法制審議会 担保法制部会 第35回会議 議事録 第1 日 時  令和5年7月11日(火) 自 午後1時31分                      至 午後6時01分 第2 場 所  法務省地下1階・大会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(3)(4) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○沖野部会長代理 それでは、予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第35回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は道垣内部会長が事情により会場での御出席が難しいということで、私、沖野が進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。   出欠の状況でございますけれども、本日は衣斐幹事が御欠席、佐久間委員が中座予定、大西委員、加藤幹事が途中退席予定と伺っております。   前回の部会後に委員等の交代がございましたので、御報告を致します。仁科委員が退任され、新たに間原委員が就任されました。また、青山幹事及び浅野幹事が退任され、新たに増田幹事及び亀山幹事が就任されました。新しく入られた方につきましては、それぞれ簡単な自己紹介をお願いしたいと存じます。 (委員等の自己紹介につき省略) ○沖野部会長代理 それでは、議事に入らせていただきますが、まず配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。事前に部会資料32「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(4)」及び部会資料29−4をお送りいたしました。部会資料32については、後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。部会資料29−4は、パブリック・コメントとして頂いた御意見のうち中間試案第16から第22までを対象としており、中間試案第23以降につきましては次回以降、部会資料29−5以下として随時送付いたします。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。   それでは、審議に入りたいと思います。まず、前回配布の部会資料31「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(3)」の積み残しの部分につきまして、議論を行いたいと思います。前回は、部会資料31の「第4 所有権留保売買による留保所有権の実行」まで御議論いただきましたので、本日は「第5 債権譲渡担保権の実行」について議論をお願いしたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 部会資料31の「第5 債権譲渡担保権の実行」について御説明いたします。   まず、「1 債権譲渡担保権者及び債権質権者の取立権限及び実行通知の要否」につきましては、中間試案第15−2(1)では、債権譲渡担保権者は、実行通知の到達から1週間の経過後に取立権限を取得するとの【案15.2.1.1】、その到達のときに取立権限を取得するとの【案15.2.1.1】の(注)、被担保債権の不履行により取立権限を取得するとの【案15.2.1.2】の三つの考え方を提示しておりました。   ここでは、部会資料30の第6の2において、動産譲渡担保権者は、被担保債権の不履行により、目的物の処分権限を取得するものとすることを提案していることなどを踏まえ、【案15.2.1.2】を採用し、債権譲渡担保権者は、被担保債権の不履行により、取立権限等を取得するものとすることを提案しております。債権質についても同様とすることを提案しております。   次に、「2 債権譲渡担保権の目的が金銭債権である場合に債権譲渡担保権者が取り立てることができる範囲」につきましては、中間試案から実質的な変更はございません。   「3 債権譲渡担保権又は債権質の目的である金銭債権の弁済期が被担保債権の弁済期前に到来した場合に、債権譲渡担保権者又は債権質権者が請求することができる内容」につきましては、中間試案第15−4(1)では、債権譲渡担保権の被担保債権の弁済期前に目的債権の弁済期が到来した場合について、債権譲渡担保権者は目的債権を直接に取り立てることができるとの【案15.4.1.1】と、債権譲渡担保権者は第三債務者に対して供託請求ができるものとしつつ、第三債務者は債務者対抗要件を具備した債権譲渡担保権者に対する弁済等を設定者に対抗できるとの【案15.4.1.2】を併記しておりました。ここでは、被担保債権の弁済期前に取立権限を認めることは担保の性質に反するなどの指摘があることや、第三債務者保護のためには第三債務者がした弁済を有効と認めれば足りることを踏まえ、【案15.4.1.2】を採用することを提案しており、債権質についても同様の規律とすることを提案しております。   この点については、第三債務者が弁済又は供託した場合の、その金銭の処理方法が問題となりますが、債権譲渡担保権者は、被担保債権の弁済期が到来するまでは、その弁済額又は供託額に相当する金銭を設定者に支払うことを要しないものとした上で、被担保債権の弁済期が到来したときは、その金銭が当然に被担保債権に充当され、残額があれば設定者に返還しなければならないものとすることを提案しており、この返還に際して利息を付す必要があるか否かについては隅付き括弧で両論を併記しております。   「4 債権譲渡担保権の目的が非金銭債権である場合の実行方法」については、中間試案から引き続き、債権譲渡担保権の目的が非金銭債権である場合において、債権譲渡担保権者が弁済として受けた物について動産譲渡担保権を有するものとする考え方と、動産質権を有するものとする考え方を併記しております。   「5 直接の取立て以外の実行方法」の(1)につきましては、中間試案では、債権譲渡担保権について帰属清算方式及び処分清算方式による私的実行を認めることを提案しておりましたところ、本文では、動産譲渡担保権の規律を準用することとしており、中間試案から実質的な変更はありませんが、目的物の引渡しを前提とする規律や他の担保権者に対する通知の規律は準用しないこととしております。   (2)については、中間試案では、債権譲渡担保権を債権執行手続によって実行することができるものとするか否かについては引き続き検討するものとしておりましたが、ここでは、第三債務者の利益を保護しつつ利害関係人の関与の機会を確保できるような形で債権執行手続による実行を認める仕組みを構築することが容易ではなく、また、これを認める具体的なニーズも指摘されていないことから、債権執行手続による実行を認めることについては見送ることを提案しております。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上となります。 ○沖野部会長代理 ありがとうございました。   それでは、第5全体につきまして今、御説明を受けまして、どなたからでも結構ですので、御意見等を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○片山委員 慶應義塾大学の片山でございます。どうもありがとうございます。今回の御提案で、中間試案のときは、実行通知をするのか、それとも直ちに取立てをすることができるのかという選択肢があった中で、【案15.2.1.2】を採用するということで、被担保債権の弁済期が到来する以前は供託請求をすることができるというのが今回の3(1)ということになるのですけれども、少し確認をさせていただきたい点がございます。それは、実行通知をしないということになりますと、あらかじめ第三債務者に対する対抗要件を具備している場合はいいのですが、今日お書きになっているのを拝見しますと、恐らく、登記で第三者対抗要件は備えているけれども通知はしていないという場合にも取り立てることができて、かつ、弁済期前である場合に供託請求ができると読めなくもないと思われますが、その理解でいいのか、それともやはり第三債務者対抗要件を備えた後でないと取立て等はできないという前提で考えていいのか、その点を確認させていただければと思いました。よろしくお願いいたします。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。今おっしゃるのは、第三債務者に対する対抗要件なくして取立て等ができるという趣旨なのかと、そういう御確認ですか。 ○片山委員 そうです。取立てと供託請求ですね。 ○沖野部会長代理 基本的にそれは備えなければならないと思いますが、確認ということですので、事務局から、ございますか。 ○笹井幹事 ここは飽くまで、取立てをするにしても供託請求をするにしても、それは担保権者としての権限としてそういうことができるということですので、担保権者であることが主張できなければ、そういう請求はできないということになろうかと思います。そういう意味では債務者対抗要件が必要だということになりますけれども、飽くまで対抗要件ですので、第三債務者の方が譲渡担保権者だということを認めるということはあり得ますから、そういった場合に、債務者対抗要件はないけれども第三債務者が担保権者と認めて支払った場合には、弁済あるいは供託として有効になり、目的債権が消滅するということになろうかと思います。 ○沖野部会長代理 片山委員、いかがですか。 ○片山委員 どうもありがとうございました。第三債務者対抗要件を備えていることが前提ということで確認できましたので、どうもありがとうございました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございました。   それ以外の点につきましても、いかがでしょうか。 ○道垣内部会長 異論があるわけではなくて、片山さんがそのように読めるように思いましたとおっしゃったことが気になっていて、読めるようなのであれば、その説明を変える必要があるだろうと思うのです。したがって、片山さんに、どの部分について説明にそういう誤解を招くような点があったのかということを御指摘いただいた方がいいのかなと思いまして、一言申し上げます。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。片山委員の御疑問というか御懸念を払拭するためには、表現の修正が必要かということになるかと思いますが、片山委員から更に補足していただくことがございますでしょうか。 ○片山委員 当然頭の中ではそのつもりで読んでいましたので、本文というかゴシックの部分を読んでいる限りはそのような印象を持たなかったのですが、補設問の部分で、後順位の譲渡担保権者の関係をどこかに書いていましたよね、そこで、あれっと思って確認したのですが、すいません、直ちに思い出せないのですけれども。 ○道垣内部会長 ごめんなさい、また後で御指摘いただければいいかと思うのですが、補足説明が誤解ないような形にしていく必要があります。重要な御指摘だと思いますので、後で事務局の方にお願いした方がいいのではないかと思います。 ○片山委員 また確認させていただきます。申し訳ございません。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。では、その箇所につきましては適宜、片山委員からまた別途、後ほどでも必要に応じて補足を頂くことにしまして、ゴシックについては債務者に対する対抗要件を備えているという前提で、債務者の方から認めるということは別だけれども、というもので、その前提で作られており、また、そういうものとして読んでいただいているということですので、もしあえて付けるならば、債務者対抗要件を備えた債権譲渡担保権者はとか、そんなふうになるのかもしれませんけれども、説明の方のということでしたので、そちらの方について後日というか適宜、御指摘を頂ければと思います。ありがとうございます。   そのほかの点はいかがでしょうか。 ○阪口幹事 阪口です。5(2)の、債権譲渡担保の執行手続については規定しないという部分について、少し私が誤解しているのかもしれないので、確認させていただきたいのです。   動産の譲渡担保の場合には、後順位担保権者は先順位担保権者の同意がない場合に、私的実行はできないが、執行手続を申し立てることができるという提案がされていますけれども、この5(2)で、債権譲渡担保の執行手続について規定を見送った場合には、後順位の債権譲渡担保権者は、先順位担保権者の同意がない場合には、何ができるのでしょうか。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。この点について、では事務局から前提としての理解ですとか、ありますでしょうか。 ○笹井幹事 御指摘の場合には、私的実行によることになりますので、先順位の同意を得て私的実行をする、あるいは先順位の担保権者が私的実行をした場合に、清算金が生ずるのであれば、そこに物上代位をしていくということになると思います。 ○阪口幹事 そうしますと、対象債権が先順位担保権者の被担保債権額に比して非常に大きな額の場合、例えば1,000万円で、第1順位担保権者の仮に100万円なら100万円の被担保債権のために譲渡されているという場合で、その第1順位は別に焦る必要がないのでほったらかしにしているというときに、後順位の人はじっとひたすら待つだけということになるという結論でいいのかどうか、そのような疑問が生じます。   動産の場合は先ほど申し上げたとおり、先順位の同意がなくても、競売手続に乗せれば手続は進むということになりますけれども、債権の場合には何も進まない。元々、後順位担保権の設定というのは、動産と債権では実情として少し違う面があるような気もしましたけれども、一応今のところの提案で行くと、後順位担保権の設定に関して動産と債権に区別は付けないということになっているのではないか。部会資料28で、一応そこは区別を付けないような状態になっているけれども、ここでは区別というか、結果の差が生じるのかどうかということの確認をしたいのですけれども。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。提案されている内容としては、裁判所の司法手続による担保権実行というのを債権については用意しないという話ですので、結論が違ってくると。前提として、その理由付けのところですけれども、必要性がどのくらいあるのかという点と、もう一つは、実効的な通知というのを、特に優先する譲渡担保権者の存在を覚知して、その行使の機会を与えるための制度を設けるのが非常に難しいのではないかという、その二つが説明にはなっているのですが、最初の必要性の点は、非常に金額が大きくて後順位が付いているような場合は、あり得るのではないかという点で、もう一つは、通知の話を実効的に仕組めるかというところが一つ残っているかとは思いますけれども、補足ですとか修正ですとか、頂くことがありますでしょうか、動産と債権での違い等について。 ○笹井幹事 今、沖野先生がまとめてくださったとおりかと思います。後順位が実行する必要性が非常に大きいので、また方法を検討する必要性があるということであれば、そこは検討したいと思いますけれども、そこを議論いただければと思います。 ○阪口幹事 阪口です。確かに債権の場合にはいろいろな問題が起きると思います。例えば、19ページの25行目以下に書いてある局面は、混合供託のようなものを認めることで第三債務者の保護は一定程度図れるのではないかとは思うのですけれども、ただ、そもそも先順位担保権の存在がどこまで分かるのかという問題は確かにある。ただ、それを言い出すと、結局何を優先して何を優先しないのかという問題かとは思います。元々、債権の後順位担保権というのはそれほど設定するわけではなく、グループ企業とかの場合はあるのだけれども、何でもかんでも現状、付けているわけではない。ただ、先ほど申し上げたとおり、現在提案されている部会資料では、後順位担保設定について動産と債権を区別しないことになっているので、ここで差が生じるのが本当にいいのかというところが気になったというところです。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。動産の方は対抗要件の具備方法について優先劣後を少し付けるということで、登記優先であればそれに依拠できるだろうという、それをしていなければ覚悟すべきというような話があり、債権についてはそれをやらないということが一つの理由とされていますけれども、そもそも、しかし実務上の必要性という点もございますので、今、日比野委員と阿部幹事からお手が挙がっておりますので、順番にお願いしたいと思います。 ○日比野委員 ありがとうございます。今の点とはまた別のところになるのですけれども、よろしゅうございますか。 ○沖野部会長代理 そうですか。阿部幹事はいかがですか。 ○阿部幹事 私も余り文脈として関係ないところです。 ○沖野部会長代理 そうですか。では、少し必要性の点について何か更に御指摘いただく点はございますでしょうか。今、具体的にも挙げていただいたグループ企業の例ですとか、債権がかなり高額であるような場合に活用したいというのがあるということでしたが、それに付け加えていただくような情報提供はございますでしょうか。   それでしたら、この点は、また別途御指摘があれば受け止めさせていただくことにして、今の御指摘を踏まえて、更にこれでいいのかということを検討していくということになろうかと思います。では、日比野委員、お願いします。 ○日比野委員 ありがとうございます。第5の3のウのところでございます。被担保債権の弁済期前に担保対象債権の弁済を受けたときに、利息を支払うかどうかというのが墨付き括弧で示されているというところでございますが、この場合の受領金というのは、被担保債権の弁済期までという、恐らく通常は比較的短い期間を、その被担保債権の充当のために、預かり保管しておくというような性質のものという印象を持っております。   確かに部会資料で、金銭を利用すること自体は妨げられないとされており、それはお金に色はないので、そのようなことになるのかと思いますけれども、基本的な性格としては短期間保管しておくべきものであろうと思います。一方で利息は資金を利用できることの対価ということになりますので、そうすると、この資金を担保権者が弁済期まで利用できるという前提を置いた上で利息を付すということは余り適切ではないように思います。   加えて、この提案の中では、供託をした場合においても、この墨付き括弧の可能性について、一応、議論の対象になっているかと思いますけれども、特に供託されている場合は、代り金は供託されているのに、その資金に対して担保権者が利息を付すということになってしまいますので、やはりこれも余り適切ではないのかなと思います。そうすると、利息を付すという墨付き括弧の御提案自体は不要なのではないかと考えております。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。   阿部幹事は、また別の点でしょうか。 ○阿部幹事 全く別の話です。 ○沖野部会長代理 今、利息を付けるかという点については、非常に短期であるということと目的との関係、それから、供託の場合は特に、供託について利息を付けるというのは供託時からか、供託金を受け取った時からなのでしょうかという話も、もう一つ御指摘いただいたかと思います。この利息を付けるかというのは、かなり細かいかもしれないけれども、実際には期間等によっても、あるいはその清算の手間というようなことも出てきますので、一方、資料の中では、敷金のような場合には担保でそれなりに長期になってもそのままの金額の返還であるというようなことも挙げられておりましたけれども、利息の点について、何か更に御指摘いただくところはございますでしょうか。 ○井上委員 井上です。念のための確認ですが、これは飽くまでも合意で排除することができることを前提にして議論すればいいのでしょうか。 ○笹井幹事 一応そこは合意で排除できるというつもりで書いてはおります。 ○沖野部会長代理 約定による対応は十分可能であるということを前提に、更にどちらがよいかというのを御検討いただくということになるかと思いますけれども。   それでは、ほかになければ、この点も御意見を頂いたということで、更に御検討いただくということでよろしいでしょうか。   阿部幹事、お待たせしました。では、お願いします。 ○阿部幹事 私は、資料の4、債権譲渡担保権の目的が非金銭債権である場合の実行方法というところで、動産譲渡担保権の弁済として受けた物の上について有する権利が動産譲渡担保権なのか、動産質権なのかというところで議論されているところについて、少し意見を申し上げたいと思いました。   以前の資料では、この弁済として受けた物について有する権利というのは物上代位なのだという話が書かれていたように思いまして、そうだとすると、債権譲渡担保権の効力がその動産に及ぶというふうに考えるのが自然なのかなと思いました。動産譲渡担保権を有するという議論に対する疑問として、譲渡されたわけではないものについて譲渡担保権を有することになるのは不自然であると書かれていますけれども、例えば、動産譲渡担保権に基づいて債権に物上代位するときでも、別に債権自体が譲渡されたわけではないですが、そこに譲渡担保権の効力が及ぶといったことはあるので、それは余り否定の理由にならないかなと思いました。   それから、譲渡担保権というのは非占有型であるにもかかわらず、この場合、その弁済として受けた物を担保権者は占有するはずではないかという点も、これも既に実行段階に入っているのだとすると、非占有担保だということを殊更強調する必要はないのではないかと思いました。   そのように考えていくと、債権質の場合に受け取った物について質権を有するというのと同じように、譲渡担保権の場合には受け取った物について譲渡担保権を有するということでよいのではないかと思いました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。今の点について、よろしいでしょうか。どちらかというと理論的な説明としてどうかということであり、譲渡担保権の目的財産が形を変えたということであれば、やはり譲渡担保権というのがむしろ自然であって、挙げられている2点というのは十分それをクリアできる理由があるということですけれども、逆の御意見などはございますか。   ありがとうございます。それでは、その他の点につきまして、いかがでしょうか。 ○井上委員 井上です。最初の片山委員の御発言及び道垣内部会長の御発言とも関わるのかもしれないのですけれども、今回、個別債権譲渡担保について取立権限が議論されています。本日、時間によっては後で集合債権についても同じような問題が出てくると思うのですけれども、取立権限といったときに何を意味するのかについて、以前にも申し上げて、繰り返しで恐縮なのですけれども、念頭に置いておかなければいけないと思うことは、通常、債権者がサービサーに債権回収を委任するように、弁済受領権限を授権するという側面に加えて、ここでは、回収したお金を自分の懐に入れることも意味するという意味で、ここでいう取立権限は、資金が最終的にどこに行くのかにも大きく関わる概念だということです。ですから、本人がその代理人に回収を委任するだけであれば、そこでいう回収権限は本人と代理人の両者が同時に持つこともあり得ると思いますけれども、ここで議論している取立権限は、どちらかに属するものとして考えるのかなと思います。   それで今回、事務局の御提案は、個別債権譲渡担保については、その意味の取立権限は担保権者にあると、実行前から担保権者にあるという整理だと思いますので、その点で、資料の16ページなどで、債権質と異なって、債権譲渡担保については、供託が行われた場合に、債権譲渡担保権を被供託者として債権譲渡担保権者が供託金還付請求権を有するという整理がなされていると理解しました。   私もそれでいいのかなと思いますし、後で出てくる集合債権のところでまた別途、議論した方がいいのかもしれないのですけれども、もしそうではなくて、判例とは離れますが、言わば担保的な構成を徹底して、不履行になるまではむしろ設定者が今申し上げたような意味での取立権限を有するというのがデフォルトルールになるという立場に立つこともあり得るとは思います。   いずれにしても、そういう意味で取立権限を考えるときには、個別債権譲渡担保については担保権者が取立権限を有すると理解しているのですが、第三債務者との関係では、先ほどの御説明のとおり、債務者対抗要件が更に要件として必要になりますので、そうすると、債務者対抗要件を備えていないけれども担保権者に取立権限があるという状況で、債務者が設定者に払うということが起こり得ると理解しています。   ごめんなさい、少し前置きが長くなりましたが、そうすると、17ページの4では、債権譲渡担保権者が弁済として物を受け取ったというシナリオが前提になっているのですが、一応考えておかなければいけないこととしては、設定者が弁済として物を受け取るということもあり得ると思います。それについては、今の阿部幹事のお立場に立てば当然かもしれませんけれども、設定者が履行期前に物を受け取った場合には、その物に対して債権譲渡担保権者が動産譲渡担保権を取得すると理解してよいのでしょうか。   すみません、長くなりましたが、以上です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。一つは、金銭の場合の取立権について、回収金についての処理がどうなるかということを御指摘いただいて、取り分け集合債権の方で問題になることかと思いましたけれども、ただ、履行期前で設定者の方はどうなるのかということが、質権と譲渡担保で違うのかという御指摘を頂いたということかと思います。   もう一つは、非金銭債権の4について、弁済として受けた物について有するという規律になっているのですけれども、仮に設定者がこれを受けたような場合にも、引き続き譲渡担保がその物に存在するということになるのかどうかという点が、更に新たに御指摘いただいたということになりますでしょうか。   これは、4のところですが、阿部幹事から更に今の点について御指摘がございますか。譲渡担保権者が弁済として受けたという、実行したというときにどうなるかということではなくて、まだ被担保債権が履行期前であって、設定者の方に渡してしまったという場合ということですね。何かお考えがありますか。 ○阿部幹事 私もやはりその場合であっても、物上代位のロジックで行けば、目的債権そのものはなくなって、その債権の目的である動産について物上代位でその譲渡担保権の効力が及ぶと考えるのが自然ではないかと思いながら、今の井上委員のお話を伺っていました。そもそも有体物引渡請求権を担保に入れるのはどういう場合なのかというのが、いまだによく分からないのですけれども、有体物を担保とせず引渡請求権だけを担保に入れるつもりで担保権設定するということは余り考えにくいような気がするので、そういう意味でも、物上代位のようなものを認めて差し支えないのではないかと思いました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。道垣内部会長、片山委員からお手が挙がっていますので、この順でお願いしたいと思います。 ○道垣内部会長 流れと関係なくてもよろしいでしょうか。 ○沖野部会長代理 井上委員の御指摘についてですか、それと関係なくですか。 ○道垣内部会長 関係ありません。 ○沖野部会長代理 井上委員の御指摘とは関係ないのですね。片山委員は関係あることですか。 ○片山委員 そうですね、関係あるといえば関係もあるし、関係ないといえば関係ないという、少し難しいところです。 ○沖野部会長代理 あるかもしれないということで、片山委員に先にお願いします。 ○片山委員 それでは、僭越ながら先に発言させていただきます。恐らく私一人が分かっていないような気もしておりますが、先ほどの被担保債権の弁済期到来前に供託させる話なのですけれども、供託させることができるというのはどういう意味なのかという点が、また分からなくなってきました。要するに、弁済期到来前は直接取立てはできないということですね。その理解が正しいということであるとしたら、供託をさせることはできるということですと、それ以外の方法があり、選択肢の一つが供託であるというように読めますが、それ以外の方法があるのでしょうか。それから、逆に、もし供託を請求しないで取り立てて、債務者の方がそれに応じて支払ってしまったらどうなるのかという点がよく分からなくなってきました。供託をさせることができるということの意味を再度確認ができればと思って質問させていただいた次第です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。道垣内部会長は、これらとも違う点ですか。 ○道垣内部会長 片山さんのお話は、井上さんの1つ前の発言に関係しているということなのだろうと思うのですが、その意味では私も、1つ前の発言に関係しているので、少し発言させていただきます。   私が気になりましたのは、利息を払うか払わないかという問題につきまして、特約は許されるのですかという質問に対して、笹井さんの方から特約は許されると考えていますというお返事があったことに関連します。受け取った後にお金を返すまでの間、手元にあるわけですが、そのときに利息を返さなくてよいということが、いわゆる担保権の効力の問題であると考えると、特約は許されないのだと思うのです。返さなくてもいいとなっているときに返すという特約は、債権的な合意としては許されると思うのですけれども、返さなければいけないというふうに債権譲渡担保の効力を定めているときに、返さなくていいという約束を結んだからといって、私は譲渡担保権ないしは質権の物権的な内容が変更されることにはならないのではないかという気がしまして、そうすると簡単には特約を認めることはできないのではないかという気がいたします。   それとの関係で、結論として、私は利息は支払わなくていいのではないかと思っているのですけれども、全部受け取って、なぜ全部そのまま返さないままにしておけるのかというのが今一歩よく分からないのです。そのとき被担保債権額というのが明らかになっているならば、それはその被担保債権額を超える部分というのはさっさと設定者に返せばいいのではないかという気がするわけです。しかし、それは利息がたまったり、被担保債権額の変動があったりし得るので、額が決まらないということであるならば、今度は逆に、利息を付けられないと思うのです。結果論として利息がいくらになるか決まってくるみたいになってきてしまうので、にもかかわらず、早く返さなかったからという理由で、遅延損害金を支払わせるのは担保権者に酷であると思います。全体として少し、私がどこで誤解をしているのか分からないのですけれども、幾つか分からないところがあるなという気がいたしました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございました。利息問題につきましては、そもそも日比野委員から、利息は払わないということがよろしいというお考えが出されて、井上委員からは、合意による処理が可能かということで、そのときのデフォルトがどちらかというのはおっしゃらなかったわけですけれども、道垣内部会長によれば、利息を払わないというルールの下で、当事者が、しかしこういう場合にはその分を払うと決めるならばいいけれども、逆は非常に問題である、なぜなら担保権の効力についてのものだからと。それから、それ以外の場面の処理で、もう額も確定しているならば、直ちに残額を返すというか、そういうことでできるではないかとか、不確定であればそもそも利息の問題は出ないではないかという点から、利息は払わないという規律が望ましいのではないかと、全般的にはそういう方向の議論のように思われました。井上委員から、特約で可能というのは両面あり得るというお考えだったのかもしれないのですけれども、必ずしもそこを一方向に推されるという感じでもないのかなと思いましたが、すみません、井上委員、この点、何かありますか。 ○井上委員 実際には、特約が可能だということになると、レンダー側は利息を付さなくてよいという特約を入れるのだろう、ということを念頭に置きながら質問しておりました。 ○沖野部会長代理 なるほど。いずれにせよ払わないということになるのではないかということですから、これまで出された意見については、利息は付けないというのが望ましいだろうというのが大体の御意見と伺いました。   それから、供託関係なのですけれども、片山委員からの御質問について、供託させることができるという意味についてどうなるかということですけれども、被担保債権の履行期前はもちろん不履行もないので取立てはできないけれども、受領権の方はあるということかと思いましたけれども、そうすると何ができるかというと、担保権者としては供託を請求するしかないということではないか、それ以外の方法があるのかということでしたが、正に供託請求かなと思いました。それに対して、そうであるにもかかわらず、担保権者の方が取立権限は直接にはまだ具体化していないという段階で第三債務者に請求して、第三債務者が払ってしまったらどうなるかという点ですが、受領権限はあるなら、第三債務者自身はそれで弁済としては有効ということになりそうです。担保権者は、取りあえず結局、保持するのか返すのかと、そういうことですかね。少し問題の設定を間違っているかもしれませんけれども、片山委員の御質問は、そういうことでよろしいですか。 ○片山委員 そうですね、そもそも第三債務者の立場からしますと、恐らく被担保債権の弁済期が到来しているかどうかというような話は分からないことかと思いますので、恐らく譲渡担保権者の方で取り立ててきたら払わざるを得ない、そのときに、払った弁済が本来は供託させなければいけないので無効ですというようなことになっては、第三債務者としては安心して弁済ができないというところはあるかと思いましたので、恐らく沖野先生がおまとめになったことでよろしいかと思います。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。14ページの3(1)イが、第三債務者の方からは、第三債務者対抗要件を備えているのであれば、担保権者に対する弁済をもって設定者に対抗することができるということですから、それのきっかけが、担保権者からの請求に応じてそうしたということかどうかで違ってくるということではないのかなと思っておりましたけれども、この片山委員の御質問について、更にございますか。阿部幹事は、今の点について更に補足を頂く点でしょうか。 ○阿部幹事 ええ、今、沖野部会長代理がおっしゃったように、片山委員の御疑問の問題というのは、正に3(1)イが適用される場面なのではないかと思いました。担保権者は供託させることしかできなくて、取り立てることはできないけれども、実際に取り立てて、それに第三債務者が応じてしまったら、それはもう弁済として有効で設定者に対抗できます、というのが3(1)イではないですかね。片山委員のご疑問は、そうとは読めないということなのでしょうか。イの冒頭に「アに規定する場合には」と書いてありまして、その趣旨が分かりにくいかなと私も思ったのですが、これは供託とは関係ないわけですよね。「アに規定する場合」とは、「債権譲渡担保権の目的である金銭債権の弁済期が債権譲渡担保権者の債権の弁済期前に到来したとき」のことであって、第三債務者に供託させたということは「アに規定する場合」というところには含意されていないのだと思うのです。そのことが少し分かりにくいかなと思ったのですけれども。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。阿部幹事の御理解のとおりではないかと思っておりまして、したがって、ウのところで、供託又は弁済を受けた金銭についてはそのまま保持でき、引き渡すことを要しないというのが同じように係ってくるということかと思います。先ほど少し、どうなのですかねと言ってしまいましたが。まず、事務局から、よろしいですか。片山委員も、それでよろしいですか。 ○片山委員 どうもありがとうございます。供託させることができるという、この言い方ですが、それは単純に読むと、弁済、取立てもできるけれども供託をさせることができるということまでは行かない、しかし受領権限あるということまでは含意されているということすかね、イまで併せると。 ○沖野部会長代理 そうですね、元々の1(1)が、不履行があったときは取立てや実行ができるということですので、被担保債権の弁済期がまだ到来していないというときには、この要件も満たさないということかと思いますけれども、しかし供託は求めることができ、受領はできると、そういう規律にはなっているのかと思います。 ○片山委員 すみません、関連する質問ですが、そうしますと、弁済を受領できるということを前提に、先ほどの利息の問題とも関連するのかもしれませんけれども、分別管理のような義務を負わせるということまでは、やはり必要はなくて、自由に運用できるということを前提とするということでよろしいのですかね、その点も御確認をよろしくお願いいたします。 ○沖野部会長代理 本来他者に引き渡すべき部分がある金銭として保管しているということだと、先ほど日比野委員からは、一部預かっているという、一部は自分の方で充当させるものだというそういうものの保管者としての在り方一般ということになるのかと思いますけれども、そういうことでよろしいでしょうか。何かございますか。 ○笹井幹事 そうですね、もちろん金銭ですので金額とかそういったものは管理されているという前提ですけれども、例えば、口座を分けておかないといけないとか、そういう意味での分別管理まで、少なくともここの規定で意図しているというわけではございません。 ○沖野部会長代理 徹底するならばというのもあるかと思いますけれども、例えば敷金などの扱いと比べてどうかとか、いろいろと出てくるかとは思います。   それでは、井上委員から御指摘いただいた点が必ずしも解決はしていないかと思うのですが、ただ、大本の取立権の概念自体については集合債権の方でも出てまいりますので、むしろそちらの方で検討させていただくということでよろしいでしょうか。非金銭債権の場合に、設定者に渡してしまったらどうなるのかという問題があって、しかし、非金銭債権はそもそもそれを単体で譲渡担保にするというニーズなり場面なりがどういうことなのかということもございまして、その辺りは少し分からないということがあるので、どこまでぎりぎり詳細に詰めていくのかという問題はありそうですけれども。   もう一つ、この中では被供託者を誰とするかという問題が確認されており、先ほど井上委員からでしたでしょうか、ここに書かれているように、質権とは少し法律構成が違うということでよろしいのではないかと、具体的には被供託者については担保権者が被供託者であると、担保目的とはいえ譲渡がされているということも踏まえて、そのような法律構成を前提として規律していくということでいいのではないかという御指摘を頂いたかと思いますけれども、この点につきまして別のお考えはございますでしょうか。   今日あちこちに供託の話が出てまいりますので、この法律構成は一つ、基準になるというところがあるかと思います。また後で出てきたときに、やはりそうではないのではないかという御指摘があるようだったら、それはそのときに表明していただくことにしまして、それでは、前回の積み残しの部分は以上でよろしいでしょうか。ほかに御指摘などはございますか。   それでは、次のところに移りたいと思います。本日の部会資料、新たに配布されております32ですが、その「第1 集合債権を目的とする譲渡担保権の実行」、それから、取立権限が絡んでまいりますので、資料の順序どおりではないのですけれども、第8の「4 集合債権譲渡担保の目的である債権の取立権限・弁済受領権限の所在」という、この2項目を併せて御検討をお願いしたいと思います。事務当局において部会資料の御説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 第8の4は、第1の前提となる問題がございますので、まず、第8の「4 集合債権譲渡担保の目的である債権の取立権限・弁済受領権限の所在」から御説明させていただきます。   ここでは、集合債権譲渡担保の目的債権の取立て及び弁済の受領について、担保権者がどの段階でどのような権限を有するかということにつきまして問題提起をしております。まず、平成13年判決によりますと、集合債権譲渡担保における設定者の取立権限は、目的債権を譲り受けて、その取立権限を有する担保権者からの委任に基づくものと見ることが考えられます。この考え方を前提とすると、集合債権譲渡担保においては設定者だけでなく担保権者も取立権限を有することになり、また、設定者が自己の名で訴訟を提起して目的債権を回収することはできないこととなるように思われます。他方で、そのような帰結が適当でないとすれば、担保権者が実行に着手するまでは設定者のみが目的債権の取立権限を有しており、担保権者はこれを有していないと考えるべきであるようにも思われます。仮にこのように考えるとすれば、集合債権譲渡担保の実行において担保権者がどのようにして取立権限を取得するかを更に検討する必要があるほか、取立権限の所在を把握することが容易ではない第三債務者をどのようにして保護するかにつきましても検討する必要があると考えられます。   続きまして、第1に戻りまして、「第1 集合債権を目的とする譲渡担保権の実行」について御説明いたします。ここでは、集合債権譲渡担保の実行に関してどのような規定を設けるかにつきまして、三つの案をお示ししております。   【案1.1】は、中間試案第15−7のとおり、集合債権譲渡担保は個別債権を目的とする譲渡担保の集積であるとの理解を前提として、集合債権譲渡担保の私的実行について特別な規定を設けないものとする考え方です。この考え方は、集合債権譲渡担保における設定者の取立権限は担保権者から委任を受けたものであることを前提に、この委任の解除は契約一般の解除に関する規定に委ねることとして、特段の規定を設けないこととするものです。   これに対し、担保権者が実行に着手するまでは設定者のみが目的債権の取立権限を有しており、担保権者はこれを有していないと考えるとすれば、意思表示等の何らかの行為によって設定者の取立権限が担保権者に移転するという条文上の根拠を設ける必要があることから、【案1.2】又は【案1.3】を採用することが考えられます。これらの二つの案のうち【案1.2】は、担保権者が直接取立て等による私的実行をしようとするときは、あらかじめその旨を設定者に通知しなければならないものとした上で、その通知が設定者に到達したときは、設定者は目的債権の取立権限等を失うとするものです。   【案1.3】は、【案1.2】の考え方を前提としつつ、集合動産譲渡担保と同様に、担保の効力は通知の到達後に特定範囲に属することとなった債権には及ばないとの規律を更に設ける考え方です。この考え方は、中間試案の【案19.1.3】を倒産手続開始後だけでなく、平時においても適用する考え方と位置付けられます。【案1.3】を採用する場合であっても、一定のニーズがある場合には、実行後に発生する債権にも担保の効力を及ぼすことを認める必要があるとも考えられますが、これについて具体的にどのような要件を設定するかについては様々な考え方があり得ることから、この点を(注)として取り上げております。   以上につきまして御議論いただければと思います。私からの説明は以上となります。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。既に関連して井上委員から、特に第8に関わる事項かと思いますけれども、取立権についての委任というのは、委任者が最終的に取立金を取得すると、その前段階で相殺をするとかそういうことはあるかもしれませんけれども、そういう前提での取立てであるのに対して、この場合は取り立てるということと取立金をどうするかという問題があり、取立金を自由に使える、あるいは処分できるという権能とセットになった取立権限ということなので、一般的な取立権の委任というものではないのだという御指摘が先ほどあったかと思います。   そのことからしますと、問題が二つ、具体的な問題として提起されておりますけれども、設定者が取立権限を有しているときに担保権者もまた取立てができるのか、この場合は取立金を自由にできるということではないと思われますので、しかし取立請求といいますか、それはできるのかということと、担保権者から取立権限を与えられているのだとすると、受任者になる設定者は訴訟を起こすときには、自分の名でというのではなくて、飽くまで代理の受任者として起こすことになるけれども、そういうことになるのか。具体的にいずれも違うということではないかと思うのですが、そういう帰結でよろしいかというのと、その帰結でよろしいとして、どういう法律構成ないし考え方によるかということを一つ、御議論いただくことになるのかと思います。先ほど既に井上委員から一定のお考えを出していただいたところではありますが。それから、その他の点につきましても、他の【案1.2】、【案1.3】といったところがございますので、併せて御意見を頂ければと思います。   井上委員から先に補足などを頂くことはございますか。 ○井上委員 ありがとうございます。そうしましたら、集合債権について、先ほどの発言を少し補足したいと思います。   今回、部会資料の27ページ末尾以下、先ほど御説明いただいた4のところで、集合債権譲渡担保についての取立権限の説明があります。今回の御提案によると、不履行になるまでは設定者が取立権限を持つことになっていて、その理由として、28ページの31行目辺りからですか、「設定者の取立権限は担保権者に本来帰属する取立権限を委任によって移転したものではなく、担保目的で債権を譲渡するという譲渡担保契約の性質から設定者に残される権限であると考えるべきであるように思われる。」という記述があります。   この前段部分、すなわち担保権者の取立権限を委任によって移転したものではないという考え方については賛同するものですけれども、担保目的で債権を譲渡する、つまり担保目的の範囲でのみ債権が移転しているにとどまるのだから、取立権限は設定者に残る性質のものであるという記述部分については、もしこういう説明をするのだとすると、集合債権に限らないのではないかという感じがして、先ほど発言した前の資料の部分に戻ってしまうのですけれども、デフォルトルールとしては、個別債権であっても担保目的でしか譲渡していない以上は、不履行にならない限りは、第三債務者との関係でも、利払金などを自由に使えるという観点からも、設定者が先ほど申し上げたような意味での取立権限を持つという考え方になじみやすいような記述に、この28ページのところは、なっているように思います。   しかし、むしろ事務局の今回の御提案は、個別と集合を分けて、集合についてなされているので、理由としては、担保目的の譲渡であることは当然前提ですけれども、それに加えて、集合債権譲渡担保は、集合動産譲渡担保でいえば通常の事業の範囲で処分権限があるというのと同様に、通常の事業の範囲で循環する部分に着目して、個別と区別して、設定者が先ほど申し上げた意味での取立権限、取り立てた上で自分の事業に資金を使うことができる権限を持つという説明をする方が、整合的なのかなと思いました。   差し当たり、以上です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございました。井上委員から、個別と集合とで違うという説明の仕方というか、考え方というのを出していただきましたが、では、阿部幹事、お願いします。 ○阿部幹事 ありがとうございます。第8の4なのですけれども、説明の最初の方で最高裁平成13年11月22日判決が引かれていますが、それとは違うものをもって集合債権譲渡担保のデフォルトルールとする趣旨と理解しました。   その理解を前提として、ということなのですが、しかし、譲渡担保権者は取立権限を持たないということになると、それは債権の譲受けを債務者に対抗できないということに等しいのではないかと思ったのです。先ほどの個別の債権譲渡担保で、被担保債権の弁済前ということだったら一応、供託をさせるにしても、自分がその供託金還付請求権の債権者になるということでしたので、それはそれでいいかなと思ったのですけれども、ここではおよそそういうこともできないわけで、そうすると、債権の譲受けを対抗できないということなのではないかと思います。   そうだとすると担保権設定時点では、仮に設定を通知したとしても債権譲渡の債務者対抗要件を備えられない、更にはそれを前提とする第三者対抗要件も備えられない、そういうことになるのではないかと思います。平成13年11月22日判決も対抗要件の判例ですよね、譲渡担保権者から設定者に取立権限が付与されていると解釈することによって、そのことは債権譲渡の対抗要件を備えることの妨げにならないという判例だったので、そこをひっくり返してしまうと結局、担保権設定時点では債権譲渡の対抗要件が備えられないということになって、債権譲渡の対抗要件でもって担保権設定の対抗要件とするというところと矛盾してしまうのではないかという問題が生ずるように思いました。そうした上で、集合債権譲渡担保に限って、債権譲渡の対抗要件とは異なる担保権設定そのものの対抗要件を用意する、という手もなきにしもあらずなのかもしれませんが、そこまでは資料でも考えられていないと思いますので、債権譲渡の対抗要件でもって担保権設定を対抗するというところとの矛盾が生じないのか、というところを問題として指摘したいと思いました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。債権の譲渡という構成そのものが揺らぐことになるのではないか、それから、個別の債権の場合との違いを十分に説明できないのではないか、供託の場合の取扱いも含めて、という御指摘だと思いますけれども、一方、理論的な説明としてどうかということとともに、具体的な帰結の在り方として、集合債権であり、かつ設定者が自由に取立てをして取立金をまた自由に使ってよいという、そういうタイプのものとして合意がされているというときに、担保権者の方、つまり譲渡担保権者は取立権はあるというのが阿部幹事のお考えでは、それがやはり望ましいということでしょうか、それとも、それを制約することは必要で、制約するとするとどういうことになるか、ということについてのお考えはありますでしょうか。 ○阿部幹事 いや、担保権者に取立権限があるということにしないと、債権が既に譲渡されているのだから債権譲渡の対抗要件を備えられますというところの前提が崩れてしまうのではないかと思いました。だから、債権譲渡の対抗要件でもって担保権設定の対抗要件としようとするのであれば、担保権者に取立権限があるとすることは避けられないのではないかと思いました。債権譲渡の対抗要件以外の方法で何か担保権設定固有の対抗要件を用意するというのだったら、あるかなと思うのですけれども、という趣旨でした。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。譲渡担保権者の地位からして、譲渡の対抗要件、譲渡担保ですけれども、担保目的譲渡の対抗要件とする限りにおいては、取立権限はあるし、そして、設定者の方も自己の名で訴訟で給付を請求することはできないというのが筋ということになりますでしょうか。 ○阿部幹事 そこはよく分からなくて、そういうふうなことになりそうだし、設定者が自己の名で請求することを許容すると、債務者として困るということは起こるかなと思ったのですけれども、そこは私としてはまだ態度決定を保留したいと思いました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。それでは、今の点につきまして、更に御意見や御指摘を頂けますでしょうか。具体的な帰結の点でも法律構成の点でも、異なる考え方が出ているかと思います。 ○井上委員 集合債権譲渡担保、集合債権という言葉を使わないとすれば将来債権譲渡担保かもしれませんが、いずれにしても、不履行が生ずるまでは設定者が回収金を自分の事業に使えるという合意をして設定された債権譲渡担保については、担保目的の限度で債権が譲渡されている、移転しているということと、それから、通常の事業の範囲で設定者が取り立てたお金を使えることからすると、その債権譲渡担保の設定において譲渡されているといいますか移転しているのは、先ほど申し上げたような意味の取立権限が設定者に残るような譲渡・移転であって、それは今の阿部先生の御発言からすると理屈に合わないのかもしれないですけれども、債権にはいろいろな権能がある中で、担保目的の限度で一定の範囲の債権を集合的に譲渡したときに、設定者に残る部分があるとすると、例えば動産でいう設定者留保権のようなものや集合動産でいう処分権限のようなものが債権についてもあり得るとすると、そういうものが設定者に残っていても、なお債権譲渡の対抗要件の枠組みの中で考えることが許されると私は考えておりました。また、今回の事務局は、そういう想定で提案されているのだろうと思っておりました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。この点に関しまして、阿部幹事、お願いします。 ○阿部幹事 私も、事務局の資料はそういう理解なのだろうと思ったのですけれども、しかし、現行法上の債権譲渡の対抗要件というのは、まず債務者対抗要件があって、それに確定日付を付けて第三者対抗要件にするということになっていて、債務者から見て債権譲渡があったといえるのかということが大事だと思うのです。債務者から見たときに、譲渡していますけれども取立権限はそのままですというのは、それは譲渡なのでしょうか。債務者が取立てを受けるときに、正にその譲渡が起こっているかどうか、それを対抗できるかどうかということが問題になるわけで、それなのに、譲渡はしました、しかし取立権限は移っていませんというのは、債務者から見たら、それは譲渡ではないのではないかということになりはしないかと思ったというのが、私の先ほどの発言の基になったところです。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。この問題ですが、これまでは帰属を明確にしないままでも立法が可能だということを前提として議論をしてきたように記憶しておりますが、この点をやはりきちんと理論的に一つの考え方を前提とした上で立法をすべきかどうか再度、態度決定が迫られているということかも知れませんが、その点は別として、この問題は他方、従前から議論していた循環型と累積型とのすみ分けをどうするかという問題とも関連すると思います。そのすみ分けをすべきだということであるならば、やはりこの集合債権概念を集合物と同じように取り込んで立法することは、一つの方向性であるとは思います。   ただ、その仕分ができないということであるならば、平成13年の判例が提示しているように、基本的にはもう債権譲渡によって債権は移転してしまっていて、取立権を委任しているというような形で構成せざるを得ないように、私自身は思っています。今回、立法に際して、一生懸命議論したのだけれども、最終的にやはりすみ分けは難しいという結論になったときにどうなるのか、どちらに引き寄せた立法を行うのかという点についていかがお考えなのかというのを確認させていただければと思います。よろしくお願いいたします。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。今の点について、こういう言い方がいいのかどうか分かりませんが、今までいわれていたのは循環型と累積型ですかね、そういう表現で切ろうとすること自体に対する批判もあるわけですが、その点の切り分けができるか、あるいは一定の要件を満たす場合にこちらというふうにいえるかというのは、第1の(注)でもある問題ということになりますでしょうか、どこまで入ってくるかという。ですから、ここの部分をどう考えるかということは、それはそれとして御議論いただくべきことかと思います。その上で、しかしこの切り分けが十分にはできない、明確化はできないということになったときに、どういう規律の在り方となるのかというのは、正にこの後、更に御検討いただくということになるかと思います。   それから、片山委員からは、ぎりぎり詰めていくとそうかもしれないけれども、その部分というのはある程度、両方の説明の可能性はあるかもしれないというふうにした上で、具体的な規律の内容を置くということはなお可能ではないかという点も御示唆を頂いたかと思います。   今までのところについて、更に補足を頂く点はございますか。御質問の内容ですけれども、この点についてどうお考えかという部分が、切り分けがうまくいかないときにどうするかというところでよろしいでしょうか。片山委員。 ○片山委員 そうですね、あと、要するに理論的な面を詰めるということであるならば、やはり集合債権という概念ですかね、集合物に相当するような集合債権といった概念を観念するかどうかという問題とも結び付いているような気がいたしますので、その点についても併せて確認が必要かと思いました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。理論的ないろいろな問題がテーブルに載っているわけなのですけれども、大塚関係官から手が挙がっておりますので、まず大塚関係官から御指摘いただきたいと思います。 ○大塚関係官 ありがとうございます。調査員の大塚です。私からは、阿部幹事の先ほどからの疑問についてです。私の理論的な理解が不十分というか、必ずしも理解できていないところがありますので、少し確認させていただきたく思います。   阿部幹事の御批判というのは、債権譲渡というためには取立権限の移転がなければいけないと、それがなければ債権譲渡とはいえないのではないかということなのだろうと思いますけれども、それは本当にそうなのでしょうかというのが素朴な疑問です。例えば、債権譲渡登記によれば現行法上も債務者対抗要件を備えていなくとも第三者対抗要件を備えられると、つまり前提としては債権譲渡がなされるということになりますが、それとは別の話なのでしょうかと、具体的にはそういった疑問になります。   ただ一方、それから離れて、具体的な結論といたしまして、担保権者から設定者に対する取立委任を観念した場合に、その結論として担保権者に取立権限が残ることに必ずしもならない可能性はあるのかなと思います。通常の取立委任が行われる場合には、委任者つまり債権者の取立権限を一定程度制限するということが行われておりますので、そういったものが併せて行われていると考えることも可能なのかなと思います。もちろんそういった合意みたいなものが物権的な効力を有するかどうかというのは、なお検討する余地はあると思いますけれども、いずれの立場を採るかによって、具体的な結論がそこまで変わってこないような気もいたします。 ○沖野部会長代理 ありがとうございました。井上委員からも、担保目的譲渡の対抗要件というときに、担保目的に制約された地位や権利しか持たないということだけれども、現在の債権譲渡の対抗要件でその地位は対抗できるというか、そういう制度になっており、ここでもそのような、譲渡担保権というのがそれで公示されるということで理解は十分可能ではないかという御指摘を頂いたかと思います。それに対して阿部幹事からは、第三債務者にとって果たしてそれは公示としてよく分かるのかという問題点も御指摘いただいたかと思います。大塚関係官からは、債務者以外の第三者対抗要件だけを備えているときの状況というお話がありましたが、あるいはそれは少しまた別の話なのかもしれません。最初の片山委員の御指摘にも関わりますけれども、債務者に対する対抗要件を備えていないときに権利行使ができるかというとできないという、そこの限りのことではないかともいえるかと思いますが、さらには、仮にそうではないというか、担保権者の方も法律構成上、取立権限を有するのだと、しかしながら、取立権を付与する委任の契約の中で、担保権者はそれを一定時期まで、一定の要件が備えられるまでは行使しないというような制約が付いた合意として形成していけば、その合意の効力の、誰に対して対抗できるかという問題はあるけれども、そういった方向も可能ではないかという御指摘を頂きました。   第1の【案1.1】というのは、特別な規定を設けないというのは結局、取立委任の契約の解除によって処理するということで、合意の方に全部寄せていくということなのですけれども、合意の内容自体については、更に今御指摘のような内容であるというふうに入れてくるということもあり得るのかもしれません。   少しあちこち行きましたけれども、阿部幹事から更に御指摘があるということで手が挙がっておりますか。 ○阿部幹事 はい、大塚関係官から私の発言の趣旨を正していただきましたので、少しお答えしたいと思ったのですけれども、私が先ほど申し上げたのは、債権譲渡の債務者対抗要件を、まず集合債権譲渡担保の設定の段階で備えることができるのかという問題で、そのときに、債務者からすると、取立権限と関係ない債権の帰属は、債務者からしたら関係ないのですよね。債務者からして関心があるのは、むしろ取立権限の方なので、だから取立権限がどちらにあるかということが債務者にとっては最も重要な問題なのではないかと思いました。だから、取立権限が移っていないというところで、そうだとすると債務者との関係で債務者対抗要件を備えるには時期尚早だという話になって、それを、まだ譲渡が起こっていないというふうにいうとすると、そうすると、債権譲渡登記も債権譲渡が起こっているということを前提とした対抗要件の具備ということになっていて、譲渡自体が起こる前には対抗要件が備えられないということだとしますと、結局そういったところにも波及してくるのかなと思いました、というのが先ほどの私の発言に対する補足です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。今の議論とも関連するかと思いますが、私自身は債権の帰属という点と別に、物権的な意味での取立権を理論的に考えることは十分可能だと思いますし、それを前提とした法制度を整備することはむしろ賛成ではあります。そのときに、対抗要件との関係ですけれども、それを前提とした対抗要件を整えないということであるならば、恐らく今後の理解の仕方としては、帰属に関する対抗要件というのが登記、そして取立権に関する対抗要件が債務者対抗要件という理解をして、その穴を埋めていくということは可能かと思いますし、それはそれで分かりやすい説明ということにはなるのかとは思ってはおります。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。今までのところで理論的な可能性について、また具体的な帰結についても両論ありつつ、御指摘いただいてきましたが、道垣内部会長、お願いします。 ○道垣内部会長 すみません、片山さんの御発言の最後の辺りを少し確認したいのですが、取立権についての対抗要件が債務者対抗要件だとしたときに、その集合債権譲渡担保に関して確定日付ある証書による通知又は承諾という方法を採って対抗要件を具備した場合には、取立権は最初から譲渡担保権者にあるとお考えなのですか。 ○片山委員 そうなるのではないですかね。 ○道垣内部会長 そうなのですかね。いや、そうならば、ほとんどそれは阿部さんと一緒だと思うのです。債権譲渡の対抗要件を取ってしまえば、その取立権は必然的に譲り受けたというふうな形の表示になっている人に移りますよということであればね。ただ、大塚さんがおっしゃったような動産債権譲渡特例法上の対抗要件が具備された場合には、債務者対抗要件と第三者対抗要件とが分離し得るので、分けて考える可能性があるのは確かですが、それだけの話になっているような気がします。より根本的には、およそ債権譲渡の対抗要件と同じタイプの対抗要件を備えたら、取立権がそこに表示されている譲受人という人に移るということを示しているのかというところであり、井上さんは、いや、それはその譲渡担保というふうなものの実体的な設定として存在しているのが譲渡担保であり、その実体的な権利内容として、取立権が一定のときまでないというのであるならば、幾ら債権譲渡の対抗要件の形を採ったとしても、それは当然に取立権があるということにはならないでしょうと、それは実体的な効力の問題として別に考えるでしょうという話だったような気がするのですけれども。私は井上さんの味方なのですが、片山さんが味方か敵かを確認したくて、最初は味方なのかなと思って話を伺っていたら、最後は阿部派かとか思って、どちらなのだろうという気がしたものですから。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。意見分布が非常に明確になったかと思いますけれども、もう一つ、今、理論的な可能性についていろいろと御指摘いただきました。かなりいろいろな可能性があるというふうに伺いまして、どれかが唯一というわけではないので、少し整理をする必要があるかとは思っておりますが、実務的な必要性といいますか、そういう点は井上委員から御指摘いただいたのですが、これについては基本的に井上委員がおっしゃるような、井上委員からは理論的な説明も頂いたわけなのですけれども、実務的にはこのようなタイプの、先ほど来、循環するといわれたタイプの集合債権的な将来債権の譲渡のときに、設定者が取立権限を有し取立金も使えるという場合に、担保権者がなお取立権限を有するとか、設定者が自己の名前ではできないとか、そういう帰結ではない方がむしろ実務的にはよろしいのではないかという、そのニーズ等の点では、それはそのような理解でよろしいでしょうか。だからといって制度がうまく構築できるかというのは、また両方考えていかなければいけないと思いますけれども、これについては特に異論はないということでよろしいですか。訴訟の方はよく分からない面もございまして、阿部幹事も、訴訟がどうなるのかというのはまた少し違うかなというニュアンスも出しておられたかと思いますが、ニーズという点では、よろしいでしょうか。   それでしたら、この点についてはかなり御議論を頂きましたが、第1の【案1.2】、それから【案1.3】について、それから、先ほど片山委員からは、特に(注)に関連するかと思いますけれども、通知の後もなお効力が及んでいくのか、もう及ばないということになるのかということについて、【案1.3】は、及ばないという考え方が出されているわけなのですけれども、一定類型のものは及ぼした方がいいというようなことがあるかもしれず、そうしたときにはその要件立て、場面の切り分けというのが必要になってくるということかと思いますが、そもそも【案1.3】でいいのかどうかということも含めてですが、第1の点について、更に御指摘を頂くことがございますでしょうか。 ○村上委員 第1の1についてですけれども、パブリック・コメントでも、突然実行されると設定者の資金計画が大きく狂うことになるという御指摘もありました。また、先ほど来、御議論もありましたけれども、取立権限の所在の明確性という観点からも、私的実行開始時の通知や譲渡担保権の特定範囲についての規律を設けることは妥当ではないかと考えます。【案1.2】と【案1.3】とございますけれども、【案1.2】については、累積的な担保権の設定は過剰担保となるおそれがあり、一般債権者の保護の観点からは認めるべきではないと考えておりまして、実行後に発生した債権には譲渡担保権が及ばないとする【案1.3】が適切ではないかと考えます。また、(注)について、一定の要件を満たす場合には例外的に累積的な担保権設定を認める旨の記載がございますが、この要件をどのように定義できるのかというのは不透明でありまして、あくまでも例外的な扱いとなるような限定的な類型化が難しいのであれば、認めるべきではないのではないかと考えます。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。 ○井上委員 何度もすみません。第1のところですけれども、【案1.1】は、特別な規定を設けない、すなわち個別債権の譲渡担保と基本的には余り区別しなくてもよいという考え方の下に、将来債権の譲渡は、輪切りではなくて、多数の債権の束として、まとめて譲渡担保に入れられるという考え方に基づいているのだろうと理解しています。   他方で【案1.3】は、集合物論に近い感じで、担保の場合は、将来債権といいますか集合債権であっても集合動産と同じように輪切りで効力が及んで、かつ1回限りで固定化するという立場なのだろうと思います。(注)という別ルートを設けるかどうかは別としてですね。   その間にある【案1.2】は、ここでは【案1.3】の(2)がないものとして提案されているのですけれども、ただ、どうも輪切りのような考え方になっているようです。しかし、【案1.2】を更に二つに分けてもいいのかもしれません。【案1.2】を、先ほど来議論している取立権限が実行時まで設定者にあるけれども実行時に担保権者に移るという類型と考えるとすると、そこには輪切り型も、累積型も、両方結び付き得るのではないかと思うのです。今回の御提案の【案1.2】(2)には、「(1)の通知が到達したときは、債権譲渡担保設定者は、その時に特定範囲に属していた債権の取立て、譲渡及び相殺、免除、その他の債権を消滅させる行為をする権利を失う」となっているのですけれども、その時に存在していた債権だけに着目した取立権限の喪失ではなくて、その時以降の取立権限が設定者から担保権者に移るということもあり得るのかなと思いました。   そうだとすると、今の(2)の書きぶりのバリエーションとして、「その時に特定範囲に属していた債権」だけではなくて、「その時に特定範囲に属し、又はその後特定範囲に属することとなる債権」についても、「取立てその他の権利を失う」という規律であれば、【案1.2】は、平場に関していえば、累積的というか、輪切りではない形で継続的に特定範囲に入ってくる債権の取立権限、先ほど来申し上げているような意味での取立権限を、不履行になった後、その一定時点以降を担保権者に移すという形もあり得るのかなと思いました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。最後に御指摘になった点ですが、【案1.3】は【案1.2】と(1)、(2)は同じで、その上で通知到達後にその特定範囲に新たに入ってくる債権については担保権が及ばないとするものなわけですが、それに対して、言わば、【案1.2】の改版といいますか、との違いというのは、及ぶのだけれども、取立て…… ○井上委員 その時に存在していた債権だけでなくて、その後に特定範囲に入る、発生する債権についても担保権が及ぶし、担保権者が取立てできる、逆にいえば、設定者は取立権限を失う。 ○沖野部会長代理 なるほど。そうすると、今【案1.3】の(注)にあるものが、一定の要件を満たす場合にはというのではなくて、およそ一般的に、特定範囲になったものもなお担保権者の方に行くと、そういう理解でよろしいですか。 ○井上委員 はい。【案1.3】の(注)が想定している類型が不履行があるまでの担保権をどのように想定しているのかにもよるのですけれども、私が先ほど申し上げた【案1.2】のバリエーションとして想定していたのは、将来債権譲渡担保として、平場においては輪切りではなくてずっと担保権が及ぶ、だけれども不履行が起こるまでは取立権限は設定者に残る。ただ、そこで一度不履行になって担保が実行されると、取立権限がその後の分も含めて担保権者にずっと移るということで、いずれにしても平場の間はずっと担保権が及び続けるという類型もあり得るのではないかということです。もしかすると、【案1.3】の(注)で考えられているものも、それに近いのかもしれないのですが、その(注)の中身にもよると思います。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。そうしますと、今の御趣旨としては、及ばないものもあるけれども、及ぶものもあるということで、及ばないのが【案1.3】、及ぶものが【案1.2】と、そういうことになりますか。 ○井上委員 いえ、そうではなくて、【案1.2】の中に、輪切りで通知後の債権に及ばないものとその後の債権にも及ぶものがあるということです。 ○沖野部会長代理 【案1.2】のもと、平場であるから倒産とは違っており、基本的にはもうその後もずっと及んでいく、債権者の方に全部その取立権能とかがあってその後のものについても及んでいくと。設定者がその場合に、債権を更に作り出すかという問題はあるのかもしれませんけれども。 ○井上委員 むしろ、【案1.2】は、不履行が起こって実行されるまでは設定者に取立権限があるところが【案1.1】との違いかなと思うのですけれども。 ○沖野部会長代理 失礼しました。【案1.1】と【案1.2】の違いは、私的実行をするに当たって不履行があると、元々の取立ての委任契約を解除するだろうということなので、そちらに委ねればよく、特別な実行の通知などはしないと。【案1.2】の方は、必ずしも通常の取立委任ではないと考えられるので、実行の通知というのが更に必要であると、そういう理解かと思っておりましたが、ここは理解が合っておりますか。 ○井上委員 はい、同じです。 ○沖野部会長代理 同じ理解なのですね。分かりました、ありがとうございます。 ○日比野委員 前提となる理解が正しいのかが、今の話を聞いていて、余り自信がなくなってきてしまったのですけれども、金融機関の立場からしますと、先ほどの第8の4のような議論はいろいろあるのは重々承知の上で、その帰結として、何かよい整理ができればよいとは思うものの、やはり今の金融機関の担保権者としての実務の取り扱いは、平成13年の最判の理解を前提として構築されているところがありますので、【案1.1】を採用するのが整合的なのだろうと考えておりました。   【案1.2】というのは、第8の4で示されたコンセプトを前提にしているのだろうと私は理解しておりました。したがって、【案1.1】と【案1.2】及び【案1.3】というのは、第8の4で採っている考え方を採用するのかどうかというところで違ってくるという設計をしているのかなと思ったのですけれども、その前提の下で【案1.1】と考えていました。今のところまでは理解としてよろしいですかね、私が間違っているのですか。 ○沖野部会長代理 結構だと思いますが、事務局に確認させていただきたいと思います。いかがですか。 ○笹井幹事 やや混乱したところがあるのかもしれませんが、結論的に今の資料で、【案1.1】と【案1.2】がどう違っているかというと、先ほど沖野部会長代理からもありましたように、何も規定を設けないのか、最初に通知を要するのかどうかというところが形式的には違っているわけですけれども、その前提としては、【案1.1】においては、個別に考えていくにしても、それは、平成13年の最判の理解に従って、取立委任というものがくっついているので、その取立委任については委任の解除のようなところにもう委ねてしまって、実行手続として何かを規定する必要はないというのが【案1.1】についての背景となる考え方ということになります。   それに対して【案1.2】については、取立委任だけでは説明できないので、実行手続に関して取立権限とか受領権限とかを設定者から担保権者に移すための何らかのアクションが必要だということで、そのアクションを要件とするということを提案したものが【案1.2】ということになっておりますので、今はそういった背景として、取立委任ということで説明できるかどうかによって区別されているというのが今の資料の作り方ということになっております。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。日比野委員、それでよろしいですか。 ○日比野委員 分かりました。ありがとうございます。 ○沖野部会長代理 では、引き続きお願いします。そこまでの理解ということで、更にその先がおありかと思います。 ○日比野委員 ありがとうございます。そうしますと、金融機関の立場としては、やはり【案1.1】であろうと理解するところです。この点は、第1のところのコメントなのか、第8の4に関するコメントなのか、あるいはいずれでもないところに関連することもあるかもしれませんが、なぜ【案1.1】かということを述べますと、この取立権限につきましては、集合債権譲渡担保につきましては、担保権を設定した上で取立権限を留保するという実務運用があることを前提にして議論がされておるかと思います。ただ、実際に取り組んでいる実例を見ますと、設定と同時に第三債務者に通知をして、以後は譲渡担保権者の方に支払うようにしていただき、その資金を受領して弁済に充当して、残額を設定者の方にお返しするというサイクルで融資を継続しているというケースもありますし、当初は取立権の留保をするのですけれども、設定者の信用力の変化などによって、取立権限自体の留保は終了させて担保権者に支払ってもらうように第三債務者の方には通知をするのですが、担保権者と債務者との関係においては別に期限の利益を喪失させるというわけではなく、引き続き期限の利益を維持し、第三債務者から弁済を担保権者が受けると、期限の到来した貸金に充当し、剰余があれば設定者に返還するというケースもあります。あとは一番究極的というか、ただ恐らくこの資料でいうと、実行というのはこれを念頭に置いていると思うのですけれども、期限の利益を喪失させて、それと同時に取立権限の留保も解消するというものなど、いろいろなバリエーションがあろうかと思います。   今のような、いろいろなバリエーションをうまく説明できるというのは、やはり譲渡担保権の設定によって対象債権が確定的に一旦は担保権者の方に譲渡されているという平成13年の最判の考え方、この考え方自体も少し解釈に幅があるということかもしれませんが、その考え方に基づいて、このような実務ができるものと理解しておりまして、【案1.2】、あるいは第8の4ですかね、というような考え方で今申し上げたような現在の実務をうまく説明できるのかというのが、私としては不安に思っているところでございます。 ○沖野部会長代理 ありがとうございました。先ほど、実務的には設定者の方が取立権限を有して回収金も使えるようにすると、もちろんその一部を弁済に回すことは十分あり得るのですけれども、だから担保権者の方は実行を掛けるまでは取立てには介入しないということで基本的にはよろしいか、ということを伺ったわけなのですけれども、実務的にはそうではないタイプもかなりあるということで、必ずしもそれを前提に組むのは適切ではないのではないかと、そういう御指摘を頂いたということになりますでしょうか。 ○日比野委員 井上先生がおっしゃっていたように、取立権限を留保している状態、引き続き設定者の方が弁済を受けて、その資金を返済あるいは運転資金に使っていいと、そういう状態のときに担保権者の方が、ここで議論されているところの取立権限ですかね、を持っていないといけないということには必ずしもならないのだとは思うのですけれども、ただ一方で、取立権限の留保というのは設定者の信用力の状況によって解消することができるという設計にしているものは相応にありまして、一旦解消すれば、取立権限は当然に担保権者が有するということにならないと、それは困るということなのだろうと思います。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。その場合にも、被担保債権について期限が一気に到来するというわけではなくて、それはそのまま維持されたままでということも十分あり得るというか、そういう例もあるということでよろしいでしょうか。 ○日比野委員 はい、そのように理解しております。金融機関という立場だからかもしれませんけれども、やはり期限の利益を喪失するというのは債務者の事業活動に対して非常に重大な影響を与えることになりますので、信用力ですとか資金繰りの状況を見ながら、事業継続のリスクを取れるか取れないかというところについて留意をしつつ、期限の利益は引き続き供与して事業の活動は継続をしていただくというような、そういう状況というのはあるものと理解しております。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。非常に多様な分かれ方をしているので、もう少し集約の方向に本当は持っていきたいのですけれども、なかなか現時点では難しいかなと思いまして、いろいろ御指摘を頂きましたので、それを踏まえて一旦整理をさせていただくのがよろしいかと思っておりますけれども、そのような受け方でよろしいですか。 ○笹井幹事 日比野委員からいろいろなパターンがあるということをお伺いしまして、大変勉強になりました。また、第8の4につきまして様々な御意見を伺いましたので、それをまた踏まえて考えたいと思いますけれども、理論的な説明をどうするかということはともかくとして、実際にどういう法律関係をどうやって実現するかということが一番大事なのかなと思っております。日比野委員がおっしゃったいろいろなバリエーションがあるということについてなのですけれども、それを取立委任で説明しないといけないということではないということでよろしいでしょうか。つまり、今おっしゃったようなバリエーションを可能にするような仕組みがあれば、それを取立行為の委任とか何らかの代理とか、そういうことによって説明するということが重要なわけではないという理解でよろしいでしょうか。 ○日比野委員 ありがとうございます。今の点は恐らく何か確立した結論があるわけではないと思うのですけれども、今できていることの効果がしっかり実現できるのであれば、必ずしも、法律構成が決定的に重要だというわけではないようには思いますけれども、すみません、その御質問に対して明確になかなか答えるのは難しいと思いました。中途半端な回答で申し訳ありません。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。よろしいですか。   では、差し当たりといいますか、一旦この問題はここまでとさせていただきまして、部会資料の更に次に入らせていただきたいと思います。   大西委員、失礼しました、お願いします。 ○大西委員 これは私の理解不足かもしれませんが、第1の【案1.1】が、債権譲渡で取立権が移り、その後、それを委任で設定者にそれを戻す考え方に結びついており、【案1.2】は、そうではなくて設定者に取立権が留保され、不履行になった場合に移る案に結びついているという整理がなされているのですが、このことからすると、判例に従った考え方でも、結局、取立委任契約を解除するためには設定者に対して何らかの通知が要ると思うのです。そうすると、委任契約の話だから法文では書かないという考え方もあるかもしれませんが、そのような考え方ではないとすると、取立委任解除の通知を実行通知と捉えて、【案1.2】のような構成というのも考えられると思います。元々、実際にやられている担保関係の実務を法文化しようというのが今回の審議会の目的だとすると、そのような考え方もあるのかなと思った次第です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。【案1.1】はそれで、担保権の実行というための実行通知というのではなくて、大西委員が御理解くださったように、委任契約の解除ということで行けばいいのではないかという考え方に立っているわけですけれども、しかしながら、先ほど、法律構成をぎりぎり詰めていくということをせずにこういう規律というふうにするときには、いずれにせよ設定者には通知をしなければならなくて、その通知があり、具体的には、更にその通知が到達したときという、その時から取立権能というのが、留保されていたのか、与えられていたのかはともかくとして、担保権者のみが有するというような規律であることを明らかにするということは、それはあり得るのではないかと思っておりますけれども、むしろそこの法律構成は如何であれ、やはり通知をするということをより明確に書いた方がいいと、それをしていることはこういうことだという法律構成はまた別途可能性があると、そういうお考えということでよろしいでしょうか。 ○大西委員 はい、そういう趣旨でございます。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。今の点、よろしいですか。別の排他的な形になりますかね。 ○笹井幹事 いえ、私が先ほど日比野委員にお尋ねしたのも大西委員と同じような問題意識に基づくもので、【案1.1】に従うとしても結局、委任契約の解除というのをそれぞれ行うということになると、委任契約の解除という意思表示をするのか、【案1.2】のように、委任契約の解除ではないけれども、担保権者が取立権限を取得するための何らかのアクションという形で説明するかということなので、実質余り変わらないのではないかということで、先ほど御質問をしたということです。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。それぞれから趣旨をより明確にしていただいたと思います。   それでは、次の点に進ませていただきたいと思いますが、そうしますと、「第2 譲渡担保権等の別除権としての取扱い」、それから「第3 担保権実行手続中止命令に関する規律」、これはかなり項目がございまして、このうちの「1 担保権実行手続中止命令の適用の有無」から「3 担保権実行手続中止命令等を発令することができる時期の終期」、1から3までということで、まず取り扱っていただきたいと思います。それでは、事務当局におかれまして部会資料の説明をお願いします。 ○淺野関係官 それでは、「第2 譲渡担保権等の別除権としての取扱い」及び「第3 担保権実行手続中止命令に関する規律」のうち1から3までについて御説明いたします。   まず、5ページの第2では、破産手続及び再生手続において、譲渡担保権及び留保所有権を有する者を別除権者として、更生手続において、譲渡担保権及び留保所有権の被担保債権を有する者を更生担保権者として、それぞれ扱うことを提案しておりまして、これは中間試案から実質的な変更はありません。   同じページの、第3の「1 担保権実行手続中止命令の適用の有無」に関しても、(1)から(3)までについては中間試案から実質的な変更はありません。(4)では、流質契約の効力を認める場合の問題として、動産質に関する流質を中止命令の対象とするかについて問題提起しております。動産譲渡担保の実行と類似していることからすれば、対象とすることが考えられる一方で、動産質の目的物は担保権者が占有していることからしますと、そもそも中止命令を適用するニーズがあるのかどうか、また、流質があり得るのは不動産質権も同様であることから、動産質権についてのみ流質を対象とする点を明記することが妥当なのかという問題もあると考えられるところです。   6ページの「2 担保権実行手続禁止命令」についても、(1)から(5)までに関しては、中間試案において禁止命令の対象を実行手続一般とする案と、私的実行手続のみとする案を併記していた点について前者を採用した御提案としている点のみが中間試案からの修正点であり、それ以外については中間試案から実質的な変更はございません。(6)は、流質契約の効力を認める場合の問題としまして、動産質に関する流質を禁止命令の対象にするかについて問題提起をしております。   続きまして、7ページの「3 担保権実行手続中止命令等を発令することができる時期の終期」についてですが、(1)において、動産を目的とする譲渡担保権及び留保所有権について二つの案を併記するとともに、(2)では、債権を目的とする譲渡担保権及び債権質について、実行により目的である財産の全部の価値が充当されて被担保債権に係る債務が消滅するときまで、とする案を示しており、(2)については中間試案から実質的な変更はありません。   (1)については、【案3.3.1】として、実行により目的物である財産の全部の価値が充当されて被担保債権に係る債務が消滅するときまで、とする中間試案の提案を踏襲する案を示しつつ、部会資料30において受戻権に関する問題提起を行ったことも踏まえ、【案3.3.2】として、受戻権が消滅するときまでとする中間試案の(注)の考え方を踏襲する案をお示ししています。   受戻権という制度を設けた場合でも、被担保債権に係る債務が消滅した場合には中止命令を発令することができないこととなるという考え方が自然であるようにも思われる一方で、受戻権の行使が可能である場合には別除権協定に類似する協定を締結する余地はあり、受戻権が消滅するまでは中止命令の対象とすべきという考え方もあるところかと思います。このような結論を正当化するとしますと、例えば、帰属清算の通知や第三者への処分の効果を差押債権者に対抗することはできないとすることなども考えられますが、このような規定の合理性については、更に慎重な検討が必要と考えられるところです。また、更生手続における取扱いについても、やはり慎重な検討が必要と考えられるところです。   以上について御議論いただければと思います。私からの御説明は以上です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。   それでは、第2及び第3の1から3までにつきまして、どなたからでも結構ですので、御意見を頂きたいと存じます。いかがでしょうか。 ○松下委員 松下です。第3の1及び2については、御提案のとおりで特に異論はございません。   3の中止命令を発令できる終期についてです。確かに被担保債権に係る債務が消滅すれば担保権も消滅して、別除権協定を締結する余地がないというのが理論的には素直であることは間違いないのですが、他方で7ページの38行目以下に書いてあるとおり、受戻権があるとすれば、なお別除権協定類似の合意、すなわち別除権そのものではないですが、被担保債権を払って、しかし物は取り返すというようなことが、なおできていいように思えるのと、それから、そういうのは実務的にもニーズがありそうな気もします。受戻権があるうちは広い意味での実行はまだ完了していないと考えることもできるのではないかということで、【案3.3.2】も十分に考慮に値する案ではないかと思います。確かに8ページの1行目、あるいは5行目で指摘されているような問題はありますけれども、なお【案3.3.2】についてはこの段階で断念するのではなくて、検討のそ上にのせておく必要があろうかと思います。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。 ○大澤委員 そうですね、私の発言も今、松下先生がお話をされました3の終期のところについてです。実務的にはまず、別除権協定を結ぶに当たって何らか期間がないとどうにもならないというのがございます。特に、こういった動産にしても何しても、事業再生との関係では必須の資産ということなので、何らか短期間で、少なくとも担保権者との間で話合いをする最後のチャンスを残しておいていただかないと、事業再生、特に昨今は民事再生手続が非常に多いですけれども、こちらが成り立たないということがございます。   そういう観点から見て、今、【案3.3.1】と【案3.3.2】とございます。【案3.3.1】について、消滅するときまでというところについては、平時の受戻しのところで少しお話を致しましたが、帰属清算と処分清算で、帰属清算については少し猶予期間を設けるというような案もまだ残っているかと思います。一方で処分清算については、第三者の存在というのがあるので、そういった猶予期間を設けないという御提案であったかと思います。ただ、そうしますと結局、処分清算に実務が全部流れてしまいますので、そうすると、あっという間に担保の実行も終了します。そうすると、【案3.3.1】を採りますと、全く別除権協定を結ぶチャンスである前提となる担保権実行手続中止命令等を申し立てるチャンスがなくなってしまうという大きな問題が残るかと思います。   その中で、実務的にはやはり処分清算に関して猶予期間を設けていただくというのが、在り方としてはよいのかなと引き続き思っているところではございます。といいますのも、やはり処分清算に関していえば、第三者で入ってはきますけれども、担保権者からの担保実行に対しての第三者ということで、担保実行の環境の中でこういったものがなされますとなりますと、次に倒産手続なりこういった担保実行中止なりというような形でのツールが入ってくるということは、当該第三者におかれても恐らくある程度想定ができるお話なので、そういったリスクを踏まえてどう考えるか、その処分清算での処分を受けるかというふうに考えますから、少なくともその消滅というところについての猶予期間というのをなお考えたいというふうに個人的には思っております。   また、一方で【案3.3.2】につきましても、松下先生御指摘のとおりでして、先ほど申し上げたような別除権協定を目指した担保権実行手続中止命令等というものを作るチャンス、使うチャンスとして、先ほど申し上げた消滅時期を後ろ倒しにするのか、あるいは受戻権を消滅する時期というもので考えるのか、考え方はあろうかと思いますが、【案3.3.2】でも引き続きそういった後ろ倒しにする時間というものがあれば、再生債務者としては、そういった最後のチャンスで代理人が担保権者との間で早期に交渉して別除権協定に至ると、そのためのツールとしての実行手続中止命令というものを使いやすくなりますし、また、使えないと今度、逆に再生できないということにもなってしまいますので、是非この点については、【案3.3.1】における消滅期間の後ろ倒し、あるいは【案3.3.2】というものを使うということ、どちらかというのはありますけれども、実務的な使える期間の幅というものを考えていただければと思いました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。今、【案3.3.1】の消滅時の後ろ倒しというのは、むしろ平時というか、における猶予の話になり、それに対して、受戻権というのを入れるとすると、それでも【案3.3.1】なのかというと、それはやはり【案3.3.2】が実務のニーズからしても望まれるところであると、そういう御意見だと理解してよろしいでしょうか。 ○大澤委員 はい。【案3.3.1】は平時の方ですので、そことの連動で、平時が駄目だったら【案3.3.1】で、【案3.3.2】は考えなくていいというお話でもないと思っておりまして、やはり倒産局面における最後の再生債務者の事業再生への大きなツールであるということを御理解いただいて、御検討いただければと考えている次第です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございました。 ○山本委員 私もこの点につきましては前回、受戻権の議論のときに既に言及をしていたかと思いますけれども、この【案3.3.1】というのが通常の中止命令の観点からは素直であることは確かだと思いますけれども、理論的には【案3.3.2】のような考え方もあり得ないものではないと思っております。   恐らくは、受戻権が残っているとしても、実行後の担保権者、元担保権者といった方がいいのかもしれませんが、持っている権利は、厳密にはそれは取戻権なのだろうとは思うわけですけれども、ただ、やはり純粋の取戻権というか、完全な取戻権というか、それとはやはり違っていて、受戻権が留保されている所有権者の取戻権という意味で、括弧付きかもしれませんが、不完全な取戻権だというところからすれば、そこで受戻権を行使する機会を与えるために、一種の中止命令のような、あるいは禁止命令のようなものを置くということは、制度としては理論的にはあり得るだろうとは思っております。   ただ、やはりこれはこの資料では、担保権実行中止命令あるいは禁止命令の時期という位置付けがなされていますけれども、私はやはり性質は違うものなのだろうと、担保権を中止するとか、実行を中止するとか禁止するという話ではなくて、その受戻権の行使の機会を与えるための特別の中止命令、禁止命令という位置付けになるのかなと思っております。   取り分け、最後のところに言及されていますが、会社更生の手続、会社更生の手続との間で本当にそんな実務的なニーズがあるのかというのはよく分かりませんけれども、更生手続開始の後は、会社更生の場合はもう更生担保権と取戻権の二者択一しかないわけでありまして、したがって担保権についての中止命令というのはもちろん設けられていない、担保権は当然もう実行できなくなるわけですので、設けられていないわけでありますけれども、先ほどのような考え方を採れば、会社更生手続開始決定後についても受戻権を行使する余地があるのだとすれば、その間、何らかの中止命令的なものを設けるということも理論的には私はあり得るのだろうというふうに、そこまでするニーズというか立法事実があるかという問題はあろうかと思いますけれども、理論的にはそういうところにも波及してくるかなとは思っております。必ずしも設けるべきだという意見ではありませんが、受戻権の制度を入れた場合にはこういうことは考えられるのではないかと思っているという趣旨であります。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。この問題について、更に何か御意見はございますでしょうか。3(1)に関してということですけれども。 ○笹井幹事 ありがとうございました。今、山本和彦委員からありましたように、中止命令とか禁止命令とかとは性質の異なる特別な手続ということであれば、非常に理論的にはすっきりするのかなと思いますが、この受戻権を行使することができる期間中に担保権消滅請求までできるということにしておかなければならないのか、その点について、もし御意見がありましたら承りたいと思います。 ○沖野部会長代理 この点について、まず松下委員、それから山本委員の順でお願いします。 ○松下委員 ありがとうございます。松下です。私自身は担保権消滅請求までは認めなくてもいいのではないかと思います。飽くまでこの別除権協定類似の合意を締結する手段として、中止命令あるいはそれに近いものを設けるのがいいのではないかということであって、担保権消滅という、それ自体が手段ではなくて効果を持つような制度まで設ける必要はないのではないかと私は思います。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。 ○山本委員 私も同意見です。出口は、一つはもちろん受戻権の行使それ自体であり、それを背景として担保権者と交渉をして、分割弁済その他のいわゆる別除権協定的な、そういうような合意を結びに行くと、それが出口なのだろうと思っておりまして、担保権消滅請求、つまり債務を弁済しない、担保目的物の価額だけを払えば消滅させられるということは必要ないというか、そこは少し理論的には難しいのではないかと私自身は思っています。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。今の点は、それでよろしいですか。 ○阪口幹事 すみません、阪口です。理論的な話はおっしゃるとおりの面があるかと思いますけれども、ただ、現在の実務において別除権協定が成立するのも、後ろに担保権消滅制度が控えているからです。現実には使うことはほとんどないけれども、消滅請求制度があるから別除権協定が成立しているというのが実際です。ですので、理論的な説明はかなり苦しいことは理解しておりますけれども、受戻権の制度を設ける、後ろ倒しの制度を設けるとなれば、受戻権消滅まで中止命令、禁止命令等ができ、かつ消滅請求ができるというのが実務的には一定のニーズがあると理解しています。 ○大澤委員 理論的なところは確かに、別除権というよりも受戻権付き、負担付き所有権みたいなものがもう移転してしまっている状態になっているという【案3.3.2】の考え方からすると、消滅請求というところまでは考えづらいのではないかという御指摘は、ごもっともだとは思います。   ただ、基本的に再生債務者等の代理人として交渉している限りにおいては、やはり最後、別除権協定がうまくいかないと、お互いにうまく歩み寄りができないというようなことが起き得るわけですけれども、その後ろの背景として、先ほど阪口先生もおっしゃられましたとおり、消滅請求も含めて考えるよというところもあってお互いに歩み寄るというようなところは現実問題としてはあるところです。その現実問題をどこまで消滅請求に及ぼすのかというところは難しいというのは、私も今のお話も伺って理解もしておりますが、ただ、そういう実務と、あとお互いの交渉に当たっての背景として踏まえるべき内容として消滅請求があるということを御理解いただきたいとは思っているところです。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。実務的にはニーズがあるということですが、もう既に手続で担保権は一旦は消滅している中で、更に担保権消滅請求で受戻権なら被担保債権全額を払うべきところ、より減縮された価格で消滅させることもできると、そういうお考えでよろしいでしょうか、それが必要であると。 ○阪口幹事 阪口です。前回申し上げたけれども、そこも含めて、結局は債務消滅時期をどうすべきかの議論がまた始まってしまうわけですよね。ここの論点で、もう所有権は移転している、受戻権負担付きでも所有権は所有権だよというところが強調されると、ではその状態になるまでに時間を下さいという議論をもう一遍しなければいけなくなる。したがって、バランスをどこでとるかだとは思うのですけれども、受戻権という負担の付いた所有権は、まだここでいう別除権なり担保権なりに含まれるというふうに概念の拡張をお願いしたい。かなり政策的な立法で申し訳ないけれども、そのようなことを考えています。元々所有権留保だって、本来的には所有権だったものが担保権だ、別除権だということで議論されているわけですから、受戻権というマイナス部分が付いている限りは、まだ完全な所有権でないという議論の余地は残っているのではないかとは思っています。感覚的な議論で申し訳ありませんけれども。 ○沖野部会長代理 いえ、ありがとうございます。   2点お伺いしたいことがございまして、一つは、会社更生についてどうかという御指摘が資料の中にも含まれており、先ほど山本和彦委員からは、そうすべきだということでは必ずしもないのだけれども、この捉え方をそのまま進めていくと、会社更生手続においても特別な命令というか制度というか、それを設けることが考えられるという御指摘でした。松下委員からは、ここは難しい問題があるけれどもという御指摘で、会社更生についてどうかということについては必ずしも明確にはなさらなかったのですけれども、これについてお考えがあるかということと、それからお二人とも実務的なニーズはどうかという指摘もされまして、大澤委員からは、特に再生においてはというお話、あるいは別除権協定にとっての重要性ということからすると、会社更生はさほどではないということにもなりそうですので、会社更生について何か今の時点で態度決定というかお考えがあれば、それぞれお伺いできればと思いますが、まず、松下委員、もしこの点についてお考えあれば、お願いできますでしょうか。 ○松下委員 松下です。更生手続についてどうするかというのは、先ほど言ったように、自分自身でもまだ決着が付いていないのですけれども、だから、どこまで無理をするかというか、どこまでウルトラCをやるかという話なのかなと思います。更生でまで再生と同じように、受戻権付き所有権を確保するための中止命令というのでは、少し無理が大きすぎるような気がして、定量的に線が引ける話ではないので、私の感覚を説明しているだけなのですけれども、少し更生では難しいかなという素朴な感想を持っていました。以上です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。実務的なニーズの点はいかがでしょうか。大澤委員、いかがですか。 ○大澤委員 確かに会社更生の場合、担保権自体が実質的に全て止まるという意味で、余りこのようなお話をさせていただくことはなかったと思います。ただ、例えば先ほどの平時の実行の話にまた戻ってしまうのですが、処分清算等が早期に終わりましたと、あっという間に終わりましたと、その後に会社更生の申立てが間に合いませんでした、担保権を止めるまでの時間が足りませんでしたというようなときには、もう担保実行が終わっています、受戻しはできませんというときに、そうすると、もう手元から債務者として必要な事業財産が流出してしまって、元には戻らないということにはなってしまうわけですよね。そうすると、すみません、今その場で考えているのであれですが、会社更生においてもなお同じようなニーズというのがあり得るようには思いました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。阪口幹事から更にございますか。 ○阪口幹事 阪口です。会社更生は、現在件数もかなり少ない中で、一般的には民事再生よりは大きな企業が想定される。民再で考えられているように、先に実行手続が始まって、その後に慌てて弁護士のところに駆け込んでくるというようなことは、会社更生の場合は今のところ、まずない。だから、生の事実でいうと、多分ここで会社更生で特別な制度を導入しないと困るケースというのはかなり少ないとは思います。元々件数も少ない上に、慌てて駆け込んでくる人はそもそもいないということなので。   ただ、抽象的には会社更生と民事再生で大企業と中小企業と明確に分けられているわけではないので、法制度としては民再の延長線でもおかしくはないようには思います。生の事実のニーズというと民再ほど大きくはないけれどもという感じです。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。 ○大西委員 会社更生の場合も、申立て保全処分から開始決定までの間は、中止命令は必要なのではないかと思います。私も過去やった会社更生事件で、金融機関の事案ですけれども、現実に担保権実行中止命令とかの発令を申請していた経験があります。開始決定以降は要らないと思うのですが、それまでの間は必要だったのではないかと思っております。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。   それでは、この項目につきましては、3(1)について非常に議論を頂いたところですけれども、もう一つ、問いといたしまして、1(4)、それから2(6)も関わるところですけれども、動産質の場合で流質契約の効力を認めるという場合に、これをどうするかという問題があり、そもそも最初から担保権者が占有を取得しているので、占有を確保してという状況ではないということや、不動産質権との対比ということがありますので、これについてはどうかという問題の提起を頂いているのですけれども、動産質に係る流質につきまして、御意見はいかがでしょうか。 ○山本委員 余り大した意見ではないのですけれども、占有が確かに担保権者に移転しているので、設定者はそもそもそれを使って事業を再生するとかというニーズに乏しいのではないかと、このこと自体はそのとおりなのだと思うのですが、ただ、占有が担保権者に移転する類型の担保権、この動産質権でも、動産質権を民事執行手続に基づいて担保権者実行するときには、それは中止命令の対象に当然なるということになっていると思いますし、それから、商事留置権なども、これは別除権に含まれていて、当然中止命令の対象になるということになっているということを考えると、極めてレアなケースでは、今までは余り事業あるいは生活のためには使っていなかったのだけれども、新しい事業計画等の下ではやはりこれは必要だよね、みたいなことが全くないとまではいえないような気もするので、今回は私的実行についても広くこの中止命令の対象に含んでいくということだとすれば、あえてこれだけ外すということも逆にないのかなという気はしているという、その程度の意見です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございました。この問題について更にどうでしょうか。 ○道垣内部会長 すみません、何も知らないで聞いてしまうのですが、先ほど山本さんがおっしゃった、留置権を別除権として扱い実行手続について禁止命令の対象にしたり、動産質についてもそういうふうにするといったときに、その命令が出た後どうなるのですか。つまり、質権者が質物を持っていて、中止命令は出るのだけれども、持っているだけにしなさいよ、これ以上実行しては駄目よというだけの話だったらば、再生等のためにこの目的物が必要になったから中止命令を出すという話ではないですよね。再生等のために債務者がその目的物が必要だといったら、債務者は債権者のもとから持ってこなければいけないわけですよね。でも、例えば譲渡担保において占有についての特約があった場合に、中止命令が出て元に戻せ、元というか、債務者、設定者に戻せというふうになっても、担保物権の性質自体は変わらないからよいのかもしれませんが、動産質権でそういうことをすると、質権者が占有を失いますから、物権の性質が変わってしまうのではないかという気がするのです。そこでいう中止命令というのは、中止だ、持っておけよという、それだけのものなのですか、それとも性質を変えてしまうという効力が認められると考えるのですか。すみません、知らないままで聞いて。 ○山本委員 御指摘のとおりで、中止命令だけでは目的はこの場合達成できない、債務者の下にそれが戻ってくるわけではないというのは部会長の御指摘のとおりなので、結局、使おうとすると担保権を消滅させるほかはないということになるので、その後、担保権消滅請求、あるいはそれをてこにした別除権協定で、その目的物を債務者の下に持ってくるという交渉があって初めて実際にそれが事業に使えるようになるということ、それは部会長の御指摘のとおりだと思いますけれども、それの前提として、まず担保権を中止するという制度があってもいいのではないかという感じなのかなと思いますけれども。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。道垣内部会長、よろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 よく分かりましたけれども、中止命令だけ出して持たせておいて、お前はこれ以上やってはいけないのだぞと、もしやりたいのだったら、ここで別除権協定とかに応じなければ、お前は持ったままだぞなんていうのは、何か意地悪な感じがして、そこまで認める必要があるのかなという感じはしますが、効果としてはよく分かりました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。ニーズ面でどうかというような、実際の働き方もどうかということですが、他方で、あえてこれだけ外すこともとおっしゃった制度的な点もあろうかと思いましたけれども、流質の関係はよろしいでしょうか。あえて外すこともなかろうというのがここでの御意見かと思います。ありがとうございます。 ○道垣内部会長 すみません、あえて外すまでのことはなかろうというのがこの場の意見だとしますと、私は必ずしも賛成ではないというのは言っておきます。あえて外してもいいのではないかと。 ○沖野部会長代理 分かりました。あえて外してもいいのではないかという御意見もありましたが、あえて外すこともなかろうと、すみません、一枚岩ではないということは分かりました。 ○笹井幹事 1点だけ補足ですけれども、括弧して流質契約の効力を認める場合にはと書いてあるのですが、流質契約の効力が認められる場面というのは現行法上もありますので、実は今、あえて外しているわけでもないのですけれども、条文上は外れているという状態になっています。しかし、今は譲渡担保についての私的実行が含まれると解釈されているように、流質についても解釈上は対応の余地があるのではないかと思います。そういう意味では、一枚岩ではないけれども、それはもしかすると解釈によって同じ結論を導くことはできるかもしれないと思いますので、その点を補足させていただきました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。では、今の補足によって前の発言を訂正させていただきたいと思います。   それでは、この項目につきましては、ほかの点は特に御異論がない、中間試案のとおりというようなところもございますので、異論のないものかと思っておりますので、次に進むことになりますけれども、時間的にそろそろ休憩の時間かと思いますので、この時点で休憩を取らせていただきたいと思います。今、56分ですので、15分弱ということで、10分まででよろしいでしょうか。4時10分に再開とさせていただきたいと思います。   一旦休憩といたします。お疲れさまでした。           (休     憩) ○沖野部会長代理 それでは、審議を再開いたします。   「第3 担保権実行手続中止命令に関する規律」のうち「4 担保権者の利益を保護するための手段」から「6 担保権実行手続中止命令等が発令された場合の弁済の効力」までについて、議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いします。 ○淺野関係官 それでは、第3の4から6までについて御説明いたします。   まず、8ページの「4 担保権者の利益を保護するための手段」につきましては、中間試案から変更は特にありません。   同じページの「5 担保権者の意見聴取の要否」ですが、(1)のうち譲渡担保権及び留保所有権に係る部分については、実行手続一般を対象としているところを除いて、中間試案から実質的な変更はありません。また、債権質の実行手続について対象に加えるとともに、動産質の実行手続についても対象とするという考え方を示しています。   (2)については、(1)における担保権者の意見を聴くべき時期についての問題提起です。この点については、実務上の運用の余地を広く認めるために「遅滞なく」聴取すべきという御指摘もあるものの、担保権者の保護の観点からは可能な限り速やかに意見聴取を行うことが望ましいと考えられ、「直ちに」あるいは「速やかに」とすることも考えられるところです。また、説明部分において事後の意見聴取と即時抗告との関係についても検討をしています。   10ページの「6 担保権実行手続中止命令等が発令された場合の弁済の効力」については、(1)及び(2)において中間試案における【案17.6.2】の内容を御提案しています。これは、第三債務者が中止命令等の発令を知っている場合でも担保権者に対する弁済の効力が否定されないとしますと、中止命令等の効力が減殺されるおそれがあるためです。この(1)及び(2)は債権譲渡担保権に関する提案ですが、(3)及び(4)において債権質についてもおおむね同様の御提案をしています。   以上について御議論いただければと思います。私からの御説明は以上です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。   では、以上の4から6までにつきまして、どなたからでも結構ですので、御意見等を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○松下委員 松下です。4と6については特に、原案のままでよいかなと思います。   5についてなのですけれども、担保権者からすれば、特に自分に及ぶかもしれない不当な損害について意見を述べる機会もなしに実行が中止とか禁止がされるわけですから、なるべく早い時期に意見を述べる機会を保障すべきだろうと思います。その上で、資料の9ページの4行目から5行目の記載がよく分からなかったのですが、「遅滞なく」とすると実務上の運用の余地が広くなる、「直ちに」、「速やかに」だと担保権者の保護が言わば強まるというのは、どういう趣旨なのかがよく分からず、この記載の趣旨についてお尋ねをしたいと思います。   それから、22行目以降で、即時抗告されればそこで意見が言えるのだからということなのですけれども、不当な損害等について意見を言うために即時抗告をしろというのは、担保権者に対して過剰な負担を課すものではないか思います。申立ての手数料も必要です。なので、即時抗告ができるからといって意見聴取が要らないということには、ならないのかなと思います。   まず、4行目から5行目の御趣旨についてお尋ねをしたいと思います。よろしくお願いします。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。御質問ですので、事務当局から御回答いただけますか。 ○笹井幹事 法律の文言で運用上どこまで変わってくるのかというところが、もしかしたらあるのかもしれませんが、事務当局においての元々の理解としては、一般的には「直ちに」とか「速やかに」というような文言を用いた方が、余り裁量というかそういったものが残されずに、時期的にはより近接した形で行わないといけないということになり、遅滞なくの場合には、もう少し様々な事情を考慮して少し幅があるといいますか、そういう形で用いられるのがより一般的なのかなと理解をしておりました。そういう意味では、発令後、担保権者から早い時期に意見を聴取されるという意味で、「直ちに」又は「速やかに」の方が担保権者の手続保障については厚い。一方で、様々な事情を考慮をできるという意味では、「遅滞なく」の方が運用上の様々な工夫があり得るのではないかということで、資料としては記載したものでございます。 ○沖野部会長代理 松下委員、資料の趣旨は今のようなお話ですけれども、それでよろしいですか。むしろ運用上の工夫とか、あるいは余地として必要なのはどういう場合なのかという御指摘なのかもしれないと思いましたけれども。 ○松下委員 松下です、度々すみません。質問の趣旨は、運用上の工夫にどんなものがあるかというよりは、「遅滞なく」の意味が、こういう裁量を認めるという用語なのかという点が、そもそも法律用語としてよく分からなかったというところで、事務局としての理解は分かりました。いずれにせよ時間的即時性を確保するために、「直ちに」とか「速やかに」の方が私は望ましいと思います。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。   そのほかの点についてはいかがでしょうか。特段よろしいでしょうか。   倉部委員、お願いします。 ○倉部委員 ありがとうございます。法政の倉部でございます。私も今、松下先生から御指摘があった点ですけれども、「遅滞なく」と「直ちに」、「速やかに」で、どれだけの違いが出てくるのかが私自身は実感を持って分からないところがございましたけれども、一旦担保権の実行は止めていて目的は達しているというところで、やはり次の段階では担保権者の利益というのを配慮するべきかなと考えますと、「直ちに」、「速やかに」の方がより迅速性が確保されるということでしたらば、そちらの方がよろしいのかなと思っております。   それから、即時抗告との関係のところですけれども、これは質問なのですが、31行目ですね、手続保障の観点から実際上問題がないかという点は検討の必要があるように思われるというところが、どういう問題があるのかというのが少し分からなかったのですけれども、その後、括弧のところで、ただ、例えばと続きますけれども、現在の実務の状況を括弧の中で記してくださっているのかと思われますけれども、担保権者への意見聴取をせずに1週間、2週間という短め、通常3か月程度のところを1週間から2週間ぐらいの短い期間で担保権実行中止命令を発令して、その後、意見聴取をして、不当な損害を及ぼすおそれがないということが確認されれば、更に必要な範囲で期間の延長をするということがあれば、特に問題はないだろうというようなことで記されているのですが、こちらの方が予定されている運用なのかなと、今回この意見聴取なしで発令ができるということになっても、なお意見聴取をしてその後の調整を図るという意味では、括弧の中の記してくださっている運用というのが想定されているものであって、余り問題が生じないのかなと思っておりましたもので、31行目辺りの実際上の問題という点で想定されているような問題点がありましたら、少し教えていただければと思いました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。御質問ですので、そもそもの31行目から、手続保障の観点から実際上問題がないかという点は検討の必要がある、とされた問題意識がどういうところを指しているのかという御質問かと思います。もっとも括弧の中であれば実際は余り問題は生じにくいのではないかという点では共通の理解かもしれませんけれども、趣旨の確認ということで、御説明をお願いできますでしょうか。 ○笹井幹事 資料の趣旨といたしましては、元々事後的な形で意見聴取を行った場合には、担保権者はそれに応じて意見を述べることになりますけれども、その意見を踏まえて裁判所が命令を変更するということであればいいのですけれども、担保権者の意見を踏まえても変更しないという結論に至った場合には、裁判所からは何も応答がされないということになります。そういうものだということを理解している専門家なり弁護士であれば、余り問題がないかもしれませんが、担保権者が裁判所から何らかの応答があるだろうと待っているうちに、例えば即時抗告の期間が経過してしまったということになると、意見を述べた担保権者の予測に反することになってしまうのではないかという趣旨で、ここは記載したものです。   ただ、括弧にありますように、そうはいっても現行の実務では、無審尋で発令する場合には非常に短い期間の発令だけにとどまっており、それを延長していくということであれば、そこで意見を述べたりする機会が結局設けられるので、余り実際上は問題がないのではないかとも考えられ、そのことを括弧書きに記載をしております。 ○沖野部会長代理 今のお答えで御疑問は解消しましたでしょうか。 ○倉部委員 はい、ありがとうございます。確かにおっしゃるとおり、様子伺いというか回答、命令の変更、取消しがあるのかないのかというのを待っている間に即時抗告期間まで過ぎてしまうような事態があれば、それは大問題だと思いますけれども、現在の運用を前提にすれば、そういったことは恐らくないのではないかと思われますし、短期間で発令して、その後延長するかどうかというところも含めて、あとは、そこで恐らく担保権者に何らかの不当な損害があるのであれば、今度はそこで、正に4のところで挙げられています担保権者の利益を保護するための手段というのが、2段階目でまた更に検討されるという余地もあるのかと思いますので、それほど手続保障の観点からは問題はないのかなと感じているところです。ありがとうございました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございました。   そのほかにつきましては、いかがでしょうか。   それでは、よろしいでしょうか。これにつきましては時期について、「直ちに」、「速やかに」、「遅滞なく」という、この順番で幅が出てくるということだと思いますけれども、性質に照らしますと、「直ちに」又は「速やかに」というのが望ましい、それから、即時抗告の手続があるからといって意見聴取が不要とはならない、それから、意見聴取の結果、裁判所が命令の変更や取消しの必要を認めないという場合についての問題というのは運用でも十分カバーされるということで、ここは正に御意見を出されたところは一枚岩というか、ということかと思われました。   そのほかはよろしいでしょうか。中間試案のとおりであったり、あるいはそれを債権質についても同様の扱いにするといったような点でございますので。   それでは、この項目についてはそれ以上の御異論等はないと思われますので、引き続き「第3 担保権実行手続中止命令に関する規律」のうち「7 担保権実行手続取消命令」に移りたいと思います。それでは、事務当局において部会資料の説明をお願いします。 ○淺野関係官 それでは、第3の「7 担保権実行手続取消命令」について御説明いたします。   中間試案においては、集合動産譲渡担保権に係る担保権実行手続取消命令について、私的実行の場合を念頭に、実行通知の効力を取り消すものとしていましたが、私的実行ではなく競売により実行が行われることもあり得るところ、競売の場合には差押えによっていわゆる固定化の効力が生ずることとすることを御提案しているため、ここでは動産競売に係る差押えも取消しの対象とすることを御提案しております。また、集合債権については、取立権限の付与の解除の効力を取り消すということを想定しております。   (2)は、取消命令の規定を設ける場合の規定内容に関する御提案です。@では、再生債権者の強制執行の取消しのために求められている要件との平仄の観点から、中止命令と同様の要件に加えて、再生債務者の事業の継続のために特に必要があると認めることや、担保を立てさせることなどを要件とすることを御提案しています。   Aは、取消命令の効果に関する御提案です。遡及効を有することとすると、処分の相手方、第三債務者や担保権者の利益を害すると考えられることから、将来効のみを有するとすることを御提案しています。具体的には、発令までに担保権者や第三者への確定的な所有権の移転があった場合や取立てが終了している場合には、その効果が覆されることはなく、また、実行通知等の後に加入した動産等について、担保の目的の範囲に含まれないことを前提に処分等が行われた場合にも、その処分等の効力は否定されないということを想定しています。   Bは、取消命令の終期を定めようとするものです。取消命令については、既に帰属清算の通知等がされ、又は第三者への処分がされた動産などについて、設定者に処分権を回復させることは想定し難いことから、私的実行によって目的である財産の全部の価値が充当されて、被担保債権に係る債務が消滅するときを終期とすることを御提案しています。   Cについては、中止命令等と異なり、担保権者に不当な損害を及ぼさないために必要な条件を付して発することができる旨の規定を設けないことを御提案しています。これは、取消命令が発令された場合に、その後、条件違反があった場合でも、命令を取り消すなどによって対応することは困難であり、また、同時に発令されることが想定される禁止命令について条件を付すことは可能であることから、取消命令の発令に当たって設定者に遵守させるべき事項は禁止命令の条件として定めることに委ねるものです。   最後に、Dにつきましては、集合債権譲渡担保権について取消命令が発令された場合、取立権限の付与の解除がされる前の状態に戻ることとなります。先ほど御議論いただいた第8の4についてどのように考えるかによる部分もありますが、取消命令が発令された場合に担保権者が弁済受領権限を有しないことになるとしますと、第三債務者の保護を図る必要があると考えられます。そこで、第三債務者が発令を知らなかったときは、担保権者に対する債務消滅行為はその効力を有するものとするということを御提案しています。   以上について御議論いただければと思います。私からの御説明は以上です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。   それでは、7に関しまして、どなたからでも結構ですので、御意見等を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○大澤委員 7(2)の方の要件、以下のような規定としてはどうか、の方の@からDまでございますが、Bについて、やはり消滅するときまでにしなければならないものとするとすることで、こちらは、先ほどの中止命令との違いというところの御説明も頂きましたけれども、【案3.3.2】との関係等もありますが、ここのところで、消滅するときまでにしなければならないものとするとしますと、結局その手続の取消命令を使う時間、使う時期というものが非常に限定はされてきてしまうものなので、中止して取消しとかいうことも考えられたりもしますし、そういったことを考えますと、後ろは合わせた方がいいのではないかと思っておりまして、終期のところですね。終期のところはそもそもが議論があるのは十分承知はしておりますけれども、【案3.3.1】、【案3.3.2】と先ほどございましたが、そういった終期についても再度、検討が必要ではないかと考えました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。今の点に関しましても、あるいはそれ以外の項目につきましても、いかがでしょうか。受戻権があって、そちらについて【案3.3.2】で受戻権がある間はというふうにする場合も、この取消命令については発令する意味が乏しいのではないかということが資料には書かれてはおりますけれども、むしろそちらとそろえるというか、考えるべきではないかという御指摘かと思いますが、いかがでしょうか。別のお考えですとかがあればと思いますけれども。 ○松下委員 今の(2)Bではないところでもいいですか。 ○沖野部会長代理 はい、お願いします。 ○松下委員 7(2)@、要件の話なのですが、まず、この資料の作りの前提のお尋ねです。この取消命令を議論する際に、民事再生法の26条3項の取消しが参考になるのではないかということを私も昔、申し上げて、ここで事業の継続のために特に必要とか、担保を立てさせるというのも26条3項を参照したものなのかと思うのですけれども、26条の3項の取消命令は、一旦中止した手続について取り消すという、言わば取消しは2段階目というのでしょうか、という立て付けになっています。ここで提案されている取消命令というのは、一旦中止というのは経ずに一つの命令で取り消せるというものとして構想されていると理解してよろしいのでしょうか。これは事務局への質問です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。資料の想定についての御質問ですが、事務局から御回答いただけますか。 ○笹井幹事 ここは、特に何か中止命令みたいなものを必ず置かないといけないということではなくて、直接取消命令を発令することをこの資料上は想定をしております。 ○松下委員 ありがとうございます。ということであれば、分かりました。そうすると、26条とパラレルに考えるならば、中止命令の要件に更に加重して事業の継続に特に必要とか、担保を立てさせるという、中止命令の要件に加重して更に要件を足すという立て付けが今の話でよく説明できることだと思いましたので、(2)@の提案に賛成したいと思います。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。@の内容を更に明確にしていただいたと思います。   そのほかの点はいかがでしょうか。特段ございませんか。 ○笹井幹事 先ほど大澤委員から(2)Bについて、受戻権消滅時期にすべきではないかという御指摘がありましたが、その場合にどういう効果を想定されているかをお尋ねしたいと思います。取消命令の効果は、基本的には新しいものに担保が及ぶということと、既存のものについて処分権を回復するということですけれども、受戻権が消滅するまで発令できるということは、既に帰属清算だったら帰属清算が終わり、目的物の占有は設定者の下にあるという状態で、取消命令を発令できるということだろうと思います。   ただ、帰属清算は終わっているので、取消命令が発令されたとしても、直ちにその物について処分はできないのだと思うのです。処分できるとすると、受戻権を行使してからということになろうかと思うのですけれども、受戻権を行使した上での処分であれば、取消命令がなくてもできるはずなので、全てについて受戻権だけが残っているという状態のときにどういう効果を想定されるのかという点について、お考えがありましたらお伺いしたいと思います。 ○沖野部会長代理 大澤委員、いかがでしょうか。 ○大澤委員 ありがとうございます。私はむしろそこをお伺いしたいと少し思っていたところではあるのですけれども、受戻権が残っているということではありますが、先ほど確か取立権限の付与の解除の対象ということも御説明があったと思いまして、そこは受戻しが残っている以上、取立権限の付与の解除自体はできなくなっても、それはそれでよしと、受戻しができる以上、取立権限との解除の関係はないと考えていいのですか。そこが、すみません、私は余りよく分からなかったということもあって、後ろをそろえるべきではないかと思ったのですけれども。 ○笹井幹事 それは今、債権を想定されておりますか、集合動産。 ○大澤委員 はい、集合債権を設定して。 ○沖野部会長代理 受戻権は。 ○大澤委員 受戻しは動産の話だと思ったものですから、私はどちらかというと債権の方を少し考えていて、取立権限の付与の解除は取消しでできると、元に戻ると考えたので、それはその後、また取引権限が復活すると、復活するというのは、その以降については取立てがまたできるようになると考えたというところでございますが、むしろそこの問題意識で、先ほど、後ろは合わせた方がいいのではないかと考えたのですけれども。 ○沖野部会長代理 私の方で妙な整理をしてしまったのかもしれません。おっしゃる点は、受戻権についての規律を前提に、その場合は、受戻権が消滅するまでという想定かと思ったのですが、大澤委員がおっしゃったのは、むしろ債権を念頭に置かれてなのですね。 ○大澤委員 だと思いますけれども、私が間違って考えているのですかね、そうしたら。今のお話ですと、受戻しが残る以上、手続の取消命令ができなくても受戻しが設定者としてずっとできるので、それを基に受戻し、中止命令を取って、その間に別除権協定をすればいいというお考えでしょうか。 ○沖野部会長代理 事務局のお考えは。 ○笹井幹事 動産についていえば、おっしゃるとおりです。 ○大澤委員 動産についていえば、今みたいな整理でよくて、手続の取消しができなくても受戻しができるという【案3.3.2】の規律を前提とすれば、その期間までは中止命令が取れるということになれば、そこで担保実行ストップをして、別除権協定の機会が与えられると、動産に関してはそういう整理でいいのかなと、今のお話を伺って、思いました。債権の方はまた別ですか。債権の方で、取消権の付与の解除との関係では、取消しがまだ必要かなと思いましたが、そうではないという理解でしょうか。   債権の消滅との関係で、私の最初の問題意識は、すみません、お話を混乱させてしまったかもしれません、取消しができる時期というのが短くなるということについての懸念がございまして、それは、取立権限の付与の解除というのが手続取消命令でできると考えていたのですが、取立権限の解除ができなくなると読んだので、早期にできなくなる、消滅するときまでというところで、なお後ろにできないのかなと考えたのですけれども、そこは私の理解が少し間違っているということでしょうか。 ○笹井幹事 想定している事例が同じかどうか分かりませんけれども、集合債権の場合で、実行に着手すると、実行に着手した段階で、その効果をどういうふうに考えるのかというのは先ほど議論があったところですけれども、少なくとも既発生のものについて、取立権限が元々設定者にあったのが、それが担保権者に移転していくということになると。普通であれば、担保権者がそれを取り立てていって、自分の被担保債権に充当していくということになるのですけれども、まだ取り立てて被担保債権に充当していない段階では、取消命令ができるようにしましょうというのがここでの提案です。その段階では、まだ被担保債権も残っているし、そこに充当すべき目的債権も残っているので、その取立権限が設定者の方に戻って、かつ、再度流動化して、新しく発生した債権について担保権が及ぶようになります。一方で、既存のものを全部取り立てて被担保債権に充当してしまった以上は、もうそれ以降は取消命令ができないと、そういうのがBで意図していたことでした。 ○大澤委員 それであれば分かりました。私の方では、どちらかというと債権の方を心配をしてお話をしたつもりでしたけれども、今の事務局の御説明を伺いまして、それで理解はできました。であれば、このBのような規律になるのかなとも思います。ありがとうございました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。明確にしていただいてありがとうございました。 ○大西委員 質問なのですが、7(2)Dで、取消命令が発令された場合に、第三債務者が知らなかったときは、債務消滅行為が効力を有するとあるのですが、同じような条項で、6(1)のところは、第三債務者がこれを発令されたと知っていたときは対抗することができないということで、書き方が表裏の関係になっています。第三債務者の保護という観点からすると、この両者の保護の必要性は変わらないように思いますが、これらの記載方法の違いにより立証責任の違いがあるとすれば、この辺の書き分けた理由について、第三債務者の保護との関係から、どういう御趣旨なのかということをお伺いしたいと思います。 ○沖野部会長代理 では、事務局からお願いします。 ○笹井幹事 ここが、取立権限とか弁済受領権限がどちらにあるかという前提となる議論とも関係しますけれども、6(1)と7(2)Dの趣旨としては、まず6(1)については、担保権の実行手続に着手されているので、債権の取立権限、弁済受領権限は基本的には担保権者にあり、そのことは中止命令によって覆されないので、本来は、この受領権限を持っている担保権者に払えば消滅するのが原則です。しかし中止命令が出ているのにどんどん担保権者に払われてしまって目的債権がなくなってしまうと中止命令の効果が減殺されてしまうので、原則を修正して、本来的には有効な弁済の効力を設定者に対抗することができないようにしましょうと、そういう方向で修正しているので、悪意の場合には対抗できないという書き方になっています。   7(2)Dの方は、取消命令が発令されていることによって、ここは理解が分かれるかもしれませんが、取消命令の発令によって、担保権者は弁済受領権限を失っていると考えた場合、本来的には、担保権者に対して支払っても、弁済受領権がないので無効な弁済になるはずですけれども、善意の第三債務者を保護するために、本来無効になるはずの弁済行為を有効にするという方向で原則を修正しているので、書き方が逆になっているということです。   どちらがいいのかというのは、立証責任とかを考え出すと微妙な差というのがあるのかもしれませんけれども、基本的にはここは過失の有無を問わず善意、悪意のみで区別しておりますので、その保護の要件はそろっているのかなと理解をしております。 ○大西委員 すみません、立証責任が両方でも同じという御趣旨で御回答されたということでしょうか。 ○笹井幹事 そうですね、立証責任まで事前によく考えていたわけではないのですけれども。 ○大西委員 私が思うのは、理論はおっしゃるとおりだとは思うのですが、第三債務者からすると、どちらの場合であっても第三債務者の保護の必要性が変わらないような気もするのですが、それはいかがでしょうか。もしこれに違いがないということであれば、双方の法文の書き方によって立証責任において違いがある場合には、問題があるように思います。 ○沖野部会長代理 主観的要件についての立証責任というのが6(1)と7(2)Dでどう違ってくるか、どちらにあるかということですよね。それで、第三債務者にあるようなら第三債務者の方により不利というか、そうでもないか、悪意ですものね。すみません、今のは訂正します。 ○笹井幹事 一度考えさせていただけますか。 ○大西委員 繰り返しですが、仮に双方の法文の記載方法によって立証責任に違いが生じるのであれば、第三債務者が両手続の違いによって、要保護性が異なるという考え方は採りにくいので、その辺を考慮した方がいいのかなと思った次第です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。少し前提となる場面の違いというのがあるということが、悪意の方なのか善意の方なのかということでありますので、その場面の違いが立証負担にも影響してくるか、それが正当であるかということを、改めて6(1)、7(2)Dの場合、それぞれどうなるかと見た上で、第三債務者の地位という点から考えたときに適切かどうかというのをもう少し整理してみるということで、もう一度考えさせていただくというので引き取らせていただきたいと思います。   そのほかの点はどうでしょう。 ○阪口幹事 阪口です。少し確認なのですけれども、7(2)Aで将来効とあって、確かにそうかなと思うのです。12ページの(2)で将来効にすべき理由が書かれているのですけれども、その理由の大部分は処分清算とか第三債務者が関係するところなのですね。他方、動産の帰属清算という、ほかに誰も登場人物が現れていない局面に関しては、この22行目辺り、まだ第三者が現れていなくても担保権者の利益を保護する必要があると考えられるという理由が書かれているのですけれども、ここで考えている担保権者の利益というのがもう一つ、どんなことなのかがよく分からない。動産の帰属清算に関しては将来効ではないということも、ほかの場合とバランスが悪いので、そんな立法がいいのかどうかは別にして、説明として、これがどういう利益を考えておられるのかが少し分からない。動産の帰属清算は第三者が全然現れていない局面だと思うので、かつ、物はまだ債務者の手元に残っているという局面で、考えられている利益というのはどんなイメージなのでしょうか。 ○沖野部会長代理 12ページの21行目の、第三者が全く登場しない段階で帰属清算は終了しているというところですよね。担保権者の利益を保護する必要があるか。既に担保権者が完全に権利を取得しているということではあるのかと思いますけれども。 ○笹井幹事 ただ、帰属清算が既に行われた場合、第三者は現れていないとしても、自分で既に確定的な所有権を得たものだと理解をしているわけですので、元々自分のものだと思っていたら、それが後から自分のものではなくなるということ自体、担保権者の期待に反するのではないかということですけれども。 ○阪口幹事 阪口ですけれども、それを保護といえばそうなのですけれども、元々考えていた受戻権という制度は、実際それはあなたの手元にまだ行っていませんよねという場合を想定し、かつ、帰属清算の実行というのは一瞬で行われるということも考えたときに、まだ実質回収は済んでいないので、まだ実行手続中ですよねという価値判断がある。ほかのところでも議論がありますけれども、そのようなものは、担保権若しくは担保権ニアリーなものとして考えてもいいのではないかという価値判断が実務的にはある。第三者が絡むと、それはさすがに巻き戻しということはもう、ややこしいからできないというのはよく分かるのだけれども、まだ帰属清算したといっても通知を送っただけで、自分のものと思っているだけという言い方は悪いですけれども、そこで特に保護すべき利益というのは何かがあるのかということの確認なのですけれども。 ○笹井幹事 それは、占有がまだ設定者の方にあるということを前提に考えておられて。 ○阪口幹事 基本的には、そういうことを考えているのですけれども。 ○笹井幹事 第三者が現れていないというのは、占有は両方あり得ると思うのですけれども、もし占有が移転していれば、それは思っているだけというよりは、実際自分も占有も取得しているということになりますので、例えば、その後の保管義務の程度とか、そういったところにも影響しているかと思いますし、もし受戻権がまだ残っている、引渡しを受けていないということであれば、その具体的な利益は何かと言われれば、確かに余り具体的な利益としてはないのかもしれませんが、その場合、やはりどういう効果を想定されますか。結局、受戻権があったのだけれども、受戻しではなく、処分権を回復する方法を取消命令によって確保するということですか。 ○阪口幹事 仮にそういう受戻権が残っている状態での、占有も移転していない状況での取消命令というのをやるとすれば、結局、実行前の状態に戻る、設定者が処分権限を持つし、相変わらず固定もしていない状態に戻るということのイメージがあり、動産の帰属清算に関する限り、あり得ないかという、そういう質問になると思いますけれども。 ○笹井幹事 そうすると、訴求効とか将来効という問題よりは、どの範囲でどの動産について処分権限を回復するかと、そういう問題だということでしょうか。 ○阪口幹事 そういう整理かも分かりません。私の考えとしては、一般的には遡及効がないというのはよく分かるが、ただ、動産の帰属清算に関する限り、遡及効があっても、結局元の状態に戻るだけで、別に悪くないのではないか、悪くないとまで断言できないのですけれども、バランスする利益は何かなと考えたというところです。 ○淺野関係官 1点補足いたしますと、資料の説明で十分に表現できていたかどうか分からないのですが、帰属清算の通知等がされているということは、その効果として被担保債権もその分消滅しているということになりますので、そこも含めて効果を覆さないと、阪口幹事が御指摘になったような効果は実現できないのかなと理解しております。占有がまだ移転していない以上は、被担保債権が消滅したという効果やそれに対する担保権者の期待も覆していい程度のものなのだというお考えと理解しまして、そういうお考えもあるのかもしれないと思ったのですが、資料の前提としては、それを覆すことまでは少しやりすぎではないかという前提で考えていたというところです。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。趣旨というか考え方は明確になったかと思います。その上で、恐らく政策判断の対立があるということかと思いました。   それでは、更にこの7の項目につきまして、ほかにありますでしょうか。   よろしいですか。事務局からも特には、今の限りではよろしいですか。   それでは、次の点といたしまして、「第4 倒産手続開始申立特約の効力」という項目について御議論いただきたいと思います。これも事務当局において部会資料の説明をお願いします。 ○淺野関係官 それでは、「第4 倒産手続開始申立特約の効力」について御説明いたします。   まず、1についてですが、中間試案では設定者についての再生手続開始の申立て又は更生手続開始の申立てを理由に担保権の目的物を設定者に属しないものとし、又は属しないものとする権利を担保権者に与える契約条項を無効とすることを御提案しておりました。   もっとも、譲渡担保権及び留保所有権の実行手続については、通知や清算金の提供などの一定のプロセスを経ることが求められており、少なくともそのようなプロセスを経ることなく担保目的物の確定的な所有権が担保権者に帰属することとなる条項は強行規定違反であり、規定を置くまでもなく無効であると考えられます。そこで、本文では所有権留保売買契約の解除条項のみを対象とする御提案としています。   また、最高裁判例において、買主に更生手続開始の原因となる事実が生じたことを解除事由とする特約が無効とされていることを踏まえて、所有権留保買主等に係る再生手続開始の申立て又は更生手続開始の申立てに加え、所有権留保買主等に係る再生手続開始の原因となる事実又は更生手続開始の原因となる事実の発生、これらを解除事由等とする特約を無効とすることを御提案しております。   次に、2についてですが、1と異なり、判例法理や実務上の取扱いが確立していない状況において、規律を設けるべきでないという御指摘もあるところと認識しています。他方で、このような特約がされた場合、再生手続の開始の申立て等がされた場合に、自動的に設定者が処分権限等を喪失することとなり、先ほど御議論いただいた取消命令に係る規定が設けられる場合でも、取消しの対象となる行為が存在しないということになり、対応が困難となるようにも思われます。そうだとすれば、設定者に係る再生手続の開始の申立て等を処分権限又は取立権限の喪失事由とする特約を無効とする意義があるように思われるところです。   以上について御議論いただければと思います。私からの御説明は以上です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。   それでは、第4につきまして、どなたからでも結構ですので、御意見等を頂きたいと思います。いかがでしょうか。 ○松下委員 松下です。2点あります。まず、第4の1について念のための確認なのですけれども、ファイナンス・リースに係る倒産手続開始申立特約については別途、規律が設けられるということでいいのか、最高裁の平成20年の判決を踏まえた規律というのは別に設けられるのですねという確認が1点目です。   それから、2点目ですが、2についても是非これは前向きに考えていただきたいということで、先ほどの御説明であったかもしれませんが、結局こういう特約が有効だとすると、取消命令制度の潜脱というか、取消命令制度を無力化するおそれがあるのではないかという気がしますので、2についても是非設ける方向で御検討いただければと思います。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。1点目は御質問で、ファイナンス・リースについては、これはまた別途規律するということでよろしいかという点ですが、いかがでしょうか。 ○笹井幹事 ファイナンス・リースは、規定を全体として設けるかどうかということ自体についていろいろお考えが分かれているところですけれども、改めてファイナンス・リースについて御提案するときに、こういった内容も含めて、その中で設けるならば設けていきたいと考えております。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。それについては、少なくとも別途検討の機会を持つ予定であるということかと思います。 ○大澤委員 私も今、松下先生からお話がありましたとおり、2については御指摘のとおりで、実務上も要請が高いとは思います。1についても、別に1に反対するつもりは全くなくて、むしろ1から外れるようなもの、例えば、これは再生手続に関しての定めを置かれるということでして、それそのものは判例等も踏まえて、好ましいお話だとはもちろん思っているのですが、逆に言えば、これは前に確かどなたか委員の方が御確認されたかもしれませんが、この倒産申立特約の効力というのは、再生手続に関しては設けられるとはいうものの、それ以外の手続に関して、例えば破産においても事業譲渡等を行うニーズ等は当然あるのですが、そこについては特に規定はないものの、別に排除すると、倒産申立特約効力を認めるというつもりではなくて、そこは引き続き解釈ということであろうと理解をしておりますが、そのような理解でよろしいでしょうかということを念のため確認させていただければと思った次第です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。再生、更生についての規定があるところが、破産についての解釈の余地をおよそ封じるものではないという理解でよろしいかということですけれども。 ○笹井幹事 事務当局のこの資料の意図としては、そういうことです。 ○沖野部会長代理 そのような趣旨で、破産について別の態度決定をしているというわけではないということかと思います。 ○大澤委員 ありがとうございました。 ○日比野委員 2のところについて、少し確認なのですけれども、2Aというのが出てきたことによって、よく分からなくなってしまったのですが、15ページの36行目ですかね、先ほど御説明でも読み上げられましたけれども、これは飽くまで自動的に処分権限、取立権限を喪失することとなる規定の禁止と理解してよろしかったでしょうかというのが1点目で、そうだとすると、2Aというのは、開始原因となる事実が生じたときに自動的となるのですけれども、かなり不明確というか、その時期というのを見極めることが極めて困難な規定のような気がするのですけれども、こういったものというのもやはり置く必要があるのかというようなところがよく分からなかったので、以上の点をまず教えていただきたいと思いました。お願いできますでしょうか。 ○沖野部会長代理 まず、お答えになりますか。では、事務局からお願いします。 ○笹井幹事 前段につきましては、自動的にということを想定しております。後段の御指摘については、確かにそういう契約条項自体の明確性という問題はあるのかもしれませんので、実務的にどういう必要性があるのかということで御議論いただければと思いますけれども、もしそういう規定が仮に実務的にも見られるということであれば、その効力を否定する規定を置いておく必要があるのかなと考えております。 ○日比野委員 ありがとうございます。2については考え方として理解いたしました。   そうしますと、あと2点なのですけれども、この規定は自動的に喪失する特約を対象とするということなのですが、この事象をトリガーとして、その上で喪失させるかどうかとを担保権者の方が判断するという権利が付与されるという規定ぶりについては、これは妨げるものではないという理解をしてよいのかという点が1点です。もう1点は、これは過去の審議でも議論があったと思いますので念のためですが、ここに書かれているのは、特に2@の開始原因とか開始の申立てがあったときには、融資契約においてこれを期限の利益の当然喪失事由とするような規定を置くことは極めて一般的だと思うのですが、期限の利益が喪失されたことをもって処分権限とか取立権限の喪失をするというような規律については、否定はされていないということでよかったでしょうか。多分それでよかったと思うのですが、この点も確認でございます。   すみません、私からの確認したかったことは以上です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。1点目は、当然喪失ではなくて、それをした場合には担保権者の方から取立権限を失わせるというアクションを起こすような場合は、これとは別でよろしいかということでよろしいですかね。後の方は、申立てがあったり、あるいは原因となる事実が生じたときに、被担保債権の期限の利益喪失条項としており、それによって不履行になるということなのでしょうね、そのときには取立権はもはやないというような条項の場合にどうなのかと、そういう理解でよろしいでしょうか。 ○日比野委員 御認識のとおりです。 ○沖野部会長代理 それも対象になるかということですが。 ○笹井幹事 後段の方は、期限の利益喪失条項自体が無効になるわけではないということについては、おおむね部会の中でも共有されていたのではないかと思います。今、日比野委員がおっしゃったのは、期限の利益を喪失するということを取立権限喪失事由としているという、間接的だけれども、特に何らの実行行為なくして取立権限がなくなると、そういう条項のことをおっしゃったのでしょうか。 ○日比野委員 すみません、少し不明確で失礼いたしました。期限の利益を喪失すれば、要するに当然、延滞状態になるということなので、それを理由として取立権限を喪失させるという場合は、それは有効であるということを確認したかったということです。自動的にというところまでは、そこまでは取りあえず考えてはおりませんでしたが。 ○沖野部会長代理 いずれにしても、担保権者からの一定のアクションがあって、その原因が直接にこれによるというか、特約による場合と、期限の利益喪失で不履行ということをトリガーとしてという、両方の場合ということでよろしいですか。 ○日比野委員 はい。 ○笹井幹事 であれば、後段については無効にするわけではないということです。 ○淺野関係官 前段に関しても、恐らく後段と密接に結び付いている御質問かと理解したのですけれども、再生手続開始申立て等を当然失期事由としている例は実務上多くあるのだろうと認識しておりまして、その上で、今、笹井から申し上げたとおり、そのような約定に基づく期限の利益の喪失により債務不履行状態が生じ、取立権限、処分権限等の解除権を担保権者が得るということ自体は否定されないという前提で考えますと、それとの平仄から、2@及びAのような事由をトリガーとして担保権者に処分権限、取立権限を喪失させる権利を与える、その上で意思表示によってそれらの権限を喪失させることができるという条項に関しては無効とすることは難しいのだろうと考えておりまして、本文2でも、その前提で御提案をしているというところです。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。そうしてされた解除自体を取消命令に掛けるというのはあるわけですよね。 ○淺野関係官 はい、それはあり得ると思います。 ○沖野部会長代理 日比野委員、よろしいですか。 ○日比野委員 はい、結構です。どうもありがとうございます。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。   それでは、それ以外の点につきまして、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。   よろしいですかね。それでは、更に先に進ませていただきたいと思いますけれども、「第5 倒産手続開始後に生じ、又は取得した財産に対する担保権の効力」について御議論をお願いしたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○淺野関係官 それでは、16ページの、「第5 倒産手続開始後に生じ、又は取得した財産に対する担保権の効力」について御説明いたします。   まず、「1 倒産手続の開始後に生じた債権に対する担保権の効力」ですが、中間試案において四つの案が提案され、パブリック・コメントにおいてはいずれの案についても賛成する御意見、反対する御意見があったところです。この点については、議論の前提としまして、何らかの規定を設けることによって倒産手続開始時における法律関係の明確性を高めるとともに、予測可能性が高まるという点において平時の取引にも好ましい影響があると考えられ、このことを確認することが有益ではないかと思われます。その上で、中間試案において提案された四つの案につきましては、倒産手続開始後に発生した債権に対する担保権の効力について制限を課さないか、課すかという点において、【案19.1.1】と、それ以外の3案に分類することが可能です。   【案19.1.1】については、将来の一時点における評価価値を上限とするのではなく、事業の価値を見いだして評価することによって多額の融資を可能とするファイナンス手法が存在することなどを指摘し、これを支持する御意見があるところですけれども、他方で、真正譲渡の取引とは異なり、多くのファイナンスにおける将来債権担保は、その時々に発生している債権を回収することを意図していることに鑑みて、この案を採る必要ないという御指摘もあるところです。   さらに、【案19.1.1】を採った場合には、再生債務者の事業の再生を可能にするための措置が必要になると考えられますが、中間試案第20で提案されたような担保目的財産に係る費用の負担に関する規律については、要件や基準を定めるのが困難であるという御指摘もあるところです。この問題に関しては、倒産手続開始後に一般債権者の負担の下で担保権者が利益を得てしまうという問題に対処しつつ、他方で規定を設けることによってファイナンス手法が必要以上に制限されて資金調達に不当な悪影響が生じることも避けるべきだと考えられ、資金調達に悪影響を与えるファイナンス手法を想定した上で、具体的にどのような悪影響が生じるのかを検討した上で、議論に反映をするということが有益だと考えられるところです。   また、倒産手続開始後に一般債権者の負担の下で担保権者が利益を得てしまうという問題が生じにくい一定の類型を適切に切り出すことが可能であれば、そのような類型に限って、倒産手続開始後に発生した債権への担保権の効力を認めるという考え方があり得るところです。この場合には、当該一定の類型については中間試案の【案19.1.1】を適用し、それ以外の類型については中間試案の【案19.1.2】から【案19.1.4】までのいずれかを採用することが考えられます。その上で、【案19.1.2】から【案19.1.4】までについては、流動性の観点や担保権者が把握する価値の基準時の観点から違いがあることから、それぞれについての検討が必要となります。   19ページの「2 倒産手続の開始後に取得した動産に対する担保権の効力」については、中間試案で三つの案が提案されたところですが、債権に関する1と併せて検討するのが適切であると考えられることから、問題提起にとどめております。   以上について御議論いただければと思います。私からの御説明は以上です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。   では、第5につきまして、債権の方を中心にということになるかと思いますが1、2ともに、どなたからでも結構ですので、御意見等を頂ければと思います。いかがでしょうか。 ○片山委員 慶應大学の片山です。御提案いただいたプロジェクトファイナンス的なものといいますか、それをうまく切り出すというのは、なかなか難しいのではないかとは思いますが、他方、将来の債権を担保にとる場合に二つの形態を新しい立法として用意するということになりますと、いわゆる固定化とか、あるいは集合物的な処理を前提として、実行時に発生している債権に限定されるというタイプの集合債権担保というのが一方では想定され、その場合は【案19.1.2】から【案19.1.4】のどれかによる。   他方は将来、プロジェクトファイナンス的なものということにはなるのかもしれませんが、要するに個別に全ての債権を譲渡しているという個別債権の組合せという形での将来債権譲渡担保が可能で、その場合は【案19.1.1】となるが、第20の費用的な形でカーブアウトがなされるということであれば、十分に選択肢になり得てその二つの選択肢があるので、どちらかを使ってくださいということで、基本的には当事者である担保権者と設定者の間の合意で決める、あるいは、解釈の問題になるということになるかと思います。   そのときに、どちらかに推定するということはあるかもしれませんので、将来債権を担保に取る場合は集合債権であると推定をするというようなことはあってもいいように思います。いずれにしても実務上の担保をいろいろな観点から判断要素を取り出して切り出すというのは、なかなか難しいかと思いますので、選択肢を提供して担保権者・設定者に選択させるという方向で考えていってはどうかとは思いましたが、いかがでしょうか。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。二つの類型を用意するという点では、ゴシックの例えばといわれるところのものですが、しかしその選択を当事者に委ねて、選択をするという形でどうかという御意見を頂きました。 ○大澤委員 なかなか、常にここは一番難しい問題だとは思っておりまして、統一的な解決というのがなかなか難しいというのは承知の上で、いろいろなことを考えたので、少し申し上げたいと思います。   まず、【案19.1.1】に関しては、プロジェクトファイナンスのようなごく限られた類型について特殊な配慮が必要だというのは理解をしておりますけれども、それをうまく書き切れるかというところについて実務上の不安を非常に感じます。書き切れないようなものになると、結局それは【案19.1.1】なのか、別のものなのかとなってきたときに、実務上の紛争としては非常に難しいというふうになって、かえって法的安定性を害しないかという不安は残ります。   ただ、そういった少し異なる世界についてどう考えるかというのは、一番最後にまた申し上げますけれども、それ以外の【案19.1.2】と【案19.1.3】と【案19.1.4】に関してどうかと考えたときに、一つ申し上げておきたいのは、【案19.1.4】という固定化論というものについては、パブリック・コメント等を拝見すると、実務家からは比較的支持を得ているのではないかと思っているところです。もちろん債務者の取立権限がなくなってしまうという制度設計に不安を覚える実務家もおりますし、そこが【案19.1.4】のネックとは思いますけれども、実務としては【案19.1.4】に近い形で今までなされてきたのだろうというところはございます。   それ以外の【案19.1.3】あるいは【案19.1.2】というところですが、【案19.1.3】に関しては結局、【案19.1.1】と同じような問題が残ってくる、つまり、開始決定後の一般債権者の負担において回収が図れるというようなことが理論的にあり得るのを許すのかというところが、なかなか難しいと考えている次第です。   ただ、一方で【案19.1.3】を採って担保権者の実行が時期を選べるというふうに、ざっくりいえば、そうなのだと思いますが、日本においては倒産手続に入ったときには結局、開始決定時が多分一番資産が多くて、市場としてはシュリンクしていくのだと思うのです。そうすると、【案19.1.3】を採っても【案19.1.4】を採っても、もしかしたら【案19.1.2】を採っても、担保権者の一番価値のある時期というのは、プロジェクトファイナンスを別にすると、開始決定時ではないのかというのが、実務的には少し思うところではございます。   その意味で、【案19.1.2】についても申し上げますと、これは価値維持みたいな形で、評価時説みたいな感じになるのだと思いますが、これはこれで一つの在り方としてあるのだろうと思いつつ、開始決定時の評価が折り合わなかったときに誰がどう判断するのかというところ、ここをどう考えているのかがよく分からないなと。会社更生のような評価額の決定手続みたいなものをうまく入れるのか何かしないと、【案19.1.2】はワークしないようにも思ったというところもございます。   なので、【案19.1.2】と【案19.1.3】と【案19.1.4】、いずれにしても担保権者の一番価値が多いところとなると開始決定時となって、それほど大きな差はなさそうだとも思いつつ、あとは【案19.1.2】における、例えばそういった価額の評価というところを誰がどう評価して簡易に判断していくのかというところの疑念がまだ残っているという状態かと理解をしております。なので、後で【案19.1.2】については、すみません、事務方にその評価についてどのようにお考えなのかはお伺いしたいと思っておりました。   最後に、プロジェクトファイナンスのところの配慮についてどう考えるかを少し申し上げたいと思います。これがなかなか難しいと思いますけれども、それこそ包括担保、あるいは金融庁さんが言っておられました事業成長担保のような形での別の仕組みでの考えの方に寄せていく方がよいのではないかと、そちらの形を使って、閉じた世界での、プレーヤーがきちんと決まっていて担保権者、それから費用として出ていくような一般債権者のプレーヤーが極めて限定されている、きちんと決まった世界のものというのは、丸ごとを担保に取るという形できっと動いていく方が合っているのではなかろうかと思っておりまして、この【案19.1.1】から【案19.1.4】の中での解決がなかなか図りづらいと考えた次第です。   すみません、長くなりました。申し訳ございませんでした。 ○沖野部会長代理 ありがとうございました。   そのほか、いかがでしょうか。片山委員からは、二つのパターンを用意した上で当事者が選択することにし、いずれか不明な点に備えて、一定のどちらかをデフォルトというか推定するという規定を置いて、そうでないタイプを選ぶ方が合意でより明確にしていくというお考えも出されておりましたけれども、そういう考え方であれば、大澤委員の、結局どちらか実務上の紛争が生じて法的安定性が損なわれるという懸念は解消するのでしょうか。日比野委員からもお手が挙がっていますけれども、大澤委員の先ほどの御懸念に片山委員のお考えのような形であれば対応できるのかどうかという点だけ、伺わせていただけるでしょうか。 ○大澤委員 私がお話しすればよろしいですか、すみません。当事者に委ねるとなったときには、当たり前ですけれどもパワーバランスとしては担保権者の方が強いので、全部【案19.1.1】でやりますと言われてしまわないのかという素朴な疑問を感じます。借りる方の形が弱いので、客観的に見てそれは普通の輪切り的な担保設定であろうよというものも、【案19.1.1】の方のものですよと言われないでしょうかと少し思いましたけれども、そこはいかがでしょうか。すみません、答えにならずに質問になってしまって、申し訳ないです。 ○沖野部会長代理 適切な合意が本当に担保されるのかというか、確保されるのかという御懸念があるということだと伺いました。   すみません、日比野委員に待っていただいていますので、日比野委員、お願いします。 ○日比野委員 ありがとうございます。今のお話は、一旦終わっていただいてからでも私は大丈夫なのですけれども、よろしいですか。 ○沖野部会長代理 一旦これで、次のというか、関連する項目というか、日比野委員から御指摘いただきたいと思います。 ○日比野委員 よろしいですか、ありがとうございます。今、大澤先生から御指摘があったとおり、この問題は大変難しい問題なのだろうと思っております。今回お示しいただいているような、コンセプトを【案19.1.1】と【案19.1.2】ないし【案19.1.4】で分けるという、その考え方自体に特に強く反対するということではなく、こういうような解決というのはあり得るのかなという印象を受けております。   あと、切り出し方のところについて、大澤先生がおっしゃられたような、事業担保的な発想に寄せるというのは、すみません、これは一つのカテゴリーとしての解決なのかなとは思っておりますけれども、それだけで収れんさせてよいのかというところについては、具体的な使われ方を、もう少し確認、検討などをしていく必要があるのかなという印象を持っております。   なお、大澤先生から少し御指摘があった、全て【案19.1.1】と言い放たれてしまうのではないかというところにつきましては、全ての種類の担保権者の立場を代弁できる立場でもないのですが、類型的にこれは明らかに、循環型、累積型という言葉を使えば循環型、いわゆるスクリーンショット型だと評価できるものもありますし、その時点で実際にあるスクリーンショットで取得している、発生している債権額と融資額との比較から見て、ある程度客観的に評価の蓋然性というか、合意の妥当性が見えるというものもありますので、全くそれでワークしないというわけではないのかなという印象は受けました。現実にどうなるかというのは難しい問題ではありますが、何かしらの指針的なものというのはもう少し、ある程度抽象的だったとしても、出せる可能性はあるのかなという気もいたします。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。   この問題は非常に難問ということですが、阪口幹事お願いします。 ○阪口幹事 阪口です。まず、切り出しの方の問題ですけれども、先ほどの片山先生と大澤委員の議論というのは、何らかの法定要件を定めた上で合意に選択させるのか、それとも純粋な選択なのかという、大きく分けるとそういう問題なのだろうと思うのです。   全く任意でとにかく選択だとなると、それはやはり少しどうなのかと思います。もちろん、何でもかんでも金融機関が【案19.1.1】に寄せるとは限りませんけれども、例えば現行実務で診療報酬債権を担保に取って、2か月分が回収可能な分ですけれども、そうではなくて10か月分とか何十か月分という与信を見たときに、金額の大小から見たらこれは累積的なものだねといっていいのかどうかというと、これはまた少し疑問はあって、前も申し上げたけれども、2か月分を超えている部分は、病院の信用力が高いから一般的与信として貸しているだけだという評価も十分可能なのではないかとは思っているので、やはり何らかの法定要件を明確にして切り出しをしないといけないだろうと思います。   その法定要件の切り出し方がまた難しいとは思います。ただ、文献でちらっと見た感想だけなのですけれども、これに近い問題として、イギリスは、元は管理レシーバーシップというのがあったけれども、それが2002年の法律改正で制限された、それでも七つだったかのジャンルですかね、プロジェクトファイナンスとか鉄道融資とか、そういうジャンルに関しては残るというような立法がされているというようなことです。そういう、正に累積的にすべきものは切り出すという、何かうまい立法が他国で行われているのであれば、そのようなものも参考になるのかなとは思いました。   これが1点で、続けて同じ問題で、いいですか。 ○沖野部会長代理 お願いします。 ○阪口幹事 今度、切り出されていない【案19.1.2】から【案19.1.4】の間の問題です。【案19.1.2】から【案19.1.4】の中で大きく分けると、【案19.1.2】と【案19.1.4】というグループと【案19.1.3】に分かれます。【案19.1.3】というのが今までどちらかというと実務的に近い感覚だったのだろうけれども、先ほど大澤先生の方から御指摘があったとおり、実は開始決定時が一番金額が大きいことが多いので、仮に【案19.1.3】を採るということが明確になったときに、ではすぐ実行しますという議論になっても厄介かなという気もします。   次に、【案19.1.2】と【案19.1.4】を比較すると、【案19.1.2】に対する批判が実はよく分からなくて、評価額争いがあるときにどうなるのかと言われても、実は現行法でも同じですよね。現行法でも別除権協定というのは別に誰かが判定する制度がない中で協議しているわけで、それと何も変わらないのではないのかと思います。本当に仮に担保権が実行されて開始決定時の上限を超えているかが問題になったら、それは訴訟で決着を付けるということが起きるかもしれませんけれども、そんなことは余りないので、結局、現状の別除権協定と同じことをやるだけです。   他方、【案19.1.3】を採ったときには、むしろ別除権協定の基準時がないので、別除権協定の協議がぶれる、協議しにくい、お互いの言い分がずれて、もっと対象債権がある時期もあるはずだとかという議論が起きてしまうと、協定が成立しにくいという事実上のマイナス効果もあるので、むしろ【案19.1.2】が別除権協定成立促進機能を持つということになるのではないかと思います。   【案19.1.2】か【案19.1.4】かの問題は、これはもう前にどこかで申し上げましたけれども、自信のある弁護士と自信のない弁護士の差であって、自信のない弁護士は【案19.1.2】を是非お願いしたいと言います。俺は担保権者に言うことを聞かせることができるという自信のある先生は【案19.1.4】でいいかもしれませんけれども、全員が全員そうではないので、実務的には【案19.1.2】が望ましいのではないかと思っています。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。 ○村上委員 また原則的な発言になりますけれども申し上げます。中間試案の四つの案につきましては、これまでも述べてまいりましたけれども、倒産時における労働債権者など一般債権者との公平性を考えれば、担保権の効力が及ぶ範囲を限定する【案19.1.4】が適当と考えております。   今回、本文では一定の要件を満たすものに限って【案19.1.1】を採用する案が示されております。この点については、先ほど第1の集合債権譲渡担保の実行のところで、限定的に類型化することが難しい現状では認めるべきではないのではないかと述べたとおりです。倒産手続開始後に発生した債権にも担保権の効力が無制限に及ぶことになれば、将来債権を含めた包括的な担保権を認めることになります。そうした担保権が実行されると、資料にも記載いただいておりますが、一般債権者の負担の下で担保権者が利益を得ることで、設定者の事業の継続、再生等を著しく困難なものにするとともに、倒産財団に属する財産が一層過少となり、労働債権の確保が極めて困難になるおそれがあるため、少なくとも【案19.1.1】については、労働者保護の観点から反対の立場であります。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。 ○山本委員 難しい問題で、私はいまだ定見を持ち得ていないのですけれども、若干考えたことをお話ししますと、切り出しの問題は、これは全く私にあれがありませんので、切り出されていない部分というのですか、【案19.1.2】から【案19.1.4】の中でということなのですけれども、この問題を、今回の資料もそういうことを示唆していると思いますけれども、担保権者が把握する価値というのを担保権の実行時期を判断する利益と基本的にパラレルに考えていくという立場によるとすれば、基本はやはり、まず破産及び民事再生においては、この実行時期選択権というのは基本的には担保権者にあると、それは別除権ということの意味だと思いますけれども、したがって、デフォルト的には【案19.1.3】が基軸になるのかなという印象は持っております。   ただ、問題は、資料にもありますように、倒産手続の中で一定程度担保権の実行時期選択権というのが制限されている場面がある、その場合をどういうふうに考えていくかということかと思います。最も制約が強いのは、言うまでもなく会社更生だと思いますけれども、会社更生は結局、更生手続開始時の時価で更生担保権を評価するという形になっていますので、それを前提にすれば、その限りにおいては【案19.1.2】とかと同じような手続開始時の評価額、その時点のスクリーンショットというか、それで目的物価額が評価されることになるのかなという印象は持ちます。   それから、難しいのが民事再生で中止命令が出ている場面で、先ほど別除権協定の話も出ましたけれども、担保権消滅が行われるのだとすれば、担保権消滅の際、結局、だから、中止命令が出ていると、【案19.1.3】によった場合も担保権の実行というのができなくなるので、実行時期で判断するということがそもそも難しいというか、できなくなってしまうことをどう考えるかという問題もあるわけなのですが、担保権消滅の場合には、やはり消滅請求の時点で実行がされたものと同視して、その時点でのスクリーンショットで考えるということが何となく筋のような気はするということがあります。   そうすると、その消滅請求をてこに別除権協定の交渉をしている段階で、今正に阪口幹事が言われたように、基準がはっきりしなくて、それが交渉を長引かせるというか、困難にするという実務的な面は確かにあるのかなという印象は持ちます。政策的に、その場合には何か、手続開始のときとか、あるいは中止命令の発令時点とか、そういうようなことも考えられるのかもしれないという気はしますけれども、理論的には、消滅請求をする場合には、その消滅請求の時点というのが何となく筋は通っているような気はしますけれども、私もまだ考えが十分及んでいないところです。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。 ○片山委員 片山でございます。先ほど申し上げて、二つの選択肢を提供して、担保権者というか担保権設定当事者に選ばせてはどうかという提案をさせていただきましたが、それに対して、大澤委員等から、そうすると担保権者に有利だと思われる方が常に選ばれるということで、集合債権ということではなくて、将来の全ての債権の譲渡と、個別債権の譲渡という方になってしまうという御批判を頂いたのですけれども、実は今回の御提案も、【案19.1.1】で行くときには、必ず中間試案の第20のカーブアウトは付けますということで、その費用とか、あるいは優先関係の設定の仕方によっては、必ずしもそれが有利なわけではないと思っております。例えば、労働債権は常に優先するというような形のカーブアウトがとられるのだとしたら、ずっとその先もその制約の中で継続して回収していくということであれば、それも一つの選択肢ですが、他方、担保権者としてはさっさと実行時にある財産だけで回収をしてしまう、その場合はこのカーブアウトは付かない、もちろん共益費用は取られるのでしょうけれども、それを除いて別除権的に全部回収する方がよいということであるならば、そちらの方もメリットはあり、選択肢の一つとなりうるかと思います。それは、やはりファイナンスの形態によって違ってくると思います。制度設計の仕方によっては、それなりにきちんとした選択肢になり得るのかなとは思っている次第ではございます。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。 ○倉部委員 倉部でございます。今まで御発言くださっている先生方皆さん、難しい問題であるとおっしゃっておられますけれども、私自身も長いことこの問題を考えて、大きく揺れ動いているところでございまして、私も【案19.1.2】から【案19.1.4】までの三つの中での意見を申し上げたいと思いますけれども、会社更生に引き付けて考えれば【案19.1.2】、そして民事再生で考えるのであれば【案19.1.3】がなじむのではないかということを以前申し上げておりました。ただ、この期に及んでと申しますか、もうここまで参りますと、倒産手続というひとくくりで考えなくてはいけませんし、我が国の場合には債権型が二つあるという現状でございますので、それぞれの担保権の取扱いの違いを考慮に入れつつ、両方うまく歩み寄るものと考えていかないといけないのかなと思っております。   それで、以前は【案19.1.2】、もう開始時の評価額で保護される額というものは、もうそこで優先権が及ぶ枠組みというのは決めておいて、あとは換価時期の選択権については、取り分け民事再生の場合には、ここだというところで実行すればよいというふうな説に立っていた時期がございました。にもかかわらず、本部会に入りまして【案19.1.2】と【案19.1.3】というところで、どちらもあり得るのではないかというような、少しぶれた発言をしてまいりました。ここに来て、やはり会社更生は【案19.1.2】になじむというところは変わらないと思います。バイファケーションがされているところでございますので、それは既に他の先生方からも御発言を頂いているところです。やはり悩むのが、別除権構成を採っている、取り分け民事再生についてどのように考えるかというところで、換価時期選択権を重視していくと【案19.1.3】なのかなと一時は揺れていたわけですが、先ほど阪口先生からの御発言を頂きまして、やはり別除権協定締結を前提とした実務の動きなどを考えてまいりますと、恐らく民事再生も【案19.1.2】になじむのではないかと思うに至りました。   そうであれば、やはり別除権協定を結ぶ際に、先ほど既に御指摘がございましたけれども、やはり何らかの時点での一定の評価基準というものがないと、別除権協定を結ぶ際の前提となる条件の設定の仕方というところが定まってこないというところもあるかと思いますので、民事再生、会社更生、両方について、実はなじんでくるのは【案19.1.2】なのではないかということで、また揺れ動きそうな気もしているのですけれども、本日はそういったところで、私自身の考え方としては収れんされたといいますか、両手続に合うものということで、【案19.1.2】ではないかというふうな意見を申し上げたいと思います。   【案19.1.4】というのは、最初から私の方では余り選択肢としては考えておりませんで、取り分け将来債権まで含む、また、譲渡担保の場合ですと流動性というものが重視されると思いますので、全く担保権が及ばないというのは難しいのではないかと考えております。   すみません、いろいろ悩みを吐露しているような発言になってしまいましたけれども、以上でございます。ありがとうございました。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。詳細に考慮点をお示しくださいまして、ありがとうございました。倉部委員からは、倒産手続の種類によって変えるということはやはり考えにくく、倒産手続一般として一つのルート、あるいは在り方というのに集約するのがいいのではないかという御意見が出されまして、一方、山本和彦委員からは、倒産手続の性格に応じて違い得るというお考えが出されているという理解でいいでしょうか。これは、むしろ山本委員に伺った方がいいのかもしれません。 ○山本委員 私自身は、先ほど申し上げましたが、この資料のように、換価時期選択権とパラレルなものとして、担保権者に把握している価値を、言わば誰が決定権を持っているかという観点から行くのであれば、それは破産、民事再生と会社更生というのは違い得るのではないかということです。ただ、会社更生はいずれにしろ開始時の時価という、その評価の基準はもう会社更生は書いていますので、ある種、どのあれを取っても必然的に開始時のあれにならざるを得ないのかなという印象は持っているところなので、そうですね、手続によって違い得るかということについては、私自身は違ってもいいのではないかと思っているということがお答えになります。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。手続とともに場面というか、担保権消滅が掛かった場合ということも含めて、それぞれの類型の使い分けということだと理解をしました。ありがとうございます。   それと、今まで出していただいた御意見、御質問の中で、大澤委員から【案19.1.2】、開始時の評価額というときに評価の決定の困難さということがあり、例えば会社更生におけるような簡易な価額決定のための手続というのがないとなかなかワークしないのではないかと、そういう手続を設けることも想定されるものだろうかという御質問があり、事務局でそういうことまで作ることをお考えですかという御質問がございまして、逆に、【案19.1.2】によるというのが望ましいというお考えも今まで何人の方からか出していただいたのですが、その場合に、評価のための何らかの手続などをやはり設けた方がいいということなのか、しかし阪口幹事からは、そういうものを設けなくても今も十分行われているので、そういうことは必要ないという含意であったのかと思いますけれども、この点につきまして、【案19.1.2】が望ましいというお考えの方のお考えを確認しておきたいと思いますけれども、阪口幹事は、特にそういう手続は必要ないということでよろしいでしょうか。 ○阪口幹事 はい、私は不要だと思います。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。倉部委員はいかがですか。 ○倉部委員 ありがとうございます。私も今、実務が動いている状況を拝見していると、特に特別なものを今から用意するというのは必要ないのかなと思いますけれども、またもう少し考えてみたいとは思います。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。大澤委員からは、事務局どうですかという御質問ではあったのですけれども、大澤委員、お願いします。 ○大澤委員 すみません、ありがとうございます。【案19.1.2】における評価のところについては、今まで実務がそういう評価がなくても民再で何とかやってきているというのも私もよく理解はしております。むしろ、確か資料の中で評価の困難性ということを前からおっしゃっておられたというのが事務局の方の問題意識かと思いましたので、そこについて、その困難性をクリアするために何か必要だと事務局がお考えなのかなと、個人的には私は、元々評価の実務というものをある程度やっているところもあるので、何とかなるのではないかと思っていたのですが、今までの資料の中で割とそういった評価の困難性ということをかなり書いておられた印象を持っておりましたので、事務局についてそこで何らかハードルを感じておられるのかどうか、ハードルがあるのであればどんなことでクリアするのか、それが会社更生におけるような価額決定手続みたいなことを考えるのかということを御質問させていただければと思った次第です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。趣旨を明確にしていただいて、ありがとうございました。   そろそろ時間が気になってきておりまして、この問題は非常に難しいということで、改めて今回、より詳細にお考えを出していただきました。【案19.1.1】型と、【案19.1.2】から【案19.1.4】までの型があり得るということは、余り御異論はなかったように思います。その上で、【案19.1.1】について別類型というか、にした上で、その選択といいますか、切り分けといいますか、そういうものをどうするのか、あるいはほかの制度に委ねるのかといったことがそれぞれお考えが示され、一方で【案19.1.2】から【案19.1.4】までについては、これもまたそれぞれ支持する見解がありましたけれども、今まで御指摘いただいた中では、【案19.1.4】をより積極的に推されるという、大澤委員からは、むしろこれが実務ではないかということでありましたでしょうか、いずれもそれぞれ考え方があるということであったかと思います。   それで、更に残された時間でやっていきたいと思いますが、道垣内部会長お願いします。 ○道垣内部会長  評価額が難しいのではないかという問題について、今現在やっているよという話で、大丈夫なのではないかというのですが、私もよく分かっていないのですが、別除権協定の中で、債権の評価額を基準としましょうというふうな話合いをしている中で決まってくる額については、その定め方についていろいろな技術的な方法があって、納得すれば何とかなるというふうなところがあるのだと思います。所詮話し合いですから。しかし、実体的な効力が評価額までだというふうな条文をきちんと書くということになると、少し今までと異なった意味を持ってくるのではないかと思います。現在大丈夫だから、この条文にしても何とかなるということにはならないのではないかと思います。 ○沖野部会長代理 御指摘ありがとうございます。それでは、大澤委員からの御質問の趣旨というのも更に明確化されまして。失礼しました、尾ア幹事、お願いします。 ○尾ア幹事 私も最後の道垣内先生がおっしゃったことと全く同意見であって、会社更生のようにある程度大企業を対象とする場合に、しっかりとした手続の中で評価を行うということはできるかもしれませんが、全ての債権譲渡担保の実行においてそういった重い手続が必要とされるというのは、余り現実的ではないのではないかと考えております。   それから、もう一つ、現にプロジェクトファイナンスのようなものが動いている以上は、そちらの方の類型をやはり選択可能にしておくことは必要であって、既に行われていて問題が生じているのであれば、そのようなところに対して対処する規定が必要になってくると思いますが、余り心配しすぎていろいろなものを重くしてしまうということは、かえって制度自体を使いにくくしてしまうのではないかと考えています。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。評価について、そうはいっても全てにその手続に乗せるようなことは難しいということと、切り分けられる【案19.1.1】型のものについて更に御指摘を頂いたのかと思います。   それで、評価手続について大澤委員から更に御質問を頂いているのですが、限られた時間であるということもありまして、それ以外にも、今回の資料の中では、実務への影響の問題ですとか、幾つか問題提起もされているものがございますので、すみません、それらを含めて、事務局から更にこの第5の特に1について、もし御指摘なり御回答なりがあれば、お願いできますでしょうか。まず、評価手続を設けるかということについてはどうかという、既に委員の方々から御指摘いただいた点なのですけれども、何かございますか。 ○笹井幹事 何か今、事務局において積極的にこういう手続を作ろうということを考えているわけではありませんでした。というより、むしろそれを作ろうとすると、どういう手続を作るのかというようなことを一から議論しないといけませんので、そういうハードルは非常に高いのではないかと思います。   そうすると、ではどこでその評価が決まってくるのかといいますと、恐らく紛争の類型としては、清算金をめぐって担保権者と設定者との間で争いが生じて、もし担保権者がたくさん取りすぎているということになると、清算金として払うべきではないかというようなことで訴訟になって、そこの裁判で決まっていくという手続にならざるを得ないのかなと思っております。   ただ、そこでの訴訟での主張立証ということになってくるわけですけれども、倒産時点でどういうふうに見込まれたのかということの立証を行っていくということになるので、そこはやはり困難ではないかと思っていまして、そこは現実の今の実務でもやっているではないかという御指摘もありましたけれども、それは別除権協定が最終的に成立したということであれば、そこで何らかの合意があって、それを前提として合意がなされたということになるのかもしれませんけれども、全てにおいてそういう合意が明示的にされているのかというと、成立しなかった場合というのもあり得るかもしれませんし、また、先ほど道垣内部会長がおっしゃったとおりかもしれませんけれども、そこでの納得というのは必ずしも純粋な評価そのものとは異なる様々な要素も考慮されるのではないかという気もいたしまして、【案19.1.2】については実務的な困難性という問題があるのではないかと記載したのは、そういう趣旨でございます。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。そのほか、この点については更に御意見を伺いたいというようなことで、見落としている点とか補足すべき点とかございますか。いかがでしょうか。 ○笹井幹事 余り今まで議論されていないところとしては、【案19.1.4】を支持される見解もありましたけれども、【案19.1.4】を支持した場合には、倒産手続が開始した場合には、処分権限あるいは取立権がなくなるということになりますので、それで運転資金等に影響がないかというのが一つの問題になってくるかと思います。もし何かありましたら、そういう点についてどういう解決策があるのかということについて、御教示いただければと思います。 ○沖野部会長代理 よろしいですか。今の点ですが、いかがでしょうか。逆に御懸念があって、流動性が失われるということが問題で、【案19.1.4】は難しいのではないかという御意見は一定数あったかと思います。その一方で、【案19.1.4】でいいのではないかというお考えもあって、大澤委員はそのお考えでしたでしょうか。そうしたときに、今の流動性問題といいますか、いきなりもう処分権を失うということの問題についてはどのようなお考えだろうかということですけれども、いかがでしょうか。 ○大澤委員 これは極めて実務的なお話を申し上げますけれども、民事再生手続において別除権協定というのは、特にこの類いの、債権と動産両方ですけれども、非常に大きな影響を持つものですから、申立て代理人とすると、非常に早期に行うものでもございます。また、債権に関しては、評価がしやすいということもあって、理論上確かにおっしゃるとおりで御心配、実際には再生債務者の方が取立権限を失ってしまうことについてどうなるのかという、運転資金の枯渇という問題が生じますよねというのは、そこは理論的にはおっしゃるとおりだと思っております。ただ、実務的には非常に短期に、本当にもう1週間以内とかそこらでやったりというような事例が結構多いと思っておりまして、そういった意味で、そこまでの、全て理論的に駄目だから絶対に駄目という感じではないというのが実務の肌感覚かなと思っている次第です。なので、それが回答としていいのかというのはよく分かりませんけれども、実務的にはそんな感覚を持っている次第です。 ○沖野部会長代理 ありがとうございます。先ほど坂口委員からも、【案19.1.2】と【案19.1.4】の選択は、弁護士の方が御自身に自信のある方かどうかによるということがありまして、一定の弁護士像を基にしたときには実務的に問題ないということかと思われますけれども、そういった実務の御経験を踏まえての御回答ということで、事務局の方からはよろしいですか。 ○笹井幹事 はい。 ○沖野部会長代理 では、そのほかの点もよろしいでしょうか。元々非常に難しい、そして割れるだろうと思われていたところですので、引き続き更に検討ということになるかと思います。   事務局の方に伺ってばかりで、部会長がいらっしゃったら叱られるかなと思いながらやっておりましたけれども、余計な発言でした。ちょうど予定していた時間、6時になりますので、本日はもうこれ以上先に進むことはできません。   今後につきまして、事務当局から説明をお願いしたいと思います。 ○笹井幹事 今日も長時間にわたりましてありがとうございました。次回の日程は、7月25日火曜日です。お忙しいところ大変恐縮ですけれども、よろしくお願いいたします。次回は予備日ですので、新しい資料の配布はございません。本日、時間の関係で第6以降が積み残しになっておりますので、次回、部会資料32の第6以降について御議論いただければと考えております。 ○沖野部会長代理 ありがとうございました。   それでは、これをもちまして法制審議会担保法制部会の第35回会議を閉会にさせていただきます。   いろいろ司会の不手際があったかと思いますけれども、お許しいただきたいと思います。本日は熱心な御審議を賜りまして誠にありがとうございました。これで閉会といたします。 −了− - 1 -