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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和4年6月21日(火)

 今朝の閣議において、法務省案件として、「裁判官の育児休業に関する法律の一部を改正する法律の施行期日を定める政令」が閣議決定されました。
 続いて私から、刑事法に関する法制審議会への諮問について報告があります。
 今月27日(月)の法制審議会に、刑事法に関して2件の諮問をすることとしました。
 まず、1件目は、情報通信技術の進展等に対応するための刑事法の整備についてです。
 近年、情報通信技術が進展するとともに、社会に広く浸透し、様々な場面で利用されるに至っています。
 刑事手続においても、こうした情報通信技術を活用することにより、手続に関与する国民の負担軽減や円滑・迅速な手続の実現に資するものとすることが必要です。
 また、情報通信技術の進展等に伴って生じる事象に刑事法として対処することができるようにする必要があります。
 そこで、このような状況を踏まえ、情報通信技術の進展等に対応するために必要となる刑事法の整備の在り方について、諮問することとしたものです。
 次に、2件目は、犯罪収益の没収についてです。
 近年の情報通信技術の進展等に伴い、犯罪による利益が、暗号資産を始めとする新たな形態の財産として保有・移転される事例が生じていますが、そうした財産が、現行法上、没収の対象となるか否かが明確ではありません。
 そこで、犯罪収益等を確実に剝奪できるようにするため、没収可能な財産の範囲を早急に改める必要があると思われることから、諮問することとしたものです。
 いずれにつきましても、法制審議会において、充実した御議論が行われることを期待しています。

刑事施設内の医療に関する質疑について

【記者】
 刑事施設内の医療についてお尋ねします。
 刑事被収容者処遇法第56条では、「社会一般の保健衛生及び医療の水準に照らし適切な保健衛生上及び医療上の措置を講ずるものとする。」と規定されていますが、一部の被収容者や支援団体などからは、様々な面で適切な措置が講じられていないとの指摘もあります。
 質問の1点目は、矯正施設内の医師、矯正医官の不足についてです。
 328人の定員に対し、現員は何名で充足率は何パーセントなのか、最新の数字をお示しいただき、課題と今後の対応について大臣の所見をお願いします。
 2点目は、被収容者のカルテ開示についてです。
 カルテは、被収容者や代理人らが刑事施設内の医療が適切に行われているかを検証、解明するためにも必要な情報です。
 カルテの開示は個人情報保護法にも定められ、被収容者についても、最高裁で「開示の対象外とする『刑事裁判に係る個人情報』には当たらない」との判決が出ています。この判決を受けて、法務省は被収容者のカルテ開示の在り方についてどう考え直し、現場にどのように対応するよう指示しているのか、教えてください。

【大臣】
 まず、矯正医官の充足状況については、本月1日現在の速報値で、定員328人のところ、現員295人であり、充足率は約90パーセントです。
 平成26年4月には、現員252人、充足率が約77パーセントと8割を下回るなど、矯正医官の欠員が深刻な状況にありましたが、当時に比べ現在では、充足率で約13ポイント、現員数で43人の増と、改善している状況です。
 これは、平成27年12月の矯正医官特例法の施行により、兼業や他の医療機関・大学等における調査研究等の施設外勤務が柔軟に行えるようになったことに加えて、広報・啓発活動を通じて社会における矯正医療の重要性に対する関心と理解を深めるために取り組んできたことなどに一定の効果があったためと考えています。
 矯正医療の充実のためには、医師の継続的・安定的な確保が不可欠であることから、矯正医官を更に確保するための取組を引き続き進めていきたいと考えています。
 それから、刑事施設の被収容者の診療録については、従来、「個人情報の保護に関する法律」による開示請求の対象にはならないと解されていましたが、令和3年6月15日の最高裁判決において、開示請求の対象になるとの解釈が示されたところです。
 そのため、矯正局においては、この判決の趣旨に沿って開示請求の対象とする運用を行うこととし、令和3年7月に各矯正管区に対し、その旨を周知しています。
 今後とも、刑事施設の被収容者の診療録の開示請求があった場合には、適切に対応するよう指導してまいります。

外国会社の登記義務に関する質疑について

【記者】
 日本で事業を展開する海外IT大手に対して、日本で法人登記をしていない場合に、政府が罰則手続を取る方針を固めたとの報道がありますが、法務省としての対応状況を教えてください。

【大臣】
 6月3日に、総務省と連名で、総務省に届出がされている電気通信事業者である外国会社のうち42社に対し、6月13日までに登記申請を行うよう求める文書を発出しました。
 この通知を受け、新たに1社が登記を済ませ、複数社が登記の申請に向けて準備中であると承知しています。
 外国会社に対する発信者情報開示請求などの民事裁判手続が円滑に行われるためにも、外国会社が早期に外国会社の登記をすることは重要であると考えています。
 対象となる未登記の外国会社に対して、現在個別に登記を促しているところですが、早期に登記がなされない場合には、過料の裁判を行う裁判所に対する義務違反の事実の通知も含め、関係省庁と連携し、外国会社の登記義務の履行に向けてスピード感を持って取り組んでまいります。

刑事手続のIT化に関する質疑について

【記者】
 冒頭、御説明のありました刑事手続のIT化の件ですが、大臣が期待されることと導入の時期、目標時期などありましたら教えてください。

【大臣】
 諮問の内容については、冒頭で申し上げたとおりであり、更に私の感想なりを付け加えることは遠慮したいと思います。
 時期についてですが、法制審議会に調査審議をお願いするものですので、スケジュール的な見通しについて、今この時点で私から申し上げることはできません。ただ、大事な課題ですから、スピード感を持って充実した調査審議が進められることを期待しています。
(以上)