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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年6月11日(金)

 今朝の閣議においては,法務省案件として,主意書に対する答弁書が1件ありました。
 続いて,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況について申し上げます。
 6月4日(金曜日)の会見後から昨日までの間に,職員につきましては,2つの官署・施設で計3名の感染が判明しました。詳細は既に公表されたとおりです。
 なお,被収容者の感染判明はございませんでした。

検察審査会の強制起訴制度に関する質疑について

【記者】
 検察審査会の強制起訴制度についてお尋ねいたします。
 菅原一秀・元衆議院議員による公職選挙法違反事件で,東京地検特捜部が,審査会の起訴相当議決を受け,不起訴処分を一転させました。
 制度を巡っては「政治利用されている」との指摘がある一方で,「検察権の行使に国民感情が反映されるようになった」との見方もあります。
 制度の運用状況を,どう評価されているかお聞かせください。

【大臣】
 検察審査会制度は,検察官が行う公訴権の実行に民意,すなわち,一般国民の感覚を反映させて,その適正を図ることを趣旨とする制度であります。
 そして,起訴議決制度が導入された趣旨は,公訴権の行使に国民の感覚を直截に反映させることにより,公訴権の行使をより一層適正なものとすることにあります。
 個別事件における検察審査会の議決や,検察審査会の議決を踏まえての捜査機関の活動内容に関わる事柄につきましては,法務大臣として所感を述べることは差し控えたいと思います。
 その上で,一般論として申し上げるところでございますが,検察審査会が,審査の結果,起訴相当又は不起訴不当の議決をした事件につきましては,検察当局において,先に述べた検察審査会制度の趣旨を踏まえまして,当該議決を参考にして,必要な再捜査を行い,適切に対処するものと承知しております。
 申し上げるまでもございませんが,刑事手続におきましては,検察当局による捜査処分の過程におきましても,また,裁判所による司法判断の過程におきましても,法と証拠のみに基づいて判断がなされるものでございまして,政治的な意図といった法と証拠以外の要素に基づいて結論が導かれることはないものと考えております。

政治分野における男女共同参画推進法の改正法成立に関する質疑について

【記者】
 昨日の衆議院本会議で,女性議員が増えやすい環境を整えるための「政治分野における男女共同参画推進法」の改正法が全会一致で可決され,成立しました。
 この改正法には,議員や候補者へのセクハラやマタハラを防ぐため,国や政党が相談体制の整備等に取り組むよう求める内容などが盛り込まれています。法務省はこの法律を直接所管しているわけではありませんが,大臣の受け止めをお聞かせください。

【大臣】
 御質問の「政治分野における男女共同参画の推進に関する法律の一部を改正する法律」につきましては,議員立法ということであり,また,法務省が所管するものではありませんので,法務大臣としてその内容についてコメントすることは適当ではないと考えております。
 その上で申し上げるところでありますが,政治分野における女性の参画の推進は,我が国が国際的にも低い順位であることが国民の皆様にも広く理解されているところでありますし,政治に携わる者としても,そのような認識を持っているところでございます。
 この法律が全会一致で可決されたということでございまして,大変意義があると考えております。
 国連が2015年に採択したSDGs(持続可能な開発目標)のゴール5には,「ジェンダー平等」が掲げられておりまして,民主主義の国におきましては,国民・住民を代表して意思決定を行う政治にこそ,女性の参画が求められているということでございます。
 特に多様性を尊重するというダイバーシティと,異なる意見や考え方を包摂するというインクルージョン,これらは,社会全体にダイナミズムやイノベーションといった大きな力を生むものと期待されているところでございます。
 女性が政治の分野でしっかりと活躍できるように,また参画できるようにしていくということにつきましては,政治や世の中をもっと良くすることができる大きな力になるものと期待しているところでございます。

立川市男女殺傷事件で逮捕された少年の実名報道に関する質疑について

【記者】
 少年法の関係でお伺いします。
 今月1日に東京都立川市のホテルで女性と男性が殺傷される事件がありまして,後に19歳の少年が逮捕されています。これに関連して,先日発売された週刊誌に,この少年の実名と顔写真が掲載されるということがありました。
 この掲載されたことに関して,少年法を所管する法務省としての御見解を大臣からいただけますでしょうか。

【大臣】
 御指摘の週刊誌の記事については承知しているところでございますが,個別の記事に関わることでありますので,法務省としてコメントすることについては差し控えさせていただきたいと思います。
 その上で,一般論として申し上げるところでございますが,報道機関等においては,少年法第61条の趣旨を踏まえまして,適切に対応されるべきものと考えております。

在留カード等読取アプリケーション等に関する質疑について

【記者】
 在留カード確認等アプリについてお伺いします。
 取材に対しまして在日ミャンマー人の男性は,「政府が率先して正規滞在者さえ疑うようなアプリを開発し,日本の市民全員に拡散していることを知り,非常にショックを受けた。」,「めいっ子が学校でこのアプリを突きつけられ,いじめに遭わないかも心配です。今すぐやめてほしい。」と話しました。また,もう一人,在日イラン人の男性は,「ひどいです。日本人にも同じアプリを作るのでしょうか。市民に外国人監視の武器を持たせ,日本人と外国人を分断させようとしている。」と批判されていました。
 取材に対して,入管庁は開発に当たって,在留カードを持つ外国人の方々や,弁護士,支援団体などの第三者の聴取は行っていないということを認めました。このアプリというのは,今の言葉にあるように,外国人の差別を助長し得るものだと思いますが,改めてこの外国人の方々の声を聞いて,大臣の受け止めをお聞かせください。

【大臣】
 全ての中長期在留外国人が有する在留カードにつきましては,カードの券面に印字されている身分関係,また,顔画像等と全く同じ内容の情報がICチップ内に記録されているところでございます。
 御質問がございましたこのアプリでありますが,ICチップ内に記録されている情報を,在留カードと同じ形状で画面に表示するものということでございまして,正規の在留カードであれば,在留カードそのものの映像がアプリ上にも表示されることになるところです。
 このアプリは,カードの偽変造が大変精巧なものとなっていることへの対応として,不可欠のものとして公開をしているものでございます。
 本アプリは,在留カードそのものをアプリ上に表示させるにすぎないものであるとともに,在留カードの提示におきましては,従来と変わることはなく,外国人の明示的な同意を必要とするものであります。
 アプリの導入が過度な干渉をあおっているというような,そうした御指摘は当たらないと考えております。

【記者】
 アプリの開発の実態を知って傷ついたと話されている外国人の方々のコメントを大臣としてどう受け止めたかという点と,在留管理支援部長が,取材に対して,悪意の第三者や自警団等による取締り,また,多くの正規滞在者の外国人の方々を傷つけるということは想定していなかったと,アプリが悪用され人権侵害が起きることは全く望んでいないことなので,指摘を受けて対応を検討すると答えております。
 これは具体的にどう検討するのか,アプリの拡散はやめないということですが,人権侵害が起きてからでは遅すぎます。市民へのばらまきという形をやめて,少なくとも雇用主だけに限定するようなシステムを再構築すべきではないでしょうか。

【大臣】
 御指摘をいただきました点,そして現場の皆様の声につきましては,しっかりと受け止めさせていただきたいと思います。正にこれは運用の段階にございますので,その点については,担当するセクションの方でしっかり対応するものと思っております。

【記者】
 在留カードアプリの見直しについてですが,これは全員の方がアプリをダウンロードできるという形の運用を含めての見直しでいいかという点。
 それと,大臣が火曜日に人権白書とともに人権教育や啓発を進めると発言されましたが,アプリ開発の今回の事例を見ますと,入管庁の長官以下,幹部を中心とした人権教育や啓発,こういったものに対する研修というものがあったのか。ないから,このようなヒアリングのない形で人種差別を助長し得ると指摘されるようなアプリができてしまったのではないかと思います。
 幹部の研修をしているかという点と,していても不十分であるならば今後幹部に対する研修を検討しているか,併せてお聞かせください。

【大臣】
 アプリの件ということでございますが,今運用レベルということでございますので,是非対応につきましては事務方にお尋ねください。今取材の中でもうヒアリングをされているようなこともおっしゃっていましたけれども,現場の中でしっかり運用している段階でありますので,適切に運用できるようにしていくということが筋ではないかと思っております。
 研修につきましては,必要に応じてしっかりと研修しているものと考えております。「誰一人取り残さない」という形で,私自身,SDGsの大きな理念の下に動いているところでございます。いろいろな状況の変化に応じて適切に対応できる職員のしっかりとした基盤整備ということについては,大きな方針の中で組み込んでいるところでございます。
 必要に応じて研修を厚くしておりますので,対応しているものと承知をしております。

在留ミャンマー人への緊急避難措置等に関する質疑について

【記者】
 ミャンマー人への緊急避難措置に関して質問します。
 今回,3万5千人の在留ミャンマー人,そのうち3千人の難民申請手続中の難民申請者に対して,在留や就労を認めるということで,これだけの規模で短期間のうちに在留を認めるというのは,おそらくインドシナ難民以来ではないかという,大きな出来事だと思います。
 この緊急手続を,各地方入管局で行うことになると思いますが,その体制というのは今準備をされているのでしょうか。入国審査官や難民調査官の増員などを行うのでしょうか。
 また,難民申請者約3千人の手続をするとのことですので,それに対しての一定のスクリーニングのような審査といったことを考えていらっしゃるのかどうか。
 それと,この間の入管法改正でも,補完的保護ですとか,それから従来の人道的な配慮に基づく特別許可のことなども取り上げていたわけですが,そういった難民認定や在留特別許可に関する基準の体制といったようなものの拡充ということは考えていらっしゃるのかどうかということをお伺いします。

【大臣】
 今回の措置でありますが,クーデター以降,ミャンマーの国内情勢が引き続き不透明な状況にあること,3万5千人を超える在留ミャンマー人の中には,帰国することに不安を抱く方が少なからずいらっしゃることなどを踏まえまして,ミャンマーにおける情勢不安を理由に在留を希望する方につきましては,緊急避難措置として,在留や就労を認めることとしたものでございます。
 在留ミャンマー人の方からの在留資格変更許可申請に対しましては,窓口となる各地方出入国在留管理局におきまして,事案ごとに個別に審査を行うということでございます。
 在留資格の付与の時期を一概にお答えすることは難しいところではございますが,標準処理期間である2週間から1か月以内を目標に迅速かつ適切に処理していく予定でございます。
 今回の措置におきましては,難民認定申請者については,審査を迅速に行うこととしまして,難民該当性が認められる場合には適切に難民認定し,難民該当性が認められない場合であっても,緊急避難措置として,原則として在留や就労を認めることとしているところでございます。
 その際,難民認定申請を行ったミャンマー人が正規滞在者の場合には,難民認定手続中であっても,今回の緊急避難措置による在留資格変更許可申請を受け付けることとしております。
 今回の措置への対応につきましては,各地方出入国在留管理局におきまして,その業務量に応じて職員の応援も含め適切に対応していく方針でございます。
 本件に関する詳細につきましては,具体的な手続に関することでございますので出入国在留管理庁にお問い合わせいただきたいと思います。

【記者】
 各地方入管局で個別に対応するというお話でしたが,この規模からすると相当きちっとした体制を作らなければならないと思います。これは遅くなったら全然意味がないわけで,緊急に在留資格を出す必要があります。今は仮放免で生活に困っている人もたくさんいます。1日も早く在留資格が欲しいという方がたくさんいらっしゃると思います。
 そういうことは法務省全体として対応すべき事柄ではないかと思うのですが,それをどう考えていらっしゃるか。
 また,近日中に第8次出入国管理政策懇談会が開催されると思います。2014年にも難民認定制度の在り方の専門部会などがあり,報告書もあるのですが,その問題には,まだ未解決の問題がいっぱいあります。そういうことで,今言った難民認定審査の在り方や在留特別許可,法務省で打ち出している補完的保護の在り方を含めて,政策としてどのようにミャンマーの問題に取り組むのかということが問われていると思いますが,その体制の在り方について大臣のお考えを聞かせてください。

【大臣】
 まず,今回の措置については,ミャンマーの情勢をも踏まえての緊急避難措置ということで対応するということであります。
 各地方でどのような申請があるのかということについて,よく実態を踏まえた上で,体制をしっかりと整備してまいりたいと思っております。今から予測をして,どういう形で地方に来るのかということにつきましても,現在オーバーフローするような状態ではないと考えておりますので,それに随時お応えすることができるようにしてまいりたいと思っております。
 それから,出入国在留管理行政の在り方については,第7次出入国管理政策懇談会においては,昨年12月に報告書が取りまとめられたところでございますが,その内容も念頭に置きまして,不断の見直し,不断の検討を進めてまいりたいと思っております。
(以上)