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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和5年6月16日(金)

 今朝の閣議において、法務省案件として、主意書に対する答弁書が1件ありました。
 続いて、私から、「全国中学生人権作文コンテスト」についてお知らせいたします。
 法務省ホームページでもお知らせしているとおり、本年度、「第42回全国中学生人権作文コンテスト」を実施します。
 全国各地における地方大会の実施については、既に各法務局のホームページ等でお知らせしているところ、現在、人権擁護委員の皆さんが学校に赴くなどして、応募のお願いをしているところです。
 本コンテストは、次世代を担う中学生を対象に、人権問題についての作文を書くことを通じて、人権尊重の重要性及び必要性についての理解を深めるとともに豊かな人権感覚を身に付けることを目的として、昭和56年度から実施しているものです。
 昨年度の大会では、全国の6,500校を超える中学校から、約77万通もの作品が寄せられました。
 地方大会における優秀作品は、中央大会に推薦され、さらにそれらの作品の中から、来年2月には内閣総理大臣賞や法務大臣賞などが選出されます。
 寄せられた作品は、中学生の皆さんが身近な体験を通して、様々な人権課題について、「誰かのこと」ではなく、自分のこととして真摯に向き合ったことが素直に表現されており、私自身も昨年度寄せられたいくつかの作品を読みましたが、読む人の心を打つものでした。
 法務省では、これらの素晴らしい作品を一人でも多くの方々にお読みいただきたいと考え、毎年、入賞作文集を刊行し、法務省ホームページにも掲載しております。
 また、こうした取組を世界にも発信するため、中央大会入賞作品の一部を英訳の上、法務省の英語版ホームページに掲載しています。
 地方大会により応募期限は異なりますが、おおむね9月頃を期限としているところ、今回も、多くの中学生の皆さんに、夏休みの機会を利用するなどして、本コンテストに応募していただくことを期待しています。
 そして、多くの方々に作品をお読みいただき、お互いの人権や尊厳を尊重し合うことの大切さについて、改めて考えるきっかけにしていただければと思います。
 報道機関の皆様におかれましては、積極的な周知・広報への御協力をお願いできればと思っています。

刑法及び刑事訴訟法の一部を改正する法律案に関する質疑について

【記者】
 性犯罪の規定を見直す刑法の改正案などが、昨日の参議院法務委員会で可決されました。この中では、現行の強制性交罪の成立要件見直しが盛り込まれています。この見直しの意義について、改めて大臣からお伺いします。

【大臣】
 性犯罪に関する二つの法案は、いずれも、性犯罪の被害の実情を踏まえ、事案の実態に即した対処ができるようにするための法整備を行うものです。
 御指摘のとおり、この改正では、現行刑法の強制性交等罪などの成立要件を改めまして、より明確で、判断のばらつきが生じない規定とするために、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」であることを中核的な要件として定めまして、その原因となり得る行為や事由を具体的に列挙することとしています。これにより、現行法の下でも本来なら処罰されるべき、同意していない性的行為が、より的確に処罰されるようになると考えています。
 性犯罪への適切な対処は喫緊の課題であり、そのための法整備を行うこれらの法案は、大変重要な意義を有するものと考えています。多くの方が待ち望んでいるという実感もあります。今日、参議院本会議もありますので、是非成立させていただきたいというふうに考えています。
 法案が成立した場合には、改正の趣旨や内容を、国民の皆様に適切に周知していくことも大事だというふうに思っています。

【記者】
 今の質問の関連ですが、改正刑法で罪名が不同意性交罪に名称変更されます。「不同意」という言葉が入ったことの意義についてお考えをお聞かせください。

【大臣】
 今回の法改正の内容につき、性犯罪の本質的な要素が自由な意思決定が困難な状態でなされる性的行為、これが性犯罪の本質の要素であろうというふうに考えており、したがって、「同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態」という文言を用いて、それを中核的な要件として規定しているということと、これに伴って、強制性交等罪と準強制性交等罪とを一つの罪に統合するということにしていますので、このような文言を用いて要件とすることに鑑みまして、いわゆる罪名については、不同意性交等とすることとしたわけです。

入管法等に関する質疑について

【記者】
 成立した入管法に関しての質問です。審議の中で、(難民審査参与員の)柳瀬氏をめぐって様々な問題が出てきました。それについて、今、いちいち全部は言いませんが、端的に言って、参与員制度そのものを揺るがす疑惑がいくつも出てきまして、大臣は先日、「常に自分の判断に間違いがないかどうか、胸に手を当ててしっかりやっていきたい。」とおっしゃっていましたけれど、そう考えていらっしゃるのであれば、やはり柳瀬問題、このままにしておくのは非常によろしくないと思われますね。真相究明が行われるまで柳瀬氏を参与員から外すだとか、何らかの対応をとらないと、法務省や入管庁の信頼、また、ひいては大臣の信頼にもつながることになるかと思いますが、いかがでしょうか。
 もう1点、緊急の案件がありまして、東京入管で難民認定申請に必要な書類を渡さないという問題が頻発していると。だから審査すら受けさせないというのは、非常に大きな問題だと思います。具体的には、B1604という番号を付けた女性職員が取り分け悪質だという報告も受けております。こういった問題について、速やかな調査や是正が必要かと思いますが、いかがでしょうか。

【大臣】
 まず、柳瀬さんの件から申し上げますと、これは繰り返し申し上げていますが、柳瀬さんが、令和3年4月の衆議院法務委員会の参考人質疑において、参与員として相当多数の審査請求に関わってきた御経験に照らして、申請者の中に難民はほとんどいないという旨を発言されていると。私は繰り返していますが、これは重く受け止めるべき発言だろうと思っています。
 柳瀬さんという方が、御案内のように難民認定に対する知識及び経験が豊富かつ長年にわたって難民の支援に真摯に取り組んでいる方であるということです。それから、柳瀬氏だけでなくて、本年の参議院法務委員会において、参考人となった3名の参与員及び元参与員の方も、ごく一部の事案でしか難民認定すべきとの意見を出さなかった旨を述べられていたと承知しています。
 更に加えまして、これも毎回申し上げていますが、難民不認定処分の適否が争われた訴訟、平成30年から令和4年の過去5年間で、109件中104件で国が勝訴しているということであります。これは、もし参与員の方による難民認定がおかしいということであれば、裁判所もこういう結果にはならないのではないかというふうにも思いますので、何度も申し上げていますが、柳瀬氏以外の方の御発言や訴訟の状況を踏まえましても、柳瀬氏の御発言を裏付けるものとなっていると思いますので、引き続き柳瀬さんには御協力いただきたいと思っています。
 さらに、あえて申し上げますが、数多くいる参与員の中でも柳瀬氏に関しては多くの質疑がなされ、また、数多くの報道がなされ、様々な指摘がなされていることに鑑みまして、柳瀬氏の名誉のために、今回に限り、彼女の了解を得て申し上げますが、先ほど申し上げた訴訟になった案件109件のうち5件は(国が)敗れているわけですが、その中に柳瀬さんが関与したものはありません。
 それから、難民(認定)申請書(の件)です。個別の事案における対応についてはお答えは差し控えますが、一般論として申し上げれば、入管収容施設においては、被収容者に難民認定申請書の交付の希望があれば、これを確実に交付するようにしていると承知しています。したがいまして、個別の案件は一つ一つ、我々も言われて、表では個別は言えませんが、中でもちろんチェックしたいと思っておりますけれども、そういうふうな対応をしているということです。

【記者】
 改正入管法について2点質問させていただきます。
 国会審議では、与野党の議員から多くの検討課題が指摘されて、今言ったような立法事実ですとか、情報公開の在り方も厳しく問われました。参議院では、15項目の広範な内容の附帯決議が採択されました。
 前回の記者会見でも出ていましたけれども、一年以内に全面施行されるということで、現行の入管法の実務上の運用の改善や、新法の施行に向けての検討課題が数多く、今あると思います。附帯決議では、難民調査官や難民審査参与員の包括的な実務研修の在り方や、UNHCRや有識者などの協力関係の必要なども書かれています。より外部に開かれた、透明性の高い難民認定制度の在り方も問われていると思います。
 今言った入管法の施行ですとか、現行制度の運用も改善しなくてはならないと思いますけれども、今言ったUNHCRや外部有識者、人権NGOなどに協力を要請して、第三者機関や有識者会議みたいなものを作って、具体的な制度の運用の在り方を意見交換したり、提言していただくことを考えていらっしゃるのかどうか。技能実習制度では、古川元法務大臣がそのような取組をしておられました。
 もう1点ですけれども、在留特別許可の運用ですとか、難民審査の在り方の見直しが具体的に求められていますけれども、難民申請の当事者や、日本での在留を希望する非正規滞在の御家族やお子さん、あるいはそういった既に在留特別許可をされた方や支援者などに、大臣が当事者に直接会ってお話を聞くようなことは考えていらっしゃるでしょうか。特に、3回目、4回目の難民申請中の方で、非常に、入管法が施行されると、大変な人生めちゃくちゃにされてしまうようなお子さん、御家族もいらっしゃると思いますが、このような当事者たちの声を聞くお考えがあるのかどうか、この2点についてお願いします。

【大臣】
 まず、最初の質問ですけれども、今回成立した入管法改正法は、難民認定制度に関する専門部会、収容・送還に関する専門部会などにおいて、外部有識者の方々に御議論いただいた上で、その提言などを踏まえて立案し、今国会に法案を提出するに当たっても、必要に応じて、外部有識者の方々の御意見を伺いながら検討を進めてきたものです。
 そのため、現時点で、改正法の施行等に当たって、改めて専門部会等を設けるなどして、また始めから議論いただくようなことは考えていません。
 もっとも、法案審議におきまして、難民調査官や難民審査参与員の審査や研修の在り方、未成年の送還忌避者などに対する在留特別許可の在り方、収容に代わる監理措置制度の運用の在り方など、様々な事項について御指摘いただき、衆議院においては、条文の修正が行われ、参議院においても、附帯決議を頂いております。
 法務省としては、法案審議における御指摘について、真摯に受け止めた上で、その趣旨を踏まえ、改正法の施行に向けて準備を進めるに当たり、必要に応じて、多様な関係者の御意見にももちろん耳を傾けながら、適切に対応してまいりたいというふうに考えています。
 その上で、当事者である外国人の方々やその支援者の方々に対して、私が直接対応するかどうかについては、公平性の観点なども考慮しなければならないということもありますので、慎重な検討が必要であろうと考えていますけれども、いずれにせよ、現場で対応を行う職員には、しっかりと当事者や支援者の方々に向き合って、執務に当たってほしいということは、繰り返し申し上げておきたいと思っております。

【記者】
 ずっと皆さんが聞いていることです。参与員制度について、先週、大臣は会見で見直さないと言いました。あえて柳瀬さんを個人攻撃する必要はないと思います。在日特権という本を2007年に出版された参与員の方、浅川さんも招いていたということがあって、彼は3,900件中1件しか難民認定していない。それから、柳瀬さんも4,000件見たうちの6人しかいなかったと。この、あまりにも低すぎる認定者数というのが、外部から見れば、本当に適切に真摯にチェックできているのか、浅川さんは50件まとめて不認定処理を、紙の書類上出したということを言っていました。例えば、出身国がカンボジアで技能実習生であれば、これは難民申請者ではないですよね、ということを、これは柳瀬さんが支援者との会話の中でおっしゃっていました。カンボジアは今、非常に政府の迫害というものが進んでいまして、技能実習生であっても難民になり得る方たちはいるんですね。そういう意味で、柳瀬さんや浅川さんだけを個人攻撃するということではなくて、やはりこの参与員になぜこれほど一部の人に偏った割り振りを入管庁が自らやっているのか。一次審査についても、何度も言っていますけれど、立会いも録音・録画も認めていないという、入管庁が全て仕切っているということに一次審査でも問題があるし、二次審査でもこの偏りに問題あるという指摘がたくさん出ました。参与員制度を見直さないと、なぜこう言い切るのか、その根拠を言っていただきたいのと、施行まで1年、施行までに色々な問題が噴出した場合、やはりこの施行は見送るべきじゃないかという声もまだ出ております。そういった声にどう答えていくのかというのを、お聞かせいただけますか。

【大臣】
 繰り返し何度も同じことを申し上げていますけれど、この参与員制度について、柳瀬さんの御発言は確かにありました。その柳瀬さんがお話しになっている傾向については、つい先ほども私、答弁申し上げましたが、他の参与員の方もそういう傾向であるというふうに申し上げております。そして、もし柳瀬さんや、あるいは参与員制度がおかしいのであれば、その裁判において、もっともっと指摘をされるはずであると私は思っております。ところが、その裁判においても、おおむね入管の判断を支持しているということでありますので、この制度そのものがおかしいとか、機能していないというふうには、私には思えないのです。ですから、運用についてはもちろん細心の注意をしていかなければならないし、こういう批判は真摯に受け止めながら、それを検証していくということが必要ですけれども、今申し上げたような様々な事実を総合的に判断すれば、私は、全国の裁判所があえて不認定にしているとは思いませんので、法に基づいて判断されているということでありますので、私は、そこはトータルで是非見ていただきたいなと。裁判所の判決がこうなっているということにつきましても、なかなか皆さんも御理解いただけないのが非常に残念であります。
(以上)