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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和5年3月24日(金)

 今朝の閣議におきまして、法務省案件はありませんでした。
 続いて、私から4件報告をさせていただきます。
 1件目は、「難民該当性判断の手引」の策定についてです。
 今般、出入国在留管理庁におきまして、難民認定制度の運用の一層の適正化に向けた取組の一環としまして「難民該当性判断の手引」を策定し、公表することとしました。
 この手引は、難民該当性を判断する際に考慮すべきポイントを整理するなどしたものであり、これまでの我が国の実務等を踏まえ、また、UNHCR(国連難民高等弁務官事務所)が発行する諸文書等も参考にした上で、UNHCRとの意見交換もさせていただきながら策定したものです。
 記載内容の一部を御紹介しますと、難民の要件の一つであります「迫害」の具体的に意味するところについてはこれまで必ずしも明確ではなかったところ、手引におきましては「生命、身体又は自由の侵害又は抑圧及びその他の人権の重大な侵害」を意味する、と具体化したほか、いわゆるLGBTなど性的マイノリティに関する事情についても迫害の理由となり得る旨を明記しております。
 また、「迫害を受けるおそれがあるという十分に理由のある恐怖」という要件につきましては、申請者が迫害主体から個別に存在を把握され、狙われていなければ難民として認定されないんだと、そういった誤解が見受けられますけれども、今回策定した手引では、そのような判断はしない旨を記載しております。
 このように、難民該当性を判断する際に考慮すべきポイントを明らかにすることで、難民認定制度の透明性が高まり、その信頼性の向上にもつながるものと考えております。
 加えて、出入国在留管理庁における、より適切で効率的な審査の実現にもつながっていくことや、申請者の方々が申立て内容を整理しやすくなることも期待しているところです。
 法務省としては、引き続き、真に庇護を必要とする外国人の方々の迅速かつ確実な保護に取り組んでまいります。
 2件目は、「再犯防止シンポジウム」の開催についてです。
 明日、3月25日(土)、「再犯防止シンポジウム」を開催し、「YouTube法務省チャンネル」で生配信いたします。
 本シンポジウムのタイトルは、「陣内智則と考える「サイハンボウシ?」」です。タレントの陣内智則さんが司会進行を務め、非行から立ち直った「当事者」やその立ち直りに関わった支援者の方々と率直な意見を交わし、視聴者の皆様とともに、犯罪や非行から立ち直る過程について考える内容となっております。
 法務省では、再犯防止について、国民の皆様の理解と協力が得られるよう、引き続き、再犯防止の取組を積極的に発信してまいりますので、報道機関の皆様におかれましても、周知・広報への御協力を是非お願いしたいと思います。
 3件目は、民事基本法制の見直しをテーマとしたマンガの作成についてです。
 令和3年に法改正を行いました、所有者不明土地を解消するための民事基本法制の見直しが、来月1日の改正民法の施行を皮切りに、順次スタートしていきます。そこで、国民の皆様に新しい制度を知っていただくため、今般、2冊のマンガを作成しました。
 これらのマンガは、不動産登記推進キャラクターであるトウキツネが、浦島太郎や金太郎と共に、具体的なケースを題材に新しい制度について分かりやすく解説していく内容となっています。
 デジタル版は、本日から法務省のホームページに掲載されます。また、冊子版を全国の法務局などで配布する予定になっております。
 浦島太郎のマンガは、今般の民事基本法制の見直しの全体像を見渡す内容であり、金太郎のマンガは、相続登記等の申請義務化と相続土地国庫帰属制度に特化した内容となっています。
 これまでも、新制度の施行に向けて、パンフレットやポスター等を作成・配布し、法務省のホームページに特設サイトを開設して動画を掲載するなど、分かりやすい周知・広報に努めてまいりました。
 私も読ませていただきましたが、今般作成したマンガは、更に親しみやすく、分かりやすい内容となっていると思います。これまでの取組と併せて、実効的な周知活動を更に加速化させていきたいと思っています。
 4件目は、令和4年の人権侵犯事件の状況の公表についてです。
 令和4年におきましては、人権侵犯事件が7,859件ありまして、そのうち13.3パーセントが「学校におけるいじめ」に関するものであり、その件数は1,047件でした。インターネット上の人権侵害情報に関する人権侵犯事件が引き続き高水準で推移しておりました。
 法務省の人権擁護機関としては、同様の被害を受けている方々の「声なき声」をすくい上げるべく、若年層をターゲットとしたSNS人権相談の拡大といった相談ツールの多様化、日本語を自由に話すことが困難な外国人等に向けて相談対応の多言語化に取り組むなどして、相談体制の充実を図るとともに、引き続き、調査救済手続を通じて、被害の救済を行い、お互いを尊重し合える社会を目指してまいります。
 報道関係者の皆様も、この人権相談や調査救済手続の周知・広報に御協力をお願いしたいと思います。

「難民該当性判断の手引」に関する質疑について

【記者】
 「難民該当性判断の手引」についてお尋ねします。これまで、難民支援団体などからは、日本では他国に比べて審査が厳格だと指摘されてきています。今回の手引は、基本的に従来の運用を踏まえたものかと思いますが、今後、判断ポイント自体を情勢などに合わせて見直していく可能性はあるのでしょうか。

【大臣】
 難民条約に規定された難民の定義には、迫害を受けるおそれ、十分に理由のある恐怖といった文言など、そのままでは具体的意義が明らかではないものも含まれているので、こうした点を可能な限り明確化することが制度の透明性向上の観点から望ましいという指摘もありました。
 こうした御指摘も踏まえて、難民認定制度の透明性を高め、制度への信頼性を向上させるために、実務上の先例や裁判例等を踏まえて、難民該当性の判断に当たって考慮すべきポイントについて整理したものが、今回の手引です。
 この手引は、判断の基準そのものではありませんが、難民該当性を判断する際に考慮すべきポイントを明らかにすることで、透明性が高まって信頼性も向上していくということでありますので、先ほど申し上げたような効果があるわけです。
 今後どうなのかということですが、難民の定義に含まれる文言の具体例や、判断の際に考慮すべきポイントといったものは、我が国や諸外国における難民認定実務上の個別事案における行政の判断や、難民関係訴訟において示された司法判断等を踏まえて、新たに整理していくことも出てくる可能性はあると思っています。その明確化についても不断に追求されていくべきものであるというふうに考えていますので、「難民該当性判断の手引」の内容につきましても、必要に応じて将来的に改訂を行う可能性は考えられるというふうに思っています。

【記者】
 今の質問に関連してお尋ねいたします。手引では、明らかでない文言を解説したりですとか、それによって明確化するという効果があるとおっしゃいました。ただ、難民認定率がそもそも他国よりかなり低いという批判もあるかと思うのですが、今回の策定によって、認定率が上がったりとか、難民の認定の範囲が広がるということは考え得るのでしょうか。

【大臣】
 そもそも、条約難民の範囲というものは、難民条約上の難民の定義から導かれてくるというものですので、定義を離れて範囲を拡大していくということはできないわけです。
 そういう意味で、今回の手引は、我が国や諸外国における難民認定実務に関する先例等を踏まえて、難民該当性の判断において考慮すべきポイントを整理し、これをできる限り明確化したものです。
 したがって、「難民該当性判断の手引」の策定によって難民該当性の基礎となる条約難民の定義そのものが変更されるものではありませんし、条約難民の範囲が広がるものでもありません。また、難民認定数を増加させることを目的として行っているものでもありません。
 ただし、難民該当性を判断する際に考慮すべきポイントが整理されたことによりまして、こうしたポイントも踏まえつつ難民認定申請が行われてくることが今後予想されるわけですので、その結果として、迅速な難民認定につながるケースが増加していく可能性はあるものと考えています。

【記者】
 関連ですけれども、そういうことであれば、昨年も含めて、これまでやってきた難民該当性の判断を含めたものをより明確化したということで、これで劇的に何かが変わるというわけではないというのはよく分かったのですが、一方、性的マイノリテイ・ジェンダーに関する迫害の記載を入れるなど、つい最近も確かジェンダーに関する差別で難民認定されたというお話が出ましたけれど、こういったもので、新たに例えば認定する側、職員の方とか、それから大臣が国会でも参考人の答弁で引用されていた難民認定参与員の方の中にも、ジェンダーに関する意識、「あなたがそういう恥ずかしい格好をしているから、政府側の男に襲われたんじゃないか。」とか、かつてそういう暴言を、参与員の方が吐いていたというお話も、弁護団から異議申立てで出ておりました。そういった入管側の意識、参与員の意識を、やはりより変えていくためにも明確化したという意図があるのかという点をお願いします。

【大臣】
 意識を変えることを意図して作ったわけではありませんが、この手引をしっかりと職員の皆さん、あるいは参与員の皆さんに周知し理解をしていただいた上で、認定手続をやっていただくということに、当然なっていくんだろうというふうに思っています。

親権に関する質疑について

【記者】
 離婚後の親権の話題についてお伺いします。オーストラリア政府が日本政府に対して、共同親権の導入を検討するよう求める意見書を提出したと承知していますが、これに対する受け止めと、海外からの日本の親権制度に対する関心が高まっている現状について受け止めをお願いします。

【大臣】
 パブリックコメントで、オーストラリア政府を含めて様々な御意見を頂いているということです。これにつきましては、法制審議会において、今こういった御意見を参考にしながら、子の最善の利益を確保するという観点から調査審議が行われるということですので、今、私がここで一つ一つの意見についてコメントを申し述べるのは、あまり良いことではないなというふうに思っているので、差し控えたいと思いますが、我々としては、法制審議会で充実した調査審議がスピーディーに行われるように、事務的に協力していきたいということです。

宗教団体に関する質疑について

【記者】
 「エホバの証人」についてお伺いしたいです。先週の法務委員会で、三世の現役の高校生から、法務大臣に宛てたメッセージというものが読み上げられましたが、これに対する受け止めと、どう応えていくかについてお聞きしたいです。
 併せて、「エホバの証人」を始めとする人権侵害が指摘される団体へのヒアリングなどを行っていく考えがあるかについてもお聞かせください。

【大臣】
 まず、先般、御指摘のメッセージを伺いまして、いわゆる宗教三世の方々の生の声として、本当に深刻な困難を抱える状況にある方がいらっしゃるということを改めて実感しました。
 法務省としましては、「旧統一教会」問題やこれと同種の問題を抱えていてお困りの方々について、被害実態を把握し、その救済を図っていくということは重要な仕事であると認識しています。
 御案内のように、法テラスでは、「霊感商法等対応ダイヤル」におきまして、「旧統一教会」問題に限ることなく、これと同種の問題でお困りの方からも幅広く相談を受け付け、その相談内容等に応じて、弁護士・心理専門職等の知見を活用して、問題の総合的解決を図るために必要な対応を行っているところです。
 「エホバの証人」に関しては、法務省としては、まずは関係機関・団体等との緊密な連携のもとに、こうした相談対応等を通じて被害実態を把握・分析してまいりたいというふうに考えています。
(以上)