法制審議会 担保法制部会 第38回会議 議事録 第1 日 時  令和5年10月10日(火) 自 午後1時31分                       至 午後6時20分 第2 場 所  法務省地下1階・大会議室 第3 議 題  担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(6) 第4 議 事  (次のとおり) 議        事 ○道垣内部会長 オンラインを含めた御出席予定の方で、まだお見えでない方がいらっしゃるのですが、予定した時刻になりましたので、法制審議会担保法制部会の第38回会議を開会いたします。   本日は御多忙の中、御出席いただきまして誠にありがとうございます。   本日は、委員の倉部さん、松下さん並びに幹事の家原さんが御欠席と伺っております。また、加藤幹事が途中退席と伺っております。   まず、配布資料の説明をしていただきます。事務当局からお願いいたします。 ○笹井幹事 本日もよろしくお願いいたします。資料ですけれども、事前に部会資料34「担保法制の見直しに関する要綱案のとりまとめに向けた検討(6)」をお送りしました。部会資料34については、後ほど審議の中で事務当局から御説明いたします。 ○道垣内部会長 それでは、審議に入りたいと思いますが、前回の積み残しとなっておりました部会資料33の第5、動産譲渡登記における動産の特定方法等について議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○森下関係官 部会資料33の第5は、動産譲渡登記における動産の特定方法等についての提案になります。   1では、動産譲渡登記における動産の特定は動産の種類と動産の種類以外の任意の方法により動産を特定する事項により行うこととしています。これは、集合動産の特定方法として実体法上は所在場所を必須の要件としているわけではなく、有効に特定された内容を登記することができない場面が広く生ずるのは適切でないと考えるためです。   また、2では、任意の方法により動産を特定する事項について、登記官は実体法上求められる動産の特定の程度を満たしているかの審査は行わず、申請事項をそのまま登記することとしています。これは、形式的審査権限しか有しない登記官が申請事項の内容について実体法上求められる動産の特定性を満たしているかを実質的に審査することが困難であるためです。   以上について御審議をお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。 ○伊見委員 伊見です。まず、今回の御提案につきまして、今御説明がありましたとおり、昭和54年の最高裁判例に照らしまして、そこで特定がされているというものにつきましては、そのまま登記に反映されるようにという方向性での御提案ということで、表現ぶりとしてはこの第5の1Aということになっていくのかなということで、理解はさせていただいたところではあります。   ただ一方で、動産でありますので、どこかに実在する有体物ということになれば、そのどこかという場所的な要素というのは、実務の感覚から申し上げますと、やはり動産特定事項の一つとして果たす役割は大きいと思っておりますし、所在場所による特定がやはり最も安定するとも感じているところであります。ですので、このAのところで所在ですとか場所といった言葉が一切出てこないということで、全て任意というふうな規定ぶりにすることが果たしてよいのかというところが少し気になりました。   例えばでありますけれども、所在場所その他の動産特定事項といった形での例示のような形で、所在場所による特定というものが、なお中心的な要素としての役割を果たすというようなメッセージをどこかに残していただきたいという要望でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   今の点でも結構でございますし、ほかに御意見がございましたら、お願いします。ここに事務局の整理として出ておりますのは、ただ単に任意の方法により動産を特定すると書いてあるだけで、特に重要視されるような要素があるということは書いていないわけですが、場所という要件が中心になることは確かであるとするならば、必須とまではしなくても、「場所等」というふうな形で何らかその重要性を示すべきではないかという御意見が出たわけですが、その点についてはいかがでしょうか。 ○沖野委員 沖野です。一つの例として所在場所というのを挙げるという御提案に賛成です。この後も所在場所というのが利いてくるところがございますので、場所というのを飽くまで特定の一つの例として挙げるというのは意味のあることではないかと思っております。なお、保管場所ではなく所在場所というのがよろしいと思っております。 ○道垣内部会長 沖野さんがおっしゃるのは、「等」なのですか。伊見さんの御発言は、所在場所がなくて特定できる場合は、その方法でも構わないけれども、重要性を示すために一応それを例示として書くというものだったのですが、沖野さんの御発言もそれと同じと考えてよろしいのでしょうか、それとも所在場所は必須ということですか。 ○沖野委員 いえ、例示としてということですので、その他のというような形になるかと思います。 ○道垣内部会長 分かりました。ほかに、いかがでしょうか。   別に混乱というか、紛糾させるつもりはないのですけれども、これまでの議論において結構問題となっておりましたのは、所在場所を指定しないで全ての在庫商品とかというふうな書き方をした場合にどうなるのかという話で、全ての在庫商品という特定の仕方が認められることになりましたよねという発言が、部会の途中であったこともありました。その点について、私は、そのようなコンセンサスは取れていませんとお答えした覚えがあります。つまり、その点についてそれでよいということを決めたことは、この部会ではなかったと思います。しかし、なかったのだけれども、それを認めるべきだという発言をされた方は何人かいらっしゃったわけです。しかるに、例示といえども所在場所等と書くことによって、所在場所が欠けたときにはやはり駄目だよねという方向に登記実務ないしは判例法理が移っていく可能性、登記実務はこれは審査しないということですから、判例法理においてそれが特定されていないというふうに動いてくる可能性というのが全くないとは言い切れないと思うのです。したがって、ずっと全在庫商品で構わないのだ、オールインベントリーで構わないのだとおっしゃっていた方からすると、私は今の伊見さん、沖野さんの発言に対して、それはいかんという意見が出てきてもおかしくないのではないかと思いながら伺っているのですが、よろしいでしょうか。いや、例示なのだから、そんなことにはならないでしょうと、例示としてはそう書いた方が分かりやすいよねということであれば、それはそれでよろしいのですが。 ○青木(則)幹事 個人的にはオールイベントリーでいいのではないかと思ってはいるのですが、前回の御議論との関係で少し気になったのは、購入代金の優先について、加入時説みたいなもので調整をとっていくという御提案がありましたので、そういうシステムを残すのであれば、やはり場所からは離れられないのかなと、それが限界かなとも少し感じたところがございます。個人的にはもう少し、場所を特定しないような、在庫商品という類型としての目的物の特定方法というのも認められる方向で議論されればいいなと思ってはいたのですが、現状の制度設計としては仕方がないかなと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。もちろんそう書いたからといって、オールインベントリーというふうな特定の仕方が当然に認められないということになるわけではないわけであって、飽くまで例示であるということなのですが、例示としては書いた方が分かりやすいということが皆さんのコンセンサスとして成り立っていると考えてよろしゅうございますでしょうか。   それでは、別にその点にかかわらず、第5全体について、ほかに何かございますでしょうか。   これは、ここで誰に質問するというわけではないのですが、特定されているかどうかというのは契約解釈の問題なのだろうか、それとも登記面解釈の問題なのだろうかというのが実は若干気になっています。つまり、もちろん、登記面から解釈されるよりも実体的には狭い範囲にしか担保が設定されていなければ、それは後者の狭い範囲にしか担保は成立していないわけですから、幾ら登記面上にそれ以上広く書いたとしても担保の成立範囲が登記面上の記載によって決まることにはなりません。登記面の解釈の方が優先するということは、これは理論的にないわけですね。 ○井上委員 井上です。きちんと問題を把握できているかどうか分からないのですけれども、実体法上比較的具体的に特定されているときに、登記手続上対象範囲を広く申請した場合に、広いけれども概念的に特定されている場合と、概念的にすら特定されていない場合で、異なる争いが生ずることはあるかなと思いました。 ○道垣内部会長 そうですね、後者の場合には、これは対抗要件は具備されていないことになるのですね。 ○井上委員 そこが議論の対象になり得ると思ったのですけれども、実体法上具体的に特定されている対象を含むことが明らかであるけれども、外縁は不明確である登記がなされたときの登記の効力はどうなるのでしょうか。 ○道垣内部会長 それは一般理論ですかね。私がぼんやりと思った疑問を井上さんが精緻にきちんと整理していただきまして、私が申し上げたかったことは正に井上さんがおっしゃったとおりなのですが、それはここで決めるべき問題ではないということでしょうかね。よろしゅうございますか。   ただ一言だけ申しますと、実は、根抵当権の被担保債権の範囲に関する平成5年1月19日の最高裁判決がありまして、当該事案における「信用金庫取引による債権」という言葉をどのように解釈するかについて、登記に表象される物権行為の問題だから、登記面の記載で判断されるのだという学説の主張、あるいは、最高裁判決に対する理解としての主張がありまして、若干、登記面上の記載と実体的な合意との関係については残された問題があるような気がしております。まあ、しかし、ここで決めるべき問題ではないのでしょうね。   それでは、第5につきましてはさほど御異論がないということで、積み残し分を終わりまして、部会資料第34、今回の資料ですが、第1の「1 処分清算方式による動産譲渡担保権の実行の効果の発生時期」についての議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、第1の「1 処分清算方式による動産譲渡担保権の実行の効果の発生時期」について御説明いたします。   ここでは、処分清算方式により動産譲渡担保権を実行した場合において、被担保債権の消滅等の効果が発生する時点を、所有権移転時期と契約締結時のいずれとするかという問題を取り上げています。   従前の部会資料では、「動産譲渡担保権者がその目的である動産を譲渡したとき」に被担保債権の消滅等の効果が発生するものとしていました。一般に、「譲渡」とは、権利、財産、法律上の地位等を他人に移転することをいうとされているため、「譲渡したとき」という規定を設けた場合には、所有権の移転時期、すなわち特約がなければ契約締結時、特約がある場合は特約により定められた所有権の移転時期に、被担保債権の消滅等の効果が生ずるという解釈が自然であると考えられます。   他方で、処分清算方式による私的実行は、目的物の換価価値を第三者からの対価という形で取得して被担保債権を回収する実行方法であるところ、契約締結によって担保権者が売買代金債権を取得していることなどからすれば、動産譲渡担保権者が第三者との間で目的である動産を譲渡する旨の合意をしたときに、被担保債権の消滅等の効果が生ずるものとすることも考えられます。   そこで、本文では、処分清算方式による動産譲渡担保権の実行における被担保債権の消滅時期について、目的物を譲渡したときとする考え方と、目的物を譲渡する旨の合意をしたときとする考え方を併記しています。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ここでお詫びを申し上げなければいけないのですが、だんだん審議も最終局面に近付いてきておりまして、伊見さん、沖野さんから出された、所在場所等という例示を書くということについての意見分布は確認しておかないと、今後困ると思うのです。そこで、議論を少し元に戻させてください。事務局として、そのような例示を書くということについては、まず、どのようにお考えですか。 ○笹井幹事 最終的な条文については引き続き検討していきたいと思いますけれども、一般論として、伊見委員、沖野委員から御指摘がありましたように、特定のために必要な要素にはいろいろなものがあり得るとしても、現行の実務などに鑑みますと、場所的な要素が大きなファクターになることは今後も変わらないだろうと思います。そういった位置付けが、所在場所と呼ぶのか保管場所というのか、所在場所の方がよいという御意見もありましたけれども、そういったものの重要性に鑑みて、飽くまで例示ではありますけれども、条文上明記することについては、今後考えていきたいと思っております。 ○道垣内部会長 それでは、そういう可能性あり得べしということでお考えいただくということで、よろしゅうございますか。私のまとめ方が下手で、申し訳ございませんでした。   それでは、既に34の第1の1について御説明いただきましたので、議論をそちらに戻したいと思います。この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○阪口幹事 すみません、どなたからも意見が出ないのであれば、この部分に関しては2点申し上げたいことがあります。   まず一つ目は、契約締結時か所有権移転時期かという形で問題提起されているのは実体法の問題として捉えられていると思いますけれども、実行手続と考えたら、実体法ではなく執行法の問題という考え方も十分あり得るところではないかと思います。そうすると、不動産競売における民事執行法79条のように、代金を納付したときに所有権が移転するということは十分考え得ることではないか。説明の中にも強行規定と考えられる旨が最後の方に書かれておりますけれども、執行手続だとすれば強行法規になるのが自然ということから考えても、執行法の問題として捉える方が妥当なのかなと思います。そう考えると、譲渡したときか合意の時点かと二者択一だったら私は譲渡時、物権変動時だと思いますけれども、それは正に代金納付時だから、というような捉え方をすべきではないかと思っているのが1点目です。   2点目は、ここで問題提起されていることの前提の方が問題が大きいということです。つまり、以前から、受戻しができる時期について、前の時間を採るのか後ろの時間を採るのかという議論がずっとされていて、部会資料30では、後ろに時間を採る提案もされているけれども、そこが決まらないと、ここの議論も決まらないと思います。なおかつ、受戻権の行使可能時期を後ろ倒しにする議論について、その効果に関する認識が少しずれているように思われ、そうだとすると大分議論状況も異なってくるので、少しそのことも申し上げたい。   というのは、受戻権というと、伝統的、典型的な理解は、まだ別除権状態だということを前提とするものです。だから中止命令の対象になるし、更に担保権消滅請求の対象になるという議論があるわけですけれども、第35回会議で、いや、ここで帰属清算・処分清算された後に受戻権があるとしても、中止命令の対象とするのは特別に対象にするだけであって、担保権消滅請求の対象にならないという御意見が一部ありました。そうだとすると、それは受戻権ダッシュという表現がいいか分かりませんけれども、典型的に言われている受戻しとは大分違う状態になってしまう。そこの議論をもう一度やらないとここの議論が確定しないということを2点目として申し上げたいと思います。 ○道垣内部会長 今の後半は、特に全体構造に係りますので、重要な話なのですけれども、お二人手が挙がっておりますので、お話を伺った後にまとめて、また検討したいと思います。 ○日比野委員 みずほ銀行の日比野でございます。この点ですが、銀行実務の立場からすると、やはり対価が入ってきたところで被担保債権が消滅するというのが一番分かりやすいと思っておりました。そういった意味でいうと、譲渡ということなのですけれども、今、阪口先生の方から、譲渡のときなのか、あるいは代金納付のタイミングというのは、論理的には違う場合があるとおっしゃっていただきました。それはそうかなと思ったのですけれども、実務的にはその二つが一致しない処分清算の契約を結ぶということは、まずないかと思いますので、金融機関の立場すると、譲渡ということがよいかなと考えておりました。   特に、これは裁判所を通じた手続ではございませんので、そのような観点からも、代金が入ってくることの確実性をもって被担保債権の消滅ということで考える方が、実務サイドとすると、整理がしやすいのかなと考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○大澤委員 大澤でございます。私も今のお二人と完全同じ論点の話をしようと思っていたので、あれですが、まず、最初の動産を第三者に譲渡したときと、動産を譲渡する合意をしたときのいずれかという問題提起に対しては、多分そこではなくて、実務的には担保実行をしましたという実行手続の中での一連の動産の移動ということですので、通常のいわゆる民法178条の譲渡ということをここで持ってこなくてもよいのではないかと、むしろ、阪口先生もおっしゃいましたけれども、執行的な要素の方が大きいわけですから、やはり代金納付、あるいは対価が入ってきたときというときの話ではないかというのが私の考えです。   もう一つは、もう阪口先生がおっしゃられましたので、繰り返し申し述べるつもりはございませんけれども、そもそもの受戻しとの関係でというような形で、部会資料の2ページの34行目以降からお話がありますけれども、その受戻しの性格をどう考えるのか、それが倒産手続との接続でどうなるのかというところがはっきり確定しているわけではないものですから、第1の1ということについても、そことの関連をきちんと整理をした上で、この1について再度お考えいただいた方がよいのではないかと考えました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   執行に近いという話なのですが、裁判所による執行をしたときに、裁判所が買受人に対して支払は月賦でいいからと言うことはあり得ないですよね。処分清算のときもあり得ないと考えてよろしいのでしょうか。双方を簡単に同じだとはいえないというような気がしたのですけれども。お願いします。 ○阪口幹事 阪口です。処分清算で分割払いを実務的に見たことはないです。もちろん観念的にはあり得ると思いますけれども、買受人としても考えられないし、また担保権者としても、部外者といいますか、全くの第三者との間であえてそのようなことをすることは普通は考えられないと思います。 ○道垣内部会長 実務的には月賦なんて見たことないという話なのですが、それはそうなのだけれども、法文を作るとき、理論的に代金の納付のときに移りますといったときに、代金の納付というのが一括して支払われるということを完全に前提にする制度設計と、本当はいろいろあり得るよねという制度設計とは、少しどうも違うような気がして、例えば1年後という支払約束をした場合にはどうなるのだろうかとか、いろいろ気にはなるのですけれども、もう少し整理したいと思います。 ○阿部幹事 私も今のお話に関係する話なのですけれども、不動産譲渡担保に関する最判平成6年2月22日の事案は、担保権者が目的物を贈与したケースでした。その場合に、贈与後の受戻しはできないと判断されていて、そのときも、贈与であってもそれは一種の処分清算なのだという発想でやっていると思うのですけれども、贈与だと対価の支払はないですよね。処分清算の処分が売買であるという保証はないような気がいたしまして、贈与に限らず、交換等も観念的にはあるのかもしれないです。だから、代金が入ってきたときという書き方をすると、それは売買の形で処分が行われるということが前提になってしまって、少し狭いのかなというような気もいたしました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。その点はそうではないかと思うのですが、中止命令との関係で、一応お書きになっていますけれども、どういうふうに考えるのかというのがまだはっきりしないところがあるのではないかということにつきまして、事務局から何かございましたら、お願いいたします。 ○笹井幹事 そうですね、受戻権構成にするのか、担保権の消滅時期というか被担保債権の消滅時期を全体的に遅らせるのかという問題は、また改めて議論をしたいと思っておりますけれども、ここの話はそれと直接関連するとは余り思っておりません。債務の消滅が所有権移転時期だと考えれば、所有権移転時期までは少なくとも実行が終わっていないというだけなのかなと思います。そういうふうに考えれば、少なくとも処分の契約をした時点で債務が消滅すると考えるよりは、実行の終了時点が遅くなるので、そういう意味で、担保権設定者側からすると、比較の問題としては、所有権移転時期に実行が終了すると考えた方が、被担保債務を弁済して目的財産を取り戻すことができる期間は長くなるとは考えておりましたけれども、それとこの問題とは直接は関係していないのかなという認識ではおりました。 ○道垣内部会長 ほかに御意見はございませんでしょうか。 ○藤澤幹事 藤澤です。今のお話とは少し論点がずれてしまうのですけれども、こちらの資料の30行目以降に書かれているところについて、少し質問させていただきたいと思いました。   30行目の後半部分から、第三者の債務不履行を理由として契約を解除することによって処分清算の効果を消滅させ、被担保債権を復活させることができると書かれているのですけれども、より議論の射程を少し広げて、処分清算の場合に第三者に対して譲渡が行われた、その譲渡の基礎となった契約の解除が、常に処分清算の効果を覆すのかどうかという、前提を確認させていただきたいと思いました。   ここでは第三者がお金を払ってくれなかったという場面なので、なるほどと思ったのですけれども、他方で譲渡担保権者の側の何らかの債務不履行ですとか目的物の瑕疵といったものが原因として契約が解除された場合にも、処分清算の効果に影響が及んでくるのでしょうか。契約不適合責任ですと競売についての条文がありますけれども、そういった条文を準用するなどして、この場面について少しルールを用意しておく必要はないかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。少し具体的に、欠陥があって、それによって相手方から解除されたというふうな場合には、どういうふうになるというのが筋であると藤澤さんはお考えですか。 ○藤澤幹事 欠陥の場合には、実は目的物の評価額等に影響を与える事情なのではないかというような気もしていて、処分清算の効果を完全にひっくり返してしまうというような形の解決ですと、譲渡担保権設定者にとって、被担保債権が消滅したのか、していないのか分からないような状況が続いてしまうことになりますので、評価額の問題の中に解消できるのであれば、その問題にしてしまった方がいいような気もしております。他方で、権利の瑕疵については、契約不適合責任の競売の条文がありますので、それと同じように解決するのかなとか、少し難しいと思っています。 ○道垣内部会長 そうですね。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。今の部分ですが、契約不適合等による契約の解除、覆滅という問題につきましては、譲渡と考えても合意と考えても同じように問題となる点かと思います。この点を取り上げることが、譲渡か合意かどちらなのかということを考える上で決定的な要素ではないような気もいたします。ここでどういう趣旨でこの点が書かれているのか分からなくなったところですので、質問させていただきました。 ○道垣内部会長 今の中の質問事項は何でしょうか。 ○片山委員 解除をすることによって被担保債権の復活ということができるという、この問題は、譲渡と解しても出てきますし、それから、何のためにここで論じているのかがよく分からなくなってきたのでその点を確認したいということです。 ○道垣内部会長 いかがですか。 ○笹井幹事 これは、もし所有権移転を待たずして合意の時点で被担保債権が実行によって消滅するとすると、それで担保権も消えてしまうということになるのですけれども、債権があるからいいではないかということで、被担保債権が消えてしまうということになると、実際問題として、処分が売買であったときに、その相手方から代金の支払を得られなかったときに、被担保債権ももう消えているし、そうすると、もう頼るものは売買代金債権しかないのだけれども、それが履行されなかった場合に担保権者が不利益になるのではないかという批判があり得るのではないかと考えて、それに対する反論として、ここに書いたということです。 ○片山委員 合意と譲渡の間に起こり得るということを想定しているということですね。 ○笹井幹事 そうですね、そういう意味では。   続けてよろしいでしょうか。今、藤澤幹事からの御指摘の点については、568条が確かにありますので、ここで私的実行についても568条を適用するのかどうかということは、一応考えてはみたのですけれども、処分清算における処分が常に私的実行であるということを示して行われるかというと、そのこと自体は法律上は要件とされているわけではなくて、第三者に対する関係では通常の売買ということもあり得るのだと思います。そうすると、相手方のことを考えると、ここで568条のような規定を新たに設けるということが本当に適切なのかというのは、やや疑問に感じましたので、こちらでは568条のような特別な規定はないという前提で書いております。   その上で、瑕疵があったりとか、引き渡す前にどちらにも帰責事由がない形で、あるいはどちらかに帰責事由がある形で滅失したとか、そういった場面というのは当然あり得るだろうと思います。そのときに、滅失した場合は別ですけれども、契約不適合があった場合にどうするかという問題は出てくるのですが、その際に藤澤幹事がおっしゃったように評価額の問題として、結局最終的な清算金が幾らであるのかというところで解消するというのが一つの方法だろうと思っておりました。   ただ、それでは相手方としては契約目的を達成することができないということは当然あり得るところですので、その場合に解除まで否定されるのかというと、やはり相手方から見ると解除権を行使したいという場面はあるだろうと思いますし、それが軽微とはいえない不適合である場合には、やはり解除権は認めざるを得ないのかなというのが、今のこちらで考えていたところです。 ○道垣内部会長 決め手が私もよく分からないのですけれども、何か御意見はございませんでしょうか。   受戻し等との関係でいうと、中止命令かもしれませんが、どの時点で被担保債権が消滅したと考えるのかというのは決定的ではなく、被担保債権が消滅して、一応関係が終了しているのだけれども、なお一定額を支払うことによって受戻しというのが認められるという制度設計も十分にあり得るわけなので、ここの論点が、その受戻しの問題とか中止命令とか、そういう問題について決定的に片方に決めることになるかというと、それはそうではないというのが事務局の説明だったと思うのですが、皆さんの御理解として、よろしゅうございますか。 ○井上委員 井上です。受戻権といったときに、被担保債権額を弁済して物を取り戻すという意味合いで捉えれば、別の問題だというのは事務局の御説明のとおりだと思うのですけれども、現実の問題として、履行期に被担保債権に係る債務を弁済できない債務者が、急に弁済資金を調達することは現実には非常に考えにくくて、実際には、受戻権がある状態ということの意味は、既に何人かの委員がおっしゃいましたけれども、倒産手続の開始を申し立てて中止命令が取れる、その上で担保権が別除権として残っているから別除権協定の交渉に入ることができる、担保権消滅許可の対象になるといった辺りがセットになって、交渉事になるといいますか、物のその時点の時価を協議して合意に達することが想定されるのだと思います。その時点に至ると通常は被担保債権全額を払えという話ではなくなることもあり、そういった交渉につながるということであれば、受戻し時期の後倒しには大きな意味があるのだと思いますが、担保権消滅許可の対象にはならない、あるいは、別除権自体がなくなり、別除権協定の交渉にはつながりにくい法律構成になるとすると、受戻権だけが後倒しになり、被担保債権全額を払えば受け戻せることだけが認められても、それほど大きな意味がないのではないかということです。そのような観点から、この辺りとセットで議論したいという意見が出てくるのだと理解しております。 ○道垣内部会長 どうしますかね、どうまとめればいいのか、少し困っているのですけれども。契約時というのはやはり早いということについてはコンセンサスがあるのですかね、そうでもない。 ○井上委員 井上ですが、契約時は早すぎるという意見が大宗かなと考えております。 ○道垣内部会長 しかし、そうすると所有権の移転時期、それが代金の完済ということ、代金の支払いというのと結び付くという話はあったのだけれども、しかし実際、目的物を担保権者の第三者に対する債務の代物弁済の目的物として使ってもいいのだし、贈与にしてもいいはずであって、そうすると、代金完済とかそういうのと結び付かないというのは、阿部さんも指摘されたけれども、そのとおりだと思うのです。そうなると、それとは無関係な、やはり所有権移転時期という話になり、かつ解除については、所有権移転はなかったと、ある種の、急に大学の民法学者になりますが、直接効果説を前提にして考えるという話になって、間接効果で逆に戻るのではなくて、所有権移転自体がなかったのだと考えるというのを前提にして、契約不適合責任であって解除したときには、そもそも何もなかったというところから始まると、そういうことですね。 ○笹井幹事 そういうことだと考えておりました。 ○道垣内部会長 それはそうなるかな。 ○笹井幹事 一つよろしいでしょうか。   事務当局としてここを特にどちらにしたいとか、どちらでいないといけないということはございませんで、率直に言うと、所有権移転と被担保債権の消滅というのが常に結び付くものではないのではないかとは思っておりましたけれども、ただ、譲渡の合意時期だけでは遅いというのであれば、もう少し考えてみたいと思います。   そのときに、基本的に実務的にはないと私たちも思っておりますけれども、ただ、例えば分割弁済をするということも理屈の上では不可能ではありませんので、例えば10回払いのうちの10回全部を払わないと担保権の実行としては終わらないというような法制を採った場合に、8回払ったところで債務者が弁済してきたと、そのときに8回分は被担保債権に充当されているのか、充当されているとすると、残りの2回だけを債務者が払えば受け戻せるのかというと、やはりそれは不当な結論だろうと思います。   そうすると、最後まで8回分の弁済はやはり充当しないということでよいのか、そうすると、8回分については受け取った担保権者がその相手方に対して返済しないといけないと、債務不履行というか、社会通念上で履行不能になって、解除されて返すのかもしれませんけれども、そういった場合の無資力リスクを相手方が負うことになるかと思いますので、それでよいのかという辺りが、そこは政策判断かもしれませんけれども、そういった問題が出てくるのかなと思いました。差し当たりは以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。日比野さんが最初におっしゃった話を1個だけ確認したいのですが、銀行実務として、お金が入ってきて、その所有権が移転したと、その時期に消滅するというのが筋としてはよく分かるという御発言が最初にあったと思うのですが、逆に担保権者の立場として、まだ受戻すかもしれない、受戻し時期とは一応別の話だといいながら、そういう言い方をするのはよくないのですが、売買契約というものが非常に浮動的なものであるということになりますと、処分の相手方が登場しにくい、そういう問題点はないのですか。 ○日比野委員 みずほ銀行の日比野でございます。御指摘の点は、それはそれで別途ある問題なのだろうとは思っております。そこを余り踏み込まなかったのは、個別具体的な場面における取引としては、そのような処分清算の相手方はある程度その可能性というのを見込んで取引をすることになるのかなと思ったので、そこまでは踏み込まなかったのですけれども、論理的にはやはりその点によって譲受人の探索が難しくなるという問題は現実的にはあろうかとは思います。今それを述べると議論が錯綜しすぎるかなと思って、どうしようかと思っておりました。 ○道垣内部会長 すみません。   ほかに何かございますか。   それでは、最初に阪口さん、大澤さんの方から話が出まして、例えば倒産時に管財人がどこまでできるのかという、その時期との関係で、所有権移転とか被担保債権の消滅とか、そういうプロセスをどう考えるのかということが問題であると、そこをはっきりしないと議論がしにくいのではないかという話だったと思います。それは必然的に関係するかどうかというのはともかく、時系列としては整理してみないといけないところだとは思いますので、今日の皆さんの御発言を踏まえて、中止命令とか受戻し時期とかの問題と併せて、少し時系列的に整理をしていただいて、もう1回、最後かどうか分かりませんが、確認をさせていただくということで、ひとまず今日はこの辺りでとどめるということでよろしゅうございましょうか。今一歩、問題の所在というものに対してのコンセンサスみたいなものも十分にとれていないような気もいたしますので、いろいろな御意見がございましたら、事務局や私の方でも結構でございますので、お寄せいただければと思います。少し先に進んで、また必要がありましたら戻るということにしたいと思います。   それでは、次に第1の「2 集合動産譲渡担保権の特定範囲に属する動産の分別管理」について議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「2 集合動産譲渡担保権の特定範囲に属する動産の分別管理」について御説明いたします。   集合動産譲渡担保については、実行通知が設定者に到達した時に固定化が生じ、その到達後に特定範囲に属するに至った動産に担保の効力が及ばないとの規律を御提案しており、従前の部会資料では、これに対する例外として、実行通知の到達後に特定範囲に属するに至った動産であっても、実行通知の到達時に特定範囲に属していた動産と分別管理されていない場合には、その動産に担保の効力が及ぶとの実体法上のルールを設けることを御提案していました。   もっとも、ここでの問題は、執行に際して担保権の効力が及ぶ動産と及ばない動産を区別できないことによって、強制執行又は差押えが執行不能となってしまうことにあると考えられます。そうすると、そのような実体法上のルールを設けなくとも、分別管理されていない動産は実行通知の到達時に特定範囲に属していたものと推定する旨のルールを設けるのであれば、執行官は分別管理されていない動産も含めて執行の対象とすることができることとなり、実行手続に支障が生ずる事態を避けることができるように思われます。   そこで、本文では、信託法34条1項も参考として、実行通知の到達後に、特定範囲に属する動産が、実行通知の到達時に特定範囲に属していたものとそうでないものとを外形上区別することができる状態で保管する方法により分別して管理されていないときは、各動産は実行通知が到達した時に特定範囲に属していたものと推定することを御提案しています。効果が推定にすぎないため、担保権設定者は、例えば在庫の管理や納品に関する書類によって、特定の在庫商品には担保権が及んでいないことを反証することが可能であり、これによって当事者間の利害を適切に調整することも可能であると考えられます。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと存じます。 ○阪口幹事 すみません、阪口です。部会資料の3頁から4頁にかけての部分で書かれている立証について、少し確認をしたいのです。というのは、以前34回会議のときに井上先生から、実行通知のあった段階で倉庫に80個入っています、その後20個入ってきました、その20個というのが、例えば段ボール箱にシールが貼られていて、実行通知後のものだと明確に分かるならば、これは立証されたと言えるだろう、ところが、そういうことは実務的にはかなり少なくて、大部分は、どの20個が後から入った20個かは分からないのだけれども、でも、実行通知当時80個だったこと、及び、今100個であることは間違いないという状態が、実務上一番起きることだと思います。動産売買先取特権でいつも問題になる対象物の特定の局面です。これを、実行通知到達時80個だったことは間違いないのだから、担保権者が実行できるのは80個の限度だよという意味で立証されたと考えるのか、いや、どの20個が後から入ってきたか分からない以上、立証されていないかと考えるのかによって、理論的には同じかも分かりませんけれども、実務的には大分違います。   なので、まずここで考えられているのが、そういう個々の動産について後日搬入であることの立証まで要求する趣旨なのかを事務局にお考えをお聞きしたい。もしそこまで行くべきだというのだったら、むしろもう一歩進んで、元々の部会資料31の提案にあったように、反証も何もなく、効果が及ぶという議論も、極端に言うと、あってもいいのかも分かりません。どこまでの立証を要求するということを提案されているものなのかをお教えいただけますでしょうか。 ○工藤関係官 今お話しされた事例は、一個一個の識別はおよそ不能であるという事例かと思います。その場合ですと、分別管理はされていないということで、まず、推定ルールの適用はあり、それに対して、推定をひっくり返すことができるかが問題になってくると思うのですけれども、やはりその場合には、設定者側としては一個一個これは後から入ってきたものですということを立証していかなければいけないということになるかと思っておりまして、そういう意味では、やはり識別不能の場合には推定をひっくり返すことはなかなか難しいという結論になってしまうかと思います。   ここでこの推定をひっくり返す場面として具体的に想定しておりましたのは、例えば、帳簿を引っ張り出してきて一個一個照らし合わせていけば一応識別はできると、ただ、やはり時間的に現実的でないということもあったりして、まとめて執行がされてしまったというときに、設定者としては後から、この帳簿と照らし合わせると、それは後から入ってきたものですよということで、それを返してくださいと言ったりですとか、差押えについて異議を申し立てたりするということを想定しておりました。 ○道垣内部会長 しかし、それを混和が生じていると考えたときに、例えば信託法上だと、両方とも受託者所有の財産なのだけれども、信託財産と固有財産は別の所有者に属するものとして混和の規定を適用するとなっていますので、信託財産に属する財産としては混和財産に対する割合的な権利になるのではないかと思うのです。それが、例えばこの担保のときに、担保権者の権利が及んでいる財産とそうでないものが混和したときに、別の所有者に属するものとして処理をするということにはしないということが今の御発言には含まれているということなのでしょうか。 ○工藤関係官 混和の規定が適用されるかどうか自体、一つの論点だとは思うのですけれども、率直に結論から言いますと、混和の規定が適用されてしまって、それぞれの当事者に持分がそれぞれ帰属するというのは、かなり不合理な事態であるように思っておりまして、結論としては混和の規定が適用されないという方向に持って行くべきではないかとは思っておりました。 ○道垣内部会長 なぜ不合理なのですか。 ○工藤関係官 恐らくその場合には、集合動産内の個別の一個一個の物について担保権者と設定者にそれぞれ持分が帰属するという形になりまして、そうすると、なかなかその後の処理というのが難しくなっていくのではないかとは思っておりました。 ○道垣内部会長 それは、同種のものが混和したときの分離の方法について、混合寄託の条文のような処理ができるかどうかという解釈論の話で、できるということになったら、それは8割を持っていけばよいという話になるわけですよね。だから、不合理だというときの前提として、個々の動産について10分の8が譲渡担保の目的になっているという状態になるのだという前提を採ってしまうと、確かにそれは面倒だよねという話になってしまうのだけれども、それは必然的ではないような気がします。もっとも、私が今言っているのが必然的な結論なのかというと、それはそうではない。結局、阪口さんがおっしゃっているような問題をどう解決するのかで、そこを解決しなければならない。増えた20個がそれなのか特定できなくでも、20個増えたことは明らかなのだから、80個分だけ権利が及ぶとするというふうにするのであれば、混和の規定を適用した上で、分離に当たって混合寄託的な処理ができるのだということを、解釈論になるのか条文になるのか分からないですが、考えるということであり、やはりどちらが適切かという話が先行した方がいいのではないかという気がするのですが、それは違うのですか。 ○笹井幹事 その問題について事務当局内で十分に検討したわけではありませんけれども、そういう意味では私の個人的な見解になるかもしれませんが、混和の条文が適用されるかどうかということについては、担保が及んでいるものと及んでいないものの混和だけではなくて、いろいろなところで混和に関する規定が適用されるのか、されないのかということは問題になるのだろうと思います。   そうしますと、ここでだけ規定を設けるというのはなかなか難しいといいますか、何が望ましいのかということをこの場面だけを念頭に置いて決めてよいのかどうかという問題はあるのかなと思います。そういう意味では、混和に関する規定というのは飽くまで解釈に委ねざるを得ないのかなと今のところは感じておりまして、ただ、仮に混和に関する規定が適用されるということになれば、それは第1の2の問題とはまた別のところで解決ができるということになりますので、その推定というのが、先ほど阪口幹事がおっしゃった例でいうと、100個丸々ではなくて80個だけしか到達時点にはなかったのだということが判明できれば、それを前提に混和の規定が適用されるということになるでしょうし、その場面で混和の規定を適用するのは難しいということになれば、個別の立証ができない限りはその推定がそのまま残ってしまうということになるのだと思います。   いずれにしても混和の規定が適用されるか、されないかという問題は、されれば2の適用範囲が狭くなったりするという話であって、2の規定は2の規定として置いておきつつ、混和に関する規定の適用については今後の解釈論に委ねるということもあり得るのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ということになりますと、阪口さんが出されたような例でも推定することはあり得て、100個あるけれども80個が実行通知の到達時だったのですということが設定者側の方で言えなければ、100個が全部担保の目的物になるわけですよね。したがって、この条文は適用されるのだけれども、その後に80個だったのだということが証明できた場合に、その後どうなるのかというのは、混和の規定が適用されて持分になって、しかし混合寄託のように80個を持っていけばよいということになるとしても、それはこの担保のところにだけ当てはまるような解釈論ではなくて、様々なところで問題となる解釈論なので、そういうふうな解釈論が一般論として認められるということになれば、この部分にも適用されるとなるだけであって、この部分に書くような話ではないのではないのということなのですよね、多分。 ○井上委員 ありがとうございます。今回の御提案は、正に今御説明いただいたとおり、執行官が執行するに際して、外形上区別することができる状態で保管していないときは全体に及ぶということなので、ここはそれでいいのだと思うのです。帳簿上区別されているかどうかにかかわらず、外形上区別されているかどうかで、取りあえずは、区別されていなければ全部執行できるということです。ただ、その反論としては、一個一個について対象か否かを特定しなければいけないとは思っていなくて、正に阪口先生がおっしゃったような場面を想定して、そこは混和の規定の適用なり、そこから先の簡易な共有物の分割なのか、混合寄託の法理なのか、何らかの法理によって、結論としてはやはり帳簿上、実行通知の到達時に種類物が80あったところ、その後20増えて100になったことまで分かっているのに、なお反証できていないという結論は、むしろ不適切ではないかと思っていまして、帳簿上個数が明確であれば、そこは80にしか係っていけないという反証ができたと、推定が覆るという結論がよいと思います。   その結論をゴールとしたときに、今回そこまでは立法することは難しいと、我々のミッションの外であるということだとすれば、それはやむを得ないことなのかもしれないですけれども、少なくともここでの議論として、混和の法理なり何なりがこの場面においては適用され、今申しあげたような結論となるのではないかという方向がおおむね皆さんの中で共有できたらよいとは考えておりますので、そうではないという意見があれば、むしろ今ここで議論してもいいのかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかの方の御意見は。 ○村上委員 ありがとうございます。理論的なことはよく分からないのですけれども、本日御質問しようと思っていたところでした。実行通知の到達後に特定範囲に属することとなった動産には集合動産譲渡担保権は及ばないという規律は重要だと考えております。それをどのように条文などのルールに落としていくのかという議論だと思うのですが、先ほども御説明の中で強調されていたのは、動産執行の場面に着目して課題解決するというところでございまして、前回も一般債権者が害されるということに対する意見を申し上げたのですけれども、今回の御提案がそれに応えるものになっているのかということをお伺いしようと思っておりました。   今も議論を伺っておりますと、やはり後から入ってきたものであっても、かなり精緻に区分しておかないと担保権の範囲になってしまうということで、そうしたことからすると一般債権者の保護に本当につながっているのだろうかという疑問を持っております。どのようにすればよいのかというところまで御提案はできないのですけれども、結論として、一般債権者が不当に害されることのないようにしていただきたいという意見を持っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。推定を覆すための立証の方法を緩和しようというか、割合的な立証で構わないというふうなのも一つ、一般債権者あるいは他の債権者の保護のためという効果を持つのは持つのだろうと思いますけれども。   ほかにこの点について御意見はございませんでしょうか。   井上さんがおっしゃったことですが、執行官が行って、それで処理をしようといったときに、区別がされていなかったら、全部それはこの範囲に入っているものだとして処理をせざるを得ないというのは、これは当然だろうと思います。譲渡担保権者だとしても、常にモニタリングをしていない限りにおいては、行って、見て、引き渡せと主張するときには、そのときに区別なく並んでいたならば、それは全部そうだよねというのは、最初の段階では当たり前ですね。そして、その後に状況を覆すという方法について、どこまですれば覆せるのかということが、一つは物権法的な理論でどうなのかという問題と、もう一つは、村上さんがおっしゃったように、せっかく実行通知の到達後のものには及ばないということで一定の制約を掛けたのだから、なるべく実効的にその政策判断が機能するようにすべきであるという考え方を併せますと、割合的な反論でもいいのではないかということに結び付きそうなのですが、ただ、ここだけの問題ではないよねと言われると、そうかもしれないという感じはいたします。そして、井上さんのおっしゃるように、ここでの考え方の一致は条文化しないとしても残す、そして、それで満足するというのはソフトランディングとしてはいい話ではないかとも思います。けれども、皆そう考えていたよねという点についても、少しそれはおかしいのではないのという感じを事務局は持っているということですね。 ○笹井幹事 いえ、全く。 ○道垣内部会長 妥当でないとおっしゃったではないの。 ○笹井幹事 混和の問題についてはそういった問題が指摘されているということは認識しておりましたけれども、混和の規定の適用の範囲について事務局として何か考えを持っているわけではありませんので、議事録に何か残っていることについて、そこで発言を止めようとか、そういったことはございません。   私も最初はこれは個々に考えざるを得ないのかなと思っていたところがありまして、ここは十分に検討ができていなかったところもあろうかと思いますので、もし補足があれば御教示いただければと思いますけれども、執行法上その手続がうまく回るのかというところが、やや疑問に思っておりまして、ここは私の誤解かもしれませんけれども、今の民事執行法自体は、個々の個別の物について、それが執行の対象であるのか、ないのかということを考えているのかなと理解をしておりました。例えば100個のうちの80個を持っていけばよいということになった場合にどの80個を選べばいいのかを執行官がその現場で判断してくれるのか、その後の手続法上の問題も検討する必要があるのかなと思っていたところです。今日、お考えを承りましたので、少しその点も含めて更に検討してみたいと思っております。   もう一つ、村上委員からの御指摘ですけれども、ここは、前回の部会資料31においては、実体法上担保権が及ぶという規定になっておりましたので、分別されていなかった場合には全部及んでしまうということだったわけですけれども、実体法的に担保権が全部及んでしまうということではなくて、それを覆す余地を残したことになります。その意味では、実行通知が到達した時点以降には担保権が及ばないという実体法上のルールを実行の場面で反映させていく余地をより広げるような形で提案になると考えております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。ただ、執行官が見繕えないということになると、混合寄託についての強制執行は、一般的にできないということになってしまいませんか。そうすると、だまし討ちみたいな条文を民法でわざわざ書いていることになり、実は執行できないのですよというのは、それはどうかと思うけれども。 ○阪口幹事 すみません、今の執行上の問題とは別に、実務的にどういうことになるかということを少し考えてみたのですけれども、先ほど私が申し上げたのは、単純に実行通知時に80個、その後、何も出ずに20個入ってきたということなのですが、実際は恐らく、実行通知を受けても場所的分別をしないようなルーズな設定者は物を出してしまうのだと思うのです。そう考えたとき、例えば実行通知時に80個でした、20個入ってきました、でもまた20個出しました、10個かも分かりませんけれども、ということが何回か繰り返されて、最後に執行官がやってくるということになります。混和の規定がそのまま適用されたら、理屈の上では出し入れの都度、法律関係が決まって、出していったものは、割合的に、片方は担保権対象、片方は担保権対象でないとするのでしょうか。先ほどの例だと、最初は8対2の割合で出ていったと考えて、また計算して、残りはという割合をずっと計算していくことになるのではないかと思うのですけれども、それは複雑というか、順番が少し変わっただけで計算が変わるので、実際上は少し難しいのかなと思います。   もしそうであれば、出て入って、出て入ってというのが何回あっても、結論だけ見て、とにかく最初は80個だったのなら最後、80個までしかできないよという意味で、そういう意味の推定を働かせるということであれば解決できるかもしれない。つまり結論的に言うと、出ていったものは後から入ってきたものと推定することになりますが、そうやると、残ったものは全部及んでいるということはあるかもしれない。   ただ、いずれにせよ、今の混和の話もありましたけれども、実務的には、場所的に分別しないようなルーズな債務者の場合を考えたら、きれいに適用しようとすると結構大変なことにならないかなという気はします。元々、この推定という条文自身は僕もいいなと思ったのですけれども、先のような例を考えると何かややこしくならないかなという思いがあり、先ほどの笹井さんの話にもつながるのかも分かりませんけれども、だから、もし立証のハードルを非常に上げて、先ほどの割合的な計算は駄目です、そのときは100個全部効力が及ぶべきだという価値観が正しいとすれば、もうそこまで行くのだったら、元々の部会資料31の規律でいいのではないかとも思っていました。   ただ、今日の話を伺っていて、そこまではやはりやりすぎなのかな、担保権者が持っていけるのは80個までだよという価値観が妥当な気もしてきたので、少し迷っていますが、ただ、少なくともそういう、ここに何か出ていって入った、出ていって入ったというのをきちんと考えなければいけないということは避けた方がよいという気はします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。実はそれでも済まなくて、最初60個になった場合どうなるかというのがあるのですよね。80個が100個になった後にまた80個になったのならばいいのですが、80個のときに途中で60個になったということが証明されたら、そのときはどういう状態になったのかという問題が残ってきて、出ていったものは後から入ったものとみなすということだけでは実は解決しないのですね。これは御存じの方も多いと思うのですけれども、信託法に関連してすごく論じられた問題であり、英米の信託法においては、受託者は固有財産の方からまずは処分するのだと、マイナスになったときには信託財産の方から補充するのだと、そういう準則があるものですから、それで計算をするという仕組みになっているのです。ところが、日本は信託法の改正のときにもその条文は作らなかったわけであって、それははっきりしないままになっています。それを今度ここで作るというのはかなり、先ほどの混和についての特則を置く、特則かどうか分かりませんが、置くというよりは更にハードルが高い問題で、そうすると最終的にもう個々にした方がいいではないかという最初の事務局のお話になってくるのですけれども、問題状況はみんな共有しているのですが、事実としてそれをどういうふうにするのかというのはなかなか難しいかなと思いますが。   何かほかに御意見はございますか。どうするかというのはなかなか難しいのですけれども。   何かほかに御意見はございませんでしょうか。難しいという認識はみんな共有することができたような気もしますが。 ○井上委員 何度も申し訳ありません、井上です。今、部会長がおっしゃったような英米の解釈は、日本の信託においても解釈論として可能ではないかと個人的には思っているのですけれども、それも含めて、ここでもそういった解釈がなされ得るのではないかと期待しています。   ただ、民法の先生方がどなたも何もおっしゃらないということからすると、難しいということなのかもしれませんが、結論は、やはり80が一旦60に減った、それはある意味、固定化といいますか、実行の対象となって確定したものを、勝手に処分したことになるわけですから、その後に入ってきたものは、補充義務を履行したというか、その行動の評価としては補充したものと評価すべきだと思いますし、その後、更に増えた分については、それが帳簿上立証できれば、全体が100であって、どの20が増えたか分からなくても、先ほどの議論をしてもよいのかなという気がします。いろいろ、担保法で解決できない範囲の一般法に委ねられた範囲が相当広いのかもしれませんけれども、ただ、この局面では結構起こり得る問題だと思いますので、その意味ではこれを契機に、一般論ではありますけれども、何とか今申し上げたような結論が導かれる方向で議論の深化を期待したいと思います。 ○道垣内部会長 井上さんがまとめてくださったところで恐縮なのですけれども、通知後、80個のものが60個になったときに、担保権設定者が補充する意思を持って20個補充したとしても、それは担保権の対象になるのですかね。その時点における設定行為みたいな話になりますよね、悪かったと思っても。ですから、信託の受託者のときみたいに、この時点におけるというふうなことがないときには、途中の段階を考えると、信託財産を補充していったという解釈論が採れるのですけれども、この場面でそれが採れるかどうかというのは、信託法において受託者の取引について英米で採られているような解釈を採るかどうかよりも、更にもう1個、本当はハードルが高いところがあるのかなと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。若干別の視点になるかもしれませんが、ここで、分別管理ができていない場合には担保権者に有利に推定されるということなのですけれども、基本的には固定化をした後は、分別管理をすることが望ましいわけですから、分別管理をさせる方向で制度設計をしていいのではないかと考えます。その際に、担保権者が直ちに引渡しを受けることができない以上、基本的に分別管理が可能であるのは設定者ですから、設定者に分別管理義務を負わせて、設定者がもし分別管理を怠っている場合には、担保目的物の範囲に含まれると解されても仕方がない。もし担保権に含まれないようにするのであれば、設定者あるいは他の一般債権者の方で分別管理をきちんとやってくださいと、分別管理に関するインセンティブを設定者に持たせる制度設計が望ましいと思います。その点では、推定するということよりも、むしろ分別管理義務を負わせるとしてもいいのではないかと思いましたので、意見として述べさせていただきます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。皆がまとめてくださろうとしているところに茶々を入れて恐縮なのですけれども、設定者にそんなインセンティブはないですよね。ですから、どうかなと思いますが。 ○藤澤幹事 今、道垣内先生がおっしゃってくださったことと同じような話なのかもしれないのですけれども、一般的に言って、実行の局面ではなくて通常の場面でも、譲渡担保目的物とそうではないものとが交ざって識別不能になってしまうということはあり得るのだろうと思います。例えば、譲渡担保権者が特定の仕方を失敗してしまって、譲渡担保目的物と担保が付いていない物が識別不能な状態になったというような場面です。そういう場面で、例えばその動産が、譲渡担保権設定者の一般債権者によって差し押さえられたといった場合に、第三者異議訴訟によってその差押えを排除するためには、譲渡担保権者の側が「これは譲渡担保目的物なのです」ということを主張立証していかなくてはいけなくて、それに失敗すれば、この譲渡担保設定契約は特定性を欠いていて譲渡担保権は無効だと言われてしまったりとか、第三者異議が認められなかったりというようなことになるのだろうと思います。   それに対して、ここで提案されているルールというのは、一旦実行通知があると、譲渡担保権の効力が及ぶものとそれ以外のものとが混在してしまった場合に、譲渡担保権者の方が有利になるというか、証明しなくてよくなるというルールになっています。例えば、通知後に加入したものについて一般債権者が差押えを行った場合は、譲渡担保権者が第三者異議訴訟によってそれを排除しようと思ったら、通知後のものですということは証明しなくてよくなるという意味で、少し譲渡担保権者の方に優しくなっているように見えます。そうだとすると、それがなぜなのかということを説明できる必要があるのではないかと思っていまして、設定者による分別管理を推奨するためだという政策的な判断だとすれば、それが本当に実効的なものなのかということは考える必要があるかもしれないと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。ということになると、どうしたらいいですか。 ○藤澤幹事 私は実行通知の後の目的物を区別すること自体にそれほど賛成していないので、もしこの立場を採るならばということでお話し申し上げますと、実行通知を送ったのだったら、その時点でシールを貼りに行くとか、譲渡担保権者の方が頑張らないと駄目というルールにしておいた方が機能するのではないかと思った次第です。 ○道垣内部会長 なるほど。そういう御意見もありますが、ほかに何か。譲渡担保権者が貼るというときに、UCCにおける自力救済がどこまで認められるかということと関係して、倉庫なら倉庫に立ち入るという権利などをかなり広く認めるということになりますと、またそれも可能かもしれないのですが、そうなると自力救済に関する法制度全体の問題になってきます。UCCで自力救済を認めているのだから日本だって認めるべきではないかという意見は前々からあるのですが、実はアメリカ法では賃貸人の自力救済権限が結構広く認められているのですよね。そうすると、日本法において、賃貸人の自力救済権限は完全に否定して、担保権者にはありますよというところを正当化できるのかというのは、結果難しい問題がそこにはあるような気がいたします。なかなかどちらをやろうとしても難しい問題が多分あるのではないかと思いますが。   ほかにございますか。   まとめるようで恐縮でございますけれども、藤澤さんからのそういうお話はありましたけれども、2に書かれていること自体においてはさほど大きな反対はなかったのかもしれないと思います。ただ、では具体的にどうなるかということと、具体的にどうなるかを踏まえて、ではどこまでそれがルールとして今回書けるのかという問題については、なおいろいろな御意見があったような気がいたします。80に対して20加わった場合につきましても、個別的に反論できないのだからもう駄目だということも、最初は評判が悪かったのですが、それというのはある種、いろいろな物権法の論理というのを考えてみると仕方がないかもしれないというふうな認識も一部では示されたのかもしれないと思いますので、あるいはそういうふうな理解が復活すべきであるというのかもしれませんが、そこら辺を踏まえましてもう一度考えていただいて、どこまで書くべきなのか、書けるのかということにつきましても少し御検討いただいて、次の読会でお願いしたいと思いますが、よろしゅうございますでしょうか。   それでは、次に第1の「3 集合動産譲渡担保権の特定範囲に属する動産に対する保全処分若しくは引渡命令の執行又は強制執行若しくは動産競売に係る差押えによる固定化」について議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「3 集合動産譲渡担保権の特定範囲に属する動産に対する保全処分若しくは引渡命令の執行又は強制執行若しくは動産競売に係る差押えによる固定化」について御説明いたします。   従前の部会資料では、特定範囲に属する動産について、保全処分又は引渡命令の執行や動産競売又は動産執行による差押えがあった場合には、集合動産譲渡担保権は固定化するものとした上で、その固定化の範囲については、その執行又は差押えの対象が種類、所在場所等によって特定されている場合にはその範囲で固定化するとの考え方と、常に特定範囲全体が固定化するとの考え方を併記しておりました。   まず、固定化の範囲につきましては、必要以上に広く固定化を生じさせることは相当でないことからすると、これを限定することが相当であり、その限定の方法については、種類によって限定することは困難であるため、執行や差押えの対象とされた場所によって限定することが考えられます。そこで、【案1.1】及び【案1.2】のいずれにおいても、執行や差押えによる固定化の範囲は、その執行又は差押えにおいて、その目的である動産の所在する場所として特定された部分に限定することとしています。   次に、一般債権者の差押えにより固定化を生じさせるか否かについては、このように固定化の範囲を限定するのであれば固定化による弊害も限定的と考えられることなどを踏まえ、一般債権者の差押えによっても固定化が生ずるものとする【案1.1】と、固定化により担保権者、設定者及び一般債権者のそれぞれの利益が害されるおそれがあることを踏まえ、差押えによって直ちに固定化を生じさせるのではなく、担保権者が配当要求をした時に新規加入物に担保権の効力が及ばなくなり、設定者が配当要求があったことを知ったときに処分権限を失うものとする【案1.2】を併記しています。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。   大きく分けますと内容が二つございまして、固定化の範囲というのを執行とか差押えの場所で縛るというところがございます。特定範囲のうち、その決定の執行又は差押えにおいて、その目的である動産の所在する場所として特定された部分に属するに至った動産に及ばないということで、場所的な範囲で区切っているわけですが、まず、その点はいかがでしょうか。御異論はございませんか。   もう一つ大きな塊は、一般債権者による差押えでも直ちに固定化が生じるということですね。日比野さんお願いいたします。 ○日比野委員 みずほ銀行の日比野でございます。道垣内先生、一つ目の内容ということで、よろしいですか。 ○道垣内部会長 どちらでも結構です。 ○日比野委員 分かりました。一つ目の御指摘については、場所として特定されたものに限るというところは、大部分そうなのかなというような気もする一方で、それ以外の方法を全部認めないとルール化する必要までが本当にあるのかなということは、思っております。特に執行の場面では、個別の保管方法とか形態など、現場の工夫によって、何か場所以外の方法で特定できるという可能性を別に否定、排除する必要まではないのかなとは、少し思っておりました。   2番目の方についても申し上げてしまっても大丈夫でしょうか。 ○道垣内部会長 お願いいたします、差押えのことについて。 ○日比野委員 【案1.1】と【案1.2】のいずれかというところにつきましては、担保権者の方の立場からしますと、一般債権者の強制執行によって自分の予期しないタイミングで自動的に固定化が生じてしまうということは認めづらく、こちらにつきましては【案1.2】の方を支持するということと考えておりました。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに御意見はございませんでしょうか。   場所による特定というのは、執行のときにどういうふうな形での特定を行うのかということもさることながら、今までの議論では、札幌倉庫と宇都宮倉庫のものが譲渡担保の目的となっているときに、それが共同担保といいますか、一つの担保になっているときに、宇都宮倉庫について執行を開始したときに札幌のまで固定化してしまうのはおかしいという意見があって、それで場所的という話が出てきたのかなという気がしております。実務的にそれが同時に進行するわけではないというのは、今までも皆さんそういうふうな御意見だったような気がするのですけれども、それ以外の形において執行の範囲の特定というのをして、その部分だけが固定化するというふうな必要性があるかもしれないのに、場所だけをクリアに書くのはいかがかというのが日比野さんのお話であったように思います。実務的に「場所」と明確に書かない方がよいのではないかという点等につきまして、何か別の御意見がございましたら、お教えいただければと思います。 ○井上委員 井上です。今の札幌と宇都宮でしたっけ、倉庫が2か所あるときに、倉庫ごとに実行するという例が分かりやすいのは間違いないのですけれども、それ以外の一部実行というときに、種類だけで特定した一部の実行は考えにくいというのが先ほどの御説明だったかと思いますが、最初の質問として、特定の場所の特定の種類について実行することは考え得るのでしょうか。考え得るとしたときに、今回御提案いただいているルールは、例えば札幌倉庫のミカンについて実行することは、以前の部会での話ではないですけれども、季節変動があったりすると、それは集合動産に対する実行は1回だけというルールの潜脱になるよね、みたいな議論もあったと思うのですが、そういうことを果たして認める必要があるのか、実務上あまり必要ないのではないかという議論もあり得ると思います。基本的には場所ごと、あるいは場所の流動性の単位ごとで一部実行を考えればよくて、その範囲ですべて固定化し、流動性の単位毎に別の場所のものは固定化しないというルールを今回御提案なのか、それとも、細かい話で恐縮ですけれども、例えば札幌倉庫のミカンという形で一部実行することが可能で、その場合に札幌倉庫にそれ以外のものが運び込まれ、特定範囲に入った場合には固定化の効果が及ばないことを意味しているのか、どういう御提案になっているのかを確認したいと思いました。 ○道垣内部会長 いかがですか。お願いします。 ○工藤関係官 結論から申し上げますと、例えば札幌のミカンだけを対象に保全処分ですとか引渡命令又は動産競売をした場合であっても、札幌の倉庫全体が固定化すると、ミカン以外のものも含めて固定化してしまうという趣旨で御提案をしておりました。その一つの理由としまして、その場合に結果として執行や差押えの対象になったものと、実際に執行が掛かったけれども空振ってしまっただけのものをきちんと区別できるのかどうかというのは、やや疑問があるかなと思っておりまして、例えば、動産執行の場合とかですと、申立てはかなり広めに、特に何も種類を特定せずにされて、結果的に、例えばたんすだけ差し押さえたみたいな場合だったりしますと、たんすという種類だけが固定化するのか、それとも、もっと広く何かが固定化するのか、若干よく分からないところもあるかなと思っておりまして、そういった意味で、恐らくここは場所に限るのが一番手続的にも明確になるのではないかということで、場所に限る案を御提案していたという形になります。 ○道垣内部会長 御意見は。 ○井上委員 明確化されればそれに従って動きますし、今御説明いただいたルール自体は、それは一つの合理的な制度のようにも思いますので、私もそれでいいのかもしれないと思います。 ○道垣内部会長 ほかに御意見はございませんでしょうか。いずれの方でも結構でございますが、つまり、場所で絞るという話と、あと一般債権者による差押えというのをどういうふうに考えるのかということと両方ありますが、いかがでしょうか。 ○阿部幹事 一般債権者による差押えをどう考えるか、【案1.1】にすべきか、【案1.2】にすべきかというところで、私は前回も、一般債権者の差押えで固定化してしまうのは問題があるのではないか、そこに担保権者が配当要求して自分で乗っていく、そういう場合だったら固定化してもやむを得ないのだと思うのですけれども、そうではなくて、その動産に関しては言わば見逃すというか、それはもう放っておいて、自分はそのほかの、今後まだ特定範囲に残る動産を担保にして取引を続けるという選択を担保権者ができていいのではないかと思っておりまして、それは今でも同じです。   だから、【案1.2】の方がいいのではないかと思うのですけれども、その上で更に問題なのは、一般債権者の差押えだけ除外すればいいのかというところが、特に劣後する担保権者による担保権実行としての競売に係る差押えは、見ようによっては一般債権者による差押えと余り変わらないような気がしまして、これを担保権実行か一般的な強制執行かというところで切れるのかというところが分からない、場合によっては【案1.2】以上に固定化が生じる場面を限定すべきだということも考え得るのではないかと思いました。   例えば、劣後する担保権が個別動産譲渡担保権者だったりする場合には、その目的物に関してはもう担保とすることを諦めるから、その代わり、残りの特定範囲の動産について担保として維持して、固定化しないで流し続けるというような選択を担保権者ができた方がいいのではないかという気がしますし、集合対集合の場面について、とりわけ【案1.2】の説明のところで、1人の集合動産譲渡担保権者が配当要求したら、ほかは先順位であろうと後順位であろうと全部固定化が生ずべきと考えられると書かれていますが、ここはどうなのかなと。集合動産譲渡担保の特定範囲が完全に、あるいはほとんど重なっているような場合だったら、そうせざるを得ないのかなという気もしますけれども、特定の仕方はそれぞれで、ごく一部しか重なっていないこともあり得るような気がしまして、そうすると、重なり部分においては捨て置いて、自分はほかの残りの部分で固定化させずに取引を続けますという選択が合理的になってくる場面もあるのではないかと思ったのです。この場合、先ほどの話からすると、余り十分に固定化の範囲を限定することもできないような気もしますし、だから、そういったことで、一般債権者による差押えだけ除外すれば足りるのかというところが、むしろ気になっております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○阿部幹事 すみません、今の理解に少し誤解があったかもしれないですけれども、個別動産譲渡担保が実行される場合には、当該個別の動産だけ、言わばそこだけ固定化するという感じで、ほかは固定化しないで済むということでいいのでしょうか。私も理解が少しあやふやなのですけれども。 ○道垣内部会長 今、私が事務局に伺おうと思ったのは正にその話で、その決定の執行又は差押えのときに、特定範囲のうち、その決定の執行又は差押えにおいてその目的である動産の所在する場所として特定された部分に属するに至った動産には及ばないということになったら、差押えの対象部分だけになるので、その部分については、ほかの部分に影響を及ぼさないとすると、放棄することも可能だし、ということになるのか。私も阿部さんに言われて、余りきちんと理解できていなかったなと思ってしまったのですけれども、これはどうなっていますか。 ○笹井幹事 集合動産譲渡担保は基本的には流動していくものを想定していて、通常の事業の範囲内で設定者が処分することができるというものですので、集合物に含まれる個別の動産について譲渡担保権が設定されるということが実際にあるかどうか分かりませんが、そこについては十分に考えておりませんでしたので、少しそこは検討してみたいと思います。   集合と集合が重なった場合には、それが場所的に重なった場面では固定化するということだったのですけれども、ただ、それは場所的に重なっている限りにおいて固定化するというだけですので、その場所とは別のところに所在する動産を含むより大きな集合物があって、それが担保権の対象になっているという場合には、その別の部分には固定化の効果は及ばないと考えておりました。   今のでお答えになっていましたでしょうか。何か漏らしているところがありましたら、御教示いただければと思います。 ○道垣内部会長 個別動産譲渡担保との関係を考えていないとおっしゃるけれども、特定の仕方として個別的に行ったということだけを考えると、個別動産譲渡担保権ないしは個々の目的物を差し押さえたというふうな場合には、それについてだけ固定化するということに、整合的にはそうなるのではないかという気がしますが。   私が不勉強というか、今まで決まったことをどんどん忘れていくので、分からないのですけれども、第三者異議とか、あるいは無剰余措置の主張をするときに、割り付けはされないのですよね。 ○笹井幹事 割り付けはされません。 ○道垣内部会長 ということになると、先行する集合動産譲渡担保があって、個別動産譲渡担保が後れているときに、個別動産譲渡担保が実行されたときには、ほぼ勝てない、固定化だとかいっても、当該執行自体が排除されてしまうということに一般的にはなるのですね、多分。 ○笹井幹事 多分、多くの場合には第三者異議で排除されるということになると思うのですが、その結論が出るのに少し時間は掛かると思います。 ○道垣内部会長 これは一般債権者による差押えのときも同じ。つまり、割り付けがされないということになって、一般債権者が個別動産なり何なりを差し押さえたときに、被担保債権全額について主張していけて、一般債権者が差押えを排除することができる、そうすると固定化は生じない。 ○笹井幹事 【案1.1】を採ったとしても、今までのこの部会の議論でしたら、今、部会長がおっしゃったとおりではないかと思います。 ○道垣内部会長 では、一般債権者による差押えの場合には固定化が生じるというけれども、一般債権者がかなり広い範囲の目的物を一気に差し押さえるというふうな、それはそれほど特殊な場合とはいえないか、そういった場合にだけ問題になるということですかね。すみません。   ほかに御意見はございませんでしょうか。   阿部さん、先ほどの事務局からの説明で、重なっているときには重なった部分だけの固定化になるし、個別の譲渡担保との優劣というのは、そこら辺はよく分からないけれども、1個だけが実行されるというふうなときには、その1個だけが固定化されるということになってしまって、かつ、第三者異議とかそういうふうな場面においては、被担保債権全額を割り付けないで集中して主張できるとなったときに、阿部さんがおっしゃった話はどうなるのかな。それは、その個別の財産に対する法律関係なのだから、より広い範囲を持つ集合動産譲渡担保権者は、阿部さんがおっしゃるような、その部分についてはもういいよというふうに言うことは可能なのかな。 ○笹井幹事 放棄するということですかね。少し事務局内でも放棄の可否ということについて議論をしたのですが、今のところまだ結論が出ておりません。 ○阿部幹事 今の話なのですけれども、仮に一部だけ固定するというような形で、ほかはなお流動的に行けるというのであれば、別にその一部を放棄する必要もないですよね。そんなことはないですか。 ○道垣内部会長 そうですね、放棄する必要もないのだけれども、それでも放棄できるかということです。阿部さんは、全部の実行が強制されるのは嫌だという前提から出発しているので、その部分についてだけが問題になるのだったら、別にほかの部分まで全部一遍に固定化して実行を強いられるというふうな問題が生じるわけではないのだから、別に大した話ではないよねと、そういう話になるのですか。 ○阿部幹事 そうですね、はい。ただ、一方で少し気になっているのは、一部だけ固定化する、残りは流動的でいいですという話になると、今度は一部実行しているような話になるのですかね、集合動産譲渡担保の一部実行全体の可否の話との整合性がどうなってくるのかというのが、あちらがどうなっていたのか私には今直ちに思い出せなくて、そこも少し気になり始めたのですけれども。よく分からないです。 ○工藤関係官 1点、今回の規律の背景となる考え方を少し補足させていただきますと、従前から再度実行はできないということを御提案しておりまして、それを前提としますと、例えば、同じ担保権者が複数の集合動産譲渡担保権を設定した場合に、重なっていれば何回でも実行できるとすると、それを潜脱できることとなり望ましくないということを踏まえまして、集合動産譲渡担保権同士が重なり合っている場合には、一度固定化が生じれば、その重なり合っている範囲で先順位も後順位も全て固定化するという規律とすることを今回の御提案の背景というか、前提として考えておりました。 ○道垣内部会長 複数回の実行という話と一部実行という話は多分、阿部さんがおっしゃっている話とは違うのだと思うのです。阿部さんが一部実行とおっしゃっているのは、場所を切り分けてばらばらに執行していいのかという話なのだろうと思います。それは、先ほどの札幌と宇都宮の例ではありませんけれども、根本的にそれは駄目だとは少し言いにくいだろうという話だろうと思います。そうなったら、別の債権者が差し押さえたり、範囲が重なっている後順位の集合動産譲渡担保権者が執行したりしたときには、その部分については切り取られて実行になるというのは、全体としての制度設計と矛盾するわけではないだろうと思いますが、よく分かりません。 ○阿部幹事 分かりました、ありがとうございました。 ○道垣内部会長 日比野さん、最初、差押えを固定化事由にするというのは困りますという話だったのですが、当該差し押さえられた動産についてだけと考えたときには、どうなりますか。 ○日比野委員 ありがとうございます。部会長がちらっとおっしゃられたとおり、その範囲にもよるというところはあると思うのですけれども、それであれば影響はかなり限定的であろうという印象を受けました。ただ、私がよく分からなかったのが、例えば、ある特定の倉庫の中の集合動産で、特定のものだけを一般債権者が強制執行で差し押さえたということになると、これはその差し押さえられたものだけは差押え債権者がその価値を把握すると同時に、要するに、目的物自体は徐々に入れ替わることが前提になるので、もうそれでおしまいという、言葉は悪いのですけれども、もうそれだけという状態になるという理解で正しいのでしょうか。そういう理解であれば、いいのかなと思ったのですけれども、少し私がその点、よく理解できておりませんでした。 ○工藤関係官 その点はそれで結構かと思います。 ○日比野委員 よろしいのですよね。表情が分からないので、納得されているのか、されていないのかよく分からなかったので、すみません。   そうすると、他方で、例えば倉庫の中の動産ということだとすると当然、搬入され、搬出されというのが営業活動していく上では繰り返されるということが前提になりますので、その差押えがなされたこととは無関係に、事業活動が継続している限りにおいては、ほかの物品というのは搬出され、仕入れによって搬入されるということが繰り返されていくと。なので、そういうことであれば、そんな大きな影響があるわけではないのかなと理解しました、ということが言いたかったわけです。説明が悪くて、すみません。 ○道垣内部会長 それは日比野さんがおっしゃるとおりだろうと思いますが、その事態というのは、集合動産譲渡担保権者が配当要求していて、更に残余が差押債権者にあるというのが前提になりますので、そうなったときには被担保債権が一旦そこでゼロになるわけですよね。被担保債権が一旦ゼロになっても、根集合動産譲渡担保だったならば、一部実行によって一旦ゼロになっても、残余部分は継続するのだと考えられれば、日比野さんのおっしゃったとおりになるのではないかと思います。それに対して、いや、それはある種の実行が起こって被担保債権がなくなったのだから、そこで集合動産譲渡担保関係自体がなくなるよねということになると、全部がなくなることになるわけですが、全部がなくなるわけではないという前提でしょうか。一部実行によって一旦その被担保債権がゼロになったとしても、根譲渡担保である限りにおいては続いていくと。 ○工藤関係官 差し押さえられたときにその物だけが固定化するというのが、そもそもあり得るのかという点につきまして、一応今回の資料の前提としては、一般債権者による差押えの場合には、恐らくそういうことは余り考えにくいのではないかと、やはり基本的に動産執行の申立てがされて、場所単位主義に基づいて場所的な範囲で差押えがされると、その差し押さえられたものが換価されるということになりますので、差し押さえられた物だけ固定化するということはないのではないかということと、また、結果として差し押さえられた物だけが固定化するということになりますと、それは結局、固定化しないのと同じではないかという感じもしておりますので、一般債権者による差押えの場合には、そういった差し押さえられた物だけが固定化するというのは考えられないという前提で資料を作っていたということになります。   ただ、先ほどおっしゃられた個別の動産譲渡担保権に基づく動産競売の申立てがされた場合について考えてみますと、その場合は、場所というよりは、ある特定の目的物に対する申立てがされておりますので、その場合には、結論としては、固定化しないといいますか、特定の目的物に対する動産競売の申立てがされて、その物だけが差し押さえられたという場合には、何かしら執行調書に場所が記載されていたとしても、その範囲で固定化するわけではなくて、その場合には固定化させないというルールももしかしたらあり得るのかもしれないというふうに、お話を伺っていて考えてはおりました。 ○片山委員 今の御発言と私も同じように考えておりまして、ここで書いていることは、やはり何らかの実行手続であるとか強制執行がなされたら、もうその後入ってきた目的物に担保権の効力が及ばないということを書いている規定ということになりまして、一部の固定化は想定はされておらず、一部であっても一般債権者が強制執行してきたら、全部について固定化をしてしまうというのが【案1.1】ということになるのかと思います。ただ、第三者異議でそれを排除できる場合には、その強制執行をなかったことにはできるので、固定化は生じないということになる。いずれにせよ、一般債権者が差し押さえた一部の財産だけに固定化するということは想定されていないのかと思います。   【案1.2】では、仮に一般債権者が強制執行をした場合、第三者異議ができることは大前提なのだと思いますが、他方、強制執行しただけでは固定化は生じないが、配当要求した場合には実行したのと同様に固定化が生じると、そういう振り分けになっているのかと思いますので、いずれにしましても、一部の固定化という議論が余り意味がないといいますか、できないということになるのかとは思いましたが。 ○道垣内部会長 私は片山さんと全く意見を共有できないのだけれども、前提として、個別の1個だけの動産を差し押さえるというふうなことではなくて、ある複数の動産を差し押さえたとしても、その範囲に後に加えたものには集合動産譲渡担保効力が及ばないというわけだから、その差押えの対象となっていないところは、まだ動いているのではないのですか、日比野さんがおっしゃるように。それは共有していないのですか。 ○片山委員 そこは共有して、固定化の意味ですけれども、ここでいう固定化は、新しい財産、新規搬入財産について担保権の効力が及ばないという意味で固定化の効力が生じるかどうかという話をしているのかと思いますので、恐らく1個の財産でも強制執行されてしまうと、もうそれで固定化して、新しい財産には担保権の効力が及ばないということを書いているのだと思いました。 ○道垣内部会長 理解を共通した上でコンセンサスを得ないと意味がないので、仮に特定動産を差し押さえるときに、場所とかで特定したとしますよね。それが持っていかれた後に、同じ場所に別のものが入ってきたときには、それには及ばない。それはそうなのですけれども、片山さんのおっしゃっているのは、それが、例えば倉庫の中のある特定の場所にある動産について差押えがなされたときには、そして集合動産譲渡担保が当該倉庫全体の在庫商品を取っているといったときには、今後その倉庫に入ってくるものは、どこの棚に入ってきたとしても集合動産譲渡担保の効力が及ばないということを前提にしていらっしゃるの。 ○片山委員 差押えがなされた場合ですか。 ○道垣内部会長 ええ。 ○片山委員 差押えがなされたら、その効力が恐らく生じるというふうに、ここで書いているのではないですか。 ○道垣内部会長 けれども、それはその目的である動産の所在する場所として特定された部分に属するに至った動産には及ばないわけだから、左半分の動産が差し押さえられたときには、その後も右半分は動いているのではないですか。 ○工藤関係官 例えば、申立書に左半分だけ差し押さえてくださいと書いていて、実際、左半分だけ捜索して差押えがされ、調書にもそのように書いてある場合には、左半分だけ固定化するということでよいのだろうと思います。ただ、恐らく一般的に多いのは、例えば地番等で特定して申立てをして差押えが行われ、調書にも、この地番の建物の中を捜索したらこういうものがあって、これを差し押さえましたと書かれるという場合かと思いますが、その場合には、その地番の範囲で固定化が生じるという結論になるのではないかと思います。   また、執行場所としては地番が書いてあるのだけれども、調書上のほかの部分の記載から、例えばその地番に二つの倉庫があるとしまして、片方の倉庫だけが執行の対象となったと、それが調書上の記載から明らかであるような場合には、その片方の倉庫にだけ固定化が生じると、そういったことも十分考え得るかなとは思っておりました。   いずれにしても、どこが執行の対象となって、どの範囲で固定化が生じるかというのは、実際にどこが執行されたのかという問題ではあるのですけれども、証拠資料としては、やはり調書等が資料となってくるのではないかとは思っていたところです。 ○片山委員 それは場所の特定の問題ということですね。 ○工藤関係官 そうですね、場所の特定の問題です。 ○道垣内部会長 雑談のようにいろいろなことを言って恐縮なのだけれども、第1倉庫というのが地番で特定されていて、しかし第1倉庫の在庫商品というふうに最初の集合動産譲渡担保権者が担保権を取っているとします。しかし、在庫商品には実は大きく分けて二つのものがあって、プラスチックの製品と紙の製品があると、そのときに差押え債権者が第1倉庫内の紙の製品といって差し押さえたときに、プラスチックの製品にも及ぶのですか、場所は一緒だから。 ○工藤関係官 そうですね、それは及びます。場所によって固定化の範囲を画するということにしておりますので、そこは固定化すると。 ○道垣内部会長 ミカンも第1倉庫だと書いてあればリンゴにも及ぶと、第1倉庫にある限りリンゴも固定化する。それは一つの素直なあり得るルールだから、それに絶対に反対だというわけではないのだけれども、これは日本語としてそうは読めないと思うけれども。 ○井上委員 井上ですけれども、正にそこが気になって先ほど質問をしたわけで、今回の御提案が、場所と種類で特定するような形の一部実行を認める御趣旨なのか、それとも、という御質問に対しては、明確に場所における一部実行だけを今回は御提案されているというお話だったので、一つの考え方としては、流動性の単位として場所による特定で一部実行した場合には、そのうちの一部だけしか個別執行あるいは強制執行がなされていなくても、その場所に関しては全部特定が及ぶという前提になっているのかなと伺っておりました。そうすると、やはり【案1.1】と【案1.2】には違いが出てきて、【案1.2】を採らないと、場所としての倉庫全体に固定化の効力が及んでしまうということかなと理解しておりました。 ○道垣内部会長 なるほど。さて、私が大きな勘違いをしていたことが分かりました。皆さんが勘違いをされていなかったとするならば、それはとてもいいことなのですが、その上で、場所ということに重きを置いて、執行場所を特定したならば、後順位譲渡担保権者ないしは差押え債権者、差押え債権者は別個に考えることもできますが、当該場所についてはもう固定化の効果が生じるというふうな部会資料の案だとしたときに、皆さんのお考えはどうなのですか。なぜリンゴも止まるか。 ○阿部幹事 私は、できる限り実際に差し押さえられたものの範囲に限って固定化が生ずるというか、その後特定範囲に入った動産には及ばないとした方がいいのではないかという気はするのですが、それが技術的に無理だと言われたら、そうなのかもしれませんけれども、でも、先ほどみたいに、債権者がリンゴかミカンか、どちらかだけ特定して差し押さえるということは可能なのでしょうか。そうだとすると、場所単位で全部、今後はそこに入った動産には及びませんというふうにしなくてもいいのかなと、私も道垣内先生が思っていらっしゃったように考えた方がいいのかなとは思ったのですけれども、ただ、資料の読み方としては恐らく、場所単位でしか区別はできないということで、場所で差し押さえたら、もうあらゆる動産についても及ばなくなると、そういうつもりで書いているのだろうとは思っていたのですけれども、というところです。 ○山本委員 今の議論が、私もよく付いて行っていないのですが、ある倉庫の中のミカンだけを差し押さえてくれということが、通常の動産執行において債権者が特定できるのかという問題だとすると、私はできないのではないかと今まで思っていたのですが、私の誤解かもしれませんが、場所単位主義というのはそういうもので、基本的には申立て場所記載の動産について差し押さえるわけですが、その動産のどれを差し押さえるかというのは基本的には執行官の裁量に委ねられていて、債権者の指示には拘束されないというのが大審以来の判例ではないかと思うのですけれども、そういう意味では、そこの場所の動産を差し押さえてくれということしか債権者は言えないのではなかろうかと。もちろん差押え債権額が小さいとかというような場合に、結果としてその中でリンゴだけが差し押さえられて、ミカンは差し押さえられなくて済むということはあり得るのだろうと思うのですけれども、先ほどの事務当局の御説明は、そのような場合でも全体との関係で固定化が生じるという御説明だったように思いますけれども、そこは考え方なのかもしれませんけれども、執行については何となく私はそういうふうに思っていました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。一般債権者の差押えが、山本君がおっしゃるように、場所単位主義に従って、別にリンゴだ、ミカンだと指定できないというふうに、金銭なら金銭とか換価しやすいものから差し押さえるというわけですから、そうだとして、他方で第1倉庫内の全ての果物を集合動産譲渡担保の目的として取った第1順位の人がいて、第2順位の人がミカンだけを取っているということになれば、この第2順位の実行はミカンに対してしか及ばないですよね。そのときに、場所としては第1倉庫というのを指定するのだから、第1倉庫全体が固定化すると考えるべきだというのは一つの考え方で、もう一つは、ミカンしか競合していないのだから、ミカンだけ固定化すればいいではないかという考え方もあり得る。後者の問題点としては、一般債権者の差押えを固定化事由として認めるのだったらば、一般債権者の差押えの方が固定化の範囲が広くなりがちになって、そちらの方が強いという感じがするけれども、少し変なのではないのと言われると、そうかもしれないという気がするのですが、山本さんは先ほどの後順位ミカン担保権者については、いかがお考えですか。 ○山本委員 私も定見はありませんが、今の点は部会長が言われるとおりなのかなとは思って、そこは政策判断があるのだろうと思うのですが、仮に後順位については、先ほどの事務当局の説明も、個別の担保権についてはその範囲でしか生じないのではないかというお話があって、だから、元々強制執行の方が固定化の範囲が広くなるということはあり得るということが前提になっていたかと思うのですけれども、ただ、私の理解では、それに対応して【案1.2】というのがあって、【案1.1】ではそういう問題が生じるかもしれないところ、【案1.2】は強制執行についてはその固定化の効力を認めずに、譲渡担保権者の配当要求があった場合にだけそれを限るという形で、言わば強制執行における広すぎる固定化効という問題があるのだとすれば、それを制約しようとしたのかなと理解していました。 ○道垣内部会長 なるほど。蒙を啓いていただきまして、どうもありがとうございます。今の整理で非常に全体像がはっきりしたような気がして、事務局はずっと最初からそう言っているではないかとおっしゃるかもしれませんが、物分かりの悪い私には分からなかったものですから、ありがとうございました。   そうなってきますと、場所単位主義でやってしまって、広く固定化の効力が及んでしまうのは問題ではないかという日比野さんの最初におっしゃった話が生きてくるわけですが、皆さんは【案1.1】と【案1.2】のことについてはいかがお考えでしょうか。 ○片山委員 私も【案1.2】の方がいいと思うのですが、【案1.1】であっても、強制執行に関しては基本的には第三者異議で排除はできるということですよね。どの部分を差し押さえてこようとも、動産執行で場所単位で差し押さえてくるという場合にも、第三者異議は簡単には言えるので、それで排除できればそれほど困ることもないとはいえるということなのですかね。それとも、決定的にやはり【案1.1】では、担保権者としてはそれにいちいち対応するのは非常に面倒なことなので、むしろ【案1.2】の方がいいということなのですかね。 ○道垣内部会長 第三者異議は、具体的に差し押さえられたものについて問題になるわけだよね。場所の中にどこか自分のものがあったら第三者異議が言えるわけではないわけだから、そうすると、具体的に差し押さえた後に第三者異議で排除できるということならば、別に一般債権者の差押えについてそれほど心配しなくてもいいではないかというのは、一つの考え方かもしれないとは思いますが。 ○阿部幹事 私はやはり【案1.2】の方がいいかなと思います。資料の6ページの11行目以下で、少なくとも一定期間にわたって設定者が固定化によって特定範囲に属する動産の処分権限を失うとすれば、それは問題ではないかということが書かれておりまして、そのような問題は、事後的に第三者異議の訴えが認容され、あるいは無剰余取消しがされたとしても、負の効果として残ってしまうような気がしますので、やはり【案1.2】の方がいいのかなと思いました。   先ほど山本委員のお話を伺っていて、【案1.2】だと一般債権者による差押えのことを考えなくてよいということは、そうすると、【案1.2】だと、特定の仕方も所在場所だけでしか範囲を限定できないと考える必要はなくなるのではないかという気もしまして、集合対集合の場合でも、重なり合いの範囲でという、より限定された形で、その範囲に入った動産には担保が及ばなくなるという、そうやって更に限定することも【案1.2】だったらできるかなと思ったのですけれども、いずれにせよ、【案1.1】か【案1.2】かと言われると、やはり【案1.2】の方がなお、いいかなと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに。   すみません、私の無理解によって大分議論を混乱させたような気がしまして、大変失礼いたしました。やはり差押えによって固定化させた方がいいのではないのという御意見はございませんか。   よく分からないというのは、私がよく分からないなと思っているだけなのですけれども、特に【案1.1】がいいということではないという意見分布でしょうか。分かりました。状況はそういうわけで、大体分かったような気がいたしますので、続けてやっていただきたいと思います。   さて、私のような無理解の者がいて、いろいろ議論を混乱させるために、実はここに書いてある時間配分案よりも1時間遅れております。しかし、やはり15分間ここで休憩を取ろうと思います。4時15分から再開したいと思いますので、よろしくお願いいたします。どうも、失礼いたします。           (休     憩) ○道垣内部会長 4時15分になりましたので、再開したいと思います。   なかなか難しくて、分からないところがございましたけれども、更に検討させていただくということを前提にいたしまして、次に進みたいと思います。   次に、第1の「4 動産譲渡担保権の実行のための引渡命令及び実行後の引渡命令の相手方の範囲」について議論を行いたいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○工藤関係官 それでは、「4 動産譲渡担保権の実行のための引渡命令及び実行後の引渡命令の相手方の範囲」について御説明いたします。   従前の部会資料では、実行のための引渡命令及び実行後の引渡命令の相手方について、特に限定を設けず、動産の占有者に対しても発令することができるものとしていました。  この点について、部会では、特に目的物を占有する第三者がその所有権を主張する場面を想定すると、簡易な決定手続で債務名義を取得することができるとすることを正当化できるのか疑問があるとの御指摘がありました。目的物を占有する第三者を引渡命令の相手方とすることができるとすると、第三者が従前から所有し占有している動産について、他者が通謀して担保権設定を仮装して引渡命令の申立てをすることができることとなりますが、このように何ら帰責性のない第三者について起訴責任を転換することを正当化することは難しいように思われます。   また、目的物を占有する第三者を引渡命令の相手方とすることができないとすると、占有の移転による執行逃れが生じないかが問題となりますが、設定者が目的物を第三者に譲渡した場合には、その第三者は単なる占有者ではなく第三取得者となり、引渡命令の相手方とすることができると解されますし、設定者が目的物の占有を第三者に移転した場合には、その占有の移転について合理的理由がないのであれば、価格減少行為等に当たるとして、第三者に対して保全処分の申立てをすることも可能であると考えられます。  そこで、本文では、動産の占有者をも引渡命令の相手方とすることができるとの従前の考え方に加え、引渡命令の相手方を設定者及び第三取得者に限るとの考え方をお示ししています。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上です。 ○道垣内部会長 それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。   まず、第三者を相手方に含めるかというのが(1)、第2もそうですが、設定者、第三所得者以外の人を含めるということになりますと、およそ一般的に第三者に対して適当な文書、適当な契約書を作れば引渡命令が出せるとなりそうなのですが、それは無理なのではないかというのが事務局からの説明だったと思うのですが、その点についてはいかがでしょうか。そうだよねということでしょうか。   両論併記になっているのですが、山本さん、お願いします。 ○山本委員 私の誤解かもしれないのですが、従来の案も、動産譲渡担保権者に対抗することができる権限により占有していると認められる者に対してはこの限りでないという除外が付いていたと思うのですけれども、これはその前提として、いいのでしょうか。つまり、全ての第三者に対して出せるわけではないというのは従来も前提だったという理解なのですが。 ○笹井幹事 そこはおっしゃるとおりです。 ○山本委員 そうだとすると、補足説明のところでいっている、第三者であるCが従前から所有し占有している動産について通謀して譲渡担保権が設定されたという事案ですけれども、これは実体的に見れば当然、このCというのは通謀して設定された譲渡担保権者に対抗できるはずなので、本来はこの引渡命令なりの対象にはならないのだけれども、そこの証明が難しいから問題である、というのが問題だという理解なのですが、ここまでは正しいでしょうか。 ○笹井幹事 その点も、おっしゃるとおりです。 ○山本委員 そうだとすれば、確かにここに書かれてある不動産の引渡命令、83条なんかとはシチュエーションが違うのではないかという御批判は、確かにそういうところはあるかなと思うのですけれども、そこは証明責任の問題だとすると、譲渡担保権者側に、その動産の占有者が自分に対して対抗できる権限を持っていないということを証明させて、それで引渡命令を出すという制度が、この中間的なものとして、あり得るのではないかという気がしました。   それであれば、ここに書かれてある譲渡担保権設定時にBとCのいずれが目的財産を所有していたかが争点だけれども、その点の判断は容易ではないということは、確かにそういう部分があると思うのですが、それが証明責任が譲渡担保権者にあるのだとすれば、そこが十分証明できない場合には引渡命令は出ないということになると思いますので、相手方は保護されるのではないかという気がする一方で、所有者、第三取得者以外の占有者を一切対象から排除してしまって本当にいいのだろうかという懸念はあります。   ここでは、価格減少行為の保全処分によって対応すればいいではないかという話なのですけれども、価格減少行為というのだと、単に対抗できないということではなくて、かなり濫用的なものだということを立証する必要があるのではないかということが一つと、実行後の引渡命令の場合にはこれは使えないのだろうと思うのです。担保権実行手続は終わってしまっているので、その段階で保全処分というのは出せないと思うのですけれども、そうすると結局、訴訟を起こすしかないという話になりそうなのですが、それでいいのかという感じがあるということで、そういう意味ではやはり何か占有者、その権限が対抗できないという前提ですけれども、に対しては、引渡命令の余地を認めておくということも考えられるのではないかとは思いました。 ○道垣内部会長 今の点は、事務局はいかがお考えになりますか。 ○笹井幹事 もう少し御議論をお願いします。 ○道垣内部会長 そうですか。それでは、先に日比野さん、お願いいたします。 ○日比野委員 みずほ銀行の日比野でございます。私の執行手続に関する知識がないということに起因する疑問であれば、大変申し訳ないのですけれども、この占有者というのに、例えば設定者所有の倉庫でなくて賃借した倉庫に担保物が入っているというケースにおいて、倉庫業者というのは占有者に当たるのかどうなのかというところは少し確認をしたいと思いました。賃借している倉庫に対象物が入っているというときに、もし占有者はそもそも引渡命令の対象に含まれないということになるとすると、担保権者の立場として、何かしらこれを執行するという方法があるのか。例えば、設置者の権利を担保権の効力として代位的に行使するみたいな、そういうような理屈で問題なく執行というか、引渡しを求めることができるということがあれば、それでいいかと思うのですけれども、もし賃貸倉庫の倉庫業者がその占有者であって、ここで占有者を名宛て人とするということができないとすると、実務上執行のハードルが上がるといったことがあるのであれば、ここは含めておいていただきたいと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。山本さんの話と続けて、シチュエーションに関わりますので、後でまとめることにいたしまして、阿部さん、お願いいたします。 ○阿部幹事 ありがとうございます。私も、もなのか分からないですけれども、第三取得者と、例えば設定者からの賃借人とか、あるいは今の倉庫業者もそうなのかもしれないですけれども、受寄者であるとか、そういった人とを、所有権の移転を受けているかどうかというところで区別して、所有権の移転を受けていれば引渡命令の相手方にできるけれども、受けていなかったら単なる占有移転だから引渡命令の相手方にならないというのは、何かねじれているというか、変な感じがします。仮にそのどちらかに寄せるとすると、設定者に対してしか請求できないとするか、あるいは、設定者から占有移転を受けている人であれば相手方になるとするか、どちらかなのではないかというような気がしました。単なる占有の移転だったら価格減少行為に当たることも多いので保全処分で対応できると資料には書かれていますけれども、それが引渡命令を出せない理由になるかというと、第三取得者を相手方にできるのだったら、占有移転が価格減少行為に当たらない場合でも、占有移転を受けた者を相手方にしていいのではないかと思いますし、そこは平仄が合わないのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   これまでのところで、何かございますか。 ○工藤関係官 途中で頂いた御質問で、賃借した倉庫の倉庫業者は占有者に当たるのかどうかという点につきまして、そこはやはり占有者に当たるということになり、相手方の範囲を限定するという考え方に立ちますと、なかなか倉庫業者に対して引渡命令を提起するというのは難しくなってきてしまうのかなとは思います。今御意見を頂いた中で、相手方の範囲を限定すべきではないのではないかという御意見を幾つかいただいていたところですので、その辺りも含めて更に検討したいと思います。もし逆の御意見もありましたら頂ければとは思います。 ○阪口幹事 私自身、元々この引渡命令制度というのは広く認めてほしいと思って提案をしたところです。ただ、元々の議論として、不動産競売の場合は3点セットがあり、権利関係がある程度確実に把握できる手続になっているのに対し、それがない動産譲渡担保権で簡易に債務名義を得ることができていいのかという、少し迷いがあって、でも、必要性も高いからやりましょうということになったと理解しています。今度、第三者が占有しているときに引渡命令を認めていいのかとなると、ますます不動産競売のときのような手続がないと、もちろん第三者に対する審尋が行われるのかも分かりませんけれども、手続保障として本当に大丈夫かなというのが気にはなっています。   もちろん担保権者に対抗できる第三者であれば問題が生じないので、かつ、先ほど出た倉庫業者なんかは留置権を普通持っていて、留置権で対抗することになるので、ここで問題となる典型例は、むしろ債務者所有の機械を借りていた第三者、動産賃借人のような例が一番考えられるのかなと思います。動産の賃貸借は当然、売買によって破られるので、単純に考えると、実体法上の対抗力はない賃借人が占有者だということになります。その人に、登記で譲渡担保権を設定しました、債務者がひっくり返りました、担保権を実行しましたという手続で、いきなり引渡命令が来ていいのかというのは、少し迷いがあるというか、本当にいいのかな、手続保障が少し薄くないかなという思いが正直、あります。元々第34回会議で青木哲先生が御指摘された、この7ページに書かれている二つの問題点も、理論的にはおっしゃるとおりだろうという気もします。   先ほど山本先生の方から、引渡命令申立て時に占有権限がないことを担保権者なり引渡命令を求める側に証明させたらどうかという御意見があって、確かにそれは一つの方法だと思うんですけれども、先ほどの動産賃借人であれば、あの人は動産賃借人ですので私に対抗できませんと言われたら、認められることになるのだろうと思います。最後は結局、占有者の手続保障の問題で、特に不動産競売ほど手続が整備されていない中での引渡命令という手続なので、認められた方が非常に便利であることは間違いないのですけれども、本当にいいのかなという疑問があるというぐらいの意見で、別に絶対こちらでなければいかんということはないのですけれども、手続保障が大丈夫かということが気になっています。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。 ○青木(哲)幹事 青木でございます。   前にこの点が問題となった際に発言をさせていただきまして、それを説明、それから本文の方で反映をしていただいたかと思います。ありがとうございます。その際に申し上げたのは、簡易な決定手続でどこまで審理をすることができるのかということでございまして、そこで設定者と直接関係のない第三者との間で、所有権の帰属がそのまま争われるということになると、決定手続で審議するのにはふさわしくないのかなと思ったので、申し上げたということになります。   他方で、占有の移転があると引渡命令が出ないということになると不都合であるというのも、そのとおりなのですが、これはなかなか難しいところはあり、これだけでは十分ではないのですけれども、設定者に対して引渡命令の発令がされれば、民事執行法23条3項により、請求の目的物の所持者に対しては執行力を拡張させて引渡執行をすることはできるのかなと思いますので、受寄者などに対してはそれで引渡しを求めていくということは考えられるのかなと思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   少しよく分からないのですが、賃借人だとか倉庫業者の話が出ているのですけれども、倉庫業者が一番ですね、民法660条というのは、これは関係ないのですか、2項とか。つまり、受寄者は、ほかに所有者がいて引き渡せと言われても、自分の契約の相手方は寄託者なのだから、寄託者に返しなさいという話で、確定判決があれば別ですよという話なのですが、これは別に関係ないのですか。つまり、この条文があるときに、倉庫業者に対して引渡命令ができるというふうな制度設計というのが可能なのかというのがよく分からなかったのですけれども、これは可能、別に関係ない。すみません、不勉強で。 ○笹井幹事 そこは、まずこちらの制度設計をしてから考えるということにしたいと思います。 ○道垣内部会長 その制度設計が可能なのかというのが分からなかったものですから、すみませんでした。   ほかに御意見はございませんでしょうか。全体の御意見の分布というのが今一歩、微妙に分からないというところがあるのですが。 ○阿部幹事 すみません、今し方の部会長の問題提起ですけれども、もし引渡命令を受寄者みたいな人に対してもできるのだとすると、それが確定したときに、民法660条2項のただし書の適用があるか、ないとすれば、それがあるようにすればいいのかなと思ったのですけれども、660条2項の本文自体は、受寄者が寄託者に無断で第三者に返しては駄目という話であって、実体権的には、受寄者が第三者から返還請求されることは有り得べしという前提ですよね。それで、ただし書は、第三者の返還請求権が公的に確定されたときには、それで寄託者に返さなくてもよくなるというのですか、そういう話だと思うのですけれども、それが今、判決しないといけないところを、引渡命令でもよくなると、そういうふうに動いていくことになるのかなと思ったのですけれども、いかがでしょうか。 ○道垣内部会長 そうなのですが、私が思ったのが、確定判決及び確定判決に準じるものというものに限定している、そこの政策判断と矛盾しないのかということなのです。引渡命令があった場合はただし書に該当するのと同じですよと書けば、もちろんそれで済むのですけれども、確定判決及びそれに準じるものとしたことの意味というのは、日本法全体の中での価値判断の整合性という問題があって、大丈夫なのかなというのが少し気になったということで、私は十分に分かって発言したわけではなくて正しくないかもしれませんけれども、そういう趣旨でした。   ほかに。本当に私は皆さんのお話は全て、なるほどと思いながら伺っていたのですが、しかし必ずしも分布がよく分からなくて、整理をどういうふうに付ければいいのかがよく分からないままでいるのですが、感じとしては、およそ設定者、第三取得者以外の占有者全てを引渡命令の相手方から排除してしまうと、使いにくいのではないかということがあるのだけれども、しかし、かといって簡単な手続で引渡命令を認めるというふうなことが正当化できるというのはなかなか難しい。そこで、最初に山本さんがおっしゃったのが、一定のことの証明責任を負わせるという形で処理をすべきではないかという話が出たわけですけれども、皆さんのお考えとしてはどうですか。   法制審議会の議題もだんだん細かくなってきて、発言しにくくなっているのは確かなのです。非常に大きな価値判断のところでは幾らでも発言ができるのですけれども、非常に技術的になってくると、どちらでもいいのではないかみたいな感じもしますけれども、いかがですか。   事務局として最初は、これはやはり占有者一般に拡大するのは、それは理論的に無理でしょうという話をおっしゃっていたわけですけれども、一定の制約を、例えば山本和彦さんがおっしゃったような制約を付けたら、それはそれでいいのではないかという感じがしますか、それとも、やはり引渡命令という制度設計そのものがそういうふうなこととはなじまないということなのではないか、ということになりますでしょうか。 ○笹井幹事 以前の事務局からの提案はむしろ、担保権者に対抗することができる権限があれば別ですけれども、そうでない限り占有者も含めて引渡命令を出せるようにしようという案を提案していたところです。それに対して、十分な正当化ができないのではないかという御指摘を受けて、少し考え直していたところですけれども、やはり実務的な必要性としては、占有者に対しておよそ発令することができないということになると、むしろ支障があるのではないかという御意見が多かったかと思います。執行法上それがうまく正当化できるのであれば、事務局の考えとして、設定者から承継を受けた者まで入れるかどうかは別として、占有者一般に広げるべきではないということではありませんので、今日の御意見を踏まえて少し検討させていただくということにしたいと思います。 ○道垣内部会長 青木哲さんは、一般的に拡大するというのは問題があるという、それはみんなの認識だろうと思うのですけれども、どういう要件設定ならば可能かなというふうな感じがいたしますか。 ○青木(哲)幹事 青木です。ありがとうございます。先ほど阿部先生がおっしゃったのかと思いますが、確かに第三取得者は入るけれども単に占有の移転を受けた者は含まないというのは、逆転しているようなところがあるというのは、そのようにも思われて、設定者から占有の移転を受けた者を対象に含めるというのは、考えなければいけないのかなとは思っております。それから、先ほど私が申し上げた請求の目的物の所持者については両面あって、執行力を拡張するから引渡命令の必要ないだろうというのは一方であるのですけれども、他方で、そうであれば引渡命令の直接の対象としてもよいのかなとも思っております。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。それでは、その辺りの点を参考にしていただきまして、事務局にもう一度考えていただいて、案を出していただくようにしたいと思います。差し当たって本日のところは、それでよろしゅうございますでしょうか。   それでは、部会資料34の「第2 集合動産譲渡担保権設定者の特定範囲に属する動産の処分権限等」というところに入りたいと思います。ここについて議論を行いたいと思いますので、事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 それでは、「第2 集合動産譲渡担保権設定者の特定範囲に属する動産の処分権限等」について御説明いたします。   集合動産譲渡担保権設定者が特定範囲に属する動産につきまして、担保権の負担のないものとして処分する設定者の権限につきましては、部会資料28において、通常の事業の範囲内(契約に別段の定めがある場合にあってはその定めの範囲内)において有する旨の規律を提案していたところですが、「通常の事業の範囲」の文言については、その内容が不明確ではないかといった御意見がありまして、部会資料32におきましては、これに代えて、例えば、設定者がすることができない処分行為の主観的要件等を定める規律案について、7月の部会において議論いただいたところでございます。   【案2.1】の本文1は、このような議論を踏まえ、設定者は特定範囲に属する動産を処分することができるとしつつ、ただし書において譲渡担保権者を害することを知ってしたものであるときはこの限りではないとして、ただし書に当たる処分をすることができない旨を定めるものです。このような処分は無権限の処分であり、原則として無効なものとなると考えられますが、民法192条の即時取得の適用があると考えております。   本文2は、設定者の処分権限の範囲について集合動産譲渡担保契約により定めることができる旨の規律でありまして、中間試案及び部会資料28で提案した内容と実質的な内容の変更はございません。契約で定められた権限の範囲を超えてされた処分は、無権限の処分として原則として無効なものと考えられますが、民法第192条の適用があり得るところです。もっとも処分の相手方は、契約により権限の範囲が定められていることについて知り得ないのが通常でありますから、本文3におきまして、相手方の保護の要件として、契約により制限が加えられていることを知らなかったときで足りるものとし、民法第192条の即時取得の要件を緩和する形で規律を設けることとしております。   本文4は、本文1ただし書に当たる処分及び契約で定めた権限の範囲を超えて処分がされた場合、譲渡担保権者がこれを回復することには困難を伴うことが想定されることから、これらの処分のおそれがあるときに、その予防を請求することができる旨を定めるものでございまして、中間試案及び部会資料28と実質的な変更はございません。   【案2.2】は、【案2.1】を前提としつつ、設定者による特定範囲に属する動産についての担保権付きでの譲渡について検討するものです。前回の部会資料33の第3におきまして、譲渡担保契約の目的財産について設定者が有する権利を譲渡することができるか否かにつき、原則として譲渡することができるとの考え方と、原則として譲渡することができないとの考え方の両案を示していたところです。このうち前者の原則有効説を採用した場合におきましては、集合動産譲渡担保契約においても設定者は特定範囲に属する動産を担保権付きで譲渡することができることとなるようにも考えられます。設定者が【案2.1】の本文1ただし書に当たる場合や、契約で定めた権限の範囲を超える処分をする場合であっても、これを有効に譲渡することができるといたしますと、譲渡担保権者による実行が困難なものとなり得ることが考えられることから、譲渡担保契約一般のルールとしては原則有効説を採用した場合でも、集合動産譲渡担保契約においてはこのような譲渡をすることができない旨の規律を設けることも考えられるところです。もっとも、この点は解釈に委ねれば足りるとする考え方もあり得ることから、問題提起の形としております。   説明は以上となります。よろしくお願いいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。今回の【案2.1】ですけれども、通常の営業の範囲という枠は取り払って、基本的に全部処分権があるとするが、他方、詐害的な処分がなされた場合、及び、それから権限範囲を超えて処分がなされた場合には、善意の第三者は権利を取得できるとする構成は、基本的に賛成なのですが、その説明の部分に若干、違和感というわけではないですけれども、工夫が必要かなとは思いましたのでその点を指摘させていただきます。   それは、要するに1、2の詐害処分とか権限範囲外処分を無権利者の処分という形でまとめられて、それで、192条の適用の問題だけれども過失は不要になりますという整理の仕方になっていますが、他方、善意の第三者が保護されるのは、一種の内部的な制限を対抗できないというような場面と考えますと、むしろ対抗できない、すなわち、有権利者の処分という形になるというような整理の仕方の余地もあるかとは思います。そのどちらかという話は、解釈論に委ねるということでもいいのかなと思いまして、これをあえて、決め打ちをして、無権限処分だから192条の適用の局面だけれども、この規定で192条の要件を更に修正しているのですというまとめ方にしてしまうことに少し違和感を覚えました。   というのは、ここにも書いておられますように、以上は飽くまでも譲渡担保財産であることを前提とした処分なのですけれども、他方、譲渡担保財産ではなくて単なる設定者の財産として処分をした場合には、192条が適用されて、その場合には善意無過失を要件として第三者が権利を取得できるということ自体は、恐らく192条が無権限処分であろうと有権限処分であろうと適用されるという前提をとる限りは、争えない点かと思いますので、その点とも区別するために、もう少しニュートラルな、両方の説明の仕方が可能であるというまとめ方にしていただいた方が有り難いかなと思いました。その点はいかがでしょうか。 ○笹井幹事 そうですね、こちらとしては、理論的にどう説明するかというのはある意味、最終的には解釈といいますか、研究者の先生方の御議論に委ねられるのかなとは思っております。今までのこの部会における議論においては、処分権限がない場合というのは即時取得の場面であるという考え方も有力だったかと思いますので、そのような記載にしておりますけれども、その構成自体について事務当局としてこだわりがあるわけではございませんので、飽くまでここはゴシックのような価値判断、主観的な要件をどういうふうにするか、害することを知ってしたものであるというような要件の妥当性を御議論いただくというのが飽くまでも主眼です。その上でどのような理論的な説明を付けるのかというのは、最終的には様々な解釈が許容されるのかと思っております。 ○阪口幹事 阪口です。今の片山先生のお話にも少し関係するのですけれども、【案2.1】について3点、【案2.2】について1点、確認をしたいと思います。   まず、【案2.1】のゴシック体の3の部分ですけれども、権限範囲に制限が加えられていることを処分の相手方が知らなかったときという、ここは当該処分についてという意味でいいのですよねということの確認です。つまり、単に契約に何か、例えば通常の営業の範囲内で処分できるみたいな制限が加えられていることであるとともに、それだけではなくて当該対象物、当該処分行為が特約に抵触していることを知っているという意味の、その趣旨で書かれているということでいいかどうかの確認が1点目です。   2点目は、知らなかったときというのが重過失を含むかどうかは、これはもう解釈に委ねるということでいいかどうかという点の確認です。重過失は善意に含まれると決め打ちしているわけではなくて、それはもう今後の解釈ですということでいいかどうかというのが2点目。   3点目の確認は、10ページのエのところです。権限範囲を逸脱する場合も民法192条の適用問題だと書いてありますが、ここは先ほどの片山先生の御指摘とも関係するところで、このエの部分は、直接にはゴシック体には反映していないと思います。ただ、前から私も確認している基準時、善意なら善意の基準時の問題に多分響いてくるので、民法192条の問題という整理をすると、普通は基準時が占有移転時になると思われます。他方、処分権限の内部的制限みたいな話になってくると、基準時は処分行為時になると思われますが、10ページのエに書かれているのは、基準時は占有移転時にする趣旨で書かれているのか、いや、そこも含めて変わるよということがありの前提で書かれているのかが、このエに関する質問です。   最後、【案2.2】に関する確認は、これは実は、すみません、よく分からなくて、想定している局面を教えてほしいということなのです。そもそも集合譲渡担保なので、担保権付きで譲渡するということが非常にイメージしにくいものだと思うのです。先ほど当初の方の話で、集合なので、みたいな話があったと思うのですけれども、集合譲渡担保の対象物で、なおかつ担保権負担付きで譲渡するという局面がどのような場合なのか。縮小認定の場合ならあると思うのです、つまり、担保権負担付きの処分ではなくて、単に普通の売買ですよといって売ったと、しかしながら【案2.1】の関係で、完全な所有権は移転せずに縮小認定されるというか、縮小された範囲で移転するという局面なら分かるのですけれども、そうではなくて、純粋にこれは担保権が付いているのですといって集合物を売るというのがどんな場合なのかというのがイメージできなくて、想定されている局面がどのような場合なのかを教えていただきたい。   以上4点です。すみません。 ○笹井幹事 まず一つ目の御質問は、正に阪口幹事がおっしゃったように、物というか当該処分行為、今相手方と設定者の間でされようとしている当該処分行為が制限に引っ掛かっているということについて知っているか、知らなかったかということを問題にするということですので、その点は先ほどの御発言の御理解のとおりかと思います。   二つ目の重過失については、これももちろん解釈の余地が全くないということを申し上げるつもりもないのですけれども、一般的には民法上は、それほど多くはないのですけれども、「重大な過失」という文言が出てきていまして、そういう意味では悪意と重過失というのを基本的には分けていると思います。事務当局としても、重過失であっても善意の場合というのは、それは善意であろうとは考えておりました。とはいえ、重過失についての判例も、御承知のように、ほとんど悪意に近いような不注意であることなどとされていますので、そういう意味で全くその解釈の余地がないのかということはあろうかと思いますし、場合によってはそれは認定の問題として、悪意として認定される場合というのもあるのかもしれないとは思います。   それから、この規律を民法192条の特則だと理解すると、その基準時が違ってくるのではないかというのは、そこは御指摘のとおりで、そこは先ほど片山委員の御質問に対しても言及すべきだったかもしれません。事務当局の理解としては192条の適用として考えていたので、基本的には引渡し時というのが基準になるのかなと思っておりまして、それは平成18年7月20日の最高裁判決の離脱しない限りは承継取得しないという立場とも基本的には整合しているのかなと思っておりました。ここは阪口幹事は以前からずっとおっしゃっているところですけれども、取引の処分行為時が基準となるべきだということであれば、その点は何が妥当な要件なのかという観点から御議論いただければと思っています。   それから、【案2.2】についてですけれども、ここは経緯としては、お言葉を借りると、その縮小認定みたいなケースに余り複雑な問題を起こさないようにしようということで書いているものです。元々ここではなくて、動産譲渡担保権の対象になった物について設定者が真正譲渡できるかという問題について、無効説から、対抗不能説から、いろいろ変遷してきたわけですけれども、有効であるということを前提とした場合には、担保権の制約のないものとして譲渡しても、結果的に追及効が及ぶことによって、負担がある形で移転することになるという考え方もあり得て、いろいろな変数の下で議論してきたところです。こういった集合物について、場合によっては追及効を行使するということもあり得るのかもしれませんけれども、実際問題として、担保権者側にとっても第三者に譲渡された物を目的とする実行のメリットは余りないかもしれないということもあって、ここはむしろ、そういうことができないということを明文化することによって、余り複雑な法律関係を生じないようにしようということで御提案をしているというところです。 ○道垣内部会長 ほかにございませんでしょうか。   少し分からないのは、【案2.1】の3について、これが民法110条を念頭に置くものか、192条を念頭に置くものかで、192条を念頭に置きながら要件を緩和したものであるとおっしゃって、そういうふうにおっしゃることによって、先ほどの阪口さんの判断時期はいつになるのかという話と結び付いて出てきたわけですけれども、それは性質決定しなければいけないのですかね。こういうルールだと言ってはいけないのですか。 ○笹井幹事 部会長がおっしゃったことを先ほどの片山委員に対するお答えの中では申し上げたつもりでして、そこはこういうルールですので、そういう意味では、説明として不要なことを書きすぎたということなのかもしれません。そういう意味では今、阪口幹事から御指摘があったように、いつの時点での善意が必要になるのかというところが、もしかすると影響してくるのかもしれません。 ○道垣内部会長 影響してくるのかもしれないけれども、そうすると、いつの時点の善意が問題になるのかということを論じればいいわけであって、110条か192条かで、192条だよと説明で書く必要はないのではないかという感じがしますけれども。 ○大西委員 よろしくお願いします。まず、第2の1の1のところですが、従前は、担保権者を害する目的、若しくは通常の事業の範囲というような二つの要件であったのですが、こういう形でまとめていただいて、すっきりするものと思いました。   それで、確認なのですが、従前のときの議論であった、担保権者を害する目的はあるのだけれども、客観的に見れば通常の事業の範囲内の行為は、これはここでいう、その処分が集合物動産譲渡担保権者を害することを知っていたとはいえないので、結論として害しないという判断でよかったのでしょうか、という点を確認させてください。これが1点目です。   それから、2点目は、先ほど阪口先生の方から【案2.2】での具体的な事案は何であるかという点ですが、私が思い付くのは、例えば私的整理における第二会社方式において事業譲渡を行う際に、既存のファイナンスをリファイナンスすることなく、そのまま担保権の負担付きでスポンサーが買って、スポンサーが分割弁済をしていくというケースです。このようなケースは、それほど多数はないと思うのですが、一定の割合であり得ると思います。   それから、3点目ですが、11ページの35行目以下ですが、ここにあるような、ただし書若しくは権限の範囲を超えるがために権利取得がない場合に、担保権の負担付きで所有権を取得するかどうかという点ですが、これはその後の記述にあるように、第三取得者は当然、負担がないものとして買っているので、担保権負担付での権利取得という意思の擬制は難しいのではないかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。 ○井上委員 井上です。今回、「通常の事業の範囲」というコンセプトをやめて、「その処分が集合動産譲渡担保権者を害することを知ってしたものである」という基準が立てられていると理解しているのですけれども、その理由としては、通常の事業の範囲というのは明確とはいえないという御説明でした。確かに明確とはいえないとは思いますが、イメージとしては、通常ではない、つまり処分の異常性に着目していて、その異常性は客観的に、例えば無償処分とか不当廉売とか、あるいは通常の変動を特段の理由なく大幅に超えるような態様で処分するといったことが想定されていたと思うのですけれども、今回はそれに代えて「害する」というときに、ここで「害する」とは集合動産譲渡担保権者を害するということだとすると、私の理解を確認したいのですが、例えば、集合動産譲渡担保の設定時に在庫が、そのときの担保権者の判断として100を中心として80から120ぐらいで変動するなら、余裕を見て50貸しましたというときに、担保権者を害するというのは何を意味するかということですけれども、50を下回るところまで処分することが担保権者を害することを意味すると想定されているのでしょうか。そうであれば、「通常の事業の範囲」か否かの基準よりは明確です。   ただ、8ページの最後のところの御説明を見ると、動産の無償譲渡や不当廉売などが挙げられていて、これはどちらかというと、今まで「通常の事業の範囲」に当たらない例にむしろ近い印象を持っておりまして、そうすると、良い点も悪い点も元のままではないかという気もしないでもなくて、どうなのでしょうか。具体的に言うと、明確化を図るために「害するかどうか」という観点を持ち出すのであれば、適正価格で売却したって、先ほどの例で、50を下回るところまで減らしてしまうのは、担保権者を害するように思います。他方で、無償譲渡や不当廉売であっても、在庫に余裕がある状態で、例えば200ぐらいあるときに、そのうちの50を無償譲渡したとしても、害するとはいえないように思います。何をもって「害する」と言うかについて、これは明確化したということだとすると、通常の事業の範囲と違って、くどいようですけれども、先ほど申し上げたような数量的なもので判断するという意図なのかなとも思いつつ、そうでもないのかなと、そこら辺がよく分からないと思いました。   他方で、事業が継続していく過程でどんどんじり貧になっていって、通常の事業を継続しているのだけれども在庫の規模がだんだん減っていくというときは、今までは、その結果として在庫が80から120ではなくて、50から80ぐらいに変動するとか、40から70ぐらいに変動するとかいうようなことが起こったとしても、通常の状況が続いているのであれば通常の事業の範囲であって、特段の約定がなければ処分権限がないとはいわないのではないかと思いますけれども、今回の御提案によると、そういう形で事業がだんだん通常の事業の過程で縮小した結果として、在庫が当初設定時の与信判断のときに想定していたよりも大幅に割り込む場合も、やはりその時点に至った後で在庫を処分すると「害する」ことになるのか、どういう場合に違いが生ずるのかが必ずしもよく分からないと思ったのと、その意味では、いずれも不明確といえば不明確な感じがしました。もしかすると今回は、行為態様よりは、害することを「知って」したという主観を要件とすることによって、譲受人がむしろ保護されやすくなることを意図されているのか、その辺りについて少し敷えんしていただければと思いました。 ○笹井幹事 大西委員からの1点目の御質問もありますし、今の井上委員からの御質問とも関係するのだと思いますが、害することを知ってしたというのは、ここは大西委員の御質問に関わることですけれども、その行為が担保権者を害するということと、設定者がそのことを知っているという二つのことを表現しているつもりです。ですので、おっしゃったうち、害すると思っていた、あるいは害する意図はあったのだけれども、客観的に害するものではなかったというものである場合には、それは害するという一つ目の要件を充足していないので、ここで制限は受けないということになろうかと思います。   井上委員からの御質問で、確かに通常の事業の範囲をこのように言い換えたということによって全てが明確になるわけではないかと思います。事務当局としても、要件を具体的に変えようとしたというよりは、「通常の事業の範囲」について、明確性を欠くという御指摘があったことも踏まえて、平成18年の判決で言及された「通常の営業の範囲内」という要件を踏まえて実務はここ15年ぐらいやってきたのだと思いますので、そこを余り大きく変えない形で表現することができないかと思って、今この文言にたどり着いたというところですので、大きく従来の議論とか、あるいは今まで平成18年の判決を踏まえて蓄積されてきた実務を変えたいと思っているわけではありません。   ただ、基本的に集合動産ですので、ここは井上委員からも繰り返し御指摘がありましたように、一方で処分権があるのだけれども、それに対応する形で、設定者によって補充が行われる、そういう活動の中で全体としておおむね想定された範囲内で推移していくというものだろうと思います。その処分行為によってどれだけ目的財産が減るかとか、処分価格が幾らだったのかということだけではなくて、設定者にどれだけの補充の能力があるのかということも含めて、「害するもの」に当たるのかどうかということが判断されるのかなと思っております。   そういう意味では、先ほどおっしゃったとおりだと思いますけれども、不当廉売で安く売ったからといって直ちに害することになるのかというと、本当に単純に価格が安かっただけで、十分担保価値の余裕もあるし、設定者の余力として十分補助するだけの能力があるということであれば、単に無償であったとか安かったというだけで害することになるわけでもないと思っております。逆に、最初に挙げられた、余裕を持って50を貸したと、与信をしたと、その際におおむね80から120ぐらいの範囲内で推移すると予定していたというようなケースですと、ここは私の個人的な考えになるかもしれませんけれども、少なくとも50を割り込まないと害するに当たらないかというと、そういうふうに思っているわけではありませんで、一定の余裕を見ているというのは、ある程度その経営状態が変動するとか、あるいは実行するために一定のコストが生ずるとか、そういうことを踏まえて、その50を貸すためには80から120ぐらいの価値で推移するのだということを合理的に算出されたのだと思いますので、こういった当初予定されていた80から120のような、そういった範囲を大きく割り込んでいて、かつそれを補充するだけの余力もないということになると、それはここでいうところの害することを知って、もちろん設定者が認識していたという前提ですけれども、ここの要件を満たすのではないかと思っています。   逆に、事業がうまくいかなくなって縮小する場合は、ここも意図としては、設定者とすれば一生懸命やっていて、担保権者を害するつもりもないのだけれども、縮小してしまっていて、元々持っていた担保権者が想定していたような担保価値を大きく割り込んできているというようなケースについては、客観的にいうと、担保価値が毀損されることによって担保権者は害されているのかもしれませんけれども、ここは害するということを知っていたという主観的な意図もありますので、1項のただし書の要件を充足しないというふうな認定も可能なのかなと思っております。   差し当たりは以上です。 ○道垣内部会長 よろしいですか。 ○井上委員 文言からそういうふうには読めないような気もしたので、少し意外感はあるのですけれども、ただ、意図は分かりました。ありがとうございます。 ○大西委員 今の御回答に対してなのですが、少し私も意外感があったのですが、例えば、いわゆる物販事業が非常に収益性が悪いので、それを縮小して別の在庫とかがないビジネスに変えていくというのは、会社の事業全体としては通常の事業における経営判断だと思うのです。ただし、こういう場合に在庫が減っていくということは、これは担保権者を害するということになるのでしょうか。この場合、担保対象物が減った分、金融機関に別の担保を供さなくてはいけないような場面はあると思うのですけれども、こういう場合が担保権者を害することに当たることについては疑問に思うのですが、いかがでしょうか。 ○笹井幹事 最終的には個別的な判断ということになるのかもしれませんし、担保権者がどういう担保価値を把握していて、在庫だけではなくて、この会社がいろいろな事業をやっているという前提で、例えば売掛債権とかほかの事業に関する様々な事業上の債権というのを取っているのか、他のものも取っているのか、その在庫だけを取っているのかということにもよってくるのかもしれません。ただ、ここも最終的には個別の判断なのかもしれませんが、一応、設定者がこういうものを売っていて、その事業に使うための資金を融資するに当たって、物を引き続き売るだろうという想定の下に有体物としての在庫商品を全体として担保に取っている、逆にほかのものは余り取っていないというときに、全体としては合理的な経営判断なのかもしれませんけれども、その事業についてはもう縮小していくということにして、倒産局面とかはまた別になってきますけれども、当該事業で取っていた商品全体についてどんどん縮小していくということになると、やはりそれは担保権者側からすると、害することに当たり得るのではないかとは思っておりました。 ○道垣内部会長 この段階の法務省の説明に何らかの拘束力があるのかというと、何もないので、余り気にされなくてもいいと思うのですけれども、恐らく、害するというのが、債権者のことをAとしますと、Aさんが弁済を受ける可能性が減ると、弁済を受けられなくなるということを意図してと考えるのか、Aさんが担保権の実行によって弁済を受けられないことを意図してと考えるのかということの違いなのだと思うのです。大西さんが、普通のことで場合によっては全部その在庫をなくしてしまうことがあるよねとおっしゃるのは、それはそれによって事業全体がうまくいくと、債権者のAさんが弁済を受けられる可能性自体を減少させるつもりはなくて、どちらかといえば運転によってきちんと払うと、そういう意図を持ってやっている行為なわけなのですが、しかし、設定した集合動産譲渡担保から弁済を受ける可能性というものはどうなっているのかといったら、大幅に減少しているという話で、私は債権者として弁済を受ける可能性を減らすという意思がなければいいのではないかと思うのですけれども。だから、同じ文言でも解釈がいろいろ分かれるのかもしれませんけれども。すみません、要らないことで。 ○大西委員 大西ですが、今の点に関する発言をしてもよろしいですか。私の考える論点は、第三取得者との関係で、そもそも処分ができないかどうかという議論です。私が先ほど申し上げた、収益性が悪い事業を縮小して他の収益性の良い事業を強化する場合において、在庫動産は減ったとしてもほかの資産が増加するようなケースでは、設定者としては当然、金融機関に対して担保保存義務に基づく担保の補填をしなくてはいけないと思います。その点は明確なのですが、だからといって、そのような在庫動産の処分行為を、担保権者を害する行為と考えて処分できないと解釈するのが妥当とは思えません。私は、通常の事業の中では、不採算事業の縮小等が実施されることが行われる中で、そのような在庫処分に関する規律を設けるべきではないと思います。 ○道垣内部会長 分かりました。   ほかに何か御意見はございますでしょうか。 ○藤澤幹事 藤澤です。二つのことを言いたいのですけれども、うまく言えるか自信がないのですが、まず一つ目は、この局面に限定せず、民法の一般的な話としても、他人の物を勝手に処分した場合に、譲渡人が自己物であるといって処分した場合は192条が適用され、即時取得のためには占有の移転が必要だったり、善意の判断時点が占有の取得時になったりします。これに対して、代理人ですよといって処分した場合には110条的な処理がされるというのが通説的な考え方なのだと思うのです。   ですから、処分権限があるかないかによって適用される条文が変わってくるわけではなくて、第三者がどのような外観を信じたかによって適用条文が変わってきます。例えば、担保権者を害することを知ってした処分であっても、相手方が担保権がないと誤信して買ったという場合は192条になるだろうけれども、担保権があるけれども害する処分ではないと誤信した場合というのが110条の系列になるのかなと思います。契約上の処分権限の制限があって、それに反した処分がなされた場合も、相手方が担保権がないと誤信していたのだったら192条の系列になるだろうし、担保権があるけれども制限が解除されていると考えたのだったら110条の系列になると考えられ、それは、道垣内先生がおっしゃったとおり、ここに別に書かなくても解釈でそうなるだろうというところです。そして、両者の要件に差が出てくることについておかしいと思うのだったら、それは民法一般についてそういう考え方がされていること自体がおかしいのだろうと思うのです。   そうはいってもこの局面で集合動産譲渡担保が付いていることを知っていたとしても、「普通、集合動産譲渡担保の目的物は売れるよね」というのが世の中の常識になっているのだとしたら、それについて制限の有無を調査させるのは相手方にとって酷ですので、その場面についてだけ110条が適用される場合よりも相手方保護の要件を緩めるというのはあり得る政策判断なのかなと思いました。   次に、害することを知ってした処分をどう規律するかという問題なのですけれども、これは当事者間で権限があるかどうかというのを規律するルールと、第三者の所有権の取得を規律するルールというのを切り離して考えたって別に構わないと思うのです。害することを知ってした処分には色々あり得るだろうけれども、基本的には3番の方で、当事者間でルールを設計したいのだったら、譲渡担保権者がしっかりその処分権限について制約をしておけばいいのではないかと思うのです。例えばこのラインを下回ってもらっては困るとか、下回るときは必ず相談しないと処分権限は発生しないのだとか、そういうふうに担保権者の方が頑張ればいいのだろうと思います。   他方で第三者の側から見れば、やはり安値で変えるというのは不自然なことである一方、普通の値段で買うのだったら、この債務者はビジネスで困っているかもしれないということを感じたとしても、処分権限等について調査義務を課すとすれば、取引の円滑さを害するようにも思われます。第三者が所有権を取得できるかどうかについては、安値なのかそうではないのかとか、もう少し別のルールを用意してもいいのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 設定者と担保権者との間で債務不履行というか、契約違反になるかどうかというのは、それは自由に決めてくださいということなのだろうとは思います。売却の態様において、譲渡担保の目的財産であるということを知っている場合と知らない場合とで、その態様が違うというのはおっしゃるとおりで、ただ、110条の場合には一般的には基本代理権が必要になったりしますので、いろいろ要件は錯綜いたしますけれども、そうかなという気がいたします。ただ、そうだからといって書き分けなければならないのかどうなのかは、先ほど申しましたように、当事者間の話は、それは全くもってどう決めるかはある種、自由ですから、第三者との間だけのことはこう書けばいいのかなという気はしますけれども。よく分かりませんが。   すみません、村上さんから既に手が挙がっていましたので、お願いいたします。 ○村上委員 ありがとうございます。大西委員が御指摘されたことと重なるのですが、担保権者を害することを知ってしたものというところについて、どう考えればいいのか疑問がございます。   例えば、設定者の下で働く労働者が、これまでどおりの事業活動をしていて、どうしてもその商品の需給によって売り切ってしまわなくてはいけないというような場面があったときに、それが担保権者を害するものだと言われてしまって、責任転嫁されてしまうというようなことがあるのではないかという懸念を持ちました。いろいろなケースがあるかと思いますけれども、あえて規律を設ける必要があるのかという点も含めて、御検討いただいてもよいのではないかという感じもいたします。 ○道垣内部会長 ありがとうございます。   ほかに御議論はございますでしょうか。具体的にどういう場合が害することを知ってしたものになるのかというのは、詐害行為取消しのところでも、害することを知ってしたといったりして、それを一つ一つ何か今ここで確定的に出せるかというと、なかなか難しいような気がします。   ただ、私は、感想を一言だけ述べますと、第2のところの規律は本部会における華、華というのはおかしいですが、その一つだと思うのです。というのは、ずっとこれまで判例法理が通常の営業の範囲という言葉を使っているときに、藤澤さんなどから、そもそも営業の範囲を、ここまではできるという概念というよりは、これを第三者が取れたり取れなかったりするための概念で、使い方がアメリカとは逆なのではないかというふうな話が出て、その点については、私は、逆であって何が悪いかという感じもするのですが、また、阪口さんその他から、やはり通常の営業の範囲という言葉は分かりにくいのではないかという話が出て、では、もっと端的に、全部できるけれども、害することを知ってした場合は駄目ですよというふうなことでルールを書き直そうと、それが通常の営業の範囲という言葉を使っていたときと具体的な規律が変わったのかというと、それは変わっていないのかもしれないのですが、ただ、こういうふうな枠組みにしたということは、良しあしを通り越して、結構画期的なことだったと思っておりまして、皆さんの御議論の成果だと私は思っております。ただ、今、村上さんからも話が出たように、まだ詰めていかなければいけない問題もあるかもしれませんが、その点につきましてはいろいろ更に御検討いただければと思います。   ほかにいかがでしょうか。   それでは、本日は早く終わる予定だったのですが、しかし、あと25分ありますので、最後までは行くというつもりで、部会資料34の「第3 優先する譲渡担保権の存在を知らないで譲渡担保権の設定を受けた者の保護」というところについて議論を移したいと思います。事務当局において部会資料の説明をお願いいたします。 ○伊賀関係官 それでは、「第3 優先する譲渡担保権の存在を知らないで譲渡担保権の設定を受けた者の保護」について御説明いたします。   第3は、譲渡担保権の即時取得の範囲や効果の考え方を整理するものでございます。説明に記載しております事例は、譲渡担保権設定者Aが第1順位のB、第2順位のCのためにそれぞれ譲渡担保権を設定している事例で、さらに、占有改定以外の方法による引渡しによりDのために譲渡担保権を設定した場合のDの譲渡担保権の即時取得について検討するものです。この場合のDは、第1順位のB、第2順位のCの存在を知って譲渡担保権の設定を受けた場合には、対抗要件のルールに従って第3順位の譲渡担保権を取得することとなる一方で、DがB及びCのいずれの譲渡担保権者も知らずに設定を受けた場合、他の要件を満たす限り、即時取得により最先順位の譲渡担保権を取得することになると考えられます。本文(1)は、この点の考え方を記載しております。   また、第1順位のBを知らなかったが第2順位のCを知っていた場合につきましては、即時取得の規定を適用しようとすると一義的に順位が定まらないこととなることを踏まえ、このような場合のほか、第1順位のBを知っていたが第2順位のCを知らなかった場合も含めまして、いずれかの譲渡担保権の存在について知っていたか、知らないことについて過失があった場合には、譲渡担保権の順位の即時取得は問題とならず、譲渡担保権の順位に関する一般的なルールに従い順位を決するという考え方を本文(2)において示しております。   また、同様のケースで、目的物を占有していた処分権限のないEがDのために目的別の譲渡担保権を設定した場合については、DがEについて処分権限があることを過失なく信じていた場合には、設定者Aから譲渡担保権の設定を受けた場合と同様に、本文(1)、(2)と同様に取り扱うとの考え方を本文(3)において記載しております。   以上の考え方につきましては、現行法の質権においても明文規定がないことなどを踏まえ、譲渡担保権の場合についても明文規定を設けず解釈に委ねれば足りるのではないかと考えておりまして、その旨を説明の中で記載しております。   以上について御議論いただければと思います。私からの説明は以上となります。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、この点につきまして、どなたからでも結構でございますので、御意見等を頂ければと思います。 ○片山委員 慶應大学の片山でございます。この譲渡担保権の即時取得の問題なのですけれども、そもそも出発点として、譲渡担保の法律構成で所有権がどこに帰属しているのかということにもよるのかとは思いますが、譲渡担保であっても所有権はAのところに残っているということを前提としますと、この即時取得の問題というよりも、むしろ単純に今回でいうと三重譲渡目がなされているというだけの問題として処理していいような気はしております。   逆に、譲渡担保なので所有権は移転していますという話をするならば、この問題が出てくるのかもしれませんが、恐らくそこは決めないということですし、これまでの議論でも、やはり譲渡担保といっても設定者のところに何らかの所有権あるいはそれに近いような処分権が残っていることが前提とされてきたと思いますので、それであるならば、わざわざ即時取得の問題として順位を上げる必要がどこまであるのかとよく分からないところでありまして、単純に三重譲渡で、3番目の人は淡々と、知っていようが、知っていまいが、不完全ながら公示もあるわけですし、単純に第3順位ということで、いいのではないかというのが正直な感想ではあります。   いずれにしましても、192条で即時取得をできるということであるとしても、飽くまでも192条の解釈論として展開できる話ですので、今回の担保法改正の中で明文の規定を置かなくても、5のところにも書いておりますとおり、解釈に委ねるということで十分可能で、むしろ明文の規定は置かないことでも足りるのではないかと、素直な感想を持ちました。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   ほかに御意見等がございますか。   こういう頭の体操みたいになると俄然張り切ってしまうのですが、Aさんではない人が、例えばEさんが占有していて、そのEさんが私が所有者だといってDさんのために譲渡担保権を設定したら、そのときにはB、Cはもう飛ぶのだね、いずれにせよ。 ○笹井幹事 それが(3)なのですけれども、今、部会長がおっしゃったのは、B、Cの譲渡担保権があって、Eさんからは、譲渡担保権の設定を受けたというケースですね。 ○道垣内部会長 そうですね。 ○笹井幹事 そのときにB、Cの存在を知らなかった場合は、Dが最優先の譲渡担保権を取得して、B、Cが1個ずつ下がるというつもりでしたので、全く担保権を失うわけではないと思っております。 ○道垣内部会長 しかし、譲渡担保の存在を知っていれば、その人には負けて、譲渡担保の付いているものとして譲渡担保権を即時取得するということになるわけですね。 ○沖野委員 第3そのものではないのかとも思うのですが、第2との関係についてです。第2が処分権限等となっておりまして、以前は後順位等の譲渡担保の設定は除いて、それ以外の処分であるとか譲渡についての規律として提案されていたように思うのですけれども、今回の第2はおよそ処分一般になっており、かつ、害することを知ったかどうか、それから、元々の契約によって制限が掛かっていたかどうかの二つに分けて規律されているために、いろいろな、後順位というか、新たな譲渡担保ですとか質権の設定ですとか、そういうものも全てここの処分に入ってくるのかと理解をしておりまして、ただ、第3を新たに設けているので、この部分だけは第2の処分からは抜かれるということなのか、そうではないのかということが一つ、気になっております。かつ、譲渡担保で占有改定以外の引渡し、かつ登記でなくて、という場合で、即時取得の要件を満たすような場合がどのくらいあるのかという感じはするのですけれども、占有改定以外の方法で、かつ設定するということでしょうか、実行まで行くのではなくて、設定するということだとすると、占有を移転するような形で担保を設定することになると、先順位というか、元々の譲渡担保権者を害するし、害することを知ってしたように思えるので、そもそも権限はないということにもなりそうに思うのです。第2においてわざわざ処分一般について書かれて、以前は譲渡とされて、担保は抜かれていたような気がするのですけれども、それを変えた上で、更に第3が設けられるということの関係がよく分からないのです。すみません、第2と第3との関係について、まずはどういう趣旨かということを確認させていただければと思います。 ○笹井幹事 そこは、特に処分を一般に広げたというつもりはありませんで、第2というのは基本的には担保権の目的である、担保権の負担があるものについて、しかし、それを担保権の負担がない形で譲渡するのがどういう範囲でできるのかというつもりでしたので、担保権の設定についてはこの第2からは除外しているというか、担保目的ではない譲渡を念頭に置いていました。ですので、第2の中から第3だけを特に抜いているというよりは、第3と第2は別物といいますか、そのように御理解いただければと思います。 ○沖野委員 よろしいでしょうか。ありがとうございます。資料の説明は分かりました。前回は全て譲渡になっていたのが、あえて処分にされて、かつ、害するという形にされたので、そこにいろいろなものを盛り込むという趣旨で、例えば質権設定なども害するということになるのかと思っていたものですから、そうではないということは分かりました。そうすると、第2の文言がそれでいいのかということも出そうですけれども、取りあえず今の点については結構です。 ○片山委員 今の点について確認をしてよろしいですか。第2は集合動産譲渡担保の話で、私は前回欠席したので、その議論の流れが分からないところもありますが、第3というのは特に集合の話ではなくして、むしろ個別の譲渡担保、あるいはより広く、譲渡担保ですかね、一般を念頭に置いた書きぶりにはなっているのですが、即時取得ですから動産ではあるのでしょうけれども、むしろ個別の動産譲渡担保が念頭に置かれているという理解でよろしいですか、それとも、あるいは両方を含む、いずれにせよ集合だけを問題としているわけではないということですよね、ここは。 ○笹井幹事 少なくとも集合だけが問題になるわけではないというのは、おっしゃるとおりです。第3が典型的に念頭に置いているのは、むしろ個別の動産譲渡担保でした。集合がおよそ入らないのか、入るのかというところまでは深くは考えておりませんでしたけれども、先ほど申し上げたように、集合の場合、その中の一つについて個別の担保権を設定するということは余りないのではないかという感じがしますので、基本的には個別の場面を念頭に置いていただければと思います。 ○道垣内部会長 第3の即時取得の話は、これは引渡しを受けていなくてもいいわけですか。それとも引渡しは受けていないといけない。 ○笹井幹事 即時取得ですので、引渡しは必要であると考えていました。 ○道垣内部会長 そうですね。そうすると、集合動産譲渡担保の目的物の一つについて、他者のために譲渡担保権が設定されたといったときにも、集合物から離脱した形になることが前提になるわけですね、即時取得うんぬんというときには。 ○笹井幹事 そうですね、集合物のうちの一つについて、あえて個別動産譲渡担保権を設定した場合には、そういうことになると思います。 ○道垣内部会長 そうすると、沖野さんがおっしゃっているような、【案2.1】の3とか2とか、取り分け3ですかね、1もそうかもしれないけれども、つまり、例えば質権が設定されて、集合動産譲渡担保の目的物の一つについて、現実に質権者にその目的物が引き渡されたと、それが集合動産譲渡担保権者を害することを知ってしたものではないということになると、それによって質権者は質権を取得するし、また、仮にそうだとしても、権限範囲を超えたことを相手方が知らなかったら、質権者が質権を取得するということになる。それは、譲渡担保はそうはならないかもしれないけれども、そうか、沖野さんがおっしゃっていることが分かってきた、質権だったら引渡しが必要になるけれども、個別動産の譲渡担保だったならば、即時取得ではなくて権限範囲内だと思って譲渡担保の設定を受けたということになったら、第2の話というのがやはり重なって出てくるのかな。私はうまく言えていないのだけれども、沖野さんがおっしゃろうとしたことは、以上の話に近いのですか、それとも遠いのかな。 ○沖野委員 近いか遠いかというと、すみません、私が伺いたかったのは、第2と第3がオーバーラップするのかどうかということだったのですが、部会長の今の御質問は、オーバーラップして出てくるというか、第2の結果、できるけれども、それが第3に行く可能性がありますかという話かと思います。ただ、第3自体は譲渡担保だけなので、質権の話は多分、第3の方には出てこないけれども、取扱いが整合するのかというような話は出るのかもしれません。それから、片山先生がおっしゃったように、第2は飽くまで集合の問題、第3は個別の問題ということであれば、およそ対象の違うものを扱っているということになるけれども、そういう趣旨だったら、個別動産についてはというふうに第3を書いた方がいいでしょうし、全般的には個別の場合が第3で一番問題になるといっても、集合との関係で出てくることもあるのではないかというのが部会長の趣旨であれば、そういう可能性があるのではないかというつもりでした。近いか遠いか、あるいは正確に理解しているのかどうかは分からないです。 ○笹井幹事 先ほどの沖野委員に対するお答えと重なるのかもしれないですが、事務当局の考えとしては、第2は集合の問題で、かつ真正譲渡というか、担保権の負担のないものとしての譲渡についてであり、第3は、典型的には個別のものについて、かつ担保目的の譲渡といいますか、譲渡担保権の設定と考えていましたので、第2と第3は基本的には重ならないものと考えていました。   それに対して、いや、第2についても、害するということによって、処分権限の範囲というか、第三者との相手方との契約の効力を区分していくということは確かに可能ですので、第2について、譲渡担保権の設定も第2のルールが適用されるようにすべきではないかという考え方は、もちろん一つの立法論としてはあり得ると思います。   ただ、第2がなぜ問題になってくるのかというと、本来、人の担保権の目的になっているものを、その担保権の負担を外して、きれいなものとして譲渡できるというルールがあるので、そのルールについて限界があるのか、ないのかという問題でして、担保権の設定の場合には、元々の担保権を負担したままで担保権を設定するということであれば、特段の第2のようなルールというのを設ける必要はないのだと思います。もちろん担保権の設定をした場合にも、前の担保権、より優先する担保権があるかないかという問題は出てきますので、その問題についてどう処理するかということは考えないといけないのですが、それについては、基本的には即時取得ができるかどうかという第3のルールの下でやっていけばよくて、第2のような特別なルールというのは要らないのではないかと考えておりました。 ○道垣内部会長 けれども、第3は先順位の人との関係で、先順位の何が飛ぶのかというのが中心の規律ですよね。それに対して、処分というのを広義に解して、質権の設定を受けたり、譲渡担保権の設定を個別動産について受けた人が、当該個別動産が集合動産に加わっているときに、それらの人が質権を取得したり譲渡担保権を取得するのかというのは、第3の問題ではないですよね。いや、第3の問題なのか、それは先順位の人がいるから。なるほどね。 ○笹井幹事 第3の問題というか、基本的に担保権を設定しても、その前の担保権が飛ぶわけでなければ、それは、後順位の担保権を設定するということができるということであって、この第3とは別のルールです。それは先順位の担保権を害しないので、後順位は設定できますと。ただ、順位が変わってきたりとか、前の存在について知らなかった場合にどうしてあげるかというのが第3の問題かと思っています。 ○道垣内部会長 分かりました。どうもすみません。   ほかに。結局、沖野さんは納得されたの。僕との関係じゃなくて、どちらかといえば事務局との関係で。 ○沖野委員 私は第2自体に結構疑問があるので、でも、第3については今のような問題設定だということは分かりました。ですので、その意味では分かりました。 ○道垣内部会長 第2について次回というか、その後にもう1回、根本的な疑問を提起されると、なかなか困るので、大きな疑問が第2についてあるということですと、それを議論する時間があるかどうかはともかく、どういう御疑問なのかということについては是非お教えいただければと。 ○沖野委員 時間を取ってしまってすみません。第2そのものについては、今ので大分分かりましたけれども、処分という対象になったので、対象が非常に広がったのではないかということが第3との関係でよく分からなかったのです。でも、今回は飽くまで真正譲渡についての権限ですと今、説明していただいたので、そうだとすると、そういうものとして第2の規律を明らかにした方がいいのではないかとは思いました。これまでの部会資料33は譲渡と書いてあり、見出しはともかく、中身は譲渡とされていたと思いますので、もしそうだとすると、その方がいいかもしれないけれども、逆に広げて、もう全部害する処分で行くのだということも一つの考え方かなと思いました。それでいいのかどうかとか、それから、後順位は付けられないという約定をしているのは、かなりありそうな気がするのですけれども、それはどういうような評価になるのかということは少し気になりました。   それから第2の2の1のところで、1と3の第三者の保護の仕方が平仄が合っているのかというのは、これは元々阪口先生から占有の基準時の話もありましたけれども、善意無過失の無過失の要否の話と、それから善意の対象として悪意についての話が出てくるので、知っているか、知らないかということまで含めて出てくるので、害することは知っていたけれども、害すると知っていたとは思わなかったというような場合はどうなるのかとか、そういった問題はあろうかと思っております。 ○阿部幹事 第2の話なのですけれども、【案2.1】をベースに少し話しますと、特定範囲に属する動産を処分することができるというのは、担保権の負担のないものとして処分したとしても、担保権者を害することはないということが前提になっているわけですよね。ただし書で、しかし害する場合、かつそれを知ってした場合はこの限りでないとなっているわけですので、その処分は担保権の負担のないものであるけれども、しかし、そうでありながら担保権者を害さないということが多分前提になっているように思われます。そうだとすると、真正譲渡の場合であれば、その対価の使い方次第で、例えば担保の負担のないものとして処分したとしても担保権者を害さないということがあり得るのに対して、同じような担保権を担保の負担のないものとして設定してしまうというのは、担保権者を害するとしか言いようがないのではないでしょうか。だから、処分をすることができるけれども、それは担保権者を害する処分だから駄目という説明をするか、その処分というのを沖野委員がおっしゃったように限定するか、いずれのやり方にするか、どういう表現にするかというのは何か色々とあり得る気がしますけれども、そういうことで、担保権設定、しかも先順位がいないものとしての担保権設定というのは、それは先順位権者を害しますよねということになって、結局そういうことは第2にのっとってもできないということでよろしいのではないかと思いました。 ○道垣内部会長 分かりました。整理の方向を示していただき、どうもありがとうございました。   ほか何かございませんでしょうか。 ○笹井幹事 基本的にこの解釈論の中身は余り議論がされなかったのですが、以前に同じ問題を扱ったときには、譲渡担保権の即時取得と順位の即時取得は分けて、順位の即時取得というのは考えられないことにしましょうと、譲渡担保権の即時取得はできるけれども、取得した譲渡担保権はもう即時取得とかのルールはなく、一般的な譲渡担保権の順位のルールによって決することにしましょうという提案をお示ししました。それは非常に評判が悪かったのですけれども、今日、内容について発言された片山委員は、どちらかというと昔の事務当局からの提案に近いような、要するに、即時取得ではなくて順位もこの場合は全部3番にしましょうということでしたので、以前の事務当局の提案に近かったと思います。それに対する特段の御意見はなかったのですが、事務当局としても特にここにこだわりがあるわけではなく、以前の提案が非常に評判が悪かったので、別のものを考えてお示ししました。こういう問題が幾つかの場面で指摘されてきましたので、立法に当たって、解釈論にすぎないとしても、一応の御意見をまとめておいた方がよいのではないかというのが今回、問題提起をした意図でしたが、結論的に片山委員がおっしゃったような方向でいいのではないかということであれば、そういう方向も十分あり得るかなと思っております。 ○阪口幹事 部会資料15に対して、評判が悪い意見を述べて申し訳ございませんでした。まず、今回の立法がされると、占有改定による譲渡担保が、激減か分かりませんけれども、かなり減ると思います。そうすると、即時取得問題は現実にかなり減るということになります。さらに、今回第3で出ている3人の人が登場するという局面は、まずないと思います。だから、この第3に関してはもう立法しない、条文を設けないというのは、それはそれで全く異論がありません。   部会資料15のときに評判が悪かったのは、あのときの議論は2者だったのですね。2者で、AがBに対して譲渡担保権を占有改定で設定しました、その後、Cさんに対しても譲渡担保権を設定しました、CさんはBさんの存在について善意無過失で、かつ、その後、現実の引渡しも受けましたという例です。多分現在の通常の解釈だったら、引渡し時点でも善意無過失だったら即時取得してBとCの順位が逆転しますよね。それは、即時取得は原始取得かどうかみたいなことは考えるにせよ、権利関係に何も影響しないということはないと考えられていたと思うのです。他方、この3者間の即時取得のような例になってくると、現実には生じにくいし、仮に今回の書かれているような、片方は知っていて、もう片方は知らないという場合のルールに関しては、それはもう、どちらか知っていたら、もうアウトでもいいだろうとも思います。つまり、あまり、起きないことについての議論だったら、もうお任せしますという感覚で、特に意見を先ほど述べなかったのですけれども、仮に2者で占有改定を受けた先順位譲渡担保権者と現実の引渡しを受けた後順位担保権者という局面だとしたら、それはやはりまだ即時取得の余地は残っているのだろうと私は思うのです。ただ、そこも占有改定による譲渡担保設定が減るから立法しないという選択もあるだろうとも思っているので、先ほど意見を述べなかったのですけれども、およそ、部会資料15で出ていたような、即時取得はもう起きないのですというルールに賛成ですかと言われたら、いや、少しそれは違いますというふうには思います。 ○片山委員 慶應大学の片山です。今の2者の問題で、先の方が占有改定で後の方が現実の引渡しでという話を、従前、譲渡担保の法律構成で所有権移転構成の場合には、それは即時取得で解決すべき問題かもしれませんが、設定者に何らかの所有権とか権限が残っているということですと、単純に二重譲渡担保権の設定で、新しい立法になりますと、第1譲渡担保は占有改定で、第2譲渡担保が現実の引渡しですと、第2の現実の引渡しの方が優先するという結論が得られることになるので、それについて、なお即時取得でどこまで構成するか、即時取得が理論的には考えられなくはないと思うのですが、それをわざわざ考えて、しかも規定を設けるということはなくて、解釈論として余地が残るというのは当然あるかと思うのですけれども、それに対応する必要が2者の場合もなくなっていくのではないかという気はいたしました。 ○道垣内部会長 ほかにいかがでしょうか。 ○藤澤幹事 藤澤です。私もかつての案に反対意見を申し上げてしまったような気がしているのですけれども、そのときは、即時取得制度というのは、対抗要件で既に決着が付いたところを、それを覆す制度であるので、対抗要件制度があるから即時取得を排除するというのは少し違うのではないかというようなことを申し上げました。今回の御提案につきましては、即時取得を普通に適用するという御提案でしたので、特に条文を設けなくてもそのようになるだろうと考えておりまして、先ほど何も発言しなかったということです。反対に、もし即時取得のルールを適用しないということでしたら、むしろそれを立法する必要があろうかと思います。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。おっしゃっているとおりですよね、対抗要件をひっくり返すというのが即時取得の制度ですから、そうなるのだろうと思いますが。   ほかに。大体こういうふうなことになるだろうということですかね。二ついて、片方だけ知っているときに二つともなくなるとか、そういうのが解釈論として本当に必然的なのか、よく分かりませんが、まあそうだろうということですよね。 ○沖野委員 申し訳ありません、解釈として展開するということで結構なのですが、片山委員が御指摘になった対抗要件間の優劣というか、占有改定最劣後と登記最優先という二つが出ていたと思いますけれども、どちらに行くのかは分かりませんが、仮に占有改定最劣後であるとすると、占有改定のものが1、2と来て、3番目が現実で行くと、過失があろうがなかろうが、それが最優先になると思うのですが、そこに即時取得が掛かるということの意味は一体どういうことなのかというのが、あるいは第1、第2は登記をしていたら、それでもやはりこのルールの下で無過失ということが十分あり得るという想定なのか、(3)というのが全然違う主体なので、ここはまた大分違う話だと思うのですが、それらでの提案との整理というのも必要ではないかと思っております。ただ、これはあるいは阪口先生がおっしゃったことでしたか、そこまでする問題かどうかという御指摘もあるのかとは思いました。けれども、そこによっては話がまた違ってはこないかもしれませんけれども、例えば即時取得をするということはどういう意味なのかとかという話に関わってくるのではないかと思っております。 ○道垣内部会長 沖野さんがおっしゃることは極めてもっともで、ただ、それはルールを明文化しなければならないということには必ずしもつながらないと思うのです。ただし、ここの説明のところに、現実の引渡しを受けたときにはその人が勝つというルールを前提とするならば、ある一定の局面においては即時取得についての問題を語らなくても、有過失であってもその人が勝ちますよということを、ケースの中にきちんと埋め込んで説明をしておくということは多分必要なのだろうと思います。したがって、そこはそうしていただくという必要があるかなと思います。ただ、多分その1個だけ書くわけにもいかないと思いますので、ルールとしてゴシックで書く必要は多分ないのかなと思いますけれども。 ○沖野委員 解釈に委ねることで十分だという御趣旨であれば、それはそうだと思ってはおりますが、今おっしゃったのは、ゴシックで明らかにしていく事項ではあって、そこに対抗要件に関する立場がどうであるかということを細かく書いていくという話ではないと、そういう御趣旨ですか。 ○道垣内部会長 微妙ですね、ゴシックでもいいかもしれないし、その1個下の@、A、B、Cというところとかの説明に書くべき事柄なのかもしれないけれども、それは整理の仕方だと思いますので、少し考えていただくことにしたいと思います。   ほかによろしいでしょうか。多くの方は、即時取得は成立するだろうということなのだろうと思いますので、少しそこの整理をしてもらいたいと思いますが。 ○阿部幹事 時間の押しているところ、申し訳ありません。Bについては、一つでも知っていれば最劣後というのは当然ではないだろうという話でしたけれども、確かに、例えばDがBのことだけ知らなかったというような場合ですと、例えば両者の間で抵当権の順位の譲渡があったのと同じような帰結にすれば、Cの立場は悪くすることなく、BD間だけで調整するというようなことも考えられなくないかなと思いました。 ○道垣内部会長 そうですね、面倒だからそこまではやらないということだと思いますが、しかし、解釈論として阿部さんが展開されるのはもちろん妨げないですけれども。   ほかに、よろしいでしょうか。沖野さん、何かありますか。 ○沖野委員 少し戻った箇所でもよろしいですか。すみません、固定化のところなのですけれども、次の資料を用意されるときに、一応ここも明らかにしておいていただければと思っていたことがあるのですが。   申し訳ございません。5ページの、今回いろいろなやり取りで私も蒙を啓かれて、そういうことだったのかと分かったのですけれども、【案1.2】で強制執行の場合に、集合動産譲渡担保権者のうちの誰かから配当要求があったときには固定化が起こるという場合について、その固定化というのが差押えにおいて特定される部分全てなのか、配当要求に係る担保権者の範囲であるのかということは、もう一つ議論になるように思われまして、むしろ担保権者の範囲ということの方が、ほかとの整合からも、筋にはなりそうだと思いましたので、少しその点も併せて御検討いただければと思います。 ○道垣内部会長 ほかに、よろしいでしょうか。   先ほど申しましたように、年度内に何とか形を整えたいと思っておりますので、時間の限定もありますので、何かお気付きになった点、先ほど沖野さんがおっしゃったように、こういう点はきちんと解説に書くべきではないかとか、やはりここのゴシックのところは文章がおかしいので、こういうふうにすべきではないかというふうな、どんな点でも結構でございますので、事務局等にメールで随時お知らせいただければと思います。まとめに向けて、よろしくお願いいたします。   それでは、ほかに御質問、御意見がないようでございましたら、本日の審議はこの程度にさせていただければと思います。   次回の議事日程等につきまして、事務当局から説明をしていただきます。 ○笹井幹事 次回は2週間後になりますけれども、今年の10月24日火曜日午後1時30分から午後6時まで、場所は法務省20階、第一会議室となります。次回も正式な開催ということになりますので、新しい資料を御準備する予定でございます。 ○道垣内部会長 ありがとうございました。   それでは、法制審議会担保法制部会の第38回会議を閉会にさせていただきます。   本日も熱心な御審議を賜りまして、誠にありがとうございました。また再来週もよろしくお願いいたします。 −了− - 1 -