法制審議会 担保法制部会 第34回会議 議事録 第1 日 時  令和5年6月13日(火) 自 午後1時29分                      至 午後6時03分 第2 場 所  法務省第1会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(3) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第34回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は結構リアルの出席の方も多いのですが、私としては出席の圧力を掛けているつもりでは全然ありません。しかし、来ていただくと楽しいなという感じはいたします。   本日は衣斐さんが御欠席ということで、あと、加藤さんと村上さんが途中退席の予定であると伺っております。   事前に事務局から連絡がありましたとおり、今回から会議の終了時刻を、申し訳ございませんけれども、18時までとさせていただきたいと思います。皆さんお忙しい中、本当に恐縮ではございますが、必要に応じて途中退席をしていただければと思います。   また、前回の部会後に委員等の交代がございましたので、御報告を致します。小田委員が退任され、新たに市原さんが委員に就任されました。簡単な自己紹介をお願いいたします。 (委員の自己紹介につき省略) ○道垣内部会長 ありがとうございます。よろしくお願いいたします。   まず、配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日から少し長くなりますけれども、どうぞよろしくお願いいたします。   事前に部会資料31「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(3)」をお送りいたしました。これについては後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。また、直前となりましたが、部会資料29−3をお送りいたしました。部会資料29−3は、パブリック・コメントとして頂いた御意見のうち中間試案第11から第15までを対象としており、中間試案第16以降につきましては次回以降、部会資料29−4以下として随時送付いたします。   さらに、伊見委員から資料の提出を頂きましたので、これを委員等提出資料34−1、34−2としております。これにつきましては、後ほど伊見委員から御説明を頂く予定です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、審議に入りたいと思うのですが、まずは前回配布いたしました部会資料30「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(2)」の積み残し部分について議論を行いたいと思います。部会資料30の「第4 複数の担保権が競合する場合の優劣に関する規律」まで議論をしたと認識しておりますので、「第5 動産・債権譲渡登記制度の見直し」から議論を開始したいと思います。事務当局において説明をお願いいたします。 ○森下関係官 第5は動産・債権譲渡登記制度の見直しについての提案です。   1では、新たに登記できることとする事項等について提案いたしております。具体的には、譲渡担保権者の変更、転譲渡担保、順位の変更などを新たに登記できることとしています。なお、中間試案では、これらを登記するための目録を新たに設けるかどうかについて提案しておりましたが、パブリック・コメントでは、転譲渡担保のように他の譲渡登記との関係が問題とならないものについては付記登記方式とし、順位の変更のように他の譲渡登記と関連するものについては目録方式とするなど、性質に応じて使い分けることも考えられるとの意見もありました。そこで、本文では新たに登記できることとする実質的内容のみを記載することとしています。   2は、留保所有権について登記できることとし、その効果を引渡しがあったものとみなすこととするもので、中間試案から変更はございません。   3は、動産譲渡登記の動産の所在によって特定する方法の要件についての提案になります。【案5.3.1】は、動産の保管場所の所在地の要件を維持しつつ、例えば所在地について評価的な概念による特定を認めることとするなど、特定の方法を柔軟化する運用上の見直しを行うという提案になります。これに対して【案5.3.2】は、動産の保管場所の所在地の要件を撤廃し、特定方法については当事者の任意に委ねることとするものです。【案5.3.2】による場合は、当事者が申請した内容を基本的にはそのまま登記するといった運用が想定されます。   4は、登記をすることができる譲渡人を商号登記をした商人に拡大することについて、見送ることを提案するものです。これは、個人商人について譲渡登記を利用するニーズはそれほど大きくないと考えられること、また、現行の商業登記制度では特定の個人について複数の商号登記が認められているなど、自然人について譲渡人検索によって譲渡登記の有無を適切に検索することが容易でないことなどを理由とするものです。   以上について御審議をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。伊見さんから提出していただいております委員等提出資料34−1、34−2というのがこの動産・債権譲渡登記制度の見直しに関連いたしますので、この段階で伊見さんの方から御説明をお願いいたします。 ○伊見委員 ありがとうございます。司法書士の伊見でございます。まずは、昨日直前になりまして委員等提出資料ということで配布をお願いさせていただきまして、大変お手間をお掛けいたしました。また、本日も先んじて発言をさせていただくということで大変恐縮をしております。資料を2点出させていただいておりますが、その内容の御説明に併せまして、今御説明を頂きました第5の登記に関する論点全体についても併せて発言をさせていただければと思います。   まず、この登記の見直しについてでありますが、中間試案におきましては登記制度の見直しについて、付記する案と関連担保目録を作成するという二つの案が出ていたところでありますけれども、今回お示しいただきました部会資料30の提案においては、いわゆる2層目の登記につきまして、目録又は記録欄を設けるとしまして、実務上のニーズと公示の分かりやすさや適切さといった観点から、実質的にいかなる機能を持たせるべきかについて検討を進めていただいたものと理解をしております。そのため、本文の1、2につきましては基本的に提案の方向性に賛成するものでございます。   そして、そのことを前提にしまして、今後の検討におきましては、登記制度の具体的なイメージを共有しながら進めていくのがよいと考えましたため、作成したのが資料34−1という位置付けになります。皆さんの御認識と一致していない点というのも多々あろうかと思いますけれども、不一致を確認することにも意義があると思い、お出しするものでございます。   担保目録等導入のためのイメージ図という横置きのものを御覧いただけますでしょうか。こちらのイメージ図の構成ですけれども、まず一番左側から1層ということで、これは現行の登記ファイルの記載内容をそのまま書いたものになっております。右の方に進んでいただきまして、第2層ということで、こちらが今回の部会資料の方で御提案を頂いています、新設される担保目録等ということを資料の中から読み込んで、このようになるのではないかということで考えたものになっております。   このイメージ図を作るに当たりましての想定の事例でありますが、甲商事という譲渡人がいまして、それぞれ上から順にA銀行、B銀行、C銀行というふうに動産譲渡担保の登記がされているというものになっております。   担保目録等の記載事項についてという右側の部分になりますけれども、部会資料によりますと、第5の1(2)のア、イ、ウ、エという四つが示されておりまして、この四つのうち、まずアとイについては、関連付けとは関係なく、各譲渡登記にひもづけがされるべき事項というふうな切り分けができると思いました。一方でウとエにつきましては、関連付けをした上で複数の登記にひもづけがされるべき事項と考えられると思います。その上で、複数の譲渡登記に共通するものにつきましては、一番右のところを見ていただければと思いますけれども、登記番号0001のA銀行を譲受人とする登記、それから、登記番号0002のB銀行を譲受人とする登記を関連付けて、そこで順位変更の合意があった旨というのが記録されるというふうな理解を整理させていただいたところであります。一方でC銀行の登記につきましては、関連付けというのがなされませんので、一番右の記載は当然なされないということになろうかと思います。   このことは、最後、証明書の範囲というところにも関係してくると思いました。イメージ図の一番下のところに○×で表示をさせていただいているところでありますけれども、登記事項概要証明書という誰でも取得できる証明書のところにおきまして、一番右の事項と、一つ飛ばしまして3番目の事項、そして4番目の関連する事項というものが記載をされてくるという想定をしております。これがイメージ図の方の説明ということになります。   続きまして、もう1点の資料であります34−2についてでありますけれども、これは部会資料の第5の3に関連する部分であります。検討メモというタイトルでお出しをさせていただいております。   まず、1としまして、現在の登記実務上、場所による特定の在り方が限定的であることに起因する不具合の例をお示しさせていただいております。例1といたしましては、原始的に所在地による特定が困難と思われるものであります。例2につきましては、後発的に保管場所が移動があった際に、それに対応ができないという問題点をお示ししたものになっております。   部会資料の方の2案のうち【案5.3.2】のように、種類以外の特定事項を全くの任意としてしまって、申請されたものをそのまま登記するという案につきましては、登記の内容が余りにも不明確になりますし、当事者や第三者の判断リスクが高まるということで、取引の安全にも影響することが懸念されると考えております。本部会のこれまでの審議におきましても、前回取り上げた登記優先ルール、占有改定劣後ルールに関して、動産譲渡登記において対抗要件を具備した譲渡担保権を、それ以外の方法、占有改定以外の引渡しも含めて、対抗要件を具備した譲渡担保権に優先をさせようといった考え方もあり得るという趣旨の御発言もあったと記憶をしており、私もその考えに賛同するものでございますが、いずれにしても、少なくとも今よりも登記の機能や担うべき役割が増す方向での検討が進められているということを勘案しますと、登記制度が不安定になるということは避けなければならないと考えております。   そこで、【案5.3.2】のように動産の所在要件をなくしてしまうのではなく、この検討メモの1の例1や例2で示したような不具合についてカバーができるような所在の特定方法を許容する方向で、具体的に困難が生じている範囲内で緩和をしていくのが穏当であるということで、【案5.3.1】がよろしいのではないかと考えております。   次に、緩和の方向性の検討を試みたものが次のページの2の例ということになってございます。1でお示しした例1の困難事例の対応としまして、現状の動産譲渡登記の扱いにおいて、例えば土地の筆数が多い場合に、所在地として代表地番を記載した上で備考欄に有益事項として保管場所の名称を記載するということが特定として足りるという運用がなされています。これを更に拡張しまして、必ずしも所在地番によらずとも、例えば店舗とか○○農場、どこどこ発電所といった要素での特定を許容していく方向が考えられるのではないかと思いました。また、1の例2に関する対応としましては、あらかじめ動産の移動を想定した特定の方法、私の方でお出ししました検討メモの2(3)にあるような記載で特定を許容していくという方向が考えられると思います。   以上が提案の本文3までの意見となります。   委員等提出資料からは離れますが、最後に第5の4の点について一言意見を述べます。こちらの商号登記を利用した自然人商人への拡大につきましては、動産・債権譲渡担保の活用が広まるという観点で期待をしていたところではありますけれども、説明記載のとおりに、同一人で複数の商号登記が可能であるという点で、やはりバグが非常に大きいと思いますので、見送りについては仕方がないという意味で、賛成を申し上げたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、委員等提出資料も含めまして、以上の点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○村上委員 第5の3の動産譲渡登記の特定方法についてでございます。そもそも動産譲渡登記制度は、登記によって動産が譲渡された事実を公示することで取引の安定化を図るために導入されたものと認識しております。伊見委員も御指摘になりましたけれども、【案5.3.2】では特定性が低いということで、そうした方法を認めるのはいかがなものかというところはございます。また、動産・債権譲渡特例法導入時の国会の法務委員会での附帯決議においても、債権回収の手段として濫用されることのないよう十分な配慮することも明記をされているところでございます。そうしたことを踏まえますと、【案5.3.1】のような方法の方が適切なのではないかと考えます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにございませんでしょうか。 ○沖野委員 委員の沖野でございます。今の御指摘の動産譲渡登記の特定方法の場所についての緩和に関してなのですけれども、例えばなのですが、レンタルをしているとかリース会社とかで、実際の物品が各地に散らばっているという場合です。現実的にはむしろリース料債権の方を押さえるのだと思うのですけれども、動産の方も併せて押さえておきたいというような場合ですと、特定の倉庫ですとか特定の地域というよりは、もう顧客が散らばっている以上、東京都内のとか、そういうことになってくるかと思うのですが、今ちょうど伊見委員から御説明くださった緩和の方法というときには、こういった場合も十分対応できるということになりますでしょうか。こういうものも、東京都内の顧客の何々とか、あるいはどこどこ県とかぐらいでもよろしいのであれば、【案5.3.1】の柔軟化で十分いけると思うのですが、それができないということになると、【案5.3.1】ではできない案件が残るのかなと思いまして、確認させていただく次第です。 ○道垣内部会長 これは誰からの方がいいかしらね。まず事務局の感覚を伺えればと思いますが。 ○笹井幹事 そうですね、今日の段階でお示しした【案5.3.1】、それから【案5.3.2】は、いずれも、きっちりした基準をお示ししたというよりは、所在場所という要素をどこまで維持していくかという点について、二つの大きな方向性をお示ししたというものにとどまっております。そういう意味で、例えば、沖野委員から御指摘があったような「東京都内」という方法を認めるのかどうかというのは、正に今日御議論いただければと思っていたところではありますけれども、ただ、「東京都内」でいいということになれば、「日本国内」でもいいのかとかいうことになって、その保管場所という要件には意味がなくなっていくと思います。そういう意味では、【案5.3.1】というのはもう少し限定されたものをイメージしているものとしてお示しをしていたところです。   もし今、沖野委員から御指摘があったように、目的物が特定の倉庫の中に入っているという場面だけではないケースももちろん想定することができて、そういったものも含めて登記の対象にするのだということになれば、それはどちらかというと、今日お示しした中では【案5.3.2】の方で対応していくということになるのかなと感じます。 ○道垣内部会長 その点につきまして、伊見さんは何かございますか。 ○伊見委員 伊見でございます。その点については、実は私も揺れながらこの資料を作って御説明をさせていただいておりました。メモの一番最後の下線を引かせていただいたところですけれども、例えば東京都千代田区何番地と書いた上で、そのほかに譲渡人が所有、賃借する保管場所のような書き方になっていくと、これはもう恐らく東京都の千代田区麹町以外の全国各地に散らばる保管場所を想定してもいいのではないかということで、一つの提案として示させていただいたものになっておりますが、それが全国ということに及んだ際に、その特定としてどうなのかというところは、私も必ずしも自信を持っていないところでありまして、皆様方に教えていただければという趣旨での提案となっております。 ○道垣内部会長 この点については、もう少し後で、実質的にどういうふうなのがよいと皆さんがお考えになるかということをお伺いしたいと思うのですけれども、その前に、何人かから手が挙がっていますので、発言をお願いしたいと思います。青木則幸さん、まず、お願いいたします。 ○青木(則)幹事 今の御議論に少しかぶってしまうところがありますけれども、やはり【案5.3.1】の柔軟化の程度ということについてでございます。例えば、設定者の全ての営業所に存在する全ての在庫商品という形の特定の仕方をもしするとすれば、それは【案5.3.1】の意図されている特定には当たらないということなのでしょうか、それとも一応、設定者の方が真に全ての在庫商品を担保に付けるという意思があれば、特定になっていると考えてよろしいのでしょうか、そこのところを質問させていただければと思います。 ○道垣内部会長 それは解釈の問題だと思いますので、青木さんが、どのようなのがよいとお考えなのかの御発言を頂いた方がよろしいかと思いますが、どうでしょうか。 ○青木(則)幹事 御承知のように包括担保のニーズというのはいろいろなところで説かれております。国際的な議論などでも出てくるところでございますので、そのような対応ができる方がいいのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 分かりました。実質的な話はまた更に続けたいと思いますが、日比野さん、お願いいたします。 ○日比野委員 ありがとうございます。【案5.3.1】、【案5.3.2】から少し離れてしまうのですけれども、それでもよろしいですか。 ○道垣内部会長 結構です。 ○日比野委員 分かりました。ありがとうございます。   第5の2のところです。部会資料28で、実体法について発言したことを登記のところでもさせていただくということになるのですけれども、我々金融分野の立場としますと、分割譲渡もニーズとしてあるというところを前回お話しさせていただいたとおりでございます。したがいまして、実体法について分割譲渡ができるように考慮を頂きたいということと同時に、登記においても分割譲渡について御検討いただきたいということをこの場で改めて発言させていただければと思います。 ○道垣内部会長 分割譲渡ですか。 ○笹井幹事 根譲渡の分割譲渡。 ○日比野委員 失礼しました。根譲渡担保の分割譲渡が部会資料28で採用をしないということになったことに関して、その場で御発言させていただいたのですけれども、この登記制度のところについても、実体法で整備をすると同時に登記制度の方においても整備を頂きたいという趣旨で御発言をさせていただきました。 ○道垣内部会長 分かりました。それは新たな問題点なのですが、その前に何人かの方から、保管場所との関係でどこまで包括的なことを認めるのかということで、青木さんからは包括的な方法で可能であるというふうに認めるべきであるという積極的な御意見を頂きました。そうなると【案5.3.2】でも、緩和の極みになりますから、一緒かなという感じもしますけれども、ほかの皆さん方で、やはり一定の制約を付ける方がいいのではないのというか、それとも、別に保管場所はいろいろなところに行ってしまうのだから、どこだっていいではないのということなのか、その点について皆さんのお考えはいかがでしょうか。 ○井上委員 井上です。今の点、包括性は種類に関しても問題になると理解しています。例えば、「在庫全て」とか、極端なことを言えば「設定者の持っている動産全て」とか、そういう包括性にはもちろん限界があるだろうと思っておりまして、設定者のビジネスモデルにもよるかもしれませんけれども、特定の種類の在庫といわなければ特定が認められない場合もあるのではなかろうかと思います。   ただ、そういう意味で、対象物やビジネスに応じて「種類」によってどのぐらい特定しなければいけないかが変わり得る結果、包括性には限界があってしかるべきだと思う反面、その包括性を限定するために、あるいはそれ以外に対象を特定する目的で、場所を必須とするべきかに関しては、そこまではいえないと思っております。典型例として、先ほど沖野委員がおっしゃったレンタル物件のような例についても登記できるようにすべきではないかと考えますので、その点で、関東全域あるいは日本全国というような場所的要素を形式的に満たすからといって特定がなされるとは限らない反面、先ほどの例のように、特定の設定者が顧客にリースしている特定の種類の物品であれば、場所が全く特定されていなくても十分な特定があると思われますので、その点で場所をマストにすることには抵抗があります。   ほかの例として、これは集合動産譲渡担保ではないことがほとんどだと思いますけれども、私が聞いた例では、宝石の譲渡担保で設定者にそのまま利用を許しているという状況で、そういう意味では身に着けて使うために場所的にはいろいろ移動すると、旅行先にも持って行くという管理方法もあり得ますが、そういう高価な宝石などについても登記ができないのは適切ではないと思いますし、そういった例は多くはないかもしれませんけれども、場所をマストにすることには問題があると思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。井上さんから、場所を必須にするのには問題があるということでしたが、その前に、ビジネスモデルとか設定者の商売上の状況とかによって、種類による特定といってもいろいろ変わってくるよねというふうな話が前半部にあったと思います。その点についてはどのような基準を設けるべきだとお考えになるか、あるいはもう種類も、これで特定されているよねと社会通念上思えるようなことであればいいと言わざるを得ないのだから、必須の要件とか、あるいはここまでの緩和が許されるというふうな基準を設けることは妥当でないとお考えになるか、その辺りはいかがでしょうか。 ○井上委員 ありがとうございます。柔軟性と予測可能性のバランスの問題が重要だと思うのですけれども、実際上、登記したのにその登記が有効でなかったという事態は担保権者にとっては是非とも避けたいことではありますので、その意味では、実際に行われるであろう登記の9割だか99%だかに関しては、比較的定型的、安定的な特定の仕方がなされるであろうと期待されます。その意味では、ある程度類型的な特定の仕方が、ガイドラインのような形で示されるかどうかはともかく、実際には用いられると思います。登記実務において、事前の登記確認のようなことがなされるのかどうかも含めて、いろいろな方法があり得ると思うのですが、実際上安定的な運用が必要だと思います。   ただ、限界的な事例、先ほどの宝石のような事例や、リース会社が顧客にリースする物品のような事例については、特定性が高いのであれば、何かの要素をマストにしなくてもいいのではないかという意味で、そのような限界的な1%の事例において、どのように担保権者が安心して担保制度・登記制度を使えるようになるのかは、これは工夫が必要だと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。実務上のニーズがどこまであるのかというのは必ずしも測りかねるところではありますが、アバウトに考えますと、一つには、先ほどのリース物件のように、種類という意味で、その特定はできるが、所在場所がいろいろなところに拡散しているという場合もあるでしょうし、2つには、逆に場所という意味で、倉庫とか、あるいは事務所なら事務所という場所で特定できるが、その中では様々な什器等全てが含まれていて種類の特定は難しいという場合もあるのかと思いますので、私のイメージとしては、種類又は保管場所というような、「又は」という形で、両方に捉えるような枠組みがあってもいいのかなとは思っているところでございます。 ○道垣内部会長 片山さんは、結局は何かを必須にするというのは難しいということなのでしょうか。 ○片山委員 はい。【案5.3.2】ですと種類だけを必須にするという選択肢なのですけれども、別な方向の選択肢として、場所だけという選択肢もあっていいのかなと思った次第です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。このような形の要件設定をある程度しなければならないと事務局がお考えになった理由の一つに、井上さんからも少し出たのですけれども、特定方法を当事者に委ねると、登記が事後的に無効と判断されるリスクがあるということが懸念されるという話があって、それを避けるためには、ある程度の枠組みというか、そういうのを示さざるを得ないのではないかということがあるのではないかと思います。ただ、無効になるリスクがあると思ったら一生懸命特定すればいいだけであって、そんなことに配慮してあげる必要があるのかというのもいえないわけではないような気もします。その辺りの実務的な感覚と申しますか、いかがなのでしょうか。やはり法律ないし何らかの形で、これは有効であって、あるいはこの要件が満たされていないと有効にならないということで、また逆に、満たされていれば有効になるということを明確に示すというのが安定のためには必要だとお考えになられますでしょうか。いかがでしょうか。 ○藤澤幹事 すみません、実務家ではないので、実務的な観点ではないと思うのですけれども、今の点について三つほどコメントさせていただきたいと思いました。   まず一つ目は、占有改定によって対抗要件を具備する場合の特定方法については、下級審裁判例などで、例えば「A会社の本店」というような形で、物理的な場所を特定しないのだけれども、観念的に場所を特定して目的物を特定するという方法が認められています。しかし、現在の登記だとそれができなくて、どこか地番などを示さなくてはいけないため、占有改定の場合と登記をする場合とを比較すると、特定のしやすさに少し差が生じてしまっているというところがあります。改正に際しては、その差を埋めて、登記の場合にも占有改定と同じような特定方法ができるというふうにしないと、登記優先ルールなどを導入するときに、登記を選びたい人のハードルになってしまうのかなと思っていまして、【案5.3.1】の方向は少なくとも必須なのではないかと考えております。   その上で、2番目に、伊見委員が御提出くださったメモの中にあった、ホワイトボード方式が尚早であるというコメントについてなのですけれども、これは道垣内先生が御説明くださったように、やはり当事者に全部任せてしまうとなると、登記手続を引き受ける専門家の先生方において、自分の書いた登記の記載が事後的に無効とされる可能性があって非常に不安であるといったようなところがあるのかなと感じました。   そこで、現在の動産譲渡登記規則もそうなっていると思うのですけれども、幾つかの特定のパターンを規則の中で示して、場所による場合とか種類による場合とか、チェックボックスで選べるようにするのはいかがでしょうか。その上で、「この方式を採った場合にはこのくらい書いておけば大丈夫」といったガイドラインがあるといいのではないかと思いました。   最後に、沖野先生がおっしゃった、場所が散り散りである場合についてなのですけれども、場所によって目的物を特定する趣旨が、外から見てそれが担保目的物なのかどうかが分かるということ、第三者がきちんと判断できるようにすることにあるのだとすれば、例えば、散り散りの場合にはシールとか明認方法みたいなものを施すことで、これが担保目的物ですよということが分かるようにしておけば良いような気もします。そして、そのシールの画像を登録しておけるようにするとか、そういうやり方はないかなと思いました。 ○道垣内部会長 分かりました。なかなか難しい問題があるような気がしますね。つまり、対抗要件具備したつもりになっても具備できていないというリスクは、実は占有改定において既に存在していて、占有改定の合意においてどこまでの特定が必要かというのが明確に議論されているわけではないだろうと思うのです。ただ、しかし契約解釈によって、この物について占有改定による引渡しがなされているということになると、対抗要件が具備されるということになる。その意味では、占有改定による引渡しのときには自由に当事者の任意の方式によることになっているのだろうと思うのです。ただし、それを譲渡登記制度に乗せるときにどうするのかということで、これが一緒にならなければいけないかというのがまた難しい問題で、登記は占有改定の公示力を高めるために、占有改定では公示力がないから、それを高めるためにこの制度をやって、これをやっているときには一定の効力を認めるのだということになりますと、占有改定については完全に契約の解釈、合意の解釈の問題だけれども、譲渡登記については一義的な明確性がより高まるということが必要になるという制度設計も可能なのかもしれないと思います。それをどういうふうに考えていくのかということだろうと思います。すみません、要らない話で。   日比野さん、お願いいたします。 ○日比野委員 ありがとうございます。先ほどの部会長からの問い掛けに対してというところなのですけれども、既に複数の委員の先生方からも出ているとおり、場所をどのぐらいの記載事項まで許容するかということによっては、それを求めること自体が特定という観点において余り必要にならないものもあろうかと思いますし、逆に、例えばダイヤとか、あるいは伊見委員からお示しいただいた、保管場所の所在地自体が随時移動するようなものの場合であれば、ほかの要素による特定の方が、よりその特定の明確性のためには資するということになろうかと思います。ですので、保管場所の要件自体を必要的なものとしなければいけないということはないのだと思います。   ただ、実務の立場からすると、これは何回か前の部会でもお話ししたとおり、登記したものが事後的に無効になるというのはできれば極力避けたいというニーズは当然ございます。もっとも、その方策については法律事項として規律するというのが唯一の解ではないというような気もしまして、藤澤先生が先ほどおっしゃったような方法のように、規則などで、例えば、この特定要素を使うのであればこのようなものを登記せよとすることもあるでしょうし、それ以外に実務家、有識者で何かガイドラインのようなものができるのであれば、そういったものに依拠して特定をしていくということもあろうかと思います。   なので、すみません、いろいろ申し上げましたけれども、保管場所を必須とした上でどこまで緩めるかというような議論の仕方ではなくてもいいのかなとは思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにございませんでしょうか。3の問題につきましてはいろいろ意見が出て、藤澤さんがおっしゃったような、完全に自由にするというのではなくて、いろいろなパターンというのが、それはあると、井上さんのおっしゃったビジネスモデルとか、そういうふうな話にも関係してくるのかもしれませんけれども、そのような形にするというのが一つの方法としてあるわけですね。あと1点、皆さんの意見を伺いたいのですが、有効性について、例えば今、藤澤さんがおっしゃったようなパターンを幾つか作るとしたときに、パターンに載っていなければ登記所で譲渡登記の部署で却下されるという制度設計でいいとお考えなのか、それとも、それはフリーパスだと、だけれども、載っていなければ後から無効になる可能性があるよねというだけの話だとお考えになるのか、それはいかがなのでしょうか。今はどちらかといえば、通れば安心というところですよね。ただ、それのたびに厳格な審査が要求されて、なかなか大変だというふうな話もあるわけですけれども、それはいかがですか。特に確定的には、実際の運用かもしれませんので、絶対にこうなるというわけではないかもしれませんが、その点はよろしいですか。 ○伊見委員 伊見でございます。今の部会長の問い掛けに必ずしも答える形にならないのかもしれませんけれども、現状におきましても種類による特定において、明確性という言い方が正しいでしょうか、そこの部分である程度制限がされているということもありますし、所在につきましても、全く所在要件を撤廃することも含めて、当事者の申請どおりに登記をするということになる場合であったとしても、さすがに出された文言の明確性といったものは審査の対象になるのだろうと思いますので、書かれたものをそのまま登記して、あとはそれぞれの判断でということにはなりにくいのだろうとは感じております。 ○道垣内部会長 分かりました。   ほかに。その点につきましては、まだいろいろ御意見もあろうかと思いますが、もう一つ重要な柱として今回出てきたお話の中で、4の登記をすることができる譲渡人について、商号登記をした商人に拡大するというのが少し技術的に難しいのではないかという話が出ているのですが、この辺りについて、是非それは拡大しなければおかしいとか、そういうふうな御意見等はございますか。あるいは、これでいいだろうということでももちろん結構なのですが。   いや、別に御意見がなければ、これで結構ですが、登記をして登記優先ルールというのを作ったときに、一定の人だけ優先できる可能性というのを作っていいのですかね。かなり根本的な疑問なのですけれども。僕は商人に限定されていても駄目なのではないかと思うのだけれども、そんなことはないですか。ほとんどの場合、いいではないかという話なのですが、それはそうなのだけれども、ほとんどの場合いいではないかというのでルールを作っていいのかなという感じもするのだけれども。   特に御異論がないということで、私だけ異論を述べていても仕方がありませんので、引っ込めますけれども、技術的にいろいろな難があるということであります。ただ、今後いろいろな特定方法というものが、あれは何というんだっけ、個人何とか番号で意地でも保険証に代えるというようなことをし出すと、個人でも使えるとかいう話になってくるのかもしれませんが、よく分かりませんが、沖野さん、お願いいたします。 ○沖野委員 ありがとうございます。私は本来的には主体は全て使えるようにするべきだと思っておりますし、個人であればマイナンバーを使ってでもと思っております。商号登記についても、複数あるからということだったら複数で検索すればいいのではないかとも思ったりするわけで、一方だけで検索すると出てこないけれども、もう一方だったら出てくるというときには、そういうときには取引の相手方等は複数の商号できっちり検索するのではないかという感じもしますけれども、技術的な制約がなかなか乗り越えられず、それを頑張って乗り越えるべき実務のニーズとして現時点でそこまで高くないということであれば、仕方がないのかなとは思っております。けれども、それも次善の譲歩というか、そういうものとして仕方がないと思っておりますので、部会長が取り消されるのは残念だと思っております。ですので、本来は入れるべきだと思ってはおりますけれども、難しいなら仕方がないということです。 ○道垣内部会長 私は、遡及効のある取消しではなくて撤回。どうでもいいですが。片山さん、お願いいたします。 ○片山委員 慶應大学の片山です。撤回されたということで、申し上げる必要はないのかもしれませんが、もし広く一般に個人も含めるという形の立法をするというのは一つの方法だと思いますが、そうするとまた別途、保証のときのような議論、消費者の保護のような形の規定もまた同時に必要になるかとは思いました。立法の方法としては、また一段階難しい問題を抱え込むという面もあるようにも思いました。 ○道垣内部会長 分かりました。譲渡人の方ですから、いいのですかね。譲受人の方は制約がないということになると、別にエンジョイできる人は一部にはならないということなのかもしれませんが。 ○水津幹事 別のところについて伺ってもよろしいでしょうか。 ○道垣内部会長 はい、結構です。 ○水津幹事 留保所有権の登記について、質問をさせてください。2では、留保所有権を登記することができるものとして、登記がされたときは、その動産について引渡しがあったものとみなすとあります。ここでの引渡しは、留保買主から留保売主への引渡しであると思います。そうであるとすると、2の規律は、留保買主から留保売主への譲渡があったことについて適用されるものなのでしょうか。仮にそのとおりであるとすると、留保買主から留保売主への譲渡は、留保売主から留保買主への譲渡が先行してあったことを前提としますので、ここでは、2段階の権利変動が生ずるという理解が採られていることとなります。それとも、ここでは、権利変動のプロセスはブランクにしながら、差し当たり留保買主から留保売主への引渡しがあったものとみなすということなのでしょうか。よく分かっておりませんので、どうぞよろしくお願いいたします。 ○笹井幹事 まず、どういう引渡しがあったものとみなされるのかということについては、二者間でいえば、留保買主から留保売主に対する引渡しがあったものとみなすことになります。留保売主は留保買主に対して現実の引渡しをしているので、それを前提として買主から売主に対する引渡しがあったものと登記によってみなされると考えております。そのときの法的な構成については、今、水津幹事もおっしゃったように、二つの物権変動があったというふうな理解がもちろん有力な見解としてあり得るところだと思いますが、そこはいろいろ見解も分かれているので、事務当局として何か特定の立場を採っているというわけではなくて、そういう意味では今、水津幹事がおっしゃったように、そこはブラックボックスにしているという理解であるのかなと思っております。 ○道垣内部会長 いかがでしょうか、水津さん、よろしゅうございますか。   留保所有権に関連いたしまして、実は部会資料の13ページに一定の質問事項が事務局から出ております。つまり、複数の継続的な売買等において複数の動産がその目的物となっているときに、範囲を特定するなりの方法による登記というのも認められるのかもしれないのだけれども、その辺りについて特に異論はありませんか。いかがでしょうか。 ○井上委員 今御指摘があった13ページに書かれているような形で、一定期間内の継続的な売買契約の目的動産について一括して所有権留保の登記ができることは必要ではないかと思います。これは、その一定期間内に何度も売買が継続的になされるときに、売買ごとに毎回登記をする必要があるかという問題について、1回で良いという提案だと思っておりまして、それがなければ、実際は在庫の所有権留保については登記を備えることが極めて難しくなるのではないかと思いますので、このような形で一括して登記できるということが必要なのだろうと思うのですけれども、逆に、これは登記に関してまとめて1回で良いという提案にとどまるといいますか、それを正に述べてあると思うのですが、その結果として対抗力がどのタイミングで備えられるかは、別の問題だと思います。この点、これだけの提案だと、各継続的売買の中で行われる個々の売買毎のタイミングで対抗力が備わることになり得るのかなという感じもしまして、私としては、その前提となる実体法の問題として、こういった継続的な売買における所有権留保については、それを集合物所有権留保と呼ぶかどうかはともかく、集合動産譲渡担保と同様に、1回の所有権留保合意に基づいて、その後、将来にわたって特定の範囲で保管される売買目的物の所有権を留保するという処分行為がなされ得ることをまず認めた上で、今回御提案されている登記とセットで、最初の合意プラス登記の時点で、その後特定範囲に入ってくる個別動産についての所有権留保の対抗力が備えられるという制度があっていいのではないかと思いました。その上で、集合動産譲渡担保と、今申し上げたような集合動産所有権留保のようなものとの優劣については、基本的には既になされた優劣の基準に基づいて判断すればいいのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。対抗要件の話としては、これはこれでいいとして、その前提となるところの集合所有権留保というものについて、もう少し実体的な効力というのをどこかに明確に書くということが必要ではないかということだろうと思いますが、それはそのとおりかなと思います。 ○沖野委員 今の井上先生の御指摘と同じ内容なのですけれども、よろしいでしょうか。   ありがとうございます。御質問の御指摘のあった13ページは、肯定というか、これでよろしいのではないかと思っております。ただ、引渡しとみなすという点については、そもそも留保所有権の対抗要件、5ページの3のところで、狭義のというか、そのための所有権留保は引渡しがなくても対抗することができるということなので、引渡しとみなされることの意義が一番利いてくるのは、拡大されたというか、狭義の代金等に限らない留保所有権のところであり、それについては、例えば、優劣については9ページの4のところですけれども、譲渡担保とみなして規律を適用するとなっておりますので、譲渡担保と同じ扱いになるということだと理解しております。そして、一種の集合的な、集合所有権留保というか、そういうものもやはり認められてしかるべきではないかと考えており、譲渡担保並びということで、そうしたときに、3ページの総論的なところかと思いますが、2のところで少し保留になっておりました、どの規律を留保所有権について準用してくるのかという中に、集合動産譲渡担保に関する規律というのはそれほどのニーズは想定されないと書かれているのですけれども、登記のところでは、継続的な売買があったときにまとめて登記を1回でするというようなことは、むしろ集合動産譲渡担保に類するようなところであり、優先関係なんかも同じように利いてくるところがありますので、3ページの第1の2についても、議論がされ既に指摘もされていましたが、集合動産譲渡担保に関する規律は少なくとも除外しないというか、ということがほかのところからも利いてくるのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。沖野さんがおっしゃるとおりなのですが、なかなかこれを全部読み込んでいくのは難しいですから、どこかで整理をした方がいいのかもしれません。 ○加藤幹事 先ほど来、登記が無効になるという問題への言及がなされていますが、登記が無効になるということの意味を確認させてください。譲渡担保権者が第三者対抗要件を備えることができないという意味でしょうか。 ○笹井幹事 私の理解としては、形式的には登記がされているのだけれども、それは対抗要件としての意味を持っていないので、譲渡担保権が対抗要件を具備したことにはならない、と理解をしておりました。 ○加藤幹事 それでは、譲渡担保権の設定契約自体は有効だという前提なのでしょうか。 ○笹井幹事 すみません、そこを漏らしましたが、私の理解では、繰り返しになりますけれども、特定の問題というのは、実体的な契約の有効性の問題と対抗要件の問題という二つのレベルであるわけですけれども、【案5.3.2】は、譲渡登記には自由に書けるようにしているので、実体法上の有効性と登記の有効性の違いが比較的小さくなってくるということだと思います。【案5.3.2】においても登記が無効になるというのは、結局、実体的な譲渡担保契約上の特定が不十分なものであるので、契約自体が無効になっているということなのかと思います。 ○加藤幹事 先ほどより先生方から、登記ができなくても占有改定により対抗要件充足できる場合もある、とのご指摘があったかと思います。【案5.3.2】をとると、そういった解釈は成り立たないというのが今の御説明なのでしょうか。 ○笹井幹事 恐らく、それは【案5.3.1】を採るのか【案5.3.2】を採るのかによっても違ってくると思うのですけれども、【案5.3.1】の場合は、これをどこまで緩和するかという程度の問題はあるかもしれませんが、所在場所という要件が必要になるので、例えば、本店だったら本店がどれだけ移動しても大丈夫だという解釈を採ることはできるかもしれませんけれども、少なくとも今の特例法上はそういった本店という形で特定することはできなくて、地番なりで特定することが必要だと理解されているのだと思います。そうすると、「本店に所在するこういう種類の動産全部」というような形で特定をした場合には、それは占有改定ではできるけれども、登記としてはそれは認められないということになってくるかと思います。   ただ、先ほど少し申し上げたのは、【案5.3.2】は比較的その辺の違いというものを小さくしていくというか、登記上必要な特定の方法をかなり自由に認めていこうという方向性ですので、例えば所在場所みたいな要件がなくなってくる結果、【案5.3.2】において登記としての意味を持っていないというのは結局、設定契約上の特定も十分にされていない、そういったものが無効になるということではないかと思います。 ○加藤幹事 ありがとうございました。私の質問の仕方が適切でなかったかもしれないのですけれども、部会資料28の第4の1の特定範囲に関する御提案と、今の登記の問題という関係が若干分かりにくかったということなのですが、両者の関係をどのように考えればいいのでしょうか。これまでの審議では、全く別の問題であるかのように扱われているような気もしつつ、ただ今の御説明は、そうではないという御回答であったような気もするのですが。 ○笹井幹事 少し御質問の趣旨を十分に理解できないですが。 ○加藤幹事 実体法上、譲渡担保権の設定が有効か否かにについては、部会資料28の第4の1で特定しなければならない範囲について御議論がされたと思います。しかし、担保権設定契約における特定が必要となる範囲としてどういったものが認められるかということについても、結局登記できるかどうかということによって決まってくるという理解でいいのでしょうか。つまり、対抗要件を充足できるようなものしか事実上、譲渡担保権は有効に成立しないと考えればいいのでしょうか。 ○笹井幹事 いえ、そこは実体法の効力は実体法の効力として決まってくるということだと思います。 ○加藤幹事 なるほど、実体法上の担保権は成立しているけれども登記で対抗要件を具備できないものがあり得ると、そういう理解でよろしいでしょうか。 ○笹井幹事 はい、そうです。【案5.3.1】の場合は、その差がより大きくなってくるのではないかと思います。所在場所という要件が必要なので、実体的には特定されているけれども登記ができないという場合が生じてくる。【案5.3.2】だと、所在場所のような必須の要件をなくしていくので、実体的に有効なものであれば登記ができるようになっていく、その結果として、その差が小さくなっていくということではないかと理解をしています。 ○加藤幹事 ありがとうございます。感想にすぎないのですが、一から制度設計をする際に、対抗要件を具備できない担保権を作ることに若干の違和感がありました。 ○道垣内部会長 占有改定による対抗要件は具備できるのではないですか、登記ができなくても。 ○加藤幹事 それも先ほど、多少争いがあるとかということだったかと。 ○道垣内部会長 特定されなければ、それは占有改定の合意自体が効力を生じませんので、そのときには、けれども、譲渡担保設定契約自体の特定性がないということになるのではないかと思うのです。登記についてはハードルを少し上げるというのはあり得る選択だろうと思うのですけれども。 ○加藤幹事 つまり、占有改定できるような意味での特定性というのが譲渡担保権一般に共通する効力要件として存在し、今はそのプラスアルファとしての登記できるかというところを、どれぐらい緩くするかということでよろしいのでしょうか。 ○道垣内部会長 私はそう理解しているのですが。 ○加藤幹事 ありがとうございます。ただ、登記優先ルールが存在する場合には、すでに藤澤先生が御指摘された点と関係しますが、登記により対抗要件を充足できる範囲が事実上、譲渡担保権の設定契約において特定が必要となる範囲を画する機能を持つように思われ、それが良いのか若干気になりました。 ○道垣内部会長 ほかに何かございますか。 ○尾ア幹事 すみません、ちゃぶ台返しをするつもりはないのですけれども、前回も申し上げた担保目録について申し上げます。今回、動産でしたら占有改定でも対抗要件具備できるわけですので、例えば譲渡の場合であれば、それで優先権は確保できるということになるでしょうし、債権の場合は、通知、承諾によって優先権が確保できるので、いずれにしても登記を見て完全に全ての権利関係が分かるというわけではなく、きちんと確かめないといけないという状況にあります。また、今回、動産とか債権なので、元々それほど複雑に担保が取られるということがどこまであるのかということがそもそも疑問な中で、これだけの複雑な登記システムを具備する意義がどこまであるのかという疑問は持っております。権利関係が明確になるのはよいことではありますけれども、それに伴うコストを考えますと、本当にこれがその取引が円滑に行われるために資することになるのでしょうか。前回も少しこのことを申し上げたのですけれども、その後、パブリック・コメント等も経て、皆さん方の考え方が、そういうものなのだということであれば、もちろんそうなのかなと思いますけれども、本当にそうなのかなということは少し疑問に思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。根本的な問題ではあるのですけれども。   ほかに御意見はございますか。 ○青木(則)幹事 今までの話と違う点について申し上げます。登記上の目的物の記載との関係で担保権の効力がどこまで及ぶかを読み取るという作用には、一つには目的物の特定の要素があるかと思いますが、もう一つは取り方といいますか、要するに集合物としての効力が及ぶのかどうかということを読み取るといった要素も本来はあっていいのかなと思っております。現行の制度では、この点は、動産区分という形で集合動産とか個別動産という区分が登記されているようでありまして、それと目的物の種類の欄が別項目になっているようです。これは場合によっては目的物の記載に一本化するみたいなことはあり得ないのでしょうか。というのは、集合動産であればこういうルールが適用されるということを明確化して、それをもう揺るがさないのだということにするのであれば、現状でいいのかもしれませんけれども、もう少し柔軟な運用を認めていくということであれば、目的物の記載の中に書き込んでいくというようなこともあるのかなと思っております。 ○道垣内部会長 何かありますか。登記簿といいますか、そういうものの設計に関わってくるのですが、根本的な考え方と密接に関係していることは確かだろうと思います。考え方そのものとしては多分、青木さんのおっしゃるような考え方で現行もできているのでしょうけれども、登記簿上の整理の仕方が少し固いのかもしれませんね。その点については少し、商事課とか司法書士連合会とか、いろいろな方々のお知恵を拝借しながら、少し事務局で検討していただければと思います。   ほかによろしいでしょうか。   かなりまだ問題点が残っているということが分かりましたけれども、ここで登記制度の話を一旦終えまして、実行の話に第6から入ることになります。ただ、実行の話に入るに当たりまして、村上さんの方から、ここの第6に関連してではないのですが、集合動産譲渡担保権の実行について御発言があると、かつ、村上さんは御都合でどうしても早めに御退席にならなければなりませんので、今御発言いただけますでしょうか。 ○村上委員 ありがとうございます。まだ部会資料30の議論中にもかかわらず、順序を入れ替えていただきまして、ありがとうございます。   部会資料31の第1の集合動産譲渡担保権の実行に関しまして、1点意見を申し上げます。第1の2ですけれども、ただし書におきまして、実行通知後に加入したものについて分別管理されていない動産には担保権の効力が及ぶとされているところです。こちらについて中間試案の補足説明では、ただし書の部分の例外については、適切な分別管理をするインセンティブを設定者に付与することを企図しているという御説明がされております。そうした観点はあるとは思っているところですけれども、ただ、設定者が適切な分別管理を怠ったことで一般債権者にまで影響が及ぶことになるのは、公平性の観点から、どうなのかという課題意識を持っております。今後、分別管理の在り方について検討する際には、そうした点も是非御検討いただければと思っております。 ○道垣内部会長 村上さんの御発言につきましては、音声の途切れがあったようです。部会資料31の第1のところで、私ないしは事務局から復唱させていただくようにいたしますので、その点は御心配いただかないようにしてください。その上で、どうも通信の具合が悪いので、15分間休憩、3時から開始ということにしたいと思います。           (休     憩) ○道垣内部会長 再開したいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。   「第6 動産譲渡担保権の実行方法に関する規律」というものから審議を再開するわけですが、先ほど申しましたように「1 動産譲渡担保権の各種の実行方法」から「5 受戻権」までについて最初に議論をしたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。   よろしくお願いします。 ○工藤関係官 それでは、「第6 動産譲渡担保権の実行方法に関する規律」について御説明いたします。   「1 動産譲渡担保権の各種の実行方法」については、中間試案第8−1の内容から変更はありません。   「2 動産譲渡担保権の私的実行における担保権者の処分権限及び実行通知の要否」については、中間試案第8−2では、実行通知の到達から1週間の経過後に目的物の処分権限を取得するものとする【案8.2.1】、実行通知の到達の時に目的物の処分権限を取得するものとする【案8.2.1】の(注)、担保権者は被担保債権の不履行によって直ちに目的物の処分権限を取得するものとする【案8.2.2】の三つの考え方を提示していました。   このうち【案8.2.1】については、1週間という画一的な猶予期間を設けることは相当とはいえないことなどが問題として指摘されており、また、【案8.2.1】の(注)についても、実行通知の到達後に直ちに私的実行をすることも可能であることなどに照らすと、担保権者に対して実行通知の送付を法律上義務付ける必要性が高いとまでは言い難いことが問題となると考えられます。そこで、今回の御提案では現行法上の扱いを踏襲することとして、【案8.2.2】に沿った内容をお示ししています。   「3 帰属清算方式による動産譲渡担保権の実行手続等」については、本文(4)を始めとして、中間試案第8−3から本文の表現ぶりに修正を加えていますが、実質的な内容にはほぼ修正を加えておりません。   修正を加えた点としまして、中間試案の【案8.3.1】では、担保権者が評価した目的物の価額と被担保債権額の差額としての暫定清算金の支払いと目的物の引渡しとが引換給付関係に立つとする考え方を御提案していましたが、暫定清算金の額よりも最終清算金の額の方が小さい場合において、なお暫定清算金の支払いと目的物の引渡しとを引換給付関係に立たせることは相当でないと考えられたことから、最終清算金の額よりも暫定清算金の額の方が小さい場合に限り、暫定清算金の支払と目的物の引渡しとが引換給付関係に立つものとする考え方を本文(3)の隅付き括弧でお示ししています。なお、本文(3)の隅付き括弧内を採用しない場合には、常に最終清算金の支払と目的物の引渡しが引換給付関係に立つことになり、中間試案の【案8.3.2】と同様の考え方になります。   また、本文(1)及び(2)の隅付き括弧では、担保権者による確定的な目的物の所有権の取得等の効果が生ずる時点を、帰属清算の通知及び暫定清算金の提供等がされた時から一定期間が経過した時とする中間試案第8−3の(注1)の考え方をお示ししています。この考え方の採否については、5の受戻権の採否や第7の2以下の各種の手続の採否と併せて検討する必要があると考えられます。   そのほかに、(説明)の4では、共同担保関係が存在する場合の実行方法について、被担保債権の割付けを要求するか否かについて問題提起をしているほか、(説明)の5では、暫定清算金の「提供」の意義について問題提起をしておりますので、こちらについても御議論いただければと思います。   「4 処分清算方式による動産譲渡担保権の実行手続等」についても、中間試案第8−4から本文の表現ぶりに修正を加えていますが、実質的な内容には大きな修正は加えておりません。   修正点としまして、3と同様に、最終清算金の額よりも暫定清算金の額の方が小さい場合に限り、暫定清算金の支払と目的物の引渡しとが引換給付関係に立つものとする考え方を本文(4)の隅付き括弧でお示ししています。また、中間試案第8−4では、担保権者が目的物を第三者に処分したときに私的実行の効果が生ずるものとしていましたが、今回の提案では、処分を譲渡に限定しています。さらに、本文(4)の隅付き括弧の採否にかかわらず、本文(2)で、第三者に譲渡したことや目的動産の見積価額の通知を義務付けることとしています。   中間試案第8−4の(注1)においては、被担保債権の消滅時期や受戻権の消滅時期を、第三者への処分から一定期間が経過するか、引渡しがされた時とする考え方を示していましたが、この考え方については、処分清算方式の実行については特に取引の安全の保護などが問題となり得ることから、ここでは御提案しておりません。   「5 受戻権」については、中間試案第8−3の(注2)でお示ししたように、担保権者による確定的な目的物の所有権の取得や被担保債権の消滅といった効果が発生した後においても、なお目的物の受戻しを可能とする制度を設けるか否かを問題提起しています。隅付き括弧では、仮にこの受戻権を採用した場合に、処分清算方式の実行についても同様の受戻権を認める考え方や、一定の期間が経過したときは目的物を受け戻すことができないものとする考え方を記載しています。本文の受戻権を採用するか否かについては、第7の2以下の各種の手続の採否と併せて検討する必要があると考えられます。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。よろしくお願いいたします。 ○阪口幹事 阪口です。一つ質問と、一つ意見を述べたいと思います。   質問の方は、今回、処分というのを譲渡と表現を変えるというところに関してです。表現については、幾つか、まだ処分と譲渡が交じっている箇所があるのはどこかで整理するとして、ここでいう譲渡が物権的な意味の譲渡なのか、それとも処分行為、売却という方が分かりやすいかもしれませんが、それで足りるのかを質問したい。というのは、ここで譲渡という概念が基準になって法律関係が変わるので、第三者への処分清算でいうところの譲渡というのは、売却契約を結べばそれでもう譲渡したことになるのか、それとも所有権が移転して初めて譲渡というのかということを確認したいということです。   もう一つの意見の方は、この5の受戻権のところです。今回このような形で御提案いただいて、ありがとうございます。ただ、最後の部分で、受戻権を行使できる期間中の権利が別除権か、それとも取戻権かは解釈の問題だと書かれています。最後は解釈の問題かもしれませんが、ここで取戻権ということになってしまうと、何のためにこの受戻権の制度を入れるのか分からなくなってしまう。制度趣旨からすると、別除権でないと話が進まないことになると思っています。仮にここで、形式的に所有権が移転しているから、受戻権が残っているとしても取戻権になる、形式的に所有権概念で決めるのだということであれば、2に戻って、一定期間経過後しか所有権移転しないという規律を導入すべきという議論をもう一遍しなければいけなくなってしまいますので、ここはそうではないということで議論させていただきたい。   まず、実際に債務者の手元に物が残っている以上、実行手続中と皆が思うわけですから別除権とするのが自然で、それが、法律論は置いておいて、生の事実としての根拠です。また、仮登記担保法においても、受戻権がある期間中は別除権だというのが、文献上はそのように言われており、局面や理論構成が違うけれども、実態としては同じことだと思います。ですので、ここは5の受戻権を導入いただくと同時に、5の制度趣旨は別除権とすることだということを、強調させていただきたいと思っています。   なお、先ほどの譲渡の関係で、5のゴシック体の最後のただし書のところが、「帰属清算の通知及び清算金の提供等又は4による動産譲渡担保権の目的である動産の第三者への譲渡の時から」と書いてあって、表現上は譲渡時が起算点になっていますけれども、譲渡の通知がされないまま1か月たってしまってはまずいので、譲渡の通知のときからの方が望ましいのではないかと思っています。   以上、質問と意見です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。受戻権のところにつきましては、また後でお話をしていただくことといたしまして、まず、大澤さんからも手が挙がっていますので、大澤さんからのお話をお願いいたします。 ○大澤委員 ありがとうございます。今、阪口先生がお話しされたこととほぼ同じ内容の問題になろうかと思います。多少繰り返しになりますが、御容赦を頂ければと思います。   やはり5の受戻権の扱いのところの一番最後、21ページのなお書きのところ、これが解釈に委ねられるとなってしまいますと、先ほど、受戻権を定めた意義というものが失われるのではないかという御指摘がございましたが、私も同じように思っておりまして、やはり譲渡と、特に処分清算におきまして、先ほど御説明もありましたが、帰属清算と異なって、こちらでは猶予期間を置きませんでしたと、理由は恐らく取引の安全ということだとは思いますけれども、取引の安全とひとくくりにいうとすると、第三者が確かに登場はしますが、実行においての第三者ということですので、債務者に占有がある場合、あるいは、少なくとも実行手続の中での第三者ということなので、当然いわゆる通常の取引の第三者とは少し異なる、担保実行がなされているよねというのを認識しながら取引に入ってくる第三者ということになりますので、こちらでも猶予期間ということを考えても、それほど取引の安全という観点での問題点とのバランスを考えても、なお猶予期間を入れてもいいのではないかと。   もし受戻しのところについて取戻しかどうかというのがはっきりしない、解釈で委ねられますということになるとすると、そのような受戻しという形であるとするならば、その中止命令等、今後の事業再生の最後のチャンスとなる部分の余地が非常に失われてしまうというリスクがあろうかと思いますので、だとするならば元に戻って、18ページの4のところになりますが、こちらで猶予期間というものをもう一遍考えてもいいのではないかと考える次第です。   その猶予期間を考えるに当たっての第三者の要保護性というところにつきましては、そういった担保の実行というところを見ながら入ってくる第三者ということで、2週間程度、先ほど墨付き括弧で何週間とか、何日からとか、帰属清算のところでございましたけれども、同じような形で期限を区切って所有権の移転ということを、通知の後何週間後での所有権の移転というような形をとってもなお、そういうものだということが法律上、デフォルトルールで定められるのであれば、第三者としても特に問題はないのではないかとも思います。   一方で、帰属清算と処分清算で明らかにこのような形で変えてしまうということだとすると、では帰属清算はやめて処分清算にしましょうかと、処分清算というときには、実務的には割合と関係会社であるとか普段の取引先、あるいは親密先のようなところにぽんと短期間で売ると、あえていろいろなところを探して処分清算をするというよりは、短期間でぽんと売っていくというのが処分清算でのよく見られる形だとも思っておりますので、なおのこと、では帰属清算から処分清算に変えていきましょうと、特に動産に関しては、帰属清算で自分で貸金業者の方が売るというのはなかなか難しいというのはありますので、処分清算が多いだろうと考えてもおりますので、なおのことそういった形になろうかと思います。それで、加えて受戻権の5番のお話で別除権かどうかは解釈ですねと言われてしまいますと、そこはなかなかバランスをとれていないのではないかと感じた次第です。   以上です。ありがとうございました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。私は阪口さんのお話を伺ったときに、受戻権の話とそれ以外の話と申しましたけれども、結局お二人の発言がともに、所有権の移転の時期というものを遅らせるという形で債務者、設定者の権利を確保するのか、それとも、所有権の移転時期というものがあって、その後に一定期間の受戻権を認めるという形にするのかという構造上の問題に関わっておりますので、なかなか二つに分けられないということが分かりました。大変司会として不手際で、申し訳ございませんでした。   もっとも、阪口さんのお話の最初のところだけを最初に確認をしたいのですが、譲渡というだけでは、譲渡契約の締結なのか所有権の移転なのかはっきりしないのではないかということから、どういうおつもりですかということについて、事務局から何かございますでしょうか。 ○工藤関係官 今御指摘があった点は、事務局としてはまだ少し悩んでいるところではございまして、恐らく問題意識としましては、物権変動時と契約締結時のどちらに処分清算の効果が発生するのかというところで、所有権留保特約があったりする場合に違いが生じてくるということになるかと思います。   その場合に、処分清算というのは第三者が目的物の所有権を確定的に取得することによっていろいろな効果が発生するものと考えるとすると、物権変動時に効果が発生するという考え方自体は理屈の上ではあり得るとは思うのですけれども、ただ、それで本当に実質的に妥当なのかという問題はあり得るかなとは思っておりまして、例えば、所有権留保特約が付いていて譲渡後に所有権が留保されている間に目的物の価値が低下してしまったというようなときに、価値の低下後の額でしか被担保債権の消滅が生じない、また清算金が発生しないということになってしまうかと思いますけれども、そういった事態が妥当かという問題というのはあるかと思います。   そういう意味では、逆に、常に契約締結時に処分清算の効果は発生することとして、そういった所有権留保特約によって処分清算の効果の発生時期をずらすことができないという仕組み自体もあり得るのではないかとも思っておりまして、ここはまだ結論は出ていないところです。こちらも考えさせていただければと思います。 ○阪口幹事 阪口です。仮に5の制度が導入され、かつ墨付き括弧の中に入っていますけれども、処分清算のときも受戻権があるということになったときの処分清算には、占有が債務者の手元にある場合での処分と、担保権者に占有が動いた後の処分とがあって、後者は受戻権がないので、特に問題は生じません。他方、債務者の手元に占有がある状態での処分において、当事者の行動は、普通は買主は、物が本当に確保できるのですかという不安を抱き、確保したときに代金を払うとなり、代金を払ったときに所有権が買主に移転することになる。つまり、債務者の手元に物がある状態での処分清算というのは、一種の停止条件付きというか、将来きちんと物が確保できたらお金を払いましょう、そのときに物権変動させましょうという合意が必然的に付いてくるわけですよね。だから、所有権移転時期と売買契約時期がずれてきて、受戻権の存否が影響されてしまうものですから、どちらかはっきりしたいということです。物権変動の問題だから物権変動時ではないのかなとも思ったのだけれども、部会資料の書き方だけだったらどちらとも読めたので、質問させていただきました。私としては、物権変動の方が筋なのではないかと思っています。価値下落の問題については、また検討したいと思います。 ○日比野委員 今の点、4の譲渡のところに関してなのですけれども、観点は違うのですが、私も阪口先生と同じように、物権変動の時点ということなのかなと思っておりました。この御提案の内容ですと、譲渡したときに被担保債権が消滅するという効果を伴いますので、契約したタイミングで被担保債権が消滅するというふうにされると、要するに、対価が払われていないのだけれども被担保債務だけが先に消滅するということになってしまうのかなと。それは、契約から物権変動までが、通常はその期間が空くという取引実務を前提にしてということになると思うのですけれども、対価が払われたときに物権変動が生じるというのが、実務上は通常だと思いますので、そうであれば対価が支払われて物権変動が生じたところで被担保債務が消滅するという形にしていただく方が、担保権者の立場とすると安心感があると考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにいかがでしょうか。 ○大西委員 よろしくお願いします。15ページの3(4)のところでの趣旨の確認が第1点なのですが、ここで見積価額が著しく不合理であると認められる場合には効力が生じないとあります。ここで書かれている趣旨は、ここに書かれている例以外も含む広い概念と捉えてよいのか、という質問です。すなわち、見積価額が通常著しく不合理になる場合は、例えば、設定者が特に高く評価して買ってくれる先を知っている場合に生じると思うのですが、そういう要素まで含むのかにつき、必ずしもこの記載からは読めなかったことからお尋ねしています。ここの見積価額の合理性については、あらゆる事情を考慮するものであり、ここに書かれている考慮要素に特段限定する趣旨ではないかを確認させてください。もう1点は、帰属清算はこういう(4)という規定があるのですが、処分清算の場合には、このような規定がありません。本来でいえば、同じように著しく不合理な見積り、すなわち処分があった場合に、これは同じような規定を入れてもおかしくないともいえるのですが、そこは、結果的に、目的となる動産の評価額、または清算金の計算において評価されるので、それで問題ないという趣旨でしょうか。この辺の理解を確認させていただきたいと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。前半のことについて少し御質問内容を確認したいのですけれども、設定者がよく分かっているので設定者に聞くという話ですけれども、どう働くのですか、設定者が言ったとおりにするのは無理がないといって合理性が認められるという方向に働くという御趣旨なのか、少し補足をお願いします。 ○大西委員 すみません。見積価額が合理的かどうかというのは、いろいろな要素と比較するのですが、実際は高く評価される買手がいるということも、それとの比較もあるかと思うのですが、そういうところがあった場合に、そこも含めて考慮すべきなのかという、見積りの合理性についてどんな要素で考えるべきかという質問です。 ○道垣内部会長 つまり、設定者として、うちが売ればもっと高く売れるぞというのは合理性を否定する理由になるかということですか。 ○大西委員 そういうことです。 ○道垣内部会長 もしよろしければ、事務局の方から。 ○工藤関係官 1点目御質問いただいた、帰属清算の本文の(4)の著しく不合理であると認められる場合について、これが考慮要素を限定するものかどうかという点ですけれども、これは特に限定はしない趣旨で書いておりまして、「その他の動産の評価に係る事情に照らして」と書いておりますけれども、「その他の」というのは一般に法律上は例示を指すときに使われる言い回しかと思っておりますので、ここでもその趣旨で用いており、ここにいろいろ書いてある要素は飽くまで例示で他の要素も考慮要素となるという趣旨で書いておりました。   また、今おっしゃられた、設定者がこんな高い買手がいるよということを担保権者に伝えたというような場合で、かつ担保権者側がそれを無視して安いところに売ってしまったというような場合には、恐らくそれもやはり考慮要素にはなるのだろうとは思っておりまして、そのときに、その経過というのは担保権者と設定者の交渉の状況というところに当てはめて考えるというのもあり得るのかなというふうに、今お伺いしていて思った次第です。   それから2点目の、処分清算のところで同じように見積価額が不合理なときには効力を生じないというような規定は設けられないかというところですけれども、ここは確か中間試案まででも議論があったと思いますけれども、やはり処分清算の場合には第三者が登場するということで、取引の安全を保護する必要があるということから、効力を生じないというような規定を設けることはここでは御提案はしておりません。ただ、処分清算の本文の(4)の隅付き括弧を採用する場合には、やはり暫定清算金の算定の合理性を確保する手段というのは、何かしら必要になってくるのかなとも思っておりますので、そこを採用するかどうかというところとの組合せでも考える必要があるのかなとは思っております。 ○大西委員 分かりました。ありがとうございます。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。先ほどの処分清算のところで、譲渡なのか処分なのか、それとの関係で、物権的な処分効が生じているのかどうかという話と関連するのかもしれませんが、そもそもこのシステムの中で、いわゆる確定的な所有権移転の帰属、所有権移転の効果がいつ生じるのかと問題がどこまで意識されなければいけないのか、よく分からないところがございます。恐らく現行の判例法のシステムにおいては、換価処分が完結するという時点が確定的な所有権の移転時期というか、確定的に所有権の帰すうが決まる時点で、その時点まで受戻しができるというシステムになっているのだと思います。   今回の立て付けというのは、まずは、帰属清算でいうと帰属清算の通知および暫定清算金の提供の時点で、これは3(2)のところになりますけれども、最終清算金の支払い義務が発生するということになっています。次に、処分清算の場合、4の(3)のところで最終清算金の発生、これは恐らく被担保債権の弁済の効力が生じて、最終的な清算金の支払義務が発生するという時点なのだと思いますが、その時点と確定的な所有権の帰属というものが連動していると考えられていいのでしょうか。さらに、それを前提とした上で、受戻権に関しては、その後、受戻権を行使するということになるというのは、所有権の帰属が一旦は確定した後のいわゆる形成権的な意味での受戻権になるのだという形で、いわゆる確定的な所有権の帰属、移転と連動しているという理解でよろしいでしょうか。その点を確認できればと思いました。よろしくお願いいたします。 ○工藤関係官 基本的に今回の部会資料30の第6の3から5までについては、今おっしゃられたような発想で制度を組み立てていたというところになります。 ○道垣内部会長 山本和彦委員からも手が挙がっているのですが、私の方から一言申しますと、受戻権という言葉の使い方が仮登記担保と譲渡担保の場合とで異なるというのは、私がかねて述べてきたところであって、仮登記担保の場合には所有権が仮登記担保権者に移るというのがあって、移った後、一定期間は受戻しができるということになっていて、所有権が担保権者に帰属した後に特別に受け戻す、それは被担保債権相当額を払って受け戻すのであって、被担保債権そのものを弁済して払うのではないと、そういう形になっていたわけです。それに対して、譲渡担保に関する判例において受戻しというのが使われてきたのは、結構広く使われてきていて、弁済期が到来する前に、あるいは弁済期に被担保債権に係る債務を払うというのも、受戻しという言葉で使われてきたわけです。それは、恐らく譲渡担保については所有権の移転というのが一応起こっていると考えるので、はなから受戻しであると考えるという考え方があろうと思います。   さて、今回、原案として出ているのは、工藤さんからも話がありましたように、仮登記担保と同じように、ある段階で確定的な所有権の移転が譲渡担保権者に対して起こる、そして、起こるのだけれども、なお一定期間は特別な取戻しの権利としての受戻権というのを認めるという構造になっているのですね。しかし、それに対しては、そういう構造をとることによって、受戻し期間内は担保権者の完全な所有物になっているだから、別除権ではなくて取戻権だよねと言われたのでは、それは困る。そう考えるとき、そもそも実行構造において、所有権の移転時期というものを遅らせて、被担保債権の弁済期が到来して一定期間経過してもなお確定的な所有権の移転が生じるまでは受け戻せるという形で仕組むべきだということが他方の見解としてあるわけですね。そして、どちらがいいでしょうかというのが、ここで提起されている問題かと思います。   片山さんの質問に対する事務局からの回答は、それはそのとおりなのですが、絶対にそうしますというふうなことではなくて、既に反対する意見も幾つか頂いているという状況かと思います。 ○山本委員 今の部会長の御説明で大変明確になったのだと思いますけれども、私自身もこの案は、要するに基本的には仮登記担保方式という案だと理解しておりまして、そのことについて、それがいいかどうかという定見を特に持ち合わせているわけではありません。ただ、やはりこの項目の最後に書かれてある、取戻権か別除権かというのが解釈に委ねられるという話になると、これはかなり混乱を、少なくとも立法直後、最高裁の判例が出るまでは、混乱を招くのではないかということを懸念します。やはりこういう規定を置くのであれば、立法者としては責任を持って、これが倒産時にどのように扱われるかということをやはり書くべきではないかというのが私の考えです。   仮登記担保の場合は、私が理解する限り、清算金が支払われるまでは差押え債権者に所有権は対抗できないという規律が存在し、それは当然、倒産手続開始にも対抗できないということですので、それが別除権として扱われるというのは、所有権取得が対抗できないとすれば、ある意味、自然なところはあるわけですが、この制度は恐らくそうはなっていないとすると、普通に考えれば取戻権なのだろうと思います。   ただ、そう考えても、中止命令とか禁止命令が作れないわけではないのかなと。普通の担保権実行中止命令を解釈として持ってくるというのは、すごくきついのだろうと思いますけれども、立法するのだったら作れないことはない、つまり、所有権は移転していても、比喩的にいえば不完全な所有権の移転というか、受戻権が留保された上での所有権の移転なので、ある種、別除権の延長線上にあって、受戻しは可能であると、その間、占有の移転を止めるような中止命令ないし禁止命令というのが、立法で作るならあり得なくはない、理論的に見てもそれほどおかしくないのではないかという印象を持っておりまして、そういうものを作ってこういう制度を入れるということは、あるいはあり得るのかな、もちろん、先ほど来出ていますように所有権移転時期を後ろに倒すというのは最もきれいなのだろうと思うのですけれども、それはこれまでも実務上はやはりいろいろ弊害があるという御指摘があったところのようにも思いますので、そこの一種、妥協案かもしれませんが、そういうことは考えられなくはないかなという印象を持っているということです。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。山本さんに1点伺いたいのですが、例えば中止命令とかそういう制度を作った場合には、作ることによって、実はこれは別除権なのだということがインプリケーションとして出てくるのか、それとも、取戻権でも出てくるのだから、中止命令の制度を作ったからといって別除権だという解釈に必然的になるわけではないという話なのか、それは後者ですか。 ○山本委員 書き方にもよると思うのですけれども、別除権であれば、つまり担保権だと構成されているのであれば、通常は何も規定を置かなくても中止命令の規定は適用になるはずなので、別途規定を置いているということは担保権とは考えられていないのだろうということを、そういうニュアンスを醸し出すところはあるのかと思いますし、さらに、私の理解ではラジカルな問題は、会社更生の手続開始決定後の取扱いとして、会社更生はもう更生担保権と取戻権を明確に分けていて、更生担保権は当然に手続開始後は実行できないという形になります。したがって、手続開始後もその実行、これの占有移転を止めるという制度を会社更生で作るのだとすれば、それは何となくもう、取戻権なのだけれども止めますよという性格がやや明確に出るという感じになるのかなとは思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに、いかがでしょうか。 ○片山委員 片山でございます。度々申し訳ございません。受戻権を処分清算で認めるべきかどうかという点についてですが、先ほど大澤委員の方からは、取引の安全ということはあるのかもしれないけれども、それはそれほど重視しなくてもいいという趣旨の御発言があったのかとは思うのですけれども、やはり処分清算で第三者、買受人に買ってもらうというときに、引渡しまでは受戻しの可能性があるというリスクを伴っているとなると、なかなか買手が見付からないのではないかと素人考えでは思ってしまうところです。そこでやはり、仮登記担保もそうですけれども、処分清算の場合については、設定者の方の再建ということはもちろんあるのかもしれませんが、それ以上に取引の安全を重視して、受戻しはもうできない、留置権での保護に留めるという方向の処理を考えるべきではないかと思ってはいたのですが、その点に関して、やはりそれほど取引の安全というのは重視しなくていいというのが実務の感覚ということでよろしいかどうかも、再度御確認を頂ければと存じます。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 大澤さん、何か御意見がありましたら、お願いします。 ○大澤委員 ありがとうございます。もうどうバランスをとるかという問題だとは思っているのですけれども、先ほど少し申し上げたとおり、こういった担保権の実行の中で出てくる、実行する対象物を買いますという第三者であるということにおいて、もうそれが担保権実行手続の中に手を突っ込みますというのが第三者としてもお分かりになっているわけだと思います。そうしますと、そこのリスクを踏まえてどんな形で買うかということを認識の上で取引関係に入ってくるという意味で、取引の安全を保護しないでいいと申し上げるつもりは余りないのですが、第三者としてもそういったリスクが分かった上で取引関係に入ってくる、そういった第三者であると考える以上、猶予期間を入れるとか、あるいは受戻しの余地があるというのは十分分かる、理解できる仕組みの中に入ってきているのだと思うので、そういった意味で、前提として仕組みを作っておれば、その仕組みを考えた上で第三者がどう入るかというふうに整理ができると思っておりまして、その観点で通常の第三者とはまた少し違うのではないかと考えた次第です。   お答えになっているかどうか分かりませんが、以上です。 ○阪口幹事 大澤先生の御意見に補足させていただきます。先ほどの話で、譲渡というのが物権変動の意味だということであれば、売買契約を結んだだけでは譲渡ではなく、かつ普通の場合は占有が移転した後の譲渡になるので、5のところで処分清算を含めたとしても問題が結局発生しない。次に、占有も受けずに先にお金を払って引き取ろうとする買主がいるとしたら、その買主は保護しなくていいのではないかという感覚です。それは多分、担保権者の関連会社か何か、そういうダミーのような人だと思いますので。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   さて、大きな対立点といいますか、どちらにするかという問題点として、所有権移転時期を後ろにずらすという話なのか、それとも所有権は移転するけれども受戻権がある程度認められるということにするのかということなのですが、もう一つそのときにあるのは、不動産の譲渡担保については清算金の確定時期というのを、例えば事実審の口頭弁論終結時とかというふうなものを持ってくることによって、判例では比較的はっきりしているわけですが、判例でそういうふうなことが争われるわけではないということを前提にして、普通はどういうふうに考えるのかというのが多分あって、動産については取り分けそういうのがあるのだろうと思うのです。所有権移転時期を後ろにずらすというお考えを採られるときに、被担保債権の消滅時期というものについてはどのようにお考えになるのでしょうか。お考えがあればお聞かせいただきたいという話です。   今回の事務局の提案として出てきているのは、被担保債権の消滅時期というのを前倒しにしておかないと、いつまでたっても幾ら減るのかが分からないと、それはあるところで決めて、その後はそれが終わった後の若干の保護とか、そういう問題として位置付けているわけですね。それに対して、所有権の移転時期自体を後ろにずらしますと被担保債権の消滅時期も後ろにずらすということになるのですか、それとも、それはまた別問題でしょうか。   余り的確な問題提起ではないかもしれませんが。 ○大澤委員 そうですね、所有権の移転時期がずれるということは、そこで少し、先ほどの代金支払いとごっちゃになっているところがあるかもしれませんけれども、所有権の移転時期がずれるということであれば、それと被担保債権の消滅時期が連動すると考えた方が良いようにも思います。ただ、そうするとその間の、先ほどのお話ですと、目的物の差額とかの話が、評価がずれた場合とかの話が出てくるのかもしれませんが、ずれるようには思っているのですが、そういった意味で所有権移転時期と連動するように思っているのですけれども、部会長のお考えだと、それだと不都合が起きるのではないかとお考えだということでしょうか。すみません、余り問題意識が。 ○道垣内部会長 すみません、別に不都合が起きますと言っているわけではないのですけれども、そもそも引き渡さない間に価値を確定して、それで消滅するというのも譲渡担保権者がきつい感じがしますので、どうすべきなのかというのはよく分からないのですが、一応この時点で所有権の移転が生じて、譲渡担保のプロパーの関係が終わりましたということになると、その時点の価額で消滅するという結論は比較的導きやすいと思うのですけれども、所有権の移転時期自体が後ろにずれると、消滅時期も後ろにずれるのだろうと思います。それでいいのですか、それとも、被担保債権の消滅に係る評価時期というのはもう少し前に持ってくるのですかという、単なる質問なのですけれども。 ○阪口幹事 阪口です。先ほど代金の話もありましたけれども、普通はその所有権移転時期と被担保債権の消滅時期が連動すると思うのです。それはそのときに現実にお金が入るので、被担保債権が消えるタイミングです。仮に、例えばここが2週間なら2週間、3の墨付き括弧の部分が2週間となれば、2週間の価額変動リスクをお互いが負うことになる。しかし、仮にそのような制度を導入するのであれば、ある意味、もう仕方がない話なのかなと思います。実行時期選択権が担保権者にあるとはいえ、言い方は悪いけれども、動産担保の価額というのは元々そういうものであって、2週間とかその程度の変動は仕方がないのかなという感じはします。 ○道垣内部会長 すみません。ほかに、御自由にお願いいたします。   どういうふうな仕組みにするのかという非常に大きな選択に関わっておりますので、是非とも御意見を頂ければと思いますけれども。 ○藤澤幹事 いつ被担保債権を消滅させるかということなのですけれども、この後の議論の保全処分とも関わってくる点だと思うのですが、もし保全処分みたいなものが若干不十分だという状態だとしますと、先に被担保債権が消滅して、その後も債務者が目的物を占有している状態が継続する場合に、債務者には目的物を適切に管理するインセンティブがなくなりますので、債権者にとって酷な状態が生じかねないかなというような感触は持っております。 ○道垣内部会長 なるほど。それは逆に、きちんとしていればたくさん減るよという仕組みにしておいた方がうまくいくのではないかという話ですね。   ほかに何かございませんでしょうか。なかなか抽象論では難しいところかもしれません。 では、今の御意見を踏まえまして、もう少し精緻化をしたいと思います。   ただ1点だけ少し、1点だけということはなくて、いろいろあり得るのですけれども、17ページの4のところの共同担保の実行についてというのがあります。仮登記担保法というのは、複数の目的物があって共同担保関係が発生するときに、その割付をするという話になっているわけだけれども、動産譲渡担保について多数の目的物について担保の設定を受けたような場合には、一体として実行するというだけで、割付をする必要はないのではないかということが書いてあるのですけれども、これはいかがですか。   私は本当はよく分からなかったのだけれども、つまり、例えば各100万円のものが10個あって、それが全部譲渡担保の目的物に取られているけれども、800万円が被担保債権であるといったときに、八つ以上実行していいのかなあ。つまり、八つ実行したらもうあとは過剰な実行になるので、認められないということになるのではないかという気がして、それと割付との関係はどうなっているのかというのがよく分からなかったのだけれども、それはどうなのですか。もしよろしければ。 ○工藤関係官 過剰な実行をしてはいけないのではないかという点については、確か仮登記担保の判例でそういったものがあったような記憶はありまして、すぐどういったものだったのか思い出せないですけれども、そういった議論自体はここでもあり得るかとは思います。 ○道垣内部会長 仮登記担保法の割付というときには、あるものに全額を付けるというか、例えば三つあるものに300万円ずつ付けるというふうなことが予定されているわけではないですよね。 ○工藤関係官 仮登記担保法の仕組みは基本的に債権者、担保権者が自由に割付けをできるという仕組みでして、立案担当者の解説では、幾らを割り付けてもいいというふうに説明がされていたかと思います。 ○道垣内部会長 なるほど、そうすると少しずつたくさんのものに割り付けても、いいということですか。 ○工藤関係官 原則としてはいいことになるけれども、本当にそれでよいのかについては、判例等で問題提起がされているということになるのかと思います。 ○道垣内部会長 なるほど、それはそういうふうな判例法理なら判例法理に委ねるというか。確かに難しいよね、一部で足りるときには一部しかできないと、ではどの一部なのかとかいう話になるから。 ○阪口幹事 17ページに書かれている割付の問題は、今の過剰の問題を考えてはいなかったのですけれども、実務的には、全く無理ですということではないかと思います。動産というのは数も正直、幾つあるか分からない、つまり、AとBをくっつけてABという商品で見るか、AとBばらばらで見るかということも含めて、数え方だっていろいろある。不動産の場合は筆や棟で明確に物が分かれているので、割付可能ということだと思うのですが、動産担保においては、過剰担保の問題とは別に、割付は、実務的な感覚でいうと、全く無理と思います。それが理論的に許容されるかどうかというのはコメントできませんけれども、実務的にはできませんということだけははっきりしていると思います。 ○道垣内部会長 ほかに、よろしゅうございますでしょうか。   それでは、根本的なところの仕組みにつきまして、まだなお意見が一致しているわけではございませんので、更に検討を続けていただくということになりますけれども、ひとまずここで終えまして、続きに入っていきたいと思います。   「第6 動産譲渡担保権の実行に関する規律」のうちの「6 他の担保権者に対する通知」というのと「7 清算金の支払に関する処分の禁止」というところに移っていきたいと思いますので、事務当局におかれましては部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「6 他の担保権者に対する通知」について御説明いたします。今回の御提案では、第8の項目は、後順位担保権者が私的実行をした場合の規律という観点から整理することとしたため、本文の通知は私的実行の際の規律として第6で取り上げています。   中間試案第10−3では、担保目録制度を導入しないことを前提として、担保権者が設定者に対する動産譲渡登記を備えた全ての者に対して通知するものとする【案10.3.1】、担保目録制度を導入することを前提として、担保権者が担保目録上において関連付けられた担保権を有する者に対して通知するものとする【案10.3.2】、設定者が当該目的物について担保権を有する他の担保権者に対して通知するものとする【案10.3.3】をお示ししていました。ここでは、担保目録制度を導入することや、設定者に通知を義務付ける考え方は実効性に乏しいとの御指摘があることを踏まえ、【案10.3.2】を採用することとしています。   また、本文(2)の通知については、動産譲渡登記ファイル上の住所又は事務所を通知先とする考え方と、動産譲渡登記ファイル上の住所、事務所その他法務省令で定める連絡先を通知先とする考え方を隅付き括弧で併記しています。後者の考え方につきましては、例えば電子メールアドレスを任意的な登記事項をすることによって、その記載があるときにはメールを送信すれば足りるものとすることが考えられますが、そのような規律を採用した場合の問題点やニーズも含め、御議論いただければと思います。   「7 清算金の支払に関する処分の禁止」では、仮登記担保法第6条と同様に、後順位担保権者の清算金請求権に対する物上代位の利益を保護することを目的として、将来債権である清算金債権の処分を禁止したり、その弁済を後順位担保権者に対して対抗することができないものとしたりする規律を採用するか否かについて、新たに問題提起をしています。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、御自由に御議論いただければと思います。 ○藤澤幹事 全く落ちのない話というか、だから何、みたいな感想なのですけれども、6番で、登記のある人に通知をするというルールがとられていることで登記のインセンティブが高まるだろうということが考えられるのですけれども、その中にはやはり留保所有権者も含まれることでよろしいでしょうか。恐らく、留保所有権者でも、登記をしていない留保所有権者には通知は行かなくて、登記をしている人には通知が行くということになるのかなと思いました。   ところが、今の時点では、所有権留保というのは売買契約の付款ですので、いちいち目的物を特定することは行われていなくて、特定方法とかもそれほど考えずに、売ったものの所有権を留保します、みたいな約定がされていると思うのですけれども、留保所有権でも登記しなければいけないとなると、目的物を特定したりしなければいけなくなって、所有権留保が大変になりそうだなと思いました。という感想で、すみません、それだけです。 ○道垣内部会長 藤澤さんのお話がその方向になるとは思わなかったのです。つまり、別に大変にならないよね。通知を受けなくていいのだったらば登記をしなければいいだけの話だから、別にこの制度によって何か負担が増えるわけではないので、大変ではないと思うのだけれども。   ほかに何かございますでしょうか。落ちのない話なのですけれども、7の「清算金の支払いに関する処分の禁止」というのは、日本語としてどうなのかという気がします。清算金の支払いが処分されるわけではないですよね、こういう日本語はあり得るのですか。 ○工藤関係官 仮登記担保法第6条の見出しに、こういった日本語が書かれているかと思います。 ○道垣内部会長 なるほど、処分の対象は債権であり、けれども弁済が対抗できないというのを一遍に書こうとするからこういう、訳が分からないと言ったらあれだけれども、日本語としてどうかというふうな言葉になってしまうのだろうと思うのだけれども。ごめんなさい。 ○阿部幹事 7のところなのですけれども、仮登記担保法の6条の1項と2項、ほぼそのままということで、多分問題はないのだろうと思うのですけれども、(1)の「処分することはできない」というのは、後順位担保権者の物上代位を保護するためということなので、処分をしたとしても物上代位をしようとする人には対抗することができないと、そういう趣旨だと理解してよろしいでしょうか、ということを伺いたいと思いました。仮登記担保法の6条1項も多分、同じ話なのだと思うのですけれども、そちらの趣旨が余り私はよく分かっていませんでしたので、念のため確認したいと思いました。 ○工藤関係官 ここについては確か仮登記担保法の方では、対抗することができないという意味ではなく、無効とするという趣旨だと解説されていたと記憶しておりまして、対抗することができないというふうにしてしまうと複雑な問題がいろいろ生じてしまうということで、すみません、複雑な問題がどういった問題だったか今、にわかには思い出せないのですけれども、そういったことで無効とするという考え方が採られていたかと思います。ですので、7で「することができない」と書いたのも、無効とするという趣旨で記載をしておりました。 ○阿部幹事 分かりました。ありがとうございます。その複雑な問題が何なのかがよく分からなかったのですけれども、差し当たり御趣旨は分かりました。 ○道垣内部会長 無効とするって、どうして。清算金に対する物上代位権を行使しなかったときに、それはどういう法律関係になるのですか。清算金支払ってしまったのでしょう。 ○工藤関係官 今のは支払いの方ではなく、(1)の譲渡その他の処分の方です。 ○道垣内部会長 なるほど、すみません。そうですか、それなら分かります。申し訳ない。   ほかにございませんでしょうか。   第6、7につきましては、よろしゅうございますか。また何かございましたら、遡っていただいても結構でございますので、よろしくお願いいたします。   それでは、先を急ぐようで恐縮でございますけれども、「第7 動産譲渡担保権の目的物の評価・譲渡又は引渡しのための担保権者の権限及び手続に関する規律」について、議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「第7 動産譲渡担保権の目的物の評価・譲渡又は引渡しのための担保権者の権限及び手続に関する規律」について御説明いたします。   「1 評価又は譲渡に必要な行為の受忍義務」については、中間試案第9−1から実質的な変更はありません。中間試案で(注)としていた、設定者に対して情報提供義務を課す考え方については、提供すべき情報の範囲を明確に定めることが困難であることや、担保権設定契約において定めれば足りると考えられることなどから、ここでは採用しておりません。   「2 動産譲渡担保権の実行のための保全処分」についても、幾つか細かな点での変更はありますが、大きな修正はありません。本文(2)から(13)まででは、民事執行法第187条や第55条を参考として、手続的な規律として考えられるものを挙げております。また、本文(14)では、この保全処分について緊急換価の手続を設けるか否かについて、本文(15)では、執行官保管の保全処分後に私的実行をした担保権者又は第三者がどのようにして執行官から目的物の引渡しを受けるかについて、本文(16)では、劣後担保権者による保全処分の申立てについて第8の1と同様の規律を採用するか否かについて、それぞれ問題提起をしております。   「3 動産譲渡担保権の実行のための引渡命令」についても、中間試案第9−3から実質的な変更はありませんが、清算金の見積額の供託については裁判上の担保供託と位置付けることとしているほか、本文(2)から(7)まででは、手続的な規律として考えられるものを挙げています。本文(5)では、設定者に対する審尋を不要とする例外を設ける考え方と、例外を設けない考え方を隅付き括弧で併記しており、本文(8)では、2と同様に、劣後担保権者による申立てについて、第8の1と同様の規律を採用するか否かを問題提起しています。   「4 動産譲渡担保権の実行後の引渡命令」についても、中間試案第9−4から実質的な変更はありません。もっとも、第6の3及び4では、最終清算金の額よりも暫定清算金の額の方が小さい場合に限り、暫定清算金の支払いと目的物の引渡しとが引換給付関係に立つものとする考え方をお示ししていましたが、ここでは、この手続において最終清算金の額が争点となるのは相当ではないことから、裁判所は、最終清算金の支払と目的物の引渡しが引換給付関係に立つときであっても、暫定清算金の支払との引換給付を命じなければならないものとしています。本文(2)から(5)まででは、手続的な規律を提案していますが、本文(3)では、3と同様に、設定者に対する審尋を不要とする例外を設ける考え方と例外を設けない考え方を隅付き括弧で併記しています。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を伺いたいと思いますが、問い掛けになっているところもございますけれども、そこに限らないで、広く御意見を頂ければと思います。もちろん問い掛けになっているところも御意見を特に賜りたいとは存じますけれども。 ○阪口幹事 阪口です。何度も申し訳ございません。2点ありまして、まず、緊急換価について問い掛けがあるのですけれども、実務的には必要だろうと思います。後の3の無審尋発令ができるかどうかという問題とも関係しますけれども、ただ、無審尋発令が認められても確定しないと効力が発生しないという問題があります。典型的には、冷凍食品を担保に取っているが、債務者が電気代も払えない状況で間もなく電気が切れるというような場合ですけれども、やはりそこはもう緊急換価をやらざるを得ないのではないか。緊急換価に関しては、もちろん運用としてそんなに簡単に認めるべきではないと思いますけれども、制度としては必要だろうと思っています。   もう1点は、ところどころ3か月以内に実行等をしたことを証する文書の提出という規定があるのですけれども、ほかのところは皆、1か月とか結構短いスパンで規律されているのに、ここだけ3か月は長すぎる。多分民事執行法の条文を持ってきているのですけれども、あちらは不動産なので、ここは1か月ぐらいなのではないかという感覚はあります。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。何かその辺りありますか。3か月問題も含めて。 ○笹井幹事 承りました。 ○道垣内部会長 検討していただくことにしたいと思いますが、ほかにございませんでしょうか。 ○山本委員 今回、保全処分について手続的な規定を明示していただいたので、細かいところばかりですが、4点ばかり気が付いたところを申し上げたいと思います。   まず、2(1)ウの保全処分及び公示保全処分ですけれども、これは恐らく55条のいわゆる当事者恒定のための保全処分といわれるものをここに入れているのかなと思います。私の理解が間違っているかもしれませんが、平成15年改正、民事執行法の改正のときに、当事者恒定のこの保全処分を入れたときは、引渡命令のところの当事者恒定効とパラレル、民事執行法でいえば83条の2とセットになっていたという印象を何となく持っていたのですけれども、仮にそうだとすると、どの程度の必要があるのかよく分かりませんが、この資料の4のところの引渡命令との関係でも、何かそういう当事者恒定効を定めるような規定というのがセットとしてあり得るのかなと思いました。ただ、これはひょっとすると単体でも成立し得るような保全処分なのかもしれませんので、私が趣旨を誤解しているだけかもしれません。   それから、2点目は2(4)のところで、これは阪口さんが言われたことと少し関係しますけれども、3か月が適当かどうかはともかくとして、実行までの期間、一定の期間を定めるということなのですが、この2(4)のところは、やや異質なものとして、3の引渡命令の申立てというのが入っています。これが入ると、中間に引渡命令を挟むと、実行まで6か月、この保全処分を持たせることができるということになりそうな気がしました。それが適当なのかどうかというのは私はよく分かりませんけれども、そこだけ何でそんなことになるのだろうというのがやや疑問で、別にこの引渡命令の申立てをここに入れなくても、実行まで3か月ということにすればいいような気もしたというのが2点目です。   それから、3点目が3(5)あるいは4(3)の墨付き括弧のところで、審尋の省略というところです。これは今の阪口さんの話に言及があったように、私はこの審尋を省略できる、急ぐために審尋を省略でき、早く効果を発生させるという趣旨だと思うのですが、それだと(6)、(7)と一体どういう関係に立つのだろう、つまり、即時抗告ができて、かつそれが確定するまで効力が生じないと。即時抗告をする前提として当然、被申立人にその保全処分は知らされるわけですから、そうだとすると、結局即時抗告を認めてしまうと何か月かは確定しないで効力を生じないということになるわけですけれども、それだとせっかく審尋を省略して急いだ意味がほとんどなくなるのではないかという印象を持ちまして、3でいえば(5)の墨付き括弧と(6)、(7)の規律というのがやや整合性がとれていないような印象を受けたということです。   それから、最後に2と3については、(3)のところで、担保権の存在を証する文書というのを申立てについて、付けることになっているのですが、4の引渡命令についてはそれがないのですね。これはややバランスを欠いているような印象を持ちました。確かに4は実行が既に終わっているので、もう担保権がなくなっているといえばなくなっているので、出しようがないではないかという趣旨なのかもしれませんけれども、2と3でそういう、きちんと担保権がありますよというのを申立ての前提にするのだったら、4の方も何か、担保権があってそれが実行されたということを証するような文書を最初に付けさせるというのが筋かなというような印象を持ったということです。   以上、細かい点ばかりですけれども、気が付いた点です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。幾つか御意見、御質問にわたるところがありましたが、事務局から、いかがでしょうか。 ○笹井幹事 特に大丈夫だと思います。御質問がありましたでしょうか。 ○道垣内部会長 例えば、3の(5)で無審尋にするのに、即時抗告してというふうなことは、ポリシー上の矛盾があるのではないかとか。 ○笹井幹事 御指摘いただいたところは、改めて検討させていただきたいと思います。 ○道垣内部会長 4について、担保権の存在を証する文書の提示というのは、担保権がもう実行されているからということであるということですか。 ○工藤関係官 担保権の存在を証する文書の提示という規律を入れるかどうかですけれども、逆に2と3についてそもそもそれが必要かどうかというところも含めて検討中です。民事執行法187条では、法定文書について担保権の存在を証する文書として提示しなければならないという規律になっていたかと思いますけれども、動産の場合には、そもそも実行のために法定文書は要求されていないようにも思っておりまして、少しここは検討したいと思っています。 ○山本委員 恐らく、民事執行、執行手続の本体の申立てとパラレルにして、その前に例外的に百八十何条でしたっけ、の保全処分を申し立てられるので、少なくとも法定文書は、担保権実行の申立てのときに必要な文書は出してくださいというのがその規律の趣旨だと思うのですけれども、それがこの場合に妥当するかどうかというのは、今御指摘のように、かなり怪しいところがあるような気がするとすれば、全部実質的に証明の問題にしてしまって、いわゆる格式文書みたいなものを最初に提示させるということはなくてもいいという整理も確かに可能だろうとは思います。 ○道垣内部会長 ただ、山本さんがおっしゃった、24ページの14から16の間の整合性の問題とかというのは、全体としてあるような気もする。つまり、引渡命令とか保全処分とかというふうなものを規定して、てきぱきとやろうよというふうな感じになっている割には、比較的皆、慎重な形の仕組みになっていて、全然てきぱきしないではないかという感じは全体としてはするかもしれない。その辺はもう少し考えていただく必要があるのかもしれないと思いますので。もちろん御意見、今の段階で頂ければ有り難いと思いますが。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。27ページの引渡命令についてですが、今の実務と比較しますと、かなり加重な手続になってしまうのではないかと懸念しております。処分清算のときには、大抵、売るのに占有が必要だということになるので、引渡命令をまず取ってからというのが原則となるというのが、恐らく新しいシステムだと思うのですけれども、今まで譲渡担保のメリットの一つは、私的実行だということで、私的実行は執行裁判所のお世話にならずに担保権の実行が可能であるというのがメリットの一つであったのですが、新しいシステムですと処分清算に関していうとかなり加重な手続に変わるということになってしまうと思うのです。もちろん、設定者の清算金の確保も必要だということで、理解できなくはないのですが、逆にそれを前提としますと、担保権者としては、今後は、担保権設定契約において、弁済期が到来したら直ちに引き渡しますとか、引揚げに応じますというような条項を挿入して、この引渡命令を取らなくても引渡しが受けられるような、そういう条項を設けるということ予想されるのですが、そうすると、それは一種の手続回避という側面をもった条項ということになるかと思います。このような条項は、直ちにやはり効力が認められないということになるのか、それともそうではなくして、それが特約があれば、引渡命令を取らずに占有を取得できる、すなわち実質上の引揚げみたいなものが可能になると考えていいのか、その辺りをどう考えるべきなのか改めて気になりましたので、御教示を頂ければと存じます。よろしくお願いいたします。 ○工藤関係官 今御指摘いただいた条項というのは、要するに、清算金が発生するとしても、それを払うよりも先に目的物を引き渡さなければならないという条項が有効かどうかという論点かと思います。その点について何か今具体的な考え方というのがあるわけではないのですけれども、いずれにしても現行法の下ですと、仮にその条項が有効であったとしても、引渡しのときには結局、訴訟等によらなければいけないということになってしまいますので、そういう意味では、こういった簡易な手続が設けられることによって迅速に進んでいくという面はあろうかと思います。   この手続があるとしても、例えば担保権者の方から、清算金は発生しないので、こういう手続もあることですし目的物を引き渡してくださいと求めて、設定者の側が任意に渡すということ自体は妨げられないのではないかと思っておりますので、3の実行のための引渡命令については、飽くまで設定者が協力しない場合にはこういう手続があるという位置付けになるかと思います。 ○道垣内部会長 よろしゅうございますでしょうか。 ○青木(哲)幹事 3の実行のための引渡命令と、4の実行後の引渡命令についてですけれども、設定者以外の占有者が目的物を占有している場合にも引渡命令の対象とされているということについて、意見を申し上げます。   これらの提案は、恐らく民事執行法188条が準用する83条の不動産競売における引渡命令を参考にしていると思うのですが、不動産競売の手続においては、登記に基づき登記名義人が所有者であるということを前提に手続が行われ、登記名義人以外の第三者が所有権を主張するというような場合には第三者異議の訴えが提起されるということが想定されていて、引渡命令の手続において買受人が所有権を取得したかどうかという、そのこと自体が争われるということは想定されていないのではないかと思います。   これに対して、ここで提案されている動産譲渡担保権の実行のための、あるいは実行後の引渡命令については、設定者以外の第三者が目的物を占有している場合に、設定者に所有権が帰属するということの外形は必ずしもなく、また、競売手続で第三者異議の訴えを第三者が提起するといった機会もなかったわけであります。そうすると、特に占有者が目的動産の所有権を主張するというような場面を想定すると、その第三者との関係で、簡易な決定手続で債務名義を取得できるようにするということが正当化されるのだろうかという点については疑問がございます。   また、先ほど山本和彦委員から少し言及があったのですけれども、第三者がこの目的物を占有する場合に、動産競売の手続を開始しようと思うと、民事執行法190条1項2号で目的物の占有者の承諾が必要となります。民事執行法190条2項で動産競売開始許可決定の制度を設けているのですが、恐らくこのただし書は、目的動産が債務者の占有する場所に所在する場合にのみ差押えをすることができるということが前提とされているのではないかと思います。簡易な決定手続による引渡命令を認めるということは、私は動産競売開始許可決定という簡易な手続で動産競売の手続を開始することができる場合であるということで正当化されるのではないかと考えておりまして、それができない場合、動産競売の手続を開始することができない場合にまで、この簡易な手続による引渡命令を認めるということについては、慎重に検討する必要があるのではないかと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。事務局として、今の観点はいかがですか。 ○工藤関係官 ここで相手方を占有者にも広げているのは、やはりここで占有者に対して申立てができないとすると、実効性が失われてしまうという点が理由でして、占有を第三者に移転するだけで引渡命令が打てなくなってしまうというのは少しどうかなと思ったところがあります。今おっしゃられた点は、確かに手続的には問題になるところだと思いましたので、その点も含めて更に検討したいと思います。 ○道垣内部会長 よろしくお願いいたします。   ほかに、いかがでしょうか。   それでは、これは実際の手続を迅速にするためにどうしたらいいのか、しかし、ほかのいろいろな制度とのバランスというのもありますので、むちゃはできないわけですので、考えなければいけないですけれども、もう少し技術的に上手く仕組めないかという話を更に検討していただくようにしたいと思います。また御意見がございましたら、是非とも事務局等にお寄せいただければと思います。   それでは、先を急ぐようで恐縮でございますけれども、「第8 劣後担保権者による私的実行に関する規律」について、御意見を伺いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「第8 劣後担保権者による私的実行に関する規律」について御説明いたします。   「1 劣後担保権者による私的実行の可否及び要件」では、中間試案第10−1及び2を併せて取り扱っています。第10の2では、優先担保権者の同意なくされた劣後担保権者による私的実行の効果について、その効力を生じないものとする【案10.2.1】と、劣後担保権者又は第三者は優先担保権の負担のある目的物の所有権を取得するものとする【案10.2.2】を併記していましたが、本文では、結論として【案10.2.1】を採用した上で、中間試案第10−1のとおり、全ての優先担保権者の同意を得た場合に限って私的実行の効力が生ずるものとしています。   また、優先担保権者の同意なくされた私的実行について追認を認める考え方を隅付き括弧でお示ししているほか、説明部分の3において、劣後担保権者が私的実行をするためには優先担保権の被担保債権の債務不履行を要しないものとすることや、その私的実行の換価金を弁済期未到来の優先担保権の被担保債権に対して充当できるものとすることについて、何らかの規定を置くことができるか否かを問題提起しています。   「2 1の私的実行による各担保権者の被担保債権の消滅」については、中間試案第10−4から実質的な修正はありません。パブリック・コメントでは、設定者の利益を保護することを目的として、本来の優先順位とは異なる充当をするには設定者の承諾を要求すべきとの御意見もありましたが、民事執行法第85条第1項ただし書においては設定者の承諾は要求されていないことや、設定者の承諾を要求するとすれば劣後担保権者による私的実行が活用されにくくなるとも考えられることから、本文では設定者の承諾は要求しないこととしています。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、御自由に御議論いただければと思います。   これは、第8の1で劣後担保権者が私的実行をしているつもりで、第三者にも売却しましたが、止まりませんでしたといったときには、ただ単なる第三者に対する無権限売却ということになるということなのでしょうか。劣後担保権者には何の権限もなくて、ただ単なる事実としての処分があるということだけで処理されるというのが、この効力を生じないということの前提になっているのですかね。 ○笹井幹事 そうですね。 ○道垣内部会長 そういうことですね。確認です。 ○阿部幹事 資料30ページの上の方で、「優先担保権の被担保債権の債務不履行の要否等について」というところで問い掛けがされているところなのですけれども、私もまず@の点については、優先担保権の被担保債権が債務不履行となっていることは必要ないということでよいのではないかと思いました。仮に特定の優先担保権者から授権を受けて実行しているのだとすると、授権している優先担保権者の被担保債権の弁済期が到来しないとおかしいという話になりそうですが、ここでは、利益を害されそうな全員の同意を得た上で、劣後担保権者が自ら担保権を実行しているということになっていると思いますので、実行している担保権者の被担保債権の弁済期が到来していれば、それで足りるという整理でよろしいのではないかと思いました。   それから、Aの問題で、弁済期未到来の優先担保権者の被担保債権にその換価金を充当できるかという点も、これも充当を認めてよいのではないかと思いました。ここでは、民事執行法88条のような規定を置くことを私的実行についてできるか、という問題が提起されていますけれども、この優先担保権者全員の同意を得てする劣後担保権者の私的実行では、同意をした全員の担保権者の担保権が消えるのだと思います。そうすると、消えるにもかかわらず、換価金の配当といいますか充当というのがないというのは、やはり難しいのではないかと思いました。中間試案の補足説明では、仮に配当しない場合にどうするかということで、実行した劣後担保権者から設定者に優先担保権の被担保債権額に相当する部分を返還するという考え方が示されていますけれども、そうすると、優先担保権の被担保債権額は結局、設定者の一般責任財産に混入してしまうわけで、優先担保権者はそこには優先弁済権がないということにならざるを得ないかと思います。そういう不利益が嫌だったら私的実行に同意しなければいい話だと書いてあるのですけれども、そうすると結局、私的実行に同意することはほとんど担保権を放棄するに等しい意味を持つということになりますので、それだと回らないのではないかと思いました。   ですので、結論としては、民事執行法88条と同じように、被担保債権の弁済期が到来している場合と同じように充当してよいと考えていいのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見はございませんでしょうか。   30ページの13行目のところに、民事執行法88条と同様の規定を置くことが考えられるが、なぜ配当手続とは異なる私的実行においてもそうなるのかということは、やはり民事執行法88条に類似した規定は置くというのが前提になっている文章ですね。分かりました、それで。しかし、それが正当化できるかが問題であるというだけの話で。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○藤澤幹事 劣後担保権者の地位について、1つ意見を申し上げます。劣後担保権者が私的実行をすることができないということですので、劣後担保権者は法的実行をせざるを得ないということになるかと思うのですけれども、裁判所の管理の下で実行手続を行うのであれば、少し話が戻りますが、保全処分は使えてもいいのではないかと考えました。先ほどの第7の2(16)のところで、保全処分については全員の同意がないとできないということになっていたと思うのですが、法的実行だけであれば、それを開始するときに保全処分が使えてもいいのではないか、みたいなことを少し思いました。 ○道垣内部会長 これは、今のシステムだと使えないということになっているのでしたっけ。それはどこで読むのだっけ。 ○笹井幹事 25ページの2(16)で、優先する動産譲渡担保権があるときは(1)の保全処分の申立てができないけれども、ただ、全員の同意を得たときはできるとなっております。 ○道垣内部会長 なるほど。ほかに、この点も含めまして、御意見はございませんでしょうか。   今の藤澤さんの御見解については、いかがですか。 ○笹井幹事 一度検討させていただきます。 ○道垣内部会長 よろしくお願いいたします。   ほかに何かございませんでしょうか。 ○阿部幹事 今の藤澤幹事の御発言ですけれども、確かに譲渡担保権の実行のための保全処分の要件として、価額減少行為とか何とか、そういうことを言い出すと、それは私的実行をやりやすくするというだけではなく、法的実行の場合もやはり使う意味があるということになるかもしれないと思いましたので、藤澤幹事のおっしゃることは一理あるかなと思いました。他方で、3の動産譲渡担保権の実行のための引渡命令は、これはやはり私的実行プロパーのものかなと思いましたので、3(8)で全員の同意が必要だとされているのは、それでよいだろうと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにございませんでしょうか。   それでは、以上出ました問題点を更に検討していただいて、また次のクールにお願いするということにしたいと思います。   さて、部会資料はもう一個、本日の部会資料というのがございまして、31でございます。「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(3)」というものなのですが、こちらの方に入りたいと思います。   それの、まず第1でございますが、「集合動産譲渡担保権の実行」についてというところの議論を行いたいと思います。事務局において資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「第1 集合動産譲渡担保権の実行」について御説明いたします。   本文1については、中間試案から実質的な変更はありません。   本文2については、中間試案から大きな変更はありませんが、本文1の通知をした者が有する集合動産譲渡担保権の特定範囲と他の集合動産譲渡担保権の特定範囲とが重なり合う場合には、当該他の集合動産譲渡担保権についても固定化が生ずることとし、また、当該他の集合動産譲渡担保権の固定化は、重なり合っている部分についてのみ生ずるものとしています。   本文3については、中間試案から実質的な変更はありません。   本文4については、中間試案から大きな変更はありませんが、撤回が認められる終期について、担保権者が特定範囲に属する動産の一部についてでも実行した場合には、その後の撤回は認めないこととしています。   本文5については、中間試案から変更はありません。   本文6については、中間試案第11−2において、実行後の再度実行をすることができないものとすることを提案しており、この点は、本文1の通知の到達後に特定範囲に属する動産に担保権の効力を及ぼす特約の有効性の問題と考えられることから、本文6では本文2に反する特約は無効とするものとしています。   本文7については、中間試案第11−3では、集合動産の一部についてのみ固定化を生じさせるためには、所在場所により特定された範囲を指定しなければならないか、それとも、種類、所在場所、量的範囲の指定その他の方法により特定された範囲を指定しなければならないかを隅付き括弧で両論併記としていましたが、ここでは後者の考え方を採用しています。   本文8については、部会資料30の第8の1において、劣後担保権者による私的実行は、全ての優先担保権者の同意を得た場合を除いて、その効力を生じないものとしていることを踏まえ、本文1の通知についても同様の規律とすることを御提案しており、ここでも優先担保権者による追認を認めるか否かについては隅付き括弧を付しています。   本文9については、裁判上の手続と固定化の関係を扱っており、裁判上の手続に係る決定の執行や差押えがあったときには、当該手続の申立てをした担保権者に限らず、優先担保権者及び劣後担保権者の担保権についても固定化が生ずるものとした上で、その執行や差押えが取り消されたときには固定化が覆滅するものとしていますが、その場合の固定化の範囲については、特定の範囲の全体とする考え方と一部とする考え方を隅付き括弧で併記しています。  そのほかに、(説明)の10では、時的要素によって集合動産の範囲を特定することができるか否かについて問題提起をしています。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。かなり広い、いろいろなことが規定してありますけれども、御自由に御議論いただければと思います。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。第1のところには、随分いろいろなことが書いてあるのですけれども、その1から3によると、集合動産譲渡担保の実行は、通知の一時点で言わば輪切りというかスクリーンショットで固定化して、再度の実行はできないということであり、6によると、それは強行規定であると理解しています。   他方、7によると、一部実行した後に残りの実行ができることになっていて、一部実行の対象の特定は場所的な特定に限らないということになっていますので、例えば、場所的な特定により、東京の倉庫と大阪の倉庫と福岡の倉庫の果物在庫に集合動産譲渡担保を設定して、そのうち東京の倉庫の果物在庫だけを実行することはできるし、その後、ほかの倉庫の果物在庫についての実行もできると、これは今までの議論でも余り異論がなかったところだと思うのですけれども、例えば、この三つの倉庫内にあるスイカとメロンの在庫を夏に実行して、その後、秋にブドウと梨を実行して、冬にミカンとリンゴを実行するといったように、その都度、その種類の在庫が極大化した時期を見計らって一部実行を重ねていくことが認められるという趣旨だとすると、特定された一部の実行後に残部の実行ができるという7のルールと、6で2の本文の規定に反する特約が無効であるという考え方とがうまく整合するのかなと感じた次第です。   その解決方法としては、今の設例とは異なって、A倉庫、B倉庫、C倉庫内のリンゴだけに集合動産譲渡担保を設定し、それとは別に、同じA倉庫、B倉庫、C倉庫内のメロンについても同じ担保権者が別の譲渡担保を設定し、という形で、種類ごとに多数の集合動産譲渡担保を設定した上で、時期を変えて、一つ一つ全部実行するということはもともとできそうにも思うので、それができるのならいいではないかという考え方に立ち、倒産していない限りは、同じ倉庫の中の複数回の流動性を捉まえるという担保の実行も認められてよいということであれば、この6の強行規定性にそれほどこだわる必要があるのかという方向の解決があり得るのかなと。つまり、集合動産譲渡担保について、輪切り1回だけというのは、倒産手続においては制約が必要であるという考え方はもちろんあり得ますが、それはまた別途議論するのだと思いますけれども、平場では強行法的には考えないという考えが一つあり得ると思いました。   他方、そうではなく、6の強行法規性というのは非常に重要なルールであるという立場に立つとすると、一部実行が許され、その後、残部についても実行できるというルールを、倉庫ごと等、流動性の単位ごとにというか、重ねて再度の実行ができないような形で何らかの限界を設けることを考えなければいけないのかなと思いました。ただ、その適切な限界の設け方がよく分からないという印象です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   まずは日比野さんのお話を伺って、それからまた事務局に伺いたいと思います。 ○日比野委員 ありがとうございます。実は井上先生のお話とかぶることを申し上げようとしておりました。私が準備していたのは夏物衣料と冬物衣料というものだったのですけれども、特に、例えばバーコードなどで更に商品の特定をするといったことが、仮にできるのだとすると、論理的には夏物衣料、冬物衣料、翌年に入ってきた夏物衣料、冬物衣料みたいな特定をした一部実行すらできてしまうということがあろうかと思います。前に申し上げましたけれども、動産はかなり種類も多様ですし、業種、業態によって実務の在り方というのもかなり異なりますので、倒産手続は別として、一回実行したら再度実行してはいけないという規律をあえて作らなくてもいいのではないか、その方がケースに応じた柔軟な解決が図れるという可能性があるのではないかと思っております。なので、結論とすると、6の規律のところについて強行法規として規律する必要はないのではないかと考えておりました。   恐らく、一度実行をするとなれば、そもそも事業が継続されることが余りないのではないかというイメージがあって、したがってこういう再度の実行というのを禁止するという発想につながっているということもあるのではないかと思いますが、事業が継続することと担保権が実行されることは両立し得るということだと思いますので、先ほどのように整理してもよいのではと考えておりました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。夏物衣料と冬物衣料問題と、井上さんがおっしゃったのは何だっけ。 ○井上委員 スイカとメロンとミカンとリンゴと。 ○道垣内部会長 スイカはメロンではないのですよ、メロンはミカンではないのですよ、そうすると、物権的なのですよ。でも、夏物か冬物かは人によるから、例として議論するに当たっては、どちらかといえばミカンの方がいいかもしれないと思いますけれども、すみません。 ○日比野委員 夏物衣料、冬物衣料というのは、夏と冬というところが言いたかったというよりは、衣類ですと、例えば品名とか品番号によってより細かな特定ができるので、同じシーズン向け衣料みたいなものであったとしても、別の動産として特定ができるという意味で申し上げておりました。言い方がまずくて失礼しました。 ○道垣内部会長 分かっております。どうもすみません。 ○阪口幹事 阪口です。私の方はむしろ逆の意見です。まず、元々実行は1回だけだというのは、複数実行の必要性が本当にあるのですかということも含めて考えられた議論だと思うのです。先ほど出たとおり、普通は一回実行したら、債務者は倒産するのか、少なくともそこに物を入れないのか分かりませんけれども、2回目の実行というのは余り期待できない。そうだとすると、担保権者の方も2回分の与信をしているわけではない、それなのに2回認める必要があるのですかという疑問がまずあります。   先ほどのスイカ、メロンとリンゴ、ミカンの例でいうと、担保権者はそれぞれの分を足し算で与信しているのですかというと、普通は足し算の与信をしていないと思うのです。果物屋さんが夏に仕入れる分の資金を借り入れてメロンを仕入れました、メロンを売りました、その売ったお金は、今度冬のミカン等を仕入れたりする資金に動いていく。別に資金が2倍あるわけではないという中で、2回実行を認める必要性がないのではないですかということです。また必要性とは別に期待もできません。仮に必要があると思っても、先ほど申し上げたとおり、債務者は倒産する、若しくは物を入れないという状態なので、担保権者としても2回目の実行の回収はあまり期待できない。したがって、また2回分の与信もしない。こういう関係にある中で、2回認める必要性はないのではないのかということがあります。   その関係でいうと、7のところで書かれている一部実行については、中間試案の場所的特定のみという方が明確なのではないかと思います。つまり、部会資料の4頁では集合物の特定の問題と一部実行の問題が同じ次元で考えられていますけれども、それは別次元の問題ではないのかと思います。実行できる範囲というのは当然、執行官が判断し、行うことですから、そこでの物の特定性、明確性というのは比較的画一的にできなければいけない。もちろんリンゴとミカンとスイカとメロンは区別できますけれども、前に申し上げた、富士と紅玉は簡単に区別できないのではないかとか、どんどん分かれていくと、何ぼでも分けて実行できるわけではないと思います。つまり、担保設定時の特定の問題と、執行の局面での一部実行の可能性というのは、観点が別次元の問題だろうと思います。   その関係でいうと、6で特約無効という規定があるのだけれども、執行の世界というのは基本、法律の規定に反する合意は無効だと思うのです。執行手続、実行手続との関係では、むしろこの書き方は逆ではないか。民事執行法に反する合意は、特段の合意が許されるという規定がない限りは、普通はできないはずなので、ここの6は書き方が逆なのかなとは思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。御発言の比較的前の方で、場所的なところしか認めないとおっしゃったところで、少し御発言の趣旨を確認したいのですが、井上さんがおっしゃったところというのは、阪口さんも設定の仕方の話と一部の話との関係というのをおっしゃったので、同じことをおっしゃっていたのかもしれませんが、ミカンの譲渡担保とメロンの譲渡担保とリンゴの譲渡担保とを作ってしまったら、季節ごとに実行ができる。あるいは説明のところでも、何月何日から何月何日までに納入されるものというふうな形で複数作れば、何回にも事実上、分けてできるではないかと。そうすると、一部の実行を認めないと強く言ってみたとしても、集合動産譲渡担保をうまく契約を作れば、事実として一部の実行というのが効率的に、先ほどの夏物、冬物ですが、夏のときと冬のときと分かれるようにするためには、できるのではないかという話が含まれていたと思うのです。それに対して、阪口さんが初期の段階で場所的なものに限るとおっしゃったのは、そういうものは認めないと、第1倉庫内にあるものというふうになってしまえば、第1倉庫について固定化を起こして実行したら、その後に入ってくるものが形式的に別の集合動産譲渡担保契約に基づくものであると考えられても、それは認めないというふうなことを今、含んでいらっしゃったのか、少し確認したいのですけれども。 ○阪口幹事 阪口です。重なっているものがある限りは、ほかのものも使えないと思っています。出ているとおり、リンゴとミカンについて別々の譲渡担保権を設定すれば、重なっていないという議論はもちろん可能なのですけれども、実際上そんなことをする合理的な債権者はいない。先ほど申し上げたとおり、与信としてはそんな与信をしていないわけですよね、リンゴとミカンを別々に見て足し算をしているわけではなくて、その果物業者が冬はリンゴを扱い、夏はメロンを扱うという中で、年間でどれだけこの人が資金を必要とし、また逆に与信できるかを見ているだけです。ミカンとリンゴの別々の譲渡担保というのは、もちろん恣意的に設定することは可能ですけれども、合理的な人は普通はそんなことはしていないはずなので、できるという問題と、それを認めなければいけないという問題は別ではないかと思っています。 ○道垣内部会長 もちろんそうなのですが、認めないとしたときには、場所的なところに特に着目して、一部というのは札幌と福岡の倉庫であるというふうに分けているのを一部というのであって、同じ横浜の倉庫を2回やるというのは、それが形式的に中身が違うというふうな、契約が別であるみたいになっていても、それは駄目だという方向なのですか。 ○阪口幹事 別だ、駄目だと言いたいですけれども、重なっているかどうかという理屈でいうと、最初から担保権がミカン専用とメロン専用であれば、重なっていませんから、及ばないという理屈でないと説明しにくいのは説明しにくいのです。ただ、僕としては認める必要がないと思っているので、そこは何とか、できないという説明をしたいとは思いますけれども。 ○道垣内部会長 分かりました。ありがとうございました。   ほかに。 ○藤澤幹事 阪口先生のおっしゃったことについてコメントさせていただきます。与信と実行の範囲とを対応させて考えるというのは非常に説得的だと思う一方で、与信と対応させて考えるとすれば、少し不都合ではないかと思うところが二つあります。   一つは、果物みたいな生鮮品ですと、何百キロ等、大量の物についてまとめて融資をしたとしても、倉庫に入ってくるのは順次というようなこともあり得ると思うのです。倉庫に全部入った時点で実行しようと思ったら、最初に入ってきていたものはもう腐ってしまうとか、順次実行した方が担保権者の融資に対応した形で実行ができるという場合もあり得るのではないでしょうか。動産にはいろいろな種類があるのだから、6番の強行規定を置く必要はないのではないかというようなことを日比野委員がおっしゃっていましたけれども、そのご意見に賛成です。   もう一つは、債権の場合には、与信がどのような形であれ、将来の個別債権について担保権が設定されていると解して、何度でも実行することができると考えるのだとすると、なぜ動産だけ制約して債権は制約しなくていいのかということが少し気になっております。 ○阪口幹事 阪口です。まず、前半の何百キロ分の融資という話ですけれども、仮に1回実行したら、設定者はそこに入れるのでしょうか。実際は入れないのではないかと思うのです。だとすると、結局また与信もできない、結局それは観念的にはできる与信だけれども、担保権者からしたら、実際それは時期が分かれて入ってくるのだったら、時期が分かれる単位で融資することにならざるを得ないのではないかと思います。   二つ目の、債権と動産でなぜ違うのかというのは、幾つかの局面で違いが発生しますけれども、どちらかというと動産執行は執行官が物を取り扱うという側面も大きいのかなと私自身は思っています。 ○佐久間委員 今の実行の在り方なのですけれども、よく分からなかったのは、井上さんが最初におっしゃったのは、幾つかの倉庫の中の果物ということで設定していたところ、リンゴとミカンとメロンでしたっけ、それを分ければいいのではないかと、それだったらできるのではないかとおっしゃったのですよね。違っていたらごめんなさいですけれども。それで部会長がおっしゃったのは、例えばミカンとかリンゴとかメロンとか、そういったものについて最初から個別に設定していたら、それはそれでできることにならないかというようなことをおっしゃったのではないかと思います。前提が間違っていましたら、ごめんなさいと申し上げておきますけれども、私は今の前提でいうと、最初は果物だとしていた場合と、ミカン、リンゴ、何とかだと別々に設定した場合は、やはり大分違うのではないかと思います。与信がどうのこうのというのはよく分かりませんけれども、例えばミカンといったときにリンゴが入らないのは明らかだと思うのです。それに対して、果物というときに、ミカンという切り取り方とリンゴという切り取り方とメロンという切り取り方ができるのだとなると、例えばミカンの中で温州ミカンと清見オレンジと、それは違うのだというのが認められるのか、認められないのかというのも、同じように問題として出てきてしまうのではないかと思います。更にもっというと、在庫一切という設定の仕方を倉庫を指定して認めるとなった場合に、その在庫について幾つも種類があったら、それを切り取っていいのか。これは別ですというふうに分ければ、それでいいのかという問題まで出てきて、収拾が付かなくなるのではないかという気がします。   したがって、ある指定の仕方、特定の仕方をした場合に、その範ちゅうに入るものについて実行が一部でもされることになると、それはもうやはり1回で、それで終わりだとしておかないと、収拾が付かないのではないかという気がしました。多分、阪口さんがおっしゃる与信との見合いというのは大体そこで決まってきているのではないかというふうに、これは素人ですけれども、感じました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   井上さんも、井上さんのお立場とは違うかもしれませんが、もし何回も実行するというのを認めないとするならば、一部ということをきちんと定義をしてといいますか、こういう一部実行は認められるのだという形にきちんとしないと、境目がはっきりしなくなってしまうということですね。それに対して阪口さんが場所的なところに限るという一つの解決策を出されているのかもしれないと思いますけれども、ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○片山委員 片山です。少し視点が変わるのですけれども、6ページのところの後順位の担保権者、一般債権者の差押えで固定化が生じるという話なのですが、確かに同じ集合動産を担保に取っている後順位担保権者が実行したときには固定化を生じるということでいいのかもしれません。それを第三者異議で排除するということになるのだと思います。それに対して、一般債権者が差押えするという場合についても同一に考えていいのか疑問を感じなくはありません。そもそも、何を差し押さえる場合を想定しているのかがよく分からないところではありますが、仮に集合動産を全部差し押さえるというケースを想定するのであれば、同様に固定化が生じるということでいいのかもしれませんが、逆に、集合動産の構成部分を1個差し押さえるというようなことがあった場合についても、固定化は生じるとし、それをわざわざ第三者異議で排除しないと固定化を覆滅することはできないとまでしなくても、無視していればいいだけのことのような気も致します。一般債権者が差し押さえた場合に固定化が生じるので、それを第三者異議で排除しなければいけないという話は、どのようなケースが想定されているのか分からなかったので、御説明を頂ければと思います。よろしくお願いします。 ○道垣内部会長 では、その点だけお願いします。 ○工藤関係官 ここの規律の趣旨としては、今御指摘いただいたとおり、たとえ1個であっても、特定範囲に属する動産を一般債権者が差し押さえた場合には固定化してしまうという形にしております。理由としましては、一つ言えることとしては、例えば倉庫が特定範囲であるときに、倉庫の中に入っている動産全部を差し押さえた場合と一つしか差し押さえていない場合とで違う規律を採用するというのは、なかなか切り分けが難しいということはあるのかなとは思っております。 ○道垣内部会長 片山さん、よろしいですか。 ○片山委員 1個差し押さえられたぐらいだったら無視できていいのではないかという気もするのですけれども、やはりそこをわざわざ第三者異議で排除しないと固定化が生じてしまうという話ですよね。それも大げさな気がするのですが、どうなのですかね。 ○道垣内部会長 何%とかと決めるわけですか。それも難しいよね。 ○片山委員 まあそうですけれども、では、1個押さえられても一応、固定化が生じてしまうということですね。 ○道垣内部会長 一つの案としてはね。 ○片山委員 なるほど。 ○道垣内部会長 通常の営業の範囲に属する処分の程度の範囲の差押えという概念をここで作るかどうかですよね。 ○片山委員 そういうことですね。 ○道垣内部会長 その辺は以前から問題になっているところなのですが、少し検討を続けることにして、阿部さんに少し話を伺いたいと思いますが。 ○阿部幹事 私も一般債権者の動産競売の差押えで全部固定化してしまうというのは、やはり問題があるという、片山委員と全く同じ問題意識を共有しています。例えば、1個差し押さえられたのに全部固定化してしまうということになると、もう集合動産担保権者としては債権回収して融資を引き揚げざるを得ないということになりますので、まだ融資が続けられると思っていても、もう融資を止めなければいけないということになりかねないですよね。取り分け、集合動産譲渡担保は根譲渡担保でもある場合もあったりしますので、そういうときに、今後もまだ取引を続けて、融資を今後も続けられると思っているのに、実行して引き揚げないといけないということになったら、大変なことではないかと思います。   多分、資料の立て付けとしては、その場合に本文7を準用することで多少その問題を緩和できるのではないかという発想があるのではないかと思います。7によると、これは特定された範囲を実行の対象として指定し、という話ですけれども、これを多分、動産執行の場合も応用して、動産執行に関しては普通、個別動産を執行していると思いますので、その個別動産のみが実行の対象として指定されているとして、2や3の効力はその範囲にのみ生ずるということにすれば、それほど大きな問題は生じないということなのかなと思いました。けれども、それはそれで、そもそも、特定された範囲を競売の対象として指定しているというよりは、そもそも特定動産が競売されているので、この7になじむのかよく分からないですし、また、7を準用した結果としてどういうことが起こるかと考えると、その動産について、3によって設定者が処分権を失うというのは、まあいいかなと思うのですけれども、2はどう適用されるのだろうというのがよく分からなくて、結局、個別動産が執行の対象になっているだけだと考え、その個別動産に今後、担保権が及ばないというだけだとすると、それはもう固定化しないというのに等しいのではないかというような気もしました。3を及ぼすことで、執行対象になった財産について設定者の処分権を失わせるということにのみ意味があるのかもしれませんが、そうだとすれば、それだけでいいのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。7の解釈の方法によって、差し押さえたものが固定化したと、ほかはまだ固定化していないよといえば、片山さん、阿部さんが危惧しているような問題点は生じないようにうまくできるのではないかということだろうと思いますけれども、それで広くやったらそうなのかな。 ○山本委員 今の点ですけれども、動産執行というのは通常、場所単位主義という考え方が採られていて、ある場所にある動産について差押えを申し立てるということに基本的にはなると思います。ですから、例えば第1倉庫に所在する動産についての差押えの申立てが行われるということになるわけですが、それがこの7の規律との関係において、その所在場所等によって特定された範囲を実行の対象として指定したときに当たるのかどうかというのが、確かに一つの問題かなとは思います。   その場合でも、もちろん場所を単位として執行はなされるわけですが、個々の差押えは個々の動産に対してもちろんなされるわけですし、超過差押えの禁止という原則もありますので、被差押え債権との関係で、超過してむやみやたらに全部差し押さえられるということはなく、差し押さえる債権が少額であれば、その中の動産1個だけ差し押さえるという事態ももちろん生じ得るわけで、それで全体が固定化してしまうと、その後、倉庫に流入してくるものについてももう担保権が及ばなくなってしまうという効果は確かに過剰なような気がしますので、一般債権動産執行との関係は少し考えられた方がいいのかなという印象は私も持ちました。 ○道垣内部会長 結論としては同じような御見解を頂いているのですけれども、そのときにどなたかがおっしゃったように、集合動産譲渡担保の目的となっている、例えば集合物の全体を十分な債権額の下で差し押さえるということになったら、それは固定化を生ぜしめる以外はないわけですよね。そうすると、それはどういうふうなメルクマールで処理をするのが妥当だという感じがされますか、固定化が生じない場合と生じる場合と。山本さん、涼しい目で真っすぐ見ていらっしゃるけれども、こちらからは期待の目が注がれていますよ。 ○山本委員 それは私に言われても、という感じの目で見ていたのですけれども、確かに、だから、おっしゃるように非常に多額の債権で差し押さえた場合には、基本的にはほとんど全部の商品が差し押さえられるということはあると思うのですけれども、その場合に担保権者にそれを選択させるということは相当でないのですかね。担保権者の側で、実行してきた場合には、固定化が生じるという、例えば。 ○道垣内部会長 なるほど。ありがとうございます。 ○片山委員 片山です。やはり集合物と、それから、その構成部分たる動産、個別動産とが違うということなので、集合動産を担保に取っている担保権者としては、個別の構成部分が差し押さえられたら第三者異議の排除は当然できるというこということなのですけれども、その問題と固定化の問題とはまた別の問題ではないかとも思いますので、構成部分を差し押さえられている限りにおいては、仮に1%でも差し押さえあれれば、第三者異議で排除はできるが、逆に仮に99%差し押さえられても、それによって直ちに固定化は生じないと考えていいような気もしましたが、いかがでしょうか。 ○道垣内部会長 それに山本さんがおっしゃった、実行するのも自由である、例えば被担保債権の弁済期が到来していなくても、一部が差し押さえられたら実行することはできるという規律を置くことは可能なのですかね。分かりました。 ○阿部幹事 私は、自ら実行までしなくても、例えば配当要求していったら、どの範囲かはともかく、一定の固定化が生ずるというのは、ありうると思いました。だから、執行に乗っかって配当要求して優先弁済権を実現していくのか、それともその執行は無視して、その代わりに固定化しないというふうにするか、どちらかの選択が担保権者においてできるという規律が相当ではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに、その問題でもよろしゅうございますし、第1全体について。 ○阪口幹事 二つあり、一つは今の問題です。今の問題は前も申し上げましたけれども、根担保権の確定の問題にも響いてきます。以前に、目的動産に差押えがあって、担保権者がほったらかしたらどうなるのかという、部会資料28の7ページのところで提起させていただいた問題があり、そことうまく整合しないといけないのかなと思っています。他方、動産が1個差し押さえられたときに担保権者が配当加入したら、普通は無剰余になって取り消されてしまうのではないか、そうすると、固定効は覆滅するので、実務的にはそれはそれで回るのかなという気もします。したがって、実際どうなるのかを、被担保債権の確定の問題とセットで考えた方がいいのかなと思っています。これが一つです。   もう一つ、全然別次元の話で申し訳ないのですけれども、第1の2のただし書の分別管理のところが大きな問題だと思っていますので、少し意見を述べたいと思います。元々中間試案の段階では、場所的分別が必要ですか、それとも帳簿上の分別で足りますかという問題提起がされていましたが、その問題が部会資料のどこにも出てきていない形になっています。そこは明確にしないといけない問題であり、私自身は場所的分別を要求すべきではないのかと思っています。   というのは、今日も少し前半に村上委員の方から御意見があったと思いますけれども、あれの補充ってしていないのではないですか。されましたっけ。 ○道垣内部会長 そうか。忘れていました。 ○阪口幹事 それは後で。でも、それを先に言ってもらわないと、僕の話がつながらないかな。先に言っていただいたほうが。 ○道垣内部会長 今、何の話をしているかと申しますと、通信状態が悪いときに、早めに第1について1点、村上さんに発言をお願いいたしまして、そこで問題になりましたのが分別管理の話でございます。そのことの内容について簡単にまとめておきたいのですが、事務局からお願いします。 ○工藤関係官 私もはっきり明確に村上委員の発言を記憶できているか、少し自信がないところもありますけれども、おっしゃられていたこととしましては、本文2のただし書のところで、分別して管理されていないということでどんどん新しいものが加入してきて担保の目的になってしまうとすると、やはり一般債権者が害されてしまうことがあるのではないかと、その観点からも、この「分別して管理」が何を意味するかについては、慎重に検討する必要があるのではないかという御意見を伺ったと思います。 ○道垣内部会長 それを前提にして、阪口さん、続けてお願いします。 ○阪口幹事 阪口です。その一般債権者もそうですし、典型的には動産売買の先取特権者が一番分かりやすい利害関係人と思います。固定化通知がされた後に入ってくる商品を納めた売主は、その物に対して動産売買先取特権を行使できる権利を持っている。しかしながら、それが譲渡担保権の対象に入っているということになると、最高裁の判例がそのままだとすると、売主が負けることになる。正にその、入ってくるか入ってこないかの大きな利害を受けてしまうのですけれども、動産売買先取特権者からすると、帳簿上管理している程度で入るか入らないかという基準ではなく、場所的に明確に分けられているかどうかという基準ではないか。また、場所的に明確になっているからこそ、売主もそれに対して先取特権を行使していくことができる。売買の対象物が他の動産に混入すると、売買先取特権者は実際上実行できませんから、混入しない状態になっているというのが、動産売買先取特権者から見ても、分かりやすい基準なのではないのかと思っていて、その意味でも、ここは場所的管理の問題が一番判断基準として明確なのかなと思っています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。分別の問題につきましては、ほかにもいろいろ御意見があろうかと思いますが、その前に、差押えの問題についての意見の、もちろんここで確定的な取りまとめができるというわけではないとは思いますけれども、何人かの方から御発言いただきまして、差押えで固定化が生じるというのは少し問題なのではないかという御意見を頂きました。その点について、事務局から何かございますか、それとも、それはそうかもしれない、検討するということでしょうかね。 ○笹井幹事 担保権が及んでいるということは、担保権者としてそこから配当を受けるということができますので、配当加入して配当を受け、それでも固定化が生じずに、その後、集合物全体から更に満足を受けられるということになると、重複して執行してしまうということになるので、それをどういうふうに避けるかということを考える必要があるのだと思います。最後に何人かの先生からおっしゃったように、例えば配当加入したときにはこうなるとか、何らかの担保権者がアクションを起こした場合には固定化してしまうというようなことはあり得るかもしれませんので、その点は少し考えてみたいと思います。   ただ、その場合に、これは山本委員から御指摘のあったところかもしれませんけれども、差押えが集合物として差し押さえられたのか、個別のものとして差し押さえられたのかによって、全部固定化してしまうと考えるのか、一部分だけにとどまると考えるのかという辺りも含めて検討する必要があるのかなと思いました。取りあえずは以上です。 ○道垣内部会長 反対論も強かったわけですので、もう少しここは検討をしていただくようにしたいと思います。この差押えの問題について、更に何か御発言はございますか。 ○藤澤幹事 本当に勉強不足で、教えていただきたいという点なのですけれども、差押債権者の差押えに際して剰余があるかないかということが問題になるかと思うのですけれども、無剰余か否かの判断というのはどうやってするのかというのが少し気になっております。先ほど山本先生から超過差押え禁止のルールがあるからというお話があったので、差押え債権者としては自分の債権の範囲でしか差し押さえることができないのだけれども、それに剰余があるかというのを検討するときに、集合動産担保権者の権利がそこに割り付けられると考えると、基本、いつも無剰余になってしまうような気がします。例えば、差押債権者が差し押さえたのが動産の中の5%ぐらいだとして、残り95%のうちの50%ぐらい使えば譲渡担保権者の被担保債権がカバーされているというようなときでも、その5%の差押えも無剰余とされてしまうのはどうかという問題意識を持っております。 ○道垣内部会長 それは解釈論ですが、無剰余なのでしょうね、不可分性との関係で。いや、違うのかもしれないですが。山本さん、何かありますか。 ○山本委員 その問題は確か前にも議論が、要するに、債権を割り付けるような形にして無剰余を判断するのか、全額ぽんと持ってきて、全部無剰余だよねというのかという議論はあったように思います。現在の私の理解するところ、裁判例は後者のような、割付はしないで全額持ってきて、無剰余だと。先ほど来のお話で、基本的には少額のものが差し押さえられたような場合においては、ほとんどの場合、無剰余になるというのはそのとおりだろうと思います。   ただ、私自身あれなのは、無剰余でも基本的には第三者異議でも同じ基準だと思うのですけれども、そこまで判断についてタイムラグが一定程度生じるのだろうと思うのです。そのタイムラグの間は固定化が生じている状態になるので、入ってくる物については担保権が及んでいない状態になるのではないかということを、それから、債務者の方、設定者の方も処分できないという状態、その全体について処分できないという状態が生じてしまうのですが、それが一体どの程度、何日程度、何か月なのか、その辺りが、第三者異議が確定するということになると、それは少なくとも半年とかそれぐらいは絶対に掛かるのだろうと思うのです。無剰余はもう少し早いのかもしれないけれども、でも、やはり一定の期間が掛かるのではないかと思うのですけれども、その辺りは私は実務的なところが分かりませんけれども、それで果たして、結局その間、商売がストップしてしまうということになって、もつのだろうかというのが私自身のやや疑問に思っているところではあるのですけれども。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかにはいかがでしょうか。   それでは、この辺りを踏まえてもう一度検討していただくことにして、次の問題として出ているのが分別管理の問題で、場所的な分別管理というのを要求すべきであると。場所的な分別管理は、されていないときには集合動産譲渡担保の効力が及び続けると考えるべきであるというのが阪口さんの方から出ています。ちょっと私が気になるのは、譲渡担保設定者は分別管理義務を負うのですかね。というのは、譲渡担保権者にとってみれば分別をしていない方が、及んでいくのだから便利だという話になってしまうのですけれども、ほかの人からしてみれば、村上さんもおっしゃったし、阪口さんが動産売買先取特権とおっしゃったけれども、分別してくれなければ困ってしまうわけですよね。さらには、分別していない効果というのは、実体的に効力が及ぶという効果なのか、本当は固定化以降に入ってきたものについては及んでいないのだけれども、例えば、あるものが固定化以降に入ってきたものだということの証明責任がそれを覆す側にあるというだけの話で、実体的な効力として、消滅が生じたり効力が及ぶというのが生じたりするわけではないというのも一つの考え方だろうと思うのです。そうしないと、一旦は一緒にしたけれども、あらら、分別していなかったわ、分別しましょうなんていって分別したのだけど、いや、分別していなかった段階で効力が全部に及んだのではないか、という話にもなりかねなくて、そこら辺がよく分からないのです。分別というもののメカニズムが私にはよく分からないのですが、これはどうなるのですかね。 ○工藤関係官 まず、分別義務を負うのか、負わないのかという点でいいますと、恐らくそこは義務を負うわけではないということなのかなと思っておりました。ただ、設定者としては分別しておかないと担保権者の方に取られて、処分権を失ってしまうので、自分が処分できなくなって困るので分別をすると、そういう形なのかなと思います。   実体法上の効果なのか、それとも立証責任の転換ルールなのかという点については、ここでは実体法上の効果を発生させる趣旨の規定だという前提で御提案をしておりました。ただ、そこが具体的にどういう趣旨なのかということについては、幾つか議論があり得るのかなと。この場合に、例えば混和のルールが適用されるかどうかといったことは不明確な点もあろうかと思いますし、仮に適用されるとしたら混和の特則みたいな位置付けになるかと思いますけれども、そこの位置付けについては恐らく議論があり得るところかとは思います。 ○道垣内部会長 前者に関していうと、不利益を受けるのは設定者ではないですね、所詮固定化して、もはや破綻ぎみなわけですから、話が出ているような一般債権者とか動産売買先取特権者であって、分別していなかったら設定者が不利益を被って処分できないから、義務を課さなくても分別するでしょうとはならないのではないか、というのは論理として。どうかな、という感じがしますけれども。   今、混和の問題とかも出ましたけれども、そこら辺になってくると、話が結構やっかいになってくるのですけれども、いかがでしょうか。混和について語ってほしいというわけではないのですが、分別のことについて、いかがでしょうか。 ○井上委員 井上です。この分別については、その効果として、事務局の提案のように、分別していない新規取得動産には実体法上担保権の効果が及ぶという整理とは別に、先ほど議論がありましたように、分別していないと固定化の対象でないことを主張できない、あるいは固定化していないことを主張しようとする側に立証責任が転換されるという整理もあり得るのですが、ただ、いずれの整理に立っても、どの程度設定者にインセンティブがあるのかは、実質破綻していれば、事実上ないのではないかという議論はあるかもしれません。けれども、担保権者の立場からすると、設定者の手元にあるものについて固定化の対象を特定できないと、実行自体がままならぬことになりますので、現在提案されている規律が望ましいのではないかと思っています。   ただ、分別とは何を意味するのかについては、これは、阪口先生は先ほど物理的な、あるいは場所的なですかね、区別をすべきだということではありましたが、例えば、場所的には一緒くたに置いてあるのだけれども、倉庫内の在庫の箱に納入ラベルが貼ってあって、その記載により搬入日が分かれば、物理的には一緒くたになっていても、固定化前に搬入されたか固定化後に搬入されたかが分かるので、分別されていると考えていいのではないかと思いますし、箱だけからは分からなくても、箱に番号の記載された納入伝票が貼り付けてある場合に、帳簿と照らし合わせればどの番号からどの番号までが固定化された日までに納入されたかが分かれば、それでもよかろうと思うので、そういう意味では、必ずしも場所的な方法に限らなくても、きちんとどの箱が固定化された時点で搬入されたかが分かればよいのかなと思います。   ただ、更に進んで、どの箱が固定化前に搬入されたかは分からないけれども、全く同じ種類物の箱が100個今、倉庫の中にあり、固定化されたときにはそのうち80個が入っていたけれども、固定化された後に20個が運び込まれたことは、出入管理の伝票からはっきりしているときに、分別されていないといわなければならないかは悩ましいところです。価値的には、それがもし完全な種類物だとすれば、そのうち80個について固定化が生じ、残りの20個については設定者がなお処分できる、そして、実行についてはそのどれか80個を対象とすることが許されるという方が、出来上がりとしてはよさそうに思います。   これは、混和の問題とか、混同寄託の法理とやや似ている問題かもしれないのですけれども、そのようなことは認められず、やはり個別にどの箱が固定化後に搬入されたかをトラックできなければいけなくて、そうしないと、動産売買の先取特権と同じように優先権の主張ができないことになるのかは、悩ましいと思っておりますけれども、ただ、ここで分別というときに、種類物といってもいろいろなものがあるので、完全な種類物である部品と、個体差があるミカンとは違うのかもしれませんが、少なくとも個性のない種類物の場合には、個数レベルで固定化時点の範囲が帳簿上特定されていれば、それもここでいう分別管理に当たるという整理もあってもいい考え方かなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。この辺はなかなか悩ましい問題が一杯あるのですが、佐久間さん、お願いします。 ○佐久間委員 ありがとうございます。実務のことが全く分からないので、今の井上さんの御発言に対してとんちんかんなことを申し上げるかもしれませんけれども、伺っていてどうなのかなと思ったことがあるので、発言させていただきます。倉庫の中に箱があって、日にちが書いてあったらいいのではないかとか、伝票があればいいのではないかとかということをおっしゃったかと思うのですけれども、伝票は分かりませんけれども、箱に何年何月何日と書くのなんて後から何ぼでも書けるので、その正しさというのは全く分からないのではないか。伝票だって、それは法的にはやってはいけないのかもしれないけれども、日にちを何とかするぐらい簡単なのではないか、あり得るのではないかと思うのです。そうすると、この場合に分別をしていればというか、設定者がどこかの債権者と結託するとか、どちらかのとかということになると、そのような、いろいろな事実を積み重ねて後から証明されればいいですよねというようなことでいいのかなというのを疑問に思いました。場所しかないのかどうか分かりませんけれども、A倉庫とB倉庫とか、A倉庫の右半分、左半分とかだったら、まあはっきりはしているのだろうけれども。それでも移せば終わりだということになるのか。でも、よく分からないけれども、程度問題だけれども。記録してあればいいというのは、少し感覚としてはどうかなとは思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに何かございませんでしょうか。   これは中間試案からあるものではあるのですけれども、実はそれほど簡単な話ではないですね。混和のルールを適用しますといっても、100あったところにあと20入って120になって、100対20だよねということになるのだけれども、その後、20が第三者に売却されたというふうなときに、どこから売却されたと考えるのかという問題点があって、それはずっと信託法上もある問題なのですけれども、複雑な問題が多々ありますけれども。   ほかに何かございますでしょうか。 ○井上委員 分別のところについてでしょうか。 ○道垣内部会長 分別に限りませんで、第1のことが幾つか残っていると思いますので、井上さん、ほかのところでも結構でございます。よろしくお願いいたします。 ○井上委員 ありがとうございます。井上です。部会資料7ページの10はゴシックのご提案とは対応していないのですかね。時的要素による集合動産の範囲の特定の可否について、22行目までで、担保設定時に、時的に区切った形で集合動産の範囲を特定することが許容されるとも考えられるとしつつ、その後、23行目以降からの記述によると、いや、そうではないとされています。すなわち、時的要素は、集合動産の範囲の特定の要素ではなくて、その期間の末日に固定化する特約という解釈、あるいは固定化の効果が生ずるという説明になっていると思うのですけれども、集合動産の特定の問題ではないという点については、私もそう思います。6月1日から6月30日までに搬入されるものについて集合動産譲渡担保を設定して、次に7月1日から7月31日までに入るものについて別の集合動産譲渡担保を設定して、それを10個も20個も設定した上で1つ1つを全部実行だといって何度も実行することは、先ほどの議論と同じような問題が生ずるし、そんなことを認める必要もないと思いますけれども、他方で、この期間の末日に固定化の効果が生ずるというのが当事者の意図と合致しているのかには、やや疑問があります。30行目には、固定化の効果とは違って本文2の効果が生ずる旨の特約と書いてあるのですけれども、私が思うのも同じく、2023年7月以降に入った在庫に及ばないという効果だけでいいのではないかということでして、それ以降に入ったものを自由に処分できる、使えることを意味するにしても、果たして、まだその時点で被担保債権が不履行になっていない場合であっても、固定化の効果まで生じさせることが必要なのだろうかと思いました。そもそも、こんな約定をするのかなとは思うのですけれども、こういう約定を仮にしたときに、その約定の解釈としては、ただ単純にそれ以降に入ってきたものには担保権が及ばないというだけで、それまでに入ったものについては通常の事業の範囲内で処分し続けられてよいのではないでしょうか。実行通知も何もしない、不履行も起こっていないのに、それまでに入ったものを処分できなくなることはないのではないか、もしかすると、事務局もそこまでおっしゃっていないのかもしれませんが、固定化という言葉を使う必要はないのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 これはいかがですか。というのは、私も読み落としていたのですが、6月30日が来たところで固定化、2の効果が生じるということになると、その固定化のためには通知は不要であるということになるのですかね、個別請求の。 ○笹井幹事 そうですね、はい。 ○道垣内部会長 それはそうなの。 ○笹井幹事 6月30日までに入ったものを担保に取るということなので、7月1日以降に入ってきたものにはそもそも及ばない。 ○道垣内部会長 だから、井上さんがおっしゃるように、及ばないというのはそうなのだけれども、実行通知による固定化ではないので、そのまま被担保債権がノーマルに弁済されていれば、そのままだんだんなくなっていって終わってしまうということになりますよね。 ○笹井幹事 ここは少し表現が適切でなかったかもしれません。意図としては、処分はできる、処分権限まで失うわけではないということです。 ○道垣内部会長 3は1の通知が到達したときの効果になっているので、2だけの効果では3は発生しないというふうになっているのかもしれないけれども、それは読むのが難しいよね。 ○井上委員 私は、2の効果が生ずるということであればいいのですが、固定化と書いてあるので、もしかして3の効果までお考えなのかと思ったのです。固定化したら、そのときにあるものに個別担保が設定された状況になってしまうということだとすると、それは少し変ではないかと、そういう趣旨です。 ○道垣内部会長 そのとおりだと思います。説明のところの改善なのか、あるいは第1の1、2、3の辺りの文言をもう少し整理しなければいけないのかということがあると思いますけれども、お願いしたいと思います。   ほかに、第1のところはございますでしょうか。   幾つか大きな問題点みたいなものはあるのですけれども、本文2のところに関連しては、複数の集合動産譲渡担保の特定範囲が重なっているときには、一方の方が固定化が生じると、他方の方もそれに応じて、重なり部分については固定化が生じると、これはこれでよろしゅうございますかね。まあそうでしょうね。   7に関しては先ほど、場所的なところで考えなければいけないのかどうなのかというのは、実体的にどのような集合動産譲渡担保権を認めるべきなのかということにも関連して、なかなか微妙な問題があるということかもしれませんが。   ほかによろしゅうございますか。   本日から、6時までお願いをしておるわけですが、それでもこの資料は終わらないかなという感じはいたします。ただ、第2とか第3とか、その辺りは比較的、軽いと言っては何でございますが、別に発言を止めるわけではございませんけれども、行けるところまでは行った方がいいかなと思いますので、「第2 動産譲渡担保権の競売手続による実行等」について、事務局から御説明いただければと思います。 ○工藤関係官 それでは、「第2 動産譲渡担保権の競売手続による実行等」について御説明いたします。   本文1については、中間試案から実質的な変更はありません。   本文2については、中間試案から大きな変更はありませんが、集合動産譲渡担保権者も配当要求をすることができる旨を明示しています。   本文3については、動産譲渡担保権者による第三者異議の訴えの提起が否定される場合の要件につき、民事執行法上の無剰余取消しと同様の規律とすることなどを念頭に置いて修正をしているほか、部会での御議論や判例を踏まえ、集合動産譲渡担保権者による第三者異議の訴えの提起を認めることとしています。   本文4については、中間試案第12−4では、通知の主体を執行官とする考え方と差押債権者又は担保権者とする考え方を併記していましたが、通知の確実な送付を確保することが望ましいことなどから、執行官を通知の主体とすることとしています。   本文5については、中間試案第12−5では、消除主義を採用し、動産譲渡担保権は競売による売却によって消滅するものとする【案12.5.1】と、引受主義を採用し、買受人が動産譲渡担保権の負担を引き受けるものとする【案12.5.2】を併記していましたが、競売による売却の実効性を確保することが望ましいことや、本文4の通知によって動産譲渡担保権者の手続保障は図られているとみることができることなどから、【案12.5.1】の消除主義を採用するものとしています。   そのほかに、(説明)の5では、競売手続における差押えの効力が動産譲渡担保権者に及ばないことを前提として、私的実行と競売手続の関係を調整する規定を置かないものとしています。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 どなたからでも結構でございますので、第2のところにつきまして御意見を頂ければと思います。 ○阿部幹事 第2の5の部分で、中間試案の【案12.5.1】を採用することにしたとされている、つまり引受主義か消除主義かで消除主義にすることにしたというところなのですけれども、仮に消除主義にするのだとすると、優先する担保権者には配当要求の機会が確実に保障されている必要があって、それを確保しているのは第2の4の登記された債権者に対する通知だということになっているのではないかと思うのです。けれども、これは、今回冒頭の話で、登記可能な譲渡人はやはり法人に限定されるのだということになると、設定者が法人の場合には、登記ができるのだからしろと、していなかったらその担保権者が悪いという割り切りはできるかと思うのですけれども、設定者が自然人の場合は、そもそも登記をすることもできないということになると、この通知を受けることもできないということになって、優先権行使の機会を全く確保せず、消除主義を適用してよいのだろうかという問題が生ずるように思いました。 ○道垣内部会長 ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○阪口幹事 細かいことかも分かりませんけれども、部会資料31では、第三者異議のところの表現が、これこれの額の合計額以上となる見込みがあるときはこの限りでないという表現になりました。実務上、他の担保権者若しくは一般債権者が差押えしたときに、執行官は一定の評価を行いますので、その評価額から一定の費用や共益費用や、優先する人の分を引いてもまだ剰余があるとなれば、当然この見込みがあるときになりますから、第三者異議は認められないことになる。   ただ、動産執行の実務上、前に申し上げたことがありますけれども、執行官の評価というのは、その額以上で売らなければいけない義務を負う評価額ではない。法律上は、不動産競売における買受可能価額のようなものではないので、執行官はそれより低く売っても構わないことになり、剰余の見込みの有無と、実際上剰余があるかないかの問題がずれる可能性があるというところが少し気になっています。現実には執行官はそういうことはしないような気はしますけれども、不動産と少し違う点に関して、何か書きぶりを変えればいいのか、何かをする手当てが要らないかなとは思っています。 ○道垣内部会長 この見込みがあるときというのが、それはどういうふうにしてその見込みがあるかどうかを判断するかといったときに、このままですと、いわゆる評価額が基準になるということが法文上はクリアに書かれるわけではない。 ○阪口幹事 ないですけれども、見込みは普通ありますよね。この書き方だったら、執行官がそう言っているのに、それで売れる見込みがないなんていう議論は普通はないわけですから。なので、見込みがあるという表現がかなり軽くなって、かつ、必ずしも執行官がそうしなければいけないわけではないという辺りがいいのかなという。現実に執行官はしないから大丈夫だということであれば、それはそれでいいのかも分かりませんけれども、執行官は別に、売る売らないの裁量があるので、その価格以上で俺は売るのだ、それより下回ったら売らないぞと思えば、その問題は起きはしないので、そこはいいのかなというところだけです。 ○道垣内部会長 譲渡担保があって、例えば100万円がその被担保債権額であると、120万円だというふうにいって、上回るから第三者異議が出ないでそのまま行きましたというとき、80万円でしか売れませんでしたとなると、これは80万円が譲渡担保権者に行くだけであって、そのまま別に、無剰余措置が採られたりするわけではなくて、80万円が譲渡担保権者に交付されるという形になるのですか。 ○阪口幹事 表現を少し忘れましたけれども、換価のところで制約は掛かるのですが、今僕が申し上げているのは、上回るから第三者異議を提起しても仕方がないと思っている局面が気になったのですけれども。間違っているのかな。 ○道垣内部会長 見込額との関係で上回るから、第三者異議をしないでそのまま手続が進んでいきますよね。自分の勉強を棚に上げて条文を探させているというのは誠に申し訳ないです。 ○阪口幹事 民事執行法129条2項で、合計額以上になる見込みがないときは差押えを取り消さなければならないというのがあるので、そうなのですけれども、最後のその売るときに取り消すかどうかは、今、よく分かりません。すみません。 ○道垣内部会長 取り消すのだとするならば、見込みがないような額で売却するということには実際にはならないわけですよね。 ○阪口幹事 そうですね、そこはもう一遍調べてみます。 ○道垣内部会長 すみません、どうも変なことを伺いました。   ほかに、この第2について、ございませんでしょうか。これは大体こういう動産執行で配当を認めるという形になって、まあこうだねということなのでしょうか。   では、何かありましたら、また後でお願いをするといたしまして、あと6分なのですが、第3、第4について一遍にやりましょう。「第3 質権の実行方法に関する見直しの要否」というのと「第4 所有権留保売買による留保所有権の実行」についてまではやりたいと思いますので、事務局におきまして説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「第3 質権の実行方法に関する見直しの要否」について御説明いたします。中間試案の第13では、動産質の実行方法に関し、設定者の利益を保護する措置を採るとともに、民法第349条を改正し、流質契約の有効性を認める【案13.1】と、流質契約の有効性を否定する同条を維持する【案13.2】を併記していましたが、ここでも引き続き、【案3.1】と【案3.2】として両案を併記しています。なお、中間試案では動産質のみを取り上げていましたが、権利質についても同様の扱いとすることが考えられることから、【案3.1】では、権利質についても流質契約の有効性を認める考え方を取り上げています。   続きまして、「第4 所有権留保売買による留保所有権の実行」について御説明いたします。中間試案では、留保所有権の実行方法として帰属清算方式及び処分清算方式の私的実行並びに民事執行法の規定に基づく競売を認めることを提案していたところ、本文では動産譲渡担保権の規律を準用することとしていますが、実質的な変更はありません。もっとも、私的実行時の他の担保権者に対する通知の規律については、狭義の所有権留保については劣後担保権者の保護のために通知を要求する必要性は乏しいと考えられることなどから、ここでは準用しないこととしています。   以上について御議論いただければと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、御自由に御議論いただければと思います。   またお恥ずかしい話なのですが、349条というのは現在の普通の解釈論ですと、債権質についても適用されると考えているのですか。ああ、そうですね。すみませんでした。自分の本にそう書いてありました。   それほど大きなところではないといったら恐縮でございますけれども、ただ、幾つかやはり確認をしておきたいところがあるのですが、流質契約を認めるかという事柄に関して、流質契約を認めようではないかという形で、契約による質権の処分の禁止というのを除外するという形で出しているのですが、パブコメでは必ずしもその意見が多かったわけでもないのですけれども、現行法を維持していいではないかというようなお立場の方はいらっしゃいませんでしょうか。   【案3.1】と【案3.2】というのがあって、片方は流質契約の有効性を否定するということの、349条を維持するということなのですが、部会の皆様のお考えはいかがでしょうか。 ○伊見委員 私は【案3.2】の方が妥当であると思います。説明のところにも記載していただいておりますとおり、動産質一般について有効性を認めるというような具体的なニーズというのが考えられないというところが主な理由でありますし、やはり消費者被害等の誘引といいますか、発生というところも、この規定を変えることによって懸念されるためであります。 ○道垣内部会長 伊見さんから一つ御見解を頂きましたが、ほかにはいかがでしょうか。   これは昔から言われているやつで、梅先生は349条というのはそもそも反対されていますし、清算すればいいではないかという意見は昔から強いのですが、梅先生にしても我妻先生にしても、全体の解釈論としては強い個人というのを想定した解釈論を展開しますので、そうなるわけですね。それに対して、消費者被害が発生するのではないかという伊見さんの御発言は十分考えられるところなのですが、いかがでしょうか。   結構今まで【案3.1】の見解がこの部会では出ていたような気もするのですが、本日は御意見がないということでございまして、もう少し皆さん、お考えくださればと思います。   第4に関してはいかがでしょうか。所有権留保の実行。   特に御意見はございませんでしょうか。それでは、ここで「第5 債権譲渡担保権の実行」に入りたいところではあるのですが、ここは量としては多いところでございますので、少し無理かなと思います。また、本日から6時までとさせていただいたときに最初から6時半ぐらいまでやりますと、それなら6時半と言えよと言われても困りますので、本日は残念ながら、この辺りで終わらせていただければと思います。   それでは、本日の審議はこの程度にさせていただくことにいたしまして、次回の議事日程等について事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 本日も長い時間ありがとうございました。次回の日程は、7月11日火曜日の午後1時30分から午後6時まで、場所は法務省地下1階大会議室です。   次回は正式な日程ということになりますので、今日、一部積み残しということになりましたけれども、倒産手続における取扱いや集合債権譲渡担保権の実行などを扱いたいと思っております。 ○道垣内部会長 それでは、法制審議会担保法制部会の第34回会議を閉会にさせていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りましてありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。どうも失礼いたします。 −了− - 1 -