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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年10月15日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件として,主意書に対する答弁書が2件ありました。
 続いて,法務省関連の新型コロナウイルス感染症の感染状況について申し上げます。
 10月8日(金曜日)から昨日までの間,職員については,2つの施設で計3名の感染が判明しました。詳細は既に公表されたとおりです。
 なお,被収容者の感染判明はございませんでした。

選択的夫婦別氏制度に関する質疑について

【記者】
 選択的夫婦別氏制度についてお尋ねいたします。先日行われた衆・参の代表質問では,制度導入に関する質問が多く上がり,また,野党の多くは今回の総選挙の中で制度の実現を公約で掲げています。
 1996年の法制審の答申以降,法改正には至っていませんが,古川大臣個人として,選択的夫婦別氏制度についてどのようなお考えをお持ちか,お聞かせください。

【大臣】
 夫婦の氏をどのように定めるかは,一人一人の家族観にも影響を及ぼしうるものであり,国民的な議論も踏まえ,意見の集約が図られることが望ましいと考えています。
 選択的夫婦別氏制度の導入については,国民の間にも様々な意見があるところであり,引き続き,しっかりと議論すべき問題であると考えています。
 法務省としては,議論がより充実したものとなるように,過去の法制審議会での検討の経過等について,積極的に情報提供をするなどして,協力していきたいと思っています。
 今後も情報提供を積極的に行っていきたいと思っています。

人権,出入国在留管理行政等に関する質疑について

【記者】
 解散総選挙になりましたが,古川大臣は,外国人参政権や人権擁護法案の制定に反対する立場であるということをネットの記事などで見ました。
 先日の参議院本会議の代表質問で,立憲民主党の福山議員から,岸田首相に対して,国内人権機関の設立についての質問もありました。国連からも,特に国内人権機関については設立するようにということで,自由権規約委員会など様々な委員会から勧告がずっと出ているわけですが,こういった外国人参政権,人権擁護法案,国内人権機関といったものに対して,大臣はどのようなお考えでしょうか。お聞かせください。

【大臣】
 私は法務大臣としてここに立っていますから,個人的な見解を申し上げるのは控えたいと思っています。
 お尋ねの人権機関の設立についてですが,人権救済制度の在り方については,これまでも様々な議論が重ねられてきた状況であり,これからも人権を守るために不断の検討を続けていくという姿勢に変わりはありません。

【記者】
 今の関連ですが,不断の努力を続けてというのは分かるのですが,それをきちんと特に公的な人権侵害の問題とか今は入管の人権の問題が非常に大きく取り上げられたりしていますけれども,そういったものに対して,政府から独立したきちんとした機関が必要ではないかということで,国連からの勧告が日本政府に対して続いているわけです。
 110か国で国内人権機関というのは存在しています。なぜこの設立に対して前向きに取り組もうとしないのかという立場の御見解をお聞かせください。それと,今言った外国人参政権と人権擁護法案についての大臣のお考えを聞かせてください。

【大臣】
 総理も答弁をされていますが,人権救済制度の在り方については,これまでなされてきた議論の状況も踏まえて,不断に検討をしており,その姿勢に変わりはありません。
 差別のない社会の実現を目指して,個別法によるきめ細かな人権救済を推進してまいりたいと考えています。

【記者】
 名古屋出入国在留管理局で収容中に亡くなったスリランカ人女性の問題をお聞きします。スリランカ人女性の遺族とその弁護団が,先日,岸田総理宛てに,「動画の公開,真相の解明に協力してほしい。」というお手紙を送ったと同時に,古川大臣に対しても,上川前大臣のときのように面会の申入れ,動画の公開等についての要望を送った,申入れをしたと聞きました。大臣として,どのように対応するつもりかお聞かせください。

【大臣】
 まず,御遺族と面会をするかどうかについて先に申し上げますと,私が大臣に就任した後に面会の打診がありましたが,日程が合わず,実現していません。
 しかし,これは今後の状況をしっかり見ながら,きちんと判断していきたいと思っています。
 次に,ビデオ映像の開示についてですが,この場でも何度か申し上げていますように,このビデオ映像については,保安上の理由や,亡くなられた方の名誉・尊厳の観点から,公開するのは適当ではないと判断しています。
 真相解明ともおっしゃられましたが,法務省としても,可能な限り客観的な資料に基づき,外部有識者の方々に御意見・御指摘をいただきながら,今回の事案について事実を確認した上で,考えられる問題点を幅広く抽出して検討を行い,調査報告書を公表しています。
 現在,出入国在留管理庁では,「出入国在留管理庁改革推進プロジェクトチーム」を発足し,調査報告書を踏まえ,改善・改革すべき点を具体的に洗い出し,早急に対応が必要と認められるものから着手しています。

【記者】
 スリランカ人2人に対して,2014年の強制送還は,裁判を受ける権利を侵害したという憲法違反だという高裁判決が出て,それに争いを示さずに,入管としては賠償金を払って終わりにするという事案がありました。この判決に関連して,入管法改正案で出ていたうちの骨子の一つ,肝の部分として,複数回にわたる難民申請によって強制送還ができない状況が続いているので,前回出た法案では,3回目以降の難民申請については,相当な理由がない限りは強制送還の対象とするという送還停止効の例外というような取扱いを行うということを出されていました。
 その法案があったのですが,前回出された東京高裁の判決では,難民申請の濫用かどうかも含めて,司法の審査,裁判を受ける必要があるということを言っていたので,支援団体等の弁護団からは,東京高裁の判決が出たことで,今後,もう一度新たな法案を出す際に,前回出されたような,3回目以降の難民申請については送還停止効の例外とするということをやること自体が,いわゆる東京高裁の出した判決と矛盾してしまうので憲法違反になるのではないか,3回目以降の難民申請を送還停止効の例外とするということを,新たな法案では出せなくなるのではないかという指摘が出ています。
 この点について,細かい話で恐縮ですが,法務省として高裁判決を受けて,今後も前回出したような部分の法案を提出することをお考えなのか,やはりそこはかなり厳しくなっていくだろうとお考えなのか,お聞かせください。

【大臣】
 入管法改正案については,昨日,衆議院が解散されたことにより廃案となりましたが,送還忌避・長期収容問題は,出入国在留管理行政上かねてから解消しなければならない喫緊の課題であるという考えに基づいて提出されたという経緯があります。
 その内容も,様々な方策を組み合わせ,パッケージで問題の解決をしようというものでした。
 昨日の解散で一旦廃案になったわけですが,送還忌避・長期収容問題が喫緊に解決しなければならない問題であることに変わりはなく,法整備はしっかりと進めていかなければならないと考えています。
 様々な要素を十分に踏まえ,より良いものになるように検討を進めてまいりたいと思っています。

【記者】
 今大臣のお答えの中で,送還忌避や法案のパッケージといったお言葉が出てきましたが,そもそも送還忌避という言葉が出てきたのが,チャーター便の強制送還が始まった2013年辺りからで,盛んに法務省が言い始めたわけです。
 長期収容をなくすためには送還するしかないと,チャーター便にまとめて送還するのが一番手っ取り早いということで,それが難民認定申請が棄却になった直後に送還された人も含まれていて,名古屋高裁,そして今回の東京高裁と,非常に大きな問題となったわけです。
 パッケージでの強制送還,強制送還の方に重点を置いて,いかに迅速に送還するかということで,在留特別許可も非常に数が減ってしまっているわけですが,そういうことで,今コロナ禍でもあり,仮放免の人が増えているわけですが,この人たちに対しても在留特別許可が出ずに,非常に生活に苦しんでいる方がたくさんいます。中には自殺した方もいらっしゃいます。私がよく知っている方です。そういうこともあり,要するにパッケージですとか送還の方に重きを置いた施策ではどうにもならないという現状があります。その中でスリランカ人女性の事件も起きたわけです。
 ということで,入管法改正の方向性が,改めて今回の名古屋高裁,そして東京高裁判決でも問われていると思うのですが,その方向性と,それとスリランカ人女性に関しても,先ほどプロジェクトチームのことをおっしゃいましたが,これは上川前大臣の指示で立ち上がったと思うのですが,具体的にどのような点について改革すべきだという,上川前大臣から何か引き継いでいらっしゃることや,意見交換されたことはありますでしょうか。
 具体的にどのようなプロジェクトを今進めていらっしゃるのか,具体的な内容が全然見えてこないのですが,それについて大臣が今把握している範囲でお答えください。

【大臣】
 まず前段ですが,出入国管理行政をより良いものにするために,不断の努力をしてまいります。今回提出していた入管法改正案は,昨日廃案になったわけですが,今後も引き続き,あるべき姿により近づける,そういう入管制度・行政の在り方への不断の努力・検討を続けていきたいと思っています。
 それから後段ですが,上川前大臣は,この名古屋の出来事を大変重く受け止められており,問題点を洗い出し,具体的な改善・改革の実行を目指して,既に法務省も入管庁も動き出しています。具体的なポイントも挙げられ,工程表を作成しながら進めていると,私は,上川前大臣から特段の引き継ぎを受けました。私自身も,今回の事案を大変重く受け止めていますから,上川前大臣と同じ思いを持って,入管行政をより良いもの,あるべき姿にするために努力していく所存です。

【記者】
 確認ですが,先ほどの質問への答えとしては,今後新たに法務省が予定している法案の中に,3回目の難民申請以降,送還停止効の例外を入れるということも,まだ検討には入っているという理解でいいかということが1点。
 今回いろいろな方たちが言っているのは,やはり入管を取り締まるという取締側の入管庁というものと,難民保護を前提とした難民保護を行う機関が,一緒くたに入管庁の中に入っていることで,相矛盾したような判断が出てしまっているのではないかと,難民保護をする独立した機関というものを,入管の取締りをやるところと別に作るべきだと。これが確かに海外の事例を見ても,至極ナチュラルな方向だと思うのですが,大臣として,入管を取り締まる機関と難民保護を独立した審査で判断するような機関に別途分けて作るべきだというお考えはありますか。

【大臣】
 今後の入管法をどのような形にするのか,あるいは後段でおっしゃったような,制度そのものを変えることについて,現時点でここで申し上げられるような具体的なことがあるわけではありません。
 ただ,言えることは,私どもは入管行政という大変大事な役割を預かっているわけであり,これが適正なものであること,より良いものであることを目指して,もし誤っているところがあれば不断に改めるという姿勢はもちろんなければなりませんし,そういうことに対して正面から向き合っていきたい,より良いものにしていきたいという気持ちは持っています。それは申し上げておきます。

【記者】
 今も不断の努力ですとか,前向きにといったようなお話はありましたが,それを担保するためにも,今回の東京高裁の判決にしましても,やはり難民不認定かどうか,難民申請の濫用かどうかも含めて,裁判所の司法審査が必要であるといった内容が含まれているわけです。違憲判決という形で出たわけです。そういうことで言うと,例えば退去強制手続,強制送還とか長期収容の問題について,司法がきちんと関与できるような制度ですとか,先ほどの国内人権機関,これはもちろん入管行政に限ったことではないのですが,国内人権機関といった政府から独立したしっかりした人権機関が必要ではないかということが,長年言われ続けているわけです。こうした第三者的なきちんとした司法であったり,国内人権機関のようなきちんとした独立した人権擁護機関のようなものが必要ではないかという声が,いろいろな形で高まっていると思うのですが,その方向性について,大臣はどのようにお考えでしょうか。個別の法律というのは難しいかもしれませんが,方向性についてお聞かせください。

【大臣】
 平成26年の出来事に関して,東京高裁判決に先立って名古屋高裁の判決がありましたが,それを踏まえて,入管庁では,既に運用を改めています。判決を重く受け止め,改めるべきを改めるということを粛々とやっています。
 人権に関して御指摘がありました。人権というものは,これからの時代,ますます重要な価値観になっていくのだと思っています。
 もちろん人の歴史,人の世の中ですから,様々なことがあるでしょう。けれども,やはり人類社会というのは,人権,人の尊厳というものを,より大事に扱うという社会に少しずつ向かっているということは間違いないことだと思っています。
 法務省は,人権擁護を大事な任務の一つとして預かっているわけですから,こういう人類のあるべき姿,望ましい未来というものに向けて,確固たる意思というものを皆が持っています。
 人権擁護局の職員とも話をしますが,この時代の大きな流れの中で,一歩でも二歩でも,人の尊厳を守るための歩みを進めることへの思いは,共通であると私は再確認しています。
 抽象的な話にはなりますが,この世界の流れ,あるいは歴史の流れというものをしっかり見極めながら,決して後に戻ることがないように,努めていきたいと思っています。

衆議院議員総選挙に関する質疑について

【記者】
 いよいよ総選挙が近づいてきたということでお伺いしたいのですが,野党の共闘ですとか与党の支持率がなかなか上がってこないという状況があり,なかなか厳しい選挙になるのではないかという見方もありますが,どういったことを訴えて支持拡大を図っていきたいとお考えでしょうか。

【大臣】
 選挙について,ここで法務大臣としてお答えするのは,差し控えたいと思います。
(以上)