法曹有資格者の活動領域の拡大に関する意見交換会取りまとめ
平成20年12月22日
(社 日本経済団体連合会
法科大学院協会
日本弁護士連合会
文部科学省
法務省
第1 企業における法曹有資格者の活用の現状について
司法制度改革審議会は,その意見書において,「今後は,弁護士が,個人や法人の代理人,弁護人としての活動にとどまらず,社会のニーズに積極的に対応し,公的機関,国際機関,非営利団体(NPO),民間企業,労働組合など社会の隅々に進出して多様な機能を発揮し,法の支配の理念の下,その健全な運営に貢献することが期待される。」と述べており,これからの法曹有資格者(司法試験合格者を指し,必ずしも弁護士資格を取得している者に限定されない)は,個人や法人の代理人,弁護人としての活動にとどまらず,社会のニーズに積極的に対応し,民間企業などに進出することが期待されている。
また,これからの企業においては,司法制度改革の理念である法の支配の拡充発展という観点等から,法曹有資格者が,企業法務の分野の充実・強化のみならず,コンプライアンスの徹底,適切なコーポレートガバナンスの実現など企業活動を促進する役割を担うとともに,企業経営においても有為な人材として参画することが期待されており,企業において法曹有資格者を採用する潜在的な需要が認められる。
ところが,企業内弁護士(民間企業において使用人又は常勤役員となっている弁護士)は,司法制度改革審議会意見書が提出された当時である平成13年には62人であったが,平成20年にはその約4倍以上となっているものの,未だ267人にとどまっている(注1)。また,上場企業を中心とする国内企業及び外資系企業において,企業内弁護士がいる企業もわずか3.9%である(注2)。
司法修習終了直後に企業等の民間団体に就職した弁護士の数も,それを希望する者自体が少なかったこともあり,第59期司法修習生については終了者1477人中11人(0.7%),第60期司法修習生については終了者2376人中28人(1.2%)にとどまる(注3)。例えば,平成19年のアメリカのロースクール卒業生のうち14.1%が企業に就職していることと比較すると,司法修習終了直後に企業内弁護士となった者の割合は非常に少ない。
そして,今後の弁護士の採用についても,「現在募集中」,「現在募集はしていないが,今後採用の予定はある」,「採用予定はないが,現在検討中である」との回答をした企業は合計でわずか6.7%にとどまっている。このように,現時点において,我が国における企業内の法曹有資格者数が順調に増加しているとは到底言えず,企業における法曹有資格者の需要の多くは顕在化していない状況である。
そこで,(社)日本経済団体連合会(以下「日本経団連」という。),法科大学院協会,日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。),文部科学省及び法務省は,企業内法曹有資格者の採用及び需要についての上記の厳しい現状認識を踏まえ,企業内での法曹有資格者の採用をより一層推し進めていくために,第2において述べるとおり,企業における法曹有資格者の採用を阻害している要因を分析した上で,第3に述べる方策を積極的に進めることとした。
(注1) 日本組織内弁護士協会の調査による。勤務先の企業所在地を事務所所在として日弁連に登録している弁護士を計上したもの。
(注2) 日弁連が,平成18年に,上場企業を中心とする国内企業(3795社)及び外資系企業(1457社)に対して行った調査による。回答数1446社。
(注3) このほかに,弁護士登録せずに企業に就職した者がいる可能性もあるが,それはごくわずかにとどまると思われる。
また,これからの企業においては,司法制度改革の理念である法の支配の拡充発展という観点等から,法曹有資格者が,企業法務の分野の充実・強化のみならず,コンプライアンスの徹底,適切なコーポレートガバナンスの実現など企業活動を促進する役割を担うとともに,企業経営においても有為な人材として参画することが期待されており,企業において法曹有資格者を採用する潜在的な需要が認められる。
ところが,企業内弁護士(民間企業において使用人又は常勤役員となっている弁護士)は,司法制度改革審議会意見書が提出された当時である平成13年には62人であったが,平成20年にはその約4倍以上となっているものの,未だ267人にとどまっている(注1)。また,上場企業を中心とする国内企業及び外資系企業において,企業内弁護士がいる企業もわずか3.9%である(注2)。
司法修習終了直後に企業等の民間団体に就職した弁護士の数も,それを希望する者自体が少なかったこともあり,第59期司法修習生については終了者1477人中11人(0.7%),第60期司法修習生については終了者2376人中28人(1.2%)にとどまる(注3)。例えば,平成19年のアメリカのロースクール卒業生のうち14.1%が企業に就職していることと比較すると,司法修習終了直後に企業内弁護士となった者の割合は非常に少ない。
そして,今後の弁護士の採用についても,「現在募集中」,「現在募集はしていないが,今後採用の予定はある」,「採用予定はないが,現在検討中である」との回答をした企業は合計でわずか6.7%にとどまっている。このように,現時点において,我が国における企業内の法曹有資格者数が順調に増加しているとは到底言えず,企業における法曹有資格者の需要の多くは顕在化していない状況である。
そこで,(社)日本経済団体連合会(以下「日本経団連」という。),法科大学院協会,日本弁護士連合会(以下「日弁連」という。),文部科学省及び法務省は,企業内法曹有資格者の採用及び需要についての上記の厳しい現状認識を踏まえ,企業内での法曹有資格者の採用をより一層推し進めていくために,第2において述べるとおり,企業における法曹有資格者の採用を阻害している要因を分析した上で,第3に述べる方策を積極的に進めることとした。
(注1) 日本組織内弁護士協会の調査による。勤務先の企業所在地を事務所所在として日弁連に登録している弁護士を計上したもの。
(注2) 日弁連が,平成18年に,上場企業を中心とする国内企業(3795社)及び外資系企業(1457社)に対して行った調査による。回答数1446社。
(注3) このほかに,弁護士登録せずに企業に就職した者がいる可能性もあるが,それはごくわずかにとどまると思われる。
第2 企業における法曹有資格者の採用を阻害している要因について
企業における法曹有資格者の採用を阻害している要因に関しては,以下に述べるような諸点が指摘された。
1 法曹有資格者全般について
企業においても,法曹有資格者においても,企業内法曹有資格者の役割・機能についての理解が浸透しておらず,また,企業及び法曹有資格者の双方において,企業内法曹有資格者の処遇や勤務条件(必ずしも法務部門に継続的に配属されるわけではない)等についての共通認識が十分に形成されていない。
2 司法修習終了直後又は司法試験合格直後に企業に就職を希望する者について
企業の定期採用のスケジュールにおいては,一般的には,企業は,10月ころから募集活動を開始し,翌4月,5月ころ選考活動を行い,翌々4月に採用する。
他方,法科大学院修了生は,一般的には,3月に法科大学院を修了し,5月に新司法試験を受験し,9月に新司法試験の合格発表を受け,11月に司法修習を開始し,翌12月に司法修習を終了する。
このようなスケジュールの違いのため,司法修習終了直後に企業に就職を希望する者については,新司法試験合格後の10月ころから開始する定期採用スケジュールに合わせた就職活動を行うことは可能であるが,翌12月の司法修習終了時期と企業の通常の勤務開始時期(翌々4月)との間にずれがある。
司法試験合格直後に司法修習を経ることなく企業に就職を希望する者については,法科大学院修了後の5月に新司法試験を受験するため,その後でなければ就職活動を開始することが事実上困難であり,企業の定期採用のスケジュールに合わせた就職活動が難しい。
また,これらの者の中には,企業の求める熱意・姿勢・準備を必ずしも備えていない応募者がいる。
第3 企業において法曹有資格者の採用を促進するための方策
日本経団連,法科大学院協会,日弁連,文部科学省及び法務省は,上記第2の阻害要因の分析を踏まえ,今後,企業において法曹有資格者の採用を促進するために,以下のような方策を積極的に行っていくこととする。
1 法曹有資格者全般について
日本経団連,法科大学院協会,日弁連,文部科学省及び法務省は,企業,弁護士,司法修習生及び法科大学院生の,企業内法曹有資格者の役割・機能についての理解を促進するとともに,企業内法曹有資格者の処遇や勤務条件等についての共通認識を形成するために,以下のような方策を行う。
○ 日本経団連は,会員企業に対し,法曹有資格者の採用の積極的な検討及び法曹有資格者の採用情報の積極的開示を要請するとともに,これについて継続した組織的取組を行う。
○ 日弁連は,企業における法曹有資格者の待遇や勤務条件についての情報収集に努める。
○ 日弁連は,企業に対して,運営しているウェブサイトの利用を呼びかけるなどし,法曹有資格者の企業への就職に関する求人・求職情報のマッチングを促進する。
○ 日弁連は,企業内弁護士の採用が促進されるための弁護士会内の環境整備について検討する。
○ 法科大学院協会は,各法科大学院に対して,修了生の就職状況を把握した上で,これを公表するよう促す。
○ 法科大学院協会は,各法科大学院に対し,企業からの法科大学院への講師派遣,法科大学院生の企業へのエクスターンシップ,企業における法科大学院生のサマージョブ,企業法務に関する授業・講演会などを充実させることなどにより,法科大学院生に,企業内の法曹有資格者の役割・業務内容等を理解させるよう促す。
○ 法科大学院協会は,企業に対し,法科大学院における教育内容等を周知し,企業にとって有用な人材を養成していることを広報する。
○ 文部科学省は,法科大学院協会の上記取組みに協力する。
○ 法務省は,日本経団連,法科大学院協会,日弁連及び文部科学省との間で,今後も,企業における法曹有資格者の活用の在り方・状況,これを阻害している要因及びこれを進める方策について,継続的に意見交換を行うとともに,関係機関の連携の在り方についても検討を行う。
○ 日本経団連は,会員企業に対し,法曹有資格者の採用の積極的な検討及び法曹有資格者の採用情報の積極的開示を要請するとともに,これについて継続した組織的取組を行う。
○ 日弁連は,企業における法曹有資格者の待遇や勤務条件についての情報収集に努める。
○ 日弁連は,企業に対して,運営しているウェブサイトの利用を呼びかけるなどし,法曹有資格者の企業への就職に関する求人・求職情報のマッチングを促進する。
○ 日弁連は,企業内弁護士の採用が促進されるための弁護士会内の環境整備について検討する。
○ 法科大学院協会は,各法科大学院に対して,修了生の就職状況を把握した上で,これを公表するよう促す。
○ 法科大学院協会は,各法科大学院に対し,企業からの法科大学院への講師派遣,法科大学院生の企業へのエクスターンシップ,企業における法科大学院生のサマージョブ,企業法務に関する授業・講演会などを充実させることなどにより,法科大学院生に,企業内の法曹有資格者の役割・業務内容等を理解させるよう促す。
○ 法科大学院協会は,企業に対し,法科大学院における教育内容等を周知し,企業にとって有用な人材を養成していることを広報する。
○ 文部科学省は,法科大学院協会の上記取組みに協力する。
○ 法務省は,日本経団連,法科大学院協会,日弁連及び文部科学省との間で,今後も,企業における法曹有資格者の活用の在り方・状況,これを阻害している要因及びこれを進める方策について,継続的に意見交換を行うとともに,関係機関の連携の在り方についても検討を行う。
2 司法修習終了直後又は司法試験合格直後に企業に就職を希望する者について
○ 日本経団連は,会員企業に対し,司法修習終了直後に企業に就職を希望する者の中には12月からの就職を希望する者が相当数いること,司法試験合格直後に企業に就職を希望する者の中には新司法試験終了後の毎年5月から就職活動を開始する者が相当数いることを周知して,定期採用とは別の採用の可能性を含め,柔軟な採用活動の在り方を検討するよう要請する。
○ 日弁連は,企業に対して,各弁護士会が司法修習生を対象として行っている就職説明会への参加を広く呼びかけるとともに,運営しているウェブサイトの利用を呼びかけるなどし,司法修習終了直後の企業への就職に関する求人・求職情報のマッチングを促進する。
○ 法科大学院協会は,各法科大学院に対し,企業への就職を希望する法科大学院生が新司法試験受験後の5月から速やかに有効な就職活動を開始するよう,法科大学院生に企業への就職活動のモデルを示す等の就職支援をすることを促す。
○ 法科大学院協会は,連携しているウェブサイトなどを利用して,司法修習終了直後及び司法試験合格直後の企業への就職に関する求人・求職情報のマッチングを促進する。
○ 法務省は,企業や法科大学院生に弁護士認定制度(弁護士法第5条第2号)を周知するために,同制度の広報を行う。
○ 日弁連は,企業に対して,各弁護士会が司法修習生を対象として行っている就職説明会への参加を広く呼びかけるとともに,運営しているウェブサイトの利用を呼びかけるなどし,司法修習終了直後の企業への就職に関する求人・求職情報のマッチングを促進する。
○ 法科大学院協会は,各法科大学院に対し,企業への就職を希望する法科大学院生が新司法試験受験後の5月から速やかに有効な就職活動を開始するよう,法科大学院生に企業への就職活動のモデルを示す等の就職支援をすることを促す。
○ 法科大学院協会は,連携しているウェブサイトなどを利用して,司法修習終了直後及び司法試験合格直後の企業への就職に関する求人・求職情報のマッチングを促進する。
○ 法務省は,企業や法科大学院生に弁護士認定制度(弁護士法第5条第2号)を周知するために,同制度の広報を行う。