上川法務大臣年頭所感

令和3年1月12日(火)

 法務大臣の上川陽子です。
 皆様,新年明けましておめでとうございます。
 皆様におかれましては,新型コロナウイルスの影響で,静かな年末年始を過ごされ,例年とは違った新年を迎えられたものと思います。
 そのような中でも,こうして皆様と元気にお会いできることを大変嬉しく思っております。
 新年に当たり,私から法務省職員の皆さんに3点申し上げます。
 まず,1点目は,積極的かつ自信を持って業務に当たってほしいということです。
 私は,これまで,ときには法務大臣として法務省の中から,ときには司法制度調査会長などの立場で法務省の外から,法務行政に継続的に携わってまいりました。法務省は,所管している業務の性質上,各局が自己完結的に課題に対応する場面が多いため,かつては,思考がどちらかと言えば内向きで,守りに入りがちであり,新たなものにチャレンジする意識や,他の組織等と連携していく意識が薄いと感じておりました。しかし,今回3回目の法務大臣に就任し,私は,これが大きく変化してきていると実感しています。
 私は,法務行政が国民の皆様から信頼を得るためには,職員が,気持ちを一つに,ワンチームとなって一つ一つの職務に積極的に取り組んでいかなければならないと申してまいりました。
 矯正施設における被収容者の新型コロナウイルスの感染者数は,海外に比べて極端に低いと言える状況です。アメリカ合衆国の連邦が昨年12月現在で約3万4,000人,英国が昨年11月現在で約1,500人,これに対して我が国は,本日現在で38人です。各国の収容人数,処遇状況等に違いがあることを踏まえても,我が国の矯正施設が,新型コロナウイルスの感染拡大を相当程度封じ込めていることがお分かりいただけると思います。
 これは,矯正施設の職員の方々が,日々,高い意識と緊張感を持って,ワンチームとなって感染対策に取り組んできた成果です。
 政府は,本年1月7日に,一都三県を対象として,緊急事態宣言を発出しました。矯正施設に限らず,全ての法務省の施設・官署において,現下の最大の課題は,クラスターの発生を封じ込めることです。リスクを管理するという意識を強く持ち,客観的なデータの収集を迅速に行って,対策を講じることが,極めて重要です。職員一人ひとりが,一層の緊張感を持ち,気持ちを一つに協力し合い,このコロナ禍という困難を乗り越えていきましょう。
 また,私は,以前に法務大臣を務めたときから「省内の縦割りを排し,各組織が横串で取り組んでほしい」と皆さんにお願いしてまいりました。菅内閣でも「縦割り行政の打破」が掲げられています。
  現在,外国人在留支援センター(フレスク)においては,他省庁の機関と緊密に連携・協力をしながら在留外国人への支援を行っており,この取組は,正に「縦割り行政の打破」の象徴であると感じています。
 さらに,私は,法務行政は,地域や民間の方々からの信頼や支えによって成り立っており,特に近時は,法務行政の施策の実行には,地域や民間との連携が重要であると申してきました。
 再犯防止のための取組では,地方公共団体との連携が積極的に進められております。また,昨年末地下の食堂で提供された「立ち直り応援カレー」や,少年院における高校教育の機会提供に向けた取組などは,民間の方々との間で信頼関係を築いてきたからこそ,実を結んだものです。
 このように,法務省は,着実に変化を遂げ,成果をあげています。職員の皆様におかれては,このような流れを止めないで,是非しっかりと前に進めていただきたいと思います。そのためには,これまでの取組に自信を持ちつつ,自らの業務を冷静に顧みながら,常に,先手先手で,様々な取組をより一層積極的に進めていただきたいと思います。
 本日,皆様に申し上げたいことの2点目は,コロナ禍という困難な時期だからこそ,前向きな気持ちで,組織や業務の見直しを行い,法務行政のイノベーションを行っていただきたいということです。
 コロナ禍においては,それまで当たり前に行っていたことについて,制限が加えられ,また,自粛を余儀なくされることで,人々が委縮し,ネガティヴになりがちです。
 もっとも,困難の中においても,法務行政は,直面する課題や問題を乗り越え,その使命である国民生活の安全・安心を実現していかなければなりません。
 そのためには,職員の皆さん一人一人が,「今,自分に何ができるか,自分は何をすべきか」を常に考え,それに基づいて行動していく,そして,職員同士が互いに声を掛け合って,取組を進めていくという意識を強く持っていただきたいと思います。
 もちろん,以前と全く同じやり方で取組を進めることが難しい場面が多くあると思われます。しかし,今のような社会の転換期は物事を変えるチャンスです。困難な時期のため,今までのやり方では対応しきれない状況にあるからこそ,自分自身や組織の弱点を客観的に見直し,これを改善していく強い意志を持って,ピンチをチャンスに変えていただきたいと思います。
 コロナ禍では構成員が集合しての会議開催がなかなか難しい状況にありますが,ウェブ会議といった代替手段を積極的に活用することで,国内外で会議を開催できていることはその好例の一つです。
 法務局や入管の窓口に来ていただくことが困難な状況が生じ得ることも踏まえ,行政手続のオンライン化を一層推進するための検討も進められています。
 また,コロナ禍は,全世界が直面している困難ですから,先ほど述べた我が国の矯正施設の感染対策のような積極的な取組と成功例は,世界が注目するものになると思われます。
 このように,自らの組織や業務を客観的な姿勢で見直した上,これまでの考え方や,やり方にとらわれない柔軟な思考で,デジタル化を始めとした法務行政のイノベーションを図り,法務行政の取組を更に前に進めていまいりましょう。
 3点目は,京都コングレスについてです。
 本年3月には,京都コングレスが開催されます。
 我が国は6年前にコングレスのホスト国に名乗りを上げることとし,その当時1回目の法務大臣の職にあった私が,そのことを決断させていただきました。その私が,京都コングレス延期後開催のこの時期に,再度ホスト国の法務大臣として,コングレスでの議論をリードさせていただける立場にあることは,正に巡り合わせであります。こんなに運命を感じることはありません。
 現時点で,新型コロナウイルスの収束を見通すことはなかなか難しいですが,京都コングレスは,コロナ禍であるからこそ,実施する意義がより高まっていると考えています。京都コングレスでは,これからの時代において,SDGsが掲げる「誰一人取り残さない社会」を実現するために,刑事司法が果たすべき役割等について議論いたします。また,世界保護司会議などを通じて我が国の再犯防止に向けた取組を世界に発信するとともに,この機会を捉え,我が国の刑事司法制度について,正しい理解を広めるため,積極的に対外発信してまいります。
 京都コングレスの開催は,法制度整備支援などの法務省の地道な取組が結実した成果の一つです。また,法務省職員が,国際感覚を身につけ,これを磨くことができる絶好の機会でもあります。法務省職員全員がその開催の意義と重要性を共有し,そして,ここまで京都コングレスの開催に向けて協力してきた関係機関・団体とのパートナーシップを一層深めながら,この会議の成功とその後のレガシー構築に向けて頑張っていきましょう。
 最後に,法務省職員とその御家族の皆様の御健康と御活躍を心から御祈念申し上げまして,私の年頭のあいさつとさせていただきます。
 今年も1年どうぞよろしくお願いいたします。
(以上)