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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年4月20日(火)

 今朝の閣議において,法務省案件はございませんでした。

所有者不明土地問題解決のための民法等改正案に関する質疑について

【記者】
 所有者不明土地問題を解決するための民法など関連法の改正案が,本日の参議院法務委員会で採決され,近く成立する見通しです。
 同法案には,相続登記の義務化や手続の負担軽減,相続した土地を国庫に帰属させられる制度などが設けられています。
 大臣の所感と今後の所有者不明土地問題を巡る取組についてお願いします。

【大臣】
 今回提出しております2つの法律案でありますが,所有者不明土地の発生の予防と利用の円滑化の両面から,総合的に民事基本法制の見直しを行うもので,所有者不明土地問題の抜本的な解決に資するものと考えております。
 本日も参議院法務委員会で質疑が行われる予定でございまして,充実した御審議をいただいた上で,速やかに成立させていただけるよう,引き続き丁寧に説明を尽くしてまいりたいと思っております。
 その上で,両法律案が成立した場合には,その施行に向けてしっかりと取り組んでいく所存でございます。
 まず,両法律案に盛り込まれました各種の新制度がございます。その適切な実施・運用のためには,新制度の趣旨・内容につきまして,国民の皆様の理解を得る必要があると考えております。
 関係機関・関係団体とも連携しつつ,効果的な周知・広報活動に努めてまいりたいと考えております。
 また,両法律案におきましては,法務省・法務局において新たな業務を担うことになる施策も数多くございます。その取組につきましては,計画的に体制を整え,十分な事前準備をしてまいりたいと思っております。
 法務省といたしましては,民事基本法制及び民事法務行政を所管する立場から,引き続き,所有者不明土地問題の抜本的解決に向けまして,関係省庁とも連携しつつ,しっかりと対策を進めてまいりたいと考えております。

入管法改正案に関する質疑について

【記者】
 入管法改正についてお伺いします。
 今回の法案は,前回聞いたように3回目の難民申請以降,送還忌避罪の対象となるのですが,4月7日に会見したミャンマーのカチン族の方,お父様が反政府組織の将校で迫害を受け,2回にわたりこれまで申請を拒否され,今現在3回目の申請中です。
 その方は,私は命が危ないので難民申請をしています,命の心配をしないで暮らしたいだけですと訴えられていました。他の兄弟の方々は別の国に避難し,既に難民と認定されております。
 今回この法改正が行われれば,彼女のような難民に送還のおそれが生じ,拒否すれば罰則適用となるのですが,昨年のミャンマー難民認定はゼロというところから見ても,やはりこの法改正,問題があるのではないでしょうか。

【大臣】
 御質問は個別の件に係る事柄でございまして,基本的に答弁は差し控えさせていただきたいと思います。
 その上で,法律案の改正に関する事柄ということで,御質問がございましたので,その中でお答えさせていただきたいと思います。
 いわゆる送還停止効の制度でございますが,これは難民認定申請中の者の法的地位の安定を図るために設けられたものでございます。
 難民認定申請中でありましても,法的地位を図る必要がない者について,送還停止効の例外とすることが許容され得ると考えております。既に二度の難民不認定処分又は補完的保護対象者の不認定処分を受け,いずれの処分も行政上確定した者につきましては,その諸審査が十分に尽くされたものと考えております。このような者に,通常法的地位の安定を図る必要はないことから,送還停止効の例外としたところでございます。
 もっとも,3回目以降の申請におきましても,難民又は補完的保護対象者の認定を行うべき相当の理由がある資料を提出した場合につきましては,送還は停止されるということであります。
 したがいまして,送還停止効の例外とすることにつきましては,不相当との御指摘については当たらないと考えております。

【記者】
 今おっしゃられた二度にわたって審査をした者は,審査が十分に尽くされ法的地位の安定を図る必要はないと,先週の答弁どおりなんですが,この再申請の原因というのは,いわゆる権利の濫用ということではなく,入管難民認定の迫害に対する危険の判断,また,見通しの悪さ,こういったものがそもそもの原因なのではないでしょうか。
 昨年の難民認定率,大臣も御存じのように,1.2%という中で,アメリカや国連人権理事会などからの批判が出ております。ここにまず向き合って,法改正で強制送還をしたら迫害を受け,死に追いやられてしまうという方が出てくる可能性,この点について,個別には答えられないということですけれども,改めて大臣の見解をお願いします。

【大臣】
 まず我が国におきまして,難民申請手続に関することにつきましては,申請者ごとに個別に判断をした上で,難民条約の定義に基づき,真に難民を希望すべき方については,難民として認定すべきということで認定をしているところであります。この基本は変わらないということでございます。
 日本の場合には,難民とは認定できない場合でありましても,人道上の配慮が必要と認められる場合につきましては,我が国への在留について許可をしている状況でございます。
 先ほど2回の難民申請の中で,その手続について疑義があるというような御指摘がございましたが,こうしたことにつきましては,手続上,難民として認定されなかった場合でありましても,その判断について不服申立てを行うことができるものでございます。
 この不服申立ての手続につきましては,元裁判官,元外交官,大学教授等の外部の有識者からなる難民審査参与員が,3人1組で審理を行い,法務大臣はこの難民審査参与員の意見を必ず聴いた上で,その意見を尊重しつつ,採決を行っているところでございます。
 また,難民には当たらないとの判断に不服があれば,裁判所に訴えを提起して司法判断を受けることも可能でございます。
 手続上の判断について問題ではないかという御指摘がございました。
 現状に照らして,認定に携わる者につきましては,絶えず研修を加えて,そして最善の判断ができるように努力をしていく,また,組織的にも,その質を高めていくということは当然のことだと思います。
 その意味で,運用面という形で,難民等の該当性を判断するに当たりまして,例えば,本国の状況についての情報につきましては,外務省やUNHCR等の関係機関,こうしたところと適切に連携をさせていただきながら,最新情報,こういったものを積極的に収集しております。また,UNHCRとの間では,職員に対しましての研修,こういったことを行っていただくなど,審査の質の向上を図ってまいりました。こうした面につきましては,引き続き,運用の面,そして制度の面の適正化のために,努力をしていきたいと思っております。
 いずれにいたしましても,制度は手続が整えられておりますので,その中で利用していただくという形,そして,私ども認定・判断をする立場の者については,その審査の質の向上ということについて,しっかりとこれからも取り組んでまいりたいと思っております。

【記者】
 不服申立制度があるということですが,昨年,不服申立者は391人いたのですが,いずれもゼロだったということなので,やはり運用面で更なる見直しが必要ではないかと思います。
 監理措置制度の点ですけれども,監理人については,今回の法改正で,元収容者の生活状況や,また許可条件の遵守というのを監督し,その状況を入管に届け出る義務を負うことになります。これに反した場合は罰則が科せられますが,監理人というのは監視の役割を強いられるために,支援者たちがもし引き受けた場合,これが弁護士だろうが,支援団体だろうが利益相反関係になり,監理人に就任し難いという,こういう意見が日弁連等々から出ております。
 新設の監理措置というのは,入管の権限が更に拡大する形で,本来は入管がすべき在留資格のない方々への必要なケアの負担,これをある意味,民間に転嫁してしまうだけではないかという批判があるのですが,この点,大臣はどうお考えでしょうか。

【大臣】
 監理措置につきましては,施設内で収容していくということに加え,施設外で,地域の中で生活するということを前提にしていくということで,選択肢を増やしたということであります。
 もちろん監理人の方には様々な義務が生じるわけでございますが,そのことも含めて御協力をいただきながら,日本の中の制度として,これが安定的に運用できるようにしていくということについては,様々な工夫をしながら,そうした方が監理人として就任することができるような形で努力をしていきたいと思います。
 再犯防止の制度もそうですが,民間の方々からもたくさんの御協力をいただいており,施設だけではできないことをやっていただいております。こうした歴史もございますし,日本の中ではそうした取組については,私は自信を持って,そうしたことが可能になる制度となると確信をしております。
 大切なのは,丁寧に説明をし,御理解をいただくことだと考えています。
 そして,もちろん施設で収容しながらという方もいらっしゃいますが,長期間の収容となりますと,いろいろな課題が皆様からも御指摘されてきましたので,選択肢という形で,この制度がうまく機能できるようにしてまいりたいと思っております。
(以上)