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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和5年8月29日(火)

 今朝の閣議において、法務省案件はありませんでした。

ウクライナからの避難民への支援策等に関する質疑について

【記者】
 8月でロシアのウクライナ侵攻から1年半が経ちました。日本でも多数のウクライナからの避難民を受け入れておりますけれども、支援の現状や今後の課題について教えてください。
 また、改正出入国管理及び難民認定法が先の通常国会で成立しました。ウクライナからの避難民は、新しく設けた補完的保護対象者に該当する可能性があると思いますけれども、今後の補完的保護対象者の認定の見込みについてもお願いします。

【大臣】
 まず、ロシアによるウクライナ侵攻から1年半が経過しましたが、8月23日時点におきまして、2,488名のウクライナから避難された方々を受け入れております。
 これまで入管庁におきましては、避難民の方々へ、「短期滞在(90日)」から就労可能な「特定活動(1年)」への在留資格変更を迅速に進める措置、身元引受先のない避難民の方々に対する一時滞在場所の提供、生活費や医療費の支給、住居に関する支援の申出のあった地方自治体や民間団体等とのマッチングなどの取組を行ってまいりました。
 日本での避難生活が長期化するウクライナ避難民の方々に対しては、日本での自立促進に向けた支援というものを充実していくことが課題なのだろうと思っています。
 その中でも、特に日本語教育や就労支援が重要だと考えていまして、入管庁や関係省庁におきまして、必要な支援を行っているところです。
 日本語教育に係る支援としては、文化庁補助事業の地方自治体における日本語教室のほか、一時滞在施設に滞在中の方々に対して日本語教室を行っております。また、受入れ先の自治体において日本語教育の機会を提供することが困難な場合には、入管庁が委託するアジア福祉教育財団難民事業本部(RHQ)がオンライン日本語教育を実施するということも今やっています。
 就労に係る支援としては、ハローワークが中心となって避難民に対して積極的な情報提供を行い、就労希望者の着実なマッチングも図っているところであります。
 入管庁においても、企業等からの就労機会の提供に係る申出の情報をハローワークに共有しまして、地域のハローワークにおいて、希望する避難民の方々に、そのニーズも踏まえて仕事を紹介するということもやっているところであります。
 引き続き、今後のウクライナ情勢の推移や避難民のニーズをきめ細かく把握した上で、関係省庁と連携し、政府全体で避難民の方々に寄り添った支援を行っていく所存です。
 また、御指摘の、今後の補完的保護対象者の認定の見込みにつきましては、補完的保護対象者に該当するか否かは、申請者ごとにその申請内容を審査することが必要でありますので、個別に判断していくということになりますので、一概にお答えすることは困難ですが、もっとも、一般論として、ウクライナ避難民のように、戦争等に巻き込まれて命を落とすおそれがあるなど、迫害のおそれがあるものの、その理由が難民条約上の五つの理由に必ずしも該当しないという方は、補完的保護対象者に当たると考えられるところでありますので、そのような方については、適切かつ可能な限り迅速に認定していくことになろうかと考えています。

ODRの実証事業に関する質疑について

【記者】
 今週末から、ODRの実証実験が始まりますが、改めて目的と期待、意義などをお答えいただけますでしょうか。

【大臣】
 ODRは、ADRにデジタル技術を活用することで、時間や場所の制約を受けずに、非対面で迅速に紛争を解決できる有用な手段であります。司法アクセスの向上に資する重要なインフラというふうに考えています。
 来月1日から開始するODRの実証事業は、一つのデジタルプラットフォームで法律相談とADRをワンストップで行うサービスを提供して、その効果、課題及び対応策の検証・分析を行うものであります。
 本実証事業は、事業における検証・分析の結果の公表を通じて、ODR導入を検討している民間ADR事業者等を支援することを目的としています。
 本実証事業において充実した分析・検証を行うことによりまして、民間ADR事業者等において、より利便性の高いODRの導入が進むことが期待されるわけであります。また、本実証事業を通じて、より多くの国民の皆様にODRを知っていただいて、その利便性を実感していただくということも期待しているところであります。
 法務省としては、ADRが国民にとって、より利用しやすい紛争解決手段となるように、引き続き、デジタル技術の進展や国民のニーズを注視しながら、ODRの拡充・活性化に向けた取組を積極的に進めていきたいと考えています。

都知事が追悼文を送らないことに関する質疑について

【記者】
 毎年9月1日に墨田区の横網町公園で行われる関東大震災で虐殺された朝鮮人犠牲者を追悼する式典には、歴代の東京都知事が追悼文を寄せていました。ところが、小池百合子都知事は、2017年からそれを取りやめています。小池氏は、大きな災害で犠牲になられた方、それに続いて様々な事情で犠牲になられた方、全ての方々に対しての慰霊という気持ちに変わりはないなどと述べていますが、こと差別、そしてそれに起因する虐殺という事実を考えたときに、公権力によるデマや構造的差別について触れることすらしないということは、むしろ差別を肯定・扇動するメッセージを社会へ発信してしまっています。
 こうした官製差別に対し、「ヘイトスピーチ、許さない。」を掲げる法務省、法務大臣として、東京都、そして小池都知事に対し、何かしらの指摘、勧告などを行う予定はありますでしょうか。

【大臣】
 せっかくの御質問ではありますけれども、個別の言動の一つ一つについて、それが差別といえるかどうかをこの場で法務大臣がコメントするということは差し控えたいというふうに思っています。

検察庁の報道の在り方に関する質疑について

【記者】
 検察庁を擁する法務省に、同庁の報道の在り方をお尋ねします。
 先日、奈良地検に刑事事件についての判断を伺いたいと思って質問しました。取材対応は全くなく、詳細は省きますが、報道対応を会見参加資格とすり替えて問合せすら受け付けませんでした。こうした報道対応は、どのような行政効果を狙ったものでしょうか。お考えをお願いします。
 それともう一つ、要望ですけれども、検察庁の会見に参加すれば良いじゃないかという話がありますが、資本関係も人事交流もない第三者の法人に書類の提出を迫っています。例えていえば、検察官が裁判所に出入りするから裁判所に人事評価を求めるような内容ですけれども、こうしたことについても、新しく参入するメディアや記者が参加しやすいものに変えていただけるようにお願いします。

【大臣】
 まず、最初の御質問ですけれども、個々の事案において、検察当局が報道対応したことの一つ一つについて、法務大臣が所見を述べるということはやはり差し控えるべきだろうと思っています。
 ただ、一般論として申し上げますと、検察当局におきましては、検察の活動を国民に正しく理解していただくために、個別の事案に応じて、事件広報の対応を行っているというふうに承知しています。
 そして、事件広報に当たりましては、刑事訴訟法第47条の趣旨を踏まえて、個別の事案ごとに、公益上の必要性とともに、関係者の名誉・プライバシーへの影響及び将来のものも含めた捜査・公判への影響の有無・程度等を考慮し、公表するか否かや、その程度及び方法を慎重に判断しているものというふうに承知しています。
 また、会見への参加のお話がありました。検察の活動を国民に正しく理解していただくことは、重要であるというふうに認識していますが、各検察庁における事件広報につきまして、これはまず各地検において、その実情に応じて対処すべき事柄であると考えていますので、私からコメントというものは、やはり差し控えざるを得ないかなというふうに考えているところであります。

【記者】
 検察が個別の判断で答えるか答えないかというのは理解ができるんです。そうではなくて、答えるか答えないかの以前に、質問を受け付けないことを、会見参加の要件としているのはなぜかという問題です。

【大臣】
 これも大変恐縮ですが、それぞれの検察庁の御判断ということになろうと思いますので、個別の事情に応じながら、検察において判断をされているということだろうと思いますので、やはり法務大臣として、こうすべきああすべきということを、個々の件について申し上げるのはやはり差し控えざるを得ないかなというふうに思っています。

【記者】
 判断は個別だと思います。ただ、報道対応については、受け付けたけれどもこれについては公表できないとか、あるいは公表すべきとか、そういう判断をしていただきたいということです。良いとも悪いとも何とも答えないというのは、仕事をしているのかしていないのか分からないので、そのへんを何とか御考慮いただきたいと思います。

【大臣】
 先ほども一般論としてお話を申し上げて、検察がこうあるべきだというお話は刑事訴訟法にも書いてある話でありますので、それに則って検察は判断をされていくべきだというふうには思いますけれども、法務省と検察庁は同じ組織ではないものですから、検察の判断というものについて私がコメントするのは、先ほどから申し上げているように差し控えたいと思いますが、一般論として先ほど申し上げたことは、それは十分踏まえていただかなくてはならないと思っています。

送還忌避者のうち本邦で出生したこどもの在留特別許可に係る対応方針に関する質疑について

【記者】
 大臣が(8月4日に)発表されましたこどもへの在特ですが、1か月になろうと思いますけれども、なかなかこれ、まだ実例がないということで、期待と不安があって、当事者には。非常に落ち着かないという状況かと思うんですけれども、特に段取りについて分からないところがあって。この特例措置自体は、18歳未満で日本で生まれて育った就学しているこどもたちと、その監護者である親たちということですけれども、一方で、在留特別許可のガイドライン全体も見直されるということになると、同じ家族でも特例措置の対象になる人と、同じ一緒に暮らしている家族でですよ。特例措置の対象で救済される人と、ガイドラインでもって許可の是非が検討される人が出てくると思います。例えば18歳を超えた兄弟とか、就学前のこどもとかですね。そうしますと、これ、その段取りが分からないところがあるんですね。一度に、在留許可ガイドラインのほうも一度近く発表されて、家族で同じところで暮らしている家族については、特例措置とガイドラインを合わせて、それで一体として許可されるのか。それとも、特例措置の部分は特例措置が適用されて、それでガイドラインを発表して、それに基づいて段階的に兄弟などにも適用されるか適用されないのか、そこが決められるのか。そこらへんの段取りが分からないところがありまして、そのへんのイメージをお教えいただきたい。

【大臣】
 昨年末において、送還が決まっていながら日本にいるこどもたちが201人いるということを公表させていただきました。そういうこどもたちについて、8月4日に方針を表明したわけであります。そのこどもたちも、例えばお姉さんがいるとか、小さい学校に行っていない妹がいる・弟がいるというケース。色々あると思います。これは、私が(8月)4日に公表した方針に基づいて、この201名の方々について、一つ一つ最後の精査をして御連絡をしていくということになります。その際、様々な事情がありますので、一刀両断に今回の(8月)4日の方針で、必ずしも引っかからないとか、疑問が生じたことにつきましては、それは個々に判断をしていくということになります。(新たな)ガイドラインはまだできていないわけでありますけれど、考え方はもうはっきりしているわけでありますから、個々に応じて判断をしていくということになりますので、(8月)4日の基準に該当しなかったからもうアウトとか、そういう運用はしないということになっていきます。

大阪入管の常勤医師に関する質疑について

【記者】
 この間この場でお伺いしました、大阪入管の話ですけれども、私のほうに回答いただきまして、いまだにその医師は雇用関係が継続していると。調査中であると。一方で、7か月になるんだけれども、医療体制のほうは、非常勤のところで対応しているということですけれど、7か月経つにもかかわらず、この状態が続いているということをどういうふうに考え、特に医療体制が不備な状態が続いているわけですよね。それから、二重に給料を払っているということにもなるし、これを7か月経った時点でやっていらっしゃるというのは、責任ある行政の態度とは思えないですけれども、このへんどういうふうに受け止めていらっしゃる。

【大臣】
 まず、私も経済産業省で人事をやっていましたので、この手のケースの処分というのは非常に難しいものがあります。本件は、当該医師との間で訴訟になる可能性というものが、前から申し上げているように、十分あり得るという前提で、慎重な上にも慎重に事実確認等を行う必要があるという、これは6月にも申し上げたところであって、事実確認の進捗状況につきまして、私自身が入管庁から適宜報告を受けています。本件は相手方もいる話でありますので、しっかりと手続を踏んだ上で対応を行う必要があると考えておりまして、いまだに具体的な対応等について公表できる状況には至っておりませんが、いずれ必要な対応をさせていただくというふうに申し上げておきたいと思います。なお、大阪(出入国在留管理)局におきましては、当該医師を引き続き診療には従事させていませんが、被収容者への医療体制の問題を生じさせないよう、非常勤医師による診察日の拡大や外部病院医師による診察によって対応をしているところであります。
(以上)