法務大臣閣議後記者会見の概要
平成24年11月9日(金)
人権委員会設置法案を国会提出することに関する質疑について
人権委員会設置法案の提出が閣議決定されたということですが,法務省としてこの法案の成立に向けた見通しや審議入りの促進に向けた取組というのはどのようなものをお考えですか。
【大臣】
人権委員会設置法案の提出には長い歴史があることは,御承知のとおりです。まず平成14年に当時の政府が国会に提出しましたけれども,平成15年の衆議院解散選挙で廃案になりました。それを受けて,直ちに国会に提出すべく,法案の取りまとめをしましたが,そこまでに至らずに終わってしまいました。これが自民党政権時代の経緯です。また,それを受けた格好で,平成17年の小泉元総理大臣の解散総選挙の前に,民主党がこの法案を取りまとめて国会に提出しましたけれども,小泉内閣の衆議院解散に伴って,これも廃案になったということでして,そういう意味では,自民党時代から続いてきたこの法案の必要性を継承して,ようやく閣議決定をし,取りまとめに至ったということです。10年振りに政府として国会に提出する運びになったということの重みというものを感じながら,国会の審議入りを期待していきたいと思っています。
【記者】
人権委員会設置法案について,大臣は先ほど審議入りを促進していきたいとお話されていますが,法案の成立というのは,やはり相当難しいという認識に立っての御発言ということでよろしいのでしょうか。
【大臣】
国会が始まった段階では,まずは審議入りの指し手争いに少し時間が取られますので,なるべくこれを法案審議の中で取り上げてもらうということがまずは第一歩という意味で申し上げました。
【記者】
法案の内容と国会提出を二度に分けて閣議決定するということは,非常に珍しいケースであると思うのですが,なぜ二度にわたって決定する必要があったのかを改めて説明していただけますか。
【大臣】
法案の内容を決める閣議決定が通常国会閉会後であり,次の臨時国会がどういうような時期に開かれるかということは,まだペンディングの状態でした。ルールがあるわけではありませんが,従来の慣行に倣って,改めて国会提出のための閣議決定が必要ということで二度に分けられたということです。
【記者】
臨時国会では,特例公債法案がやっと審議入りしたような状況ですけれども,今後の成立の見通しというのはいかがでしょうか。
【大臣】
今後,国会がどういう展開をするかということは,今の段階で何とも言えませんが,ともかく審議入りを目指して努力をしたいと思っております。
東京電力女性社員殺害事件再審判決に関する質疑について
東京電力女性社員殺害事件についてですが,ゴビンダ・プラサド・マイナリさんの無罪が確定しました。判決に対しての率直な感想と,また,逮捕から15年も身柄拘束されたことについて,どのように考えられるか。また,ゴビンダさんは,警察や検察に対して謝罪を求めていらっしゃいますが,それを果たすべきと考えるかどうかお伺いします。
【大臣】
私も報道で確認をしている程度ですけれども,警察庁長官が大変申し訳ないということを今回改めて発言をしていますし,検察庁でも,今回のこの問題については,お詫びを申し上げたと,こういう趣旨の発言をされているように,私も確認をいたしています。そういう流れの中で見れば,今回のこの事件の一つの大きな教訓として,ゴビンダさんについては,十分な解明がなされないままに有罪判決があり,その結果15年という長い拘束期間が経ってしまったということは,これはもう大変申し訳ないということを私の方からも申し上げておきたいと思います。その上で,警察当局も検察当局もこの種の問題について改めて大きな教訓として,捜査あるいは起訴に当たっての戒めとしなければいけない,そういうふうに思っております。
【記者】
東京電力女性社員殺害事件の関連で,今日の質問主意書の中で,マイナリさんの件がえん罪に該当するかどうかという質問が出ておりまして,政府としては特定の見解を有していないという回答になっています。政府としてえん罪の定義がないということだからと思うのですが,15年間拘束されていた方が,えん罪に当たるかどうかという点については,大臣はどのようにお考えでしょうか。
【大臣】
刑事局の立場からするとえん罪というのは,厳密な定義の上でなければえん罪かどうかの判断というのを軽々に言葉で表すことができない,そういう伝統的なものの考え方に従っておりますので,そういう表現になっていると思います。ただ,常識的に世間一般の感覚から言えばえん罪というのを広くとって言えば,本来罪になる必要がないものが罪になったという意味ではえん罪と言えないこともないと思います。ただ,今回の場合には,定義上どういうものをえん罪というかという前提条件をきちんと文言として表現した上で言っているわけではありませんので,そういう意味ではえん罪ということは使いにくいということだったのです。
【記者】
再審無罪の判決が確定したことを受けてなのですが,改めて当時の捜査に不十分なところがあったのかどうかという点と,証拠開示については適切であったかという点について御見解をお願います。
【大臣】
今,2点御質問がありましたけど,当時の捜査の中身については,私の方から申し上げられませんが,少なくとも今回,決め手となったことは,被害者の爪を検査してDNA鑑定を新しい技術でやったということです。当時も捜査過程では,爪については,顕微鏡で検査をしていますが,何も付着物のようなものは見当たらなかった。当時の技術としては,微細なDNA鑑定はできるような状況では恐らくなかったのかなと思いますけど,少なくとも顕微鏡で検査した結果,微細なものを発見することができなかった,そういう意味では,当時,捜査当局はかなり爪に絞って注意を集中して捜査に当たったということは窺えますが,爪に何も証拠となるものが認められなかった。それが再審の段階になって,当時の技術では,目に見えて分からなかったものでも,現在は新しいDNA鑑定の技法が取り入れられて,分かるようになってきた。そういう意味で,もっぱら技術的なサポートによってこの事件が有罪とするには疑わしいという結論を導き出すことができたと言えるわけですけれども,そのような事情で,有罪とするには疑いがあると分かったということです。,捜査当局もそういう意識を持ったわけですから,当然,弁護人の方も爪に着目されたと思いますけれども,当時の技術では,捜査当局も弁護人の方もそういうところまで解明するに至らなかったということなんだろうと思います。だから,証拠開示といっても,この事件の場合は,基本的には単なる証拠開示だけで済む話ではなかったと思います。捜査当局としては,被害者は被告人に対して抵抗するであろうから,そうすれば被害者の爪に,あるいは指に何らかの証拠が残っているはずだということは,これは常識的に考えつく話ですが,結局そこまでは解明できなかったと,技術がまだそこまでの段階に至っていなかったということに尽きるんだと思います。これはあくまでも私の感想です。専門家ではありませんし,刑事当局から資料をもらって言っているわけでもありません。
司法試験予備試験の結果に関する質疑について
【記者】
昨日,司法試験の予備試験の結果の発表がありまして,現役の大学生と法科大学院生が合格者のかなり多くを占めていました。更には,例外ルールというか,法科大学院修了でない抜け道として受験されたという懸念が強まっています。法曹養成検討会議でもこれは議題に挙がると思うのですが,大臣はこの現状をどう御覧になりますか。
【大臣】
それが良いとか悪いとかという判断は保留して申し上げるならば,法科大学院の現役の学生が,この予備試験に挑戦したということは理解できることだと思います。法科大学院というのは,司法試験の受験のための予備校ではないということを一つの旗印にして出発したわけですので,法科大学院の授業の中では,司法試験というものがどんなものかということばかりに真正面から取り組むのではなく,法律の専門性を高めていくということを一つの使命として持っているわけです。現役の法科大学院の学生が予備試験に挑戦して,まあ腕試しでやってみようかということは,それは理解できることだと思います。ただ,法科大学院の修了者も予備試験を受けていますけれど,残念ながらそれほどはかばかしい成績にはなっていないように数字の上では見られるものですから,そういうことを考えると,この予備試験というものの存在というのは,微妙なところにあるのかなという感想を持たせていただいております。民主党の中での議論としては,予備試験のレベルが高いのではないかと,少なくとも法科大学院の修了者がスムーズに通るような程度の難易度でいいのではないかという意見もあったわけです。その辺の判断は,試験委員が十分にそういう意見も踏まえた上で,出題もし,採点もしているはずですし,そういう意見があるというのは承知をいたしております。予備試験が予備試験としての使命を果たすという観点から,現状をどのように評価をしていくかについては,これから政府の検討会議である法曹養成検討会議でも取り上げていくことにはなるのではないかと思います。
資産公開に関する質疑について
【記者】
今年7月に土地を購入されていると思いますが,その理由と,その目的によっては大臣規範に抵触するのではないかという指摘があるのですけれども,そのことについてお願いします。
【大臣】
まず,御指摘のように,大臣,副大臣,政務官は,在任中は不動産取引については自粛しましょうということです。その趣旨は,不明瞭な取引というものが行われてはいけない,清廉な身の処し方をしなければいけないと,こういう趣旨だろうと思います。したがって,私はそのことは十分承知をしているわけですけれども,一般に,チラシで売りに出されているものであれば,それは不明瞭な取引でもなんでもないから,それは許されるケースではないだろうかなという判断をいたしました。今回,土地だけが出ていますけれども,土地に意味があるのではなくて,マンションの一部屋を買ったのです。そうすると当然マンションの敷地の共有持分が出てまいります。比較的たくさん入居しているマンションですから,土地の区分所有もですね,共有部分も,かなり細かい話になるものですので,いかにも大きな土地を買って,何筆も買ったようですけども,結局筆数が分かれているものですから,小さな部屋であってもですね,土地の表示が三筆に分かれていると,こういうことです。私はもともと昔から,23区外のところに家を持っていましたが,それが老朽化して危ないものですから,3年前か,2年前になるか,危ないから建物を壊したんです。撤去して,そこに新たに建てようと思ったんですけれども,なかなか建てるとなると手間なものですから,しばらく放置をしていたわけです。そして建物に入っていた荷物を,将来建てるつもりで,工務店の倉庫に預けていたのですけれども,いつまでも建てられないということでは先方にも悪いものですから,マンションをそれに代わって買って,そこにいろいろな物を移す必要がありました。マンションはいわばチラシで出ている物件でしたから,そういう意味では,相対で裏で取引をしたわけでも何でもありませんので,不明瞭性はないと判断をしております。
【記者】
もう一点,全体的な話ですが,このようなかたちで資産を公開されることについてどのように感じていらっしゃいますか。
【大臣】
これはやはり公開することは必要だと思います。さっきの不動産はこういう格好で表示されますから,おかしなことがあればすぐ分かるわけですし,大臣を辞めたときも改めて公表しますので,増減は明らかになると。ただ問題なのは,預金というか,そういうものについてはなかなか把握し難いところがあるんですね。預金なんかでも,貯蓄性の預金は公開するんですけれども,出たり入ったりの頻繁な普通預金というのは公開しなくていいものですから。私は,定期預金というか,貯蓄性の預金というのは極めて少ないのですが,資産の中身によって個人差があると思いますけれども,それでも全く公開しないよりは,皆が同じ基準で公開した方が判断の材料にはなるという意味で必要なものだと思っています。