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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年9月28日(火)

 今朝の閣議において,法務省案件はございませんでした。
 続いて,私から1件報告がございます。
 農業を通じた立ち直り支援の取組に関して,御報告します。
 私は,かねてより,犯罪や非行からの立ち直りには,農業を通じた社会参画が非常に有用であると考えてきました。
 法務省では,地方公共団体や民間の方々の御協力を得ながら,刑務所出所者等に対して農業訓練等を行う茨城就業支援センターや沼田町就業支援センターを運営してきました。
 また,「農福連携」,すなわち農業と福祉の連携の取組を推進する農林水産省の協力も得て,様々な生きづらさを抱える方々に農業に携わる場を提供されている農福連携事業者の方々と連携し,農業を通じた立ち直り支援に力を入れてきました。
 こうした取組を更に広げていく上で,取組を皆さんにもっと知っていただくことが大きな課題となっています。
 そこで,今回,農林水産省のYouTubeチャンネル「BUZZ MAFF」とのコラボにより,農業を通じた立ち直り支援の取組をPRする2本の動画を作成し,情報発信を行いました。
 1つ目は,茨城就業支援センターと,農福連携事業者「埼玉福興株式会社」で育てられた食材を使った「立ち直り応援カレー」をテーマとした動画です。農林水産省のYouTuber「タガヤセキュウシュウ」さんならではのユーモアで,農業を通じた立ち直り支援について,親しみやすく発信しています。
 2つ目は,北海道農政事務所のYouTuber「なまらでっかい道」さんによる沼田町就業支援センターをテーマとした動画です。
 沼田町の御協力の下,農業訓練の様子や,法務省内の立ち直り応援基金寄付型自動販売機でも取り扱っている沼田町特産トマトジュース等を紹介しながら,立ち直りを目指すセンターの少年たちの自立に向けた思いが語られる,内容の濃い動画になっています。
 2本の動画の合計再生回数は21万回を超え,「農業を通じた立ち直り支援の取組を初めて知った。」,「このような支援の輪が広がってほしい。」といったコメントが寄せられています。BUZZ MAFF最高の再生回数100万回を目指したいと考えております。
 法務省では,犯罪や非行から立ち直ろうとする人が農業を通じて社会参画を図る機会を更に広げていくことができるよう,今後も様々な媒体や手法を活用した広報に力を入れてまいります。
 報道機関の皆様にも,是非,御協力いただきたいと考えています。

インターネット上の人権侵害に関する質疑について

【記者】
 被差別部落の地名リストをウェブサイトから削除することなどを求めた訴訟で,東京地裁は27日,一部を除いて原告側の主張を認める判決を下しました。
 インターネット上のヘイトスピーチなどは依然多く見られる状況ですが,ネット上の人権侵害にどう対応していくか,お考えを聞かせてください。

【大臣】
 いわゆる部落差別やヘイトスピーチは決してあってはならず,情報の拡散やアクセスが容易なインターネット上でそのような言動等が行われた場合には,深刻な被害を招きかねないものと考えています。
 法務省の人権擁護機関では,インターネットにより被害に遭われた方等から相談を受けた場合には,その意向に応じて,プロバイダ事業者等に対する当該情報の削除依頼の方法を助言したり,あるいは,法務省の人権擁護機関として,違法性を判断した上で,書き込みの削除要請をするなどしています。
 そして,この削除要請の実効性を高めるため,法務省においては,総務省とともに,プロバイダ事業者等との意見交換の場となる実務者検討会を開催するなどして,削除要請に対する事業者等の理解を求めるなどしています。
 また,法務省の人権擁護機関では,「インターネットによる人権侵害をなくそう」,「部落差別(同和問題)を解消しよう」を人権啓発活動の強調事項の一つとして掲げ,啓発冊子や啓発ビデオの配布・配信等の各種人権啓発活動を行っています。
 今後とも,このような調査救済活動や人権啓発活動を通じて,インターネット上の人権侵害の問題に対して,しっかりと取り組んでまいりたいと思っております。

自民党総裁選に関する質疑について

【記者】
 明日,投開票を迎える自民党総裁選についてお伺いします。大臣は既に岸田候補の支持を明らかにされていますが,改めて支持される理由とここまでの岸田候補の戦いぶりについて受け止めがあれば教えてください。

【大臣】
 お尋ねの自民党総裁選挙については,自民党内の事柄に関するものですので,法務大臣としてコメントする立場にはないことは御理解いただきたいと思います。
 その上で,一人の政治家としての立場で敢えてお答えしますが,現在コロナ禍にあり,国民の中に不安・不満が高まっており,孤独・孤立や分断の問題も大きくなっている状況です。こうした状況においては,リスク・コミュニケーションの重要性が指摘されているように,国民との徹底した対話が重要であると考えています。
 こうした中,岸田候補は,国民の声を聴き,対話を重ねるという政治姿勢を貫かれていたと思います。国民の声を聴き,対話をし,次のアクションにつなげていく,これが正に政治ではないでしょうか。
 岸田候補は,この総裁選を通じて,どのような質問に対しても丁寧に答えられており,この強み,能力を国民の皆様に少しでもお伝えすることができたのではないかと考えています。
 同時に,今回の総裁選は,次の総理大臣を決めることにつながるものであり,世界からも注目をされています。
 我が国を取り巻く国際環境に目を向けると,地球温暖化や混迷を深めるアフガニスタン情勢,大変厳しい安全保障環境の到来など,多岐にわたる課題があります。
 こうした中,約5年間,外務大臣を務めた経験のある岸田候補は,諸外国と対話をしていく我が国の顔として,諸課題に対応する安定した力を発揮いただけるものと,私自身は確信をしています。

人権擁護機関における相談対応に関する質疑について

【記者】
 先週,南アジア出身の40代の女性と3歳の長女が,6月に公園で遊んでいる際,ある男性から,自分の息子を蹴ったのではないかと絡まれ,「在留カードを見せろ。不法なんじゃないか。」などと言われた後,現場に駆けつけた刑事からも,「3歳の娘さんが蹴ったと認めろ。」などと言われ,その後,署に連行され,3時間以上聴取を受け,トイレも行かせてもらえず,食事も取れないまま,一部15分にわたって娘さんが単独で刑事4,5人に調べられていたということで,不当な聴取だということで,東京都に対しての訴えを地裁に起こしたということがありました。
 この件について,いろいろと取材をしていましたら,実は一番初めにお母様が頼ったのが,法務省のホームページから入りまして,人権擁護局の中にある「外国人のための人権相談」という,0570-090911という窓口にすぐ電話したそうです。30分以上にわたって相談したのですが,そこで彼女が言われたのが,「警察に相談してください。」と,警察のことを訴えるのに警察に回されてしまったということです。このホームページには,職員や人権擁護委員が相談に応じて,悩みの解決のために最善の方法を一緒に考えますと書かれていましたので,彼女からすると本当に助けてほしいという思いで電話をしたのですが,人権擁護局は助けてくれなかったということでした。
 このことを大臣は多分初めて聞いたと思いますので,今後この窓口がもう少ししっかりとした対応をすべきではないかと思うのですが,受け止めと,今後どうしたいかをお聞かせください。

【大臣】
 御質問は具体的な事案の内容に言及されたものと思いますが,個別具体的な案件ですので,お答えについては差し控えさせていただきたいと存じます。
 人権擁護機関では,相談に来られた方に寄り添ってしっかりと対応していくという活動の中で対応しておりますが,個別の案件について,どのような状況だったのかを含め,にわかにお答えすることができないことを御理解いただきたいと思います。

性犯罪に対処するための法整備に関する質疑について

【記者】
 性犯罪について,大臣は16日に法制審議会に対して,性犯罪に適切に対処するための法整備の在り方を諮問されました。同時に諮問された侮辱罪関連では既に部会が設置されて本格議論が始まったようですが,性犯罪の議論についての進捗状況について教えてください。
 また,大臣はこれまで処罰されるべき行為が漏れなく捕捉されること,処罰されるべきでない行為がその範囲に取り込まれてはいけないことのバランスを指摘されていますが,性犯罪の深刻さを考えたとき,被害者に寄り添った法整備の在り方はどうあるべきかという点と,議論のスピード感についても改めてお考えをお聞かせください。

【大臣】
 御質問にありました今年9月16日の法制審議会において,性犯罪に対処するための法整備について諮問し,刑事法(性犯罪関係)部会を設置することが決定されたところであり,今後,この部会において,調査審議が行われるものと承知しています。
 部会の開催時期等については,現在,調整中との報告を受けています。
 私自身が申し上げた一つの認識について言及いただきましたが,これは,刑罰の在り方の基本的な考え方について申し上げたものです。すなわち,処罰されるべき行為が漏れなく捕捉されるようにすべきとの要請と,処罰されるべきでない行為が処罰範囲に取り込まれてはならないといった処罰範囲の明確性等の刑事法の諸原則との調和をどのように実現するかという課題があり,性犯罪に対処するための法整備についても,同様であると認識しています。
 性犯罪の被害は非常に深刻で根深いものであり,被害に遭われた方々に長期にわたる非常に大きな傷跡を残すものであると認識しています。
 私としては,このような認識を共有した上で,性犯罪の事案の実態を把握し,これに即した施策の在り方を検討することが重要であると考えています。
 こうした課題に取り組むに当たっては,いろいろな角度,様々な立場から御意見をお示しいただくことが重要であり,また,議論を通じて,できる限りの合意形成を図っていくことが重要であると認識しています。法制審議会部会での議論は部会長がリードされるわけですが,スピード感を持って,充実した御議論が行われるよう期待しています。
(以上)