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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年11月16日(火)

 今朝の閣議において,法務省案件はありませんでした。

再犯防止の取組に関する質疑について

【記者】
 再犯防止の取組についてお伺いします。全国の自治体や各種団体と再犯防止の取組を促進していくための活動として,本日から,全国の地域ごとに「ブロック別協議会」を順次開催していくことになったと伺っています。
 これについて,法務省としては,「ブロック別協議会」の場を生かして,どのような意見交換や情報共有などを行い,地方との連携強化を図っていく方針か,大臣のお考えをお願いいたします。

【大臣】
 安全・安心な社会を実現するためには,一度罪を犯した者が再び罪を犯すことのないよう,刑事司法手続が終了した後も,国と地方公共団体が一体となり,民間協力者の方とも連携しながら,息の長い支援を進めていく必要があります。
 法務省としては,これまで,地方公共団体における地方再犯防止推進計画策定の支援を行ってきたほか,36の地方公共団体に対して,モデル事業として,地域の実情に応じた取組の実施を委託するなどして,地方公共団体との連携強化に努めてまいりました。
 その結果,一部の地域では,他の地方公共団体のモデルとなる先進的な取組が積み重なってきています。
 そこで,今年度は,再犯防止の取組を更に広げ,また,深めていくため,全国でブロック別に会議を開催し,各地の実情に応じて行われた先進的な取組を他の地方公共団体にも共有するとともに,地方が直面する課題等について意見交換を行う方針としています。
 この協議会は,本日午後の関東ブロックでの開催を皮切りに,来年2月にかけて全国6ブロックで開催する予定です。
 本日は私がオンラインで出席し,今後の協議会も政務三役で手分けをして出席して,地方公共団体の皆様に,より一層の連携をお願いする予定です。
 再犯防止に向けた取組の中で,地方公共団体は必要不可欠な存在であり,地方公共団体の声に耳を傾け,その課題を共に解決していくことなどを通じて,国と地方公共団体との更なる連携強化をしていきたいと考えています。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について

【記者】
 先週の会見でお伺いしたスリランカ人女性についての,「いわゆるDV被害者とはまだ認定していない。」という大臣の答弁についてお聞きします。
 大臣は,概要だけでなく,約100ページ弱の報告書も読まれましたよね。読まれていないということですかね。
 その中には,要はスリランカ人女性が2019年に堕胎を強要され,そのことによって体調が非常に芳しくなかったということを,入管の警備官等,あと看護師の方にも訴えていたということが出ています。
 複数の医者に聞きましたけれども,堕胎の強要自体が大きなDVであり,DV被害者であった可能性が高いという指摘が出ています。いわゆるDVの専門家を1人も交えずに今回の報告書が作られたということは,非常に大きな欠陥であり,問題だと思います。
 大臣がしっかり100ページ読んでいないなら,読んでいただいた上で,なぜDVの専門家を入れていないのかという点を厳しく入管庁側に再度,再検討するようにすべきではないかと思うのですが,堕胎の強要を含めて,大臣としてはここをどういうふうにお考えかお聞かせください。

【大臣】
 入管におけるDV事案の取扱いについては,被害者保護のために,DV事案に係る措置要領が制定されています。
 ところが,今回の事案においては,亡くなられた方の様々な主張について,恥ずかしいことですが,職員が措置要領の存在,内容等について認識していなかったため,措置要領に沿ったDV被害者の該当性についての検討そのものが行われていなかったということが,調査報告書にも示されています。
 本当にこれは反省すべき点だと思っています。措置要領を定めたは良いが,実際に機能していない実態があったことについては,大いに反省しなければならないことですから,これをどのように改善していくかについて,見直し,検討が必要であると思っています。
 その上で,調査報告書では,仮に亡くなられた方がDV被害者であったと認められたとしても,DVに起因して不法残留になったとの事情までは認められないことから,退去強制処分を見直すという事案とまでは言えないと考えられるとされています。
 DV事案の措置要領にのっとり対応をすべきでなかったかということについては,正におっしゃるとおりだと思っており,そこは反省し,改善に向けて努力したいと考えています。

【記者】
 強制退去令書が出たことを取り消すまでの事由は認められないというところですけれども,その点に関しても,DVの専門家や弁護士に意見を聞きますと,彼女が学校に行かなくなったことで,学校に通う日数が足りていないということで,いわゆる就学ビザの取消しということになってしまったのですが,学校に行かなくなった経緯というのが,男と交際が始まってから以降,徐々に徐々に学校に行かなくなっているんです。それは欠席日数を見れば分かるのですけれど。
 その間,家族とやり取りをしていた際も,御家族と電話で,向こうの郷里からお母さんや妹としゃべっているだけでも,男が嫉妬して,「電話をさっさと切れ」とか,「家族としょっちゅう電話をするな」というやり取りをしていて,当時,交際か友達か分からないけど,何らかの相手に相当いろいろなことを強要されているのではないかと家族は懸念されていました。
 学校に行かなくなったことも,男と交際があって,そのときからのDV的な関係の中で,学校に徐々に徐々に彼女が行かなくなってしまったのではないかという意味では,通学日数が足りなくて就学ビザが取り消されたというところも,DVに起因した欠席ということが,当時から背景としてあったのではないかと,もしそのDV等に起因する在留資格の取消しということであれば,これは措置要領等にも書いてあると思いますけど,在留資格を再交付できるということが書かれているので,その点を踏まえても,彼女がDVによって学校に行かなくなってしまったという経緯があったのであれば,在留資格の再交付そのものもできたのではないかという指摘があるんです。
 なのでこの点は,単に入管の中でどうだったかだけではなく,資格取消しの経緯の部分についても,もう少し掘り下げることが必要であるから,DVの専門家による評価をするべきではないか,そういうところから,もう少しDVをきっちり受け止めるべきではないかという指摘が出ています。
 この点について,大臣は,強制退去令書を取り消されるまでのものではないとあっさり言いましたが,実際そこでDVが絡んでいた可能性があるという指摘がありますので,そういう意味でも,やはりDVの専門家が,その時点を含めてどう評価するかという点をやるべきではないかと思うのですが,この点大臣どう思いますか。

【大臣】
 今回の調査では,事実解明をしっかりしたものにするために,調査チームを編成して,しっかりした調査を行いました。
 そのメンバーも,業務の実情に通じた職員を主体にしつつ,専門的知見を持つ医師や弁護士などの外部有識者の方々から,調査全般について御意見・御指摘をいただきながら,客観的かつ公平な評価・検討を目指しました。そのような調査を行った結果として,調査報告書が取りまとめられたと認識しています。
 外部有識者の御意見・御指摘に基づいて,それを明示しながら評価が行われているわけですから,私はこの調査報告書は,客観的かつ公平に行われたものだと評価しています。
 決して,DV事案を軽んじて考えているわけではありません。だからこそ,入管におけるDV事案の一般的な取扱いとして,平成20年7月に,DV被害者の保護のために適切な対処を行うために,DV事案に係る措置要領を制定したわけです。
 ところが,措置要領を定めたは良いが機能していなかったことは問題であり,これに対する反省を踏まえて,きちんと,これから運用,あるいは,内容についても,改めるべき点があれば改めるのは当然のことですから,そのような趣旨で向き合っていきたいと思っています。

アフガニスタン人の難民受入れ等に関する質疑について

【記者】
 難民の受入れの問題で質問します。現在のアフガニスタンの情勢を受けて,日本政府は,日本大使館とJICAのアフガニスタン人職員,日本のNGO団体などで直接働いていたアフガニスタン人の職員と家族のみ,合計500人ほどに入国ビザや在留資格を与える予定と新聞各紙等で報道されてきました。
 11月5日に,公明党の「難民政策プロジェクトチーム」が,日本への退避を希望しているアフガニスタン人の受入れを巡って,支援団体や関係省庁と意見交換を行いました。
 そういう報道もあったのですが,しかし実際には,元留学生や日本で暮らしているアフガニスタン人の親族を呼び寄せるための手続や,来日後の受入体制を,日本政府が民間の支援団体にも協力を呼びかけて調整するような取組が,ほとんど進んでいないような状況だと聞いています。
 特に1970年代,80年代のインドシナ難民の受入れの際は,内閣官房が中心となって,関係省庁間で連絡調整会議を組織し,結果的にインドシナ難民を約1万1,000人以上受け入れたという経験もあるのですが,その後,やはり難民受入れの体制や手続の流れをきちんと確立してこなかったという流れがあると思います。
 今回アフガニスタンについて,なかなか情勢が分からないところもありますが,法務省として,外務省や内閣府を始め,関係省庁と連絡会議のようなものを立ち上げるような,そして民間団体にも協力を求めるような行動を計画しているということはありますでしょうか。大臣の考えも含めてお聞かせください。

【大臣】
 アフガニスタンから日本への退避を希望される方々については,当初から受入れを予定していた日本大使館の現地職員等約600名の方々を着実に受け入れていくことが,まず必要だと考えています。
 この方々の中には,日本大使館の現地職員,JICA(国際協力機構)の現地職員,留学生など様々な立場の方々がおり,その適切な受入れのために,外務省を始め,関係省庁が連携し,政府全体として対応しているところですが,まだ,全ての方々の退避ができていません。
 法務省としては,引き続き,関係省庁と連携し,まず,これらの方々を受け入れるべく,全力で取り組んでいきたいと考えています。
 更に今後,アフガニスタンからの出国を希望される方については,政府全体として,その受入れについて前向きに検討していく必要があると考えています。

【記者】
 今後も,日本に来ることを希望する人がいる場合には,アフガニスタンからの人を受け入れる,政府全体で対応するというお答えでしたが,既に日本にいらっしゃる方も百数十人はいると思うのですけれども,その方の対応がまちまちだと思います。短期滞在しか出ないとか,3か月か6か月しかビザが出ないとかですと就労もなかなかできないということで,日本語の教育であるとか生活支援,子どもの教育の問題など,いろいろと民間団体にも協力を要請した上で取り組むべきことがあると思うのですが,その辺の政府としての体制作りというか,受入れのためにどうするかといった議論がまだまだ足りないと思います。それはビザの付与の問題も含めてです。
 ミャンマーの緊急避難措置の問題もそうですが,短期滞在をつないでいくようなやり方では,やはり生活が安定しないと思うのですが,そういったことについて,法務省としては,今日本にいる方についてはどのように取り組んでいくお考えなのかお聞かせください。

【大臣】
 我が国において,日本人と外国人が,お互いを尊重し合って,安全・安心に暮らせる共生社会を実現していくことは大事なことであり,大きな目標です。
 そのためには,外国人の人権に配慮しながら,ルールにのっとって外国人を受け入れ,適切な支援等を行っていくこと,そして,ルールに違反する者に対しては厳正に対応していくことなどが基本原則だと思っています。これが前提です。
 他方で,出入国在留管理行政について,様々な御意見・御指摘があり,当然,検討・改善すべき課題があることはよく承知しています。
 出入国在留管理行政は,我が国の在り方に関わる重要な任務を担っているわけですから,様々な関係者の御意見に耳を傾け,実情をしっかりと踏まえた政策の立案,施策の実施に努めていかなければならないのは当然のことです。
 いつも申し上げていますが,やはり時代のすう勢というものがあり,人類社会は,人権の尊重,人の尊厳というものを,一歩ずつではあるけれども着実に前進させてきた,進歩させてきたという歴史,時代の流れがあると私は思っています。
 日本に限りませんが,世界が今そういう時代の中にいるということ,そして,この時代の流れ,人類社会の進歩の歩みといった大局観というものは常に持っていなければならず,その大局観の下に,様々な課題に真正面から向き合いながら検討し,やるべきことをやるということが必要だと考えています。
(以上)