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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年12月7日(火)

 今朝の閣議において,法務省案件はありませんでした。
 続いて,私から2件報告があります。
 1件目は,成年年齢引下げに係る動画の公開についてです。
 成年年齢の引下げの施行まで,約4か月となりました。より多くの若者に,成年年齢の引下げに関する情報に接してもらうため,今般,「1分で分かる成年年齢引下げ」という動画を制作し,公開いたしました。
 この動画では,成年年齢引下げの意義,「契約を結ぶ」ということの意味や責任,成年年齢の引下げによって変わること,変わらないこと等を,文字どおり1分で学ぶことができるものになっています。
 法務省では,文部科学省と連携して,全国の学生や生徒にこの動画を周知しているところです。
 成年年齢引下げについて知るとともに,大人としての自覚を持つきっかけとなることを期待しています。
 本年4月からホームページで公開している「大人への道しるべ」と合わせて,実効的な周知活動を更に加速化させてまいります。
 2件目は,12月2日(木曜日),外国人在留支援センター(フレスク)等の視察を行いましたので,その概要について御報告します。
 フレスクでは,4省庁の8機関が,互いに顔の見える環境をフルに活用して,外国人や企業からの相談への対応や支援,全国の地方公共団体職員への研修や情報提供等を行っており,関係機関が連携した支援の大切さを改めて実感しました。
 フレスクの取組をモデルとして,全国各地域においても関係機関がしっかりと連携し,充実した支援が行われるよう,取組を進めてまいりたいと考えています。
 また,フレスクに続き,日本国際紛争解決センター(JIDRC)東京を訪問しました。
 当日は,仲裁の審問や同時通訳のためのスペースなどを見学し,充実した機能を体感してまいりました。また,JIDRCなど関係機関の幹部の皆様から,国際仲裁の活性化に向けた取組状況をお伺いし,改めてインフラ整備と法制度の整備を車の両輪として進めていく必要性を感じました。
 日本経済の活性化のためにも,引き続き官民が連携し,また,法務省がこれまで構築してきた様々なネットワークも駆使して,国際仲裁の活性化に取り組んでまいります。

民事裁判手続のIT化に関する質疑について

【記者】
 民事裁判手続のIT化についてお尋ねします。法制審の部会が今年の2月に中間試案を取りまとめました。並行してIT化自体を段階的に進めながら,改正法案の来年度中の国会提出を目指すこととされています。IT化の意義と進捗の現状に対する受け止め,今後の見通しについてお聞かせください。

【大臣】
 民事裁判手続のIT化を進めることは,国民の司法アクセスを向上させ,ひいては国民に身近で頼りがいのある司法を実現することにつながるものであり,大変重要な課題であると認識しています。
 法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会では,現在,最終的な取りまとめに向けて,精力的に調査審議が進められているものと承知しています。
 なお,最高裁判所においては,現在の法律を前提に,一部の裁判所において準備書面等をオンラインで提出するシステムを開発し,その実施に向けた準備を進めているものと承知しています。今の法制度でもできることはやっているということです。
 いずれにしても,法務省としては,法制審議会において最終的な答申が取りまとめられた場合には,その答申を踏まえ,速やかに国会に法律案を提出することができるよう,所要の作業を進めてまいりたいと考えています。

成年年齢の引下げに関する質疑について

【記者】
 冒頭の成年年齢の引下げに合わせて制作した動画に関連してですけれども,全国の自治体で周知広報を徹底していくとともに,成年年齢の引下げに合わせて生じると予見されるトラブルなどについて,学校の授業の一部としても取り入れることを推奨していくということを伺っています。
 ただ,自治体などに通達する内容としては,お願いベースで努力目標としての位置付けが強く,今後の教育の浸透にはまだ課題があると思います。どのように文科省と連携して通常の授業としても取り入れていくのかなど,その取組を一層強化していくお考えがあるかどうか,お願いいたします。

【大臣】
 成年年齢の引下げについて,その意義や注意点をできるだけ多くの学生や生徒に浸透させることが重要であることから,制作した動画の活用をお願いし,推奨しており,全国の教育現場でこの動画が広く活用されることを期待しています。
 さらに,法教育の重要性ということを考えたときに,例えば,来年,令和4年4月から,順次,高等学校において「公共」の授業が始まると承知しており,法務省としては,18歳から社会に参画することの意義,成年年齢引下げの趣旨などを含む法教育全般について,今後も力を入れて推進していきたいと考えています。

出入国在留管理行政に関する質疑について

【記者】
 政府が検討している特定技能2号の対象業種拡大について伺います。これについては,期間の更新が何回でも可能ということで,事実上の移民政策だとして自民党内から慎重な意見も出ています。こうした党内の動きについての受け止めをお願いします。また,こうした動きが特定技能2号の業種拡大の検討に与える影響について,大臣の考えをお聞かせください。

【大臣】
 特定技能については,自民党内を含め,様々な御意見があることは承知しています。幅広い様々な御意見に対して耳を傾けながら,関係省庁とも連携し,より良い制度を求めていくこと,あるべき姿,より良い姿を求めて,不断の努力をしていくことが基本姿勢です。そのために,様々な意見に耳を傾けていきたいと考えています。

【記者】
 昨日から臨時国会が始まり,岸田首相の所信表明演説もありました。その中で,多様性のある,多様性を認める社会という簡単な言及があったのですけれども,喫緊の重要課題ではあると思うのですが,今日本に住んでいらっしゃる290万人近くの外国籍住民の方のことですとか,外国人労働者,それから入管難民行政に対しては日本政府に対しても,国連から多くの国際人権に関する是正勧告が出ていますが,そういったものに関する言及は全くありませんでした。
 大臣もお分かりのように,これから年末年始にかけて,難民申請者や,それから日本に生活基盤があるのですが在留資格が認められないといった非正規滞在者,そういった仮放免の人たちの生活困窮問題も,より一層,年末年始,深刻化すると思います。
 しかも入国制限で,外国人労働者の受入れの制限も今かかっているということで,日本にいる技能実習生も多くの課題を抱えて,生活困窮している方もいらっしゃいます。
 どうもこの間見ていますと,もちろん大臣がすごく熱心に取り組んでいらっしゃるということは分かるのですけれども,ただ政権全体として,入管行政の在り方を正面から議論するという姿勢があまり強く見えないような気がします。
 今国会も法務委員会は開催されない予定だというふうに聞いておりますし,そういった中で,岸田首相の昨日の所信表明演説を受けて,古川大臣は,喫緊の課題として,入管難民行政,どのような課題に取り組むべきだというふうにお考えでしょうか。国会で法務委員会が開かれないということで,そういった説明をどういった形で,広く国民に,そしてそういった当事者に対して説明をしようと考えていらっしゃるのか,その辺りの今臨時国会での大臣の姿勢についてお伺いします。よろしくお願いいたします。

【大臣】
 共生社会を実現するためには,外国人の人権に配慮することは,基本的なこと,大変重要なことだと考えています。
 入管行政の在り方については,様々な御意見があるわけですけれども,まず私の念頭にあるのは名古屋事案です。あってはならない大変悲しい出来事であり,二度とあのような事件を起こしてはならないと,固く決意しています。名古屋案件に関して作成された調査報告書を受け止めた上で,示された改善策を着実に実行するということに,今,力を注いでいます。
 目の前にある名古屋事案で示された改善点を,まず着実に実行することが,何よりも最優先の課題だという思いで取り組んでいます。
 共生社会を実現するためには,外国人の人権に配慮するのは当然ですけれども,他方で,ルールに違反する者に対して厳正に対応するということ,これもまた当然の原則です。
 繰り返しいつも申し上げていることですが,そのような前提,原則にのっとった上で,様々な御意見があることはよく承知していますから,実情や実態をしっかり見ながら,また,様々な御意見も聞きながら,そして,特に送還忌避,長期収容の問題は,入管行政が抱える解決すべき喫緊の課題であり,これを何としても解決するために,必要な法整備はしっかり進めていかなければならないという決意に変わりはありません。そうしたことを通じて,広く国民の皆様にも,御理解をいただきたいと考えているところです。

【記者】
 名古屋入管の件について重要視するというお答えでしたけれども,その件とも関連するんですけれども,入管の長期収容問題や入管法の改正問題をめぐり,今年は国会議員による地方入管の収容施設への現場視察が何回も行われてきましたが,特に東京入管で国会議員の視察が非常に制限されている状況が続いているようです。
 先日も,2週間の仮放免しかされず,東京入管に再収容されてしまったスリランカ人男性の処遇問題とか,入管職員の過剰制圧行為があったのではないかということで,野党の国会議員数名が東京入管の視察を事前に申し入れたんですが,その視察の当日になって,収容施設内の視察はできないということで,東京入管局長や,法務省本庁の指示で拒否されたということです。会議室での面談はあったそうですが,施設内には入れなかったと。もちろんコロナ感染症対策は必要ですけれども,入管職員や警備会社,関連業者も,対策の上,毎日出入りしているわけなので,そういった対応をとれば内部を視察できる入管もあります。例えば東日本入国管理センターでは,そういった国会議員の収容施設内の視察も可能だったそうです。今月中にも再び国会議員が東京入管の視察の申入れをしているんですけれど,まだ返答がないということです。
 なぜ東京入管がそういった国会議員の視察に対して,非常に厳しいのかということについて伺いたいのと,それと日常的に全国各地の入管施設を視察するシステムとして,入国者収容施設等視察委員会などもありますけれども,独立した第三者機関としての機能はまだ果たしていません。
 名古屋入管のスリランカ人女性の死亡事件についても,本人からの申出があったにもかかわらず,対応したのは,結局スリランカ人女性の死後になってからということで,生前にきちんと対応することができませんでした。
 そういった入管収容施設で今も人権侵害があるわけですけれど,日常的な視察の在り方について,大臣はどういうふうにお考えなのか,この2点についてお願いいたします。

【大臣】
 まず,出入国在留管理庁の収容施設においては,被収容者に対して,きちんと法令に従って対応しているということを申し上げたいと思います。被収容者から様々訴えがあった場合には,それぞれの状況に応じて事実関係の確認も含め,適切な対応をしています。
 国会議員の視察について,個別の具体的なやりとりについての回答は差し控えさせていただきたいと思いますが,収容施設でひとたび感染が発生した場合,被収容者の健康や入管行政の遂行に重大な影響を及ぼしますから,新型コロナウイルス感染症対策として,現在もウイルスの脅威が続いている状況を踏まえ,収容施設への外部者の視察については,当面の間,一律にお断りをしているものと承知しています。
 視察の受入れが可能となるまでは,十分な説明をすることによって対応していきたいと報告を受けています。

【記者】
 日々毎日のように,入管の業者や入管職員も外から入っているわけですし,コロナ対策をして入っているわけですから,十分なコロナ対策をした上で,今まで現に視察を認めている入管施設もあるわけですから,そういった条件をつければ中に入ること,視察することは可能なんじゃないかなと思うんです。それについてどう考えていらっしゃるかということと,入国者収容施設等視察委員会について,これをもっと強化するとか,独立性を高めるとか,もっと定期的に視察できるようにするとか,そういった入管の施設内の視察体制をきちんと準備するというようなことは考えていらっしゃるのかどうか。
 入国者収容施設等視察委員会という委員会が,入管庁の中に有識者を入れてあるんですけれども,それがきちんとした機能を果たしていないのではないかというところで,これまで問題になってきているんですが,それについて再検討するとか,視察の在り方についてどのような検討がされているかということを伺いたいです。よろしくお願いいたします。

【大臣】
 視察の例もあるということですけれども,これは確認いただければ分かると思いますが,以前は視察を受け入れていたわけですけれども,現在は,新型コロナウイルス感染症の発生状況を踏まえ,一律に,一時的に受入れを中断させていただいているということであり,例外的に誰を入れて誰は入れないというような運用をしているわけではありません。
 視察の在り方については,飽くまで新型コロナウイルス感染症の影響を考慮し,一時的に中断をしているところです。
(以上)