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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和5年10月3日(火)

 今朝の閣議において、法務省案件はありませんでした。
 私から2件、冒頭の御報告をさせていただきたいと思います。
 1件目は、駐日ウクライナ大使との面会の件です。昨日、在日ウクライナ大使館のコルスンスキー特命全権大使閣下にお越しいただきまして、様々な法務行政の課題等について会談を行いました。
 会談では、まず、私から、国家の主権と独立のために奮闘されているウクライナ国民に心からの敬意を表するとともに、ロシアの侵略による犠牲者に弔意をお伝えし、コルスンスキー大使からは、我が国の支援に対する謝意が表明されました。
 ロシアの侵略行為は、法の支配に基づく国際秩序に対する重大な挑戦であって到底容認できないものです。
 我が国は、これまで2,509人のウクライナからの避難民の方々を受け入れ、政府・地方自治体と一体となって支援を行っております。
 具体的には、法務省において、身元引受先のない避難民の方々に対する、一時滞在場所の提供、生活費や医療費の支給、受入先となる自治体・団体等とのマッチングなどの取組を行っております。また、本年7月に東京で開催されましたG7司法大臣会合において合意されました「ウクライナ汚職対策タスクフォース」も創設され、我が国がリーダーシップを取ってこれから具体的な専門家による取組がまさに始まっていこうとしているときです。
 それからもう1点、私から大使に御説明した施策があります。この間御説明したように、(本年)12月1日から補完的保護対象者の認定制度が開始されることになりましたので、その制度の内容や、制度が始まりますということについて、是非活用していただきたいという観点からコルスンスキー大使によく御説明しました。また、よく話を聞いてくださったというふうに思っております。これからもそういう形で、ウクライナから避難されてきた方々に本当に寄り添う、そういう努力をこれからも積み重ねていきたいというふうに思っています。
 2点目の御報告は、相続土地国庫帰属制度についてです。新しい制度であります相続土地国庫帰属制度の運用状況について、動きがありましたので御報告を申し上げます。
 所有者不明土地対策の一環として、相続した不要な土地を一定の要件の下で国に帰属させる「相続土地国庫帰属制度」の運用が、4月27日から開始されまして5か月が経過したところですけれども、各地の法務局において審査が進められております。
 その中で、昨日(10月2日)正午時点において、2件の申請に係る土地の帰属が確認されました。いずれも富山県内の土地でありまして、帰属したのはそれぞれ9月22日、25日です。
 これは、この制度によって所有権が国庫に帰属した最初の事案でありますので、皆様方に特に御報告させていただく次第です。
 全国における本制度の申請件数は、8月31日までの約4か月間で885件に上っています。登記の地目別にその割合を見てみますと、田・畑が約4割、宅地が約3割、山林が約2割、その他が約1割。まんべんなく様々な種類の土地について幅広く申請が寄せられているというのが現状です。
 申請の動機としては、三つぐらい主な動機が挙げられていますが、遠方に所在するため利用の見込みがない、処分したいが買い手が見つからない、子孫に相続問題を引き継がせたくないので権利関係を整理したい、といった理由を挙げる方が多いようです。
 法務省としては、相続土地国庫帰属制度を含め、所有者不明土地の解消に向けた諸施策、まさにこれから本番になっていくわけですけれども、引き続きしっかりと取り組んでまいりたいと考えております。

自筆証書遺言書保管制度に関する質疑について

【記者】
 昨日(10月2日)から、自筆証書遺言書保管制度で指定の通知先が拡大されました。その拡大の狙いは何なのかというのと、そもそも6月の規制改革実施計画で、遺言のデジタル化を進めるというのが盛り込まれていたかと思いますが、その狙いや今後の検討会等の設置など、今後の方針をお聞かせください。

【大臣】
 自筆証書遺言書保管制度の指定通知先を拡大する施策ですね。10月2日から通知先が拡大されました。今までの保管制度では、遺言者の死亡後、遺言書を保管している旨を受遺者など遺言者が指定した者一人に通知をするということがずっと制度上行われてきたわけでありますけれども、この通知が届かない、転居をされた場合を含めて、必ずしも確実に届かないおそれがあるので、人数や対象について、もっと広げるべきではないかというお声が出ていたわけであります。まさに高齢化社会が進む中で、相続制度の基幹部分を支える遺言制度が確実に機能するように、そういう考え方に基づいて、結果的には紛争防止ということに役立つわけですけれども、6月16日の閣議決定、規制改革実施計画において定められましたが、10月2日から通知対象を限定せずに、また人数も三人までに拡大するという措置をとったところであります。相続が社会の大きな事象になってきて、それを支える一つが遺言制度ですから、確実にそれが機能するという方向性をしっかり示していこうということで、この措置をとりました。
 それから、デジタル技術をいかした遺言制度の在り方については、民事法の研究者、実務家等を構成員とする民間の研究会が立ち上げられております。法務省の担当者もこの研究会に参画しまして、デジタル技術を使った遺言制度の改善点が見いだせるかと。活発な議論を、積極的な御議論を期待しているところであります。

【記者】
 民間の研究会が立ち上がっているということですけれども、これはいつからで、どのぐらいの回数重ねるかみたいなところを教えていただければと思います。

【大臣】
 今まさに研究会を作って、これから進めていくところであります。いつ頃までにどうなのか、これは今始まろうとしている、まさに10月から始まりますので、でもそんなにゆっくりはしていられないだろうと思います。でも、いつまでにというのは、これはもう民間の研究会でもありますし、我々も最大限参画をして、また議論していきたいと思いますけれども、非常に大事なデジタル化による遺言制度の在り方。確かに、高齢化社会の中でIT化が進んでいますから、両方の問題がここで出てくるということで、適切な時期に適切な結論が得られることを我々も期待したい。積極的に議論には参画したい。そんなふうに思っています。

ADRの活用に関する質疑について

【記者】
 先日、ODRについて大臣が御説明されていたかと思います。そもそもADRの活用自体が15年経ってもなかなか普及しましたというふうにいえるような状況にはなっていないと思うんですが、大臣の目から見て、どうしてこれがなかなか広がらないのかというのを、御意見をお聞かせいただければと思います。

【大臣】
 確かに促進法(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律)が制定されてからなので15年以上。最近の利用状況を見ても、確かに大まかに見ると横ばいですよね。だから、そういう意味では、どれくらいのボリューム、どれぐらいの利用率が適正なのかということが客観的になかなか判断する基準はないですけれども、少なくとも結構長期間にわたって横ばいで広がっていかない。だから広げる余地がある。そういうふうに認識しています。余地を本当に埋めて広げるためには、やはり利便性が安定的であったり、あるいは周知されていくと。様々な前提条件が満たされる必要があるというふうに思っております。まず一番の要素は、認証ADRが必ずしも国民に十分まだ認知されていないということがあるわけですよね。御存じかもしれませんけれども、令和4年10月に実施しました認知度調査について、ADRの名称や手続を知っていますかというもので、知っています(という方)は31.3パーセント。まずまずなのですが、その中で認証ADRという仕組みを知っていらっしゃる方は、その3割の中の(約)16パーセント。(全体の)1桁のパーセンテージなので、ここに大きなまだ突破口というのですかね、改善できる余地があるのではないかというふうに考えております。
 具体的な取組としては、昨年3月に基本方針を策定したわけでありますが、それに基づいて、法テラスあるいは消費生活センター、地方自治体等の相談機関。相談と紛争解決は隣接しているオペレーションだと思いますが、そういうところとADR事業者との連携を深めてもらう。また、ADR週間等を設定した上で、一体的・集中的な広報をする。法の日フェスタの話を先週しましたけれど、法の日フェスタは10月7日(土)、ここでもADRの紹介ブースを作るんですよ。目に触れる形で見てもらう。そういう地道な取組と、また消費生活センター、地方自治体等の手広い取組、それに加えて、御指摘がありましたODR、ウェブを使ったデジタル化による紛争処理をどうするか。デジタル化というのを一つのてこにできないかなと。ADRないしODRを広げるための、デジタル対応をすることでより多くの人が利用してもらえるように、逆にてこにできないか。そんな問題意識でODRの実証事業にも全力で鋭意取り組んでいきたいと思っております。いずれにしても、最終的には国民が紛争処理の方法として多くの選択肢を持てるという状態が望ましいことは言うまでもありませんので、必要な取組をこれからもしっかりと進めていきたいと思います。

相続土地国庫帰属制度の運用状況に関する質疑について

【記者】
 冒頭に発言があった(相続土地)国庫帰属制度について、プライバシーもあると思うので難しいかもしれないですけれど、富山県内の2件の土地というのが、どういう性質のものかというのがもしあればというのと、初認定ということですけれど、これは所有者不明土地対策の一つの柱だと思うのですが、初めて認定されたことの意義について、もうちょっと大臣から御説明いただければと思います。

【大臣】
 まず、地目ですか。それはちょっと個人情報に関わってくるので、申し訳ないけれど申し上げられないです。この(相続土地)国庫帰属制度というのは、本当に少子化あるいは高齢化が進む中で出てきた様々な問題を克服させるための全く新しい制度ですよね。諸外国の例があるかちょっと私もつまびらかではありませんが、日本の現状を何とか解決の方に少しでも持っていこうとする新しい取組ですよね。前例があるわけではないですよね、諸外国も含めて。ですから、我々もしっかりとこれが役に立つ、稼働してくれる、利用してくれる、みんながここへ来てくれるということを期待していたし、望んでいたわけでありますので、まず最初の2件が、こういう形で、この制度に基づいて対応できたということが、非常に大きいことだなというふうに今思っています。でも、これがずっとまだ継続して、大きな制度として地域社会にしっかり貢献するためには、まだまだ課題はあると思います。スタートした、良かったね、ということで済まないわけですから、これからしっかりとフォローアップして、改善点その他も、あるいはどういう効果があったのかという効果も含めて検証したいし、フォローアップしたいと思っています。法務省が地域社会と関わる一つの接点ですよね、これは。そういう自覚を持って取り組みたいと思っています。

駐日ウクライナ大使との面会に関する質疑について

【記者】
 冒頭、発言のあったウクライナ大使との面会ですけれども、先方から何か要求等々があったか、支援を求められたかなど、成果を教えていただきたいです。

【大臣】
 ウクライナの大使は、旧知の方なので、あまり改めてこういう、というお話はなかったのですけれど、大きく言うと、やっぱり国際社会の中で、日本も非常に大きな協力をウクライナにしていただいています。法務行政においても、様々な取組をしてもらっているので、非常にそれは評価しているし、有り難いことで感謝します。そういう発言がありました。ウクライナの方々に寄り添う、ウクライナだけではないですけれど、保護が必要な方々に寄り添っていくための法改正が行われましたので、やっぱり当事者の代表である大使に、我々も直接それを説明したかったし、反応も見たかったし、またおっしゃるように追加的な御要望があればそれも聞きたかった。具体的に、ここをこうしてくれみたいな要望は法務行政関係についてはなかったですけれど。それ以上は大使のお立場もあるので言えませんが、だから大事なことは一回きりではなくて、折々お互い風通し良く交流できる、そういう場ができたということは、非常に大きいことだなというふうに思っています。あまり先走ってもいけないですけれども、法務行政に関わる関係諸国があるわけですよね。全世界といえば全世界ですよ。でも、その中でより強く深く関わる国々がありますので、そういう国々の大使の方が一番実情は詳しいと思います。できる限りそういう機会を求めていきたい。私のほうから求めていくことができればなという、そういう意味でのスタートでもあるわけですよね。そんな位置付けにしております。

名古屋入管被収容者死亡事案に関する質疑について

【記者】
 名古屋入管で亡くなったウィシュマ・サンダマリさんの件でいくつかお伺いします。名古屋地検は、先月29日に名古屋検察審査会が不起訴不当と議決した当時の入管局長らを嫌疑なしとして再び不起訴としました。これで捜査終結となりましたが、検審が業務上過失致死罪の成否を再検討するのが相当と指摘していたものです。検察の判断に関することではありますが、本件についての受け止めをお聞かせください。あと、本件については、名古屋入管局長と当時の次長を訓告、警備監理官ら二人を厳重注意処分という処分が出ています。国の管理する施設で人命が失われた事案でありながら、処分が甘いという批判も実際にあります。本件の処分の適正さについて大臣の御見解をお聞かせください。調査報告書では、入管の医療体制の現状や課題についても指摘されました。現状についての受け止めをお聞かせください。

【大臣】
 御指摘の事案は、検察当局が検察審査会の議決を受けて再捜査を行って、9月29日、当時の名古屋入管職員らを再度不起訴処分としたところであります。これは、今おっしゃっていただいたように、個別事件における検察当局の事件処理の問題ですので、法務大臣として所感を述べるということは差し控えたいということを是非御理解いただきたいと思います。でも、二度とこういうことがあってはならないと、入管庁としても同じ認識を持って取り組んでいるところでありまして、調査報告書が示され、そこで改善策というものも抽出されておりますので、それに基づいて組織の面、それから業務の面で、改革にまさに取り組んでいるところでありますし、一生懸命取り組んでもらいたい。私もそういう気持ちでお願いしているところであります。そういう意味で、今後に向けて、私がしっかりリーダーシップを発揮して、入管庁の皆さん、全ての職員の方、こういった事案が二度と起こらないような取組を、形だけではなくて意識も含めて全力でやりたい。そういうふうに思っております。

政府から独立した人権救済機関の設置等に関する質疑について

【記者】
 今の、ウィシュマさんの(事案に係る)不起訴処分の件ですけれども、今までにも入管行政の責任を問う裁判で、刑事裁判、それから民事裁判の双方が提起されようとしたことは過去にもあったと思いますけれども、刑事告訴や告発を受理した検察官にとっては、入管行政も、それから国賠を担当する訟務検事も身内ですから、刑事事件の立件、起訴に向けて積極的に捜査したとは到底考えられないんですね。ですから、入管での人権侵害に限ったことではないですけれども、多くの人権侵犯事件で、被害者や遺族の大半が泣き寝入りするしかない状態だと思います。迅速な人権救済のためには、裁判制度だけに頼るのではなくて、やはり政府から独立した人権救済機関の設置とか、個人通報制度の批准などが必要だと考えますけれども、今回の不起訴処分を受けて、大臣の御所見を改めてお願いします。

【大臣】
 繰り返しになりますけれども、個別事件の検察当局の事件処理ということでありますので、検察庁が法と証拠に基づいてやっている捜査でありますので、法務大臣としての所感を述べることは差し控えたいと思います。是非御理解いただきたいと思います。
 人権機関、第三者機関(について)、繰り返し記者さんから(質問)いただいていますけれど、先般、幾度かお答えしたとおりでありまして、特に付け加えることはありません。
(以上)