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刑事施設の被収容者の不服審査に関する調査検討会(第227回)議事要旨


 
 日時
 平成29年3月9日(木)15:00

 

 

 審査件数
検討会付議件数 審査結果
処理案相当 再調査相当 処理案不相当
9件 8件 0件 1件

 

 処理案不相当案件に係る検討会の提言
(1)  提言
刑事施設収容中の未決拘禁者から提出された再審査の申請について,処分庁が申請人に対して執った指名医による診療を受けることを許さないこととした処分(以下「本件措置」という。)は,これを取り消すのが相当である。
 なお,委員2名により,本件措置は相当との少数意見が付されている。
(2)  提言の理由(要旨)
 被収容者に対する診療は刑事施設の責務であることから,刑事施設の職員である医師等又は刑事施設の長が依頼する医師等によって行われるのが原則であって,その例外である指名医による診療は,制度上,当該治療が刑事施設における医療として外部医療機関において実施可能なものであれば,これを許す場合には当たらないとの法務省の意見については一定の理解はできる。しかしながら,以下のとおりの本件における個別の事情からすれば,本件措置は不当であるといわざるを得ず,これを取り消すのが相当である。
ア 当該施設(以下「同所」という。)では,申請人が入所して以降,本件措置が執られるまでの間,申請人の疾病(虫歯等)に対して,同所医師による診療が行われているものの,記録上,その内容は応急処置程度と認められ,十分な治療がなされていたとはいえず,また,外部医療機関において申請人に対する診療を行おうとしたことを示す形跡も認められない。申請人は,同所において十分な歯科治療を受けられなかったように受け止めたことから,本件指名医診療を申請したと認められ,このような事情を考慮すれば,本件指名医診療は申請人の医療上特に有益なものに該当すると考えられる。 
イ 歯科診療については,他の医療と比して,治療機器,歯に充填する素材等の選択肢が複数にわたることがあり,その場合には,どのような方法による治療を受けるかについては,可能な範囲で患者である申請人の意思を尊重する余地があると考えられる。申請人は一貫してコンポジットレジンによる充填を希望していたところ,同所においては同素材による充填を行わない方針であったことが認められ,また,同素材による充填が可能であるとする外部医療機関における診療が不可能であったとの事情も認められないのであるから,こうした状況において,患者である申請人の意思を尊重するとの観点からは,本件指名医診療を許可すべきであった。
ウ 法務省は,同所における歯科治療の内容及び早期に外部医療機関での診療を実施する余地があったことを踏まえ,同所における対応が必ずしも十分ではなかったとの指摘を受けることもやむを得ないと説明している。こうした前提の下で,申請人は,同所では十分な治療を受けられないとの思いから,外部の医師による歯科治療を受けるための手段として指名医による診療を希望したものと考えられる。本件の経過からすると,申請人はより早期に外部の医療機関での診療を受ける余地があったのであるから,本件措置当時,申請人の思いを尊重する観点から外部の医療機関での診療を受けさせるべきであったと考えられ,同所が外部の医療機関での診療を実施しなかったことは相当であったとはいいがたく,事後,同所が外部の医療機関における診療を実施しているとしても,そのことをもって本件措置が正当化されるともいいがたく,これらの事情を考慮すると,本件措置が相当であったと認定することは困難である。
(3)  少数意見(要旨)
 以下に述べるとおり,本件措置に違法又は不当な点は認められない。
ア 申請人の指名医診療申請に係る疾病は,同所における診療(外部医療機関における診療も含む)として対応が可能なものであったと認められ,「被収容者の保健衛生及び医療に関する訓令」(平成18年法務省矯医訓第3293号大臣訓令)第14条第1項第4号が定める指名医による診療の要件である「刑事施設における診療として対応することが困難な負傷又は疾病」には当たらない。
イ 同所では,申請人が希望するコンポジットレジンと同等の素材による充填が可能であったのであり,同所医師は,申請人が希望する素材を用いた診療が,必ずしも医療上特に有益な診療に当たるとは認めなかったことから(同訓令第14条第1項ただし書),処分庁は,指名医による診療を許可すべきという判断に至らなかったものと認められ,こうした判断に違法又は不当な点は認められない。
ウ なお,診療録等の記録からは断定できないものの,同所医師は,申請人が希望するコンポジットレジンと同等の素材による充填という申請人に対して同所が対応できる医療上有益な診療について説明していたところ,申請人がこれに同意しなかったことから,同所は具体的な診療を実施するに至らなかったのではないかと推認される。したがって,本件措置当時,同所において十分な歯科治療が実施されていなかった事情があるとしても,そうした事情をもたらした一因は申請人の側にもあることが推認されることからすると,同所における十分な歯科治療の不実施が,指名医による歯科診療を許可する理由となるとすることはできない。

 

 意見その他
(1)  書籍の閲覧を禁止された措置の取消しを求める再審査の申請について,「法務省意見相当」(書籍の閲覧を不許可としたことに違法又は不当な点は認められない。)との結論に至ったが,委員の1名から,「書籍の閲覧を不許可とする基準が他の施設と比べてあまりにも異なっており,上級庁から当該施設に対して指導がなされたとの事例はこれまでにもあったと承知しているが,個別の事例をその都度指導するのではなく,各施設で統一した運用がなされるよう,上級庁から閲覧の許否に関する判断基準や,担当者が代わっても判断にそごが出ない事務処理体制の整備等について指導されたい。」との意見が述べられた。
(2)  懲罰の取消しを求める再審査の申請について,「法務省意見相当」(懲罰を科したことに違法又は不当な点は認められない。)との結論に至ったが,委員の1名から,「申請人が作業中に窓ガラスを割ったことの事実認定において,ガラスに衝突したかごの向き等の位置関係が曖昧であるほか,申請人の故意又は重過失を認めるに足りる証拠は認められない。それゆえ,過失事犯として本件をみるに,本件と同様にガラスを割った受刑者Aに対しては,初回は再発防止の注意にとどまり,2回目に閉居及び報奨金計算額削減の懲罰が科されているにもかかわらず,申請人に対しては,再発防止の注意をすることなく,初回から受刑者Aと同様の閉居及び報奨金計算額削減の懲罰を科したことは,明らかに比例原則に反する。また,そもそも,施設において,当該場所にかごを置かないよう指導することや,繰り返し誤って割られるガラスについて,防護シールを貼るなどの事前措置も取られていないし,申請人が本件事犯を自主的に告知したことの情状も適切に考慮されていない。よって本件懲罰は不当である。」との反対意見が示された。