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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和4年5月13日(金)

 今朝の閣議において、法務省案件はありませんでした。
 続いて、私から1件報告があります。
 昨日(5月12日)、一時滞在施設に滞在中のウクライナ避難民3世帯7人の方々について、東京都、京都府内の自治体及び愛知県内の団体での受入れが決定しました。
 入管庁では、ウクライナ避難民の方々の希望・ニーズを丁寧に聞き取り、数多くの自治体・企業等から寄せられている支援のうち、最適なものとのマッチングに至ることができました。
 各自治体等への受入れ後も、関係省庁等とも連携し、サポートをしっかりと行ってまいります。
 また、引き続き、一時滞在施設に滞在中の方々についても、きめ細かくその希望・ニーズを酌み取り、最適なマッチングをスピード感を持って進めてまいります。

侮辱罪の法定刑引上げに関する質疑について

【記者】
 政府が提出している侮辱罪の厳罰化に関する刑法改正案について、野党は政治家に対する発言など、言論の弾圧につながると批判しています。そういった懸念について、どうやって払拭していくかについてのお考えと、それから、立憲民主党が修正案として検討している罰金を30万円に引き上げて懲役・禁錮刑を盛り込まない改正案についての受け止めを教えてください。

【大臣】
 表現の自由は、憲法で保障された極めて重要な権利であり、これを不当に制限することがあってはならないのは当然のことです。
 今般の改正は、もとより、正当な言論活動を処罰対象とするものではありません。
 侮辱罪の構成要件を変更するものではなく、処罰の対象となる行為の範囲は変わらない上、当罰性の低い行為を含めて侮辱行為を一律に重く処罰することを趣旨とするものではありません。
 御懸念の点については、法制審議会の議論でも、侮辱罪の法定刑を引き上げても、正当な表現行為が処罰されないことに変わりがないこと、捜査当局においてもその趣旨を踏まえて表現の自由に配慮していくことが確認されています。
 今般の法整備が表現の自由を不当に制限するものでないことは確信していますが、表現の自由に対する影響を懸念する御指摘があることは真摯に受け止め、これを払拭するため、引き続き、法整備の趣旨等について、国会において丁寧な御説明を心掛けるとともに、その周知にしっかりと努めてまいりたいと考えています。
 お尋ねの修正案については、その詳細を把握していませんが、議員の提案に関わる事項であるため、法務大臣として所見を述べることは差し控えます。
 いずれにしても、政府案は、公然と人を侮辱する侮辱罪について、これを抑止するとともに、当罰性の高い悪質な侮辱行為にこれまでよりも厳正に対処することを可能とするものであって、重要な意義を有すると考えています。

ウクライナ避難民への支援に関する質疑について

【記者】
 冒頭の発言にあった避難民のマッチングのことについて、自治体への引渡しの時期がもし決まっていたら教えていただきたいのと、3世帯7人の方については、いずれも親族や知人、引き受け手のいない方かどうか教えていただけますでしょうか。

【大臣】
 お尋ねの件は、プライバシーに関することですので御紹介は控えたいと思います。

【記者】
 3世帯7人の方は、どういった家族構成で、子どもの方がいらっしゃるのかどうか、男女比など伺えますでしょうか。

【大臣】
 ただ今申し上げたように、それぞれのプライバシーに関わることですので、詳細な回答は差し控えたいと思います。ただ、先ほど御紹介したマッチングが成立した件数のうち、東京都は1世帯5人、愛知県内の団体は1世帯1人、京都府内の自治体は1世帯1人ということまでは申し上げます。

【記者】
 避難民の方と自治体のマッチングが実現するのは、今回の方々が初めてのケースということでよろしいでしょうか。

【大臣】
 はい。

入管法改正案に関する質疑について

【記者】
 政府が次の国会で提出を考えているとされている入管法改正法案に関してお聞きします。クルド避難民を救うためにも補完的保護制度を導入するということを繰り返し国会でおっしゃっています。併せて、前回廃案になった、3回目以降の難民申請については原則認めない、相当な理由のある限り認めないという、3回目以降の難民申請者に対しては、忌避した場合、送還忌避罪が適用されるという法案も同時に一体として出すというお話をされていると思います。
 3回目以降の難民申請者は、2020年末の時点で504人いると発表されています。この中には、幼くして両親と一緒に、例えばクルド人の子どもは連れて来られて、そこでもう向こうの言葉よりも日本語しか話せないような子どもたち、こういう子どもたちが3回目の難民申請をしているという状況もあります。20代の時、議員会館で開かれた会議では、クルド人の当時高校3年生の男の子が「入管の規定ではクルドは他県に移動したり働くこともできない。人権も保障されていない。日本の大学で学んで働きたい。日本社会と世界のために貢献したい。」という高校生がいました。こういう高校生さえも、今度の法案で通そうとする3回目以降の難民申請を認めないとすると、こういう彼らも強制送還の対象となってくるのです。こういう子どもたちも含めて、大臣としては様々なやり方で人権保護をしていきたいというお話がありますが、3回目以降の難民申請は支援団体や弁護団からも強い改正法案の反発がありました。なぜこれをまた再び提出しようということなのか、これによって傷つく子どもたちがたくさんいますが、その点に関してどうお考えかお聞かせいただけますか。

【大臣】
 補完的保護対象者の認定制度の創設の必要性について、これまでも何度か言及しておりますが、クルド人避難民対策ということで申し上げてはいません。それから、今後、一体的な法整備が必要だということを申し上げてきていますが、今この時点で具体的な内容をお答えすることはできません。今検討中です。

【記者】
 先ほどは質問を間違えました。
 ウクライナ避難民の保護として補完的保護も通したいんだと。これと別に、3回目以降の難民申請を認めないという、前回廃案になったものを含めて一体として通すのか、別々にやったらどうかという指摘があるということについて、大臣は、一体として法案を通したいとおっしゃっています。このことについて、弁護団、そして支援者からは再三にわたって非人道的だという声があります。先ほど言ったのは、例えば「東京クルド」という、クルド人の少年2人を描いたドキュメンタリー映画があります。多くの入管の幹部も見てくれているのでぜひ大臣にも見ていただきたいものですが、そこに出てくる男性が6歳のときに、父親が日本に逃れて、村にいたんだけれどこのままだと迫害を受けると、村に戦車が来て村民の長老の方がひき殺されたりした場面を見て、このままだと殺されるという恐怖を持っていたと。そういう中で、彼はお父さんの後を追って、今日本に来て暮らしています。ただし、彼には在留資格も一切出ておりません。彼は今3回目の難民申請です。在留資格を与えられないだけでなく、もし今大臣が通そうとしている法案を次の国会で通すのであれば、彼らにとっても、強制送還の対象となります。こういう非人道的なことを、大臣としては、一体となって通すんだということで認めていくのか、それともこういった個々の子どもたちの事情をどう考えていくのか、その点お伺いしたいです。

【大臣】
 法案の具体的な内容については、今検討中であると先ほど申しました。
 入管法改正案の中に、いわゆる送還忌避・長期収容問題を解決する送還停止効の例外の話がありましたが、真に庇護を必要とする者を適切に保護するという入管行政上の責任と、いわゆる送還忌避・長期収容問題を解決しなければならないということは、相互に連関していることですから、これを一体的に解決する必要があるということを申し上げております。そして、その具体的な内容について、前回廃案になった法案では送還停止効の例外を盛り込んでいましたが、その具体的な内容については、様々な検討が必要であり、検討中というのは、必ずしも今の時点で前回同様一言一句そのままのものを考えているということではないという意味です。
 また、今るる一つの事例を引かれて御説明がありましたが、飽くまでもそれは質問者の御見解ということでまずは受け止めさせていただきます。
 その上で、真に庇護を必要とする者に対して適切に保護するということが最も大事なことですから、そのためには、例えば現在の難民認定制度は、結果的に、条件があるため難民認定の幅が狭くなるきらいがあります。これまでは、難民以外の方々に対しては、運用において手を差し伸べていました。しかし、今回、全てを運用でということではなく、やはり制度的な裏付けが必要であろうということから、補完的保護対象者の認定制度というものを構想しています。
 このように、真に庇護を必要とする者に対して適切に保護ができる制度の在り方について、私どもは、不断に見直し、改めるべきところがあれば改め、必要な制度があればその創設を目指していくと、基本的にそういう姿勢で取り組んでいるところです。

難民認定制度の在り方に関する質疑について

【記者】
 次期国会で、補完的保護の制度や準難民に認定するということで、難民条約上の五つの認定の理由について、それを補完するような形で法律を提出するということを大臣は常々おっしゃっていますが、実際、難民条約上の難民の中で、戦争と避難民については、この間、特に冷戦構造が崩壊してからUNHCRもガイドラインや指針の見直しをしていますし、各国の難民認定の受入れでも、国際人権上のそういった変化に応じて難民認定制度の拡充をずっとやってきたと思います。しかし、日本はいまだに難民認定率が1パーセント未満という状態がずっと続いています。確かに、補完的保護や準難民という考え方も必要だと思いますが、そのためにもやはり難民認定制度本体をきちんと機能させるといった根本的な見直しが必要だと思いますし、専門的な独立性のある難民認定制度をということで、国連からも日本政府に対して再三にわたり勧告が出ています。この点について、なぜ大臣は難民認定制度そのものを見直さないで補完的保護制度や準難民ということを持ち出すのか、その基本的な考えについてお聞かせください。

【大臣】
 御質問の中でるるお話のありました我が国の難民認定制度に対する御見解は、飽くまでも御質問をされた記者の見解として伺いました。
 難民認定をめぐっては各国、前提となる事情が異なっており、難民認定率だけで単純に我が国と他国とを比較することは、相当ではないと考えています。
 難民認定手続とその他の出入国在留管理行政上の様々な手続とは密接に関連しており、難民の認定に関する業務を入管庁において行うことには合理性があると考えています。
 法務省では、出入国在留管理制度全体を適正に機能させ、真に庇護を必要とする方々を適切に保護するとともに、送還忌避・長期収容問題という喫緊の課題を一体的に解決するため、これらの課題の解決に必要な法整備に向けて、着実に検討を進めてまいります。
(以上)