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法務大臣閣議後記者会見の概要

令和5年10月20日(金)

 今朝の閣議でありますが、法務省案件としては、「裁判官の報酬等に関する法律の一部を改正する法律案」及び「検察官の俸給等に関する法律の一部を改正する法律案」が閣議決定されました。国家公務員の給与が変更されることに伴う措置です。
 続いて、私から3点ほど最初に御報告させていただきたいと思います。うち最初の2件は、来訪していただいた方についての御紹介です。
 一昨日の18日水曜日に、駐日ベトナム大使のヒエウ大使が法務省大臣室にお越しいただきました。私も長く日越友好議員連盟の役員をしておりますので、旧知の仲で、技能実習制度・特定技能制度の報告書(のたたき台)が出た、その日にちょうど来られまして、その話題になりました。非常に大きな関心を持っておられるし、我々にとっても送出国の様々な実情を知る必要があります。これから議論がどんどん進み、煮詰まっていく中で、法務省としても、外務省を通じてやるのが通常ルートですけれども、時にベトナムあるいはベトナム大使館と連携して情報を共有する、問題点をまた色々教えていただくということに資する、そういうコミュニケーションをしっかり取りましょうね、という話を私からしまして、ヒエウ大使からは、もちろん大変有り難いことだと。是非一緒に考えさせてもらいたいという話と、それから、長い歴史がありますよね、法制度整備支援。日本がベトナムに対して色々やってきた法曹人材の育成の支援。この日も、9名だったですよね、ベトナムの中央(内政)委員会というところの幹部職員ですよね。日本の様々な法制度について学びたいということで、JICAが窓口となって招へいしているのですけれども、そういった方々も当日お見えになりました。こういう息の長い法整備支援をしてきたことが両国間の関係に非常に大きな良い影響をもたらしているなということを実感した次第です。ウクライナの大使やベトナムの大使にも(法務省に)来ていただいたので、関係各国の大使にできるだけ一度来ていただいて、お互い話し合えば色々なプラス効果があると思います。そういう努力をしていきたいと思っております。
 2件目は、北海道網走市の水谷市長さんと、金印アグリ株式会社と、上川大雪酒造(株式)会社の社長のほか皆様に御来訪いただきました。網走市は、網走市が発案して「網走市リエントリー委員会」、もう一回社会にリエントリーする、網走刑務所を出た後、社会に再び入るという道筋をお手伝いしようという大変有り難いイニシアティブを水谷市長が取ってくださっています。その活動状況を詳しく伺うことができました。また、この金印アグリ株式会社というのも新しい農業の企業でありますけども、一例ですが、かぼちゃの栽培をして保護司、保護観察対象者がその収穫に参加するだけではなく、受刑者の人たちも収穫の工程に加わっておられます。また、上川大雪酒造(株式会社)というのも良い着眼点をお持ちで、大きい木桶で日本酒は醸造するのですけれど、その桶の製法がもう失われそうになっている。そこで小豆島から技術者を招へいして、網走刑務所の受刑者にその技術を伝えて、そこで木桶を作って、その木桶で清酒を作ると。そこには一般市民も関わってきます。受刑者が仮組みした後の仕上げは地域の方々が担っています。そういう新しい商品も生まれてきて、網走は色々若い方々にも知名度のある、漫画ですかね、舞台になっている。そういう地域おこしに一役買うという新しい発想で取り組んでいただいています。そういったお話を伺いながら、是非これからも知恵を出していただきたいし、我々も支えていきます。そういうお話をしました。
 3件目。これは手短に申し上げますけれども、12月1日から補完的保護対象者の認定制度が始まります。ウクライナだけではなくて、紛争避難民の方々について、この制度が進みます。それに向けて今、最終の詰めをしているところです。補完的保護対象者の制度に多くの方々が移行していくだろう。特定活動と生活支援という今枠組みですけれども、これが特定活動から補完的保護対象者へ移っていくだろうという前提で組み立てていますけれども、(ウクライナ避難民に対する)この生活支援、経済支援の部分は2年間、今支給される金額があるわけですよね。それと、まだ最終決定できないですけれど、同程度の金額の生活支援金は、同じように、同じく2年間支給していこうという方針になってまいりました。加えて、日本語教育や生活ガイダンスというものも受講できるようになります。より手厚くなります。2年間生活費支援をやっていた。それはそのまま継続し、上乗せする形で生活ガイダンス、日本語教育。こういったものが補完的保護対象者の制度に移行する中で加わっていくというような形になりますので、また直前にもう少し詳しくイメージが湧くようにお話ししたいと思いますが、言いたかったことは12月1日に向けて着々とこういう枠組みで詰めていますよという御関心を是非持ってください。そういうことを申し上げたいと思います。

埼玉県川口市長からの要望に関する質疑について

【記者】
 埼玉県川口市でクルド系とみられるトルコ人と地域住民との間でのトラブルが生じて、9月に川口市長が法務大臣に要望書を提出されました。法務省や出入国在留管理庁として、川口市におけるトルコ人をめぐるトラブルについてどのように把握されていますか。市長からの要望にはどのように応える所存でしょうか。
 また、改正入管法の完全施行によって、こうしたトラブルの抑制にはどんな効果があるとお考えか、それもお聞かせください。
 
【大臣】
 まさに目の前に起こっている問題です。9月1日に埼玉県の川口市長が法務省に来られて、齋藤前大臣が面会されて、詳しくそのときに要望書も頂いております。実情もそのときにかなり詳しく伺いましたが、その後、我々も地元の様々な関係者、自治体、警察、そういった方々と連携して、まず何が起こったのかと。何が起こっているのかという、今おっしゃった現状の把握を鋭意進めているところでもあります。この問題に対処していく大枠としては、やっぱり共生社会をどう作るんだという基本にやっぱり立つ必要が、改めて言うまでもないのかもしれませんが、あると思いますね。ルールにのっとって外国人を受け入れて適切な支援を行うと。でも、ルールに違反する人に対しては厳正に対処すると。この基本にのっとって対応していくというのが適切だと思います。厳正に対応していくという点で申し上げれば、不法滞在者対策として、しっかり警察等の関係機関と緊密に連携を図って、不法滞在者の摘発等に取り組まなければいけないし、また現に取り組んでいるところでもあります。共生社会を作っていく過程において、保護すべき人を保護する。また厳正に対処することの両方向ですよね。バランスというよりは両方向の取組が必要でありまして、この埼玉のクルド人の方々をめぐる問題についても、そういう基本的視点というものをしっかり踏まえて取り組みたいと思いますし、改正入管法は、まさにその両方向の取組をそれぞれに強めることを主旨とした法改正が行われたわけであります。保護すべき人をより保護する、より支援する。だけど、そうではないルールも守らない方にはより厳正に、送還忌避への対応も含めて対応する。強める。その入管法の改正が、これから来年はその施行が順次始まっていきますので、ベースはこれをしっかりとその主旨に沿った運用を、執行をしていくという形で、このクルドの問題も含めて対応していきたいというふうに思います。地元の自治体の方々、警察等とは引き続き連携を緊密にして、しっかりウォッチしていきたいと思っております。

名古屋入管の視察に関する質疑について

【記者】
 大臣、先日、NHKのニュースの中で、名古屋入管を視察し、医療体制の見直しについても取り組んでいる旨の発言をされました。改めて、具体的にどのような体制の見直しを行っているのか、また、入管を視察された感想を併せてお答えください。
 
【大臣】
 名古屋入管の視察を行ってまいりました。特に、ウィシュマさんの事案後における医療体制あるいは情報共有の在り方、業務体制の在り方、そういったものがちゃんと正しい方向に向かって取組を進んでいるかと。それを確認しに行ったわけであります。名古屋局、全体の印象として申し上げれば、非常にウィシュマさんの問題をしっかりと、また深刻に受け止めて、何とか新しい体制で同じことが二度と起こらないように何とかしたい。そういう緊張感あるいはチームワーク、そういったものをすごく感じることができました。特に、新しいお医者さんが入って来てくださっていてお会いしましたが、大変立派な方でした。また、非常に行動的な方でした。非常に情熱を持った方でいらっしゃいまして、その新しい常勤医師を中心に、正看護師さん、准看護師さん、そして入管局の医療関係のスタッフが一丸となってチームワークを形成しているということも強く感じました。その医師の方が、細かくは申し上げませんけれど、やっぱり的確な指示を、あるいはアドバイスを、提案をしているのですよね。こういう体制でやろうじゃないかということを。その医師の方は救急が専門の分野の一つとして持っておられる方なので、大変的確です。異常が起こってから救急車を呼ぶまでの時間を例えば短くするには何を見れば良いのか、色々なバイタルがありますけれど、何をどう見ればすぐ動けるのかというようなところも含めて、非常に緻密に医療の専門的な知識も織り込みながら、若い職員も含めてこの医師の指導を受けると。やっぱり非常に心強く思いました。また、人員も補強していくということが今進められています。
 もう一つは、今度は外国人の方ですよね。この医療体制が整っても、コミュニケーションが十分取れていくのかという、そこがまた大きな問題ですよね。体調が悪い、でも母国語ではそのまま通じない。その問題も確かにあったと思います。そういう点についても、医師の診察のときは通訳を置くと。あるいは、翻訳機器というものを十分に配備するということで、言葉の壁がそういうときに起きないように、きめ細かく配慮しているというところも見てまいりました。これは名古屋入管だけではなくて、全体の問題でもありますよね。そういう意味では、主要6官署において、今申し上げた医師、常勤の良い医師をとにかく確保するというのは非常に重要な課題だというふうに思っております。また、そういう医師が確保されることが前提ですけれども、庁内医師がいてくださる場合には、体調不良の訴えがあった場合には、全件直ちに診察を行うという仕組みもその中で可能になるわけでありまして、これからも刑務所もそうですけれど、入管もそうですけれど、医師の確保をやっぱりきちっと法務本省としてもバックアップしていくということが、長期的に見たときに重要なテーマの一つだなと。そんな課題も感じながら視察に行ってまいりました。

ホタテの加工処理を刑務作業として行う方針との報道に関する質疑について

【記者】
 政府が日本産ホタテの殻むきなどを刑務作業に加える方針を固めたとの一部報道があります。この事実関係の確認と、法務省内での現在の検討状況、併せて農水省との調整状況について教えてください。
 
【大臣】
 まさに今検討中です。こういう御提案が各方面からあって、まさに今、検討中であります。刑事施設内にホタテの工場を移すわけにもいかないので、衛生管理上の問題もありますので、受刑者が刑務所を出て民間の加工場で作業することができないかなというその実効性を今、農水省と連携して検討しているところであります。特に、受入事業者の方がどう反応するか、またその周辺地域の方々の御理解も必要になりますので、良いアイディアだと、良い御提案だと思うのですけれども、考え得る課題については早急に農水省とよく連携して詰めて、その可否を最終的には判断したいというふうに思っています。まさに一生懸命今やっておりますので、また結論が出たときには御報告できると思います。
 
【記者】
 今(の質問に)関連して、主産地である北海道内が対象になる可能性が高いと思うのですけれども、受け入れる側の住民の不安軽減というところで、もしもう少し具体的なお考えですとか、現時点でありましたらお聞かせください。
 
【大臣】
 おっしゃることもよくわかります。不安、そうですよね。前例があまりないからね。刑務所の中の作業とは違いますよね。そこはおっしゃるとおり、住民の方々の不安というものをしっかり、もし表明されるのならば受け止めて、その中で我々もこういう努力をしますということを具体的に申し上げた上で、どうですかと、やっぱり何回かやり取りは必要になるだろうと思われます。今はちょっと具体的にどういう我々から提案ができるかというのは申し上げられないですけれども、大事な要素でもあります。ふだんの刑務所と周辺の自治体・住民の方々との関係性も影響してくるかもしれません。今の御指摘はしっかり踏まえて、具体的に取り組みたいと思います。

名古屋刑務所職員による暴行・不適正処遇事案の再発防止に向けた取組状況の公表に関する質疑について

【記者】
 名古屋刑務所で刑務官が受刑者に暴行等を繰り返した問題で、名古屋刑務所が今月6日に再発防止策の取組状況を公表しました。第三者委員会の提言書に基づき、受刑者の呼び捨てについて原則禁止にし、今年の8月から呼称を「さん」や「君」付けで呼んだり、導入1か月後のアンケートで職員の6割がそうした呼称について支障がないと回答したほか、刑務官の小型カメラの装着の取組も始まって、一部では不適切な言動が録画され、その後職員の処分につながったとしています。この再発防止策については、齋藤前大臣からも引継ぎがなされているとは思いますが、今回の取組状況の公表について、大臣の御所見をお聞かせください。
 
【大臣】
 10月6日金曜日ですよね。名古屋刑務所において、不適正処遇事案の再発防止に向けたこれまでの取組状況の公表がなされました。こうした定期的な状況報告というのが大変重要なことだと思います。私も、10月17日火曜日、名古屋刑務所で現場をよく見て、また職員の方々とも意見交換をしてきました。第三者委員会の報告書が6月に出て、七つの提言がなされているのですが、行ってみて話を聞いて気付いたのは、名古屋刑務所の中では、それよりも4か月早い2月から再生プロジェクトチームを作って、もう作業を始めていたのですよね。それに被る形で、第三者委員会からまた御提言があったと。かなりその改善が私は、8か月ぐらい経つわけですけれども、進んできているなというふうにも思いましたし、これからしっかりそこはチェックが必要ですけれど、問題点の整理も、再発の防止、それから早期の発見、組織風土の変革。この三つに分類して、その対応策をしっかり、漏れのないように打ち出しているわけです。
 この三つの中の、例えば再発防止という点から一番中心的な例を挙げれば、専属のチームを作って、受刑者のほうの方々もチームを作って。一対一になると非常に色々なリスクが出てくるということで、ケアする側もチーム、される側もチームということを作って、ユニット処遇と呼んでいますけれど、チームでやるということをかなり熱心に高齢者あるいは一定の制約がかかる人ごとにグループ化をして進めていました。これも大きな形だと思います。
 2番目に早期発見ですね。これは今おっしゃったウェアラブルカメラを職員がして、若い職員が着けていたから、違和感ないですかと(尋ねたら)全然ないですと。これが非常に有効だということは実感していますというふうに言っていたので、定着してきているのだろうと思います。
 もう一つの問題意識は、組織風土の変革。もっと抽象的ですけども、これを変えるというのが三つ目のテーマ。そこに「さん」付け、「君」付け、やってみようかと。全国の刑務所に先駆けてやってみて、アンケート調査を取ったら6割の職員は特段の問題は感じないということでしたと。何かそれ以外に問題がありますかということも聞いたけれど、いや定着してきていると思いますというふうに現場では言っておられましたね。
 だから、この三つを中心に、これだけではなくいくつもの措置があるのですけれど、ベースはこの三つを中心に着々と進めてもらって、できれば将来はもう全国の模範になるような、そういう矯正施設になってもらいたいですということを申し上げてきました。また、これはしっかりと本省もフォローしていきたいと思います。

大阪法務局における人権侵犯事件処理に係る報道に関する質疑について

【記者】
 昨日の報道で、大阪法務局が杉田水脈衆議院議員のSNSや雑誌の投稿内容に関して人権侵犯認定したという記事がありました。先日も、同様の案件を含んでいるわけですが、札幌法務局の人権侵犯認定もありました。今後法務省として、このような政治家のヘイトスピーチ対策をどのような検討を今、されているのか。政治家本人や政権与党としての説明や謝罪といった責任は必要ないというふうにお考えでしょうか。政権閣僚としての法務大臣の御所見をお願いします。
 
【大臣】
 基本は個別事案でありますので、関係者のプライバシーに関わる事柄でありますので、基本としてはお答えを差し控えますが、一般論として申し上げれば、誰によるものであるかを問わず、特定の民族、国籍の人々を排斥するような不当な差別的言動は、前回も申し上げましたけれども、あってはならないものだと思います。
 その上で、法務省の人権擁護機関では、平成28年に議員立法により成立しましたヘイトスピーチ解消法を踏まえ、「ヘイトスピーチ、許さない。」をメインコピーとしたポスター、啓発冊子の活用、SNSにおける情報発信等によって、ヘイトスピーチに焦点を当てた人権啓発活動に取り組むなどしております。多様性が尊重され、全ての人々がお互いの人権や尊厳を大切にする、生き生きとした人生を享受できる共生社会、これを我々、繰り返し発信しているのですよね。発信しています。こういった発信のもとに人権擁護活動も具体的に行っていますので、これをしっかり積み重ねる、これが一番大切なことだと。粘り強く積み重ねていく、これが一番大切なことだというふうに思っております。
(以上)