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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和3年12月24日(金)

 今朝の閣議において,法務省案件として,いわゆる「令和3年版再犯防止推進白書」及び「マンションの建替え等の円滑化に関する法律による不動産登記に関する政令の一部を改正する政令」が閣議決定されるとともに,「令和3年版犯罪白書」が配布されました。
 続いて,私から4件報告があります。
 1件目は,本日の閣議で決定された令和4年度予算の政府案についてです。
 政府案の一般会計のうち,法務省関係の経費は,法務省所管分7,438億円,デジタル庁所管分のシステム経費601億円,国土交通省所管分29億円であり,総額8,068億円です。
 厳しい財政事情の下ですが,法務省の任務を十分に果たせる予算額となったと考えています。
 また,定員の査定では,264人の純増が認められ,法務省全体の定員が初めて5万5千人の大台に達する見込みとなりました。
 これは,当省の業務の重要性や緊急性について理解を得られた結果であると受け止めています。
 法務大臣として,次期通常国会における速やかな予算案の成立とともに,認められた予算を最大限効果的に活用した施策の推進に,全力を尽くしてまいる所存です。
 2件目は,所有者不明土地問題に関してです。
 本日,「令和4年度税制改正の大綱」が閣議決定され,一定の相続登記の登録免許税を免除する措置を拡充することなどが盛り込まれました。
 これは,所有者不明土地の発生を予防するため,国民の皆様の相続登記を税制面から後押しするものであり,今回の措置が十分に活用されるよう,周知・広報に努めてまいります。
 また,全国の法務局では,公共事業を支えるため,平成30年から,長期間登記がされていない土地の相続人を探索する事業を行っていますが,来年4月から,その対象を拡大することとしました。
 具体的には,民間が行う公共性の高い事業を対象に追加するなどの見直しを予定しています。
 所有者不明土地の解消に向けた取組を更に加速してまいります。
 3件目は,令和3年版再犯防止推進白書及び令和3年版犯罪白書についてです。
 本日,いわゆる「令和3年版再犯防止推進白書」を閣議決定するとともに,「令和3年版犯罪白書」を閣議で配布いたしました。
 今年で4回目の報告となる再犯防止推進白書は,再犯防止推進計画に掲げられた115の施策に関する取組状況や,それに関係する指標の最新データを掲載しています。
 政府では,いわゆる「2年以内再入率」を,令和3年までに16%以下にすることを目標としてきましたが,直近の令和元年出所者では15.7%となり,目標達成に至りました。
 また,今回は特集を2本立てとし,「満期釈放者対策」と「京都コングレス」を取り上げました。特に「満期釈放者対策」では,現状や課題の分析結果とともに,自治体や民間協力者と連携した「息の長い支援」の充実に向けた取組を紹介しています。
 次に,犯罪白書ですが,最近の犯罪情勢では,刑法犯の認知件数が引き続き減少し,令和2年も戦後最少を更新しました。他方で,犯罪類型別では,児童虐待や大麻取締法違反の検挙件数が増加しており,DV事案の検挙件数も高止まりとなっています。
 今回の特集テーマでは,「詐欺事犯者の実態と処遇」を取り上げ,詐欺事犯の動向や再犯の状況等の概観・分析とともに,調査を通じた特殊詐欺の撲滅・再犯防止方策の検討結果を掲載しています。
 今月,再犯防止推進法の施行から5年を迎えました。法務省としては,取組の結果を振り返りつつ,一層効果的な施策を検討・実施してまいります。
 広く国民の皆様にも,近時の犯罪情勢や犯罪者処遇の実情等についての理解を深める資料として,これらの白書を御利用いただければ幸いです。
 4件目は,本日(12月24日)午後,「社会を明るくする運動」作文コンテスト法務大臣表彰式を行います。
 この作文コンテストは,社会を明るくする運動に対する理解を深めていただくため,次代を担う小・中学生から,犯罪や非行のない明るい社会作りをテーマとした作文を募集するものです。
 29回目を迎える本年は約29万点の応募があり,数多くの素晴らしい作文の中から,最優秀賞である法務大臣賞の受賞者は,小学生の部,福井県・川本一翠さん,中学生の部,宮城県・鈴木心晴さんに決定しました。
 いずれも身近な出来事や社会問題を純粋な感覚でとらえ,瑞々しい感性に富んだ素晴らしい作文であり,非常に感銘を受けました。
 法務省としては,お二人の受賞作を始め,作文に込められた思いを多くの方々と共有し,犯罪や非行のない,安心して暮らすことのできる社会作りに一層尽力してまいりたいと思います。

令和3年版再犯防止推進白書に関する質疑について

【記者】
 冒頭御発言がございました再犯防止推進白書で,2019年の刑務所出所者らの2年以内再入率が16%を切り,政府目標を1年前倒しで達成したことが明らかになりました。受け止めをお願いします。
 また一方で,新型コロナウイルスの感染が拡大した昨年は,職に就けない出所者らが多かったことを示すデータもありますが,来年度予算の重点措置事項でもある再犯防止対策をどのように進めていくのかお考えをお聞かせください。

【大臣】
 平成24年に御指摘の政府目標を掲げて以降,法務省では,関係省庁と連携して,就労や住居の確保のための支援など,再犯防止推進計画等に基づく取組を進めており,これらの取組が一定の成果を上げたものと受け止めています。
 もっとも,様々な社会的・経済的要因の影響による刑法犯認知件数の減少などの事情もあることから,引き続き,2年以内再入率の動向を注視する必要があると思っています。
 再犯防止対策を今後どう進めるかについては,御指摘のとおり,昨年は,コロナ禍の中で,就労に関する指標に悪化が見られるなど,対応すべき課題もあると思います。
 また,再犯防止推進法の施行後5年が経過し,来年度は,再犯防止推進計画の計画期間の最終年度となるなど,再犯防止対策の節目の時期に当たります。
 そこで,これまでの取組や成果,今後の課題を整理した上で,再犯者を更に減少させるため,刑務所出所者等の就労支援を始めとする各種取組をしっかりと推進していきたいと思っています。

【記者】
 今の質問と若干重複するのですが,2年以内再入率について,全体では15.7%ということですけれども,満期釈放者と仮釈放者の数値を比べるとかなり大きな差があるということも明らかになっています。
 この現状についての大臣の受け止めと,様々な満期釈放者対策を行っていると思うのですが,その中で,今後,特に力を入れていく点があれば教えてください。

【大臣】
 御指摘のとおり,満期釈放者の2年以内再入率は,減少傾向にありますが,仮釈放者より2倍以上高い状況にあります。
 このようなことからも,満期釈放者対策は,令和元年の「再犯防止推進計画加速化プラン」においても,より重点的に取り組むべき三つの課題のうちの一つとして位置付けられており,重要な課題だと認識しています。
 今回の再犯防止推進白書の特集でも取り上げていますが,満期釈放者対策として,仮釈放の適正かつ積極的な運用に向けた生活環境の調整の充実強化等に取り組んでいます。
 今後,満期釈放者対策を一層充実するためには,更生緊急保護制度の拡充等も必要であり,こうした対策等を含む法律案について,国会への提出に向けて準備を進めているところです。繰り返しになりますが,この満期釈放者対策は大変重要です。取組の更なる強化,そして法制度を充実させることを通じて,再犯防止に向けた取組を一層進めていきたいと考えています。

令和4年度予算案に関する質疑について

【記者】
 予算案の話ですけれども,今回の当初予算の中に司法外交の展開というところも盛り込まれていると思います。
 具体的にどういったことに取り組んでいきたいかというイメージなどありましたら教えてください。

【大臣】
 司法外交については,京都コングレスという大きな会議を成功させ,国際社会に向けて宣言を発することができましたので,その成果を具体的に展開していきたいと思います。

名古屋出入国在留管理局被収容者死亡事案に関する質疑について

【記者】
 本日,法務委員会所属の与野党の国会議員が,名古屋入管で死亡したスリランカ人女性の監視カメラ映像約6時間30分を視聴してから,入管庁幹部とのヒアリングがあるのではないかと思います。
 これは12月15日に,衆議院法務委員会の筆頭理事懇談会で,ビデオ映像開示が与野党で合意され,本日の閲覧が決まったというふうに聞いております。
 上川大臣のときは,こういった開示請求もあったのですけれども,保安上の理由,プライバシー保護を理由にして,国会議員への開示というのが拒否されてきました。
 今回,おそらく古川大臣が,与党の国会議員から要請を受けて,ビデオ開示の指示を入管庁に対して出したと思われるのですが,その経緯と指示を出した理由,なぜ6時間30分なのかということについてお願いします。
 特に臨時国会閉会直前のタイミングだったということもありますので,時期の理由についてもお願いいたします。

【大臣】
 御指摘のビデオ映像については,これまでも申し上げてきたように,保安上の理由,あるいは,亡くなられた方の名誉や尊厳の観点からの問題もあり,情報公開法に基づいて不開示情報という扱いをしてきました。
 その一方で,国会の御判断を真摯に受け止めて適切に対応すると,これまでも申し上げてきたわけです。
 今回,衆議院・参議院の法務委員会理事会の御判断として,ビデオ映像の一部について,保安上の問題等にも配慮を加えた上での閲覧のお求めがあったことを踏まえ,検討した結果,お求めがあった範囲と方法で,ビデオ映像を閲覧していただくこととしました。
 ですから,これまでの方針と何ら変わっていません。

【記者】
 ビデオ映像の開示の関連で伺います。今日衆議院法務委員会の委員の方々に,スリランカ人女性の収容中の映像が開示されていると思います。前回の通常国会では,野党側が映像開示を求めて,与野党で折り合えずに,最終的に入管法の改正を断念した経緯があると思うのですが,この映像開示というのは野党側が求めてきたことで,今回の映像開示が入管法改正法案の提出に与える影響について,大臣はどのように考えるか教えてください。

【大臣】
 これは,衆議院・参議院それぞれの法務委員会理事会の御判断を受け止め,適切に対応したということです。

【記者】
 関連ですが,裁判の証拠保全の手続で,本日名古屋地裁でもこのビデオ映像が開示されています。1回目の証拠保全の手続で既に開示されている部分もあるのですけれども,今日国会議員が見ているビデオ映像は,証拠保全の手続のビデオ映像と同じものなのでしょうか。
 あるいは,独自の別個のものなのでしょうか。お願いします。

【大臣】
 従来申し上げているとおり,本件ビデオ映像は,情報公開法に基づいて不開示情報として扱っています。しかし,証拠保全の手続に関しては,裁判手続,つまり司法からの要請に対して,行政府として適切な対応をさせていただいているところです。
 また,国会への対応は,立法府たる国会からの御判断を尊重しながら,行政府の対応として,その御指示に基づいた内容でのビデオ映像の一部を提示させていただいています。
 飽くまでも,三権分立の中で,司法,立法それぞれに対して,行政府として適切に対応しているものと御理解いただきたいと思います。

「現行入管法上の問題点」に関する質疑について

【記者】
 12月21日に入管庁は,名古屋入管のスリランカ人女性の死亡事件に関する「改善策の取組状況」というものと,「現行入管法上の問題点」という二つの報告書を公表されました。
 「現行入管法上の問題点」の方についての質問ですが,これも難民認定が非常に厳しい状況にあるにもかかわらず,一部の難民参与員の難民性を否定する意見を強調して,複数回難民申請者を送還忌避者と位置付けたり,一部の凶悪犯罪の前科をかなり強調して,日本でしか社会復帰できない定住外国人への差別とか偏見を助長するような報告内容が含まれていたり,大変人権状況が厳しいイランへの強制送還の必要性を強調したりと,難民申請者や特定の外国人への偏見・差別をあおるような内容になっていると思います。
 現行の難民法自体が,国連人権機関からも再三にわたり改善を求められているわけですが,法務省自体は,国際的な人権のルールを守らなければいけない立場にあると思うのですけれども,現行の制度自体を変えなければ,ちゃんとしなければいけないという基本的認識はあるのでしょうか。
 先日も東京高裁で,難民申請者の不認定直後の強制送還について憲法違反であるという判決も出て,法務省も受け入れて確定したわけですけれども,そういった点から見ても,今回の「現行入管法上の問題点」という報告書は,非常に問題が多くて差別的だという批判の声が既に上がっていますが,大臣の御所見をお願いいたします。

【大臣】
 これまでも再三お答えしているように,外国人と日本人がお互いを認め,尊重し合って,安全・安心に暮らしていく共生社会を実現する上で,外国人の人権に配慮しつつ,ルールにのっとって外国人を受け入れ,適切な支援をしていくこと,ルールに違反する者に対しては厳正に対応していくことは,出入国在留管理行政の原則,大前提です。
 その観点から,入管行政に対する様々な御意見もあり,いわゆる送還忌避・長期収容の問題が,今,大変問題視されているわけですが,こうしたものを改めなければいけない,問題を解消しなければならないことについて,私は,大変強い意思を持って臨まなければならないと申し上げてまいりました。
 このことについて,様々な御意見や見方が世の中に存在していることは承知しています。
 それゆえに,このような現状についての客観的事実を国民の皆さんにお示しして,更に議論を深めていただきたい,御理解を深めていただきたいという目的で,この報告書を公表させていただいたわけです。
 内容について,偏っているという御意見がありましたが,これは飽くまでも,客観的な事実を記載したものです。
(以上)