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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第220回)議事要旨


 
 日時
 平成28年10月27日(木)15:00

 

 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当 再調査相当 処理案不相当
11件 11件 0件 0件

 

 意見その他
(1)  自弁の書籍の閲覧を禁止された措置の取消しを求める再審査の申請について,「法務省意見相当」(閲覧を禁止する措置を執ったことに違法又は不当な点は認められない。)との結論に至ったが,委員の1名から,以下のとおり反対意見が示された。
 「憲法21条1項は,個人の思想や人格の形成・発展と民主主義社会における思想及び情報の自由な伝達,交流の確保のために,何人にも「一切の表現の自由」を保障しているところ,その派生原理として,知る権利が保障されている。これを前提として,刑事収容施設及び被収容者等の処遇に関する法律69条は,被収容者が新聞紙等を含む「自弁の書籍等」を閲覧することは,同法第2編第2章第8節(書籍等の閲覧)及び第12節(賞罰)の規定による場合のほか,これを禁止し,又は制限してはならないと規定している。その例外として,同法70条1項1号は,刑事施設の長は,被収容者が自弁の「書籍等」を閲覧することにより,刑事施設の規律及び秩序を害する結果を生ずるおそれがあるときに該当する場合には,「その閲覧」を禁止することができると規定しているところ,本件は,同条同項同号に該当するとして,当該書籍を1冊全部,閲覧禁止としたものである。なお,同法69条及び70条の「書籍等」については,同法33条1項5号において,「書籍,雑誌,新聞紙その他の文書図画(信書を除く。)をいう。」と定義されている。
 ところで,この「書籍等」に含まれて同法69条及び70条の適用を受ける「新聞紙及び雑誌」については,一般に被収容者の入所時に「閲覧に支障があると認められる部分がある場合には,その部分を抹消又は削除の上で閲覧する」ことについて被収容者から包括的に同意を得ており,この同意に基づいて,個々の同意を得ることなく,抹消又は削除を行う扱いとされるが,「書籍」については一部抹消又は削除の措置が認められないと解釈適用されていると言う。しかし,この点について,「新聞紙又は雑誌」と「書籍」をもって一律に一部抹消又は削除の措置の可否を分けることに合理的な理由を見出せないから,「書籍等」に含まれる「書籍」についても,「新聞紙又は雑誌」についてと同等に一部抹消又は削除措置が認められるべきである。最高裁判所昭和58年6月22日大法廷判決は,新聞紙を自弁で定期購読していた未決拘禁者8名について,「監獄内の規律及び秩序の維持のためにこれら被拘禁者の新聞紙,図書等の閲読の自由を制限する場合においても,それは,右の目的を達成するために真に必要と認められる限度にとどめられるべきものである」と判示したうえで,昭和45年3月31日夕刊から4月2日朝刊まで日航機よど号乗っ取り事件に関する記事一切を黒塗りにしたうえで新聞を配布した措置の憲法適合性を判断しているし,最高裁判所平成10年4月24日第二小法廷判決は,上記最高裁大法廷判決の趣旨に徴して,既決拘禁者についても,刑務所内の受刑者4名が同じ原因で死亡した事件についての新聞紙及び機関誌の記事の一部抹消の憲法適合性を判断している。
 このような先例に徴すると,本件では,同法70条1項1号該当箇所は,12章の章立てからなる当該書籍のうち被収容者の刑務所にかかる記載のある合計3章で当該書籍の46頁分で全体の20パーセント相当にとどまるということから,該当箇所を切り取るなどの方法により削除することは,上記最高裁大法廷判決及び第二小法廷判決の事案と比較しても事務量は多くなく同程度以下と解されるし,客観的にも該当頁の切り取りも可能であり,しかも申告人も,該当箇所を削除することに同意した上で残部を閲覧したい旨を述べているのであるから,一部の抹消又は削除の措置が執られるべきであった。
 しかし,本件において,上記法律70条1項1号だけを理由として上記のように全部閲覧禁止措置を執り一部の抹消又は削除の措置が用いられなかったことは,その運用において,「より制限的でない他の選びうる手段を選択していない」こととして憲法21条1項の派生原理として認められる知る権利に違反するとともに,上記法律69条及び70条1項1号の解釈において比例原則違反による裁量権の逸脱濫用であると考える。」
 また,他の委員の1名から,以下のとおり,補足意見が述べられた。
 「本件書籍には,当該施設が閲覧を禁止することが相当と判断した部分以外の部分にも犯罪の手口が詳細に記載されていることが認められ,本件書籍全体について矯正処遇上の支障がある内容であることがうかがえることから,全体の閲覧を禁止したことは相当だと考える。」
(2)  職員から暴行を受け,違法に手錠を使用されて保護室に収容されたとする法務大臣に対する事実の申告について,「法務省意見相当」(職員による身体に対する有形力の行使,手錠の使用及び保護室収容に違法又は不当な点はない。)との結論に至ったが,委員の1名から,「本件のように,職員から暴行を受けたとする状況について映像記録がなく,複数であっても職員の報告書のみで事実を認定している案件については,状況を目撃していた受刑者がいる場合には,矯正管区が実情を調査する際には,当該受刑者から事情を聴取することも検討すべきである。」との意見が述べられた。