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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年6月8日(火)

 今朝の閣議においては,法務省案件として,「令和2年度人権教育及び人権啓発施策」が閣議決定されました。
 続きまして,私から2件報告がございます。
 1件目は,本日閣議決定されました「令和2年度人権教育及び人権啓発施策」の国会報告,いわゆる人権白書についてであります。
 本報告は,政府が講じました人権教育・啓発に関する施策についての年次報告であり,これを共管する法務省と文部科学省において作成したものであります。
 本年度は,特集として,「新型コロナウイルス感染症に関連して発生した人権問題への対応」を取り上げました。
 具体的には,本年3月,「不安を差別につなげてはならない」というスローガンの下,特設サイトや駅構内での動画配信など大規模な啓発活動を行い,感染者や医療従事者等への偏見・差別の防止に取り組んだことなどを記載しました。
 また,トピックスとして,京都コングレスのサイドイベントにおいて行った人権教室の実演や,昨年10月に策定された「ビジネスと人権」に関する行動計画を踏まえ,人権的視点に立って開催したシンポジウムなどを取り上げました。
 さらに,インターネット上の誹謗中傷に関しては,SNS事業者団体等と共同して啓発サイトを開設し,書き込みの削除を依頼する方法や相談窓口を周知していることなども取り上げました。
 本報告につきましては,本日,法務省ホームページに掲載いたします。
 また,今後,内容を分かりやすく要約した「人権の擁護」という小冊子も作成する予定であります。
 法務省としては,多様性を認め包摂性のある「誰一人取り残さない社会」の実現に向けて,引き続き,人権啓発活動等にしっかりと取り組んでまいります。
 2件目は,「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」の持ち回り開催についてであります。
 昨日(6月7日),「所有者不明土地等対策の推進のための関係閣僚会議」が持ち回りで開催され,「所有者不明土地等対策の推進に関する基本方針」が決定されるとともに,関係省庁が取り組む主要施策の工程表も改訂されました。
 この基本方針における法務省の施策としては,例えば,本年4月に成立・公布された民法・不動産登記法等の一部改正法及び相続土地国庫帰属法について,丁寧な周知やシステム整備を図ることなど,両法律の実効性が確保されるよう,円滑な施行に向けた準備を行うこととされています。
 所有者不明土地等への対策を推進するに当たり,法務省の役割は極めて重要であります。
 法務省としては,引き続き,関係省庁と連携しながら,スピード感をもって,基本方針で示された対策を推進してまいります。

受刑者に対する新型コロナウイルスのワクチン接種に関する質疑について

【記者】
 受刑者に対する新型コロナのワクチン接種についてお尋ねいたします。刑務所内には高齢受刑者も多く,感染対策は喫緊の課題です。接種に向けた取組の現状と今後の進め方や課題について教えてください。

【大臣】
 新型コロナウイルスの感染問題につきましては,昨年来,連日緊張感を持って対策に取り組んできたところでございます。この度,ワクチンが広く接種される方向となりました。ワクチン接種は感染対策の決め手であるということで,感染拡大のリスクが高い矯正施設におきまして,被収容者に対する接種を進めることは重要な取組であると認識しております。
 現状でありますが,矯正施設の被収容者に対するワクチン接種につきましては,厚生労働省と調整を行い,接種後の副反応発生時の対応策が必要となること等を踏まえまして,原則として外部の接種実施医療機関による巡回接種にて対応することとしているところであります。
 各矯正施設における具体的な対応につきましては,各施設において,実施主体である所在地自治体と調整中でございます。
 ワクチン接種を希望する被収容者に対しまして,適切に接種が行われるように積極的に調整を進めてまいりたいと考えております。

人権教育及び人権啓発施策の国会報告に関する質疑について

【記者】
 人権啓発のためのガイドブックを作るということですが,これに関して,外国人の仮放免者に対する誹謗中傷や,また最近は仮放免者の支援団体に対する誹謗中傷が,ネットの中で非常に広がっております。
 こういったことを指摘する項目があるかという点,もしないなら今後の見直しがあるかについてお答えください。

【大臣】
 今般の小冊子の内容につきましては,人権白書と言われているこの白書の内容を分かりやすく整理をしたものでございます。その意味で,特集として取り上げて,新型コロナウイルス感染症に関連して発生した人権問題の対応等を中心にまとめ上げてまいりたいと思っております。
 今御指摘の内容については,その形の中での項目はございません。
 ヘイトスピーチ関係についてはございまして,これはもうずっと取り組んできたところであります。正に今回お尋ねのように,外国人の方々に対する誹謗中傷があったというような御指摘もあるところでございますので,絶えずフォローしていきたいと思っておりますが,内容の詳細につきましては,是非事務方に問い合わせていただきたいと思います。

【記者】
 今事務方の指摘で,ないということですので,この仮放免者に対するコロナ禍での誹謗中傷,また,その支援団体に対する誹謗中傷の項目を付け加えていくという見直しを,大臣として検討されていくのかという点をお願いいたします。

【大臣】
 この白書は,1年間かけて企画構成をしながら取り組んできたことについて,それを一つずつ実証しながら,データに基づきまして,作成させていただいているところであります。正に1年間の全体像の中でのまとめということであります。
 今おっしゃっていただいたようなことについては,直近のお話ということであろうかと思っており,これからの課題としては当然のことながら入るわけでございますけれども,また,来年の白書の中で,そうしたことにつきましても言及をしていくかを検討していくということであります。

在留カード等読取アプリケーションに関する質疑について

【記者】
 在留カードの読取アプリについてお尋ねしたいと思っております。
 昨年の12月に,在留カードの読取アプリケーションの無料配布がスタートしたということですが,これは,在留カードだったり,特別永住者の証明書のICチップを読み取るものだと思います。
 ただ,無料配布ということで,一般市民の方々がこれをダウンロードして,相手の在留カードだったり証明書を読み取れるということで,一般市民の過度な干渉をあおるのではないかと改めて批判の声が上がっています。
 その点について大臣の受け止めを伺えますでしょうか。

【大臣】
 デジタル時代ということでありますので,できる限り様々な工夫をしていくことが必要であると思っております。
 在留カードの読取アプリケーションについては,今技術的なことも含めて,しっかりと検討していかなければいけないということであり,全体の中で,様々な課題につきましても取り組んでまいりたいと思っております。
 ICカードの読取アプリにつきましては,偽造カードの確認をするためのものであるということでありますので,今のような御指摘も含めて適正に扱ってまいりたいと思っております。

【記者】
 アプリが市民の監視をあおって人権侵害に当たるのではないかという指摘そのものについては,受け止めはいかがでしょうか。

【大臣】
 こうした事柄が出てくると,いろいろな角度から御意見があるところではございます。偽造防止ということでの今回の大きな取組ということでございますので,御理解を深めてまいりたいと思いますが,まずそういった御指摘があるということについては,しっかりと受け止めさせていただきたいと思っております。

【記者】
 今の関連ですけど,偽造を防止したいという意図は分かるのですが,今回のアプリは,あらゆる市民がダウンロードした場合,外国人,この人もしかして不法かなと思ったら,すぐ在留カードを見せてと,チェックできると,市民に外国人に対する監視の能力を持たせてしまうアプリなわけです。
 このようなアプリを出して,かつ,おそらく今入管庁サイドはホームページを含めて告知をしているということです。人権啓発を進めたいと言いつつ,一方で人権を,つまり,ヘイトをあおってしまうかのようなアプリを入管として出してしまっている。これは非常に問題だと思います。
 まずこのアプリ,1回止めるべきではないでしょうか。こういったマイナスのデメリットを計算していなかった可能性もありますが,この点を含めてどうお考えですか。

【大臣】
 今申し上げたとおり,これは飽くまで偽造の防止というところに第一義的な目的がございまして,飽くまで任意のものでございます。
 その意味では,ヘイトスピーチなどを助長するというようなことには当たらないと考えております。運用をしっかりとしてまいりたいと思っております。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案等に関する質疑について

【記者】
 入管収容施設のチェック機能や申入れについて2点お伺いします。
 6月2日に名古屋入管局長宛に面会支援活動をしてきた支援団体STARTが申入書を提出したことは,前回の記者会見で質問がありました。
 今回スリランカ人女性が亡くなってから6回目の申入れになります。
 申入れ内容は一貫しており,その中で,名古屋入管の担当責任者と面会支援者との間で,協議の場や意見交換する機会を設定することを毎回求めてきました。
 しかし,入管局側は「現在,法務省本庁による調査中だから」という理由で,その要望には応じてきませんでした。
 確かに,現在7月中の「最終報告」の策定に向けて,法務省・入管庁は調査を続けていると思いますが,これとは別に,名古屋入管の当事者と面会支援者との間で直接対話をするということは非常に重要だと思います。
 なぜ,法務省本庁は名古屋入管に対して,こういった協議の場を設定することを否定するような対応,指示を出してきたのかをお答えください。

【大臣】
 個別の申入れにつきましては,出入国在留管理庁において,その内容に応じ,その都度,適切に対応を検討しているものと考えているところでございます。
 現場,現場の中で対応するということで,出入国在留管理庁の方で対応しているということです。

【記者】
 今出入国在留管理庁とおっしゃったのは,名古屋入管が独自に判断したのか,あるいは法務省本庁がそういう指示をしたのかどうか。名古屋入管は,法務省本庁が調査中だからという言い方をされているのですが,これについてはどのようにお考えでしょうか。
 今スリランカ人女性の中間報告や最終報告の件が焦点になっておりますので是非お答えください。

【大臣】
 そのことも含めまして,出入国在留管理庁に,事務的にどう対応しているのかということについて聞いていただきたいと思います。
 一つ一つの案件について私の方から説明するということについては,いろいろな形での案件がございますので,現場の中でしっかりと判断していくべきことだと考えております。

【記者】
 もう一点視察に関してですが,入国者収容所等視察委員会というものがございます。
 年に数回,そういった視察をして,検討結果を報告されているわけですが,昨年末以降,その報告が更新されておりません。今回の入管法改正のこともありましたので,しかも入管処遇問題がいろいろ課題になっているということで,具体的な調査があるのかなと思ったら,それもなかったようです。
 スリランカ人女性の死亡事件も,入管庁による調査に合計5名の第三者が入っている,それが入国者収容所等視察委員会のメンバーであるとお聞きしています。第三者は,飽くまで,法務省・入管庁の調査結果の報告を受けるということだけで,独自に調査はしていないと思います。そうした視察委員会の構成メンバーも,どのような専門性を持った方なのかということも含めて公表されていません。
 これで本当に第三者委員会としての機能を果たしているのかどうか,入国者収容所等視察委員会は,法務省・入管庁から独立した第三者委員会と言えるものであると,大臣はお考えなのかどうかということについてもお伺いします。よろしくお願いします。

【大臣】
 再三ここでも申し上げているところでございますが,私自身法務大臣として,今回の事案が発生した直後から,この事案につきましては,大変心を痛めてまいりました。
 法務大臣として,出入国在留管理庁に対しては,この事案について調査をしっかりすること,そして検証し,改善策もしっかりまとめるようにということで指示をしてきたところでございます。
 調査の客観性・公正性を担保するためには,何といっても第三者の視点というのが極めて重要であるということから,可能な限り速やかにその改善策をまとめ上げていく過程の中でも,第三者の視点をしっかりと入れるようにということで,指示をしてきたところでございます。
 二度とこうした事案が繰り返されないようにするため,この第三者の方々には,いろいろな角度からの知見を有している方々でございますので,しっかりとした調査をしていただきたいと思っております。
 御指摘の入国者収容所等視察委員会のメンバーの方,また元メンバーの方ということで御指摘がございましたが,正に委員として入管収容施設の運営や業務内容等につきまして,一般的な知識や視察の経験をお持ちであります。また,各団体から御推薦を受けた方々であるということで,中立・公正が担保された方々であるということから,調査に加わっていただくこととしたということでございます。
 詳細につきましては,出入国在留管理庁にお尋ねいただきたいと思っております。

【記者】
 少し遡ってしまいますが,5月17日に,3月6日に名古屋入管で亡くなられたスリランカ人女性の御遺族とともに国会議員の方々も視察のため名古屋入管を訪れています。
 その際,居室への視察に関しては,保安上の理由ということで視察がかなわなかったとのことです。その際に名古屋入管局長が,保安上の理由が国会議員が有する国政調査権より上回ると断言をされています。これは音声も公開されていますが,この国政調査権を保安上の理由が上回ることがあるというのは,法務省としても同様の見解でしょうか。

【大臣】
 お尋ねの視察時にどのようなやり取りがあったのかということについて,私自身承知をしておりません。
 出入国在留管理庁から報告を受けているところによりますと,入管収容施設の被収容者には,刑罰法令違反者等も含まれ得るという性質上,こういう意味では保安上の理由からということでありますが,その内部について広く見学や視察を認めることとはしていないものの,状況に応じて一定の範囲内で,国会議員の方々に収容施設を御視察いただくこともございます。
 現在,新型コロナウイルス感染症対策が極めて重要な課題となっているところでございまして,東京出入国在留管理局の収容施設における集団感染が発生していること,愛知県におきましても緊急事態宣言が発令されていたことなどを踏まえて,コロナ感染防止の観点から,国会議員の方々を含めまして,御視察を御遠慮いただいたところと聞いております。
 御遺族につきましては,お姉様が亡くなった現場である施設の状況を知りたいと御希望されることは当然の心情であると私自身は考えております。5月17日に御遺族が名古屋出入国在留管理局を訪問された際は,御遺族のお気持ちを踏まえた特別の対応として,居室に実際に入っていただき,その居室の状況を御覧いただいたと承知しております。
(以上)