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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年5月28日(金)

 今朝の閣議においては,法務省案件として,主意書に対する答弁書が1件ありました。
 続いて,私から4件報告がございます。
 1件目は,罪を犯した18歳及び19歳の者に対する矯正教育(仮)に係る検討会報告書の公表についてです。
 少年院における,18歳及び19歳の少年に対する矯正教育を充実させる方策について,これまで,外部有識者の方々に参加いただいた検討会で御議論いただき,今般,その報告書が取りまとめられたところです。
 これは,本月21日に可決,成立しました改正少年法等を適切に運用していくための提言でありまして,矯正局では,この報告書を参考に,新たな教育プログラムの導入などについて検討を始めました。
 この報告書につきましては,本日,法務省ホームページに公開いたします。
 頂いた意見のうち,特に,被害者に対する心からの謝罪の気持ちを持たせる上で,非行の反省と成年であることの自覚の喚起に向けた新たな教育プログラム,就労支援と修学支援をバランス良く組み合わせ,幅広い進路選択を可能とする指導,ICT技術の習得などの時代のニーズに対応した職業指導などは重要な指摘であると考えておりまして,実施に向けて検討を開始しているところであります。
 少年院の在院者は,成長途上にあり,その発達の程度や,学力などには幅があります。
 そのため,少年院では,少年鑑別所と連携し,個々の在院者の成長の程度などを的確にアセスメントをすることが大変重要です。
 そして,より効果的なプログラムや教育・指導が行えるよう,速やかに検討を行い,しっかりと取組を進めてまいります。
 2件目は,公証制度の充実についてであります。
 公証制度は,国民の私的紛争の防止,私的な法律関係の明確化・安定化を図ることを目的とする制度でありまして,公正証書の作成や,会社設立時に必要とされる定款の認証などの場面で,国民生活にも定着しております。
 法務省としては,このような公証制度の重要性に鑑み,広く国民に対し必要な公証サービスが提供されるよう,ユニバーサルサービスの維持に努めるとともに,IT技術の活用についても取り組んでまいりました。
 近時,公証制度につきましては,公正証書の作成に係るオンライン化など,更なるIT化を求める声があり,現在の社会情勢等を踏まえますと,このような課題についてもしっかりと検討する必要があると考えられます。
 そこで,今般,更なる公証制度の電子化に向け,必要な検討に着手するよう,事務方に指示をいたしました。
 併せて,かねてより要望の寄せられることが多かった定款認証に係る手数料につきまして,起業促進に資するようにとの観点から見直して減額するよう指示をいたしました。
 公証人による公証事務が手数料収入によってまかなわれていることも踏まえつつ,令和3年度中に必要な措置を講ずることといたします。
 これらの点につきましては,河野太郎規制改革担当大臣とも意見交換をいたしまして,認識を共有しているところでございます。
 法務省としては,今後も,公証制度の重要性に鑑み,制度の更なる充実・発展が遂げられるよう,国民のニーズと時代に合わせた見直しをしっかり検討してまいりたいと考えております。
 3件目は,在留ミャンマー人への緊急避難措置についてであります。
 ミャンマーにおきましては,2021年2月1日に国軍によるクーデターが発生し,ミャンマー各地で抗議デモが活発化しております。これに対する国軍・警察の発砲等により一般市民が死亡・負傷する事案の発生や,デモに参加していない住民に対する暴力等も報告されるなど,ミャンマー国内の情勢は引き続き不透明な状況にあります。
 現下の状況を踏まえまして,本日(令和3年5月28日)以降,現在日本にいるミャンマー人で,ミャンマーにおける情勢不安を理由に在留を希望する方につきまして,緊急避難措置として,就労が可能な「特定活動」の在留資格を許可し,在留を認めることといたしました。
 法務省としては,引き続き,個々の外国人の置かれた状況に十分配慮しながら,柔軟に対応してまいりたいと考えております。
 4件目は,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況についてです。
 5月21日(金曜日)の会見後から昨日までの間に,職員については,8の官署・施設で計8名の感染が判明しました。
 また,被収容者については,月形刑務所で4名,東京拘置所で1名の感染が判明しております。月形刑務所についてはクラスター認定がなされております。
 詳細は既に公表されたとおりです。

定款認証手数料の引下げに関する質疑について

【記者】
 定款認証手数料の引下げについてお伺いします。先ほども御発言がありましたが,今年度のいつ頃をめどに検討されるのか,具体的な検討のスケジュールを教えてください。
 また,法務省はこれまで手数料の引下げには慎重な立場だったと思いますが,今回見直しを行うに至った理由についてお聞かせください。

【大臣】
 定款認証手数料の引下げのスケジュールについては,スピード感をもって速やかに検討したいと思っておりまして,本年度中の可能な限り早期に政令を改正した上で,引下げを実施するよう指示しているところでございます。
 先ほども公証制度につき申し上げたところでございますが,国民の私的紛争の防止などといった予防司法に重要な役割を果たしており,ユニバーサルサービスを維持しつつ,制度の更なる充実,発展を図ることが重要と考えています。
 公証制度に対しましては,IT化を始めとする様々な声が寄せられているところでございまして,利用者のニーズや時代に合わせた見直しを検討していく中で,定款手数料の引下げにつきましても,起業促進に資するように見直しを行うこととしたものでございます。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について

【記者】
 スリランカ人女性の関連でお聞きします。最終報告に向けて作成,調査していると思うのですが,スリランカ人女性と面会した大学生や女性支援者たちが,中間報告でスリランカ人女性が面会で訴えていたことや,精神科医の指摘が一部反映されていなかったことなどに強い不信感を抱いておりまして,入管庁の部付検事らの聴取を拒否しているとお聞きしました。
 最終報告書にスリランカ人女性の状況を知る面会者の証言や指摘が盛り込まれないとなりますと,その客観性・公平性に改めて疑問符が付くことになると思うのですが,こういう状況でも最終報告書を出していくおつもりなのか。
 また,支援者らは入管庁とは別の警察や検察,国会での独立した調査を強く望んでいます。この点についての大臣の御見解をお願いします。

【大臣】
 この件につきましては,御本人の体調が時々刻々変わる中にありまして,病状等も含めて医師の診断を仰ぎながら,また外部の病院にも通いながらということで,様々な関係の方がいらっしゃる案件であり,その中で,中間報告を出させていただいた上で,国会におきましても様々な御意見をいただいたところでございます。
 出入国在留管理庁に対しましては,そうした御指摘を受け止めつつ,必要に応じて追加的な事実の確認を更に行った上で,第三者の方々とともに,飽くまで公平・客観的な観点に徹して,事実関係を評価・検討し,可能な限り速やかに最終報告を取りまとめるようにと指示しているところでございます。
 この方針は変わりませんので,こうした形で,様々な努力を重ねながら,対応してまいりたいと指示しておりますので,私としては,最終報告を待ちたいと思っております。

【記者】
 今の御質問に関連してくると思いますが,スリランカ人女性の件について伺います。今国会で成立が目指された入管難民法改正案が,5月18日に断念されました。
 しかし,スリランカ人女性の死の問題は全く解決されていません。
 20日の参議院法務委員会で,上川大臣は,施設内の監視カメラの公開について,保安上の観点から公開は適切ではないと述べられ,開示に否定的な立場をとられております。入管に収容されている間に,スリランカ人女性に何が起こったのかを解明し,事件の全容を知るためには,監視カメラの映像の公開こそが最も適切な選択肢ではないでしょうか。
 上川大臣は,2020年9月17日の法務大臣就任に当たっての大臣訓示の中で,菅総理からの六つの指示について触れられました。その中には,きめ細かな人権救済の推進,そして,「世界一安全な国,日本」を作るための施策の推進という指示が含まれており,上川大臣はこれらの課題について,「重要かつ喫緊の課題であると認識しており,具体化に向けて,迅速かつ着実に取り組みたい。」と述べておられます。
 「世界一安全な国,日本」を実現させるためには,言うまでもなく,そこに暮らす日本人のみではなく,あらゆる形で日本を訪れる外国人の人権も含めて,保護,尊重されなければならないことは言うまでもないことではないでしょうか。
 それとも,治安機関,組織に関わる者の保身という意味で,世界一安全だということをおっしゃったのでしょうか。監視カメラ映像が公開されない理由が,保安上の観点と言いますが,それは,上は法相御自身から,下は入国管理局の現場職員に至るまでの保身と地位保全上の安全を言っているようにしか聞こえません。それは,人一人の命より大切なものなのでしょうか。
 これまでのあざとい保身のような答弁を法務大臣が続ければ,日本という国の信用がますます落ちていきます。日本は世界の人々が注目する五輪を開こうとしている国のはずです。現代はグローバルの時代です。全世界が,上川大臣の回答を見ています。誠実なお答えをお願いいたします。

【大臣】
 ただいま約1ページに渡りまして,御意見を賜りました。そうした御意見につきまして,私自身は謙虚に受け止めさせていただきたいと思います。
 何よりも大事なのは真相究明であると考えておりますので,正に今最終報告書の作成に向けまして,中間報告以降いただいた様々な御指摘を含めまして対応している状況でございます。
 最終報告書のなるべく速やかな作成と公表を指示しているところでございます。そうした中で今のようなおっしゃっていただいたこともありますが,私自身はそういう姿勢で,これまでも,また,これからも臨んでまいりたいと思っております。
 もとより人権は非常に大事なことであります。今日ここでこうして皆さんいらっしゃいますが,一人一人と,本来ならば一対一でということもあろうかと思いますが,共同の記者会見という形の場の中で,御質問に対して,私自身は誠実にお答えしてまいりました。
 人権ということについても,これは人権を尊重する,尊重しないということだけのイエスかノーかというレベルの話ではなく,本当に内心の意識に深く関わることであると考えております。
 言葉で言うだけでなく,内心のそうしたものが重要であり,いろいろな形で,そのことについて,子供の時からもそうですけれども,考えていくことが大事だと思っております。その意味で今回いろいろな形で御指摘いただいたことも,私自身は深く受け止めてまいりましたし,これからもそうしてまいりたいと思っております。
 ビデオのことについてお触れいただきまして,ビデオ開示につきましては,保安上の観点からの取扱いということでございますが,慎重な検討を要するということであります。
 情報公開法などの法のルールに基づいて開示する,開示しないということがございまして,この種のことについては非開示という扱いをさせていただいているところであります。
 また,亡くなった方の名誉,尊厳の観点からも,慎重な配慮を要するのではないかと考えておりますし,正に今最終報告に向けまして,第三者の方にも入っていただきながら,客観的な調査・検討をお願いしているところであります。これまで3つのことについて私自身申し上げてきたところでもありますけれども,今のような判断の中で相当ではないと考えているということを,改めて申し上げたいと思っております。

【記者】
 続いてビデオの件ですけれども,繰り返し保安上の理由ということをおっしゃっているわけですが,名古屋の入管にはスリランカ人女性の遺族の方も中に入って様子を見ています。
 それでもなお,保安上の理由が生じるというのは,どうも理屈に合っていないように聞こえます。遺族たちが,引き続きビデオの開示を求めていて,それは見せられないということに対して,これは差別ではないかと受け止めているのは,やはり理不尽な,理屈に合わない説明を受けているからです。
 そういう意味では,保安上の理由ということの具体的かつ論理的な説明をしていただきたいと思います。スリランカ人女性の遺族の傷ついた心はほったらかしにされたままで,同じ説明を繰り返すということであれば,その傷ついた気持ちを法務大臣自らが踏みにじったまま放置しておくということになります。
 是非,具体的・論理的な説明をお願いいたします。

【大臣】
 お尋ねの件でございますけれども,これにつきましては,国会の中でも,この間答弁をしてまいりました。
 私自身,今最終報告に向けまして,事実を解明すること,そしてそれを公開するわけでありますので,それに向けて鋭意努力をし,そしてその事実を通して真相の究明を図るということ,そのことが御遺族の方への御説明をしっかり尽くすことにもつながると,こういう考え方で動いているところでございます。
 その意味で,最終報告書の作成におきましても,しっかりと様々な御指摘を踏まえた上で検証し,改善の方向に向け対応してまいりたいと思っております。
 論理的うんぬんという話がありましたけれども,今申し上げてきた答弁の内容と変わるものではございません。

【記者】
 先ほどの一問目の面会や支援をした大学生,女性たちが欠けている,つまり部付検事の聴取を拒否している状況でも最終報告を求めるということは,そもそも客観的な証拠が欠けているという意味で不十分ではないかという指摘につきお答えいただいていないのでお願いします。
 それから,今週土曜日に築地本願寺で,スリランカ人女性をしのぶ会を2時から開催いたします。是非,上川大臣ということでなく,一個人として,しのぶ会に参加するつもりがあるか。
 そして,再三にわたって,私も含め多くの記者たちがここに駆けつけている理由が,なぜ動画を出せないのか,これに対して全く適切な回答が法務省,入管庁,そして大臣ができていないということだと思います。
 遺族のみならず,支援者や面会した学生たちは,動画を出さないということに対しても強い怒りや疑問を持っています。もし問題がない動画であり,職員が適切に対応しているのであれば,少なくとも,最終報告書を出す際には,遺族に対しては動画の提示を行うべきだと思うのですが。大臣のこれまでの答弁ですと,おそらくこの動画を見ていないということだと思うのですが,それほど問題のある動画なのか,せめて最終報告書を出した後には,遺族にしっかり事実を提示するべきだと思います。
 この点についても再三聞いておりますが,もう一度御見解をお聞かせください。

【大臣】
 調査についてはいろいろな御指摘をいただいてきました。そういったことを掘り下げていくという姿勢は大事だと思います。
 今のような拒否をされているというところはよく把握しておりませんが,是非お話を聞かせていただくということも大事ではないかと思います。
 一方で,何かがなければ全てが無であるということではなく,取り得る情報の中で最善を尽くしていくということが,責任ある立場として大事ではないかと思っております。もちろん,是非その方たちのお声も伺えたらなと思います。それが第一点目であります。
 しのぶ会が行われるということを,今初めてお伺いをさせていただきました。今までも,個人としてということと,法務大臣としてということと,いろいろな形で申し上げてきたところでありますが,お悔やみを申し上げる,また,私自身は直接お会いしたことがない方ですが,亡くなられた方ということで,また,御兄弟もいらっしゃるということであります。
 その気持ちは,しのぶ会という形で皆さんがおやりになって,そして,御遺族の今の置かれている状況,また,日本で今滞在していらっしゃるということでありますので,改めて心からお悔やみを申し上げたいと思っております。
 動画については,先ほど来,3点申し上げてきたところでございますので,しっかりと最終報告に向けまして,第三者の方にはしっかりと見ていただき,そのことを客観的に受け止めていただくということが何より大事だと思います。
 客観性・公正性というものをもし外すとするならば,この報告書そのものの信頼感がなくなるということにもなりますので,誠意を持ってしっかりと対応していくということについて,最終報告に向けて取り組んでまいりたいと思っております。
(以上)