈論を一切否定するという趣旨を含むものではないということだと思います。それでは、その点も含めまして、御自由に御議論いただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。どうもありがとうございます。基本的に、いろいろ議論はありましたけれども、譲渡担保契約あるいは担保目的規律型という規定の仕方を行うという方向は既定路線ということで考えた上で、その上で今、部会長からもお話があったように、解釈という意味では譲渡担保権や留保所有権が有することになる権利を理論的にどのように説明するのかは解釈に委ねられて、新たに設けられた担保物権であるという理解を否定するものではないとおっしゃっていただきましたので、それは、一つの落とし所として賛成ができるかと思っております。   その上で、譲渡担保権と既存の動産質、債権質との関係、性質決定について、次の譲渡担保契約の定義のところとも関係しますが、気になる点を確認できればと思っております。   それは、譲渡とか、あるいは財産権を移転するという効果意思がどこまで求められているのかという点でございます。恐らく譲渡担保の定義からしますと、財産権を移転するという効果意思が必須だということになるのでしょうが、そうしますと、動産所有権の移転の意思は明示されてはいないけれども、動産担保権を設定するという意思しか示されていないという場合とか、あるいは債権移転の意思は明示されておらず、債権担保権を設定する意思しか示されていないというような場合に、一体どのような法的性質決定がなされるのかという点が疑問として残るように思いました。   例えば、動産譲渡担保設定契約書という形で契約書が書かれた場合には、譲渡という文言の中に、恐らく動産所有権移転の効果意思を読み取れるということになるのでしょうけれども、動産担保権設定契約書というような契約書になりますと、そのような契約は無効ということになってしまうのか、あるいは動産質か譲渡担保権かいずれかが認定されるということになるのか、その辺りをどう考えるかという点は必ずしも明白ではありません。   担保目的規律ということを強調しますと、財産権の移転という点はある意味、手段にすぎないということになりますから、そのような契約も直ちに無効というわけにはいかず、例えば占有担保か非占有担保かという点から法的性質決定がなされて、現実の引渡しがなされている場合は動産質、占有改定しかなされていない場合には譲渡担保というような区別になるようにも思われます。債権質か債権譲渡担保かというのは、より微妙な点があるかもしれません。要するに、譲渡担保契約の定義において、財産権移転の効果意思というものがどれぐらい重要なものと想定されているのかという点を確認できればと思いました。あるいはこの点も解釈論に委ねられるということになるのかもしれません。仮に譲渡担保権が新たに設けられた担保物権であるという解釈論が今後可能であるという場合には、財産権移転の効果意思がなくても担保権を設定するという効果意思で十分だということになるようにも思われます。その場合は、動産質と動産債権譲渡担保の法的性質決定において重要な点は、占有担保か非占有担保かということになるとも考えられます。   以上、長くなりましたが、譲渡担保契約の定義の中での財産権の移転の効果意思をどのぐらい重要なものと考えておられるのかという点、それが解釈論に委ねられるということでいいのかどうかという点を確認できればと思いました。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。事務局からお答えいただきますが、少しその前に片山さんに質問をしたいのですが、現在の状態で、譲渡担保とか譲渡とか書かないで、動産担保権設定契約書と書いたらどうなると考えられるのでしょうか。つまり、何を言いたいかというと、それは現在ある問題と同じ問題かなという気もするのですが。 ○片山委員 それはおっしゃるとおりかもしれません。今も、必ずしも法的性質決定の問題が解決していないということはあるのかもしれないと思います。現実の引渡しまでなされているという場合には、質権と設定される余地はあるのかも知れません。逆に、現実の引渡しがなされておらず占有改定にとどまるという場合には、譲渡担保と性質決定されるかどうかという問題が残るだけだと思いますが、私自身は、譲渡の形式がなされているというか、譲渡の意思があることが大前提となった判例法理だと思いますので、それは無効ということになるのではないかと思っておりましたが、考え方は分かれるところかもしれません。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。では、事務局から何かございましたら、お願いいたします。 ○笹井幹事 明示的に考えていたわけではございませんで、現在でもある問題なのかと思いますが、基本的には譲渡担保をこういうふうに定義する以上は、譲渡するという効果意思が必要になってくるのだろうと思います。   ただ、結局、今、片山委員がおっしゃいましたように、動産担保権設定契約書とかでしょうか、必ずしも譲渡という文言を使わなかったときに、それをどういう契約の成立と認めるのかというのは、それぞれの契約の解釈によってくるということになろうかと思います。その際に、伝統的にいわれているように、契約の解釈に当たってはできるだけ有効になるような方法で解釈しなければならないというルールが適用されるとすれば、現在あるいはこの法律がこの方式で設定された場合であっても、動産についてどういった担保権が実定法上あり得るのかと言われれば、それは質権か、この譲渡担保権かということになるので、いずれかの契約であると解釈することができるのであれば、そういう方向性の解釈が探られるのであろうと思います。   その際に、これも今、片山委員がおっしゃったことかもしれませんけれども、実際にその占有がどういうふうになっているのか、あるいは今後、現実の引渡しが予定されているのかどうかということ、その辺を考慮しながら、質権であるのか譲渡担保権であるのかということが性質決定されていくということになるのではないかと感じました。   差し当たり、以上です。 ○道垣内部会長 解釈問題ではあるのですが、なかなかそこを明文で、担保の設定というふうにいってもよいとは書きにくいところだと思いますし、2の定義のところで担保権の設定も含むと書くのも、全体の整合性がどうかという気もします。ただ、更にもう一段階考えてみる必要があると思いますので、事務局等を含めまして、もう少し検討したいと思います。   先に進ませていただきまして、沖野さん、お願いいたします。 ○沖野委員 ありがとうございます。委員の沖野でございます。1につきまして、元々二つの可能な方策ということですし、そろそろまとめの段階に入らなければいけないということで、一つに絞り込むというのは十分考えられるところだと思います。ただ、そうはいいましても、本当にこれでいいのかということについて個人的に懸念を持ちますものですから、少し申し上げたいと思います。   それで、一つは、この取引の効力として書いていくという、実はそれ自体は必ずしもそれほど反対ということではないのですけれども、これによって新たな担保物権を創設するものであるのかとか、それから、仮に担保権設定という形にしたときに、現在のような譲渡担保の形での取引をしたときには同じ規律にかけるための規定が必要ではないかという辺りの説明について、少し申し上げたいというところがございます。   この後、設定者の権利ですとか、あるいは譲渡担保権という名称の下にいろいろな関係が明らかになっていきますけれども、それは結局いずれも物権的な権利を作っており、物権法定主義ということからしても、新たな物権をやはり作っている、あるいはそれを確認しているということになるのではないかと思います。それは何かというと、やはり担保物権ではないかと思われますので、それを作り出すときに、担保権を設定するという形にするのか、このような2で定義されているようなことになれば、この移転を受けた側は譲渡担保権を取得するという書き方になるのかという、そういう違いではなかろうかと思います。解釈としては結局、譲渡担保権者は譲渡担保権を持つということは変わりがなくて、その規律自体は具体的に書かれますので、どちらからいっても同じではないかという気がしていまして、むしろ問題になるのは設定者がどういう権利を持っているかということです。   設定者の権利というのが、担保物権だということになれば、所有権という形になって、担保物権に制約された所有権ということになりますけれども、この取引規律型になった場合にそれがどうなるのかということで、設定者の持つ権利というのが所有権マイナス譲渡担保権であって、それは何か分からないけれども、仮に設定者留保権なのか、あるいは別の名前なのか、そういう権利だとしたときに、例えば後順位を認めるとすると、後順位は所有権に第2が付いているのではなくて、設定者留保権を対象に担保に取っていて、全く異質であると。第3は、とかいうことになってきますと、非常に複雑になりますので、むしろ担保物権だとしてしまった方が、規律の内容としては非常に明確になるのではないかと思います。   そうしたときに、担保権を作ってしまって設定ということにするのか、それとも、譲渡担保契約の定義はこれで、これによって何が作り出されるかといえば、譲渡担保権者は譲渡担保権を持ち、設定者はそれに制約された所有権を持つというような形での整理もできるのではないかと思っておりまして、それをおよそ否定することになるのかどうかというのが、なるとすると非常に複雑ではないかと。それから、冒頭でこれまでの実務上の扱いとの連続性ということを言われましたけれども、それがどれとの連続性かという問題はありますけれども、従来の実務は所有権を使うしかなかった、言わば所有権を担保目的のために仮託するしかなかったという前提の下で形成されていますので、それを立法で正面から担保権であるとして、より明確性を図っていくということが必ずしも否定されるものではなく、むしろ望ましい在り方ではないのかと思います。   それから、途中で言われました、そのような形を採りますと、2のように定義されるような場合について擬制するということになり、問題であるということですけれども、擬制が問題であれば準用するという形で、とにかく同じ規律を及ぼしていくという形の書き方はできると思いますし、それから、擬制することの問題についても、担保目的で譲渡をするというときには譲渡担保権になるという話ですと、2以下でやっていることと同じではないのかと思われまして、これが果たして、およそそういうことは可能ではないという評価になるのかということは、問題であるように思われます。   結論から言いますと、より明確な規律内容になる方がいいのではないかと思っておりまして、その際に、ここに提案されているような、取引についてのその効力を書くというやり方がどうかということで、それでも結構だと思うのですけれども、取り分け設定者が持つ権利というのが非常に、所有権からマイナスしたこういう権利であってということで、第2はそれに付いているというような法律構成ということが必然になるのであれば、そうでない方がいいのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。技術的に言えば、第2の1の最初のところで、第1の2による契約によって、権利の移転を受けた人は譲渡担保権という権利を取得し、その権利を処分した人、譲渡人ですね、の方は所有権を有するでもいいのですけれども、こういう権利を有するというのを、まずそこに物権的な内容を書いた方が、後の説明が全体としてしやすくなって、見通しがよくなるのではないかということですね。取り分け譲渡担保権者の方の権利を書くというよりは、設定者の方に所有権なら所有権があるというふうなことを明確にした方が、後の見通しがよくなるのではないかということであり、多分1、2はそのままで、第2の1にそういうふうに、ばんと書いてしまった方がきれいだよねという感じですね。 ○沖野委員 ありがとうございます。正にそういうつもりです。 ○道垣内部会長 分かりました。それはまた後で、事務局には伺うことにいたしまして、横山さん、続けてお願いいたします。 ○横山委員 京都大学の横山です。私も沖野委員と少し同じようなことを考えておりました。譲渡担保権者や所有権留保者が有する権利を理論的にどう説明するかは解釈に委ねるとしましても、規定の明確性という観点からは、まず第一に、譲渡担保契約によって完全な所有権が譲渡担保権者に移転するものではないということ、その意味で、譲渡担保権者が取得するのが担保権であるということは明示した方がよいのではないかと考えています。   私自身は、今、部会長がおっしゃったような案を考えてはいなかったのですけれども、そのような考えも、沖野委員がおっしゃった方法もあり得ると思います。ほかにも、「譲渡担保契約とは、財産権を移転することにより金銭債権を被担保債権とする担保権を設定する契約をいう」、などと表現することも一つの考え方かなと思います。譲渡担保や所有権留保の目的となる財の所有権、権利については所有権という言い方はしないかもしれませんけれども、いずれにせよ目的となる財産権が、債務者の資産、責任財産に属するということがはっきりすると、なおよいかなと思います。   現段階では第2の1は、「担保するため」という目的でそのことを表しているのかもしれないのですけれども、判例を知らなければ、所有権の財産権の移転は担保目的を達成するのに必要な限度でしか生じないという効果は分からないかと思いますので、担保権であることははっきりさせた方がよいのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○佐久間委員 私は今までの方と少し違う考え方を持っております。今までの御発言は、基本的には今回立法によって作られる制度において債権者が有することになる権利、担保を提供するというか、元々の所有者がその後どういう地位になるかという、その権利の中身、これをはっきりさせた方がいいということであろうと思います。ただ、私はこの譲渡担保という制度、所有権留保も一緒だと思うのですけれども、権利の性質などをなかなかはっきりさせられないし、させていないところにこそこの制度の意味があるのではないかと思っております。   例えばですけれども、第2以下では、債権者が有する権利については担保権としての処遇がなされているというふうに、先ほど沖野さんでしたか、御発言になったと思いますが、確かにそういうところは多いことは多いと思うのですけれども、例えば目的物の処分の権利などは、所有権をどちらかが有しているということとはおよそ相入れないような規律が、このとおりになるかどうか分かりませんけれども、現在のところは用意されていると思います。また、所有権としなければいけないというわけではないとは思いますけれども、破産の場合に別除権なのかという話のところも、やはり債権者の方が所有権を持っているかのような扱いをしてはどうかというような案が確か出ていたと思います。   そういったところで、基本的には債権者が有する権利というのは担保物権に極めて近いものということは間違いないと思うのですけれども、債権者が得る権利は担保権である、設定者が有している権利は、その担保権付きの所有権であると明確にする方向でどんどん進めるというのは、必ずしもここで実現しようとしている制度の効果を定めるに当たって、適切でないというと少し言いすぎかもしれませんが、得策でない場合が出てくるのではないかと。だから、最初に事務当局から御説明があったように、こういう定め方をしておいて、権利の性質等については解釈に委ねる、そういう進め方の方が私はいいのではないかと思っています。   それから、これは後の話なのでしょうけれども、私は第2の、例えば1のところで、譲渡担保権者はとか、譲渡担保権とかと書いてあるのは、こういう用語を使うということが今後決まっているというわけでは必ずしもないと受け取っておりまして、今は分かりやすさの観点から譲渡担保権者、譲渡担保権と使っているだけのことで、もし今の第1のような方向を採るということになったら、先ほど道垣内部会長がおっしゃったことがそうだったかもしれませんけれども、この場合に債権者が有する権利は、とかというふうな形で作っていくだけのことなのかなと思っておりました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。この辺りで事務局から何かございましたら、お願いいたします。 ○笹井幹事 十分に咀嚼できたわけではないのですけれども、結局、設定者に残る権利が所有権であるのか、そうではなく、所有権から譲渡担保権が引かれたものであるのかという法律構成をどこまで明確にしていくかということであろうかと思います。ここはもう条文の書き方の問題ですので、よく検討していきたいと思いますが、担保権者にどういう権利があって、担保権設定者の方にどういう権利が残るのかといった、前提になる理論的なところまで条文上表現することはなかなか難しいのではないかという感じがしておりまして、担保権者と担保権設定者に具体的にどういう権利があるのかというのをできるだけ明確に書いていくというつもりでこの資料は作っております。   その上で設定者にどういう権利が残るのかというのは解釈に委ねられるのかなと思っていたのですけれども、ただ、そこをもっと明確にするべきであるという御指摘も頂きましたので、今後更に事務当局内でもよく検討させていただければと思います。 ○道垣内部会長 出だしはやはり一番難しいところかとも思いますけれども、もう少し技術的な面も含めて検討をしなければならないということが明らかになったかと思いますので、もう少し事務当局にも詰めていただくようにしたいと思います。ありがとうございました。   ほかに、この第1の1、2のところで、何かございますでしょうか。 ○阿部幹事 第1の2の譲渡担保契約の定義のところなのですけれども、そもそも譲渡担保契約というものの定義から、不動産の所有権を移転するものは除くという書き方にすることを提案されていますけれども、こうされると、不動産譲渡担保について説明することがすごく難しくなるような気がしまして、形の問題ですけれども、一旦譲渡担保契約というものは財産権を移転するとした上で、本章の規定は不動産の譲渡担保には差し当たり適用はしないなど、定義上不動産譲渡を排除する以外の形で、何とかならないかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。不動産を除外するということにつきましては、形式的にどういうふうに定めるかという問題と、実質論として不動産を除外していいのかという問題がございますが、現在までのところ、諮問との関係もありまして、動産及び債権を対象とするものとしてやってきたわけですけれども、この点はそうだとしても、書き方の問題はあるというのは、おっしゃるとおりですね。   さらに、不動産以外のことに関しましても、船舶とか登録自動車とかいろいろなものについて、適用される規定を慎重に考えていくという形で議論がされております。しかし、一つの考え方としては、この譲渡担保の規律においては、所有権の移転なら所有権の移転について、占有改定で対抗要件が具備できるというところが結構重要なファクターになると考えますと、登録自動車は対象にならないという考え方もあり得るのですよね。しかし、ここでは登録自動車に関しては、例えば対抗要件のところは別に考えるというふうなことで、抜本的にそれを抜くという形では作られていないわけです。その辺りの点につきまして、何か御意見はございませんでしょうか。 ○佐久間委員 ありがとうございます。まず、不動産の所有権を除くのところなのですけれども、本当は不動産の所有権についても規定は設けることが望ましいと私は思っていて、それはパブリック・コメントに付される、その前のときにも申し上げたつもりです。ただ、今回は時間の制約もあるし、そのような方向では全く議論はされてきていなかったので、致し方がないということなのだろうと思って自分の中では整理をしていました。ただ、もし可能性がなおあるのだということであれば、もちろん強く求めるということではありませんけれども、不動産の譲渡担保についても整理をする方がいいのかなとは思います。ただ、そうだとして、では不動産の登記制度において譲渡担保に即した登記制度まで作るのかというと、不動産の場合はそこまでする必要が多分出てくるのかなという気がするので、それもなかなか難しいのかなというふうな感じがいたしました。   それと同じようなことが船舶とか登録自動車、登録飛行機というのですか、航空機とかいうのですか、なども同じような問題があるのではないかと思っていて、これを本当に適用対象とするのだろうかと。部会長がおっしゃった占有改定でもって対抗要件が備わるようなタイプの動産、あるいは債権のような人の認識を通じて対抗要件が備わっているというものについて、基本にこの制度というのは適用していくのかなと思っておりましたので、駄目だ、反対だということではないのですけれども、(3)に書かれているところについては、そうなのかなというふうな感じを持ちました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。登記制度というものを抜本的にやり直すというのが時間的にも能力的にも難しいところがあります。しかし、不動産を除くというのだったらば、自動車の登録制度についての改革案というのを示さないで、自動車も対抗要件以外は含めるよというのもおかしいのではないかという話も考えられるところですね。ほかに何か御意見はございませんでしょうか。自動車を対象から抜いたら世界的にはびっくりされると思うけれども。世界においては自動車という目的物は動産担保制度において重要な意味を持っているところですよね。びっくりされないようにするというのが大切なわけではないのですけれども。 ○阿部幹事 特に所有権留保などのことを考えると、自動車まで射程に入れることが必要かなとは思います。ただ、ここは譲渡担保の定義ということなので、所有権留保は別に定義するということなのかと思いますので、それは置いておきますけれども、ただ、登録自動車などを考えると、どこまで通常の動産と同じように扱って、どこから先を不動産譲渡担保と同じように扱うのかとか、それはそもそも不動産譲渡担保について立法しないではっきりさせるというのは難しいような気がしますので、そうすると、やや消極的かもしれませんけれども、登録自動車などについては、適用するともしないとも、どの範囲で適用するとも、それはもう決めずに、解釈に任せるというのも一つの手かなというような気はいたしております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○沖野委員 ありがとうございます。悩ましい問題ではあるのですけれども、部会長もおっしゃいましたように、かつ、阿部先生からもおっしゃったように、自動車などは所有権留保という形で日本では実質的には取引が行われているわけで、自動車抵当とかではなくてですね。それから、世界的にはというか、自動車などは当然対象になるということでやっている法制も多いということからすると、およそこれを適用除外としたときに、それで非常に重要な担保的な取引が落ちるということになるのですけれども、それでいいのかというのは問題があるように思います。特に、所有権留保を規定していくならば、自動車は別というのが、本当にそれでいいのかと思います。   解釈に委ねるということは非常に曖昧で、これで有効になるのかとか、権利がどうなるのか分からない状態で、取りあえず最高裁が出るまで待ってくださいというのでは、何のために立法するのかという気がいたしまして、これは少なくとも適用対象にはするという方が望ましいと思っております。   難しいのは登記で、不動産の場合は正に登記を通じて譲渡担保なども行われているわけなのですけれども、現在ここに挙げられたような個別の動産について、果たして個別登記が担保取引のための公示として使われているのかということを考えたときに、全部そちらで行くべきだというのが、これもまた適切なのかということも疑問に思いまして、ですので、正に登記登録制度の制度設計によるということなのですが、やはり担保に関する取引は全部そこに、個別の登記で全部見られるようにしようという態度決定をするというのが、そこに一つあると思うのですけれども、現状を考えたときに、それで本当に取引が動くのかというのがよく分からないところです。ですので、この時点で、本当は決めていかなければいけないのですけれども、少なくとも適用対象とはするというのは4ページに書かれているとおりですけれども、登記登録が可能であるかというのは、一般登記、動産登記とか債権譲渡登記とか、今あるようなものを拡充していったときとか、担保登記ができたらとか、そういう話だと思いますけれども、そちらにも基本的には載せるという形にして、しかし、個別登記の方があればそちらが優先するとか、そういうような形にしていって、実際には個別登記は使われなければ、一般登記で対処するというぐらいの方がよろしいのではないかと思っております。   ただ、今は自動車を念頭に置いていましたので、船舶や飛行機はまた状況が違うかもしれず、ただ、それですと、個別登記が使われるようでしたら、そちらによるということができるのであれば、そちらで十分ではないかと思うところです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。沖野さんがおっしゃったところからすると、対抗要件のところでもう少し検討を深めないと駄目なのだろうということだろうと思います。しかし、それはなかなか難しいのではないのという予想を示されたのが阿部さんかなという気がいたします。今後、慎重に検討していく必要があると思います。   ほかに何かございますでしょうか。 ○藤澤幹事 細かい点で恐縮なのですけれども、第1の2のところで、譲渡担保契約を定義される際に、動産の所有権、債権その他の財産権というような形で定義されているのですけれども、例えば時効などのところで、債権やその他の財産権という書き方をすると、その他の財産権の中には、質権、地上権、永小作権といった権利も含まれたりするのですが、質権を移転する場合を除外するのであれば、そういうことを書いた方がいいかもしれないし、不動産上の物権である地上権や永小作権についても除くのだったら、そういうことも書いていかないといけないのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。日本語の問題として、「動産の所有権」という言葉の次に「債権」と入っており、そこには「動産の」という言葉は係っていない。しかし、「その他の財産権」というときに、そこには不動産に関する財産権を含むとすると、話は妙になる。そこに問題が生じるということで、少しこれは慎重に文言を整理したいと思います。どうもありがとうございました。   ほかにございませんでしょうか。   それでは、1についても2についても、技術的な問題はともかく、2の適用範囲の問題につきましても、まだ検討しなければいけない問題点があると思いますけれども、差し当たって、ほかの、先ほどのところも、例えば登録制度、登記制度というのをどういうふうに仕組むかということと関係しているということもございます。また、後順位を認めるという際に、所有権の所在というものを不明確にしたままでうまく書き切れるのか、ルールとして適切な内容になり得るのかという問題も後ろの方でまた出てくるわけでございます。そこで、更にそのときに元に戻って検討させていただくということにいたしまして、第2の方に移らせていただければと思います。   それでは、「第2 譲渡担保契約に関する総則的な規律」のうち、「1 譲渡担保権の内容」から「4 譲渡担保権者の処分権限の制限」についてまで議論を行いたいと思います。事務当局におきまして部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 第2は、譲渡担保契約に関する総則的な規律として、譲渡担保契約について共通する規律を総則的な規律として定めるものです。これまでは動産債権、その他の財産権として、それぞれ区別して議論してきておりましたが、これらに共通するものをくくり出して規定しようとするものです。   1は、譲渡担保権の内容として、譲渡担保権者が優先弁済権を有する旨の規律を提案するものです。譲渡担保契約によって譲渡担保権者が取得する権利の中心は、債務不履行が生じた場合に、その目的である財産権から優先弁済を受けることができるという点にあると考えられますことから、これを明文で規定することを提案するものです。   2は、譲渡担保権の被担保債権の範囲として、担保権者が優先弁済を受けることができる被担保債権の範囲に関する規律を提案するものであり、その内容は中間試案と同様です。   利息等について最後の二年分との制限を設けるか否かという論点につきまして、部会資料29−1の9ページにおいて意見の概要を掲載しております。後順位担保権者の利益を保護すべきという観点から、このような制限を設けるべきとの見解が比較的多く出されていたところですが、他方で、担保目的物の余力はそこまで大きくないということで、このような制限は不要との意見も出されていたところです。   本文の提案といたしましては、後順位担保権の設定は先順位担保権者との調整の上で行われるとの実務運用が想定されることや、あるいは動産質権についてこのような限定がされていないということなどから、最後の二年分との制限を設けない形での提案をさせていただいております。   3は、本提案は譲渡担保権設定者の処分権限について、設定者は譲渡担保権者の承諾を得なければ、担保権の負担付きでその目的である財産権の真正譲渡をすることができない旨の規律を提案するものです。   部会資料29−1の14ページ以下を参照いただきますと、設定者の真正譲渡を認める【案1.5.1】に賛成する意見と、真正譲渡を認めないとする【案1.5.2】に賛成する意見がいずれも相当数出されて、分かれていたところでございます。   今回の規律の提案といたしましては、真正譲渡が行われた場合、実行手続が困難なものとなる可能性があることなどから、真正譲渡は認めないとする規律を提案するものでございます。これに対しては、従前からの議論でもありましたとおり、一切の譲渡を認めないとすることは過剰であるといった観点からの異論も十分あり得るところでありまして、本文でも【P】を付しているところです。   なお、以上の点は部会資料28の12ページの5、動産譲渡担保権設定者による所在場所の変更とも関係するところではありまして、後に御説明いたしますとおり、今回の提案では所在場所の変更を認めないということとしております。目的物について後順位の譲渡担保権を設定することについては、現行法上も動産についてこれを認める判例があることなどを踏まえ、これを認めるということとしております。   4は、譲渡担保権者の処分権限の制限として、譲渡担保権者がその目的物を第三者に譲渡することを認めないとの規律の提案であり、中間試案と同様です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。どうもありがとうございます。第2の3の譲渡担保権設定者の処分権限の制限という点ですが、ここの点はパブコメに寄せられた御意見も大きく二つに分かれるところで、判断が難しいところなのかと思いますが、私自身は、制限物権型の担保権と大きく違うところで、今回の御提案のとおり、やはり設定者の処分権限が基本的には制限されるべきではないかと思っているところです。   設定者による処分というのは、基本的には動産・債権については、もちろん理論的に担保権的な構成等をとることによって追及効が肯定されることになるのかもしれませんが、事実上は追及がかなり困難になるのは明らかですので、基本的には担保権侵害に当たると思われます。実務上は契約書の中で当然、処分が制限されているのでしょうから、今回の御提案のとおり、譲渡担保権者の承諾がなければ譲渡できないという案に基本的に賛成できるのではないかと思っているところではあります。  ただ、後順位担保権の設定は、私も当初はそれも認めるべきではないという提案しましたが、やはり後順位担保権の設定が、動産であっても債権であっても、実務上、必要性が高いということですから、これは承諾なしでも可能ということでいいのかとは思いました。1点だけ気になる点は、ここでは担保権の設定ということについては、譲渡担保権の設定ということが想定されているので、こういう書きぶりになっているのかと思いますが、他方、動産に関していうと、質権の設定は可能ということになりまして、質権の場合ですと、同じ担保権ではありますけれども、占有自体が移転してしまいますので、追及が困難となり、譲渡担保権者の担保権侵害になる可能性が高いのではないかとは思います。  ですから、質権の設定自体は禁止されていないとも読めますが、やはり禁止の方向で検討する必要があるのではないかとは思いました。譲渡担保権者の管理の困難性が生じるとか、あるいは追及が難しくなるという理由から禁止をしてもいいのかなと考えましたが、その点をどのように考えておられるのか、事務局に確認できればと思います。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。最後の質権の設定の話ですが、それは譲渡担保権の設定者による質権の設定ですか。 ○片山委員 そうです。 ○道垣内部会長 分かりました。事務局から後でお答えいただきますが、内容はそれほど広い範囲ではございませんので、何人かの方にまずお話を伺いたいと思います。 ○佐久間委員 まず、この提案に書かれていないことで、置いた方がいいのではないかということがありますので、それを申し上げたいのですけれども、これは総則規定だということなのですが、本日頂いた資料のどこを見ましても対抗要件については何も書かれていないのですね。恐らくそれは、これは譲渡の契約をするのだということから、対抗要件はその権利の譲渡の対抗要件に従うということが前提とされていて、そのことについては書かなくても分かるということなのではないかと推測しました。間違っているかもしれませんけれども。   ただ、先ほどの話と重なるのですけれども、ここで譲渡される権利というか、債権者が取得する権利が何なのかということについては、理解の争いがあり得ると思われるので、単に担保権であるという立場に仮に立つとすると、その場合に譲渡の対抗要件に従うというのは、これは自明のことではないはずだと思います。その場合には、理屈の上で今まで譲渡の対抗要件でというわけではなかったけれども、創設的な規定としてですかね、譲渡の対抗要件に従うというようなものを置いた方がいいのではないかと思います。仮に、そうではない、これは権利の譲渡の一種なのだということにしたとしても、確認的に規定を置くことが特段妨げられることではないと思いますので、どちらとも解釈できるということを前提に、権利の移転についての対抗要件は譲渡の対抗要件に従うということを総則規定として置いた方がいいのではないかと思います。   それから、その対抗要件の規定がないということを前提になのですけれども、5ページにある3の担保権設定者の処分権限の制限なのですけれども、これは対抗要件のことを抜きにして考えますと、この種の契約をすると、その契約当事者として、設定者は、原案に従うならば、目的物の財産権を譲渡する権利を失うということになって、契約の効果としてこれが出てくるということになると思うのです。そうだとすると、次の4と併せて読むと、なのですけれども、この種の契約がされると、もう誰も権利を譲渡することができなくなるという、今まで多分、民法というか私法の世界になかったような現象を生じさせることになってしまうのではないかという気がします。   他方、対抗要件の規定を置いて、対抗要件を備えたらその後は、物権である譲渡担保権者の権利を妨げることになるような処分に当たるようなものですかね、これはできませんというのはある種、理屈は通るのかなというふうな気がしました。ただ、それでも、所有権はどこかにあるはずなのに、その所有権の処分が、譲渡が誰にもできないという状態が生じるということには変わりがないので、それでいいのかなと。それを避けるためには、この3のところは、やはり譲渡自体はなお可能としておく必要があるのではないかという気がしています。ここは理屈の話ですけれども。   それともう一つ、3については、動産の譲渡担保については、これまでの部会での議論を拝聴していて、まあそうなのかなというのは何となく分かるのですけれども、動産以外の、例えば債権とか、あるいは知的財産でもいいと思うのですけれども、それらのものについてもこの処分というか、権利の移転を制約しなければいけないのかどうかが私にはよく分からないと思いました。特に債権についてですと、債権質が設定されたとしても、実際にどのぐらいするかは分かりませんが、質権設定者は恐らくその債権譲渡をできませんなんていう話にはなっていなかったと思うのです。それが債権譲渡担保になった途端にできなくなるというのは、いかがなものかと思いました。   結局、そうだとすると、この3は総則規定として置く必要があるのかと、この規律の内容どおりだとするにしても、動産譲渡担保の規定として置けばいいのではないのかと思うと同時に、先ほど片山委員がおっしゃった、質権についてどうするのだという話を併せて考えますと、処分権限の制限というよりは、占有移転の制限を動産譲渡担保について掛ければよろしいのではないかと感じました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。もう少し伺ってから事務局の御説明を伺いたいと思います。 ○阿部幹事 ありがとうございます。私も3の譲渡担保権設定者の処分権限の制限についてでありまして、私は基本的に御提案には賛成なのですが、どのくらいの射程でこれを論ずるかという問題は確かにあるような気がしていて、動産を念頭に置いて、差し当たり賛成ということです。   ただ、よく分からなかったのが、今回の資料の5ページの22行目以下の、また以下の説明ですね、少しこの辺が、どういうことを念頭に置いた説明なのかというのが今一つよく分からなくて、Cを検索キーにして検索して出てこないということが、どういう場面でどういうふうに問題になるのか、この説明の趣旨が判然としないところが私にはありまして、ほかの方がもしお分かりなのであれば、単に私が理解力不足なのかもしれませんが、どういう趣旨なのか御説明いただけると有り難いと思いました。   それから、パブリック・コメントとの関係で、二重譲渡との比較をしているものがありますけれども、二重譲渡との比較でいうと、やはり私は、譲渡することができないというのに反して譲渡したとしても、その効力は完全な無効ではなくて、第一譲渡が対抗要件を先に備えた場合の第二譲渡と同じような効力になるということなのかなと思いました。全く譲渡が無効なのだとすると、そもそも譲渡担保権者と譲受人が対抗関係に立たないというところまで行きそうですが、そういう意味ではない、対抗関係には立つということなのかなと思って、そういう理解でいいかということを少し確認したいと思いました。   それから、3点目は、破産手続の場面で、破産管財人が担保の負担付きで目的物を譲渡することは認めた方がいいという話がありまして、これに関しては、もし認めるとしても破産の話だということで、もう少し射程を限定して議論することかなと思いましたが、仮に現在、担保の負担付きで管財人が目的物を譲渡するということがされているとして、それは、一つには、管財人は一般破産債権者のために破産財団に属する財産を換価できればよいので、担保権によって把握されている部分まで換価しなくてもよいから、そうやっているというところもあるかもしれません。他方で、破産法上、別除権の目的に関しては民事執行法の強制執行のやり方で換価しなければいけないということになっていて、それをやらずに担保権を消して任意売却しようとすると担保権消滅許可制度によらないといけないということになっていますので、それを避けて、担保権の負担付きのままで目的物を譲渡しているということなのではないかと思いました。   その上でなのですけれども、仮に管財人にそういうことをする実益があるとしても、担保の負担付きだといってその目的物を譲渡することで、その担保権が害されるということであれば、やはり破産管財人といえども、それはやってはいけないことなのではないかという疑問が一つと、他方で、そもそもこの譲渡担保権に関しては、私的実行が実行の本来の形なのだとすると、破産管財人がそれを換価するときに強制執行の形でしなければいけないことが原則になっているところが、少し固いような気もいたしまして、例えば、破産法185条に、裁判所が別除権者に私的実行の催告をして、催告期間を徒過したら私的実行権限を失うという規定がありますけれども、それに引き続いて、そういう場合には管財人が任意売却できるなどというような形で、この譲渡担保の目的に関しては、破産管財人の任意売却権限をもう少し広げるというようなやり方によっても問題解決するのかなと。担保権の負担を消した目的物の譲渡をもう少し簡単に認めるというような方法もあって、必ずしも担保の負担付きのままで目的物を譲渡するということを破産管財人に認めることでなければこの問題が解決しないというわけではないのかなと思いました。ただ、これは破産プロパーの問題として議論されるべきことかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   続いて沖野さんからもお話を伺いたいと思います。 ○沖野委員 ありがとうございます。沖野です。私も3について申し上げたいと思います。それで、この目的である財産権を譲渡することができないというのは、設定者が持っている権利がどういうものであれ、持っている権利をおよそ担保に出す以外の形では処分できないという制約を掛けることになるのが、やはり過大ではないかという問題意識が最初にあるのだと思います。それを十分にクリアできるだけの譲渡担保権者の利益というのが、およそ譲渡はできないとすることでないと図れないのかというのが一つの疑問には思っております。   特に、実行のときの清算金の提供先の問題であるということであれば、承諾のない譲渡に対しては、清算金自体は元々の設定者に対して支払えば足りるという清算金支払先固定の利益のようなものを考えるということができますし、あるいは、承諾によって譲渡自体をコントロールするということではなくて、少なくとも通知を得て、その通知によって自分が承諾できるようなものであればそのまま置いておけばいいし、そうでなければ次のアクションをとれるようにという程度にしておくということも考えられます。具体的には結局、譲渡することができないというふうにしたとして、したときの効果は何かということでして、およそ譲渡は無効であるのか、譲渡担保権者に対抗できないのか、対抗できないということの意味は何なのかという話があるように思われます。そして、およそ無効としなければならないのかというのは、いささか行きすぎではなかろうかと、別の方策もあるのではないかということです。   そのことは、譲渡をする必要がどのくらいあるのかというのも分からないところがあるのですけれども、仮に譲渡担保権の制約の付いた何らかの権利というのを移転する、事業譲渡の一環とか、あるいは倒産の際にほかの財産とともにかもしれませんけれども、そういった中で移転する合理性があるというときに、それを譲渡担保権者が承諾の形でコントロールするということになるのですけれども、承諾にかけるというのは、常にその承諾が適切になされないとき、合理的な理由があるのに承諾がされないときというのをどうするかという問題が残ります。   そのときに、更にその承諾を取るための何らかの方策というのは、非常に大掛かりになりますし、そこまでの必要があるのかということで、結局、物が動くと管理ができないということであれば、それは譲渡しなくても物は動き得るので、その部分をこの後の規律で動産についてはかけた上で、かつ実行の際の問題というのはいずれにせよありますので、そこの部分を手当てすれば十分ではなかろうかと思います。そして、そのことは更に、債権ですとか、知的財産ですとか、あるいはその他の財産権ですとか、そういったものについても、およそその処分はできないと、担保にする以外はできないのだとするのが、やはり過剰ではないだろうかと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。たくさんの話を一度に伺ってしまいすぎたかもしれません。私の不手際かもしれませんけれども、不手際の後始末を事務局に丸投げするのは大変恐縮なのでございますけれども、今までのお話を整理した上で、事務局からのお考えをお教えいただければと思いますが。 ○笹井幹事 まず、片山先生の方から、質権についてはどうかというような御質問がございました。第2の3の提案は、中間試案の前の段階で、そもそも真正譲渡をする必要性としてどういう場面があるのかということ自体に疑問が呈されたということもありまして、ニーズの面と、あと、もちろん担保権者の利益もそうなのですけれども、真正譲渡のニーズの面とのバランスの中で、こういう提案にしたところです。そのニーズとの関係でいいますと、後順位で担保権を設定すると、それは譲渡担保権であることももちろんあるのですけれども、質権の設定により担保余力を資金の調達に当たって活用するというニーズがあるのだとすれば、それは譲渡担保に限らず質権についても同じように考えられますので、ここでは質権も一応設定は可能だという理解でおりました。今回の部会資料28では扱っておりませんけれども、それを前提にして、今までも譲渡担保権と質権の競合した場合にどうするかというような論点もございまして、そこでも前提とされていたように、譲渡担保権が設定されたけれども、後から質権が設定されるということはあり得るのではないかと思っていたところです。   ただ、その場合に、片山委員からも御指摘がありましたように、占有が移転するという意味では同じではないかということは、そこは御指摘のとおりです。そのため、これはまたこの後に御議論いただくことになりますけれども、第3の5では、中間試案においては提案していなかったところですけれども、担保権設定自体については承諾は要らないけれども、所在場所の変更については承諾を得てくださいというような規定によって、その辺はカバーしていくという考えでおりました。   それから、効果について、そもそも全体として無効にするのか、対抗不能のような形にするのかということの御質問がございました。ここは、意識的に検討していたわけではないのですけれども、今までの部会における議論においては、これは私の理解が不十分だったかもしれませんけれども、対抗ができるかできないかという問題というよりは、そもそも譲渡行為の効力として無効にするという文脈で議論されていたのかなと理解をしておりましたので、そういう理解に基づいて、ここでの提案も無効になるという提案をしております。ただ、ここは事務当局として絶対無効にしたいというわけではなくて、この規定が趣旨とするところの、担保権者の利益をどういうふうに図っていくかということとの関係で、対抗ができないということで十分であるということであれば、そういう方向もあり得るのかなと思います。そこは御議論いただければと思います。   一方で、例えば場所を移動することであれば、別途そういう規定を設ければよいし、あるいは清算金の提供先が不明になるという問題についてであれば、承諾を得ていなかった場合には元々の譲渡担保権設定者に対して手続を実行すれば足りることにするなど、いろいろな形で担保権者の利益を図ることができるのであって、全部無効にしてしまうというのはやはり過大なのではないかという御指摘もございました。そこは私どもも意識はしておりまして、ほかにも問題があれば御指摘いただければと思いますけれども、真正譲渡を可能にした場合における個別の不都合に一つ一つ対応していくという方向もあるのではないかと思っています。   ただ、ここは全体的に総合考慮ということになるのかもしれませんけれども、法制度を一つ作るに当たって、余り複雑になってしまうというのもどうかという考慮もありまして、有効とした上で、その効力を相対的に考えていくとか、あるいはいろいろな手当てをしていくよりも、ある意味割り切った態度として無効にしてしまうということも一つの選択肢かなと思いまして、この資料においては、今はその簡明さを優先するという形でこういう規定にしているということです。   ただ、そこについて、佐久間委員からも御指摘がありましたように、誰も譲渡ができない、担保権者も債務不履行がなければ実行という形による譲渡以外はできないし、担保権設定者も譲渡できないというのは、元々余り予定されていたような場面でもないし、私法上も余りない制度になりますので、それはやはり理論的にも過大なのではないかという御指摘がありましたら、また改めて考えていきたいと思っております。   それから、少し順番が前後したかもしれませんけれども、阿部幹事から5ページの22行目以下の説明について趣旨を説明せよという御指摘がございました。ここで挙げられている例は、Aが設定者でBさんのために担保権を設定していたと、そのこと自体は譲渡登記において公示されていると、ところが、それをCさんに担保権の負担付きで真正譲渡をした場合に、実体的な法律関係としては、言わばCさんが自分の持ち物についてBさんのために担保権を設定しているという状態になって、例えばですけれども、Cさんが新たに資金調達をするためには、後順位の担保権を設定するとかいうことができるのですが、その場合に、担保権者に新たになろうとする人は、Cさんの財産について先順位の担保権が設定されているかどうかを確認することになります。しかし、Cさんで検索しても分からないので、そういった譲渡登記における機能が害されてしまうのではないかという趣旨でございました。   以上で大体お答えしたかと思いますけれども、もし不十分な点がありましたら御指摘いただければと思います。 ○道垣内部会長 事務局からは、例えば3に関していえば、譲渡担保権設定者による処分というものを認めて、しかしそれは清算金の支払は元の設定者でいいのだというふうにしてみたり、あるいはこれはできないけれども対抗関係に立つというふうにいっていろいろな手はずをするということにしたりすると、制度全体として少し複雑になるのではないかと、重くなるのではないかというのが今の御説明だったと思うのですが、それに対して、いや、やはりそれはそれでいいのではないのという意見が沖野さんや何人かから既に出のだと思うのです。今の笹井さんからの御返答を踏まえまして、何か更に追加的に発言されることはございませんでしょうか。 ○阿部幹事 先ほどの5ページの22行目以下の説明に関しては、今の御説明で非常によく分かりました。ありがとうございました。   それで、譲渡できないのにしてしまった場合の効果なのですけれども、普通の真正譲渡人であってもできることが、譲渡担保権を設定したことでできなくなるというのは、やはり平仄が合わないのかなという気がしまして、幾ら簡明性を重視すべきだからといって、譲渡人であっても、第二譲渡は一応、二重譲渡関係を作るという限りではできるということなので、それすらできなくなるというのは少し説明の仕方が難しいのではないかというような気がいたしました。   他方で、佐久間委員がおっしゃるように、およそ誰も譲渡ができなくなるかというと、例えば、譲渡担保権者は被担保債権と一緒であれば譲渡担保権を譲渡できたりとかするわけですから、およそ処分不可能な財産ができるとまでいう必要はないかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。阿部さんの前半のところですが、これは第2の3について、譲渡担保権者というものが、例えば譲渡の対抗要件を具備しているとなったときには、それは真正譲渡ではできないのではないですか、譲渡人はもう一回譲渡することは。 ○阿部幹事 はい、そうだと思います。それと同じ話だということなのですけれども。 ○道垣内部会長 真正譲渡のときもできることができなくなるのはおかしいとおっしゃいましたが、それは対抗要件を具備していない場合を考えるからですか。 ○阿部幹事 そうです。およそ無効だといって、対抗関係に立たないという話になりそうだったので、それはやはり行きすぎではないかと、そういう趣旨です。 ○道垣内部会長 なるほど。3は恐らくそうでしょうね、譲渡担保権者が一定の対抗要件を具備しているというのが多分前提になって書かれているのですよね。 ○笹井幹事 先行する担保権者が対抗要件を具備していた場合に、その後の真正譲渡が無効になるという趣旨です。 ○道垣内部会長 そうすると、やはり後順位のものが設定できるけれども、譲渡はできないというふうなことをどう考えるのかという問題なのでしょうかね、よく分かりませんが。   もう一つ、佐久間さんがおっしゃった話が非常に重要な話で、誰も譲渡できないということになっていいのかという話なのですが、阿部さんは今、それはそれほどおかしくないとおっしゃったのでしたっけ。 ○阿部幹事 例えば、譲渡担保権者は被担保債権と一緒であれば譲渡担保権を譲渡したりすることはできる、随伴性の形で譲渡することができたりするので、およそ譲渡ができなくなるというわけではないのではないかと言った次第です。 ○道垣内部会長 佐久間さん、何かございますか。 ○佐久間委員 それは飽くまで被担保債権と一緒での譲渡ということであって、理屈だけの話ですけれども、所有権そのものとしての行使ということではないですよね。だから、そこがいいのかと。絶対駄目だとまで私も言おうとは思いませんけれども、そういう極めて特殊な状態をどうしても作り出さなければいけないのか、という疑問を私は持っています。だから、設定者か譲渡担保権者かどちらかは、特段の制約なくといったら変な言い方だけれども、所有権の譲渡が可能であると。対抗要件を誰かが具備しているから制約されますというのは、それはあり得る話だとは当然思いますけれども。そういうふうにすることが必要なのではないかと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。信託受託者はそうなりませんか。 ○佐久間委員 信託受託者が信託目的に反するから譲渡できないというやつですか。でも、あれは権限違反であって、譲渡はできるのではないですか。だから、そこまでは信託も制限していないのではないかと。 ○道垣内部会長 分かりました。すみません。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。今の、誰も処分できない、厳密に言えば多分、設定者と担保権者の両方の合意がなければ譲渡できないという状態についてです。これが実質的にどのような問題なのかについて少し検討してみたのですけれども、二つありまして、一つは、設定者が担保権付きの目的物を譲渡することによって、目的物の担保余力を活用することができないということがあるかと思います。しかし、これは後順位担保権を設定できるということであれば、必ずしも、その譲渡ができないとしたことによって達成できなくなるということではないかなと思います。   もう一つは、その目的物の利用価値を十分に活用できなくなるのではないかという懸念があるのかなと思いました。つまり、譲渡担保権の場合、設定者が目的物を利用することになるわけですが、設定者が利用する意味がなくなるといいますか、例えば事業に使わなくなるという場合があり得ると思います。そのときにそれを処分して、よりその目的物を利用してくれる人、その利用に価値を見いだす人に処分することが社会全体にとってはいいことなのかなと思います。それがこの譲渡担保権設定をすることによって制限されてしまうのではないかというところが、実質的には一番問題となってくるのかなと思いました。   これと、処分を制限することによって担保権者が担保権を設定しやすくなるという利益のどちらを重視するのかという政策判断が必要になってくるのかなということです。私自身はどちらがいいという話ではないのですけれども、実質的にはそういった価値判断が必要になってくるのかなというところです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに何かございますでしょうか。幾つかあるのですけれども、起こってはいけないという状況として皆が思っているところは、例えば動産に関して所在場所が移ってはいけないよねと、面倒くさいことになるよねという話とかですね。そういうのは結構一致しているのだけれども、それをどういう形で実現していくのかというときに、3、4として今日出ている案、若干、道具として大きすぎるというふうな感覚を皆さんがお持ちなのかなという気がします。それを細かくやっていくということになったときに、面倒だと考えるかどうかという問題もあろうかと思います。   途中で話が出ました、債権と動産では話が大分違うのではないのと、動産については所在場所が移っていったり、ほかの人だったら面倒くさいとかいう話があったりするのだけれども、別に債権だったらいいのではないの、みたいな話が途中でどなたからか出たような気がするのですが、皆さんそれはいかがなのでしょうか。理論的な話になりますとこれは一緒だろうと、誰に帰属しているものをどういうふうにして処分するのか、処分できないのかという問題で、一緒だろうということになるのですが、実質的に考えたときにはどうなのですかね。誰がそういう発言をしたのかというのを記憶できていないので、問い詰めることができなくて残念ですけれども。 ○佐久間委員 僕が言いましたけれども、言ったからと問い詰められる筋合いはないのではないかとは思いました。というか、僕は今でもそう思っていますけれども、ほかの方が、いや、それはお前の勘違いだと、あるいは感覚がおかしいのだとおっしゃってくださったら、それでいいと思います。 ○道垣内部会長 私も問い詰めるつもりはないのですが、より詳しく御意見を伺いたいという、それだけの話でございます。言葉が足りませんで、申し訳ございませんでした。 ○笹井幹事 先ほどの御説明のところで申し上げればよかったのかもしれませんが、ここは先ほど少し御紹介しましたように、第3の5というところで所在場所の変更は別途対応することも考えておりまして、私個人としては、所在場所の変更ということ自体について対応するだけであれば、その譲渡を無効にするというところまでは必要ないのかなと思っていました。ここでこういう提案をしている理由としては、やはり実行の段階とかの問題が大きいのかなと思っています。   この問題は、例えば実行通知を誰かにしないといけないとか、あるいは清算金の提供をしないといけないとか、債権の場合ですと、直接取立てをするので、その余剰分を誰に返すかとかいう問題になってき増すし、債権以外の無体的な権利の場合には同じような清算金の問題が出てくるかと思いますので、そういったところでの担保権者の利益をどういうふうに図っていくかということかなと思いました。その点では余り動産と違いがないのではないかということで、今この総則的なところに置いているということでございます。 ○道垣内部会長 しかし、確かにそれはもう少し検討してみる必要があろうかと思います。3、4のところにつきましては対立点というのは明らかになったと思いますので、もう一度事務局の方に持ち帰っていただいて検討していただければと思います。   第2の2のところについて、パブコメで若干意見が分かれておりますので、皆さんのお考えをお伺いしておきたいと思います。つまり、抵当権につきましては、被担保債権について利息その他の損害金利息が最後の二年というふうなことになっているわけですが、これは不要ではないかということになっているのが今日の案なのですけれども、やはりそれは後順位の譲渡担保権の設定みたいなものを考えたときに、先順位者が幾ら取れるのかということがより明確になっておく必要があるので、必要なのではないかという意見もパブコメであったところです。全員がそうだというわけではないですけれども。それについて、委員、幹事の皆さんがどのようにお考えになるのかを少し確認しておきたいのですけれども、いかがでしょうか。 ○村上委員 具体的な論点の前に、中間試案後の議論の最初ということですので、繰り返しになりますが、私どもの考え方を改めて申し上げておきたいと思います。   譲渡担保を始めとした担保法制の見直しによりまして、より幅広い財産への担保権設定や取引自体の活性化も見込まれております。そうなりますと、労働債権には一般先取特権が認められておりますが、担保権には劣後することから、倒産時における労働債権の回収は現状よりも一層困難になってしまうことも懸念しております。そのため、新たな担保権だけでなく、ほかの担保権との関係も含めて、労働債権を始め一般債権者保護とのバランスをとることが不可欠と考えており、一般先取特権の在り方と併せて議論をしていく必要があると考えております。特に労働債権は、労働者の生活に欠かせないものでありますし、労働債権を担保権に優先させる方法について具体的に同時に決着させていただきたいと考えております。   その上で、今御指摘のありました2についてですけれども、優先弁済を受けることができる被担保債権の範囲については、一般債権者保護の観点からも、少なくとも原則においては抵当権のように利息等において最後の二年分のような限定も必要ではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。後順位の話だけではなくて、一般債権者との関係でもということなのですが、ほかの方も御意見はございませんでしょうか。   それでは、パブコメ及び村上さんからの御意見も踏まえまして、更に検討をしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。   1から4のところまで、ほかに何かございますでしょうか。何か決まったという感じはいたしませんけれども、差し当たってよろしゅうございますでしょうか。   それでは、先を急ぐようで恐縮でございますけれども、第2のうち5、6について議論を行いたいと思います。物上代位、根譲渡担保権でございますけれども、事務局におかれまして部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 それでは、第2の5から説明させていただきます。5は、物上代位に関する規律の提案です。(1)は譲渡担保権者の物上代位権の行使を認めるというものでございます。物上代位の対象としては、売買代金、賃料、目的物が滅失又は損傷した場合の損害保険金請求権というものを想定しております。もっとも、第三者の不法行為により目的物が滅失した場合につきましては、担保権者は物上代位によることなく担保権自体の侵害による損害賠償請求をすることも可能と考えられますので、設定者の損害賠償請求権に対して物上代位を行使する必要性は実際上は乏しいとも考えられます。   (2)の点につきまして、物上代位の規定による債権の行使と、その債権を目的とする担保権との優劣の基準につきましては、中間試案におきまして、民法第304条第1項ただし書の差押えがされた時点を基準とする【案1.7.1】と、物上代位を生じさせた目的物である財産権に設定された担保権が対抗要件を具備した時点を基準とする【案1.7.2】の両案を併記していたところです。   部会資料29−1の23ページ以下に掲載しておりますけれども、担保権者の予測可能性を確保する観点から、【案1.7.2】に賛成する意見がございましたが、譲渡担保権の対抗要件として占有改定が認められており、動産債権譲渡登記の公示力も高いものとはいえないといった理由から、【案1.7.1】を採用すべきとの意見が多く出されていたところです。また、原則として【案1.7.1】としつつ、譲渡担保権について登記がされた場合には、その登記の時点を基準とする規律に賛成する意見というのも出されております。   本提案におきましては、譲渡担保権については抵当権のように公示制度が完備された権利に基づく物上代位の場合とは異なるなどということで、民法第304条第1項ただし書の差押えがされた時点を基準とするとの規律を提案するものでございます。   次に「6 根譲渡担保権」について御説明いたします。内容が細部にわたりますため、ポイントとなるところを中心に御説明いたします。まず、(1)について、極度額の定めを必要的なものとするか否かにつきましては、必要的なものとはしないという規律を提案しております。   部会資料29−1の28ページ以下におきまして、この点を掲載しておりますけれども、極度額の定めについては、後順位担保権者の利益の観点から極度額の定めを必要的なものとすべきとの意見があった一方で、余剰価値活用の場面は実際には余り想定されないことや、従来の実務において極度額の定めがされていたとは限らないといったことなどから、極度額の定めは要しないとの意見も出されていたところです。   次に、部会資料28の9ページに記載があります根譲渡担保権の処分等の規律について説明させていただきます。この問題は、動産譲渡担保権に関する13ページの「7 動産譲渡担保権の順位の変更」、14ページの「8 転動産譲渡担保」、債権譲渡担保権に関する19ページの「2 債権譲渡担保権の順位の変更」、さらに「3 転債権譲渡担保」とも共通する問題でございます。本提案では、譲渡担保権の処分等については順位の変更と転譲渡担保について認めることとしております。   パブリック・コメントにおきましては、部会資料29−1の19ページに記載してございますけれども、その(2)についてと題する部分におきまして、譲渡担保権の譲渡・放棄、順位の譲渡・放棄を含めて、実務的なニーズがあるということで、これらの全部を可能とすることに賛成する意見も多く出されておりましたが、一方でその公示に限界があるということから、転担保など特にニーズが高いものに限定すべきなどといった意見も出されていたところです。   また、部会資料28の13ページから14ページにかけて記載させていただいておりますが、電子記録債権を目的とする質権については、順位の変更と転担保のみが認められておりますところ、その検討過程におきましては、転質及び質権の順位の変更については実務上のニーズがあるが、質権又はその順位の譲渡又は放棄については、これらを活用する実務上のニーズが乏しく、システム構築のコストも考慮した結果、先ほど述べたような規律となったということとされております。   そこで、部会資料28の9ページに戻っていただきまして、本提案では、適切な公示をすることができるかどうかといった観点を検討しまして、実務的にニーズが特に高いと考えられる転担保と順位の変更について、これを認めるということとするものであります。これに対しては、やはり譲渡担保権の譲渡・放棄、順位の譲渡・放棄についても実務的なニーズがあるとして、これを認めるべきであるといった意見もあり得るところであり、改めて御議論いただければと存じます。   部会資料28の10ページの本文(3)についてという部分の記載につきましては、元本確定事由に関する規律を記載したものでありますが、実行等の規律に左右される部分も多いところではありますが、問題となり得るものとして、11ページの(5)に記載しておりますけれども、集合動産の一部が実行されて、固定化が生じない部分がある場合に、満足した部分を除く元本は確定しないとするか否かについての規律の在り方についても御意見を頂ければと存じます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○阪口幹事 阪口です。3点あります。まず、7ページの【案2.6.1】と【案2.6.2】の対立の部分です。この部分について、【案2.6.2】の引受け主義を採った場合にどうなるのだろうということです。つまり、配当要求をしないまま放置されたら、競落人は被担保債権が確定しない状態のままその物を取得するということになりますけれども、そんな状態があり得るのでしょうか。被担保債権が確定していれば、まだそれはリスクの判断はできるかもしれないけれども、確定していないとリスクの大小が全く分からない状態ということになってしまう、そんな手続で執行手続が可能なのだろうかというのが根本的な疑問です。これがまず1点目です。   2点目は、7ページの極度額の定めに関する記載についての質問です。7ページの35行目のところに、極度額の定めは債権的効力が生じるにすぎないと書かれており、これはおよそ登記もできないという趣旨を含むようにも読めるのですけれども、そこまでしなければいけないのでしょうか。システム構築という問題からしたら、そうなのかも分かりませんけれども、例えば賃借権が登記されたときに、譲渡できる旨の特約は登記しようと思ったらできるわけで、そういう必要的ではないけれども、すればできるという仕組みはあり得ないのかということを確認したい、これが2点目です。   3点目は、井上先生が今日御出席であれば、井上先生がお話しすべきことではないかと思いますけれども、担保権若しくはその順位の譲渡・放棄の実務的ニーズの話です。日弁連で出た話を少しご紹介しますと、窮境にある債務者Aとこれに対する商取引債権者Bがいます、Bに商取引を続けてもらわないとAは非常に困るのですが、Bは、取引継続のためには発生済みのものを含む自己の債権の保全措置をとることが必要と考えている、しかし既に既存担保権者C、Dがいて、Cは、Bと商売してもらわないとAは余計まずい状態になるからBの保全措置を了解するとおっしゃるけれども、Dは賛成しないというときに、順位の変更しかできなければまずいのではないかというようなことです。   以上、3点です。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。個別的な論点でございますので、この段階で何か事務局からございましたら、お願いいたします。 ○工藤関係官 1点目の点につきましては、【案2.6.2】につきまして、根譲渡担保権者が配当要求をしないで放置したときに、元本を確定しないまま引受けになってしまうのはおかしいのではないかという御指摘だったかと思います。この【案2.6.2】の趣旨としましては、後順位担保権が設定されたときには先順位担保権者の同意なく競売ができることになりますので、その場合に常に先順位担保権者の元本が確定させられてしまうというのは、先順位の担保権者に少し酷ではないかと思いまして、こういった配当要求をした場合に限って確定するという御提案をしているところです。今御指摘いただいた、確定しないまま引受けというのはそもそもおかしいのではないかという点は、十分に検討していたところではありませんでしたので、御指摘を踏まえて再度検討したいと思います。 ○森下関係官 2番目と3番目の点につきまして、お答えを差し上げます。   まず、2番目の極度額について債権的効力が生じるにすぎないと言い切る必要はないのではないかという点ですが、例えば任意に登記に記録できるとした上で、その効力については解釈に委ねることも一つあり得るのかと思いました。   三つ目の、順位変更だけで対応できない事案があることは承知しているところです。問題は、適切にそれを公示することができるかにあると考えておりまして、今の提案の内容としては、やれることをできるだけニーズがあるものに絞って、できない部分はあるにせよ、これまで以上にできることが増えることに意味があると考えております。 ○道垣内部会長 一応の御返答は頂きましたけれども、阪口さんの方から何かございますでしょうか。 ○阪口幹事 3点目の、順位変更だけとなったときに、隠れた担保権者問題というのはあるかと思うのです。そこは無視しても有効になるということでしょうか。隠れた担保権者がいたときに、その人の同意がなくても、その順位変更は有効だという前提で考えられているのかどうかということも、念のために確認したいのですけれども。 ○森下関係官 隠れた担保権者がいるような場合には、動産の場合ですと、登記優先ルールと組み合わせると、おおむね登記されている人を確認すれば足りると思いますけれども、債権の場合に隠れた担保権者がいる場合にどうなるのかについては、やはり絶対的に効力を生じさせてしまうものですので、なかなか有効というふうなことにはならないのではないか、ではどうすればいいのかというところなのですけれども、ある程度閉じた世界でこのような順位変更が行われるところでございますので、隠れた担保権者についてもある程度調査がしっかりと行われているという前提で使われることを想定しておりました。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますか。本当かなという感じもするけれども。 ○阪口幹事 よろしくはないのですけれども、御意見は分かりました。 ○道垣内部会長 では、また後でありましたら、もう一度御発言いただければと思いますが、少しほかの方のお話も伺いたいと思います。 ○阿部幹事 一つは議論の順序の話でありまして、例えば、5(2)の物上代位と他の担保権の順位の話というのは、当該譲渡担保権の順位をどういうふうに決定するかという話が、例えば先決問題になってくるような気がします。先ほど佐久間委員は、譲渡担保ということなので、譲渡の対抗要件に従うという話で、これから先、譲渡担保権の優先順位は扱われないのではないかというふうな予測をされていましたけれども、私は今後、譲渡担保の対抗要件あるいは優先順位の話が扱われるものだと思っていましたので、だとすると、そういった譲渡担保権本体の対抗要件あるいは順位の話が済んだ後でないと、それに基づく物上代位の順位の話というのはしにくくないかというようなことを、今更ながら思いました。これは根譲渡担保権についても同じでありまして、通常の譲渡担保権についてどうするかという話が決まらないと、根譲渡担保権についてどうするかという話を決め難いところがいろいろあるような気がしまして、現時点で具体的な議論をするのが難しいところが多々あるのではないかと思いました。   もう一つは、そうは言いながら、少し内容に入りたいのですけれども、5(2)の物上代位の順位についてなのですけれども、譲渡担保の公示性が弱いということで差押えを対抗要件とするという説明は、分かりやすいのは分かりやすいのですけれども、しかし、公示性が弱いという話を突き詰めていくと、では何で譲渡担保本体はそれで対抗要件を具備させてよいのかという話に必然的に行くと思うのです。そちらを触らずに、つまり本体の譲渡担保だけ、例えば占有改定による対抗を認めながら、しかし物上代位については公示性が乏しいから差押えを対抗要件としますと、そういう話というのはやはり整合しないと思うのです。   だから、制度全体として整合性があるような仕組みにしないといけなくて、これはこの部会でも水津幹事が度々論じられていたことだと思うのですけれども、動産先取特権に関しては、そもそも本体の権利自体、対抗要件がない代わりに、その対抗力を制限するというような状態になっているわけで、それとの関係で平仄を考えることができたのに対して、譲渡担保に関しては、本体の権利の対抗を、例えば占有改定で認めて、しかし物上代位はそれでは対抗できませんというのでは、やはり平仄が少し合わなくなるのではないかというような問題があって、パブリック・コメントの【案1.7.1】の賛成意見などを見ても、やはり通常の譲渡担保の対抗との整合性の話というのは余りカバーされていないといいますか、手当てされておらず、どちらかというと、通常の譲渡担保権の本体的な効力についても占有改定による対抗を認めるべきでないというようなニュアンスが感じられるような気もいたします。ですので、物上代位の順位について単独で論ずるのは難しくて、やはり本体の担保権の対抗の話との整合性をきちんと取る必要があるのではないかと思いました。   最後にもう一つなのですが、これは根譲渡担保のところで。 ○道垣内部会長 少し待ってください。根譲渡担保、まず、物上代位の話とそれは大幅に関係しますか、それとも別の話。 ○阿部幹事 関係ないです。 ○道垣内部会長 では、その点につきましては、物上代位の話が終わった後に、もう一回、阿部さんにお願いしますので。私も申し上げようと思いながら忘れていたのですが、阿部さんの御発言の前提として、対抗要件の問題は譲渡とイコールなのだから、譲渡の話で尽きているという立場が、全体的に、要綱案のとりまとめに向けた検討においては、とられているのか、それとも2とか3とかに出てくるのかという問題から明らかにしましょう。それをどういうふうに事務局はお考えの上でお作りになっていらっしゃいますか。 ○笹井幹事 そこは少し説明が欠けておりまして、申し訳ありません。一応こちらで考えておりましたのは、この譲渡という形式を採るということで、譲渡担保の対抗要件については、それぞれの財産の性質に応じて真正譲渡をした場合の対抗要件と一致するということを考えておりました。 ○道垣内部会長 それで、佐久間さん、阿部さんの御発言には必ずしもこれから私が申し上げるような趣旨は含まれていなかったかもしれませんけれども、仮に今日のやっている第1の1とか2の、そういうふうな譲渡の契約の効力を決めますというふうな作りにしてもなお、そういうふうな担保目的でやるときには、こういった対抗要件でないと駄目ですよというふうな可能性というものについて、部会でなお議論すべきであると皆さんがお考えか、それとも、これまでも対抗要件については、占有改定とか動産債権譲渡登記によって、それについて、更には担保の目的の何か登記を付けたときには、特別な何か登記優先ルールが適用されることはあっても、例えば動産に関していえば、占有改定というのが一応は対抗要件になるのだと、その点は特に確認をする議論をする必要はないとお考えでしょうか。その辺りのことについて、皆さんのお考えをまず確認しておきたいのですが。 ○佐久間委員 私は、確認する必要はもうないのかなと思っておりました。ただ、確認する必要はないけれども、規定を設ける方が望ましいのではないかということと、最終的に規定を設けないにしても、現段階ではそれを前提にはっきりしておいた方がいいのではないかという趣旨で先ほどは申し上げました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。しかし、そうすると実はこれは所有権の移転の対抗要件になりますか。そうしたときに、今その所有権がどちらにあるのかということは、これは解釈論の問題で、譲渡担保権が設定されているという解釈論もあり得べし、そういうことも可能であるという前提で第1のところはお話をしたわけですけれども、解釈論上として、これは譲渡担保権という物権が設定されるということになるのだ、つまり、第1の2の譲渡担保契約によって生じる効果というのは譲渡担保権の設定という効果であるという解釈論を採るというときにも、それは譲渡の対抗要件で当然に、ここにいう譲渡担保権の対抗要件が具備されていると考えていいのでしょうか。私に何か、いけないと言ってくださいとか、いいと言ってくださいという気持ちがあって、言っているわけではなくて、部会の皆さんのお立場としての確認をしておきたいのですけれども。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。どうもありがとうございます。それがどこまで既定路線として扱われるのかということが十分把握できていないところはあるのですけれども。 ○道垣内部会長 路線は委員、幹事が作るものであって、片山さんがお作りになると考えて結構です。既定路線が片山さんと別個にあるわけではありませんから。 ○片山委員 そうですか、ありがとうございます。そうしますと、やはり中間試案が出た後の国際シンポ等をやっておりましても、国際的に見ても、非占有担保として担保権が制度設計されている中で、占有改定で対抗要件を満たしてしまうという取扱いには、やはり批判も強いところでありますし、もし登記一元化ができるということであるならば、その登記一元化ということも考えていく必要があるのではないかとは思います。その意味で、従前、占有改定で足りるという点は、譲渡担保も譲渡だから178条の適用があるという大前提で議論をしていたわけですが、担保設定という視点から見るならば、178条に拘束されるいわれはないわけです。実務的に占有改定がどうしても必要だということであれば、それはやむを得ないことかもしれませんが、もし国際的な標準であるとか、あるいは公示性ということを考えるのであれば、改めてそこから問い直すということは十分議論の余地はあるように思っているところではございます。 ○道垣内部会長 分かりました。 ○横山委員 先ほど、譲渡という形式で担保権を設定するというやり方、規定の仕方がいいのではないかと申し上げたわけですけれども、その場合であっても、譲渡による対抗要件で済むとすることはあり得るのではないかと思います。譲渡担保の設定を、あくまで目的である財産権を譲渡する形式でやるわけですから、その譲渡の対抗でよいのだという立場は十分あり得るのではないかと。もちろん、片山先生がおっしゃったように、それ以上に占有改定をどうするかとか、更に定めるということはあり得ると思いますけれども、担保として設定したから必ず別個規定を定めなければならないということにはならないと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○阿部幹事 私も結論としては、譲渡の対抗要件の影響を受けざるを得ないのかなとは思いますが、しかし、譲渡の契約でありながら完全な譲渡の効力を認めないというような側面もありますので、にもかかわらず譲渡の対抗要件でもって対抗要件を備えるというのであれば、そのことを確認することは最低限必要なのかなと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。私は自分の意見を申し述べるつもりはないと申しておきましたが、実は、仮に結論が動産に関して占有改定による対抗要件の具備で足りるというふうにしても、それは譲渡だからという論理だと、ここで設定されるのは担保目的の権利かもしれないけれども、しかし占有改定で足りると考えるべきであるという論理と、やはり2通りあると思うのです。それは横山さんがおっしゃったことだろうと思うのですけれども、そうすると、1の2のところに譲渡だと書いてあるから、当然に占有改定でオーケーとなるというと、少し違うのではないかという気がいたしまして、片山さんはなお公示制度という、登記登録一本化という話も否定されないという話でしたが、横山さん、阿部さんの方からは恐らく、結論として占有改定でいいけれども、それは所有権が譲渡されているからそうなるのだというふうな必然的なつながりでそういうふうに考えるわけではないという御意見ではないかと思いました。   そうなりますと、仮に占有改定である、ないしは債権譲渡通知であると、それが対抗要件であるとしても、それを当事者の形式論として譲渡という話をとっているので、それを対抗要件として仮に移転して、ある権利が担保目的に制約されていても、あるいは担保権そのものであるとしても、それで対抗要件が具備されると考えるべきであるという何らかの説明というのは必要なのではないかと、今のは司会としての意見ではなくて、全くもって個人的な意見でございますけれども、という気がしまして、少しそこは今日の段階で確認をしておいた方がいいかなと思いました。   私がしゃべりすぎましたので、何かその点についての御意見がありましたら、お願いいたします。今後もその問題につきましては、どういうふうな論理でそういうふうに考えるのかということを、なお気を付けながらやっていかなければならないというふうなことでお考えいただければと思います。   その上で、5の2に、阿部さんに関して言えば、仮にそうであったとしても、そもそも本体的な担保権について、担保権といいますか譲渡担保について、公示力が弱いので対抗要件を具備していることになっているのに、このときに担保権の対抗要件の公示力が弱いというふうな話を出していっても何か変なのではないかという話が残っているわけですけれども、この辺り、後半の根譲渡担保について結構複雑な問題がございますので、物上代位のことに関しましてもう少し皆さんの御意見を伺って、まずはそこを済ませておきたいと思うのですが、いかがでしょうか。 ○水津幹事 物上代位について、形式的なところですが、意見を申し上げます。5(2)の提案によると、譲渡担保権に基づく物上代位と担保権との優劣は、差押えと担保権の設定についての対抗要件の具備との前後によることとされています。部会資料では、その説明として、抵当権に基づく物上代位とは異なることが指摘されています。この説明は、賛成するかどうかはともかく、抵当権に基づく物上代位に関する平成10年判決が示したルールを前提として、これと比較するものであると考えられます。しかし、抵当権に基づく物上代位については、5(1)の提案に相当する規定しか設けられておらず、5(2)の提案のように、担保権との優劣を定める明文の規定は、設けられていません。担保権との優劣について、抵当権に基づく物上代位に関しても、明文の規定を設けるのかどうか、設けるとするのであれば、先取特権等に基づく物上代位に関しては、どうするのか、反対に、抵当権や先取特権等に基づく物上代位に関しては、そのままであるとするならば、譲渡担保権に基づく物上代位に関してのみ、明文の規定を設けるのはなぜかが、前にも申し上げましたけれども、気になりました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。それは根本的問題点としてあろうかと思います。それについてお考えを伺う前に、阿部さん、お願いします。 ○阿部幹事 ありがとうございます。先ほどとはまた別の観点なのですけれども、仮に差押えというのを基準にして順位を決めるとしたときに、これは先取特権に基づく物上代位と同じようにという話なのだと思うのですけれども、先取特権の場合にはそもそも本体的な権利については対抗要件がないわけですよね。しかし、譲渡担保権に関しては本体的な権利についても対抗要件があるわけでして、ですので、差押えと他の債権担保権の対抗要件具備との先後によるといったときに、差押えがあれば動産譲渡担保権本体の対抗要件は要らないということなのか、動産譲渡担保権について対抗要件を備えた上で、更に差押えをして、その差押えとその債権、担保権の対抗要件の前後によるのか、どちらなのかという問題がなお残るように思いましたので、そこも整理する必要があるかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   物上代位に関連して、ほかに何かございますでしょうか。 ○青木(則)幹事 物上代位について差押えまで要求するということと、競合する債権譲渡の公示の在り方の対比の観点から、ある意味で利益衡量のように考えますと、動産担保については、登記優先ルールまで考えられているのに対して、債権譲渡の方は通知承諾が登記と対等なままで、登記優先ルールのようなものはないのが現状のご提案であり、必ずしも動産上の担保権の対抗要件が公示性が弱いというのはいえないのではないかというふうに思います。そうしますと、公示性が弱いから差押えを競合の規範とすべきであるということにはつながらないのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 ほかにございますでしょうか。説明の論理が不十分だというふうな御指摘もございますけれども、結論としてどれとどれの先後関係で決めるべきであるというルールの問題について、青木さん、阿部さんは何か、自分は本当はこう考えているというところはございますでしょうか。 ○青木(則)幹事 今の発想でいうと、動産譲渡担保の対抗要件と競合する債権譲渡等の対抗要件の基準で行くべきだろうと考えております。 ○道垣内部会長 阿部さん、いかがでしょうか。 ○阿部幹事 私も、説明が不十分ということもありますけれども、それを超えて、やはり説明し得ないのではないかというような気がいたしまして、だとすると、やはり差押えを基準にするというのは余りよろしくないのではないかというところまでを含んでいるつもりでした。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。そういう意見があるということと、水津さんがおっしゃった、抵当権、民法304条について細かな規定は置かないで、ここだけ置くことが可能かというふうな問題点につきまして、事務局からお考えがあればお聞かせいただければと思います。 ○笹井幹事 水津幹事の御指摘につきましては、御指摘を踏まえて更に検討させていただきます。   次に、内容の問題として、阿部幹事、青木幹事からもございましたし、水津幹事からは以前から、差押えではなくて追及力の有無に着目して抵当権と同じルールを設けるべきではないかという御指摘を頂いていたかと思います。ここは、説明として不十分ではないかというような御指摘も頂きまして、その辺は私どもの検討も十分でなかったところもあるかもしれませんので、またここで深めていただければと思っておりますが、本体そのものについて占有改定のような公示性の低いもので対抗要件を認めておきながら、物上代位のところで公示力が薄い、低いということを問題にするのはどうかというところは、確かに私どももそういった指摘はあり得るかなとは思っていたところです。   一応の説明としては、本体における公示性の低さというのは、低いとはいえ本体そのものについての権利についての対抗要件であるので、その本体について、新たに権利関係へ入ろうとする者については、当該財産権については、若干公示性の低いところでもしっかり調査することを求めるということはあり得るのに対して、物上代位の場合には、その本体の権利が及ぶ目的物そのものから、更に別の財産権に権利が及んでいくということなので、そこは区別するということもあり得るのではないかとは思っていたところです。ただ、今私が申し上げたようなことでは十分な説明になっていないということかもしれませんので、その点についてはまた御議論いただければと思います。   一方、ここは中間試案の前の段階でも、いろいろ理論的な説明、あるいは理論的な立場によってどう考えるかという問題もあると同時に、ルールが決まっているということが大事であって、実務的にどちらがやりやすいか、あるいはどちらが望ましいかというような視点も、理論的な視点とともに重要であるというふうな指摘もあったのかなと思っておりまして、その辺の見地も含めて、また御意見があれば承りたいと思っております。   少し長くなりましたが、以上です。 ○道垣内部会長 その件は以前からいろいろな意見があるところですが、問題の所在は明らかになっていると思いますので、更に事務局も含めて御検討いただければと思いますし、また、いろいろな御意見を事務局にもお寄せいただければと思います。更にきちんと検討をしていきたいと思います。   時間の関係で、根譲渡担保の方に移らせていただいてよろしゅうございますでしょうか。日比野さんから手が挙がっているというのは認識していたのですが、阿部さんの後半を私が打ち切ってしまっておりますので、まず阿部さんの後半の方からお願いいたします。 ○阿部幹事 ありがとうございます。部会資料28の8ページの民法398条の8に相当するところなのですが、特に債務者といいますか設定者が自然人で、事業を営んでいる個人事業者であるというような場合に、それが死亡したときの事業承継との関係で、元本を当然に確定してしまうことに問題はないかということは、中間試案の取りまとめの段階でも指摘していたのですが、今般パブリック・コメントをお取りまとめいただいて、その中でも、余りニーズはないというような意見と、やはりニーズがあるのではないかというような意見もあって、そうすると、特に個人事業者の相続に伴う事業承継問題というのを無視してしまってよいのだろうかという点を一つ、危惧として持ちました。取り分けその意見の中には、合意の登記を行うことが難しいという点について、合意の登記を厳密に要求する必要はないのではないかというところまで踏み込んでいるような意見もあったように思いますので、それも一考に値するかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。その点については、また後で御検討いただくことにしまして、日比野さん、お待たせいたしました。お願いいたします。 ○日比野委員 ありがとうございます。私の方からは、根譲渡担保権の処分のところです。御説明にも少しありましたが、全銀協の立場としては、どのようなニーズがあるかというところをそれなりに詳細にパブリック・コメントで意見させていただきました。部会資料29−1に記載されておりますので、細かにここで御紹介するということは差し控えさせていただきますけれども、これらの譲渡、分割譲渡というのは、同順位で複数債権者が担保権を設定するようなシンジケートローンの仕組み、あるいは優先劣後構造を付けてファイナンスするというような、比較的大型のファイナンスが中心になるかと思いますけれども、このようなタイプの融資において債権譲渡で権利を他のレンダーに移転させるといった場面で、実務的なニーズはあるものだと理解をしております。   私どもとしては、処分等について全般的にニーズはあるだろうとお話しいたしましたけれども、会員などから話を聞いている限りにおきましては、むしろ転譲渡担保よりも譲渡の部分のほうがニーズは高いものだと認識をしております。本当にニーズがあるかどうかよく分からないので、というような御説明もございましたが、ここはニーズがあるものと私どもとしては理解しておりますので、是非この辺りについて御再考と御検討を頂きたいと思っております。   もう1点が、根譲渡担保権に絞った方がよろしいですよね、なので、一旦ここで切らせていただきます。 ○道垣内部会長 もう一つは何でしょうか。 ○日比野委員 11ページの集合動産の一部実行のところに関する記載なのですけれども。(5)のところです。18行目です。 ○道垣内部会長 それは別に、一部実行の可否というか、しかし、根譲渡担保権との関係ではここでしか論じるところはございませんので、もしよろしければ今、御発言いただければと思います。 ○日比野委員 分かりました。すみません、では、続けまして発言させていただきます。   確定させないとすることも考えられるという一方で、しかしということで反対意見と併せて書かれておりますけれども、金融機関の立場とすると、固定化が生じない部分が区別できるときには、生じさせないというような規律を導入していただければ有り難いと思っております。これは債務者が事業を継続していればという前提ですけれども、引き続き固定化が生じない部分があるということによって、担保権者と設定者との対話の機会が維持されるというような現実的な効果というのもあろうかと思いますし、また、動産担保というのは設定者の業種ですとか商流とか目的物によって、どのように実行すれば回収の極大化が図れるのかという点で、不動産担保と比べても、かなりバリエーションが大きいものと理解しております。ですので、個別具体的な事案でそのようなニーズが生じ得るとも思っておりまして、そうだとすると、一律否定するという必要性はないのであろうと考えておる次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに、個別的な問題点につきまして、何か御意見はございますでしょうか。 ○村上委員 6の(1)と(2)について申し上げます。資料におきましては根譲渡担保権の被担保債権の範囲の限定は必要ないとの整理がなされていますけれども、根譲渡担保権者が過大な担保を取る懸念も否定できないと思います。根抵当権において包括根抵当が禁止された理由は、後順位担保権者だけでなく一般債権者の利益を保護するためでもあるとされていることから、根譲渡担保権の被担保債権の範囲についても一定の限度を掛ける必要があるのではないかと考えます。   また、(2)の極度額についてですが、パブリック・コメントでも複数の団体から、設定者やその承継人、後順位等の予測可能性を高めるためには極度額の定めは必要との意見も出されております。加えて一般債権者保護の観点からも、改めて極度額を定めることが必要ではないかと考えます。特に、労働者が財産の維持形成に直接寄与していることや、労働債権は労働者の生活に欠かせないため要保護性が高いことから、労働債権を確保できるようにすることが重要だと考えております。冒頭にも申し上げましたけれども、私どもとしては、労働債権の引当財産を減少させるという方向性に働かないようにしていくことが必要だと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。幾つか個別的な問題点が指摘されましたけれども、事務局の方で何か御説明があれば、お願いいたします。 ○笹井幹事 今、御指摘を幾つか頂きましたので、また検討したいと思います。一部譲渡か全部譲渡のニーズというのは、確かにいろいろ考えれば、こういうケースは順位の変更によってはカバーできないという事案というのは、もちろん理論的にはあり得るとは思うのですけれども、実際の公示をどういうふうにしていくのかとか、あるいは他の担保権、現存している担保権でどれだけ利用実績があるかといったところも含めて、本当にどれだけ現実の社会においてその制度が設けられたときに利用されるかということを検討していく必要があるのかなと思いますので、またその辺につきましてはいろいろと情報を教えていただければと思っております。   差し当たりは以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○阿部幹事 ありがとうございます。今、労働債権の保護のために極度額の定めを必要とすべきでないかという議論があったのですけれども、私自身は極度額の定めというのが労働債権の保護になるのかというのは、少し疑わしいように思いました。極度額がどのように機能するかというと、特に後順位の譲渡担保権が設定される段階において、どれぐらい担保余剰があるのかというのを見て、担保余剰が極度額によって確保されるのであれば融資をするというような形で、言わば設定後に新たに取引に入る債権者の役に立つものであって、労働債権は別に極度額を定めた後で取引が始まるわけでもありません。また、極度額は定めさえ置けばよく、それを幾らにしなければならないというようなものでもありませんので、大きな額にしてしまえば、結局のところ一般債権者の保護には使えないわけですから、極度額の定めを必要とすることによって、一般債権、労働債権を保護できるかというと、余りそうはならないのではないかという感想を持ちました。 ○道垣内部会長 分かりました。ほかに御意見等はございますでしょうか。   極度額の問題もそうですし、元本の定め方についてもそうなのですけれども、登記制度というものと必然的に結び付いていないというのが結構重要なポイントになっていて、398条の2以下のところでも登記が効力要件みたいになっているふうな規律もあるわけですけれども、そういうのは適用しにくいというのと、398条の2の被担保債権の範囲については、これは実は根抵当権の設定契約で決めるべき話であって、登記ができるかどうかというのは論理的には次の段階なのですけれども、現実の社会としては、やはり登記所が受け付けてくれるかどうかということで、398条の2の要件というのが満たされているかどうかというのが明らかになって、それが登記の先例が積み重なることによって、こういった範囲の定め方が可能だよね、こういった範囲の定め方は認められないよねということになってくるわけですが、登記制度と結び付きませんと、これは本当に紛争が起こって裁判例というのが出てこないと、その定め方が法的に有効であったのかどうかが分からないということになりますので、登記制度と結び付いている場合と同じにできるかというと難しいところもあると思います。ただ、いろいろな観点から、ニーズもそうですし一般債権者の保護もそうですが、更に検討していかなければならないというのは確かだろうと思います。   ほかに何かございますでしょうか。   では、今日頂いたお話を含めまして、再度もう少し細かく検討していただければと思います。また、実務的なニーズとか、登記の問題とか、公示の問題とか、そういうふうな問題につきましてお考えとか情報とかがございましたら、是非とも事務当局等の方にお寄せいただければと思います。   それでは、大分時間が経過しているのですけれども、開始から2時間半がたちましたものですから、この辺りで15分程度休憩を置かせていただければと思います。それでは、午後4時15分に再開ということにさせていただければと思います。よろしくお願いいたします。           (休     憩) ○道垣内部会長 午後4時15分になりましたので、審議を再開したいと思います。   根譲渡担保につきましても、まだまだいろいろな御意見があろうかと思いますけれども、今後どこまでニーズがあるか、先ほども申しましたけれども、あと一般債権者の保護等、あるいは規定全体が重くなりすぎるというふうなバランス等も含めまして、検討していきたいと思いますので、よろしくいろいろ御教示を頂ければと思います。   部会の審議そのものといたしましては、申し訳ございませんけれども、少し先に進めさせていただければと思います。   第3の「1 動産譲渡担保権の及ぶ範囲」というところから「8 転動産譲渡担保」までの議論を行いたいと思います。事務当局におきまして部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 「第3 動産譲渡担保権に関する規律」について御説明いたします。   1は、動産譲渡担保権の及ぶ範囲に関する規律の提案でございます。譲渡担保契約の目的である動産に他の動産が付合した場合等につきましては、基本的に民法第243条以下の規定が直接適用されるということを前提に、特段の規定を設けないということとしております。他方で、動産譲渡担保契約による譲渡の後に、その目的である動産の常用に供するために他の動産を附属させた場合、譲渡担保権に基づく優先弁済権の効力がその動産に当然には及ばないということから、附属させられた動産についても優先弁済の対象となるとの規律を設けることを提案するものです。   2は、動産譲渡担保権者による果実の収取に関する規律の提案でございまして、中間試案から実質的な変更はございません。   3は、動産譲渡担保権設定者の使用収益権限に関する規律の提案でございまして、(1)は中間試案と同様です。(2)は、設定者の善管注意義務に関する規律を設けるということを提案するものでございます。   4は、動産譲渡担保権設定者の妨害の停止等の請求等に関する規律の提案です。現在の譲渡担保権に関する判例法理を踏襲するものでございまして、中間試案と基本的には同様でございます。   5は、動産譲渡担保権設定者による所在場所の変更を禁止する規律を設けるものでございまして、中間試案にはなかった項目となります。動産譲渡担保において所在場所が変更されることにより、譲渡担保権者にとって担保目的物の管理が困難になるとの指摘があったところでございまして、このような所在場所の変更という事実行為を直接規制する規律を設けるということを提案するものでございます。   (2)は、このような規制に違反した場合の効果といたしまして、民法第137条第2号に準じて、被担保債権の期限の利益を喪失することができる旨の規律を設けるものです。もっとも、目的となる動産には様々な種類、性質のものが考えられるところでして、一律に所在場所の変更を禁止することの是非については慎重な検討が必要であるということ、被担保債権の期限の利益喪失の効果は、必要に応じて譲渡担保契約において個別に定めるということも可能であることから、このような規律を定めることは不要との見解も考えられるところではございまして、皆様の御意見を頂ければと存じます。   6は、担保権の不可分性に関する民法第296条、物上保証人の求償権に関する第351条の準用の規定でございまして、中間試案と同様の内容でございます。   7は、動産譲渡担保権の順位の変更に関する規律の提案です。先ほど議論いただいたとおり、譲渡担保の処分等につきましては、順位の変更と転担保について認めるということを前提に、ここでは順位の変更に関する規律について御説明いたします。(1)は順位の変更の規律について、抵当権に関する規定に倣いまして、各動産譲渡担保権者の合意によって変更することができるということ、(2)はその変更の登記が効力要件であるという規律を提案するものでございます。   なお、動産債権以外の財産権を目的とする譲渡担保権においても順位の変更をすることができるという規律も理論的には考えられるところですが、登記を効力要件とする場合には、譲渡登記を利用することができる財産権でなければこれを満たすことができないと考えられますことから、本提案では動産を目的とする譲渡担保、債権を目的とする譲渡担保について、順位の変更に関する規律を設けることとしております。   8は、転動産譲渡担保についての規律の提案です。転動産譲渡担保の対抗要件について引渡しで足りるとすると、十分な公示がされず、適当ではないと考えられること、特に、原設定者の下にある動産を実行する局面を想定いたしますと、原設定者の動産譲渡登記には転譲渡担保の存在を公示する必要があると考えられますことから、(2)においては、転譲渡担保は原設定者の動産譲渡登記に登記しなければ第三者に対抗することができないということとしております。なお、これに伴いまして、転譲渡担保権の対抗要件を具備するためには、その前提として、原譲渡担保権についても登記をする必要が生ずるということになります。   動産債権以外の財産権についての転譲渡担保も理論的には考えられるところですが、先ほどの順位の変更における規律と同様に、譲渡登記制度を用いることができる動産債権に限るということとしております。   8の(3)から(5)までにつきましては、転譲渡担保が複数行われた場合の優劣関係、主債務者等に対する対抗要件については、抵当権に関する民法第376条第2項、第377条を参考に、これと同様の規律を設けようとするものでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、どの点からでも、どなたからでも結構でございますので、御意見等をお願いいたします。 ○横山委員 横山でございます。第3の3(2)は、今回新しく出てきたところですけれども、「善良な管理者の義務をもって占有する」ということの意味がよく分かりませんでした。善管注意義務といえば、通常、使用や保存などの行為に向けられるのだと思うのですけれども、占有とは何かという感じがしまして。これは何を意味しているのか、分かりにくいように思います。もし、善管注意義務の対象が、目的物の保存とか管理とか、そういうことであれば、それを書かれたらいいですし、使用収益であれば、そう書かれたらいいかと思います。なぜ、占有という書き方にされたのかを教えていただければと存じます。 ○道垣内部会長 これはすぐにお答えいただきましょう。お願いします。 ○笹井幹事 確かに使用収益権を設定者に帰属させていることとの関係で、使用収益と書くべきだったのかもしれません。差し当たりは善管注意義務というものを問うてみようと、そちらの方に注意が行ったものですから、使用収益にするかどうするかというところまで考えが十分に及んでおりませんでしたが、「占有」にしたのは、298条1項を参考にしたからです。内容的には、留置権者は2項の場合を除いて使用収益できるわけではありませんので、使用収益とするべきではないかという御指摘は確かにそうかなと思いましたので、それも踏まえて検討したいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○阪口幹事 12ページの5のところの特に(1)です。先ほどの真正譲渡できるかという論点の際も、少し道具が大きすぎるのではないかという議論があったと思いますけれども、ここでも同じような感覚を持つ実務家が多いのです。個別動産の場合、少し動かすこと、例えば同じ工場内で動かすとか、第1工場から第2工場に動かすとか、そんなのは実際上問題にならないのだろうけれども、形式的にはできないようになってしまう。また集合物の場合も、対抗要件の傘の中で動く限り、問題なのだろうかという疑問があり、少し規定の仕方が大きすぎるのかなという感想です。また、その違反の効果は(2)、期限の利益喪失だということであれば、それはもう当事者間の合意、特約で足りるような話を、大きななたを振るっているような感じがするという批判意見が強かったということです。   理論的なことでいうと、同じページの3(1)に使用収益できるという規定が別にあって、収益というのは一般に他人に貸すことも含むはずなので、形式的、観念的にいうと、そこと何か矛盾しているのではないのかという意見もありました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。恐らく、保管場所ということの解釈とかにもよるのでしょうけれども、例えば、これは条文として整理するときの問題ですから、最初から全てのことに気を付けながらそういうふうに書くというのも変なのですけれども、別段の定めがあり得るというのを書くだけでも大分違うのかもしれません。 ○片山委員 慶應大学の片山です。今と同じところですが、やはり個別動産ですから、譲渡されて他人のところに行ってしまうというのと、単に場所が移るというのは、かなり違ってくるかとは思いまして、個別動産は基本的には、集合動産と違いまして、場所で特定されるというわけではないですから、先ほど阪口幹事からも御指摘がありましたように、1階から2階にとか、あるいは第1工場から第2工場にと設置場所が変わっただけで直ちに担保権の効力が及ばなくなるとか、あるいはその管理が難しくなるとかというわけではないですので、部会長もおっしゃられたように、何らかの制限を加えた書きぶりにすべきかとは思います。基本的には担保目的物の管理という点からいうと、即時取得のリスクが非常に大きくなったり、あるいは実行を困難にするような設置場所に移されたり変更されたりというようなことが禁止されるということかと思いますので、もし書くとしたら、それを合理的な理由なく変更するというような書きぶりでしょうか、あるいは変更後直ちに通知をするとか、そういった何か制限を設けて書くべきかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。書き方としては、例えば、保管場所を変更することによって実行を困難にしてはならないと書くことも可能なのですが、そうすると、実行の困難性が生じたということを譲渡担保権者の側で主張立証していかなければならないということになりますと、かなり紛争といいますか、紛争解決に時間が掛かるという気がいたしまして、変更してはならないというところから出発して、しかしこれはいいでしょうというのを設定者側でいうというふうにしないと、多分うまく回らないのかなという気もします。その辺りも含めまして、これを文字どおり適用すると少し大げさになりすぎるというのは皆さんのおっしゃるとおりだと思いますので、そこをどういうふうに合理的な形の文言にするのかというのは、更にもう少し事務局も含めて考えていただくようにしたいと思います。   ほかにいかがでしょうか。 ○藤澤幹事 ありがとうございます。幹事の藤澤です。第3の1と5についてコメントをさせていただきます。   まず、1についてなのですが、これは非常に形式的なコメントで、恐縮なのですが、ここで従物という言葉が使われていて、従物ということは、恐らくこの目的物の所有権が設定者にあるということを前提にした規定ぶりになっているのかなと思います。そうすると、最初の方の沖野先生の御発言と関わってくるのですけれども、結局、設定者に所有権があって、譲渡担保権者は担保権を持っているということが前提でいろいろな規定が積み上がっているのだとすると、最初の方にそうやって書いてしまったら、その後で何度も規定を精査する必要がなくなって楽なのかな、みたいなことを思いました。   それから、5についてですが、阪口先生がおっしゃったように、動産をどのように使うかは多様なあり方が考えられるので、被担保債権の期限の利益を喪失させるという効果をもたらすだけであれば、当事者の合意に委ねておけば十分なのではないかというような感じもいたします。   他方で問題なのは、両当事者が合意した担保目的物の利用方法や処分の制限に違反して、第三者に対して動産の占有を移転したり、動産の所有権を移転したり何らかの処分や移転が行われた場合に、その第三者に対して譲渡担保権者が、抵当権の判例と同じように、妨害排除請求として動産を元の場所に戻すことを求めることができるのかという点です。第三者への効力については、当事者の契約ではどうしようもないことですので、立法で手当てすることも考えられます。   そこで、少し話が戻りますが、第2の3では処分権限を制約するというようなことが提案されていたわけですが、そうではなくて、一定の場合に第三者に対しても物権的な請求が可能であるという規定を置くことによって担保権侵害的なものに対する救済を用意してはどうかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。両方とも非常に重要な御指摘だろうと思います。第1の問題については、従物という言葉の定義が、民法87条だと物の所有者が附属させたもののことをいっているということで、物の所有者が設定者であるということが前提になった文言になっているのではないかということで、私はこれもうっかりしていたのですけれども、確かにそう言われるとそのとおりで、新たに書き起こして、常用に供するためのうんぬんと書けばいいのですけれども、従物という言葉を安直に使ってはいけないかもしれないというのは、おっしゃるとおりだろうと思います。   次に、5のところは約定で済むといえば済むのではないかという話なのですが、約定で済むとしても、約定しなければいけなくなりますので、そう簡単ではなくて、デフォルトルールというのは必要かもしれないですね。そして、第三者が持っていってしまったとか、そういうふうなときの請求についてどう考えるのかということで、4のところで設定者について書くということが、設定者は所有者でもないのになぜできるのか、が問題になるわけでして、何でできるの、みたいなのが前提になっている判例なのですよね。昭和57年9月28日の最高裁の判決は。これは設定者に何らかの物権が残っていると考えなくては説明が付かないのではないのかというふうな言われ方をする判決で、ここの背景には、譲渡担保権者が所有権を持っていると、そして、譲渡担保権者は所有権に基づいて妨害の停止とか請求とかは当然にできるのに対し、設定者については書かなければならないという発想がここにあるかもしれない。こういったことが藤澤さんのお話の根底にあるのではないかと思うのですが、その辺りはどうなのですか。 ○笹井幹事 若干この会議における最初の議論に大分戻るようなところがあるのですけれども、御承知のように、判例がいろいろ積み重なってきておりまして、個々の結論についてはできるだけそういった方向に従って提案をしているのですが、その判例がそういう、個々の結論を重視するのか、その背景になっている一般論をどこまで採用するのかという問題にも関わってくると思うのですけれども、基本的にはその判例の一般論としては、所有権は一旦移っている、しかし所有権移転の効果は債権の担保の目的を達成するために必要な範囲に限定されるといっているのだと理解をしております。ただ、そういう前提となるような理論というのを条文に個別に書けるかというと、なかなか難しいのではないかということもございまして、理論的にどういうふうに説明するのかというのは解釈に委ねると、何が移転して何が残っているのかというのは解釈に委ねるということを書いておりますが、一方で私どもとしては、所有権が一応移転しているというところも含めて、判例がそういうふうにいっているということを軽視するわけにもいかないと思っておりましたので、所有権は一応、担保権者の方に移っているということを暗黙のうちには前提にして考えていたつもりでした。   ですので、従物のところは、御指摘のとおり、本来、従物要件に当たらないので、従物という言葉を使うのは本当は適切ではないのですけれども、ここでは何を意図しているのかということを理解していただくために、あえて従物という言葉を使ったところではあります。   今御指摘があった4なんかも、本来的にはそういう意味では所有権そのものは担保権者の方に移っていると考えると、所有者に認められるべき物権的な請求権というのは、設定者にあるわけではないので、その部分は別途書き起こす必要があるのではないかということで、4に書いたということです。   ただ、それ以外の解釈というのをおよそ明示的に否定しているわけではないので、これは飽くまで確認的なものであるという理解というのはあり得ると思いますし、そういういろいろな、例えば物上代位を認めているとか、設定後の従物に対して、担保権というか、所有権だとすると、それがなぜ及ぶのかという説明は非常に難しいと思いますので、そこは本当は理論的に解明するとすれば、移っているのは担保権であって、設定者の方に所有権が残っているという解釈も、それは否定するものではありませんけれども、全体としてどういう規定を設けて、どういう規定は明文ではなくて民法の原則的な規定に委ねるのかというものの選別に当たっては、私の頭の中では一応、所有権は移っているということを前提に考えていたということでございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。それに対しては更に、それでいいのかという話は十分にあり得るのだろうと思うのですけれども、その点に限りませんけれども、御議論、御指摘をお続けいただければと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。細かい話なのですけれども、今、藤澤幹事の御質問の関連で、4の1、2、3の枝を見ていまして、(3)が占有を奪われたときとなっているのですけれども、占有訴権ではなくして本権に基づく何らかの請求ということになりますと、詐取とか遺失も含めるということかと思いますので、第三者が占有しているときという書きぶりになるのではないかと改めて思いましたが、いかがでしょうか。 ○道垣内部会長 御趣旨は、相手方に占有があることを言わないと返還請求ができないという話ですか、そういうことではなくて。 ○片山委員 占有侵奪だけではなくて、詐取されたときとか遺失したときとか、そういう場合も含めて返還請求ができるということです。設定者のところに何らかの本権があるということを前提としますと、占有訴権の書きぶりではなくして、本権に基づく書きぶりの方が適合的であり、そうしますと、第三者が占有しているときという書きぶりの方がいいのかなと思った次第です。賃貸借の605条の4のような書きぶりになるのですかね。 ○道垣内部会長 なるほど。占有奪取というのを表に出す書き方ではなくて、占有が第三者にあって自分にないということを端的に書くという形にした方がいいというわけですね。 ○片山委員 はい、設定者に何らかの権限があることを前提とするならば、とは思いました。 ○道垣内部会長 その点は恐らくそれほどは、内容的には異存はないところだと思いますので。 ○片山委員 そんな大きな問題ではないと思います。すみません。 ○道垣内部会長 整理はしていただければと思います。   ほかにございませんでしょうか。別に議論を混乱させるために発言をするつもりもないのですけれども、第1の1、2の辺りのところでは、皆さん活発に議論をされたわけでございまして、そうしますと、12ページの4のところで、譲渡担保権者の権利の方については所有権に基づくのであるので、そのことは書かなくても大丈夫ではないかと、設定者についてだけ書きましょうというので、それでよろしいのでしょうか。 ○佐久間委員 冒頭のところとの関連なのですが、私は、3の表現については片山先生がおっしゃるとおりだということを前提として、設定者についてこのような規定を置くことは必要だろうと思っています。それは私の立場からすると、権利の性質について決め打ちはしない、解釈の余地を残すことの方が望ましいということからすると、この規定が設けられた場合に、設定者に所有権が残っているという考え方を前提にするならば、疑義があり得るところ確認的な規定なのだと言えばいいし、笹井さんが御説明になったような考え方を前提とすると、私もそのような考え方で実は考えたのですけれども、やはりこの規定がないと設定者からは返還請求等ができないということから、担保目的に限られた所有権ということの内容を特に表すという意味で置いておけばいい、ということになるのではないかと思っていました。   他方で譲渡担保権者の方についても、規定が設けられるのであれば設ければいいのかなと思いつつ、その場合は結局、抵当権者と同じような立場なのだという趣旨の規定をやはり設けるのかなと思っていました。そこも、それを設けたからといって譲渡担保権者の権利の性質を担保権だと決め切る必要はなくて、所有権なのだけれども担保目的に限られたものなのだから、債務不履行前はその程度の権利だということを表す規定なのだという説明をすればいいと思っておりました。   ただ、今日いろいろ伺っていると、やはりそのような態度をとっていると、すごく定めなければいけないことが多くなっていく可能性があるのかなとも思いました。そうすると、例えば譲渡担保権者の方は担保目的に制約された、そこは前提にしたらいかんのか、何も書かなかったら、譲渡担保権者の方には当然には所有者と同様の権利が認められるわけではないという推測が働くのですかね。でも、担保目的を害されたら、その範囲で設定者が有する権利を場合によっては代位行使するとか、直接行使もいいのかな、やはり直接行使だったらあれですかね、やはり規定を置いた方がいいとなるのですかね。ぐちゃぐちゃしゃべりましたけれども、私はそう考えています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見等はございますでしょうか。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。私も、法的構成についていろいろな考え方が解釈論であり得ることを前提として、色々な規定を置いていくという基本的な考え方でいいのだと思いますが、佐久間委員が今おっしゃられたように、それだと規定を限りなく設ける必要が生じて大事になるので、どちらかを原則として考えていくということであるならば、やはり出発点として、制限物権構成でなくして譲渡担保ということで、所有権の移転の合意があることを前提とした制度設計をするならば、やはり事務局から御提案があったように、基本的に権利が移転していることを前提とした上での規定ぶりに整えていくという方が簡便ではないかと思っている次第でございます。意見として申し述べさせていただきました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   気になっているのは4の裏返しの譲渡担保権者の請求権の話なのですが、所有者だから一応、物権的請求権を持つよねという話から始めるのはいいのだけれども、フルの所有者でないということになると、そこには制約の原理が働いてくるはずであって、その制約の原理の取っ掛かりというのが一切なくていいのかというのはよく分からなくて、例えば、訴訟当事者ではない第三者に対する引渡しを求める請求というのがそもそも執行との関係で認められるかという問題はあるのですが、譲渡担保権者が自分に対する引渡しを当然に請求できるのかというのも実体的には何となく気になるところではあるのです。そうなると、解釈論の基となるような規定をやはり何か書かないといけないのではないかという気がするのですが、それはよく分かりません。   ほかにございませんでしょうか。1の従物のところはそういう話で、2、3の辺りは、まあそうかなという感じがするのですが、4に関しては、実は譲渡担保権設定者に関しても、使用収益権限というのが3に書いてあって、使用収益を妨害されたときとは書かないで、もう少しほわっとした言い方になっているのですね、目的である動産に関する権利と。それは、いろいろな解釈論の下でどういった権利というのがあり得るのかというのが違い得るということで、なっているところであります。5についてはいろいろな意見を頂いたところですが。 ○加藤幹事 加藤です。動産譲渡担保権設定者の使用収益権限について1点、コメントをいたします。2月の関係者ヒアリングの席上で田中先生から、株式の譲渡担保については共益権を譲渡担保権者に全て移すことにも需要があるという御意見が述べられたと記憶しております。部会資料28の12頁にある動産譲渡担保設定者の使用収益権限に関する規定は、動産を目的物とする場合の規定として設けられるのでしょうか。先ほど順位の変更に関する規律の御説明に際して、総則的なものとするか動産又は債権に関する特則とするかというお話しがありましたが、仮に総則的な規定として設定者に使用収益権限があるという規定が定められた場合には、これは設定契約で修正できる権限であるという位置付けになるのか教えていただければと思います。 ○道垣内部会長 それではこの点、事務局から何かございましたら、お願いいたします。 ○笹井幹事 様々な権利について、その権利の行使ということが考えられると思うのですけれども、何をもって使用収益というかというか、使用収益という文言がどういう権利について観念できるかということを考えたときに、例えば債権とかそういったもの、それを取り立てたりすることを使用収益と呼ぶかというと、それは余りしっくりこないと思いますので、今この使用収益権限については動産を念頭に置いて規定を設けるということを提案しています。ただ、それぞれの、今御指摘があった株式についての権利をどういうふうに考えるのかとか、無体財産権についての権利行使をどう考えるのかというところは、別途いろいろ問題になってくるとは思うのですけれども、それについて事細かにそれぞれの性質に応じて規定を設けていくというのは、なかなか現実的ではないというところもありまして、その辺は最終的には解釈に委ねられるのではないかと思っております。   差し当たり、以上でよろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 加藤さん、いかがですか。 ○加藤幹事 ありがとうございます。御指摘のとおり、動産と債権を念頭において基本的な制度設計をすることに対して、私も全く異論はございません。その上で、現在の提案では、特段の定めがあれば担保権が設定された動産について担保権者が使用及び収益できる旨は条文の形で明示することは提案されていないと理解しております。これは動産を目的物とする担保の使用収益について設定行為に特段の定めをすることは一般的ではないということなのでしょうか。 ○笹井幹事 使用収益権限について、もちろん移転させるというか、デフォルトルールとしては動産を念頭に置いて、設定者が使用収益権限を持っているということになっているのですけれども、これを担保権者側が使用収益するというような類型も、現在の譲渡担保でも少数ながらあると聞いたことがありますし、そういった合意をするということは妨げられないと思っております。   ただ、問題になるのは、その場合の使用収益権限が第三者に対抗できるものなのかどうなのかということで、物権的な権利として、設定行為で定めておけば担保権者の使用収益権限を第三者に対して主張することができるのか、例えば設定者が倒産したとき、破産したときにどうなるのかということについて、中間試案前にも議論されていたところかと思います。   中間試案前の段階で事務当局から資料としてお示ししたのは、それは飽くまで債権的な権利なので、設定契約において、当事者間の合意として担保権者が使用収益できるということを合意することはできて、その場合にはもちろん担保権者は設定者に対して、引き渡せとか、使用収益させろとか言うことはできるのだけれども、それが倒産した場合に破産管財人などに対して対抗できるかというと、それはできない、そういったものとして合意される、そういう権利だと理解をしているということを申し上げたかと思います。 ○加藤幹事 ありがとうございました。従前の部会の審議について私の理解に不十分な点があり、大変失礼いたしました。追加の質問で大変恐縮なのですが、設定契約に何か特段の定めがあった場合、4の妨害の停止の請求などの解釈においては、その内容が反映されると考えればよいのでしょうか。つまり、特段の定めにより担保権者に何らかの使用収益権限があれば、その分、担保権設定者の権限にも何らかの影響があると思います。このような場合、4の担保権設定者の権利がどういうものになるのかというのが、若干気になりました。ただ、事務局がどういう趣旨で御提案されているかはよく理解できました。ありがとうございます。 ○笹井幹事 確かにその場合に、設定行為において担保権者に使用収益権があるとされていた場合に、4の規定がどうなるのかというのは、細かく想定していたわけではないのですけれども、それは、例えば現行法における所有権に基づく物権的請求権と、その動産が例えば賃貸されている場合の賃借人の権利との関係など、現在でもある問題なので、設定契約の趣旨とかにもよるかもしれませんが、それぞれの個別事案における解釈になるのかなと思います。   例えば、抵当権者が担保権が侵害された場合に、自分に対して返還を請求できる場面があるというのは判例上、認められておりますが、同様に譲渡担保権に基づく返還請求権というのが認められる場面はあると思いますけれども、その設定行為によって担保権者に使用収益権限があるとされているからといって、直ちに物権的な、例えば返還請求権が認められるわけではないと思います。その場合は、例えば担保権者は占有訴権に基づいて請求することができるかもしれませんが、返還請求権については担保権設定者に帰属するということになるのかなと、今少し考えただけですけれども、そんな感じがいたしました。   一方で、損害額とかというのは、結局その物から誰がどういう収益をすることができたかということにもよってきますので、使用収益権限が担保権者に帰属すると設定行為で定められていた場合には、例えば(1)、(2)における損害額とかについては多少変わってくる可能性はあるのかなと思います。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますでしょうか。   ほかに、7とか8とかにつきましても。よろしければ、これでよろしいのですけれども。差し当たって、本日のところは7とか8とかについては特にございませんでしょうか。   本日は部会資料28というのを全部議論するというのが本来的な目標ではありますが、少し難しいかなとは思います。ただ、集合動産、第4に関してはなるべく、10分ぐらい延長しても、やっておきたいと思いますので、第4に入らせていただければと思います。   「第4 集合動産を目的とする譲渡担保権」の「1 特定範囲に属する動産を目的とする譲渡担保」から「6 新たな規定に係る集合動産譲渡担保権における物上代位等」というところまでお願いできればと思います。第4の全てですが。まず、事務当局におかれまして説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 第4について御説明いたします。第4は、集合動産を目的とする譲渡担保権に関する規律の提案でございます。   1は、譲渡担保契約は種類、所在場所、量的範囲の指定その他の方法により特定された範囲、これを特定範囲ということといたしまして、これを一括して目的とすることができる旨の規律を設けるものでございます。この点は中間試案の内容から大きな変更はございません。ただ、中間試案におきましては動産の集合体という文言を用いておりましたところ、構成部分の変動しない動産の集合について特別な規定を設ける必要はないとの御指摘もあったところでございます。部会資料29−1の38ページを御覧いただきますと、ここでも集合体の意味が明確ではなく、あえてこれを使用する必要に乏しいといった意見が出されたところでございます。そこで、本提案では「集合体」といった文言は使用しないこととしております。   また、複数の動産を一体として扱うことを正当化するための要件、例えば、経済的又は取引上の一体性といった要件を課すかどうかについて、判例では明示的には要求されていないこと、これを明確に規定することは困難と考えられることなどから、明示的な要件として設けることはしないということとしております。   なお、本提案との関係で、在庫一切などの特定方法を許容すべきかどうかという点についても議論がされていたところです。部会資料29−1の40ページ以下におきまして記載しておりますけれども、この論点につきましては積極、消極双方から多数の意見が出されていたところです。もっとも、このような特定方法で目的物が特定されているといえるか否かにつきましては、業種等によっても異なり得るところであり、一律の要件として定めるにはなじまない面があると考えられ、登記の記載方法としてどこまで許容されるかという問題はあるものの、集合動産譲渡担保契約の実体法上の要件としてはこの点は明示的には記載しないこととしております。   2は、集合動産譲渡担保権の対抗要件に関する規律の提案です。従来の集合物論の下でも、飽くまで集合動産譲渡担保の対抗要件は民法第178条によって規律されていたと考えられます。そこで、集合動産譲渡担保の対抗要件それ自体について改めて規律を設ける必要はないと考えられます。   他方、判例におきましては、対抗要件具備の効力は、その後、構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産を包含する集合物についても及ぶと解すべきとしておりまして、これを踏まえ、中間試案の規律を維持することとしております。   他方、特定範囲に属する動産が全く存在しない時点で引渡しによる対抗要件具備が認められるか否かにつきましては、本提案では、動産が全く存在しない時点で物理的な引渡しは考えられないことから、現に特定範囲に属する動産の引渡しがあったときは、との要件を設けることとしております。   もっとも、特定範囲に属する動産が存在しない時点で、将来債務者が特定範囲に属する動産の占有を取得したときは債務者が占有改定の方法によってその占有権を取得する旨の合意がされていた場合には、占有者が動産の占有を取得した時点で債権者が集合動産譲渡担保の対抗要件を具備することを否定するというものではございません。また、引渡しではなく譲渡登記がされた場合の取扱いについても議論があり得ると考えられます。   3は、集合動産譲渡担保権設定者の処分に関する規律の提案です。(1)は、設定者が通常の事業の範囲内で構成部分である動産の処分をすることができることを定めるものでありまして、中間試案と同様の内容です。なお、逸失についても処分に含むというものとして整理しております。(2)は、設定者がその権限の範囲を超えた処分をするおそれがある場合に、譲渡担保権者がその予防を請求することができるというものでございまして、中間試案と同様の内容でございます。   4は、集合動産の構成部分である動産の設定者による処分の規律の提案です。中間試案においては、ケースを細分化して規律を設けるということを提案しておりました。本提案では、譲渡担保契約が目的である財産権を移転させるものであり、設定者には原則として処分の権限がなく、設定者が集合動産の構成部分を譲渡することができるのは、担保権者又は法律の規定によって処分権限が付与されているからであり、その付与された権限の範囲を超えた処分は、無権限の処分として、無効となるのが原則であり、その処分権限を有していなかったことについて相手方が善意無過失である場合には、即時取得によって保護されることになりますので、この点については即時取得の規定に委ねるということとしております。   他方で、処分が通常の事業の範囲内でされた場合であって、当事者が加えた処分権限の範囲を超えてされたものであるときにおいては、処分権限の制約は外部からは見えにくいというものでありますので、その処分権限の制約につき相手方が善意であるときは、即時取得の要件を緩和し、過失の有無を問わず、その相手方を保護するということとしております。また、通常の事業の範囲を超えたものであることにつき、相手方が善意無過失である場合には、その処分権限を超えたことにつき相手方が善意であれば、その相手方を保護するということとしております。   以上に対して、設定者の処分権限に関する合意は外部から認識することは困難でありますが、それは過失判断の中で行えば足りると考えて、その点も含めて即時取得の規律に委ね、この点について特段の規定を設けないという考え方もあり得るところです。また、本提案では即時取得という制度を前提に、相手方の主観的事情という要件について緩和するものでありますので、即時取得と同様、引渡しが要件になると考えられます。   なお、本提案では即時取得が成立しない場合、相手方は担保権の負担付きで目的物の権利を取得するのではなく、何ら権利を取得しないということを前提としております。これは、設定者は担保権者の承諾がない限り目的物の真正譲渡をすることができないという考え方との一貫性を考慮したものでございます。   5は、担保価値維持義務、補充義務に関する規律の提案です。その内容は、中間試案第3の5の(注)の内容と同様でございます。部会資料29−1の57ページ以下におきまして、この点についての意見を掲載しておりますが、パブリック・コメントではデフォルトルールを明確にすべきだという観点から、これを明文の規定として設けることに積極的に考えるべきという意見と、このような義務があること自体は異論がないものの、訓示的なものにすぎないということや、倒産手続に至った場合に管財人が拘束されるのは妥当ではないということから、明文規定を設けることには消極的であるという意見も出されていたところでありまして、引き続き御議論いただければと存じます。   6は、集合動産譲渡担保権における物上代位について規律するものでありまして、これは中間試案と同様の内容でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○青木(則)幹事 ありがとうございます。第4の2について一言申し上げたいと思います。こちらについては、中間試案から、集合物論でありますとか加入の理論の影響を弱める方向の修正が示唆されているように思います。そうであれば、賛成であります。ただ、ここに書かれてあることを拝見いたしますと、もう少し書きぶりを改めるといいますか、別の方向のルールを置くことで明確になる点もあるのではないかと思っております。   と申しますのは、第4の2のルールは、前記1の場合ということで、第4の1を前提としておりますけれども、両方とも集合という文言は削られているということでございまして、要するに、特定範囲の動産を目的物とする担保権の設定であれば、将来動産が含まれていても、同じ範囲に含まれる設定当初に有する動産を引き渡せば、対抗要件を具備できるということであるかと思います。   さらに、16ページの方の18行目のもっとも以下の部分でございますけれども、ここには、全てが将来動産で当初から何もないというような場合でも、少なくとも登記をすれば対抗力を具備できるということを否定しないというふうな言及がございます。そういたしますと、この辺りのルールが言おうとしていることは、将来動産であっても適切に範囲を特定して、そして対抗要件を具備すれば、対抗力を得られるという原則が前提になっているように思われます。それを前提としつつ、引渡しによって対抗要件を具備する場合には、将来の動産がまだありませんので、難しい状況でありますけれども、その問題については当該特定された範囲の動産のうち当初に設定者の手元にある動産を引き渡せば集合動産全体について対抗要件を具備できると、そういうある種の特則のようなことを明文で規定されているのではないかと思われます。   改正によって登記優先ルールが導入されるとすると、集合動産について引渡しで対抗要件を具備するというケースはかなり少なくなるのではないかとも思われるわけでございまして、そうすると、むしろその原則の方を書くべきではないかと個人的には思っております。将来動産であっても適切に範囲を特定して対抗要件を具備すれば対抗力を得られるのだという、その前提を明文規定した方が明確になるのではないかと思っております。   もちろんこの問題意識から、集合物という概念自体を削った方がいいとまでは、申し上げられないかなと思っております。他のいろいろな規定との関係でも、集合物という概念の必要性を検討しなければなりません。ただ、少なくともここのルールは、集合動産の対抗力というよりも、将来財産についての対抗力の話なのだということで、その原則を正面から規定するという形をとることができないものかと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。最後がよく分からなかったのだけれども、将来財産について。 ○青木(則)幹事 設定者等が将来取得する動産でありますとか、将来発生する動産についても、要するに、適切に範囲を特定して対抗要件を具備すれば対抗力を得られるという原則を正面から規定したほうがよくまた、対抗要件を具備するには登記によることが多いと思われますので、登記による将来動産の対抗要件の具備という原則を明確に出した規定にする方がいいのではないかと、こういうふうな意見でございます。 ○道垣内部会長 4の2のような書き方よりもということですか。分かりました。 ○阿部幹事 ありがとうございます。資料の17ページ以下の4のところですけれども、@、Aの規定、それ自体には特に異存はないのですが、特に18ページのところで、これらは即時取得の主観的要件の緩和であるということで、相手方が引渡しを受けるということが権利取得の要件となると書かれているのですけれども、私の理解しているところでは、中間試案の取りまとめの段階で、これは即時取得の特則というよりは、一定の処分権限が設定者にあって、その範囲を超えて処分がされたと、しかし、その処分を権限範囲だと信じたという話だとすると、これは権限踰越の表見代理、あるいはそれの類推適用のような場面に近いのではないかというような話もあったかと思います。そうだとすると、相手方への引渡しは必ずしも必要ないのではないか、相手方が占有開始要件を備えていなくても、保護に値するのではないかという議論があり、パブリック・コメントでも、一方で即時取得の特則というような理解を支持する方もいらっしゃったようですが、表見代理のように、引渡しは要らないということをはっきりと述べているような意見もあったように思います。ですので、引渡しは要るということは、別に当然そうなるということではないのではないかと思ったのですが、いかがでしょうか。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。今までのところで、青木さんと阿部さんから御発言があったのですが、片山さん、続けてお願いいたします。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。今、阿部幹事が指摘してくださった4のところですが、これは随分簡略化されて、分かりやすくなったのかどうなのか、よく分からないところがあるのですけれども、基本的にここで想定されているのは、通常の事業の範囲の方が広くて、それを当事者の合意で処分範囲が更に狭められているケースで、@は、通常の事業の範囲だけれども処分権限の範囲から外に出ている問題、Aは、両方の外に出ている問題という位置付けでいいのかどうかという点を確認できればと存じます。併せて、逆に通常の事業の範囲よりも処分範囲が更に合意で広げられているというケースについては、更に超えた部分というのは単純に192条で処理されるということでいいのかという点を改めて確認をさせていただきたいというのが第1点です。   もう1点は、第4の1以降、全てに関わるところで、集合動産という概念の定義がどうなっているのかよく分からないところがございます。それは、タイトルで集合動産という用語が随所に出てきますし、それから、集合動産譲渡担保という用語は出てくるのですが、その定義自体がどうなっているのかを探しますと、まず1のところでは、特定された範囲に属する動産という言い方をしていて、これは端的に構成部分に該当するような個々の動産を指すのでしょうか。これに対して、集合動産の定義がどこで出てくるのかと見ていきますと、18ページの5のところで、括弧書きで集合動産の譲渡担保契約の目的である特定範囲に属する動産ということで、やはり構成部分たる動産を集合動産という言い方で呼んでいるのではないかと思われます。そういう意味で、意図的に集合物という概念を用いず、分析論に立つというわけではないのだとは思いますが、個々の動産を意味する意味で集合動産を使っておられるのかどうかという点が気になりました。   そうしますと、5のところの担保価値維持義務の話ですけれども、構成部分たる動産が有すると認められる価値を維持しなければならないということになってしまいまして、そうすると、担保価値維持義務という場合には、全体を見て担保価値の減少を判断しなければいけないので、個々の特定範囲に属する動産ということでの価値の維持というのは意味がないのではないかと思います。そこで集合動産という概念をどう考えておられるのかという点を確認できればと思いました。   それと併せまして、今回、集合体という中間試案でできていた概念は分かりにくいし紛らわしいので、用いないということはよく理解できますが、そうしますと、そこで意図されていた流動しない固定資産を一括として担保に取るような、例えば機械一式を担保に取るというような場合ですね、その場合も流動資産担保と同じように集合動産概念で一律に規律するということになってしまいますが、それでいいのかという点も気に掛かるところではございます。   というのは、処分権として、3のところで通常の事業の範囲内での処分権限が付与されるということになりますが、固定資産を集合として取る場合というのは、それほど広く処分権限が付与されるわけではなく、むしろ耐用年数が過ぎたような機械の差し替え程度で動くことはあるけれども、基本的には固定資産の場合は処分が禁止されているのだと思います。そうしますと、それを一律に通常の事業の範囲内での処分権限が与えられるという処理で、集合流動動産譲渡担保と固定資産の集合体の譲渡担保を同じ集合動産譲渡担保概念で規律していいのかどうかという疑問がやはり残る気がいたしました。その点、集合動産概念ですかね、それを再度確認できればと思いました。よろしくお願い申し上げます。 ○道垣内部会長 横山さん、お願いします。 ○横山委員 横山でございます。私は非常に小さいことですけれども、同じく4のところで、4のAについて、通常の事業の範囲は、当該取引の種類とか取引慣行に照らしてある程度客観的に決まることが想定されているのではないかと理解しておりました。その理解がもしかしたら間違っているかもしれないので、御指摘いただければと思います。   仮に、私の理解が正しいとしますと、Aに関して、通常の事業の範囲を超えたものであることについて、相手方に過失がないという場合は考えにくいようにも思いました。どのような場合が想定されているのか、教えていただければと思います。 ○道垣内部会長 余りたまると回答も難しくなってしまいますので、現在、阪口さん、日比野さん、大澤さんとお手を上げていただいているのですが、余りにいろいろなところになって、たまりますと議論が訳が分からなくなりますので、今この時点で事務局のお話を伺って、それからもう少しまた先に進めたいと思います。少しお待ちくださいませ。 ○笹井幹事 様々な御議論、御意見いただきまして、ありがとうございました。明確に御質問という形で頂いているところにできる限りお答えしたいと思います。   まず、片山委員のご質問ですが、確かにここでは通常の事業の範囲よりも処分権限を限定するという場面を想定しておりまして、逆にそれを広げる場面というのがあるというのは、理屈の上ではあると思います。それも、処分権限が欠けているのだけれども無過失で信じた相手方は保護されるということで、民法第192条が適用される場面なのではないかと思っておりまして、それでカバーをするというつもりでございました。そういう意味では、無過失が要件になるものは全部民法第192条で処理してしまって、そこを緩和する部分だけをこの4の方で書いているということです。   これに関連して阿部幹事の方からは、代理権に対する制約があったというか、表見代理のような理解の仕方もあるだろうという御指摘がございまして、これは確かに中間試案前にもそういった御意見があり、部会の中でも一定の支持がされていたかと思います。ですので、それを全く意識していなかったわけではないのですけれども、とはいえ、ここは代理権そのものではないので、処分権限が欠けている場面として即時取得を出発点として考えたということなのですが、ただ、それは別に代理権のところではないけれども、別途同様に考えるということは政策論としてはあり得るところかと思います。この違いは、具体的な結論として、阿部幹事が御指摘になりましたように、引渡しを要件とするのかどうかというところに現れてくる、特に占有改定がされた場合にどうするのかというところが違ってくるかと思いますので、ここは実質論だろうと思います。事務当局としては、即時取得の場面を出発点として考えたということですが、そこにこだわるということではありませんので、ここは実質としてどちらがよいのかということについて御議論いただければと思います。   続きまして、片山委員から、集合動産についての概念の定義はどうなっているのかという御質問がございました。確かに分かりにくくなってしまったのかと思うのですけれども、この資料の意図としては、特定の物の特質そのものによって決めているわけではなくて、種類とか場所とかそういうことによって範囲を決めて、その範囲の中に入ってくる動産というものを一括して担保の目的としていると、かつ、今は存在していないのだけれども、将来その範囲の中に入ってくることが予定されている物がその範囲に含まれている、そういったものを集合動産として捉え、第4以下のルールを適用することとしています。   一方で、例えば判例は、構成部分の変動する集合動産も特定されていれば、一つの物として譲渡担保権の目的となるといっておりまして、それは、構成部分である個々の動産ではないものをあたかも譲渡担保権の目的にしているとも読めますし、理論的な理解としてそのような理解があり得ることを否定するわけではありません。ただ、条文の文言レベルでいいますと、そういった集合動産について、動産とは異なる集合物というものの対抗要件を考えていたわけではなくて、民法178条を適用していたわけですし、集合動産を念頭に置いて設計された動産譲渡登記制度においても、178条の引渡しがあったものとみなすというような文言になっていますので、そこでは譲渡されたものは動産だと捉えて、その対抗要件を考えていたのだと思います。   個々の動産とは区別される目的物という性質を余り強調していくと、民法178条や譲渡登記制度が適用されないという理解にもつながるのではないかということで、片山委員が今正に御指摘になりましたように、個々の動産が譲渡されていて、それについての対抗要件を問題にしているような書き方になっています。   ただ、この点について、担保価値維持義務では全体として見るべきだろうと言われましたのは、十分に意識をしておりませんけれども、確かに御指摘のとおりですので、ここは少し表現ぶりというのは考える必要があるのかなと思いました。   片山委員の御指摘になった、流動しない、将来物が入ってこないような、特定物の機械一式とかについての担保取引がどうなるのかということなのですが、これは冒頭に申し上げましたように、ここで第4の規定が適用されるのは、構成部分が流動するような、後から追加されてくるようなものを念頭に置いておりまして、機械一式のように変更しないものについては、それは個別動産についての譲渡担保の集合だと考えるので、通常の事業の範囲内において処分することができるなどの規定は適用されないと理解をしていたということです。   それから、横山委員から御指摘いただいた、通常の事業の範囲というのが客観的に決まることが想定されているというのは、同様の理解でございまして、もちろん通常の事業というものには個別性の高いという性質があるのはあるでしょうけれども、基本的にはより客観的に判断されるものなのだろうと理解をしておりました。その上で、さりとて、それを超えた取引がされた場合に、通常の事業の範囲内に含まれることについて、およそ無過失ということが考えられないかといいますと、そこはやはり取引の相手方にもよると思います。ここでは、例えば在庫が処分されるというようなことを考えますと、一般の消費者が相手方になって、その一般消費者の主観的な事情が問題になってくるということを考えると、当該事業者の事業の客観的な状況を踏まえて、通常の営業の範囲がどれだけなのかというのを個別に精査していくという高い注意義務が期待できるわけではありませんので、それが通常の事業の範囲内に属すると信じることについて、一般の消費者を念頭に置くと、誤っていたけれども過失があったとはいえないというケースも十分考えられるのではないかと思っているところです。   一応、以上ではないかと思いますが、何か欠けているところや追加の御質問があれば、お願いできればと思います。 ○道垣内部会長 今の範囲内で何か、それはおかしいだろうとか、更に追加の御質問があればと思います。議論としてすべき話として出たのは、まず、権限を超えるというのを表見代理類似の規定として見るのか、即時取得の話として見るのかというのはともかく、実質論として引渡しがあって初めて第三者が保護されると考えるべきなのか、それとも、引渡しは要らないのではないのと考えるべきなのか、それについて、まず、皆さん、どうお考えですか。阿部さん、言い出しっぺというか、どうお考えですか。 ○阿部幹事 私は、担保権が設定されているのに、それを知らなくて譲渡を受けたというような場合だと、即時取得による保護が必要で、そのためには引渡しを受ける必要もあるけれども、集合動産の譲渡担保で、そもそも設定者にも処分権限があって、その処分権限の範囲についての言わば誤解みたいなものがあったにすぎないような場合でしたら、相手方はやはり、単に担保権が設定されているのにそれを知らなかった場合よりも保護に値するのではないかと思いまして、そうだとすると、占有の開始までは要求しないということも実質論としてあり得るのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ほかに御意見、その点については何かございますか。別に1対ゼロで決定されたと扱うわけではないですけれども、いろいろな分析の仕方があろうかと思います。私自身は、権限範囲外だから要らないというのは私にはよく分からなくて、引渡しが必要だと考えておかしくないのではないかと思うのですが、両方意見があり得るということかと思います。   次に、少し気になったことがありまして、笹井さんがおっしゃったことで、それは片山さんか青木さんがおっしゃったこととも関係しているのですが、個別動産譲渡担保の集合体なのか集合動産譲渡担保なのかというときに、特定の仕方によって決まるのか、それとも、より実質的な状態ですね、つまり、集合動産譲渡担保に関する個々的な規律を適用するのに適した状態であるかどうかということによって決まるのかという問題について、笹井さんは、どちらかといえば実態的な状況によって、集合動産譲渡担保なのか個別動産譲渡担保が複数あるのかが決まるというふうなお考えを提示されたと思うのです。これに対して、青木さんはどちらかといえば特定の仕方に重点を置かれたような気がするのですけれども、特定の仕方に重点を置くということになりますと、実はそれほど特殊な規律は置かないということにつながっていくのですね。もちろん通常の営業の範囲で処分できるというのはあり得るのですが、個別動産譲渡担保だって通常の営業の範囲としてそれは売らないというだけの話で、そのルールを適用したってうまく処理することはできるのですけれども、実態なのか、それともただ単に特定の仕方の問題なのかということについては、皆さんどのようにお考えになりますでしょうか。 ○横山委員 あまり理論的な根拠があるわけではないのですけれども、集合動産譲渡担保については、もともと、経済的一体性とか何らかの一体性があるものを集合動産として観念し、特定のところでもそれを要件として定めた方がいいのではないかと考えていた立場からしますと、実態として集合物であって、集合動産譲渡担保に関する個々的な規律を適用するのにふさわしいかどうかを見ていった方がいいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。そうすると、阿部さんがおっしゃったようなところにも接続しやすくなるのかな。つまり、個別動産譲渡担保だと見れば、それは基本的には即時取得の問題なのだけれども、これというのは一定の処分権限がある場合の権限踰越の問題なのだから、引渡しを要求するのは必然的ではないと、もし実態的に集合動産譲渡担保というのを捉えて、集合動産譲渡担保として処遇するのが妥当な法律関係というふうなことでやっていくのだと、そういうことになるのかな。 ○青木(則)幹事 この問題は何となく、対抗関係の話のところで必要な集合物の考え方と、処分除権等のところで必要な考え方が違うような気がしています。恐らくこれまでの判例に照らして分かりやすい例は、動産よりも債権の方ではないかと思うのですが、判例では将来債権譲渡の譲渡担保ということで、対抗関係については恐らく集合という概念を使ってこなかったわけです。中間試案では集合という概念を入れられておりますけれども、それは対抗関係の話を判例から変えようという趣旨ではなくて、取引実態からみた処分権限の有無等のルールについて、説明しやすいということで、集合という言葉を入れられたのではないかと思っておりました。   同じことが動産にもいえるような気がしております。対抗関係のところでは、将来動産についてもしかるべき特定ができていれば対抗できるというだけで足りており、ただ、他方で、在庫商品を担保にとっているといったときに、処分授権を推定しやすい、そういう実態を持っているという説明としては、集合という言葉を使う方が分かりやすいというような印象をもっております。そのような意味で、集合という用語で説明されているルールには二面性があるように思っております。 ○道垣内部会長 それはそうなのでしょうね。明らかな特定動産、1個の機械であったって、所在場所と種類と、1個だという量的な範囲で、所在場所と種類だけでもいいけれども、それで特定機械を特定したって、それは構わないわけで、対抗要件の具備の方法としては、そういうふうな方法が実態的に集合動産ではないと、実態的な意味での横山さんがおっしゃったような意味での集合動産ではないと、この特定の仕方はできないとはいえないのでしょうね。青木さんがおっしゃるのはそういうことですね。しかし、通常の営業の範囲での処分というものが当然に認められる、授権されていると考えるのかどうなのかというのは、やはりその実態によるので、そこら辺は分けて考えなければいけないという御指摘で、それもごもっともかと思います。   あとは、横山さんのおっしゃった、通常の事業の範囲について善意無過失があり得るのかという話なのですが、これはなければないで仕方がないという感じかなという感じはします。日常家事債務でもあるわけですから、その辺はよく分からないですが、運用の問題かなという感じがしますが。   すみません、今、午後5時40分で、この部会は午後5時半にはきちんと終わるということで大体はやってきたのですが、まだお三方いらっしゃいますし、更にお三方のお話を伺った後も、まだ集合動産譲渡担保について話が残っていると思います。もう少し時間を頂戴できれば有り難いと思うのですけれども、お許しいただけませんでしょうか。もっと長い部会もあるやに聞いておりますので、ここは皆さん我慢をしていただいて、阪口さん、お願いします。 ○阪口幹事 2点あります。まず、前から申し上げている「現に存する」の問題です。今回、16ページのところで、占有改定の方は対象動産が一個もなかったら駄目ですよということがはっきり書かれ、他方、登記の方は具備する余地があるという微妙な書き方になっている。ただ、第4の1の方を見ると、これは設定できることを前提にしているようにも読めるので、対象動産が一個もなくても設定はできるけれども対抗要件は具備できないというような感じに読めます。しかし、まず、それは今の実務とは違うというのが、私の理解です。例えば、新しい倉庫を建てて、そこに物が入るというときに、担保権者はいつ物が倉庫に入るかを見に行くことなんてあり得ません。さらに、登記特例法改正で動産譲渡登記ができるとなったときに対象動産が一個もなくても登記できますよという御説明が一問一答であり、それで物事が動いているという認識です。   仮にこのような制度をとったら、占有改定でAさん、Bさんが時間的順序をずらして取ったときに、でも、物が入る瞬間に両方とも対抗要件を具備するので、Aさん、Bさんは同一順位になってしまうというようなおかしなことにもなります。したがって、ここは、申し訳ないけれども、現に存するという要件は外すべきではないかと思っています。その外し方は、どこまで緩和するかという問題はありますけれども、ここのような形ではっきり、なかったら駄目ですというのは、違うのではないかということです。   もう一つが、4番です。ここはもちろん難しい問題ですけれども、先ほど引渡しが必要かどうかの実質論はどうですかということの御説明がありました。まず、私の理解では、一般的な即時取得というのは個別動産の権利者からの売買というのを基本的に想定しているから、引渡しが基準だとなっても、まあバランスはとれているのだろうと。ところが、ここで考えている集合物の大量取引が行われている世の中で、引渡し基準というのは、恐らく実質論として採るべきではないだろうと思います。非常に大量かつ迅速に物が動く中で、引渡しを要求すると、善意無過失の基準時も移りますから、それはやはり商取引として無理だと思うのです。売買の時点で物事は決まるべきなのであって、後ろの時点ということは商取引には合わないと思います。   また、規律としても、ここで提案されているものが、パブコメの多数意見よりは、狭くなっているように感じます。パブコメでは、善意で足りるのではないかとか、そういう意見がかなり強いように思うのですけれども、狭くなってしまっている。そこをもう一遍よく考えてみると、通常の事業の範囲というものに関するイメージがかなり不安定な状態で議論されていることが一つの原因なのかなと思いました。先ほども横山先生から、通常の事業の範囲は客観的に決まるのですかという御意見があって、何となく客観的に決まるように思うけれども、でも、例えば設定者が持ち逃げするつもりで物を売っているという、その主観的な問題は影響するのか、影響しないのか、要するにもう廃業を決めていて資金使途としても商取引に使わないということを決めているときに、それが影響するのか、しないのかとかいう問題は、実は必ずしもはっきりしない、曖昧な状態だと思うのです。その中で、通常の事業の範囲を超えている、超えていないという議論をすると、みんながイメージしているものが違って、かなり危ない状態で議論しているのではないか。判断要素も分からないし、更に言うと、通常の事業の範囲を超えていることを知るとは、一体何を知ったことなのか。通常の事業の範囲を超えるというのは、評価根拠事由を並べたときの規範的な概念で、規範的な概念を知るというのは、評価根拠事由を知ればいいのか、結論を知っていることなのかすらよく分からない状態になっていると思うのです。もう少し認識を一致した上で議論をしないと危なくないでしょうか。私自身は、もう少し要件を緩和し、購入者を保護するように傾けないと、取引が萎縮するのではないかと思っていますけれども、少なくとももう少し、何を知っているとか、どういう場合はこうだとかいうことを、サンプル例でもいいのですけれども、共通認識を持った上で、議論すべきではないのかと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。それに対する議論ないしお答えは後でまとめてということにしまして、日比野さん、お願いいたします。 ○日比野委員 ありがとうございます。私が述べたかったことは、第4の2のところですが、阪口先生がおっしゃったこととほぼ同じでございます。貸付人、担保権者の立場からしますと、在庫が本当に入っているのか入っていないのか分からないのだけれども、ということでは融資ができないというようなことになってしまいますので、この部分については担保権を設定し、対抗要件をある時点で具備したら、その時点が動かないということであって初めて取引の安定性が実現できるのかなと思います。   特に、融資者の立場からしますと、少なくともこの債務者であれば短期的なクレジットは問題がないと思ったときに、在庫については徐々に入ってきてもいいから融資を先行するといった取引をすることもあるかと思うのですけれども、実際に在庫が入っていないとそもそも対抗要件を具備できていないのだということになると、やはり在庫が入ってくるまでは融資をちゅうちょするといったことも起きてしまいます。したがって、ここは明確に特定の時点で対抗要件を具備できることが望ましいものと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。大澤さんからもお話を伺ってからにしたいと思います。 ○大澤委員 大澤でございます。ありがとうございます。私は、すみません、今の4のお話ではなくて、5のところのお話でございます。従前、中間試案のときはなお検討するとなっておりました担保価値維持義務、補充義務のところについて、維持をしなければならないというデフォルトルールを明文で置くというのが今回の理解ではありますけれども、私の方の意見としては、そもそもやはり、私はどちらかというと倒産法の観点から物事を考えますけれども、こういった担保価値維持義務というものを、元々の、確か前のときにも、どこだったか忘れてしまいましたけれども、担保価値維持義務のお話が議論になったときにも、そのまま常に、例えば破算手続開始決定のときに、本当はなければいけないものを、破産開始後にきちんとまた補充しなければいけないのかといったら、そこまでの義務ではないよねというような議論もあったやに思っております。   そういった観点からすると、一般的にこういった担保価値維持義務というのがあるということは、理解はもちろんできますけれども、あえてわざわざ置く必要があるのかと。そういったものを置くことによって、また、担保価値維持義務の範囲がどこまでなのか、あるいは、担保価値維持義務といったときに、その中身としてはいろいろな取引の中でいろいろな在り方があろうかと思います。それは契約の中で債権者と債務者がどういうふうにやりましょうというのを決めていくお話でもあろうかと思っておりますので、そういった債権的なものに委ねられてよいのではないかと、その意味では、ここでわざわざ規定をしなくてもいいのではないかと考えております。   すみません、皆様の今の4の議論と少し違ってしまいますけれども、問題意識としては以上でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   事務局からお話を伺う前に、問題をもう少し明らかにしたいのですが、阪口さんからも日比野さんからも、ゼロのときに対抗要件が具備できていないのならば安心して融資ができないとおっしゃったのですが、その意味がよく分からなくて、つまり、建物に対する抵当権の設定という議論があって、未完成の建物というか、まだ不動産として不存在の建物を目的物とする抵当権設定契約というのは無効であるという考え方があるのですね。そうすると、それは物権の対象がないようなものは駄目なのだという考え方で、抵当権設定契約は物権契約だからというのです。実は、私にとってみれば何を言っているのかさっぱり分からない議論なのですけれども、それはともかく、今回ここで出ている話では、空っぽの倉庫について譲渡担保の契約がなされましたという契約が無効だという話にはなっていないと思うのですよ。目的物が入った時点で、その目的物が譲渡担保の目的物となるとともに、その対抗要件がそれについて具備された状態になるというわけであって、それだけの話なので、実務で安心できないと。入ってこなければいずれにしても一円も銀行だって取れないわけですから、入ってきたら取れるというふうになるということでなぜいけないのかというのが、理由が私はよく分からなかったのです。これはお二人に対して。   2番目の、大量に売買するようなものは即時取得と違って、引渡しがなくてもいいのではないかと、そうしないと実務がうまく回らないのではないかというのは、そうなのかもしれないのですが、別に大量に売買するって譲渡担保の目的物だけではないですよね。でも、普通は即時取得の話として、売主が権利を持っていなかったら、行われているわけであって、どうしてそれが譲渡担保の目的物を譲渡するときには引渡しは不要だというふうになるのかというのが、少しよく分からなかったのですが、この2点をまず確認させていただければと思うのですが。   両方手を挙げていただいて、ありがとうございます。阪口さん、お願いします。 ○阪口幹事 まず1点目ですけれども、具体例でいうと、冬物暖房製品を仕入れるための資金を夏に貸すというイメージで考えていただいたらいいと思いますけれども、資金を貸しました、倉庫にはまだ一個もありません、秋ぐらいにやっと仕入れた段階で初めて対抗要件具備できるということに、この規律だとなってしまう。しかし、別の人も同じような貸付をやっていたら、実は第1順位になれないわけですよね、先ほどの例でいうと、夏から秋の間にもう一人別の人が貸して担保設定を受けたら、同順位になってしまうわけで、この規律だったら安心して貸せないですよね、というのが1点です。 ○道垣内部会長 なるほど、対抗要件の具備時期が二つが一つになるのが困ると、そういう話ですね。 ○阪口幹事 一番分かりやすい例でいうと、そうです。   二つ目の引渡し要件の話ですけれども、阿部先生の御意見に近いのですけれども、売っている人は無権利者ではなく所有者であって、売る権限は一定程度あるということがあり、その処分が通常の事業の範囲という非常に分かりにくいものを超えているという、その局面のときに、引渡しまで要求しますかというのが、まずベースにあります。   かつ、実際面で言っても、先ほど申し上げたとおり、今日発注しました、1週間後に物を引き取る予定だった、しかし1週間の間に相手方の状態が分かりました、そこで引き取っていいかどうかの判断を買主が迫られるというのは酷です。もし引き取るべきものを引き取らなかったら、逆に買主が債務不履行になってしまいます。迅速性というのはもちろんほかの取引でもあるのかも分からないけれども、この局面で元々の所有者が売っているという、本来問題ないはずの取引なのに、引渡し時の善意無過失まで要求されるのは酷だという実務的な感覚として申し上げています。理論的な説明ではないかも分かりません。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○日比野委員 私も阪口先生がおっしゃったのとほぼ同じなのですけれども、金融機関の立場とすると、自分が担保権の設定を受けた後、目的物が実際に搬入されるまでの間に他の担保権者が登場したときに、同順位になってしまうということだとすると、当初融資をする際に前提としていた条件と異なることになってしまいますので、そこが問題というかリスクになると。なので、道垣内部会長のお話からすれば、実際に物が入ってきたときに、今ご説明いただいたようなケースでも、先に対抗要件の設定行為をした方が第1順位になるということであれば、まだ安心する余地があるかなと思うのですけれども、恐らくそれは解釈になるのか、あるいは、どちらかというとこの書き方からすると同順位となるのが自然だろうと思いましたので、それだと困ると考えた次第です。 ○道垣内部会長 分かりました。どうも。   では、事務局にあれする前に、水津さんから手が挙がっていますので、水津さん、お願いします。 ○水津幹事 4のルールについて、引渡しを要するかどうか、所有者による権限外の処分は無権利者による処分と別に扱われるのではないかという問題に関しては、前に発言したことと同じですけれども、抵当権のルールとの整合性やそれに対する影響も考慮していただけたらと思います。一般的な理解によれば、抵当権の効力が及ぶ物が抵当不動産から分離・搬出された場合において、その物が抵当不動産上で処分されたときは、その物について抵当権の効力が及んでいることを処分の相手方が知っていたとしても、その処分が通常の使用収益の範囲内であると信じており、そのことについて過失がなかったときは、その処分の相手方は、192条の規定に基づいて抵当権の負担のない所有権を取得するとされているように思います。ここでは、引渡しが必要であり、その引渡しとしては占有改定によるものでは足りないこととなります。4について、引渡しを要するかどうか、所有者による権限外の処分は無権利者による処分と別に扱われるのではないかを考えるに当たっては、どちらの結論になるにせよ、関連する問題との整合性やそれに対する影響を意識し、ここで扱っている問題は異なる問題であるとしたり、異なる考慮が必要であるとしたり等するのであれば、その説明を付けていただけたらと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、私が途中で介入して申し訳ございませんでしたが、事務局の方から何かございましたら、お願いいたします。 ○笹井幹事 いずれも、現に存在しない場合についてどうなるのかというのは、ここも悩ましいところだと思いますし、中間試案前には私自身も別のことを申し上げていたかと思いますので、何らかの形でより妥当で、かつ明確なルールが作れるのであれば、今の提案にこだわっているわけではありません。   ただ、前提として現状の実務がこうであるという御指摘があって、実務家の先生方がおっしゃるので、そうなのかなと思うのですが、他方でそれがどこまで確立しているのかというのが私にはよく分からなくて、引き渡す物が何もない場合には何も引き渡せないことになるので、それによって本当に対抗要件が具備できるのかというところについて、私の方で十分に把握できませんでしたので、何かありましたら御教示いただければと思います。   あと、現状は何もなくても引渡しをすることができるとしても、それをどこまで明確に書けるかという問題はあるのかなと思います。結局ここで少し迷った末に、中間試案で私が申し上げたこととは別のことを書きましたのは、将来的にどこか場所を定めておいて、そこに将来的に何か入ってきたらそれを譲渡担保に取りますというような合意をしていた場合に、それが非常に遠い将来のことであっても、事前に対抗要件を具備できるということになると、それはやはり行きすぎなのだろうと思います。そうすると、倉庫は確保されていて、事業も実際に始まっているなど、そういう条件があれば、対抗要件を具備できるということにしておいても、実質的にはそれほど違和感はない結論なのかなと思いますが、その対抗要件ができる場合と、余りに、例えば、私が定年後に始めようと思っているパン屋の、自宅に材料として置いてある小麦みたいなものに今、譲渡担保権を設定して対抗要件を具備できるかというと、それはやはりなかなか難しいのではないかという気もしますので、そこの境目というのをどういうふうに区切るのかというところで、明確なルールが作れるのかというところが一つの課題なのかなと思いました。   4のところも、ここも先ほど申し上げましたように、実質論としてどこが明確なのかということだろうと思いまして、実務的な感覚というのは理解を致しましたけれども、他方でここは今何もないといいうか、あるとすれば即時取得で保護されているだけですので、そこを更に、今の提案でも現状よりは、処分の相手方を保護していることになるわけですけれども、そこが不十分であるとすると、もう少し広げるとおっしゃいましたが、どういうふうに広げていくのかというところについて具体的に御教示いただければと思います。   そのときに、事業の範囲についてのイメージが不安定だということもございまして、確かに通常の事業の範囲という文言自体、それほど明確ではないのかもしれませんが、これは平成18年の最高裁判決で、営業を事業に変えましたけれども、通常の営業の範囲という言葉が用いられている、それが恐らく現行のルールとして妥当しているのだと思いますけれども、事務当局としてはそれをベースに議論をしているつもりでしたので、もう少し議論の仕方として工夫の余地があるということであれば、どの辺りをどういうふうに議論していくのかということについて、少し具体的な御教示を頂ければと思います。 ○道垣内部会長 担保価値維持義務については。 ○笹井幹事 そうですね、確かにここもルールの明確性をどこまで置けるかという問題もありますし、債権的なので委ねてもいいのではないかという御指摘、最終的に明確なルールが置けないから諦めるとか、そういう余地はあるかもしれませんが、ただ、ここで、何か抽象的なものでも置いておいた方がよいと思いましたのは、部会の中でも中間試案前に指摘がありましたように、集合物というか、構成部分が変動する集合動産について一定の処分権があるというのは、やはり担保権者が一定の時点における集合物の持っている価値を把握していて、それが、一方で処分権限があるけれども、その処分権限が取得されるのは、処分されるとともに入ってくるものが予定されていることによって、一定のバランスをとっているのかなという理解をしておりました。   そういう意味で、処分権限もあるのだけれども、それは担保価値維持義務があることによって支えられているという意味で、若干不明確なところもありますし、もちろん当事者間が合意することによってその範囲が変わってくるということはあるわけですけれども、何らかの手掛かりというか、その正当化根拠となる担保価値維持義務に関する規定を設けておいた方がよいのではないかと思ったということです。 ○道垣内部会長 その点については、また更にいろいろな御意見があろうかと思いますが、もう少し検討を続けていただければと思います。   最初の、ゼロのときにどうなるかというふうな話に関しては、事務局としては15ページから16ページに書いてあります最高裁の判示で、債務者が右集合物の構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には対抗要件を具備するに至ったものとするという、それに乗ろうと考えていらっしゃるということで、無理はないというふうなこともあろうかと思います。   また、ゼロでもいいという考え方というのは、個々の動産とやはり切り離した集合物というものを観念するという考え方なのですよね。空っぽでもいいからここに物があるのだと、そういう考え方なのですが、それを全体としてそういうふうなことに作っていない、比較的個々の動産に着目した形で作っているというところが、それがまた多数の考え方なのだろうと思うのです。ということになりましたときには、空っぽであるところの観念としての集合物というものの引渡しというものを、個々の動産と切り離した形で認めるというのがなかなか難しいだろうというのが、最初の事務局の提案だろうと思います。それが余り実務的に適切でないというふうなことになりましたら、また更に考える必要がありますし、日比野さんがおっしゃったように、対抗要件の具備時期というものが引渡し後でもいいのだけれども、それならば対抗要件の具備についての合意というものの先後関係で、その後の現実に入ってきたときの対抗要件の先後というのも決まるというふうな工夫が必要なのではないかというのもごもっともかと思いますので、更にその点も検討していただければと思います。   ほかにございますでしょうか。 ○藤澤幹事 延長しているところ申し訳ありません。今の点について少しコメントさせていただければと思います。阪口幹事、日比野委員は、将来のものに融資をする場合があって、そのニーズに応えるためには将来のものについて現時点で対抗要件を備える必要があるという御意見をおっしゃったのですけれども、これは道垣内先生がおっしゃった場合と逆の形でも個別物に跳ね返ってくる話ではないでしょうか。個別物についてだって、将来取得するものについて現時点で融資をするということは十分考えられます。このような場合にも、その時点で引渡しを可能として、その時点で担保権者の優先順位を決めるということはあってよいようにも思われます。私自身はそのように考えているのですけれども、質問する形となってしまって申し訳ないのですが、阪口幹事、日比野委員は、個別物についてそのようなニーズはお感じになっていないのかというのを少し伺ってみたいと思いました。 ○道垣内部会長 もしよろしければ、阪口さん、日比野さんの方から。 ○阪口幹事 阪口ですけれども、現在絶対にないかと言われたら、ないことはないのかなと思います。大型機械を作り上げていくため今から金を貸していき、担保取得するというケースが考えられます。ただ、そのときは物が出来上がるまでは担保取得しているとは思っていないのではないかとも思うのです。だから、そこは先ほどの集合物とは気持ちがかなり違うような気はします。気持ちが違うだけで法的には同じかと言われたら、そうかもしれませんが、今言われたような例が本当にあるのかどうかは少し自信はなくて、むしろ日比野さんの方にお願いしたいと思います。すみません。 ○日比野委員 ありがとうございます。私も個別の物について、恐らく高価な動産を購入する場合に、その資金ということになろうかと思うのですけれども、そのような場合については設定者イコール債務者、つまり購入者の側でも、引渡しと資金の支払というのを通常は同時に履行するということを念頭に置くと思いますので、そのように考えると、先行してその資金を出すときに、事後的に対抗要件を具備されるみたいなことというのは、現実的には多くないのではないかと思いました。もちろん私も全ての事例を把握しているわけではないのですけれども。   集合動産を担保で取るというような場合には、本当にその仕入れ資金と一対一でひも付いたものを融資するということでは必ずしもない場合もあろうかと思いますので、その辺りが少し違うのではないかと思います。なので、絶対にニーズがないかと言われると、そうではないかもしれませんけれども、やはり個別の場合は余りそのようなことが問題となることは多くないのではないかという印象を持ちました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。藤澤さんに1点だけ伺いたいのですが、それは通常の所有権移転でもそうなのですか。僕が藤澤さんに、何でもいいけれども何か売ると、まだ存在していないのだけれども売ると決めて、その時点で対抗要件が具備されていると考えるのですか、それとも担保取引に特有の規律なのですか。 ○藤澤幹事 担保取引に特有な規律として、そういうものがあってもいいのではないかと考えております。集合動産概念についても、判例は担保取引のときに限って承認していて、真正の所有権移転についてこのような集合動産概念を使わないと思います。それはなぜかというと、やはり事前にお金を貸していて、事後に入ってくる動産についても優先権を確保したいというニーズがあるからこそだと考えています。   日比野委員のお答えに、少し反論させていただければと思うところがあるのですけれども、輸入ファイナンスの場面では譲渡担保権をお使いになると思うのですが、この場合、個別動産譲渡担保権の法的構成でやっていらっしゃると思うのです。このときは、信用状を先に出してしまっていて、債務者の側がまだ動産の占有を持っていないような段階から、譲渡担保権の設定を受け、占有改定によって対抗要件を具備するという対応をとられていると思うのですが、これはその事例ではないのかと。つまり、債務者による動産の取得に先行してお金を貸して占有改定を受けているという事案ではないのかなと考えておりますが、いかがでしょうか。 ○日比野委員 確かにおっしゃるような側面はあると思うのですが、その場合はL/Cを出すわけですよね。ただ、まだあれですよね、物の引渡しがない段階での対抗要件具備を念頭に置いているのではないのでは。よくご質問が理解できていないかもしれず、即答できずに申し訳ありません。 ○道垣内部会長 何か実務的にまた細かいことがございましたら、お教えいただければと思います。藤澤さんに一言だけ申し上げますと、日本法の議論として、在庫が零の段階で融資を認めるために判例が集合物論を作ったというのは、私には全く賛成できない理解ですね。別にそれがいけないというわけではなくて、判例理論の理解として私は賛成できないというだけですが。   ほかに何かございますでしょうか。   まだこういうわけで、集合物譲渡担保にしてもいろいろな議論があり得て、まだ安定していないところがあろうかと思いますけれども、時間も44分も過ぎておりますので、今日はこの辺にさせていただければと思います。本当は債権についても議論をさせていただく予定だったのですが、私の不手際でこういうことになってしまいまして、大変申し訳ございません。   よろしければ、本日の審議はこの程度にさせていただいて、更にお考えをいただければと思います。今日不十分であった点は多々あろうとは思います。そのことにつきまして事務局等に個々的に御意見をお寄せいただいたり、あるいは実務的なニーズなどをお寄せいただいたりすることが求められておりますので、よろしくその点はお願いいたします。   それでは、本日の審議はこの程度にさせていただいて、次回の議事日程等につきまして事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 本日も長時間ありがとうございました。次回日程は令和5年5月23日火曜日、時間は午後1時30分から午後5時30分です。場所は法務省地下1階大会議室でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。だんだんリアルな出席者も増えてまいりました。感染者も増えておりますので、余り無理は言えませんけれども、たくさんの方にリアルにご出席いただけると私は大変うれしゅうございます。よろしくお願いいたします。   それでは、どうもありがとうございました。 −了−