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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年1月15日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件はございませんでした。
 続きまして,私から2件御報告をいたします。
 1件目は,法制審議会への諮問についてです。
 本年2月に法制審議会の総会を開催し,2つの検討課題について新たな諮問をすることといたしました。
 1つは,離婚及びこれに関連する制度に関する見直しであり,もう1つは,担保法制の見直しです。
 まず,離婚制度に関しましては,近年,父母の離婚に伴い,養育費の不払いや親子の交流の断絶といった,子の養育への深刻な影響が指摘されています。
 また,女性の社会進出や父親の育児への関与の高まり等から,子の養育の在り方も多様化しております。
 このような社会情勢に鑑み,子の最善の利益を図る観点から,離婚及びこれに関連する制度につきまして,検討を行う段階にあると考えております。
 この問題につきましては,令和元年11月から,「家族法研究会」の検討に法務省の担当者を参加させ,私からも,担当者に対して,積極的に議論に加わるよう指示をしてまいりました。そして,その検討状況につきましては,その都度報告を受けてまいりました。
 父母が離婚した場合には,子の心身に大きな影響が生じ得ることになります。
 私自身,かねてからこの問題に関心を寄せておりまして,子の最善の利益を図るために,法制度はどのようにあるべきかを考えてまいりました。
 先ほど申し上げました現在の社会情勢に鑑みまして,この問題につきましては,正に早急に検討すべき課題であると考えております。
 そこで,今回,父母の離婚に伴う子の養育の在り方を中心といたしまして,離婚制度,未成年養子制度や財産分与制度といった,離婚に関連する幅広い課題について,私がこれまでも申し上げてまいりましたチルドレン・ファーストの観点で,法改正に向けた具体的な検討を行っていただくために,このたび,法制審議会に諮問することといたしました。
 次に,担保法制の見直しについてです。
 近年,不動産担保や人的担保に過度に依存しない融資を促進する必要があるとの認識が高まっており,在庫などの動産や,売掛債権などの債権を担保の目的として活用する手法が注目されてまいりました。
 しかし,民法には,担保設定者がその動産についての占有を維持したまま,これを担保の目的としたり,複数の動産や債権を一体として担保の目的としたりすることを予定した規定はありません。
 現在は判例によってルールが形成されていますが,法律関係の明確化等を図るため,動産や債権を中心とした担保に関する法制の見直しのための検討を行う段階にあると考えております。
 この問題につきましては,平成31年3月から,「動産・債権を中心とした担保法制に関する研究会」で,検討が進められてきましたが,法改正に向けた具体的な検討を行っていただくため,このたび,法制審議会に諮問することといたしました。
 これら2つの検討課題につきまして,法制審議会において,充実した調査審議がされることを期待しております。
 2件目は,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況についてです。
 1月8日(金曜日)から昨日までの間に,職員については,13の官署・施設において,計19名の感染が判明いたしました。
 また,被収容者につきましては,横浜刑務所におきまして,25名の感染が判明しております。
 詳細は既に公表されたとおりです。
 横浜刑務所のクラスター事案を始めとして,複数の施設・官署において感染が確認されている現状におきまして,最大の課題は,感染が判明した場合にそれを拡大させずに,クラスターの発生を封じ込めることであると考えております。
 法務省といたしましては,リスク管理を強く意識し,一層の緊張感を持って,感染拡大を食い止めるために全力を尽くしてまいります。

法制審議会への諮問に関する質疑について

【記者】
 先ほど御発言がありました法制審での諮問事項についてお尋ねいたします。共同親権ですとか養育費不払い問題といった家族法制の在り方については,社会的な注目もかなり高い部分かと思いますが,改めて今回諮問される御所感と,大臣として具体的に検討を期待される論点,また今後の検討のスケジュール感など可能でしたらお聞かせください。

【大臣】
 父母の離婚に伴う子の養育の在り方等に関する家族法制の検討は,現下の社会情勢において喫緊の課題であると考えております。また,国民の家族生活,あるいは父母の離婚を経験したお子さんの成長に与える影響が大きい,大変重要なものと考えております。
 今回,法制審議会に諮問することを決定したわけですが,法制審議会におきましては,今回の諮問に基づきまして,離婚に関連する幅広いテーマについて御検討されるものと考えております。
 その中で,子どもに影響が生ずる課題については,子どもの最善の利益を図るというチルドレン・ファーストの観点から,実態に即した検討がなされることを期待しております。
 例えば,父母の協議離婚時に,子の養育について必要な事項の取決めがされるためには,どのような制度的措置を講ずるのが相当かといった問題でありますとか,離婚後の子の養育に,父母がいかに関わるべきかといった問題につきましては,様々な選択肢を視野に入れて,幅広く御検討いただきたいと考えております。
 答申の時期についても御質問がありました。現時点で答申の時期を申し上げることはなかなか難しいところではございますが,法制審議会では,スピード感を持って充実した調査審議がなされること,そして,できる限り早期に答申がされることを期待しているところでございます。

性犯罪に関する質疑について

【記者】
 現在,新たな改正に向けた検討が進められています刑法の性犯罪規定についてお伺いいたします。
 2017年の改正の際には3年後に見直しを検討するという附則が設けられましたが,この再改正の必要性ですとか意義について,大臣御自身の見解を聞かせてください。

【大臣】
 平成29年の刑法改正につきましては,性犯罪の構成要件について110年ぶりの改正を行ったものでございます。大変意義のある一歩であったと私自身認識しております。
 他方で,改正に至らなかった点についても,当時指摘をされて,議論もされておりました。また,被害当事者や支援者の方々から更なる改正についての御意見があったことも事実でございます。
 改正法の附則におきまして,3年後検討の条項が設けられまして,政府に対して,性犯罪に係る被害の実情を踏まえた施策の検討を求めておりますのは,こうしたことを踏まえたものであるということでございまして,この附則に基づきまして,しっかりとした検討を進めていくことが極めて重要と考えております。
 この附則を受け,法務省においては,平成30年4月に実態調査ワーキンググループを立ち上げております。被害当事者や専門家からのヒアリングを行うなど,性犯罪に係る実態調査を進めて,令和2年3月にその結果を取りまとめたところです。
 そして,令和2年6月以降は,この実態調査の結果も踏まえまして,「性犯罪に関する刑事法検討会」で活発な議論が進められているところです。
 この3年の間に一連の取組について進めてきたということでございまして,こうしたことの結果をどのように形にしていくのかという段階にこれから入ろうかと思っております。

【記者】
 今お話がありました検討会でも,公訴時効の撤廃ですとか,性交同意年齢の引上げなどについて議論されていますが,これらの事項は盛り込まれる方針なのでしょうか。また,再改正の手続に向けた今後の具体的なスケジュール感についてもお聞かせください。

【大臣】
 「性犯罪に関する刑事法検討会」においては,ただ今御指摘いただきました論点につきまして,すなわち,強制性交等の罪について公訴時効を撤廃すること,いわゆる性交同意年齢(13歳未満)を引き上げること,また,強制性交等の罪について,暴行・脅迫の要件を撤廃し,被害者が性交等に同意していないことを要件とすることなどにつきまして,議論が行われているところでございます。
 議論に当たりましては,刑事法の研究者や実務家のほか,被害当事者や被害者心理の専門家の皆さんにも委員に入っていただきまして,それぞれの専門的な知見を踏まえた様々な意見が述べられていると承知しております。多角的な観点からの法改正の要否・当否につきまして,論点をしっかりと整理して,議論が行われてきたものと承知しております。
 法務大臣として,検討会に検討をお願いしている立場でございまして,具体的な取りまとめの方向性について,申し上げることは差し控えさせていただきたいと思います。
 また,現段階で,具体的なスケジュールについて確たることを申し上げるということは困難でございますが,スピード感を持って,充実した議論が行われるものと期待しているところでございます。

慰安婦問題に関する質疑について

【記者】
 1月8日に,韓国のソウル中央地裁で,日本軍「慰安婦」被害者12名が日本政府に対して起こした損害賠償請求訴訟の判決が下されました。原告側の全面勝訴でした。
 この裁判の被告は日本政府で,法律上の代表者は,上川陽子法務大臣となっております。
 それでこの判決に対して,菅首相は「国際慣習法として,主権免除の原則があるので,この判決は断じて受け入れられない。訴訟は却下すべき」として,裁判に応じることも拒否してきました。
 しかし,主権免除というのは,20世紀以降,国際関係がいろいろと複雑になっていく中で,それを制限して,外国の国家も他国の民事裁判権を受け入れるという流れが,国際的に作られてきましたし,国連でもそのルール作りのための条約が2004年に採択され,日本も批准して,2009年には,それに基づく国内法も制定されました。ですから,菅首相の御発言というのは非常に19世紀的な感覚,非常に古い感覚ではないかというふうに思います。
 それで今回の韓国の裁判については,戦時中に日本政府も関与したその組織的な非常に極めて非人道的な不法行為によって重大な人権侵害を受けたのに,日本の裁判所では,事実認定されても形式的な理由で敗訴したと,それで,1965年の日韓請求権協定や2015年の日韓合意でも,個人賠償やその被害者が納得できる人権救済が置き去りにされてきたということで,日本軍慰安婦にされた被害者の方が最終的な手段として韓国の裁判所に2016年に提訴して勝訴したということです。
 しかし,日本政府はそれに対して「主権免除」を理由にして裁判そのものに応じていないということですが,被告にされた日本政府の法務大臣として,今回の裁判の判決をどのように受け止めて,今後どのように被害者や韓国政府に応答していくのか,大臣の御所見をお願いいたします。

【大臣】
 御質問がございました本件訴訟につきましては,国際法上の主権免除の原則から,日本国政府が韓国の裁判権に服することはなく,却下されなければならない,これが我が国政府の一貫した立場でございます。
 今回,それに対してということでございますが,そのような姿勢において,法務省といたしましても,政府の一員として,外務省と適切に連携・協力してまいりたいと考えております。

【記者】
 今の質問ですが,主権免除だということですが,その流れが,こういった特に非人道的な人権侵害事件については適用されない,その主権免除を制限するという国際的流れもあると思うのですが,それについては大臣はどのようにお考えなのでしょうか。

【大臣】
 繰り返しになりますが,本件訴訟につきましては,国際法上の主権免除の原則にのっとりまして,日本国政府が韓国の裁判権に服することはなく,却下されなければならないと,これが我が国政府の一貫した立場であるということでございます。

新型コロナウイルス感染症に関する質疑について

【記者】
 コロナ対策のことで伺いたいのですが,法務省の新型コロナウイルス感染症の対策本部が1月8日に開かれたと思うのですが,その内容と,今後法務省としてどのように今回の緊急事態宣言に対応していくのか,特に入管関係,入管行政について,どのように対応されるのか,仮放免のことですとか,在留特別許可のことですとか,もし,議題で出たのであれば教えていただきたいのですが,よろしくお願いいたします。

【大臣】
 一都三県を対象区域として緊急事態宣言が発出されたことを受けまして,1月8日(金曜日)でありますが,法務省の新型コロナウイルス感染症対策本部を開催いたしました。
 この対策本部におきましては,各局部課から職員・被収容者の感染状況につきまして,報告を受けました。
 その上で,私から各局部課に対しましては,「これまで法務省は,秋冬の季節性インフルエンザとの流行期と重なったときのことを想定して,対策に万全を期すということで,1月8日に至るまで,対策本部の基本的な課題として,この季節性インフルエンザとの流行期への万全の対策という危機管理について,ギアをしっかりと上げて,準備,取組を進めてまいりました。そして,その状態のレベルを落とさずに,それに加えて,今の状況に応じた工夫を凝らしていただきたい」ということを指示したところであります。さらに,法務省では,全国津々浦々の様々な官署・施設において,国民の皆さんとの接点を持ちながら,それぞれの役割を担っているわけでありますので,「職員一丸となってこの新型コロナウイルス感染症に立ち向かっていただきたい」ということを指示したところであります。
 今回,緊急事態宣言の対象区域のみならず,法務省の全国の官署・施設につきまして,レベルを上げて対応するようにということで,リスク管理の更なる徹底ということを意識して,改めて,法務省新型コロナウイルス感染症対策基本的対処方針の内容を職員に周知徹底することや,体制や取組については,状況に応じて,随時見直しを図ることなどを指示したところでございます。
 また,職員一人ひとりが法務省職員としての自覚の下で,公私において感染症対策を強く意識し,自らの行動を律すること,20時以降の不要不急の外出自粛を周知徹底すること,勤務職員の7割を目標とした終日テレワーク勤務を強力に推進すること,また,早出遅出勤務をフレキシブルに活用して,職員の感染リスクを低減することにつきましても,指示をしたところでございます。
 御関心の入管に関する取組ということでございますが,今回の対策本部の場では,特段の指示を明示した形では行っておりませんが,出入国在留管理庁に対しましては,今回の緊急事態宣言を受けまして,仮放免中の方を含めた外国人の方々が,新型コロナウイルス関連の情報につきまして,過疎にならず,適切にアクセスできるよう尽力するよう指示をしたところでございます。これは特別に指示をしているところでございます。
 また,今回の緊急事態宣言の内容や政府の基本的対処方針の変更を受けまして,現在,法務省の基本的対処方針の改訂作業をしているところでございます。来週中にも,その改訂版につきまして,各組織に周知し,法務省ホームページにおきましても掲載することとしております。
(以上)