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法曹有資格者の公務員登用促進に関する協議会取りまとめ

平成21年4月24日

第1 はじめに

1 今般の司法制度改革においては,法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度のもとで誕生する法曹有資格者(司法試験合格者をいう。以下同じ。)が,社会のニーズに積極的に対応し,公務を含む社会の様々な分野で幅広く活躍することを一つの理念としており,その一環として,法曹有資格者が国家公務員(裁判官及び検察官を除く。以下同じ。)や地方公務員として活用されることが期待されている。

2 本協議会は,このような司法制度改革の理念を実現するという観点から,法曹有資格者を国家公務員や地方公務員として幅広く活用するための方策を検討するため,国家公務員制度改革推進本部事務局,人事院,総務省,法務省,文部科学省の関係部局が参集したものであり,幹事会を設置して調査検討を進め,その検討結果の取りまとめを行った。


第2 現 状

1 国家公務員としての活用状況

(1) 現状において,法曹有資格者を国家公務員として活用する形態としては,主に,(1)国家公務員採用試験による採用,(2)経験者採用システム(新司法試験合格者を対象とした試験)による採用,(3)特定任期付職員としての採用がある。

(2) (1)については,国家公務員採用Ⅰ種試験により採用された法曹有資格者は,平成10年度から平成20年12月までの間に,約20名である。法科大学院修了後に新司法試験の受験資格を有することになる法科大学院生については,近年,申込者数・合格者数・採用者数ともに増加している。

(3) (2)による採用者及び採用内定者は,制度創設時の平成18年度から平成20年12月までの間に,5名であり,申込者数は,平成18年度には8名であったが,平成20年度には71名と増加している。

(4) (3)による在職者は,制度創設時の平成13年度の在職者数は10名であったが,平成20年12月現在,約95名と増加している。採用している府省庁の数は多数にのぼっているが,積極的に採用している府省庁がある一方で,活用実績がない府省庁もある。主に,金融関係,独占禁止法関係,知的財産関係,企業法制関係等の各分野における法律の立案及び執行業務,紛争・訴訟・準司法関連業務,国際交渉関係業務等において活用されている。

2 地方公務員としての活用状況

 地方公務員として採用された法曹有資格者の人数を正確に把握することは困難であるが,東京都において,平成20年12月現在で8名が採用されているものの,多くの地方自治体においては,一般職や任期付職員としての採用実績はないとみられる。


第3 検 討

1 国家公務員としての活用について

(1) 国の行政を支える国家公務員に有為な人材を確保することは,極めて重要な課題であるが,現状として,採用試験の申込者数は減少傾向にある。その要因としては,少子化,公務員に対する批判等のほか,法科大学院の設置に伴い,従来であれば公務員を志望していた学部生の中に,法科大学院への進学を選択する学生が増加したことなどが指摘されている。このような状況においては,法科大学院に進学した者のうち,公務に有為な人材を,いかに公務に誘致していくかを検討する必要がある。

 その一つとして,法科大学院を修了し,新司法試験に合格した者の公務への誘致については,法科大学院に進学した者の中には,新司法試験合格後に公務員として働くことを希望する者も少なくないと考えられ,経験者採用システム(新司法試験合格者を対象とした試験)は,このような人材を確保するために有用であり,現に申込者数は増加している。今後も引き続き,同様の措置を講じることが必要であり,これを利用する府省庁が更に拡大することが期待される。

 なお,法科大学院生については,国家公務員採用試験の申込者数・合格者数・採用者数ともに増加している。これまでも法科大学院生を対象とした説明会の実施等の取組みを進めてきており,平成21年度からは,新たな取組みとして,法科大学院生を対象とした「霞が関インターンシップ」の実施が予定されており,今後も,法科大学院生に対する公務への人材誘致のための活動や法科大学院教育に対する各府省庁の協力が深まり,申込者数等の更なる増加が期待される。

(2) 国家公務員採用試験における法科大学院生の採用者数は,合格者数からみて少数にとどまる傾向にあるが,この点に関し,国家公務員採用試験を受験した法科大学院生の中には,公務に対する理解・熱意が不足している者や,ジェネラリストとして多様な業務に従事することを求める府省庁側の希望に添わない者がいたとの指摘があった。そして,その背景として,法科大学院において,公務に有為な人材をも育成するために,適切な授業科目を設置するなどといった方策が十分ではないのではないか,公務に関心を持つ法科大学院生に対し,公務員の採用・試験情報の提供や指導,就職支援が的確に行われていないのではないかという指摘があった。

 法科大学院教育では,行政法が必須科目とされ,新司法試験においても公法系科目として行政法が必須科目とされていることから,従来に比して,行政法分野に通じた法曹有資格者の輩出が期待されている。そうした中で,法科大学院の中には,公共政策,財政学,立法学,地方自治法等を科目として設け,行政官として活躍できる法曹の養成を志向する法科大学院もあるが,一部にとどまっている。

 人材の供給側である法科大学院においては,公務に有為な法曹の育成及び輩出をも十分に視野に入れ,公共政策科目の充実等といった教育上の工夫に加え,院生に対して公務の魅力を伝える場を設けたり,公務を志望する院生に対して公務員の採用・試験情報の提供や指導,就職支援を行うなどといった取組みを積極的に行うことが期待される。

(3) 今般の司法制度改革の理念の実現のためには,人材の供給側・需要側双方が,真摯に法曹有資格者を公務に誘致するための環境整備に取り組む必要があり,需要側である府省庁においても,法曹有資格者の活用によって,法令に基づくより適正な行政執行の担保や法令遵守維持に資するのではないかといった視点から,改めて,職務内容やキャリアパスも含め,法曹有資格者の公務における活用の在り方を検討すべきではないかと考えられる。

 なお,諸制度を活用して法科大学院に入学した職員を,司法試験合格後に法曹有資格者として活用することも今後あり得ると考えられる。

(4) 特定任期付職員としての弁護士の活用については,在職者数が増加傾向にあり,今後も増加が見込まれる。この活用形態は,高度の専門的な知識経験を有し,特定の法分野に精通した即戦力となる弁護士が必要な場合に用いられているが,公募ポストによっては申込者数が少ないものもある。日本弁護士連合会においては,会員に対し,特定任期付職員制度の周知,採用情報の提供を行うとともに,特定任期付職員として勤務することに関心を持つ弁護士の人材プールやネットワークを作ることについても検討するなどといった取組みを行う意向を示している。このような取組みを通じ,申込者数が増加することが期待される。

 また,この制度を利用していない府省庁においても,所管業務を改めて確認し,弁護士の活用により,より効率的・効果的な業務遂行ができる分野はないかを検討することが考えられる。

2 地方公務員としての活用について

(1) 地方自治体にあっては,地方分権の進展と相まって,独自の条例制定等も含めた法制的な観点をさらに加味した政策展開の可能性が期待される。また,従来は,行政法の知識に依拠して業務を遂行する傾向があったものの,行政需要の多様化や複雑化に伴い,住民により近い行政サービスの主体として,コンプライアンスやリスク管理等の観点から,民事法制に関する正確な知識と適切な対応が求められてきている。

 このように,地方自治体における法曹有資格者の活用についての潜在的なニーズは,職員としての採用も含め少なからず存在していると考えられるが,現状においては,東京都などの一部の自治体を除き常勤としての法曹有資格者の任用が行われておらず,アンケート調査の結果からも,多くの地方自治体においては常勤職員としての採用についての関心が必ずしも高くない状況にある。

 この原因としては,行政体制の編成上の問題,法曹有資格者に特化したキャリアパスを位置づけることが困難であることなどが考えられるほか,地方において法曹有資格者の数が未だ十分とはいえないこと,地方自治体と法曹有資格者との間において,相互の業務に対する知識や理解が必ずしも十分ではないことなども指摘されたところである。

(2) このような状況に照らすと,法曹有資格者の地方公務員登用を促進するに当たっては,まずは,地方自治体と法曹有資格者との間の意見交換等を通じ,相互の理解を深めることが必要である。また,近時,弁護士による地方自治体の私債権管理や行政対象暴力等への積極的な取組みが実施されたり,東京23区による一部事務組合における法務組織において法曹有資格者が活用されているところであるが,このような地方自治体における法曹有資格者の活用事例等を周知し,地方自治体において,より効率的・効果的な業務遂行のための弁護士の活用を検討する機会を持つことが必要と考えられる。

 日本弁護士連合会においても,地方自治体に対する弁護士活用事例の情報提供や会員に対する地方自治関連法分野の研修の充実等といった必要な取組みを行っていく意向を示しており,このような取組みを通じて,法曹有資格者の活用が地方自治行政の場に広がっていくことが期待される。

 また,地方に設置された法科大学院の中には,地元に根付いた法曹の養成を理念として掲げているものもあることから,地方自治体へのインターンシップ等により,法科大学院出身の法曹有資格者が地方自治行政に関心を持ち,地方公務員としての採用を希望することも期待される。

 なお,国家公務員と同様,諸制度を活用して法科大学院に入学した職員を,司法試験合格後に法曹有資格者として活用することも今後あり得ると考えられる。


第4 まとめ

 以上の検討結果を踏まえ,本協議会に参集した関係省庁は,法科大学院や日本弁護士連合会の取組みに対し,必要に応じた協力をするとともに,関係省庁間で連携し,前記第1のような司法制度改革の理念の実現に向け,必要な施策や検証を行っていくことを確認した。


以 上

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