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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年5月21日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件はございませんでした。
 続いて,私から3件報告がございます。
 1件目は,恣意的拘禁作業部会への政府見解の送付についてです。
 昨年11月,恣意的拘禁作業部会から,カルロス・ゴーン被告人に対する我が国の措置が恣意的拘禁に当たる旨の意見が公表されました。
 作業部会の意見には明らかな事実誤認が多く含まれており,我が国の刑事司法制度に対する誤解を抱かせるものであったため,本年5月18日(現地時間18日),作業部会に対し,事実誤認を具体的に指摘し,それに基づく我が国の立場を伝えました。その概要につきましては,当省ホームページに和文と英文で掲載しております。
 ゴーン被告人に対する我が国の措置は恣意的拘禁に該当しないことを改めて指摘したいと思います。
 我が国としては,引き続き,我が国の刑事司法制度について,国際社会からの正確な理解が得られるよう,様々な機会を捉えて,分かりやすく説明していくとともに,その適切な運用に努めてまいります。
 2件目ですが,今年度も,「子どもの人権SOSミニレター」の配布をいたします。
 このミニレターは,教師や保護者など身近な人に相談できない子どもたちの悩みごとを的確に把握し,学校などとも連携を図りながら,人権問題の解決に当たるためのものです。5月25日から,全国の小中学校などを通じまして,約965万人の児童生徒全てを対象に,配布する予定です。
 ミニレターは,子どもたちが悩みごとを書いて切手を貼らずにポストに投函すると,最寄りの法務局に届き,人権擁護委員や法務局の職員が目を通し,その全てに返事をするものであります。
 これまでもミニレターをきっかけに,子どもがいじめや虐待などから救われたという例がいくつもあります。
 新型コロナウイルス感染症の影響による外出自粛等によって,子どもの見守りの機会が減少し,児童虐待リスクが高まっています。このような中,ミニレターを通じて周囲からは把握しづらい子どもたちの不安や悩みごとに寄り添い,人権問題をしっかりと把握し,適切に対応していきたいと考えています。
 報道機関の皆様方には,一人でも多くの子どもたちを救うことができるよう,ミニレターの周知広報への御協力をお願いします。
 3件目は,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況についてです。
 5月14日(金曜日)の会見後から昨日までの間に,職員については,12の官署・施設で計13名の感染が判明しました。
 また,被収容者については,麓刑務所5名,名古屋拘置所1名,計6名の感染が判明しました。麓刑務所についてはクラスター認定されています。
 詳細は既に公表されたとおりです。

入管法改正案等に関する質疑について

【記者】
 入管法改正案についてお伺いします。法案は今国会での成立が見送られることになりました。これについて大臣の受け止めと,法案に関して今後の法務省の方針を教えてください。

【大臣】
 改正法案でありますが,与野党協議において,今国会で,これ以上審議を進めないとの合意がなされたと承知しております。
 送還忌避や長期収容の解消につきましては,これまで御説明してきたとおりでございまして,出入国在留管理行政にとって,今ある課題の中でも,喫緊の課題でございます。法務省といたしましては,この課題の解決に向け,あらゆる対応をとってまいりたいと思います。
 現時点での方針との御質問もありましたが,これ以上のお答えは困難です。

【記者】
 スリランカ人女性の遺族が,昨日の参議院法務委員会を傍聴されていました。保安上の観点から公開は適切ではないという,開示に否定的な大臣の発言に対して,遺族は,「法務大臣は本当に申し訳ないと思っているのでしょうか。アメリカ人に対しても日本人に対しても同じように対応するのか。小国のスリランカ人だからこそ,このような差別的な対応をするのではないか。」と批判をされておりました。
 この点について大臣の受け止めをお願いいたします。

【大臣】
 改めて,被収容者の方々の命を預かる入管施設におきまして,収容されている方が亡くなられるということについては,あってはならないことだと思っております。
 一人一人の命を預かるという立場で,こうしたことに至ったということに対して,大変重く受け止めさせていただいているところでございます。
 亡くなられた方の体調が時々刻々変わる中にありまして,様々な思いを持っていらっしゃったのではないかということを思い浮かべると,本当にこの状況の中で苦しい思いをされて,亡くなられたのだと思っておりまして,心からのお悔やみを申し上げる次第であります。
 この入管施設におきまして,一人の命が亡くなられているということでありまして,亡くなられた方の体調に対して,病院の方々や外部の病院,また,院内の診療所におきまして,どのように対応をしてきたのかということについて,事実をしっかりと把握することが重要であると思い,調査チームを設置し,この事実関係についての真相究明をしっかりするようにと指示をしてまいりました。
 客観性と公正性が何よりも大事であるということでございまして,その意味で,第三者の方にも入っていただく中で,しっかりと事実を調査していくと,こういう姿勢で,中間報告もなるべく早い時期にお出しするようにと指示し,また,様々な御指摘を受けたことにつきましても,更に掘り下げをしながら,事実を真正面から曇りのない状況で見ていくと,こういう姿勢が大事であるということを重ねて申し上げてきたところでございます。
 遺族の方にお会いするということについては,法務大臣として今のように指示をしている状況の中でという思いもございまして,しかし,コロナ禍におきまして,日本を訪問されて,14日間の隔離を経て,その後,お姉様のお姿とお会いし,そして御葬儀をなさったということを考えると,私も同じ年頃の娘を持っておりますので,特にお母様のお気持ちは,胸が張り裂けそうとおっしゃいましたが,私も全く同じ思いであります。
 記者の方から,国籍とかそういうところにより,違うというような御発言がありましたけれども,そういう捉え方は全くしておりませんので,今のような御質問をされるとどうお答えしていいか分かりません。私自身,海外の経験もありますし,自分自身もマイノリティーで,病院で入院したこともありますが,一人の命に向き合うときに,そういうものは全く考えたこともありません。
 御質問のように,御本人たちがそういうふうにおっしゃるとするならば,そういう思いを持っていらっしゃるとするならば,それはそういうことではないということを,お伝えできたらなと思っております。
 今客観的な調査をしている段階であります。しっかりとした調査を指示しておりますし,なるべく早くお伝えできるように,そして最終報告の結論につきましても,しっかりと説明責任を果たすということでありますので,それをしっかりとしてまいりたいと思っております。

【記者】
 今の関連ですけれども,本国会で,衆議院法務委員会で入管法の改正案が審議されたわけですが,やはり名古屋入管のスリランカ人女性の死亡事件に関することが大半でした。
 特に中間報告での情報の改ざんとか隠蔽があったのではないかという,その辺の疑いが非常に大きく取り上げられました。先ほど大臣から,今現段階で今後の対応をお答えするのは難しいというお話でしたけれども,この政府案が廃案になった原因をどのように大臣は認識,分析していらっしゃるのか,現時点で結構ですのでお答えください。

【大臣】
 改正案につきましては,我が国に包摂すべき外国人を一層確実に包摂・保護できるようにするとともに,外国人の権利・利益にも配慮しながら,退去強制手続を一層適切かつ実効的なものとすることを通じまして,今ある課題の中でも,送還忌避,そして長期収容といった喫緊の課題を解決しようとする形でお出ししたものでございます。
 改正法案につきまして,与野党協議がございました。今国会ではこれ以上審議を進めないとの合意がなされたものと承知をしております。
 政党間の協議の経過や内容につきまして,国会での協議でございますので,それについて,いろいろな形で忖度するということは差し控えさせていただきたいと思っているところでございます。
 この課題につきましては,喫緊の課題であるという認識の中で取り組んできたことでございますので,法案がこれからどういう状況になるかも含めまして,しっかりと対応を図るべく,努力をしてまいりたいと思っております。

【記者】
 スリランカ人女性の御遺族の件ですが,先ほどの話でもあったのは,ビデオの開示というものがなされないことについて,これは差別ではないのか,差別として扱われているからではないのかと感じているということです。
 釈迦に説法で恐縮ですが,人種差別撤廃条約では,する側の意図にかかわらず,そういう効果を持つものについては差別だと定めております。御遺族の方々が,差別でないというのであればビデオを見せてくださいともおっしゃっています。どうして差別であると感じているかというと,やはりビデオを見せないという対応が理不尽なものだと,これまでの説明も合理的ではない,納得いかないものだと受け止めているからだということですよね。
 そういう意味では,差別を誰よりもなくす責務を持っている法務大臣として,御遺族の方々が受け止めている差別という感情を解消させるためにやらなきゃいけないことがあると思いますが,それはどういうことだとお感じになりますか。何か対応を変えないと差別の現状というものは解消されないと思うのですが。

【大臣】
 私は御遺族にお会いして,お悔やみの気持ちを伝えさせていただきました。
 こういうことに対して,どのようにお取りになっていらっしゃるのかということについては,それぞれの受け取り方ということもございますが,私は一人の人間としてお伝えをさせていただきました。
 そして法務大臣として今,私自身がやるべきこと,この事案が発生したときから一貫して申し上げてきたところでありますが,しっかりとした真相究明を図るべきだと思っております。そのための調査については,早い時期から第三者を入れた形で,しっかりと調査をするようにと申し上げてきました。
 もちろん,私どものところは法治国家でありますので,法令に基づきまして,様々な情報の扱い方につきましても,様々なルールがございます。そういう中で判断をしながら,最終的に真実を明らかにするということを通して,最終報告を通して,遺族の方にもその結果をしっかりお伝えするということが求められており,また,二度とこうしたことが起きないようにするための改善についても尽くすようにと,正に今そこに向けて鋭意努力をしている状況であります。
 そういう中でお悔やみを申し上げて,特にお母さんに対して,今回少し体調が悪くなっていらっしゃって,異国の地でどのような思いをしていらっしゃるのかということを,自分自身も考えてみましても,大変厳しい状況に置かれているのではないかと思っておりましたので,その旨もお伝えさせていただきました。人としての気持ちの中でお伝えしたということであります。
 そういうところの部分で,今,定義に基づきましての差別の感情という形で,そのところを切り取られておっしゃっているところでありますが,また,相手にはそういうふうに思われたということでありますが,そこのところはそういう思いではないということ,また,そうした意味での差別をしているということは全くないということを,しっかりとお伝えさせていただきたいと思っております。

【記者】
 そのつもりではないと言ったところで,御遺族たちは見せられないことについて合理的な説明を受けていない,合理的に扱われていない,不条理に扱われているということで,これは差別なんじゃないかと受け止めているわけです。そういう意味では,政府の説明や対応が変わらない限りは,傷ついている心というのは解消はされないのではないのかなと思います。そういう意味では,何かをなさるべきではないかと思っています。一つはビデオを開示することだともちろん思いますけれども。

【大臣】
 最終報告に向けまして今,最終的なしっかりとした調査をしている状況でありまして,そのことを,是非御理解いただきたいと思っております。
 それについて,第三者も含めてしっかりとした調査をしているところでありますので,その報告をしっかりとすることが大事であるという思いであります。
 そういう中で,様々な御意見をいただきましたけれども,しっかりと説明をしていきたいと思っているところでございます。

【記者】
 2点お聞かせください。スリランカ人女性の実態を捉えた監視ビデオ映像の開示を御遺族も求めていらっしゃいますし,支援団体の方ですとか,野党も求めております。
 大臣は真相究明,そして透明性をこの問題に関して持って取り組むとおっしゃいましたけど,ビデオは今後,この問題に対して,批判的な厳しい目を持っている人たちに向けて開示されるということの方が望ましいとお考えでしょうか。
 もう1点は,先ほど御指摘がありましたけれども,現在入管に関して,日本全国で非常に苦境にある,拘留されたり,いろいろと行動の制限を受けている方々がいらっしゃいます。先ほど大臣が言ったような国籍や日本に来られた事情による差別や蔑視,冷遇がないというのは,全ての現場で対応されている職員の方々や働く人の意識に反映されているとお考えでしょうか。
 この2点をお聞かせください。

【大臣】
 まず1点目のことでございますが,この点については最終報告に向けまして,今努力をしているところであります。
 様々な事実,また,エビデンス,こういうことに基づきまして,客観・公正にしていくという状況でございますので,そのことについて,なるべく早い時期に最終報告をお出しできるようにしている状況でございます。
 ビデオの開示についての状況でございますが,収容施設の設備の状況,職員の状況等を撮影したものでございまして,保安上の観点からその取扱いにつきましては,非常に慎重な検討を要するものと思っております。
 また,死亡に至る状況を撮影した映像でございまして,亡くなった方の名誉や尊厳の観点からも,慎重な配慮を要すると考えております。
 さらに,先ほど御指摘がありましたが,最終報告に向けまして,第三者の方に調査をしていただいているところでございますので,公正・客観性という観点の中でも,この意味でも,今のような取扱いは,極めて重要であるという視点でございます。先入観なく御議論いただきたいと思っておりますので,私は,第三者も含めた最終報告と,それに基づきしっかりと説明責任を果たしていくことが大事ではないかと承知をしているところでございます。
 2点目でありますが,人権意識というのは,なかなかこういうときに,何か事があったときに深く考える機会になろうかと思います。正に今御指摘いただいたように,そうした御質問,御意見が出るということについて,思いもよらない質問でございます。確かに心の持ち方は一人一人の心の持ち方であり,正に意識の一番深いところに関わるというのが,この人権の意識そのものであると思っております。
 入管収容施設におきましては,命を預かっておりますので,その一人一人の命にしっかりと向き合うべきであると,これはどの法務省の職員も共通して持つべきことであると思っておりますし,日本の社会全体の中でも,人権の問題につきましては,どういう状況でこういう問題が出てくるのかということを,本当は事が起きてからではいけないと思いますが,いろいろな場面がありましたときに,それについて深く考えていくということ,この積み重ねでしかないと思っています。
 取り分け命を預かる入管の施設でございますので,職員の方たちは一人一人としっかりと向き合って対応していくことが必要であると思います。職員一人一人がどんな心の持ちようで動いていらっしゃるのかということについては,今のようにしっかりとした人権というか,一人一人の存在を大事にしながら対応していくべきことであると私は思っております。

【記者】
 スリランカ人女性の御家族が御要望されているビデオの公開についてですが,最終報告が出る前,又は出た後についても,大臣御自身が目を通すということはないのでしょうか。
 もしないとすれば,ブラインドチェックのまま,報告書を公開するということになると思いますけれども,大臣の御意思で,それを個人的に,また大臣として見るという必要性を感じておられますか。

【大臣】
 その点も含めまして,最終報告がどういう形でまとめられるのか,私は客観・公正性という形でいくと,第三者の方はビデオを御覧になっていらっしゃいます,そうしたことを大事にしてまいりたいと思っております。
 全ての情報について,私自身が調査チームのメンバーではないので,むしろ客観・公正にしていただきたいという思いでございます。どのような形で報告が出てくるのか,まず待ちたいと思っております。

少年法改正に関する質疑について

【記者】
 改正少年法が成立する見通しとなりました。
 非常に長い年月をかけて議論がなされたわけですが,大きな節目を迎えました。大臣の御所見,受け止めをお聞かせください。

【大臣】
 今回の少年法の改正につきましては,ある意味では国民投票法の時の議論から始まりまして,選挙権年齢,また,民法の成年年齢の引下げという形で民法の改正まで至る過程の中で,それぞれ年齢に言及しているたくさんある法律の中の大変重要な法律として,18歳,19歳の少年を少年法の中でどう扱うのかということについて,大きな課題,命題でございました。
 この問題につきましては,18歳,19歳の少年の可塑性,また成長途上にあるということに着目をいたしまして,全件家裁送致にし,また家裁のこれまでの蓄積,ノウハウをしっかりと踏まえた上で,なおかつ18歳未満の方との違いということについて,特にどのように考えていくべきかということにつきましても,いくつかの論点を闘わせながら,法制審議会の方でも御提言をまとめていただいた内容でございます。
 少年法の理念規定については,全く変えている状況ではございませんし,保護的な教育的な措置ということの重要性ということについても,十分に運用の中でも担保してまいりたいと思っております。
 また,そういう中にありまして,少年犯罪,あるいは少年非行,こうしたものが起こらない社会を作っていくための様々な仕組みにつきましても,環境整備をしていく必要が更にあるのではないかと思います。また,資格制限に関わる事柄につきましては,これから場を設けて検討してまいりたいと思っております。
 法案が通ったからこれで全てうまくいくということではなく,むしろこれからが,これを適切に運用していくという段階に入りますので,きめ細かく,その環境整備をしながら,法案がしっかりと趣旨にのっとって適用されることができるようにしてまいりたいと思っております。
 今日の参議院の本会議で可決,成立することを期待させていただいているところでございます。
(以上)