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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年8月10日(火)

(※ 8月11日(水)に掲載したものについて,一部修正して掲載し直しています。)
 今朝の閣議において,法務省案件はございませんでした。
 続いて,私から報告がございます。
 この度,出入国在留管理庁から,名古屋出入国在留管理局における死亡事案についての調査報告書を受け取りました。
 亡くなられた方は,日本語を学ぶため希望をもって来日されたにもかかわらず,志半ばで,生涯を閉じられました。母国の御家族から離れ,体調を崩していく中で,御本人が抱いていたであろう孤独,不安,無念さは,察するに余りあるものです。
 私としても,その心情に思いを寄せると,胸が張り裂ける思いです。改めて,亡くなられた方と,お母様を始めとする御遺族の方々に対し,心からお悔やみ申し上げます。
 そして,生命をお預かりしている収容施設の中で,尊い命が失われたことに対し,心からお詫びを申し上げます。
 御遺族が,本件に関係する事実を知りたいと希望されるのは当然の心情であり,御遺族に対しては,速やかに,調査で明らかになった内容をお伝えし,お気持ちに応えてまいりたいと思います。
 あわせて,御遺族の心情に思いを致し,亡くなられた方が施設内で過ごされていた際のビデオ映像についても,御遺族に御覧いただくこととし,出入国在留管理庁長官に指示いたしました。
 本件については,亡くなられた方の死亡の主たる要因や死亡に至る具体的な経過等は明らかになりませんでした。しかし,今回の調査では,亡くなられた方を収容していた名古屋局の一連の対応の当否に焦点を当て,可能な限り客観的な資料に基づき,外部有識者から御意見・御指摘をいただきながら,幅広く問題点を抽出し,検討が行われました。
 その結果,調査報告書では,「名古屋局では,被収容者の体調等を的確に把握し,医療的対応を検討して対処するための体制が構築されていなかったという組織的な対応体制」,「医療従事者が限られており,外部の医療従事者へのアクセスにも欠けていたという医療体制の制約」,「被収容者の生命と健康を預かる収容施設の職員として,医療的対応の必要な状況を見落とすことなく対応する意識が不十分だったという職員の意識」などについて指摘がなされました。
 この調査結果を受け,出入国在留管理庁において,当時の名古屋局幹部に対する人事上の処分を行うとともに,名古屋局の体制を刷新することとしました。
 また,私から出入国在留管理庁長官に対し,今後,出入国在留管理行政を,今日の行政手続として在るべき姿に,そして内外から信頼されるものとするために,地方官署に対する的確な管理・監督を行うよう,指導を行いました。
 収容施設として,大切な命を預かっている,命を守る,という基本中の基本を,虚心坦懐に,常に見つめ直していれば,亡くなられた方に対して,一層寄り添った対応もあり得たのではないかと考えられます。
 送還することに過度にとらわれるあまり,収容施設として,人ひとりをお預かりしているという意識がおろそかになっていたのではないか,また,処遇部門,仮放免審査を担当する審査部門,医療従事者との間の連携や情報共有が十分に行われていないなど,縦割りで風通しの悪い組織風土となっていたのではないかとの印象を抱きました。
 私は,昨年9月に法務大臣に就任して以来,SDGsの理念である多様性と包摂性のある「誰一人取り残さない」社会の実現を目指し,そのことを繰り返し職員に指示してまいりました。
 外国人が包摂され,全ての人が安全に安心して暮らすことができる共生社会の実現を目指す中で,出入国在留管理庁も,変化する社会情勢に合わせて,絶えず自己変革していかなければなりません。
 私は,出入国在留管理庁長官に対し,特に次の3点を指示いたしました。
 まず,1点目は,庁内に担当チームを設け,タイムラインを明確にした上で,調査報告書で指摘された改善策を具体化するとともに,収容施設以外の組織の改革をも進め,一定期間経過後に,改革の進捗を明らかにすること。
 2点目は,改善策として,「出入国在留管理の使命と心得」(仮称)を策定するに当たっては,職員自らの力で意識改革を行い,それを根付かせること。
 そして,3点目は,この改革を進めるに当たっては,マルチステークホルダーと連携して多層的な取組を促進する視点,施策の届け先となる様々な方々の立場に立った課題解決の視点,そして,PDCAサイクルを回して不断の改善を図る視点を常に念頭に置くこと。
 私は,同様の事案を二度と繰り返さない,二度と繰り返させないとの決意のもと,職員とともに,出入国在留管理庁が信頼を得て,出入国管理行政を進めていくことができるよう,改革を実行し,責任を果たしてまいる所存でございます。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について

【記者】
 大臣はこれまで,十分な調査をしっかりするようにということで,何度も指示をされてきたと思います。大臣の方からありましたけれども,こうしたことが二度と起こらないような報告書に今回はなっているのか,この点についてまずはお聞かせください。

【大臣】
 最終報告書に向けまして,しっかりとした調査をするように,常に指示をしてきたところです。事実関係につきましては,十分な調査を尽くした上で,考えられる問題点を幅広く,分析的に抽出すること,また,それらの問題点につきまして,外部有識者の方々の御意見・御指摘に基づき,客観的で公正な調査をすること,そして評価をすること,明らかになった事実は,包み隠さず報告書に記載することを指示してきました。
 今回の調査報告書は,可能な限り事実関係を明らかにするとともに,有識者の御意見・御指摘により客観性・公平性を確保しつつ,分析的にしっかりとした検討が行われ,それに基づく改善策も示されたものと考えております。

【記者】
 最終報告には問題点を踏まえた再発防止策についても盛り込まれていますけれども,この受け止めを教えてください。また,併せて先の国会で採決が見送られた入管法改正案の内容と重なる部分も多いと思いますが,法案についての今後の対応方針についてもお願いします。

【大臣】
 今回の事案を受け,この最終報告の中において示された的確な医療的対応を行うための組織体制の改革,医療体制の強化,さらに,全職員の意識改革などの改善策につきまして,まず,これをしっかりと具体化することが重要であると考えております。
 意識改革も含めて組織の改革を進めていくこと,それを通じて,出入国在留管理庁に対する内外の信頼を一日も早く回復し,そして出入国在留管理行政を果たしていくことが重要と考えております。
 入管法のことに言及がありましたが,先の通常国会に提出いたしました入管法改正法案につきましては,国会の閉会に伴いまして継続審議となっております。同法案の今後の取扱いにつきましては,国会がお決めになることであると承知しております。

【記者】
 客観的事実をきちんと出せたということなのですが,この調査報告書を読む限り,スリランカ人女性がかつて通帳を取られていたり,電話をしても遺族と話せるような状況が作れなかったり,DV状況,堕胎を受けた以降のPTSDの状況も含めてつまびらかにされていない部分が多々あります。特にDV被害に関しては,DVの専門家による分析というのが皆無でございました。こういった点が不十分ではないか,今後どうするのかという点。
 そして,懲戒処分,訓告にとどまるという,懲戒にならないということなのですが,死因がはっきりしない中で適切な医療が受けられなかったことによる死亡というのは,どなたが見ても同じだと思います。やはり訓告というだけでは甘すぎるのではないか,現場の職員は処分を受けておりません。こういった点をどうお考えか教えてください。

【大臣】
 亡くなられた方をDV被害者として取り扱うべきではなかったかという点につきましては,大変重要な視点として,今回の調査報告書の中でも,二つの観点から検討が行われたところです。
 1点目は,名古屋局がDV被害者であるかどうかについての事実関係を確認するための調査を行ったか,2点目は,亡くなられた方はDV被害者として保護されるべきではなかったかという点です。
 まず,名古屋局での調査の実施状況ですが,調査の結果,亡くなられた方の発言等から,DV被害者の可能性がある外国人であると認知し,措置要領に沿って事実関係を確認するための事情聴取等を行うべきであったのに,名古屋局の担当職員においては,措置要領の存在及び内容等を認識しておらず,同要領に基づく聴取等がなされなかったとされたところです。
 また,亡くなられた方がDV被害者として保護されるべきではなかったかという点につきましては,DV被害者と認められたか否かは,外部有識者の間でも評価が分かれているところでありますが,退去強制処分を見直し,あるいは退去強制手続上の特段の取扱いをするべき事案とまではいえないと考えられるとされたところです。
 名古屋局の担当職員において措置要領で定められた手続を執らなかったことは,反省すべき点であり,改めて措置要領の趣旨・内容を周知徹底させることを含め,必要な改善策をとってまいりたいと考えております。
 今申し上げたように,反省点として,本来ならば措置要領に基づいて事実認定を行い,DV被害者と認定される場合には,必要な方法を検討するべきであったと思っております。現段階で,名古屋局以外の地方官署で措置要領に基づく取扱いが徹底されているかの確認は未了であると聞いており,出入国在留管理庁に対しまして,速やかに各官署におけるこの問題の取扱いをしっかりと確認させた上で,改めて,措置要領を徹底させてまいりたいと考えております。
 続いて,2点目として,処分が甘いとの御指摘であったかと思います。調査報告書では,亡くなられた方の死因につきまして,病死と認められるが,複数の要因が影響した可能性があり,死亡に至った具体的経過を特定することが困難であるとされております。
 そのため,死亡結果との関係における職員の責任につきまして,確たることを申し上げることが困難であることに,御理解をいただきたいと考えております。
 その上で,調査報告書では,可能な限り事実関係を特定して,考えられる問題点を幅広く抽出し,外部有識者の御意見・御指摘に基づいて評価が行われ,その結果として,名古屋局では,被収容者の体調等を的確に把握し医療的対応を検討して対処するための体制が構築されていなかったという,組織的な対応体制の問題などが明らかになったところです。
 これらの点を踏まえ,出入国在留管理庁において,人事院の定める懲戒処分の指針や他の処分例も参考として,当時の名古屋局長以下幹部4名に人事上の処分を行ったものと承知しております。

【記者】
 今回,改善策の中に医療体制の強化ということが挙げられました。先ほど質問にも出た入管法改正案の法案では,常勤医師の確保を進めるために兼業要件を緩和する内容が含まれており,今回の改善策と重なる部分がありますが,この問題は名古屋局だけの問題ではないと思いますが,大臣として,入管の施設全体の医療体制についてどのように受け止めているかお答えください。

【大臣】
 今回の調査報告では,名古屋局において,被収容者からの診療の申出への対応について,本来あるべき運用をしておらず,過去の再発防止策でも指示されておりました休日等における医療相談体制の構築も不十分であったという点が指摘されています。
 他の地方官署においても名古屋局と同じような状況かといえば,この点については,必要な体制の構築と運用が行われていたと聞いているところです。
 他方で,常勤医師の確保などの医療体制の強化は,庁全体の課題として認識しており,医師以外の方々も含め,しっかりと御協力をいただかなければいけない課題でもあります。また,職員の意識改革の点は,これは名古屋局だけの問題にとどまらないと考えており,出入国在留管理庁全体の取組として,しっかりと課題を認識し,対応すべきと考えています。
 これらを踏まえ,出入国在留管理庁に対しましては,調査報告書で指摘された改善策の具体化とともに,名古屋局以外の組織における改革も進めるよう指示したところです。
 改善策,特に医療体制の強化につきましては,専門家会議を開催するなどして,常勤医師の配置等を通じた収容施設の庁内診療体制の強化,協定等を通じた休日等を含めた外部の医療機関との連携体制の構築・強化などを計画的かつ着実に進めることとしております。
 これらの点につきましては,全庁的な取組として,しっかりと進めてまいりたいと考えております。

【記者】
 この調査報告書について,客観性・公正性を担保するために外部有識者の協力を得て調査を進めるようにというのは,大臣の方から入管庁に指示されたと報告書にも書かれています。ただ,客観性・公正性が担保されているかということについて,先ほど入管庁長官会見のときも,これは結局入管庁が指名した外部有識者であり,報告書をまとめたのも入管庁であるということで,当事者がまとめているということで,この点はどうしても客観性・公正性に欠けるのではないかと。出入国管理部長は,「担保されている。」とお答えになりましたが,少なくとも支援者の聴き取りにおいて,支援者は詐病を唆しているのではないかという質問があったということで,途中で協力をやめているわけです。途中で聴き取りの協力をやめるに至るような信頼関係が損なわれたという事態があったと。そこは,例えば入管庁以外の第三者が聴き取りを担当するなどして引き続き聴き取りを進めるなどの方法もあったのではないかと思われます。
 そういう改善策について,第三者の窓口を設けるとありますが,もう少し第三者性,第三者の声を取り入れる,先ほどの大臣の発言でも様々なステークホルダーの声を取り入れるとありましたが,もう少しきちんと制度全体に及ぼすような第三者の声がきちんと入るような改革が今回の事態を受けて必要ではないかと思いますが,大臣はいかがお考えですか。

【大臣】
 御質問の中で,先ほど出入国在留管理庁から説明があったと御紹介のあった点については,そのように御理解をいただきたいと思うところです。
 私自身,今回の調査におきましては,外部の様々な方々の視点をしっかりと取り入れて,客観・公正に進めていくようにということを重ねて指示をしてきたところです。全てのことに100%お答えしたかということについては,様々な御指摘はあると思っており,謙虚に受け止めたいと思っております。
 これから改善策を,全庁を挙げて取り組んでいく中では,先ほど申し上げたマルチステークホルダーと連携して様々な視点を持って対応していくことが必要であり,このことは,今回の調査結果の中でも明確になってきています。
 外部の方の声,異なる立場で感じたことについても,しっかりと受け止めることができる改善策を具体化していくことは,極めて重要であると,私自身,認識をしています。

【記者】
 調査報告書の中では,看守の職員の暴言が数々あったというふうなことが記されています。報告書の中では,人権意識の欠けているというような指摘がなされていますが,なぜ人権意識が欠けてこんな発言がなされたのか,こうした発言がなされる意識が問題とされた対応にどう影響して,どうつながっていったのかという分析がなされていません。
 その暴言自体も,全てではなく一部の記載にとどまっていて,そういう意味でも不十分ではないかと思うのですが,どう思われるのかという点と,また,大臣自身がこの発言がなぜなされたのかですとか,どういうふうに考えているのかお聞かせください。

【大臣】
 まず,様々な職員が,亡くなられた方との接触の中で,様々な形のやりとりをしていたわけです。時々刻々と容態・病状が悪くなるということも踏まえて,そのやりとりの中のことは,現場の非常に切実な状況の中での声として考えているところでございます。
 収容施設は,大切な命をお預かりしているのであり,常にそうした意識を持って仕事に当たるよう努めていると私は信じております。しかし,それでも,その意識をしっかりと持つ必要があることについて,様々な御指摘をいただいたことを,虚心坦懐に受け入れていく必要があるという意味で,意識改革の重要性を,今回,特に強く認識しております。
 送還をすることに過度にとらわれるということがあるとするならば,やはり,収容施設では命をお預かりしている,一人一人に向き合っていくという意識が少しおろそかになっていたのではないかと,私自身,様々な角度で皆様ともやりとりをしながら,強く感じたところです。
 絶えずそうした意識を持って職務に当たることを基本中の基本とすべきであること,このことは,私自身強く認識したところであり,その意味で,内部の意識改革,全庁を挙げての意識改革について,特に力をしっかりと注いでいくべき事柄と考えております。

【記者】
 報告書を一通り読ませていただいたのですが,ちょっと緊張感に欠けるというか,やはりこれまで,今回のケースが初めてではなくて,先ほど,入管の方のお話によると確認されているだけでも17人亡くなられていると,そして,大臣の在任期間でこの件を含めて4人亡くなっています。
 大臣はこの件について,御自身で責任を取られる覚悟がありますか。つまり辞職をしますかということです。
 名古屋入管だけ処分されるのはやはりおかしいのではないかと,これまでのケースから考えると思います。入管庁長官も処分されない。その他入管本庁の職員も処分がない。そして,二度と繰り返さないと大臣おっしゃいますけれども,4人死んでいます。これは,スリーアウトどころか,もう4人死んでいるわけですから,最終報告も出たわけですから,これはもう辞任されるのが適切かと思うのですけれども,その辺りはいかがでしょう。
 あともう1点,死因が分からないというのは,最終報告書として非常にどうしようもないというか,しかも,その死因が分からないことを理由に処分を軽くしているという,非常にこの辺も不適切だと思います。なぜ死因が分からないかというと,解剖の鑑定書だとかそういうものが,捜査中だから手に入らないと言っているわけです。
 これは結局,法務省・入管庁が,当事者が調査を行っているからそういうことになるのではないでしょうか。この死因が分からないということ自体,この第三者ではなく当事者がやっているこの調査報告書の在り方が根本的に間違っていたということを示すものではないでしょうか。この2点についてお願いします。

【大臣】
 まず,1点目の御質問については,先ほど申し上げたとおり,名古屋局では,被収容者の体調等を的確に把握し,医療的対応を検討して対処するための体制が構築されていなかったという組織な対応体制の問題が明らかになったところです。
 その意味で,出入国在留管理庁におきまして,当時の名古屋局の局長以下幹部4名に人事上の処分を行い,更に名古屋局の体制を刷新することとしたところでございます。
 また,私から,出入国在留管理庁長官に対し,出入国在留管理行政を,今日の行政手続としてあるべき姿に,そして内外から信頼されるものにするため,地方官署に対する的確な指導監督を行うように指示をしたところでございます。
 私としましては,同様の事案を二度と発生させないとの決意の下で,職員とともに,調査報告書にまとめられた改善策,改革をしっかりと進めて,その責任を果たしてまいりたいと思っております。
 後半の御質問で,死因について言及がございました。亡くなられた方の死因については,司法解剖の結果を確認した上で,検察当局から聴取を受ける過程で司法解剖の鑑定書の内容を確認された専門医2名からの聴取を実施し,その見解をも踏まえて,検討結果を取りまとめたものと承知しています。
 調査体制が客観性・公平性に欠けるのではないかという御指摘がございました。私自身,最終報告に向け,様々な御指摘をいただいた点も踏まえ,問題点・課題点をしっかりと見つめて,そして,ヒアリング等で得た事実について,全てを明らかにするという趣旨で,指示をしてきたところです。その中で,専門家の方々から貴重な御意見と客観的な御判断をいただくことができ,これらを極めて重要なものとして位置付けつつ,改善策も含めて,今回の報告書が作成されたものと思っております。
 大切なことは,これを踏まえて,二度とこうした事態が起こらないようにすることだと考えております。先ほど御指摘いただいたとおり,過去にも亡くなった事案があり,再発防止に向けた改善策について様々な提起がなされていたにもかかわらず,このような事態が起きたことについては,大変重く受け止めております。
 その意味で,二度と起こさない,二度と起こさせないという思いで,改善策の一日も早い推進に向け,責任を果たしてまいりたいと考えております。

【記者】
 今の質問にもありましたけれども,14年間で17人亡くなられているということは,やはり異常事態ではないでしょうか。
 全件収容主義ということで,違反は全て収容するというこの体制自体がおかしいのではないかということが,内外の関係者からかねて指摘されています。
 今回の改善策は基本的には運用のことで,制度についてはほとんど触れていないのですけれども,制度をいじらないと,二度と起こさないという大臣がおっしゃるようなことは実現できないのではないのでしょうか。制度改革についてどうお考えでしょうか。

【大臣】
 今回の改善策は,今回の事案を極めて重く受け止めた上での調査及びそれに基づいての改善策ということでございます。運用の現場において的確にその制度が運用されていたならばという観点から,まずは運用の改善を図ることが極めて重要だと思っております。
 他の施設と比較しても,名古屋局においてこうした事態が生じたという状況の中で,運用上の問題点・課題点の解決をしっかりと実現していたならばと考えますと,そのことをまず実施していくべきと考えております。
 制度の問題という御指摘がございました。かねてより私も,制度の在り方も運用の改善も,様々に変化する現実の状況の中で,絶えず検証をし続けることが極めて重要であると思っております。
 取り分け人の命をお預かりしている施設であるという基本中の基本の考え方に基づき,制度の在り方について,改善すべきことについて様々な御提言・御提案がされており,また,法案を提出したのも,長期収容の問題等の改善のためでした。
 こうしたこともございますが,まず大事なのは,名古屋局において発生した今回の事案について,これまで指摘がされていたにもかかわらず,適切な運用がなされていなかったことについて,しっかりと取り組んでいくことが大事であると思っています。
 決して,制度が万全であったと申し上げているわけではなく,その意味では,時代の一つの大きな流れの中で,今回の事態が起きたことを謙虚に見つめながら,制度の在り方につきましても,様々な御意見を拝聴しながら取り組んでいくことは,もとより重要であると考えております。

【記者】
 以前,大村収容所の餓死事件がありました。あのときの報告書を基に「収容・送還に関する専門部会」ができて,そこでの提言を基に今回の入管法の改正案が前回の通常国会に提出されたわけです。
 あれも送還が主で,退去強制手続も送還するまで収容できるという建て付けが1951年からずっと続いているわけです。その中で,こういった長期収容もあるし,医療体制もあると思います。常勤医がいないというのも,今に始まったことではなく,今常勤医がいるのも大村だけだと思いますけれども,今の入管の収容体制がある以上,常勤医は多分見つかりません。今までずっと探してきて見つかってこなかったわけです。
 ですから,そうした医療体制を変えるためにも,今御質問ありましたけれども,やはり収容政策の在り方そのものを変えないといけない段階にきていると思います。
 以前の大村収容所のような形でも,報告書を受けての入管法改正だったわけですけれども,今回の第6次の出入国管理基本計画の策定もこの夏にあるのではないかと思うのですが,もう1回,入管難民法の在り方,特に退去強制手続の在り方そのものを見直す,これは国連の恣意的拘禁のワーキンググループからもいろいろな勧告が出てますし,今回入管法を巡っては,全国の弁護士会から反対声明が出ていたわけですけれども,そういったものをきちんと踏まえた上で,視察委員会の在り方の見直しも含めて,これから根本的な議論が必要だと思うのですが,第6次出入国管理基本計画の中で,こういったことを今後議論するおつもりというのはあるのでしょうか。

【大臣】
 医療体制の強化につきましては,先ほども申し上げたとおり,専門家会議を開催するなどしまして,常勤医師の配置等を通じた収容施設の庁内診療体制の強化や協定等を通じた休日等を含めた外部医療機関との連携体制の構築・強化などを,計画的かつ着実に進めることとしています。
 医療体制については,喫緊の課題であると考えており,専門家会議を開催するなどして対応していく必要があることは,私自身も強く感じているところです。
 入管法関係についても御指摘がございましたが,この件につきましては,継続審議となっておりますので,どう取り扱うかについては,今後,国会の中でお決めいただくことと思っております。
 繰り返しになりますが,まず,極めて大事なことは,この調査報告書で示された運用の改善策を具体化し,規則・通達等により定められた様々なルールの徹底を図ることであり,その上で,現在のコロナ禍の状況のような現実の中でもしっかりと対応していく力を持つことも大事であると考えております。そうした行動を通じて,一日も早い信頼の回復に努めていくことが大事であると思っております。

靖国神社への参拝に関する質疑について

【記者】
 8月15日に終戦の日を迎えます。菅内閣の閣僚としては初めて迎えられることになると思いますが,大臣は参拝の御予定はあるのか。若しくは玉串料の奉納を考えられているのか。その点をお聞かせください。

【大臣】
 現時点で,その予定はございません。
(以上)